JP2742214B2 - 中性子測定装置 - Google Patents

中性子測定装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、中性子測定装置、特に
エネルギー感度特性の補正に関する。
【0002】
【従来の技術】原子力発電所や加速器施設等の放射線取
扱施設においては、例えば10-8〜100MeVの広い
エネルギー範囲にわたって中性子を測定する必要があ
る。
【0003】中性子は、電荷を有していないため一般に
他の物質との核反応を利用して検出される。すなわち、
核反応により生じた荷電粒子を半導体検出器等の放射線
検出で検出することにより、間接的に中性子が検出され
る。
【0004】中性子検出器は、エネルギー感度特性すな
わち各中性子エネルギー毎の感度が大きく異なる。図4
には、一般的な中性子用半導体検出器のエネルギー感度
特性が実線100で示されている。図示されるように、
10-2MeV付近まではほぼフラットな特性であるが、
そこから2MeVまで感度は減少し、それ以上ではほぼ
フラットな特性が得られている。
【0005】このようなエネルギー感度の不均一性を解
消するため、従来においては、中性子検出器に減速材や
熱中性子遮蔽材を設け、それら面積や厚さを適宜調整し
ていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の検
出器では、装置が大型になり、また構造が複雑になると
いう問題があった。特に、小型の個人線量計を実現する
ことが困難であった。
【0007】本発明は上記従来の課題に鑑みなされたも
のであり、その目的は、小型かつ軽量でエネルギー感度
特性が良好な中性子測定装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1記載の発明は、中性子を検出し、中性子エ
ネルギーに応じた波高値を有する検出パルスを出力する
中性子検出回路と、前記中性子検出回路からの検出パル
スを入力し、ノイズ除去のために固定設定された第1弁
別レベル以上の検出パルスを通過させる第1弁別回路
と、前記中性子検出器からの検出パルスを入力し、前記
中性子検出回路のエネルギー感度特性を補正するために
可変設定される第2弁別レベル以上の検出パルスを通過
させる第2弁別回路と、前記エネルギー感度特性に応じ
て前記第2弁別レベルをスライドさせる弁別レベル可変
回路と、前記第1弁別回路から出力された検出パルスと
前記第2弁別回路から出力された検出パルスとを合せて
計数する計数回路と、を含み、測定時間の重み付けを与
えることによりエネルギー感度特性を補正することを特
徴とする。
【0009】請求項2記載の発明は、前記中性子検出回
路は、中性子と核反応して2次放射線を放出する中性子
反応物質と、前記中性子反応物質を挟んで対向配置さ
れ、前記2次放射線を検出する一対の放射線検出器と、
を含み、前記一対の放射線検出器の出力を合成した信号
が各弁別回路に入力されることを特徴とする。
【0010】
【作用】上記請求項1記載の構成によれば、中性子検出
回路から出力される検出パルスが第1弁別回路及び第2
弁別回路に入力される。第1弁別回路は、従来同様にノ
イズ除去のために第1弁別レベル以上の検出パルスを通
過させる。一方、第2弁別回路は、弁別レベル可変回路
によって設定される第2弁別レベル以上の検出パルスを
通過させる。ここで、第2弁別レベルは、エネルギー感
度特性に応じた速度でスライドされるものであり、感度
が低いエネルギー領域において測定時間を長くすること
によりエネルギー感度の補正を行うことが可能となる。
よって、計数回路において各弁別回路から出力された検
出パルスを合せて計数することにより、エネルギー感度
が補正された状態で計数を行うことが可能となる。
【0011】すなわち、本発明は、感度の不足分を測定
時間を長くすることにより補うものである。よって、特
別な減速材や遮蔽材などを設ける必要がないので、装置
を小型かつ軽量に構成できる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例を図面に基づい
て説明する。
【0013】図1には、本発明に係る中性子測定装置の
好適な実施例が示されており、この図1に示される中性
子測定装置は個人線量計である。
【0014】中性子検出回路10は、中性子を検出して
その中性子エネルギーに応じた波高値を有する検出パル
スを出力する回路であり、中性子と核反応を生じる物質
としてのLiフォイル12と、そのLiフォイル12を
