JP2748677B2 - 密閉形電動圧縮機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この発明は密閉形電動圧縮機に係り，特に圧縮要素の
摺動部を通って高温となった潤滑油を冷却させる機構に
関するものである。

［従来の技術］ 第６図は，例えば特開昭56−106083号公報に示された
従来の密閉形電動圧縮機を示す断面図である。

図中，（１）は密閉容器，（２）は圧縮要素，（３）
は圧縮要素（２）に結合された駆動軸，（４）は密閉容
器（１）内に設置された固定子，（５）は駆動軸（３）
に固着された回転子で，駆動軸（３），固定子（４）及
び回転子（５）により電動要素（６）が構成されてい
る。駆動軸（３）は軸受（７）（８）により支持され，
軸受（７）は容器（１）内の中間部に固定された第１フ
レーム（９）に装着され，軸受（８）は密閉容器（１）
の底面部に固定された第２フレーム（10）に装着されて
いる。駆動軸（３）には給油用の偏心油穴（11）が軸方
向に貫通しこれに横穴（12）（13）が連通してそれぞれ
軸受（７）（８）の軸受摺動面に開口している。（14）
は第２フレーム（10）に設けられ駆動軸（３）の油穴
（11）の下端が開口している油室，（15）は容器（１）
の底面部に形成され油が貯留される油貯留部，（16）は
導油兼冷却管で，油貯留部（15）に設けられた油導入穴
（17）と油室（14）に設けられた油導出穴（18）を連通
している。

従来の密閉形電動圧縮機は上記のように構成され，電
動要素（６）により駆動軸（３）が回転すると，圧縮要
素（２）によりガスが圧縮されて容器（１）外の高圧配
管（図示しない）へ放出される。

一方，駆動軸（３）の回転により，油室（14）内の潤
滑油は油穴（11）内に入り，回転により遠心ポンプ作用
を受けて上昇し，横穴（13）（12）から軸受（８）
（７）に供給されると共に，他の給油部にも供給され
る。そして，各部に供給された潤滑油は，密閉容器
（１）内を下降して油貯留部（15）に貯留される。この
潤滑油は油導入穴（17）から導油兼冷却管（16）を通過
して油導出穴（18）から油室（14）に入る。このとき，
導油兼冷却管（16）を通過することにより導油兼冷却管
（16）内外の自然対流及び強制対流による放熱作用を受
けて冷却される。

［発明が解決しようとする課題］ 上記のように従来の密閉形電動圧縮機では，軸受の摺
動面等に供給された潤滑油を油貯留部に貯留させ，この
潤滑油を導油兼冷却管により冷却して，上記摺動面に供
給するようにしているため，高温になった潤滑油が容器
内を通り，電動要素等の主要発熱部の温度上昇を抑制す
るには不十分であるという問題点がある。また，回転に
よる遠心ポンプ作用により潤滑油を吸う上げるようにし
ているため，その吸い上げ量は大きく取れず，導油兼冷
却管の長さ，太さ及びその配置に制約を受けるという問
題点もある。

この発明は上記問題点を解消するためになされたもの
で，圧縮機内部の温度上昇を防止できると共に，導油兼
冷却管の配置の自由度を高くすることができるようにし
た密閉形電動圧縮機を提供することを目的とし，さら
に，導油兼冷却管を流れる潤滑油が，密閉容器内へ戻る
際に発生する騒音を防止できる密閉形電動圧縮機を得る
ことを目的とする。

［課題を解決するための手段］ 請求項（１）記載の発明は、密閉容器内に圧縮要素と
これを駆動する電動要素とが配置され、上記密閉容器内
に貯留する潤滑油を強制給油機構により吸い上げて上記
圧縮要素及び電動要素の摺動面に給油した潤滑油を流通
かつ冷却させる導油兼冷却管を上記密閉容器外に配置
し、上記導油兼冷却管からの潤滑油を上記密閉容器内に
戻すように連通させたものである。

請求項（２）記載の発明は、密閉容器内に圧縮要素と
これを駆動する電動要素とが配置され、上記密閉容器内
に貯留する潤滑油を強制給油機構により吸い上げて上記
圧縮要素及び電動要素の摺動面に給油した潤滑油を流通
かつ冷却させる導油兼冷却管を上記密閉容器外に配置
し、上記導油兼冷却管からの潤滑油を上記密閉容器内に
戻すように連通させるとともに、導油兼冷却管の密閉容
器への突き出し部の先端から密閉容器壁面にかけて略円
錐形部を設けたものである。

