JP2821027B2 - 血管迷走神経性失神の検出機能を備えたペースメーカ - Google Patents

血管迷走神経性失神の検出機能を備えたペースメーカ

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Description

【発明の詳細な説明】 発明の分野 本発明は、広くは人工心臓ペースメーカに関するもの
であり、より詳しくは、血管抑制神経障害ないし心臓抑
制障害の影響を反映した、血管迷走神経性失神の症状
や、その他の例えば頚動脈洞症候群等の症状を有する患
者の処置に用いるペースメーカに関するものである。
発明の背景 血管迷走神経性失神とは、心拍レート及び血圧の急激
な低下を特徴とする状態をいい、それらの結果として患
者は失神するに至る。これは患者にとって単に気分が悪
くなるだけではなく、危険を伴うことでもあり、なぜな
らば、失神によって転倒し、負傷するおそれがあるから
である。米国特許第5,284,491号(Sutton et al.、1994
年2月8日発行)には、血管迷走神経性失神を発症する
患者の処置に適用するために、特別に構成した心臓ペー
スメーカが開示されており、同米国特許の内容は全て、
この言及をもって本願開示に示されているものとする。
更に詳しく説明すると、同米国特許のペースメーカは、
患者の心拍レートが、ヒステリシスを持たせて設定した
低レート(ロワー[ヒステリシス]レート)より低いレ
ートへ低下したときに、そのレート低下を検出し、そし
て、その「ヒステリシス」レートまで低下する直前の所
定個数の心拍における、または、その直前の所定長さの
時間における、患者の心拍レートの平均低下率の値が、
所定値より大きいか否かを判定するようにしている。そ
の平均低下率の値が所定値より大きかったならば、ペー
スメーカのレートを、先ず「ヒステリシス」レートに等
しく設定し、更にその後に、「ヒステリシス」レートよ
りかなり高い「中間」レートまで上昇させる。そして、
ペースメーカのレートを、所定時間に亙ってその「中
間」レートに維持した後に、徐々に低下させてロワー・
ペーシング・レートに戻すようにしている。
発明の概要 本発明の目的は、血管迷走神経性失神を発症する患者
の処置に用いるペースメーカを改良することにある。本
発明のペースメーカがSutton特許に開示されている従来
例のペースメーカと異なる点は、主として、血管迷走神
経性失神の症状の検出方法をより精緻な方法にしたとい
うことにある。治療方法は、ペーシング・レートを上昇
させ、その後に徐々に低下させて低いペーシング・レー
トに戻すというものであり、これは従来と同様である。
Sutton特許に記載されているような、単に、所定のス
レショルド・レートであるドロップ・レートより低いレ
ートへの急激なレート低下を検出するという方法とは異
なり、スレショルド・レートより低いレートが持続性即
ち安定性を有するものであることが検出されたときには
じめて、上昇させたレートでのペーシングを開始するよ
うにしている。持続性を有する即ち安定した心拍レート
を検出するためには、例えば、ドロップ・レートより低
いレートを有する心拍が連続して所定個数発生したとき
に、それが検出されたものとすればよい。好適な1つの
実施の形態では、血管迷走神経性失神の検出機能を、予
め設定した睡眠期間中はディスエーブルしておくように
しており、それによって、睡眠に伴うレート低下のため
に、上昇させたレートでのペーシングが不用意にトリガ
されてしまうことがないようにしている。
また、好適な1つの実施の形態においては、レート低
下の検出のために、ドロップ・レートより低いレートへ
の心拍レート低下の直前の所定時間内における最も高い
持続性レートを判定するようにしている。この場合、心
拍レートを、一連の複数の期間に亙ってモニタし、各期
間ごとに、その期間内で最も高いレートを有する連続す
る2つの心拍を識別する。それら2つの心拍のうちのレ
ートが低い方の心拍のレートを「トップ・レート」とし
て記憶し、そしてそれら複数の菊関に対応した複数の
「トップ・レート」のうちの最も高いレートを、最も高
い持続性レートとして識別生する。その最も高い「トッ
プ・レート」と、ドロップ・レートより低いレートへ低
下した後の心拍レートとの差をもって、レート低下幅の
測定値とする。心房ないし心室が期外脱分極を発生する
と、それによって短い心拍間隔が生じることがあるが、
このプロセスによれば、そのような短い心拍間隔のため
に、上昇させたレートでのペーシングが誤ってトリガさ
れてしまうということが防止される。
また、好適な1つの実施の形態においては、血管迷走
神経性失神を検出してペーシング・レートの上昇をトリ
ガするための方法として、更に別の方法が提供されてい
る。この実施の形態では、ペースメーカは、ペーシング
によって惹起され連続して発生する心拍を追跡してカウ
ントし、ベース・ペーシング・レートでペーシングされ
た心拍が連続したならば、それに応答して、ペーシング
・レートの上昇をトリガするようにしている。
更に別の実施の形態では、第1スレショルド・レート
より高く、しかも持続性を有するレートを検出すること
をもって、レート低下の検出機能を起動するための必要
条件としており、それによって、単発的に発生した高い
レートを有する心拍が、急激なレート低下を検出するた
めの検出動作をトリガしてしまうのを防止している。第
1スレショルド・レートより高いレートから第2スレシ
ョルド・レートである「ドロップ・レート」より低いレ
ートへの急激なレート低下を検出したならば、持続性を
有する即ち安定した心拍レート(例えば、ドロップ・レ
ートより低いレートを有する心拍の割合がy分のx以上
である場合)が存在していることを確かめた上で、はじ
めて介入を実行する。自発性脱分極が検出されたならば
介入治療や検出プロセスから脱出する方法も採用してい
る。
図面の簡単な説明 添付図面中の夫々の図について以下に簡単に説明して
おく。
図1は、図2のペースメーカが電気的に接続された患
者の心臓を示した模式図である。
図2は、本発明を実施することのできる植込形ペース
メーカのブロック回路図である。
図3は、心拍レート及びペースメーカ・レートを時間
に対してプロットしたグラフであり、本発明の血管迷走
神経性失神の検出機能を説明するためのグラフである。
図4は、ペースメーカ・レートを時間に対してプロッ
トしたグラフであり、睡眠期間中には本発明の血管迷走
神経性失神の検出機能をディスエーブルしておくことを
説明するためのグラフである。
図5は、本発明を実施している植込形ペースメーカの
動作を詳細に示したフローチャートである。
図6は、前記ペースメーカに採用している、心拍レー
ト低下を検出するための参照テーブルである。
図7は、自発性心拍レート及びペースメーカのペーシ
ング・レートを時間に対してプロットしたグラフであ
り、本発明を実施しているペースメーカの、血管迷走神
経性失神の症状の発現に応答して実行する動作を説明す
るためのグラフである。
