JP2922437B2 - スポーツ用の手袋 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、主としてゴルフ用とバ
ッティング用のスポーツ用に使用される手袋に関する。

【０００２】

【従来の技術】スポーツ用の手袋は手を保護するために
使用される。この用途の手袋は、ゴルフクラブやバット
を握ぎったときのフィット感が特に大切である。手袋を
着用した状態で、素手に近い感触のものを理想とする。
手袋は、最も多くのプレイヤーにフィットする形状に生
地を裁断して縫製される。生地を裁断する工程は、型紙
を使用して正確にできる。しかしながら、裁断された生
地を縫製するときには、全く同一の条件で縫着するのが
難しい。生地を深縫いして縫着すると、生地のヌイシロ
の幅が広くなって、手袋が小さくなってしまう。とく
に、親指生地と手袋本体生地との縫着部が深縫いされる
と、親指が短くなってしまう。深縫いしないように生地
のヌイシロを狭くして縫着すると、縫目の強度が低下し
て、破損しやすくなる。スポーツ用の手袋は、ゴルフク
ラブやバットで打球するときに、極めて強い衝撃を受け
る。このため、縫目には極めて強靱な強度が要求され
る。スポーツ用の手袋は、ヌイシロ幅を正確に調整し
て、深縫いしないように生地の周縁を極めて高い精度で
縫着する必要があり、製造に高度な技術が要求される。
深縫いして所定の形状となるように、生地を裁断するこ
ともできる。しかしながら、縫着部分を深縫いすると、
ヌイシロが手袋の内部に大きく突出して、違和感があっ
て快適に使用できなくなってしまう。とくに、スポーツ
用の手袋は手に対するフィット感が大切であるから、ヌ
イシロを幅広にすることができない。

【０００３】さらに、親指生地を手袋本体生地と別の生
地として両者を縫着すると、縫着線が直線ではなくて円
弧状に湾曲する。湾曲しているヌイシロを、正確な幅で
縫着するためには、極めて高度な技術と、長年の熟練
と、細心の注意を必要とする。

【０００４】このような欠点は、手袋の一部に伸縮生地
を使用することによって少なくできる。伸縮生地を使用
したスポーツ用の手袋は、 実開昭６１−２９７７４
号公報と 実開平６−２６９５１号公報に記載され
る。の公報に記載される手袋は、図１に示すように、
親指生地１の掌部の一部に伸縮生地２を縫着している。
この手袋は、親指を折り曲げ運動するときに伸縮生地２
が伸びて、親指の動きをスムーズにできる。の公報に
記載される手袋は、図２に示すように、親指の掌部を手
袋本体と一枚生地とし、親指の甲部の生地は下部に伸縮
生地２を縫着している。この構造の手袋も、の手袋と
同じように、親指を折り曲げるときに伸縮生地２が伸び
るので、親指の動きをスムーズにできる特長がある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】図１と図２に示す従来
のスポーツ用の手袋は、親指を自由に折り曲げできる特
長はあるが、伸縮生地でもつて親指の実質的な長さを調
整することはできない。このため、裁断して生地を縫着
するときに、深縫いしあるいはヌイシロが浅くなると、
親指の長さが変化してしまう欠点がある。伸縮生地の使
用範囲を大きくすると、親指の実質的な長さを調整でき
るようになるが、伸縮生地を大きくすると、強度が低下
してしまう欠点がある。スポーツ用の手袋は、手に良く
フィットすることに加えて、相当な強度が要求される。
強度が必要ないのであれば、全体を伸縮生地で製作する
ことができる。しかしながら、全体を伸縮生地とした手
袋はスポーツ用に使用できない。それは、伸縮に富む毛
糸の手袋を着用して、ゴルフクラブや野球のバットを握
ることができないことから容易に推測できる。全体が伸
縮する手袋は、素手でゴルフクラブやバットを握る感触
にできない。手とゴルフクラブ等の間に介在される伸縮
生地が、大きく変形して手の動きをゴルフクラブ等に確
実に伝達できなくなるからである。