［作用］ 請求項（１）記載の発明においては、潤滑油は各部摺
動面に供給された直後に回収されて導油兼冷却管内外の
自然対流及び強制対流による放熱作用により冷却されて
容器に戻り，電動要素等の主要熱発生部を冷却する。ま
た，強制給油機構の排出力を利用するため，吸込ヘッド
よりも十分高い送油能力が得られる。

請求項（２）記載の発明においては、導油兼冷却管よ
り密閉容器内に戻る潤滑油は，密閉容器内壁をつたわっ
て密閉容器底部に戻る。

［実施例］ 以下，この発明による第１実施例を第１図で説明す
る。図において（21）は第２フレーム（10）の反電動要
素側にケースと共に配置され駆動軸（３）により駆動さ
れるトロコイドポンプからなる強制給油機構，（22）は
強制給油機構（21）と油貯留部（15）とを連通させる給
油孔，（23）は第１フレーム（９）の軸受部に凹設され
た排油切欠き，（24）は第１フレーム（９）に設けられ
排油切欠き（23）に連通する排油孔，（16）は排油孔
（24）と気密接合され密閉容器（１）内を通過して容器
（１）外へ引き出された導油兼冷却管で，他端を密閉容
器（１）内の電動要素側に連通している。（27）は必要
に応じて導油兼冷却管（16）の途中に挿入される熱交換
器である。

上記のように構成された密閉形電動圧縮機において
は，電動要素（６）により駆動軸が駆動されると強制給
油機構（21）が作動して，油貯留部（15）の潤滑油は給
油孔（22）から吸い上げられ，油穴（11）を通り，横穴
（12）（13）を経て各軸受摺動部に給油される。潤滑油
の一部は，各摺動部を経て油貯留部（15）にもどるが，
強制給油機構（21）から吐出される潤滑油の多くは，排
油切欠き（23）にたまり，排油孔（24）を通って，容器
（１）外へ排出される。

排出された潤滑油は，導油兼冷却管（16）を通る間に
導油兼冷却管（16）内外の自然対流及び強制対流による
放熱作用を受けて冷却される。冷却された潤滑油は，導
油兼冷却管（16）から密閉容器（１）内の電動要素側へ
戻される。したがって，この冷却された潤滑油により，
電動要素（６）等の主要熱発生部が冷却される。

熱交換器（27）は導油兼冷却管（16）による放熱作用
による冷却では不十分な場合に用いられるもので，これ
を用いれば冷却はいっそう促進される。

この実施例では，強制給油機構（21）の排出力を利用
して，潤滑油を吸引かつ送出ししているため十分高い送
油能力が得られるので，配管径を細くかつ長くすること
が容易にでき，冷却用配管の配置の自由度は高い。ま
た，摺動部を通った直後の高温の潤滑油を冷却している
ため，圧縮機の周囲温度との温度差が高く，空冷でも高
い冷却効果が得られる。

また，第２図，第３図はこの発明による第２実施例を
示す断面図であり，図において，（16a）は導油兼冷却
管（16）の密閉容器内への突き出し部で，導油兼冷却管
（16）を経た油は，この突き出し部（16a）より油貯留
部（15）へと戻される。この突き出し部（16a）の密閉
容器（１）内への突き出し長さＬは，導油兼冷却管（1
6）内を流れる油の流速Ｖによって決定され，突き出し
部（16a）の先端より流出した油は，流速Ｖよりも重力
及び表面張力の影響を強くうけ，突き出し部（16a）の
根元に配された略円錐形部（28）及び密閉容器内壁をつ
たわって，油貯留部（10）へ穏やかに流れ込む。

実験によると，導油兼冷却管（15）内の油の流速Ｖ＝
0.21（mm/sec）のとき，突き出し部（16a）の長さＬ＝
２（mm）以下で，油は密閉容器内壁をつたわって，油貯
留部（15）への穏やかに流れ込む様になるこの突き出し
部（16a）の根元の略円錐形部（28）は，円錐形部材を
突き出し部（16a）に取り付けることにより設けたり，
また，密閉容器（１）に導油兼冷却管（16）を取付ける
際のロー材によって形成してもよい。

