JP2899977B2 - 半導体レーザ血管吻合装置 - Google Patents

半導体レーザ血管吻合装置

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、半導体レーザを用いた血管吻合装置に関す
るものである。
(従来の技術) 一般に広く知られている、針と糸を用いて行なわれる
血管吻合は、血管の周囲を十数針縫う必要があることか
ら、術者及び患者に大きな負担や苦痛を与え、また、吻
合終了後の血流再開時は、血液の漏出が収まるまで相当
な時間見守る必要があり、さらには、脳外科等における
吻合で血流を止める時間が長くなると二次障害が起こる
などの危険性もある。
これに対し、YAGレーザや炭酸ガスレーザを用いた血
管吻合術が開発されている。一般に、レーザは、単色
性,指向性,収束性に優れ、高輝度でコヒーレントな光
である。レーザ光エネルギーの医療への応用は、大別す
ると収束性を利用して高エネルギーにし、熱的作用を使
用する場合と、低エネルギーにして生体を刺激する非熱
的作用を使用する場合がある。上記のレーザを用いた血
管吻合術は、前者の例であり、針と糸を用いる吻合時の
欠点である血管に与える機械的損傷や、縫合糸等の異物
による肉芽組織形成等が少なく、吻合部の隙間も極端に
小さくなるので血流再開時の血液漏出もほとんど起こら
ないという長所を有する。
炭酸ガスレーザによる波長10.6μmのレーザ光は、水
に対する吸収が極めて大きく、生体組織への浸透距離が
短い(生体組織はその大部分が水により形成されてい
る)。このため、炭酸ガスレーザ光は、血管の表面だけ
を接合するのに適している。第9図は、炭酸ガスレーザ
を用いた血管吻合条件であり、スポット径0.1mmφにお
ける吻合可能領域で、15〜35mWの光出力に相当する。
また、YAGレーザによる波長1.06μmのレーザ光は、
水に対する吸収係数が小さいが、生体組織中の繊維成分
等に対する実効的な吸収は小さくないので、炭酸ガスレ
ーザと同様に、血管吻合に供することができる。
しかしながら、これらのレーザを血管吻合装置に使用
する場合、比較的大きな出力を用いているため、装置は
かなり大がかりなものとなり、さらに複雑な制御を必要
とする。
そこで、本発明者らは先に、近年の半導体レーザの高
出力化に着目し、小型、簡便で、かつ低価格の半導体レ
ーザ血管吻合装置を提案した(特公昭63−55939号公報
参照)。半導体レーザの発振波長は、YAGレーザと同様
に、近赤外光であり、連続発振出力は、現状で500mW以
上が得られているので、YAGレーザの低出力の連続照射
と同様な効果が得られる。出力が小さい場合は、血管表
面近傍の熱容量が小さいことから、間欠的にピーク値の
大きな光エネルギーを照射することによって、吻合に供
することができる。
(発明が解決しようとする課題) しかし、前記提案の半導体レーザ血管吻合装置では、
吻合のための半導体レーザ光は、現在の技術上、可視光
領域の半導体レーザの光出力が実用レベルにないので、
近赤外光を使用することとなる。この場合、半導体レー
ザ光は、目に見えないため、可視的にビーム位置をガイ
ドする手段を講じなければならない。ビーム位置をガイ
ドする手段としては、他の光源、例えばHe−Neレーザ等
のビームを併用して照射するか、機械的なガイド部材を
使用する方法がある。しかし、他の光源を用いる方法
は、複雑な光学系が必要になり、装置も大きくなってし
まうこと、機械的なガイド部材を使用する方法は、術者
にとって作業がしにくい等の問題がある。
一方、血管などの生体組織には、ミオグロビン、ヘモ
グロビン等の短波長領域(青−緑)に吸収を持つ成分が
多く含まれているので、短波長レーザ光を用いると、吻
合における作業光とガイド光とを兼用できて好都合であ
