JP2779435B2 - ソーナー信号検出処理装置 - Google Patents

ソーナー信号検出処理装置

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JP2779435B2 JP7283464A JP28346495A JP2779435B2 JP 2779435 B2 JP2779435 B2 JP 2779435B2 JP 7283464 A JP7283464 A JP 7283464A JP 28346495 A JP28346495 A JP 28346495A JP 2779435 B2 JP2779435 B2 JP 2779435B2
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清仁 徳田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ソーナー出力信号を微
細、拡大周波数分析し、船舶の船走音等の持つ周波数ス
ペクトルを抽出して表示させるためのソーナー信号検出
処理装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、このような分野の技術としては、
例えば次のような文献に記載されるものがあり、以下そ
の概要を説明する。 文献;沖電気研究開発、53[4](昭61−10)似
島・五十嵐著「水中音響におけるディジタル信号処理技
術」P.53−58 ソーナー装置は、水中音響を用いて水上或いは水中を移
動する目標の探索、位置計測、類別等を行なうものであ
る。この装置は、動作様式によってパッシブソーナー装
置とアクティブソーナー装置とに分けられる。パッシブ
ソーナー装置は目標が放射する音波を用い、アクティブ
ソーナー装置は装置側から発した音波の目標から反射波
(エコー)を用いて、目標の探索、位置計測、類別等を
行なうものである。
【0003】ソーナー装置で用いられる信号検出処理
は、信号の時間的特徴(波形,スペクトル等)を検出す
るために用いる時間的処理と、信号の空間的特徴(位
置,形状,移動速度)を検出するために用いる空間的処
理とに分けられる。時間的処理には、整合フィルタ,ウ
ィーナフィルタ及びスペクトル推定がある。スペクトル
推定は、信号の周波数に対する強度を推定するものであ
り、雑音に埋もれた周期的信号(線スペクトル)を検出
し、その信号を放射する目標を類別するために用いられ
る。一方、空間的処理には、ビームフォーミング(B
F)及び遅延/位相推定がある。BFは、空間を伝搬す
る波動の方向性を利用して方位に応じて受波器群を構成
する複数の受波器の出力信号を整相することにより、信
号のS/Nの改善、信号の入射方向、強度(空間スペク
トル)の推定等を行なう。遅延/位相推定は、少数の受
波器で受信される信号の間に生じる遅延又は位相の差を
推定し、主に目標の位置計測のために用いられる。
【0004】パッシブソーナー装置及びアクティブソー
ナー装置のうち、例えばパッシブソーナー装置は、主に
船舶の船走音及び過渡音を検知するために用いる。図2
はこの種のパッシブソーナー装置の一構成例を示したブ
ロック図である。このパッシブソーナー装置において
は、船舶1が放射する音波を受信する複数の受波器から
なる受波器群10を有し、その出力側にはソーナー受信
機20が接続されている。ソーナー受信機20において
は、受波器群10からの受信信号を整相処理し、全周に
指向性ビームを形成して船舶1からの水中音を受信し、
受信点周辺の船舶1の方位や、該船舶1の信号の特徴
(例えば周波数)を検出し、方位表示30や周波数表示
40を行なう。ソーナー受信機20の受信処理におい
て、船舶1の信号の特徴を検出するには、例えば高速フ
ーリエ変換法(FFT法)によって時間領域での周波数
分析や、或いはデータ数を多くすることによって微細な
周波数構造が検出できる高分解能周波数分析を行い、表
示器における周波数−時間の2次元平面上にそのスペク
トルの強度に応じた濃度で周波数表示40を行なってい
る。更に、このソーナー受信機20では、分析周波数を
狭くすることにより、微細な周波数構造が検出できる超
狭帯域分析を行なう機能を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
方法においては、より小さい強度(より低いS/N比)
の信号を検出するためには、整相処理を予め行なう必要
がある。これは、全周から入射する雑音をその方位を制
限することで低減させるためである。この方法において
は、次のような2つの問題が生じる。その第1は、検出
したい目標からの信号に対してその方位を限定しない段
階、或いはその方位がまだ分からない段階においては、
全周からの信号の周波数分析を行なう必要があり、この
場合には、雑音を低減することができない、という問題