図8は、本発明を実施しているペースメーカの機能的
動作を説明するためのフローチャートである。
図9及び図10は、介入レートでのペーシングを実行し
た後の、ペーシング・レートの低減パターンの具体例を
示したグラフである。
好適な実施の形態の詳細な説明 図1は本発明を実施するのに適した種類のペースメー
カ10の全体図であり、ペースメーカ10が患者の体内に植
込まれた状態を示している。図示のペースメーカは、房
室刺激形・心拍応答ペースメーカであり、抽出デマンド
を検出する機能と、心房及び心室にペーシング刺激を供
給する機能とを備えている。ただし本発明は、心拍応答
式でないペーシングや、ペーシング刺激の供給を心房と
心室とのいずれか一方のみに対して行い、且つ/また
は、検出を心房と心室とのいずれか一方のみから行うペ
ーシングに適用することも可能である。ペースメーカ10
はリード14及び15を備えている。それらリード14と15に
は、このペースメーカ10を患者の心臓11の心室と心房と
に、夫々その電極に装備した電極を介して電気的に接続
している。それらリード14及び15に装備した電極は、心
臓の脱分極の検出に用いられると共に、ペーシング・パ
ルスを心臓に供給するためにも用いられる。尚、本明細
書の以下の説明においては、心臓の脱分極のことを、正
式の呼び方ではないが「心拍」と呼ぶことにする。
図2は、本発明を実施することのできる、マルチプロ
グラマブル形で、植込形で、房室刺激形の、徐脈用ペー
シング・パルス10を示したブロック回路図である。以下
に本発明を説明するに際しては、マイクロプロセッサを
使用したアーキテクチャを有する形態に即して説明して
行く。ただし本発明は、必要に応じてその他の技術を用
いて構成することも可能であり、例えば、ディジタル・
ロジックを用いたカスタム集積回路(IC)を使用したア
ーキテクチャを有する形態とすることも可能である。更
に、本発明はカルジオバータやデフィブリレータ等とし
て構成することも可能である。
リード14はその先端近傍に心臓内膜電極24を備えてお
り、この電極24は右心室16の中に装着されている。電極
24は、リード配線14を介して、そして更に入力キャパシ
タ26を介して、接続点28に接続しており、そこから入出
力回路30の2つの入出力端子に接続している。
同様に、リード15はその先端に心臓内電極22を備えて
おり、この電極22は右心房17の中に装着されている。電
極22は、リード配線15を介して、そして更に入力キャパ
シタ75を介して、接続点76に接続しており、そこから入
出力回路30の2つの入出力端子に接続している。
入出力回路30は、ディジタル・コントローラ/タイマ
回路が、心臓から得られる電気信号を検出するため、及
び心臓へ刺激パルスを供給するために必要な、演算回路
から成る入力用及び出力用の様々なアナログ回路を含ん
でいる。検出する電気信号は、例えば心電図信号等であ
り、リード14及び15に接続している夫々のセンサ(不図
示)から出力される。また、心臓へ供給する刺激パルス
は、心拍レートを、その刺激パルスの関数として制御す
るためのものであり、この制御は、マイクロコンピュー
タ回路32の中にソフトウェアで構築されているアルゴリ
ズムに従って行われる。
マイクロコンピュータ回路32は、オンボード回路34と
オフボード回路36とで構成されている。オンボード回路
34は、マイクロプロセッサ38、システム・クロック40、
オンボードRAM42、及びオンボードROM44を含んでいる。
オプボード回路36は、オフボードRAM/ROMユニット46を
含んでいる。マイクロコンピュータ回路32は、データ通
信バス48を介してディジタル・コントローラ/タイマ回
路50に接続している。マイクロコンピュータ32は、カス
タムICデバイスに標準的なRAM/ROM部品を付加して製作
することができる。
当業者には自明のことであるが、図2に示した夫々の
電気部品は、植込グレードの適当なバッテリ電源(不図
示)から電力の供給を受けている。
アンテナ52が入出力回路30に接続しており、このアン
テナ52は、高周波(RF)送受信回路(RF TX/RX)54を介
して行うアップリング/ダウンリンク・テレメトリのた
めのアンテナである。このアンテナ52と、例えば外部プ
ログラマ装置(不図示)等の外部装置との間で行われる
アナログ・データ及びディジタル・データのテレメトリ
通信は、この好適な実施の形態では、最初に全てのデー
タを最初にディジタル符号化し、その後に減衰RF搬送波
にパルス位置変調を施すことによって行うようにしてお
り、これは、米国特許第5,127,404号(1992年7月7日
発行、発明の名称{植込形医用装置のためのテレメトリ
・フォーマット(Telemetry Format for Implantable M
edical Device)」に記載されている方法と実質的の同
じ方法である。尚、同米国特許は本発明の譲渡人が所有
しており、同米国特許の内容はこの言及をもって本願開
示に包含されるものとする。入出力回路30に接続してい
るリード・スイッチ51は、当業界において公知の如く、
センスアンプ145をディスエーブルしてテレメトリ機能
及びプログラミング機能をイネーブルすることによっ
て、患者の追跡治療を可能にするためのスイッチであ
る。
水晶発振回路56は、典型的な一例としては、32,768Hz
の水晶発振子で制御するようにした発振回路であり、デ
ィジタル・コントローラ/タイマ回路50にメイン・タイ
ミング・クロックを供給している。基準電圧/バイアス
回路(Vrel/Bias)58は、入出力回路30に含まれている
様々なアナログ回路に供給するための、安定基準電圧と
バイアス電流とを発生する回路である。ADC/マルチプレ
クサ回路(ADC/MUX)60は、テレメトリ機能、電池交換
時期表示機能、ないしは寿命終了(end−of−life:EO
L)表示機能を実現するために、アナログ信号及びアナ
ログ電圧をディジタル化する回路である。電源投入時リ
セット回路(power−on−reset:POR)62は、電源投入時
にペースメーカ10を初期化して、プログラムによって指
定されている種々の値を設定する機能を果たすと共に、
バッテリ電圧低下状態が検出されたときには、プログラ
ムによって指定された値をリセットしてデフォールト状
態にする。また、例えば許容し得ないほど強力な電磁干
渉(electromagnetic interference:EMI)等の、何らか
の不都合な状態が発生したときには、その不都合な状態
が存在している間だけ、一時的にデフォールト状態を確
立する機能も果たす。
図2に示したペースメーカのタイミングは、種々の動
作コマンドによって制御され、それら動作コマンドは、
バス48を介してディジタル・コントローラ/タイマ回路
50へ供給される。ディジタル・コントローラ/タイマ回
路50の内部では、複数のディジタル・タイマが、ペース
メーカの逸脱時間長さの全体の長さや、入出力回路30に
含まれている様々な周辺構成要素の動作を制御するため
