JP2863236B2 - 眼科用器具 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は眼科用器具に関し、殊に眼内に人工水晶体を
移植するための器具に関する。

この種の移植は本来の水晶体が白内障にかかった時に
行なわれる。従来からそこひの処置には、透明度の低下
した本来の水晶体を人工水晶体に置換することによって
実施されていた。そして硬質合成材質からなる人工水晶
体が移植されていた。しかしこの種の材質は時間がたつ
と変質して透明度が低下した。しかもこの種の人工水晶
体を移植するには角膜底部を比較的長い寸法に亘って切
開する必要があった。従って傷の治癒に時日をかける必
要上、患者は手術後も数日に亘って入院加療せねばなら
なかった。

最近、別の材質からなる人工水晶体が完成した。この
材質の透明度は殆んど変化しない。しかも高い弾性を有
していて、かなり大きく変形させることができ、外力を
除くとすぐに原形に復元する。

従ってこの材質で出来た人工水晶体をせいぜい長さ3m
mの切り口を通して眼内に導き、又該切り口は眼の水性
体液と共に流出する本来の水晶体の除去を可能ならし
め、手術中に流出した両者に生理学的液体を置換えるの
に役立つ。

人工水晶体からなる移植物の弾性材質が該移植物が載
置される支持体に付着しないで、該支持体を持ち上げた
時に簡単に外れる場合には、該人工水晶体材質の摺動摩
擦係数が極めて高いので該水晶体を傷付けずに支持体に
沿って摺動させることはできない。

爪状に形成された３本の針金を有するクリップによっ
て（そのうち２本の爪は人工水晶体からなる移植物に係
合し、第３本目の爪は他の２本の爪間に亘るように作用
点に押圧された人工水晶体の中心に担持される）この移
植物をそれ自体の上に包んで3mmの長さの切り口を通し
て眼内に導くことができる。不幸なことに、これらの爪
は移植物に沿って摺動しないので、クリップを眼から引
抜くことができない。従って比較的長い切り口を形成し
て所定の位置にあるクリップを眼から引抜かねばならな
い。

角膜の基部に設けた3.5mm〜4mm程度の切り口を通して
眼内に人工水晶体を移植できる眼科用器具は米国特許第
4747404号に開示されている。この眼科用器具は、ｕ形
状の基部と倒立ｕ形状の上部分とを形成するため長手方
向に分離された管と、基部に対して上部分を摺動させる
摺動手段と、管内に可撓性移植物を位置決めする位置決
め手段とを備える。上記の位置決めをするために管の上
部分を移動し、眼科用ピンセット等のはさみを用いて弾
性移植物を基部の上に導く。次に管の上部を弾性移植物
に戻して該移植物を所定の位置に保持する。続いて弾性
移植物を管の内部に巻きこむ。

弾性移植物を眼内に置くには、角膜基部に形成した切
り口を通して眼内に管を導いた後に管の上部分を摺動さ
せて、弾性移植物をその弾性を利用して管の基部から押
出すだけで十分である。

従ってこの器具を用いた場合、管の上部分は弾性移植
物に接触していて該弾性移植物を管の上部に対して摺動
させねばならない。上述したように移植物の弾性材質の
摺動摩擦係数は極めて高いので、移植物を支持体に対し
て摺動させると該移植物に取り返しのつかない損害を与
えることになる。

また上述の眼科用器具は極めて加工精度の高い多くの
機械部品を含むので、製作費が高くつく。

本発明の目的は、角膜基部に形成した極めて小さな切
り口を通して弾性のある人工水晶体を移植することがで
き、そこひの移動処置ができて上述した困難性を回避し
た眼科用器具を提供することである。

本発明の眼科用器具は、内部でピストンが摺動可能な
筒状案内を備え、該ピストンはその後端で操作すること
ができかつその前端に可撓性の薄いフィルムが取付けら
れ、該フィルム内において人工水晶体からなる弾性のあ
る眼内移植物がフィルムで囲むように包まれるものであ
る。

上記の可撓性の薄いフィルムは特に糊付け、溶接、挿
入等の公知の方法でピストンの前端部に取付けられる。
フィルムはピストンの前端部に設けた弾性腕間に把持す
るだけでもよい。この薄いフィルムはその剛性又は眼内
移植物の厚さに基いて一枚物又は数片に分かれたものに
形成することができる。

眼内移植物を囲んだ薄いフィルムがピストンを移動す
ることによって案内筒の中に導かれ、このことによって
眼内移植物と案内筒の内壁との間の摺動摩擦をなくす
る。

眼内移植物の折りたたみと案内筒内への誘導を容易に
するために、案内筒の前端部に漏斗状のニップルを設け
ると都合がよい。このニップルは案内筒内に眼内移植物
を位置決めし、その後に後退させるのに役立つ。

