JP2842000B2 - 走査型トンネル顕微鏡を用いた磁区または磁気構造の観察方法 - Google Patents

走査型トンネル顕微鏡を用いた磁区または磁気構造の観察方法

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JP2842000B2
JP2842000B2 JP4013483A JP1348392A JP2842000B2 JP 2842000 B2 JP2842000 B2 JP 2842000B2 JP 4013483 A JP4013483 A JP 4013483A JP 1348392 A JP1348392 A JP 1348392A JP 2842000 B2 JP2842000 B2 JP 2842000B2
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雅嗣 小川
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  • Measurement Of Length, Angles, Or The Like Using Electric Or Magnetic Means (AREA)
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は磁区または磁気構造観察
技術に関する。
【0002】
【従来の技術】STM(Scanning Tunne
ling Microscope;走査型トンネル顕微
鏡)はナノメータオーダの表面観察技術として、広く研
究されまた製品化されている。その原理は、観察対象と
トンネル電流検出チップとの間に流れるトンネル電流を
測定し、トンネル電流が一定になるように観察対照の表
面をなぞることによって表面形状を知ろうとするもので
ある。分解能としては、0.1nm程度の高分解能を持
つ。
【0003】磁区観察技術には、偏光顕微鏡,ローレン
ツTEM(Transmission Electro
n Microscope),MFM(Magneti
cForce Microscope)等が存在する。
偏光顕微鏡は、観察対象に偏光子を通した光を当て、カ
ー効果によって回転した偏光面を検光子を通して検出す
ることによって観察対象の磁区を調べるというものであ
る。ローレンツTEMは、観察対象に電子線を当て、そ
の透過電子線の様子から磁区の状態を知ろうとするもの
である。観察対象を透過する際、電子線はローレンツ力
によってねじ曲げられ、それによって、磁区の方向によ
ってコントラストが生じる。MFMは、STMで用いる
ようなチップをある周波数で振動させ、その振動の大き
さを検出することによって磁区を調べるというものであ
る。振動の大きさはチップ周辺の磁場によって変わるの
で、磁区が検出できる。その際、チップは磁性体であ
る。これらの技術に関して、様々な工夫がなされている
が、その分解能はどれも100nm程度であり、STM
が有する分解能には及ばない。
【0004】STMを用いて磁気的な表面観察を行う方
法としては、以下に示す方法が知られている。フィジカ
ル・レビュー・レター(Physical Revie
wLetters)第65巻247頁(1990年)に
示されているように、CrO2 よりなるトンネル電流検
出チップを用いた、垂直磁化と平坦な表面を持つCr
(001)面の表面磁気構造の観察が、それである。こ
れは、半金属的強磁性体CrO2 のフェルミ面近傍での
up−spin電子とdown−spin電子の状態密
度の差を利用したもので、それらの差から、Cr(00
1)面の表面磁化のスピンの向きによってトンネル電流
が変化し、磁気構造を判断することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の方法で
は、観察したい物質の表面に凹凸があると、トンネル電
流の変化が、表面形状の変化によるのか、スピンの向き
の変化によるのかが分からず、精度の良い表面の磁区ま
たは磁気構造の観察を行うことができない。
【0006】本発明の目的は、STMの持つナノオーダ
の分解能を、表面観察のみならず磁区または磁気構造、
およびそれらの磁化の向きの観察にまで応用し、あらゆ
る表面形状に対応できる、超高分解能を持つ磁区または
磁気構造の観察技術を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の走査型トンネル
顕微鏡を用いた磁区または磁気構造の観察方法は、トン
ネル電流検出チップにバイアス磁場を加え、トンネル電
流を測定することにより、物質の磁区または磁気構造、
およびそれらの磁化の向きを観察することを特徴とす
る。
【0008】また本発明の走査型トンネル顕微鏡を用い
た磁区または磁気構造の観察方法は、トンネル電流検出
チップに磁場を加えた場合と加えない場合のトンネル電
流の測定を行うことにより、物質の磁区または磁気構
造、およびそれらの磁化の向きを観察することを特徴と
する。
【0009】さらに本発明の走査型トンネル顕微鏡を用
いた磁区または磁気構造の観察方法は、トンネル電流検
出チップに周期的なバイアス磁場を加え、このバイアス
磁場の周期と同期したトンネル電流をロックインアンプ
を通して測定することを特徴とする。
【0010】
【作用】物体間のトンネル電流のコンダクタンスは、個
々の物体の電子の状態密度に関係し、個々の物体が磁化
