JP2821884B2 - 酵母の育種方法及び関連ベクター - Google Patents

酵母の育種方法及び関連ベクター

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JP2821884B2 JP19069288A JP19069288A JP2821884B2 JP 2821884 B2 JP2821884 B2 JP 2821884B2 JP 19069288 A JP19069288 A JP 19069288A JP 19069288 A JP19069288 A JP 19069288A JP 2821884 B2 JP2821884 B2 JP 2821884B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、酵母の育種方法及び関連ベクターに関する
ものである。
本発明は、酵母、例えばパン酵母の優良株を得るため
に、計画的に、染色体の特定部位間で組換えを起こし、
育種する方法に関するものである。
本発明の方法によれば染色体の組換え頻度は著じるし
く高まり、酵母の優先株を得るのにきわめて有利であ
り、酵母を利用する発酵工業に益するところ大なるもの
がある。
(従来技術) パン酵母では古くから優良株を得るために育種が行な
われている。しかし、その育種法は突然変異によるも
の、もしくは、自然に起こる相同染色体間の組換えを利
用したものに過ぎなかった。この、自然に起る組換え
は、頻度が低く、各相同染色体同志の相同部位で、それ
ぞれがほぼ同頻度で全く不特定に起るために、組換え部
位の制御が不可能であり、その結果、非常に多くの種類
の子孫が生じることになり、目的とする染色体の組換え
のみが起った株を得ることは、非常に困難であった。
又、最近になって、非相同染色体間に相同性を持たせ
ることによる、組換え部位を限定した組換えの試み(例
えば、Robertsonら、1985年)も成されているが、頻度
がきわめて低く、効率の良いものではない。
さらには、特定部位に限定した、高頻度な染色体の組
換え技術は未だ開発されていない。
(発明が解決しようとする問題点) 従来のパン酵母の育種法は突然変異によるものも、相
同染色体間の組換えによる(交雑法)ものも、偶然に依
存したものであり、優良株のスクリーニングには多大の
労力を必要とする欠点があった。
非相同染色体で相同領域を持せることによる組換えの
例は、染色体の特定部位間の組換えといえるが、自然に
起る組換えよりも、さらに頻度が低く、育種への応用は
事実上不可能であった。
又、本発明と同様の組換え技術は、パン酵母(Saccha
romyces cerevisiae)中に含まれる、2μmDNAの、分子
内組換え系を利用しても可能であると考えられるが、大
多数のパン酵母中に、2μmDNAが内在しているために、
組換えタンパク質遺伝子は常に発現した状態にあり、組
換え時期の制御をすることは不可能といわなければなら
ない。
パン酵母を含む酵母の育種法において、組換えの頻度
が高く、かつ、組換えの制御が可能な方法の開発が待た
れていたのである。
(問題点を解決するための手段) 本発明者らは、染色体の組換え部位を限定し、かつ、
組換え頻度が高く、さらには組換え時期及び、位置の制
御が可能な酵母の育種法を求めて鋭意研究したところ、
本発明においてその方法を完成するに至った。
pSR1プラスミドは、6251塩基対の環状DNA分子で、全
ヌクレオチド配列が決定されている(Arakiら、1985
年)。
本プラスミドは、従来、醤油酵母(Zygosaccharomyce
s rouxii)中に含まれるプラスミドであり、その特長
は、分子内に959塩基対からなる、一対の逆向き反復配
列をもち、このため、分子が二つの特有な領域に分断さ
れているところにある。
さらに重要な特長は、逆向き反復配列内にある58塩基
対に限定された組換え部位間で、分子内組換えが起る
(Matsuzakiら、1988年)結果、二つの特有な領域の向
きが反転したtypeAとTypeBとの、二種類の異性体として
存在することにあり、2μmDNAで起る分子内組換えと同
様にコピー数の制御機構(Volkertら、1986年)に関与
するものと考えられる。
