JP2932458B2 - 設置場所へ既設のボイラー等の機器容器の補修方法 - Google Patents

設置場所へ既設のボイラー等の機器容器の補修方法

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JP2932458B2
JP2932458B2 JP6321246A JP32124694A JP2932458B2 JP 2932458 B2 JP2932458 B2 JP 2932458B2 JP 6321246 A JP6321246 A JP 6321246A JP 32124694 A JP32124694 A JP 32124694A JP 2932458 B2 JP2932458 B2 JP 2932458B2
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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16LPIPES; JOINTS OR FITTINGS FOR PIPES; SUPPORTS FOR PIPES, CABLES OR PROTECTIVE TUBING; MEANS FOR THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16L59/00Thermal insulation in general
    • F16L59/12Arrangements for supporting insulation from the wall or body insulated, e.g. by means of spacers between pipe and heat-insulating material; Arrangements specially adapted for supporting insulated bodies

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本願発明は、設置場所へ既設のボ
イラー等の機器容器の補修方法に関する。
【0002】
【従来の技術】石油精製・製鉄用高炉・発電用ボイラー
などの機器容器の材質は、ボイラー及び圧力容器用鋼板
又は耐熱鋼板であり、特に使用環境に対応する鋼種(マ
ンガンモリブデンやマンガン、モリブデン、ニッケル
鋼、或いはクロームモリブデン鋼やニッケルクロム鋼な
ど)が、このような機器容器の製作に採用されている。
これらの機器に用いられる容器(機器容器)は、製作時
による加工過程から鋼板の焼きならしや応力除去焼なま
し、熔接後熱処理に対応する熱処理、或いは固溶化熱処
理が行なわれ、それぞれの鋼種厚さ、化学成分、機械的
性質が決められ製作されている。
【0003】上記の機器容器は、高温又は高圧ガスなど
の環境から容器を形成する基材(機器容器を構成する材
料)を保護するため、設計段階から、容器の内側又は外
側(特に必要とするのは、機器容器の内壁)などが、断
熱耐火材(耐火レンガ・耐火キャスタブルなどの耐火物
ライニング等)や断熱保温材などにより、被覆されるこ
とが予定されたものである。これらの断熱耐火材が脱落
や剥離を生じないように、機器容器内壁には支持金具が
取り付けられている。この支持金具は、機器容器の製作
加工段階で、その形状や取付数が決められ、熔接工法に
て取付けられている。
【0004】上記機器容器は、その内側や外側などへの
支持金具やその他の接合物の熔接(基材への入熱影響)
が完全に完了した後、容器全体の応力除去焼なまし及び
応力除去の熱処理或いは固溶化熱処理が実施されてい
る。即ち、圧力容器用材質の鋼種は、機器製作加工の課
程で割れを生じる恐れがあるため、上述のような焼なら
し及び応力除去の熱処理が一般に施されているのであ
る。特に、大型の機器容器について、建設後数年経過後
は、上記のような補修時等の熔接などによる高い入熱が
生じると、使用環境即ち運転環境や機器容器の荷重、板
厚などにより、容器の変形や組織の変質を招来し、倒壊
といった危惧が生じるものであった。このため、製作後
の容器については、保守補修時に熔接などの高い入熱を
行った場合、再熱処理又は局部熱処理(焼きなまし応力
除去)が必要となる。通常、機器の鋼種材質が焼もどし
及び応力除去熱処理又は固溶化熱処理加工を必要とする
構造物容器類には、熔接、溶断などの高い入熱影響を与
えると必ず、後処理(保守補修、改造などの加工から生
ずる応力除去のための熱処理)が必要となるのである。
【0005】従って、若しこれらの熱処理が完了した後
に、機器容器へ局部的な熔接又は溶断などによる高い入
熱影響が生じると機器容器の組成変質や残留応力などを
付与することになり、基材の鋼種性質による局部割れが
生じることになる。このために、製作時において機器容
器の熱処理完了した後、機器容器の使用により補修の必
要が生じて、機器容器に対して熔接など高い入熱影響の
生じる作業を施した場合に、上記後処理を避けることが
できなかったのである。ところで、上記後処理を施そう
とすれば、そのような熱処理設備が必要となり、更にこ
の際に、大型の機器容器を、その設置現場から熱処理の
設備が備えられた場所へ、運ぶ必要が生じるのであっ
た。このような作業は、非常に手間がかかるのである。
そこで、このような手間を嫌って、機器容器を構成する
材料へ熱影響を与えずに補修を行うのに、機器容器の現
地建設後や機器使用運転後に発生する局部損傷には、接
合用のセメント剤を用いて接合をしなおすという方法が
採られることがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の接合用
に強化されたセメント剤を用いても、一時凌ぎのもので
あり、補修後長期継続的な使用に耐えるものではなく、
この場合、耐火物壁面の損傷部が拡大すると、決定的な
