JP2879661B2 - タンパク質あるいはペプチドのアミノ酸配列を決定する方法 - Google Patents
タンパク質あるいはペプチドのアミノ酸配列を決定する方法Info
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Description
はペプチドの1次構造解析法に関する。特に、アミノ末
端(N末端)アミノ酸残基のα−アミノ基が修飾されて
いるタンパク質あるいはペプチドの、N末端からのアミ
ノ酸配列分析法に関する。
いることが明らかにされてきている。タンパク質のうち
半数以上が何らかのN末端修飾を受けているといわれて
いる。タンパク質のN末端からアミノ酸配列分析は一般
的にエドマン分解法によって行われている。しかしなが
らこれらN末端が修飾されているタンパク質は、そのま
まではエドマン法を用いたアミノ酸配列分析ができな
い。
基がアセチル化されているタンパク質(N−アセチルタ
ンパク質)がある。タンパク質のN末端修飾のうち80
%以上がアセチル化であるといわれている。更にそのう
ちおよそ30%がN末端セリンのα−アミノ基がアセチ
ル化されているタンパク質(N−アセチルセリルタンパ
ク質)であり、およそ10%がN末端スレオニンのα−
アミノ基がアセチル化されているタンパク質(N−アセ
チルスレオニルタンパク質)であるといわれている。従
来これらN−アセチルタンパク質のN末端からのアミノ
酸配列を決定するためには、以下のような方法が報告さ
れている。
消化し複数のペプチド断片の混合物とする。 (2)新たに生成したペプチド断片のα−アミノ基にフ
ェニルイソチオシアナートを作用させ、チオカルバミル
化合物とする。ここでは、元の試料のN末端ペプチドの
N末端アミノ酸はアセチル化されているため作用を受け
ない。 (3)チオカルバミル化合物を過蟻酸で酸化してカルバ
ミル化合物とし、エドマン分解されないようにする。 (4)アセチルアミノ酸遊離酵素を作用させ、元の試料
のN末端ペプチドのN末端のアセチル化されたアミノ酸
を遊離する。 (5)以降エドマン法でアミノ酸配列を決定する。ここ
で作用を受けるのは、元の試料のN末端ペプチドだけで
ある(Tsunazawaet al.,J. Protein Chem(1992)11
巻、382ページ)。
消化し複数のペプチド断片の混合物とする。 (2)ゲルろ過でペプチド断片を精製する。 (3)ペプチド断片の混合物から、HPLCを用いて元
の試料のN末端ペプチドを分取する。 (4)アセチルアミノ酸遊離酵素を作用させ、元の試料
のN末端ペプチドのN末端のアセチル化されたアミノ酸
を遊離する。 (5)以降エドマン法でアミノ酸配列を決定する(続生
化学実験講座2、タンパク質の化学(上)、日本生化学
会編、東京化学同人、227ページ)。
操作を実行する。得られた元の試料のN末端ペプチドを
質量分析してアミノ酸配列を分析する(続生化学実験講
座2、タンパク質の化学(上)、日本生化学会編、東京
化学同人、228ページ)。
条件が過酷なため試料が変化する、特別の機器の使用を
含む煩雑な工程を必要とし回収率が低い、酵素を使用す
るため酵素の基質特異性や活性がさまざまであることか
ら正確な分析が困難になることがある、という欠点があ
る。
ず、特別の機器を使用を含む煩雑な工程を無くし、酵素
を用いることなく、N−アセチルセリルタンパク質また
はペプチドおよびN−アセチルスレオニルタンパク質ま
たはペプチド(N−アセチルセリルまたはスレオニルタ
ンパク質またはペプチド)のN末端からのアミノ酸配列
を決定する方法を提供しようとするものである。
の欠点を克服しN−アセチルセリルまたはスレオニルタ
ンパク質あるいはペプチドのN末端からのアミノ酸の配
列を決定するために、N末端のセリンまたはスレオニン
