JP2641490B2 - スラリー吸引ポンプ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はスラリー、特に湾底・河底に堆積したヘドロ
を効率よく採取するためのスラリー吸引ポンプに関す
る。

〔従来の技術〕

一般に湾底等に堆積したスラリー状のヘドロはガスの
発生による異臭や養殖魚の死滅、更には海水の汚濁等、
環境に各種の悪影響を及ぼすので、できる限り除去し、
適切な廃棄処理をすることが望まれる。また廃棄処理に
際しては、これを採取した後にある程度乾燥させてから
トラックで運搬したり、ヘドロを収納する特別なコンテ
ナによって行ったりしなければならないが、何れにして
も水分含有量はできるだけ少ないほうが好ましい。

ところで、従来はこのヘドロを採取するには、ドレッ
ジポンプによって水分とともに吸引し、以降の処理段階
に送るものであった。

〔発明が解決しようとする課題〕

ドレッジポンプは浚渫船に設置されているので、ヘド
ロを吸引するにはドレッジポンプに延長パイプを連結し
て、その延長パイプの先端を目的のヘドロの堆積箇所に
導いてやる必要があったが、ドレッジポンプは重いスラ
リーを吸引するために一般に渦巻きポンプが用いられて
おり、ポンプの吸引力が強いので、延長パイプの先端が
踊ってしまい、目的位置に固定するのが困難であった。
そこで、これを防止するためには人の手によって支持す
るようにしていたが、ヘドロが湾底深くに堆積している
場合には潜水して支持しなければならず、環境上も好ま
しくなかった。

本発明は上記従来の課題を解決するもので、効率よく
スラリーを吸引することができると共に、適正な吸引ス
ピードによって延長パイプ先端を支持する必要のないス
ラリー吸引ポンプを提供することを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

本発明は、上記課題を解決するために、外管と、これ
に内挿された耐摩耗性の軟質管と、この外管と軟質管と
の間に設けられた流体室と、上記外管に設けられ上記流
体室へ流体を圧入あるいは排出する流体導出入孔と、上
記軟質管のスラリー流路の少なくとも前後の一方に設け
た逆止弁とを備え、上記流体室を外管の一部を膨出させ
て形成し、上記流体導出入孔を流体室の上流端に設け、
上記流体室内における流体導出入孔と軟質管との間に透
孔を有する板を設け、上記軟質管の上流側の厚みを薄く
して薄肉部を形成し、流体を強制的に圧入・排出して上
記軟質管を可逆的に変形させるという手段を用いた。

また上記逆止弁として、スラリー流動方向に向かって
収束し、先端にスリット状の開口を有すると共に、対向
する弁体補強用のリブを有する耐摩耗性の弾性材からな
る逆止弁をも用いた。

〔作用〕

スラリー吸引ポンプの外管と軟質管の間に設けた流体
室は、流体の圧入・排出によって容積が変化する。即
ち、外管には流体導出入孔が設けられているが、空気・
水等の流体を流体導出入孔から流体室に圧入すれば軟質
管が変形してスラリー流路を収斂させる。次に流体を流
体室から排出させれば、軟質管が可逆的に元の形状に復
帰して当初のスラリー流路を確保する。この運動を繰返
すことによってポンプはスラリーを吸引する作用を奏す
る。その場合、流体導出入孔が流体室の上流端にあるか
ら流体導出入孔から導入された流体圧力が流体室の上流
端から下流端に向かって作用していくこと、軟質管の上
流側に変形し易い薄肉部が形成されていること、などか
ら軟質管の収斂が上流側から下流側に向かって伝わり、
ポンプ動作をスムーズに行う。また透孔を有する板は軟
質管が膨張し過ぎないようにガイドする機能を発揮す
る。さらに軟質管収斂の方向づけ及び板のガイド機能の
双方により軟質管の蛇行が防止される。また強制的に流
体を圧入あるいは排出し、逆止弁で逆流を防いでいるの
で垂直方向への吸引をも行う。

