JP2680795B2 - 非線形光学素子および非線形光学材料 - Google Patents

非線形光学素子および非線形光学材料

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フタロシアニン系化合
物の非線形光学材料及びこれを用いた光学素子に関す
る。
【0002】
【従来の技術】大きな非線形光学特性を有する有機化合
物は、光信号処理、通信、集積回路等の非線形光学素子
に利用される。特に、有機分子及び高分子材料は、大き
な光学非線形性と共に、大きなレーザ光耐性、高速応答
性、軽量性及び設計製造(tailoring)可能なことなどの
長所があり、非線形光学の分野に応用の可能性が高い。
【0003】有機共役系高分子においては、π電子系に
起因する3次非線形性が得られ、既に、ポリジアセチレ
ン類、ポリアセチレン類、ポリ(p−フェニレン)類、
ポリチオフェン類、ポリピロール類、フタロシアニン
類、ポリアニリン類、ヘテロ芳香族系ラダーポリマ類及
び関連するコポリマなどの多くの共役系高分子が、報告
されている。
【0004】非線形感受率は、π電子の非局在距離や共
役高分子構造のバンド間隔に敏感に依存する。従って、
Agrawal他著Physical Review B17巻、776頁(1978)など
に例示されるように、大きな非線形感受率は、小さなバ
ンド間隔の共役構造により得やすい。
【0005】また、有機材料は、非線形光学素子に用い
られる場合、単結晶、LB膜、ゲスト−ホスト混合系、
超格子構造、ポールド高分子などの形態で用いられる。
【0006】これらに関連する既存の報告としては下記
がある。D.S.Chemla及びJ.Zyss著「Nonlinear Optical P
roperties of Organic Molecules and Crystals」、第1
及び2巻、Academic Press(198
7)、H.S.Nalwa著、Applied Organometallic Chemistr
y誌、第5巻、347頁(1991)、D.L.Williams編集「Nonlinea
r optical properties oforganic and polymeric mater
ials」ACS Symposium Series 第233巻,American Chemica
l Society,Washington D.C.(1983年)、T.Kobayashi編集
「Nonlinear optics of organics and semiconductors」S
pringer Proceedings in Physics,第36巻,Springer-Ve
rlag社,Berlin(1989年)、S.Miyata編集「Nonlinear Opti
cal Materials」,Elsevier,Amsterdam(1992)、H.S.Nalwa
著、Advanced Materials誌、第5巻、341頁(1993)、J.Zy
ss著「Molecular Nonlinear Optics」、Academic Press(1
994)及びSPIE学会にて1985−1994年度間に発表
された論文などがある。
【0007】非線形光学材料として興味深い化合物に、
金属フタロシアニンがあり、比較的大きな3次非線形光
学特性を示すことが知られている。例えば、J.S.Shirk
他著、Applied Physics Letters誌、第55巻、1287頁(19
89)、P.A.Chollet他著、SPIEProceeding誌、第1273巻、
87頁(1990)、C. Bubek他著、NATO Proceeding誌、「Nonl
inear Optical Effects in Organic Polymers」、185-19
3頁(1989)、Z.Z.Ho他著、Journal of Applied Physics
誌、第62巻、716頁(1987)、M.Hosoda他著、SPIE Procee
ding誌,第1337巻、99頁(1990)などがある。遷移金属、
ランタニド、アセチニドを含む約70の金属原子が、フ
タロシアニンと錯体を形成することが知られている。