【０００６】すなわち、スポーツ用の手袋は、手によく
フィットさせるために、伸縮生地の使用面積を大きくす
ると、要求される強度が低下して理想的な状態で使用で
きなくなってしまう。スポーツ用として好ましい強度を
実現するために、伸縮生地の使用面積を小さくすると、
手にフィットさせるのが難しくなる。とくに、親指を正
確な長さとするために、一定の幅でヌイシロを高い精度
で縫着するのが極めて難しくなる。スポーツ用の手袋に
要求される強度と、素手に近いフィット感と、製造コス
トを低減することは互いに相反する特性であって、全て
の特性を同時に満足することは極めて難しい。

【０００７】本発明の手袋は、伸縮生地の使用形態を特
有の構造とすることによって、スポーツ用の手袋として
理想的な特長を実現することに成功したものである。し
たがって、本発明の重要な目的は、簡単かつ容易に、し
かも能率よく安価に多量生産できて、手によくフィット
でき、さらに、スポーツ用として充分な強度にできるス
ポーツ用の手袋を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明のスポーツ用の手
袋は、前述の目的を達成するために下記の構成を備え
る。本発明のスポーツ用の手袋は、親指生地１と手袋本
体生地３とを別々に裁断した非伸縮生地で構成され、親
指生地１を伸縮性の生地を介して手袋本体生地３に縫着
して製造されてなる従来の手袋を改良したものである。

【０００９】本発明のスポーツ用の手袋は、円弧状に裁
断されている親指生地１の下端縁を、直接に手袋本体生
地３に縫着しており、残りの部分を、伸縮性の生地を介
して手袋本体生地３に連結している。さらに、親指生地
１を手袋本体生地３に連結する伸縮性の生地には、アー
チ状伸縮生地４を使用する。アーチ状伸縮生地４は、円
弧状に裁断されている親指生地１の下端縁に沿う形状に
裁断されて、親指生地１の下端縁に縫着されている。こ
のアーチ状伸縮生地４を介して、親指生地１の下端縁を
手袋本体生地３に連結している。親指生地１と手袋本体
生地３との境界に沿って縫着されているアーチ状伸縮生
地４でもって、親指の実質長が調整される。

【００１０】

【作用】本発明のスポーツ用の手袋は、その好ましい実
施例を示す図３と図４のように、親指生地１の下端縁を
アーチ状伸縮生地４を介して手袋本体生地３に縫着す
る。図５は親指生地１とアーチ状伸縮生地４の展開図で
ある。この図に示すように、親指生地１は、アーチ状伸
縮生地４を縫着するために、下端縁に沿って切除部１Ａ
を設けている。図５の鎖線は、伸縮生地を縫着しない従
来の手袋の親指生地１の下端縁を示している。親指生地
１の下端縁に縫着されるアーチ状伸縮生地４は、周囲に
ヌイシロがある。アーチ状伸縮生地４は、図において上
端縁Ａを親指生地１の下端縁Ａに縫着する。下端縁Ｂ
は、図６に示す手袋本体生地３の親指孔Ｂに縫着され
る。図３と図４に示すように、アーチ状伸縮生地４を介
して、親指生地１の下端縁を手袋本体生地３に縫着して
いる手袋は、アーチ状伸縮生地４によって親指の実質的
な長さを調整できる。それは、アーチ状伸縮生地４が伸
縮して、親指の実質長さを調整できるからである。さら
に、アーチ状伸縮生地４は、親指生地１と手袋本体生地
３との境界に沿って縫着されたものであって、広い面積
にわたって手袋生地に伸縮を持たせるものではない。こ
のため、伸縮生地によって手袋の強度が低下することは
ない。

【００１１】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想
を具体化するためのスポーツ用の手袋を例示するもので
あって、本発明はスポーツ用の手袋を下記のものに特定
しない。

【００１２】さらに、この明細書は、特許請求の範囲を
理解し易いように、実施例に示される部材に対応する番
号を、「特許請求の範囲の欄」、「作用の欄」、および
「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付
記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、
実施例の部材に特定するものでは決してない。

