JP2732377B2 - ペプチド、蛋白質のd/l−アミノ酸配列分析法 - Google Patents

ペプチド、蛋白質のd/l−アミノ酸配列分析法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、D/L−アミノ酸
を含有するペプチド類のアミノ酸配列及び/又は立体配
置を決定するための分析方法に関するものであり、更に
詳しくは、一般的なエドマン試薬であるフェニルイソチ
オシアナート(PITC)によるペプチド類のN−末端
アミノ酸の誘導体化反応を利用し、引続く酸処理による
開裂/環化の後、遊離した2−アニリノ−5−チアゾリ
ノン(ATZ)誘導体を更に酸処理又は加水分解して、
生成した最終的な分解物でより安定なエドマン生成物で
あるフェニルチオヒダントイン(PTH)誘導体又はフ
ェニルチオカルバミン酸(PTC)誘導体をその立体配
置を保持したままキラルな固定相上で分離する方法を採
用することにより、従来、困難とされていたペプチド類
のアミノ酸配列及び/又は立体配置を分析することを可
能とする、D/L−アミノ酸を含有するペプチド類のア
ミノ酸配列及び/又は立体配置の新規な分析方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】従来、アミン、アミノ酸、ペプチド、タ
ンパク質を検出、定量するための方法、あるいは、ペプ
チド、タンパク質のアミノ酸配列を分析するための方法
としては、フェニルイソチオシアナートを試薬として使
用する方法が知られており、これまで、この方法が汎用
されてきた〔P.Edman,Acta Chim.S
cand.,4,283(1950);P.Edma
n,Acta Chim.Scand.,10,761
(1956);P.Edman,G.Begg,Eu
r.J.Biochem.,1,80(196
7).〕。しかしながら、当該試薬を用いる方法は、吸
光度を検出をしなければならないために感度が悪いとい
う難点があり、更に高感度な検出、定量試薬の開発が望
まれていた。
【0003】一方、高感度な検出を目指して、これまで
に種々の蛍光試薬が開発されており、例えば、フルオレ
セインイソチオシアナート〔H.Maeda,H.Ka
wauchi,Biochim.Biophys.Re
s.Commun.,31,188(1968)〕、4
−N,N−ジメチルアミノナフチルイソチオシアナート
〔H.Ichikawa,T.Tanimura,T.
Nakajima,Z.Tamura,Chem.Ph
arm.Bull,18,1498(1970).〕、
N−ダンシルアニリノフェニルイソチオシアナート
〔S.−W.Jin,G.−X.Chen,Z.Pal
acz,B.Wittmann−Liebold,FE
BS letters,198,150(1986);
H. Hirano,B.Wittmann−Lieb
old,Biol.Chem.Hoppe−Seyle
r,367,1259(1986)〕などの蛍光試薬が
開発されている。しかしながら、これらの試薬について
も、反応性、試薬の安定性などの点で各々難点があり、
また、試薬自体が蛍光を有しているなどの欠点があり広
く使われるには到っていないのが実情である。
【0004】このような状況の中で、本発明者は、高感
度な検出、定量の可能な化合物及び分析試薬を開発する
ことを目標に鋭意研究を積み重ねた結果、本発明者が長
年にわたり携わり、創製してきたベンゾフラザン骨格を
有する蛍光試薬〔ABD−F,T.Toyo’oka,
K.Imai,56,2461(1984);DBD−
F,T.Toyo’oka,T.Suzuki,Y.S
aito,S.Uzu,K.Imai,Analys
t,114,413(1983).〕の4位又は7位を
チオカルバミル基で置換することにより得られる新規化
合物の7−置換−4−(2,1,3−ベンゾオキサジア
ゾリル)イソチオシアナート又はその塩が、アミン、ア
ミノ酸、ペプチド、タンパク質のアミノ基に対し、著し
く高い反応性を有し、従って、極微量のアミン、アミノ