ダメージを受けて、機器容器の廃却を迫られたのであっ
た。反面、補修に際しては、前述の熱処理設備の必要及
びこの熱処理設備のある場所への搬入等の手間を負う熔
接等の補修方法を採らざるを得ないのが現状であった。
又熱処理設備の問題もさることながら、仮にこのような
設備を機器容器の設置場所に用意したとしても、現地で
の既存の機器容器の熱処理は、大型な容器程危険を伴い
不可能であった。結局再生修復には、既述の通り、機器
の製作工場に移動することが要され、更に、上記セメン
ト剤を用いる方法以外の補修方法では、加工補修後、熱
処理修理が要されることになるのであり、このような後
から加えられる熱の影響を懸念するのであれば、溶体化
処理を行う必要は避けられないのであった。以上のこと
から、安全面を確保する上で、使用後の機器容器の再生
利用や補修が困難とされ、熱処理自体や熱処理設備のあ
る場所への移送の手間、その間の製造装置の運転休止期
間の必要性、影響や確実な安全性・恒久性の確保を考慮
すれば、機器容器の新規製作となってしまい、メンテナ
スによって省資源及び経済的に長寿命化を図る際の障害
となっていたのであった。本願発明は、上記課題の解決
を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本願第1の発明に係る設
置場所へ既設のボイラー等の機器容器の補修方法は、マ
ンガン鋼、モリブデン鋼、ニッケル鋼、マンガンモリブ
デン鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロム鋼、クロ
ムモリブデンニッケル鋼又はマンガンモリブデンニッケ
ル鋼の何れかの炭素鋼材にて形成され、且つ、炉内壁へ
上記と同じ炭素鋼材或いはステンレス製の支持金具2に
より保持される耐熱材等の炉壁耐火物を備えた、設置場
所へ既設のボイラー等の機器容器1について、補修時、
上記支持金具2を接合するに際し、次の手段を採る。即
ち、機器容器1と支持金具2の接合部位へ、アーク溶線
式又ガス溶線式の溶射機を用い摂氏約200度以下で溶
射し、少なくともニッケルとアルミニウムを成分に含む
合金層の皮膜3を形成することにより、両者1,2の固
着を行う。
【0008】本願第2の発明に係る方法では、上記第1
の発明に係る設置場所へ既設のボイラー等の機器容器の
補修方法にあって、上記被膜3が、下地層30と、表面
仕上層31とを有するように形成されたものであり、上
記下地層30が、ニッケル−アルミニウム合金、ニッケ
ル−アルミニウム−クロム合金、ニッケル−アルミニウ
ム−鉄の合金の、何れかにて構成されるものであり、上
記仕上層31は、鉄−クロム合金又は鉄−クロム−アル
ミニウム合金にて構成されるものである。
【0009】本願第3の発明に係る方法では、上記第1
又は第2の発明に係る設置場所へ既設のボイラー等の機
器容器の補修方法にあって、上記支持金具2の、機器容
器1との接合部位が、鍔状部21である。
【0010】
【作用】本願第1の発明に係る補修方法は、機器容器1
と支持金具2の接合部位へ、摂氏約200度以下の溶射
により接合材料の皮膜3を形成して、両者1,2の固着
を行うものであるため、機器容器1に対して、大きな熱
を与えることなく、支持金具2を固定することが可能で
ある。特に、焼なまし、焼戻し等の接合後の熱処理を必
要としないものであるため、機器容器1の簡便な補修・
延命に功を奏する。即ち、摂氏約200度以下の溶射と
いう方法を採用することにより、従来果し得なかった機
器容器1の材料、具体的には、マンガン鋼、モリブデン
鋼、ニッケル鋼、マンガンモリブデン鋼、クロムモリブ
デン鋼、ニッケルクロム鋼、クロムモリブデンニッケル
鋼又はマンガンモリブデンニッケル鋼の何れかの炭素鋼
材に対する入熱影響の低減を実現し、変質や変態を生じ
させずに機器容器1と支持金具2とを、必要な強度を以
て接合することを可能にした。又溶射を利用することに
より従来の支持金具よりも接合部分の耐食、耐酸化性を
強化することが極めて容易に行え、このことと共に、溶
射接合後の機器容器への焼なまし応力除去熱処理も不要
とした。更に、支持金具2の接合面の耐酸化性の向上に
より、耐食断熱材のライニングの密着性を、向上させ
た。従って、機器容器1に対する熱影響の危惧なく、機
器容器1の設置現場において、支持金具2の固定が行
え、補修の簡便と機器容器1の延命の両立が可能となっ
た。又、溶射は、アーク溶線式又ガス溶線式の溶射機と
いう、可搬性を持つことが可能な装置を用い、機器容器
1の設置現場において、その作業を完了するものである
ため、極めて迅速且つ省コストの補修が可能である。
【0011】本願第2の発明に係る方法は、上記第1の
発明に係る方法の作用に加えて、特に、上記溶射にて皮
膜3を形成するに際し、マンガン鋼、モリブデン鋼、ニ
ッケル鋼、マンガンモリブデン鋼、クロムモリブデン
鋼、ニッケルクロム鋼、クロムモリブデンニッケル鋼又
はマンガンモリブデンニッケル鋼の何れかの炭素鋼材に
て形成された機器容器1に対し、ニッケル−アルミニウ
ム合金、ニッケル−アルミニウム−クロム合金、ニッケ
ル−アルミニウム−鉄の合金の、何れかにて構成された
下地層30を、更に鉄−クロム合金又は鉄−クロム−ア
ルミニウム合金にて構成された表面仕上層31を、形成
するものであるため、支持金具2を最も強固に機器容器
1へ固定することが可能である。
【0012】本願第3の発明に係る方法は、上記第1又
は第2の発明に係る方法の作用に加えて、支持金具2
は、機器容器1に対する当接面積を比較的大きく確保で
き、確実な固着と、安定性を得ることが可能となった。
更に、鍔状部21の形成により、溶射皮膜によって被覆
される面積(支持金具2が溶射皮膜と接触する面積)も
大きくなり、固着強度の向上にも多大な功を奏するもの
である。
【0013】
【実施例】以下、図面を基に本願発明の実施例を具体的