の水酸基がアセチル化されているタンパク質あるいはペ
プチド(O−アセチルセリルまたはスレオニルタンパク
質あるいはペプチド)に酸性条件下でイソチオシアナー
ト化合物を作用させてチオカルバミル化合物を得て、こ
のチオカルバミル化合物をエドマン分解法によって分析
することとした。このO−アセチルセリルまたはスレオ
ニルタンパク質あるいはペプチドは、N−アセチルセリ
ルまたはスレオニルタンパク質あるいはペプチドに酸を
作用させて得たものである。
ず、特別の機器を使用を含む煩雑な工程を無くし、酵素
を用いることなく、N−アセチルセリルまたはスレオニ
ルタンパク質あるいはペプチドのN末端からのアミノ酸
配列を決定することが可能になった。
細に説明する。 (実施例1)図1は本発明の分析方法を示す工程図であ
る。図中の、R−、はアミノ酸の側鎖を示す。これは以
降の各図においても同じである。まず、N−アセチルセ
リルまたはスレオニルタンパク質あるいはペプチドに酸
を作用させて、O−アセチルセリルまたはスレオニルタ
ンパク質あるいはペプチドを得る。次に、このO−アセ
チルセリルまたはスレオニルタンパク質あるいはペプチ
ドに酸性条件下でφ−NCSで表わされるイソチオシア
ナート化合物を作用させ、チオカルバミル化合物を得
る。以下、この試料をエドマン法を用いて分析すること
によって、N−アセチルセリルまたはスレオニルタンパ
ク質あるいはペプチドのN末端からのアミノ酸配列分析
を決定することができる。
細を述べる。本発明のアミノ酸配列分析の操作手順は以
下の通りである。(図2参照) N−アセチルセリルまたはスレオニルタンパク質あるい
はペプチドを含む試料溶液、あるいはN−アセチルセリ
ルまたはスレオニルタンパク質あるいはペプチドを保持
した膜をチューブに入れた後乾燥させる。
用させる。 ・反応条件 酸溶液 :75%ペンタフルオロプロピオン酸(PFP
A)水溶液 反応温度:50℃ 反応時間:1時間 ここでは、PFPAの代わりに、ヘプタフルオロ酪酸
(HFBA)を含む他の酸を用いることもできる。ここ
で、N−アセチルセリルまたはスレオニルタンパク質あ
るいはペプチドに酸が作用し、O−アセチルセリルまた
はスレオニルタンパク質あるいはペプチドが得られる。
ここで、チューブ内の試料を乾燥させる。
合物を含む溶液を入れ、試料に作用させる。 ・反応条件 イソチオシアナート化合物:4−スルフォフェニルイソチオシアナート(SPIT C)HO3S-C6H4-NCS SPITC濃度 :0.5% 溶媒 :0.1Mピリジン−酢酸緩衝溶液(pH6.0) とアセトニトリルとを3対2の割合で混合したもの 反応温度 :50℃ 反応時間 :30分間 ここでは、SPITCの代わりに、トリメチルシリルイ
ソチオシアナートを含む他のイソチオシアナート化合物
を用いることもできる。
ニルタンパク質あるいはペプチドにイソチオシアナート
化合物が作用し、チオカルバミル化合物が得られる。そ
してこの試料をエドマン法を用いて分析し、得られる一
連のチオヒダントイン化合物を同定することによって、
タンパク質あるいはペプチドのアミノ酸配列を決定す
る。エドマン法を用いた分析方法の手順の詳細について
は公知であるのでここでは述べない。
た操作によって得られたチオカルバミル化合物にエドマ
ン分解法(図3参照)を用いることによって、アミノ酸
配列分析が可能であることを示す。試料として、配列番
号1のヘプタペプチド、アセチルセリル−グルタモイル
−アスパラギニル−プロリル−チロシル−バリル−バリ
ンアミドである(Ac-Ser-Gln-Asn-Pro-Tyr-Val-Val-NH2)
を用いた。図4は、得られたチオカルバミル化合物を質
量分析して得られた結果である。
ド)に溶解する。 ターゲット上にマトリックスを1μlのせる。 更にターゲット上に試料溶液を1μlのせ、混和す