酸、ペプチド、タンパク質が定量できることを見出すと
共に、更にペプチド、タンパク質のアミノ酸配列の分析
試薬としても有用であることを見出した(特公平6−9
4461号公報)。
【0005】上記知見に基づいて、前報〔Imai e
t al.,Biomed.Chromatogr.,
9,152(1995)〕において、本発明者は、蛍光
性のエドマン試薬7−N,N−ジメチルアミノスルホニ
ル−4−(2,1,3−ベンゾオキサジアゾリル)−イ
ソチオシアナート(DBD−NCS)〔Imai et
al.,Biomed.Chromatogr.,
7,56(1993)〕を用いる、D/L−アミノ酸を
含有するペプチド類のアミノ酸シークエンス及び立体配
置の決定のための新しい簡便な方法を報告した。
【0006】この方法では、ペプチド(例えば、Tyr
−D−Ala−Gly−Phe−D−Leu)は、上記
の蛍光性試薬で標識され、次いで、トリフルオロ酢酸で
50℃、1分間処理されて開裂と環化が行われた。その
反応サイクルにおける初期生成物であり、もとの立体配
置を保持していると考えられている反応生成物であるチ
アゾリノンアミノ酸誘導体はキラル固定相(フェニルカ
ルバミル化シクロデキストリンカラム)上で分離され感
度よく検出された。このようにして、そのペプチドのア
ミノ酸シークエンスと立体配置が簡単に決定された。
【0007】以前の本発明者の報告では、DBD−標識
ペプチドを開裂/環化するためにトリフルオロ酢酸(T
FA)と50℃で処理すると、得られるDBD−TZ−
D−あるいはL−アミノ酸はその立体配置を約20%の
収率で保持しただけであった。これに反して、フェニル
イソチオシアナート(PITC)から誘導された2−ア
ニリノ−5−チアゾリノン−ロイシン誘導体(ATZ−
Leu)のラセミ化は4%以下であった(ATZ−Le
u,50℃,5分間)。このことは、以前、エドマン
が、最も一般的なエドマン試薬であるフェニルイソチオ
シアナート(PITC)によって標識化されたペプチド
から誘導された2−アニリノ−5−チアゾリノン(AT
Z)−アミノ酸は、単離や同定の操作に対して充分な安
定性がないと報告している〔Edman,P.,Act
a Chem.Scand.10,761(195
6)〕ことと矛盾している。
【0008】しかしながら、更に検討を重ねた結果、A
TZ−Leu以外の一部のATZ−アミノ酸はキラル固
定相で分離する間に、対応するフェニルチオヒダントイ
ン誘導体(PTH−アミノ酸)に変換されてしまうこと
が判明し、エドマンの報告を確認した。従って、ATZ
−アミノ酸はペプチド類のシークエンスと立体配置の決
定には不充分であることが判明した。そこで、本発明者
は、ATZ誘導体を直ちに加水分解してフェニルチオカ
ルバミン酸(PTC)誘導体として立体配置の保持を図
ること、ならびに最終生成物のフェニルチオヒダントイ
ン(PTH)−アミノ酸の立体配置の保持力について検
討した。
【0009】今回、本発明者は、ATZ−アミノ酸が加
水分解した後フェニルチオカルバミン酸(PTC)誘導
体になっても元の立体配置を保持していること、また、
ATZ−アミノ酸がトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液
により処理して変換反応を行ったにもかかわらず、最終
的でより安定なエドマン生成物であるフェニルチオヒダ
ントイン(PTH)−アミノ酸が、最初の立体配置を保
持していることを確認した。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者は、
D/L−アミノ酸を含有するペプチド類のアミノ酸シー
クエンスと立体配置の決定方法として、フェニルイソチ
オシアナート(PITC)を利用し、フェニルチオカル
バミル(PTC)−アミノ酸又はフェニルチオヒダント
イン(PTH)−アミノ酸をキラルカラムで分離する方
法を確立することに成功して、本発明を完成するに至っ
た。
【0011】すなわち、本発明は、D/L−アミノ酸を