に説明する。図1へ、本願発明の一実施例を掲げる。
【0014】本願発明は、石油・製鉄・発電プラント類
のボイラー又は圧力容器等の機器容器へ、適宜数のスタ
ッドアンカー等の支持金具2…2を接合する方法を提供
するものである。図1の1は、機器容器を示している。
Aは機器容器1の内部、Bは機器容器1の外部を示して
いる。又図1の2は、スタッドアンカー等の支持金具を
示している。このようなスタッドアンカー等の支持金具
2…2は、上記のようなボイラー又は圧力容器等の機器
容器1の内周面へ耐熱材又は耐食断熱材等の炉壁耐火物
10を、確実に保持させるために設けられる。
【0015】この図1へ示すように、主に、適宜数の支
持金具2…2は(図中1つの支持金具2のみを代表して
表しているが、通常複数設けられる。)、機器容器1に
ついて、最も高温となり炉壁耐火物10を最も必要とす
る、内壁側に設けられるものである。機器容器1の外部
表面に炉壁耐火物が必要なとき、支持金具2…2は、機
器容器1の外部B側に設けるものであっても実施可能で
あるが、通常は、支持金具2…2は、炉内部A側のみに
形成される。
【0016】支持金具2…2を機器容器1へ固定するの
に、溶射を行い、両者の接合部位を被覆する。図1の3
は、この際に形成される皮膜を示している。溶射は、周
知のアーク溶線式又はガス溶線式溶射機を用いて行えば
よい。この溶射温度は、摂氏約200度以下である(以
下このような温度での溶射を低温溶射という)。即ち、
支持金具2が使用後耐火炉壁と共に損傷を受けた場合や
支持金具の増設、或いは支持金具の改造変更の場合等、
この摂氏約200度以下の温度で、溶射を行うのであ
る。
【0017】このような溶射温度によって、溶射を行う
ことにより、通常上述のような機器容器1に入熱影響を
与えることがない。ここで溶射(溶射法)とは、一般的
に基材の防錆、防食、高温酸化防止又は基材の耐磨耗、
減肉修復、肉盛造形金型などに利用される技術である。
溶射法は、このような用途に使用するものという認識か
ら、上記支持金具の接合方法として利用するということ
は、従来考えられていなかった。ここでは、基材である
機器容器1に対する入熱影響の少ないことに着目して、
低温溶射を、上記支持金具2の固定に利用する。
【0018】即ち、従来溶射皮膜は、基材の表面を、腐
食や磨耗減肉から保護して守る基材表面の改質技術であ
り、材料と材料の接合に、利用する技術として認識され
ることはなかったのであり(従来接合強度が得られない
ものと考えられていた。)、ここでは、出願人が、実験
により低温溶射によって充分な接合強度を得られること
を発見し、このような事実に基づき、この溶射技術を上
記接合に利用するのである。
【0019】換言すると、低温溶射法は、基材側(機器
容器1側)の組成と強度などを変質することなく、支持
金具接触面の接合が可能となり、高温、高圧環境の耐熱
炉壁強度に耐え、基材の後処理(応力除去熱処理)を必
要としないものである。本来、溶射を行うことによっ
て、被覆される材料の表面が、腐食や磨耗減肉を防ぐの
であるが、出願人は、このような材料表面の改質技術に
着目して、これを、一定の条件の下、固着方法として利
用することとし、上記の通り、低温溶射によって、大き
な入熱影響を機器容器1へ与えることなく、支持金具2
の強固な固定を行うことを可能とした。
【0020】支持金具2は、図2へ示すように、略Y字
形のものが適当である。但し炉壁耐火物10を機器容器
1へ保持することが可能であれば、このような形状に限
らず、他の形状を有するものであっても実施可能であ
る。例えば、支持金具2は、図3へ示すように略T字形
に形成されるものであっても実施可能であり、図示はし
ないが、逆L字形に形成されるものであっても実施可能
である(図3は、図1と同様機器容器1へ設置された状
態を示している)。又炉壁耐火材の保持が、可能であれ
ば(先が上記略Y字等に変形したものでなく)、先端か
ら基端まで同一形状の、単に棒状のものであってもよ
い。
【0021】上述の耐火材・耐食断熱材等の炉壁耐火材
10としては、耐火レンガや耐火物ライニング等が一般
的であり、その厚さは、使用する環境によって異なる。
従って、支持金具2の長さや大きさも、このような炉壁
耐火材10の厚さや重さ等によって、適宜選択する。図
2へ示すように、支持金具2の基部には、鍔状部21を
形成して、この鍔状部21を機器容器1への当接部位と
すれば、固着性や支持強度を向上する上で効果的であ
る。この鍔状部21の外径も、必要に応じて適宜変更可
能である。尚、図1及び図3の11は、鋼線網を示して
いる。このような網状に交差するスチール線を炉壁耐火
材10内部へ設けておくことによって、容器収容物等に
よる高熱による損傷が生じても、部分的な脱落が生じに
くくなり、支持金具2と共に、炉壁耐火物10の保持に
供するものである。この鋼線網11の網目形状は、五目
状に鋼線が十字に交差する等に形成するのが適当であ
る。又図1に示すように、炉壁耐火物10の内部に位置
するようにしてもよく、図3へ示すように、炉壁耐火物
10の表面付近に配設するようにしてもよい。
【0022】以下、更に具体的な実施例について説明す
る。図4に示すように、アーク溶線式又はガス溶線式の
溶射機100を用いて、支持金具2の基部(鍔状部21
が形成されている場合は、この鍔状部21周縁に、溶射
を行う。この図4示すように、溶射距離mは、約100
〜250mmが適切である。又溶射パターンnについて
は、約30〜50mmが適当である。補修に際して、支
持金具2を固定する部位は、使用によって脱落した以前
の固定金具が形成された部位であってもよいが、この他
の部位であってもよい。特に、炉壁耐火物10の損傷要
因部に、本願発明の方法によって新たに支持金具2を固
定するのが効果的である。ここでは、支持金具2の鍔状