弁体補強用の逆止弁は一対のリブを有しているが、こ
れは逆止弁に反対方向の力が加わった場合に反転防止の
作用を有する。

〔実施例〕

以下、本発明のスラリー吸引ポンプの一実施例を図面
に従って更に詳述すると、１は鋼管その他の金属管・硬
質管からなる外管、２は耐摩耗性材料からなる軟質管た
るゴム管、３はゴム管２内を矢印方向へスラリーが流れ
るスラリー流路、４は外管１とゴム管２との間に設けら
れた流体室、５は流体を流体室４へ圧入あるいは排出す
るための流体導出入孔、６・７はそれぞれスラリーの逆
流を防止するための逆止弁である。

上記流体室４は外管１の一部を膨出させることにより
形成され、上記流体導出入孔５は流体室４の上流端（図
１では左端）に設けられている。また上記流体室内にお
ける流体導出入孔５と軟質管２との間には透孔20a,20a
・・・を有する板20を設けている。さらに上記軟質管２
の上流側（図１では左端）の厚みを薄くして薄肉部12を
形成している。

上記逆止弁６・７は常態では、スラリー流動方向に向
かって収束する形状であり、逆止弁本体８はゴム管２と
同様に柔軟性を有する耐摩耗性のゴム材料からなってい
る。９は逆止弁本体８に内包され、スラリーの逆流方向
への力が加わっても反転を防ぐための弁体補強用のリブ
であり、対向して一対設けられている。リブ９の素材
は、硬質の合成樹脂あるいは金属等、逆止弁本体８が容
易に反転しない材料であれば任意である。逆止弁６・７
の先端にはそれぞれスリット状の開口10を有している。

次に本実施例の吸引ポンプの作動を説明すると、先ず
逆止弁６に対して一次側に接続され、開口部にストレー
ナを有する延長パイプ11を堆積しているスラリー内に突
っ込んだ後、流体導出入孔５を介して流体を流体室４に
圧入・排出を何回か繰返すと、ゴム管２がポンプ作用を
奏し、スラリーを吸引する。作動当初はゴム管２内及び
延長パイプ11内は空気で満たされているが、逆止弁６・
７の存在によって空気は二次側方向へ排出され、これに
続いてスラリーがゴム管２内に吸引される。

次に流体を流体室４に再度圧入すれば、逆止弁６によ
ってスラリーが逆流することなく順方向へ搬送される。
その後、流体室４内の流体を強制的に排出するとゴム管
２が元の形状に復元し、これに伴ってスラリーを一次側
から逆止弁６を通して吸引するのである。この場合、逆
止弁７が設けられているので、二次側からスラリーを逆
方向に吸引することは確実に防止される。逆止弁６・７
は常態では第２図に示すように先端が収束し、スリット
状の開口10を形成しているが、スラリー吸引中は先端が
弾性変形して円形状の開口となり、スラリーが抵抗なく
流れるのである。

その場合、流体導出入孔５が流体室４の上流端にある
から流体導出入孔５から導入された流体圧力が流体室４
の上流端から下流端に向かって作用していくこと、ゴム
管２の上流側に変形し易い薄肉部12が形成されているこ
と、などからゴム管２の収斂が上流側から下流側に向か
って伝わり、ポンプ動作をスムーズに行うことができ
る。また透孔20aを有する板20はゴム管２が膨張し過ぎ
ないようにガイドする機能を発揮するから、ゴム管２の
過大膨張を防止することができる。

さらにゴム管２が上流端から下流端に向かって方向性
をもって収斂していくこと、及び板20がガイド機能を発
揮することにより、ゴム管２の蛇行を有効に防止するこ
とができる。