である。その第2は、方位を制限した場合においては、
雑音の低域は、整相処理によってもたらされる効果だけ
である、という問題である。より低い信号を検出するに
は、雑音の低減効果はより大きいほうが望ましい。特
に、使用可能な受波器の数が限られている場合には、整
相処理によって得られる雑音低減効果も制限される。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係るソーナー信
号検出処理装置は、音響信号を受信する複数の受波器か
らなる受波器群と、その複数の受信信号に線形予測分析
を適用して周波数スペクトルを算出し、周波数スペクト
ルの強度を画像表示させる周波数分析手段とを備えたソ
ーナー信号検出処理装置において、周波数分析手段は、
複数の受信信号に多変量予測分析法を適用して予測係数
行列を算出し、その予測係数行列を用いてクロススペク
トルを算出し、そのクロススペクトルに基いて各分析周
波数に対するクロススペクトル行列を求め、更に、その
クロススペクトル行列のうち、クロススペクトル成分で
ある非対角要素の1つを用いて周波数スペクトルを算出
する。
【0007】
【作用】上述の問題点は、整相された1つの時系列信号
に対して周波数分析を行なうことから生じている。何故
ならば、その周波数分析法が分析周波数成分の強度を精
度良く算出するものならば、整相された1つの時系列信
号が持つ雑音周波数成分の強度も低減されずにそのまま
の値で算出されるからである。そこで、周波数分析を行
なう際に、分析周波数の強度の算出を整相されていない
ままの複数の受信信号を用いて行なうことを考える。そ
の手段として、複数の受信信号に対して線形予測モデル
を適用する多変量線形予測分析を用いる。ここで多変量
予測とは、M個の異なる種類の信号の第m番目の種類の
第n番目の時系列信号をxm (n) (m=1,2,…,
M)とし、これらの各信号の時系列上のみならずその他
の信号の時系列上間との間にも線形予測モデルを適用す
るものであり、各m番目の種類の信号をM種類の過去K
個の信号との線形結合で表現するものである。即ち、x
m (n) (m=1,2,…,M)に対して多変量ベクトル
X(n) =(x1 (n) ,x2 (n) ,…,xM (n) )t (t
は転置を表す)を考え、この多変量ベクトルX(n) に対
して次式で表わされる線形予測モデルを適用する。
【0008】
【数1】
【0009】但し、Kは予測次数と呼ばれる定数であ
り、A(k) は第k番目のM行M列の予測系係数列、U
(n) は各種の信号の駆動雑音と呼ばれる信号からなるM
行1列の信号ベクトルである。ここで、上記M種類の信
号として、M個の受波器から受信されるM個の信号をあ
てはめる。今、その信号が一定の方向にある音源から到
来する信号とする、各受信信号は受波器の相対位置に応
じた遅延(或いは位相)だけが異なった同一の信号とな
る。従って、これらの信号に対する予測係数を用いて各
信号間のクロススペクトル(各信号間の周波数成分の相
関性を表わすもの)を算出すると、どの信号間のクロス
スペクトルも、位相だけが異なる同一のパワーを示す。
【0010】一方、受波器で受信される信号が時系列的
にもまた相互の信号間でも独立な雑音の場合には、そも
そも互いに無関係な信号なので有意義な予測係数は存在
せず、この予測係数を用いて各信号間のクロススペクト
ルを算出しても、互いに与える影響の度合いはMを大き
くするほど小さくなる。これは、信号を他の信号との線
形結合和で表わしているため、ランダムな信号パワーを
それと独立な信号の和で表したとすると、それぞれのパ
ワーの寄与率はMを大きくするほど小さくなり、クロス
スペクトルの値はランダムな位相をもち、受信パワーよ
りも小さな値を示すことになる。従って、多変量予測分
析法を用いたクロススペクトル値は、音源信号について
は、そのパワー値は変化せず、雑音に対してはMを増や
すほど小さくすることができる。
【0011】そこで、本発明においては、整相処理を行
わずに雑音を低減するために、上述のように、複数の受
信信号に対して多変量予測分析法を適用して予測係数行
列を算出し、その予測係数行列を用いてクロススペクト
ルを算出するようにしている。
【0012】従って、本発明は上記のような原理に基い
てソーナー信号を処理するようにしたので、船舶船走音
の周波数特性の抽出において、予め整相処理を行わない
で雑音を低減することができ、より信号強度の小さい信
号を検出することができる。また、線形予測分析に基づ
いているため、フーリエ変換による周波数分析よりも短
時間での分析能力に優れ、船舶等の過渡音及び狭帯域分
析における音源信号の正確な抽出ができる。
【0013】
【実施例】図1は本発明の一実施例に係るパッシブソー
ナー装置の構成を示すブロック図である。図において、
受波器群50は、船舶等からの音響信号を電気信号に変
