JP2710429B2 - 高解離圧化合物半導体処理装置 - Google Patents

高解離圧化合物半導体処理装置

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Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明はGaAs等の高解離化合物単結晶を気密容器内で
処理する装置に係わり、特に前記気密容器を上下に分割
し、その接合面にシール材を介装した形式のものにおい
て、容器上部と容器下部の接合圧をの不均衡を防止し、
気密性を高めるための改良に関する。
「従来の技術」 例えば、GaAs等の高解離圧化合物半導体単結晶をチョ
クラルスキー法(CZ法)により製造する場合には、ルツ
ボを不活性ガスで満たした容器内に配置すると共に、ル
ツボ内の原料融液にB2O3等の液体封止材を浮かべ、原料
融液からの揮発成分(例えばひ素)の飛散を防ぎながら
単結晶を引き上げる、いわゆるLEC法が多用されてい
る。
ところが、このLEC法では、原料をチャージして成長
を開始した後は融液組成の制御ができないうえ、液体封
止剤から引き上げた結晶表面からの高解離圧成分の飛散
を押えるために結晶は極力早く冷却する必要があり、固
液界面上の温度勾配を小さくできず、熱歪や非ストイキ
オメトリに由来する転位が高密度に発生し、単結晶の高
品質化を阻害する欠点を有していた。
そこで最近、液体封止剤(B2O3)で原液融液を覆う代
わりに、気密容器内に高解離圧化合物中の揮発元素(こ
の場合As)の蒸気を満たし、その蒸気圧を制御すること
により上記問題の解決を図った方法が提案されている。
そのための装置の一例を第3図に示す。この装置は特
開昭60−51698号公報に記載されたもので、図中符号1
および2は気密容器3を構成する容器上部および容器下
部であり、これらの接合部にはシール材4が挿入される
とともに、容器下部2の押し上げ下軸5に設けられたス
プリング等の応力印加機構6により適正応力で互いに接
合されている。シール材4としてはB2O3やGaのような液
体シール材か、可撓性黒鉛のような固体シール材が用い
られる。
気密容器3の内部には、サセプタ8に支持されたルツ
ボ7が配置され、下軸8Aによって回転されるとともにヒ
ータ9で気密容器3ごと加熱される。また容器上部1に
は蒸気圧制御部10が設けられ、この部分の温度を容器壁
で最も低いかつ適切な一定温度に制御し、ここに凝縮す
る高解離圧成分固定の蒸気圧と平衡させることで原料融
液Yの組成を制御する。引き上げ軸11の下端には種結晶
を固定してあり、これを原料融液Yに浸漬した後、回転
しながら引き上げて単結晶Tを成長させる。なお12は観
察窓、13はB2O3など液体シール材を満たした回転シール
である。
この装置においては、気密容器3の接合部の構造が重
要であり、気密容器3の繰り返し使用が可能であるこ
と、工業用装置として十分操作性に優れること、汚染の
原因にならないことが要求される。
これらの諸条件を満足するシール構造の例としては、
実開平1−142462号公報に記載されたものがある。この
構造では、第4図に示すように気密容器3の接合面に全
周に亙って延びる突条20を形成し、この突条20で固体シ
ール材21を圧迫するとともに、この突条20から気密容器
3の内部に至る間隙22を極力狭くして、シール材20から
の不純物元素の拡散防止部を形成することにより、気密
性を高め、かつ不純物の混入を防止する効果を得てい
る。
「発明が解決しようとする課題」 ところで、上述したように、第4図の構造でシール材
21からの不純物混入を防止するには間隙22を極力狭くす
る必要があるが、実際には加工精度の限界からそれを満
たす精度で気密容器3を成形することは困難で、容器上
部1と容器下部2の接合面の平行度が悪い場合には間隙
幅が相対的に大きい箇所が生じ、不純物の拡散防止効果
が大幅に低下する。
そこで従来の装置では、容器下部2と押し上げ下軸5
の間に複数の調整ネジを設け、これらを操作することに
より容器下部2の垂直度を施行錯誤的に微調整する構造
が採られている。しかし、この作業は微妙な調整の違い
で不純物元素の混入の度合を大きく左右し熟練を要する
うえ、気密容器3を開く毎に行なわねばならないため、
作業効率を低下させるだけでなく、単結晶製造工程の信
