JP2705804B2 - 斜流羽根車 - Google Patents

斜流羽根車

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、家庭用の空気調和装置などに用いられてい
る斜流羽根車に関するものである。
従来の技術 羽根車の設計方法は、大きく分けて軸流形と遠心形に
分類することができる。斜流羽根車は軸流羽根車と遠心
羽根車の中間的な形態、性能を示すため、どちらの設計
方法を用いることも可能であった。しかしながら、家庭
用の空気調和機に使われているような薄肉羽根の場合
は、翼理論に基づいた軸流形の設計よりも、速度ベクト
ルの向きによって幾何学的に羽根形状を決定する遠心形
の設計方法で設計されることが多かった。以下に、その
設計手順を図を用いて説明する。
まず、第6図に示すように、羽根車1のメリディアン
面(羽根車1の中心軸xを含む面)の形状であるメリデ
ィアン形状を決定する。メリディアン形状は、目標の流
量、回転数、全圧上昇などについて、ステパノフらが推
奨値を示しているので、それを参考にして決めることが
できる。次に、メリディアン面において、羽根車吸い込
み側と噴き出し側のハブ2からチップ3までをそれぞれ
複数に分割する。このi番目の分割点どうし吸い込み側
と吹き出し側で結ぶことによって、ハブ2からチップ3
までの流路を複数の流路に分割する。このとき吸い込み
側、吹き出し側の分割点は半径方向の流速分布を考慮し
て、分割流路内の流量がほぼ等しくなるように決めるこ
とが多い。このとき、吸い込み側の分割点と吹き出し側
の分割点を結ぶ直線を等流量分割線と呼ぶ。その等流量
分割線4を母線とし、中心軸xのまわりに回転して得ら
れる円錐面を回転流面と考え、この面上の二次元流れを
もとにして羽根5と回転流面の交線形状、つまり、羽根
5の反り線6(第7図参照)を決定する。
第7図に示す回転流面の展開図を用いて、羽根5の反
り線6形状の決め方を説明する。羽根5の入口側に相等
する点Aでは、流量より求まる絶対速度C1と羽根車1の
回転数より定まる周速度U1を用いて、羽根車に対する相
対速度W1、および、流入角▼β ▲が求まる。羽根車
1の入口で空気の流入角▼β ▲と羽根5の入口角β
が大きくずれていると、空気が羽根5に沿って流れ
ず、乱れが大きくなり性能が低下する。したがって、流
入角▼β ▲にほぼ一致するように入口角βを決め
るのが一般的である。このように入口角βを決定する
と、半径R方向の入口角βの分布は第8図に示すよう
に、ハブ2の側で大きく、チップ3の側で小さくなるよ
うに変化する。
一方、羽根5の出口側に相当する点Bの羽根出口角β
は目標の全圧上昇を満たすように決定する必要があ
る。すなわち、第7図に示すような流れの場合、全圧ヘ
ッドΔHtは、 ただし、η…効率 g…重力加速度(m/sec2) Cu2…絶対速度の周方向成分(m/sec) U2…外周の周速度(m/sec) で与えられる。ここで、Cu2は次式で表わされる。
Cu2=U2−Cm2/tanβ ただし、Cm2…絶対速度の半径方向成分(m/sec) したがって、流量、回転数、全圧ヘッドおよび半径位
置が決まれば、ηを適当に仮定することによって出口角
βが求められる。この出口角βも前述の入口角β
と同様に一般の斜流羽根車では、ハブ側で大きく、チッ
プ側で小さくなる分布をしている。
このようにして、入口角βと出口角βが決まる
と、第7図に示すように入口側と出口側でそれぞれの角
度を満足する曲線を選ぶわけであるが、一般には一円弧
が選ばれ、また、上記の条件を満たす一円弧はただ1つ
存在する。
以上のようにして、1つの回転流面上で決定される羽
根反り線6の形状をハブ2からチップ3までのそれぞれ
の回転流面上において求め、それらを滑らかにつなぐこ
とによって羽根全体の形状を定めていた。
発明が解決しようとする課題 ところで、前述の方法によると、羽根反り線6は完全
に一意的に決定してしまうことになり、羽根車1のメリ
ディアン形状、目標仕様などによっては、反り高さのほ
とんど無い、平板のような羽根が設計されることがあ
る。一般に入口角β、出口角β、および、羽根弦長
が同じであれば、反り高さの大きいほうが羽根の作用は
大きいことがわかっている。逆に言えば極めて平板に近
い羽根は効率が悪く、そのために、低性能、大騒音とい
った問題を生じるものである。
しかしながら、上記の方法に基づいて、羽根の反り高
