JP2586193Y2 - 燃料噴射ポンプ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、ポンプハウジングとス
リーブとの間からの燃料の漏出を防止するシール構造に
関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、図４に示すように、プランジャ
５１を収容するプランジャバレル５３をスリーブ５５に
保持するとともに、このスリーブ５５をポンプハウジン
グ５７の内孔５７ａに嵌め込んだ形式の燃料噴射ポンプ
は知られている（実公昭６１−４７０９号公報）。

【０００３】この種のものでは、ポンプハウジング５７
の内孔５７ａの内周とスリーブ５５の外周との間に空間
５９を設け、この空間５９内に燃料の漏出を阻止するた
めのシール部材（Ｏリング）６１を介装している。６３
はＯリング６１を固定するための金属リングである。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、近年、
噴射ポンプは高圧力化の傾向にあり、とくに従来の構成
によると、プランジャバレル５３の外側の燃料チャンバ
６５から、内孔５７ａとスリーブ５５とのクリアランス
を通って、空間５９内に燃料が侵入する際に、そこにキ
ャビテーションエロージョンが発生して、Ｏリング６１
が浸食されるという問題がある。

【０００５】これを解消するために、Ｏリング６１の材
質を変更したり、Ｏリング６１の硬度アップを図ること
も考慮されるが、これでは本格的なエロージョン対策と
はならないという問題がある。

【０００６】そこで、本考案の目的は、上述した従来の
技術が有する問題点を解消し、ポンプハウジングの内孔
の内周とスリーブ外周との間に嵌め込まれるシール部材
が、キャビテーションエロージョンによって浸食される
ことのない燃料噴射ポンプを提供することにある。

【０００７】

【考案が解決しようとする課題】上記目的を達成するた
めに、本考案は、プランジャを収容するプランジャバレ
ルをスリーブに保持して、このスリーブをポンプハウジ
ングの内孔に嵌め込み、この内孔の内周と前記スリーブ
の外周との間の入口近くに設けられる空間内に燃料の漏
出を阻止するためのシール部材を介装した燃料噴射ポン
プにおいて、前記空間よりも奥側の前記ハウジングの内
孔の内周と前記スリーブの外周との間に所定寸法の隙間
を設け、かつ前記空間よりも奥側のスリーブの外周の一
部に狭径部を設けたことを特徴とするものである。

【０００８】

【作用】噴射ポンプの燃料チャンバ内に逆流する高圧の
燃料の衝撃波は、ポンプハウジングの内孔の内周とスリ
ーブの外周との隙間を通って、シール部材の介装された
空間内に達する。通常であれば、空間内においてキャビ
テーションエロージョンが発生して、これによりシール
部材が浸蝕されるが、この考案では、高圧の燃料の衝撃
波は空間に達する前に狭さく部において止まるので、キ
ャビテーションエロージョンはその位置におけるスリー
ブの外周壁などに発生するので、その外周壁が浸蝕され
て、シール部材は浸蝕されない。

【０００９】

【実施例】以下、本考案の一実施例を図１及び図２を参
照して説明する。

【００１０】図２において、この燃料噴射ポンプでは、
プランジャバレル１にプランジャ２が挿入されてポンプ
エレメント３が形成され、このポンプエレメント３はス
リーブ４の内孔に挿入支持される。

【００１１】ポンプエレメント３の上部にはデリバリバ
ルブ５が配置され、このデリバリバルブ５は、デリバリ
バルブホルダ６の内孔に設けられるデリバリバルブスプ
リング６ａにより保持される。デリバリバルブホルダ６
は、スリーブ４の上部にねじ込まれ、これによりデリバ
リバルブ５共々ポンプエレメント３がスリーブ４に固定
される。ポンプエレメント３はポンプハウジング７の内
孔に嵌装され、スリーブ４はフランジ部４ａによりポン
プハウジング７の上面に取り付けられる。

【００１２】プランジャ２の上部には縦溝と斜溝より成
るコントロールグルーブ８が刻設されると共に、下部に
はプランジャ２を回動させて有効ストロークを変化さ
せ、燃料噴射量を調整するためのコントロールスリーブ
（図示せず）に係合するドライビングフェース９が形成
される。

