JP2662374B2 - 光音響赤外線検出器 - Google Patents

光音響赤外線検出器

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JP2662374B2
JP2662374B2 JP743195A JP743195A JP2662374B2 JP 2662374 B2 JP2662374 B2 JP 2662374B2 JP 743195 A JP743195 A JP 743195A JP 743195 A JP743195 A JP 743195A JP 2662374 B2 JP2662374 B2 JP 2662374B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光音響赤外線検出器に
関するものであり、さらに詳しくは、化学物質による赤
外線吸収の強さを、生ずる熱による膜の振動として検出
するに際し、前記膜面をプリズムの反射面と微小な隙間
で対向配置させ、プリズムの反射面と膜の少なくとも一
方に小面積の台地を設けてプリズムの全反射面に測定用
光線を反射させたとき生ずるS偏光とP偏光の位相差が
前記膜の金属面とプリズムの全反射面の隙間の変化によ
り変わることを利用し検出感度を高めた光音響赤外線検
出器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】赤外線の熱的検出器の一つとして、一面
に赤外線透過窓を持つ部屋に赤外線を吸収する化学物質
を置き、赤外線透過窓を透過して入射する赤外線を部屋
の中に置かれた化学物質に吸収させ、赤外線吸収による
熱で周辺の気体を加熱し、圧力を上昇させ、そのとき生
ずる圧力変動を、部屋の壁を構成する膜の振動の振幅と
して測定することにより赤外線の強さを検出する方法が
ある。
【0003】このような検出器の受光室に置かれた化学
物質が固有の振動数の赤外線を吸収する場合には、次の
方法により赤外分光スペクトルが得られる。一つは一定
の波数の幅に分散された赤外線の強さを周期的に変え、
それを化学物質に照射し、赤外線の波数の変数として検
出する方法である。そのほかに赤外線をマイケルソン干
渉計などで干渉させ、干渉により異なる周期関数を重畳
した波のように強さを変えた赤外線を化学物質に照射
し、検出された信号をフーリエ変換することにより、赤
外線の波数の変数として吸収の強さを求める方法があ
る。このような方法にて行われる分光法を光音響分光法
と呼ばれている。化学物質がカーボンブラックのように
あらゆる波数の光を吸収する灰色物質の場合は光音響赤
外線検出器はすべての波数の光にたいし感度を持つ赤外
線検出器として利用できる。
【0004】膜の振動の振幅の測定法として、膜を金属
など導電体で製作し、それと平行に平面な電極を置き膜
の振動の振幅を静電容量の変化として電気的に測定する
方法(沢田嗣郎編「光音響分光法とその応用」学会出版
センター (1982) P60)や、膜を光の反射面になるよう
に表面を処理し、膜の変位を光の反射位置の変化として
光学的に測定する方法( M.J.E.Golay, Rev. Sci. Inst
r. 18 (1947)357 及び20 (1949) p816 )等が知られて
いる。
【0005】膜の振動の振幅を静電容量の変化として測
定する光音響赤外線検出器の例として図6に示す構造の
ものがある。図6は静電容量方式の光音響赤外線検出器
の一例を示す断面図である。図6において、101 はセ
ル、102 は赤外線透過窓、103 は試料カップ、104 は化
学物質、105 は受光室、106 は連通孔、107 は感圧室、
111 は固定電極、112 は絶縁ブッシュ、113 は膜支持
体、114 はケース、115 は膜、116 は比較室、117 は検
出空間、121 は赤外線である。
【0006】周期的に強さの変わる赤外線121 は赤外線
透過窓102 を透過し、化学物質104を照射する。化学物
質はその赤外線吸収特性に対応した波数の赤外線を吸収
する。吸収された赤外線のエネルギーは蛍光として放射
されるか、熱として放出される。放出された熱は化学物
質自身を加熱するとともに周囲の気体も加熱する。化学