【0008】また、フタロシアニンの一般的な合成、特
性については、例えば、A.L.Thomas著「Phthalocyanine
Research and Applications」、CRC Press社、Boca Rato
n,Florida(1990)、C.C.Lenznoff及びA.B.P.Lever著「Phth
alocyanines:Properties andApplications」、VCH Publi
shers社、Weinheim(1989)などがある。
【0009】なかでも、チタニルフタロシアニン(TiOP
c)及びバナジルフタロシアニン(VOPc)の結晶多形及び3
次非線形光学特性は広く検討されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来か
ら知られているチタニルフタロシアニンやバナジルフタ
ロシアニン等の金属フタロシアニンを非線形光学素子に
用いた場合、非線形光学特性、耐熱性、耐環境性、成型
性、その他物理的性質が素子の実用化にはなお不十分で
あった。
【0011】本発明の第1の目的は、新規な非線形光学
材料を用いた非線形光学素子を提供することにある。
【0012】本発明の第2の目的は、新規な3次非線形
光学材料を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記第1の目的を達成す
るために、本発明によれば、少なくとも一部に、下記
(化1)で表される構造を有する非線形光学材料を少な
くとも一部に用いた光学素子が提供される。
【0014】
【化1】
【0015】但し、Mは、Zr、Hf、Nb、Ta、M
o、WおよびReのうちのいずれかの元素である。
【0016】本発明では、特に、上述のMが、Mo元素
である非線形光学材料を含む光学素子が提供される。
【0017】また、さらに、上述のMが、Mo元素であ
るとともに、前記非線形光学材料が、結晶である材料が
提供される。この結晶は、少なくとも4種の結晶型を含
む結晶多形を示す。4種の結晶は、その吸収スペクトル
の極大が、それぞれ以下の(a)、(b)、(c)、
(d)にある。
【0018】 (a)700nm付近および780nm付近 (b)985nm付近および835nm付近 (c)675nm付近および815nm付近 (d)900nm付近 また、上記第2の目的を達成するために本発明によれ
ば、少なくとも一部に、上述の(化1)で表される構造
を有する非線形光学材料が提供される。
【0019】但し、Mは、Zr、Hf、Nb、Ta、M
o、WおよびReのうちのいずれかの元素である。
【0020】特に、本発明では、前記Mが、Mo元素で
ある非線形光学材料が提供される。
【0021】この非線形光学材料は、例えば、上述の
(a)〜(d)のいずれかに吸収スペクトルが極大を示
す結晶である。 本発明の非線形光学材料には、また、
上記構造(化1)の置換体を含む材料を用いることがで
きる。置換体は、特に限定されるものではないが、例え
ば、下記構造(化2)などが特に好適に用いられる。
【0022】
【化2】
【0023】ここで、Mは、Zr、Hf、Nb、Ta、
Mo、W及びReのうちのいずれかの元素である。
【0024】R1及びR2は、H、SO23、SO2
3、SO2NR34、SO2SR3、NR34、NO2
COR3、COOR3、CONR34、COSR3、Si
345、CN、Cn2n+1、Cn2n+1、NH2のうち
のいずれかの置換基である。
【0025】R3、R4、R5は、H、脂肪族、アルコキ
シ、芳香族、アルキルアミノ、アルケニル、アルキニル
基のいずれかである。
【0026】本発明には、本発明の非線形光学材料を含
む混合物、本発明の非線形光学材料を混合した高分子、
本発明の非線形光学材料を側鎖とした高分子、本発明の
非線形光学材料をガラス等の有機ないしは無機のマトリ
ックス中に分散した材料、ならびに、これらを用いた光
学素子が含まれる。
【0027】これらについて、以下具体的に述べる。
【0028】本発明の非線形光学材料は、(化1)の化
合物をガラス等の有機ないしは無機のマトリックス中に
分散することにより、特性を向上させることができる。
