JP2551399B2 - C末端アミド化に関与する酵素並びにその製造方法及びその使用 - Google Patents

C末端アミド化に関与する酵素並びにその製造方法及びその使用

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    • Y02P20/52Improvements relating to the production of bulk chemicals using catalysts, e.g. selective catalysts

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、C末端グリシン付加体
のC末端アミド化に関与する新規酵素、その調製方法お
よび使用ならびに該酵素の活性の測定方法およびその方
法を用いる該酵素の探索方法に関する。
【0002】
【従来の技術】C末端がアミド化されて初めて生理活性
を示すペプチド、例えばカルシトニン、ガストリン、セ
クレチン、血管作用性小腸ペプチド(VIP)、成長ホ
ルモン放出因子、副腎皮質刺激ホルモン放出因子等は、
生体内で酵素反応によりグリシン付加体から生成される
ことが知られている。これらの生理活性ペプチドの多く
は、医薬品として有用であり、現在、カルシトニン、セ
クレチンなどは医薬品として市販されている。
【0003】これらのペプチドの入手は、従来主として
生体からの分離精製によって行われており、工程が煩雑
でまた、起源の生体も入手しにくい。従って、現在市販
の上記ペプチドは非常に高価なものとなっている。そこ
で、近年、組換えDNA技術を用いて、これらの生理活
性ペプチドを生産しようとする試みが行われている。し
かしながら、大腸菌、酵母、枯草菌などを宿主とした組
換えDNA技術では、生産したペプチドのC末端アミド
化ができず、上記ペプチドの生産をおこなう際の障害と
なっている。そこで、生体外でC末端アミド化を容易
に、しかも、安価におこなえる技術が望まれている。
【0004】一方、前述の生体内酵素反応、すなわちペ
プチド類C末端グリシン付加体のC末端アミド化に関与
する酵素は、ペプチジルグリシン−α−アミデーティン
グモノオキシゲナーゼ(C末端アミド化酵素)(EC.
1.14.17.3)と呼ばれており(Bradbur
yら、Nature,298,686,1982:Gl
embotskiら、J.Biol.Chem.,25
,6385,1984)、次のような反応を触媒して
いると考えられている。
【0005】
【化4】 生体内でのアミド化機構の解明、ならびに組換えDNA
技術によって生産されるペプチドの生体外におけるC末
端アミド化を目的に、本酵素を精製する試みがなされて
いる。
【0006】今までに比活性を出発原料に比し100倍
以上に高めた精製例としては、ウシ脳下垂体中葉(Mu
rthyら、J.Biol.Chem.,261,18
15,1986)、ブタ脳下垂体(Kizerら、En
docrinology.118,2262,198
6:Bradburyら、Eur.J.Bioche
m.,169,579,1987)、ブタ心房(Koj
imaら、J.Biochem.,105,440,1
989)、アフリカツメガエル体皮(Mizunoら、
Biochem.Biophys.Res.Commu
n.,137,984,1986)、ラット甲状腺腫瘍
(Mehtaら、Arch.Biochem,Biop
hys.,261,44,1988)由来のものが報告
されている。
【0007】これらの精製酵素は、いずれもその活性発
現に酸素、銅イオンを要求し、アスコルビン酸の還元剤
添加により、活性が上昇する性質を持つことが知られて
いる。最近では、精製酵素を用いる反応機構の解明に関
する研究も進められてきており、反応中間体の存在が示
唆されてきている〔Bradburyら、Eur.J.
Biochem.,169,579−584(198
7)、Ramerら、J.Am.Chem.Soc.,
110,8526−8532(1988)、Young
ら、J.Am.Chem.Soc.,111,1933
−1934(1989)〕。しかし、現在のところ、中
間体の単離ならびにその中間体とアミド化酵素との関係
を明らかにした例はない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、C末端
アミド化酵素は、生体内で非常に興味深い作用を示し、
特定の生体器官に由来する一定の純度を有する組成物も
知られている。しかし、これらの組成物を生体外におけ
るC末端アミド化物の生産に用いるには、その純度およ
び安定性ならびに製造原価の面で十分なものとはいえな
い。これらの課題を解決するには当該酵素に関する基礎
的知見の収集、すなわち、C末端アミド化反応をおこな
う反応機構の解明をおこなうことが必要と考え、中間生
成物の単離を試みたところ、中間体を単離し構造決定す
ることに成功した。
【0009】この結果から、C末端アミド化反応は、従
来考えられていたような1段階の反応ではなく、中間体
(対応するC末端α−ヒドロキシルグリシン付加体)を
介した2段階の反応であることがわかった。そこで、そ
れぞれの反応を触媒する酵素の探索について鋭意検討し
たところ、目的の酵素活性を有する新規物質を見い出
し、本発明を完成した。すなわち、本発明の目的はC末
端アミド化に関与する新規酵素群、その調製方法および
使用、ならびに該酵素の活性測定方法およびこの方法を
用いる該酵素活性を有する物質の探索方法を提供するに
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段】C−末端のアミド化にお
いて、本発明の酵素と共に作用する酵素として次式
(I)
【0011】
【化5】 (上式中、Aは、天然のα−アミノ酸に由来するα−ア
ミノ基もしくはイミノ基およびα−カルボキシル基以外
の残基を表しており、Xは、水素原子またはカルボニル
基を介してN原子と結合するアミノ酸誘導体の残基を表
す)で示されるC末端グリシン付加体に作用して、次式
(II)
【0012】
【化6】 (上式中、AおよびXは、前記の意味を表す)で示され
るC末端α−ヒドロキシルグリシン付加体を生成し、か
つ、ゲル濾過を用いる分子量決定法により約25,00
0ダルトンの分子量を有するC末端グリシン付加体のC
末端アミド化に関与する酵素(以下、「酵素−I」とい
う場合もある)が挙げられる。
【0013】なお、式(I)および(II)ならびに下記
式(III)のカッコ内の水素原子(H)は、Aがα−イミ
ノ基を有するα−アミノ酸に由来する場合には水素原子
を有しないことを意味する。本発明における式(I)で
示されるC末端グリシン付加体、すなわち本発明の酵素
の基質としては、一般的に、下記式
【0014】
【化7】 の部が天然または合成のアミノ酸誘導体類、特に、ペプ
チドまたは蛋白質類に由来し、そのC末端アミノ酸残基
〔−N(H)−A−CO−で示される〕にグリシンがペ
プチド結合した化合物が挙げられる。
【0015】C末端アミノ酸残基としては天然のα−ア
ミノ酸、特にタンパク質構成アミノ酸、例えばグリシ
ン、アラニンのような脂肪族アミノ酸;バリン、ロイシ
ン、イソロイシンのような分枝アミノ酸;セリン、スレ