る。Arレーザを用いれば、上記のような吻合装置を実現
できるが、発振効率が悪いため、炭酸ガスレーザ、YAG
レーザより更に装置が大がかりとなり、コンパクトな実
用機を供することは困難である。
前記提案の半導体レーザ血管吻合装置の構成により、
短波長半導体レーザを用いてコンパクトな実用機を実現
できる可能性はあるが、前述のように、現在の技術上、
可視光領域の半導体レーザの光出力は実用レベルにない
という問題がある。
そこで本発明は、上記従来技術の問題点を解決するた
めになされたもので、半導体レーザから出力される近赤
外光の一部を短波長領域の可視光に変換してこれをガイ
ド光とし、若しくは、近赤外光から変換された短波長領
域の可視光のみを出射してこれを作業光兼ガイド光と
し、小型、簡便で、低価格、かつ取り扱い易く、安全性
の高い半導体レーザ血管吻合装置を提供することを目的
とする。
(課題を解決するための手段) 近年、石英系ガラス導波路技術が進み、屈折率分布制
御による光閉じ込め作用で、高効率伝送が可能になり、
さらに、この石英系ガラス導波路中に稀土類イオン等の
非線形光学材料をドープすることが可能であり、閉じ込
められたレーザ光の高調波を効率よく発生できるように
なった。
本発明は、この技術に着目し、半導体レーザから出力
されたレーザ光(波長λ1:近赤外光)を、稀土類イオ
ン等の非線形光学材料をドープした石英系ガラス導波路
(以下非線形光学素子と呼ぶ)に通すことにより、波長
λ1のレーザ光の高調波(波長λ2:短波長領域の可視
光)を発生させ、これを波長λ1の作業光のガイド光と
し、あるいは波長λ2のレーザ光を作業光兼ガイド光と
して使用するものである。
従って、本発明は、コヒーレントな光を出力する単一
若しくは複数の半導体レーザ素子と、この半導体レーザ
素子の光出力を制御する制御用電源調整器と、半導体レ
ーザ素子から出力された波長λ1のレーザ光を入射して
波長λ1のレーザ光と波長変換された波長λ2のレーザ光
の両方又は波長変換された波長λ2のレーザ光のみを出
射する非線形光学素子と、非線形光学素子から出射され
たレーザ光(波長λ1又はλ2)をスポット状に収束させ
る光学系とから構成される。
(作用) 稀土類イオン等の非線形光学材料をドープした石英系
ガラス導波路は、閉じ込められたレーザ光の高調波を効
率よく発生させることができ、例えば、Ebイオンをドー
プした石英ガラスファイバは1.3μmのレーザ光励起に
より、このレーザ光の第2高調波である650nmの可視光
を発生することは既に公知である。
本発明は、この技術を半導体レーザ血管吻合装置に適
用したもので、非線形光学素子により波長変換されたガ
イド光(λ2)は、作業光であるレーザ光(λ1)と略同
軸上に出射され、またはガイド光(λ2)自体が作業光
であるから、レーザ照射位置が明確になって安全性が高
められると共に、外部光源をガイド光とする構成のよう
に大がかりな装置とはならず、コンパクトで、安価な半
導体レーザ血管吻合装置を実現することができる。
(実施例) 以下、図面を参照して実施例を詳細に説明する。な
お、以下、波長λ1のレーザ光を、レーザ光λ1、波長λ
2のレーザ光を、レーザ光λ2と略記する。
実施例1 第1図は、本発明の一実施例を示したもので、1は電
源であり、ここでは出力調整器を含むものとする。2は
半導体レーザ素子(レーザダイオード:以下LDという)
で、所要出力に応じて1個又は複数個の素子からなる。
3はファイバ型非線形光学素子、4aは、LD2から出力さ
れたレーザ光λ1を非線形光学素子3に導入する光学
系、4b,4cは、非線形光学素子3から出射されたレーザ
光λ1,λ2をスポット状に収束させる光学系であり、ス
ポット径は、0.5mmφ以下が実用的である。
