JP3011740B2 - 有機電解液電池 - Google Patents

有機電解液電池

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、有機電解液電池に係わり、さらに詳しくは
その電解液の改良に関する。
〔従来の技術〕
リチウムを負極とし、二酸化マンガン合剤を正極と
し、有機系の電解液を用いたリチウム−二酸化マンガン
電池に代表される有機電解液電池は、高エネルギー密度
で、かつ軽量であり、しかも長寿命のため、需要が増々
増加する傾向にある。
そして、この有機電解液電池では、電解液の電解質と
してLiClO4がよく用いられている〔たとえば、T.Iwamar
u,O.Kajii,Practical Lithium Batteries,p53(198
8)〕。
また、最近では、カメラ用電源として筒形のリチウム
−二酸化マンガン電池が普及しつつあり、この電池で
は、低温でも優れた特性を発揮できるように、電解液溶
媒に環状エーテルを用いるなど、電解質と溶媒との組合
せに関して検討がなされている。
ところで、この筒形リチウム−二酸化マンガン電池の
ように電池のサイズが大きくなると、万一、発火や破裂
が生じた時に影響が大きくなるので、安全性に対する配
慮はより重要になってくる。
通常、この種の電池には、安全対策としPTC素子(電
流、加熱により電池の温度が異常上昇すると、抵抗が大
きくなり、電流を低下させる素子)や安全弁装置(電池
内部にガスが発生して内部圧力が異常上昇すると、弁が
開いて電池内部のガスを外部に排出させ、電池の高圧下
での破裂を防止する装置)が設けられているが、PTC素
子を取り除いて大電流で過放電を続けると電池が発火す
ることがある。
たとえば、第1図に示すような構造の筒形リチウム−
二酸化マンガン電池(外径15mm、高さ40mm)で、電解質
としてLiClO4を使用した電解液を用いた場合、4Aで過放
電し、−3Vに達した後は定電流放電を行うと、電池が異
常に発熱し、発火や破損に至ることがある。
そこで、これを改善するため、電解質にLiCF3SO3を使
用すると、通常の条件下では、異常発熱はほとんど生じ
なくなるが、放電電流が15Aと大きくなると、電池の異
常発熱が生じるようになる。このように、LiCF3SO3は、
過放電時の安全性向上に対して効果はあるが、充分とは
いえない。
〔発明が解決しようとする課題〕
上記のように、従来の有機電解液電池では、過放電時
に電池が異常発熱して、発火や破裂に至ることがあっ
た。
したがって、本発明は、過放電時に異常発熱が生じる
のを防止し、過放電時でも安全性の高い有機電解液電池
を提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、電解質として、M(CnF2n+1SO3)χ(Mは
アルカリ金属またはアルカリ土類金属で、nは4以上の
整数であり、χはMがアルカリ金属のとき1で、Mがア
ルカリ土類金属のとき2である)を使用することによっ
て、過放電時に異常発熱が生じるのを防止し、上記目的
を達成したものである。
上記のように、M(CnF2n+1SO3)χを電解質として使
用することにより、過放電時の異常発熱が防止され、過
放電時の安全性を向上させることができる理由は、次の
ように考えられる。
電池に大電流が流れると、電池の温度上昇は急激にな
り、セパレータの融点近くまで温度が上昇すると、セパ
レータの目詰まりが生じ、通常は電流が流れなくなる。
しかし、電流が大きすぎ、あまりにも急激にセパレー
タが目詰まりを起こすと、目詰まりが不均一に生じ、過
放電状態になって電池電圧が逆転したときに、その目詰
まりが生じた部分にリチウムなどのアルカリ金属のデン
ドライトが生長し、内部短絡が生じて、電池に異常発熱
が生じ、電池の発火や破損が生じるようになる。
ところが、M(CnF2n+1SO3)χを電解質として使用す
ると、CnF2n+1 -部分の負極への吸着作用や電解液中での
Li+イオンなどのアルカリ金属イオンとの相互作用によ
り、電池に大電流が流れるのがある程度制御されるよう
になり、その結果、電池の異常発熱が防止されるように
なるものと考えられ、このようなCnF2n+1 -部分の負極へ
の吸着作用などはnが大きくなると大きくなり、特にn
が4以上になると大きくなるものと考えられる。
また、M(CnF2n+1SO3)χを用いた場合、−3V過放電
でセパレータの目詰まりが生じ、しばらくすると電流が
徐々に減少するようになるのに対し、LiCF3SO3の場合、
電流が単調に減少することなく、逆に途中で増加する場
合が多いことから、M(CnF2n+1SO3)χは正極への電着
アルカリ金属の析出形態にも影響を与え、このような正
極への電着アルカリ金属の析出形態の相違も過放電時の
異常発熱を防止する要因になるものと考えられ、このよ
うな正極への電着アルカリ金属の析出状態もnが4以上
