JP2906397B2 - 消波機能を備えた人工漁礁 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、集魚機能及び消波
機能を併せ持った人工漁礁に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種人工漁礁としては、例えば
実開昭55-88667号公報所載の考案が存在する。

【０００３】即ち、この従来のものは図８に示すよう
に、中空半球状の漁礁本体11に多数の透孔12を穿設し、
且つ該漁礁本体11内に多数の栗石13を収納したものであ
る。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の人工漁礁は、漁礁本体11内に栗石13を収納するもの
であるために、水底への設置作業が非常に煩雑であると
いう施工面の問題点があった。

【０００５】また、特殊形状の漁礁本体11を使用するも
のであるために、その製作費用が嵩むという難点を有
し、且つ製作可能な漁礁本体11の大きさにも一定の限界
があって大型化を図ることも困難であり、さらには漁礁
としての単一の機能しか有しないものであった。

【０００６】ところで、近年省資源や省エネルギー等の
観点から、各種廃棄物の再利用が盛んに試みられてはい
るが、例えば使用済のコンクリート製電柱等は撤去後
に、破砕して産業廃棄物として処理されているのが実情
であり、かかる一連の破棄処分には膨大な費用を要する
ことも相俟って、撤去電柱等の再利用の要請が非常に強
い。

【０００７】それ故に、本発明はこのような状況に鑑み
て上記従来の課題を解決するためになされたものであ
り、集魚機能のみならず消波機能を備えた人工漁礁の提
供を課題としている。

【０００８】

【課題を解決するための手段】即ち、本発明が上記課題
を解決するために採った手段は、枠材２より枠組形成さ
れた基枠１と、該基枠１を形成する枠材２間に多数架設
される撤去後のコンクリート製電柱、撤去後のコンクリ
ート製枕木、撤去後のレール又は下水管等の棒状体とか
ら形成されて水中に設置される漁礁体Ａと、波の伝搬を
阻止すべく該漁礁体Ａの基枠１上に設けられた基台４上
に複数突設される撤去後のコンクリート製電柱、撤去後
のコンクリート製枕木、撤去後のレール又は下水管等の
棒状体からなる消波体Ｂとを備え、しかも該消波体Ｂが
流体の侵入側程下向きに傾斜して水面付近に配される消
波機能を備えた人工漁礁において、前記基枠１が鉄筋を
内装したコンクリートで形成された点にある。

【０００９】更に、上記課題を解決するために採った他
の手段は、枠材２より枠組形成された基枠１と、該基枠
１を形成する枠材２間に多数架設される撤去後のコンク
リート製電柱、撤去後のコンクリート製枕木、撤去後の
レール又は下水管等の棒状体とから形成されて水中に設
置される漁礁体Ａと、波の伝搬を阻止すべく該漁礁体Ａ
上に設けられ、且つ流体の侵入側程下向きに傾斜して水
面付近に配される消波体Ｂとからなり、しかも該消波体
Ｂが枠材９により枠組形成された基枠10と該枠材９間に
架設される撤去後のコンクリート製電柱、撤去後のコン
クリート製枕木、撤去後のレール又は下水管等の棒状体
で形成され、しかも基枠(1) が鉄筋を内装したコンクリ
ートで形成された点にある。

【００１０】従って、上記発明特定事項を特徴とする人
工漁礁は、消波体Ｂが水面付近に配されるように漁礁体
Ａを海底等に沈降させて所定位置に設置して使用され
る。

【００１１】そして、漁礁体Ａにより集魚効果が発揮さ
れて好漁場が形成されると共に、消波体Ｂにより波の伝
搬が阻止されることになる。

【００１２】

【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態につい
て図面に従って説明する。

【００１３】 （第１実施形態） 図１乃至図３に於いて、１は複数の枠材２により枠組形
成された基枠を示し、図２の如く直方体状の前部1aと、
後方側程上向きに傾斜するように形成した後部1bとから
なり、鉄筋等を内装したコンクリート等で構成される。
３は所定の枠材２間に縦又は横方向に所定間隔を有して
架設した棒状体を示し、かかる棒状体３には例えば撤去
後のコンクリート製電柱等が使用される。以上のような
基枠１と棒状体３により漁礁体Ａが構成されている。

