JP2744729B2 - アルミニウム及びアルミニウム合金材料の抵抗溶接方法 - Google Patents

アルミニウム及びアルミニウム合金材料の抵抗溶接方法

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JP2744729B2 JP4056220A JP5622092A JP2744729B2 JP 2744729 B2 JP2744729 B2 JP 2744729B2 JP 4056220 A JP4056220 A JP 4056220A JP 5622092 A JP5622092 A JP 5622092A JP 2744729 B2 JP2744729 B2 JP 2744729B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は抵抗溶接において、圧延
鋼板と比べて電極寿命の劣るアルミニウム及びアルミニ
ウム合金を被溶接材料とする場合に、電極の寿命を圧延
鋼板の場合と同等に改善した抵抗溶接方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来の圧延鋼板を用いた自動車等の大量
生産における組立工程の接合方法として、抵抗スポット
溶接方法が多く用いられていたが、その理由としては、
非常に能率的な溶接方法で大量生産に適していること、
および一度溶接条件を設定すると全く素人の人でも、ま
たロボットでも容易に溶接ができ、安定した溶接ナゲッ
トや継手強度が得られるからである。従来の抵抗スポッ
ト溶接方法は、被溶接材料を重ねて、上電極、下電極で
加圧、通電してナゲットを形成して接合する。従来の圧
延鋼板のみに限らず、アルミニウムおよびその合金や複
合材料を抵抗スポット溶接する場合においても、電極材
料としてJIS Z 3234−1977「抵抗溶接用銅電
極材料」の第1種、または第2種を用い、電極形状は、
JISC 9304−1986「スポット溶接用電極の形状
及び寸法」で定める形状のものを用いるのが一般的であ
る。電極材料としてこれらの材料が使用される理由とし
ては、被溶接材料より熱伝導や導電率が高いので、接触
部で電極と被溶接材料が接合しにくいので連続して溶接
できるためである。
【0003】しかし、実際には、被溶接材料の種類によ
って、連続して所定の強度やナゲット径等の要求性能を
確保して溶接できる溶接点数(電極寿命)が異なってい
る。溶接する前に電極の先端を所定の形状に切削した
り、所定の表面粗度に磨いたりして整えるが、そのこと
をドレッシングと称する。1回のドレッシングで連続し
て所定の要求性能を有した溶接部が得られる打点数をそ
の電極の電極寿命と言うが、その判定方法として次のよ
うなものがある。 .ナゲット径、または引張せん断強さが規定の値以下
になるまでの連続打点数。 .電極先端に、電極と被溶接材料との合金層ができ
て、それが溶接部に転写されて外観が損なわれる現象を
ピックアップと称するが、これが発生し始める前までの
連続打点数。 .電極が被溶接材料に溶着してとれなくなる現象が起
こる前までの連続打点数等。 一般的には及びの方法が用いられることが多いの
で、本明細書の電極寿命の用語は、及びの判定方法
を用いることとする。この判定方法で従来の圧延鋼板を
用いた自動車の組み立てラインにおける抵抗スポット溶
接の電極寿命を示すと、10000打点以上であると言
われている。このように、圧延鋼板の抵抗スポット溶接
では非常に長い電極寿命であるが、アルミニウム及びア
ルミニウム合金の抵抗スポット溶接の電極寿命は200
〜1000打点と言われている。
【0004】上記のように、アルミニウム合金の抵抗ス
ポット溶接における電極寿命は圧延鋼板より非常に劣る
ため、その改善方法が従来から検討がなされている。例
えば、特開昭61−159288号公報では、図6のご
とく、アルミニウムまたはアルミニウム合金同士を電気
抵抗溶接するにあたり、電極1、2と被溶接材料11、