LD2としては、発振波長0.6〜2.5μmのものが使用可
能であり、本実施例では、GaAs系の発振波長が1.3μm
帯のものを使用した。また、出力は、レーザ光が非線形
光学素子3中にドープされた非線形光学材料により分散
されるので、若干大きな出力を必要とするため、本実施
例においては、平均出力を必要とするため、本実施例に
おいては、平均出力10〜2000mWの範囲に設定している。
さらに、光源としては、半導体レーザの他に、装置が大
きくなってしまうが、YAG等の近赤外レーザも使用可能
である。LD2は定電流駆動されており、電源1における
レーザ光の出力調整は定電流回路を用い、出力調整用の
ボリューム等により設定され、一定電流が常にLD2に入
力されるようになっている。
ファイバ型非線形光学素子3は、波長0.3〜2.5μmの
光に対して透明なもので、非線形光学材料をドープでき
るものであれば、金属酸化物、窒化物、フッ化物等の無
機化合物や有機化合物が使用可能であるが、本実施例で
は、SiO2−SiOF系のものを使用した。コア径は50μm
で、SiO2に非線形光学材料としてEbイオンを分散したも
のである。コア、クラッドの屈折率分布はステップ型で
あるが、グレーテッドインデックス型でもよいし、種々
の形状のものが構成上可能と考えられる。この非線形光
学素子3は、ファイバ型の導波路による光閉じ込め効果
により、高い波長変換効率を示し、波長1.3μmのLD光
が入射した場合、そのSHGである650nmのコヒーレントな
レーザ光λ2が高効率で得られる。非線形光学素子3か
らはレーザ光λ1,λ2の両方の光が出射され、作業距離
が短い場合はそのまま吻合部に照射してもよいが、一般
には、収束用光学系4b,4cにより0.5mmφ以下のスポット
に集光し、血管壁等の吻合に使用する。微小スポットに
収束させる場合は、光学系にビームエキスパンダを使用
する。また、レーザ光λ1,λ2の出射比率によりどちら
かの波長の光を減衰させる必要がある場合には、収束用
光学系の配置部分や、それぞれの波長に適合するフィル
タやビームスプリッタ等を設置する。
本実施例の構成では、近赤外レーザ光λ1と可視レー
ザ光λ2が同時に出射されるため、照射位置が容易に認
識でき、取り扱い易くなる。
第2図(A)〜(D)は、本実施例に使用されるファ
イバ型非線形光学素子3の種々の構成を示したもので、
第2図(A)は、ファイバのコア部を2本にし、片側の
み非線形光学材料を分散させたものである。即ち、5は
クラッド、6は非線形材料ドープコア、7はノンドープ
コア、8は被覆材である。この場合、非線形材料ドープ
コア6では、非線形材料によるパワーの分散のためレー
ザ光λ1,λ2の損失が大きくなるが、もう一方のノンド
ープコア7では損失をほとんど受けずレーザ光λ1を伝
播できるため、例えばレーザ光λ2は照射位置を認識す
るためのみに使用し、吻合はもっぱらレーザ光λ1を使
用するようにすれば、レーザ光λ1のパワーがファイバ
の入射する前と出射後とでほとんど変わらないようにす
ることが、ファイバ端部の無反射コーティング等により
可能であり、吻合位置での光出力の制御が容易になると
いう利点がある。
第2図(B)は、コア部を複数本にしたもので、非線
形材料ドープコア6とノンドープコア7の本数の比によ
って各レーザ光λ1,λ2の出射部での出力比を調節でき
る。
第2図(C)は、コア部を二重構造としたもので、こ
の場合、非線形材料ドープコア6とノンドープコア7の
いずれを中心部に配置してもよい。また、三重構造以上
にしてもよい。このようにコアを同心円状に配置する
と、レーザ光λ1,λ2の位置ずれが全く生じないという
利点がある。
第2図(D)は、ファイバの最外周部にガス流路9を
配置した例である。血管吻合に光を使用する場合、光の