になると過放電時の異常発熱を防止する上において良好
な状態になるものと考えられる。
上記M(CnF2n+1SO3)χにおけるMは、Li(リチウ
ム)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)などのアルカ
リ金属またはCa(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、
Be(ベリリウム)などのアルカリ土類金属であるが、負
極にリチウムまたはリチウムを含む化合物を用いること
が多いことから、上記のMとしてはLi(リチウム)が適
している。また、nは4以上の整数であるが、これはn
が1のMCF3SO3(たとえば、LiCF3SO3)でも、LiClO4
比べると過放電時の安全性に向上が認められるものの、
−3Vで大電流で過放電すると、電池が異常発熱を起こし
て、発火や破損に至る場合があるが、nが4以上になる
と前記のような理由から安全性が向上し、そのようなお
それがほとんどなくなるからである。過放電時の安全性
を向上させるという観点からは、nが大きいほど好まし
いが、nが大きくなると、イオン伝導度が低下して放電
特性などが低下するので、nが10以下のものを用いるこ
とが適している。したがって、nは4以上であることが
必要であって、10以下が特に好ましい。
上記M(CnF2n+1SO3)χは、nの数、つまり炭素数が
増えると、イオン伝導度が低下するので、放電特性の優
れた電池を得るためには、電解溶媒の選択が重要にな
る。たとえば、Li2C2F4(SO3は、テトラヒドロフラ
ンに0.6mol/溶解するイオン伝導度は0.45mS・cm-1
あるが、Li2C4F8(SO3はテトラヒドロフランに0.00
1mol/しかとけず、イオン伝導度も0.0043mS・cm-1
まで低くなることが報告されている〔V.R.Koch,etal,J.
Power Sources,20,287(1987)〕。この例からもわかる
ように、nの数、つまり炭素数が多くなるほど、電解液
溶媒への溶解度が低下したり、イオン伝導度が低下する
ので、nが4以上であるM(CnF2n+1SO3)χを用いて優
れた放電特性を有する電池を得るには、nが1のLiCF3S
O3を用いる場合よりも溶媒の選択が重要である。
そこで、本発明者らは、電解質としてM(CnF2n+1S
O3)χを使用するにあたり、電解液溶媒について検討を
行った結果、エステルとエーテル、特にエステルと鎖状
エーテルとを混合した混合溶媒を使用するときは、上記
のM(CnF2n+1SO3)χをよく溶解させることができ、優
れた放電特性を有する有機電解液電池が得られることを
見出した。たとえば、プロピレンカーボネートと1,2−
ジメトキシエタンとの容量比1:2の混合溶媒にLiC4F9SO3
を溶解させるときは、nの数、つまり炭素数が4である
にもかかわらず、5mol/以上溶解させることができる
という意外な事実を見出したのである。
本発明において、電解液溶媒としてエステルを用いる
のは、二酸化マンガンなどの正極活物質とエーテルとの
反応を防止して、電池の貯蔵特性を良好にするためであ
るが、このエステルとしては、たとえばプロピレンカー
ボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクタ
ン、γ−バレロラクトンなどが挙げられ、特にプロピレ
ンカーボネートが好適に用いられる。そして、このエス
テルは、正極活物質とエーテルとの反応を防止し、電池
の貯蔵特性を安定して良好に保つためには、電解液溶媒
中での比率を10容量%以上にするのが好ましい。
また、エーテルとしては、たとえば1,2−ジメトキシ
エタン、ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,3
−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、4−メチル−1,
3−ジオキソラン、2−メチルテトラヒドロフランなど
が挙げられ、なかでも1,2−ジメトキシエタン、ジメト
キシメタン、ジメトキシプロパンなどの鎖状エーテル
が、低温での放電特性を良好にすることから、特に好適
に用いられる。そして、優れた放電特性を有する電池を
得るためには、電解液溶媒中でのエーテルの比率を55容
量%以上、遅に60容量%以上にすることが好ましい。さ
らに、低温での電池特性を重視するならば、プロピレン
カーボネートと1,2−ジメトキシエタンとの組合せに
し、その中での1,2−ジメトキシエタンの比率を55〜80
容量%、特に60〜75容量%にするのが好ましい。
このように、溶媒を選択することにより、M(CnF
2n+1SO3)χの溶解度を向上させ、イオン伝導度を高め
て放電特性の優れた電池を得ることができるが、その場
合において、M(CnF2n+1SO3)χは電解液中の濃度が0.
