JP2719693B2 - スクアレンとエタノールを同時に生産する発酵方法 - Google Patents

スクアレンとエタノールを同時に生産する発酵方法

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    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
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  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明はスクアレン及びエタノールの製造法に関し、
さらに詳細には微生物を用いたスクアレン及びエタノー
ルの同時製造法に関するものである。
スクアレンは化粧品のベースオイル等に使用されるス
クアランの原料である。スクアレンはC30H50であらわさ
れる不飽和の炭化水素で、このスクアレンを水素添加す
ることによりスクアランを得ることができる。またスク
アレンは健康食品としても利用されている。
(従来技術および解決すべき課題) スクアレンはアイザメ、タロウザメなどの深海鮫の肝
臓より製造されるサメ肝油より抽出精製しているが鮫は
自然界より捕獲されるので、その漁獲高は極めて不安定
であり、したがって、スクアレンの供給不安および価格
の大幅な変動が避けられなかった。また、日本近海で捕
獲される鮫では、海洋汚染の影響により精製不能の化学
物質が鮫肝油中に含まれているため、使用できないとい
われている。
そこで、天然物を原料としないスクアレンの製造法が
望まれ、微生物によるスクアレンの生産方法が考案され
ている。その一つはモルテイエレラ属の糸状菌による方
法(特公昭59-20356)であるが、糸状菌の培養の点で生
産性が低いという欠点があった。他の方法として、細菌
による方法(特開昭61-212290)が提案されているが、
これも細菌の菌体あたりの含有量が最高1.48mg/g菌体と
低く実用化されていない。また、いずれも好気発酵であ
る。
一方、発酵法によるエタノールの生産は世界的に広く
行なわれているが、この方法での課題はコストの低減で
あり種々の考案が行なわれている。たとえば、特開昭62
-65679号のような、新規なサッカロマイセス・セレビシ
エ酵母を用いるとエタノール生産性が高く、凝集性もあ
るので工業的に有利であるとしている。又特開昭62-126
986号においては、装置の工夫を行なうことで効率的な
エタノールの発酵生産が達成されたと記載されている。
これに対して本発明のように、スクアレンを嫌気条件
下で生産すること、そしてまた微生物を用いてスクアレ
ンとエタノールを同時に生産せしめることは、いずれも
従来全く知られておらず新規である。
(課題を解決するための手段) 本発明は、このような技術の現状に鑑みてスクアレン
の工業的製法を確立する目的でなされたものである。
上記目的達成のために種々検討した結果、微生物の代
謝経路からスクアレン生産をエタノール生産途上で行な
わせることが可能である知見を得、工業的にスクアレン
を大量生産するには微生物を利用する方法が有利である
と判断するに至り、鮫のような不安定な天然物を原料と
しないスクアレンの生産が行なわれかつエタノールと共
に有用で高価なスクアレンを併産する事により、コスト
的な課題も解決することとした。
このような課題の解決を目的として、本発明者らが種
々検討したところ、スクアレンは、カビ、酵母等の真核
生物の中間代謝物として広く生物体内に存在し、各種微
生物中、特に酵母サッカロミセス・セレビシエがスクア
レンの生産能力が強く、スクアレン生産に好適であるこ
とを見い出した。
そして更に検討の結果、微生物菌体内でのスクアレン
の代謝に注目した。すなわち、スクアレンはカビ、酵母
のような真核生物の菌体中ではアセチル−CoAを基点と
してメバロン酸を経由してスクアレンに変換された最終
的にはエルゴステロールに至る代謝経路の中間生成物で
ある。この代謝経路においてスクアレンは酵素スクアレ
ンエポキシダーゼによりスクアレンエポキサイドに変換
される点に、本発明者らは新たに着目した。
この点に着目して、本発明者らは、微生物の環境を酸
素の少ない嫌気的な雰囲気とすることで、酵素スクアレ
ンエポキシダーゼの生産が抑えられて結果的にスクアレ
ンの菌体内蓄積がおこり、かつ、エタノールの菌体外蓄
積も行なわれるため、エタノールとスクアレンの併産が
可能となるのではないか、との観点にたって検討した結
果、エタノール生産菌であるサッカロミセス・セレビシ
エの嫌気培養によってエタノールとスクアレンを同時に
