JP2661964B2 - 耐食性容器及びその製造方法 - Google Patents

耐食性容器及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は酸溶液、アルカリ溶液及び塩溶液に対して高
耐食性を発揮する合成樹脂製の耐食性容器及びその製造
方法に関し、詳細には高い強度を発揮し得る耐食性容器
及びその製造方法に関するものである。
[従来の技術] 酸溶液やアルカリ溶液等を貯留又は運搬する目的で合
成樹脂製の耐食性容器が利用されている。第3図は溶液
運搬用のタンクローリーを示す側面説明図、第4図は該
タンクローリーに搭載される耐食性容器の構造説明図、
第5図は第4図のV−V線断面を示す一部拡大図であ
る。耐食性容器1はトレーラ2の荷台3上にバンド4に
よって固定される。該耐食性容器1の上部には溶液を導
入するための溶液導入口6が形成され、且つ下部には溶
液を取り出すための溶液取出口7が形成される。尚該耐
食性容器1の容積が大きい場合には、運搬中に起こる溶
液移動衝撃を緩和するために容器の中間部に鏡板5が設
けられる。尚この鏡板は容器1内に複数種の溶液を分割
収納する場合の仕切板として用いられることもあり、従
って該鏡板5は各仕切室の容積に合わせて複数枚適宜の
間隔で設けることもできる。
前記耐食性容器1の内側は収納溶液による腐食に対し
て高い耐久性を発揮する合成樹脂材料を選択して形成す
ると共に、容器自体を高強度なものとする目的で複層構
造が採られている。即ち第5図に示す様に内側に熱可塑
性樹脂層8が構成され、該樹脂層8を補強する目的で外
側に繊維強化プラスチック層(以下単にFRP層という)
9が形成される。上記熱可塑性樹脂層8の形成材料とし
ては例えばポリエチレン樹脂や弗素樹脂等を用い、FRP
層9としては熱硬化性樹脂を含浸したガラス繊維や有
機、無機繊維等をFW法に従って巻回又はハンドアップ法
に従って添着し複層に積層したものが利用される。
上記タンクローリーに利用される耐食性容器1の直径
は一般に1.5m程度にまで及び、また定置式のものでは直
径2〜3mに及ぶこともある。従って熱可塑性樹脂層8に
よって形成される熱可塑性樹脂タンク31は通常の押出し
成形法や圧縮成形法によって製造するのは不向きであ
り、第6図(A)に示す様な割り型20、21を使った回転
成形法が利用される。即ちフランジ部20aによって一体
接合された中空状の割り型20,21内に粉末状の樹脂原料3
0を入れ、該割り型の近傍に設けられた加熱装置22によ
って割り型20,21を加熱して前記樹脂原料30を溶融しつ
つ、図示しない回転機構によって割り型20、21を、軸芯
を中心に矢印方向へ回転し、溶融した樹脂を割り型20,2
1内周全面に均一に流延する。そして割り型20,21を冷却
して内部の樹脂材料が保形されたのを確認すると、割り
型20,21を分解し、成形された熱可塑性樹脂タンク31を
取り出す。その後前記熱可塑性樹脂タンク31外表面を荒
研磨することによって粗面とし、その上へFRP層構成用
樹脂を塗布し、第6図(B)に示す如く強化繊維32を巻
回し、この作業を繰返してFRP層9を形成する。尚FRP層
9の形成手段は前述の如く種々変更可能である。第6図
(C)はFRP層9を形成した後の耐食性容器1を示す説
明図である。尚第4図の如く容器1内に仕切を形成する
に当たっては、(イ)前記熱可塑性樹脂タンク31を長さ
方向に並べて突き合せ溶接した後、該タンク31外側にFR
P層を形成する工程、或は(ロ)熱可塑性樹脂タンク31
にFRP層を形成したもの同士を突き合わせ、FRPを使って
接合する工程のいずれかが追加される。
[発明が解決しようとする課題] 耐食性容器1は第5図に示した様に複層構造で形成さ