含有するペプチド類のアミノ酸配列及び/又は立体配置
の分析方法を提供することを目的とするものである。
【0012】また、本発明は、フェニルイソチオシアナ
ート(PITC)を利用し、ATZ−アミノ酸の加水分
解物であるフェニルチオカルバミル(PTC)−アミノ
酸、あるいは最終的でより安定なエドマン生成物である
フェニルチオヒダントイン(PTH)−アミノ酸を使用
することにより、D/L−アミノ酸を含有するペプチド
類のアミノ酸配列及び/又は立体配置を分析する方法を
提供することを目的とするものである。
【0013】更に、本発明は、D/L−アミノ酸を含有
するペプチド類を連続的に分析することを可能とする当
該ペプチド類のアミノ酸配列及び/又は立体配置の分析
方法及びその装置を提供することを目的とするものであ
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明は、フェニルイソチオシアナート(PITC)
をD/L−アミノ酸を含有するペプチド類を含む試料検
体に加えて反応させ、次いで、酸処理して、遊離した2
−アニリノ−5−チアゾリノン誘導体を更に酸処理又は
加水分解して、生成したフェニルチオヒダントイン(P
TH)誘導体又はフェニルチオカルバミン酸(PTC)
誘導体をその立体配置を保持したままキラルな固定相上
で分離することを特徴とするD/L−アミノ酸を含有す
るペプチド類のアミノ酸配列及び/又は立体配置の分析
方法、に係るものである。また、本発明は、上記の反応
サイクル及び分離方法を繰り返すことにより、D/L−
アミノ酸を含有するペプチド類のアミノ酸配列及び/又
は立体配置をそのN−末端アミノ酸残基から連続的に分
析することを特徴とするD/L−アミノ酸を含有するペ
プチド類のアミノ酸配列及び/又は立体配置の分析方
法、に係るものである。 更に、本発明は、フェニルイ
ソチオシアナート(PITC)によるD/L−アミノ酸
を含有するペプチド類のN−末端アミノ酸の誘導体化反
応、次いで、酸処理又は加水分解して2−アニリノ−5
−チアゾリノン誘導体とする開裂/環化反応、更に酸処
理してフェニルチオヒダントイン(PTH)誘導体又は
フェニルチオカルバミン酸(PTC)誘導体とする変換
反応、の連続反応槽とキラルな固定相とを組み合わせた
ことを特徴とする上記のD/L−アミノ酸を含有するペ
プチド類のアミノ酸配列及び/又は立体配置の分析方法
に使用する分析装置、に係るものである。
【0015】本発明において、上記D/L−アミノ酸を
含有するペプチド類とは、具体的には、ペプチド、蛋白
質を含む広い意味でのペプチド及びその関連物質を含む
ものを意味するものとして定義される。本発明は、前記
したように、フェニルイソチオシアナート(PITC)
をD/L−アミノ酸を含有するペプチド類を含む試料検
体に加えて、ペプチド類のN−末端アミノ酸の誘導体化
反応を行うが、この方法は、PITCと試料検体の添加
順序は特に限定されるものではなく、また、例えば、反
応は、通常5〜90℃の範囲に加熱して行われる。反応
に要する時間は、反応温度、反応に供せられる試料検
体、溶媒等によって異なるが、例えば、通常は、1〜6
0分間の範囲で適宜選択される。また、この反応に使用
される溶媒としては、例えば、エタノール、ジメチルア
リルアミン、ピリジン等の塩基含有溶媒が好適なものと
して挙げられるが、これらと同効のものであれば適宜使
用し得ることは云うまでもない。
【0016】反応終了後、反応混合物にベンゼンを加え
攪拌した後、遠心にて分離後、上層のベンゼン層を捨て
る。残った水層を減圧又は窒素ガスにて溶媒を揮散さ
せ、次いで、残渣に、例えば、トリフルオロ酢酸(TF
A)などの強酸又は三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル
などのルイス酸を加え、酸処理による開裂/環化の後
に、遊離される2−アニリノ−5−チアゾリノン−アミ
ノ酸誘導体(ATZ−アミノ酸)を更に含水有機溶媒、
例えば、20%アセトニトリル−水にて加水分解するこ
とによってフェニルチオカルバミン酸(PTC)誘導体
