JP2820934B2 - 糖エステル誘導体を位置選択的に加水分解する触媒抗体を作製するためのハプテン - Google Patents

糖エステル誘導体を位置選択的に加水分解する触媒抗体を作製するためのハプテン

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JP2820934B2
JP2820934B2 JP9183565A JP18356597A JP2820934B2 JP 2820934 B2 JP2820934 B2 JP 2820934B2 JP 9183565 A JP9183565 A JP 9183565A JP 18356597 A JP18356597 A JP 18356597A JP 2820934 B2 JP2820934 B2 JP 2820934B2
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郁雄 藤井
好治 岩渕
英昭 宮下
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株式会社蛋白工学研究所
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は複雑なオリゴ糖を簡
便に合成するために役立つ方法に関する。詳細には、触
媒抗体を利用することによって位置選択的な加水分解反
応を行う方法に関する。より詳細には、糖に存在する全
ての水酸基が同一のカルボン酸化合物によって保護され
ている糖エステル誘導体(単糖又はオリゴ糖のエステル
誘導体を含む)を触媒抗体によって任意の位置で選択的
に加水分解し脱保護する技術に関する。本発明によれ
ば、複雑なオリゴ糖が極めて簡便に合成できるので、糖
鎖情報と生体機能に関する基礎的な研究に加え、新しい
オリゴ糖医薬品の開発に貢献することができる。
【0002】
【従来技術及び発明が解決しようとする課題】細胞表層
の糖脂質や糖タンパク質の糖鎖部分が細胞の分化や癌化
に伴って変化すること、またそれらの糖鎖がウイルスや
毒素のレセプターとして機能したり、細胞認識にも関与
していることが次第に明らかになって来ている。この様
な糖鎖の生物学的な重要性が認識されるに伴って、糖鎖
の化学合成研究も活発になってきた。一般にオリゴ糖
は、単糖を順次グリコシル化反応によって連結させて製
造される。しかし、糖脂質や糖タンパク質などの複合糖
質を構成するオリゴ糖鎖や植物及び細菌の細胞壁多糖
は、複雑かつ多様性に富んだ構造を有している。従っ
て、これらの合成を行うためには2つの大きな問題点を
解決する必要がある。その1つは糖鎖残基の結合に用い
るグリコシル化反応の適切な選択である。もう1つの問
題点は単糖残基の結合位置の制御である。オリゴ糖は分
子内に数多くの水酸基を有しているので、これを厳密に
区別して目的とする水酸基のみを反応させる必要があ
る。従って、後者の問題点の解決は重要な課題事項とな
る。複雑なオリゴ糖の合成では、伸長する糖鎖の非還元
末端の単糖における水酸基の保護基を任意の位置で脱保
護し、付加する単糖との間に位置選択的にグリコシド結
合を形成させる。従来、水酸基と反応してエステル、エ
ーテル、ケタール、カルボネートなどを形成し得る適切
な保護基を選択的に非還元末端の糖残基に導入し、必要
とする水酸基のみが遊離し易くされた糖誘導体が合成さ
れ利用されている。しかし、実際にそのような保護され
た糖誘導体を合成するには、種々雑多な保護基をその特
性に応じて適切に使い分ける必要があり、またこのよう
な糖誘導体の合成には非常に多くの工程を要し、従って
多大な労力が費やされる。そこで本発明者らはこの様な
多段階で煩雑な糖誘導体の合成過程を簡便にでき、目的
とするオリゴ糖を容易に合成入手するために触媒抗体を
利用することを案出した。触媒抗体の利用によって糖分
子中の水酸基の保護−脱保護にかかる労力の軽減が図れ
れば、オリゴ糖を含む糖質関連化合物の合成がより効果
的になるばずである。本発明者らは、世界で初めてこの
様な点に着目し、糖の位置選択的な脱保護反応を行うた
めの抗体を用いた生体触媒の開発に鋭意研究を重ねた。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明は、糖エステル誘
導体における保護水酸基を位置選択的に加水分解し脱保
護する方法であって、加水分解酵素として触媒抗体を用
いることを特徴とする方法に関する。本発明方法は単糖
及びオリゴ糖の両者に適用可能であるので、以下の2つ
の工程からなる2方法を包含し得る: (a) 単糖分子内に存在する水酸基の全てを同一の保護
基によって保護して糖エステル誘導体を調製し、(b)
触媒抗体によって単糖における任意の位置の水酸基だけ
を位置選択的に脱保護する;及び(a) オリゴ糖分子内
に存在する水酸基の全てを同一の保護基によって保護し
て糖エステル誘導体を調製し、(b) 触媒抗体によって
非還元末端の単糖における任意の位置の水酸基だけを位
置選択的に脱保護する。
【0004】糖に存在する数種の水酸基のうち6位1級
水酸基は他の水酸基に比べ遥かに反応性が高いため選択
的な化学変換が比較的容易である。しかし、3位及び4
位の水酸基の反応性は同等であり、3位と4位を区別し
た化学変換は極めて複雑となる。そこで本発明は1つの
態様として、この3位及び4位水酸基の選択的な化学変