【００１３】図３と図４に示すスポーツ用の手袋は、図
５に示す親指生地１と、図６に示す手袋本体生地３と、
図７に示す中指甲部生地５および薬指甲部生地６を縫製
して製造される。裁断された５枚の生地は、互いに縫着
される部分を明確にするために、縫着される部分に同じ
符号（Ａ、Ｂ、Ｃ、Ｄ・・・）を付している。

【００１４】親指生地１と、手袋本体生地３と、中指甲
部生地５と、薬指甲部生地６とは、従来のスポーツ用の
手袋にすでに使用され、あるいはこれからスポーツ用の
手袋に使用される柔軟な非伸縮生地、たとえば、天然あ
るいは合成の皮革、布地、合成樹脂シート、あるいはこ
れ等のシート材を積層した可撓性のシートが使用され
る。

【００１５】親指生地１は上部と両側部とを互いに縫着
して手袋の親指となるように、甲部と掌部とを１枚の生
地で構成している。アーチ状伸縮生地４を介して手袋本
体生地３に縫着される親指生地１の下端縁は円弧状に湾
曲して裁断されている。親指生地１の下端縁は、アーチ
状伸縮生地４を縫着する切除部１Ａを設けている。切除
部１Ａの幅は、親指生地１と手袋本体生地３との間に縫
着されるアーチ状伸縮生地４の幅を決定する。アーチ状
伸縮生地４全体の幅から、両側にできるヌイシロ４Ａの
幅を引いた値が、切除部１Ａの幅となる。

【００１６】切除部１Ａの幅を広くして、アーチ状伸縮
生地４の幅を広くすると、親指の実質的な長さの調整範
囲は大きくなる。ただ、切除部１Ａとアーチ状伸縮生地
４の幅を広くすると、親指が伸びやすくなって、強度が
低下する。切除部１Ａの幅は、強度と親指の実質長さの
調整範囲とを考慮して、理想的には最大幅を約５〜８ｍ
ｍに設計する。ただ、本発明の手袋は、切除部１Ａの最
大幅をたとえば、３〜１５ｍｍ、好ましくは４〜１２ｍ
ｍ、さらに好ましくは４〜１０ｍｍに設計することがで
きる。

【００１７】アーチ状伸縮生地４は、伸縮性を有する生
地、たとえば、伸縮性を有する糸で編組された生地、あ
るいは布地にゴム状弾性体を縫着した生地等が使用でき
る。アーチ状伸縮生地４として最適な生地として、スパ
ンデックス（登録商標）が使用できる。アーチ状伸縮生
地４は、親指生地１の下端縁に設けられた切除部１Ａに
縫着できるように、親指生地１の下端縁に沿う所定幅の
帯状で円弧状に湾曲して裁断されている。アーチ状伸縮
生地４は周囲にヌイシロ４Ａを設けて、全体形状を三日
月状としている。

【００１８】図７、図８、図９は親指生地１の下端縁
を、アーチ状伸縮生地４を介して手袋本体生地３に縫着
する部分を示している。ただし、図９は図８の９−９線
断面図、図１０は図８の１０−１０線断面図である。図
８において、クロスハッチング部分は、手袋の表面に表
出するアーチ状伸縮生地４を示している。これ等の図に
示す縫着部は、親指生地１の上に手袋本体生地３を重ね
て縫着し、親指生地１と手袋本体生地３の裏面にアーチ
状伸縮生地４を縫着し、親指生地１と手袋本体生地３の
間に、アーチ状伸縮生地４を縫着している。アーチ状伸
縮生地４の上下縁は、２列に縫着して親指生地１と手袋
本体生地３とに連結している。

【００１９】本発明の手袋は、アーチ状伸縮生地４を介
して親指生地１を手袋本体生地３に縫着する部分を独特
の構造とすることを特徴とする。手袋本体生地を裁断す
る形状と縫着する構造を特定しない。したがって、手袋
本体生地を裁断する形状と、縫着する構造は、従来の手
袋と同じようにすることができる。また、これから開発
される手袋の構造とすることもできる。