に導く。一方、ATZ−アミノ酸をトリフルオロ酢酸
(TFA)水溶液により処理して変換反応を行い、最終
的でより安定なエドマン生成物であるフェニルチオヒダ
ントイン(PTH)−アミノ酸誘導体を生成させる。
【0017】フェニルチオヒダントイン(PTH)−ア
ミノ酸はキラルな固定相(光学活性固定相)上で分離、
分析することにより、D/L−アミノ酸を含有するペプ
チド類のN−末端アミノ酸を高感度に検出、定量するこ
とができる。
【0018】上記反応の結果生じたアミノ酸が一個欠け
たペプチド類のアミノ酸残基は、更に、PITCと反応
結合し、これは上記酸処理による開裂/環化の後に遊離
のATZ−アミノ酸を生成し、これを更に加水分解又は
酸処理することにより、より安定なPTC−アミノ酸又
はPTH−アミノ酸が生成される。本発明者が検討した
ところによれば、このようにして生成されたフェニルチ
オカルバミル−アミノ酸及びPTH−アミノ酸のD/L
−対掌体は、その立体配置を保持したままキラルな固定
相上で分離することができるので、当該PTC−アミノ
酸又はPTH−アミノ酸は、D/L−アミノ酸を含有す
るペプチド類のアミノ酸配列及び/又は立体配置の決定
に好適に使用することが可能である。
【0019】当該アミノ酸の配列分析を行う際の、良好
な開裂/環化の反応を期待するための好ましい条件は、
無水トリフルオロ酢酸などの強酸又は三フッ化ホウ素・
ジエチルエーテルなどのルイス酸などを用いること、具
体的には、例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)、BF
3 ・Et2 O/アセトニトリル/1,2−ジロロエタン
などを用いること、反応時間は、1分〜1時間、好まし
くは1〜20分であること、である。更に、良好な変換
反応を行う際の好ましい条件は、10〜80%TFA水
溶液を用いること、反応温度は10〜80℃、1〜90
分であること、である。尚、これらの条件は、反応目
的、反応に供せられる試料検体等によって好適な条件を
適宜変更し、設定し得るものであることは云うまでもな
い。
【0020】上記反応サイクルにより、得られたPTC
−アミノ酸及びフェニルチオヒダントイン(PTH)−
アミノ酸は、キラル(chiral)な固定相、例え
ば、デキストリンカラム、フェニルカルバミル化シクロ
デキストリンカラム、アセチルセルロースカラム、パー
クル型カラム、蛋白結合型カラム等のキラルカラムを利
用して、その立体配置を保持したまま分離することが可
能であり、また、上記ペプチド類の残りのシークエンス
と立体配置も、それぞれ相当するPTC−アミノ酸なら
びにPTH−アミノ酸のキラルカラム上での分離によっ
て決定することができる。
【0021】このように、上記の反応サイクル及び分離
方法を繰り返すことにより、D/L−アミノ酸を含有す
るペプチド類のアミノ酸配列及び/又は立体配置をその
N−末端アミノ酸残基から連続的に分析することが可能
である。また、上記D/L−アミノ酸を含有するペプチ
ド類のアミノ酸配列及び/又は立体配置の分析方法で使
用する分析装置としては、フェニルイソチオシアナート
(PITC)によるD/L−アミノ酸を含有するペプチ
ド類のN−末端アミノ酸の誘導体化反応、次いで、酸処
理して2−アニリノ−5−チアゾリノン誘導体とする開
裂/環化反応、更に酸処理又は加水分解してフェニルチ
オヒダントイン(PTH)誘導体又はフェニルチオカル
バミン酸(PTC)誘導体とする変換反応、の連続反応
槽とキラルな固定相とを組み合わせてなる分析装置が好
適なものとして挙げられる。ここで、上記連続反応槽
は、上記各反応を実施し得るものであれば如何なるもの
であってもよく、また、キラルな固定相は、前記したも
のを適宜選択して使用すればよい。更に、キラルな固定
相は、連続的又は非連続的な形態を含め、上記連続反応
槽に適宜連結して使用すればよく、その種類及び組み合
わせ方法は特に限定されるものではない。
【0022】本発明は多くの特徴を有するが、列記する
と次の如くである。 (1)本発明方法の一工程のPITCによる配列分析法
