JP2741060B2 - 多重反射干渉器及びそれを用いた安定化レーザ光源 - Google Patents

多重反射干渉器及びそれを用いた安定化レーザ光源

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、コヒーレント光の光源となるレーザに係
り、半導体レーザを用いても、光ファイバ通信システ
ム、光ファイバセンサ、高分解能スペクトル分析器など
に使用するための、高い周波数安定度をもつレーザ光源
を実現可能とする技術に関する。とくに改良されたファ
ブリイ・ペロー(Fabry−Perot)形干渉器(エタロン)
を用いて、注入電流を制御するようにしたレーザを提供
するものである。
〔従来の技術〕
レーザとくに、半導体レーザの周波数安定化技術につ
いては、すでにいくつかの提案がある。
安定な周波数の基準として、ファブリー・ペロー(Fa
bry−Perot)干渉器を用いるもの、原子または分子の吸
収特性曲線を用いるなどが知られており、すでに10-12
に達する安定度が得られたという報告もある。とりわ
け、ファブリー・ペロー干渉計(F.P.)は、最も簡便
な、広範囲の波長基準として広く用いられるところであ
る。二つの反射鏡が用いれられるこの干渉計では、反射
鏡の反射率が90%を超えるという比較的高い値であるた
めに、この干渉器を照射する光源が干渉を受けるという
弊害があり、光源とくに半導体レーザの不安定発振の原
因とされてきた。
このファブリー・ペロー干渉計(F.P.)からの光の帰
還を低減し、もしくは除去するための方法として、第1
図に示した方法が採用されてきた。
これらを略記すれば、(a)は干渉器(F.P.)の光軸
を傾けて、帰還光の進路をそらせるもの。この方法では
干渉器の精度を悪くし伝達されるスペクトルの幅を広め
てしまう。(b)は光学的アイソレータを用いるもので
あって、ファラディ回転を用いたアイソレータで、30dB
のアイソレーションがとれるものもあるが、帰還光の完
全な除去のためには、この高価な装置2個を従属接続し
なければならない。(c)はリング形の干渉器で、光の
帰還を著しく減殺できることが知られているが、三つの
鏡面のアラインメントを調整する作業がわずらわしいも
のとされている。(d)はガラス製の正三角柱のプリズ
ムを用いたもので、(c)よりもわずらわしさがない点
に特徴があるとされている。(H.Tsuchida & Y.Mitsuh
ashi,Applied Optics,vol.27,15 Jan.1988) 〔発明が解決しようとする課題〕 周波数安定度のきわめて高い半導体レーザを実現する
ために、この発明は従来用いられてきた多重反射形の干
渉器をさらに改良することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
周波数安定度の高いレーザ発振器に必要とされる多重
反射形の干渉器を実現するために、この発明では、 (1)光透過媒質1をはさんで、上下に二枚の反射鏡面
2,2′を設け、光の透過方向にこの反射鏡面を延在させ
ることにより、光は、上下の各鏡面を交互に反射しなが
ら媒質中を進行し、透過するようにして、長い光路を得
るようにした。
また、光の入射面3と出射面4とは、それぞれ平行な
二面と斜めに交わるような半透鏡で作るようにした(第
4図)。
(2)光透過性媒質のほぼ正五角柱のプリズム状を呈す
る形状を用意し5、第1の側面6を入射面として半透鏡
とし、一つ置いた第3の側面7を出射面として半透鏡と
し、第2の側面10、第4の側面8及び第5の側面9を実
質的に完全反射の鏡面とした(第5図)。
つぎに、この発明では、(3)として、前記(1)ま
たは(2)で実現した多重反射形の干渉器を用いて、レ
ーザ発振器の駆動電源への制御系を実現した(第7
図)。
〔作用〕
第2図は、ファブリー・ペロー形干渉器の基本構造の
模式図を示す。
この形のものは、光学の教科書に掲載されており、ま
た、第3図は、多重反射によって生ずる強度分布の周波
数(波長)特性の模式図をそれぞれ示す。透過光の強度
ITと入射光強度IOとの間には の関係があり、δ=2πmで最大値を生ずる。フィネス である。
ここで、nは光透過性媒質の屈折率、mは整数をそれ
ぞれ示す。
第4図は、本発明の第1の実施例の原理を示す模式図
で、第2図の基本形と異なる点は入射面が入射光に対し
て、直角ではなく、従って、反射光は、入射光の経路と
異なった経路を進行する。入射面から内部に導入された
光は破線で示した光路を進行する。第4図の多重反射干
渉器は、多重反射をさせるための完全反射面(反射係数