【００２０】参考に例示すると、図６に示す手袋本体生
地３は、４本の指の甲部と、人差指と小指の掌部とを連
結して１枚シートとし、親指生地１を縫着するために親
指孔３Ａを裁断している。さらに、人差指と小指の間
に、中指甲部生地５と薬指甲部生地６とを縫着する隙間
を設けている。さらに、手袋本体生地３は甲部を縦に分
割し、一方に締結バンド７を連結し、締結バンド７はマ
ジックテープ（登録商標）を介して脱着自在に他方に連
結されている。

【００２１】手袋本体生地３と親指生地１とアーチ状伸
縮生地４と中指甲部生地５と薬指甲部生地６とは、同じ
英文字（Ａ、Ｂ、Ｃ、Ｄ・・・・）が付された部分が互
いに縫着されて手袋となる。

【００２２】

【発明の効果】本発明のスポーツ用の手袋は下記の優れ
た特長がある。 簡単かつ容易に、しかも安価に多量
生産して手によくフィットできる特長がある。とくに、
非直線状で湾曲する形状のために縫着に高度な技術が要
求される親指生地の下端縁を、簡単に手袋本体生地に縫
着して、この部分を手によくフィットできる特長があ
る。それは、親指生地の下端縁をアーチ状伸縮生地を介
して手袋本体生地に縫着するからである。アーチ状伸縮
生地は伸縮して、親指の実質長さを調整し、縫着部が深
縫いされてヌイシロの幅が変化しても、親指の実質長を
最適な状態に調整して快適にフィットできる特長があ
る。

【００２３】 充分な強度のある状態として、親指を
快適にフィットできる。それは、本発明のスポーツ用の
手袋が、伸縮生地の面積を広くするのではなく、親指生
地と手袋本体生地との間に帯状に裁断されているアーチ
状伸縮生地を縫着するからである。

【００２４】以上のように、本発明のスポーツ用の手袋
は、親指生地の下端縁をアーチ状伸縮生地を介して手袋
本体生地に縫着するという独特の構成で、スポーツ用の
手袋に要求される強度と、素手に近いフィット感と、製
造コストを低減するという理想的な特長を実現する。

【図面の簡単な説明】

【図１】 従来の手袋の背面図

【図２】 従来の他の構造の手袋を示す正面図

【図３】 本発明の実施例の手袋を示す正面図

【図４】 図３に示す手袋の背面図

【図５】 図３に示す手袋の親指生地とアーチ状伸縮生
地の展開図

【図６】 図３に示す手袋の手袋本体生地の展開図

【図７】 図３に示す手袋の中指甲部生地と薬指甲部生
地の展開図

【図８】 親指生地と手袋本体生地との縫着部分を示す
拡大平面図

【図９】 図８の９−９線断面図

【図１０】 図８の１０−１０線断面図

【符号の説明】

１…親指生地 １Ａ…切除部 ２…伸縮生地 ３…手袋本体生地 ３Ａ…親指孔 ４…アーチ状伸縮生地 ４Ａ…ヌイシロ ５…中指甲部生地 ６…薬指甲部生地 ７…締結バンド

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 親指生地(1)と手袋本体生地(3)とが別々
   に裁断された非伸縮生地で構成され、親指生地(1)と手
   袋本体生地(3)との間に伸縮性の生地を縫着している手
   袋において、 親指生地(1)が手袋本体生地(3)に縫着される部分であっ
   て、円弧状に裁断されてなる円弧状縫着縁(A)、(C)は、
   円弧状縫着縁(C)を、直接に手袋本体生地(3)に縫着して
   おり、残りの円弧状縫着縁(A)を、伸縮性の生地を介し
   て手袋本体生地(3)に連結しており、 かつ、伸縮性の生地はアーチ状伸縮生地(4)で、このア
   ーチ状伸縮生地(4)は、円弧状に裁断されている親指生
   地(1)の下端縁の円弧状縫着縁(A)に沿う形状に裁断され
   て、親指生地(1)の下端縁に縫着されており、このアー
   チ状伸縮生地(4)を介して親指生地(1)の下端縁の一部が
   手袋本体生地(3)に連結されてなることを特徴とするス
   ポーツ用の手袋。