1〜2.0mol/になるようにするのが適正であり、特に0.
2〜0.7mol/にするのが好ましい。つまり、M(CnF
2n+1SO3)χの濃度が上記範囲より低い場合は電池のパ
ルス放電特性が低下し、また、M(CnF2n+1SO3)χの濃
度が上記範囲より高くなりすぎても、電解液の粘度が高
くなるので、パルス放電特性が悪くなる。
なお、上記M(CnF2n+1SO3)χにおけるCnF2n+1の部
分は、鎖状のもののみならず、環状のものでもよく、ま
た、前記からもわかるように、nの数、つまり炭素数が
大きくなると、電解液のイオン伝導度が低下し、nの数
が大きくなりすぎると、溶媒の選択によっても、イオン
伝導度を向上させることに限界が生じるので、nが10以
下のものを用いることが好ましい。
上記のように、M(CnF2n+1SO3)χを電解質として使
用することにより、過放電時の電池の安全性を向上させ
ることができ、また、溶媒を選択することによって、M
(CnF2n+1SO3)χの溶解度を高め、イオン伝導度を高め
て、LiClO4やLiCF3SO3を用いた場合と同程度の放電特性
を得ることができる。
しかし、放電特性の良好な電池を得るためには、M
(CnF2n+1SO3)χの溶解性の高い電解液溶媒を用いる必
要があり、そのようにM(CnF2n+1SO3)χの溶解性の高
い電解液溶媒を用いる結果、この電池では、部分放電し
た後に放置ないし貯蔵すると、負極のアルカリ金属と電
解液との反応が生じて、電池の内部抵抗が増加する傾向
がある。
そこで、本発明者らは、そのような部分放電後の貯蔵
中での内部抵抗増加を抑制する対策についても検討を加
えたところ、電解液中にエチレンカーボネートや、メチ
ルジグライム〔CH3(OCH2CH22OCH3〕、メチルトリグ
ライム〔CH3(OCH2CH23OCH3〕、メチルテトラグライ
ム〔CH3(OCH2CH24OCH3〕などのグライム類、BF4 -
有塩、BF3、SbF6 -含有塩、SbF5などの1種または2種以
上を添加しておくことによって、部分放電後の電池の貯
蔵中における内部抵抗増加を抑制することができること
を見出した。
上記のエチレンカーボネートやグライム類は電解液溶
媒として使用できるものであり、これらのエチレンカー
ボネートやグライム類が部分放電後の電池の貯蔵中での
内部抵抗増加を抑制することができるのは、エチレンカ
ーボネートやグライム類が負極のアルカリ金属と電解液
との界面において電解液の塩基性を下げる(あるいは酸
性度を上げる)効果があり、電解液溶媒と負極のアルカ
リ金属との反応性が低下するためであると考えられる。
そして、これらのエチレンカーボネートやグライム類
の添加量としては、エーテルに対して容量比で1/15〜1/
3、特に1/10〜1/5にするのが好ましい。つまり、エチレ
ンカーボネートやグライム類の添加量がエーテルに対し
て容量比で1/15より少ない場合は、部分放電後の貯蔵中
での内部抵抗増加を抑制する効果が充分に発揮されず、
また、エチレンカーボネートやグライム類の添加量がエ
ーテルに対して容量比で1/3より多くなると、電池の低
温特性が悪くなるからである。
上記のBF4 -含有塩とは、たとえばLiBF4、(C2H54NB
F4などであり、また、SbF6 -含有塩とは、たとえばLiSbF
6、(C2H54NSbF6などであって、いずれも、電解質と
して使用することができるものである。これらのBF4 -
有塩、SbF6 -含有塩や、BF3、SbF5などが部分放電後の電
池の貯蔵中での内部抵抗増加を制御することができるの
は、これらがルイス酸性で、電解液のルイス塩基性を下
げることができるからである。
そして、これらのBF4 -含有塩、SbF6 -含有塩や、BF3
SbF5などを添加する場合、これらの添加量はエーテルに
対するモル比で5×10-4〜2×10-2、特に3×10-3〜6
×10-3にするのが好ましい。つまり、これらの添加量が
エーテルに対するモル比で5×10-4より少なくなると、
部分放電後の貯蔵中での内部抵抗増加を抑制する効果が
充分に発揮されず、また、それらの添加量がエーテルに