オニンのようなヒドロキシアミノ酸;アスパラギン酸、
グルタミン酸のような酸性アミノ酸;アスパラギン、グ
ルタミンのようなアミド;リジン、ヒドロキシリジン、
アルギニンのような塩基性アミノ酸;システイン、シス
チン、メチオニンのような含硫アミノ酸;フェニルアラ
ニン、チロシンのような芳香族アミノ酸;トリプトファ
ン、ヒスチジンのような複素環式アミノ酸;プロリン、
4−ヒドロキシプロリンのようなイミノ酸に由来する残
基が挙げられる。
【0016】また、このアミノ酸残基のα−アミノ基も
しくはイミノ基に結合する水素原子またはアミノ酸誘導
体の残基〔X−で示される〕の該残基としては、第一の
アミノ酸またはα−アミノ基を介してペプチド結合し得
るペプチド類であれば、その構成アミノ酸残基の種類お
よびペプチドの鎖長に制限はなく、さらにその構成アミ
ノ酸残基にリン酸もしくは糖またはその他の置換基が共
有結合していてもよく、また脂質と複合体を形成してい
てもよい。
【0017】前記置換基の具体的なものとしては、それ
ぞれのアミノ酸残基に対応して、アルギニン残基のグア
ニジノ基に置換する基、例えば、メチル基もしくはエチ
ル基などのアルキル基またはアデノシン二リン酸リボー
ス、シトルリンもしくはオルニチンに由来する残基;リ
ジン残基のε−アミノ基に置換する基、例えば、グルコ
シル基、ピリドキシル基、ビオチニル基、リポイル基も
しくはアセチル基またはリン酸、δ−水酸基を有する化
合物、δ−グリコシル基を有する化合物、グルタルアル
デヒドもしくは無水シトラコン酸に由来する残基;
【0018】ヒスチジン残基のイミダゾール基に置換す
る基、例えば、メチル基、リン酸基もしくはヨード原子
またはフラビンに由来する残基;プロリン残基に置換す
る基、例えば、水酸基、ジ水酸基もしくはグリコシルオ
キシ基;フェニルアラニン残基のベンゼン環に置換する
基、例えば、水酸基もしくはグリコシルオキシ基;チロ
シン残基の水酸基に置換する基、例えば、グリコシルオ
キシ基、スルホン酸基、沃素原子、臭素原子もしくは塩
素原子または水酸基を有する化合物、ビスエーテル、ア
デニン、ウリジンもしくはRNA(リボ核酸)に由来す
る残基;
【0019】セリン残基の水酸基に置換する基、例え
ば、メチル基、グリコシル基、ホスホパンテテイン基、
アデノシン二リン酸リボシルもしくはリン酸基;スレオ
ニン残基の水酸基に置換する基、例えば、グリコシル
基、メチル基もしくはリン酸基;システイン残基のSH
基に置換する基、例えば、グリコシル基、シスチニル
基、デヒドロアラニル基もしくはセレン原子またはヘム
もしくはフラビンに由来する残基;
【0020】アスパラギン酸またはグルタミン酸残基の
カルボキシル基に置換する基、例えば、メチル基、リン
酸基もしくはγ−カルボキシル基;アスパラギンまたは
グルタミン残基のアミド基に置換する基、例えば、グリ
コシル基、ピロリドニル基もしくはイミノ基などが挙げ
られる。上記基質としてのC末端残基にグリシンがペプ
チド結合したペプチドまたはその誘導体は天然から抽出
したものでも、化学合成によって生産したものでもまた
組換えDNA技術を用いて生産したものでもよい。
【0021】従って、本発明の基質、式(I)で示され
る化合物としては、ペプチド類、例えば、アミノ酸残基
数2〜100程度のペプチド、カゼイン、プロテインキ
ナーゼ、アデノウィルスEIA蛋白質、RAS 1 蛋
白質などで代表されるリン酸ペプチドおよびその加水分
解物、スロンボプラスチン、α1 リポ蛋白質、リポビテ
リンなどで代表されるリポ蛋白質およびその加水分解
物、ヘモグロビン、ミオグロビン、ヘモシアニン、クロ
ロフィル、フィコシアニン、フラビン、ロドプシンなど
で代表される金属蛋白質およびその加水分解物、コラー
ゲン、ラミニン、インターフェロンα、セログリコイ
ド、
【0022】アビジンなどで代表される糖蛋白質および
その加水分解物ならびにその他のC末端カルボキシル基
がアミド化されて成熟型の生理活性ペプチド、例えばカ
ルシトニン、セクレチン、ガストリン、血管作用性小腸
ペプチド(VIP)、コレシストキニン、セルレイン、
膵ポリペプチド、成長ホルモン放出因子、副腎皮質刺激
ホルモン放出因子、カルシトニン遺伝子関連ペプチド等
を形成するペプチド類各々のC末端グリシン付加体(す
なわち、C末端カルボキシル基とグリシンのアミド結合
化合物)が挙げられる。
【0023】これらのうち、本発明の酵素組成物の酵素
活性を確認するために好ましい基質としては、例えば、
D−チロシルバリルグリシン、D−チロシルトリプトフ
ァニルグリシン、グリシルフェニルアラニルグリシン、
フェニルアラニルグリシルフェニルアラニルグリシン、
D−チロシルロイシルアスパラギニルグリシン、アルギ
ニルフェニルアラニルグリシン、アルギニルアラニルア
ルギニルロイシルグリシン、ロイシルメチオニルグリシ
ン、グリシルロイシルメチオニルグリシン、フェニルア
ラニルグリシルロイシルメチオニルグリシン、
【0024】アスパラギニルアルギニルフェニルアラニ
ルグリシン、トリプトファニルアスパラギニルアルギニ
ルフェニルアラニルグリシン、アラニルフェニルアラニ
ルグリシン、リジルアラニルフェニルアラニルグリシ
ン、セリルリジルアラニルフェニルアラニルグリシン、
アルギニルチロシルグリシン、グリシルメチオニルグリ
シン、グリシルチロシルグリシン、グリシルヒスチジル
グリシン、ヒスチジルグリシルグリシン、トリプトファ
ニルグリシルグリシン、およびグリシルシステイニルグ
リシン等が挙げられる(なお、グリシンを除きD−と特
に示さないものはL−型を示す)。
【0025】一方、本酵素組成物の有効利用(後述する
第五の本発明)に好ましい基質としては、前記C末端カ
ルボキシル基がアミド化されて成熟型の生理活性ペプチ
ドを形成する、そのC末端カルボキシル基にグリシンが
ペプチド結合したペプチド類が挙げられる。酵素−I
は、前記基質に作用して次式(II)
【0026】
【化8】 〔上式中、
【0027】
【化9】 の部の具体例は前記式(I)について定義したような意
味を有する〕で示されるC末端α−ヒドロキシルグリシ
ン付加体を生成することができる。式(II)で示される
化合物は、
【0028】
【化10】 の部に悪影響を及ぼさない条件下で加水分解するか、後
述する本発明の第二の酵素で処理することにより対応す
るC末端アミド化物に転化することができる。また、前
記酵素−Iは、ゲル濾過を使用する分子量決定法により
約25,000ダルトンの分子量を有する。
【0029】すなわちこの分子量は、それ自体公知のゲ
ル濾過法〔例えば、“生化学実験講座5、酵素研究法、
上巻、283〜298頁”、東京化学同人(197
5)〕に従い決定することができる。具体的には、10
0mMの塩化カリウムを含む50mMのトリス−塩酸(pH
7.4)を平衡化および溶出液として用い、トヨパール
HW−55S(東ソー社製)上でゲル濾過を行い、β−
アミラーゼ(M.W.200,000)、アルコールデ
ヒドロゲナーゼ(M.W.150,000)、BSA
(M.W.66,000)、カルボニックアンヒドラー
ゼ(M.W.29,000)およびチトクロームC
(M.W.15,400)を指標として決定した。
【0030】酵素−Iは、さらに以下の理化学的性質に
