JP2561804B2 - 加工可能なイソチアナフテン系高分子の製造方法 - Google Patents

加工可能なイソチアナフテン系高分子の製造方法

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JP2561804B2 JP6081714A JP8171494A JP2561804B2 JP 2561804 B2 JP2561804 B2 JP 2561804B2 JP 6081714 A JP6081714 A JP 6081714A JP 8171494 A JP8171494 A JP 8171494A JP 2561804 B2 JP2561804 B2 JP 2561804B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は加工可能なイソチアナフ
テン系高分子の製造方法に関し、特に優れた電気変色性
(エレクトロクロミズム)を有する加工可能なイソチア
ナフテン系高分子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】大部の共役導電性高分子はドーピング前
はいずれも広エネルギーギャプを有し、つまり価電子帯
と導電帯とのエネルギーギャップが比較的大きく、約
1.5ないし3.0eVの間にあり、そしてドーピング
はエネルギーギャップ中に新しいエネルギー状態(en
ergy state)すなわちポーラロン又はバイポ
ーラロンを発生し、電子ジャンプに必要なエネルギーを
低下させて導電率を向上させていた。しかしながら、こ
のドーピング処理にはドーパントの分布が不均一になっ
たり、自動的なドーピング除去が起こったりまた不透明
になるなどの欠点があった。
【0003】一方低エネルギーギャップ高分子はドーピ
ングしなくとも相当高い導電率を有し、かつ、エネルギ
ーギャップが小さい故にドーピング後には吸収帯が本来
の可視光帯から赤外光帯付近に移ってしまい透明無色が
出現していた。
【0004】1984年WudlおよびHeeger等
(J.Org.Chem.49,3382(198
4))は始めて電気化学法でポリイソチアナフテン(P
ITN)を合成した。このエネルギーギャップは1.1
eVと現存の有機高分子のエネルギーギャップ中で最低
なものであった。中性状態の場合は電導率が約10-2
/cm2となり、空気中において非常に安定しており、
ドーピング後導電率は50S/cm2に達し、顔色が本
来のブルーから無色となった(略極めて淡い黄色を帯び
る)。そして電気化学的方法でドーピングすると、可逆
電気変色の機能を有する。この電気変色とは、導電性高
分子を動作電極とし、特定イオン塩の媒質において、こ
の電極と対電極との間に正電位を与えると、前者が電気
化学的にドーピングされ、価電子帯と導電帯との間に二
つの新しいエネルギー準位、すなわちポーラロン又はバ
イポーラロンが形成され、導電高分子の光学スペクトル
の比較的低いエネルギー(長波長)の部位に新しいピー
クを形成させることから、本来の吸収ピークが電気ドー
ピング程度の増加に伴って低下し、新増加の低エネルギ
ー帯の吸収強度が徐々に増加して吸収スペクトルの変化
により顔色が変ることをいう。したがって、PITNは
電解質含有溶液を含む電気化学的反応室中に適当な電圧
を与えてドーピング反応を行わせることにより、顔色が
ドーピング前のブルーから透明に近い淡黄色に変化さ
れ、そして逆電圧を施すとブルーに回復し、特定の電圧
範囲内においてこの電気変色が可逆現象を呈するので、
対比が鮮明な電気変色表示素子(ECD)およびスマー
トウィンドーを製造することができる。
【0005】この電気変色表示素子は、図1に示される
ように、透明の導電ガラス上に一層の電気変色可能な導
電高分子膜を塗布して正極とし、一方金属箔を負極と
し、この両極間に一層の適当な液体又は高分子電解質を
介在させ、この両極間に適当な電圧を与えるとドーピン
グ又はドーピング除去を行うので、顔色の変化を抑制す
ることができる。
【0006】一方、スマートウィンドーでは、光の透過
を容易にするために金属箔の代りに透明物質を負極とし
ている。
【0007】理論的には通常の電気高分子により製造さ
れたECDは液晶表示素子(LCD)と比較して、前者
は大面積化と角制限を無視できる等の利点があるが、電
気変色の応答時間が後者より遅い(約100ミリ秒)。
しかし、スマートウィンドーの応用にはこの程度の応答
時間は許容されている。一方、PITNの変色応答時間
は約10ミリ秒で通常の導電高分子のものよりやや快速
であるとともに電気変色の対比が鮮明であり、かつ、保
温効果があり、冬季の白昼においては該透明のPITN
膜が日光の放射熱に入射されて室温を高くし、夜間は暗
色のPITN膜が比較的高温の室内における熱エネルギ
ーの赤外線放射による逸散を防止するので、室内の加熱
エネルギー源が節約される。したがって、また電気変色
サーマルウィンドー(Chemical and En
gineering News,Dec,3,36(1
990))とも称されている。PITNのその他応用と
して、電池の陽極又は陽極塗布材として使用され、太陽
電池の電極に使用されている。このようにPITNの多
用途性であることから応用価値が非常に高く評価されて
いる。
【0008】このPITNを実用装置に製造する場合は
フィルムのタイプに仕上げる必要があるが、学術文献お
よび特許文献で報告されているのは主としてWudlお
よびHeegerによる電気化学的方法である。この方
法はPITN膜を製造することができるが、重合設備お
よび方法に制限され、大面積および均一厚さの膜を得る
ことが比較的困難である外、膜に合成された時モノマー
の転化率が低く約5%しかないことからモノマーの消耗