頼性を低下させ、製品歩留まりを悪化させる原因にもな
っており、改善が求められていた。
なお、この問題は半導体単結晶の製造に限らず、同種
の気密容器を使用する高解離圧化合物半導体処理工程全
般にいえることである。
「課題を解決するための手段」 本発明は上記課題を解決するためになされたもので、
外部容器の内部に、互いの接合面にシール材が介装され
た分離可能な容器上部および容器下部からなる気密容器
を配置し、容器上部を外部容器で支持するとともに、容
器下部を容器上部に圧接させる応力印加機構を設け、前
記気密容器の内部で高解離圧化合物半導体の処理を行な
う高解離圧化合物半導体処理装置において、前記外部容
器と容器上部の間に、容器上部を弾性的に上下変位およ
び垂直度変位可能に支持する応力緩衝機構を設けたこと
を特徴とする。
なお、応力緩衝機構は、外部容器に固定され可動端が
容器上部に互いに間隔を空けて固定された3以上の付勢
機構で構成されていてもよい。また、これら付勢機構に
は、それぞれ付勢力調整機構が設けられていることが望
ましい。
「作 用」 この高解離圧化合物半導体処理装置では、気密容器を
閉じて応力印加機構により容器下部を容器上部に押し付
けると、これらの接合面の平行度等の誤差に応じて、応
力緩衝機構により支持された容器上部が僅かに上下変位
および垂直度変位し、接合面全周に亙って接合応力が均
等化される。
これにより、接合部の全周に亙って間隙幅が最小に保
たれ、接合部の気密性を高めるとともにシール材からの
不純物混入を低減できる。また、上記作用により容器下
部の位置許容誤差が増す分、気密容器の封止に伴う容器
下部の位置調整作業が簡略化でき、作業効率を大幅に高
められる。
一方、前記応力緩衝機構が、外部容器に固定され可動
端が容器上部に互いに間隔を空けて固定された3以上の
付勢機構で構成された場合には、これら付勢機構がそれ
ぞれの固定箇所にかかる圧力に応じて適宜伸縮し、容器
上部を上下変位および垂直度変位させて前記緩衝作用が
得られる。
また、これら付勢機構に、それぞれ付勢力調整機構を
設けた場合には、容器接合面の平行度の誤差に応じて各
付勢機構の付勢力を調整することにより、接合面にかか
る圧力を一層均等化できる。
「実施例」 第1図および第2図は、本発明に係わる高解離圧化合
物半導体処理装置の一実施例として単結晶引上装置を示
す要部の縦断面図および横断面図であり、先の第3図お
よび第4図と共通の部分には同一符号を付して説明を省
略する。
容器上部1の上面外周部には、周方向に120゜を空け
て3本の支持軸30が垂直に固定されている。これら支持
軸30は気密容器3を包む外部容器31の天板部31Aに達す
る長さを有し、その上端部は天板部31Aの裏面に固定さ
れた支持板32の貫通孔33に摺動可能に通され、さらに上
端にはこの貫通孔33より大径のストッパ部34が形成され
ている。
また、外部容器31の天板部31Aには、各ストッパ部34
が挿入される貫通孔35がそれぞれ形成されており、天板
部31Aの上面には、各貫通孔35に対応して付勢機構36が
設けられ、これら3つの付勢機構36が本発明の要部であ
る応力緩衝機構を形成している。
付勢機構36の詳細を説明すると、外部容器31の天板部
31Aには各貫通孔35と同軸に円筒形のシリンダ37が垂直
に固定されている。これらシリンダ37は内径が支持軸30
のストッパ部34より小さく、上半部の外周面には雄ネジ
38が形成されている。
シリンダ37の内部には円柱状のピストン39が上下摺動
可能に収められ、このピストン39の下端部が前記支持軸
30のストッパ部34の上端面に当接するとともに、ピスト
ン39の外周面中央にはOリング40がはめ込まれて、シリ
ンダ37との間の気密性を高めている。
また、各ピストン39の上端には細いロッド部41が同軸
に形成され、これにコイルスプリング42が通されたう
え、ロッド部41にはシンダ37の雄ネジ部38に螺合された
袋ナット43の中央孔44に挿通され、さらにロッド部41の
上端にはストッパ部45が形成されている。
前記コイルスプリング42のばね係数は、容器下部2を
上方に付勢する応力印加機構の付勢力に応じて決定され
ており、応力印加機構により容器下部3に適正圧力をか
けた際に、これらスプリング42が若干縮む程度に設定さ
れている。