換するM個の受波器からなり、その出力側に周波数分析
部60が接続されている。周波数分析部60は、受波器
群50から入力されるM個の受信信号について多変量線
形予測分析法を用いた周波数スペクトル分析を行なって
その周波数スペクトルを表示部70に出力する。表示部
70は、各周波数の周波数スペクトルをその強弱に応じ
て表示し、必要ならばその時間経過を表示する。
【0014】周波数分析部60は、まず、相互相関行列
算出部61において、受波器群50から入力されるM個
の受信信号間の相互相関係数からる相互相関行列を算出
し、予測係数行列算出部62に出力する。予測係数行列
算出部62は、入力される相互相関行列に多変量線形予
測分析法を適用して予測係数行列を算出し、クロススペ
クトル算出部63に出力する。クロススペクトル算出部
63は、予測係数行列に基いて各分析周波数に対するク
ロススペクトル行列を算出し、周波数スペクトル算出部
64に出力する。周波数スペクトル検出部64は、各分
析周波数に対するクロススペクトル行列から周波数スペ
クトルを算出し、表示部70に出力する。
【0015】次に、本実施例の動作の詳細を説明する。
周波数分析部60は、受波器群50から入力されるM個
の受信信号のサンプル時系列を一定のサンプル数Nから
なる分析フレームに区切り、この分析フレーム毎に以下
の処理が行われる。また、受波器群50から入力される
第m番目の受信信号のサンプル時系列信号を分析すべき
分析フレーム内でのサンプル列時系列番号nを用いてs
(n,m)(n=1,2,…,N、m=1,2,…,
M)と表記する。
【0016】周波数分析部60内の相互相関行列算出部
61においては、サンプル時系列r(n,m)を用いて
K個のM行M列の行列である相互相関行列R(k) (k=
0,1,…,K−1)を算出する。ここで、Kは予測次
数(定数)であり、第k番目の相互相関行列R(k) の第
i行j列の成分ri,j (k) は次式(1)に基づいて算出
される。
【0017】
【数2】
【0018】予測係数行列算出部62においては、相互
相関行列算出部61から入力される相互相関行列R(k)
(k=0,1,…,K−1)を用いて次式(2)のK個
の方程式を解くことによりK個のM行M列の行列である
予測係数行列A(k) (k=0,1,…,K−1)を算出
する。
【0019】
【数3】
【0020】上式は、例えば多変量に拡張されたレビン
ソンアルゴリズムを用いて解けばよい。クロススペクト
ル行列算出部63においては、まず、予測係数行列算出
部62から入力される予測係数行列A(k) (k=0,
1,…,K−1)を用い、次式(3)に基づいて分析周
波数fに対するM行M列の複素行列である周波数応答の
逆行列H(f) を算出する。
【0021】
【数4】
【0022】但し、qは虚数単位、ai,j (k) はA(k)
の第i行j列の成分であり、Ci,jは次式を満たす係数
である。
【0023】
【数5】
【0024】次にこのH(f) を用いて、次式(4)に基
づいて分析周波数fに対するM行M列の複素行列である
クロススペクトル行列PC (f) を算出し、周波数スペク
トル算出部64に出力する。
【0025】
【数6】
【0026】但し、*は共役転置を表し、Wは次式で与
えられる。
【0027】
【数7】
【0028】周波数スペクトル算出部64においては、
クロススペクトル行列PC (f) の成分のうちクロススペ
クトル成分である非対角要素,即ちi≠jとなる1つの
成分PCi,j(f) を用いて次式(5)に基づいて周波数ス
ペクトルP(f) を算出し、表示器70に出力する。
【0029】
【数8】 P(f) =|PCi,j(f) | …(5) 表示部70においては、分析フレーム毎に周波数スペク
トルS(f) をその強弱に応じて表示する。
【0030】図3〜図6は上述の実施例による雑音低減
効果のシミュレーション結果を示した図である。この例
において、表示部70はその横軸を周波数とし、縦軸を
時間としており、周波数スペクトルの強度を濃淡で示
し、強いほど濃く、弱いほど淡く表示している。また、
各受波器には音源からの到来波と平均パワーが等しい独
立な雑音が入力されており、音源は周波数が高いほどパ
ワーの小さい17個のトーン信号から成っている。従っ
て、図で右にある音源周波数ほどS/Nが低くなる。図
3、図4、図5及び図6において、受波器数Mはそれぞ
れ、M=1,M=2,M=4,M=8である。また、周
波数スペクトルは、クロススペクトル行列の第1行第2
列の成分を用いている。これらの図から明らかなよう
に、整相処理を行わずとも受波器数Mを増やすことによ
り雑音が低減され、より低いS/Nの信号が検出可能と
なっている。
【0031】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、複数の受