が大過ぎるので、この電気化学法も表面が不導電の基材
の場合膜を形成することができない。したがって、新な
るPITN合成法を開発してこれら欠点を解消すること
が今後の課題となっている。
【0009】PITNの合成方法として上記に掲示され
たWudl及びHeegerにより開発された外、従来
から既に多くの合成方法が開発されている。以下、学術
文献の報告について略述する。
【0010】1.イソチアナフテン(INT)の重合に
よりPITNを得る方法として以下の4種類がある。
【0011】(i)電気化学法(J.Org.Che
m,49,3382(1984)) INTをモノマーとし、テトラフェニルホスヒューム
(phosphium)塩を含有する導電電解質のアセ
トニトリル(ACN)溶液中において、In−Sn酸化
物(ITO)導電ガラス又は白金片を動作電極とし、別
の白金片を対応電極とし、この両極間に適当な電流およ
び電位を与えて電気化学的に重合を行うと、動作電極上
に一層のPITN膜が溶着される。
【0012】(ii)光化学法(J.Org.Soc.C
hem.Commun,1618(1991)) モノマーITNおよびテトラブチルアンモニウムブロマ
イドのACN溶液中に四塩化炭素を添加して電子アクセ
プターとし、反応器内にはさらにガラス片を置き、50
0WのXeランプを光源として照射すると、ガラス上に
一層のPITN膜が溶着される。
【0013】(iii)PITN前駆物質再脱水素法(S
ythetic Metals 31,395(198
9)) 無水のジクロロメタン溶液中において、メチルスルホン
酸をカチオン触媒とし、ITNをポリ(1,3−ジヒド
ロイソチアナフテン)(PDHITN)に重合させた
後、SO2Cl2で脱水素を行うとPITN粉末を得るこ
とができる。
【0014】(iv)7,7,8,8−テトラシアノキノ
ジメタン(TCNQ)、H2SO4又はAlCl3/Cu
Cl2を酸化剤とし、直接溶液中のITNを酸化重合し
て粉末のPITNを沈澱させる(文献は上記の(i)と
同じ)。
【0015】2.1,3−ジヒドロイソチアナフテン
(DHITN)から重合する。
【0016】(i)電気化学法(Sythetic M
etals,36,303(1990)) DHITNをモノマーとし、テトラエチルアンモニウム
テトラフルオロボレード(Et4NBF4)、テトラブチ
ルアンモニウムテトラフルオロボレード(Bu4NB
4)又はテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフ
ォスフェート(Bu4NPF6)を導電電解質としたアセ
トニトリル溶液中において、ITO導電ガラスを液中に
入れて動作電極とし、一方白金片を対電極とし、この両
極間に適当な電流と電位を与えると動作電極上に一層の
PITN膜が溶着される。
【0017】(ii)化学法(Sythetic Met
als,16,379(1986)) 無水ニトロメタンを溶媒とし、モノマーと等当量のFe
Cl3を添加して50℃の空気中(すなわち酸素の存在
下において)で重合すると、PITN粉末が得られる。
【0018】3.1,3−ジヒドロイソチアナフテン−
2−オキサイド(DHITNO)から重合する (i)直接H2SO4又はH2SO4/CH2Cl2でDHI
TNOを酸化重合してPITN粉末を得る(文献は1の
(i)と同じ)。
【0019】(ii)n−クロロサクシニイミド(NC
S)を酸化剤としてモノマーDHITNOを酸化重合し
てPITN粉末を得る(Sythetic Metal
s,47,367(1992))。
【0020】4.長側鎖を含有するITNモノマーから
重合する 先ず長側鎖を含有したITN誘導体、又はITNに類似
した複素環式化合物モノマー、例えば5−デシルイソチ
アナフテン又は2,3−ジヘキシルチエノ[3,4−
b]ピラジンのモノマーを合成し、クロロホルム中にお
いて、50℃の温度下で無水塩化鉄で酸化重合を行い、
しかる後、ヒドラジン水溶液でこの溶液を清洗してドー
ピング除去を行い、メタノール中にて再沈澱し、クロロ
ホルム中に可溶な黒色粉末を得る。最後に再びクロロホ
ルム溶媒に対して透析を行い、低分子量分子(分子量が
3500より小さい重合体)を除去すると、高分子量の
ポリ(5−デシルイソチアナフテン)又はポリ(2,3
−ジヘキシルチエノ[3,4−b]ピラジン)の藍黒色
粉末が得られる。この生成物は一般の溶媒、例えばクロ
ロホルム中に可溶であり、かつ基材上に塗布して膜を形
成することができる(J.Chem.Soc,Che
m.Commun,1672(1992)、この文献は
後者のモノマー合成および重合ステップしか開示してお
らず、そして前者は既に合成していると強調して後者と
性質の比較を行っているが、そのモノマー合成および重
合ステップは発表されていない)。そのモノマーおよび
重合体の構造式を以下に示す。
【0021】ポリ(5−デシルイソチアナフテン)のモ
ノマーおよび構造式
【化8】 ポリ(2,3−ジヘキシルチエノ[3,4−b]ピラジ
ン)のモノマー及び構造式
【化9】 PITNに関する特許文献をアメリカ、日本および公開
の順序に従って回顧すれば以下の如くである。
【0022】A.アメリカ特許 (a)Elsenbaumer達が1986年に特許を
得たUSP 4,789,748(1988)では、
1,3−ジヒドロイソチアナフテン(DHITN)がニ
トロメタンにおいて、FeCl3および酸素の存在下で
重合してPITN粉末を得ることがクレームされてい
る。
【0023】(b)WudlおよびHeegerが特許
を得たUSP 4,772,940(1988)では、
次の要旨がクレームされている。
【0024】(i)電気化学法で透明導電媒体平面上に
重合成長されたPITN膜を動作電極とし、厚さが0.
