JP2666043B2 - バレル研磨装置に於けるバレル槽 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、バレル研磨装置に於け
るバレル槽の改良に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】最近のバレル研磨装置の一例として、研
磨効率を上げるべく、例えば図６に示すごとき、バレル
槽を公転させる（必要に応じて自転ｆもさせる）方式の
ものが提供されている。該バレル研磨装置は、遊星歯車
機構によって回転軸ａ回りに回転Ｆせしめられる十字状
アームｂの先端ｂ１に、略四角柱の形状をなすバレル槽
ｃを取り付けたものであった。そして該バレル槽ｃは、
被研磨物を取り付けるための取付治具を出し入れする開
口部ｄを、対向する二面に有し、該開口部ｄ，ｄの夫々
を開閉蓋ｅで閉蓋可能としていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】かかるバレル研磨装置
によるときは、図７（Ａ）に示すように、バレル槽ｃの
開口部ｄの幅ｇが大きいために、比較的大きな被研磨物
を出し入れでき、これらの被研磨物を比較的短時間のう
ちに研磨処理出来る利点があったが、被研磨物の収容量
をそれほど多く出来ない不都合があった。又バレル槽の
回転に際し、例えば同図に矢印ｈで示すように、バレル
槽内の研磨材を上方から下方へと落下させて（過激な落
下）研磨材を被研磨物に衝突させ、研磨するものであっ
たため、研磨の仕上がり状態は必ずしも良好とはいえな
かった。そこで本発明者は、かかる問題点に鑑み、バレ
ル槽の形状に関して改良を加えるべく研究を進めた。

【０００４】かかるバレル槽は、前記のように、遊星歯
車機構によって公転を行うように（必要に応じて自転も
行うように）組み付けられるので、バレル研磨装置とし
ては比較的大型の装置となる。そのため、作業占有面積
（空間）と駆動に要するエネルギーとを考えると、バレ
ル槽の回転占有空間が出来るだけ小さくなることが好ま
しい。従って改良に際しては、バレル槽の直径を従来と
略同様として、その容積を出来るだけ大きく確保し、以
て、従来と同様大きさの被研磨物を一度に大量に収容出
来るように構成する必要のあることが判った。

【０００５】こうした、略一定の直径で大きな容積を得
るという条件を満たすには、例えば、実開昭５７ー１７
７６４７号公報に開示されているごとき、略八角柱の形
状をなすバレル槽ｉ（図８に示す）の形態を転用するこ
とが考えられないではない。しかしこのような八角柱の
構造とした場合は、内部空間の拡大を図り得るとして
も、被研磨物を出し入れする開口部の開口幅（即ち、八
角柱の各辺の幅）Ｌが小さくなるために、出し入れする
被研磨物が小さな物とならざるを得ず、従って、比較的
大きな被研磨物を研磨するには不都合であった。

【０００６】そこで本発明は、バレル槽の回転占有空間
が小さくて（従来の四角柱のバレル槽と実質同じ）、従
来の四角柱のバレル槽よりは大きな収容量（被研磨物及
び研磨材に関して）を確保でき、被研磨物の収納部の開
口幅も大きく取ることができながら、しかも、短い時間
で研磨処理可能とするバレル研磨装置に於けるバレル槽
の提供を目的とするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は以下の手段を採用する。即ち、本発明に係
るバレル研磨装置に於けるバレル槽は、回転軸線方向に
長く構成され、公転せしめられることによって内部の被
研磨物を研磨するバレル研磨装置に於けるバレル槽であ
って，バレル槽の本体から、横断面視で略１２０度のピ
ッチ角度で、且つバレル槽の軸線から略同一半径長さ
で、被研磨物を取り付けるための取付治具を収容でき且
つ本体の略全長に亘る長さの収容部を各々突設し、各収
容部の先端に、被研磨物を取り付ける取付治具を出し入
れするための開口部を設け、且つ、該開口部を開閉蓋で
開閉可能としたことを特徴とするものである。

【０００８】前記バレル槽において、開閉蓋は、その一
側がヒンジにより開口部の一側に枢着され、且つ他側が
クランプにより開口部の他側に止め付けられるように構
成されるのがよい。この場合、開閉蓋の内面の周縁部分
にゴムパッキンを設けると共に、前記開口部の縁部を、
取付治具の掛着部を係止する係止部とし、閉蓋状態の開
閉蓋が、前記ゴムパッキンを介して該掛着部を押さえる
ように構成するのがよい。