より特定される。すなわち、(i)至適pHが約5〜7で
かつ安定pHが4〜9にあり、(ii)作用適温が25〜4
0℃の範囲にあり、(iii)金属イオンおよびアスコルビ
ン酸を補因子とする。上記(i)および(ii)の性質
は、通常使用される緩衝液、具体的には、トリス−塩
酸、メス−水酸化カリウム、テス−水酸化ナトリウム、
ヘペス−水酸化カリウム緩衝液を用いて測定したもので
ある。
【0031】なお、本発明の酵素組成物は、1℃〜55
℃の温度範囲内で前記反応を触媒するが、56℃では約
10分で失活し、40℃付近でも若干の失活がみられ
る。金属イオンとしては、Cu2+,Zn2+,Ni2+,C
2+,Fe3+等が適当であり、特にCu2+,Zn2+が好
ましい。本発明は下記の酵素を提供する。すなわち、前
記式(II)で示されるC末端α−ヒドロキシルグリシン
付加体を作用して、次式(III)
【0032】
【化11】 (上式中、AおよびXは、前記の意味を表す)で示され
るC末端アミド化物とグリオキシル酸を生成し、かつゲ
ル濾過を用いる分子量決定法により約40,000ダル
トンの分子量を有するC末端グリシン付加体のC末端ア
ミド化に関与する酵素(以下「酵素−II」という場合も
ある)が提供される。この酵素の特定に使用される
【0033】
【化12】 の部の意義および分子量決定法は、酵素−Iの特定に用
いたのと同一である。なお、酵素−IIの酵素活性を確認
するために好ましい基質としては、前記酵素−Iについ
て具体的に列挙した基質に対応するα−ヒドロキシルグ
リシン化物が挙げられる。また酵素−IIはその他の理化
学的性質として酵素−Iとほぼ同一の性質を有すことに
より特定される。
【0034】すなわち、(i)至適pHが約5〜6でかつ
安定pHが4〜9にあり、(ii)作用適温が15〜35℃
の範囲にあり、(iii)金属イオンを補因子とする。上記
(i)および(ii)の性質は、通常使用される緩衝液、
具体的には、トリス−塩酸、メス−水酸化カリウム、テ
ス−水酸化ナトリウム、ヘペス−水酸化カリウム緩衝液
を用いて測定したものである。なお、本発明の酵素組成
物は、1℃〜55℃の温度範囲内で前記反応を触媒する
が、56℃では約10分で失活し、40℃付近でも若干
の失活がみられる。金属イオンとしては、Cu2+,Zn
2+,Ni2+,Co2+,Fe3+等が適当であり、特にCu
2+,Zn2+が好ましい。
【0035】酵素の調製 以上で説明した本発明の酵素−Iおよび酵素−IIは、該
酵素活性を有する原料からそれ自体公知の酵素の分離精
製法により調製することができるが、好ましくは、本明
細書に開示する以下の本発明の調製方法により得ること
ができる。すなわち、酵素−Iまたは酵素−IIの酵素活
性含有物を、前記式(I)で示されるC末端グリシン付
加体をリガンドとする基質親和性クロマトグラフィー、
および陰イオン交換クロマトグラフィーで処理すること
を特徴とする酵素−Iまたは酵素−IIの調製方法が利用
できる。
【0036】この方法に用いる原料は、本発明の酵素を
含むものであればすべて対象にすることができるが、後
述する酵素−IIの探索方法に準じて探索される高含有量
の酵素−Iまたは酵素−IIを有する生物体由来のものが
好ましい。一般に、これらの酵素活性を有する生物とし
ては、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ウサギ、ヤ
ギ、ラットおよびマウスなどの哺乳類、ニワトリ、ヤケ
イおよびカワラバトなどの鳥類、イシガメ、マムシ、ガ
ラガラヘビおよびコブラなどの爬虫類、
【0037】イモリ、アフリカツメガエル、ウシガエル
およびヒキガエルなどの両生類、ヤツメウナギ、メクラ
ウナギ、アブラザメ、シビレエイ、チョウザメ、ニシ
ン、サケ、ウナギ、トラフグおよびタイなどの魚類、ワ
モンゴキブリ、カイコ、ショウジョウバエおよびミツバ
チなどの昆虫が挙げられる。また、好適な抽出対象物と
しては、脳、下垂体、胃、心臓および肝臓などの器官に
由来する均質化物ならびに血液およびリンパ液などの体
液などを含む生物学的流体が挙げられる。すなわち、前
述のような本酵素を有する生物学的流体を、次式(I)
【0038】
【化13】 (上式中、AおよびXは前記の意味を有する)で示され
るC末端グリシン付加体をリガンドとする基質類似体親
和性クロマトグラフィーを用い、必要により、酵素の精
製に常用される
【0039】(1)沈澱による分画 (2)ヘパリン親和性クロマトグラフィー、 (3)透析、ゲル濾過等により分子量分画方法、および
/または (4)イオン交換クロマトグラフィーとを組み合せて使
用することにより本発明の酵素(酵素−Iおよび酵素−
II)を得ることができる。
【0040】前記のリガンドとしては、前述の式(I)
で示されるC末端グリシン付加体であればすべて使用で
きるが、前記酵素活性を確認するために好ましいものと
して具体的に列挙したグリシンを含め2〜6個のアミノ
酸残基からなるペプチド類が挙げられる。これらのう
ち、D-Tyr-Trp-Gly, Phe-Gly-Phe-GlyおよびGly-Phe-Gl
y がより好ましいものであるが、Phe-Gly-Phe-Gly をリ
ガンドとするものが、本発明の酵素(本酵素ともいう)
に強い親和性を有することから特に好ましい。
【0041】これらのリガンドは、通常、水不溶性担体
に結合せしめて使用されるが、リガンドとして用いられ
るペプチドのC末端グリシン残基のカルボキシル基は、
遊離の状態であることが本酵素との結合に重要であり、
N末端のアミノ酸残基のアミノ基を介して担体と結合さ
せる必要がある。すなわち、担体としては、ペプチドの
アミノ基と結合可能なものであれば何でもよく、またア
ミノ基と反応する活性基を担体に化学的に導入しても、
また、既に導入された市販の担体を使用してもよい。
【0042】化学的に導入する方法は、一般に使用され
ている方法でよく、例えば、“生化学実験法第5巻上巻
257頁〜281頁”笠井著 東京化学同人(197
5)に記載されているように、例えばアガロースに臭化
シアンを用いて、イミドカルボキシル基を導入する。市
販されている活性化された担体は、基材を指標とする
と、例えばアガロース系、セルロース系、親水性ポリビ
ニール系等があるが、これらどれを用いても構わない。
【0043】アガロース系担体としては、リガンドのア
ミノ基との結合方法にCNBr法を用いるCNBr活性
化セファロース4B(ファルマシア社製)、カルボジイ
ミド法を用いるCH−セファロース4B、ECH−セフ
ァロース4B(以上、ファルマシア社製)、アフィゲル
10、アフィゲル15(以上、バイオラッド社製)、ト
レシルクロライド法を用いるトレシル活性化セファロー
ス4B(ファルマシア社製)等が挙げられる。
【0044】セルロース系担体としては、ホルミル法を
用いるホルミルセルロファイン(チッソ社製)が挙げら
れる。親水性ポリビニール系担体としては、カルボジイ
ミド法を用いるAF−カルボキシトヨパール650、ホ
ルミル法を用いるAF−ホルミルトヨパール650、ト
レシルクロライド法を用いるAF−トレシルトヨパール
650、エポキシ活性化法を用いるAF−エポキシトヨ
パール650(以上東ソー社製)等が挙げられる。リガ
ンドとの結合反応はそれぞれの担体の使用説明書に従い