即ち、第1図にプラスミドpSR1のTypeAとTypeBが示さ
れるが、第1図において、プラスミドpSR1には一対の逆
向き反復配列内にそれぞれ1ヶ、すなわち、一対の組換
え部位(Recombination site)(RS:以下RSという)を
有し、1つのプラスミド内の2ヶ所のRSで組換えを起こ
しTypeAとTypeBとの2つの型が混合して酵母中に存在し
ているのである。また、このRSを用いる組換えには第1
図のRで示される、pSR1プラスミド自体に存在するR遺
伝子が生産するRタンパク質のみが必要とされているの
である(Matuzakiら、1988年)。
本発明においては、プラスミドpSR1で起っている組換
え現象を酵母の育種法に取り入れることに成功したので
ある。
即ち、酵母の育種法では、まず、染色体の2ヶ所にRS
を組み込まなければならない。
RSを酵母の染色体に組込むために、本発明において
は、まず、プラスミドpSR1上に存在するRSを導入した染
色体組込み型ベクター、即ちYIp型ベクターを作成し
た。YIp型ベクター(組込み型ベクター)はプラスミドp
SR1からRSを含むDNA断片を切出すと同時に大腸菌のプラ
スミドpBR322、さらにRSを導入しようとする、酵母染色
体部位にある遺伝子を用いて、RSを1ヶづつ含むプラス
ミドを作成した。
本プラスミドは、例えば、酵母URA3遺伝子を含むpHM1
47、また、例えば、酵母HIS3遺伝子を含むpHM71−1で
あり、染色体組込み部位の指定と同時に、酵母細胞への
導入の確認を、栄養要求性の相補(それぞれ、ウラシル
・ヒスチジン)で確認できるように設計した。さらに、
これらベクターは、各酵母遺伝子中で、それぞれ制限酵
素Nco I,Xho Iで、ただ一か所切断された様に、即ち、
パン酵母への導入の際、この制限酵素で切断することに
より、高頻度で、目的部位に組込まれる(Itoら、1983
年)ように設計した。
プラスミドpHM147を含む大腸菌は、Escherichia coli
JA 221(pHM 147)として、FERMP−10073の寄託番号
で、またプラスミドpHM71−1を含む大腸菌は、Escheri
chia coli JA 221(pHM71−1)としてFERM P−10075の
寄託番号で微工研に寄託されている。
また、本発明においては、R遺伝子の発現によるRタ
ンパク質の存在によって組換えを行なわせるRタンパク
質の非存在によって組換えを停止させることを実施する
ために、R遺伝子及びその上流にGAL1又はGAL10のプロ
モーターを導入したR遺伝子の発現調節可能なベクター
を作成しなければならない。
そこで、本発明では、プラスミドpSR1からR遺伝子を
切出すと同時に、プラスミドpBR322を利用するととも
に、R遺伝子上流には、パン酵母のガラクトース代謝形
酵素遺伝子GAL1又はGAL10のプロモーターをつないで、
培地中に炭素源としてガラクトースのみが存在するとき
に発現するように、コントロールすべく設計し、また、
パン酵母中でマーカーとしては、LEU2遺伝子を用い、選
択培地中で栄養要求性(ロイシン)の相補によって形質
転換体(発現ベクター導入株)のスクリーニングを行な
えるように設計し、目的に合致したプラスミドpHM153を
得た。
プラスミドpHM153を含む大腸菌は、Escherichia coli
JA 221(pHM153)として、FERMP−10074の寄託番号で
微工研に寄託されている。
本発明の育種方法においては、酵母、例えばパン酵母
にプラスミドpHM147を制限酵素Nco Iで切断後、KU法(I
toら、1983年)により導入し、ウラシルの要求性の相補
で形質転換株をスクリーニングし、染色体にpHM147すな
わちRSが導入された酵母のみを選択し、次いで、この酵
母にプラスミドpHM71−1を制限酵素Xho Iで切断後、同
方法で導入し、ヒスチジンの要求性の相補で、形質転換
株即ち、RSを染色体に組込んだ株を選択し、結局1酵母
の染色体に2ケのRSが導入された酵母を得る。
次いで、染色体に2つのRSが導入された酵母にプラス
ミドpHM153を同方法にて導入し、(ロイシン非要求性で
選択)、ガラクトース存在培地で培養すればR遺伝子が
発現してRタンパク質を生成し、染色体の組換えが起
