JP2797183B2 - 歯科矯正用ブラケット - Google Patents

歯科矯正用ブラケット

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JP2797183B2
JP2797183B2 JP7325596A JP7325596A JP2797183B2 JP 2797183 B2 JP2797183 B2 JP 2797183B2 JP 7325596 A JP7325596 A JP 7325596A JP 7325596 A JP7325596 A JP 7325596A JP 2797183 B2 JP2797183 B2 JP 2797183B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、不揃いな歯の並び
を理想的な歯列弓に矯正する歯列矯正の手段として、患
者の歯面に固定してアーチワイヤーで矯正する歯科矯正
用ブラケットに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から使用されている歯科矯正用エッ
ジワイズブラケットは、ブラケット本体を歯に固定する
固定面とは反対側の面に、アーチワイヤーを係留するた
めのスロットが、それぞれの歯が必要とする頬舌的、近
遠心的な傾斜をスロット自体に形成した状態で、その上
下に突設された一対のウイングに対し斜めに形成されて
いる。
【0003】そして、傾いている歯を整直、すなわち適
切な歯軸傾斜に矯正する場合は、このブラケット本体の
スロットを傾いている歯を垂直に矯正する方向に傾けて
歯面に固定し、他の歯に固定したブラケット本体のスロ
ットと矯正する歯のスロットにスロット幅に応じた太さ
のアーチワイヤーを挿入し、傾いている歯に対して垂直
方向に起立する力を加えて歯列の矯正を行うものであ
り、また、歯の移動に対しては牽引移動手段による歯体
移動を行うものである。
【0004】また、このブラケット本体の歯肉側のウイ
ングにはフックを延設して、その側面に引っかけ用の凹
部を形成し、ゴム製、樹脂製の弾性リング、コイルスプ
リング等を引っかけ、またワイヤーをスロットに結紮す
るためのフック部としたものもある。
【0005】そして、スロットと歯面との間には、スロ
ットと直角に交わる縦の穴があいており、オギジリアリ
ーのアップライトスプリング、ローテーションスプリン
グなどを挿入できるようになっている。
【0006】エッジワイズブラケットを用いた矯正手段
の他にベッグブラケットを用いた矯正手段があり、これ
は左右、近心、遠心、頬側、舌側方向に自由に歯を傾斜
できようにスロットに角度が設けられていて、傾斜移動
による歯の移動を行うので、前記エッジワイズの歯体移
動と比較して、歯の移動は早くなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】前記、エッジワイズブ
ラケットにおいては、歯の移動は歯体移動となり、歯の
移動が遅くなり、エッジワイズの構造上傾斜した歯のブ
ラケットスロットにワイヤーを挿入すると、歯に大きな
力が加わり過度の負担をかけ、また時としてワイヤー自
体を変形させて、スロットに挿入せねばならなかった。
【0008】一方、歯科矯正用ブラケットとしてのベッ
グブラケットは、傾斜移動を行うので移動は早い。しか
し、歯を整直にするのに、原則的にはベッグはラウンド
ワイヤーを使用してオギジリアリーを多用しなければな
らず、オギジリアリーによる傾斜で行うため、歯を一定
の位置に整直を保つことはできなかった。
【0009】さらに、このようなエッジワイズブラケッ
トの場合、歯を移動するには大きな力がいるため、固定
源を顎の外などに求めなければならない等の種々の問題
点があった。
【0010】本発明は前記した問題点を解決せんとする
もので、抜歯した後、移動させたい歯を無理なく傾斜移
動させることで、歯の移動を早くすることができ、傾斜
移動した後は、単にストレートなワイヤーを細いものか
ら太いものに順次交換していくだけで、弱い力で歯列不
正を直すことができ(整直することができ)、もちろん
傾斜のみの不正に対しても、同じように整直し、不正が
改善できる。
【0011】そして、個々の歯により、移動が必要な場
合、必要でない場合、右に傾斜移動しなければならない