12の間に電極より高電気伝導性のインサート材(箔状
介在物)9、10を介装して溶接する方法が提案されて
いる。これは、かなり過剰な入熱で溶接しても、溶込み
が板の表面まで到らず、表面割れを発生することなくア
ルミニウム合金同士を溶接する方法であるが、電極寿命
をある程度改善する効果も有ると考えられる。
【0005】ところで、アルミニウムやアルミニウム合
金を抵抗溶接するにあたり、電極と被溶接材料との間に
銅及び銅合金の箔を用いた場合は、アルミニウムとの親
和性が良く、加圧、溶接する200℃付近において拡散
接合しやすい。このため導電性があり、かつアルミニウ
ムより溶融点が高いにもかかわらず抵抗溶接の介在物と
しては不向きであることがわかった。一方省エネルギー
の見地から自動車の軽量化が望まれ、軽く強度の高いア
ルミニウム及びアルミニウム合金が自動車用材料として
注目されてきた。しかし前述したように、アルミニウム
及びアルミニウム合金の抵抗溶接は、従来の圧延鋼板に
比較して著しく電極寿命が短く電極のドレッシングが頻
繁になり、自動車等の大量生産においてはこれがネック
になり問題であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の問題に
ついて検討の結果なされたもので、アルミニウム及びア
ルミニウム合金の抵抗溶接にあたり、電極寿命を著しく
向上させる抵抗溶接方法を開発したものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明によるアルミニウ
ム及びアルミニウム合金材料の抵抗溶接方法は、前述の
課題を解決するため以下のように構成したものである。
すなわち、請求項1の発明によるアルミニウム及びアル
ミニウム合金材料の抵抗溶接方法は、Ni,Ni合金,
Ti,Ti合金,Nb,Nb合金,Mo,Mo合金,
W,W合金,Cr,Cr合金,Co及びCo合金のいず
れかを、鉄板又は鋼板の両面にそれぞれ1〜100μm
被覆した厚さ0.02〜1mmの箔状介在物を、電極と
被溶接材料との間に介在させて接合することを特徴とす
るものである。請求項2の発明によるアルミニウム及び
アルミニウム合金材料の抵抗溶接方法は、Ni,Ni合
金,Ti,Ti合金,Nb,Nb合金,Mo,Mo合
金,W,W合金,Cr,Cr合金,Co及びCo合金の
中の一種を鉄板又は鋼板の片面に、前記金属の中の他の
一種を前記鉄板又は鋼板の他の片面に、それぞれ1〜1
00μm被覆した厚さ0.02〜1mmの箔状介在物
を、電極と被溶接材料との間に介在させて接合すること
を特徴としている。すなわち本発明は、アルミニウム及
びアルミニウム合金、例えばAl合金として、Al−S
i系、Al−Mg系、Al−Mg−Si系、Al−Cu
−Mg系、Al−Zn−Mg系、Al−Zn−Cu−M
g系などの合金材料を抵抗溶接するに際し、上下電極と
被溶接材料の接触する箇所に、上記の箔状介在物を挟ん
で加圧、通電して溶接する方法である。尚、この溶接に
用いる溶接機は、従来用いられている単相交流式抵抗溶
接機、単相整流式抵抗溶接機、三相低周波抵抗溶接機、
三相整流式抵抗溶接機、コンデンサー式抵抗溶接機、イ
ンバータ抵抗溶接機等のいずれでも良い。また箔状介在
物を自動的に連続供給することもできる。
【0008】
【作用】前記の手段により、溶接電流は、電極から通電
性の箔状介物を通過して被溶接材料に流れ、被溶接材料
間の抵抗により発熱、溶解し、ナゲットを形成する。故
に、溶接電流は被溶接材料同士が健全に溶接できる入熱
量が得られる値とし、介在物まで溶ける入熱量は必要と
しない。箔状介在物まで溶ける溶接条件は、過剰入熱で
あり、被溶接材料自体の表面まで完全に溶けて割れ等の
欠陥も発生し、介在物を用いる意味が無くなる。箔状介
在物は鋭意研究した結果、鉄または鋼板の両面、または
片面ずつに、Ni、Ti、Nb、Mo、W、Cr、Co
およびそれらの合金を1〜100μm被覆した厚さ0.