る。10〜50時間程度でガラクトース非存在培地に移し、
組換えを停止させた。
この処理によって、酵母の染色体の組換えは酵母の10
%において生起しているのがパルスフィールド電気泳動
によって確認される。
さらに、完全培地中で、この組換え株を約20時間培養
することにより、ほぼ、半数の酵母から自然に、pHM153
を脱落させることができる。
ここで起った組換え型は、以下に示す組換え型の5
(トランスロケーション2)に相当するが、染色体上へ
のRSの組換え位置により、さらに、以下のような組換え
(計6パターン)が生起する。
1. インバージョン1 同一染色体の、同一腕上に、2個のRSを逆方向に組込
み、その間で逆位を起こす。
この場合、成育に影響はなく、染色体の長さも変わら
ない。
2. インバージョン2 同一染色体の、逆腕上に、それぞれ1個のRSを逆方向
に組込み、その間で逆位を起こす。
この場合、成育に影響はなく、染色体の長さも変わら
ない。
3. ループアウト1 同一染色体の、同一腕上に、2個のRSを同方向に組込
み、その間での欠失を起こす。
この場合、2個のIR間に必須遺伝子が乗っていると致
死となる。但し、ループアウトした部位が、YRp型のプ
ラスミドとして存在すると育成は可能である。
4. ループアウト2 同一染色体の、逆腕上に、それぞれ1個のRSを同方向
に組込み、その間での欠失を起こす。
この場合、致死である。但し、ループアウトした部位
に、セントロメアが乗っているので、YCp型プラスミド
(環状染色体)として存在可能である。その場合、ルー
プアウトした以外の領域に、必須遺伝子がなければ、育
成は可能である。
5. トランスロケーション1 異染色体に、それぞれ1個のRSをそれぞれの染色体の
セントロメアに対して同方向に組込み、その間での転移
を起こす。
この場合、育成に影響はないが、それぞれの染色体の
長さが変わる。
6. トランスロケーション2 異染色体に、それぞれ1個のRSをそれぞれの染色体の
セントロメアに対して逆方向に組込み、その間での転移
を起こす。
この場合、致死である。一方の染色体は、2個のセン
トロメアを持ち、他方の染色体はセントロメアを持たな
くなる。双方とも、細胞分裂の際、その分配が不安定と
なる。
又、以上の6タイプの組換えは、1倍体株を用いた場
合の組換えであるが、2倍体株を用いることにより上
記、6タイプの組換えのうち、致死になるものも生存さ
せることができ、さらに上記以外に5タイプの組換えを
行なえる。即ち、 7. 重複−欠失型組換え−1 相同染色体上の同一腕上の異なった位置にそれぞれ1
ヶのRSを同方向に組込み、その間での転位を起こす。
この場合、成育に影響はないが、一方は染色体の一部
の領域が重複し、またもう一方は、他方が重複したのと
同じ領域が欠失し、それぞれの染色体の長さが変わる。
8. 重複−欠失型組換え−2 相同染色体の逆腕上に、それぞれ1ヶのRSを逆方向に
組込み、その間での転位を起こす。
この場合、成育に影響はない。双方の染色体とも、一
部の領域が欠失し、一部の領域が重複する。一方の重複
する領域は、他方が欠失した領域に相当する。
9. トランスロケーション型組換え−3 相同染色体の同腕上に、それぞれ1ヶのRSを逆方向に
組込み、その間での転座を起こす。
この場合、トランスロケーション2と同様に致死であ
る。
10.トランスロケーション型組換え−4 相同染色体の逆腕上に、ぞれぞれ1ヶのRSを同方向に
組込み、その間での転座を起こす。
この場合、トランスロケーション2と同様に致死であ
る。
11.ホットスポット型組換え 相同染色体の同位置に、それぞれヶのRSを同方向に組
込み、その間での組換えを起こす。
この場合、自然に起る組換えと同一の様式となる。但
し、RSを組込んだ位置でのみ、組換えが高頻度で起る。
かくして、これまでの育種法においては類を見ない、
染色体自体が改変された酵母が得られ、しかも非常に高
頻度で得られるので、組換え体のスクリーニングにも多
大の労力を必要としない。
従って、本発明に育種方法は、すぐれた酵母を作り出
す技術を提供したといえるものである。
次に本発明の実施例を示し、さらに詳細に説明する。
しかし、本発明は、これらの実施例のみに限定されるも
のではない。即ち、上記の計11の組換えパターンは、形