反応させれば良い。
【0045】このうち、アフィゲル10について作製方
法を記載する。アフィゲル10とペプチドとの反応は
0.001〜1M好ましくは0.1Mのモップス−水酸
化カリウム等の緩衝液中で行う。反応条件は0〜20
℃、10分〜24時間、pH3〜11程度が可能である
が、好ましくは4℃、4〜24時間、pH5〜9の条件で
行う。
【0046】アフィゲル10と結合に用いるペプチドの
混合比は、アフィゲル1mlに対し、ペプチドが約25μ
mol までは多く加える程多く結合するので、その範囲内
でいくらでもよいが、結合効率の点から1〜20μmol
程度が好都合に用いられる。反応後、反応時に用いた緩
衝液で十分に洗浄後、トリス−塩酸(pH8.0)を最終
濃度50mMになるように添加し、4℃で1時間振盪させ
る等の方法で未反応の活性基をブロックする。以上で基
質類似体親和性ゲルが作製される。
【0047】基質親和性クロマトグラフィーは、バッチ
式でもカラムに充填して連続式に行ってもよい。試料と
ゲルを接触させる時間は、本酵素が十分に吸着する程度
であればよいが、通常、20分〜24時間である。ゲル
の平衡化に用いたものと同じ組成の低イオン強度でpHが
6.0〜11.0好ましくは7.0〜9.0の緩衝液、
例えば10mMヘペス−水酸化カリウム(pH7.0)で非
吸着成分を十分に洗い出す。そのうち、本酵素活性の存
在する画分を溶出する。
【0048】溶出液は、本酵素が効率良く得られる組成
であれば何でもよいが、好ましいものとしては、1〜4
0%程度のアセトニトリルと共に0.1〜10M塩化ナ
トリウムを含むpH7.0〜9.0の間の緩衝液、例えば
20%アセトニトリル、0.4M塩化ナトリウムを含む
10mMヘペス−水酸化ナトリウム(pH7.0)が挙げら
れる。また、溶出はカラムに充填した場合、濃度勾配を
かけても構わない。
【0049】また、場合により、前記基質類似体親和性
クロマトグラフィー〔以下、(5)で表す〕工程を実施
する前または後、あるいは前後両方に先に掲げた沈澱に
よる分画〔以下、(1)で表す〕、ヘパリン親和性クロ
マトグラフィー〔以下、(2)で表す〕透析、ゲル濾過
等による分子量分画〔以下、(3)で表す〕及び/また
は、イオン交換クロマトグラフィー〔以下、(4)で表
す〕工程を実施してもよい。こうして本酵素(酵素−I
および酵素−II)は他の夾雑物から分離することができ
るが、その酵素−Iと酵素−IIの分離には、(3)およ
び/または(4)の工程を実施することが有効である。
【0050】一般的に、これらの総数1〜6工程を実施
し、さらに上記(5)または(3)工程を最終段階に実
施することが好ましい。各工程の組み合わせの具体例と
しては、(5)のみ、(1)→(5),(5)→
(3),(2)→(5),(1)→(3)→(5),
(2)→(3)→(5),(1)→(5)→(3),
(2)→(5)→(3),(2)→(1)→(5),
(1)→(2)→(3)→(5),(1)→(2)→
(5)→(3),(1)→(3)→(5)→(3),
(1)→(2)→(1)→(5),(1)→(2)→
(1)→(3)→(5),(2)→(1)→(5)→
(3),(2)→(1)→(3)→(5),(2)→
(1)→(3)→(5)→(3),
【0051】(1)→(2)→(3)→(5)→
(3),(1)→(3)→(2)→(3)→(5),
(1)→(3)→(2)→(3)→(5)→(3),
(4)→(3)→(5),(5)→(3)→(5)→
(3),(1)→(5)→(3)→(5)→(3),
(4)→(5),(1)→(3)→(5)→(4)→
(3),(1)→(3)→(4)→(3)→(5),
(1)→(2)→(3)→(5)→(3)→(4),
(1)→(2)→(3)→(5)→(4)→(3)、ま
たは(4)→(5)→(3)、等が挙げられる。
【0052】これらのうち、(1)→(2)→(3)→
(5),(1)→(2)→(3)→(5)→(3),
(1)→(3)→(2)→(3)→(5)または(1)
→(3)→(2)→(3)→(5)→(3),(1)→
(2)→(3)→(5)→(4)→(3)、の順に工程
を進めるのがより好ましい。以下、前記(1)〜(4)
工程についても詳細に説明する。なお、これらはすべて
0℃〜10℃、好ましくは4℃で行う。
【0053】(1)の沈澱による分画に使用される物質
としては、硫酸アンモニウム等の塩類、エタノール、ア
セトンなどの有機溶媒、ポリエチレングリコール等のポ
リマー類が挙げられる。添加する濃度は、特に制限はな
いが、本酵素が収率良く回収でき、しかも他の蛋白質成
分と分離できる条件が好ましい。例えば、30〜50%
飽和硫酸アンモニウム、10〜15%(w/v)ポリエ
チレングリコール6000の添加では、本酵素は沈澱画
分に来るのに対し、多くの蛋白質は上澄部分に存在する
ので、効率よく精製される。
【0054】なお添加は、スターラーで撹拌しながら序
々に行うのが好ましい。添加終了後少なくとも1時間以
上静置したのち、遠心分離により、本酵素の存在する画
分を回収する。沈澱画分を回収した時には、これを適当
な緩衝液に溶解する。緩衝液、pH6.0〜11.0、好
ましくはpH7.0〜9.0であれば組成は何でもよく、
例としては、トリス−塩酸、ヘペス−水酸化カリウム、
テス−水酸化ナトリウム等が挙げられる。また濃度は、
緩衝能を保てる範囲であれば特に制限はないが、5〜5
0mM程度が好ましい。
【0055】(1)によって得た活性画分は、次に、再
度(1)を行っても(2)〜(5)のうちの1つの工程
いずれに進んでもよいが、(1)の分画に硫酸アンモニ
ウム等の塩類を使用し、(2)か(4)または(5)に
進む時は、(3)の工程か、あるいは適当な緩衝液を添
加して次の工程で用いるゲルに本酵素が結合可能な塩濃
度に下げる必要がある。また、沈澱を溶解して1時間以
上静置した場合や、透析を行った場合には、不溶性の物
質が生じることがあるので、これを例えば、遠心分離や
濾過を行って除去する。
【0056】(2)のヘパリン親和性クロマトグラフィ
ーについては、バッチ式でもカラムにゲルを充填して連
続式に行ってもよい。ヘパリンをリガンドとしたゲル
は、市販されているものとして、ヘパリンセファロース
CL−6B(ファルマシア社製)、アフィゲルヘパリン
(バイオラッド社製)、ヘパリンアガロース(シグマ社
製)、AF−ヘパリントヨパール650(東ソー社製)
等がある。
【0057】生体抽出液を直接、あるいは(1)に示し
た沈澱による分画の処理を行ったのち、ヘパリン親和性
ゲルと接触させる。接触時間は、本酵素が十分に吸着す
る程度であればよいが、通常は20分〜12時間であ
る。ヘパリンに親和性のない成分を、本酵素が溶出され
ない程度にイオン強度が低く、pHが6.0〜11.0好
ましくは7.0〜9.0の緩衝液、例えば、10mMのヘ
ペス−水酸化カリウム(pH7.0)で十分に除去する。
【0058】そののち、本酵素を含む画分を溶出する。
溶出液としては、本酵素活性の回収率が高いものがよ
く、例えば、0.5M−2Mの塩化ナトリウム、塩化カ
リウム、硫酸アンモニウム等一般に酵素精製に用いられ
る塩類を含むpH6.0〜11.0を有するものが好まし
い。溶出は、カラムに充填してある場合、塩濃度勾配に
よっても一段階溶出を行っても構わない。例えば、0.