【００１４】Ｂは基枠１の後部1a上に設けられた消波体
を示し、該後部1a上に配した前後一対の枠材2a間に架設
される複数のコンクリート製基台４と、該基台４の上面
に所定間隔を有して突設された棒状体５とからなり、該
棒状体５は例えば撤去後のコンクリート製枕木等で構成
され、前記基台４は各枠材2aに形成した凹溝（図示せ
ず）に嵌合して固定される。

【００１５】本実施形態に係る人工漁礁Ｃは以上のよう
な漁礁体Ａと消波体Ｂとからなり、かかる人工漁礁Ｃは
クレーン等を使用して、例えば図４の如く岸壁Ｄ等に沿
って複数設置されるが、漁礁体Ａの基枠１は枠組形成さ
れてなるため、海底等の設置面への設置作業が非常に簡
易且つ迅速に行える利点があり、胴木基礎工，場所打ち
コンクリート基礎工，コンクリートブロック基礎工，杭
打ち基礎工，矢板基礎工といった基礎工や根固工等も不
要である。

【００１６】尚、設置場所に応じて漁礁体Ａの高さや消
波体Ｂの傾斜角度等は設定され、また消波体Ｂの後方側
の棒状体３は海面から突出するような状態に設置され
る。

【００１７】而して、漁礁体Ａは基枠１の枠材２には複
数本の棒状体３が架設されているために、底層，中層の
潮の流れがこれに衝突して湧昇流や渦流が生じて活発な
垂直混合が行われ、魚類の滞留を促すという集魚効果を
奏することになる。

【００１８】従って、漁礁体Ａ内及びその付近に良好な
魚場空間が形成されるのである。

【００１９】また、重複波，砕け波，衝撃波，重複波と
砕け波との組合せ等の各種の波は、前方側に張り出した
漁礁体Ａと、適当な間隔で林立させた消波体Ｂの棒状体
５との存在によって、そのエネルギが減衰して最終的に
波は消滅するので、潮流や風波等により岸壁Ｄが洗掘さ
れたり、漂砂を発生せしめるというようなこともなくな
り、護岸を図ることができる。

【００２０】本実施形態に係る人工漁礁Ｃはこのような
機能を有するために、直立堤，傾斜堤，混成堤等の防波
堤として使用することも可能となり、その適用範囲は極
めて広範である。

【００２１】また、かかる人工漁礁Ｃは比較的大きな構
造物であり、且つ大変強固であるため、波浪や潮流によ
って傾倒したり、移動したり、或いは破損することもな
く、安定した状態で長期に亘って設置し得るので、稚魚
の保護が図れるばかりではなく、産卵場としても最適で
ある。

【００２２】さらに、枠材２や棒状体３を電柱により構
成すると、かかる電柱は弱アルカリ性のコンクリートか
らなるため、カジメやアカモク等の有用藻類の種糸の巻
付けが容易である。

【００２３】また、本実施形態に係る人工漁礁Ｃは非常
に簡易な構成からなるため、容易に製作できるという利
点があり、また棒状体３，５として撤去後の電柱や枕木
を再利用すると、安価で且つ資源の有効利用が図れる結
果、環境行政の一助に大いに寄与し得ることとなる。

【００２４】 （第２実施形態） 本発明に係る人工漁礁Ｃの具体的な形態は、決して上記
第１実施形態に限定されるものではなく、例えば図５乃
至図７のように構成することも可能である。

【００２５】即ち、中央に段部７が形成されるように枠
材２により基枠１を枠組形成すると共に、所定の枠材２
間に棒状体３を架設せしめて漁礁体Ａを構成する。一
方、漁礁体Ａ上に傾斜させて設けられる消波体Ｂは、２
個の開口部８が前後に形成されるように枠材９により基
枠10を枠組形成し、前記開口部８に棒状体５を配すべく
該棒状体５を前記枠材９間に架設する。本実施形態では
消波体Ｂを２段積みしているが、１段のみ或いは３段以
上段積みしても構わず、漁礁体Ａの形態を変更すること
によって消波体Ｂの傾斜角度を変更することも可能であ
る。尚、棒状体５として撤去後の電柱を向きを代えて使
用している。

