JP2660257B2 - 吸遮音材 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、吸遮音材に係わり、
さらに詳しくは吸音材と遮音材とを組み合わせて一体的
に構成した吸遮音材に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、ソーナーを有する船舶に対する水
中放射雑音低減の対策としては、ソーナー近傍船底内側
に制振材を施工することが行われていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような制振材を使用したものでは、水中放射雑音の低減
量は満足いくものではなかった。また、吸音材及び遮音
材を単独に使用する方法も提案されているが、これらは
それぞれ単独の効果を意図したものであり、吸音材と遮
音材との複合化した効果を考慮した構造のものではな
く、吸音材と遮音材との複合化したものは未だ存在して
いないのが現状である。

【０００４】

【発明の目的】この発明は、かかる従来の課題に着目し
て案出されたもので、船舶の水中放射雑音を有効に低減
させることが出来る吸遮音材を提供することを目的とす
るものである。また、この発明の他の目的は吸音材層の
表面に、カキ、フジツボ類等が付着するのを防止し、吸
遮音材の耐久性及び吸遮音性能の低下を防止するように
した吸遮音材を提供することを目的とするものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の吸遮音材は、ゴム状弾性体の内部に円柱状の空気層
を有する吸音材層と、ゴム状弾性体の内部に独立気泡ゴ
ムを有する遮音材層とを一体的に積層した構成にし、前
記吸音材層の固有音響インピーダンスを水の固有音響イ
ンピーダンスより小さい特性にすると共に、該吸音材層
の厚み（Ｔ）を対象とする音波の波長（λ）に対して
Ｔ≦λ／４ の関係にしたことを特徴とするものであ
る。

【０００６】また、本発明の吸遮音材の使用に際して
は、前記遮音材層側を船体に取り付けるようにするもの
である。さらに前記吸音材層の表面を海洋微生物等の付
着防止用防汚ゴムで処理された構成にするものである。

【０００７】

【発明の作用】この発明は上記のように構成され、船舶
の喫水下船底部に空気層として独立気泡ゴムを内在する
遮音材層を船体側に、さらにその上層にゴム状弾性体の
内部に円柱状の空気層を有する吸音材層を接着等により
一体的に積層構成して成る吸・遮音材を船体外板に接
着、スタッドボルト止め、又は薄鋼板に予め薄ゴムを加
硫接着し、この上に接着剤を用いて、接着し鋼板部分を
船体に溶接する事により、船舶の水中放射雑音低減する
ことを特徴としている。

【０００８】また、吸音層の表面を、海洋微生物等の付
着防止用防汚ゴムで処理することにより、吸遮音材の耐
久性及び吸遮音性能の低下を防止することが出来るもの
である。

【０００９】

【実施例】以下、添付図面に基づき、この発明の実施例
を説明する。図１は、この発明を実施した吸遮音材本体
１の一部断面図を示し、この吸遮音材本体１は、吸音材
層２と、遮音材層３とが接着剤等により一体的に積層構
成されている。

【００１０】前記、吸音材層２の構成は、ゴム状弾性体
から成る上層カバー層４と、ゴム状弾性体の内部に円柱
状空洞５を有する吸音材層２とを多段的に重ね合わせて
接着剤等を介して接着されており、また、吸音材層２の
下層の遮音材層３は、ゴム状弾性体の格子中に、独立気
泡ゴム６を空気層保持の為のゴム部７に接着させた一体
化構造となっている。

【００１１】なお、吸音材層２の上層カバー層４は、カ
キ、フジツボ類等の海洋微生物が付着するのを防止させ
る為に、防汚材混入の層とする事も可能であり、防汚材
としては、シリコン系材料より成る防汚塗料を使用で
き、このようにすることで、吸遮音材の耐久性及び吸遮
音性能の低下を防止することが出来るものである。次
に、異媒質界面に音波が垂直に入射する時の原理を説明
する。水の固有音響インピーダンスＺ₁ 、吸音材の固有
音響インピーダンスＺ₂ とした場合 Ｚ₁ ＝ρ₁ Ｃ₁ ， Ｚ₂ ＝ρ₂ Ｃ₂ （ρ…密度、Ｃ…音速）となり、吸音材背面ソフトの状
態では、それぞれの間のインピーダンスＺ₁ 、Ｚ₂ の関
係が重要になる。

【００１２】図２及び図３に示すように、Ｚ₁ ＞Ｚ₂ と
した場合、図２のように吸音材の厚さを、音の波長
（λ）のλ／４とした場合には、反射率はキャンセルさ
れてゼロになり、又吸音材の厚さを、図３に示すよう
に、λ／２とした場合には、音の反射波が相乗されて反
射率が高くなる事がわかる。したがって、図２及び図３
のケースのように吸音材、遮音材の組み合わせ構造に於
いては、単に適当な厚みの製品を組み合わせるだけで
は、吸音材として十分な性能を発揮しない場合がある。