【００１３】また、プランジャ２の下端にはカム（図示
せず）の回転により上下運動が伝えられる脚部１０が設
けられる。

【００１４】プランジャバレル１は、スリーブ４に設け
られたノックピン１１により回り止めされ、プランジャ
バレル１の外周（プランジャ２のコントロールグループ
８に連係する位置）にはフィードホール１２及び逃げ孔
１３が設けられる。かつプランジャ２の上部にはデリバ
リチャンバ１４が形成される。

【００１５】そして、フィードホール１２及び逃げ孔１
３が開口するプランジャバレル１の外周に面して、ポン
プハウジング７の内孔には燃料チャンバ１５が形成され
ている。燃料チャンバ１５の上部はスリーブ４の下端面
で画成され、このスリーブ４とポンプハウジング７との
隙間を通る燃料は、上部シール部１６でシールされる。
燃料チャンバ１５の下部はポンプハウジング７の段部で
画成され、プランジャバレル１とポンプハウジング７と
の隙間を通る燃料は、下部シール部１７、１８で二段に
シールされる。

【００１６】燃料チャンバ１５の内部には、スナップリ
ング２０を用いてディフレクタ１９が取り付けられる。
このディフレクタ１９は、燃料の噴射終りの際に、プラ
ンジャバレル１の逃げ孔１３から燃料チャンバ１５内に
逆流する高圧の燃料の衝撃波によりポンプハウジング７
が浸食されること（以下、キャビテーションエロージョ
ンという）を防ぐ。

【００１７】以上の構成において、プランジャ２がカム
の回転に応動して下死点にくると、燃料は燃料チャンバ
１４からフィードホール１２を通じて、プランジャバレ
ル１のデリバリチャンバ１４内に流入する。この状態か
ら、プランジャ２が上動して、プランジャバレル１のフ
ィードホール１２及び逃げ孔１３が塞がれ、燃料の圧力
がデリバリバルブ５の開弁圧に達すれば、デリバリバル
ブ５を通じて、燃料の噴射がなされる。

【００１８】尚、プランジャ２が上動して、コントロー
ルグループ８が逃げ孔１３に通じれば、デリバリチャン
バ１４側の燃料は、コントロールグループ８の縦溝およ
び斜溝を通じて、逃げ孔１３から燃料チャンバ１５に逆
流し、燃料噴射が終了する。プランジャ２を回動して、
コントロールグループ８の斜溝と、逃げ孔１３とが通じ
る位置を変えると、プランジャ２の有効ストロークが増
減されて、燃料噴射が調整される。

【００１９】上記燃料噴射の終了後、デリバリチャンバ
１４側の高圧燃料は、コントロールグループ８、及び逃
げ孔１３を通じて、燃料チャンバ１５内へ逆流するが、
この時には、逃げ孔１３から噴射する燃料はディフレク
タ１９に衝突して、屈折した後に、ディフレクタ１９の
小孔１９ａから燃料チャンバ１５の外側部に達するの
で、高圧燃料の急激な逆流により生じる衝撃波は緩和さ
れて、ポンプハウジング７のキャビテーションエロージ
ョンは防がれる。

【００２０】しかし、通常の燃料噴射ポンプでは、燃料
チャンバ１５の容積がやや大きいために、デリバリチャ
ンバ１４側の高圧の燃料が燃料チャンバ１５に逆流し
て、デリバリチャンバ１４側と燃料チャンバ１５側との
圧力差が均一化するのにやや時間がかかり、その分だ
け、ポンプハウジング７が浸食を受ける時間が長くな
り、また、燃料チャンバ１５内に発生した衝撃波は、直
接上部シール部１６に達して、該シール部１６を浸食す
るという不具合が認められる。

【００２１】従って、この実施例によれば、キャビテー
ションエロージョンにより上部シール部１６が浸食され
るのを防ぐ工夫がなされる。

【００２２】即ち、図１を参照して、ポンプハウジング
７の内孔７ａの内周とスリーブ４の外周との間には空間
２５が設けられており、この空間２５内には、燃料の漏
出を阻止するためのシール部材（Ｏリング）２６と、こ
のＯリング２６を固定するための金属リング２７とが設
けられている。このＯリング２６は、いわゆる上部シー
ル部１６を構成する。