部21は、座金を固着することによって形成されている
(図5)。図5の22は、鍔状部21と支持金具2との
熔接部を示している。詳述すると、図6へ示すように、
支持金具2の座金が固定される部位全周に、TiG熔接
することによって、座金を固定し鍔状部21を形成する
のが好適である。機器容器1の上記溶射接合位置を磁気
マグネット又は接着テープ、接着剤等で固定し、その基
材面とスタッド座金が固定された座金の外周を中心にグ
リットブラストを施し、これ等の基材面(機器容器1の
支持金具2固定予定位置)と鍔状部21をなす座金表面
を清浄化と粗面化させる。尚、スタッドアンカー等の支
持金具2の上記座金(鍔状部21)表面の清浄と粗面化
の処理は、必ずしも基材面(機器容器1)と同時に施す
必要はない。しかし、少なくとも、溶射接合を行う2時
間以内にグリットブラスト処理を行うことが望ましい。
これ等のグリットブラスト処理された基材面(機器容器
1)とスタッドアンカー等の支持金具2の鍔状部21
(座金)外周部を中心として、既述の通り、アーク溶線
式又はガス溶線式溶射機を用いて、溶射を施し、固定強
度の確保に必要とする溶射皮膜厚さを、基材入熱も考慮
して、形成する。支持金具2が設けられる機器容器1
は、マンガン鋼、モリブデン鋼、ニッケル鋼、マンガン
モリブデン鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロム
鋼、クロムモリブデンニッケル鋼、又は、マンガンモリ
ブデンニッケル鋼の、何れかの炭素鋼材によって形成さ
れたものである。このような材質の機器容器1に対し
て、支持金具2は、上記機器容器1と同じ材料をはじ
め、容器材質との線膨張係数の差が大きいステンレス製
のものも適用できる。そして、上記溶射にて形成される
接合材料となる皮膜は、少なくともニッケルとアルミニ
ウムを成分に含む合金層を持つものが適当である。これ
らの成分の合金層は、適切な、密着性、耐食性、耐熱
性、応力腐食防止能力及び割れ防止能力を有する。
【0023】特に、図7へ示すように、上記成分の上記
低温溶射により接合部位に形成される皮膜3は、下地層
30と、表面仕上層31とを有するものとするのが最適
である。図7の1aaは、基材(機器容器1)表面1a
の、座金熔接前にグリットブラストが施された部位を示
している。又、21aは、鍔状部21を形成する上記座
金の上面のグリッドブラストが施された部位を示してい
る(この図7のものは、座金上面全体)。更に、この図
7へ示すものは、座金の基材(機器容器1)への対応面
(下面)には、基材表面との面を合わせるために、台座
24が固着されている。しかし、不要であれば、このよ
うな台座は設けずに実施することも可能である。この場
合、上記下地層30は、ニッケル−アルミニウム合金又
は、ニッケル−アルミニウム−クロム合金又は、ニッケ
ル−アルミニウム−鉄の合金といった、機器容器1に、
必要な固定強度を付与するものにて構成し、上記仕上層
31には、鉄−クロム−アルミニウム合金などの必要な
固定強度が得られる材料にて構成する。詳述すると、そ
の溶射材料として、基材に密着強度を与えるNi/Al (90
/5〜80/20)ニッケルアルミ又はNi/Cr/Al及びNi/Al/Feを
下地溶射(下地層30の形成)に用い、仕上溶射(仕上
層31の形成)に必要な固定強度が得られる皮膜粒子間
強度を有する材料、具体的にはFe/Cr/Al(85/13/2)又は
Fe/Cr (87/13 〜85/15)などを用いる。又、この溶射材
料は、使用環境によって耐熱、耐酸化、耐食性を有する
皮膜を適宜に選択して、単体金属の溶射材を積層又は複
合溶射材を用いて支持金具の接合溶射皮膜とする。
【0024】又単層の場合を前提として適切とした既述
の皮膜3の厚みは、上記のように皮膜3が下地層30や
仕上層31といった複数の層にて形成される場合、仕上
溶射によって形成された仕上層31と、下地溶射によっ
て形成された下地層30との合計の厚みとする。更に、
皮膜3は、上述の通り、複数の層によって形成されるも
のである場合、上記の下地層30と仕上層31といった
二層に限定するものではなく、図8へ示すように、これ
ら層間に更に適宜数の中間層32を形成するものであっ
ても実施可能である。
【0025】前述の鍔状部21の形成を簡便に行う方法
として座金を用いる方法について、詳述すると、支持金
具2を形成する先端が所望の形状に形成された棒状体の
基端部へ、座金を、熔接によって固着する。即ちこの座
金は、その内径が、棒状体の外径と一致するものとし、
棒状体の基端部外周に嵌合した後、熔接等の適宜手段に
よって固定するのである。勿論支持金具2の機器容器1
表面1aと接触する部分即ち支持金具2の基端部に、鍔
状部21を形成せずに実施することも可能である。この
場合、接合に十分な厚みを有するように、皮膜3を溶射
にて形成する必要がある。
【0026】又、支持金具2の基端部に形成される上述
の鍔状部21は、(平面視)円形の他、楕円形、長円
形、或いは四角形その他の多角形状であっても実施可能
である。更に鍔状部21は、その厚み約1〜3mm、直
径或いは最大横幅が約10〜50mm程度のものが適当
である。このような寸法の座金又は板状体を、既述の通
り熔接によって、予め固定しておけばよい。又、この場
合熔接という固定方法に限定するものではなく、例え
ば、上記図8へ示すように、支持金具2と座金等とに夫
々雌雄の螺刻部23a,23bを設けて両者を螺合する
ようにしても実施することが可能である。
【0027】次に上記支持金具2を機器容器1へ固定す
る適切な手順について説明する。先ず、支持金具2の鍔
状部21は、機器容器1表面1aと接触する面に、前述
の通り、市販の接着剤、両面接着テープ又は磁石が塗ら
れ或いは配設され、機器容器1の所望の位置へ、仮接合
される。
【0028】上記鍔状部21が接合されることによっ
