JP2592765B2 - 履物の構造および靴用中敷 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本願発明は、足裏を押圧刺激する
膨出部を備える、履物の構造および靴用中敷に関する。

【０００２】

【従来の技術】足裏には、東洋医学でいうところのいわ
ゆるつぼが集中している。この足裏のつぼを押圧刺激す
ることにより、足裏の血行を促進し、ひいては身体全体
の健康増進をはかることができる。上記足裏のつぼを刺
激するため、従来から足裏当接面に膨出部を備える履物
が提供されている。上記履物を用いることにより、歩行
にともなって足裏のつぼが繰り返し押圧刺激され、歩行
による疲れを緩和することができるとともに、全身の健
康増進をはかることもできる。

【０００３】上記履物に設けられる膨出部は、たとえ
ば、土踏まず等の形状に対応して、履物の中底部分を丘
状に盛り上げて構成したり、多数の柱状突起を設けたり
して構成されることが多い。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記従来の膨出部は、
履物の中底表面を上方に向けて丘状に膨出させただけの
ものであり、その固さは膨出部以外の部分と同じである
ことが多い。

【０００５】また、大量生産に対応するために、通常、
上記膨出部は一定の位置および一定の形状に形成され
る。

【０００６】ところが、足の大きさ、あるいは足裏の凹
凸形状は各人によって異なる。このため、上記膨出部
が、必ずしも足裏のつぼを有効に刺激できるとはかぎら
ない。また、上記膨出部が、使用者の足裏の形状と合わ
ない場合には、履物の履き心地を低下させるといった問
題も生じる。

【０００７】さらに、上記膨出部が中底表面の他の部分
と同じ固さに形成されるため、体重による押圧力が足裏
に直接作用する。このため、長時間歩行することができ
なくなったり、履物の履き心地がさらに低下するという
場合もあった。

【０００８】本願発明は、上述の事情のもとで考え出さ
れたものであって、上記従来の問題を解決し、使用者各
人に最適な押圧刺激を与えることができるとともに、履
物の履き心地を低下させることのない膨出部を備える履
物の構造および靴用中敷を提供することをその課題とす
る。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本願発明は、次の技術的手段を講じている。

【００１０】すなわち、本願の請求項１に記載した発明
は、履物表面から膨出させられ、足裏を押圧する膨出部
を備える履物の構造であって、上記膨出部は中空状に形
成されているとともに、上記膨出部の中空内面に、上記
膨出部が足裏によって圧縮変形させられたとき、対向す
る内面に当接して膨出部の変形抵抗を増加させる内周凸
部を設けたことを特徴とする。

【００１１】また、本願の請求項２に記載した発明は、
上記内周凸部を、端縁が対向する内面から所定間隔をあ
けて形成された複数の凸条を設けることにより構成した
ことを特徴とする。

【００１２】さらに、請求項３に記載した発明は、靴の
中底に重ねて装着される靴用中敷であって、表面から膨
出させられ、足裏を押圧する膨出部を備え、上記膨出部
は、中空状に形成されているとともに、上記膨出部の中
空内面に、上記膨出部が足裏によって圧縮変形させられ
たとき、対向する内面に当接して膨出部の変形抵抗を増
加させる内周凸部を設けたことを特徴とする。

【００１３】

【発明の作用および効果】本願発明にかかる履物の構造
においては、膨出部を中空状に形成するとともに、上記
膨出部の中空内面に内周凸部を設けている。

【００１４】上記内周凸部は、上記膨出部が足裏によっ
て圧縮変形させられたとき、対向する内面に当接して膨
出部の変形抵抗を増加させるように構成されている。

【００１５】すなわち、本願発明にかかる上記膨出部
は、上記内周凸部が対向する内面に当接するまでは比較
的容易に圧縮変形させられる。一方、上記内周凸部が内
面に当接した後は、上記膨出部が変形しようとすると上
記内周凸部までも変形させる必要があるため、変形抵抗
が増加する。

【００１６】上記構成により、変形初期においては、上
記膨出部が使用者の足裏形状に対応して容易に変形する
ことができる。しかも、上記膨出部が、歩行にともなっ
て圧縮変形させられたとき、上記内周凸部が対向する内
面に当接して変形抵抗が増加し、足裏のつぼに刺激を与
える。

【００１７】上記膨出部が、変形初期において容易に変
形することができるため、上記膨出部が使用者の足裏形
状と多少異なっても、履物の履き心地が低下することは
ない。一方、膨出部の一定以上の変形によって足裏に刺
激が与えられるため、足裏に与える刺激が強すぎること
はない。