03〜30μmである電気変色表示器。
【0025】(ii)PITN系高分子の構造は
【化10】 ドーピング後の構造は
【化11】 であって、その中 R1,R2=−H,−Cm2m+1(m=1〜5),−OC
3,−SCH3 X=S,Se,Te Y-=ClO4 -,BF4-,PF6 -,AsF6 -,SbF6 -,A
lCl4 -,AlBr4 -,FeCl4 -,CF3SO3 -,HS
4 - Z=0.01〜1 n=5〜500 である可逆ドーピング/ドーピング除去可能な高分子。
【0026】(iii)ECDに使用された溶媒は非水高
誘電率の溶媒であり、イオン塩の濃度は0.001ない
し10モル/Lであり、極板の間隔は0.05ないし5
mmである。
【0027】(iv)PITNは電池の陽極塗布材とする
ことができる。
【0028】(v)ドーピング後の透明PITN膜を太
陽電池の表面カバー電極とする。
【0029】(c)その後かれらにより又取得した特許
USP 4,795,247(1989)は次の事項が
クレームされている。
【0030】(i)PITNの高ドーピング度における
不安定性を改善するため、PITN系誘導体を提出し
た。主として酸素原子含有の側鎖を含み、電子化学の重
合により得られた膜の分子構造は
【化12】 であり、ドーピング後の構造は
【化13】 である。
【0031】その中、Et4NClO4のACN溶液中に
て電子化学ドーピングを行うと透明な導電複合膜が得ら
れ、空気中に50日間保存しても透明無色が保持され
た。
【0032】B.日本特許公開情報 (a)Eiji(富士写真フィルム株式会社) 日本特許出願公開番号 特開平2−258833(19
90) ITNモノマーを含有したアニオン型高分子又はアニオ
ン界面活性剤水溶液中に、FeCl3溶液を点滴して重
合反応を行い、得られた懸濁液を透析すると、安定した
PITN懸濁水相分散液が得られた。5ないし20℃の
温度下で三カ月保存でき、ポリ(ビニルアセテート)エ
マルジョンと混合後、その混合液を基材上に塗布すると
透明度が約30%、導電率が約10-4S/cmのPIT
N/PVAC複合膜が得られた。また、彼の別の日本特
許02,258,832(1990)では、カチオン、
アニオン、又は両性イオンの高分子およびカチオン、ア
ニオン又は両性イオン界面活性剤の水溶液中において、
上記と同一の方法で重合処理すると、同様にPITN懸
濁水溶液が得られた。5ないし20℃の温度下で三カ月
保存でき、PVACエマルジョン液と混合後、その分散
液を基材上に塗布すると、導電率が10-3S/cmのP
ITN/PVAC複合膜が得られた。
【0033】(b)Eiji(富士写真フィルム株式会
社) 日本特許出願公開番号 特開平2−252726(19
90) 電気化学重合法により、8以上の炭素原子を含む長側鎖
ITNモノマー(例えば5−ドデシルベンゾ[c]チオ
フェン)を、テトラブチルアンモニウム塩化物を含有し
たACN溶液中で電気重合すると、導電率が10-2S/
cmの膜が得られた。かつこの膜は再び一般の溶媒中に
可溶である。
【0034】(c)Eiji(富士写真フィルム株式会
社) 日本特許出願公開番号 特開平2−252727(19
90) 電気化学重合法により、テトラブチルアンモニウム塩化
物を含有したACN溶液中に、5−シアノベンゾ[c]
チエフェノンモノマーを電気重合すると、導電率が10
-2S/cm、透明度が30%の膜が得られた。この膜を
Bu4NClO4でドーピングすると透明度を65%まで
引き上げることができ、新鮮に電気合成されたPITN
膜の透明度が10%で、ドーピング後僅に40%までし
か達することができないPITNと比較すれば、この両
者の差異は前者が電子求引性置換基を含んでいることに
あり、これにより後者より透明度を高く引き上げること
ができる。
【0035】(d)Ryuichi(セイコーエプソン
株式会社) 日本特許出願公開番号 特開平2−193120(19
90) 電気化学法で重合しドーピングして得られた透明のPI
TN膜は液晶表示器の導電極板として使用される。
【0036】PITNが電気変色表示器の変色電極とし
て応用され、又は電池の正極として使用される場合はい
ずれも薄膜に製造されることが必要である。そして成膜
方法は応用範囲に大きく影響する。現在既知の成膜方法
として次の4種があげられる。
【0037】(1)電気化学法 利点は重合成膜が迅速で基材との付着力が良く、欠点は
(a)モノマーがいずれも不安定物質に属し、重合の際
副反応が生ずる。例えば、架橋副反応に伴随して製造さ
れたPITN膜を一般の溶媒中に再度溶解させることが
できない。(b)重合の際、高濃度のポリマーを使用す
る必要がある外、モノマーの転化率が低い。(c)重合
設備の制限により、大面積で且厚さ均一の膜を得ること
ができない。
【0038】(2)光化学法 利点は設備が簡易であることと、一般の透明基材上に成
膜可能であり、欠点は重合の際に約9%の分子構造欠陥
を伴うと共に、モノマーの転化率が低い。
【0039】(3)懸濁重合法 利点は水相中で安定なポリイソチア懸濁水溶液に重合す
ることと、環境保護の問題がないこととであり、欠点は
製造プロセスにおいて透析、純化を行う必要があるので
時間がかかる外、複合膜しか製造できず、かつ透明度も
不良である。
【0040】(4)可溶の長側鎖のポリイソチアナフテ
ンに製造する方法 これに2篇の報告があり、例えば上記学術文献で略述さ
れた1−(ii)と日本特許(b)との二つがある。前者
の利点は簡易な塗布法を用いて一般の基材上に乾燥成膜
されると共に、この膜は再度溶媒により溶解され得、ポ
リイソチアナフテンの加工プロセスにあって多大なメリ
