JP2739680B2

JP2739680B2 - アコースティック弦楽器の下駒構造

Info

Publication number: JP2739680B2
Application number: JP6142649A
Authority: JP
Inventors: 芳輝星野
Original assignee: 星野楽器株式会社
Priority date: 1994-05-31
Filing date: 1994-05-31
Publication date: 1998-04-15
Anticipated expiration: 2013-04-15
Also published as: KR950034043A; JPH07325565A; KR100215490B1

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明はアコースティック弦楽
器の下駒構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】例えばフォークギターなどの共鳴胴部の
共鳴によって音色を発生するアコースティック弦楽器に
あっては、弦を張設するための下駒を表甲にしっかりと
密着させなければならない。もし、この下駒が表甲に密
に取り付けられていない場合には、弦の振動が共鳴胴部
に確実に伝達されないばかりか、下駒と表甲との間でび
びり音などが発生して種々の不具合を招く。

【０００３】図６に示すように、従来、この種のアコー
スティック弦楽器においては、堅くてねばりのある例え
ばローズウッドやエボニー等の木によって下駒５０を製
作し、これを接着剤５１によって共鳴胴の表甲５２に密
に貼着している。しかるに、共鳴胴部の表甲（トップと
もいう）５２の表面５２Ａは通常半径４０００ないしは
６０００ｍｍ程度の大きな凸曲面Ｒによって形成されて
いるのであるが、この表甲５２は約２．５ないしは３ｍ
ｍの薄い木板によって構成されているために、該木板の
性質、製作条件、湿度等によってその表面の曲面Ｒはす
べてが必ずしも同じであるとは限らない。そこで、この
木製の下駒５０を表甲５２に取り付けるに際しては、表
甲表面５２Ａの凸曲面Ｒに合致するように下駒５０の裏
面をその都度切削加工してこれを該表甲表面に接着剤に
よって接着している。なお、図の符号５３は表甲５２の
下駒取付面に裏打ちされた補強板である。

【０００４】しかしながら、堅くねばりのある木板製の
下駒をその都度表甲の凸曲面に合致するように切削加工
して接着することは、加工しにくく熟練を要するばかり
か、生産効率が悪く、コスト高になる嫌いがある。ま
た、下駒を構成する堅いねばりのある木材料はそれ自体
高価であるばかりでなく、年々入手が困難となる傾向が
ある。

【０００５】さらに、接着剤による下駒の接着はその接
着強度にばらつきが生ずることが避けられず、加えて表
甲表面が化粧塗膜を有することもあって、接着強度が十
分でない場合には下駒が外れたり、割れたりすることが
ある。なお、この接着強度は外観等の外部から検知する
ことができないので品質管理上の難問となっている。

【０００６】このような状況から、近年、例えば図７に
示すように、この下駒をプラスチックの成形品６０によ
って成形し、これを表甲６２にねじ止めする構造も提案
されているが、これにも次のような問題があった。プラスチック成形品による単一形状では、微妙に変
化する表甲６２の凸表面６２Ａに対応することができ
ず、下駒６０と表甲６２の取付部に隙間が生ずることが
ある。また、プラスチック成形品の取付部を表甲の凸表面
に合致するように切削加工することは極めて煩雑で困難
である。プラスチック成形品の取付部を表甲の凸表面に合致
しやすくするために下駒自体を薄くすると、駒としての
強度や取付上の問題が生ずる。さらに、プラスチック成形品の内部を中空６３にす
ると、下駒の表甲に対する全体的な密着が不能となり、
また該中空部の存在によって音に影響が生ずる。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】この発明は、このよう
な問題点を解消するために提案されたものであって、共
鳴胴部の表甲の差異のある曲面に対して何ら特別な加工
を行うことなく合致し、またその取付強度も高い、新規
な下駒構造を提供しようとするものである。同時に、こ
の発明によって、この種下駒構造のプラスチック化が可
能となり、生産効率が向上し、コストダウンを図ること
ができ、さらに品質管理も容易となる構造を提供するも
のである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】すなわち、この発明は、
表面側にブリッジ部を有し、裏面側には固定ねじ部が突
設された下駒部材と、板状本体の表面部には前記下駒部
材の固定ねじ部のための貫通孔が形成された薄肉の下駒
部材収容部が設けられ、板状本体の裏面側は共鳴胴部の
表甲への貼着面として構成された台座板とからなり、前
記台座板は共鳴胴部の表甲に接着剤を介して接着されて
いるとともに、該台座板および前記下駒部材は下駒部材
の固定ねじ部によって前記表甲に密に固着されているこ
とを特徴とするアコースティック弦楽器の下駒構造に係
る。