さを大きくするためには、反り線6の円弧の曲率を変更
する必要があるが、その結果、羽根5の入口角β、あ
るいは、出口角βも変わってしまう、あるいは、メリ
ディアン形状を変更することが必要になる。入口角や出
口角が変わると流れとの整合性が悪くなり、性能が低下
するという課題を有していた。
本発明はかかる上記課題を解決するもので、最適な入
口角、出口角を保つたまま、羽根の反り高さを大きくし
て高性能、低騒音の斜流羽根車を提供することを目的と
するものである。
課題を解決するための手段 上記課題を解決するために本発明の斜流羽根車は、ほ
ぼ円錐台形のハブの周囲に配設された複数枚の羽根を備
え、そのハブと中心軸が一致するほぼ円錐面と羽根との
交線を、前記ほぼ円錐面の展開面上で考え、かつ交線の
両端のうち一端をA,他端をB,線分ABの長さをl,前記展開
面上の交線と線分ABの最大距離をLとし、点Aにおいて
前記交線と線分ABのなす角をξ、点Bにおいて前記交
線と線分ABのなす角をξとしたとき、ξ=ξ
つ、 を満足する最大距離Lを示す点をCとし、点Aと点C,点
Bと点Cをそれぞれ異なる三次曲線で結び、かつ、その
2本の三次曲線は点で滑らかにつながるよう構成したも
のである。
作用 上記構成により、羽根の入口角、出口角を最適な値に
保ったままで、羽根の反り高さが大きく設定されること
になり、羽根まわりの流れ状態が良好に保たれ、騒音の
大幅な低減を実現することができる。
実施例 以下、本発明の一実施例の斜流羽根車について図面を
参照しながら説明する。
第1図は本発明の一実施例における斜流羽根車11の斜
視図を示す。第1図において、12はほぼ円錐台形のハ
ブ、15はハブ12の外周部に取付けられている羽根、13は
羽根15のチップである。さらに、羽根車11のメリディア
ン断面において、ハブ12とチップ13の間を等流量分割線
で分割し、そのうちの1本を母線とする円錐面を考える
と、第1図中に17で示したAB線が円錐面と羽根15の交線
として得られる。
第2図は前述の円錐面を展開して示した図であり、こ
の図を用いて、羽根15と円錐面の交線17、つまり、羽根
15の反り線について説明する。展開面上の交線17の一端
をA、他端をBとし、線分ABの長さをl、交線17と線分
ABの最大距離をLとし、点Aにおいて交線17と線分ABの
なす角をξ、点Bにおいて交線17と線分ABのなす角を
ξとすると、ξ=ξとなっている。また、Lにつ
いては、次の関係を満足している。
また、最大距離Lを示す点Cと点A,点Bを結ぶ交点17
は、点Aと点Cを結ぶ三次曲線と点Bと点Cを結ぶ三次
曲線を点Cにおいて滑らかに接続することによって構成
されている。
次に上述の関係式が表わす内容について説明する。第
3図に示すように、従来の羽根車でよく使われている、
羽根の反り線27が中心がOにある一円弧の場合を考える
と、線分A′B′は孤A′B′の弦に相当するので、孤
A′B′と弦とのなす角ξ1は常に等しくなること
がわかる。
また、接弦定理および円周角と中心角の関係より、弦
A′B′に対する中心角は▲ξ ▼の2倍であること
がわかる。さらに、円の中心から任意の弦に下した垂線
は、弦および中心角を二等分するので、弦A′B′の長
さをl′とおくと、円の半径はl′/(2sin▲ξ
▼)、垂線の長さはl′cot▲ξ ▼/2で表わさ
れる。したがって、円弧の場合の反り高さL′はl/2
{(sinξ′)-1−cotξ′}で与えられることがわ
かる。
以上のことより、本発明の羽根車11のように、ξ
ξかつ、 を満足する羽根反り線の羽根5は、羽根の入口角、出口
角を従来の円弧羽根と同じ値に保ちながら、羽根反り高
さが円弧羽根より大きくなっていることがわかる。さら
に、最大反り高さを示す点Cと点A,点Cと点Bを結ぶそ
れぞれの三次曲線は一意的に定まる。なぜならば、点C
が最大反り高さを示す点であり、この点で2本の三次曲
線が滑らかに接続することにより、点Cにおける接続は
線ABと平行であることがわかる。つまり、点Cにおける
三次曲線の傾きは線分ABと平行でなければならない。し
たがって、2つの通過点とそれらの点における傾きが定
まることになり、この4つの条件を満たす三次曲線は一
意的に定まる。このように、点Cで滑らかに接続する2
本の三次曲線によって反り線を構成しているので、反り
線の全長にわたって角を生じることなく、角度ξ1
や最大反りの高さや位置の条件を満足させることができ