て、機器容器1表面1aに生じる段差部に対し、この段
差部付近を段差部を中心として、グリットブラストを行
う。機器容器1表面1aの支持金具2が配設された付近
をこのように、グリットブラストにて清浄した後、仮接
合によって機器容器1表面1aに固定された支持金具2
の鍔状部21の周縁部を(鍔として横手に出張る部分
を)、溶射によって形成された皮膜によって被覆する。
詳述すると、上記のように仮止め(仮接合)された鍔状
部21と機器容器1表面とがなす段差部を中心として、
グリットブラストを施し、この表面を清浄化させた後、
基材に熱影響のない溶射皮膜を約1mmから5mm程度
の、且つ耐火材と支持金具の使用強度に耐える厚さに形
成する。皮膜3の厚さは、このような数値に限定するも
のではなく、適宜変更可能である。最も望ましくは、溶
射皮膜の厚さは、支持金具2に外力を加えて約90度の
角度に曲げても、剥離が生じない固着強度を与えること
が可能な程度とする。通常皮膜3の厚さを約1mm〜1
5mmとすることで、このような強度が得られる。特に
7mm以上の厚みを有するように形成しておくのが、保
持能力の面で最適である。勿論、溶射皮膜は、このよう
な厚みより幾分薄いものであっても実施可能であるが、
溶射材料に、アルミニウムを含む合金の場合、接合強度
の面から、このような値を採るのが適当である。
【0029】他方において、通常、機器容器1には、そ
の材質にモリブデンやクロムモリブデンを含む合金が用
いられたものが採用され、支持金具2について従来のス
テンレス鋼によって形成されたものが採用され、両者の
接合には、溶射皮膜として、アルミニウムの合金層が形
成されるものであることから、上記以上の厚みを有する
ことが、実用面から、特に重要である。
【0030】溶射皮膜3は、このように鍔状部21を覆
う部位と、機器容器1表面1aと接触する部位とを備え
ることによって、両者の接合をなすものであり、この状
態において、鍔状部21の存在によって生じる機器容器
1表面1aと鍔状部21表面との段差は、全く皮膜に覆
われるものである。
【0031】以下、本願発明の固着性能の試験結果につ
いて説明する。先ず試験方法を説明する。
【0032】図9へ示す通り、機器容器1に代え同様の
鋼種にて形成された板状の基材1Xへの、入熱影響と、
炉壁に耐火物に用いられる支持金具2の溶射皮膜3の接
合強度から、直径が約6mmの棒状の(鍔状部21を持
たない)支持金具2を、基材1Xに直接接触させて、先
ずグリットブラストを行い、この後種々の下地溶射を行
い、基材1X側の温度測定器を用いて(図示しない。)
入熱影響を測定した。この際、各試験片に厚さ1mmか
ら15mmの皮膜を接触部を中心に形成し、各厚さ位置
での入熱影響を測定した。
【0033】上記基材1Xには、Mn-1/2Mo鋼を用いた。
支持金具2は、SUS304のスタッドアンカーを使用
した。基材1Xの表面1Xaは、事前にグリットブラス
トが施され表面の清浄素地調整がなされた状態で、溶射
皮膜3の形成を行った。図12へ示すように、異なる厚
み位置(高さh1〜h6)に皮膜3を形成して、夫々に
ついて、曲げ強度の測定を行った。これは、図13へ示
すように、スパナFで支持金具2の上方を挟み、力を加
えて、90度に曲げるものである。基材側は、位置が変
わらないように、万力で固定されている(図示しな
い)。
【0034】このように各試験基材1Xと支持金具2と
の接合部分に、溶射形成した後、皮膜3によって接合さ
れた支持金具2の丸棒を上記90度の角度に曲げ、皮膜
3の接合強度を評価した。その結果、直接基板に支持金
具の棒状の曲げ強度に耐える溶射皮膜の厚さは、7mm
以上の皮膜が必要であった。しかし、溶射皮膜の厚さを
増すと基材への入熱影響(摂氏200度<摂氏350
度)があり、また皮膜にも熱影響を生じ、基材と皮膜の
密着性が劣るばかりでなく、溶射加工時間の延長(皮膜
入熱を少なくするため皮膜の除冷時間)も必要である。
そこで、溶射接合技術の安全性及び溶射加工の経済性を
踏まえて皮膜厚さを少なくし、基材への溶射施工時の入
熱作用を低くし、支持金具の曲げ強度に耐える皮膜厚さ
を付与し、種々の試験を行った。
【0035】試験に際して、支持金具の丸棒接触面に直
径10mmから50mm又は角状の座金を、支持金具作
成時に熔接構造又はネジ切り方法で取り付け、支持棒の
接触面を大きくする台座を設けた。そして、基板と支持
金具台座面を接触させ、その支持具台座と基板の接合を
中心に第1工程のグリットブラストと第2工程の溶射を
皮膜厚さ1mmから5mmの各段階に皮膜を形成させ
て、基材と支持金具台座を設けた皮膜の接合強度を評価
するため、既述の通り、支持棒を90度の角度に曲げて
試験を行った。その結果、直径6mm棒の曲げ強度に対
して支持棒の接触座金径は、下記の表1へ示す通り、座
金径の大きくなる程皮膜の接合と皮膜の強度は上がり、
溶射皮膜の厚さは薄くて済むことが評価できた。勿論、
鍔状部21を形成することによって、上記のような最も
好ましい結果を得ることができるのであるが、このよう
な鍔状部21の形成は必ずしも前提とするものではな
い。
【0036】
【表1】
【0037】この表1の試験において、溶射皮膜による
熔接幅は、図9に示す幅Wとし、溶射皮膜の皮膜厚さ
は、同じく図9に示す、皮膜厚さの基準線H1と高さH
2の差をとった。基準線H1は、鍔状部21をなす座金
の上面21aの高さを基準としている。試験に用いた基
材1X表面1Xa及び鍔状部21をなす座金の上面21
aは、粗面ブラストが施されている。鍔状部21は、溶
射前事前に、支持金具2の基部側端部へ、座金を熔接し
て、形成したものである。上記座金として、市販のもの
を採用したものは、図10へ示すように、支持金具2へ
固定する場合、熔接部22を平面視環状に形成して完全
に周囲を熔接しておいた(Rは、座金径を示してい
る)。又、支持金具2の外径に合わせて専用のものを採