は、世界中で汎用されている方法であり、自動配列分析
法にも組み込まれている方法であることから、本発明
は、特に、自動解析装置に好適に利用可能である。 (2)PITC−アミノ酸誘導体を酸処理して開裂/環
化させて得られるATZ−アミノ酸を更に加水分解して
得られるフェニルチオカルバミル−アミノ酸又は酸処理
して得られる最終生成物のフェニルチオヒダントイン
(PTH)−アミノ酸はATZ誘導体よりも安定性が高
い。 (3)PTC−アミノ酸又はPTH−アミノ酸は、元の
アミノ酸の立体配置を保持したまま単離され、キラルな
固定相上でD/L−対掌体に分離することができる。 (4)D/L−アミノ酸を含有するペプチド類のアミノ
酸配列及び/又は立体配置を高収率、高効率に分析する
ことができる。
【0023】本発明方法によれば、最も一般的なエドマ
ン試薬であるフェニルイソチオシアナート(PITC)
の有用性が、D/L−アミノ酸を含有するペプチド類の
アミノ酸のシークエンス及び立体配置の分析について提
示される。すなわち、後述する実施例において具体的に
示したように、D/L−アミノ酸を含有するペプチド類
として、エンケファリンの一類縁体である〔D−Ala
2,D−Leu5 〕−エンケファリンのN−末端アミノ
酸(L−Tyr)のPITCによる誘導体化反応、及び
引続くトリフルオロ酢酸による50℃、5分間の処理に
よる開裂/環化の後に、遊離された2−アニリノ−5−
チアゾリノン−L−チロシン(ATZ−L−Tyr)を
更に20%トリフルオロ酢酸で50℃、10分間処理し
た。一方、上記ATZ−L−Tryを更に50%アセト
ニトリルー水にて処理し、室温放置した。次いで、生成
したフェニルチオヒダントイン(PTH)−L−チロシ
ンならびにPTC−L−チロシンをその立体配置を保持
したままキラルな固定相(フェニルカルバミル化シクロ
デキストリンのカラム)上で分離した。このペプチドの
残りのシークエンスと立体配置(D−Ala−Gly−
L−Phe−D−Leu)も、それぞれ相当するPTH
−D/L−アミノ酸ならびにPTC−D/L−アミノ酸
のキラルカラム上での分離によって決定された。この方
法は、上記エンケファリンの場合と同様にして、D/L
−アミノ酸を含有するペプチド類の立体配置を決定する
ための方法として、使用することが可能であり、特に、
自動エドマンシークエンス解析装置に利用可能である。
【0024】本発明方法で用いる上記PTH−アミノ酸
又はPTC−アミノ酸は、前述の特性から10-10 ない
し10-8MのD/L−アミノ酸を含有するペプチド、タ
ンパク質のアミノ酸配列及び/又は立体配置の分析に応
用できるばかりでなく、各種の試料検体中のペプチド、
タンパク質のアミノ酸配列及び/又は立体配置の高感度
の分析を基礎とした生体代謝産物の分析、臨床分析、そ
れらの自動化等、生化学、分子遺伝学、生理学及び基
礎、臨床にわたる医学的研究、ヒュ−マンゲノム解析な
ど非常に広範囲の応用が可能である。
【0025】
【実施例】次に、本発明について、実施例をあげて更に
具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何
ら限定されるものではない。
【0026】実施例 (1)フェニルイソチオシアナート(PITC)による
誘導体化反応 50pmolの〔D−Ala2 ,D−Leu5 〕−エン
ケファリン(Tyr−Ala−Gly−Phe−Le
u)(蛋白質研究所,大阪,日本)の10μLとPIT
C溶液(PITC/エタノール/ピリジン(1:4:
2,v/v))の35μLをよく攪拌し、10分間50
℃に加熱した。反応終了後、反応混合物を遠心エバポレ
ーター(SPE−200,島津製作所,京都,日本)で
5分間50℃で乾燥した。残渣に水(10μL)を加
え、n−ヘプタン/ジクロロメタン(9:1,v/v)
100μLずつで3回洗浄して過剰な試薬を除去した。
水層を遠心エバポレーターで15分間50℃で乾燥し
た。
【0027】(2)酸処理による開裂/環化 残渣にTFA又はBF3 溶液(BF3 ・Et2 O/アセ