の種々の不応期間、ブランキング期間、及びその他のタ
イミング・ウィンドウの長さを設定するようにしてい
る。
ディジタル・コントローラ/タイマ回路50は、センス
アンプ(SENSE)64及び67に接続している。ディジタル
・コントローラ/タイマ回路50は更に、心電信号アンプ
(EGM)66及び73とに接続しており、それによって、リ
ード14及びキャパシタ26を介して電極24からピックアッ
プされ、増幅されて処理された信号と、リード15及びキ
ャパシタ75を介して電極22からピックアップされ、増幅
されて処理された信号とを受取っている。リード14及び
キャパシタ26を介して受取る信号は、患者の心室16の電
気活動状態を表す信号であり、リード15及びキャパシタ
75を介して受取る信号は、患者の心房17の電気活動状態
を表す信号である。一方、センスアンプ64及び67は、検
出事象信号を出力し、検出事象信号はディジタル・コン
トローラ/タイマ回路50に含まれている逸脱時間長さタ
イマをリセットする。心電信号アンプ66が出力する心電
信号は、外部プログラマ/送信装置(不図示)から植込
まれているペースメーカに対して照会が発せられたとき
に、患者の心臓の電気活動状態を表すアナログ心電デー
タをアップリング・テレメトリを介して送信するために
用いられ、これについては、米国特許第4,556,063号(T
hompson et al.、発明の名称「医用装置のためのテレメ
トリ・システム(Telemetry System for a Medical Dev
ice)」)に記載されているとおりである。尚、同米国
特許は本発明の譲渡人が所有しており、同米国特許の内
容はこの言及をもって本願開示に包含されるものとす
る。
出力パルス発生回路68及び71は、ディジタル・コント
ローラ/タイマ回路50から出力される歩調取りされたト
リガ信号に応答して、出力キャパシタ74及び77を介し、
更にリード14及び15を介して、ペーシング刺激を患者の
心臓11へ供給する。ディジタル・コントローラ/タイマ
回路50は、逸脱時間長さが経過してタイムアウトするた
びにトリガ信号を出力するほかに、外部から送信された
ペーシング・コマンドを受信したときにもトリガ信号を
出力し、更にはその他の格納コマンドに応答してトリガ
信号を出力することもあり、これらはペーシング技術の
分野においては周知の事項である。
本発明の好適な1つの実施の形態においては、ペース
メーカ10は、DDD、DDI、VVI、VOO、それにVVT等の種々
の非心拍応答モードで動作させることができると共に、
それら動作モードの夫々にに対応した、DDDR、DDIR、VV
IR、VOOR、それにVVTR等の心拍応答モードでも動作させ
ることができる。更に、そのペースメーカ10は、必要に
応じてプログラムで設定することにより、2つのセンサ
のうちのいずれか一方の出力だけに応答してペーシング
・レートを変化させるようにすることも、また、それら
両方のセンサの出力に応じてペーシング・レートを変化
させるようにすることもできるようにしてある。
これより図3を参照しつつ、本発明の血管迷走神経性
失神の検出という特徴について詳細に説明する。ただし
本発明の用途は、血管迷走神経性失神を検出するという
ことに限定されず、例えば頚動脈洞症候群等の、その他
の血管抑制神経障害ないしは心臓抑制障害を反映した症
状を検出するためにも利用し得るものである。
図中のロワー・レート(LR、302)は、実際の心拍を
それ以下にしてはならない心拍レートである(このロワ
ー・レートは、ペースメーカのベース逸脱レートまたは
ベース・ペーシング・レートと呼ばれるレートであ
る)。ロワー・レートの値は、例えば50〜70拍/分とす
ればよい。更に、介入レート(IR、304)を設定してあ
り、これはロワー・レートよりかなり高いレートであ
る。また、ドロップ・レート(DR、306)を設定してあ
り、これはロワー・レートと介入レートとの中間のレー
トである。これらレートの値はいずれも、医師がプログ
ラムによって設定することができ、特に心拍応答ペース
メーカや房室刺激形(例えばDDDやVDD)ペースメーカの
場合には、介入レートの値を、そのペースメーカの可能
最高ペーシング・レートの値よりも低く設定する。
自発性心拍レートを図中に点で示した。各点は、検出
された心拍レートを表しており、ここでいう心拍レート
は、直前の心拍からその心拍までの時間長さの逆数とし
て定義されるものである。更に、ペースメーカの逸脱レ
ートを図中に実線で示した。本発明を実施するペースメ
ーカが、心室または心房の一方だけを対象とした形式の
ペースメーカ(例えばVVIやAAI)である場合には、患者
の自発性心拍レートがピースメーカの逸脱レートより高
いときにはパルスの送出が抑制される。一方、本発明を
実施するペースメーカが、心房同期・房室刺激形のペー
スメーカ(例えばDDDやVDD)である場合には、患者の自
発性心拍レートがペースメーカの逸脱レートより高いと
きにはペースメーカのペーシングが患者の自発性心拍レ
ートに同期して行われる。心房同期・房室刺激モードで
は、当然のことながら、心房の拍動がモニタされてい
る。ここでは説明を簡明にするために、ペースメーカの
モードは、心拍応答モードには設定されていないものと
し、従って、ペースメーカの逸脱レートが一定値に、即
ちロワー・レート302に設定されているものとする。
ペースメーカは、連続する2つの心拍間の時間長さを
記憶し、しかも先行する一連の複数の心拍に関するその
ような心拍間の時間長さを記録として保持するようにし
ている。ドロップ・レート306より低いレートの心拍
(心拍「N」)を検出したときに、その検出に応答し
て、血管迷走神経性失神の症状の検出を開始し、図示例
では310からその検出を開始している。このとき、ペー
スメーカは先ず、心拍「N」の直前に急激で大幅なレー
ト低下が発生しているか否かを判定し、それには、直前
の一連の心拍が発生している間に、所定の低下幅を超え
る大きさのレート低下が発生したか否かを調べる。図示
例では、ペースメーカは、心拍「N」を心拍「N−2」
と比較して、拍/分を単位として表したそれら心拍のレ
ートどうしの差が、或いは、ミリ秒を単位として表した
それらの心拍の夫々に対応した心拍間の時間長さどうし
の差が、所定の低下幅を超えているか否かを判定するよ
うにしている。検出されたレート低下が充分に急激なレ
ート低下であるか否かを判定するための方法としては、
これより更に精緻な方法もあり、それについては後に図
5を参照して説明する。また別の方法として、Sutton特
許に関連して上で説明したように、ペースメーカが、変
化率の平均値を算出することによって、大幅で急激なレ
ート低下を検出するという方法もあり、更に、所定のス
レショルド・レートより高いレートからドロップ・レー
トより低いレートへ、レートが低下したときに、それを
もって大幅で急激なレートの低下が発生したものとする
方法もあり、必要に応じておれら方法を用いればよい。