本発明の特徴と利点は以下に示す限定されることのな
い実施例及び添付図面から明らかになるであろう。

第１図は可撓性の眼内移植物を載置した本発明の眼科
用器具の垂直平面についての直径断面図、第２図は器具
取扱いの第１段階を示す第１図と類似の断面図、第３図
は第１図の位置における平面図で、直径水平面について
の断面を示し、第４図は第１図のIV−IV線についての断
面図、第５図は第２図のＶ−Ｖ線についての断面図、第
６図は人工水晶体からなる可撓性移植物を眼内に導くよ
うに準備された器具の横断面図、第7,8,9図は可撓性フ
ィルムの別の実施例を示す図、第10図は本発明の別の実
施例にかかる眼科用器具の垂直平面についての直径断面
図、第11図は第10図の平面図で、直径水平平面について
の断面を示し、第12図は第10図のXII−XII線についての
断面図、第13図は第11図のXIII−XIII線についての断面
図、第14図は人工水晶体からなる可撓性移植物を眼内に
導くように準備された器具の横断面図である。

第１図ないし第６図に示す眼科用器具は円形輪郭（第
６図）で示した管１を含む。しかし後述する理由でこの
管は長円形のような平坦断面形にすることが望ましい。
管１の後端部には該管を操作する横木が造り付けられて
いる。管１内には摩擦の少ないピストン３が摺動自在に
設けられている。ピストン３の後端部に切り込み４を設
け掴み易くしている。ピストン３の前端部には二つの腕
部5,6を有するクリップが設けられている。腕部５は製
造時にピストン３と一体に形成される。鋲７によって腕
部５に固着した腕部６は弾性があって、常時は腕部５か
ら離隔するように形成されている。

図示の実施例において器具の上述した各部分は金属製
である。しかし好ましくはこれらの各部分は合成材料で
作られ、その場合腕部６は超音波溶接又は接着剤によっ
て腕部５に取り付けられる。

腕部５の上面には切り込み８が設けられている。腕部
５の前端部９は、凹面が上向きの円弧状に形成される。
腕部６の前端に向って膨出部10が形成され、該膨出部10
の下面にはスタッド部11が形成されている。膨出部10の
前端は下方に向って弯曲した幅の狭い鼻部12で終ってい
る。この鼻部12の幅は腕部５の前端部９の幅よりも狭
く、器具の休止位置（第１図）において腕部５に触れな
いで該腕部５上に延びている。この位置において漏斗状
のニップル13が管１の前端部を蔽って摺動移動される。

極めて薄い（0.02mm〜0.03mm）可撓性フィルム14が腕
部５上に付加的に配置されている。第１〜６図に示すよ
うに器具を繰返し使用する場合には、夫々の移植を行な
う前に新しい可撓性フィルム14を腕部５上に置く。フィ
ルム14が薄いけれどもそれでも剛性が強過ぎる場合には
該フィルムの長さを考慮してフィルムに一つ又はそれ以
上のスリットを形成することができる。

第7,8,9図には可撓性フィルム14の異なった実施例が
示されている。この可撓性フィルム14は、眼内移植物を
受納するための容器18と、ピストン３（第７図）に着脱
自在に又は固定的に取付けるための舌状部19とを形成す
るために切りだした一枚のシートで形成することができ
る。可撓性フィルム14はまたより大型の容器18を備える
ことができる。この容器18の両側部は縁部20を形成する
ために容器の上部が折り曲げられている。この縁部によ
って容器18上に眼内移植物をうまく維持して該移植物を
包むことが容易となる。（第８図）。また縁部20は容器
を形成したシートの下に配置した第２のシートに形成す
ることができる。はさみを用いて可撓性フィルムを数個
の部分に切ることによって切り目21を設けて、フィルム
14の可撓性を増加すると共に眼内移植物を置いた後に眼
からの該フィルム14の取除きを容易にする。

上述した眼科用器具はすぐ使えるものでなくてはなら
ない。このために、容器の役目をするフィルム14の上に
弾性のある眼内移植物15を置く。この眼内移植物15は、
眼に人工水晶体16を中心合わせするための二つの翼状部
17を有して一体に形成された人工水晶体16を備える。当
然人工水晶体16は処置すべき眼の形状を元にしかつ眼の
異常をできるだけ矯正するように選ばれる。

