JP2531736B2 - 中性子源内部分布体系の中性子増倍率測定方法 - Google Patents

中性子源内部分布体系の中性子増倍率測定方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の目的] (産業上の利用分野) 本発明は、燃料サイクル施設、特に使用済燃料再処理
施設において、内部に中性子放出源が分布して存在する
中性子増倍体系の中性子増倍率を測定する方法に関す
る。
(従来の技術) 一般に、使用済燃料中には、核分裂性核種(フィッサ
イル)であるU−235、Pu−239等や中性子を放出する核
種であるCm−242、Cm−244、Pu−238、Pu−240等が混在
し、さらに強いガンマ線を放出する核分裂生成核種(F
P)が混在する。
使用済燃料はまず切断され、硝酸で溶解され(溶解工
程)、その溶解液からFPやCm−242、Cm−244等を含む超
プルトニウム元素が除去され(共除染工程)、次に残っ
たスランとプルトニウムの混合溶液から両者が分離され
る(分離工程)。分離された両者はそれぞれ精製され、
製品化され貯蔵される。
上記共除染工程までは、強い中性子放出核種であるCm
−242、Cm−244等が含まれ、それ以後はPu−238、Pu−2
40等が主な中性子放出核種(中性子源)となる。分離工
程以後では、プルトニウム系でPu−238、Pu−240等が中
性子源となる。ウラン系では中性子放出核種はU−23
4、U−238等が主なものとなるが、中性子放出割合が小
さいため、測定の統計精度を上げるのは必ずしも容易で
ない。一方、ウラン系では残存フィッサイル(U−23
5)の濃度が低いため、多くの場合、工程の臨界安全性
確保を目的とした中性子増倍率の測定を行う必要はな
い。
以上の説明から明らかなように再処理施設では多くの
中性子増倍体系が存在し、中性子放出核種やフィッサイ
ルの濃度も次々と変化し、体系の形状や大きさも次々と
変化する。これらの中には時間とともに変化するものも
多数含まれている。各種中性子増倍体系が臨界事故を起
こさないようにするために、従来は、フィッサイルの濃
度、原子炉で使用される以前の新燃料の濃縮度(初期濃
縮度)、体系の形状等に制限を加えていた。制限を加え
ることは処理能率を抑制することである。たとえば処理
槽の大きさを半分にして臨界になりにくくした場合には
処理能力は半減する。したがって、能率を回復または向
上するためには、処理槽を小さくするのではなく、現在
ないし近い将来にわたって臨界事故を起こす恐れはな
く、未臨界が充分確保できることをモニタできることが
必要である。未臨界の指標である未臨界度ρは中性子実
効増倍率Keffとの間に、 ρ=(1/Keff)−1 の関係がある(定義)ので、ρの測定とKeffの測定は全
く同一のことである。
しかしながら、従来の再処理施設では、ρあるいはKe
ffを測定することによって、工程の臨界安全性を管理す
ることは行っていない。
これは、ρまたはKeffの測定手法としての提案はいく
つかあるものの、それぞれ一長一短があり、容易に実用
化することができないためである。
たとえば本発明者は、特開昭58−45599号公報におい
て、簡単な原理でKeffを求める方法および装置を提案し
た。しかしながら、その原理を適用するには体系の一部
に新たな燃料施設の流れを作る必要があるという欠点が
ある。また近年アメリカで開発された中性子ノイズのス
ペクトル密度を測定してKeffを求める有力な方法があ
る。開発者の名前をとってMIHALCZO法と呼ばれることが
多い。しかしながら、この方法は複雑、高度な測定原理
と装置のため、コストが高く、また特殊な配慮が必要で
あるなどして、工場の工程モニタとして適用するには不
向きである。
(発明が解決するようとする課題) 上述のように、従来は、簡単な原理と装置で臨界安全
性をモニタすることのできる方法がなかった。このた
め、再処理施設では、臨界安全性確保のために過剰の制
限条件が加えられており、生産性を悪化させる一因とな
っていた。
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたもの
で、従来に比べてより簡単な原理と装置で各工程の臨界
安全性をモニタすることができ、臨界安全性確保のため
に加えられていた過剰の制限条件を緩和して、生産性を
著しく向上させることのできる中性子源内部分布体系の
中性子増倍率測定方法を提供しようとするものである。
[発明の構成] (課題を解決するための手段) すなわち、本発明は、中性子源が内部に分布して存在
する中性子増倍体系の中性子増倍率を測定するにあた
り、前記中性子増倍体系の中性子束分布形が、中性子増
倍率によって変化することを利用し、前記中性子増倍体
系の少なくとも、2点で測定した中性子束の測定結果か
ら、予め求めた前記中性子束分布形と前記中性子増倍率
との相関関係により、前記中性子増倍率を求めることを
特徴とする。
(作用) 第3図(A)に示すように、細長い円柱状であって、
中性子源の内部分布およびフィッサイル分布も一様の中
性子増倍体系1を考えた場合、臨界またはその近傍では
軸方向中性子束分布がCOS(またはSIN)分布になること
はよく知られている。
しかしながら、未臨界度(Keff)が変化すると中性子
束の値が変化するだけでなく分布形も変化する。このよ
うな現象を本発明者等はまず実験により見出した。な
お、測定は、軽水炉用燃料棒を用いて水中に燃料集合体
を構成し、集合体外周で、集合体軸方向の中性子計数率
を測定することによって行った。この集合体の大きさを
大きくすると相対的な分布形が変化したが、いずれもCO
SまたはSIN分布形からずれていた。このような現象は、
以下のような理由により生じるものと推測される。
すなわち、中性子増倍体系1を考えた場合、臨界また
はその近傍では、中性子増倍体系1のどこで生まれた中
性子でも、その子孫の中性子は中性子増倍体系1内のど
こででも発見される確率がある。このことは、中性子増
倍体系1は中性子によって一体につながっていることで
あり、このような条件で求められる中性子実効増倍率Ke
ffは体系固有の値となることもあって(数学的面からだ
けでなく)、「固有値」と呼ばれることもある。ところ
が、未臨界度ρが深くなると中性子増倍体系1は中性子
によって一体的につながっているとは言えなくなる。
中性子増倍体系1において、軸芯上に点a、b、c、
dを考える。臨界体系であれば、a、b、c、d各点の
中性子束はCOSまたはSIN分布になるというのが既知の事
実である。著しく未臨界度が深い場合について考える
と、d点で生れた中性子は次世代または次々世代で消滅
してしまうので、たとえばd点をとり囲む破線で示す円
(球)内でしかその子孫を見出せない。b、c点も同様
である。a点でも同様であるが、一つ異なる点は子孫の
一部が体系の左側に漏れ出してしまう可能性がある点で
ある。体系外へ漏れ出すと、体系内で次世代への増倍に
寄与する中性子の数が減少するので、定常的にみた中性
子束は低下する。以上のことから、著しく未臨界度が深
い場合には、第3図(B)に曲線(イ)で示すような中
性子束分布が形成される。
未臨界度が浅くなると、第3図(A)に示す破線で記
した円(球)が大きくなり、a点で発生した中性子の体
系外漏れの確率が大きくなり、b点で生れた中性子の子
孫もその一部は左側へ漏れ出す確率がでてくる。このよ
うにして第3図(C)に曲線(ロ)で示すような中性子
束分布が形成される。なお、第3図(C)には、比較の
ため第3図(B)の曲線(イ)もあわせて破線で示し
た。
第4図は計算体系と結果を示したものである。計算体
系は軸方向に150cmの燃料領域があり、その中央におい
て対称となる円柱体系である。したがって対称面を原点
にとり、軸方向(Z方向)の中性子束分布に着目した。
軸方向燃料領域上端(75cm)の上側は水である。燃料領
域の半径は15cmとした。その外周は水反射体である。燃
料領域の燃料濃縮度を変えてKeffの値を変化させた。同
図に示す曲線a、b、cは、それぞれKeffが0.93、0.8
5、0.67の時に計算によって求めた集合体外側の軸方向
中性子束分布である。燃料領域上端のすぐ上側に小さな
反射体ピークと呼ばれる熱中性子束のピークが形成され
ている。本発明ではこのピーク現象は対象外であり、燃