対するモル比で2×10-2より多くなると、未放電電池の
貯蔵特性が悪くなる。
また、M(CnF2n+1SO3)χを電解質として使用した電
解液では、通常、イオン伝導度が低くなりがちなので、
大電流を取り出すことが必要なときには、セパレータは
できるだけ薄いもの、具体的には、厚みが50μm以下の
もの、特に30μm以下のものを使用することが好まし
い。
〔実施例〕
つぎに実施例をあげて本発明をより具体的に説明す
る。
実施例1 450℃で熱処理した二酸化マンガンとカーボンブラッ
クとポリテトラフルオロエチレンからなる二酸化マンガ
ン合剤をスチレン鋼製網を芯材として厚さ0.4mm、幅30m
mのシート状に成形し、集電体を取り付けた帯状正極を2
50℃で9時間乾燥した後、乾燥雰囲気中で室温まで冷却
した。
つぎに、この帯状正極を厚さ25μmの微孔製ポリプロ
ピレンフィルムからなるセパレータで包み、これに厚さ
0.18mm、幅30mmのリチウムからなる帯状負極を重ね、渦
巻状に巻回して、渦巻状電極体とした後、外径15mmの有
底円筒状の電池ケース内に充填し、リード体のスポット
溶接などを行った。
ついで、上記電池ケース内に、0.6MLiC4F9SO3/PC:DME
(1:2)〔プロピレンカーボネート(PC)と1,2−ジメト
キシエタン(DME)との容量比1:2の混合溶媒にLiC4F9SO
3を0.6mol/溶解したもの〕を電解液として注入した。
つぎに、常法にしたがって電池ケースの開口部を封口
し、安定化処理を行って、第1図に示す構造の筒形有機
電解液電池を作製した。
第1図に示す電池について説明すると、(1)は前記
の二酸化マンガン合剤を成形した正極であり、成形にあ
ってはステンレス鋼製網が芯材として使用されている。
(2)はリチウムからなる負極であり、この負極(2)
はステンレス鋼製網に圧着して作製されている。ただ
し、第1図では、繁雑化を避けるため、正極(1)や負
極(2)の作製にあたって使用されたステンレス鋼製網
や集電体などを図示していない。そして、(3)はセパ
レータで、(4)は上記の電解液である。
(5)はステンレス鋼製の電池ケースであり、この電
池ケース(5)は負極端子を兼ねている。電池ケース
(5)の底部にはポリテトラフルオロエチレンシートか
らなる絶縁材(6)が配設され、電池ケース(5)の内
周部にもポリテトラフルオロエチレンシートからなる絶
縁材(7)が配設されていて、前記正極(1)、負極
(2)およびセパレータ(3)からなる渦巻状電極体
や、電解液(4)などは、この電池ケース(5)に収容
されている。
(8)はステンレス鋼製の封口板であり、この封口板
(8)の中央部にはガス通気孔(8a)が設けられてい
る。(9)はポリプロピレン製の環状パッキング、(1
0)はチタン製の可撓性薄板で、(11)は環状のポリプ
ロピレン製の熱変形部材であり、この熱変形部材(11)
は温度によって変形することにより可撓性薄板(10)の
破壊圧力を変える作用をする。(12)はニッケルメッキ
を施した圧延鋼製の端子板であり、この端子板(12)に
は切刃(12a)とガス排出孔(12b)とが設けられてい
て、電池内部にガスが発生して電池の内部圧力が上昇
し、その内圧上昇によって可撓性薄板(10)が変形した
ときに、上記切刃(12a)によって可撓性薄板(10)を
破壊し、電池内部のガスを上記ガス排出孔(12b)から
電池外部に排出できるように設計されている。(13)は
絶縁パッキングで、(14)はリード体であり、このリー
ド体(14)は正極(1)の封口板(8)とを電気的に接
続しており、端子板(12)は封口板(8)との接触によ
り正極端子として作用する。また、(15)は負極(2)
と電池ケース(5)とを電気的に接続するリード体であ
る。
実施例2 電解液として、0.6MLiC4F9SO3/PC:DME:EC(3:6:1)
〔プロピレンカーボネート(PC)と1,2−ジメトキシエ
タン(DME)とエチレンカーボネート(EC)との容量比
3:6:1の混合溶媒にLiC4F9SO3を0.6mol/溶解させたも
の〕を用いたほかは、実施例1と同様にして筒形有機電
解液電池を作製した。