換を目的とする。本発明はその態様の1つとして、下記
反応式1に示されるようなアセチルグルコサミンの3位
及び4位のエステル誘導体の4位エステル基に選択的な
加水分解反応を触媒する抗体、及びそのような加水分解
を行う方法を目的とする。なお、アセチルグルコサミン
は動植物、微生物の複合脂質、特にキチンやプロテオグ
リカン、糖タンパク質、糖脂質などの構成成分として広
く分布する重要なアミノ糖である。
【化6】
【0005】かかる抗体は触媒抗体[Lerner, R. A.ら:
サイエンス(Sceience),252, 659 (1991)]の技術を使っ
て作製される。すなわち、本発明の抗体は下記式3で示
される加水分解反応の遷移状態アナログであるホスホン
酸エステル誘導体をハプテンとして免疫することによっ
て作製される。
【化7】 上記のホスホン酸エステル誘導体は下記反応式2に示す
合成経路にしたがって合成することが出来る。
【0006】
【化8】
【0007】すなわち、D-グルコサミン (4) より3工
程で合成される化合物 5 を N,N-ジメチルアミノプロピ
ル-エチルカルボジイミド (WSCD) の存在下、N-アセチ
ル-p-アミノフェニル酢酸 (6) と反応させてエステル体
(7) とし、次いで水素化シアノホウ素ナトリウム、ト
リフルオロ酢酸によるベンジリデン基の位置選択的開裂
によりアルコール体 (8) を得る。アルコール体 (8) を
ピリジン中、ジシクロヘキシルカルボジイミド (DCC)
の存在下、N-アセチル-p-アミノベンジルホスホン酸
(9) と反応させてホスホン酸エステル体 (10) とし、次
いで接触水素化により N,O-ベンジル基を除去した後、
直ちにピリジルチオプロピオン酸 N-ヒドロキシスクシ
イミジル (SPDP:化合物 11) と縮合してアミド体 (12)
を得る。ジチオスレイトールで還元的にチオピリジル
基を除去すれば、ハプテン (3) が得られる。このハプ
テン (3) をマレイミド活性化 KLH (13) [KLH: Keyhole
limpetヘモシアニン]へのマイケル付加反応により縮合
して免疫抗原 (15) を得る。
【0008】次ぎに、BALB/c マウスを上記免疫抗原 (1
5) で免疫し、モノクロナール抗体を入手する。BALB/c
マウス (3 匹、雌 4 週齢) を抗原 (15) で免疫し、4
回の免疫の後に脾臓細胞を摘出する。常法に従い細胞融
合を行い、形成したハイブリドーマを酵素標識抗体測定
法 (ELISA) を用いてスクリーニングし、ハプテン結合
性の抗体を産生するハイブリドーマを得る。限界希釈法
によるクローニングを繰り返し、単クローン IgG 産生
ハイブリドーマを得、それらの培養上清を(NH4)2SO4
澱して得られる粗抗体を、陽イオン交換クロマトグラフ
ィーとプロテイン G アフィニティークロマトグラフィ
ーによって精製する。
【0009】次に、得られた抗体の触媒活性をスクリー
ニングする。本発明の抗体は式:
【化9】 [式中、RはH、OH、F、OCH3、単糖もしくはオ
リゴ糖鎖、又は式:
【化10】 で示される基であり、RはH、CH3、又は単糖もし
くはオリゴ糖鎖である]で示される糖エステル誘導体を
有効に加水分解し脱保護する。従って、触媒活性のスク
リーニングには上記ハプテン (3) の構造に最も近い 6-
フルオロ体 (1)を基質として用いた。この化合物は下記
反応式3に示すように、化合物 (17) をジメチルアミノ
三フッ化硫黄 (DAST) と反応させて化合物 (18) とした
後、N,N-ジメチルアミノプロピル-エチルカルボジイミ
ド (WSCD) の存在下、N-アセチル-p-アミノフェニル酢
酸 (6) と反応させることによって製造される。
【化11】 なお、6-フルオロ体 (1) 以外の上記した他の6位誘導
体も同様にして製造することができる。
【0010】
【発明の作用及び効果】最初に精製した 30 種の抗体の
うち 12 種の抗体について加水分解反応の触媒活性を検
討した。本発明抗体による化合物 (1) の加水分解反応
は 10% DMSO / Tris HCl (50 mM, pH 8.2) 中で行い、4
-OH 体 (2) の生成を高速液体クロマトグラフィー (HPL
C, 254 nm) によって追跡した。その結果 6 種の抗体
(17E11, 20C6, 28D6, 33H8, 25A1, 2B2) に加水分解活
性があることが判明した。特に 17E11 は活性が高く、
スクリーニングの条件で基質 (1) が 40 分で完全に消
失した。そこで抗体 17E11 について更に詳しい
速度論的考察を行った。17E11 による化合物 (1) の加
水分解反応は Michaelis - Menten の飽和速度論に従
い、さらにハプテンの添加によって阻害された。抗体 1
7E11 の触媒反応の速度論量を下記表1に示す。また、
抗体存在下と非存在下の反応速度の比率 (kcat/kuncat)
は 2700 倍であった。
【表1】抗体 17E11 の触媒反応の速度論量 Kma) kcat a) kcat/kuncat b) 4.75 μM 0.163 min-1 2.7 × 103 a) 基質:化合物 (1) b) kuncat = 6.05 × 10-5 min-1
【0011】次に抗体 17E11 のエステル加水分解反応
の位置選択性を検討した。6-フルオロ体 (1) を加水分