物質の周辺の気体は受光室105 に封じられているので、
加熱により圧力が上昇する。この圧力上昇が連通孔106
を通して感圧室107 に伝えられ、膜115 を加圧する。こ
の加圧により膜は変位し、固定電極111 との間の静電容
量が変化する。この静電容量の変化は電気信号に変換さ
れ、増幅される。膜と固定電極の間の静電容量を安定に
保つため膜支持体113 が用いられ、固定電極111 をケー
ス114 と絶縁を保ちながら支持するため、絶縁ブッシュ
112 が用いられる。
【0007】図7は膜の変位を光の反射位置の変化とし
て測定する光音響赤外線検出器の一例である。図7にお
いて201 はケース、202 は赤外線透過窓、203 は化学物
質、204 は受光室、205 は膜、211 は測定用光源、212
はレンズA、213 はレンズB、214 はスリット、215 は
集光レンズ、216 はスリットの像、217 は測定用光線、
218 は反射鏡、219 は光電管、221 は赤外線である。
【0008】周期的に強さの変わる赤外線221 は図6の
静電容量式の光音響赤外線検出器と同様に、化学物質20
3 を加熱し、受光室204 中の気体を膨張させ、膜205 を
変位させる。測定用光源からの光線はレンズA 212とレ
ンズB 213をへてスリット214 を通過する。スリット21
4 の像216 は集光レンズ215 により膜の反射面上に焦点
を結んだ後再び集光レンズ215 を通り、スリット214 の
上で結像する。膜の変位によりスリット214 上のスリッ
トの像216 はぼける。これによりスリット214を通過す
る測定用光線217 の光量が変化する。膜205 の変位によ
り光量が変わった測定用光線217 は反射鏡218 で光電管
219 に入射し、その光量が光電管219 により測定され
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】赤外線が化学物質に吸
収される強さを検出するにあたり、吸収した熱による気
体の圧力変動を膜の振動に変換して測定する場合、測定
される信号(この例では膜の振動の振幅)は一般に数百
Hz以上の高周波では周波数に反比例して減少する。こ
こで測定された電気信号は増幅器により増幅されるが、
増幅回路には常に避けられない一定のノイズを伴う。こ
の電気的ノイズはあらゆる周波数において一定のパワー
として存在する。このほかに膜の振動に対するブラウン
運動による機械的ノイズもあるが、このノイズは数百H
z以上の高周波では周波数の増加に比例して減少する。
従って、周波数増加に伴い検出信号が低下すると相対的
に電気的ノイズが増加し、高周波領域におけるS/N 比を
悪化させる。従って検出可能な周波数を上げるためには
検出部の検出感度(一定の圧力変動から得られる増幅前
の電気信号の大きさ)を上げる必要がある。
【0010】また光音響赤外線検出器を赤外分光に適用
する場合、赤外分光分析する化学物質が非常に小量であ
ったり、その吸収係数が小さいことが多い。このような
とき、吸収される赤外線のエネルギーは少なく、膜の振
動の振幅は非常に小さくなる。また赤外線検出器として
使用する場合も、検出すべき光のエネルギーが少ないと
きは膜の振動の振幅は小さくなる。このような振動の小
さい振幅に対する検出感度を向上させることによって、
より小量の試料の分析およびより弱い赤外線の検出が可
能になる。以上のような理由から検出部の検出感度を高
めることは少量の試料の分析及び高周波領域での分析を
可能とするための有効な手段であり、光音響検出器の応
用を広げる上で非常に重要なことである。
【0011】しかし従来の方法では感度向上には限度が
ある。例えば前記の電気的に測定する方法においても、
膜の振動の小さい振幅を感度良く、静電容量の変化とし
て、電気的に測定するためには、固定電極と膜を接近さ
せ、膜の変位に対する静電容量の変化を大きくすれば良
いが、あまり近づけると、電極間に静電力が働き、膜と
固定電極は接触してしまう。従って膜と固定電極はある
距離より近く接近させることは出来ない。
【0012】また光の反射位置の変化として測定する方
法において、膜の変位の測定感度を向上させるために、
たとえばスリットの透光部の隙間を狭くし、膜の基準位