質転換の際の適当なマーカーとなる遺伝子、例えば栄養
要求性を相補するもの、又、例えば薬剤耐性を付与する
ものと、目的とする組込み位置の遺伝子を用いることに
より、染色体を限定することなしに行なえ、しかも、染
色体の位置を問わずに行なうことができるからである。
またさらに、これら、11の組換えパターンのほかに、
次の操作により、巨大DNA分子の酵母染色体上への導入
が可能である。
例えば、酵母染色体上の一か所に、RSを組込み、この
組込みを有する酵母中でRタンパク質を発現させた状態
に保ち、環状であり、RSを1ヶ組込んだ、環状DNAを導
入する。この操作により、DNA分子を、高頻度で、染色
体上の目的位置に組込むことができる。即ち、複数の遺
伝子によって構成される、遺伝子群を、一度に、しかも
安定に、酵母細胞中に導入することが可能である。
実施例1 プラスミドpHM147の作成 プラスミドpSR1の種々の位置に、Sal Iリンカーを挿
入したもののうち、pSRT322(Matuzakiら、1988年)、p
SRT310(Jearnpipatkulら、1987年)を制限酵素Sal Iと
Mlu Iで切断し、それぞれ750塩基対、1340塩基対のDNA
断片を分離・回収し、T4DNAリーガーゼ処理することに
より2090塩基対の両端が制限酵素Sal Iの切断部位にな
ったDNA断片を得、これを大腸菌プラスミドpBR322(例
えば、Sutcliffe、1979年)の制限酵素Hind IIIにより
切断したDNAを、T4DNAポリメラーゼにより末端を平滑化
したものに、5′−CCTCGAGG−3′の8塩基対より成る
Xho IリンカーをT4DNAリガーゼにより挿入し、再び、制
限酵素Xho Iで切断したものと混合と、T4DNAリガーゼ処
理することにより、大腸菌プラスドpBR322の制限酵素Hi
nd III切断部位にXho Iリンカーを介して、プラスミドp
SR1のRSを含む逆向き反復配列の、一方を組込んだプラ
スミド(A)を得る。さらに、酵母プラスミドYRp(Hie
terら、1985年)を制限酵素Sal I・EcoR Iで切断するこ
とにより得られる、5500塩基対のDNA断片と上記プラス
ミド(A)を、制限酵素Sal I・EcoR Iで切断すること
により得られる2710塩基対のDNA断片を、T4DNAリガーゼ
処理することにより結合して、上記プラスミド(A)
に、酵母URA3遺伝子を含むDNAを挿入し、第2図に示し
たプラスミドpHM147を作成した。
実施例2 プラスミドpHM71−1の作成 実施例1に記載したのと、同方法にて得られる、両端
が、制限酵素Sal I切断点である2090塩基対のDNA断片
と、制限酵素Sal Iにより切断した大腸菌プラスミドpBR
322とを、T4DNAリガーゼ処理により連結し、さらに、こ
れを制限酵素BamH Iにより切断し、制限酵素BamH I切断
点を両端に持ち、酵母HIS3遺伝子を含む、1770塩基対の
DNA断片(Struhl、1985年)をT4DNAリガーゼ処理により
連結し、第3図に示すように、RSと酵母遺伝子HIS3を含
むプラスミドpHM71−1を作成した。
実施例3 プラスミドpHM153の作成 pSR 1の種々の位置に、Sal Iリンカー・BamH Iリンカ
ーを挿入したプラスミド(Jearnpipatkulら、1987年)
を利用して、R遺伝子を、5′末端を制限酵素BamHI切
断点、3′末端を制限酵素Sal I切断点とする、1940塩
基対のDNA断片として分離し、プラスミドpBM 150(Joho
nstonら、1984年)を、制限酵素BamH I、Sal Iで切断し
得られる7990塩基対のDNA断片とT4DNAリガーゼを用いて
連結した。このプラスミドから、制限酵素BamH I、Sal
Iによって切り出した。Gal1プロモーターの下流に、R
遺伝子が連結された、2620塩基対のDNA断片を、YEp51
(Broachら、1983年)の制限酵素Kpn I、Sal I切断点間
(1860塩基対)を、プラスミドYIp32(Botsteinら、197
9年)の同じく制限酵素Hind III、Sal I切断点間(1310
塩基対)に置き換えたプラスミドを制限酵素Kpn I、Sal