出射端部が生体の体液により汚染され、出力の低下ある
いは出射端部が発熱するという不具合が起こるおそれが
ある。これを防ぐためには、出射端部に空気や窒素ガス
等を吹き付けることが効果的である。従って、非線形光
学素子3を第2図(D)に示すような構造にすることに
よって、第3図に示したような、ハンドピース10を含む
コンパクトな形状で、ガス流路を確保することができ、
従来、出射端部に別のチューブ等によりガスを送る構成
に比べて極めて作業性がよくなる。
なお、ドープする非線形光学材料は、Ebなどの稀土類
イオンの外に、LiNbO3、KDP、ADP、KTPなどの無機非線
形光学材料や、MNA等の有機非線形光学材料の微結晶な
どが使用できる。さらに、コア部には、上記非線形光学
材料の単結晶ファイバ等も使用可能である。導波路形状
は、ファイバ型の外に、薄膜をストライプ状に成形した
ものも使用できる。
実施例2 第4図(A)は、本発明の第2の実施例を示したもの
で、電源1、LD2、光アイソレータ11、ファイバ型非線
形光学素子3、LD2から出力されたレーザ光λ1を非線形
光学素子3に導入する光学系4a、非線形光学素子3から
出射されたレーザ光λ2を収束させる光学系4b,4cからな
っている。LD2とその電源1の動作は第1図の実施例と
同じである。LD2から出力されたレーザ光λ1は、光アイ
ソレータ11を通過して光学系4aにより非線形光学素子3
に導入される。この非線形光学素子3は、レーザ光の入
射端面がλ1ARコート12・λ2Rコート13に、出射端面が
λ2ARコート14・λ1Rコート15にそれぞれ加工されてい
る。このような加工を施すことによって、非線形光学素
子3に入射したレーザ光λ1をこの素子内に閉じ込め、
出射させないようにして変換効率を上げると共に、レー
ザ光λ2の入射方向への反射を防いで効率を上げてい
る。非線形光学素子3から出射されたレーザ光λ2は、
集光光学系4b,4cにより0.5mmφ以下のスポットに収束さ
れ、血管壁の吻合に使用される。
本実施例では、第1図の実施例の効果の外に、さらに
二つの効果がある。その一は、LD2から出力されたレー
ザ光がLD自身に戻ってくることを防いでいることにあ
る。一般的に、レーザの種類によらず、レーザ自身に戻
り光がある場合、出力の不安定や雑音等の有害現象を引
き起こすことが知られている。この不安定要因をなく
し、安定したレーザ光が得られる。その二は、レーザ光
λ1を非線形光学素子3の出射端部で反射させ、さらに
波長変換に使用し、また、レーザ光λ2をLD側端部で反
射させることによって出射効率を上げることができ、レ
ーザ光λ2を、ガイド光を兼ねた作業光として使うこと
ができる。
第4図(B)〜(E)は、それぞれ第4図(A)の変
形実施例を示したものである。まず、第4図(B)は、
非線形光学素子3のLD側端面のみをλ1ARコート12・λ2
Rコート13に加工し、集光光学系にλ1Rコート15を施
したコーティングレンズ16を使用している。このような
構成でも、第4図(A)のものと同様な効果が得られ
る。
第4図(C)のものは、第1図の構成に光アイソレー
タ11と干渉フィルタ17を付加している。光アイソレータ
11は、LD2自身への戻り光をなくしている。また、干渉
フィルタ17は、集光光学系のレンズの間に配置されてお
り、レーザ光λ1は反射し、レーザ光λ2は透過するよう
なものを用いている。このような簡単な構成でもレーザ
光λ2のみを取り出して、ガイド光兼吻合の作業光とし
て使うことができる。
第4図(D)のものは、光学系4aの後に、LD側にλ1A
Rコート12、非線形光学素子側にλ2ARコート14を施した
透過鏡18を配置し、非線形光学素子3の入射端、出射端
が透過鏡18に対向するようにリング状に湾曲させてい