挟んで対向配置された一対の半導体センサ14,16
と、で構成される。
【0015】中性子がLiフォイル12に吸収される
と、次の核反応が生じる。
【0016】
【数1】 ただし、Enは、入射した中性子のエネルギーであり、
4.78MeVは生じた荷電粒子の運動エネルギーの総
和である。すなわち、中性子がリチウムに吸収される
と、α線とトリチウムが放出される。そして、それらの
荷電粒子が対向配置された半導体センサ14,16にて
検出されることになる。
【0017】本実施例においては、中性子検出回路10
がLiフォイル12を一対の半導体センサ14,16で
挟んだ構造を有するため、発生した荷電粒子はほぼもれ
なくいずれかの半導体センサで検出されることになる。
各半導体センサ14,16の出力はワイヤ接続によって
合成され、増幅器20に出力される。
【0018】図2(A)には、中性子検出回路10から
出力されたパルス110のスペクトルが示されている。
すなわち、横軸はトリチウムとα線の運動エネルギーを
示す検出エネルギーEdであり、縦軸は各エネルギーに
おけるカウント値である。(A)に示す103は、熱中
性子の検出ピークを示している。周知のように、熱中性
子のエネルギーは極めて小さいため、その検出ピーク1
03はトリチウムとα線の運動エネルギーの総和である
4.78Mevに一致している。なお、この検出ピーク
103の波形がなまっているのはLiフォイル12内で
荷電粒子の運動エネルギーが若干失われるためである。
【0019】なお、中性子検出回路10において、いず
れの半導体センサ14,16でも検出されない漏洩荷電
粒子が生じると、(A)に示すα線のピーク101やト
リチウムのピーク102が生じる。つまり、一対の半導
体センサ14,16の出力が合成されない分だけ、低い
エネルギーのところにピークが生じている。
【0020】(A)に示す104は1Mevの運動エネ
ルギーをもった速中性子の検出ピークであり、その最大
値は上述した4.78Mevに速中性子の運動エネルギ
ーである1Mevを加えた5.78Mevである。
【0021】すなわち、中性子検出回路10は、上述し
たように、荷電粒子の運動エネルギーの総和という形式
で入射された中性子のエネルギーに応じた検出パルスを
出力している。
【0022】図1に戻って、増幅器20において、中性
子検出回路10から出力された検出パルスが増幅され、
その検出パルスが第1弁別回路22及び第2弁別回路2
4に入力される。第1弁別回路22は、図2(A)に示
すように、第1弁別レベルAを有しており、その第1弁
別レベルA以上の検出パルスのみを通過させる。すなわ
ち、この第1弁別回路22は、従来同様にノイズを除去
するために機能する。
【0023】一方、第2弁別回路24は、弁別レベル可
変回路26によって可変設定される第2弁別レベルB以
上の検出パルスを通過させるものである。
【0024】すなわち、本実施例においては、エネルギ
ー感度特性に応じて第2弁別レベルに応じた速度で第2
弁別レベルをスライド移動させ、これによって測定時間
の重み付けを与えることによりエネルギー感度を補正す
るものである。これについて具体的に説明する。
【0025】図2(A)に示す106は第2弁別レベル
Bをスライドさせる範囲を示している。すなわち、本実
施例においては、熱中性子ピーク103を越える4.7
9Mevから6.78Mevの間で第2弁別レベルBが
スライドされており、その速度変化が図2の(B)に示
されている。
【0026】すなわち、この速度変化は、図4に示した
期間104における感度の落込みに対応するものであ
る。
【0027】図3には、弁別レベル可変回路26によっ
て設定される第2弁別レベルBの時間変化が示されてい
る。図3の200が1周期であり、この期間内で後述す
るように計数が行われる。第2弁別レベルBを変動させ
る期間とそのレベルを6.78Mevに維持する期間と
が1対99であるのは、図4に示す区間104の両側の
感度差がおよそ1/100であるためである。
【0028】従って、弁別レベル可変回路26によって
図3に示したように第2弁別レベルBが可変設定される
と、第2弁別回路24はその第2弁別レベルB以上の検
出パルスのみを通過させ、それが加算器30に送られ
る。
【0029】一方、第1弁別回路22から出力された検
出パルスは、乗算器28において1/100倍される。
これは上述したように、図4に示した区間104の両側
で感度差が1対100であることに基づく。そしてこの