る。このような条件を満足する曲線としては三次曲線に
限らず任意の自由曲線も考えられるが、羽根の曲線の形
状を数値的に明確させておくことは羽根の設計諸元と性
能の対応を付けるために不可欠である。この点で従来用
いられていた円弧に代わるものとして、三次曲線は比較
的簡単な曲線であり、かつ、与えられた設計諸元に対し
て一意的に形状を定めるのに適したものである。もちろ
ん、4次以上の高次曲線も使用可能であるが、上述の4
条件では一意的に形状を定めることができず、残りの条
件の設定の仕方によって、反り線の中に数値を持つこと
がある。すなわち、最大反り高さを示す点Cよりも反り
の高い凸部が生じたり、逆にへこみ部を生じたりする。
そのような、凹凸のある反り線は、たとえ滑らかに波打
っているとしても、羽根の形状として空気力学的に好ま
しいものでないことは明らかである。
このように、羽根5の入口角、出口角を最適な値に設
定するという従来の円弧羽根の長所を残しながら、羽根
5の反り高さを大きくし、かつ、三次曲線で滑らかにつ
なぐことによって、羽根まわりの流れ状態を良好に保
ち、低騒音羽根車を実現することができる。
第4図は本発明の一実施例における斜流羽根車と従来
の斜流羽根車とのそれぞれの風量−静圧−騒音レベル特
性を示したもので、本発明の斜流羽根車では大風量域に
おいて、圧力特性が低下することなく、騒音が低くなっ
ていることがわかる。また、第5図は両者の騒音の周波
数分析を示したもので、実線で示した本発明の一実施例
の斜流羽根車のデータのほうが、全帯域で騒音レベルが
低くなっていることがわかる。
効果 以上のように本発明の斜流羽根車によれば、羽根反り
線と線分ABのなす角ξ1を等しくすることによっ
て、入口角、出口角を最適な値に保ちながら、羽根の反
り高さは より大きくなるように設定しているので、円弧羽根より
も大きな反りを持った羽根となる。さらに、三次曲線を
用いて、反り線の両端と最大反りの点をそれぞれ結び、
最大反りの点で滑らかに接続しているので、途中に角や
凹凸を生じない、滑らかな反り線が得られる。したがっ
て、羽根まわりの流れが最適化され、高性能を維持しな
がら低騒音化が図れるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例を示す斜流羽根車の斜視図、
第2図は同斜流羽根車の羽根反り線形状を示す回転流面
の展開図、第3図は従来より用いられている円弧羽根の
場合の羽根反り線形状を説明する回転流面の展開図、第
4図は本発明の斜流羽根車と従来の斜流羽根車の性能を
比較した特性図、第5図は本発明の斜流羽根車の音響的
な効果を示した特性図、第6図は斜流羽根車のメリディ
アン形状を示す図、第7図は羽根の反り線形状の決定方
法を説明する回転流面の展開図、第8図は羽根の入口角
の半径方向の変化を示す角度分布図である。 11……斜流羽根車、12……ハブ、15……羽根、17……交
線(反り線)。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ほぼ円錐台形のハブの周囲に配設された複
    数枚の羽根を備え、前記ハブと中心軸が一致するほぼ円
    錐面と前記羽根の交線について、前記ほぼ円錐面は前記
    羽根の吸い込み側最内径から最外径までを任意にn分割
    したi番目の半径位置と前記羽根の吹き出し側最内径か
    ら最外径までを任意にn分割したi番目の半径位置を結
    ぶ直線を母線とし、前記交線を前記ほぼ円錐面の展開面
    上で考え、かつ交線の両端のうち一端をA,他端をB,線分
    ABの長さをl,前記展開面上の交線と線分ABの最大距離を
    Lとし、点Aにおいて前記交線と線分ABのなす角を
    ξ、点Bにおいて前記交線と線分ABのなす角をξ
    したとき、ξ=ξ、かつL>(l/2){(sinξ
    -1−cotξ}を満足する最大距離Lを示す点をCと
    し、点Aと点C,点Bと点Cをそれぞれ異なる三次曲線で
    結び、かつ、その2本の三次曲線は点Cで滑らかにつな
    がる斜流羽根車。
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生井・井上共著「ターボ送風機と圧縮機」(昭63−8−25)コロナ社 p524〜529

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