れ、熱可塑性樹脂層8の外面は粗面加工が施されてはい
るが、該粗面は機械加工によるものである為、単なる凹
凸が施された程度であって表面積を増やしているという
に過ぎないものであるから、温度変化による膨張・収縮
又は外力が作用したときには熱可塑性樹脂層9は容易に
剥離する。上記の層間で剥離が起こるとFRP層9による
補強効果は低減して内部の熱可塑性樹脂タンク31はそれ
自体の強度に戻ってしまい、例えば溶接々合部分が存在
するものでは、該溶接部分にクラック等の破損を生じ易
くなる。また前記(ロ)の工程を実施する場合には、接
合作業に起因する外力や温度変化等のために、前記剥離
が発生し易く、接合作業に高度の熟練を必要としてい
た。
そこで本発明者らは複層構造の耐食性容器における熱
可塑性樹脂層とFRP層の剥離を可及的に防止し、高い強
度を長期間に亘って維持することのできる耐食性容器を
提供する目的で種々研究を重ね、本発明を完成した。
[課題を解決するための手段] 上記目的を達成した本発明の耐食性容器においては、
熱可塑性樹脂容器とFRP層の間には、前記熱可塑性樹脂
容器を構成する樹脂との接着融合性が良好な同種又は異
種の熱可塑性樹脂で構成される熱可塑性樹脂発泡層が形
成され、該発泡層の外面に形成された開口気泡によって
FRP層との一体性が高められる構成を採用したものであ
る。また該耐食性容器の製造に当たっては、回転成形法
により熱可塑性樹脂発泡層を形成し、引続き回転成形法
を用いて前記熱可塑性樹脂発泡層の内側に熱可塑性樹脂
層を形成して熱可塑性樹脂容器を成形し、該熱可塑性樹
脂容器を脱型した後、前記熱可塑性樹脂発泡層のスキン
層を研削して発泡層の表面に開口気泡を形成せしめ、該
粗面上にFRP層を被覆形成することに要旨を有する。
[作用及び実施例] 第1図(A),(B)は本発明に係る耐食性容器の断
面を示す拡大図である。該耐食性容器1は内側から熱可
塑性樹脂層8,熱可塑性樹脂発泡層10及びFRP層9を順に
積層して形成され、第1図(A)に示す実施例について
は熱可塑性樹脂層8と熱可塑性樹脂発泡層10は同一種類
の合成樹脂材料で形成されており、たとえば熱可塑性樹
脂層8がポリエチレン樹脂によって成形される場合は、
熱可塑性樹脂発泡層10は発泡ポリエチレン樹脂で構成さ
れる。
また第1図(B)に示す様に熱可塑性樹脂層8と熱可
塑性樹脂発泡層10を異種の合成樹脂材料を用いても良
い。ただしこのとき両層8,10の境界面における接着融合
性は良好なものに限られ、例えばポリエチレン樹脂−発
泡ポリプロピレン樹脂といった融点の接近した組合せが
利用できる。
熱可塑性樹脂発泡層10の外面には第2図に示す様な平
滑なスキン層12が形成されるので、該スキン層12を除去
して開口気泡によるミクロな凹凸粗面を外表面に露出さ
せ(例えば第2図の例においては鎖線Cの上方を研削除
去する)、その外側にFRP層9を形成する。上述のミク
ロな凹凸においてはFRP層9の含浸樹脂9aが凹部11内に
進入充填され、これが硬化した後には、該凹部11におけ
る含浸樹脂9aのアンカー作用によりFRP層9と熱可塑性
樹脂発泡層10は強固に接合される。こうして前記の各層
8,10,9が隣接して夫々強固に接合されることになるの
で、温度変化や外力による剥離がなくなり、長期に亘っ
て高強度を保つことにより内部流体の浸透や漏液を防止
できる様になった。
上記積層構造からなる耐食性容器1は次の順序に従っ
て製造される。
第6図(A)に示す割り型20,21内に粉末状の熱可塑
性樹脂原料及び発泡剤等を入れ、加熱しながら割り型2
0,21を回転させ、回転成形法により割り型20,21の内面
に熱可塑性樹脂発泡層10による中空容器を成形する。
次いで該中空容器内に粉末状の熱可塑性樹脂原料を入