ットがある。しかしながら、なおモノマーの合成が比較
的困難と、FeCl3で重合しなければならず、得られ
た溶液を再度ヒドラジンで清洗してドーパントを除去
し、最後に透析純化してから始めて純化なポリイソチア
ナフテン溶液が得られ、時間がかかるという欠点が存在
している。一方、後者の方法は得られた膜もまた溶媒中
に可溶であるという利点があり、反面モノマーの合成が
困難であることと、モノマーを再度電気化学法で重合し
て成膜しなければならず、転化率が低く、コストにおい
て不利という欠点がある。上記の欠点を克服するために
別の方向から着眼して製造プロセスを改善し、PITN
の主鎖上の欠陥(例えば架橋)を最小限度に低減させ、
又は完全に除去して可溶にさせる方法が考えられる。
【0041】
【課題を解決するための手段】本発明の主たる目的は上
記の欠点を解消できるPITN膜の製造プロセスを提供
することにある。
【0042】すなわち、可溶性前駆物質経路を採用して
PDHITNの脱水素製造プロセスを改善し、得られた
安定なPITNエマルジョン液を基材上に塗布し乾燥さ
せるとPITN膜が得られる製造プロセスを提供する。
また、この膜の機械強度、靭性および基材への付着性を
補強するため、PITNエマルジョン溶液を慣用的な高
分子例えばポリエチルメタアクリレート(PMMA)と
混合し、さらに塗布又は注湯法で適宜なPITNの比例
を有した複合膜を得る。得られた複合膜は本来の優良な
電気変色性質を保持できると共に、良好な機械強度およ
び靭性を有する。また、この方法によれば大面積のPI
TN膜又はその複合膜を製造することができる。
【0043】本発明の次の目的は安定なPITNミクロ
ゲルの合成を提供することにある。
【0044】このミクロゲルを基材上に塗布して乾燥さ
せると大面積のPITN膜が得られる。先ず、イソチア
ナフテン(ITN)をモノマーとし、メチルスルホン酸
をカチオン開始剤とし、ジクロメタン溶液中で−78℃
の温度にて重合すると高分子量のPDHITNが得られ
る。この高分子は自立構造フィルムに成形できるが、質
が脆く、不導電で淡黄色を呈するため、さらに脱水素反
応を行ってからPITNに形成され得る。上記各化合物
ITN,PDHITNおよびPITNの化学構造を次に
示す。
【0045】
【化14】 1989年T.L.Roseの報告ではSO2Cl2によ
りジクロロメタンに溶解されたPDHITNを迅速に脱
水素すると、PITNが形成される(Sythetic
metals31,395(1989))と報告され
ているが、生成物が粉末状態を呈しているために溶解で
きず、塗布又は注湯法により成膜できなかった。また直
接PDHITN薄膜の脱水素を行ったところ、脱水素が
完全でなく、空気中で酸化現象を発生して共役結合を破
壊するようなことが起った。
【0046】このような制限を克服するため、本発明に
おいては適当量の脱水素剤を添加し、かつ適当の反応時
間経過後、ピリジンを添加して抑制剤とし、反応を抑制
すると共にPITNが溶液中で過度に集中するのを阻止
して安定なPITNミクロゲル溶液を得た。この溶液を
基材上に塗布すると膜が形成され、慣用的な高分子と溶
液中にて混合し、再度基材上に塗布すれば、優良な電気
変色および機械性質を有した複合膜が得られた。その製
造プロセスは次の如し。
【0047】(1)高分子量のPDHITNの合成 300mgの合成ITNモノマーを8mLジクロロメタ
ン中に溶解させた後、200mLのサンプル瓶中に装入
し、この瓶口をネオプレンゴムキャップでシールして、
ドライアイスアセトン浴で−78℃の温度まで冷却し、
しかる後注射器で0.3μLのメチルスルホン酸が内含
されているジクロロメタン溶液2mLを注入し、1時間
重合した後、ピリジンを点滴して反応を中止させる。G
PCでその分子量を分析した結果2×105に達した。
−20℃の温度下で重合した場合は、分子量は僅に1×
104しか達しなかった。
【0048】(2)PDHITN溶液の調合 20mgの合成されたPDHITNと18mLのジクロ
ロメタンとを20mLのサンプル瓶中に装入し(複合膜
を製造する場合はこれの外にまた慣用的な高分子例えば
ポリメチルメタアクリレートを予め混合する)、超音波
発振器中で30分間振動して完全に溶解させ、窒素ガス
の気流を通じて溶液中の空気を置換する。
【0049】(3)脱水素によるPDHITN溶液の形
成 上記PDHITN溶液中に一当量の脱水素剤SO2Cl2
(分子SO2Cl2ごとに各構造単位の2個の水素を除去
でき、20mg PDHITNであれば12μL SO
2Cl2を添加する)のジクロロメタンを2mL添加する
と、溶液の色が黄色から濃いブルーに変り、3分間反応
した後0.5mLのピリジンを添加して反応を中止さ
せ、分子結合の集結による沈澱を防止すると、安定した
PITNミクロゲル溶液が得られる。
【0050】(4)膜の製作 ステップ3により得られた溶液は孔径が0.45μmの
シリンジフィルターを完全に通過できると共に2日間保
持してもなお分子結合の集結を見ず、粉末状態の懸濁粒
子を形成した。溶液のUV−Vis−NIRスペクトル
は図2の曲線(a)に示されるように、 π−π のピークは790mmに現れ、他に1400nmのとこ
ろに軽微なショールダーピーク吸収があり、まだ少量の
PITN次分子がドーピングされていることが示されて
いる。この際、強アルカリ例えば三級アミン又はヒドラ
ジンを脱水素抑制剤とすればこのドーピング現象を完全
に除去できたが、得られた溶液は不安定となり、PIT
Nがただちに集結して、形成された粉末が溶液中に懸濁
した。この課題の解決としてピリジンを使用したところ
同時に脱水素反応を中止し、安定したPITN溶液が得