置におけるスリットの像を鋭くし、膜の変位によるぼけ
との差を大きくする手段も考えられる。しかしこの方法
は光の回折現象によりスリットの隙間を小さくすること
およびスリットの像を鋭くすることには限界がある。従
ってこの方法でも測定感度の向上には限度がある。
【0013】上記いずれの方法も物理的な原理により、
改善の成果には限界がある。これを打破し、より感度を
高く膜の振動の振幅を測定するためにはこれらとは別の
物理的な原理によらなくてはならない。本発明発明者は
上記のような測定上の限界を乗り越えるために、これら
とは異なる物理的原理により測定する方法を探索した結
果、膜の振動の小さい振幅を感度良く検出する手段とし
て、膜をプリズムの全反射面と微小間隔で対向配置さ
せ、プリズムにS偏光とP偏光を含む直線偏光を入射さ
せるとプリズムの全反射面で反射する光のP偏光とS偏
光の間の位相差が境界面と金属の鏡面との隙間の大きさ
に対応して変化することを利用することにより解決でき
ることを知った。
【0014】この方法及び原理について以下に説明す
る。周辺の媒質より高い屈折率を持つプリズムの内部か
ら、臨界角より大きい入射角で、光を反射させると、光
はプリズムと周辺の媒質との境界面で全反射する。この
際、周辺の媒質に吸収がなければ、光のエネルギはすべ
て反射される。この原理は光ファイバによる光の伝送に
利用されている。しかし全反射の境界面の外部の極近傍
には光の電磁波が洩れており、この波をエヴァネッセン
ト波(消衰する波の意)と呼んでいる。この波は反射光
としてプリズム内部に戻っていくが、エヴァネッセント
波の電磁界が有効な強さを持つ境界面の外部層内で、物
質との相互作用があれば、反射光はその影響を受ける。
たとえば物質に特有の波長の吸収があれば、反射光はそ
の波長が吸収された光となる。
【0015】エヴァネッセント波の電磁界が有効な強さ
を持つ境界面の外部層に金属の鏡面を接近させると、そ
の境界面で反射する光のP偏光(入射面に平行な偏光)
とS偏光(入射面に垂直な偏光)の間の位相差は境界面
と金属の鏡面との隙間の大きさに対応して変化する。こ
の位相差はマックスウエルの方程式を解くことにより得
られる。図8は波長が670nm の光が屈折率1.7 のプリズ
ム中を進み、45゜の角度で全反射する場合、全反射面と
金属の鏡面との隙間の大きさとP偏光とS偏光との位相
差の関係を示したグラフである。隙間の大きさが0.1 μ
m オーダーの僅かな変化に対し位相差が大きく変化して
いることが分かる。このような現象は本発明発明者の研
究により、赤外線領域で実験的にも確認され、実際の現
象と理論の一致が証明されている(Appl. Spectrosc. 4
7 (1993) p156 )。
【0016】しかし上記のような原理に基づき、膜の振
動の小さい振幅を測定する場合、膜の金属面とプリズム
の全反射面が極めて接近しているため、膜の振動の際、
それらの隙間に存在する気体の移動による強い粘性抵抗
を受ける。すなわち膜が振動するとその速度に比例して
振動を妨げようとする力が発生するという問題が生ず
る。そこで本発明の発明者はこの妨害作用をさけ、検出
感度を高めることのできる構造について検討した。
【0017】膜の金属面とプリズムの全反射面との隙間
の気体層による膜の振動に対する粘性抵抗圧力は、隙間
の間隔がd で幅がa の帯状の台地の場合次の式で与えら
れる。 p = ( ηa2/8d3)vm ・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1) ここでp はプリズムの台地の面上で膜が受ける圧力、η
は空気の粘性率、vmは膜の速度である。プリズムの台地
の面上に働く力について運動方程式を書くと次のように
なる。 md2x/dt2 + (ηa2/8d3)S2dx/dt + kx = (PS1/2)sinωt ・・・(2) ここでm は膜の質量、x はプリズムの台地の面上の膜の
位置、S2=(a ×l)はプリズムの台地の面積、l は台
地の長さ、k はダイヤフラムのばね常数、P は膜に加わ
る圧力、S1は膜の面積、ωは膜に加わる圧力の角周波数
である。膜に加わる圧力の1/2 がプリズムの台地の面上
の膜に力として集中すると仮定している。ここでm = 4.
