JP2708216B2 - 破損核燃料要素の燃焼度推定方法 - Google Patents

破損核燃料要素の燃焼度推定方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の目的] (産業上の利用分野) 本発明は原子炉内における破損核燃料要素の燃焼度推
定方法に関する。
(従来の技術) 原子炉内に多数本の核燃料集合体が配列された炉心に
おいて核燃料要素が破損した場合、その破損した核燃料
要素の属する核燃料集合体が炉心内のどの位置に配置さ
れているものであるかを早期に特定し、その核燃料集合
体の交換を早期に行うことは核分裂生成物による冷却材
および各機器の汚染を防止する上で重要なことである。
また交換作業に伴う作業員の放射線被曝の低減、さらに
破損の伝播を防止する上でも極めて重要なことである。
従来、破損した核燃料要素の位置決めを行う手段とし
てはまず原子炉運転中または原子炉停止後に各々の核燃
料集合体毎に近傍の冷却材をサンプリングし、そのサン
プリングした冷却材中の核分裂生成物の量を計測する方
法が知られている。また、それ以外の方法としては燃料
集合体を一体毎に炉心から取り出し、破損の有無を判定
する方法が知られている。
(発明が解決しようとする課題) しかしながら、かかる方法では炉心内に数百本も装荷
されている燃料集合体を一体毎検査することになり、そ
の中から破損した核燃料要素を有する燃料集合体を特定
することは容易なことではなく、しかも特定するまでに
多大な労力と長時間を要するなどの課題があり、その課
題を解決することが要求されていた。
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、
破損した核燃料要素を有する燃料集合体を特定するため
の検査に要する時間および労力を大幅に低減させること
が可能な破損核燃料要素の燃焼度推定方法を提供するこ
とにある。
[発明の構成] (課題を解決するための手段) 本発明は、核燃料物質を装填した長尺被覆管内に不活
性ガスを封入してなる核燃料要素に前記不活性ガスの一
部としてKr(クリプトン)の安定同位体である80Kr(ク
リプトン80)を封入して、前記核燃料要素の被覆管の破
損時にその破損した核燃料要素から放出される80Krの量
と、原子炉内で前記核燃料要素を使用したことにより80
Krが中性子とを吸収して生じた81Krの放出量とを測定
し、それら81Krおよび80Krの放出量の比をとることによ
って破損した核燃料要素の燃焼度を推定することを特徴
とする。
(作用) 本発明では全ての核燃料要素に80Krを一定量以上封入
している。原子炉内で80Krは80Kr(n,γ)81Kr反応で、
半減期(T1/2)2×105年の81Krが生じる。
そこで、核燃料要素の破損時に放出される80Krと81Kr
の量を測定し、その比から燃焼度を推定する。すなわ
ち、たとえばもんじゅ条件で5サイクル(740EFPD)運
転したときの80Krの生成料は核燃料要素当り約6×10-5
Ncm3(ORIGEN−IIによる計算結果)である。81Krの生
成量はさらに少ない。また、もんじゅガスプレナム部の
中性子スペクトルでの80Krの(n,γ)断面積は約3.4bar
nであり、5サイクル運転で2〜3%が81Krとなる。
従って、十分な量の80Krを封入しておけば、良い精度
ただし、N8080Krの量,N8181Krの量σは中性子吸収
断面積,φは中性子束,tは時刻である。
80Krの初期封入量に依らず、81Krと80Krの放出量の比
はσ80φt,すなわち運転時間のみで決まる。このように
して、タギング法を使用することなく燃焼度を推定でき
る。
(実施例) 第1図および第2図を参照して本発明の一実施例を説
明する。第1図は原子炉で使用する核燃料要素の縦断面
図である。図中、符号1は被覆管で、この被覆管1はオ
ーステナイト系ステンレス鋼製またはジルコニウム合金
製の長尺ものである。この被覆管1の上端および下端は
それぞれ上部端栓2および下部端栓3により封止されて
いる。また、被覆管1内には複数の燃料ペレット4が軸