られたが、この溶液を均一にITO導電ガラス上に塗布
して得られた膜はピリジンと残留のSO2Cl2とにより
形成された化合物を含むため、亀裂状破片を呈し、電気
変色表示素子の応用に不利であった。この欠点を改良す
るためにPITN溶液中に慣用的な高分子を添加して混
合して形成されたPITN複合膜は、なお電気変色特性
を有し、ブルーから無色に変り、対比が鮮明で良好な機
械性質を有することが見い出された。
【0051】上記純粋のPITN溶液の成膜性の不良の
欠点を解消するため、本発明においては、別途脱水素剤
テルト−ブチルハイポクロライト(tBHC)を用いて
PDHITNの脱水素反応を行った。その利点は脱水素
反応が迅速で副生成物が少く、発生したHClの量はS
2Cl2を脱水素剤として用いた場合に発生した量の半
分以下である。他の副生成物はテルト−ブチルアルコー
ルで、鈍性物質であるのでドーピング反応を行わず、か
つ、PITNの形成過程において主鎖上微量のドーピン
グにより生成される遊離基のコップル現象の発生を阻止
できるので、このように得られたミクロゲルは比較的長
時間(約1週間)保存しても集結沈澱を見なかった。こ
の方法により得られたPITN溶液は図2のUV−Vi
s−NIRスペクトル図の曲線(b)に示されるよう
に、 π−π のピークは810nmに現われ、均一にITO導電ガラ
ス上に塗布することができ、PITNの成膜性が良好で
極めて良好な電気変色特性を有する。また、図2の
(a),(b)の両スペクトルを比較すれば、tBHC
によるPDHITNの脱水素反応はλmaxがSO2Cl2
による脱水素反応よりも約20nm高く、脱水素が比較
的安全であるとともに共役結合が比較的長いことが示さ
れ、その反面、1400nmのショールダーピーク吸収
から両者とも軽微なドーピング現象があることが示され
ている。しかしピリジンが添加されているので、溶液は
なお安定を保ち、分子結合の継続的集結による沈澱を発
生することがない。PITN高分子としては、従来の文
献および本願の出願以前に公開された特許出願の方法に
より合成されたものは、λmaxが633ないし750n
mの間にあり、いずれも本願のものより低い。これか
ら、本発明方法によれば、確に、有効且迅速にPDHI
TN系高分子を脱水素してPITNを形成でき、その生
成物の共役結合が比較的長いことが分る。
【0052】安定なPITNミクロゲル溶液を製造する
キーポントは次のように制約される。
【0053】(1)良好な膜の形成に寄与できるよう、
高分子量のPITN前駆物質PDHITNを合成する。
【0054】(2)PDHITNのジクロロメタン溶液
を合成するには、ミリグラムのPDHITN毎に対し1
ないし100ミリリットルの溶媒の濃度が好ましく、こ
の溶液中のPDHITNが濃過ぎると脱水素後PITN
の不安定溶液を形成してしまい、ただちに沈澱を生成す
る虞れがあり、反面希薄過ぎると脱水素が不完全となり
成膜が容易でない。
【0055】(3)PDHITNを脱水素してPITN
ミクロゲル溶液を形成する場合、高反応型脱水素剤とし
てSO2Cl2およびテルト−ブチルハイポクロライト
(tBHC)が用いられる。
【0056】(4)ピリジンを反応抑制剤として用いる
とHCl副生成物を中和して除去できると共にPITN
ミクロ溶液を安定させる。
【0057】(5)複合膜に成形させる場合、それに使
用される慣用的な高分子をPDHITN溶液の合成時に
一緒に引入れると直接混合溶液が得られる。これにより
安定のPITNミクロゲル(又は混合溶液)が得られ、
これを塗布すれば大面積のPITN膜又は複合膜が製造
され、良好な電気変色特性を有する。
【0058】本発明に使用される脱水素剤はSO2Cl2
(複合膜の製造に使用される)およびtBHCはその他
の置換基を含んだPDHITN系高分子にも応用され
る。その化学構造式を次に示す。
【0059】
【化15】 その中 R1,R2=−H,−Cm2m+1(m=1〜8),−OCm
2m+1,−SCm2m+1,−C≡N,−Cl,−Br X=S,Se,Te n=5〜500 ただし、活性水素の官能基側鎖を含む。例えば、ヒドロ
オキシル基(−OH)、メルカプト基(−SH)、カル
ボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH又は−N
3)のPITN系誘導体は脱水素剤と優先的に反応又
は錯体を形成するため不適用である。
【0060】なお、本発明に使用されるPDHITN系
前駆高分子は、先ずイソチアナフテン系モノマーを溶媒
中に溶解させ、さらにカチオン含有の開始剤、例えばメ
チルスルホン酸又はルイス酸系の開始物質の溶液を注入
し、これを溶解混合後−20℃ないし−150℃の低温
度下で1時間重合反応させ、ピリジンを点滴して重合反
応を中止することにより得られる。また、溶媒はCH3
Cl2,CH2Cl2,CH3,CCL4,クロロベンゼ
ン、ハロゲン原子含有の脂肪族炭化水素若しくは芳香族
炭化水素類溶媒又はその混合液から選れる。
【0061】本発明のポリ(1,3−ジヒドロイソチア
ナフテン)(PDHITN)溶液は、1mgのPDHI
TN系前駆高分子に対して1ないし100mlの溶媒の
濃度範囲で調合され又はこれに慣用的な高分子例えばポ
リメチルメタアクリレイト(PMMA)を溶解して混合
してもよく、超音波発振器中でさらに30分間振動して
完全に溶解させた後、窒素ガスの気流を通じて溶液中の
空気を置換して得られる。
【0062】本発明のイソチアナフテン系高分子ミクロ
ゲル又はイソチアナフテン系高分子混合液は、PDHI
TN溶液中にテルトブチルハイポクロライトを加入又は
SO2Cl2を脱水素剤(脱水素当量は0.5ないし1.