実施例3 電解液として、0.6MLiC4F9SO3/PC:DME:MDG(3:8:1)
〔プロピレンカーボネート(PC)と1,2−ジメトキシエ
タン(DME)とメチルジグライム(MDG)との容量比3:8:
1の混合溶媒にLiC4F9SO3を0.6mol/溶解させたもの〕
を用いたほかは、実施例1と同様にして筒形有機電解液
電池を作製した。
実施例4 電解液として、0.6MLiC4F9SO3+0.03MLiBF4/PC:DME
(1:2)〔プロピレンカーボネートと1,2−ジメトキシエ
タンとの容量比1:2の混合溶媒にLiC4F9SO3を0.6mol/
およびLiBF4を0.03mol/溶解させたもの〕を用いたほ
かは、実施例1と同様にして筒形有機電解液電池を作製
した。
実施例5 電解液として、0.6MLiC4F9SO3+0.03MLiSbF6/PC:DME
(1:2)〔プロピレンカーボネートと1,2−ジメトキシエ
タンとの容量比1:2の混合溶媒にLiC4F9SO3を0.6mol/
およびLiSbF6を0.03mol/溶解させたもの〕を用いたほ
かは、実施例1と同様にして筒形有機電解液電池を作製
した。
実施例6 電解液として、0.6MLiC4F9SO3+0.03MLiBF4/PC:DME:E
C(3:8:1)〔プロピレンカーボネートと1,2−ジメトキ
シエタンとエチレンカーボネートとの容量比3:8:1の混
合溶媒にLiC4F9SO3を0.6mol/およびLiBF4を0.03mol/
溶解させたもの〕を用いたほかは、実施例1と同様に
して筒形有機電解液電池を作製した。
比較例1 電解液の電解質として、LiC4F9SO3に代えてLiClO4
用いたほかは、実施例1と同様にして筒形有機電解液電
池を作製した。
比較例2 電解液の電解質として、LiC4F9SO3に代えてLiCF3SO3
を用いたほかは、実施例1と同様にして筒形有機電解液
電池を作製した。
以上のように作製した実施例1〜6および比較例1〜
2の電池を、まず5Aの定電流で過放電し、電池電圧が逆
転し−3Vに達した後は−3Vの定電圧で過放電した。
この過放電時に電池の表面温度が150℃以上に発熱し
たり、電池が破損した割合を調べた。その結果を第1表
に示す。なお、上記試験に供した電池個数は各電池とも
5個ずつであり、第1表に示す値の分母は試験に供した
電池個数で、分子は表面温度が150℃以上に発熱したり
(異常発熱)、破損した電池個数である。
第1表に示すように、本発明の実施例1〜6の電池
は、いずれも、異常発熱や破損が生じず、LiC4F9SO3
添加することにより、過放電時の安全性が向上すること
を示していた。比較例1の電池は電解質としてLiClO4
用いたものであるが、この比較例1の電池は、第1表に
示すように、試験に供した電池のいずれにも、異常発熱
または破損の発生が認められ、過放電時の安全性に欠け
ることを示していた。これに対し、電解質としてLiCF3S
O3を用いた比較例2の電池では、第1表に示すように、
前記過放電条件下では、異常発熱、破損などが生じず、
比較例1の電池に比べて過放電時の安全性が高いことを
示していた。
そこで、上記実施例1〜6および比較例1〜2の電池
について、さらに苛酷な条件下での安全性を検討するた
め、−3Vの定電圧で最大電流15Aの過放電を行って、電
池の表面温度が150℃以上に発熱したり(異常発熱)、
電池が破損した割合を調べた。その結果を第2表に示
す。なお、上記試験に供した電池個数は各電池とも5個
ずつであり、結果の表示方法は第1表の場合と同じであ
る。
第2表に示すように、本発明の実施例1〜6の電池
は、いずれも、異常発熱や破損が生じず、苛酷な過放電
条件下においても安全性が高いことを示していた。これ
に対し、比較例1〜2の電池には、異常発熱や破損の発
生が認められ、電解質としてLiCF3SO3を用いた比較例2
の電池も、過放電時に電流が制限されないような苛酷な
条件下では、安全性が充分でないことを示していた。
つぎに、電解質としてLiC4F9SO3を使用したことによ
る放電特性の低下の有無を調べるために、実施例1〜6
および比較例1〜2の電池について、20℃、終止電圧1.