トニトリル/1,2−ジクロロエタン(1:10:9
0,v/v)30μLを加え5分間50℃に加熱した。
次いで、窒素ガスの気流下で乾燥した。残渣を蒸留水
(20μL)及び抽出溶媒(n−ヘプタン/ジクロロメ
タン(7:3,v/v,100μL))と混合し、次い
で、5分間1000×gで遠心分離した。この抽出操作
を3回繰り返し、有機層をまとめて、窒素ガスの気流下
で乾燥した。
【0028】(3)フェニルチオヒダントイン(PT
H)又はフェニルチオカルバミン酸(PTC)誘導体の
調製 その残渣に20%(v/v)のTFA水溶液(20μ
L)又は20%(v/v)アセトニトリル水溶液(50
μl)を加え、前者の場合は、10分間50℃に加熱し
た。反応終了後、得られた溶液を窒素気流下で乾燥し、
次いで、HPLC分析用の展開液に溶解した。後者の場
合は、そのままHPLC分析に供した。残ったペプチド
を含有している水層は遠心エバポレーターで乾燥した
後、次の反応サイクルに用いた。使用したHPLC装置
は以下の通りであった;インテリジェントポンプ(日立
L−6200,日立製作所,東京,日本)、UV−VI
S検出器(日立 L−4200,日立製作所)及びイン
テグレイター(日立 D−2500,日立製作所)。流
速及びUV−検出は、それぞれ、0.7mL/min及
び269nmであった。
【0029】(4)PTH誘導体又はPTC誘導体の対
掌体の分離 D/L−Tyrあるいは、D/L−AlaのPTH誘導
体の対掌体の分離には、フェニルカルバミル化したβ−
シクロデキストリンのカラム(ES−1/2phCD,
150×6.0mm i.d.,5μm)を用いた。こ
のカラムはフェニルカルバミル基による修飾度が約50
%に限定されているβ−シクロデキストリン(信和化工
株式会社,京都,日本)からなっていた。展開は、10
mMの蟻酸を含むメタノール/水(1:3,v/v)で
行った。D/L−PheあるいはD/L−Leuの場合
は、別のフェニルカルバミル化β−シクロデキストリン
のカラム(Ultron ES−phCD,150×
6.0mm i.d.,5μm,信和化工株式会社)を
用い、10mMの蟻酸を含むメタノール/水/アセトニ
トリル(9:9:2,v/v)を展開溶媒として用い
て、分離を行った。PTC誘導体の対掌体の分離には、
パークル型カラム(スミキラルOA−2500S,15
0×6.0mmi.d.,5μm、住化分析センター株
式会社)2本を用いた。展開溶媒は1mMクエン酸を含
むメタノールを用いた。
【0030】(5)分析結果 図1は、上記HPLCによる500pmolの〔D−A
la2 ,D−Leu5〕−エンケファリンの配列分析の
結果を示しており、PTH−L−Tyr(サイクル
1),PTH−D−Ala(サイクル2),PTH−G
ly(サイクル3),PTH−L−Phe(サイクル
4)及びPTH−D−Leu(サイクル5)を生成し
た。各誘導体は、各PTH−アミノ酸の標準品との比較
によって同定した。各PTH−アミノ酸のラセミ化の割
合は、それぞれ、11%(L−Tyr)、11%(D−
Ala)、3%(L−Phe)及び11%(D−Le
u)であり、平均値9%であった。開裂/環化にBF3
を用いたときはサイクル1で6%、サイクル2で4%の
ラセミ化率であり、TFAを用いたときよりラセミ化率
は低かった。図2は、同様にして得たPTC−L−Ty
r(サイクル1)、PTC−D−Ala(サイクル2)
のクロマトグラムである。ラセミ化率はそれぞれ6%
(L−Tyr)、4%(D−Ala)であった。
【0031】PTH−TyrあるいはPTH−Alaの
D/L−対掌体の分離にはES−1/2phCDカラム
が適していた。ES−phCDカラムではこれらのアミ
ノ酸誘導体はより強く吸着され、分離は良くなかった。
しかしながら、PTH−PheあるいはPTH−Leu
の場合は、ES−1/2phCDカラム(低疎水性)で
はそれらのD/L−対掌体は分離されずES−phCD
カラム(高疎水性)では分離された。
【0032】上記の分析結果から明らかなように、本発