本実施例では２つの逆止弁６・７を設けているが、何
れか一方を省略することもある。

第５図は、流体の強制的な導出入に用いるピストンポ
ンプを示し、13は内部に流体を充満させたシリンダー、
14は流体導出入孔５と連結される流体出口、15は流体を
充填しておくタンク、16はシリンダー13からタンク15へ
の流体の逆流を防止するためのバルブ、17はシリンダー
13内部の流体を加圧するためのピストン、18a・18bはピ
ストン17の摺動幅を制御するためのリミットスイッチで
ある。

上記ピストンポンプ内の流体には作動効率上、通常は
清水を用いるが、スラリー吸引ポンプを小規模にした場
合には空気を用い、清水タンク15を省略することもあ
る。流体として清水を用いる場合にはゴム管２に加わる
圧力が５〜7kg/cm²程度にピストン圧、シリンダー径を
設定し、かつシリンダー13とピストン17の間のシール効
率を高めるためにピストン17の背面部19にも清水を満た
しておく。

尚、リミットスイッチ18a・18bの間隔は、ゴム管２の
常態時と収斂時との容積差とシリンダー13の容積とを比
較したうえで決定される。

〔発明の効果〕

本発明は上記のような構成とし、スラリー流路の容積
を変化させることによってスラリーを吸引するようにし
たので、濃縮状態のスラリーを効率よく吸引することが
できると共に、スラリーの状態に応じて適正に吸引速度
を設定することができ、従って延長パイプの先端が踊る
ようなことがなく、人手によってパイプ先端を支持する
必要もなくなった。その場合、流体導出入孔が流体室の
上流端にあり、また軟質管の上流側に薄肉部があるか
ら、軟質管の収斂が上流側から下流側に向かって伝わっ
てポンプ動作をスムーズに行えると共に、透孔を有する
板により軟質管の過大膨張を防止することができ、しか
も軟質管の蛇行を防止することができる。

また、外管と軟質管の間に流体室を設け、流体を強制
的に圧入あるいは排出し、さらに逆止弁でスラリーの逆
流を防止するようにしているので、本発明ポンプ或いは
この一次側に接続される延長パイプが垂直に支持されて
いる場合でも、設定した吸引力で確実に吸引することが
できる。

さらにまた、逆止弁にはリブが設けられているので、
スラリーの逆流方向に働く力によっても弁体が反転して
しまうという不都合を防止することができる等、多大な
る効果を奏するスラリー吸引ポンプを提供することがで
きた。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明のスラリー吸引ポンプの一実施例を示す
断面図、第２図は逆止弁の一実施例の先端方向から見た
正面図、第３図は同逆止弁を上方から見た平面図、第４
図は同逆止弁の横断面図、第５図は流体の強制的な圧入
・排出に用いるピストンポンプの説明図である。 尚、図中１……外管、２……ゴム管、３……スラリー流
路、４……流体室、５……流体導出入孔、６・７……逆
止弁、９……リブ、10……開口、12……薄肉部、20……
板、20a……透孔。

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】外管１と、これに内挿された耐摩耗性の軟
   質管と、この外管と軟質管との間に設けられた流体室４
   と、上記外管に設けられ上記流体室へ流体を圧入あるい
   は排出する流体導出入孔５と、上記軟質管のスラリー流
   路３の少なくとも前後の一方に設けた逆止弁６・７とを
   備え、上記流体室を外管の一部を膨出させて形成し、上
   記流体導出入孔を流体室の上流端に設け、上記流体室内
   における流体導出入孔と軟質管との間に透孔20aを有す
   る板20を設け、上記軟質管の上流側の厚みを薄くして薄
   肉部12を形成し、流体を強制的に圧入・排出して上記軟
   質管を可逆的に変形させることを特徴とするスラリー吸
   引ポンプ。
2. 【請求項２】逆止弁６・７として、スラリー流動方向に
   向かって収束し、先端にスリット状の開口10を有すると
   共に、対向する弁体補強用のリブ９を有する耐摩耗性の
   弾性材からなる逆止弁とした請求項１記載のスラリー吸
   引ポンプ。