【００２３】そして、この実施例の特徴としては、上記
の空間２５よりも内側におけるハウジング７の内孔７ａ
の内周とスリーブ４の外周との隙間にいわゆる狭さく部
３１が設けられ、これによりキャビテーションエロージ
ョンの発生する位置がずらされる。狭さく部３１は、ス
リーブ４の外周の一部に拡径部４ａを形成することによ
りつくられ、最も大事なことは、その拡径部４ａよりも
内側にいわゆる燃料溜まりとなる狭径部４ｂをつくるこ
とである。

【００２４】これによれば、燃料チャンバ１５内に逆流
する高圧の燃料の衝撃波は、燃料溜まりとなる狭径部４
ｂにおいて止まるので、キャビテーションエロージョン
はその位置におけるスリーブ４の外周壁Ａに発生するの
で、そこが浸蝕されたにせよ、Ｏリング２６の浸蝕は防
止され、燃料の漏出は防止される。

【００２５】また、この実施例では、スリーブ４の形状
を変更するだけでキャビテーションエロージョンの発生
を防止できるので、コストアップは少なく、サービス性
はよく、しかも現行品との互換性があるなどの効果を奏
する。

【００２６】なお、内孔７ａの内周とスリーブ４の外周
との隙間寸法Ｌを考察すると、内孔７ａの内径によって
も異なるが、ほぼ０．０５mm＜Ｌ＜０．１３mmで製造さ
れている場合に、拡径部４ａにおける隙間寸法Ｌは、ほ
ぼ０．０２５mm＜Ｌ＜０．０７５mmに製造することが望
ましい。

【００２７】図３は他の実施例を示す。

【００２８】これによると、いわゆる拡径部４ａを設け
ないで、内孔７ａの内周とスリーブ４の外周との間の全
体的な隙間寸法Ｌを予め狭めておく。即ち、ほぼ０．０
２５mm＜Ｌ＜０．０７５mmに製造しておく。そして、そ
のうえでスリーブ４の外周にいわゆる燃料溜まりとなる
狭径部４ｂを形成する。これによっても上記の実施例と
同様に、燃料チャンバ１５内に逆流する高圧の燃料の衝
撃波は、燃料溜まりとなる狭径部４ｂにおいて止まるの
で、キャビテーションエロージョンはその位置における
スリーブ４の外周壁Ｂに発生するので、そこが浸蝕され
たにせよ、Ｏリング２６の浸蝕は防止され、燃料の漏出
は防止される。

【００２９】

【考案の効果】以上の説明から明らかなように、本考案
によれば、燃料チャンバ内に逆流する高圧の燃料の衝撃
波は、燃料溜まりとなる狭さく部において止まるので、
キャビテーションエロージョンはその位置におけるスリ
ーブの外周壁に発生するので、そこが浸蝕されたにせ
よ、シール部材の浸蝕は防止されるので、該シール部か
らの燃料の漏出は防止される。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案による燃料噴射ポンプの第１実施例を示
す縦断面図である。

【図２】ボッシュ型の燃料噴射ポンプの縦断面図であ
る。

【図３】本考案による燃料噴射ポンプの第２実施例を示
す縦断面図である。

【図４】従来の燃料噴射ポンプを示す縦断面図である。

【符号の説明】

１ プランジャバレル ２ プランジャ ４ スリーブ ４ａ 拡径部 ４ｂ 狭径部 ７ ポンプハウジング ７ａ 内孔 １５ 燃料チャンバ １６ 上部シール部 １９ ディフレクタ ２５ 空間 ２６ シール部材（Ｏリング） ２７ 金属リング ３１ 狭さく部

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 プランジャを収容するプランジャバレル
   をスリーブに保持して、このスリーブをポンプハウジン
   グの内孔に嵌め込み、この内孔の内周と前記スリーブの
   外周との間の入口近くに設けられる空間内に燃料の漏出
   を阻止するためのシール部材を介装した燃料噴射ポンプ
   において、前記空間よりも奥側の前記ハウジングの内孔
   の内周と前記スリーブの外周との間に所定寸法の隙間を
   設け、かつ前記空間よりも奥側のスリーブの外周の一部
   に狭径部を設けたことを特徴とする燃料噴射ポンプ。