また、単結晶の成長部を観察するための観察窓12は、
外部容器31の天板部31Aおよび容器上部1の天板部を貫
通して気密容器3内に延設されているが、この観察窓12
は容器上部1と外部容器31との間で分割され、この分割
部分には僅かな空隙が形成されている。これにより、観
察窓12の各貫通部分の気密性を維持しつつ、容器上部1
の僅かな傾斜や昇降によって観察窓12が破壊されるのを
防いでいる。
次に、この装置の使用方法を説明する。気密容器3を
封止するには、まず応力印加機構により容器下部2を上
昇させ、接合部に介装したシール材21を容器上部1の突
条20に当接させ、さらに押圧力を強める。接合部にかか
る圧力が一定値を越えると、各ピストン39が支持軸30に
押され、スプリング42の付勢力に抗してそれぞれ若干持
ち上げられる。
次に、容器下部2を一旦降下させ、気密容器3を開い
てシール材21についた突条20を押し跡を観察し、接合圧
力の円周方向の分布を確認する。この押し跡の深さが接
合部の全周に亙って均一でない場合には、3つの袋ナッ
ト43をそれぞれ回転させ、スプリング42による付勢力を
加減して応力分布が均一になるように調整する。
この操作を行なった後は、気密容器3を閉じて応力印
加機構により容器下部2を容器上部1に押し付けると、
容器下部2と容器上部1の接合面の平行度の誤差に応じ
て、容器上部1が僅かに上下変位および垂直度変位し、
接合面全周に亙って接合圧力が均等化される。したがっ
て、接合面の平行度が悪い場合にも、間隙22の間隙幅を
全周に亙って最小に保つことができ、気密容器3の密封
性を高めてシール材21からの不純物混入を低減し、処理
の信頼性を向上して製品歩留まりを高めることが可能で
ある。
また、各付勢機構36の作用によって気密容器3の接合
部の非平行度に対する許容範囲が拡大するため、容器上
部1と容器下部2の成形誤差に対する許容範囲が増すと
ともに、気密容器3の封止に伴う容器下部2の位置調整
作業が簡略化または省略でき、作業効率が大幅に高めら
れる。
また、この例では、袋ナット43により各スプリング42
の付勢力をそれぞれ調節できる構成なので、容器3の接
合部にかかる圧力を一層均等化できるうえ、各袋ナット
43を一旦調節した後は、同じ気密容器3を使用している
限り、操業の度毎に押付圧の調整を行なう必要がないと
いう利点も有する。
なお、袋ナット43の調節により容器上部1の垂直度に
誤差が生じた場合にも、その量は極く僅かなものである
から、引上軸11の回転シール13内における傾斜は回転シ
ール13のクリアランスの許容範囲内に納まり、支障は全
く生じない。
また、上記実施例では3つの付勢機構により応力緩衝
機構を構成したが、4つ以上の付勢機構を設けた構成に
変更してもよいし、他の形式の応力緩衝機構を設けても
よい。
さらに、本発明は単結晶引上装置のみならず、高解離
圧化合物半導体を気密容器内で処理する装置であれば、
いずれの用途にも適用可能である。
「実験例」 第1図の装置を実際に組み立て、GaAs単結晶の引き上
げを行なった。容器下部2はPBNをコートしたグラファ
イト、容器上部1はモリブデンで成形した。気密容器3
の接合部は第4図の構造を採用し、シール材21としては
厚さ0.4mmの固体ガスケットを用いた。
応力緩衝機構のコイルスプリング42としては、ばね定
数が150Kg/cmのものを使用した。そして前述した方法に
より各袋ナット43を調整したところ、固体ガスケット21
にかかる押圧力の分布を均等化でき、一旦調整した後
は、再調整を行なわずに気密容器3の再封止が行なえ
た。
次いで、ルツボに2kgのGaを入れ、気密容器3の底に
2.3kgのひ素を置いた後、外部容器31内全体を排気し、
容器下部2を押し上げて接合した。さらに、外部容器31
の内部に不活性ガスを導入し、ヒータおよびAsの圧制御
部のヒータに通電して気密容器3の温度を上げ、気密容
器3内に約1気圧のひ素蒸気を満たした。そしてさらに
ヒータ11の温度を上げ、ルツボ内でGaAs原料を合成し
た。
次に、引上軸11の下端に固定した種結晶を原料融液に
浸け、回転しながら引き上げ、直径80mmφ×長さ100mm
のGaAs単結晶を育成した。
この結晶についてホール測定を行ない、抵抗率および
電子移動度を測定した。その結果、シード端部では1.3
×107Ωcmおよび6800cm2/Vs、テイル部では1.1×107Ωc