解すれば、以下に示す 4-OH 体 (2) 及び3'-OH (16)
の2つの部分加水分解物が得られると期待される。
【化12】 実際、基質 (1) の加水分解反応では 10% DMSO / Tris
HCl ( 50 mM, pH 8.2 )の条件にて 3-OH 体 (16) 及び
4-OH 体 (2) が 1:4 の比率で生成された。他方、本発
明抗体 17E11 の存在下では、その比率は 1:20 であっ
た。このことから、抗体 17E11 はハプテンの構造を認
識してそれに相補的な認識部位を形成していることが示
唆された。
【0012】さらに、本抗体を用いて下記式に示すグル
コースの 2、 3 及び 4 位エステル誘導体 (21) の加水
分解反応を検討した。
【化13】 非抗体存在下の加水分解では2位エステル基が優先的に
分解されるにも関わらず、本発明抗体の存在下では 4-O
H 体、3-OH 体及び 2-OH 体の比率は 20:1:2 であり、
4位エステル基が選択的に加水分解されることが証明さ
れた。
【0013】以上のことからホスホン酸エステル (3)
をハプテンとして免疫して得られる本発明抗体は同一分
子内に同一のエステル性保護基を有する糖の位置選択的
加水分解反応を触媒することが判明した。本明細書では
ハプテンとして4位ホスホン酸エステルを用いているこ
とから得られた抗体は4位エステルの加水分解反応に高
い選択性を示した。そこでこの様なハプテンとして2位
あるいは3位ホスホン酸エステルを用いれば、それぞれ
2位あるいは3位の加水分解反応に高い選択性を持つ抗
体が得られることは明白である。またホスホン酸エステ
ル (3) の免疫によって得られる抗体が化合物 (1) だけ
でなく化合物 (21) に対しても位置選択的な加水分解活
性を有することから、抗体の基質への認識は主に3 位、
4 位のエステル基によるものであることが解る。このこ
とよりグルコ型6炭糖の3位と4位にエステル基さえ存
在すれば、1 位、2 位、6 位におけるいかなる誘導体も
本発明抗体の基質になり得ることが伺われ、本発明抗体
の幅広い応用性が期待される。なお、グルコ型6炭糖と
してはグルコース、グルコサミン及びそれらの誘導体が
例示される。
【0014】また、本発明の抗体は別種のピラノース型
6炭糖であるマンノ型6炭糖の3位、4位の立体化学も
認識できると考えられる。マンノ型6炭糖はグルコ型6
炭糖と2位の立体配置のみが異なるだけだからである。
他方、同じピラノース型であってもガラクト型6炭糖は
グルコ型6炭糖と4位の立体化学が異なっているため本
発明の抗体は有効でないと思われる。しかし、本明細書
に詳細に説明した方法に従うことによって、このガラク
ト型をはじめとする、マンノ型も含めた別種の単糖類の
個々の位置のエステル基を選択性をもって加水分解する
一連の触媒抗体を作製することが可能であることは、当
業者には明白であろう。
【0015】本発明の方法は単糖のみでなく、伸長させ
ているオリゴ糖鎖の非還元末端にある単糖残基にも適用
可能である。従って、グルコ型、ガラクト型、マンノ型
6炭糖を種々有する複雑な枝状構造のオリゴ糖であって
も、種々の型の糖に対応する部位特異的な種々の抗体を
作製しておけば、付加する単糖と保護基を有する伸長糖
鎖との間のグリコシル化反応とその抗体による脱保護と
を繰り返し行うことにより、そのような複雑な枝状構造
を持つオリゴ糖が簡便に合成できるようになる。さらに
本発明抗体によって合成法が極端に簡便化されるので、
糖の還元末端を樹脂などに固定すれば、オリゴ糖の固相
法合成も可能となることが期待される。
【0016】以下に実施例を挙げ本発明をさらに詳しく
説明する。
【実施例】実施例1 ハプテン(3)の合成
【化14】
【0017】1.化合物 (7) の合成 R.Johansson及びB.Samuelsson, J.Chem.Soc.,Perkin Tr
ans 1,2371 (1984)に従って合成した上記化合物 (5)
(2.80 g,6.28 mmol)、N-アセチルアミノフェニル酢酸
(1.33 g,6.91 mmol)、N,N-ジメチルアミノプロピル-エ
チルカルボジイミド (1.32 g,6.91 mmol) のピリジン
溶液 (20mL) を室温で一夜撹拌した。減圧下ピリジンを
留去した後、残留物を酢酸エチルに溶解し、1N 塩酸、
飽和重曹水、飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水
硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下留去し、残渣をシリ
カゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 150 g)
に付し、酢酸エチル−ヘキサン (1:2) の流分より化合
物 (7) を得た。収量 2.74g (70%)。1 H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 2.10 (s, 3H),3.38 (s,
3H),3.48 (d, J=15.8Hz, 1H),3.53 (d, J=15.8 Hz, 1
H),3.67 (dd, J=9.1, 9.1 Hz, 1H),3.75 (dd, J=8.0
Hz, 1H),3.80 (s, 3H), 4.05 (ddd, J=9.5, 9.5, 3.