4 × 10-6 [Kg], η = 1.76 × 10-5 [Kg/ms] ,d= 0.1
[μm],S2 = a× l =a ×10-6×0.5 ×10-3=0.5a × 10
-9[ m2], k = 616 [N/m], P =0.1 [Pa], S1 = 3.14 ×
10-4 [m2] とし、a = 50 [μm],100 [ μm], 及び200
[ μm]のそれぞれの場合についてx = Asinωt の解を仮
定すると、 A = 1.57× 10-5 /(616 - 4.4 ×10-6ω2 + 0.1375ωi)・・(3) (a = 50 [μm]) A = 1.57× 10-5 /(616 - 4.4 ×10-6ω2 + 1.1 ωi)・・・(4) (a =100 [μm]) A = 1.57× 10-5 /(616 - 4.4 ×10-6ω2 + 8.8 ωi)・・・(5) (a =200 [μm]) となり(A は振幅)、これより膜の振幅の絶対値の周波
数の特性をグラフに示すと図9のとおりになる。図9に
おいて、及びはそれぞれa=50,100及び200[ μm]
の場合であり、台地の幅が2倍になると振幅、即ち感度
は1桁近く低下し、台地の幅の増大、すなわち台地の面
積の増大が感度の低下に重大な影響を与えていることが
分かる。
【0018】上記の知見に基づいて、本発明発明者は膜
の金属面とプリズムの全反射面の光学的な測定部の面積
を出来る限り小さくし、それに関係のない部分は膜とプ
リズムの全反射面の隙間を広げる構造がよいこと、及び
そのため、対向するプリズム又は膜、あるいはその双方
の表面に台地を形成しその台地の上面を光学的測定のた
めの全反射面とすることにより感度が良好で、また高周
波領域でのS/N比の優れた検出器が得られることを見
出し本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0019】即ち本発明は赤外線透過窓を一面に有し、
内部の圧力変化に応じて変位する膜を他の一面に有する
ケースの内部に赤外線を吸収する化学物質を置き、前記
化学物質が前記赤外線透過窓を透過して入射する赤外線
を吸収する強さの検出に当たり、強さを周期的に変えな
がら前記赤外線を照射し、赤外線を吸収するとき生ずる
熱が、前記化学物質の周辺の気体を加熱し、それにより
発生する前記気体の圧力変動が膜を振動させ、その振動
の振幅を測定する方法を用いる光音響赤外線検出器にお
いて、測定用光源からの測定用光線を導入する入射窓と
反射光を導出させる出射窓を有するプリズムをその反射
面が前記膜の金属面と対向するよう配置し、対向する前
記プリズムの反射面と膜の金属面の少なくとも一方に小
面積の台地を設け、台地の上面を鏡面に仕上げ、プリズ
ム面又はプリズム上の台地の上面を全反射面とし、台地
の上面をその対向面と微小な隙間を挟んで配置して成
り、測定用光線をプリズムの入射窓の手前に置かれた偏
光子により入射面に垂直な偏光(S偏光)と平行な偏光
(P偏光)を含む直線偏光として入射し、前記プリズム
の反射面で全反射の後出射窓を通して出てゆく反射光線
のS偏光とP偏光の位相差を、出射窓の後方に置かれた
検光子により測定光線の強さの変化に変え、フォトダイ
オードにより電気信号として得ることにより、前記台地
の上面とその対向面との隙間の変化を求め、これにより
前記膜の振動の振幅を測定し、前記化学物質による赤外
線の吸収の強さを検出することを特徴とする光音響赤外
線検出器である。
【0020】本発明において、台地の設置場所はプリズ
ムの反射面と膜のいずれの側でも良いが、プリズムの反
射面に台地を設けた場合は、その台地の上面を全反射面
とする。また前記全反射面に対向する膜に台地を設けた
場合は、台地の上面を前記プリズムに平行な金属の鏡面
とし、プリズムは台地のない全反射面とする。更にプリ
ズムの反射面と膜の双方に小面積の台地を設け、それぞ
れの台地の上面を鏡面とし、プリズム上の台地の上面を
全反射面とすることもできる。