【0029】上述のマトリックスとしては、ポリメタク
リル酸メチル(PMMA)などのアクリル系樹脂、ポリ
酢酸ビニル、ポリスチレン、ナイロン−66、Zyte
l330などのナイロン、ポリフタル酸ブチルなどのエ
ステル樹脂、ポリエチレン、フッ素化樹脂、ポリビニル
カルバゾール、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹
脂などが特に好適に使用できる。
【0030】更に、本発明の非線形光学材料は、上述の
(化1)の化合物を他の高分子と化学結合させることで
特性を向上させることができる。
【0031】(化1)の化合物と化学結合させる高分子
としては、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、
ポリチエニルビニレン、ポリフタロシアニン、ポリシラ
ン、ポリジアセチレン、ポリアジン、ポリアゾメチン、
ポリフェニレンスルフィド、ポリ−p−フェニレン、ヘ
テロ環ラダーポリマなどが、特に好適に用いられる。
【0032】また、本発明の非線形光学材料は、(化
1)の化合物を他の芳香性化合物と混合することにより
特性を向上することができる。
【0033】(化1)の化合物と混合する芳香性化合物
としては、他の金属フタロシアニン、ポルフィリン、テ
トラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラチアフル
バレン(TTF)、置換ベンゼン、ビフェニル、ナフタ
レン、スチルベン、アゾベンゼン、ベンジリデン、アク
リジン、フルオレン、インドール、ヘテロ環化合物、チ
ノリンなどが特に好適に用いられる。
【0034】本発明の非線形光学材料は、(化1)の化
合物を他の無機系高分子と混合することにより、特性を
向上させることができる。
【0035】(化1)の化合物と混合する無機系高分子
としては、ポリサルファ、ポリシリケート、ポリフォス
ファゼン、ポリフォスフェート、ポリボラジンなどが特
に好適に用いられる。
【0036】本発明の非線形光学材料は、(化1)の化
合物を有機金属錯体として使用することで、特性を向上
できる。
【0037】(化1)の化合物を有機金属錯体とするた
めの金属には、アルカリ金属、遷移金属、ランタニド、
アクチニド及びアマルガムが特に好適に使用される。
【0038】本発明の非線形光学材料は、(化1)の化
合物を他の無機塩中に分散した材料として用いることが
できる。
【0039】例えば、アルカリ金属、遷移金属、ランタ
ニド、アクチニドの塩中に(化1)の化合物を量子ドッ
トとして分散した材料が、特に好適に使用される。
【0040】本発明の非線形光学材料は、(化1)の化
合物を他の金属と混合することで特性を向上できる。
【0041】これら金属には、遷移金属、アリカリ金属
が特に好適に利用される。
【0042】本発明の非線形光学材料は、(化1)の化
合物を他のガラス材料と混合することで特性が向上でき
る。
【0043】これらガラス材料には、シリケート、ボロ
シリケートガラス、鉛スズフルオロフォスフェート、ホ
ウ酸ガラスが特に好適に用いられる。
【0044】本発明の非線形光学素子は、例えば、上記
非線形光学材料を用いたことを特徴とする電気光学素子
が含まれる。
【0045】また、本発明の非線形光学素子には、上述
の非線形光学材料を非線形媒体として使用した光学素
子、例えば、レーザ周波数変換素子、光電スイッチ、光
電変調素子、光導波路、4波混合器、光双安定素子、光
ファイバー、フォトリフラクティブ素子、及び、液晶表
示素子が含まれる。
【0046】また、本発明の非線形光学材料により、導
電性のビーズを形成し、このビーズを他のマトリックス
中に分散することができる。
【0047】本発明の非線形光学材料は、アルカリ金属
をドープして導電性フィラとして使用できる。
【0048】本発明の非線形光学材料は、プリント回路
板の導電性塗料及び電磁シールド材料として使用でき
る。
【0049】本発明の非線形光学材料は、光反応の触媒
として使用できる。
【0050】本発明の非線形光学材料は、封止材料とし
て使用できる。
【0051】本発明の非線形光学材料は、光導電材料と