る。このような構成では、レーザ光λ1、λ2の双方が出
射するが、透過鏡18で端面反射されたレーザ光λ1は再
度非線形光学素子3に入射することになり、変換効率が
高まる。
第4図(E)のものは、LD2が出力したレーザ光λ1
非線形光学素子3に導入する光学系として、LD側にλ1A
Rコート12、非線形光学素子側にλ1Rコート15を施した
コーティングレンズ19を用いている。このレンズ19を用
いた効果は、LD自身への戻り光をあくして安定したレー
ザ光を得、非線形光学素子3からLD側へ反射されたレー
ザ光λ2を再度非線形光学素子3へ戻して効率を上げて
いる。この構成でも、レーザ光λ1,λ2の双方が出射さ
れる。
実施例3 第5図(A)は、本発明の第3の実施例を示したもの
で、基本的な構成は第1図の実施例と略同じである。本
実施例の特徴は、LD2から出力されたレーザ光λ1あるい
は非線形光学素子3で波長変換されたレーザ光λ2の一
方の光量をモニタして、予め設定された任意の光量に調
節して出射端より照射することにある。LD2は定電流駆
動されていても温度等の変化により光量が変動する。吻
合は、一定の光量で行なうのが望ましく、本実施例では
これを可能にしている。
非線形光学素子3の出射側にλ1Rコート15を施した
部分透過鏡21を配置している。この部分透過鏡21は、レ
ーザ光λ1は反射し、レーザ光λ2は透過するので、レー
ザ光λ1をモニタ光、レーザ光λ2を吻合に用いる作業光
とすることができる。反射したレーザ光λ1は受光素子2
2で光電変換され、この電気信号と予め任意に設定され
た値が光出力調整器23で比較、増幅され、この信号で電
源1を制御し、LD2の電流値を変えて光量を一定にす
る。レーザ光λ1とλ2の光量の割合は通常一定であるか
ら、レーザ光λ1の光量を制御することで間接的に作業
光であるレーザ光λ2の光量を制御できる。このような
構成とすることで、LD2の出力特性が変動した場合で
も、任意の光量が安定して得られ、またレーザ光λ2
みを出射することができる。
第5図(B)〜(E)は、第5図(A)の変形実施例
を示したものである。第5図(B)のものは、第5図
(A)の場合と同様に、非線形光学素子3の出射側にλ
1Rコート15を施した部分透過鏡21を配置し、反射され
たレーザ光λ1を反射鏡25、光学系4dを介して光検出フ
ィルタ26に入射させる。受光素子22及び光出力調整器23
の動作は、前記実施例と同じである。このような光検出
フィルタを用いれば、非線形光学素子3と一体化して製
作できる利点がある。
第5図(C)のものは、LD2の後に、LD側λ1ARコート
12、非線形光学素子3側λ2Rコート13を施した部分透
過鏡27を配置してある。この部分当27は、LD2より出力
されたレーザ光λ1を透過して非線形光学素子3に入射
し、非線形光学素子3からLD方向に反射されたレーザ光
λ2を反射して受光素子22に入射させ、光量をモニタす
る。このようにすることで、出射端の構成が簡単にな
り、小型、軽量化が可能になる。また、電源1、光出力
調整器23等は、比較的大きくすることもできるため、光
量調節、光量表示など、多機能化も可能となる。
第5図(D)のものは、非線形光学素子3の後に部分
透過鏡(ビームスプリッタ)29を置いている。この部分
透過鏡29には、非線形光学素子3から出射されたレーザ
光λ1とλ2が入射するが、このうちレーザ光λ2のみ
の、ある一定割合の光量を透過し、残りは反射する。透
過した光は吻合に用い、反射した光は受光素子22でモニ
タする。このようにすることで、実際に使用するレーザ
光のごく近傍でモニタすることができ、正確な光量調整
が可能となる。
第5図(E)のものは、非線形光学素子3から出射さ
れたレーザ光λ1とλ2は集光光学系に入射するが、この
光路にシャッタ30を配置している。このシャッタ30は反