【００１８】このため、履き心地を低下させることな
く、足裏のつぼを確実に押圧して刺激することが可能と
なり、確実な効果をえることができる。

【００１９】また、本願の請求項２に記載した発明のよ
うに、端縁が対向面から所定間隔をあけて形成された複
数の凸条からなる内周凸部を形成することにより、上記
内周凸部が対向する内面に当接した後の弾性を適度に設
定することができる。このため、膨出部の形状あるいは
位置に応じて、足裏に与える刺激の強度を最適に設定す
ることもできる。また、膨出部の保形性を向上させ、長
期間使用しても上記膨出部が変形しても履き心地が低下
するのを有効に防止できる。

【００２０】上記構成により、つぼに与える刺激が大き
くなりすぎたり、あるいは、つぼ以外の部分を強く刺激
して履物の履き心地を低下させたりするということがほ
とんどなくなる。

【００２１】本願の請求項３に記載した発明は、上記膨
出部を履物表面に一体的に形成するのではなく、靴の中
底に重ねて装着される中敷に形成したものである。

【００２２】上記膨出部を中敷に形成することによっ
て、従来の靴に容易に装着することができ、適用範囲を
大幅に拡げることができる。また、種々の形態の膨出部
を有する中敷あるいは、刺激強度の異なる中敷を提供す
ることも可能となる。たとえば、扁平足等の特殊な足裏
にも十分対応することが可能となり、健康増進のみなら
ず、治療目的にも利用することができる。

【００２３】

【実施例の説明】以下、本願発明に係る実施例を図に基
づいて具体的に説明する。

【００２４】本実施例は、本願発明を、いわゆるサンダ
ルに適用したものである。

【００２５】図１および図２に示すように、サンダル１
は、樹脂で一体形成された底板２と、この底板２の上面
２ａに接着剤等により貼着される天板３と、前部上方に
おいて幅方向に延び、両端部が底板２と天板３との間に
両端部が挟み込まれるベルト４とを備えて大略構成され
る。

【００２６】上記底板２の上面２ａは、ほぼ平坦面に形
成されている。一方、底板２の接地面は、図２に示すよ
うに、前方に向かってテーパ状に厚みが減少するつま先
部５と中央凹部６を挟んで後方に設けられる踵部７とを
備える。

【００２７】上記天板３は、軟質合成樹脂から一体形成
されており、前方膨出部８と後方膨出部９とを備える。
上記前方膨出部８は、前方において幅方向に略円弧状に
延びるように形成されている。上記後方膨出部９は、前
後方向中間部において断面蒲鉾状に膨出形成されてい
る。

【００２８】上記前方膨出部８は中空状に形成されてお
り、天板３の表面から足指の付け根を若干持ち上げる程
度に膨出させられている。上記前方膨出部８を設けるこ
とにより、各足指の間に若干の隙間が形成される。この
ため、各足指の間に通気性を持たせることができ、水虫
等の疾病を有効に防止することができる。また足指の基
端部が持ち上げられるため、指先への血行が促進され、
健康増進につながる。さらに、親指による踏み込み力を
より効果的に支持することができるため、歩行しやすく
なるとともに、履き心地が向上する。

【００２９】上記後方膨出部９は、図２および図３に示
すように、中空状に形成されているとともに、その中空
内面に前後方向に延びる複数の凸条１１を設けている。

【００３０】上記凸条１１は、図３に示すように、中空
内面上部から下方に向けて延出形成されている。また、
各凸条１１は、幅方向に所定間隔をあけて設けられると
ともに、下縁部１１ａと上記底板２の表面２ａとの間に
所定の隙間１３が設定されている。

【００３１】上記隙間１３を設けることにより、図４に
示すように、上記膨出部９が足裏によって圧縮変形させ
られるとき、上記凸条１１の下縁部が対向する中空内面
すなわち底板２の上面２ａに当接して、上記後方膨出部
９の変形抵抗を増加させる。

【００３２】したがって、上記サンダル１を着用する
と、図４に示すように、上記膨出部９が使用者の足裏形
状に応じて変形させられる。

【００３３】上記膨出部９の変形初期においては、足裏
に与える刺激を比較的少なく設定することができる。一
方、上記膨出部９の変形量が一定以上になると、上記凸
条１１の下縁部１１ａが対向する中空内面２ａに当接し
て、膨出部９の変形抵抗を増加させる。これにより、足
裏に与える刺激が増大させられる。

【００３４】したがって、使用者の足裏形状が異なる場
合にも、上記膨出部９が足裏形状に応じて容易に変形さ
せられる。また、歩行にともなって上記凸条１１が対向
する底板２の上面２ａに当接させられて変形抵抗が増加
させられ、これとともに足裏に繰り返し刺激が与えられ
るのである。

【００３５】したがって、足裏形状と上記後方膨出部９
の形状が多少異なっても、上記後方膨出部９によって履
物の履き心地が低下するといったことはない。しかも、
歩行することにより、足裏のつぼを確実に刺激し、健康
増進効果を期待することができる。