して、プリンタないしは複写機の感光体として使用でき
る。
【0052】本発明の非線形光学材料は、太陽電池など
の光起電力素子、EL(エレクトロルミネッセンス素
子)、LED(発光ダイオード)などの発光素子用材料
として使用できる。
【0053】本発明の非線形光学材料は、単結晶、多結
晶、溶液の形態で用いることができる。また、本発明の
非線形光学材料は、分散液塗布、スピンコート、また
は、モールドにより、膜厚5オングストローム〜500
ミクロンの均一な膜として用いることができる。これら
膜は、単層であっても多層であってもよい。また、これ
の膜は、固体フィルムであっても塗膜であってもよい。
【0054】本発明の非線形光学材料の(化1)の化合
物は、大気中、不活性ガス中において優れた熱的安定性
を示す。
【0055】本発明の非線形光学材料の(化1)の化合
物は、0.53ないし2.50μmの領域で非共鳴及び
共鳴の3次非線形光学特性、サブピコ秒の応答時間、及
び、GW/cm2に達するレーザ耐性を有する。これら
の機能は、光学素子として好適である。特に、3次高調
波発生(THG)の応答は、サブピコ(10~13)秒で
ある。
【0056】また、本発明の非線形光学材料を用いた薄
膜は、優れた熱酸化安定性、良好な光学特性、簡便な合
成法、成型性、高い機械的強度及び無毒性を有し、これ
らの物理的特性の統合は非線形光学への応用に好適に利
用される。
【0057】本発明の光学素子としては、たとえば、フ
ァブリペロー型、マッハツェンダ型、マイケルソン型な
どの共振器、方向性結合器、Y型及びX型光分岐路、空
間変調素子、ホログラフィック素子、光位相共役を利用
した種々の光学素子がある。
【0058】
【作用】本発明の非線形光学素子では、上述の(化1)
で示された構造の化合物を有する非線形光学材料を用い
ている。(化1)で示された構造の化合物は、従来、非
線形光学特性を有することが知られていない新規な化合
物である。
【0059】また、本発明の非線形光学材料の(化1)
の化合物は、大気中、不活性ガス中において優れた熱的
安定性を示すとともに、0.53ないし2.50μmの
領域で非共鳴及び共鳴の3次非線形光学特性、サブピコ
秒の応答時間、及び、GW/cm2に達するレーザ耐性
を有する。
【0060】したがって、(化1)の化合物を少なくと
も一部に含む非線形光学材料を用いることにより、優れ
た非線形性を示し、実用性が高い新規な光学素子が提供
される。
【0061】
【実施例】以下、実施例を用いて本発明の内容をより具
体的に説明する。
【0062】(実施例1)ZrCl2・8H2O5g(16.
3mmol)を真空下で3時間脱水した。これに、窒素
雰囲気下で20mlのα−クロロナフタレンと、5当量
のフタロニトリル10.5g(81.6mmol)を加え、
5時間還流した。さらに、80℃で水を加え、混合物を
更に3時間還流し、混合物を熱濾過した。得られた固体
をピリジン−KOH溶液で5時間還流しながら処理し
た。この混合物を冷却し、濾過して水洗して、得られた
青黒色の固体をトルエン、アセトン及びエタノールでソ
クスレー抽出した。
【0063】収量4.1g(収率40.5%)のオキソジル
コニウムフタロシアニン((化1)のMがジルコニウム
元素である化合物)の青色微結晶粉末が得られた。
【0064】(実施例2)窒素雰囲気下で、NbCl5
g(18.5mmol)を5.5当量のフタロニトリル13
g(0.1mol)とキノリン20ml中で還流しながら
5時間反応させた。80℃で水を加え、混合物を3時間
還流した。混合物を熱濾過した。得られた固体をピリジ
ン−KOH溶液で5時間還流しながら、処理した。この
混合物を冷却し、濾過して水洗した。得られた青黒色の
固体をトルエン、アセトン及びエタノールでソクスレー
抽出した。
【0065】収量7.1g(収率62%)のオキソニオブ
フタロシアニン((化1)のMがNb元素である化合
物)の青色微結晶粉末が得られた。
【0066】(実施例3)窒素雰囲気下で、ReCl5
g(13.5mmol)を5当量のフタロニトリル8.8g
(0.1mol)とキノリン15ml中で還流しながら5
時間反応した。80℃で水を加え、混合物を3時間還流