用したものは、図11へ示すように、間欠的に熔接部2
2を形成するものとした。図10及び図11において、
図面の煩雑化を避けるため、溶射皮膜3は一部のみ描
き、他は省略してある。支持棒の接触座金径を50mm
より大きくすると皮膜の加工面積範囲が大きくなり、曲
げ強度に対し必要以上の溶射材料と加工時間がかかり、
経済性に欠けることが分かった。従って、支持金具の直
径6mmの棒に対しての座金径は、溶射的皮膜の厚さ
(基材への入熱影響摂氏200度以下)に鑑み、直径3
0mmの座金に対し、座金表面と基材側との溶射接合厚
さは2mmで、充分直径6mmの支持金具の曲げ強度に
耐えることが確認された。又、これらの支持金具と基板
に接合した溶射皮膜は、実際の使用機器の温度環境に対
し、皮膜の亀裂や膨れ、剥離などを生じてはならないこ
とから、これらの実験、試験片を用いてマッフル炉の炉
内部摂氏400度加熱中に試験片を摂氏400度に10
分間保持し、直ちに常温水の水中に浸漬投入し、皮膜の
熱衝撃試験を10回繰り返して行った。これらの試験に
皮膜が異常なく接合していることから、更にマッフル炉
の温度条件を摂氏700度及び摂氏1000度に上昇し
て急冷する操作を各々10回繰り返して、基材及び支持
金具の接合溶射皮膜に異常がないことを確認した。又、
基材1Xと支持金具直径6mmの丸棒と座金径30mm
に接合し、皮膜3で評価した溶射皮膜3の破断は、すべ
て基材1Xと支持金具2の座金表面に被覆した皮膜3の
層間で破断し、基材又は支持金具座金などの基材の境界
面から皮膜が剥離したものはなかった。これら皮膜の破
断は、溶射皮膜の厚さにより引張り強度が増している。
【0038】上記表1に示すものは、径が6mmのスタ
ッドアンカーに対し、鍔状部21となる座金の径を変え
て、固着に必要な皮膜の最小厚さを求めた結果である。
NiCr/Al(94/6) 及びNiCr(80/20)NiCr(54/56)溶射材は、
皮膜厚さ約3〜4mmで引張り破断が約260kg〜3
50kgとなり、溶射材料組成による皮膜の結合力が弱
い。皮膜の破断は、すべて皮膜層間である。
【0039】溶射法の適用性事前試験は、実際の現場で
溶射施工可能な溶射方法(装置機種)を選択した。その
選択を下記表3へ示した。溶射材料組成は本開発目的に
何種類かの有効な材料より選んで事前溶射法の有効性感
触実験とした。又表2へ、スタッドアンカーの座金径と
皮膜の付着率の影響を示した。この表2は、図14に示
すアムスラー引張り試験機200にて、行った試験の結
果である。この試験は、機器容器と同様の素材・同様の
処理によって形成された基材1Xへ、機器容器へ固定す
るのと同様本願方法により、試験を行う種々の条件に
て、支持金具2を立設・固定し、アムスラー引張り試験
機200によって引張試験を行うものである。図示の通
り、上述のように基材1Xへ固定された支持金具2は、
その上端が、試験機に対して位置を代えないように、適
宜固定手段によって固定されている(少なくとも図14
の上下方向に対して位置を変えない)。ここでは、ケミ
カル分熔接によって、他へ固定されている。他方、基材
1Xは、治具202によって、保持される。この治具2
02は、下方は、アクチュエータ等の先端204に連結
されており、下方に加工可能となっている。203は、
この連結に際して、水平方向への変形の発生を考慮して
設けられたユニバーサルジョイントを示している。この
ような装置を用いて、支持金具2の上端を固定したま
ま、下方の基材1Xを下方に引張ることによって、試験
を行うものである。又、表3には、参考として、溶射法
の溶射機種選択の目安を示した。
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】表2へ示す通り、溶射皮膜の厚さが大きく
なるにつれて、その固着強度が増している。又、鍔状部
21をなす座金径が大きくなるにつれて同様に、その固
着強度が増しているのが判る。このような結果から、座
金径を大きなものとし、これを被覆する溶射皮膜を厚く
することによって、極めて大きな固着強度を確保するこ
とが可能となるのである。次に、実際の機器容器1へ支
持金具2固定を固定して、その測定を行った。この結果
について以下詳述する。試験の対象とした第1の機器容
器は高圧ガス取締法による圧力66.8kg/cmGr、温度
摂氏260度〜540度で用いられる石油精製用反応器
である。その形状は、直径約3000mm、高さ約22
800mm、上下鏡板を入れた高さ(全長)約2700
0mm、厚さ約90mmとした。又、内壁に設けられた
保温断熱ライニングは、厚さ約100mmとした。試験
の対象とした第2の機器容器は、使用圧力、使用温度条
件が、上記第1のmm機器容器とほぼ同じものである。
その形状は直径約3000mm×胴長8000全長12
000mm、基材厚さ64mmからなる圧力容器で、内
面には保温断熱用のライニングが100mm厚さで形成
されている。これらの容器内面断熱用ライニング部に
は、断熱材のライニングが使用環境から剥離、脱落しな
いように1平方メートル当たり14本から26本のスタ
ッドアンカーが新設の建設時に反応器の本体に熔接され
ている。支持金具となるスタッドアンカーは、炉の胴長
部(胴部内周面)に設けられるものとして、Y型アンカ
ーが採用され、炉の天井上鏡板部(上部内面)に設けら
れるものとして、L型アンカーが採用されている。夫々
反応器内部の構造条件と使用環境によりスタッドアンカ
ーの形状と平方米当たりの設置数量は異なっている。
【0043】上記第1及び第2の機器容器の材質として
は、Mn(1/2)Mo 鋼や1Cr(1/2)Mo鋼などが用いられ、機器
製作加工後、熔接加工工程で生じる応力除去焼なまし熱
処理が実施されている。しかるのち、機器容器は現地に
建設され、基材に入熱影響のない機器の配管や部材がボ
ルト付にて接続されている。又保温、断熱ライニングな