射鏡でできており、シャッタ駆動回路31で駆動される。
吻合を行なわないとき、即ち、レーザ光が不要なとき
は、光路にシャッタ30を入れて光を反射させ、受光素子
22でモニタして光出力を制御する。吻合を行なうときは
シャッタ30を光路から退避させ、光を光学系4b,4cに入
射させる。このとき、受光素子22への入射光量は、第6
図(B)に示したように、ゼロとなり、光出力調整器23
はLD2に最大電流を流し、その結果、第6図(C)に示
すように、設定パワーS以上の光量Pが出力する。これ
を防ぐために、シャッタ駆動回路31と同期した信号保持
回路32を光出力調整器23と電源1との間に接続し、シャ
ッタ30が光路から退避しても移動する前の光出力調整器
の信号を保持するようにしている。このようにすること
で、第6図(D)に示したように、設定したパワーが略
得られ、また、シャッタ駆動回路を制御することで、吻
合を任意の周期、幅で行なうことが可能となる。
実施例4 第7図(A)は、本発明の第4の実施例を示したもの
で、基本的な構成は第3の実施例と略同じである。本実
施例の特徴は、LD2と非線形光学素子3との間に光路切
換装置34を配置したことである。ここでは、LD2はパル
ス動作をする。光路切換装置34としては反射鏡を有する
ピエゾ圧電素子や音響素子、ガルバノスキャナなどが使
用できるが、第7図(A)では、圧電素子が用いられて
いる。LD2から出力されるパルス光は、1パルス毎、あ
るいは数パルス毎に非線形光学素子3と受光素子22に交
互に入射するように、同期回路35により圧電素子が駆動
され、光路が切り換えられる。受光素子22に入射した光
はLD発振出力のモニタ及びLDの出力制御用フィードバッ
ク信号として、光出力調整器23にフィードバックされ
る。また、反射光がLD2に戻ることによりレーザ発振が
不安定になるのを防ぐために、光路切換装置34と非線形
光学素子3との間に光アイソレータ11が配置されてい
る。さらに、非線形光学素子3のLD側端部には、λ1AR
コート12・λ2Rコート13が施されており、レーザ光λ1
はほとんどLDに戻ることなく非線形光学素子3を通過
し、効率よくレーザ光λ2に変換される。このような構
成とすることにより、LD2の平均出力は常に一定とな
り、安定した吻合条件が得られることになる。また、レ
ーザ光λ1,λ2の出力のうちの大部分が非線形光学素子
3の出射端から出射することになり、光の利用効率が向
上する。
第7図(B)は、第7図(A)の変形実施例を示した
もので、光弾性効率を有する材質中に、超音波の印加に
より屈折率の疎密波を生じさせ、これを回折格子として
用いるものである。回折格子は、超音波の強度を変える
と、回折光の強度を変調でき、超音波の周波数を変える
ことにより回折光の回折角度を変調できるので、回折光
をLD発振出力のモニタ及びLDの出力制御用フィードバッ
ク信号として使用し、透過光を非線形光学素子3へ導
き、吻合用の作業光として使用することができ、第7図
(A)のものと同様な効果を持つ吻合装置が実現でき
る。なお、電気光学効果素子は、超音波の代りに交播電
界を用いるものであり、音響光学効果素子と同様な動作
をする。
実施例5 第8図(A)は、本発明の第5の実施例を示したもの
である。本実施例の特徴は、グレーティング38を用いて
LD2の発振を安定化し、さらに、グレーティング38から
の0次反射光を受光素子22に導き、LD2の出力調整用モ
ニタ光として使用することである。LD2は、非線形光学
素子3側及び反対側の両方にレーザ光を出力するタイプ
のものを用い、その反対側にグレーティング38を配置し
た構成である。グレーティング38は、1次回折構成がLD
2に逆注入するような位置に調整されており、グレーテ