さらに，第４図，第５図はこの発明による第３実施例
を示す断面図であり，図において，（16a）は導油兼冷
却管（16）の密閉容器（１）内への突き出し部であり，
その先端（16b）は油貯留部（15）に貯留される油の油
面より下に配されている。また，（16c）は突き出し部
（16a）の，油貯留部（15）に貯留される油面より上に
配されたガス抜き穴である。

以上の様に構成された密閉形電動圧縮機では，導油兼
冷却管（16）内に気泡が混入した場合，この気泡は突き
出し部（16a）に設けたガス抜き穴（16c）を介して密閉
容器（１）内に放出され，突き出し部の先端（16b）か
らは油のみが油貯留部（15）に貯留された油の中へ流れ
込む。

［発明の効果］ 請求項（１）記載の発明は、密閉容器内に圧縮要素と
これを駆動する電動要素とが配置され、上記密閉容器内
に貯留する潤滑油を強制給油機構により吸い上げて上記
圧縮要素及び電動要素の摺動面に給油した潤滑油を流通
かつ冷却させる導油兼冷却管を上記密閉容器外に配置
し、上記導油兼冷却管からの潤滑油を上記密閉容器内に
戻すように連通させたので、高温状態の潤滑油は外部の
配管中で効率よく、十分冷却されて圧縮機内部の温度上
昇を抑制することができるとともに，強制給油機構の利
用により高い送油能力が得られ，容器外配管の配置の自
由度を高くすることができるものが得られる効果があ
る。

請求項（２）記載の発明は、密閉容器内に圧縮要素と
これを駆動する電動要素とが配置され、上記密閉容器内
に貯留する潤滑油を強制給油機構により吸い上げて上記
圧縮要素及び電動要素の摺動面に給油した潤滑油を流通
かつ冷却させる導油兼冷却管を上記密閉容器外に配置
し、上記導油兼冷却管からの潤滑油を上記密閉容器内に
戻すように連通させるとともに、導油兼冷却管の密閉容
器への突き出し部の先端から密閉容器壁面にかけて略円
錐形部を設けたので、油貯留部に貯留される油の油面に
直接落下することはなく，油面の加振が少なく，その加
振による騒音を防止することができるものが得られる効
果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明の第１実施例による密閉形電動圧縮機
を示す断面図，第２図はこの発明の第２実施例による密
閉形電動圧縮機を示す断面図，第３図は第２図のＡ部拡
大断面図，第４図はこの発明の第３実施例による密閉形
電動圧縮機を示す断面図，第５図は第４図のＡ部拡大断
面図，第６図は従来の密閉形電動圧縮機を示す断面図で
ある。 （１）は密閉容器，（２）は圧縮要素，（６）は電動要
素、（15）は油貯留部，（16）は導油兼冷却管，（16
a）は突き出し部，（21）は強制給油機構，（28）は略
円錐形部。なお，図中，同一符号は同一，又は相当部分
を示す。

フロントページの続き (72)発明者 前山 英明 静岡県静岡市小鹿３丁目18番１号 三菱 電機株式会社静岡製作所内 (56)参考文献 特開 昭56−106083（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−46078（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−264189（ＪＰ，Ａ) 実開 昭54−129014（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭58−57593（ＪＰ，Ｕ)

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】密閉容器内に圧縮要素とこれを駆動する電
   動要素とが配置され、上記密閉容器内に貯留する潤滑油
   を強制給油機構により吸い上げて上記圧縮要素及び電動
   要素の摺動面に給油した潤滑油を流通かつ冷却させる導
   油兼冷却管を上記密閉容器外に配置し、上記導油兼冷却
   管からの潤滑油を上記密閉容器内に戻すように連通させ
   たことを特徴とする密閉型電動圧縮機。
2. 【請求項２】密閉容器内に圧縮要素とこれを駆動する電
   動要素とが配置され、上記密閉容器内に貯留する潤滑油
   を強制給油機構により吸い上げて上記圧縮要素及び電動
   要素の摺動面に給油した潤滑油を流通かつ冷却させる導
   油兼冷却管を上記密閉容器外に配置し、上記導油兼冷却
   管からの潤滑油を上記密閉容器内に戻すように連通させ
   るとともに、導油兼冷却管の密閉容器への突き出し部の
   先端から密閉容器壁面にかけて略円錐形部を設けたこと
   を特徴とする密閉型電動圧縮機。