たとえレートの低下が検出されても、その検出されたレ
ートの低下が十分に急激なものでなかったならば、ペー
スメーカはロワー・レートでのペーシングを続行し、血
管迷走神経性失神の検出シーケンスを中止する。
一方、検出されたレートの低下が充分に急激なもので
あったならば、ペースメーカは心拍「N」に続く幾つか
の心拍をモニタすることによって、低下したレートの安
定性を評価し、そのレートが安定しているか否かを判定
する。例えば、ドロップ・レートより低いレートを有す
る心拍が所定個数連続したときに、それをもって安定し
たレートが検出されたものとしてもよい。低下した心拍
レートが検出されたときに、そのレートが充分に安定し
ているか否かを判定するための方法としては、これより
更に精緻な方法もあり、それについては後に図5を参照
して説明する。その検出された低い心拍レートが充分に
安定していなかったならば、ペースメーカはロワー・レ
ートでのペーシングを続行し、血管迷走神経性失神の検
出シーケンスを中止する。
一方、その検出された低い心拍レートが充分に安定し
ていたならば、治療介入をトリガする。この治療介入
は、図示例では316で示したように、ペースメーカの逸
脱レートを介入レート304へ上昇させることによって行
われる。自発性心拍レートが介入レートより高くなると
いうことがなければ、プログラムによって設定されてい
る時間長さの間、逸脱レートを介入レートに維持し、そ
の後に、318で示したように逸脱レートを徐々に低下さ
せて行く。すると、ついには320で示したように、自発
性心拍レートがペースメーカの逸脱レートを上回るよう
になるため、その時点でペースメーカの逸脱レートをリ
セットしてロワー・レートに戻す。患者の自発性心拍レ
ートが介入レートを超えた場合も、同じくペースメーカ
の逸脱レートをリセットしてロワー・レートに戻し、治
療介入を中止する。図示例の治療介入に関する更に詳細
な説明が、米国特許出願第08/309,285号(発明の名称
「血管迷走神経性失神の検出及び治療の機能を備えたペ
ースメーカ(Pacemaker with Vasovagal Syncope Detec
tion and Therapy)、本願と同日付出願、Markowitz et
al.)に記載されており、同米国特許出願の内容は全
て、この言及をもって本願開示に包含されるものとす
る。
また更に、ペーシングのレートを上昇させる動作が不
用意にトリガされるのを防止するために、本発明では、
患者が睡眠中であると推定される期間中は、血管迷走神
経性失神の検出という本発明の特徴をディスエーブルし
ておくようにしている。睡眠中にレートの上昇が行われ
てしまうと、患者の心拍レートが介入レートへ上昇する
ことにより、患者の睡眠を不必要に妨げられることにも
なりかねないからである。図4は、この睡眠次デイスエ
ーブルという特徴を説明するための図である。
本発明においては、睡眠時ディスエーブルという特徴
を、マイクロコンピュータ回路32の中に設定した日周期
タイマを用いて達成しており、即ち、その日周期タイマ
によって、マイクロコンピュータ回路32に、24時間の期
間を、図示例では時刻T1に終了する覚醒期間と、図示例
ではT2に終了する睡眠期間とに分けさせている。それら
睡眠期間と覚醒期間とは、個々の患者の生活サイクルに
合わせてプログラムによって設定する。そして、時刻T1
から時刻T2までの睡眠期間中は、プロセッサ32が血管迷
走神経性失神の検出機能をディスエーブルしておくよう
にしている。
図5は、本発明の血管迷走神経性疾患の検出機能の好
適な実施の態様を構成するプログラム400を表したフロ
ーチャートである。以下の説明中では個々の心拍の「レ
ート」に言及するが、これは、直前の心拍から当該心拍
までの時間長さの逆数である。説明を理解し易くするた
めに、以下のペースメーカの動作の説明においては、主
として「レート」どうしの比較によって説明して行く。
しかしながら、このペースメーカが実際に記憶し処理を
施すデータは時間長さである。従って、レートどうしの
比較をペースメーカのソフトウェアが行うとき、実際に
は記憶している時間長さどうしの比較が行われている。
このフローチャートを理解する上で一言述べておく
と、ペースメーカはDDDまたはDDIモードで動作するよう
にプログラムされているものとしており、また、非不応
期に検出した心室の拍動とペーシングによって惹起され
た心室の拍動との両方を用いてレートの値を算出するよ
うにしている。ただし本発明は、これらのモードに限ら
れず、VDD、AAI、VVI等のモードで動作するようにプロ
グラムされたペースメーカにおいても有効に実施し得る
ものであり、それらのモードにおいては、心房または心
室の拍動を用いて心拍レートの値を算出するようにすれ
ばよい。
概略を述べるならば、レート低下の検出は、ドロップ
・レートより低いレートへの低下が発生した後の心拍レ
ートの値を、それに先立つ2〜2.5分間の間にサンプル
して記憶しおいた5個のレートの値のうちの最も高いレ
ートの値と比較することによって行われる。記憶されて
いる5個のレートの値の各々は、30秒期間内における最
も高いレートを有する連続する2つの心拍のレートのう
ちの、低い方のレートの値である。記憶されているそれ
ら5個のレートのうちの最も高いレートをもって、最高
持続性レートであると識別し、これを用いてレート低下
の判定を行う。
プログラム400の動作の実行中に、ベース・ペーシン
グ・レートで連続的に送出されるペーシング・パルスの
個数のカウントを追跡しており、このカウントは、先に
言及した別の実施の形態にかかる血管迷走神経性失神の
検出方法の一部として行われている。VVIモードまたはA
AIモードで動作するようにしたペースメーカでは、その
モードに対応した心室または心房へ連続的に送出されて
いるペーシング・パルスをカウントするようにすればよ
い。DDDモードで動作するようにプログラムされている
ペースメーカでは、このカウントを行うには、単に、連
続心房ペース信号数(CAP)を追跡していればよい。DDI
モードで動作するようにプログラムされているペースメ
ーカでは、連続心房ペース信号数(CAP)と連続心室ペ
ース信号数(CVP)とのどちらをカウントするようにし
てもよい。VDDモードで動作するようにしたペースメー
カでは、低いレートで送出されているときの連続心室ペ
ース信号数については分離してカウントする必要があ
る。
ステップ402では、心房ペース信号が送出されるたび
にCAPをインクリメントし、心房の拍動が検出されたな
らばCAPを「0」にリセットする。また同様に、心室ペ
ース信号が送出されるたびにCVPをインクリメントし、
心室の拍動が検出されたならばCVPを「0」にリセット
する。ステップ404においてCAPの値が、検出を表示する
ために必要な連続した心拍の数に等しかったならば、プ
ログラム400はステップ406へ進み、そこではペースメー
カ10が、図3に示したような介入治療を開始することが
できる状態になる。一方、CAPの値が検出心拍の必要個