3−2.0Mの塩化ナトリウムを含む10mMヘペス−水
酸化カリウム緩衝液(pH7.0)で溶出する。
【0059】(2)の工程で得た活性画分は、次に
(1)〜(4)いずれの工程に供してもよいが、再度
(2)を行ったり、(4)または(5)に進む場合に
は、(3)を先に行うか、多量の50mM以下の低イオン
強度のpH6.0〜11.0、好ましくは7.0〜9.0
の緩衝液、例えば5mMヘペス−水酸化カリウム(pH7.
0)等を加えて(2),(4)または(5)で使用する
ゲルに本酵素が吸着できるイオン強度にまで下げる必要
がある。
【0060】(3)の透析、ゲル濾過等による低分子物
質の除去の工程であるが、透析の場合、使用する膜は、
本酵素が通過できない程度の分画分子量のものであれば
よいが、1,000〜10,000が好ましい。透析の
方法は、例えば、“生化学実験講座第5巻上巻252頁
〜253頁”左右田著 東京化学同人(1975)に記
されているような一般に使用されるものでよく、数時間
〜数日、イオン強度の低い、pH6.0〜11.0、好ま
しくはpH7.0〜9.0の緩衝液、例えば10mMヘペス
−水酸化カリウム(pH7.0)、10mMトリス−塩酸
(pH7.5)等に対して行う。また、透析の際、不溶性
の物質が析出した場合には、例えば遠心分離、濾過等に
よって除去する。
【0061】ゲル濾過については、一般的にゲル濾過用
担体として用いられるものであれば何でも構わない。例
えばセファデックスG−10,G−15,G−25,G
−50,G−75,G−100、セファクリルS−20
0,S−300(以上ファルマシア社製)トヨパールH
W−40,HW−55(東ソー社製)、バイオゲルP−
2,P−4,P−6,P−10,P−30,P−60,
P−100(以上バイオラッド社製)等が好ましい。な
お、使用すべき緩衝液は、透析の際に用いるべき組成と
同様である。
【0062】ただし、イオン強度があまりに低いと本酵
素のゲルへの吸着が起こることが考えられるので、濃度
を5〜200mM好ましくは10〜20mMにする。ゲル濾
過の方法は、例えば、“生化学実験講座第5巻上巻28
3頁〜298頁”左右田著東京化学同人(1975)に
記載されているように行えば良い。ゲル濾過担体のベッ
ド体積に対し十分な分離能が得られる量の試料を添加
後、溶出を行い、本酵素活性の存在する画分を回収す
る。(3)の工程によって得られた活性画分は、特別な
処理なしに(1)〜(5)の各工程に進めることができ
る。
【0063】イオン交換クロマトグラフィーについて
は、一般に市販されているイオン交換クロマトグラフィ
ー用担体であれば何でも構わない。例えば、Amine
x,Dowex,Amberlite,SP−Seph
acryl M,Asahipak,DEAE−Toy
opearl,DEAE−Sephadex,CM−S
epharose,DEAE Bio−Gel A,C
M−Cellulose,DEAE−Cellulof
ine,Partisil SCY,MonoQおよび
Mono S等が好ましい。なお、使用すべき緩衝液お
よび使用方法は、ヘパリン親和性ゲルの項に記載した方
法に準じれば良い。また、基本的な操作方法は、「新基
礎生化学実験法2、抽出・精製・分析I」(丸善、19
88)などに記載された一般的な方法に従えば良い。
【0064】(4)の工程で得た活性画分を、次に
(1)〜(5)いずれかの工程に供しても良いが、再度
(4)を行ったり、あるいは(2)または(5)に進む
場合には、(3)を先に行うか、多量の50mM以下の低
イオン強度のpH5.0〜11.0、好ましくは6.0〜
8.0の緩衝液、例えばヘペス−水酸化ナトリウム(pH
7.0)等を加えて、(2),(4)または(5)で使用
するゲルに本酵素が吸着できるイオン強度にまで下げる
必要がある。
【0065】以上の精製工程を経ることにより、本発明
の酵素の粗生成物が得られる。かかる、酵素の粗生成物
は、さらに、(3)のゲル濾過工程を用いるタンパク質
分離手段により、分子量約25,000および分子量約
40,000にそれぞれピークを有する画分に単離し
て、本酵素標品とすることができる。以上の各工程は、
それぞれ後述のもう一つの本発明である酵素の活性の測
定方法に準じて、式(I)または式(II)の化合物を基
質に使用して酵素−Iおよび/または酵素−IIの活性を
追い、活性画分を得ることによって実施される。
【0066】酵素組成物の使用 本発明の酵素を含む組成物の使用により次の、第4およ
び第5の本発明、すなわち、前記式(I)で示されるC
末端グリシン付加体を、前記酵素−Iを含む組成物で処
理することを特徴とする前記式(II)で示されるC末端
α−ヒドロキシルグリシン付加体の製造方法、ならびに
式(II)で示される前記付加体を酵素−IIを含む組成物
で処理することを特徴とする前記式(III)で示されるC
末端アミド化物の製造方法が提供できる。またこれらの
酵素−Iおよび酵素−IIは併用することにより単一反応
組成物中で式(I)の化合物を式(III)の化合物まで転
化することができる。
【0067】式(I)から式(III)の化合物への転化の
工程に酵素−IIを使用することは、酵素−I型の酵素の
みの存在下では式(II)から式(III)の化合物への転化
に際し、化学的加水分解条件にさらす必要があるのに比
べ、より緩和な酵素反応条件下で前記転化が達成できる
ので有意であることが明らかであろう。特に、アルカリ
条件下で不安定な基質類の処理に適する。
【0068】これらの製造方法は、本発明の酵素を含有
するものであればその濃度、純度を問うことなく使用で
きるが、反応混合物からの生成物、式(II)の化合物の
単離精製を考慮すると夾雑タンパク質が大幅に除去され
た本発明の酵素含有物を使用するのが有利である。な
お、本酵素活性を有する生体抽出液を使用するなら、そ
のまま、あるいは単にそれらの濃縮物をも使用すること
ができる。
【0069】式(I)の化合物としては、前述のものが
全て含まれるが、これらの製造方法での使用に適するも
のとしては、特に式(III)の化合物、例えばアルギニン
バソトシン(AVT)、黄体形成ホルモン放出ホルモン
(LH−RH)、オキシトシン、ガストリン、ガストリ
ン分泌促進ペプチド(GGRP)、カルシトニン(C
T)、血管作用性小腸ペプチド(VIP)、甲状腺刺激
ホルモン放出ホルモン(TRH)、黒色素胞刺激ホルモ
ン(MSH)、MSH放出抑制ホルモン(MIH)、コ
レシストキニンオクタペプタイド(CCK−8)、サブ
スタンスP(SP)、
【0070】脂肪動員ホルモン、膵ポリペプチド(P
P)、成長ホルモン放出因子、セクレチン、セルレイ
ン、軟体動物性心臓興奮性神経ペプチド、バソプレッシ
ン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、変色ホルモ
ン、ボンベシン、明順応ホルモン、モチリン、アパミ
ン、アリテシン、エレドイシン、カツシニン、グラニュ
リベリンR、スコトホビン、ヒランベートセルレイン、
肥満細胞脱顆粒ペプチド、フィサレミン、フィロセルレ
イン、フィロメズシン、プロメリチン、ボンビニン、マ
ストパラン、マストパラン−X、メリチン−1、ラナテ
ンシンおよびラナテンシン−R等に本製造方法で転化す
ることができる、それらの対応する式(I)または式
(II)で示される化合物が好ましい。
【0071】前記処理は、通常の緩衝液中、特に酵素−
