JP2529149B2 - 多孔質砥石用樹脂含浸溶液 - Google Patents

多孔質砥石用樹脂含浸溶液

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JP2529149B2
JP2529149B2 JP3358123A JP35812391A JP2529149B2 JP 2529149 B2 JP2529149 B2 JP 2529149B2 JP 3358123 A JP3358123 A JP 3358123A JP 35812391 A JP35812391 A JP 35812391A JP 2529149 B2 JP2529149 B2 JP 2529149B2
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博 稲田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリビニールアルコー
ル(PVA)のアセタール化樹脂を主体とする結合剤に
より結合された多孔質砥石の改良に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】PVA
のアセタール化樹脂を結合剤とした多孔質砥石は弾性に
富みラッピング性は良好である。しかし、切削性が悪
く、条件によっては砥石の摩耗も大となる。また水によ
り著しく機械的強度が低下するため水溶性研削液を使用
できない欠点があった。
【0003】この欠点を補う方法として水溶性の熱硬化
性樹脂の初期縮合物をあらかじめPVAに混合しアセタ
ール化反応を行なうことが公知である。この方法により
砥石の耐水性は向上するが、高硬度の被削材に対しては
依然として切削性が悪く、熱硬化性樹脂の混合率を上げ
ると研削中に金属被削材の溶着(目つまり)が発生する
ため切削性を向上させることはできない。従ってラッピ
ング性と切削性の両方を満足させるためには一般にPV
A樹脂と水溶性熱硬化性樹脂の初期縮合物との混合物を
熱硬化させて得られる樹脂を結合剤とする砥石に、さら
に水溶性の尿素樹脂あるいはメラミン樹脂を含浸させ、
加熱硬化させ、結合剤表層を尿素樹脂かメラミン樹脂で
被覆することであった。
【0004】しかし、この方法の最大の難点は尿素樹
脂、メラミン樹脂又はフェノール樹脂を多孔質砥石内に
均一にムラなく含浸することが実際上不可能で結合度に
バラツキが生じるばかりか、熱処理中に部分的に硬化現
象が進行し、クラック発生又は割れることが多かった。
【0005】本発明はこれらの問題を解消してラッピン
グ性を保持しつつ切削性を増加させた高強度の砥石を与
える樹脂含浸溶液を提供することを目的とする。
【0006】即ち、本発明の樹脂含浸溶液は、 (a)メラミン樹脂液及び尿素樹脂液の1種以上と、 (b)液状フェノール樹脂及び (c)縮合用触媒から成り、前記(a)液対(b)液の
配合比が、重量比にて1:10〜10:1である含浸溶
液であって、成形固結した弾性を有する多孔質基材砥石
に含浸させ前記弾性を有する多孔質基材砥石の結合剤表
層に前記含浸溶液の固着層を形成し、乾燥、加熱反応
せて樹脂含浸多孔質砥石とするための仕上げないしラッ
ピング砥石用含浸溶液である。即ち、本発明の上記樹脂
含浸溶液は、従来互いに併立困難とされていたラッピン
グ性(即ち可撓性に基づく)及び切削性を兼備えた、優
れた仕上げ用の砥石を製造するための含浸溶液を提供す
る。
【0007】
【好適な実施態様及び作用】本発明の含浸溶液の成分は
各々個別には公知の物質であるが、従来試みられてきた
メラミン樹脂、尿素樹脂またはフェノール樹脂の単独系
による含浸ではどうしても解決できなかった不均一被
着、硬化のムラ、割れの発生といった問題がメラミン樹
脂/フェノール樹脂、尿素樹脂/フェノール樹脂又は三
者の併用という場合には液成分の分離が発生せずに均一
含浸が可能となり、かつ含浸溶液の乾燥後の柔軟性にも
すぐれ、熱処理中の割れをも解決するという顕著な効果
がある。
【0008】本発明のメラミン樹脂はメラミンとアルデ
ヒド類の初期縮合物又はその誘導体であり、各種メチロ
ールメラミンとその縮合物、それらのアルキル化物が含
まれる。尿素樹脂は尿素とアルデヒド類の初期縮合物お
よびその誘導体であり、たとえば、モノメチロール尿
素、ジメチロール尿素、メチロールエチレン尿素、メチ
ロールトリアミン、ジメチロールジハイドロオキシエチ
レン尿素、テトラメチロールアセチレンジ尿素、ジメチ