方向に積層されている。この燃料ペレット4は二酸化ウ
ラン等の核分裂性物質の粉末を円柱状に圧粉成形しこれ
を焼結したものである。これら燃料ペレット4は被覆管
1の下端から上方に2/3程度の位置まで装填されてお
り、よって被覆管1内の上端1/3にはプレナム部5が形
成されている。また上部端栓2と最上位の燃料ペレット
4との間にはスプリング6が装着されており、このスプ
リング6により燃料ペレット4の位置ずれを防止するも
のである。
上記プレナム部5内には不活性ガス7が封入されてお
り、この不活性ガス7により冷却材への熱伝達を促進す
る。不活性ガス7としては通常熱伝達効率の高いヘリウ
ムガス(He)が使用されるが、本実施例ではHeの他に、
不活性ガス7の一部としてKrの安定同位体である80Krが
封入されている。
以下、80Krを封入することにより、破損した核燃料要
素の燃焼度の推定が精度良く行われ得ることを説明す
る。
まず、Krの安定同位体として80Krのみが破損した核燃
料要素の燃焼度の推定に使用可能であることを説明す
る。
一般に不活性ガスの一部としてKrの安定同位体を封入
したとき、このKrの安定同位体は原子炉の運転に伴なっ
て中性子の照射を受け、次の式(I)にしたがって減少
する。
Nkr(t)=Nkr(0)×exp(−σ・φ・t) …(I) ただし、 Nkr(t);時刻tにおけるKrの安定同位体量 σ;中性子吸収断面積 φ;中性子束 σは中性子断面積ライブラリから、φは炉心性能計算
または実測により決定することができる。したがって、
核燃料要素の原子炉での運転時間を知ることにより、式
(I)によってKrの安定同位体量を決定することが可能
である。
しかしながら、Krの安定同位体はウランの核分裂によ
って燃料ペレット4内に蓄積され、その一部は燃料ペレ
ット4からプレナム部5内に移行する。かかる移行過程
は非常に複雑であり、燃料ペレット4の温度,運転履歴
に依存し、よってプレナム部5への移行量を正確に把握
することは不可能である。したがって、式(I)からKr
の安定同位体の量を正確に把握することは極めて困難で
ある。
このような理由からKrの安定同位体全てが適切なわけ
ではなく、その中から核分裂による燃料ペレット4内へ
の蓄積量が少なく、その全量がプレナム部5へ移行する
と仮定した場合においてもその絶対値が十分小さく、式
(I)による算出が可能なものを選定する必要がある。
そこで次の表−1に示すKr同位体の蓄積量を目安にして
選定を行なった。
この表−1は一般的な運転条件で3年間原子炉内で使
用した直後の核燃料要素中のKr同位体の蓄積量を示すも
のである。不活性ガス7の一部としてプレナム部5内に
封入可能なKrの初期量は数ccである。表−1から明らか
なように、80Kr,81Kr,87Kr,88Kr,89Krの5核種につ
いては蓄積量が小さいので、核分裂による蓄積の効果を
無視することが可能である。しかし、81Kr,87Kr,88K
r,89Krの4核種はいずれも放射性同位体であり、天然
には存在しない。このため、上記5核種のうち80Krのみ
が不活性ガス7の一部としてプレナム部5にあらかじめ
封入して使用することが可能である。
次に、80Krを不活性ガス7の一部としてプレナム部5
に封入して使用したとき、80Krが中性子を吸収して生じ
81Krの量について述べる。
81Krは半減期が21万年と長く、3年程度の炉内での使
用期間を考えるとき、良い精度で安定同位体とみなすこ
とが可能である。80Krの中性子吸収断面積は、中性子ス
ペクトルによって異なるが、例えば典型的な高速増殖炉
のプレナム部を想定すると約3バーン(3×10-24cm2
である。また、プレナム部の中性子束は約1014/cm2/se
cの程度である。したがって、前記(I)式を使用し
て、3年間の炉内での使用により、封入した80Krの約3
%が中性子を吸収して81Krを生じることになる。このよ
うに、典型的な高速増殖炉での使用条件では、生成され
81Krの量が少ないため、さらに高次の反応である81Kr
の中性子吸収反応を無視することが可能である。したが
って、80Krの量と炉内での使用時間の関係は次式によっ