ィング38から反射される0次回折光は受光素子22に入射
して、発振出力のモニタ及びLDの出力制御用フィードバ
ック信号として使用される。現状のLDは、温度や注入電
流、戻り光等の外部の環境変化に敏感であり、発振波長
や発振出力が変動するが、本実施例の構成によると、LD
2の発振は、グレーティング38により波長選択されるた
め、外部環境の変動に対して波長安定性が向上し、0次
光によりフィードバックされるため、発振出力も安定化
され、装置の信頼性が向上する。
第8図(B)は、第8図(A)の変形実施例を示した
もので、LD2の発振安定化手段をグレーティングからフ
ァブリペロー干渉計39に変更した例であり、グレーティ
ングを用いたものと同様の効果がある。
(発明の効果) 以上説明したように、本発明によれば、半導体レーザ
から出力される近赤外光の一部を短波長領域の可視光に
波長変換してこれをガイド光とし、あるいは、近赤外光
から変換された短波長領域の可視光のみを出射してこれ
を作業光兼ガイド光とするので、小型、簡便で、低価格
であり、かつ取り扱い易く、安全性の高い半導体レーザ
血管吻合装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の一実施例の構成図、第2図は、本発
明に使用される各種非線形光学素子の断面図、第3図
は、非線形光学素子にガス流路を有する吻合装置の構成
例を示す図、第4図(A)は、本発明の第2の実施例の
構成図、第4図(B)〜(E)は、第4図(A)の変形
実施例の構成図、第5図(A)は、本発明の第3の実施
例の構成図、第5図(B)〜(E)は、第5図(A)の
変形実施例の構成図、第6図は、第5図(E)の動作説
明図、第7図(A)は、本発明の第4の実施例の構成
図、第7図(B)は、第7図(A)の変形実施例の構成
図、第8図(B)は、第8図(A)の変形実施例の構成
図、第9図は、炭酸ガスレーザを用いた場合の血管吻合
条件を示す図である。 1…電源、2…LD、3…非線形光学素子、4a,4b,4c…光
学系、11…光アイソレータ、12…λ1ARコート、13…λ2
Rコート、14…λ2ARコート、15…λ1Rコート、16,19
…コーティングレンズ、17…干渉フィルタ、18…透過
鏡、21,27,29…部分透過鏡、22…受光素子、23…光出力
調整器、26…光検出ファイバ、32…信号保持回路、34…
光路切換装置、35…同期回路、36…音響光学効果素子、
38…グレーティング、39…干渉計。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】コヒーレントな光を出力する単一若しくは
    複数の半導体レーザ素子と、該半導体レーザ素子の光出
    力を制御する制御用電源調整器と、半導体レーザ素子か
    ら出力された波長λ1のレーザ光を入射し波長λ1のレー
    ザ光と波長変換された波長λ2のレーザ光の両方又は波
    長変換された波長λ2のレーザ光のみを出射する非線形
    光学素子と、前記非線形光学素子から出射された波長λ
    1のレーザ光又は波長λ2のレーザ光を収束させる光学系
    とからなることを特徴とする半導体レーザ血管吻合装
    置。
  2. 【請求項2】半導体レーザ素子の光出力の制御用電源調
    整器へのフィードバック信号として、波長λ1のレーザ
    光と波長λ2のレーザ光の両方の光の一部、又は一方の
    光の一部若しくは全部を取り出す光学的手段と、取り出
    した光を入射して光電変換する手段とをさらに備えてい
    ることを特徴とする請求項(1)記載の半導体レーザ血
    管吻合装置。
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