2, 1H), 4.25(dd, J=10.7, 3.8, 1H),4.72 (d, J=3.2
Hz, 1H),5.02 (brs, 2H),5.30 (t,J=9.4 Hz, 1H),
5.42 (s, 1H),6.80 (d, J=10.6 Hz, 2H),7.20-7.46
(m, 11H)。
【0018】2.化合物 (8) の合成 先に得た化合物 (7) (420 mg,0.68 mmol)、モレキュラ
ーシーブ (3A,1.0 g)、水素化シアノホウ素ナトリウム
(590 mg,9.39 mmol) のN,N-ジメチルホルムアミド懸
濁液 (8 mL) に氷冷下、トリフロロ酢酸 (1.5 mL) のN,
N-ジメチルホルムアミド溶液 (5 mL)を滴下した。室温
で一夜撹拌した後、氷冷下飽和重曹水を加え、セライト
ろ過し、塩化メチレンで抽出した。有機層を飽和食塩水
で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下溶媒
を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ
ー (シリカゲル 80 g) に付し、酢酸エチル−ヘキサン
(2:1) の流分より化合物 (8)を得た。収量 320 mg (75
%)。1 H-NMR (500 MHz,CDCl3) δ 2.07 (s, 3H),2.82 (d,
J=15.8 Hz, 1H),2.99(d, J=15.8 Hz, 1H), 3.35 (s,
3H),3.46 (d, J=15.2 Hz, 1H),3.51 (d, J=15.2 Hz,
1H),3.68-3.70 (m, 2H),3.80 (s, 3H),3.96 (ddd, J
=9.5, 8.7, 3.2, 1H),4.48 (d, J=10.7, 1H),4.50
(d, J=10.7, 1H),4.70 (d, J=3.2 Hz, 1H),5.02 (s,
2H),5.09 (d, J=9.4, 9.4 Hz, 1H),5.17 (d, J=8.7
Hz, 1H),6.88 (d, J=7.2 Hz, 2H),7.07 (d, J=6.8 H
z, 2H),7.22 (d, J=7.2 Hz, 2H),7.26-7.58 (m, 7
H)。
【0019】3.化合物 (10) の合成 先に得た化合物 (8) (520 mg,0.835 mmol)、N-アセチ
ルアミノベンジルホスホン酸 (9) (1.30 g,8.72 mmo
l)、ジシクロヘキシルカルボジイミド (1.80 g,8.72 m
mol) のピリジン溶液 (40 mL)を 40 ℃で一夜撹拌し
た。減圧下ピリジンを留去した後、残留物を HPLC によ
り精製した (ODS カラム、10 × 250 mm,45% アセトニ
トリル−0.1% トリフルオロ酢酸水溶液,流速 3 mL/
分,検出 254 nm,保持時間 11分)。 保持時間 11分の
ピークを分取し、凍結乾燥して目的とする化合物 (10)
を得た。収量 248 mg (34%)。 質量分析:833 (M++1)1 H-NMR (600 MHz,CDCl3) δ 2.08 (s, 3H),2.12 (s,
3H),2.82 (d, J=18.0Hz, 2H),3.37 (s, 3H),3.76
(s,3H),3.85 (ddd, J=9.0, 9.0, 2.8 Hz, 1H),4.04
(m, 1H),4.36 (d, J=9.4 Hz, 1H),4.49 (d, J=9.4 H
z, 1H),4.67 (d, J=2.8 Hz, 1H),5.08 (s, 2H),5.2
3 (dd, J=7.6, 7.6 Hz, 1H),6.84 (d, J=7.2 Hz, 2
H),6.94 (d, J=6.3 Hz, 2H),7.10 (d, J=6.3 Hz, 2
H),7.19 (d, J=7.2 Hz, 2H),7.22-7.29 (m, 5H),7.3
3 (d, J=6.3 Hz, 2H),7.37 (d, J=6.3 Hz, 2H)。
【0020】4.化合物 (12) の合成 先に得た化合物 (10) (25 mg,30 mmol)、20% 水酸化パ
ラジウム−炭素 (500mg)及びメタノール (20 ml) の混
合物を水素気流下室温で 1 時間撹拌した。セライトろ
過後、減圧下溶媒留去して得た残留物をリン酸緩衝液
(50 mM,pH 8,1mL) に溶解し、氷冷下 ピリジルチオプ
ロピオン酸 N-ヒドロキシスクシイミジル (15 mg,48 m
mol) を加え、3 時間撹拌した。得られた溶液を濃縮
し、HPLCにより精製した (ODS カラム,10 × 250mm,
アセトニトリル−0.1% トリフルオロ酢酸水溶液,グラ
ジエント 20-60% アセトニトリル (20 分),流速 3mL/
分,検出 254nm,保持時間 11.5分)。 保持時間 11.5分
のピークを分取し、凍結乾燥して目的とする化合物 (1
2) を得た。収量 20 mg (83%)。1 H-NMR (500 MHz,CDCl3) δ 2.03 (s, 3H),2.06 (s,
3H),2.33 (dt, J=15.2, 7.6 Hz, 1H),2.42 (dt, J=1
5.2, 7.6 Hz, 1H), 2.89 (t, 7.6 Hz, 2H),2.92 (d,
J=21.7 Hz, 2H),3.30 (s, 3H),3.50 (dd, J=13.1, 5.