【０００９】本発明に於いて、被研磨物の取付治具は、
開口部に対して着脱自在であるが、適宜の手段によって
固定されてもよい。又前記開閉蓋は、取り外し自在とす
る止め付け手段を用いてバレル槽に固定してもよい。そ
して、上記収容部の大きさ（バレル槽の軸線からの半径
方向長さの変更を含む）は、バレル槽の回転重心を考え
ると三つとも同じであるのが好ましいが、多少差異があ
っても差し支えない。

【００１０】

【作用】本発明は、１２０度のピッチ角度に開口部を設
ける構成を採用するため、従来の四角柱のバレル槽と実
質的に同じ回転空間を占めるものでありながら（即ち、
図７（Ａ）と図７（Ｂ）を比較して明らかなように、バ
レル槽の軸線を中心とする略同一直径Ｄ内にバレル槽の
全体が納まっている）、その開口幅を狭くすることな
く、比較的大きな被研磨物を容易に出し入れすることが
出来る。加えて、収容容積の拡大（四角柱のバレル槽に
比して約１．５倍に拡大）を図ることができ、一度に大
量の研磨処理（四角柱のバレル槽を用いる場合に比して
約１．５倍）が可能となる。

【００１１】そして、１２０度のピッチ角度に設けられ
た収容部に被研磨物を固定状態に配置するので、バレル
槽の回転に際しては、研磨材が、図７（Ｂ）に矢印Ｈで
示すように、緩やかな横滑りによるすべり運動をする。
従って回転を少々上げても、四角柱をなす従来のバレル
槽おけるような過激な落下現象が起きず、適度の落下衝
撃が得られて短時間で、且つ比較的滑らかな研磨処理を
行うことが出来る。

【００１２】しかも１２０度のピッチ角度に収容部が設
けられているが故に、バレル槽内の研磨材の流れ状態
は、従来の四角柱のバレル槽内の研磨材のような、上方
から下方へという一方的な流れだけではなく、内部の研
磨材が常時三つの収容部に分散されることとなる。従っ
て、バレル槽が回転しているときの回転バランスが良好
となり、バレル槽の回転が円滑になる。

【００１３】

【実施例】以下本発明の実施例を図面に基づいて説明す
る。図１はバレル研磨装置１の概略説明図であり、遊星
歯車機構からなる駆動装置（図示せず）によって回転軸
２回りに回転せしめられる十字状をなすアーム３の先端
３ａに、本発明に係るバレル槽４が公転可能に（必要に
応じて自転も可能に）取り付けられている。なお、駆動
装置を含むバレル研磨装置の細部については、従来公知
の構成に属するので、ここでは詳細な説明を省略する。

【００１４】前記バレル槽４は、図２〜３に示すよう
に、軸線方向に長く形成された横長箱状をなし、本体５
から、断面視で略１２０度のピッチ角度で、バレル槽の
回転軸線から略同一半径長さで、収容部６を、本体５の
略全長に亘るように夫々突設してなり、各収容部の先端
には、被研磨物の取付治具７を出し入れする開口部９を
設け、該開口部９を開閉蓋１０で開閉可能としてなる。
又バレル槽の端面には、アーム先端３ａに設けた軸１１
を支持する軸受け取付部８が設けられている

【００１５】該開閉蓋１０は、その一側１２がヒンジ１
３により前記開口部９の一側１５に枢着されており、開
閉蓋の他側１６が、クランプ１７により開口部９の他側
１９に止め付けられるようになされている。又該開閉蓋
１０の内面の周縁部分には、ゴムパッキン２０が配着さ
れると共に、前記開口部９の短辺部分は、一段低い掛着
面２１とされている。

【００１６】又前記取付治具７は、図４に示すように、
収容部の長さ方向に延びて被研磨物２２を挾持する（図
３）一対の挾持部材２２，２２からなる挾持具２３を左
右に具えており、その両端部には、前記開口部９の掛着
面２１に掛着する掛着片２５，２５が設けられている。
かかる構成を有する取付治具７の掛着片２５，２５を、
前記掛着面２１，２１に当接状態に係合させて後、開閉
蓋１０を閉蓋すると、図５に示すように、ゴムパッキン
２０が前記掛着片２５，２５を弾性的に押圧し、これに
よって取付治具７が開口部９に固定されるようになされ
ている。