【００２６】かかる人工漁礁Ｃに於いても、上記実施形
態１と同様に漁礁体Ａによる集魚効果と、消波体Ｂによ
る良好な消波効果とを得ることができる。

【００２７】尚、上記各実施形態に於いて、例えば撤去
後の下水管やレールにより棒状体３，５を構成しても構
わず、下水管又はレールが有する鉄分により集魚効果が
向上する利点がある。

【００２８】また、消波体Ｂは必ずしも漁礁体Ａの上部
全体に亘って設ける必要はなく、第１実施形態の如く後
方側に設ける等、漁礁体Ａの一部にのみに設けてもよ
い。

【００２９】さらに、本発明に係る人工漁礁Ｃは、海の
みならず河川に於いても使用することが可能である。

【００３０】その他、棒状体３，５の配設角度や枠材
２，９の素材等も本発明の意図する範囲内に於いて任意
な変更可能である。

【００３１】

【発明の効果】叙上のように、本発明は漁礁体に消波体
が設けられてなるため、人工漁礁が消波機能を備えると
いう格別の効果を得るに至った。

【００３２】また、請求項２乃至請求項４に記載の発明
のように漁礁体及び消波体を構成することにより、これ
らの製作が非常に簡易に行えるという効果を奏する。

【００３３】さらに、棒状体として請求項６乃至請求項
８の発明の如く、撤去後のコンクリート製電柱等を採用
すると、その再利用が図れることとなって、環境行政の
一助に大いに寄与し得るという特有の効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態を示す人工漁礁の正面図。

【図２】同側面図。

【図３】同平面図。

【図４】使用状態を示す側面図。

【図５】他の実施形態を示す人工漁礁の正面図。

【図６】同側面図。

【図７】同平面図。

【図８】従来例を示す断面図。

【符号の説明】

１…基枠 ２…枠材 ３…棒状体 ４…基台 ５…棒状体 ９…枠材 10…基枠 Ａ…漁礁体 Ｂ…消波体

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 枠材(2) より枠組形成された基枠(1)
   と、該基枠(1) を形成する枠材(2) 間に多数架設される
   撤去後のコンクリート製電柱、撤去後のコンクリート製
   枕木、撤去後のレール又は下水管等の棒状体とから形成
   されて水中に設置される漁礁体(A) と、波の伝搬を阻止
   すべく該漁礁体(A) の基枠(1) 上に設けられた基台(4)
   上に複数突設される撤去後のコンクリート製電柱、撤去
   後のコンクリート製枕木、撤去後のレール又は下水管等
   の棒状体からなる消波体(B) とを備え、しかも該消波体
   (B) が流体の侵入側程下向きに傾斜して水面付近に配さ
   れる消波機能を備えた人工漁礁において、前記基枠(1)
   が鉄筋を内装したコンクリートで形成されてなることを
   特徴とする消波機能を備えた人工漁礁。
2. 【請求項２】 枠材(2) より枠組形成された基枠(1)
   と、該基枠(1) を形成する枠材(2) 間に多数架設される
   撤去後のコンクリート製電柱、撤去後のコンクリート製
   枕木、撤去後のレール又は下水管等の棒状体とから形成
   されて水中に設置される漁礁体(A) と、波の伝搬を阻止
   すべく該漁礁体(A) 上に設けられ、且つ流体の侵入側程
   下向きに傾斜して水面付近に配される消波体(B) とから
   なり、しかも該消波体(B) が枠材(9) により枠組形成さ
   れた基枠(10)と該枠材(9) 間に架設される撤去後のコン
   クリート製電柱、撤去後のコンクリート製枕木、撤去後
   のレール又は下水管等の棒状体で形成され、且つ前記基
   枠(1) が鉄筋を内装したコンクリートで形成されてなる
   ことを特徴とする 消波機能を備えた人工漁礁。