1 Hz, 1H),3.61(dd, J=13.1, 2.4 Hz, 1H),3.68 (dd,
J=5.1, 2.4 Hz, 1H),4.29 (m, 1H),4.61 (d, J=4.0
Hz, 1H),5.16 (dd, J=7.6, 7.6 Hz, 1H),7.18 (d, J=
6.4 Hz,2H),7.20 (d, J=6.4 Hz, 2H),7.25 (dd, J=8.
6, 7.8 Hz, 1H),7.48 (d, J=6.4 Hz, 2H),7.51 (d, J
=6.4 Hz, 2H),7.72 (d, J=8.6 Hz, 1H),7.82 (dd, J=
8.6, 8.6 Hz, 1H),8.44 (d, J=7.8 Hz, 1H)。
【0021】5.ハプテン化合物 (3) の合成 先に得た化合物 (12) (6.1 mg, 7.85 μmol) をリン酸
緩衝液 (50 mM,pH 8,1 mL) に溶解し氷冷下 ジチオス
レイトール 2.5 g ( 62.5 mmol ) を加え 2 時間撹拌し
た。 得られた溶液を濃縮し、HPLC により精製した (OD
S カラム,10× 250mm,アセトニトリル−0.1% トリフ
ルオロ酢酸水溶液,グラジエント 20-60% アセトニトリ
ル (20 分),流速 3mL/ 分,検出 254nm,保持時間 9.4
分)。保持時間 9.4分のピークを分取し、凍結乾燥して
目的とした化合物 (3) を得た。収量:4.8 mg (92 %)。1 H-NMR (500 MHz,CDCl3) δ 2.09 (s, 3H),2.11 (s,
3H),2.26 (dt, J=15.2, 7.6 Hz, 1H),2.36 (dt, J=1
5.2, 7.6 Hz, 1H),2.70 (t, 7.6 Hz, 2H),3.04 (d, J
=22.2 Hz, 2H),3.38 (s, 3H),3.53 (dd, J=13.1, 5.1
Hz, 1H),3.61(dd, J=13.1, 2.4 Hz, 1H),3.68 (dd,
J=5.1, 2.4 Hz, 1H),4.23 (dd, J=9.1,4.0 Hz, 1H),
4.40 (m, 1H),4.63 (d, J=4.0 Hz, 1H),5.34 (dd, J=
7.6, 7.6Hz, 1H),7.18 (d, J=6.4 Hz, 2H),7.20 (d,
J=6.4 Hz, 2H),7.48 (d, J=6.4Hz, 2H),7.51 (d, J=
6.4 Hz, 2H)。
【0022】実施例2 ハプテンと担体タンパク質との縮合
【化15】 本実施例ではImjectR Activated Immunogen Conjugatio
n キット[PIERCE社]を使用した。マレイミド活性化 KLH
(13) (4.46 mg) の縮合用リン酸緩衝液 (0.1 M エチレ
ンジアミン四酢酸,0.9 M NaCl,83 mM リン酸ナトリウ
ム,pH 8,800 μL) に、先に得た化合物 (3) (4 mg,6
μmol) の縮合用リン酸緩衝液 (0.1M エチレンジアミ
ン四酢酸,0.9 M NaCl,83 mM リン酸ナトリウム,pH
8,200μL) 溶液を加え、室温で 3 時間放置した。ゲル
ろ過により精製し、タンパク質量をブラッドフォード法
により決定した (濃度タンパク質 2.86 mg / mL)。Ellm
an法による残留 SH 基の計算結果から、この条件で得ら
れた縮合物には KLH 分子量 10000 当たり 11 分子のハ
プテン (3) が導入されていた。同様に BSA を担体タン
パク質として用いて縮合体を作製し、得られた縮合体
は、KLH 縮合体によって生成される抗体の抗体価を測定
する ELISA 法に使用した。
【0023】実施例3 基質化合物 (1) の合成
【化16】 1.化合物 (18) の合成 化合物 (17) (250 mg,1.06 mmol) の塩化メチレン懸濁
液 (10 mL) に-50℃でジメチルアミノ三フッ化硫黄 (0.
59 mL,4.46 mmol) を滴下し、0℃まで 5 時間撹拌し
た。反応液を -10℃ 迄冷却後、重曹 (1 g)、メタノー
ル (10 mL)、を加え、室温で 3 時間撹拌した。減圧下
溶媒を留去した後、残留物を酢酸エチルに溶解し、飽和
食塩水で洗浄した。有機層を 無水硫酸マグネシウムで
乾燥後、減圧下留去し、残渣をカラムクロマトグラフィ
ー (シリカゲル 30 g) に付し、100% 酢酸エチルの流分
より化合物 (18) を得た。収量 163 mg (65%)。1 H-NMR (500 MHz, CDCl3) δ 1.75 (s, 3H), 3.38 (s,
3H),3.48 (dd, J=9.7, 9.7 Hz, 1H),3.61 (dd, J=9.