て表わされる。
N80(t)=N80(0)×exp(−σ80・φ・t) N80(0)×(−σ80・φ・t) …(II) N81(t)N80(0)−N80(t) N80(0)×(σ80・φ・t) …(III) ただし、N80(t);時刻tにおける80Krの量 N81(t);時刻tにおける81Krの量 σ80;80Krの中性子吸収断面積 なお、被覆管1に破損が発生した場合には封入したKr
の安定同位体がその破損箇所から被覆管1の外に放出さ
れることになる。この放出現象は極めて複雑であり、封
入量のうちどれだけの量が放出されるかを算出すること
は困難である。しかしながら、Krの同位体は化学的には
同一の性質を示すために放出の割合は全ての同位体で一
定となり、よって2種の同位体の放出量の比はその時点
における核燃料要素内の同位体量の比と一致する。
次にKr同位体の封入量の比からの運転時間すなわち燃
焼度を推定する方法について第2図を参照して説明す
る。第2図は横軸に運転時間をとり、縦軸に81Krと80Kr
の封入量の比をとり、封入量の比の時間変化を示した図
である。封入量の比の時間変化は前記式(II)および
(III)から N81(t)/N80(t)σ80・φ・t …(IV) となり、炉内での使用時間(t)に比例する値となる。
したがって、まず放出量の比を測定し、この放出量の比
がその時点における封入量の比に等しいことを使用する
と、その放出量の比から運転時間を推定することができ
る。
高速増殖炉の燃料は例えば3年間炉内で使用され、1
年毎に全燃料集合体の1/3ずつが変換される。したがっ
て、全燃料はその交換時期により3つのグループに分け
られる。よって、本実施例のように核燃料要素のプレナ
ム部7内に予め80Krを封入しておき、被覆管1が破損し
たときに81Krと80Krの放出量の比を測定することによ
り、該測定結果から被覆管の破損した核燃料要素の運転
時間を推定し、この推定した運転時間からその核燃料要
素を含むグループを特定することができる。これによっ
て全燃料の中から1/3を特定することができ、以降はこ
の1/3の中から破損燃料の特定を行えばよく、従来に比
べて簡単に前記核燃料要素を有する燃料集合体を特定す
ることが可能となる。
以上本実施例によると、破損した核燃料要素を有する
燃料集合体を特定するに要する時間を大幅に短縮させる
ことができるとともに、それに要する労力を軽減させる
ことができ、また作業員の被曝低減をも図ることが可能
となる。
[発明の効果] 本発明によれば核燃料要素の破損時にその核燃料要素
を有する燃料集合体を速やかに特定することが可能とな
り、破損燃料の早期発見それによる二次災害の防止を効
果的に図ることができ安全性を大幅に向上させることが
可能となる。また、検査作業に要する時間の短縮および
労力の軽減により作業員の被曝低減を図ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図および第2図は本発明の一実施例を説明するため
の図で、第1図は核燃料要素を示す縦断面図、第2図は
81Krと80Krの封入量の比と運転時間との関係を示す特性
図である。 1…被覆管 2…上部端栓 3…下部端栓 4…燃料ペレット 5…プレナム部 6…スプリング 7…不活性ガス

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】核燃料物質を装填した長尺被覆管内に不活
    性ガスを封入してなる核燃料要素に、前記不活性ガスの
    一部としてKr(クリプトン)の安定同位体である80Kr
    (クリプトン80)を封入し、前記核燃料要素の被覆管の
    破損時にその破損した核燃料要素から放出される80Krの
    量と、原子炉内で前記核燃料要素を使用したことにより
    80Krが中性子を吸収して生じた81Krの放出量とを測定
    し、それら81Krおよび80Krの放出量の比から燃焼度を推
    定することを特徴とする核燃料要素の燃焼度推定方法。
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