【０００９】

【作用】この発明構造にあっては、下駒部材と台座板の
２つの部材によって下駒構造が構成される。下駒部材に
は弦高を規定するブリッジ部を有し、裏面側には固定ね
じ部が突設されている。台座板の裏面部は表甲への貼着
面として確保されており、台座板の表面部には前記下駒
部材のための薄肉の下駒部材収容部が設けられている。
台座板の裏面部を接着剤を介して表甲の所定位置に貼着
し、該台座板の薄肉の下駒部材収容部に下駒部材を載置
して固定ねじ部を介して表甲に台座板と一体に固着され
る。下駒部材と表甲の間に固定ねじ部によって圧締され
た台座板、特にその下駒部材収容部は薄肉に形成されて
いるので表甲表面の曲面に微妙な差異があってもこれに
倣って変形し該表甲表面に密着する。さらに、台座板の
裏面部には接着剤が介在されているものであるから、台
座板全体での密着がなされる。

【００１０】

【実施例】以下添付の図面に従ってこの発明の実施例を
説明する。図１はこの発明の一実施例を示す下駒部材お
よび台座板の分解斜視図、図２はその取付状態を示す断
面図、図３は弦を張設した状態の部分断面図、図４は台
座板の変形状態を示す断面図、図５は同じく台座板の裏
面図である。

【００１１】図１に図示したように、この発明の下駒構
造は、下駒部材１０と台座板２０より構成される。下駒
部材１０と台座板２０はプラスチックの射出成形品等よ
りなる。

【００１２】下駒部材１０は、図のように、本体１１の
表面側にブリッジ部１２を有し、裏面側には適宜本数の
固定ねじ部１３が突設されている。この下駒部材１０は
ブリッジ部１２を有し、弦を固定保持する部分となるの
で十分な強度と剛性を有する厚みをもって構成されてい
る。なお、ブリッジ部１２は本体１１の成形と一体に形
成してもよいが、実施例のように、交換が可能なように
着脱自在としてもよい。固定ねじ部１３は本体１１の成
形時にインサート成形することが便宜である。

【００１３】図１の符号１４は下駒部材の表面側に設け
られた弦収容部で、１５は前記弦収容部の後部に設けら
れた弦挿通部である。

【００１４】台座板２０は板状本体２１よりなり、その
表面部には前記下駒部材１０を収容する薄肉の下駒部材
収容部２２が設けられている。実施例ではこの下駒部材
収容部２２は下駒部材１０の底面形状と同一形状の凹部
として形成されている。なお、実施例の下駒部材収容部
２２の厚みは約１．２ｍｍで、本体部２１Ａの厚みは２
ないし３ｍｍである。

【００１５】この下駒部材収容部２２には前記下駒部材
１０の裏面側に突設された固定ねじ部１３のための貫通
孔２３が対応する位置にそれぞれ形成されている。そし
て、台座板２０の板状本体２１の裏面側は予め設定され
た共鳴胴部の表甲の凸曲面に対応する曲面でもって面一
の貼着面として構成されている。

【００１６】実施例では、台座板２０の板状本体２１の
表面部の前記下駒部材収容部２２の後部に前記下駒部材
１０の弦挿通部１５に対応する段部よりなる弦止め部２
７が形成されている。

【００１７】上のように構成された台座板２０にあって
は、細長の板状本体２１の表面部に薄肉（実施例では約
１．２ｍｍ）の下駒部材収容部２２が設けられているも
のであるから、図４に鎖線で図示したように、その長さ
方向に弾性（屈曲性）を有しており、台座板２０自体に
予め設定された曲面が共鳴胴部の表甲の凸曲面に微妙に
異なる場合にもこれに対応することができる。

【００１８】上記した下駒部材１０および台座板２０
は、図２に図示するように、台座板２０が共鳴胴部の表
甲３０に接着剤３１を介して接着されるとともに、該台
座板２０および前記下駒部材１０は下駒部材の固定ねじ
部１３を介して表甲３０に密に固着される。図の符号３
３は表甲３０に裏打ちされた補強板で、３５はナット部
材である。