7, 9.7 Hz, 1H),3.72 (m, 1H),3.74 (m, 1H),4.62
(dd, J=46.8, 3.6 Hz, 1H),4.72 (d, J=3.6 Hz, 1H)。
【0024】2.化合物 (1) の合成 先に得た化合物 (18) (72 mg,0.30 mmol),N-アセチル
-p-アミノフェニル酢酸 (174 mg,0.90 mmol)及びN,N-
ジメチルアミノプロピル-エチルカルボジイミド (230 m
g,1.20 mmol) のピリジン溶液 (4 mL)を室温で一夜撹
拌した。減圧下ピリジンを留去した後、残留物を酢酸エ
チルに溶解し、1N 塩酸、飽和重曹水、飽和食塩水で順
次洗浄した。有機層を 無水硫酸マグネシウムで乾燥
後、減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグ
ラフィー (シリカゲル 20 g) に付し、酢酸エチル−ヘ
キサン (4:1) の流分より化合物 (1)を得た。収量 141
g (80 %)。 質量分析:587 (M+)1 H-NMR (500 MHz,CDCl3) δ 1.75 (s, 3H),2.12 (s,
3H),2.13 (s, 3H),3.26 (d, J=14.4 Hz, 1H),3.34
(d, J=14.4 Hz, 1H),3.37 (d, J=8.0 Hz, 1H),3.38
(d, J=8.0 Hz, 1H), 3.39 (s, 3H),3.90 (m, 1H),
4.69 (d, J=3.2 Hz, 1H),5.08 (t, J=13.2 Hz, 1H),
5.22 (t, J=13.2 Hz, 1H),6.39 (d, J=10.1 Hz, 1
H),7.08 (d, J=10.6 Hz, 2H),7.10 (d, J=10.6 Hz,
2H),7.43 (d,J=10.6 Hz, 2H),7.48 (d, J=10.6 Hz,
2H)。
【0025】製造例1 化合物 (2) および化合物 (16) の合成
【化17】 実施例3(1)にて製造した化合物 (18) (41 mg,0.30 m
mol)、N-アセチル-p-アミノフェニル酢酸 (39 mg,0.20
mmol)及びN,N-ジメチルアミノプロピル-エチルカルボ
ジイミド (42 mg,0.22 mmol) のピリジン溶液 (4 mL)
を室温で一夜撹拌した。減圧下ピリジンを留去した後、
残留物を酢酸エチルに溶解し、1N 塩酸、飽和重曹水、
飽和食塩水で順次洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシ
ウムで乾燥後、減圧下溶媒留去した。残留物をプレパレ
ティブ TLC (シリカゲル、展開溶液:酢酸エチル−ヘキ
サン (4:1))で精製し、Rf = 0.4 の画分より化合物 (2)
を、Rf = 0.35 の画分より化合物 (16) を得た。化合物 (2) : 1H-NMR (500 MHz,CDCl3) δ 1.71 (s, 3
H),2.12 (s, 3H),3.40 (s, 3H),3.58 (d, J=14.4 H
z, 1H),3.61 (d, J=14.4 Hz, 1H),3.67 (dd,J=10.1,
10.1 Hz, 1H),3.73 (m, 1H), 4.19 (ddd, J=10.1, 9.
5, 3.4 Hz, 1H),4.63 (dd, J=46.7, 3.4 Hz, 1H), 4.