した。混合物を熱濾過した。得られた固体をピリジン−
KOH溶液で5時間還流しながら、処理した。この混合
物を冷却し、濾過して水洗した。得られた青黒色の固体
をトルエン、アセトン及びエタノールでソクスレー抽出
した。
【0067】収量4.5g(収率47%)のオキソレニウ
ムフタロシアニン((化1)のMがRe元素である化合
物)の青色微結晶粉末が得られた。
【0068】(実施例4)モリブデン酸アンモニウム
5.3g(30mmol)を4.1当量のフタロニトリル1
5.9g(0.124mol)と混合し、270℃で10分
間熱処理した。得られた固体を砕き、更に270℃で3
0分再加熱した。混合物を冷却し、粉末として、5%の
KOH溶液で処理し、水洗した。得られた青黒色の固体
をトルエン、アセトン及びエタノールでソクスレー抽出
した。
【0069】収量13.5g(収率72%)のオキソモリ
ブデンフタロシアニン((化1)のMがモリブデン元素
である化合物)の青色微結晶粉末が得られた。
【0070】この粉末の赤外吸収スペクトルを測定した
ところ、特徴的な赤外吸収ピークは、1522、149
6、1475、1415、1332、1288、116
1、1118、1087、1066、1030、94
7、897、781、754、731及び571cm~1
にあった。これらのピークうち、947および897c
m~1は、Mo原子−フェニル環の結合の特性振動であ
る。これにより、オキソモリブデンフタロシアニンの構
造の一部が確認された。
【0071】また、オキソモリブデンフタロシアニンの
青色微結晶粉末のキノリン溶液は、640、666、及
び、708nmに、また、ジクロロメタン溶液は、63
2、662、703nmに吸収極大を示した。
【0072】(実施例5)オキソモリブデンフタロシア
ニンの4種類の結晶(a)、(b)、(c)、(d)を
下記の方法で得た。
【0073】オキソモリブデンフタロシアニンの昇華膜
を、キシレンまたはテトラヒドロフラン(THF)の蒸
気に室温で1日触れさせることにより結晶(a)を得
た。結晶(a)は、溶媒の蒸気に触れている間に昇華膜
の結晶の分子が動き、分子配列が変化することによって
生じたものである。結晶(a)の分光吸収特性を測定し
たところ、図4のように、700nm付近および780
nm付近に吸収極大を有していた。
【0074】また、オキソモリブデンフタロシアニンの
昇華膜を、キシレンの蒸気に1日触れさせることにより
結晶(b)を得た。結晶(b)の分光吸収特性を測定し
たところ、図5のように、685および835nm付近
に吸収極大を有し、結晶(a)とは異なる結晶型である
ことが分かった。結晶(b)と結晶(a)とは、成長条
件がほぼ同じであるが、処理時間等の成長条件の微妙な
差により成長する結晶型が異なった。
【0075】さらに、オキソモリブデンフタロシアニン
の昇華膜を、テトラヒドロフランの蒸気に1日さらすこ
とにより、結晶(c)を得た。結晶(c)の分光吸収特
性を測定したところ、図6のように、675および81
5nm付近に吸収極大を有し、結晶(a)、結晶(b)
とは、異なる結晶型であることがわかった。興味あるこ
とに溶媒蒸気にさらす時間を1週間に延長することによ
り、結晶(c)の収率が向上した。
【0076】また、オキソモリブデンフタロシアニンの
蒸着膜を形成したところ、アモルファス膜が得られた。
このアモルファス膜をメタノール中に室温で1日浸漬す
ることにより、結晶(d)を得た。結晶(d)の分光吸
収特性を測定したところ、図7に示すように、680及
び900nm付近に吸収極大を有し、結晶(a)、結晶
(b)、結晶(c)とは、結晶型が異なることがわかっ
た。
【0077】また、上述の蒸着で得たアモルファス膜の
分光吸収特性を測定したところ、図8のように、吸収極
大は730nm付近にあり、吸収極大の位置が結晶
(a)〜(d)とは異なっていた。このアモルファス膜
は、不安定で保存中に構造及び吸収特性の変化を生じ
た。
【0078】(実施例6)実施例5で得られたオキソモ
リブデンフタロシアニンの4種の結晶(a)〜(d)の
非線形光学特性を評価した。
【0079】まず、3次高調波発生(THG)によって発