【００１３】また、一般に音速（Ｃ）と周波数（Ｆ）及
び波長（λ）の間には、次の関係式が成立する。 λ＝Ｃ／Ｆ また、目的とする周波数（Ｆ）で反射低減量（ＥＲ）を
大きくする為には、吸音材層厚み（Ｔ）は、図２、３よ
りλ／４以下にする必要があるので、上式は のように表される。

【００１４】一方、吸音材層として、吸音効果を期待出
来ると予想され、円柱状空洞が確保可能な最小厚みｔと
すれば、上式のＴの範囲は以下のように表される。 さらに、吸音材裏面に遮音材を使用した背面ソフトの状
態で、吸音材の薄型化を考慮した場合、その条件は吸音
材の音響インピーダンスを水の音響インピーダンスより
小さくすること、 つまり ρ₁ Ｃ₁ ＞ρ₂ Ｃ₂ 一般に水のρ₁ Ｃ₁ は、これを単位換算すれば、 水（１気圧 ０℃） 1.41×10⁶ Kg／ｍ² ・sec 海水（１気圧 ０℃） 1.48×10⁶ Kg／ｍ² ・sec （出典：超音波便覧 Ｐ１３ 表１．１） となり、吸音材のρ₂ Ｃ₂ ＜1.48×10⁶ Kg／ｍ² ・se
c （海水）に設計することにより薄型を考慮した吸遮音
材構造としての吸音材を提供できるものである。

【００１５】また、遮音材の場合は、遮音層としての空
気層の面積空間率及び厚みにより、遮音性能及び周波数
特性が変化する。一般的に、面積空間率が大きく及び厚
みが厚くなると低周波特性が改善される傾向にある。面
積空間率の場合は、空間率が大きくなると、反対にゴム
部が少なくなり、伝搬経路としてのゴム部が少なくなる
事により低周波化、遮音性能を高めることができるので
ある。

【００１６】この発明は、上記のように構成され、例え
ば船舶の喫水下船底部に空気層として独立気泡ゴム６を
内在する遮音材層３を船体側に、さらに、その上層にゴ
ム状弾性体の内部に円柱状の空気層を有する吸音材層２
を接着等により一体的に積層構成して成る吸遮音本体１
を船体外板に接着、スタッドボルト止め、又は、予め鋼
板に加硫接着した物の鋼板部を溶接して取り付けること
により、船舶の水中放射雑音低減及びプロペラ雑音低減
することかできるのである。

【００１７】

【発明の効果】本発明の吸遮音材は、上記のようにゴム
状弾性体の内部に円柱状の空気層を有する吸音材層と、
ゴム状弾性体の内部に独立気泡ゴムを有する遮音材層と
を一体的に積層し、かつ前記吸音材層の固有音響インピ
ーダンスを水の固有音響インピーダンスより小さい特性
にすると共に、該吸音材層の厚み（Ｔ）を対象とする音
波の波長（λ）に対して Ｔ≦λ／４ の関係にしたの
で、船舶の水中放射雑音を有効に低減させることができ
る効果がある。

【００１８】また、吸音層の表面を、海洋微生物等の付
着防止用防汚ゴムで処理することにより、吸遮音材の耐
久性及び吸遮音性能の低下を防止することができるもの
である。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明を実施した吸遮音材本体の一部断面図
である。

【図２】異媒体界面に音波が垂直入射する時の、反射率
の原理を示す説明図である。

【図３】異媒体界面に音波が垂直入射する時の、反射率
の原理を示す説明図である。

【符号の説明】

１ 吸遮音材本体 ２ 吸音材層 ３ 遮音材層 ４ 上層カバー層 ５ 円柱状空洞 ６ 独立気泡ゴム ７ ゴム部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 衛 神奈川県横須賀市久里浜台２−８−11 (72)発明者 菊地 英雄 神奈川県平塚市追分２−１ 横浜ゴム株 式会社 平塚製造所内 (72)発明者 松尾 行夫 神奈川県平塚市追分２−１ 横浜ゴム株 式会社 平塚製造所内 (56)参考文献 特開 平６−222778（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−130287（ＪＰ，Ａ) 特開 昭59−222895（ＪＰ，Ａ) 実開 平４−53576（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭62−120800（ＪＰ，Ｕ)

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ゴム状弾性体の内部に円柱状の空気層を
   有する吸音材層と、ゴム状弾性体の内部に独立気泡ゴム
   を有する遮音材層とを一体的に積層した構成にし、前記
   吸音材層の固有音響インピーダンスを水の固有音響イン
   ピーダンスより小さい特性にすると共に、該吸音材層の
   厚み（Ｔ）を対象とする音波の波長（λ）に対して Ｔ
   ≦λ／４ の関係にしたことを特徴とする吸遮音材。
2. 【請求項２】 前記遮音材層側を船体に取り付けるよう
   にする請求項１に記載の吸遮音材。
3. 【請求項３】 前記吸音材層の表面を海洋微生物等の付
   着防止用防汚ゴムで処理された構成にする請求項１又は
   ２に記載の吸遮音材。