02〜1mmのものは、前記Cu等の金属材料より、電
極寿命が長く、しかも電極や被溶接物への溶着が無く、
テープ状にして連続供給が可能であると共に、溶接部の
外観、内部品質も良好であることが判った。被覆金属の
厚さが素板の厚さの1μm未満では、溶接電流をナゲッ
ト形成以上にすると被覆金属まで溶けてしまうため望ま
しくない。又、被覆金属の厚さが100μmを超える場
合は、単体金属の時と同じ程度の効果しか得られない。
故に鉄又は鋼板の両面、または片面ずつにNi、Ti、
Nb、Mo、W、Cr、Co及びそれらの合金を被覆す
る割合は、1〜100μmとする。介在物の厚さは、
0.02mm未満では、通常の抵抗溶接で溶融して電極
や被溶接材料に溶着してしまい、1mmを越えると溶接
電流が通常の値ではナゲットが所定の大きさにならず、
強度が低下して溶接不可になるばかりでなく、テープ状
にして自動供給する場合は、不具合が起こりやすい。故
に、介在物の厚さは0.02〜1mmとする。
【0009】それらの被覆金属の被覆方法としては、溶
融めっき、電気めっき、気相めっき、合わせ圧延等のい
ずれの方法でも良い。箔状介在物は、溶接前に適当な大
きさに切断して被溶接物の溶接箇所に置いておくか、貼
りつけておき、それを電極で挟んで溶接し、溶接後箔状
介在物を取り除くことによってナゲット径及び圧こん表
面が健全な溶接部が得られる。この工程を繰り返すこと
によって全てのナゲットおよび圧こん表面が健全な溶接
部が連続して得られると共に、電極の消耗が極めて少な
く、電極寿命が飛躍的に向上する。また、箔状介在物を
リボン状(テープ状)にしておき、1点又は数点溶接毎
に溶接部に供給することにより、連続打点も可能にな
り、能率的に溶接することができる。
【0010】
【実施例】以下、添付の図面を参照して本発明の実施例
について具体的に説明する。 実施例1 図1は、本発明の実施例1を示す模式図である。上電極
1および下電極2はJIS Z 3234の2種に相当
するクロム銅の16mmφを使用し、電極先端形状は、
R形でR=80mmとした。電極1、2には、冷却用の
9mmφの穴3,4があけられ、それぞれ導管5、6を
通って水7、8を3l/分の流量で流して電極を冷却し
た。被溶接材料11、12はAl−Mg系合金である5
182−O材、1mm厚さの材料であり、上電極1と被
溶接材料11の間、および下電極2と被溶接材料12と
の間に、Feの両面にNi又はNi合金を1〜100μ
m各種方法で被覆させたもの、及び片面にNi又はNi
合金を、他面にTi、Nb、Mo、W、Cr、Coのい
ずれかを被覆させたもの、17種類の各種箔状介在物
9、10を挟み、単相交流溶接機を用いて、溶接電流2
8000A、電極加圧力3920N、通電時間5サイク
ルの溶接条件で溶接した。なお、被溶接材料は入荷した
ままの表面状態とし、試験片の寸法は30×200mm
とし、これを2枚重ねて30mmピッチで5点溶接し
た。Ni等を被覆した上記金属箔を被溶接材料と同じ寸
法に切断して電極と被溶接物の間に挟んで溶接した。溶
接前に、電極の先端は#1000のエメリー紙でドレッ
シングした。そして連続12000点溶接し、溶接した
試験片は、図2のごとく、バネ秤18で箔状介在物9が
被溶接材料11から剥がれる荷重を測定した。剥がれ荷
重は、自動供給装置の剥がれ能力を考慮して150gを
許容最大値とした。これ以上では、機械的に簡単に剥が
れないと考えられたからである。
【0011】又、図3のピール試験治具21に被溶接材
料11の一端を挟み、まるめながらひきはがして、ノギ
スでナゲット13の長径および短径を測定し、次の式で
計算して求めた。 ナゲット径=(長径+短径)/2(mm) 電極寿命の限界ナゲット径は、JIS Z 3140
のA級の最小ナゲット径の4mmとした。比較例とし
て、箔状介在物の被覆厚さが、1μm未満、及び100
μmを超える場合や、箔状介在物の厚さが0.02mm
未満及び1mmを越える場合を示した。又、従来方法と
