JP2742814B2 - 根管充填材 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は歯科治療に使用する根管充填材に関し、特に
ガッタパーチャポイントと併用して使用される根管充填
治療に有効な根管充填材に関する。

〔従来技術及びその解決すべき課題〕 歯科治療において、歯髄炎、感染根管等の病的原因の
治療に際し、抜髄等により生じた空隙となった根管は、
根管充填材を充填する等の手段により治療されている。

従来の根管充填治療としては、根管充填材のみを根尖
部に緊密に充填する方法、ガッタパーチャポイントと根
管充填材とを併用して根尖部に充填封鎖する方法が代表
的なものである。

前者の方法に使用される根管充填材としては、水酸化
カルシウム系糊材が代表的なものとして知られており、
また後者の方法に使用される根管充填材としては酸化亜
鉛ユージノールセメントが代表的なものとして知られて
いる。

しかしながら、水酸化カルシウム系糊材を使用した場
合は充填した近傍においてpHが上がるため刺激性を伴う
問題点があった。一方、酸化亜鉛ユージノールセメント
を使用した場合は生体親和性がないという問題点があっ
た。

また、最近では根管充填材として生体親和性のあるα
−リン酸三カルシウム粉末を使用する例もあるが、該根
管充填材は硬化液としてポリアクリル酸水溶液を使用し
ているため、これもpHを下げ、また操作性も不良である
等の問題点があった。

本発明者等は、このような現状に鑑み、前記問題点を
解消すべく根管充填材を鋭意検討した結果本発明に到っ
たものである。

〔課題を解決するための手段〕

すなわち、本発明者は、 ｉ）α−リン酸三カルシウム粉末94〜99.95重量％と第
一リン酸カルシウム粉末0.05〜６重量％とからなるリン
酸カルシウム系粉末100重量部及びヨードホルム粉末５
〜30重量部からなる粉剤〔Ｐ〕、及び ii）ポリアルキレングリコールの５〜15重量％水溶液か
らなる硬化液〔Ｌ〕、 からなり、かつ〔Ｐ〕と〔Ｌ〕の重量比〔Ｐ〕／〔Ｌ〕
が1.5〜2.5である根管充填材に関する。

一般に根管充填材に要求される性状としては以下のも
のがある。

（ｉ）根管充填材の練和物は適当な動粘性があり、ガッ
タパーチャポイントへのなじみが良く、付着しやすい。

（ii）根尖孔外に溢出した時、歯周組織を刺激せず、吸
収が速やかである。

（iii）適度な硬化時間をもち、作業時間がある。

（iv）封鎖性に優れている。

（ｖ）Ｘ線造影性を有する。

（vi）操作性が良い。

本発明の根管充填材は生体親和性があり、かつ前記要
求される性状、特に封鎖性に優れた画期的なものであ
る。

以下、本発明を詳細に説明する。

本発明の根管充填材を構成する粉剤〔Ｐ〕は、α−リ
ン酸三カルシウム粉末、第一リン酸カルシウム粉末及び
ヨードホルム粉末とからなっている。

前記α−リン酸三カルシウムは公知の方法で製造する
ことが出来、例えば次の方法により製造することができ
る。

即ち、γ−ピロリン酸カルシウムと炭酸カルシウムと
を等モルで均一に混合し、十分に乾燥させた後1000〜14
00℃、好ましくは1250℃前後で約１時間焼成し、得られ
る生成物を微粉砕して粒径100μｍ以下の微粉末とする
ことによって得ることができる。他の方法としては、リ
ン酸水素カルシウム二水和物と炭酸カルシウムとを２対
１のモル比で均一に混合した後、前記方法とほぼ同一条
件で焼成、粉砕して得ることもできる。また、第一リン
酸カルシウムは公知の方法で製造することができ、市販
されている。