信信号に対して多変量予測分析法を適用して予測係数行
列を算出し、その予測係数行列を用いてクロススペクト
ルを算出し、そのクロススペクトルに基いて各分析周波
数に対するクロススペクトル行列を求め、更に、そのク
ロススペクトル行列のうち、クロススペクトル成分であ
る非対角要素の1つを用いて周波数スペクトルを求める
ようにしたので、船舶航走音の周波数特性の抽出におい
て、予め行なう整相処理を必要とせず、線形予測法が持
つ短時間での周波数分析が可能と言う特徴を維持したま
まで、雑音低減能力を付加することができ、より信号強
度の小さい信号を短時間で検出することができる。更
に、線形予測分析に基づいているためフーリエ変換によ
る周波数分析よりも短時間での分析能力に優れ、船舶の
過渡音及び狭帯域分析における音源信号の正確な抽出が
可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るパッシブソーナー装置
の構成を示すブロック図である。
【図2】従来のパッシブソーナー装置の構成を示すブロ
ック図である。
【図3】図1の実施例において受波器数を「1」とした
場合の周波数スペクトル分析結果を表示した図である。
【図4】図1の実施例において、受波器数を「2」とし
た場合の周波数スペクトル分析結果を表示した図であ
る。
【図5】図1の実施例において、受波器数を「4」とし
た場合の周波数スペクトル分析結果を表示した図であ
る。
【図6】図1の実施例において、受波器数を「8」とし
た場合の周波数スペクトル分析結果を表示した図であ
る。
【符号の説明】
50 受波器群 60 周波数分析部 61 相互相関行列算出部 62 予測係数行列算出部 63 クロススペクトル算出部 64 周波数スペクトル算出部 70 表示部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 清水 聡 東京都港区虎ノ門1丁目7番12号 沖電 気工業株式会社内 (72)発明者 鈴木 孝夫 東京都港区虎ノ門1丁目7番12号 沖電 気工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−280074(JP,A) 特開 平8−339200(JP,A) 特開 平5−196717(JP,A) 特開 平5−126950(JP,A) 特許2619108(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01S 3/80 - 3/86 G01S 5/18 - 5/30 G01S 7/52 - 7/64 G01S 15/00 - 15/96 G10L 9/14

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 音響信号を受信する複数の受波器からな
    る受波器群と、その複数の受信信号に線形予測分析を適
    用して周波数スペクトルを算出し、該周波数スペクトル
    の強度を画像表示させる周波数分析手段とを備えたソー
    ナー信号検出処理装置において、 前記周波数分析手段は、前記複数の受信信号に多変量予
    測分析法を適用して予測係数行列を算出する手段と、該
    予測係数行列を用いてクロススペクトルを算出し、該ク
    ロススペクトルに基づいて各分析周波数に対するクロス
    スペクトル行列を求める手段と、該クロススペクトル行
    のうち、非対角要素の1つを用いて周波数スペクトル
    を算出する手段とを有することを特徴とするソーナー信
    号検出処理装置。
  2. 【請求項2】 音響信号を受信する複数の受波器からな
    る受波器群と、その複数の受信信号に線形予測分析を適
    用して周波数スペクトルを算出し、該周波数スペクトル
    の強度を画像表示させる周波数分析手段とを備えたソー
    ナー信号検出処理装置において、 前記周波数分析手段は、前記受波器群から入力される複
    数の受信信号間の相互相関係数からなる相互相関行列を
    算出する相互相関行列算出手段と、前記相互相関行列に
    多変量線形予測分析法を適用して予測係数行列を算出す
    る予測係数行列算出手段と、前記予測係数行列に基いて
    各分析周波数に対するクロススペクトル行列を算出する
    クロススペクトル算出手段と、各分析周波数に対するク
    ロススペクトル行列のうち、非対角要素の1つを用いて
    周波数スペクトルを算出し、表示手段に出力する周波数
    スペクトル算出手段とを有することを特徴とするソーナ
    ー信号検出処理装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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