して、Cu単体金属箔を用いた場合と、箔状介在物を用
いないで同一条件で溶接した場合の電極寿命も調べた。
この結果を表1に示す。
【0012】
【表1】
【0013】本発明実施例のものは、いずれのものも1
2000点溶接できて、箔状介在物の剥がれ荷重は15
0g以下であり、全てのナゲット径は4mm以上であっ
た。即ち、電極寿命は12000点(以上)であった。
この時の電極先端状態を感圧紙を用いて調べたが、溶接
開始前と12000点溶接後で、電極先端の形状はほと
んど変わっていなかった。これに対し、比較例として用
いたNi又はNi合金の被覆厚さが1μm未満のもの
は、1302点で被溶接材料と溶着し、ナゲット径が4
mm以下になった。逆に、Ni又はNi合金の被覆厚さ
が100μmを越えるものは、電極や被溶接材料とは溶
着しなかったが、1083点でナゲット径が4mm以下
になった。又、箔状介在物の厚さが0.02mm未満の
ものは溶接で溶けて電極寿命は僅かに253点であり、
1mmを越えるものは溶接不可であった。従来方法の、
Cu単体の場合の電極寿命は759点であり、箔状介在
物を使用しないで溶接したものの電極寿命は451点で
ああり、ナゲット径が規格以下になった。その時の電極
先端形状は50点目ですでに上下電極とも中心部が凹形
になっており、打点数が多くなるに従って電極の径が大
きくなり、被溶接材料への当たりが悪くなっていた。上
記のごとく、本発明の実施例によれば、比較例及び従来
方法と比べてそれらの10倍以上の電極寿命が得られ
た。
【0014】実施例2 図4は、本発明の実施例2を示す模式図である。上電極
1および下電極2はJIS Z 3234の2種に相当
するクロム銅の16mmφを使用し、電極先端形状はD
R形で、先端の6mmφ部をR=40mmとした。電極
1、2には、冷却用の9mmφの穴3、4があけられ、
導管5、6を通じて水7、8を3l/分の流量で流して
各電極を冷却した。被溶接材料11、12はAl−Mg
系合金である5052−O材、1mm厚さの材料であ
り、上電極1と被溶接材料11の間、および下電極2と
被溶接材料12との間に鉄又は鋼板の両面にTi又はT
i合金を1〜100μm各種方法で被覆させたもの、及
び片面にTi合金を、他面にNi、Nb、Mo、W、C
r、Coのいずれかを被覆させたもの、17種類の各種
箔状介在物9、10を挟み、単相整流式抵抗溶接機を用
いて、溶接電流28000A、電極加圧力3920N、
通電時間5サイクルの溶接条件で溶接した。なお、被溶
接材料は入荷したままの表面状態とし、試験片の寸法は
30×200mmとし、これを2枚重ねて30mmピッ
チで5点溶接した。箔状介在物は16mm幅のテープ状
にし、送りリール22、23により電極と被溶接材料の
間に自動供給して溶接した。電極は各材料毎に新品を使
用した。そして連続12000点溶接し、溶接した試験
片の評価を実施例1と同様に行った。比較例としては、
箔状介在物の被覆厚さが1μm未満、及び100μmを
越える場合を示した。又、従来方法として、Cu単体金
属箔を用いた場合と、箔状介在物を用いないで同一条件
で溶接した場合について電極寿命を調べた。この結果を
表2に示す。
【0015】
【表2】
【0016】本発明実施例のものは、いずれのものも1
2000点溶接できて、箔状介在物の剥がれ荷重は15
0g以下であり、全てのナゲット径は4mm以上であっ
た。即ち、電極寿命は12000点(以上)であった。
この時の電極先端状態を感圧紙を用いて調べたが、溶接
開始前と12000点溶接後で、電極先端の形状はほと
んど変わっていなかった。これに対し、比較例として用
いたTi又はTi合金の被覆厚さが1μm未満のもの
は、1213点で被溶接材料と溶着してナゲット径が4
mm以下になった。Ti又はTi合金の被覆厚さが10
0μmを越えるものは、被溶接材料とは溶着しなかった
が、自動供給において、送りがスムースでなく、また、
1005点でナゲット径が4mm以下になった。箔状介
在物の厚さが0.02mm未満のものは溶接で溶けて電