67 (d, J=3.6 Hz, 1H),4.68 (dd, J=46.7, 4.3 Hz, 1
H),5.10 (dd, J=10.1, 9.5 Hz, 1H),5.22 (t, J=13.2
Hz, 1H),6.58 (d, J=10.1 Hz, 1H),7.18 (d, J=10.6
Hz, 2H),7.48 (d, J=10.6 Hz,2H)。化合物 (16) : 1H-NMR (500 MHz,CDCl3) δ 1.75 (s,
3H),2.13 (s, 3H),3.38 (s, 3H),3.61 (d, J=14.4 H
z, 1H),3.63 (d, J=14.4 Hz, 1H),3.68 (dd,J=10.1,
8.0 Hz, 1H),3.75 (m, 1H),4.19 (m, 1H),4.63 (dd,
J=46.7, 3.4Hz, 1H),4.68 (dd, J=46.7, 4.3 Hz, 1
H),4.70 (d, J=3.4 Hz, 1H),4.89 (dd, J=10.1, 10.1
Hz, 1H),6.39 (d, J=9.5 Hz,1H),7.22 (d, J=10.6 H
z, 2H),7.49 (d, J=10.6 Hz, 2H)。
【0026】実施例4 基質化合物 (21) の合成
【化18】 1.化合物 (20) の合成 メチル α-D-グルコピラノシド (19) (970 mg,5.0 mmo
l) の塩化メチレン懸濁液 (20 mL) に -50℃ でジメチ
ルアミノ三フッ化硫黄 (3.75 mL,28.4 mmol)を滴下
し、0℃まで 5 時間撹拌した。反応液を -10℃ 迄冷却
後、重曹 (3 g)、メタノール (20 mL) を加え、室温で
5 時間撹拌した。減圧下溶媒を留去した後、残留物を酢
酸エチルに溶解し、飽和食塩水で洗浄した。有機層を
無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下留去し、残渣を
カラムクロマトグラフィー (シリカゲル 80 g) に付
し、メタノール−酢酸エチル (1:9) の流分より化合物
(20)を得た。収量 618 mg (63%)。1 H-NMR (500 MHz,CDCl3) δ 3.38 (s, 3H),3.49 (dd,
J=9.0, 9.0 Hz, 1H),3.61 (dd, J=9.0,9.0 Hz, 1H),
3.71 (m, 1H),3.74 (m, 1H),4.62 (dd, J=47.5, 3.4
Hz, 2H),4.72 (d, J=3.6 Hz, 1H)。
【0027】2.化合物 (21) の合成 先に得た化合物 (20) (50 mg,0.255 mmol)、N-アセチ
ル-p-アミノフェニル酢酸 (350 mg,1.78 mmol)及びN,N
-ジメチルアミノプロピル-エチルカルボジイミド (490
mg,2.55 mmol) のピリジン溶液 (5 mL)を室温で一夜撹
拌した。減圧下ピリジンを留去した後、残留物を酢酸エ
チルに溶解し、1N 塩酸、飽和重曹水、飽和食塩水で順
次洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、
減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフ
ィー (シリカゲル 30 g) に付し、酢酸エチル−ヘキサ
ン (4:1) の流分より化合物 (21)を得た。収量 147 mg
(80%)。1 H-NMR (600 MHz,CDCl3) δ 2.10 (s, 3H),2.15 (s,
3H),2.16 (s, 3H),3.05 (d, J=15.1 Hz, 1H),3.11
(d, J=15.1 Hz, 1H),3.28-3.33 (m, 2H), 3.39 (s, 3
H),3.40-3.48 (m, 2H),3.94 (dd, J=16.8, 7.4 Hz, 1
H),4.27-4.45 (m, 2H),4.85 (dd, J=8.1, 2.8 Hz, 1
H),4.92 (d, J=2.8 Hz, 1H),5.03 (dd,J=8.1, 8.1 H
z, 1H),5.48 (dd, J=8.1, 8.1 Hz, 1H),6.93 (d, J=
7.0 Hz, 2H),7.07 (d, J=7.0 Hz, 2H),7.12 (d, J=7.
0 Hz, 2H),7.38 (d, J=7.0 Hz, 2H),7.44 (d, J=7.0
Hz, 2H),7.45 (d, J=7.0 Hz, 2H)。
【0028】実施例5 免疫 実施例2により製造した抗原 (KLH 縮合体) 50 μg / 5
0 μL 生理食塩水を等量の完全フロイントアジュバント
と混合し、その混合液を BALB/c マウス (4 週齢、雌)
に腹腔内注射した。10 日後、抗原 50 μg / 50 μL 生
理食塩水を等量の完全フロイントアジュバントの混合液
で追加免疫を行い、さらに 10 日後追加免疫を行った。
その 7 日後にマウスの尾静脈より採血し、抗体価を BS
A-縮合体を用いた酵素標識免疫吸着アッセイ (ELISA)
法 (二次抗体 ビオチン化抗マウス IgG 抗体、アビジ
ン、ビオチン化ペルオキシダーゼ) により測定し、1 :
106抗体価の値を得た。2 回目の追加免疫より 1ヶ月後
に抗原 100 μg / 100 μL生理食塩水を尾静脈より投与
(最終免疫) した。
【0029】実施例6 ハイブリドーマの作製 最終免疫より 3 日後にマウスから脾臓を摘出し、次い
で 5.4 × 108 個の脾細胞と 9.6 × 107 個のミエロー
マ細胞 (×63 / Ag 8.653) とをポリエチレングリコー
ルを用いて細胞融合し、105 個 / ウエルのフィーダー
細胞 (マウス胸腺細胞) を含む HAT 選択培地 (0.1 mM
ヒポキサンチン、0.4 μM アミノプテリン、0.016 mM
チミジン、10% ウシ胎児血清 RPMI 培地)を加えた96 ウ
エルプレート 30 枚を用いて、得られた融合体の選別を
行った (37 ℃、10% 炭酸ガス)。8-14 日後にコロニー
が現れてきた。ウエルより上清を取り ELISA 法により
スクリーニングを行った結果、109 個の陽性ウエルが見
られ、その内 50 ウエルよりクローニングを行い、12
株のクローンを得た。抗マウス IgG H 鎖抗体を用いてE
LISA 法を行った結果、12 種全てのクローンが IgG を
産生していた。
【0030】実施例7 モノクロナール抗体の調製 実施例6にて調製した 12 種のハイブリドーマを完全培
地 (10% ウシ胎児血清RPMI 培地) においてそれぞれ 7
日間培養し、1 × 107 個 / 500 μL 生理食塩水の各細
胞懸濁液を 10日前に500 μL のブリスタンを投与した
BALB/c マウス (8 週齢、雌) に腹腔内注射し、次いで
2 週間後腹水を 3 - 5 mL ずつ採取した。各腹水の遠心
上清を等量の硫酸アンモニウム飽和溶液で硫安沈澱し、
次いで S-セファロースカラムによる陽イオン交換カラ
ムクロマトグラフィー及びプロテイン G カラムによる
アフィニティークロマトグラフィーを行い、それぞれ精
製抗体 10 - 20 mgを得た。
【0031】次いで、得られた 12 種の精製抗体の各 2
2 μM 溶液 ( 50 mM トリス緩衝液、pH 8.2) 180 μL
を室温に放置する。これを実施例3にて製造した化合物
(1)のジメチルスルホキシド溶液 (1.5mM) 20 μL に加
え、すばやく振とうした後、HPLC により 4-OH 体化合
物の吸収 (254 nm) の増加をそれぞれ 2 時間追跡した
(ODS カラム,4.6 × 250 mm,25% アセトニトリル−0.