生産せしめることに成功し、上記推定が現実に可能であ
ることをはじめて確認した。
本発明は、この新規にして有用な知見を基礎としてな
されたものであって、微生物を嫌気条件に保持すること
によってスクアレンを生産せしめることを基本的技術思
想とするものであり、例えば嫌気条件下でエタノール生
産能も併有する微生物によれば、スクアレンと共にエタ
ノールも同時に生産せしめることができるのである。
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明は、前記したスクアレンの代謝系を利用するも
のであり、したがってそのような代謝経路を有する微生
物であればすべて利用することができる。そしてその
際、エタノール生産能を併有する微生物であれば、これ
を嫌気条件下に保持することにより、上記したようにス
クアレンを生産すると同時にエタノールも生産すること
ができる。
このような微生物の例としては、サッカロミセス・セ
レビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が挙げられ、こ
れを嫌気培養することによってスクアレンが菌体内に蓄
積されるとともにエタノールが菌体外に分泌蓄積され
る。そして工業的に実施するには、より生産能の高い菌
株を選択してこれを使用するのが好適である。
本発明を実施するには、このような微生物を資化しう
る炭素源及び窒素源を含む栄養培地中に接種し、嫌気条
件下で培養する。
炭素源としては、グルコース、シュークロース、澱
粉、廃糖蜜、フラクトース、グリセリンその他の炭水化
物を使用するのが好ましい。
窒素源としては、オートミール、イーストエキストラ
クト、ペプトン、グルテンミール、綿実粉、大豆ミー
ル、コーンスティープリカー、乾燥イースト、小麦胚
芽、落花生粉、チキン骨肉ミール等のほか、アンモニウ
ム塩(例えば、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、
リン酸アンモニウム等)、尿素、アミノ酸等の無機及び
有機の窒素化合物も有利に使用することができる。
これらの炭素源及び窒素源は、併用するのが有利であ
るが、純粋なものを必ずしも使用する必要はない。純粋
でないものには、生長因子や微量要素が含まれているか
らである。
必要ある場合には、ビタミン類のほか、例えば次のよ
うな無機塩類を培地に添加してもよい:炭酸ナトリウ
ム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウ
ム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、
ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、マグネシウム塩、
銅塩、コバルト塩等。
これら必要な各成分を必要量用いて培地を調製し、そ
してその際、エタノール発酵用培地組成も充分に利用す
ることができ、これを発酵槽に入れて微生物を植菌した
後、窒素ガスその他の不活性ガス雰囲気下、空気遮断条
件下等嫌気条件下、10〜100rpm程度の撹拌を行い又は撹
拌することなく、微生物の生育温度(微生物によっても
異なるが、20〜45℃程度)で、必要時間(酵母の場合、
例えば10〜200時間)培養する。
上記のようにして培養を行っても所期の目的は達成さ
れるが、ビタミン類、特にサイアミンを添加し及び/又
は糖濃度を維持をしながら培養を行うと、エタノール、
スクアレンの収率、特にスクアレンの収率が増加する。
糖濃度は使用菌によっても相違するが、S.セレビシエの
場合は0.3g/l以上、好ましくは0.5g/l以上、更に好まし
くは1g/l以上に維持するのかよい。
糖濃度の維持は常法にしたがって適宜行えばよいが、
例えば、pHスタット法に基づいて窒素源及び炭素源を同
時に供給する流加培養法は好適な方法のひとつである。
具体的には、pHの調整と窒素源とを兼ねて水酸化アンモ
ニウムやアンモニウム水等を添加し、それと同時に炭素
源も添加して培養を行い、その結果、培地中の糖濃度が
一定に保持されて、エタノールとスクアレン、特に従来
困難であったスクアレンの効率的生産が可能となるので
ある。
培養終了後、培養物(微生物菌体、菌体を含有する培
養液、菌体を除去した培養液、菌体のほか培地等も除去
した培養濾液等)から、目的物質を分離、回収する。目
的物質の分離、回収は、常法にしたがって行えばよい。
使用する微生物によって相違するが、S.セレビシエを
使用する場合は、通常、エタノールは菌体外に分泌生産
され、スクアレンは菌体内に蓄積される。したがって、
培養終了後、培養液により菌体を分離し、培養液は蒸留