極寿命は241点であり、1mmを超えるものは溶接不
可であった。又、従来方法のCu単体のものの電極寿命
は746点であり、箔状介在物を使用しないで溶接した
ものは309点で、ナゲット径が規格以下になった。
又、その時の電極先端形状は50点目ですでに上下電極
とも中心部が凹形になっており、打点数が多くなるに従
って電極径が大きくなり、被溶接材料への当たりが悪く
なっていた。
【0017】実施例3 抵抗溶接機は図1に示すものを用い、上電極1および下
電極2はJIS Z3234の2種に相当するクロム銅
の16mmφを使用し、電極先端形状は、R形で、R=
80mmとした。電極1、2には、冷却用の9mmφの
穴3、4があけられ、導管5、6を通じて水7、8を3
l/分の流量で流して電極を冷却した。被溶接材料1
1、12はAl−Mg−Si系合金である6009−T
4材、1mm厚さの材料であり、上電極1と被溶接材料
11の間、および下電極2と被溶接材料12との間に、
鉄又は鋼板の両面にNb又はNb合金を1〜100μm
各種方法で被覆させたもの、及び片面にNb又はNb合
金を、他面にNi、Ti、Mo、W、Cr、Coのいず
れかを被覆させたもの、17種類の各種箔状介在物9、
10を挟み、単相交流溶接機を用いて、溶接電流280
00A、電極加圧力3920N、通電時間8サイクルの
溶接条件で溶接した。なお、被溶接材料は入荷したまま
の表面状態とし、試験片の寸法は30×200mmと
し、これを2枚重ねて30mmピッチで5点溶接した。
箔状介在物は被溶接材料と同じ寸法に切断して電極と被
溶接物の間に挟んで溶接した。溶接前に、電極の先端
は、#1000のエメリー紙でドレッシングした。そし
て連続12000点溶接し、溶接した試験片の評価を実
施例1と同様に行った。比較例としては、箔状介在物の
被覆厚さが1μm未満、及び100μmを越える場合を
示した。又、従来方法として、Cu単体金属箔を用いた
場合と、箔状介在物を用いないで同一条件で溶接した場
合について電極寿命を調べた。この結果を表3に示す。
【0018】
【表3】
【0019】本発明実施例のものは、いずれのものも1
2000点溶接できて、箔状介在物の剥がれ荷重は15
0g以下であり、全てのナゲット径は4mm以上であっ
た。即ち、電極寿命は12000点(以上)であった。
この時の電極先端状態を感圧紙を用いて調べたが、溶接
開始前と12000点溶接後で、電極先端の形状はほと
んど変わっていなかった。これに対し、比較例として用
いたNb又はNb合金の被覆厚さが1μm未満のもの
は、1556点で被溶接材料と溶着し、ナゲット径が4
mm以下になった。逆に、Nb又はNb合金被覆厚さが
100μmを越えるものは、被溶接材料とは溶着しなか
ったが、1463点でナゲット径が4mm以下になっ
た。介在物の厚さが0.02mm未満のものは溶接で溶
けて電極寿命は僅かに442点であり、1mmを越える
ものは溶接不可であった。従来方法のCu単体は116
7点であり、箔状介在物を使用しないで溶接したものの
電極寿命は338点であった。(ナゲット径が規格以下
になった。)また、その時の電極先端形状は50点目で
すでに上下電極とも中心部が凹形になっており、打点数
が多くなるに従って電極径が大きくなり、被溶接材料へ
の当たりが悪くなっていた。
【0020】実施例4 抵抗溶接機は図1に示すものを用い、上電極1および下
電極2はJIS Z3234の2種に相当するクロム−
ジルコニウム−銅合金の16mmφを使用し、電極先端
形状は、R形で、R=80mmとした。電極1、2に
は、冷却用の9mmφの穴3、4があけられ、導管5、
6を通じて水7、8を3l/分の流量で流して電極を冷
却した。被溶接材料11、12はAl−Mg系合金であ
る5182−O材、1mm厚さの材料であり、上電極1
と被溶接材料11の間、および下電極2と被溶接材料1
2との間に、鉄又は鋼板の表面にCr又はCr合金を1
〜100μm各種方法で被覆させたもの、及び片面にC
r又はCr合金を、他面にNi、Ti、Nb、Mo、