料領域内における中性子束分布形(相対値)を対象とす
る。Keffによって中性子束の大きさが変化することはよ
く知られているが、相対的な分布形も変化しており、Ke
ffの値が増大し臨界(Keff=1.00)に近付くほどCOS分
布形に近付く様子が判る。
そこで本発明方法では、上述の性質を用いて中性子源
内部分布体系の中性子増倍率を測定する。
(実施例) 以下、本発明方法の実施例を図面を参照して説明す
る。
第1図のグラフは、本発明の第1実施例に用いる中性
子束比とKeffの相関関係を示すものである。すなわち、
前述の第4図において軸方向位置0cmと66cmの中性子束
の比と、Keffの関係とを示すものである。なお、どの軸
方向位置を選定するかによって中性子束比は変化する。
このグラフのように、所定位置における中性子束比と
Keffとの相関曲線を予め求めておけば、実際の測定体系
の所定位置(軸方向位置0cmと66cm)において中性子束
比の測定を行うことにより、この中性子束比から、相関
曲線により実際の測定体系のKeffを決定することができ
る。
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
本発明の第2の実施例は、中性子束が空間的に変化す
る場合の相対標準偏差(%)とKeffとの相関曲線を使用
し、中性子束の測定値から標準偏差を求め、これからKe
ffを決定する。
すなわち、第4図において、軸方向位置の2、10、18
…66cmの8cm毎の9点における中性子束の相対標準偏差
を求め、これをKeffとの相関として作図すると第2図に
示すような相関曲線が得られる。この相関曲線は、中性
子束検出点の位置や数によって当然変化するが、前述の
第1の実施例の中性子束比の場合とほぼ同様な相関曲線
が得られる。したがって、この実施例の場合、実際の測
定体系の上述の9点において中性子束の測定を行い、こ
れらの相対標準偏差から、第2図の相関曲線によりKeff
値を求める。
第2の実施例では、たとえば燃料領域内で燃料濃度の
偏りが生じたり、あるいは中性子放出核種の濃度の偏り
が生じたような場合でも標準偏差の値に変動が生じるた
め、これらを検出することも可能となる。
[発明の効果] 以上述べたように、本発明方法によれば、外部中性子
源を必要とすることもなく、単に複数の中性子検出器を
増倍体系の外周部もしくは内部に分散して配置すること
によって中性子を検出し、その検出器信号の大きさ、す
なわち中性子束の大きさの空間的な相対変化(したがっ
て中性子源強度に無関係な変化)から別に求められた該
相対変化と実効増倍率との相関曲線を介して実効増倍率
を求めることができる。
したがって、従来に比べてより簡単な原理と装置で各
工程の臨界安全性をモニタすることができ、再処理工場
に容易に適用することが可能であり、臨界安全性確保の
ために加えられていた過剰の制限条件を緩和して、生産
性を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の第1の実施例方法に用いる中性子束比
とKeffとの相関関係を示すグラフ、第2図は本発明の第
2の実施例方法に用いる相対標準偏差とKeffとの相関曲
線を示すグラフ、第3図は本発明方法を説明するための
中性子増倍体系および中性子束分布を示す図、第4図は
本発明方法を説明するための中性子増倍体系および計算
によって求めた中性子束分布を示す図である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】中性子源が内部に分布して存在する中性子
    増倍体系の中性子増倍率を測定するにあたり、 前記中性子増倍体系の中性子束分布形が、中性子増倍率
    によって変化することを利用し、前記中性子増倍体系の
    少なくとも2点で測定した中性子束の測定結果から、予
    め求めた前記中性子束分布形と前記中性子増倍率との相
    関関係により、前記中性子増倍率を求めることを特徴と
    する中性子源内部分布体系の中性子増倍率測定方法。
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