によりエタノールを回収し、菌体からは溶剤によりスク
アレンを抽出すればよい。この抽出溶剤として、菌体を
乾燥させた場合はN−ヘキサン、石油エーテルのような
極性の低い溶剤を用い、菌体が水を多量に含むが、又は
同伴する場合には塩化メチレン・メタノールやエタノー
ル・N−ヘキサンのような混合溶媒を使用すると効率が
良い。この溶媒に溶解したスクアレンを単独でとりだす
には蒸留して溶媒を除去し、得られた粗スクアレンを減
圧蒸留すれば高純度のスクアレンを得ることができる。
必要ある場合は抽出に先立ち、菌体を酵素や超音波等で
破壊してもよい。
スクアレンの同定は質量分析、核磁気共鳴スペクトル
により、スクアレンの定量はガスクロマトグラフィで行
なうことができる。
(実施例) 以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれ
に限定されるものではない。
実施例1 培養器として5l容量の小型発酵槽及び以下に示す組成
の培地を使用して、エタノール生産性酵母2菌株を培養
し、スクアレン及びエタノールを生産せしめた。培地組成 グルコース 100g/l (NH4)2SO4 5g/l KH2PO4 7g/l MgSO4・7H2O 1g/l CaCl2・2H2O 0.17g/l イーストエキストラクト 0.5g/l イノシトール 0.1g/l ビタミン混合液(*) 1ml/l (*)ビタミン混合液 (mg/100ml) ビオチン 0.35 パントテン酸カルシウム 50 ピリドキサール塩酸 25 サイアミン塩酸 100 ニコチン酸アミド 100 すなわち、ジャーファーメンターに上記組成の培地を
4lずつ入れ、これにエタノール生産性酵母であるSaccha
romyces cerevisiae ATCC 26603及びSaccharomyces cer
evisiae IFO 216をそれぞれ植菌し、温度30℃、無通
気、100rpmで攪拌しながら84時間培養して第1表の結果
を得た。
上記結果からも明らかなように、同じエタノール生産
性酵母であってもスクアレン生産能には差があることが
確認され、特にすぐれたスクアレン生産菌としてサッカ
ロミセス・セレビシエIFO 216株を選択した。
実施例2 (1)培養器として2.3l容量の小型発酵槽及び以下に示
す組成の培地を使用して、エタノール生産性酵母を嫌気
条件の下で培養し、スクアレン及びエタノールを生産せ
しめた。培地組成 グルコース 30g/l (NH4)2SO4 5g/l KH2PO4 7g/l MgSO4・7H2O 1g/l CaCl2・2H2O 0.17g/l イーストエキストラクト 0.5g/l イノシトール 0.1g/l ビタミン混合液(*) 1ml/l (*)ビタミン混合液 (mg/100ml) ビオチン 0.35 パントテン酸カルシウム 50 ピリドキサール塩酸 25 サイアミン塩酸 100 ニコチン酸アミド 100 すなわち、2.3l容ジャーファーメンターに上記組成の
培地を2l入れ、これにエタノール生産性酵母であるSacc
haromyces cerevisiae IFO216を植菌し、pH5.0、温度30
℃、無通気、100rpmで攪拌しながら78時間培養し、菌体
濃度、糖濃度、スクアレン含量、アルコール濃度の時間
的変化をそれぞれ測定して、第1図及び第2表の結果を
得た。
第1図及び第2表の結果から明らかなように、培養開
始48時間後にエタノール濃度及びスクアレン濃度(最大
値12mg/g-cellを示す)が増大し、糖濃度は1g/lを示し
ている。さらに48時間以後にはエタノール濃度の変化は
ほとんどないが、糖濃度が1g/lを低下するとスクアレン
濃度の減少傾向が顕著になっており、糖濃度が維持され
ないとスクアレンの生産性能が低下することは明らかで
ある。これらの結果からして、スクアレンの工業的生産
という面からみると、糖濃度は0.3g/l以上、好ましくは
0.5g/l以上、特に好ましくは1g/l以上に維持するのがよ
いことが判る。
(2)前項の条件で、但し培養ははじめに嫌気条件でな
く好気条件のもとで、S.cerevisiae IFO 0216をセミ−
バッチ方式により培養した。次いで36時間後に嫌気条件
に切りかえて嫌気培養を行い、84時間培養を継続した。
そしてこの間の菌体濃度、糖濃度及びスクアレン含有の
時間的変化をそれぞれ測定して、第2図の結果を得た。
第2図の結果から明らかなように、好気条件下におけ
る増殖速度はμmax=0.15と先の嫌気条件下での値と同
一であった。このことから、本菌の電子伝達系の活性は
弱く、好気条件で菌体増殖速度の改善を図ることは困難
であることが判明した。
培養開始36時間の時点で、新たに培地を添加して通気