数に等しくなかったならば、プログラム400はステップ4
08へ進む。
ステップ408では、現在ペーシング・モードがDDIであ
って、しかも、CVPの値が検出心拍の必要個数に等しか
ったならば、ステップ406で介入をトリガする。一方、
それら2つの条件のいずれかが満たされていない場合に
は、プログラムはステップ410へ進む。ペースメーカ10
のレート低下検出の特徴がイネーブルされている場合に
は、プログラムはステップ412へ進む。一方、レート低
下検出の特徴がディスエーブルされていたならば、プロ
グラムはステップ402へ戻る。レート低下検出の特徴が
ディスエーブルされていることがあるのは、この特徴を
オフにするようにプログラムされている場合、それに、
先に図4を参照して説明した睡眠時ディスエーブル機能
が用いられている場合等である。
既述の如く、プロセッサは、連続する複数の30秒期間
における心拍レートの値を追跡しており、それによっ
て、各々の30秒期間における最もレートの高い連続する
2つの心拍のレートのうちの低い方のレートを識別す
る。この機能をステップ412及びステップ414に示した。
ステップ412に記入されている「現在トップ」の値は、
最初に、進行中の30秒期間における先頭の2つの心拍の
レートのうちの低い方のレートに等しく設定し、以後の
心拍のレートを「現在トップ」の値と次々に比較して行
く。ステップ412では、プロセッサ32が、直前の2つの
心拍を調べて、それら2つの心拍のレートが共に「現在
トップ」の値より高いか否かを判定する。そうであった
ならば、ステップ414においてそれら直前の2つの心拍
のレートのうちの低い方のレートの値を「現在トップ」
の新たな値として用いる。進行中の30秒期間が終了した
時点での「現在トップ」の値、または「ドロップ・レー
ト」より低いレートへレートが低下したときの「現在ト
ップ」の値を、その30秒期間の「トップ・レート」の値
として記憶しておく。上述の2つの心拍のレートの一方
でも「現在トップ」の値より高くなかったならば、「現
在トップ」の値は変更されない。
ステップ416では、プロセッサは、現在心拍のレート
の直前心拍のレートとが共に「ドロップ・レート」より
低いか否かを判定する。従って、図3に関して説明した
ように、「ドロップ・レート」より低いレートを有する
心拍が2つ連続することをもって、血管迷走神経性失神
が検出されたものとするための必要条件としている。別
の実施の態様として、「ドロップ・レート」より低いレ
ートを有する心拍が3個以上連続することを必要条件と
するようにしてもよく、或いは、「ドロップ・レート」
より低いレートを有する心拍の割合が所定割合に達する
ことをもって、安定した低いレートが存在していること
を表すものとしてもよく、これは先に言及したMarkowit
z et al.の特許出願に記載されているとおりである。直
前の2つの心拍のレートが共に「ドロップ・レート」よ
り低いのでなければ、プログラムはステップ402へ戻
る。一方、それら2つの心拍のレートが共に「ドロップ
・レート」より低かったならば、プログラムはステップ
418へ進み、レート低下の低下幅を調べ始める。
ステップ418では、プロセッサ32が、記憶されている
5個の「トップ・レート」のうちのいずれが最も高いレ
ートであるかを判定する。ここでいう5個の「トップ・
レート」は、直前の4回の30秒期間の夫々に対応したト
ップ・レートと、進行中の30秒期間の「現在トップ」と
の合計5個である。判定した最高の「トップ・レート」
を、最新の心拍のレート(「ドロップ・レート」より低
いレートを有する第2番目の心拍)のレートと比較し
て、それらの差が所定の「低下幅」より大きいか否かを
判定する。
このペースメーカの好適な1つの実施の形態において
は、医師が、拍/分を単位として定められた「ドロップ
・レート」の値に応じて、レート「低下幅」の所望値を
同じく拍/分を単位として設定し得るようにしておくこ
とが好ましい。しかしながら既述の如く、ペースメーカ
がそれに基づいて動作する、記憶されているデータは、
レートの値ではなく時間長さの値である。それゆえ、ペ
ースメーカに、「低下幅時間長さ」を設定するための参
照テーブルを記憶させておくようにしており、この「低
下幅時間長さ」は、最高「トップ・レート」における心
拍間の時間長さと、最高「トップ・レート」から拍/分
を単位として表した「低下幅」を差し引いたレートにお
ける心拍間の時間長さとの、差に対応した値である。ス
テップ418では、該当する「低下幅時間長さ」を決定す
る。
このペースメーカと関連させて用いるプログラマ装置
においては、「低下幅時間長さ」参照テーブルは、図6
に示したように、複数本の縦列を有するテーブルの形と
されている。「低下幅」は最上段の横列に並べて記入さ
れており、「トップ・レート」は左端の縦列に並べて記
入されている。そして、対応する「低下幅時間長さ」の
値が複数本の縦列の中に記入されている。「低下幅」の
値をプログラムで設定するためにはテレメトリ回路54を
介してペースメーカのRAM42の中へデータをロードする
必要があるが、その際には、図示の参照テーブルのうち
の縦列1本分のデータをロードするだけでよく、それに
よってペースメーカの記憶要領を節約しつつ、ペースメ
ーカが最高「トップ・レート」の値のみ基づいて「低下
幅時間長さ」を求め得るようになり、ひいては「低下幅
時間長さ」の値を求めるために必要なステップの数を減
らすことができる。
ステップ420及び422では、ステップ416で識別した
「ドロップ・レート」より低い最初の2つの心拍のレー
トの夫々に対応した時間長さを、「低下幅時間長さ」と
最高「トップ・レート」に対応した時間長さとの分を比
較し、それら2つの心拍のレートが、最高「トップ・レ
ート」から拍/分を単位として表した「低下幅」を差し
引いた値により小さいか否かを判定する。もしそうであ
れば、ステップ406で、それまでより上昇させた高いレ
ートでのペーシングを開始する。そうでなかったなら
ば、ペースメーカはステップ402へ戻り、それまでの低
いレートである「ロワー・レート」でペーシングを続行
する。
本発明の別の実施の形態にかかる血管迷走神経性失神
の検出及び処置の機能の詳細を図7に示した。図3と同
じく、図7に示した「ロワー・レート」(LR、302)
は、実際の心拍をそれ以下にしてはならない心拍レート
である(このロワー・レートは、ペースメーカのベース
逸脱レートまたはベース・ペーシング・レートとも呼ば
れるレートである)。ロワー・レートの値は、例えば50
〜70拍/分とすればよい。更に、介入レート(IR、30
4)を設定してあり、これはロワー・レートよりかなり
高いレートである。また、ドロップ・レート(DR、30
6)を設定してあり、これはロワー・レートと介入レー
トとの中間のレートである。また、ステショルド・レー
ト(TH、308)を設定してあり、これは介入レートとド
ロップ・レートとの中間のレートである。これらレート