α−リン酸三カルシウムと第一リン酸カルシウムの粉
末の粒径は好ましくは20μｍ以下である。本発明で使用
するリン酸カルシウム系粉末は、首記二種類の粉末の混
合物からなり、第一リン酸カルシウム一水和物の混合割
合はリン酸カルシウム系粉末中0.05〜６重量％である。
0.05重量％未満の場合には、封鎖性が不十分となり、ま
た圧縮強度が小さくなり、更に、凝固時間が３時間以上
となり長過ぎる。逆に６重量％を越える場合には、凝固
時間が短くなり、操作性が悪くなる。

なお、前記二種類の粉末以外に、その他のリン酸カル
シウム誘導体粉末、例えば第二リン酸カルシウム等を添
加することが可能である。

また、前記ヨードホルム粉末は、前記リン酸カルシウ
ム系粉末100重量部に対し、５〜30重量部、特に好まし
くは15〜25重量部である。

ヨードホルム粉末の配合量が前記範囲より少な過ぎる
と根管充填材のＸ線造影性が不足してくるとともにガッ
タパーチャポイントや根管壁との付着性が悪くなるので
好ましくない。一方、前記範囲より過剰になると、相対
的にリン酸カルシウム系粉末が少なくなるため、根管充
填材の硬化性が悪くなるので好ましくない。

本発明に使用する粉材〔Ｐ〕は以上説明した通り前記
リン酸カルシウム系粉末とヨードホルム粉末とからなっ
ているが、さらに必要に応じ硫酸バリウム粉末、塩基性
炭酸ビスマス粉末、シリカ粉末、アルミナ粉末、アパタ
イト粉末等を配合してもよい。

本発明の根管充填材を構成する硬化液〔Ｌ〕はポリア
ルキルグリコールの水溶液である。

ポリアルキレングリコールはポリエチレングリコー
ル、ポリプロピレングリコールあるいはこれらの共重合
体が代表的なものとして挙げられ、好ましくは非イオン
性で、分子構造的には、線状でエステル結合のないもの
であり、末端水酸基の一部をエーテル結合したものでよ
い。また、ポリアルキレングリコールは分子量が約2000
以上、動粘度が10重量％水溶液で10〜1000cSt（25℃）
のものが、根管充填材の練和物の動粘性、操作性等がよ
いので好ましい。

また、ポリアルキレングリコールの水溶液濃度は５〜
15重量％であり、水溶液濃度が前記範囲より小さいと、
練和に際し粘稠性がなくなり、作業性が悪くなる。一
方、前記範囲より大きいと練和硬化物の溶解性が大きく
なり、強度が低下する。

本発明に使用する硬化液〔Ｌ〕は、以上説明した通り
ポリアルキレングリコールの水溶液からなっているが、
必要に応じ塩化ナトリウム、塩化アンモニウムあるいは
カルシウムやマグネシウムの水溶性塩、更には増粘剤、
界面活性剤、防腐剤、抗菌剤等も少量添加することが可
能である。

本発明の根管充填材は以上説明した粉剤〔Ｐ〕と硬化
液〔Ｌ〕ととからなり、それらを、〔Ｐ〕と〔Ｌ〕の重
量比〔Ｐ〕／〔Ｌ〕が1.5〜2.5となる割合で練和し、使
用される。

〔Ｐ〕／〔Ｌ〕比が1.5未満であると練和物の粘度で
小さくなり、粘稠性のある練和物が得られず、根管部へ
の充填作業性が悪くなる。逆に2.5を越えると練和しに
くくなり、更に練和物は粘稠性がなく、ざらついた状態
になる。

本発明の粉剤〔Ｐ〕と硬化液〔Ｌ〕とは使用直前に練
和し、使用に供される。

本発明の根管充填材の練和操作性は特に限定されず、
従来から歯科用セメントの分野で使用されている方法の
いずれでも良く、例えばJIS−Ｔ−6602に規定されるも
のを使用できる。