明によれば、PTH誘導体又はPTC誘導体のD/L−
対掌体をキラルな固定相上で元の立体配置を保持したま
ま効率良く分離、検出できることが判明した。尚、他の
D/L−アミノ酸を含有するペプチド類について同様に
試験したところ、ほぼ同様の結果が得られた。
【0033】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明は、フェニ
ルイソチオシアナート(PITC)をD/L−アミノ酸
を含有するペプチド類を含む試料検体に加えて反応さ
せ、次いで、酸処理して、遊離した2−アニリノ−5−
チアゾリノン誘導体を更に酸処理又は加水分解して、生
成したフェニルチオヒダントイン(PTH)誘導体又は
フェニルチオカルバミン酸(PTC)誘導体をその立体
配置を保持したままキラルな固定相上で分離することを
特徴とするD/L−アミノ酸を含有するペプチド類のア
ミノ酸配列及び/又は立体配置の分析方法に係るもので
あり、本発明によれば、D/L−アミノ酸を含有するペ
プチド類のアミノ酸配列及び/又は立体配置を効率良く
分析することができる。また、上記反応により生成した
フェニルチオヒダントイン誘導体又はフェニルチオカル
バミン酸誘導体は、ATZ誘導体よりも安定であり、そ
の立体配置を保持したままキラルな固定相上で分離する
ことができる。更に、ここで提案した方法は、D/L−
アミノ酸残基を含有するペプチド類の配列の決定のため
の自動シークエンス解析装置に利用して配列決定及び/
又は立体配置の解析ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】TFAを用いて〔D−Ala2 ,D−Le
5 〕−エンケファリン(Tyr−Ala−Gly−P
he−Leu)をPTH誘導体として配列分析を行った
結果を示す。
【図2】TFAを用いて〔D−Ala2 ,D−Le
5 〕−エンケファリン(Tyr−Ala−Gly−P
he−Leu)をPTC誘導体としてサイクル2までの
配列分析を行った結果を示す。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェニルイソチオシアナート(PIT
    C)をD/L−アミノ酸を含有するペプチド類を含む試
    料検体に加えて反応させ、次いで、酸処理して、遊離し
    た2−アニリノ−5−チアゾリノン誘導体を更に酸処理
    又は加水分解して、生成したフェニルチオヒダントイン
    (PTH)誘導体又はフェニルチオカルバミン酸(PT
    C)誘導体をその立体配置を保持したままキラルな固定
    相上で分離することを特徴とするD/L−アミノ酸を含
    有するペプチド類のアミノ酸配列及び/又は立体配置の
    分析方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の反応サイクル及び分離方
    法を繰り返すことにより、D/L−アミノ酸を含有する
    ペプチド類のアミノ酸配列及び/又は立体配置をそのN
    −末端アミノ酸残基から連続的に分析することを特徴と
    するD/L−アミノ酸を含有するペプチド類のアミノ酸
    配列及び/又は立体配置の分析方法。
  3. 【請求項3】 フェニルイソチオシアナート(PIT
    C)によるD/L−アミノ酸を含有するペプチド類のN
    −末端アミノ酸の誘導体化反応、次いで、酸処理して2
    −アニリノ−5−チアゾリノン誘導体とする開裂/環化
    反応、更に酸処理又は加水分解してフェニルチオヒダン
    トイン(PTH)誘導体又はフェニルチオカルバミン酸
    (PTC)誘導体とする変換反応、の連続反応槽とキラ
    ルな固定相とを組み合わせたことを特徴とする請求項1
    又は請求項2記載のD/L−アミノ酸を含有するペプチ
    ド類のアミノ酸配列及び/又は立体配置の分析方法に使
    用する分析装置。
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