1% トリフルオロ酢酸水溶液,流速 1 mL/分,保持時間
5.4 分)。これにより反応速度を速度を計算し、触媒活
性を示す6種の抗体を特定した。得られた結果を以下の
表2に示す。
【表2】抗 体 反応速度 17E11 3.00 μM/分 20C6 2.10 μM/分 28D6 0.14 μM/分 33H8 0.11 μM/分 25A1 0.11 μM/分 2B2 0.06 μM/分 触媒活性を示す上記の6種の抗体の中で最も強い活性を
有している抗体 17E11を産生するハイブリドーマをハイ
ブリドーマ17E11と命名した。なお、ハイブリドーマ 17
E11 は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関す
るブタペスト条約の下、通商産業省工業技術院生命工学
工業技術研究所に寄託されている(寄託日:平成5年8
月27日、受託番号:FERM BP−4660)。
【0032】試験例1 化合物 (1) に対する触媒活性の測定 1. 速度論量の決定 抗体 17E11 の 1.11 μM 溶液 ( 50 mM トリス緩衝液、
pH 8.2) 180μL を室温に放置する。これを化合物 (1)
の各種濃度 (2 mM、1 mM、500 μM、250 μM、100 μM)
のジメチルスルホキシド溶液 20 μL に加え、すばや
く振とうした後、HPLC によって 4-OH 体化合物の吸収
(254 nm) の増加をそれぞれ 2 時間追跡した (ODS カラ
ム,4.6 × 250 mm,25% アセトニトリル−0.1% トリフ
ルオロ酢酸水溶液,流速 1 mL/ 分,保持時間 5.4分)。
得られた結果をLineweaver-Burk二重逆数プロット法に
よりグラフ化し、添付の図1に示す結果を得た。図1の
プロットより、抗体 17E11 の化合物 (1) に対する Km
値を 4.75 × 10-6 M、kcat 値を 0.163 min-1 と決定
した。また、同様に抗体不存在下でのkcatを決定する
と、6.05 × 10-5 min-1 であった。従って、抗体存在
下と非存在下の反応速度の比率(kcat/kuncat)は27
00であった。
【0033】2. 位置選択性試験 抗体 17E11 のエステル加水分解反応の位置選択性を検
討した。化合物 (1) のジメチルスルホキシド溶液(1.5
mM)20 μL にトリス緩衝液(50 mM,pH 8.2)180 μL
を加え、すばやく振とうした後、室温に位置する。H
PLCで 3-OH 体及び 4-OH 体の吸収(254 nm)の増加
を2時間追跡した(ODSカラム,4.6 × 250 mm,25 %
アセトニトリル−0.1 % トリフルオロ酢酸水溶液,流速
1mL/分,保持時間 3-OH 体 6.7 分,4-OH 体 5.4
分)。自然分解反応は60 分後に原料消費率 0.67 % で
あり、3-OH 体が 0.2 μM、4-OH 体が 0.8 μM生成した
(その比率 1:4)。次ぎに抗体 17E11 の存在下での加
水分解反応を行った。抗体 17E11 の 1.11 μM 溶液(5
0 mM トリス緩衝液,pH 8.2)180 μL を室温に放置す
る。これを化合物(1)のジメチルスルホキシド溶液
(1.5 mM)20 μL に加え、すばやく振とうした後、H
PLCで化合物の吸収(254 nm)の増加を追跡した(OD
S カラム,4.6 × 250 mm,25 % アセトニトリル−0.1
% トリフルオロ酢酸水溶液,流速 1 mL/分)。17E11
存在下での化合物(1)の加水分解反応は60分後に原
料消費率 26 %で、3-OH 体が 1.9 μM、4-OH 体が 37.
1 μM生成した(その比率 1:20)。このことから、本発
明抗体 17E11 はハプテンの構造を認識する特異的な抗
体であることが示された。
【0034】試験例2 化合物 (21) に対する触媒活性の測定 実施例4にて製造した基質化合物 (21) に対する抗体 1
7E11 の加水分解活性を試験した。化合物(21)のジメ
チルスルホキシド溶液(250 μM)30 μLにトリス緩衝
液(50 mM,pH8.2)120 μL を加え、すばやく振とうし
た後、室温に放置する。HPLCにより以下に記載する
2-OH体、3-OH体、及び 4-OH体の吸収(254 nm)の増加
を2時間追跡した(ODS カラム,4.6 × 250 mm,25 %
アセトニトリル−0.1 % トリフルオロ酢酸水溶液、流速
流速 1 mL/分,保持時間 2-OH体 6.7 分,3-OH 体 6.7
分,4-OH 体 5.4 分)。自然分解反応は60分後に原
料消費率26%で、3-OH体 が 1.9 μM,4-OH 体が 37.
1 μM 生成した。抗体 17E11 の 1.11 μM 溶液(50 mM
トリス緩衝液,pH 8.2)180 μL を室温に放置する。
これを化合物(1)のジメチルスルホキシド溶液(1.5 m
M)20 μL に加え、すばやく振とうした後、HPLCで
化合物の吸収(254 nm)の増加を追跡した(ODS カラ
ム,4.6 × 250 mm,25 % アセトニトリル−0.1 % トリ
フルオロ酢酸水溶液,流速 1 mL/分)。17E11 存在下
での化合物(1)の加水分解反応は 60 分後に原料消費
率26%で,3-OH 体が 1.9 μM,4-OH 体が 37.1 μM
生成した。
【化19】
【図面の簡単な説明】
【図1】 化合物 (1) に対する本発明抗体 17E11 の触
媒活性をLineweaver-Burk二重逆数プロット法によりグ
ラフ化したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI (C12N 9/00 C12R 1:91) (C12P 21/08 C12R 1:91) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07H 13/04 C07K 16/44 C12N 9/00 BIOSIS(DIALOG) CA(STN) WPI(DIALOG)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式: 【化1】 で示される化合物。
  2. 【請求項2】 式: 【化2】 [式中、R1はH、OH、F、OCH3、単糖もしくはオ
    リゴ糖鎖、又は式: 【化3】 で示される基であり、 R2はH、CH3、又は単糖もしくはオリゴ糖鎖である]
    で示される単糖化合物又はそれを非還元末端に有するオ
    リゴ糖化合物。
  3. 【請求項3】 式: 【化4】 [式中、R1はH、OH、F、OCH3、単糖もしくはオ
    リゴ糖鎖、又は式: 【化5】 で示される基であり、 R2はH、CH3、又は単糖もしくはオリゴ糖鎖である]
    で示される単糖化合物又はそれを非還元末端に有するオ
    リゴ糖化合物。
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