〔発明の効果〕

本発明の根管充填材は、化学的に歯の成分に近いα−
リン酸三カルシウムを使用しているため、生体適合性が
あり、またpH7前後の中性付近にあるため刺激性もな
く、更に第一リン酸カルシウムを併用しているため根管
充填材として要求される性状、封鎖性やガッタパーチャ
ポイントへの付着性、操作性等が優れているので、根管
充填材として好適である。

以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。

実施例１〜３及び比較例１〜４ 公知の方法によりγ−ピロリン酸カルシウムと炭酸カ
ルシウムを等モル混合し、焼成してα−リン酸三カルシ
ウムを合成し、粉砕して400メッシュの篩を通過させ
て、所定の粒度のα−リン酸三カルシウム粉末を得た。

このようにして得られたα−リン酸三カルシウム粉末
（α−TCPという）を使用して第１表に示す他の粉末成
分と混合し、JIS−Ｔ−6602の方法に準拠して第１表に
示す硬化液と練和した （表中の数値は重量部を示す）。

かくして調製した練和性の操作性、ガッタパーチャポ
イントへの付着性、Ｘ線造影性、封鎖性を調べ、その結
果を第１表下欄に示した。

また、別途前記粉剤と硬化液とを１分間均一に練和
し、該練和物を容器に入れ、その表面に平らにして濾紙
をのせ、練和開始150秒後に水を滴下し、濾紙を湿ら
せ、密封24時間放置後、フラット型pH電極（東亜電波工
業（株）製フラット型複合電極GST−5313F）を濾紙に接
触させ練和物の表面pHを測定した。

第１表に試験結果より明らかの通り、本発明の根管充
填材は、pHが中性付近であり、生体刺激性がきわめて小
さく、更に操作性、ガッタパーチャポイントへの付着
性、Ｘ線造影性、封鎖性もよく、根管充填材として好適
であった。

一方、粉剤中に、第一リン酸カルシウムを配合しない
比較例５では封鎖性が不十分であった。また、第一リン
酸カルシウムの添加量が、多い比較例１では、操作性が
不良であり、不適であった。硬化液として、ポリアクリ
ル酸水溶液、ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を使用し
た比較例３、４は、いずれも封鎖性及び操作性が不良で
あり、不適であった。またヨードホルムの添加量の少な
い比較例２はＸ線造影性が不良であった。

注１）分子量約3000の非イオン性ポリエチレングリコー
ル 注２）アクリル酸−イタコン酸共重合体（イタコン酸含
有量35重量％） 注３）重合度2700〜7500（和光純薬社製） 注４）練和物の操作性（練和時にJIS Ｔ 6602標準稠
度の動粘性を有しているかどうか及び充填作業がよいか
どうか等を総合時に判断した。） 注５）粉剤と硬化液とを１分間均一に練和し、練和開始
５分後のガッタパーチャポイントに対する付着性を調べ
た。

注６）2mm厚の硬化物に80kV、200mAのＸ線を0.02秒間照
射し、Ｘ線フィルムを感光させ調べた。

注７）内径1mm、長さ15mmのガラス管に、標準粉液比に
て室温で練和した材料を充填し、直ちに37℃の恒温槽内
の0.6％ローダミン水溶液中に浸漬した。１日経過後、
色素溶液よりガラス管を取り出して、先端よりガラス管
内に浸透した色素の最長距離を計測した。距離が1.0mm
以下のものを○、1.0mmから2.0mmまでの間のものを△、
2.0mm以上のものを×で示した。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】（ｉ）α−リン酸三カルシウム粉末94〜9
   9.95重量％と第一リン酸カルシウム粉末0.05〜６重量％
   とからなるリン酸カルシウム系粉末100重量部及びヨー
   ドホルム粉末５〜30重量部からなる粉剤〔Ｐ〕、及び （ii）ポリアルキレングリコール５〜15重量％水溶液か
   らなる硬化液〔Ｌ〕、 からなり、かつ前記〔Ｐ〕と〔Ｌ〕の重量比〔Ｐ〕／
   〔Ｌ〕が1.5〜2.5である根管充填材。