ロールウロン、ジメチロールプロピレン尿素及びこれら
のアルキル化化合物等を包含する。
【0009】液状のフェノール樹脂とは、フェノール、
キシレノール、クレゾール、レゾルシン等の各種フェノ
ールとホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロトン
アルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等の各種
アルデヒドとの低分子縮合物とその誘導体であって、通
常の含浸処理温度において、液状であるものを意味す
る。誘導体は例えば無水フタル酸でエステル化したアル
キッド変性樹脂、炭化水素変性樹脂、エポキシ変性樹
脂、フェノールエーテル変性樹脂等を指す。
【0010】これらの樹脂はいずれも低分子量で液状の
ものが望ましいが、エマルジョン(樹脂分約80重量%の
ものが好適)であっても良い。また粉末状のものをアル
コール等の溶液にしたもの(樹脂分約40〜約60重量%の
ものが好適)を使用してもさしつかえない。
【0011】各々の合成樹脂液の重量比は(a)/(b)が10
/1〜1/10であり、上記(a)/(b)配合比以外では十分
均一な含浸が得られない。上記配合比の範囲内であれば
目的とする製品の要求に従って変えることができる。例
えば、比較的固い結合度砥石による研削作業が要求され
る時はメラミン樹脂あるいは尿素樹脂の量を多く、逆に
弾性とラッピング性を特に重視する場合にはフェノール
樹脂を多く使用し、この時の配合比は(a)/(b)が1〜10
/1が好ましい。
【0012】耐水性はいずれの場合においても、均一な
含浸を行うことにより、大きく改善される。
【0013】フェノール樹脂を配合したメラミン樹脂の
含浸溶液は、メラミン樹脂単味の場合よりも可撓性が増
大し、熟成中の割れが著しく減少する。同様なことが、
尿素樹脂を用いる場合にも言える。
【0014】含浸目的のため、含浸溶液の粘度は、含浸
に可能な低粘度に保持され、必要な場合希釈等の方法で
粘度調節される。この含浸溶液の濃度は各(a)液(メラ
ミン樹脂液、尿素樹脂液、又はこれらの混合液)又は
(b)液(液状フェノール樹脂)自体の濃度により、又は
(a)(b)液を混合後適宜希釈することにより、調節するこ
とができる。
【0015】この前記希釈剤或は樹脂(a)(メラミン樹
脂、尿素樹脂、又はこれらの混合液)又は樹脂(b)(液
状フェノール樹脂)の溶媒として適当な溶液は、樹脂を
溶解させ得るもので、溶液の粘性を低下させ40〜100℃
の温度で蒸発可能なものであり、基材砥石の成分に対し
て反応しないものを用いることが好ましい。
【0016】含浸量は目的に応じて定められるが一般
に、多孔質基材砥石の樹脂結合剤に対し1〜5倍(重
量)に相当するが好ましいのは1〜2倍の範囲となる。
【0017】縮合用触媒は、公知のものであり、酸、ア
ルカリ、あるいはそれらの無機塩類が用いられる。例え
ば、塩酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸、水
酸化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム
等が使われる。
【0018】固結成形された砥石はこの含浸溶液に浸漬
保持され、その後所定温度に加熱して加熱反応処理され
る。含浸溶液から取り出された砥石は通例40℃〜100℃
の温度で乾燥し、含浸溶液は砥石の多孔質を成す結合剤
表層にゲル化して固着される。加熱反応は40℃〜200℃
で行われる。この加熱反応処理温度は素材の砥石の種
類、サイズ、使用する樹脂の種類と成分比によって選択
される。
【0019】一般的には150〜180℃の高温時には、凡そ
5〜10時間、100〜130℃の比較的低温時には凡そ12〜15
時間で加熱処理が可能である。これらの処理は加圧下で
行うこともできる。
【0020】なお、本発明の樹脂含浸溶液は弾性を有す
る多孔性砥石に適応するが例えばPVAに水溶性の熱硬
化性樹脂の初期縮合物を混合し、アセタール化反応、特
に好ましくはホルマール化反応を行なわせて得られる砥
石に対して特によく適応する。その他PVAのアセター
ル化樹脂を主体とする結合剤を用いた多孔質砥石、一般
の多孔性レジノイド砥石にも適用できる。目的とする製
品の要求に従って、これら前記の基材砥石の砥粒に#3
20〜#400以下の微粒を用いると、ラッピング性が
最大限に発揮される。
【0021】