Iを用いる反応では反応液にアスコルビン酸およびカタ
ラーゼを添加して実施することができるが、それぞれ適
当量の金属イオンの存在下、次に示す酵素活性の測定方
法の条件を考慮して実施することが好ましい。
【0072】酵素活性の測定方法およびそれを用いる新
規酵素の探索方法 前述の酵素−Iおよび本発明の酵素−IIは、以下の活性
の測定方法により追跡することができ、またこの測定方
法は、前述の本酵素の調製方法を合理的に実施するのに
役立つ。無論、これらの測定方法は、C末端アミド化反
応が従来考えられていたような1段階の反応ではなく、
中間体(C末端α−ヒドロキシルグリシン付加体)を介
した2段階反応であるとの知見に基づくものである。
【0073】まず最初に、酵素−Iの活性は、(i)そ
の活性を有することが予測される被験体をpH5〜8に緩
衝化する工程、(ii)この緩衝溶液に前記式(I)で示
されるC末端グリシン付加体ならびにL−アスコルビン
酸およびカタラーゼを添加してインキュベーションする
工程、ならびに(iii)式(III)で示される反応生成物を
アセトニトリル含有緩衝液(pH6〜10)を使用するH
PLCで検出する工程を含むことを特徴とする方法によ
り測定される。
【0074】また、酵素−IIの活性は、(i)その活性
を有することが予測される被験体をpH4〜8に緩衝化す
る工程、(ii)この緩衝溶液に式(II)で示されるC末
端α−ヒドロキシルグリシン付加体を添加してインキュ
ベーションする工程、ならびに(iii)生成する式(III)
で示されるC−末端アミド化物を検出する工程、を含む
ことを特徴とする方法により測定される。これらの方法
は、それぞれ本出願の第6および第7の発明として提供
される。
【0075】これらの発明にいう被験体としては、それ
らの酵素活性を有する流体であればいずれも包含され、
特に、それらの活性を有する生物学的流体、すなわち生
物の器官の均質化物、ならびに体液、例えば血液および
リンパ液、さらにこれらの精製処理などの処理液が挙げ
られる。また、微生物細胞に由来する処理液も生物学的
流体に包含される。これらの被験体の緩衝化に使用する
緩衝剤は特に制限されず通常使用されるものが用いられ
る。例えばトリス−塩酸、ヘペス−水酸化カリウムがあ
げられる。緩衝溶液中の緩衝剤の濃度は緩衝作用が達成
される限りいかなる濃度でもよいが、通常は20〜20
0mMが適当である。
【0076】それぞれの緩衝溶液は、第6の発明(「前
者」という)についてはpH6〜8、好ましくはpH6.5
付近に調節し、第7の発明(「後者」という)について
はpH4〜8、好ましくはpH6付近に調節する。こうして
調製した緩衝溶液に前者で添加されるC末端グリシン付
加体としては、当該酵素の基質であって、前述の酵素−
Iの活性を確認するために好ましい基質として列挙した
式(I)で示されるものを用いるのが好ましい。
【0077】この化合物の濃度は、一般に0.1μM〜
2mM程度が適当である。さらに、補因子として機能する
ことが考えられるL−アスコルビン酸、活性化剤として
カタラーゼの添加が必要である。一般に、L−アスコル
ビン酸の濃度は、0.5〜2mMが好ましく、またカタラ
ーゼの濃度は40〜100μg/mlが適当である。ま
た、緩衝溶液に金属イオンを添加してもよいが、この添
加は本活性測定に特に要求されるものでなく、添加によ
り無添加の場合よりもより高い活性が得られることがあ
るので添加することが好ましい。
【0078】使用する金属イオンとしてはZn2+,Cu
2+,Ni2+,Co2+,Fe3+等が適当であり特にCu2+
およびZn2+が好ましい。金属イオンの緩衝溶液中の濃
度は0〜1000μM、好ましくは0〜10μMが適当
である。限定されるものでないが、かかる金属イオンを
提供する化合物は、CuSO4 ,CuCl2 ,ZnCl
2 ,NiCl2 ,CoCl2 ,FeCl3 等があげられ
る。
【0079】このような反応組成物の具体的なものとし
ては、例えば、後述の実施例2の組成が参考となろう。
一方、後者における反応組成物は、前記式(I)の化合
物に代え対応する式(II)の化合物を使用して調製す
る。この場合、アスコルビン酸、カタラーゼ等の補因子
は必要でない。両測定方法とも、被験体の使用量は特に
限定なく種々変化させることができるが、反応系に存在
する基質の量(aナノモル(nmol) とする)に対し、好
ましくはa pmol/hr以上、さらに好ましくは10×a
pmol/hr以上、もっとも好ましくは10×a pmol/
hr 〜a mol/hr〔単位は酵素活性を示し、37℃1時
間で反応しうる基質量(例えばピコモル(pmol)で表示
する。〕の酵素活性を含有するように調整するのが適当
である。
【0080】インキュベーションは、1〜55℃、特に
前者では好ましくは25〜40℃、特に好ましくは30
℃付近で振盪しながら2〜24時間反応させ、後者では
好ましくは15〜35℃、もっとも好ましくは25℃付
近で静置して1分〜48時間行う。以上の工程で、それ
ぞれ生成する式(II)の化合物および式(III)の化合物
の検出は、それらの基質と生成物、例えば、前者では式
(I)の化合物と式(II)の化合物、後者では式(II)
の化合物と式(III)の化合物を分離測定できる方法であ
ればどのような方法でも使用できる。一般に分離測定
は、以下のクロマトグラフィーで分離、精製して行うこ
とができる。
【0081】上記に使用できるクロマトグラフィーとし
ては、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグ
ラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィ
ー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層ク
ロマトグラフィー(TLC)などが挙げられる。後者の
反応系における式(II)で示される基質と式(III)で示
されるアミド化された生成物は、C末端がそれぞれカル
ボキシル基とアミド基であり、電荷が異なっている。こ
の性質を用いたイオン交換クロマトグラフィー、逆相ク
ロマトグラフィーなどが好適である。また、生成物の抗
体を用いたアフィニティークロマトグラフィーも有効で
ある。
【0082】しかしながら、前者の反応系における式
(I)で示される基質と式(II)で示される生成物は、
通常のクロマト処理では分離がかなり困難であるが、本
発明者らが初めて試みたアセトニトリル含有緩衝液(pH
6〜10、好ましくはpH9)を溶出液として用いる高速
液体クロマトグラフィー(HPLC)によれば有利に分
離測定できる。溶出液は、特にアセトニトリル濃度の直
線濃度勾配をかけて行うのがよい。HPLCのカラムと
しては、本目的に適するものであれば市販のどのような
種類のカラムを使用することもできるが、特に、カプセ
ルパックC18SG,300Å(資生堂製)を使用する
のが有利である。
【0083】かくして、それぞれ分離された基質と生成
物はそれらの(必要により結合された)いずれかの化学
的または物理的標識について測定すればよい。この測定
には、既知の標識、既知の測定法が使用でき、一般には
基質ペプチドを構造するアミノ酸に由来するUV吸収を
利用するのが好都合であろう。以上の測定方法は正確か
つ簡便であるので、これらを前述の生物学的流体に適用