れ、と同様回転成形法によって前記発泡層8の内側に
熱可塑性樹脂層8を形成し、熱可塑性樹脂容器を形成す
る。
そして冷却した後、成形された熱可塑性樹脂容器を取
り出す。
上記の熱可塑性樹脂容器の外面には、0.1〜0.2mmの厚
さで平滑なスキン層12が形成されているので、サンドブ
ラスト又はサンダリング等の研磨・研削処理加工によっ
て該スキン層12を取り除き、前記発泡層10の凹凸粗面を
露出させる。
そして第6図(B)に示す様に前記発泡層10の外側に
FRP層9を形成する。
尚必要に応じて従来例と同様に前記(イ),(ロ)の
工程を付け加えて所定容積の耐食性容器を製造する。
上記方法によって製造された耐食性器1はタンクロー
リーとしてトレーラーに搭載されるものであっても良い
し、或は定置式のタンクとして地上や地下に配設利用す
るものであっても構わない。
熱可塑性樹脂層8(約3mm)及びFRP層9(約3mm)が
夫々同じ厚さに形成された第1図(A)及び第5図に示
す試験片を使って引張強さ,曲げ強さ,圧縮強さ及び熱
伝導係数について夫々比較した。尚第1図(A)におけ
る熱可塑性樹脂発泡層10の厚さは熱可塑性樹脂層8の厚
さの1.5〜3.5倍とした。この結果引張強さ、曲げ強さ及
び圧縮強さのいずれにおいても本発明品は従来品に比較
して約5〜15%向上し、さらに熱伝導係数は従来品の約
3/4程度となることが分かった。
[発明の効果] 本発明に係る耐食性容器において熱可塑性樹脂発泡層
を介設することにより、熱可塑性樹脂層とFRPが強固に
接合されて剥離を生じず、高い強度を発揮できる様にな
った。
また本発明の製造方法により上記高強度な耐食性容器
を能率的に製造し得る様になった。
【図面の簡単な説明】
第1図(A),(B)は本発明耐食性容器の断面を示す
一部拡大説明図、第2図は熱可塑性樹脂容器の成形直後
の状態を示す断面説明図、第3図は耐食性容器を載置し
たタンクローリーを示す側面説明図、第4図は耐食性容
器を示す説明図、第5図は従来の耐食性容器の断面を示
す一部拡大説明図、第6図(A)は回転成形法に用いら
れる装置を示す概略説明図、第6図(B)はフィラメン
トワインディングによるFRP層の形成例を示す説明図、
第6図(C)はFRP層形成後の耐食性容器を示す説明図
である。 1……耐食性容器、2……トレーラ 3……荷台、4……バンド 5……鏡板、6……溶液導入口 7……取出口、8……熱可塑性樹脂層 9……FRP層、10……熱可塑性樹脂発泡層 11……凹部、12……スキン層 20,21……割り型、22……加熱装置 32……強化繊維

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】熱可塑性樹脂容器の外側にFRP層が形成さ
    れた耐食性容器において、前記熱可塑性樹脂容器とFRP
    層の間には、前記熱可塑性樹脂容器を構成する樹脂との
    接着融合性が良好な同種又は異種の熱可塑性樹脂で構成
    される熱可塑性樹脂発泡層が形成され、該発泡層の外面
    に形成された開口気泡によってFRP層との一体性が高め
    られてなることを特徴とする耐食性容器。
  2. 【請求項2】回転成形法によって熱可塑性樹脂発泡層を
    形成し、引続き回転成形法を用いて前記熱可塑性樹脂発
    泡層の内側に熱可塑性樹脂層を形成して熱可塑性樹脂容
    器を成形し、該熱可塑性樹脂容器を脱型した後、前記熱
    可塑性樹脂発泡層のスキン層を研削して発泡層の表面に
    開口気泡を形成せしめ、該発泡層の表面にFRP層を被覆
    形成することを特徴とする耐食性容器の製造方法。
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