【００１９】このとき、図２からよく理解されるよう
に、固定ねじ部１３およびナット部材３５によって下駒
部材１０と表甲３０の間に圧締された台座板２０、特に
その下駒部材収容部２２は薄肉であるから、表甲３０の
表面凹曲面に微妙な差異があってもこれに倣って変形し
該表甲表面に密着すると同時に、さらに、台座板２０の
裏面部には接着剤３１が介在されているものであるか
ら、台座板２０全体での密着がなされるのである。

【００２０】図５は台座板２０の裏面の貼着面２５を示
す図であるが、この実施例では、貼着面２５の台座板外
周近傍に接着剤のはみ出し防止溝２９が形成されてい
る。この接着剤はみ出し防止溝２９は、台座板２０の表
甲への取付時に、その貼着面２５に導入された接着剤が
台座板２０裏面から化粧面でもある表甲に滲み出すこと
を防止するものである。

【００２１】図３はこの発明構造における弦止め構造の
一例を表す図である。この例においては、前記したよう
に、下駒部材１０の表面側後部に弦挿通部１５が設けら
れ、台座板２０の板状本体の表面部の下駒部材収容部２
２の後部には前記下駒部材の弦挿通部１５に対応して弦
止め部２７が形成されていて、該弦挿通部１５と弦止め
部２７とによって、弦ＷのボールエンドＥが係止されて
各弦が下駒に固定される。この構造によれば、従来のブ
リッジピンが不要となり、コストおよび生産効率の点で
有利である。

【００２２】なお、図示しないが、弦高などの調整のた
めに、下駒部材１０と台座板２０との間に適当なスペー
サを介在させて下駒部材１０の高くすることも可能であ
る。

【００２３】

【発明の効果】以上図示し説明したように、この発明構
造によれば、下駒部材と台座板の２つの部材によって下
駒構造が構成されているので、それぞれの部材の目的に
応じて所期の機能および作用を有する構成とすることが
できる。すなわち、下駒部材は、弦を固定保持するに十
分な強度を備えることができ、その裏面側には突設され
た固定ねじ部を介して表甲に台座板と一体に固着され、
高い取付強度を有する。

【００２４】また、台座板、特にその下駒部材収容部は
薄肉に形成されているので表甲表面の曲面に微妙な差異
があってもこれに倣って変形し、共鳴胴部の表甲の差異
のある曲面に対して何ら特別な加工を行うことなく合致
し密着することができる。のみならず、台座板自体の裏
面部には接着剤が介在されているものであるから、台座
板全体での密着がなされる。

【００２５】さらに、台座板を共通として下駒部材のデ
ザインを変えることができるので、比較的安価で下駒の
バリエーションを増やすことも可能である。このよう
に、この発明によれば、従来の木質の下駒に代えて、こ
の種下駒構造のプラスチック化が可能となり、生産効率
が向上し、コストダウンを図ることができ、さらにその
品質管理も格段と容易となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施例を示す下駒部材および台座
板の分解斜視図である。

【図２】その取付状態を示す断面図である。

【図３】弦を張設した状態の部分断面図である。

【図４】台座板の変形状態を示す断面図である。

【図５】同じく台座板の裏面図である。

【図６】従来の木質の下駒の取付状態を示す断面図であ
る。

【図７】同じく従来のプラスチック成形品よりなる下駒
の取付状態を示す断面図である。

【符号の説明】１０下駒部材１２ブリッジ部１３固定ねじ部１５弦挿通部２０台座板２１板状本体２２下駒部材収容部２３貫通孔２５貼着面３０表甲３５ナット部材

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】表面側にブリッジ部を有し、裏面側には
固定ねじ部が突設された下駒部材と、板状本体の表面部には前記下駒部材の固定ねじ部のため
の貫通孔が形成された薄肉の下駒部材収容部が設けら
れ、板状本体の裏面側は共鳴胴部の表甲への貼着面とし
て構成された台座板とからなり、前記台座板は共鳴胴部の表甲に接着剤を介して接着され
ているとともに、該台座板および前記下駒部材は下駒部
材の固定ねじ部によって前記表甲に密に固着されている
ことを特徴とするアコースティック弦楽器の下駒構造。
【請求項２】請求項１において、下駒部材の表面側後
部に弦挿通部が設けられ、台座板の板状本体の表面部の
下駒部材収容部の後部には前記下駒部材の弦挿通部に対
応して弦止め部が形成されているアコースティック弦楽
器の下駒構造。