することにより、それぞれ酵素−Iまたは酵素−IIの活
性を有する酵素の探索を行うことができる。かかる探索
方法は、それぞれ本出願の第8および第9の発明として
提供される。
【0084】探索の対象となる生物学的流体は、前述の
酵素活性を有することが予測されるものは無論のこと、
その他動植物の生体細胞、組織、抽出液のいずれをも包
含する。例えば、抽出液は、「実験生物学講座6、細胞
分画法」(丸善、1984)、「生化学実験講座5、酵
素研究法(上)」(東京化学同人、1975)、「基礎
生化学実験法1、生物材料の取扱い方」(丸善197
4)、などに記載の一般的な抽出法に準じて調製すれば
良い。
【0085】
【実施例】次に実施例によって本発明をさらに詳細に説
明する。なお、本発明はこれによって限定されるもので
はない。実施例1 基質類似体親和性クロマトグラフィー用ゲル
の調製 5mlのアフィゲル10を、イソプロパノールを満たした
10ml容エコノカラム(バイオラッド社製)に計り取っ
た。イソプロパノールを流し出したのち、50mlの10
mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)、次いで10mlの
0.1Mモップス−水酸化ナトリウム緩衝液(80mM塩
化カルシウムを含む、pH7.5)で洗浄した。
【0086】ゲルを20ml容のビンに移したあと、40
mg(約100μmol)のフェニルアラニルグリシルフェニ
ルアラニルグリシン(Phe-Gly-Phe-Gly 、シグマ社製)
を溶解した上記モップス−水酸化ナトリウム緩衝液10
mlと混合し、4℃で18時間振盪反応させた。そのの
ち、0.5mlの1Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を
加えて4℃で1時間振盪反応し、未反応の活性基を不活
化した。ゲルを前記モップス−水酸化ナトリウム緩衝
液、次いでイオン交換水で洗浄後、0.02%NaN3
に懸濁し、カラムに充填、4℃で保存した。なお、反応
に供したペプチド(Phe-Gly-Phe-Gly)の量と回収された
溶液中のペプチド量から、ゲル1mlあたり約10μmol
結合していると算出された。
【0087】実施例2 基質としてのフェニルアラニル
グリシルフェニルアラニルヒドロキシルグリシンの調製 フェニルアラニルグリシルフェニルアラニルグリシン
(FGFG)(シグマ社製)3mgを測り取り、50mMヘペ
ス−水酸化カリウム緩衝液(pH5.5)、3mMアスコル
ビン酸、10mMヨウ化カリウム、0.25mg/mlカタラ
ーゼ、0.25nM硫酸銅、7.5%アセトニトリル及び
国際特許出願JP89−00521号明細書の実施例2
に記載するようなウマ血清由来のアミド化酵素組成物を
200μl添加し総量10mlとし、30℃で20時間、
好気的にアミド化反応をおこなった。
【0088】反応は10%ギ酸添加で停止させ、高速液
体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、フェニル
アラニルグリシルフェニルアラニルヒドロキシルグリシ
ン(FGFhyG)を分取した。HPLCのカラムはカ
プセルパックC18SG,300Å(資生堂製)を用い
た。溶出溶媒は、1mM炭酸水素アンモニウム(pH9.
0)およびアセトニトリルを使用し、アセトニトリルを
0%から40%まで30分で増加させる直線濃度勾配を
かけた。ペプチドは214nmの吸収で検出した。結果を
図1に示した。
【0089】10.7分のフェニルアラニルグリシルフ
ェニルアラニルグリシンのピークは、C末端アミド化反
応によりほとんど消滅した。それに伴ない、9.9分の
α−ヒドロキシグリシン誘導体および14.5分のアミ
ド化体のピークが見られた。これらの物質は、FAB−
MSスペクトル分析およびNMR分析により構造確認し
た。図2に、グリセリン溶液中のFAB−MSスペクト
ルの結果を示した。親ピークは分子量442をあらわし
ており、そしてフラグメンテーションの結果、C末端に
存在する−OH基が1つまたは2つ飛んだ425および
408m/zのフラグメントが確認され、α−ヒドロキ
シルグリシン付加体であることを示していた。
【0090】9.9分のピークを分取し、すみやかに1
0%ギ酸溶液とし、凍結乾燥することにより本発明の酵
素−II用の基質を調製した。この基質は、前記アミド化
酵素組成物に代え、本発明の酵素−I含有物を用いても
同様に調製することができた。前述のごとく、α−ヒド
ロキシルグリシン誘導体は酸性条件では安定であるが、
アルカリ条件では不安定であり、酵素反応とは無関係に
アミド化物とグリオキシル酸に分解する。
【0091】従って、本実施例の最初におこなったC末
端アミド化反応は、酸性条件で実施した。このとき、pH
7.5以上で反応させると、α−ヒドロキシルグリシン
誘導体は確認できなくなる。公知のC末端アミド化酵素
が前述の式(I)で示されるC末端グリシン付加体から
式(III)で示されるC末端アミド化物とグリオキシル酸
に変換すると考えられていたのは、このアルカリ条件で
の非酵素的変換が含まれていたためであり、酵素自体の
触媒反応は、式(I)で示されるC末端グリシン付加体
から式(II)で示されるC末端α−ヒドロキシルグリシ
ン付加体への変換反応である。従って、従来のC末端ア
ミド化酵素による酸性条件下でのアミド化反応の収率
は、一般に低いものであった。
【0092】実施例3 ウマ血清からの酵素−Iの調製 (1)市販のウマ血清(ギブコ社製)100mlに、ポリ
エチレングリコール6000(和光純薬)25%水溶液
(w/v)を100ml、すなわち最終濃度12.5%に
なるように撹拌しながら序々に添加した。なお、以下す
べて4℃にて操作を行った。12時間静置後、遠心分離
(10,000×g、10分)し、得られた沈澱を12
0mlの10mMヘペス−水酸化カリウム緩衝液(pH7.
0)に溶解した、さらに2時間静置後、生成した不溶性
物質を再び遠心分離(10,000×g、10分)で除
き、酵素−Iを含む上澄(127ml)を得た。
【0093】(2)上記(1)で得た活性画分を、10
mMヘペス−水酸化カリウム緩衝液(pH7.0)で平衡化
したヘパリンセファロースCL−6B(ファルマシア社
製)を充填したカラム(1.6×15cm)にかけた。同
緩衝液96mlで非吸着物質を洗い出した後、0.5M塩
化ナトリウムを含む10mMヘペス−水酸化カリウム緩衝
液(pH7.0)で溶出を行った(流速30ml/hr)。図
3に溶出パターンを示した。0.5M塩化ナトリウム含
有緩衝液によって酵素−Iは溶出された〔フラクション
番号No. 14〜16を集める(100ml)〕
【0094】(3)上記画分を、Sephadex G
−25ファイン(ファルマシア社製)カラムクロマトグ
ラフィー(5cmφ×23cm)を用いてゲル濾過をおこな
った。溶媒は、10mMヘペス−水酸化カリウム(pH7.
0)を用い流速2ml/min で溶出した。蛋白質は280
nmの吸光で検出し、蛋白質を含むフラクション100ml
を集めた。
【0095】(4)実施例1に従って作製したアフィゲ
ル10−Phe-Gly-Phe-Gly ゲル5mlをカラムに充填し
(1.0×6.3cm)、0.1M塩化ナトリウムを含む
10mMヘペス−水酸化カリウム緩衝液(pH7.0)で平
衡化した。このカラムに上記(3)で得た試料(18.