【００１７】次に、かかる構成を有するバレル研磨装置
によって研磨作業を行う要領を説明すると、図３に示す
ように、各バレル槽の開閉蓋１０を開いて、所要数の被
研磨物２２を挾持させてなる取付治具７を開口部９に挿
入し、その掛着片２５，２５を開口部の掛着面２１，２
１に掛着させ、開閉蓋１０を閉蓋する。なおバレル槽３
内には、例えばその容積の約半分程度の量に研磨材２６
（図７（Ｂ））を投入しておく。この研磨材の投入は、
例えば、最後の開口部を閉蓋する際にこの開口部より投
入してもよく、或いは、別途設けた専用の投入口より投
入してもよい。然る後、駆動装置を動作させてバレル槽
３を公転させ、必要に応じて自転もさせる。これによっ
て、バレル槽内部の研磨材の流動時の摩擦によって被研
磨材が研磨される。なお研磨材の研磨作用は、前記作用
の項で述べたところと同様である。

【００１８】

【発明の効果】本発明によるときは、以下の如き優れた
効果を奏する。 本発明は、１２０度のピッチ角度に開口部を設ける
構成を採用するため、従来の四角柱のバレル槽と実質的
に同じ回転空間を占めるものでありながら、その開口幅
を狭くすることなく、比較的大きな被研磨物を容易に出
し入れすることが出来る。加えて、収容容積の拡大（四
角柱のバレル槽に比して約１．５倍に拡大）を図ること
ができ、一度に大量の研磨処理（四角柱のバレル槽を用
いる場合に比して約１．５倍）が可能となる。このよう
なことから本発明によるときは、従来の四角柱のバレル
槽による場合に比し、研磨効率を著しく向上させ得て生
産性向上とコスト低減を期しうることとなる。

【００１９】 又本発明は、１２０度のピッチ角度に
収容部を設けるため、バレル槽の回転に際しては、研磨
材が、緩やかな横滑りによるすべり運動をする。従って
回転を少々上げても、四角柱をなす従来のバレル槽おけ
るような上方から下方への過激な落下現象が起きず、適
度の落下衝撃が得られて、短時間で、且つ比較的滑らか
な研磨処理を行うことが出来る。

【００２０】 しかも１２０度のピッチ角度に収容部
が設けられているが故に、バレル槽内の研磨材の流れ状
態は、従来の四角柱のバレル槽内の研磨材のような、上
方から下方へという一方的な流れだけではなく、内部の
研磨材が常時三つの収容部に分散された状態となしう
る。従って、バレル槽が回転しているときの回転バラン
スが良好となり、バレル槽の回転が円滑になる。それ
故、バレル研磨装置の駆動装置の受ける周期的荷重変動
が小さく（四角柱のバレル槽では、回転軸やギヤの受け
る荷重が１８０度周期で大きく変化する）、従ってバレ
ル研磨装置の故障発生が少なくて済む利点もある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るバレル槽を用いたバレル研磨装置
を説明する説明図である。

【図２】バレル槽を示す斜視図である。

【図３】バレル槽を示す断面図である。

【図４】取付治具を示す斜視図である。

【図５】開閉蓋の閉蓋状態を説明する断面図である。

【図６】従来のバレル槽を用いたバレル研磨装置を説明
する説明図である。

【図７】従来のバレル槽と本発明に係るバレル槽を比較
して示す断面図である。

【図８】八角柱の形状をなす従来のバレル槽を説明する
正面図である。

【符号の説明】

３ バレル槽 ５ 本体 ６ 収容部 ７ 取付治具 ９ 開口部 １０ 開閉蓋 ２０ ゴムパッキン

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 回転軸線方向に長く構成され、公転せし
   められることによって内部の被研磨物を研磨するバレル
   研磨装置に於けるバレル槽であって、 バレル槽の本体から、横断面視で略１２０度のピッチ角
   度で、且つバレル槽の軸線から略同一半径長さで、被研
   磨物を取り付けるための取付治具を収容でき且つ本体の
   略全長に亘る長さの収容部を各々突設し、各収容部の先
   端に、被研磨物を取り付ける取付治具を出し入れするた
   めの開口部を設け、且つ、該開口部を開閉蓋で開閉可能
   としたことを特徴とするバレル研磨装置に於けるバレル
   槽。
2. 【請求項２】 開閉蓋は、その一側がヒンジにより開口
   部の一側に枢着され、且つ他側がクランプにより開口部
   の他側に止め付けられるように構成されていることを特
   徴とする請求項１記載のバレル研磨装置に於けるバレル
   槽。
3. 【請求項３】 開閉蓋の内面の周縁部分にゴムパッキン
   が設けられると共に、開口部の縁部が、取付治具の掛着
   部を係止する係止部とされ、閉蓋状態の開閉蓋が、前記
   ゴムパッキンを介して該掛着部を押さえるように構成さ
   れた請求項１又は２記載のバレル研磨装置に於けるバレ
   ル槽。