【0021】本発明の特徴部分である台地の構造を、プ
リズムの反射面に台地を設けた場合について以下に説明
する。図10はプリズム11の反射面12に小面積の台
地13を設けた構造であり、金属の鏡面を持つ膜9と空
気層10を挟んで高屈折率のプリズム11が配置されて
いる。高屈折率のプリズム11は上面12が全反射面の
台地13、入射窓17、出射窓18を有し、それぞれ鏡
面に仕上げられている。入射窓の手前には偏光子19が
置かれ、入射面(入射光の光軸と反射光の光軸を含む
面)に対し45゜傾いた直線偏光22を入射する。出射
窓18の後方には検光子20が置かれ、偏光子19の偏
光角に対し90゜の偏光角に設定する。このような偏光
子と検光子の偏光角の関係はクロスニコルとよばれ、P
偏光とS偏光の間に位相差がなければ光は通らない。台
地の面積は光学的な測定が可能なかぎり小さくするのが
望ましく、通常、面積で0.05mm2 以下(例えば0.1mm ×
0.5mm の長方形あるいは半径0.12mmの円形より小さい形
状)に加工する。高屈折率プリズムに台地の全反射面を
形成させる方法として次のような方法がある。一つは高
屈折率プリズムを入射窓、出射窓および全反射面を有す
るように仕上げた後、全反射面の台地部を除き他の部分
をエッチングあるいは研磨により落とす方法であり、そ
の他に、仕上げた高屈折率プリズムの全反射面に台地の
部分を光学的に接着することにより形成することもでき
る。
【0022】本発明の光音響赤外線検出器の全体を図1
に示す。図1において、1はケースでありその一面は赤
外線透過窓2となっており、他の一面は膜9を有する。
ケース内には試料4を収納するための試料カップ3が置
かれている。5が受光室、6が膜支持体、7が連通孔、
8が感圧室である。膜9は気体層10を介してプリズム
11の上面12と対向配置され、プリズム上面には台地
13が設けられている。14は台地の全反射面、17は
プリズムの入射窓、18はプリズムの出射窓であり、2
1は測定用光源、22は測定用光線、23がフォトダイ
オード、19が偏光子、20が検光子である。図1では
図9と同様にプリズム上に台地を形成させた形状のもの
を示している。
【0023】周期的に強さが変わる赤外線24は赤外線
透過窓2を透過し、受光室5に置かれた試料4を照射す
る。赤外線の強さの周期的な変化として、単一の正弦波
あるいはいくつかの周期関数を重畳した波がある。試料
は試料の固有の振動数に相当する波数の赤外線を吸収す
る。吸収された赤外線のエネルギーの内、放出された熱
は試料自身を加熱するとともに周囲の気体も加熱する。
試料の周辺の気体は受光室5に封じられているので、加
熱により圧力が上昇する。この圧力上昇が連通孔7をと
うして感圧室8に伝えられ、膜9を加圧する。この加圧
により膜は変位し、プリズム11の台地と台地13の全
反射面14との気体層10の厚さが変化する。測定用光
源21からの測定用光線22は偏光子19でP偏光成分
とS偏光成分を含む直線偏光にして、プリズム11の入
射窓17から入射し、台地の全反射面14で反射して、
検光子20を通すことにより、P偏光とS偏光の位相差
を光の強さの変化に変え、フォトダイオード23でその
強さを測定する。赤外線は周期的にまたは異なる周期関
数の重畳した波のように強さが変化しているので、試料
の周辺の気体の圧力はその変化に応じて変動し、膜もそ
れに対応して振動する。フォトダイオードはこの膜の振
動の振幅を電気信号の変化として測定する。
【0024】プリズムの全反射面と膜の金属面との全面
が接近することを避ける他の方法として膜に台地を設け
ても良い。このような実施態様について構成の要部のみ
を図2に示す。図2において11がプリズム、12がプ
リズムの全反射面、9が膜、15が膜上に形成された台
地、16が金属の鏡面、22が測定用光線である。膜上
の台地15は金属面を台地状に蒸着により形成するか、
または小面積の金属の鏡面を金属膜に接着することによ
り形成することが出来る。測定用光線22がプリズム1
