JP2952034B2 - エポキシ樹脂硬化剤 - Google Patents

エポキシ樹脂硬化剤

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【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はエポキシ樹脂硬化剤に関し、さらに詳しく
は、飽和脂環式ジカルボン酸無水物の混合物からなる無
色透明で液状のエポキシ樹脂硬化剤に関する。
従来の技術 脂環式ジカルボン酸無水物をエポキシ樹脂の硬化剤と
して使用することは、従来から知られている。しかしな
がら、炭素・炭素二重結合を有する脂環式ジカルボン酸
無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤を用いてエポキシ樹
脂を硬化すると、硬化物の耐トラッキング性が劣るとと
もに硬化物が着色してしまい、発色ダイオードの注型
や、光学レンズ、光ディスクなどのオプトエレクトロニ
クス用素材として不適であるという問題点があった。
したがって、オプトエレクトロニクス用素材としてエ
ポキシ樹脂を使用するためには、炭素・炭素二重結合を
水添した飽和脂環式ジカルボン酸無水物をエポキシ樹脂
硬化剤として用いる必要がある。
ところで、従来、飽和脂環式ジカルボン酸無水物をエ
ポキシ樹脂硬化剤として使用するものとして、以下のよ
うなものが開示されている。
(イ)3−および/または4−メチルヘキサヒドロフタ
ル酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤(特公昭39−14
521号公報)。
(ロ)ノルボルナンジカルボン酸無水物またはメチルノ
ルボルナンジカルボン酸無水物のエキソ体またはエンド
体とエキソ体の混合物からなるエポキシ樹脂硬化剤(特
公昭62−47891号公報)などである。
(ハ)ヘキサヒドロフタル酸無水物はエポキシ樹脂硬化
剤として一般に広く用いられている。
発明が解決しようとする課題 しかしながら上記に開示されたエポキシ樹脂硬化剤
は、以下のような問題点を有する。すなわち、3−およ
び/または4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物から
なるエポキシ樹脂硬化剤は、室温にて液状であるもの
の、その硬化物の耐熱性および耐湿性が劣るという問題
点を有する。
また、ノルボルナンジカルボン酸無水物またはメチル
ノルボルナンジカルボン酸無水物のエキソ体またはエン
ド体とエキソ体の混合物からなるエポキシ樹脂硬化剤
は、エキソ体およびエンド体の混合比により融点は異な
るものの室温にて固体である。したがって、取扱い上、
室温にて液状であることが要求されるエポキシ樹脂硬化
剤として不満であるという問題点を有する。
さらに、エポキシ樹脂硬化剤として汎用されているヘ
キサヒドロフタル酸無水物も、融点が34℃の白色固体で
あり、取り扱い上の問題点を有するとともに、その硬化
物の耐熱性および耐湿性が劣るという問題点を有する。
本発明は、エポキシ樹脂硬化剤として使用する際に、
その硬化物がオプトエレクトロニクス用素材として不適
である、耐熱性および耐湿性に劣る、また室温にて固体
であり取扱い上不適であるという、従来技術に伴う問題
点を解決しようとするものであり、性能および作業性に
優れたエポキシ樹脂硬化剤を提供することを目的とす
る。
課題を解決するための手段 発明の要旨 本発明者らは、種々の脂環式ジカルボン酸無水物をエ
ポキシ樹脂硬化剤として検討する中で、メチルヘキサヒ
ドロフタル酸無水物、エチルヘキサヒドロフタル酸無水
物、ビシクロ〔2.2.2〕オクタン−2,3−ジカルボン酸無
水物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物
の混合物であって、特定の組成比を有するものが、硬化
物の透明性、耐熱性および耐湿性を損わず、かつ室温に
て無色透明で液状である優れたエポキシ樹脂硬化剤であ
ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、 (A) メチルヘキサヒドロフタル酸無水物が50〜95重
量%、 (B) エチルヘキサヒドロフタル酸無水物が0.15〜9
重量%、 (C) ビシクロ〔2.2.2〕オクタン−2,3−ジカルボン
酸無水物が0.25〜7.5重量%および (D) メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水
物が3.5〜45重量%であり、 かつ(A)+(B)+(C)+(D)が100重量%とな
るよう含有してなるエポキシ樹脂硬化剤に関する。
本発明に係るエポキシ樹脂硬化剤は、 (A) メチルヘキサヒドロフタル酸無水物 (B) エチルヘキサヒドロフタル酸無水物 (C) ビシクロ〔2.2.2〕オクタン−2,3−ジカルボン
酸無水物および (D) メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水
物 の組成は、(A)が50〜95重量%であるが、さらに60〜
90重量%であることが好ましい。
(A)が50重量%未満であると、エポキシ樹脂硬化剤
の粘度が高く、コイル含浸や充填剤を配合した電子部品
の注型用硬化剤として使用する際、エポキシ樹脂配合物
の粘度低下のため希釈剤が必要となるので、一方、95重
量%を超えると、そのエポキシ樹脂硬化剤を用いて硬化
させた硬化物の耐熱性および耐湿性が改良されないので
いずれも好ましくない。
また、(B)は0.15〜9重量%であるが、さらに0.3