を持っている場合には、次のような関係が成り立つ。
【0011】
【数1】
【0012】ここで、Gはコンダクタンス、ρ↑はup
−sign電子、ρ↓はdown−spin電子の状態
密度をそれぞれ表す。また、サブスクリプト1と2はそ
れぞれの物質を表す。(1)式を見ると分かるように、
個々の物質のup−spin電子とdown−spin
電子の状態密度に差があれば、言い替えれば、磁化を持
っているならば、両者の磁化の方向が平行のときと反平
行のときとでコンダクタンスが変わることが分かる。ま
た、どちらかの物質が磁化を持たないときには差異は現
れないことも分かる。
【0013】この原理を応用し、トンネル電流検出チッ
プにバイアス磁場を加えることによって、チップのup
−spin電子とdown−spin電子の状態密度に
偏極を与えれば、磁性体の表面の磁区または磁気構造を
コンダクタンスの違いによって観察することが可能とな
る。その際、トンネル電流検出チップには、Pd,Pt
等の常磁性体が適している。
【0014】物質の表面が均一な場合、トンネル電流検
出チップにバイアス磁場を加え、物質表面を走査すれ
ば、物質表面の磁化の向きにより検出されるトンネル電
流が変化するので、磁区または磁気構造の観察が可能と
なる。
【0015】物体の表面が均一な平面となっていること
は少ない。したがって、磁場を加えたトンネル電流検出
チップによって検出されるコンダクタンスの違いには、
表面形状による部分が含まれており、正確に磁区または
磁気構造のみを反映したものではない。そこで、同じ位
置で、トンネル電流検出チップに磁場を加えた場合と加
えない場合の測定を行い、表面の形状による部分を消せ
ば、磁区または磁気構造に関する情報のみを抽出でき、
精度良い磁区または磁気構造の観察が行える。
【0016】バイアス磁場を周期的に加え、それと同じ
周期の信号成分だけ拾えば、ノイズ成分を除去すること
ができ、バイアス磁場を一定に加えるよりも精度良い磁
区または磁気構造の観察が行える。
【0017】
【実施例】図1は垂直磁化を持ち、表面が平坦な物質の
磁区または磁気構造の観察方法を示す概略図である。ト
ンネル電流検出チップ1に、観察する物質2の磁化方向
と平行または反平行のバイアス磁場をコイル3と電源4
を用いて加え、表面を走査したときのコンダクタンスの
違いを観察する。トンネル電流検出チップによる信号は
電流計5に入力される。物質の磁化の向きは、トンネル
電流を一定に保つモードならばトンネル電流検出チップ
1と物質2間の距離に、トンネル電流検出チップ1と物
質2間の距離を一定に保つモードならばトンネル電流値
に反映される。なお、走査するものは、トンネル電流検
出チップ1でも物質2でもよい。
【0018】図2は面内磁化を持ち、表面が平坦な物質
の磁区または磁気構造の観察方法を示す概略図である。
トンネル電流検出チップ1に、観察する物質6の磁化の
方向と平行または反平行のバイアス磁場をコイル3と電
源4を用いて加え、表面を走査したときのコンダクタン
スの違いを観察する。トンネル電流検出チップ1による
信号は電流計5に入力される。物質の磁化の向きは、ト
ンネル電流を一定に保つモードならばトンネル電流検出
チップ1と物質6間の距離に、トンネル電流検出チップ
1と物質6間の距離を一定に保つモードならばトンネル
電流値に反映される。なお、走査するものは、トンネル
電流検出チップ1でも物質6でもよい。
【0019】図3は垂直磁化を持ち、表面に凹凸のある
物質の磁区または磁気構造の観察方法を示す概略図であ
る。トンネル電流検出チップ1に、観察する物質7の磁
化の方向と平行または反平行のバイアス磁場をコイル3
と電源4を用いて加え、コンダクタンスの違いを観察す
る。トンネル電流検出チップによる信号は電流計5に入
力される。測定は、バイアス磁場を加えない状態で、あ
るトンネル電流値が流れる距離に物質7とトンネル電流
検出チップ1を設置し、その後、バイアス磁場を加え、
その信号を検出する。磁化の向きの違いは、検出された
トンネル電流値の変化に反映される。なお、走査するも
のは、トンネル電流検出チップ1でも観察する物質7で
もよい。
【0020】図4は面内磁化を持ち、表面に凹凸のある
物質の磁区または磁気構造の観察方法を示す概略図であ
る。トンネル電流検出チップ1に、観察する物質8の磁
化の方向と平行または反平行のバイアス磁場をコイル3
と電源4を用いて加え、コンダクタンスの違いを観察す
る。トンネル電流検出チップによる信号は電流計5に入
力される。測定は、バイアス磁場を加えない状態で、あ
るトンネル電流値が流れる距離に物質8とトンネル電流
検出チップ1を設置し、その後、バイアス磁場を加え、
その信号を検出する。磁化の向きの違いは、検出された
トンネル電流値の変化に反映される。なお、走査するも
のは、トンネル電流検出チップ1でも観察する物質8で
もよい。
【0021】図5は周期的バイアス磁場を用いた、垂直
磁化を持つ物質の磁区または磁気構造の観察方法を示す
概略図である。トンネル電流検出チップ1に、観察する
物質9の磁化の方向と平行または反平行のバイアス磁場
をコイル3とパルス・ジェネレータ10を用いて加え、
コンダクタンスの違いを観察する。トンネル電流検出チ
ップによる信号はロックインアンプ11に入力される。
測定は、バイアス磁場を加えない状態で、あるトンネル
電流値が流れる距離に物質9とトンネル電流検出チップ