の値はいずれも、医師がプログラムによって設定するこ
とができ、特に心拍応答ペースメーカや房失刺激形(例
えばDDDやVDD)ペースメーカの場合には、介入レートの
値を、そのペースメーカの可能最高ペーシング・レート
の値よりも低く設定する。
図7には、自発性心拍レートを破線(350)で示し、
ペースメーカの逸脱レートを実線(351)で示した。本
発明を実施するペースメーカが、心室または心房の一方
だけを対象とした形式のペースメーカ(例えばVVIやAA
I)である場合には、患者の自発性心拍レートがペース
メーカの逸脱レートより高いときにはパルスの送出が抑
制される。一方、本発明を実施するペースメーカが心房
同期・房失刺激形のペースメーカ(例えばDDDやVDD)で
ある場合には、患者の自発性心拍レートがペースメーカ
の逸脱レートより高いときにはペースメーカのペーシン
グが患者の自発性心拍レートに同期して行われる。心房
同期・防湿刺激モードでは、当然のことながら、心房の
拍動がモニタされている。ここでは説明を簡単にするた
めに、ペースメーカのモードは、心拍応答モードには設
定されていないものとし、従って、ペースメーカの逸脱
レートが一定値に、即ちロワー・レート302に設定され
ているものとする。
スレショルド・レート308より高いレートを有する心
拍が所定個数(例えば3個)連続して発生したならば、
それらの発生に応答して、血管迷走神経性失神の症状の
検出を開始するようにしており、図示例ではこれを310
から開始している。これを開始したならば、ペースメー
カは、急激で大幅なレートの低下に対して応答できる状
態になり、そして、患者の心拍レートがスレショルド・
レート308より低くなったならば、それに応答して、ス
レショルド・レート308とロワー・レート302との中間の
レートを有する心拍の個数のカウントを開始するか、或
いは、心拍レートがスレショルド・レートより低くなっ
たときからの時間を計測し始める。312において、患者
の自発性心拍レートがドロップ・レートより低くなって
おり、これに応答してペースメーカは、患者の自発性心
拍レートがスレショルド・レートより低くなってからカ
ウントされた心拍の個数、または、そのときから経過し
た時間の長さが、所定値以下であるか否かを判定する。
所定値以下でなかったならば、ペースメーカは、レート
の低下が緩やかなものであったと判定し、逸脱レートを
ロワー・レート302に維持する。また別の方法として、S
utton特許に関連して上で説明したように、スレショル
ド・レートより高い心拍レートが接続していることを検
出した後に、ペースメーカが、変化率の平均値を算出す
ることによって、大幅で急激なレートの低下を検出する
という方法もあり、更に、スレショルド・レートとドロ
ップ・レートとの間のレート差とは異なる大きさに定め
た所定の低下幅のレート低下が発生したときに、それを
もって大幅で急激なレートの低下が発生したとする方法
もあり、必要に応じてそれら方法を用いればよい。
図示例の場合のように、その検出されたレートの低下
が急激でしかも大幅なものであるとペースメーカが判定
したならば、血管迷走神経性疾患の症状が発現した可能
性が高く、そのためペースメーカは、続いて、患者の心
拍レートの低下によって、持続性のある、即ち安定した
低いレートになったのか否かを判定する。持続性のある
安定した低いレートとは、単発的な長い心拍間隔が検出
されたためにそのときだけ低いレートになったのではな
いということである。単発的な長い心拍間隔は、心房応
の拍動のレートを追跡している場合には心房期外収縮に
続いて検出されることがあり、心室の拍動のレートを追
跡している場合には心室期外収縮に続いて検出されるこ
とがある。最初にそのレートがドロップ・レート306以
下に低下した心拍を含めてそれ以後の一連の心拍をモニ
タし、それら心拍のうちの所定の割合(例えば8分の
3、5分の4、等々)の心拍のレートがドロップ・レー
ト以下であったならば、それをもって、血管迷走神経性
失神の症状が確認されたものとして治療介入をトリガ
し、これは図示例では314の時点で行われる。一方、そ
うでなかったならば、ペースメーカは、みずからの逸脱
レートをロワー・レートに維持し、心拍レートがスレシ
ョルド・レート以上で持続するという状況が新たに出現
するのを待つ。
治療介入は、図示例では316で示したように、ペース
メーカの逸脱レートを介入レート304へ上昇させること
によって行われる。自発性心拍レートが介入レートより
高くなるということがなければ、プログラムによって設
定されている時間長さの間、逸脱レートを介入レートに
維持し、その後に、318で示したように逸脱レートを徐
々に低下させて行く。すると、ついには320で示したよ
うに、自発性心拍レートがペースメーカの逸脱レートを
上回るようになるため、その時点でペースメーカの逸脱
レートをリセットしてロワー・レートに戻す。患者の自
発性心拍レートが介入レートを超えた場合にも、同じく
ペースメーカの逸脱レートをリセットしてロワー・レー
トに戻し、治療介入を中止する。
図8のフローチャートは、本発明を構成するマイクロ
プロセッサ34(図2)の動作を詳細に示した図である。
このフローチャートの理解のために予め述べておくと、
ここではペースメーカをDDDモードで動作させている。
また、以下に言及する様々な心拍レートは、検出された
ないしはペーシングによって惹起された、連続する2つ
の心房脱分極の間の時間長さによって規定されるもので
ある。それら心房脱分極には、心房不応期の期内で検出
された心房脱分極と期外で検出された心房脱分極との両
方を含めることが好ましい。そしてこの場合、個々の心
拍即ち脱分極のレートの値は、直前の脱分極からその脱
分極までの時間長さの逆数に等しい。
普段は、402に示したように、血管迷走神経性失神の
検出の機能はアイドル状態にあり、ペースメーカはDDD
モードでペーシングを行っている。また、逸脱レートは
ロワー・レート(LR)に設定されており、マイクロプロ
セッサはスレショルド・レート(TH)より高いレートを
有する心拍を追跡している。スレショルド・レートTHの
値は、患者の必要に応じて選定するものであり、例えば
70〜90拍/分の範囲内の値とする。スレショルド・レー
トより高いレートを有する心拍が連続して所定個数検出
されたときに、その検出に応答して、404でレート低下
検出機能が起動される。すると、マイクロプロセッサ
は、心拍カウント値「N」を「0」にセットして、スレ
ショルド・レートより低いレートを有する心拍が発生す
るのを持つ。VDDモードまたはDDDモードで動作するよう
にプログラムで設定されたペースメーカでは、スレショ
ルド・レート(TH)より低いレートを有する心房拍動の
直前に心室期外収縮(PVC)が発生したときには、血管
迷走神経性失神の検出機能を402でアイドル状態に戻す
ようにしてもよく、それが望ましい場合にはそのように
する。
スレショルド・レートより低いレートを有する心拍が
発生したならば、それに応答してプロセッサは、406で