を停止後、約20分程度で溶存酸素濃度はほとんどゼロと
なった。菌の増殖が再び開始され、12時間で添加された
全ての糖が消費されて最終菌体濃度は2.7g/lとなった。
嫌気条件に移行した後、スクワレンの蓄積が盛んに行わ
れ、定常期初期に17mg/g-cellに達したが、その後急激
に減少した。
以上の結果から、スクワレンの菌体内の蓄積は、対数
増殖後期および定常期初期に盛んに行われ、培養液中の
糖が枯渇すると急激に減少することが分かった。つま
り、スクワレンの効率的生産には、嫌気条件及び糖が必
要であることが改めて確認されたのである。
実施例3 培養器として2.0l容量の小型発酵槽を用いて、エタノ
ール生産性酵母S.cerevisiae IFO 216を嫌気的条件の
下、糖濃度を1g/l以下にしないようにコントロールしな
がら流加培養を行った。
培地としては、実施例2で用いたのと同一組成のもの
を使用したが、更に糖濃度を維持するための補充用培地
として、以下の組成とアンモニア水(25.6g/l)とを培
地のpHが5.0となるように各別に及び/又は同時に混合
した混合培地を使用した。補充用培地組成 グルコース 210g/l KH2PO4 7g/l MgSO4・7H2O 1g/l CaCl2・2H2O 0.17g/l イーストエキストラクト 0.5g/l イノシトール 0.1g/l ビタミン混合液(*) 1ml/l (*)ビタミン混合液 (mg/100ml) ビオチン 0.35 パントテン酸カルシウム 50 ピリドキサール塩酸 25 サイアミン塩酸 100 ニコチン酸アミド 100 すなわち、2.0l容量のの小型発酵槽に実施例2で用い
た培地を1.0l入れ、エタノール生産性酵母S.cerevisiae
IFO216を発酵槽に植菌し、温度25℃、窒素ガス0.5l/mi
n通気、300rpmで攪拌し、糖濃度の変化は培地のpH変化
をモニターして、pH4.8を維持するように、アンモニア
混合培地を適宜送入して培養した。
培地量が54時間後に1.4lに達したため、0.7lを抜き出
しさらに培養を続け、99時間後培養を終了し、途中抜き
出した0.7lを含めた培地中の菌体量は9.0g、エタノール
量は89g、そしてスクアレンの量は115mgであった。
その培養経過は第3表に示すとおりであった。
(発明の効果) 本発明によれば、深海鮫等天然物からの抽出によるこ
となく、培養条件を新たにコントロールするシステムを
採用し、微生物を用いる発酵法によってスクアレンを大
量に工業生産することができる。
また本発明によれば、エタノール発酵性微生物を使用
することにより、スクアレンのほかにエタノールも同時
に且つ大量に工業生産することも可能である。
【図面の簡単な説明】
第1図は、S.cerevisiae IFO 216の嫌気条件下での培養
経過を示した図面であり、第2図は、同菌の好気条件下
次いで嫌気条件下での培養経過を示した図面である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:865)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】スクアレン生産菌を嫌気条件下で培養する
    ことを特徴とするスクアレンの製造方法。
  2. 【請求項2】サッカロミセス属に属するスクアレン生産
    菌を嫌気条件下で培養し培養物からスクアレンを採取す
    ることを特徴とするスクアレンの製造方法。
  3. 【請求項3】スクアレン及びエタノール生産菌を嫌気条
    件下で培養することを特徴とするスクアレン及び/又は
    エタノールの製造方法。
  4. 【請求項4】サッカロミセス属に属するスクアレン及び
    エタノール生産菌を嫌気条件下で培養し培養物からスク
    アレン及び/又はエタノールを採取することを特徴とす
    るスクアレン及び/又はエタノールの製造方法。
  5. 【請求項5】培地の糖濃度を0.5g/l以上に維持すること
    を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方
    法。
  6. 【請求項6】培地の糖濃度を1g/l以上に維持することを
    特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 【請求項7】培地にサイアミンを添加することを特徴と
    する請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
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