Iで切断することによって得られる6360塩基対のDNA断
片とをT4DNAリガーゼにより連結し、第4図に示すプラ
スミド6pHM153を作成した。
実施例4 パン酵母へのプラスミドpHM147、プラスミドpHM71−1
及び、プラスミドpHM153の挿入 パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)の実験室株、
NBW5〔(α)pho3−1 leu2−3、112 trpl−289 ura3−
1、2 his3−532 ade2〕をYPD培地(1%イーストエキ
ストラクト、2%バクトペプトン、2%グルコース、10
0mg/アデニン)中で、30℃で一晩培養した後、この培
養液1mlを、新たなYPD培地80mlに移し、4〜6時間30℃
で培養後、遠心分離機により、菌体を回収し、5mlをト
リス緩衝液(10mMトリス−塩酸緩衝液pH7.5)に懸濁
し、再び遠心分離機により、菌体を集め5mlのLA溶液
(0.1M酢酸リチウムをトリス緩衝液に溶解したもの)に
懸濁し、さらに、30℃で1時間振とうする。こうして得
られたコンピテント細胞を、遠心分離機により分離し、
再び、0.4mlのLA溶液に懸濁する。このうち、0.05mlを
別の容器に移して、さらにここに、制限酵素Ncolで切断
した、プラスミドpHM147を加える。これらを混合した
後、30℃で30分間静置した後、40%ポリエチレングリコ
ール4000を0.6ml加え、よく撹拌した後、さらに、30℃
で1時間静置する。この溶液を遠心分離し、菌体を回収
し、1mlのトリス緩衝液に懸濁し、再び遠心分離により
菌体を回収し、適当量のトリス緩衝液に懸濁した後、HA
培地(0.7%Yeast nitrogenbasew/o amino acids〔Difc
o〕、2%グルコース、0.0002%ウラシル、0.0002%ト
リプトファン、0.0002%ヒスチジン、0.002%アルギニ
ン、0.002%メチオニン、0.002%チロシン、0.003%リ
ジン、0.015%バリン、0.006%フェニルアラニン、0.00
3%ロイシン、0.01%アデニン)よりウラシルを除いた
寒天培地上に塗布する。37℃で2日間培養し、形質転換
(染色体上にpHM147すなわち、RSが組込まれた)株を得
た。この形質転換株をさらに、上記と同様の操作によ
り、プラスミドpHM 71−1を制限酵素Xholで切断したも
ので形質転換し、HA培地よりヒスチジンを除いた寒天培
地に塗布し、形質転換(染色体上にpHM 71−1即ち、RS
が組込まれた)株を得た。これらの操作により、酵母染
色体の目的部位、即ち、第5染色体のURA3座・第15染色
体のHIS3座に、各々1ヶのRSを組込むことができる。
この、ウラシル、ヒスチジン共に非要求性となった形
質転換株の分子生物的解析を行なった。Schwartsらの方
法(1984年)に従い、バルスフィールド電気泳動によ
り、染色体の分離パターンをエチジウムブロマイドの染
色により観察したところ、形質転換前の株のそれと、同
一のパターンを示した。ここで得たアガロースゲルをSo
uthern(1975年)の方法に従い、ニトロセルロースフィ
ルターにトランスファーした後、Rigbyら(1977年)の
方法に従い、32Pラベルした、上記RSを含む2070塩基対
のDNA断片をプローブとして、DNA−DNAハイブリダイゼ
ーションを行ないオートラジオグラフィーを行なったと
ころ、第5染色体と、第15染色体の位置で、ハイブリダ
イスするのを確認した。さらに、Herefordら(1979年)
の方法に従い、この酵母の全DNAを抽出し、制限酵素、
例えばEcoR I又例えばBamH Iで切断し、アガロース電気
泳動をおこなった後、前記と同様の操作によりDNA−DNA
ハイブリダイゼーションによる解析を行なったところ、
各プラスミドpHM147・pHM71−1がそれぞれ目的の位
置、即ち、URA3座・HIS3座に、導入されていることが確
認された。
この、染色体上に2ヶのRSを組込んだ株に、上記と同
様の操作により、プラスミドpHM153の導入を計り、ロイ
シン要求性を相補する、形質転換株を得た。
実施例5 組換えの生起と停止 実施例4で得られた、染色体上に2ヶ所のRSを組込