W、Coのいずれかを被覆させたもの17種類の各種箔
状介在物9、10を挟み、単相交流溶接機を用いて、溶
接電流28000A、電極加圧力3920N、通電時間
7サイクルの溶接条件で溶接した。なお、被溶接材料は
入荷したままの表面状態とし、試験片の寸法は30×2
00mmとし、これを2枚重ねて30mmピッチで5点
溶接した。Crを被覆した上記金属箔を被溶接材料と同
じ寸法に切断して電極と被溶接物の間に挟んで溶接し
た。溶接前に、電極の先端は、#1000のエメリー紙
でドレッシングした。そして連続12000点溶接し、
溶接した試験片の評価は実施例1と同様に行った。比較
例として、箔状介在物の被覆厚さが、1μm未満、及び
100μmを越える場合を示した。又、従来方法とし
て、Cu単体の電極寿命、及び箔状介在物を用いないで
同一条件で溶接した場合の電極寿命も調べた。この結果
を表4に示す。
【0021】
【表4】
【0022】本発明実施例により、鉄又は鋼板にCr又
はCr合金を1〜100μm被覆した箔状介在物を用い
た場合は、いずれのものも12000点溶接できて、箔
状介在物の剥がれ荷重は150g以下であり、全てのナ
ゲット径は4mm以上であった。即ち、電極寿命は12
000点(以上)であった。この時の電極先端状態を感
圧紙を用いて調べたが、溶接開始前と12000点溶接
後で電極先端の形状はほとんど変わっていなかった。こ
れに対し、比較例として用いたCr又はCr合金の被覆
厚さが1μm未満のものは、1195点で被溶接材料と
溶着し、ナゲット径が4mm以下になった。逆に、Cr
又はCr合金の被覆厚さが素板の100μmを越えるも
のは、被溶接材料とは溶着しなかったが、1028点で
ナゲット径が4mm以下になった。介在物の厚さが0.
02mm未満のものは溶接で溶けて電極寿命は198点
であり、1mmを越えるものは溶接不可であった。又、
従来方法の、Cu単体の場合の電極寿命は683点であ
り、箔状介在物を使用しないで溶接したものの電極寿命
は287点であった。(ナゲット径が規格以下になっ
た。)又、その時の電極先端形状は50点目ですでに上
下電極とも中心部が凹形になっており、打点数が多くな
るに従って電極径が大きくなり、被溶接材料への当たり
が悪くなっていた。
【0023】実施例5 図5は、本発明の実施例5を示す模式図である。上電極
1および下電極2はJIS Z 3234の2種に相当
するクロム銅合金の16mmφを使用し、電極先端形状
は、DR形で、先端の6mmφ部をR=40mmとし
た。電極1、2には、冷却用の9mmφの穴3、4があ
けられ、導管5、6を通じて水7、8を3l/分の流量
で流して電極を冷却した。被溶接材料11、12はAl
−Mg系合金である5182−O材、1mm厚さの材料
であり、上電極1と被溶接材料11の間、および下電極
2と被溶接材料12との間に、鉄又は鋼板の表面にCo
又はCo合金を1〜100μm各種方法で被覆させたも
の、及び片面にCo又はCo合金を、他面にNi、T
i、Nb、Mo、W、Crのいずれかを被覆させたもの
17種類の各種箔状介在物9、10を挟み、単相交流溶
接機を用いて、溶接電流28000A、電極加圧力39
20N、通電時間5サイクルの溶接条件で溶接した。な
お、被溶接材料は入荷したままの表面状態とし、試験片
の寸法は30×200mmとし、これを2枚重ねて30
mmピッチで5点溶接した。Coを被覆した上記金属箔
を被溶接材料と同じ寸法に切断して電極と被溶接材料の
間に挟んで溶接した。溶接前に、電極の先端は#100
0のエメリー紙でドレッシングした。そして連続120
00点溶接し、溶接した試験片の評価は実施例1と同様
に行った。比較例として、箔状介在物の被覆厚さが、1
μm未満、及び100μmを越える場合を示した。又、
従来方法として、Cu単体の電極寿命、及び箔状介在物
を用いないで同一条件で溶接した場合の電極寿命も調べ
た。この結果を表5に示す。
【0024】
【表5】
【0025】本発明実施例のように、鉄又は鋼板にCo