mおよび6500cm2/Vsであった。また、不純物濃度の測定
をSIMS分析法を用いて行ない、Si:4×1014cm-3、S:3×1
014cm-3という値を得た。さらに、FTIR分析により、C:8
×1014cm-3の値を得た。これらの特性は得られた結晶の
純度が十分高いことを示す。
また、成長操作の間の気密容器3からのひ素損失量は
約50gであったが、この値は従来の装置に比して十分小
さく、接合部の気密性が優れていることを示している。
「発明の効果」 本発明に係わる高解離圧化合物半導体処理装置によれ
ば、気密容器を閉じて応力印加機構により容器下部を容
器上部に押し付けると、容器下部と容器上部の接合面の
平行度等の誤差に応じて、応力緩衝機構により支持され
た容器上部が僅かに上下変位および垂直度変位し、接合
面全周に亙って接合圧力が均等化される。
これにより、接合部の全周に亙って間隙幅が最小に保
たれ、気密容器の密封性を高めてシール材からの不純物
混入を低減し、処理の信頼性を向上して製品歩留まりを
高めることが可能である。また、上記作用により容器下
部の位置許容誤差が増す分、気密容器の封止に伴う容器
下部の位置調整作業が簡略化でき、作業効率を大幅に高
められる。
一方、前記応力緩衝機構が、外部容器に固定され可動
端が容器上部に互いに間隔を空けて固定された3以上の
付勢機構で構成された場合には、これら付勢機構がそれ
ぞれ固定箇所にかかる圧力に応じて適宜伸縮し、容器上
部を上下変位および垂直度変位させて上記緩衝作用が得
られる。
また、これら付勢機構に、それぞれ付勢力調整機構を
設けた場合には、容器上部および容器下部の接合面の平
行度の誤差に応じて各付勢機構の付勢力を調整できるの
で、接合面にかかる圧力を一層均等化できるうえ、一度
調節した後は気密容器を開閉するたびに調節を行なわな
くてよいという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
第1図および第2図は本発明に係わる高解離圧化合物半
導体引上装置(処理装置)の一実施例を示す要部の縦断
面図およびII−II線視断面図、第3図は従来の高解離圧
化合物半導体引上装置の一例を示す縦断面図、第4図は
容器接合部の構造の一例を示す縦断面図である。 1……容器上部、2……容器下部、3……気密容器、11
……引上軸、12……観察窓、20……突条、21……シール
材、22……接合部の間隙、30……支持軸、31……外部容
器、32……支持板、36……付勢機構、37……シリンダ、
38……雄ネジ部、39……ピストン(可動端)、42……コ
イルスプリング、43……袋ナット(付勢力調整機構)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 熱海 貴 埼玉県大宮市北袋町1丁目297番地 三 菱金属株式会社化合物半導体センター内 (72)発明者 梶原 治郎 埼玉県大宮市北袋町1丁目297番地 三 菱金属株式会社生野工場大宮事務所内

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】外部容器の内部に、互いの接合面にシール
    材が介装された分離可能な容器上部および容器下部から
    なる気密容器を配置し、容器上部を外部容器で支持する
    とともに、容器下部を容器上部に圧接させる応力印加機
    構を設け、前記気密容器の内部で高解離圧化合物半導体
    の処理を行なう高解離圧化合物半導体処理装置におい
    て、 前記外部容器と容器上部の間に、容器上部を弾性的に上
    下変位および垂直度変位可能に支持する応力緩衝機構を
    設けたことを特徴とする高解離圧化合物半導体処理装
    置。
  2. 【請求項2】前記応力緩衝機構は、外部容器に固定され
    可動端が容器上部に互いに間隔を空けて固定された3以
    上の付勢機構で構成されていることを特徴とする請求項
    1記載の高解離圧化合物半導体処理装置。
  3. 【請求項3】前記付勢機構には、それぞれ付勢力調整機
    構が設けられていることを特徴とする請求項2記載の高
    解離圧化合物半導体処理装置。
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