0)として3ないし30分間反応後、ピリジンを脱水素
反応抑制剤として加入して反応を中止して得られる。
【0063】本発明のイソチアナフテン系高分子膜は、
In−Sn酸化物を塗布した導電ガラス上にイソチアナ
フテン系高分子ミクロゲル溶液/混合溶液を塗布して乾
燥させることにより得られる。
【0064】
【実施例】以下添付図を参照しながら実例をあげて説明
すれば本発明をより理解できるであろう。ただし実例は
説明のためのもので、本発明の技術思想はこれらに限定
されず、添付のクレームの範囲を逸脱しないかぎり、種
種の変化が許容されるのは言うまでもない。
【0065】図1は一般的な電気変色表示器の見取り図
である。その中、In−Sn酸化物(ITO)を塗布し
た導電ガラス10を陰極とし、この上に導電重合体12
(本願ではイソチアナフテン系高分子膜を使用してい
る)を塗布又は注湯し、さらにこの上に重合体電解質膜
14を接着させ、またこの上に金属導電陽極16を接続
し、これら両極端に電源供給装置18を直列的に接続さ
せて観察方向19から観察すると、電源電位の変化によ
り導電重合体の変色状況が観察される。
【0066】図2はUV−Vis−NIR吸収スペクト
ル図である。縦軸は吸収強度(A)、横軸は吸収波長
(nm)を表わす。その中20はSO2Cl2を脱水素剤
として形成された吸収スペクトル曲線であり、22はテ
ルト−ブチルハイポクロライト(tBHC)を脱水素剤
として形成された吸収スペクトル曲線である。曲線20
では、その π−π のピークが790nmに現われ、1400nmには比較
的弱いが広い吸収帯があり、なお少量のPITN分子結
合がドーピングされていることを表わしている。強アル
カリ例えば三級アミン又はヒドラジンを脱水素抑制剤と
すればこのドーピング現象を完全に除去できるが、得ら
れた溶液が不安定となり、PITN結合がただちに集結
して、生成された粉末が溶液中に懸濁する。一方ピリジ
ンを使用すれば同時に脱水素反応を中止でき、安定なP
ITN溶液が得られる。この溶液を均一にITO導電ガ
ラス上に塗布して得られた膜はピリジンと残留のSO2
Cl2により形成された塩を含んでいるため容易に亀裂
状破片を呈し、電気変色の応用に適宜でない。この欠点
を改善するにはPITN溶液中に慣用的な高分子を添加
して溶液混合することで達成される。この溶液を塗布し
て得られたPITN複合膜はなお電気変色特性を有し、
顔色がブルーから無色に変化し、対比が鮮明で極めて良
好な機械性質を有する。
【0067】図2中の曲線22はテルト−ブチルハイポ
クロライト(tBHC)を脱水素剤としてPDHITN
の脱水素反応を行ったもので、脱水素反応が迅速で、副
生成物が少く、生じたHCl量はSO2Cl2を脱水素剤
として生じたものの半分しかない。このUV−Vis−
NIRスペクトル図の曲線22に見られるように π−π のピークは810nmに現われ、均一にITO導電ガラ
ス上に塗布でき、PITNの成膜性が良好で極めて良好
な電気変色特性を有する。この図2の20,22の両ス
ペクトルの比較から分るように、λmaxはSO2Cl2
水素剤のものより約20nm高く、その脱水素が比較的
完全であることが分る。又、共役結合は比較的長いが1
400nmの吸収帯吸収から両者はいずれも軽微なドー
ピングがあることを表すが、ピリジンが添加してあるか
ら溶液はなお安定であり、分子結合の継続的集結により
沈澱することがない。
【0068】PITN高分子としては、前記公知技術の
方法により合成されたものは、そのλmaxが633ない
し750nmの間に現われ、いずれも本発明の方法のも
のより低いことから、本発明の方法の従来の方法より有
効かつ迅速にPDHITN系高分子を脱水素してPIT
Nを形成でき、その生成物の共役結合も比較的長い。
【0069】図3は循環式ボルタンメトリー装置の見取
り図で対応電極30と、基準電極31と、動作電極32
と、銀線33とITO導電ガラス上に塗布された導電半
導体34と、白金片35と、電位供給器37と、V−I
製図機36と、ガラス容器38と、電解液39とを備え
てなり、CV曲線を測定して酸化、還元電位を求める装
置である。