1の全反射面12で反射するときの光線のスポットと同
程度の面積を持つ台地15が膜9の上に付いている。こ
の台地の上面は金属の鏡面16に仕上げられ、プリズム
の全反射面12と微小な隙間を形成している。隙間を形
成している部分の面積は光線のスポットと変わらないの
で、光学的な機能は台地のない場合と変わらない。台地
以外の面の隙間は大きくとれるので、膜の振動の受ける
抵抗は小さく、プリズムに台地を設ける構造と同様に、
隙間の気体層による粘性抵抗が小さくなる。
【0025】図3は、また別の実施態様であり、プリズ
ムの反射面と膜の双方に小面積の台地を設けた例であ
る。図3の(a) が構成要部の正面図、(b) が側面図であ
る。図3において、11がプリズム、13がプリズムの
台地、14が台地の上面の全反射面、9が膜、15が膜
上の台地、22が測定用光線である。測定用光線22は
プリズム11の台地13の全反射面14で反射する。こ
の台地の全反射面と対向する膜9の上の台地15の面1
6は金属の面で、全反射面との間で隙間を構成する。こ
の場合も光学的な機能は台地のない場合と変わらず、測
定に関係ない面の隙間を大きくとれるので、気体層によ
る粘性抵抗が小さくなる。
【0026】本発明において、膜は通常金属膜であり、
特に柔軟性等の点から金箔が好ましいが、例えばポリエ
チレンテレフタレート等のプラスチック性のフィルム上
に金を蒸着したものでもよい。台地はプリズム上に設け
る場合は通常プリズムと同じ材質のものを用い、上面を
鏡面に仕上げ、プリズムの全反射面とする。金属膜上に
設ける場合は上面が金属であり、鏡面に仕上げる。
【0027】台地の上面とその対向面との隙間は通常0.
02〜1.0 μm、好ましくは0.05〜0.7 μmである。また
台地の高さは2〜100μmが好ましく、また感度を上
げるためには前記したように台地部分の面積、特に台地
の幅は測定可能な限り、小さくすることが必要であり、
例えば円形の場合で直径は240 μm以下、長方形の場合
は幅が100 μm以下で面積は0.05mm2 以下が好適であ
る。測定用光源としては波長が揃っており、一点上に結
像できることから特にレーザーが好適である。
【0028】
【作用】プリズムの屈折率を1.7 とし、670nm の入射光
を45゜の入射角で入射させると、金属面とプリズムの
全反射面との隙間の大きさに対するP偏光とS偏光の位
相差は図8のように変化する。この場合、金属面とプリ
ズムの隙間を約0.13μmに調整すると、位相差はなく、
偏光子と検光子がクロスニコルの関係であるので、光は
通過しない。金属の鏡面を持つ膜1が変位し、隙間が小
さくなると、P偏光とS偏光の位相差はマイナスの方に
変わり、その大きさに対応して通過する光の強さが変化
する。位相差が- πラヂアンのとき最大の通過する光の
強さが得られる。この光の強さの変化をフォトダイオー
ドなどで測定することにより、金属の鏡面をもつ膜の振
動の小さな振幅が測定出来る。
【0029】
【実施例】図1の構造で次ぎのような設計による光音響
検出器を試作し、ポリスチレン粉末を分析し、その性能
を評価した。
【0030】[実施例1]測定用光源に発振波長が810n
m のレーザーダイオードを用いた。プリズムに屈折率が
1.7 の材料を使用し、全反射面への入射角は45゜とし
た。プリズムの台地の形状は50μm x 500 μm の長方形
のものを用いた。測定用光線の強さの測定には受光面の
直径が0.8mm のPIN フォトダイオードを用いた。レーザ
ーダイオードからの測定用光線はレンズで集光し、台地
の全反射面に結像させた。入射側の光路に入射面に対し
45°の偏光となるように偏光子を置き、出射側の光路に
偏光子に対し90°の偏光になるように検光子を置いた。
赤外線の透過窓は厚さ1mm のZnSeを用い、受光室の内径
は9mm とし、その中に直径が6mm の試料皿を収め、ポリ
スチレン粉末試料を入れた。振動膜には金箔を使用し
た。試作した光音響検出器をフーリエ変換赤外分光光度