R=1)が、上下に平行平板状に設けられている。平行
平板間の距離をd、その長さをlとするときは、第2図
の多重反射形干渉器の光路長が2lであったのに対し、第
4図の多重反射形干渉器にあっては光路長が となる。
ただし、Nは入射光の反射繰り返し数、Mは干渉計内
部の戻り光の反射繰り返し数である。
第4図の例では次の3つの特徴が理解できる。
(1)光路長を側壁(R=1)での反射回数を増加させ
ることにより、長くできる。従って、フリースペクトル
・レンジと、共振ピークの線幅を狭くでき、高分解能の
周波数基準となる。
(2)干渉器内部の空間を有効に利用するので、小型の
ファブリペロー・エタロンを作製できる。
(3)入射光と反射光を分離でき、光源への戻り光の影
響を無くすことができる。
第5図は本発明の第2の実施例において、五角形の形
状を持つ場合の原理を示す模式図で、A,B,C,D,Eを頂点
とする、正五角形(各辺の長さd)のプリズムを基本形
とする。
入射光の入射面AE及び透過光の出射面CDはそれぞれ反
射率がR(R≠1)であるが、他の面(AB,BC,DE)は
R′=1の鏡面であり、その内部で光を完全に反射す
る。
入射光として実線で示したもののプリズム内の経路も
実線で示したような星芒形となる。
透過光の強度は、第2図の例と同様に、IT/IO=(1-R
2)2/〔(1-R2)2+4R2sin2(δ/2)〕 ……(2) δ=10πnd(1+cos72°)/λO となる。
また光路長LフリースペクトルレンジΔνFS R及びフ
ィネスFは次式のようになる。
もし、入射光の位置を少しずらすと、第5図に示す様
に長破線と短破線の経路が干渉器内に生じ、その結果透
過光を2本の光ビームを発生させることもでき、この2
本の透過光の強度IT/IO、フリースペクトルレンジΔν
FS R、フィネスFは各々(2)、(4)、(5)式で与
えられる値と同じである。この第5図の場合も入射光と
反射光を分離でき、また干渉器内の空間の有効な利用に
より、第2図の基本的構造のファブリー・ペロー干渉計
より(3)式による光路長が長くなるので、第4図の多
重反射形干渉器で得られる特徴と、同じ特徴を備えてい
ることになる。
〔実施例〕
多重反射干渉器としては第4図に示したように光透過
媒質をはさんで、上下2枚の反射鏡面を備えたものと、
第5図に示したように、ほぼ正五角柱のプリズム状を呈
し、完全反射面を3つ配したものとがある。それぞれは
光学用ガラスに整形、研磨などの加工を施して、平行度
あるいは角度が正確に得られるようにする。課題を解決
するための手段の項で説明したように、入射面と出射面
は別として、所定の面に完全反射鏡を作るために、金属
の薄膜を、真空蒸着など既存の手法で、作製する。
なお、第2の実施例(第5図)の例では、第5図に示
したように、五角柱プリズム内では光は実線又は破線で
示したような星芒形の光路を作る。プリズムが正しい五
角柱であれば、この光路は一平面上にあるから、光路は
交差している。この交差する光が、プリズムの材質がも
つ非線形特性によって、いたずらな干渉作用を生じない
ようにするために、たとえば、第2の面10と第5の面9
とを、五角形の中心軸に対して平行でなくなるように、
わずかずつ、相互に反対になるように傾けるとよい。こ
うすることによって、第5図の紙面の上から見た光路は
第5図と変わらない状態で投影図ができるが、星芒形の
光路は、互いに交差しないものが作り上げられる。ほぼ
正五角柱のプリズムのほぼとは、このような、わずかな
傾きをもつ五角柱を意味している。
第6図に、従来技術の(d)項で述べた正三角柱の形
状を持つ場合と、正五角・七角・九角の形状を持つ請求
項2に記載した発明に属する多重反射干渉器の角数によ
る干渉特性の変化を示す。
この図で明らかなように、角数により光路長が増大
し、その結果フリースペクトルレンジは従来の三角形状
に比べて約1/3以下の幅となり高分解能が得られてい
る。また入射光と反射光の分離角は角数が増すに従い減
少するが、九角の場合でも30°以上の分離角を持ち、実
用上問題はない。しかも、5,7,9の角数の場合は、従来
技術の3に比して、著しく、性能が高められている。
第7図に、本発明の多重反射干渉器(第4図及び第5
図に例示)を使った半導体レーザの周波数安定化の一実
施例を示す。
レーザ光源として半導体レーザ11を使用して、その出
力レーザ光をビームスプリッタ12で一定の強度比率で2
つの光に分ける。一方の光は光電変換器A13に直接入射
させ、他方の光を多重反射干渉器16に入射させ、その干
渉信号を光電変換器B17で検知する。
第8図に、光電変換器A13,B17の光波長を掃引したと