レート低下の検出を開始し、「N」を「0」にセットし
た上で、それ以後発生する心拍のレートをモニタする。
そして、それ以後発生する心拍のうちに、そのレートが
スレショルド・レート(TH)とロワー・レート(LR)と
の間にある心拍が検出されるたびに414で「N」をイン
クリメントする。ドロップ・レート(DR)より低いレー
トを有する心拍が検出されるより前に「N」がインクリ
メントによって所定のカウント値「NMAX」を超えたなら
ば、プロセッサは402で血管迷走神経性失神の検出機能
をアイドル状態に戻す。また、ドロップ・レート(DR)
より低いレートを有する心拍が検出されるより前に、ス
レショルド・レートより高いレートを有する心拍が3個
連続して検出されたならば、プロセッサは404で血管迷
走神経性失神の検出機能を開始状態に戻し、「N」を
「0」にリセットする。
一方、「N」が「NMAX」を超える前に、且つ、スレシ
ョルド・レート(TH)より高いレートを有する心拍が3
個連続して検出される前に、ドロップ・レートより低い
レートを有する心拍が検出されたならば、マイクロプロ
セッサはそれによってトリガされて416で安定性検出機
能を起動する。このとき、「N」の値を「0」にリセッ
トすると共に、第2のカウント値「P」も「0」にリセ
ットし、続いて418で安定性検出機能を実行開始する。
プロセッサは、それ以後発生する心拍のレートをモニタ
する。そして、ドロップ・レートと等しいかそれより高
いレートを有する心拍が検出されるたびに424でカウン
ト値「P」をインクリメントし、また、ドロップ・レー
トより低いレートを有する心拍が検出されるたびに430
でカウント値「N」をインクリメントする。尚、ここで
いうドロップ・レートより低いレートを有する心拍のう
ちには、安定性検出機能を起動させる原因となっと、ド
ロップ・レートより低いレートを有する最初の心拍も含
まれる。「P」の値が「8」に達する前に「N」の値が
「3」に達したならば、436で治療介入をトリガする。
一方、「P」の値が「8」に達したならば、プロセッサ
は402で血管迷走神経性失神の検出機能をアイドル状態
に戻し、そして、スレショルド・レート(TH)より高い
レートを有する心拍が連続して3個検出されるのを待
つ。
436で治療介入をトリガしたならば、プロセッサは、
逸脱レートを介入レート(IR)(例えば70〜100拍/
分)に等しくさせるように、ディジタル・コントローラ
/タイマ回路50(図2)を説明する。そして、プログラ
ムによって設定された長さ(例えば2分間)の介入レー
ト期間を開始する。この介入レート期間中に、例えば連
続した3個の心房脱分極が検出されることによって、心
房拍動レートが介入レート(IR)を超えたことが認めら
れたならば、プロセッサは治療介入を中止し、402で血
管迷走神経性失神の検出の機能をアイドル状態に戻した
上で、逸脱レートをリセットしてロワー・レートの等し
く設定する。
介入レート期間が終了したならば、プロセッサは442
において、回帰期間の間、逸脱レートを一定周期で繰返
しデクリメントする。この一定周期で行う逸脱レートの
デキルメントは、例えば自発性心房脱分極が3個連続し
て検出されること等によって自発性心房拍動レートが現
在逸脱レートより高くなったことが認められたならば終
了させる。続いてプロセッサは、逸脱レートをロワー・
レートに等しく設定した後に、402で血管迷走神経性失
神の検出機能をアイドル状態に戻す。
図9及び図10は、本発明に用いるのに適した、スレシ
ョルド・レートへ戻して行くための回帰期間に実行する
次々と反復するレート低減の2つの具体例を示したもの
である。図9の具体例では、逸脱レートが1分間に一度
ずつ、所定のレート低減幅でデクリメントされており、
最終的にはロワー・レート(LR)に達している。図10の
具体例では、逸脱レートが1分間に一度ずつデクリメン
トされているが、このデクリメントは、介入レートに対
応した逸脱時間長さとロワー・レートに対応した逸脱時
間長さとの差の8分の1に相当する長さずつ、ペーシン
グの逸脱時間長さを延長して行くことによって行われて
おり、最終的にはスレショルド・レートTRに達してい
る。
以上の開示に基づいて、本発明を、様々な改変形態及
び変更形態で実施することができる。ただし、それら改
変形態及び変更形態は、本願の請求の範囲に記載した発
明の範囲に包含されるものである。例えば、上で説明し
た好適な実施の形態は、血管迷走神経性失神の検出及び
処置を目的としたものであったが、本発明は、神経性失
神、血管抑制神経障害、それに心臓抑制障害等にも適用
し得るものであり、具体的には頚動脈洞症候群等にも適
用可能である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 246,903 (32)優先日 1994年5月20日 (33)優先権主張国 米国(US) (31)優先権主張番号 308,910 (32)優先日 1994年9月20日 (33)優先権主張国 米国(US) (31)優先権主張番号 309,222 (32)優先日 1994年9月20日 (33)優先権主張国 米国(US) (31)優先権主張番号 309,285 (32)優先日 1994年9月20日 (33)優先権主張国 米国(US) (72)発明者 シェルトン,マイケル・ブレント アメリカ合衆国ミネソタ州55410,ミネ アポリス,トーマス・アベニュー・サウ ス 3816 (72)発明者 リフ,ケネス・エム アメリカ合衆国ミネソタ州55441,プリ マス,サーティエイス・アベニュー 11755 (72)発明者 ジェンセン,ドナルド・ニック アメリカ合衆国ミネソタ州55113,ロー ズヴィル,ノース・フェアビュー・アベ ニュー 1964 (56)参考文献 特開 平6−205844(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A61N 1/365

Claims (16)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】心臓の脱分極を検出するための脱分極検出
    手段と、第1ペーシング・レートで心臓ペーシング・パ
    ルスを送出するパルス発生手段と、VVS状態を検出する
    ための手段と、その検出に応答してペーシング・レート
    を前記第1ペーシング・レートより高いレートにする手
    段とを備えた心臓ペースメーカにおいて、 第1スレショルド心拍レートと第2スレショルド心拍レ
    ートとを設定するための設定手段と、 前記第1スレショルド心拍レートより高いレートから前
    記第2スレショルド心拍レートより低いレートへの自発
    性心臓脱分極レートの急激な低下を検出するレート低下
    検出手段と、 自発性心臓脱分極レートの前記急激な低下の検出に応答
    して、前記パルス発生手段に、前記第1ペーシング・レ
    ートより高い第2ペーシング・レートでペーシング・パ