場合、左に傾斜移動しなければならない場合、ほとんど
傾きを必要としない場合、大きな傾きを必要とする場合
には、その状況に応じ、上下ウイングのズレを変化させ
ることにより、矯正作業を容易にする歯科矯正用ブラケ
ットを提供する事にある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の歯科矯正用ブラ
ケットは前記した目的を達成せんとするもので、その手
段は、歯に固定するブラケット本体の歯固定面とは反対
側の面に、アーチワイヤーを係留するスロットを中間に
介在させて上下方向に形成する一対のウイングに対し、
左右方向に位相のずれを形成したことを特徴とする。
【0013】また、上のウイングには上方向から、下の
ウイングには下方向から切り溝を形成して、該切り溝の
左右にフック片を形成することが望ましい。
【0014】
【実施の形態】次に、本発明に係る歯科矯正用ブラケッ
トの実施の形態を図面に基づいて以下に説明する。この
歯科矯正用のブラケット本体Aの一面は、歯表面に接着
剤等の固定手段で固定する平坦な取付面となっている。
【0015】この取付面とは反対側の面の上下中心付近
には水平にアーチワイヤーBを挿入するスロット1が形
成されていて、このスロット1の上下を一対として、前
記取付面側に水平方向に連続している結紮線挿入溝2を
設けた上ウイング3、下ウイング4となっている。
【0016】前記の上ウイング3と下ウイング4とは原
則として同一幅に形成されるが、その幅は図3、図4、
図6の幅a1 に対し、図5に示すa2 のように幅広に形
成することもできる。
【0017】そして、前記のスロット1の幅は図3〜図
5に示した幅b1 に対して図6のように広い幅b2 等、
矯正に必要な種々の幅を設計できる。また、図3、図6
の上ウイング3と下ウイング4の水平方向に位相をずら
した時の重なりc1 に対し、図4の少ない重なりc
2 等、矯正に必要な位相のずれを適宜形成することがで
きる。
【0018】前記のスロットの幅と位相のずれの両者
は、これを標準的としたスロット幅b1 や標準的とした
位相のずれc1 に対して一方のみの変化、あるいは両者
を変化させる等、矯正事情によって種々の変化が可能な
ものである。
【0019】また、上ウイング3、下ウイング4には図
3の点線で示したような切り込み5を形成することによ
って、図20に示すような結紮線Cを結着するフック部
6を上ウイング3と下ウイング4に形成しておくことも
できるが、結紮線Cはフック部6が形成されていなくて
も水平方向に連続している結紮線挿入溝2を利用して結
紮することもできる。
【0020】上ウイング3と下ウイング4の一方の側面
からウイング1にかけてウイング1の奥面と同一面であ
るローテンション防止面7は歯が回転するのを防ぐと共
に、捻転の改善にも役立ち、スロット1と歯面との間に
は縦方向にオギジリアリーを挿入するバーティガルスロ
ット8が形成さているのが望ましい。
【0021】このブラケット主体Aは、図7のように乱
整列している歯列に対し左右に傾いていて整直に矯正す
る歯Dと、矯正の必要のない複数の歯Eとの外面側に、
取付面を接着剤で固定するが、傾いている歯Dに対し、
歯Dの上下方向の中心線(歯軸)に対してスロット1が
直交するように固定する。
【0022】またこの矯正を行う歯以外は従来から用い
られている上ウイング3と下ウイング4の位相が食い違
っていない従来からのブラケット主体Fを部分的に用い
てもよい。
【0023】次に、矯正の必要のない歯Eのブラケット
主体Fと矯正する歯Dのブラケット主体Aのスロット1
にアーチワイヤーBを嵌め込むが、矯正の必要のない歯
Eに対してはスロット1とアーチワイヤーBの角度が一
致するので、アーチワイヤーBはブラケット主体Fを傾
けようとする力が発生しない。
【0024】これに対し、矯正する歯Dに取り付けられ
たブラケット主体Aのスロット1とアーチワイヤーBと
は傾いた状態であるので、図7の真中の矯正する歯Dに
おいて、スロット1に対して上ウイング3の左下側、下
ウイング4の上右側がアーチワイヤーBに接触する。
【0025】このアーチワイヤーBは直線状態を維持し
ようとするために、その太さの選定で前記接触した場所
をそれぞれ上側に押し上げ、下側に押し下げする方向に
作用するので、矯正しようとする歯Dに回転モーメント