きの各々の出力信号を示す。
この場合、光電変換器B17の多重反射干渉器16の干渉
ピーク曲線内に光波長が存在するときには、A−Bの出
力値は、Aの出力値に対応する光波長からの半導体レー
ザ11の出力波長のズレとして取り扱うことができ、従っ
て光電変換器A13,B17の信号を差動アンプ14に入力し、
半導体レーザ駆動電流源15へその差動アンプからの出力
を入力し、この差動アンプ14の出力を0にするように半
導体レーザへの注入電流を調整することにより、半導体
レーザの出力光波長を、多重反射干渉器16の干渉特性曲
線上の一点に対応する光波長に、高精度に安定化するこ
とができ、高安定な安定化光源を得ることができた。
なお、本実施例の安定化手法は、光電変換器A13と差
動アンプ14とで光波長制御回路を構成し、基準光強度
(光電変換器A13の出力)により波長変動をモニターす
る安定化手法であるが、他の手法、例えば本願出願人と
他との共同出願に係る「波長安定化光源」(特願昭63−
248250号)の明細書に記載の各種安定化手法による安定
化光源も作製できる。
〔発明の効果〕
以上、述べたように本発明に係る多重反射形干渉器及
びそれを用いた安定化レーザ光源は、従来形の干渉器及
びそれを用いた安定化光源に比べて以下に示す固有の効
果を有する。
(1)多重反射により、実質的な光路長を長くすること
ができ、その結果フリースペクトルレンジと干渉ピーク
の線幅を狭くでき、高精度の光波長基準となる。
(2)共振器内部の空間を有効に利用するので、小型の
干渉器を作製できる。
(3)干渉ピークの線幅が狭く、波長制御信号の高いS/
Nが得られるため、安定化光源の波長基準として用いる
ことにより、光波長を高精度に安定化する安定化光源を
得ることができる。
(4)入射光と反射光を空間的に分離することでき、光
源への戻り光の影響を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は干渉器からの戻り光低減手法例を示す図、第2
図は従来形干渉計構造模式図、第3図は従来形干渉特性
の模式図、第4図は本発明(第1発明)の多重反射形干
渉器の原理を示す図、第5図は本発明(第2発明)の多
重反射形干渉器の原理を示す図、第6図は多角形状を持
つ多重反射形干渉器の干渉特性の角数依存性を示す図、
第7図は本発明の多重反射干渉器を波長基準として使用
した安定化光源の一実施例を示す図、第8図は第6図の
安定化光源の動作原理を示す図である。 図中、1と5は光透過性媒質、2と2′は完全反射鏡
面、3は第1の半透鏡(入射面)、4は第2の半透鏡
(出射面)、6は半透鏡面(入射面)、7は半透鏡面
(出射面)、11はレーザ光源(半導体レーザ)、16は多
重反射干渉器、13と17は光電変換器、12はビームスプリ
ッタをそれぞれ示す。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】光透過性媒質(1)をはさんで延在し,該
    媒質中を進行する光を交互に反射する平行平板状の2枚
    の反射鏡(2,2′)と、前記2枚の反射鏡に対して斜め
    に交わる角度に配置され,入射光を第1の反射鏡に導く
    ための第1の反透鏡(3)と、前記2枚の反射鏡に対し
    て斜めに交わる角度に配置され,第1又は第2の反射鏡
    からの反射光を該媒質の外へ導くための第2の半透鏡
    (4)とから成ることを特徴とする多重反射干渉器。
  2. 【請求項2】5以上の奇数の角を持つほぼ正多角柱の形
    状を有する光透過性媒質(5)で成り、角柱の任意の2
    つの側面のうち、第1側面は入射光を該媒質内部に導く
    半透鏡面(6)を有し、第2側面は該媒質内部を透過し
    て到来した光を該媒質外部に導く半透鏡面(7)を有
    し、その他の側面は該媒質内部を透過して到来した光の
    反射鏡面を有することを特徴とする多重反射干渉器。
  3. 【請求項3】レーザ光源(11)と、該レーザ光源の出射
    光を受けて、干渉信号を出力する多重反射干渉器(16)
    と、該多重反射干渉器からの干渉信号を受ける光電変換
    器(17)とを備え、該光電変換器の出力信号に応じて前
    記レーザ光源からの出力光の波長が前記多重反射干渉器
    の干渉特性ピーク曲線の1点に一致するように制御され
    る安定化レーザ光源において、 前記多重反射干渉器が請求項1又は請求項2記載の多重
    反射干渉器であることを特徴とする安定化レーザ光源。
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