生した3次高調波のメーカフリンジを測定することによ
って、これにより3次非線形光学定数を得た。3次高調
波測定のための可変波長光源は、Nd:YAGレーザ及
び可変波長色素レーザによる光混合で得た。メーカフリ
ンジは、発振光に対し±40°の角度範囲で測定し、溶
融石英を参照に用いた。光源の繰返し周波数は、10H
zである。
【0080】また、3次高調波発生以外に、3本の同一
波長光を試料結晶に照射し、出力される光の強度を測定
することにより、非線形光学定数を求める縮退4光波混
合(DFWM)法、および、試料結晶の屈折率変化を試料
から出射される光の拡がり角度から測定し、これにより
非線形光学定数を求めるZ−スキャン(scan)法によ
り、波長1.0〜2.5μmの範囲で非線形光学定数を測
定した。
【0081】これにより、オキソモリブデンフタロシア
ニンの結晶型の異なる4種の結晶(a)〜(d)は、い
ずれも、高い非線形光学定数を示すことがわかった。
【0082】また、本発明の化合物、オキソジルコニウ
ムフタロシアニン、オキソハフニウムフタロシアニン
((化1)のMがHf元素である化合物)、オキソニオ
ブフタロシアニン、オキソタンタルフタロシアニン
((化1)のMがTa元素である化合物)、オキソモリ
ブデンフタロシアニン、オキソタングステンフタロシア
ニン((化1)のMがW元素である化合物)及びオキソ
レニウムフタロシアニンの粉末及び蒸着膜を試料とし
て、上述の測定を行ったところ、いずれも、優れた3次
高調波の発生、および、優れたDFWM信号を与えるこ
とが判明した。
【0083】(実施例7)実施例5で得られたオキソモ
リブデンフタロシアニンの4種の結晶(a)、(b)、
(c)、(d)を用いて、図1、図2、図3に示す光学
素子を構成した。
【0084】図1に示した光学素子は、マッハツェンダ
型光学素子がある。光源1の出力光3を二分して、その
一方を実施例5で得られたオキソモリブデンフタロシア
ニン結晶2に照射する。他方の光5と、結晶2の透過光
4とを混合し、出力光6を得る。
【0085】ここで、結晶2に光源1とは別の光源から
制御光を照射すると、結晶2の屈折率が変化するため、
透過光4の位相が変化する。透過光4の位相を、他方の
光5の位相と逆転させるように、制御光の強度を調節す
ると、透過光4と他方の光5とは打ち消し合って、出力
光6の光量は0となる。また、結晶2に屈折率変化を生
じさせない場合には、透過光4と他方の光5との位相が
一致し、出力光の強度は、両者の加え合わせとなる。
【0086】結晶2への制御光を変調することにより、
オン/オフのスイッチングや、出力光の強度変調を行う
ことができる。
【0087】なお、光源1から結晶2へ照射される光の
強度そのものを変調させることによって、結晶2の屈折
率を制御することもできる。
【0088】図2に示した光学素子は、オキソモリブデ
ンフタロシアニンの結晶12に制御光を照射して、結晶
12の屈折率を変化させることにより、空気と結晶12
との全反射条件を変化させ、光源11から照射された光
の光路を、全反射光路17および透過光路18のうちの
いずれか一方の光路に切り換える素子である。これによ
り、光路をスイッチングすることができる。結晶12へ
照射する制御光は、光源11の光の強度を変調させるこ
とにより、信号光と制御光を兼用させることも可能であ
るし、光源11とは、別の光源から制御光を照射する構
成にすることもできる。
【0089】図3に示した光学素子は、光カーシャッタ
である。
【0090】オキソモリブデンフタロシアニンの結晶2
2の両側に、偏光方向が直交する偏光板29、210を
配置する。結晶22に、制御光を照射すると、複屈折の
特定の方向の屈折率が変化するため、光源21から光2
3を照射すると、偏光板29を通過した光から、偏光板
210を通過可能な偏光成分が生じ、出射光211が得
られる。これにより、光シャッタが構成される。この現
象は、オキソモリブデンフタロシアニン等の有機非線形
光学材料の場合には、10~14secオーダの高速応答
が可能である。
【0091】図3のシャッタの場合も、結晶22に照射
する制御光は、光源21の信号光と兼用させることも可