1を設置し、その後、周期的にバイアス磁場を加え、そ
の信号を検出する。磁区の方向の違いは、検出された信
号の位相の違いに反映される。なお、走査するものは、
トンネル電流検出チップ1でも観察する物質9でもよ
い。
【0022】図6は周期的バイアス磁場を用いた、垂直
磁化を持つ物質の磁区または磁気構造の観察方法を示す
概略図である。トンネル電流検出チップ1に、観察する
物質12の磁化の方向と平行または反平行のバイアス磁
場をコイル3とパルス・ジェネレータ10を用いて加
え、コンダクタンスの違いを観察する。トンネル電流検
出チップによる信号はロックインアンプ11に入力され
る。測定は、バイアス磁場を加えない状態で、あるトン
ネル電流値が流れる距離に物質12とトンネル電流検出
チップ1を設置し、その後、周期的にバイアス磁場を加
え、その信号を検出する。磁区の方向の違いは、検出さ
れた信号の位相の違いに反映される。なお、走査するも
のは、トンネル電流検出チップ1でも観察する物質12
でもよい。
【0023】一例として、非常に平坦な表面を持つCr
(001)面の表面磁気構造を観察する。その際、トン
ネル電流検出チップにはPtを用い、バイアス磁場の大
きさは1kOeである。まず、バイアス磁場を加えず
に、物質とトンネル電流検出チップの距離を、トンネル
電流の値が0.1nAとなる位置に設定する。その後、
バイアス磁場を加え、物質を走査し、表面磁気構造の観
察を行う。なお、そのときのバイアス電圧は約0.05
Vである。その結果、Cr(001)面の表面磁気構造
をナノオーダの分解能で観測することができた。
【0024】他の例として、表面に凹凸のあるTbFe
合金薄膜にレーザで書き込んだドメインを観察する。こ
の場合、物質を走査するときにはバイアス磁場を加え
ず、測定すべき位置で物質を停止させた後、周期的にバ
イアス磁場を加え、その位置での磁化を観察する。その
際、トンネル電流検出チップにはPtを用い、バイアス
磁場の大きさは1kOe、パルスの周波数は80Hzで
ある。バイアス磁場を加えないときの物質とトンネル電
流検出チップの距離は、トンネル電流の値が0.1nA
となる位置とし、そのときのバイアス電圧は約0.05
Vである。その結果、100nmの大きさの磁区をナノ
オーダの分解能で観測することができ、磁区の微妙な形
状を知ることができた。
【0025】面内磁化を持つ物質に関しても同様の結果
を得た。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ナ
ノオーダの分解能を有するSTMを用いて、物質の磁区
または磁気構造、およびそれらの磁化の向きを、表面形
状に依存せずに、観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】垂直磁化を持ち、表面が平坦な物質の磁区また
は磁気構造、およびそれらの磁化の向きの観察方法を示
す概略図である。
【図2】面内磁化を持ち、表面が平坦な物質の磁区また
は磁気構造、およびそれらの磁化の向きの観察方法を示
す概略図である。
【図3】垂直磁化を持ち、表面に凹凸のある物質の磁区
または磁気構造、およびそれらの磁化の向きの観察方法
を示す概略図である。
【図4】面内磁化を持ち、表面に凹凸のある物質の磁区
または磁気構造、およびそれらの磁化の向きの観察方法
を示す概略図である。
【図5】周期的バイアス磁場を用いた、垂直磁化を持つ
物質の磁区または磁気構造、およびそれらの磁化の向き
の観察方法を示す概略図である。
【図6】周期的バイアス磁場を用いた、面内磁化を持つ
物質の磁区または磁気構造、およびそれらの磁化の向き
の観察方法を示す概略図である。
【符号の説明】
1 トンネル電流検出チップ 2 垂直磁化を持ち、平坦な表面を持つ物質 3 コイル 4 電源 5 電流計 6 面内磁化を持ち、平坦な表面を持つ物質 7 垂直磁化を持ち、表面に凹凸のある物質 8 面内磁化を持ち、表面に凹凸のある物質 9 垂直磁化を持つ物質 10 パルス・ジェネレータ 11 ロックインアンプ 12 面内磁化を持つ物質

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】トンネル電流検出チップにバイアス磁場を
    加え、トンネル電流を測定することにより、物質の磁区
    または磁気構造、およびそれらの磁化の向きを観察する
    ことを特徴とする走査型トンネル顕微鏡を用いた磁区ま
    たは磁気構造の観察方法。
  2. 【請求項2】トンネル電流検出チップに磁場を加えた場
    合と加えない場合のトンネル電流の測定を行うことによ
    り、物質の磁区または磁気構造、およびそれらの磁化の
    向きを観察することを特徴とする走査型トンネル顕微鏡
    を用いた磁区または磁気構造の観察方法。
  3. 【請求項3】トンネル電流検出チップに周期的なバイア
    ス磁場を加え、このバイアス磁場の周期と同期したトン
    ネル電流をロックインアンプを通して測定することを特
    徴とする走査型トンネル顕微鏡を用いた磁区または磁気
    構造の観察方法。
JP4013483A 1992-01-29 1992-01-29 走査型トンネル顕微鏡を用いた磁区または磁気構造の観察方法 Expired - Lifetime JP2842000B2 (ja)

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