る。 イオン源に導入する。 配列番号1のヘプタペプチドに対応するO−アセチルペ
プチドにSPITCが作用して得られるチオカルバミル
化合物(分子量1062)に対応する分子イオンが検出
されている。
させる。これは、図3に示すようにアミノ酸配列分析を
行うためのエドマン反応における切断の工程である。す
なわち、タンパク質あるいはペプチドのN末端アミノ酸
のα−アミノ基にイソチオシアナート化合物が作用して
できたチオカルバミルタンパク質あるいはペプチドのN
末端側の第1アミノ酸残基と第2アミノ酸残基との間の
ペプチド結合が、酸によって特異的に切断される工程で
ある。
た結果である。
る。配列番号1のヘプタペプチドに対応するO−アセチ
ルペプチドにSPITCが作用して得られるチオカルバ
ミル化合物(分子量1062)に対応する分子イオンが
検出されなくなり、試料として用いたヘプタペプチドが
アミノ末端のアセチル化されたセリンを失ったヘキサペ
プチドであるグルタモイル−アスパラギニル−プロリル
−チロシル−バリル−バリンアミド(Gln-Asn-Pro-Tyr-V
al-Val-NH2)(分子量717)に対応する分子イオンが
検出されている。
物にエドマン分解法を用いることによってアミノ酸配列
分析が可能であることがわかる。また、この実施例にお
いて、ここで試料として用いた配列番号1のヘプタペプ
チドがアミノ末端のアセチル化されたセリンを失ったヘ
キサペプチドであるグルタモイル−アスパラギニル−プ
ロリル−チロシル−バリル−バリンアミド(Gln-Asn-Pr
o-Tyr-Val-Val-NH2)が得られたことから、SPITCが
配列番号1のヘプタペプチドに対応するO−アセチルペ
プチドのN末端アミノ酸のα−アミノ基と反応して対応
するチオカルバミル化合物が生成したこと、更に前段階
において、配列番号1のヘプタペプチド(N−アセチル
ペプチド)に酸を作用させた際に配列番号1のヘプタペ
プチドに対応するO−アセチルペプチドが生成してN末
端アミノ酸のα−アミノ基が出現したこと、がわかる。
端アミノ酸のα−アミノ基とが反応して、対応するチオ
カルバミル化合物が生成する際の反応条件を検討した結
果を示す。試料として配列番号2のペンタペプチドであ
るロイシル−トリプトファニル−メチオニル−アルギニ
ル−フェニルアラニン(Leu-Trp-Met-Arg-Phe)を用い
た。
ンタペプチドとを反応させる。 (2)反応生成物を高速液体クロマトグラフ(HPL
C)で分析する。 (3)未反応の配列番号2のペンタペプチド由来のピー
ク面積(Aとする)を未反応の配列番号2のペンタペプ
チド由来のピーク面積とSPITCと配列番号2のペン
タペプチドとの反応生成物由来のピーク面積(Bとす
る)との和と比較する。
る。 (1−A/A+B)×100 HPLC分析の条件は以下の通りである。 ・カラム :資生堂 CAPSELPACK C−18 ・濃度勾配溶出:A液 0.1%TFA水溶液 B液 80%メタノールと0.1%TFAとを含む水溶液 0− 5min B液20% 5−25min B液20→100%(LINEAR) 25−30min B液100% ・検出 :280nmの吸収 ピークの同定には質量分析を用いた。質量分析の条件
は、実施例3に記載したものと同じである。結果を図6
から図11に示す。反応条件と結果を示した図の対応を
まとめたのが下記表1である。
率が高いことがわかる。これらのうち、アミノ酸配列分
析に用いる膜への含浸性のより高い、緩衝溶液(pH
6.0)にアセトニトリルを上記の比率で混合した溶
液、を上述の実施例において用いた。
になる。本発明においては、N末端のセリンまたはスレ
オニンのα−アミノ基がアセチル化されたタンパク質あ
るいはペプチド(N−アセチルセリルまたはスレオニル