計に設置し、ポリスチレン粉のスペクトルを得た。その
結果を図4のAに示す。
【0031】[実施例2]プリズムの台地の形状を80μ
m φの円形とした以外は実施例1と同じ装置を用い、実
施例1と同様にしてポリスチレン粉末試料を分析し、赤
外線吸収スペクトルを得た。結果を図4のBに示す。
【0032】[比較例1]実施例で用いたと同じポリス
チレンから作ったフィルムを分析試料とし、DTGS検出器
を用い、透過法により分析した。得られた吸光度スペク
トルを図4のCに示す。
【0033】本発明による光音響検出器では、粉末状試
料のポリスチレンを分析試料として用いることができ、
得られたスペクトルは図4から明らかなように、ポリス
チレンの特徴を示す吸収ピークをすべて検出している。
【0034】図5に本発明及び従来法の光音響検出器の
ノイズスペクトルを示す。図5においてCは図6に示す
ような従来の静電容量式の光音響赤外線検出器を使用し
た場合のノイズスペクトルであり、Aは本発明で全反射
面の台地の形状を50μm × 500μm の長方形とした実施
例1の場合、Bは台地を直径80μm の円形とした実施例
2の場合のノイズスペクトルである。本発明においては
ノイズが周波数が増すに従い減少しているのに対し、従
来法の光音響赤外線検出器では周波数に関係なく大きな
ノイズが現われる。このことから本発明による光音響検
出器は高周波域で優れたS/N 比が得られていることを示
している。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、入射窓、全反射面およ
び出射窓を有する高屈折率プリズムの全反射面または対
向膜面を小面積の台地として、プリズムの全反射面を膜
の金属面と平行に配置し、プリズムの入射窓より入射し
出射窓より出射する測定用光線のS偏光とP偏光の位相
差の変化を解析することにより、従来の方法より優れた
感度で赤外線分光分析を行なうことができる。とくに増
幅に伴う白色雑音の影響のない高い信号が得られ、高周
波域のS/N 比が飛躍的に改善された。これにより粉末試
料がそのまま分析できるなど、前処理なしで分析できる
ことや、白金黒上の付着物など黒色物質の分析が容易な
ことなどの利点に加え、従来より高い周波で変調された
赤外線を検出することにより、従来より薄い層の分析が
可能となり、更に検出感度が向上したことにより、従来
より少量の試料の分析や従来より弱い赤外線の検出が可
能になるなど、光音響赤外線検出器の応用を拡大できる
ので工業的価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光音響検出器の構造の一例を示す図で
ある。
【図2】本発明のプリズムの全反射面と金属面の構造の
一例を示す図である。
【図3】本発明のプリズムの全反射面と金属面の別の構
造の例を示す図である。
【図4】本発明の検出器及び別の方法を用いて測定した
ポリスチレンの赤外線吸収スペクトルである。
【図5】本発明の検出器を用いて測定したノイズスペク
トルと従来の検出器で測定したノイズスペクトルを示
す。
【図6】従来の検出器の構造を示す図である。
【図7】従来の検出器の別の構造を示す図である。
【図8】プリズムの全反射面と金属の鏡面の隙間とS偏
光ーP偏光の位相差の関係を示すグラフである。
【図9】本発明の検出器において、台地の幅を変化させ
た時の膜の振幅の絶対値の周波数の特性曲線である。
【図10】本発明の測定原理を説明するための図であ
る。
【符号の説明】