第１の位置において、ピストン３を管１の後方に向け
て引き抜く。膨出部10が管１に入り始めると該膨出部に
よって腕部６が腕部５に押し付けられる。次いでスタッ
ド部11が切り込み８に入り、これによってフィルム14が
腕部5,6に、従ってピストン３に固着される。これと同
時に鼻部12の前端が移植物15の一方の翼状部17上に下降
する。このようにして鼻部12は翼状部17及びフィルム14
を、腕部５の前端部９に設けられた凹部の底に押し付け
る（第５図）。フィルム14はＶ形をなし、移植物もまた
この形状に合わせられる。

管１からのピストン３の引き抜きを続けると、フィル
ム14と移植物15がニップル13に接触するようになる。ニ
ップルはフィルム14の両縁部を、該フィルムを互に折り
重ねる点に次第に近づけてフィルム上に移植物15を包
み、かつフィルム14と移植物15とを管１（第６図）に挿
入する。最初フィルム14がニップル13に接触し次いで管
１に接触するのでフィルムは管内を無理なく摺動する。

続いて管１からニップル13を後退させる。管の端部を
角膜基部に形成した切り口に導くことができる。最初こ
の切り口を通して本来の水晶体と眼の水性体液を生理学
的液体に置換える。手術のこの段階で、切り口の壁に対
しては丸形の管よりも平坦な管の方が要望される。切り
口内に管１の先端を3mmに亘って挿入するためには管１
の直径は3mmより僅か小さいことが必要である。

皮下注射器を取扱うのと同じ要領でピストン３を管１
内に押込むだけで移植物15を前眼房に導入する。摺動摩
擦係数の低いフィルム14が管から無理なく押出される。
前眼房に挿入されると、移植物は直ちに第1,3,4に示さ
れた元の形状に戻る。移植物が完全に前眼房に入ると予
め眼内に注入された生理学的液体内においてフィルム14
上に浮遊し、後に眼から取除かれるフィルム14を押圧す
ることがない。

次に移植物15をどう孔を通して後眼房に入れ、続いて
眼に新しい水性体液を注入して生物学的液体を追出す。
角膜低部に形成された3mm長さの切り口を閉じるには一
点を縫合すれば十分で、患者の以後の入院加療は不必要
である。

第10〜14図には本発明にかかるこの眼科用器具の使い
すて用変形が示されている。これらの図面において、第
１〜６図に示した再使用可能な眼科用器具と同一の要素
には同一の参照符号を付けて示した。

使いすて可能な眼科用器具は、長円形断面の管１を備
え、管の後端部には取扱いの容易なように横木２が設け
られている。管内には摩擦係数の低いピストン３が摺動
自在に設けられている。ピストンの後端付近に切り込み
４を設けて取扱い易くする。ピストンの前端部に可撓性
フィルム14を取付ける。この取付けは糊付け、溶接、挿
入等の手段で実施される。ピストン３と可撓性フィルム
14を射出成型によって一体に形成することもできる。移
植物15を管内に導き易いように管１の前端部にニップル
13を設ける。管を眼に導く前にニップル13を後退させ
る。

第10〜14図に示す使いすて眼科用器具の使用方法は第
１〜６図に示した繰り返し使用型眼科用器具の使用方法
と同じである。しかし移植物15を眼内に置いた後に、Ｅ
線（第11図）に沿ってはさみで切断することによって数
個の部分に分離することができる。容器の縁部が移植物
に接触しているので、可撓性フィルムが一枚物であるよ
りも数枚に分かれている方が引抜き易い。

Claims (7)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】人工水晶体を眼に移植するための眼科用器
   具であって、上記眼科用器具が摺動ピストンを内蔵した
   筒状案内を備えたものにおいて、ピストンの前端部に取
   付けた可撓性の薄いフィルムによって、人工水晶体から
   なる眼内移植物を該フィルムで該移植物を囲むように包
   んだことを特徴とする眼科用器具。
2. 【請求項２】上記フィルムが移植物を収容する容器と、
   該移植物を部分的に蔽うようにした二つの折り曲げた縁
   部とを備えた請求の範囲１に記載の器具。
3. 【請求項３】上記フィルムが少なくとも一つの長手方向
   スリットを含んだ請求の範囲１又は２に記載の器具。
4. 【請求項４】上記ピストンの前端部に、フィルムを保持
   するクリップが設けられた請求の範囲１から３までのい
   ずれか１項に記載の器具。
5. 【請求項５】クリップの腕部が弾性があり、該クリップ
   は通常筒状案内の外部において開くように形成された請
   求の範囲４に記載の器具。
6. 【請求項６】ピストンとフィルムとが射出成型によって
   一つ物に一体形成された請求の範囲１から３までのいず
   れか１項に記載の器具。
7. 【請求項７】筒状案内の断面が長円形である請求の範囲
   １から７までのいずれか１項に記載の器具。