3Vで1.2A×3s+7s offのパルス放電〔1.2Aで3秒間放電
し、7秒間休止するパルス放電〕を行った結果を第3表
に示す。
第3表に示すように、本発明の実施例1〜6の電池
は、比較例1〜2の電池とパルス放電回数がそれほど変
わらず、電解質としてLiC4F9SO3を用いたことによる放
電特性の大きな低下は認められなかった。
つぎに、上記実施例1〜6の電池を、20℃で1.2A×3s
+7s offのパルス放電を880回繰り返した後、4時間後
に1kHzでの内部抵抗(初度内部抵抗)をLCRメータ(YOK
OGAWA HEWLETT PACKARD社製4262A)を用いて測定し、
また、これをさらに60℃で3日間貯蔵後に室温まで放冷
した後、1kHzでの内部抵抗を測定した。その結果を第4
表に示す。
第4表に示すように、実施例2〜6の電池は、60℃で
3日間貯蔵後の内部抵抗が小さく、エチレンカーボネー
ト(実施例2の場合)、メチルジグライム(実施例3の
場合)、LiBF4(実施例4の場合)、LiSbF6(実施例5
の場合)、エチレンカーボネートとLiBF4(実施例6の
場合)を電解液に添加しておくことにより、部分放電後
の貯蔵中での内部抵抗増加が抑制されることを示してい
た。
〔発明の効果〕 以上説明したように、本発明によれば、過放電時の電
池の異常発熱が防止され、過放電時の安全性が向上し
た。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る有機電解液電池の一例を模式的に
示す断面図である。 (1)……正極、(2)……負極、(3)……セパレー
タ、(4)……電解液
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−49157(JP,A) 特開 平3−152879(JP,A) 特開 平2−98057(JP,A) 特開 平2−165565(JP,A) 特開 平2−86074(JP,A) 特開 平2−44659(JP,A) 特開 平1−236585(JP,A) 特開 昭60−109182(JP,A) 特開 昭55−144663(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 10/40 H01M 6/16

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アルカリ金属またはアルカリ金属を含む化
    合物からなる負極と、正極と、有機溶媒に電解質を溶解
    してなる電解液を備えた有機電解液電池において、 上記電解液が、電解質としてM(CnF2n+1SO3(Mは
    アルカリ金属またはアルカリ土類金属で、nは4以上の
    整数であり、xはMがアルカリ金属のとき1で、Mがア
    ルカリ土類金属のとき2である)を含むことを特徴とす
    る有機電解液電池。
  2. 【請求項2】電解液溶媒としての有機溶媒が、エステル
    を10容量%以上およびエーテルを55容量%以上含むこと
    を特徴とする請求項1記載の有機電解液電池。
  3. 【請求項3】上記エーテルが、1,2−ジメトキシエタン
    である請求項2記載の有機電解液電池。
  4. 【請求項4】上記エステルがプロピレンカーボネートで
    あり、エーテルが1,2−ジメトキシエタンである請求項
    2記載の有機電解液電池。
  5. 【請求項5】電解液溶媒としての有機溶媒が、エーテル
    を55容量%以上とエチレンカーボネートを含むことを特
    徴とする請求項1記載の有機電解液電池。
  6. 【請求項6】電解液溶媒としての有機溶媒が、エーテル
    を55容量%以上とエステルを含み、グライム類を含むこ
    とを特徴とする請求項1記載の有機電解液電池。
  7. 【請求項7】電解液溶媒としての有機溶媒が、エーテル
    を55容量%以上とエステルを含み、電解液中にBF4 -含有
    塩またはBF3を含むことを特徴とする請求項1記載の有
    機電解液電池。
  8. 【請求項8】電解液溶媒としての有機溶媒が、エーテル
    を55容量%以上とエステルを含み、電解液中にSbF6 -
    有塩またはSbF5を含むことを特徴とする請求項1記載の
    有機電解液電池。
  9. 【請求項9】電解液溶媒としての有機溶媒が、エーテル
    を55容量%以上とエチレンカーボネートを含み、かつ電
    解液中にBF4 -含有塩またはBF3を含むことを特徴とする
    請求項1記載の有機電解液電池。
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