又はCo合金を1〜100μm被覆した箔状介在物を用
いた場合は、いずれのものも12000点溶接できて、
箔状介在物の剥がれ荷重は150g以下であり、全ての
ナゲット径は4mm以上であった。即ち、電極寿命は1
2000点(以上)であった。この時の電極先端状態を
感圧紙を用いて調べたが、溶接開始前と12000点溶
接後で、電極先端の形状はほとんど変わっていなかっ
た。これに対し、比較例として用いたCo又はCo合金
の被覆厚さが1μm未満のものは、1211点で被溶接
材料と溶着し、ナゲット径が4mm以下になった。逆
に、Cr又はCr合金の被覆厚さが素板の100μmを
越えるものは、被溶接材料とは溶着しなかったが、10
52点でナゲット径が4mm以下になった。箔状介在物
の厚さが0.02mm未満のものは溶接で溶けて電極寿
命は322点であり、1mmを越えるものは溶接不可で
あった。又、従来方法の、Cu単体の場合は832点で
あり、箔状介在物を使用しないで溶接したものの電極寿
命は598点であった。(ナゲット径が規格以下になっ
た。)又、その時の電極先端形状は50点目ですでに上
下電極とも中心部が凹形になっており、打点数が多くな
るに従って電極径が大きくなり、被溶接材料への当たり
が悪くなっていた。
【0026】
【発明の効果】本発明は以上のように、アルミニウム及
びアルミニウム合金材料の抵抗溶接の際に、十分なナゲ
ット径と良好な圧こん表面が電極、被溶接材料への溶着
なしに連続して10000点以上得られ、圧延鋼板の溶
接と同等の電極寿命が得られるもので、特に自動車のア
ルミ化の最大のネックとされていた抵抗溶接の改善に大
きく寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る抵抗溶接方法を示す模
式図。
【図2】本発明の実施例における箔状介在物の剥がれ荷
重測定状況を示す正面図。
【図3】本発明の実施例におけるピール試験状況を示す
斜視図。
【図4】本発明の一実施例に係る抵抗溶接方法の他の例
を示す模式図。
【図5】本発明の一実施例に係る抵抗溶接方法の他の例
を示す模式図。
【図6】従来の抵抗溶接方法を示す模式図。
【符号の説明】
1 上電極 2 下電極 3 上電極の冷却穴 4 下電極の冷却穴 5 上電極の導管 6 下電極の導管 7、8 冷却水 9、10 箔状介在物 11、12 被溶接材料 13 ナゲット 18 バネ秤 19 クリップ 20 溶接箇所 21 ピール試験具 22、23 箔状介在物送りリール 24、25 箔状介在物巻き取りリール 26、27 箔状介在物巻き取りモーター 28、29、30、31 支持ロール

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム及びアルミニウム合金材料
    の抵抗溶接にあたり、Ni,Ni合金,Ti,Ti合
    金,Nb,Nb合金,Mo,Mo合金,W,W合金,C
    r,Cr合金,Co及びCo合金のいずれかを、鉄板又
    は鋼板の両面にそれぞれ1〜100μm被覆した厚さ
    0.02〜1mmの箔状介在物を、電極と被溶接材料と
    の間に介在させて接合することを特徴とする、アルミニ
    ウム及びアルミニウム合金材料の抵抗溶接方法。
  2. 【請求項2】 アルミニウム及びアルミニウム合金材料
    の抵抗溶接にあたり、Ni,Ni合金,Ti,Ti合
    金,Nb,Nb合金,Mo,Mo合金,W,W合金,C
    r,Cr合金,Co及びCo合金の中の一種を鉄板又は
    鋼板の片面に、前記金属の中の他の一種を前記鉄板又は
    鋼板の他の片面に、それぞれ1〜100μm被覆した厚
    さ0.02〜1mmの箔状介在物を、電極と被溶接材料
    との間に介在させて接合することを特徴とする、アルミ
    ニウム及びアルミニウム合金材料の抵抗溶接方法。
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