【0070】実施例1:イソチアナフテン系高分子(P
ITN)膜の製造 20ミリグラムのPDHITNを18mlのジクロロメ
タンに添加し、超音波で振動して十分に溶解させ、室温
下で18μL(一当量)のtBHCを内含したジクロロ
メタンを2ml加入して脱水素反応を15分間行い、し
かる後0.5mlを加入して反応を中止し、得られたP
ITN溶液を均一にITO導電ガラス上に塗布し、空気
中で溶媒を揮発させると膜が形成された。このPITN
膜をプロピレンカーボネイト(PC)中に置いて保存し
たところ、少くとも5カ月安定であった。この合成され
たPITN膜について循環式ボルタンメトリーテストを
行って、図4のCV−曲線を得た。この循環式ボルタン
メトリー装置には、PITN膜をITO導電ガラス上に
塗布して動作電極とし、これと5mmの間隔にある白金
片を対電極とし、溶液中にある銀糸を基準電極としてい
る。電解質溶液として0.2M Et4NBF4のPC溶
液が用いられ、図4に示されるようなCV曲線を得た。
このCV曲線から酸化還元電位は0.58及び0.1V
に現われ、公知技術の導電合成によるPITN膜の酸化
還元電位が0.58及び−0.15V(アメリカ特許第
4,772,940号(1988))に比べて、酸化電
位はほぼ同じであるが還元電位は比較的早く現われてい
る(約0.25V早い)。このことは本発明の得たPI
TN膜は比較的早く還元されることを示す。
【0071】図5はUV−Vis−NIR電気変色検出
装置の見取り図である。この検出装置は対応電極50
と、基準電極51と、動作電極52と、銀線53と、I
TO導電ガラス上に塗布された導電半導体54と、白金
55と、電位供給器57と、UV−Vis−NIR検出
器56と、石英ガラス容器58と、電解液59とによ
り、異なる電圧下のUV−Vis−NIRのスペクトル
変化の状況を記録するものである。
【0072】実施例2:イソチアナフテン系高分子(P
ITN)複合膜の製造 20mgのPITNおよび180mgのポリブチルメタ
アクリレイト(PBMA)を18mgのジクロロメタン
に添加し、超音波で30分間振動して(oscilat
ing)十分に溶解させ、室温下で12μLのSO2
2又は18μLのtBHCを内含した2mlのジクロ
ロメタンを加入して脱水素反応を15分間行い、さらに
ピリジンで反応を中止すると10%のPITN/PBM
A混合溶液が得られた。この混合溶液を直接ITO導電
ガラス上に塗布して乾燥させたところ、濃いブルーPI
TN/PBMA複合膜が得られた。
【0073】実例3:イソチアナフテン系高分子(PI
TN)膜の電気変色の実験 上記方法により合成されたPITN溶液から約0.5m
l取って長さ30mm、巾9mmのITO導電ガラス上
に塗布し、溶媒を揮発させると電気変色特性を有した膜
が得られた。この膜を動作電極とし、白金電極を対電極
とし(検出光源の通過を防碍しないように動作電極から
3mm離れた垂直方向上に置く)、別にAg/Ag+
基準電極とし、これら電極よりなる系統を0.2M E
4NBF4のPC溶液中において電気変色テストを行っ
た。相対基準電極に+0.2Vの電圧を与えると、膜の
顔色が徐徐に淡いブルーに変り、+0.6Vまで増加す
ると、迅速に淡黄色又は透明無色に近い色となった。そ
して電位を取り去ると膜の顔色はまた徐徐に淡いブルー
に回復し、逆電圧を与えると膜色が濃いブルーに回復し
た。このように色の変化は可逆的であり、1.0Vない
し−0.3Vの電圧が使われ、図6のUV−Vis−N
IRスペクトル図が得られた。この図から正電圧を与え
た場合は π−π ピーク810nmが徐々に消失し、その代り1400n
mの広いピーク吸収に出現していることが表示されてい
る。また、逆電圧を加えると本来の吸収スペクトルに回
復したことが示されている。この現象から本発明の方法
により合成されたPITN膜はスマートウィンドー、電
気変色表示器等に塗布することにより電磁波の干渉を防
止でき、応用上大きなメリットがあることが証明され
た。
【0074】図6において、曲線61は0.4Vの電
圧、曲線61は0.6Vの電圧、曲線65は1.0Vの
電圧、曲線66は−0.1Vの電圧、曲線67は−0.