ども現地にて実施されることが多い。その他、機器形
状、使用環境が異なる高圧ガス容器又は第1種圧力容器
類には、対応環境により保温、断熱用又は耐火、耐食、
ライニングが施されている。しかしながら、これら現地
建設後、断熱用ライニング脱落防止用の支持金具を設置
したり、又は使用運転後の支持金具損傷時に保守補正を
する場合、現地機器容器の基材に熔接などの高い入熱を
与えること(焼もどし熱処理の必要性)ができなかっ
た。そのため、第1の機器容器内にマンガンモリブデン
鋼からなる機器材質と同じ鋼板を用いて、保温断熱用ラ
イニング(高さ90mm、幅400mm、長さ800m
m) の支持金具材質RYスタッドアンカー(SUS30
4材直径6mm、長さ150mm)に直径30mmの座
金を設けた支持金具を基板状に250mm間隔で、支持
金具7個を設けた溶射接合試験片を作成した。又支持金
具の溶射接合した面の試験片に実機器と同じ断熱材(キ
ャスタブル)をライニング(被覆)して、実機器使用中
の運転機器内に挿入設置し、溶射接合の性能を追跡し
た。設置場所は、機器運転に最も支障のない場所を選択
した。この溶射接合の断熱ライニング試験片は、1年
後、断熱ライニング表面から目視とライニング表面から
ハンマーテストによる音調(ライニング浮き上り調査)
より基材とライニングは十分接合し、断熱ライニング表
面の亀裂、膨れなどの異常はなかった。又この試験片
は、2年の継続追跡から異常は観察されなかった。
【0044】一方、実機器には溶射接合の支持具が、2
年間の試験片追跡と事前評価試験の評価から実機器の局
部断熱損傷と支持金具の損傷部(損傷ライニング面積5
平方メートル)に、本願発明の支持金具を実際の機器現
場で接合し、断熱材(キャスタブル)ライニングが実施
された。実機器運転使用2年経過後に開放され、断熱ラ
イニング表面からの目視及び表面からのハンマーテスト
を実施したが、ライニングの亀裂、膨れなどの異常もな
く、良好である。又実機器内追跡4年経過後の断熱ライ
ニング試験片も異常なく良好である。実機器断熱ライニ
ング支持金具溶射接合による実施経過年数は、2年と短
いが、現在計測途上にあり、今後更に経過年数の延長が
見込めるものである。以上の試験結果の通り、基材(機
器容器1)にアンカースタッド(支持金具2)の部材を
溶射皮膜の接合により、基材である危機容器への入熱影
響による熱処理不要の耐火物ライニングに対応する支持
金具の接合を十分満足し得ることができた。又、使用環
境による耐熱、耐酸化性、耐食性(防食)にも溶射皮膜
3は基材(機器容器1)及びアンカースタッド材等の支
持金具よりも優れ、既存機器修復を可能にするとともに
機器寿命の恒久化ができ、新規更新製作への省資源と経
済的損失を救う甚大な道を開くことができた。
【0045】既存反応器は運転使用後、数十年の経過か
ら既存ライニング(炉壁耐火材10)は損傷し、定期修
理毎に保守補修が繰り返されている。しかし、使用年数
と共に塔本体に熔接されたスタッドアンカー等の支持金
具2も損傷し、ライニング施工面積当りのスタッドアン
カーも減少する影響から、耐火材のライニングを補修し
ても、年々耐用年数が減少してゆき、既存反応器の存続
も懸念されてきた。それがため、スタッドアンカー等の
支持金具2を塔本体に増設を目的として熔接を行うと、
機器容器1をなす基材(Mn-1/2Mo鋼)側の入熱が高くな
り、基材側に割れ現象が伴う。又、既存反応器(直径約
2000〜約8000mm、高さ約30000〜500
00mm)の大構造物を局部的に焼ならしや応力除去熱
処理を行うことは、塔の荷重影響から倒壊危険を招くた
めに、入熱の高い熔接方法は使用できない。それ故に既
存塔を廃棄することは、新規製作を踏まえ経済的な損失
は大きな影響がある。このようなことから生じた、既存
塔に安全で再生修復運転に支障のない技術の開発の要求
を、本願発明に係る方法は、上記の通り解決したのであ
る。
【0046】尚、皮膜3に耐食性等(結露又は露点によ
る腐食性等を含む。)を要求する場合は、溶射による皮
膜3形成の完了後(溶射皮膜の多孔質気孔)に使用環境
に対応できる封孔剤を適宜に選択して皮膜3の封孔処理
を行うことができる。又、支持金具となるスタッドアン
カー及びその鍔上部21をなす座金の材質が耐食性又は
耐熱酸化の影響を受ける場合は、これら溶射接合時にグ
リットブラスト及び溶射施工範囲を拡大し、これ等材質
の表面防食として皮膜厚さ200μm〜300μmに形
成し、封孔処理を行っても効果的である。
【0047】
【発明の効果】本願第1の発明の実施によって、一般的
な材質によって形成された既設の機器容器に対して、一
般的な機器容器と同一材料又はステンレス製の支持金具
を接合するのに、最も適した強固な固定が行える合金素
材によって、これら接合部位に皮膜層を形成するもので
あるため、確実な支持金具の固定が可能となった。特
に、従来は、機器の鋼種材料が、焼もどし及び応力除去
熱処理又は固溶化熱処理加工が必要とされる構造容器類
には、熔接、溶断等の高い入熱影響を与えると必ず、後
処理(保守補修、改造などの加工から生ずる応力除去の
ための熱処理)が必要となったが、熔接等の局部加熱な
どの影響が生じる手段を採らずに確実な固着を実現する
ため、入熱影響を排除するための上記処理の必要が無く
なった。又、本願発明は、このような手間を排除する
も、従来のセメント等を使用する応急処置的な手段と異
なり、寿命の低下という問題を招来しない。このように
本願第1の発明は、接合部分が損傷を受けた場合、支持
金具の増設或いは支持金具の改造変更の場合、基材側に
入熱影響の少ない(特に約摂氏200度以下の)いわゆ
る低温溶射を採用することによって、基材側即ち機器容
器1内壁の組成や強度などを変質させることなく、支持
金具の接触部位の改善を行うと共に、高温、高圧環境の
耐熱炉壁強度に耐え、且つ、基材の後処理(応力除去熱