能であるし、別の光源から照射することもできる。
【0092】図1、図2、図3の素子において、光源
1、11、21としては、既存のすべての光源が使用で
きるが、例えばNd:YAGレーザ、色素レーザ、Ti
サファイアレーザ、半導体レーザ及びこれらを用いたパ
ラメトリック光、LED、ELその他の光源が使用でき
る。
【0093】また、図1、図2、図3で示した光路は、
反射鏡、光ファイバなどの光学部品ないしは光導波路に
より形成される。
【0094】また、オキソモリブデンフタロシアニンの
結晶以外にオキソジルコニウムフタロシアニン、オキソ
ハフニウムフタロシアニン、オキソニオブフタロシアニ
ン、オキソタンタルフタロシアニン、オキソタングステ
ンフタロシアニン及びオキソレニウムフタロシアニンの
結晶や、上述した(化1)の少なくとも一部に含んだ材
料を用いて、図1、図2、図3の素子を構成することも
もちろん可能である。
【0095】
【本発明の効果】上記に示したように、本発明では、新
規なフタロシアニン系化合物を少なくとも一部に含む非
線形光学材料と、この非線形光学材料を用いた非線形光
学特性に優れた光学素子とを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の非線形光学素子の一実施例を示す説明
図。
【図2】本発明の非線形光学素子の一実施例を示す説明
図。
【図3】本発明の非線形光学素子の一実施例を示す説明
図。
【図4】本発明の一実施例のオキソモリブデンフタロシ
アニン結晶の分光吸収特性を示すグラフ。
【図5】本発明の一実施例のオキソモリブデンフタロシ
アニン結晶の分光吸収特性を示すグラフ。
【図6】本発明の一実施例のオキソモリブデンフタロシ
アニン結晶の分光吸収特性を示すグラフ。
【図7】本発明の一実施例のオキソモリブデンフタロシ
アニン結晶の分光吸収特性を示すグラフ。
【図8】本発明の一実施例のオキソモリブデンフタロシ
アニンのアモルファスの分光吸収特性を示すグラフ。
【符号の説明】
1、11、21…光源、2、12、12…非線形光学結
晶、29、210…偏光板。

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記(化1)で表される構造を少なくとも
    一部に有する非線形光学材料を少なくとも一部に用いた
    光学素子。 【化1】 但し、Mは、Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,Wおよび
    Reのうちのいずれかの元素である。
  2. 【請求項2】請求項1において、前記Mは、Mo元素で
    あることを特徴とする光学素子。
  3. 【請求項3】請求項2において、前記材料は、結晶であ
    り、 前記結晶は、700nm付近および780nm付近に吸
    収極大を示すことを特徴とする光学素子。
  4. 【請求項4】請求項2において、前記材料は、結晶であ
    り、 前記結晶は、985nm付近および835nm付近に吸
    収極大を示すことを特徴とする光学素子。
  5. 【請求項5】請求項2において、前記材料は、結晶であ
    り、 前記結晶は、675nm付近および815nm付近に吸
    収極大を示すことを特徴とする光学素子。
  6. 【請求項6】請求項2において、前記材料は、結晶であ
    り、 前記結晶は、900nm付近に吸収極大を示すことを特
    徴とする光学素子。
  7. 【請求項7】少なくとも一部に、下記(化1)で表され
    る構造を有し、非線形光学特性を持つ非線形光学材料。 【化1】 但し、Mは、Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,Wおよび
    Reのうちのいずれかの元素である。
  8. 【請求項8】請求項7において、前記材料は、結晶であ
    ることを特徴とする非線形光学材料。
  9. 【請求項9】請求項7または8において、前記Mは、M
    o元素であることを特徴とする非線形光学材料。
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