    ルスを送出するための手段と、 を備えたことを特徴とする心臓ペースメーカ。
  2. 【請求項2】前記レート低下検出手段が、限られた時間
    内で最も高い持続性心拍レートを識別するための手段
    (404、406、414、416、424、418、430)と、前記自発
    性心臓脱分極レートが前記最も高い持続性心拍レートか
    ら所定低下幅以上に低下したか否かを判別するための手
    段(406)とを備えていることを特徴とする請求項1記
    載の心臓ペースメーカ。
  3. 【請求項3】第1スレショルド・レート(308)を設定
    するための設定手段を備えており、前記レート低下検出
    手段が更に、心拍レートの変化を検出するための変化検
    出手段を備えており、該変化検出手段は、前記第1スレ
    ショルド・レートより低い安定した心拍レートへの、自
    発性心臓脱分極レートの急激な低下を検出する(418)
    ようにした手段であることを特徴とする請求項1記載の
    心臓ペースメーカ。
  4. 【請求項4】前記レート低下検出手段が更に、前記第1
    スレショルド心拍レートより高い持続性心臓脱分極レー
    トを検出するための手段と、前記第1スレショルド心拍
    レートより高い前記持続性心臓脱分極レートから前記第
    2スレショルド心拍レートとより低いレートへの、自発
    性心臓脱分極レートの急激な低下を検出するための手段
    とを備えていることを特徴とする請求項1記載の心臓ペ
    ースメーカ。
  5. 【請求項5】持続性心臓脱分極レートを検出するための
    前記手段が、前記第1スレショルド心拍レートより高い
    レートを有する連続した所定個数の心臓脱分極を検出す
    るための手段を含んでいることを特徴とする請求項2ま
    たは4記載の心臓ペースメーカ。
  6. 【請求項6】前記第2スレショルド心拍レートより低い
    安定した心臓脱分極レートを検出するための安定心臓脱
    分極レート検出手段を備え、該安定心臓脱分去極レート
    検出手段は、所定割合の心臓脱分極が前記第2スレショ
    ルド心拍レートより低いレートを有するか否かを検出す
    るための手段を含んでいることを特徴とする請求項4記
    載の心臓ペースメーカ。
  7. 【請求項7】前記レート低下検出手段は、自発性心臓脱
    分極レートの急激な低下の前記検出に応答して、前記パ
    ルス発生手段に、前記第1ペーシング・レートより高い
    第2ペーシング・レートでペーシング・パルスを送出さ
    せるようにしてあり、更に、 前記レート低下検出手段は、前記パルス発生手段が前記
    第1ペーシング・レートより高い前記複数のレートのい
    ずれかでペーシング・パルスを送出している間に検出さ
    れた心臓脱分極に応答して前記パルス発生手段に前記第
    1ペーシング・レートでパルスを発生させるための手段
    を備えていることを特徴とする請求項1ないし6のいず
    れか1項記載の心臓ペースメーカ。
  8. 【請求項8】検出された心臓脱分極に応答する前記手段
    が、所定の配列及び個数の検出された心臓脱分極に応答
    することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項
    記載の心臓ペースメーカ。
  9. 【請求項9】前記個数及び配列が、前記スレショルド・
    レートより低いレートを有する所定個数の心拍であるこ
    とを特徴とする請求項8記載の心臓ペースメーカ。
  10. 【請求項10】前記個数及び配列が、限られた時間内に
    検出された所定低下幅以上の大きさの自発性心拍レート
    の低下であることを特徴とする請求項8記載の心臓ペー
    スメーカ。
  11. 【請求項11】前記最も高い持続性心拍レートを検出す
    るための前記手段が、所定時間内における最も高いレー
    トを有する連続した所定個数の心拍を識別するための手
    段と、前記最も高いレートを有する連続した前記所定個
    数の心拍のうちの最も低いレートを有する心拍のレート
    を前記最も高い持続性心拍レートとして識別する手段と
    を含んでいることを特徴とする請求項2、5、または7
    ないし10のいずれか1項記載の心臓ペースメーカ。
  12. 【請求項12】睡眠期間を設定するための睡眠期間設定
    手段と、 前記睡眠期間の期間中は介入用の心臓ペーシング・パル
    スの送出をディスエーブルしておくためのディスエーブ
    ル手段と、 を更に備えたことを特徴とする請求項1ないし11のいず
    れか1項記載の心臓ペースメーカ。
  13. 【請求項13】前記睡眠期間設定手段が、24時間サイク
    ルを設定するための手段と、前記睡眠期間を前記24時間
    サイクルの一部として設定するための手段とを含んでい
    ることを特徴とする請求項12記載の心臓ペースメーカ。
  14. 【請求項14】所定低下幅以上の大きさの低下に応答し
    て自発性心臓脱分極レートの急激な低下を検出するため
    の前記レート低下検出手段が、低下幅時間長さによって
    低下幅をトップ・レートに関連付けた参照テーブルのう
    ちの縦列1本分ないし横列1本分を記憶するための手段
    を含んでおり、低下幅時間長さがトップ・レートに対応
    した時間長さ以上に超えられたときに急激な低下が検出
    されるようにしたことを特徴とする請求項2記載の心臓
    ペースメーカ。
  15. 【請求項15】所定ドロップ・レートより低いレートへ
    の自発性心拍レートの低下を検出するための手段を更に
    備えており、更に、前記パルス発生手段に第2ペーシン
    グ・レートでペーシング・パルスを送出させるための前
    記手段が、前記ドロップ・レートより低い自発性心拍レ
    ートの前記検出された低下に関する自発性心拍レートの
    前記検出された急激な低下に応答して前記パルス発生手
    段に前記第2ペーシング・レートでペーシング・パルス
    を送出させる手段を含んでいることを特徴とする請求項
    14記載の心臓ペースメーカ。
  16. 【請求項16】前記パルス発生手段に第2ペーシング・
    レートでペーシング・パルスを送出させる前記手段が、
    所定時間に亙って第2ペーシング・レートでペーシング
    ・パルスを送出させ、その後に、前記パルス発生手段
    に、前記第2ペーシング・レートから前記第1ペーシン
    グ・レートへ徐々に低下して行く複数のペーシング・レ
    ートでペーシング・パルスを送出させることを特徴とす
    る請求項1ないし7のいずれか1項記載の心臓ペースメ
    ーカ。
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