処理)を必要としない支持金具の接合を実現したのであ
る。他方、補修の対象とする機器容器の種類や規模・仕
様によって、個々別々に補修設備を用意する必要がな
く、極めて柔軟に対応することができる。特に、仕様の
異なる機器容器、例えば、設けられた支持金具が機器容
器内にて個々異なる環境に曝されるものである場合も、
溶射材料を選択して即ち夫々の環境に応じた耐食性、耐
熱性を有するものを選択して、環境別に対応することが
できる。以上の結果、本願第1の発明にあっては、既設
の機器容器に対して、熱影響が少なく、焼なまし、焼戻
し等の接合後の熱処理を必要としない手段にて、耐火材
等保持用の支持金具を固定することが可能となり、既設
の機器容器の簡便な補修・延命に功を奏する。特に、溶
射は、可搬性を備えることが可能な装置を用いるもので
あるため、機器容器の設置現場において、その作業を完
了することができ、補修時に、極めて迅速且つ省コスト
の補修が可能であり、支持金具固定の簡便さと確実性に
ついても、その両立を可能とした。
【0048】本願第2の発明にあっては、上記第1の発
明の効果に加えて、より一層基材となる機器容器に熱影
響を与えることなく、支持金具の極めて強固な固定が可
能となった。特に、機器容器に対する入熱影響が極めて
少ないながらも、機器容器に対して使用環境に耐える接
合強度を確保することが可能であり、現地及び工場にお
いても恒久性を有する接合を実現し得た。
【0049】本願第3の発明にあっては、上記第1又は
第2の発明の効果に加えて、上記支持金具の機器容器と
の当接部分へ鍔状部を設けるものであるため、支持金具
は、機器容器に対する当接面積が確保でき、確実な固着
と、安定性を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の支持金具2の設置状態の一実施例を
示す要部略断面図である。
【図2】本願発明の支持金具2の一実施例を示す要部斜
視図である。
【図3】本願発明の支持金具2の設置状態の一実施例を
示す要部略断面図である。
【図4】拡散層5の形成過程の説明図である。
【図5】本願発明の支持金具2の基部付近の一実施例を
示す略縦断面図である。
【図6】本願発明の支持金具2の設置状態の一実施例を
示す要部略断面図である。
【図7】本願発明の支持金具2の設置状態の一実施例を
示す要部略断面図である。
【図8】本願発明の支持金具2の設置状態の一実施例を
示す要部略断面図である。
【図9】本願発明の効果についての試験の基準を示す略
縦断面図である。
【図10】本願発明の効果についての試験の基準を示す
略平面図である。
【図11】本願発明の効果についての試験の基準を示す
略平面図である。
【図12】本願発明の効果についての試験の方法を示す
略縦断面図である。
【図13】本願発明の試験の方法を示す略縦断面図であ
る。
【図14】本願発明の試験の方法を示す略縦断面図であ
る。
【符号の説明】
1 機器容器 2 支持金具 3 皮膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 嶋田 征由 和歌山県有田市初島町浜1000番地 東燃 株式会社和歌山工場内 (72)発明者 植野 軍二 大阪府富田林市中野町東2丁目3番54号 カンメタエンジニアリング株式会社内 (72)発明者 政野 誠治 大阪府富田林市中野町東2丁目3番54号 カンメタエンジニアリング株式会社内 (56)参考文献 特開 平5−93254(JP,A) 特開 昭48−27311(JP,A) 実開 昭60−181510(JP,U) 実開 昭59−108007(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F16J 12/00 B23K 9/00 F22B 37/00 - 37/78 C23C 4/00 - 6/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マンガン鋼、モリブデン鋼、ニッケル
    鋼、マンガンモリブデン鋼、クロムモリブデン鋼、ニッ
    ケルクロム鋼、クロムモリブデンニッケル鋼又はマンガ
    ンモリブデンニッケル鋼の何れかの炭素鋼材にて形成さ
    れ、且つ、炉内壁へ上記と同じ炭素鋼材或いはステンレ
    ス製の支持金具(2) により保持される耐熱材等の炉壁耐
    火物を備えた、設置場所へ既設のボイラー等の機器容器
    (1) について、 補修時、上記支持金具(2) を接合するに際し、 機器容器(1) と支持金具(2) の接合部位へ、アーク溶線
    式又ガス溶線式の溶射機を用い摂氏約200度以下で溶
    射し、少なくともニッケルとアルミニウムを成分に含む
    合金層の皮膜(3) を形成することにより、両者(1) (2)
    の固着を行うことを特徴とする設置場所へ既設のボイラ
    ー等の機器容器の補修方法。
  2. 【請求項2】 上記被膜(3) は、下地層(30)と、表面仕
    上層(31)とを有するように形成されたものであり、 上記下地層(30)は、ニッケル−アルミニウム合金、ニッ
    ケル−アルミニウム−クロム合金、ニッケル−アルミニ
    ウム−鉄の合金の、何れかにて構成されるものであり、 上記仕上層(31)は、鉄−クロム合金又は鉄−クロム−ア
    ルミニウム合金にて構成されるものであることを特徴と
    する請求項1記載の設置場所へ既設のボイラー等の機器
    容器の補修方法。
  3. 【請求項3】 上記支持金具(2) の、機器容器(1) との
    接合部位は、鍔状部(21)であることを特徴とする請求項
    1又は2記載の設置場所へ既設のボイラー等の機器容器
    の補修方法。
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