【００３６】また、上記後方膨出部９は、従来の膨出部
と異なり、初期の変形抵抗が小さいため、つぼ以外の部
分を強く刺激することがない。このため、長時間使用し
ても履物の履き心地が低下することもない。

【００３７】さらに、本実施例においては、上記後方膨
出部９の上面に多数の半球状突起１２を設け、押圧効果
をさらに高めるように構成している。

【００３８】図５および図６に、本願発明を靴用中敷１
６に適用した例を示す。

【００３９】本実施例も、第１の実施例と同様に、幅方
向に円弧状に延びる前方膨出部８ａと、前後方向に中間
部において断面蒲鉾状に膨出する後方膨出部９ａとを備
える。

【００４０】上記靴用中敷１６は、図６に示すように靴
１５の中底１７に重ねて装着されるものであり、従来の
靴に容易に後方膨出部９ａを設けることができる。

【００４１】上記後方膨出部９ａは、第１の実施例と同
様に中空状に形成されているとともに、上記後方膨出部
９ａの中空内面に複数の凸条１４を設けて構成されてい
る。本実施例に係る上記凸条１４は、上記第１の実施例
とは異なり、靴幅方向に延びている。上記膨出部９ａが
足裏によって圧縮変形させられると、上記凸条１４の下
縁部１４ａが対向する中空内面１６ａに当接して、上記
後方膨出部９ａの変形抵抗を増大させる。したがって、
第１の実施例と同様に足裏を刺激し、同様の効果を期待
することができる。

【００４２】さらに、本実施例においては、上記後方膨
出部９ａの上面中央部に、中空内部に連通する複数の孔
１８を設けている。上記孔１８を設けることによって、
上記後方膨出部９ａが変形させられるごとに、空気が後
方膨出部の中空内部へ導入され、また排出がされる。こ
のため、靴の通気性が向上させられる。また、上記孔１
８の数、あるいは大きさを変更することによって、上記
後方膨出部９ａの上壁部の弾力が変化する。これによ
り、上記後方膨出部９ａの変形抵抗を調節することが可
能となり、上記後方膨出部９ａに適度のクッション性を
もたせることもできる。

【００４３】本願発明の範囲は、上述の実施例に限定さ
れることはない。

【００４４】実施例においては、後方膨出部９，９ａの
みに本願発明に係る履物の構造を適用したが、前方膨出
部８に本願発明を適用することもできる。また、後方膨
出部の形状も実施例に限定されることはなく、たとえ
ば、半球状の膨出部を形成することもできる。

【００４５】また、実施例においては、膨出部９，９ａ
の中空内面に複数の凸条からなる内周凸部を形成した
が、内周凸部の形状も実施例に限定されることはなく、
たとえば、下方に向かって延びる複数の柱状突起を形成
してもよい。

【００４６】また、上記内周凸部を設ける部位も実施例
に限定されることなく、たとえば、下方内面から上方に
向けて延出する内周凸部を形成してもよい。

【００４７】さらに、上記内周凸部の端縁と対向面との
間の隙間も一定にする必要はない。たとえば、膨出部、
あるいは足裏の形状に応じて異なるように形成すること
によって、足裏各部に対する刺激の強さを異ならせるこ
ともできる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本願発明に係る第一の実施例を示す図であり、
本願発明をスリッパに適用した場合の平面図である。

【図２】図１におけるII−II線に沿う断面図である。

【図３】図１におけるIII −III 線に沿う断面図であ
る。

【図４】図３に係る膨出部が変形させられた場合の状態
を示す断面図である。

【図５】本願発明に係る第二の実施例を示す図であり、
本願発明を中敷に適用した場合の平面図である。

【図６】図５におけるVI−VI線に沿う断面図である。

【符号の説明】

１ 履物（サンダル） ９，９ａ 膨出部（後方膨出部） １１，１４ 内周凸部（凸条）

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 履物表面から膨出させられ、足裏を押圧
   する膨出部を備える履物の構造であって、 上記膨出部は中空状に形成されているとともに、 上記膨出部の中空内面に、上記膨出部が足裏によって圧
   縮変形させられたとき、対向する内面に当接して膨出部
   の変形抵抗を増加させる内周凸部を設けたことを特徴と
   する、履物の構造。
2. 【請求項２】 上記内周凸部は、端縁が対向する内面か
   ら所定間隔をあけて形成された複数の凸条を設けてなる
   ことを特徴とする、請求項１に記載の履物の構造。
3. 【請求項３】 靴の中底に重ねて装着される靴用中敷で
   あって、 表面から膨出させられ、足裏を押圧する膨出部を備え、 上記膨出部は中空状に形成されているとともに、 上記膨出部の中空内面に、上記膨出部が足裏によって圧
   縮変形させられたとき、対向する内面に当接して膨出部
   の変形抵抗を増加させる内周凸部を設けたことを特徴と
   する、靴用中敷。