1ml)をかけた。酵素−Iを十分にゲルに吸着させるた
めに、カラムを通過した液を何回もカラムを通るように
循環させた(流速20ml/hr)。12時間後、循環を止
め、非吸着物質を35mlの平衡化に用いた緩衝液で洗い
出したのち、0.4M塩化ナトリウム、20%アセトニ
トリルを含む8mMヘペス−水酸化カリウム緩衝液(pH
7.0)で溶出を行った(流速20ml/hr)。酵素−I
の活性は溶出画分(10ml)にのみ認められた。
【0096】(5)上記(4)で得た精製物を、再び上
記(3)の処理を行った後、10mMヘペス−水酸化カリ
ウム緩衝液(pH7.0)で平衡化したMonoQカラム
(ファルマシア社製0.5×5cm)にのせ、同一緩衝液
中でNaClの直線濃度勾配を第3図のようにかけ、蛋
白質を溶出させた。このとき、流速は0.5ml/minと
した。表1に、上記(1)〜(5)で行った精製の各工
程での全蛋白質量、全酵素活性、比活性、収率および精
製倍率を示した。
【0097】
【表1】
【0098】活性測定法は、実施例2に記載のFGFG
からFGFhyGの調製方法に準ずる反応を各精製物に
ついて実施し、そこに記載のHPLCによりFGFhy
Gを定量することで行った。酵素活性1Uは、1 nmole
のFGFhyGが37℃1時間で生成する量とした。
【0099】なお、蛋白質量の測定は、ローリーの改良
法(Bensadounら、Anal.Bioche
m.,70,265,1976)を用い、標準曲線は牛
血清アルブミン(フラクションV、シグマ社製)で作製
した。表1で示したように本酵素は、収率2%で約50
0倍に精製できた。さらに精製が必要な場合には前記工
程(3)〜(5)を繰り返すか、それらのいずれかの工
程を繰り返せばよい。
【0100】実施例4 ウマ血清からの酵素−IIの調製 各精製工程を酵素−IIの活性を追いながら行った以外は
実施例3と同様にウマ血清を処理した。各精製工程
(1)〜(5)の全蛋白質、全酵素活性、比活性、収率
および精製倍率を第2表に示す。
【0101】
【表2】
【0102】活性測定は、10mMヘペス−水酸化カリウ
ム(pH6.5)中に実施例1で得たフェニルアラニルグ
リシルフェニルアラニルヒドロキシルグリシン(FGF
hyG)を5mM濃度に溶解し、各段階の試料を添加し、
総量100μlとして30℃で反応させた。1時間反応
後10%ギ酸添加により反応を停止し、実施例2の条件
を用いHPLCで反応生成物を定量した。このとき、試
料無添加のコントロールの反応もおこない、非酵素的変
換がほとんど進んでいないことを確認した。
【0103】反応溶液のHPLCパターンを図4に示す
(図中の反応条件は、37℃pH6.9で反応時間は図中
に示した)活性はユニット(U)で表示した。1Uは、
1 nmoleのFGF−NH2 を30℃1時間で生成する酵
素量と定義した。なお、蛋白質量の測定は、実施例3と
同様に行った。第2表で示したように本酵素は、収率2
%で、約1800倍に精製できた。
【0104】
【発明の効果】本発明の酵素は、式(I)で示されるC
末端グリシン付加体から式(III)で示されるC末端アミ
ド化物の製造に際し、使用可能である。また、酵素−I
および酵素−IIを併用することにより、式(II)で示さ
れるC末端α−ヒドロキシルグリシンは付加体が加水分
解されないような温和な反応条件下で効率的に式(III)
で示されるC末端アミド化物を製造することが可能にな
る。さらに、本発明の調製方法は、前記本発明の酵素組
成物を効率よくかつ高収率で調製できる効果を有する。
本発明のそれぞれの酵素活性測定方法は、C末端グリシ
ン付加体から式(II)で示されるC末端α−ヒドロキシ
ルグリシン付加体へ変換する酵素活性および式(II)で
示されるC末端ヒドロキシルグリシン付加体からC末端
アミド化物へ変換する酵素活性を迅速かつ正確に定量す
ることを可能とする。また、これを用いた酵素探索方法
は、従来知ることのできなかった前記活性を有する酵素
の探索を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、FGFGを基質とし、本発明の酵素−
Iを用いて、FGFhyGを製造するときのHPLCパ
ターンである。
【図2】図2は、調製したFGFhyGの分子構造を確
認するためにおこなったFAB−MSスペクトル分析の
結果を示す。
【図3】図3は、Mono Qカラムのクロマトグラフ
ィーによる本発明の酵素−Iと酵素−IIの分離を示した
クロマトパターンである。白四角のプロットは酵素−II
の活性を示し、黒丸のプロットは酵素−Iの活性を示
し、破線は食塩の直線濃度勾配を示す。
【図4】図4は、FGFhyGを基質とし、本発明の酵
素−IIを用いてFGF−NH2を製造するときの経時的
なHPLCパターンである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田島 正裕 神奈川県横浜市港北区新羽町1050番地 株式会社資生堂 研究所内 (72)発明者 柳 光男 神奈川県横浜市港北区新羽町1050番地 株式会社資生堂 研究所内 (72)発明者 岡本 宏 宮城県仙台市青葉区角五郎2−15−3− 205

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次式(II) 【化1】 (上式中、Aは、天然のα−アミノ酸に由来するα−ア
    ミノ基もしくはイミノ基およびα−カルボキシル基以外
    の残基を表しており、Xは、水素原子またはカルボニル
    基を介してN原子と結合するアミノ酸誘導体の残基を表
    す)で示されるC末端α−ヒドロキシルグリシン付加体
    に作用して、次式(III) 【化2】 (上式中、AおよびXは、前記の意味を表す)で示され
    るC末端アミド化物とグリオキシル酸を生成し、かつゲ
    ル濾過を使用する分子量決定法により約40,000ダ
    ルトンの分子量を有し、至適pHが約5〜6でかつ安定pH
    が4〜9であり、そして作用適温が15〜35℃の範囲
    にあるC末端グリシン付加体のC末端アミド化に関与す
    る酵素。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の酵素活性含有物を、次の
    式(I): 【化3】 (上式中、AおよびXは、前記の意味を表す)で示され
    るC末端グリシン付加体をリガンドとする基質親和性ク
    ロマトグラフィー、および陰イオン交換クロマトグラフ
    ィーで処理することを特徴とする請求項1記載のC末端
    アミド化に関与する酵素の調製方法。
  3. 【請求項3】 前記式(II)で示されるC末端α−ヒド
    ロキシルグリシン付加体を請求項1記載の酵素で処理す
    ることを特徴とする前記式(III)で示されるC末端アミ
    ド化物の製造方法。
  4. 【請求項4】 (i)請求項1記載の酵素活性を有する
    ことが予測される被験体をpH4〜8に緩衝化する工程、 (ii)この緩衝溶液に前記式(II)で示されるC末端α
    −ヒドロキシルグリシン付加体を添加してインキュベー
    ションする工程、ならびに (iii)生成する式(III)で示されるC末端アミド化物を
    検出する工程、を含むことも特徴とする前記酵素活性の
    測定方法。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の測定方法を被験体に適用
    することを特徴とする請求項1記載の酵素の探索方法。
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