タンパク質あるいはペプチド)のN末端からのアミノ酸
の配列分析を遂行するために、O−アセチルセリルまた
はスレオニルタンパク質あるいはペプチドに酸性条件下
でイソチオシアナート化合物を作用させてチオカルバミ
ル化合物を得て、このチオカルバミル化合物をエドマン
分解法によって分析することとした。このO−アセチル
セリルまたはスレオニルタンパク質あるいはペプチド
は、N−アセチルセリルまたはスレオニルタンパク質あ
るいはペプチドに酸を作用させて得たものである。これ
によって、N−アセチルセリルまたはスレオニルタンパ
ク質あるいはペプチドの、N末端からのアミノ酸配列を
決定することが可能になった。
N末端のセリンまたはスレオニンのα−アミノ基がアセ
チル化されたタンパク質あるいはペプチド(N−アセチ
ルセリルまたはスレオニルタンパク質あるいはペプチ
ド)のN末端からのアミノ酸の配列分析を遂行するため
に、O−アセチルセリルまたはスレオニルタンパク質あ
るいはペプチドに酸性条件下でイソチオシアナート化合
物を作用させてチオカルバミル化合物を得て、このチオ
カルバミル化合物をエドマン分解法によって分析するこ
ととした。このO−アセチルセリルまたはスレオニルタ
ンパク質あるいはペプチドは、N−アセチルセリルまた
はスレオニルタンパク質あるいはペプチドに酸を作用さ
せて得たものである。
雑な工程を無くし、酵素を用いることなく、N−アセチ
ルセリルまたはスレオニルタンパク質あるいはペプチド
の、N末端からのアミノ酸配列を決定することが可能に
なった。よって、本発明によるタンパク質あるいはペプ
チドのN末端からのアミノ酸配列を決定する方法はその
工業的価値が大である。
る。
合物を質量分析した結果である。
反応収率を調べるためのHPLC分析の結果である。
反応収率を調べるためのHPLC分析の結果である。
反応収率を調べるためのHPLC分析の結果である。
反応収率を調べるためのHPLC分析の結果である。
の反応収率を調べるためのHPLC分析の結果である。
の反応収率を調べるためのHPLC分析の結果である。
ルペプチドにSPITCが作用して得られるチオカルバ
ミル化合物(分子量1062)、に対応する分子イオン
由来の信号 2 配列番号1のヘプタペプチドがアミノ末端のアセチ
ル化されたセリンを失ったヘキサペプチド(分子量71
7)、に対応する分子イオン由来の信号 3 配列番号2のペンタペプチド由来のピーク 4 SPITCと配列番号2のペンタペプチドとの反応
生成物由来のピーク
Claims (3)
- 【請求項1】 アミノ末端アミノ酸残基の水酸基がアセ
チル化されたタンパク質あるいはペプチドに酸性条件下
でイソチオシアナート化合物を作用させてチオカルバミ
ル化合物を得ることを特徴とする、タンパク質あるいは
ペプチドのアミノ酸配列を決定する方法。 - 【請求項2】 前記アミノ末端アミノ酸残基の水酸基が
アセチル化されたタンパク質あるいはペプチドは、アミ
ノ末端アミノ酸残基のα−アミノ基がアセチル化された
タンパク質あるいはペプチドに酸を作用させて得たもの
であることを特徴とする、請求項1記載のタンパク質あ
るいはペプチドのアミノ酸配列を決定する方法 - 【請求項3】 前記アミノ末端アミノ酸残基の水酸基が
アセチル化されたタンパク質あるいはペプチドに酸性条
件下でイソチオシアナート化合物を作用させて得たチオ
カルバミル化合物をエドマン分解法によって分析するこ
とを特徴とする、請求項1記載のタンパク質あるいはペ
プチドのアミノ酸配列を決定する方法。
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1997
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