【発明の効果】本発明の樹脂含浸溶液により含浸を行っ
た弾性を有する砥石は熱処理中に割れることもなく最終
製品は、強度、耐水性が著しく向上し、研削性、耐摩耗
性も改良される。しかもラッピング性はなお相当のレベ
ルを保持している。
【0022】本発明の樹脂含浸溶液を弾性を有する多孔
性砥石に対して含浸処理することにより、ラッピング特
性を備え、且つ所定の研削性を備えた砥石が得られ一般
研削作業はもとより砥石を使用したラップ盤での作業等
広いバリエーション範囲に対応した砥石が得られるとい
う利点が存する。
【0023】以下に実施例を示す。
【0024】
【実施例1】砥材GC#1000 10KgにPVA樹脂(重合
度500)1500gに水溶性の熱硬化性樹脂1200gを混合し
たものを用いホルマール化反応を従来法に従い行って硬
化させ、弾性を有する多孔質基材砥石(出来上り外径30
5×厚さ20×穴径152.4mm)を所定数得た。
【0025】含浸溶液としてメラミン樹脂(樹脂分80重
量%)30重量%と水溶性フェノール樹脂(樹脂分60重量
%)70重量%とを混合し、全濃度50重量%の水溶液と
し、これに縮合触媒として0.5 重量%のパラトルエンス
ルホン酸水溶液(濃度10%)を加えたものを別途調製し
た。この含浸溶液に前記基材砥石を浸漬し、取出した後
60℃にて乾燥後150℃×7時間加熱して、含浸処理多孔
質砥石を得た。
【0026】この砥石について、下記の研削条件にて研
削テストを行い、その結果を表1に示す。処理前のもの
と比較して砥石損耗量は0.7倍に、研削量3倍、研削比
4倍となった。
【0027】
【表1】
【0028】研削条件 1) 研削方法 円筒プランジ 2) 砥石寸法 外径305×厚さ40×穴径152.4mm 3) 被削材 S45(生材)60φ×50lmm 4) 砥石研削幅 20mm 5) 研削液 水溶性研削液W2 6) 砥石使用周速 2000m/min 7) ワーク回転数 250m/min 8) 切込速度 1.2μm/rev 9) スパークアウト時間 20sec
【0029】
【表2】
【0030】
【比較例1】実施例1と同一のフェノール樹脂を用い、
全濃度50重量%の含浸溶液として、実施例1で得た基材
砥石に含浸し、180℃×5時間加熱処理して、比較例1
の砥石を得た。その結果を表1及び表2に示す。含浸ム
ラが著しく、部分的に極めて硬い部分があり、不均一
で、研削時にスクラッチが発生した。
【0031】
【比較例2】実施例1と同一のメラミン樹脂を用い、全
濃度50重量%の含浸溶液とし、加熱処理を150℃×10時
間としその他比較例1と同様にして比較例2の含浸処理
砥石を得た。その結果を表2に示す。熟成工程中に多数
の割れクラックを生じ不良であった。
【0032】
【実施例2】尿素樹脂(尿素−メラミン−ホルマリン初
期縮合物、有効成分25% pH7.0〜8.0)30重量%、残部
フェノール樹脂(実施例1と同じ)から成り、同じ縮合
触媒を加えた含浸溶液(全濃度40重量%)を調製し、そ
の後実施例1と同様に基材砥石に含浸させ乾燥後150℃
×8時間加熱硬化処理した。この砥石についてテストを
行い表2にその結果を示すが良好であった。
【0033】
【比較例3】尿素樹脂単味(実施例2と同じもの濃度5
%)の含浸溶液を用いその他は実施例2と同様にして含
浸処理した所、熟成処理中に全てに割れクラックが生
じ、砥石として使用できなかった。(表2参照)
【0034】
【実施例3】実施例1、2に用いたメラミン樹脂、尿素
樹脂、フェノール樹脂を用い、実施例1、2の含浸溶液
を1:1(重量比)に混合して含浸溶液とし、その他実
施例1と同様にして含浸処理し、170℃×6時間加熱処
理して、砥石を得た。その結果を表2に示す。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】a)メラミン樹脂液及び尿素樹脂液の1種
    類以上と、 b)液状フェノール樹脂、及び c)縮合用触媒から成り、前記(a)液対(b)液の配
    合比が、重量比にて1:10〜10:1である含浸溶液
    であって、成形固結した弾性を有する多孔質基材砥石に
    含浸させ前記弾性を有する多孔質基材砥石の結合剤表層
    に前記含浸溶液の固着層を形成し、乾燥、加熱反応させ
    樹脂含浸多孔質砥石とするための仕上げないしラッピ
    ング砥石用含浸溶液。
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