を与え、この力によって矯正しようとする歯Dは矯正方
向に起立させられる。
【0026】このようにして、例えば図8のようにアー
チワイヤーBの太さd1 、ウイング幅がa1 、スロット
幅が幅b1 、上ウイング3と下ウイング4の位相差によ
る重なりがc1 の図3に示したブラケット主体Aの場
合、前記の力によって歯Dが整直され始める。
【0027】そして、図9のようにアーチワイヤーBの
太さをd2 、図10のようなd3 と太いものに交換して
いく、また角のアーチワイヤーBを入れることにより、
この矯正が完了した状態の維持を図ることができる。
【0028】これに対し、一層傾斜させる必要がある歯
Dに対して、位相のずれの大きいc2 のブラケット主体
Aを用いれば、図11のように前記と同様にして矯正力
が得られるが、この時の矯正は図12の程度でアーチワ
イヤーBの交換を行う。再び、図12のアーチワイヤー
Bを太さd2 に交換して大きな矯正力が得られるように
し、その矯正が図13のように完了した状態ではアーチ
ワイヤーBを太さd3に交換して矯正終了状態を維持す
ることができる。
【0029】つまり矯正当初から、太いアーチワイヤー
を使用すると歯Dに強度の力が働き過ぎるので細いアー
チワイヤーから太いアーチワイヤーに段々と交換してい
くことが望ましい。
【0030】図14はスロット1の幅bをb2 に変えた
図6のブラケット主体Aを用いた場合を示し、前記と同
様にアーチワイヤーの太さdをd1 からd3 に変更する
ことで、矯正する歯Dが図15、図16のように2段階
に角度を変えて矯正し、更に整直させる場合にはスロッ
ト1の幅と同じ太さのアーチワイヤーBを装着するもの
である。
【0031】従って、アーチワイヤーBの太さdの変化
で、図8、図11、図14のようなブラケット主体Aと
アーチワイヤーBの関係が図9、図12、図15の状態
を経て図10、図13、図16の状態とすることができ
る。
【0032】そのために、アーチワイヤーBの太さを当
初d1 から始めて、矯正の進み具合に応じアーチワイヤ
ーBの太さをd2 、d3 、更にスロット幅が縦方向に広
い場合にはその幅に対応する太さのアーチワイヤーBと
交換することによって、ブラケット主体Aを整直状態に
段々と矯正が行われる。
【0033】前記に対し歯Dの傾きが反対方向である図
7の右側、図17、図18の場合でも、アーチワイヤー
Bと上ウイング3、下ウイング4との接触場所が変わる
だけで、前記と同様な力を歯に加えることで矯正ができ
るものである。
【0034】上記は本実施の形態を歯の傾きの矯正に実
施した場合を示したが、歯の前後一の不並びの矯正、そ
の他の矯正を行うべく結紮線を使用する場合には、図2
のブラケット主体Aの場合では、図19のように結紮線
Cを結紮線挿入溝2とアーチワイヤーBとにかけて締結
する。
【0035】また、図1のようなフック部6が形成され
ている場合には、図20のようにこのフック部6とアー
チワイヤーBとにかけて結紮線Cを締結し、アーチワイ
ヤーBと矯正する歯Dとの矯正位置を保持させることも
できる。
【0036】
【実施例】本発明に係るブラケットを用いた、歯の傾斜
移動矯正方法について図21を参考にして以下に説明す
る。
【0037】図21に示すように、歯Xと歯Yとの間に
間隔がある場合において、歯XをY方向に移動させたい
時、歯Xと歯Yのブラケット主体Aにエラスチック(ゴ
ム)をかけると、歯XはZの位置へブラケット主体Aが
アーチワイヤーBに当接係止されるまで歯冠のみ傾斜し
移動するが、この時歯YはX方向には動かしたくないの
で、歯Xに用いたブラケット主体Aの上下ウイングの位
相のずれと同一のブラケットを用いる。この場合、歯Y
は若干の傾斜によってブラケット主体Aがアーチワイヤ
ーBに当接係止されるので、X方向に動かず固定源とな
る。
【0038】歯冠が歯Xの位置から点線で示したZの位
置に傾斜移動したら、細いアーチワイヤーから順番に太
いアーチワイヤーに交換していき、最終的にスロット1
の幅と同じ太さのワイヤーに交換することにより、一点
鎖線で示したように歯根がZの位置で整直となる。頬舌
的な傾斜についても最終的にマキシマムな太い角のアー
チワイヤーBを挿入することにより、歯のスロット1に
付加された傾斜に合わせて、歯の適切な傾斜が得られ
る。
【0039】このように、移動の早い傾斜移動を被矯正