み、pHM153を導入した酵母菌株を、5mlの、HA培地より
ロイシンを除いた液体培地中で、30℃1日間培養し、こ
こから、遠心分離により菌体を回収し、生理食塩水によ
り、2度洗浄し、最終液量を1mlとし、このうち0.1ml
を、同培地と、同培地の炭素源をガラクトースに変えた
培地とにそれぞれ加え、さらに、20時間培養した。
これらを、YPDA寒天培地に適当量を塗布し、さらに、
30℃で、2日間培養を行なった。この培地上に出現した
コロニーをそれぞれ約50ヶずつYPDA液体培地で30℃1日
間培養し、パルスフィールド電気泳動と、それにつぐ、
DNA−DNAハイフリダイゼーション解析により、各染色体
の長さを測定したところ、RS組込み部位で、組換えが起
ったために生じた新たな染色体二本を検出した。即ち、
概算710キロは塩基対長の、第五染色体の左腕の左端よ
り概算175キロ塩基対に位置するURA3座と、概算1160キ
ロ塩基対長の第十五染色体の右腕の右端より概算370キ
ロ塩基対に位置するHIS3座との間で繰換えが起った結
果、概算905キロ塩基対長、965キロ塩基対長の二本の新
たな長さの染色体が生起された。その頻度は、グルコー
スを炭素源とした培養の結果2/54、ガラクトースを炭酸
源として培養した結果11/55で、明らかにガラクトース
による組換えの誘発が認められる。さらに、Rタンパク
質発現プラスミドpHM153のかわりに、このプラスミド中
の、R遺伝子を挿入変異により不活化させたプラスミド
を用いて同様の解析をしたところ、この組換えは、全く
検出されなかった。
即ち、この染色体間の組換えは、Rタンパク質が生起
せしめたものであり、さらに、当初の目的通りR遺伝子
の発現制御は、培地中の炭素源により行なうことができ
る。又、DNA−DNAハイブリダイゼーション(Thomas、19
80年)により、これらの菌株からJensenら(1983年)の
方法、Avivらの方法(1972年)に従い、抽出したメッセ
ンジャーRNAを、実施例3に記した1940塩基対のR遺伝
子を含むDNA断片をプローブとして、解析したところ、
明らかにガラクトースによる、R遺伝子の転写活性の誘
導が認められた。
実施例6 pHM153の脱落及び組換えした染色体を含む酵母の培養 実施例5で得た、染色体の組換えが起った酵母菌株か
らの、プラスミドpHM153の脱落をはかり、非選択培地
(YPDA液体培地)で、1日間培養し適当量を、同寒天培
地に塗布しその栄養要求性を調べたところ、約半数が、
ロイシン要求性になっており、これらの株はすべてプラ
スミドpHM153を脱落していた。このプラスミド脱落株
を、約100世代培養しても、染色体の長さに変化はなか
った。
【図面の簡単な説明】
第1図はプラスミドpSR1のTypeAとTypeBを示す図であ
る。第2図はプラスミドpHM147の制限酵素地図を示す図
である。第3図はプラスミドpHM71−1の制限酵素地図
を示す図である。第4図はプラスミドpHM153の制限酵素
地図を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12N 15/81 C12N 1/16

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酵母の染色体上の2ケ所に、プラスミドpS
    R1上に存在する組換え部位を導入し、かつ、この酵母に
    Rタンパク質発現プラスミドを存在させ、この酵母をR
    タンパク質発現条件下に置き、染色体の組換えを生起せ
    しめ、しかる後、Rタンパク質発現プラスミドを脱落せ
    しめることを特徴とする酵母の育種方法。
  2. 【請求項2】プラスミドpSR1上に存在する組換え部位を
    導入して成る染色体組込み型ベクターを用いて組換え部
    位の導入を行うことを特徴とする請求項1の酵母の育種
    方法。
  3. 【請求項3】R遺伝子及びその上にGAL1又はGAL10のプ
    ロモーターを導入してR遺伝子の発現調節可能なベクタ
    ーを用いてRタンパク質を発現せしめることを特徴とす
    る請求項1の酵母の育種方法。
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