〜8.1重量%であることが好ましい。
(B)が0.15重量%未満であると、粘度が低下しな
い、或いは液状のエポキシ樹脂硬化剤を与えないので、
一方9重量%を超えると、そのエポキシ樹脂硬化剤を用
いて硬化させた硬化物の耐熱性および耐湿性が改良され
ないのでいずれも好ましくない。
また、(C)は0.25〜7.5重量%であるが、さらに0.5
〜6.8重量%であることが好ましい。
(C)が0.25重量%であると、そのエポキシ樹脂を用
いて硬化させた硬化物の耐熱性および耐湿性が改良され
ないので、一方、7.5重量%を超えると、粘度が高くな
うか或いは固体となり作業性が低下するのでいずれも好
ましくない。
さらに(D)は3.5〜45重量%であるが、さらに好ま
しくは、7.0〜40.5重量%である。
(D)が3.5重量%未満であると、そのエポキシ樹脂
硬化剤を用いて硬化させた硬化物の耐熱性および耐湿性
が改良されないので、一方、45重量%を超えると、粘度
が高くなるか或いは固体となり作業性が低下するのでい
ずれも好ましくない。
また、(A)メチルヘキサヒドロフタル酸無水物に
は、3−メチル体および4−メチル体、並びに(B)エ
チルヘキサヒドロフタル酸無水物には、3−エチル体お
よび4−エチル体の2種の構造異性体が存在するが、本
発明に係るエポキシ樹脂硬化剤においては、各異性体を
単独で用いても両者の混合物として用いてもよい。
また、(D)メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン
酸無水物には、エンド体およびエキソ体の2種の立体異
性体が存在するが、本発明に係るエポキシ樹脂硬化剤に
おいては、エンド体またはエンド体とエキソ体の両者の
混合物のいずれを用いてもよい。
本発明においてエンド体/エキソ体の好ましい組成比
は重量比にて100/0〜30/70である。
本発明に係るエポキシ樹脂硬化剤の成分である(A)
メチルヘキサヒドロフタル酸無水物の製造原料として
は、ピペリレンおよび/またはイソプレンが用いられる
が、(B)エチルヘキサヒドロフタル酸無水物、(C)
ビシクロ〔2.2.2〕オクタン−2,3−ジカルボン酸無水物
および(D)メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸
無水物の製造原料としては、ナフサなどの炭化水素混合
物をスチームクラッキングして得られる炭素数6〜7の
留分であって、かつメチルシクロペンタジエンなどのジ
オレフィン成分を含む炭化水素留分を用いるのが好適で
ある。この炭化水素留分の組成は、通常、以下に示す組
成である。
メチルシクロペンタジエン 3.5〜5.5重量% 1,3−シクロヘキサジエン 0.5〜1.0重量% 1,3−ヘキサジエン 0.2〜1.0重量% 2−エチル−1,3−ブタジエン 0.3〜1.0重量% C6〜C7オレフィンまたはパラフィン 4.5〜8.5重量% ベンゼン 40〜60重量% トルエン 20〜40重量% そして、上記製造原料であるピペリレンおよび/また
はイソプレンと無水マレイン酸とのディールス・アルダ
ー反応を行うことにより容易にメチルテトラヒドロフタ
ル酸無水物を得ることができる。一方、上記のナフサな
どの炭化水素混合物をスチームクラッキングして得られ
る炭素数6〜7の留分であって、かつメチルシクロペン
タジエンなどのジオレフィン成分を含む炭化水素留分
は、精製を行うことなく、直接無水マレイン酸とのディ
ールス・アルダー反応を行う。すなわち、上記の組成の
炭化水素留分に含有されるジオレフィン成分の合計1モ
ルに対し無水マレイン酸を0.8〜1.2モル添加し20〜30℃
の温度にて0.5〜3時間、しかる後に昇温して75〜85℃
の温度にて1〜5時間ディールスアーアルダー反応を行
う。その後、ベンゼン、トルエンなどの未反応留分を蒸
留により留去後、必要に応じて、公知の触媒である第3
級アミンもしくはアルカリ金属酸化物などの依存下また
は非存在下に120〜200℃に加熱することによりメチルシ
クロペンタジエンの無水マレイン酸付加体であるエンド
メチルノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物の一部
を対応するエキソ体に立体異性下してもよい。しかる
後、得られた液状混合物を必要に応じて、減圧蒸留によ
り精製し上記で得られたメチルテトラヒドロフタル酸無
水物と、所望の重量比に混合後、公知の水素下手段、た
とえば、パラジウム触媒0.05〜1重量部と上記液状混合
物100重量部を水素圧3〜300kg/cm2、反応温度40〜200
℃において撹拌下に2〜15時間反応させることにより水
添し、本発明のエポキシ樹脂硬化剤を製造することがで
きる。
さらに本発明のエポキシ樹脂硬化剤は、個別に調節し
た。
(A) メチルヘキサヒドロフタル酸無水物 (B) エチルヘキサヒドロフタル酸無水物 (C) ビシクロ〔2.2.2〕オクタン−2,3−ジカルボン
酸無水物および (D) メチルノルボルナン−2,3−ジガルボン酸無水
物 を所望の重量比に混合して調製してもよい。
本発明のエポキシ樹脂硬化剤を使用して硬化しうるエ
ポキシ樹脂は、エポキシ基を分子内に2個以上有する化
合物であり、たとえばビスフェノールAなどの多価フェ
ノールまたは1,4−ブタンジオールなどの多価アコール
のポリグリシジルエーテル、フタル酸、ヘキサヒドロフ
タル酸などのポリグリシジルエステル、アミン、アミド
および複素環式窒素塩基を有する化合物のN−グリシジ
ル誘導体、脂環式エポキシ樹脂、フェノールノボラック
エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラックエポキシ樹
脂などである。
また硬化剤は、上記エポキシ樹脂のエポキシ基1当量
に対して、酸無水物基が0.3〜1.5モルになるように配合
するのが好ましく、特に0.7〜1.2モルになるように配合
するのが好ましい。
さらに、本発明のエポキシ樹脂硬化剤を配合したエポ
キシ樹脂組成物を、そのまま硬化することもできるが、
3級アミン、3級アミン塩、第4アンモニウム塩、イミ
ダゾール、金属塩などの硬化促進剤を併用すると、硬化
時間を短縮することができるので、硬化促進剤を併用す
ることが好ましい。
発明の硬化 本発明のエポキシ樹脂硬化剤は、室温にて液状かつ低
粘度であるため、エポキシ樹脂および硬化促進剤との配
合が容易であり、作業性を著しく改善するほか、フィラ
メント・ワインディング形成も容易となる。
また、本発明のエポキシ樹脂硬化剤は無色透明であ
り、それを用いて硬化したエポキシ樹脂は無色あるいは
淡黄色で透明性がよく、かつ耐熱性および耐湿性に優れ
るため、耐熱および耐湿用のオプトエレクトロニクス素
材として好適である。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこ
れら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中の%および部は、とくに断りのない限
り重量基準である。
実施例1 3−メチルテトラヒドロフタル酸無水物が49.2%であ
り、4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物が20.8%で
あり、3−エチルテトラヒドロフタル酸無水物が1.3%
であり、4−エチルテトラヒドロフタル酸無水物が1.8
%であり、ビシクロ〔2.2.2〕−5−オクテン−2,3−ジ
カルボン酸無水物が2.9%であり、エンド−1−メチル
−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物が5.1%
であり、エンド−5−メチル−5−ノルボルネン−2,3
−ジカルボン酸無水物が9.5%であり、エキソ−5−メ
チル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物が
9.4%の組成からなる混合物をパラジウム触媒の存在下
に、ヨウ素価が1以下になるまで水素化した。
水素化物は、核磁気共鳴スペクトル分析により、対応
する飽和ジカルボン酸無水物に水添されていることを確
認した。水素化後、濾過により触媒を除去して無色透明
の液体を得た。この液体の凝固点は−10℃以下であり、
25℃における粘度は130センチポイズであった。
エポキシ樹脂(油化シエル製、商品名エピコート82
8)100部と上記で得られたエポキシ樹脂硬化剤95部およ
び硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾー
ル(四国化成製)0.5部を室温にて配合した。この配合
物を100℃にて2時間、引き続いて15時間硬化反応を行
い、淡黄色透明の硬化物を得た。
該硬化物をJIS K 6911に準拠して、その熱変形温度を
測定したところ148℃であった。また、プレッシャーク
ッカーテストにて耐湿性を測定したところ重量増加率は
1.21%であった。
なお、プレッシャークッカーテストは70mmφ×2mm t
に成形した硬化物からなる円板状試験片を122℃、2.2気
圧、湿度100%の条件下に6時間暴露した後の重量増加
率を測定したものである。
実施例2〜4および比較例1〜4 エポキシ樹脂硬化剤の組成を第1表に志江すように代
えた以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂、エポ
キシ樹脂硬化剤および硬化剤促進剤の配合並びに硬化反
応を行った。
エポキシ樹脂硬化剤の凝固点および25℃における粘度
並びに得られた硬化物の熱変形温度およびプレッシャー
クッカーテストによる重量増加率を第1表に示す。
なお、硬化物の熱変形温度はJIS K 6911に準拠して測
定した値であり、プレッシャークッカーエストは実施例
1と同様にして行った結果である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 上野 廣 埼玉県入間郡大井町西鶴ケ岡1丁目3番 1号 東燃株式会社総合研究所内 (56)参考文献 特開 平3−277622(JP,A) 特開 平3−243617(JP,A) 特開 平3−252418(JP,A) 特開 昭55−98223(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08G 59/42

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)メチルヘキサヒドロフタル酸無水物
    が50〜95重量%、 (B)エチルヘキサヒドロフタル酸無水物が0.15〜9重
    量%、 (C)ビシクロ〔2.2.2〕オクタン−2,3−ジカルボン酸
    無水物が0.25〜7.5重量%および (D)メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物
    が3.5〜45重量%であり、 かつ(A)+(B)+(C)+(D)が100重量%とな
    るよう含有してなるエポキシ樹脂硬化剤。
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