者に苦痛を与えることなくでき、アップライトスプリン
グなどのオギジリアリー無しに単に細いアーチワイヤー
Bから太いアーチワイヤーBの交換のみで歯に強度な力
が加わること無しに整直が得られまた保持できる。
【0040】
【発明の効果】従来は歯の傾きの矯正を行う場合には、
エッジワイズブラケットでは歯体移動であるため、歯を
動かすときには大きな固定源を必要とし、時には顔の外
に固定源を求める必要があり、また傾斜歯にワイヤーを
装着する場合には、ワイヤー自体の変形が大きくなり、
歯に過度の力が働いていた。
【0041】ベッグブラケットの場合、傾斜移動で移動
が早いが整直のためには、アッブライトスプリング、ロ
ーテンションスプリングなどのオギジリアリーを必要と
し、しかも歯を正確な位置に保持する事が困難であり、
保持するためにはそのためのオギジリアリーを必要とし
ていたが、本発明の移動の場合は傾斜移動で速く動かす
事ができ、傾斜角度もワイヤーの太さでの変化も可能
で、傾斜した歯の整直には単にワイヤーを細から太いワ
イヤーに交換するだけで可能となる。
【0042】そして、ウイングのずれの違いにより色々
な傾斜が得られ、これを種々用意することにより、それ
ぞれの歯に適した矯正用のブラケットを選ぶ事ができ、
逆方向に動かしたくない歯には、ブラケットを傾斜しな
い方向につければ良く、このことは動かしたい歯の固定
源ともなる。
【0043】従って矯正の作業が著しく簡素化され容易
になるばかりでなく、能率良く行う事ができ、歯に余計
な力を与えない。また色々な不正歯列の治療にも役に立
つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の斜視図である。
【図2】同上のフック部のない実施の形態の斜視図であ
る。
【図3〜図6】図2の実施の形態のウイング幅、スロッ
ト幅、位相のずれによる重なり幅を変化させた正面図で
ある。
【図7】図2のブラケット本体を取り付けて、スロット
にアーチワイヤーを嵌め込んだ歯列の正面図である。
【図8】図3のブラケット主体に対してアーチワイヤー
の太さを変えた正面図である。
【図9】図3のブラケット主体に対してアーチワイヤー
の太さを変えた正面図である。
【図10】図3のブラケット主体に対してアーチワイヤ
ーの太さを変えた正面図である。
【図11】図4のブラケット主体に対してアーチワイヤ
ーの太さを変えた正面図である。
【図12】図4のブラケット主体に対してアーチワイヤ
ーの太さを変えた正面図である。
【図13】図4のブラケット主体に対してアーチワイヤ
ーの太さを変えた正面図である。
【図14】図6のブラケット主体に対してアーチワイヤ
ーの太さを変えた正面図である。
【図15】図6のブラケット主体に対してアーチワイヤ
ーの太さを変えた正面図である。
【図16】図6のブラケット主体に対してアーチワイヤ
ーの太さを変えた正面図である。
【図17】歯の傾斜方向が逆の場合のブラケット主体と
アーチワイヤーの関係を示す正面図である。
【図18】歯の傾斜方向が逆の場合のブラケット主体と
アーチワイヤーの関係を示す正面図である。
【図19】図2のブラケット主体に結紮線を締着した場
合の正面図である。
【図20】図1のブラケット主体に結紮線を締着した場
合の正面図である。
【図21】歯を移動し、整直する場合の順序を示す正面
図である。
【符号の説明】
A ブラケット主体 B アーチワイヤー 1 スロット 3 上ウイング 4 下ウイング 6 フック部 7 ローテーション防止面 8 バーティガルスロット

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 歯に固定するブラケット本体の歯固定面
    とは反対側の面に、アーチワイヤーを係留するスロット
    を中間に介在させて上下方向に形成する一対のウイング
    に対し、左右方向に位相のずれを形成したことを特徴と
    する歯科矯正用ブラケット。
  2. 【請求項2】 前記上のウイングには上方向から、下の
    ウイングには下方向から切り溝を形成して、該切り溝の
    左右にフック片を形成したことを特徴とする請求項1記
    載の歯科矯正用ブラケット。
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