3Vの電圧を加えたものである。
【0075】実施例4:イソチアナフテン系高分子PI
TN系複合膜の電気変色実験 合成されたポリ(1,3−ジヒドロ−5,6−ジメチル
イソチアナフテン)から20ミリグラム取り、180ミ
リグラムのPBMAと一緒に180ミリリットルの無水
ジクロロメタン中に置き、超音波で10分間振動して十
分に溶解させ、しかる後室温下で7.5μL SO2
2を内含した2ミリリットルのジクロロメタンを加入
して脱水素反応を3分間行い、さらに0.5ミリリット
ルのピリジンで反応を中止すると、10%のポリ(5,
6−ジメチルイソチアナフテン(PDMITN)/PB
MAの混合溶液が得られた。この溶液は−20℃の温度
下において1カ月以上保存可能である。この溶液を直接
ITO導電ガラス上に塗布して乾燥すると濃いブルーの
PDMITN/PBMA複合膜が得られた。実施例3と
同じ設備及び方法で電気変色テストを行ったところ、図
7のスペクトル図が得られた。
【0076】図7において、曲線は電圧を加えていない
合成PITN膜である。曲線72は0.2V電圧、曲線
73は0.8Vの電圧、曲線74は1.3Vの電圧、曲
線75は1.3Vの電圧、曲線76は−0.3Vの電
圧、曲線77は−0.5Vの電圧を加えたPITN膜で
ある。
【0077】
【発明の効果】このように本発明のイソチアナフテン高
分子の製造方法によれば、脱水素剤例えばテルト−ブチ
ルハイポクロライト(tHBC)および脱水素反応抑制
剤例えばピリジンの作用により、又は慣用的な高分子に
溶解させることにより、モノマー転化率が高く、構造が
完全で、導電性が高く、かつ透析純化の必要がなく、そ
の上良好な機械性質及び電気変色特性を有し、基材上に
塗布可能な、大面積のPITN膜又はその複合膜を製造
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は電気変色表示器の見取り図、
【図2】図2はUV−Vis−NIRスペクトル図、
【図3】図3は循環式ボルタメトリー装置の見取り図、
【図4】図4は循環式ボルタメトリー法により測定され
たI−V図、
【図5】図5はUV−Vis−NIR電気変色検出装置
の見取り図、
【図6】図6はイソチアナフテン系高分子(PITN)
膜の電気変色UV−Vis−NIRスペクトル図、
【図7】図7はイソチアナフテン系複合(PITN/P
BMA)膜の電気変色UV−Vis−NIRスペクトル
図である。

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式Iの加工可能なイソチアナフテン系高
    分子 【化1】 (式中、R1,R2はいずれも水素原子、C1-8のアルキ
    ル基、C1-8アルコキシル基、C1-8アルキルスルフィド
    基、シヤノ基、ブロモ基 X=S,Se,Te n=5〜500) を製造する際に、 (a)式IIのイソチアナフテン(ITN)系モノマー 【化2】 (式II中X,R1,R2の定義はいずれも式Iと同一)を
    溶媒中に溶解させ、カチオン開始剤溶液を注入すると共
    に、低温下で重合反応を行って、下式IIIのポリ(1,
    3−ジヒドロイソチアナフテン(PDHITN)系前駆
    重合体を得るステップと、 【化3】 (式中のX,R1,R2,nの定義は式Iと同じ) (b)さらに、得られた式IIIのポリ(1,3−ジヒド
    ロイソチアナフテン)系前駆重合体を溶質として前記溶
    媒と一定の割合で調合して前記溶媒中に均一に溶解させ
    てポリ(1,3−ジヒドロイソチアナフテン)溶液を
    得、しかる後、テルト−ブチルハイポクロライト(tB
    HC)を脱水素剤として使用して再度脱水素反応を行
    い、その後、脱水素反応の抑制剤にピリジンを使用して
    前記脱水素反応を終了するステップとを含む加工可能な
    イソチアナフテン系高分子の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記ポリ(1,3−ジヒドロイソチアナ
    フテン)(PDHITN)系前駆重合体の溶質は前記溶
    媒中に、1mgのPDHITN系前駆重合体に対し1乃
    至100mlの溶媒の濃度で調合し、また、該PDHI
    TN溶液を超音波発振器を用いて振動させて均一に溶解
    させる請求項1に記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記開始剤としてメチルスルホン酸(C
    3SO3H)又はルイス酸系の反応性開始剤を使い、そ
    れと前記イソチアナフテン系モノマーとの溶媒中におけ
    る重合反応は−20℃〜150℃範囲の低温下で行い、
    前記溶媒はCH3Cl,CH2Cl2,CHCl3,CCl
    4,クロロベンゼン,ジクロロベンゼン,ハロゲン原子
    を含んだ脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素溶媒および
    その混合液から選ばれる請求項1に記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記脱水素剤の当量範囲は0.5ないし
    1.0範囲であり、脱水素反応の時間は3ないし30分
    間である請求項1に記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記ステップ(b)により得られたポリ
    (1,3−ジヒドロイソチアナフテン)(PDHIT
    N)溶液はさらに慣用的な高分子をその中に均一に溶解
    させて混合溶液を生成した後、再度脱水素反応を行い、
    このとき該ポリ(1,3−ジヒドロイソチアナフテン)
    前駆重合体は5ないし40容量%であり、該慣用的な高
    分子又は溶解した慣用的な高分子は下式(IV)で表わさ
    れるビニル類高分子 【化4】 (その中X=水素原子、メチル基 Y=水素原子、メチル基、クロロ基、シアノ基、フェニ
    ル基、C1-6アルキルエステル基、C1-6アルキルカルボ
    ニルオキシ基)又は下式(V)で表わされるポリカーボ
    ネイト 【化5】 (R3,R4はいずれも脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水
    素から選ばれる)又は下式(VI)のポリエステル類 【化6】 (其中、R3,R4の定義は式(V)と同じ)又は下式
    (VII)で表わされる置換基 【化7】 (其中R3,R4,nの定義は式(V)と同じ)又はC
    2-4アルコキシ重合体である、請求項1に記載の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 請求項5により製造されたイソチアナフ
    テン系高分子と慣用的な高分子が存在している混合溶液
    を均一に基材上に塗布又は注湯し乾燥して、基材上に一
    層のイソチアナフテン系複合膜を形成するイソチアナフ
    テン系複合膜の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1により製造されたイソチアナフ
    テン系高分子のミクロゲル溶液を、均一に基材上に塗布
    又は注湯し乾燥して、基材上に一層のイソチアナフテン
    系高分子膜を形成するイソチアナフテン高分子複合膜の
    製造方法。
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