1 ケース 2 赤外線透過窓 3 試料カップ 4 試料 5 受光室 6 膜支持体 7 連通孔 8 感圧室 9 膜、 10 気体層 11 プリズム 12 プリズム上面 13 プリズム上の台地 14 台地の全反射面 15 膜上の台地 16 鏡面 17 プリズムの入射窓 18 プリズムの出射窓 19 偏光子 20 検光子 21 測定用光源 22 測定用光線 23 フォトダイオード 24 赤外線 101 セル 102 赤外線透過窓 103 試料カップ 104 化学物質 105 受光室 106 連通孔 107 感圧室 111 固定電極 112 絶縁ブッシュ 113 膜支持体 114 ケース 115 膜 116 比較室 117 検出空間 121 赤外線 201 ケース 202 赤外線透過窓 203 化学物質 204 受光室 205 膜 211 測定用光源 212 レンズA 213 レンズB 214 スリット 215 集光レンズ 216 スリットの像 217 測定用光線 218 反射鏡 219 光電管 221 赤外線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−172738(JP,A) 特開 昭62−299728(JP,A) 特開 平6−507489(JP,A) APPLIDE SPECTROSC OPY Vol.47(1993),No. 2,p.156−160 J.Appl.Phys.Vol.54 (1983),No.8,p.4251−4253

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】赤外線透過窓を一面に有し、内部の圧力変
    化に応じて変位する膜を他の一面に有するケースの内部
    に赤外線を吸収する化学物質を置き、前記化学物質が前
    記赤外線透過窓を透過して入射する赤外線を吸収する強
    さの検出に当たり、強さを周期的に変えながら前記赤外
    線を照射し、赤外線を吸収するとき生ずる熱が、前記化
    学物質の周辺の気体を加熱し、それにより発生する前記
    気体の圧力変動が膜を振動させ、その振動の振幅を測定
    する方法を用いる光音響赤外線検出器において、測定用
    光源からの測定用光線を導入する入射窓と反射光を導出
    させる出射窓を有するプリズムをその反射面が前記膜の
    金属面と対向するよう配置し、対向する前記プリズムの
    反射面と膜の金属面の少なくとも一方に小面積の台地を
    設け、台地の上面を鏡面に仕上げ、プリズム面又はプリ
    ズム上の台地の上面を全反射面とし、台地の上面をその
    対向面と微小な隙間を挟んで配置して成り、測定用光線
    をプリズムの入射窓の手前に置かれた偏光子により入射
    面に垂直な偏光(S偏光)と平行な偏光(P偏光)を含
    む直線偏光として入射し、前記プリズムの反射面で全反
    射の後出射窓を通して出てゆく反射光線のS偏光とP偏
    光の位相差を、出射窓の後方に置かれた検光子により測
    定光線の強さの変化に変え、フォトダイオードにより電
    気信号として得ることにより、前記台地の上面とその対
    向面との隙間の変化を求め、これにより前記膜の振動の
    振幅を測定し、前記化学物質による赤外線の吸収の強さ
    を検出することを特徴とする光音響赤外線検出器。
  2. 【請求項2】プリズムの反射面に小面積の台地を設け、
    台地の上面を全反射面とすることを特徴とする請求項1
    記載の光音響赤外線検出器。
  3. 【請求項3】プリズムの反射面に対向する膜に小面積の
    台地を設け、その上面を前記プリズムに平行な金属の鏡
    面とし、プリズムは台地のない全反射面とすることを特
    徴とする請求項1記載の光音響赤外線検出器。
  4. 【請求項4】プリズムの反射面と膜の双方に小面積の台
    地を設け、それぞれの台地の上面を鏡面とし、プリズム
    上の台地の上面を全反射面とすることを特徴とする請求
    項1記載の光音響赤外線検出器。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
APPLIDE SPECTROSCOPY Vol.47(1993),No.2,p.156−160
J.Appl.Phys.Vol.54(1983),No.8,p.4251−4253

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