ような計数が乗算された検出パルスが加算器30に送ら
れ、上述した第2弁別回路24から出力された検出パル
スと加算され、それが計数回路32に送られる。
【0030】従って、計数回路32においては、第1弁
別回路22から乗算器28を介して送られた検出パルス
と第2弁別回路24から検出された検出パルスとを合せ
て計数することになる。すなわち、感度補正が行われた
状態で計数が実現される。
【0031】そして、演算回路34は、計数結果に基づ
き中性子線量などを演算し、表示回路36でその演算結
果が表示される。
【0032】図4には、補正を行った後の感度特性10
2が破線で示されている。図示されるように、感度の落
込みが補われて、ほぼ均一な感度特性が得られている。
【0033】以上のように、およそ0.1〜2Mevの
間における感度の落込みに対し、第2弁別レベルを感度
特性に応じた速度変化をもたせつつスライドさせること
によって結果として各エネルギーに測定時間の重み付け
を与えて感度補正を行っているので、特別な遮蔽材や減
速材などを用いずに広エネルギー中性子測定装置を構成
でき、例えば小型かつ軽量の個人線量計を構成できると
いう利点がある。なお、図3などに示した弁別レベルの
可変特性は一例であり、中性子検出回路10の感度特性
に応じて弁別レベルのスライドを行わせる必要がある。
【0034】なお、中性子反応物質としては、上述した
リチウムのほかに、他の物質を用いることも可能であ
る。いずれにおいても、本実施例では、一対の半導体セ
ンサ14,16によりほぼもれなく発生された荷電粒子
を検出できるので、中性子のエネルギーを精度良く測定
でき、さらにそのエネルギーに応じた感度補正を行うこ
とができる。
【0035】従来においては、熱中性子の感度が高いた
めに例えば熱中性子遮蔽材などを用いて感度調整を行っ
ていたが、本実施例によればそのような感度損失を生じ
させることなく能率的に感度の補正を実現できる。
【0036】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
第2弁別レベルをスライドさせることにより測定時間の
重み付けを与えてエネルギー感度を補正できるので、特
別な減速材や遮蔽材などを用いずにエネルギー感度の補
正を行えるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る中性子検出装置の全体構成を示す
ブロック図である。
【図2】検出スペクトルと第2弁別レベルのスライド速
度とを示す図である。
【図3】第2弁別レベルの時間変化を示す図である。
【図4】補正前のエネルギー感度特性と補正後のエネル
ギー感度特性とを示す図である。
【符号の説明】
10 中性子検出回路 12 Liフォイル 14,16 半導体センサ 22 第1弁別回路 24 第2弁別回路 26 弁別レベル可変回路 30 加算器 32 計数回路

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中性子を検出し、中性子エネルギーに応
    じた波高値を有する検出パルスを出力する中性子検出回
    路と、 前記中性子検出回路からの検出パルスを入力し、ノイズ
    除去のために固定設定された第1弁別レベル以上の検出
    パルスを通過させる第1弁別回路と、 前記中性子検出器からの検出パルスを入力し、前記中性
    子検出回路のエネルギー感度特性を補正するために可変
    設定される第2弁別レベル以上の検出パルスを通過させ
    る第2弁別回路と、 前記エネルギー感度特性に応じて前記第2弁別レベルを
    スライドさせる弁別レベル可変回路と、 前記第1弁別回路から出力された検出パルスと前記第2
    弁別回路から出力された検出パルスとを合せて計数する
    計数回路と、 を含み、 測定時間の重み付けを与えることによりエネルギー感度
    特性を補正することを特徴とする中性子測定装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の装置において、 前記中性子検出回路は、 中性子と核反応して2次放射線を放出する中性子反応物
    質と、 前記中性子反応物質を挟んで対向配置され、前記2次放
    射線を検出する一対の放射線検出器と、 を含み、 前記一対の放射線検出器の出力を合成した信号が各弁別
    回路に入力されることを特徴とする中性子測定装置。
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