JP2517521B2 - 使用済注射針の離脱・収納容器 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は使用済の注射針の離脱・
収納容器、少し詳しくは医療に於て注射を終えた直後の
注射針を注射器より簡単的確に離脱し、分離された注射
針のみを外界とは遮蔽下に安全に収納保管するための離
脱・収納容器に関する。

【０００２】

【従来の技術】エイズウィルス、Ｂ型肝炎ウィルス、メ
チシリン耐性ブドウ球菌（ＭＲＳＡ）等、の恐ろしい病
気の感染ルートとして、注射を終えた注射針を注射器よ
り抜き去る際、誤って作業者（医師、看護婦、助手、医
療廃棄物の専門回収業者等）が自分の指先、手先その他
を刺傷した際、針先に付着したウィルスが傷口より血流
によって体内に運ばれ感染すると言われている。このた
め病院関係者にとって予防医学上、重大な関心事となっ
ているが、なおあちらこちらで院内感染の事実が報告さ
れているので、早急な安全対策が強く望まれている所で
ある。

【０００３】従来の注射後の注射針の扱いは病院、医院
その他に於てまちまちであって、その多くは次の３様に
分けられる。 イ）注射後、作業者が両手を使って注射針を注射器ノズ
ルより離脱する、 ロ）注射針に被せてあった針カバーを、注射後、再び針
に被嵌して針を分離する、 ハ）注射後、針付きのまま注射器をワゴンで持ち去って
ナースセンター等で分離して廃棄の準備をする。

【０００４】いずれに於ても注射針は注射器の針取付ノ
ズルにテーパー強嵌合してあるため、その離脱に於ては
注射針を周方向に旋回しながら行うのが一般であるが、
両手を使って行なうこの作業には手元の狂いが生じ易
く、誤って指先等を刺傷することがままある。

【０００５】上記事情に鑑みると安全な対策として望ま
れるのは、注射針を注射後、現場で即座に分離出来る専
用器具が必要なこと、この器具の扱いとしてはその作業
を容易にするため片手の作業で行なえること、分離した
注射針は外界と遮断された収納空間内に安全に納置出来
ること、廃棄に当たってはこの器具ごと行なえること・
・・以上、要するに、作業者の手、指が注射針の除去の
ため注射後から廃棄に至る間一切介入せずに済ませる、
と言うコンセプトを実現させねばならない。

【０００６】本発明は凡そ上記のコンセプトを実現する
ための器具、即ちここでの器具とは注射針の除去のため
収納容器内部上方に仕組んだ処理室と、その直下に除去
針を自動落下収納する針収納室の計２室を縦方向に連設
してなる離脱・収納容器として構成してある。そして注
射針の除去は注射針を付した注射器をほぼ直立状態で上
方より容器の受孔内に上方向から押し入れる作業、つま
り片手の作業のみによって簡易且つ的確に実施し得るよ
う図ってある。従って手先の未熟もしくは不器用な作業
者にとっても刺傷事故の懸念は一切払拭され、専用回収
業者にとっても回収の際、裸の注射針に肌が接すると言
う局面も一切ない。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明の解決手段の概要
は、針収納容器内部の上側に注射針離脱手段を仕組んだ
こと、ここで離脱した注射針を下方の収納室へ自動落下
収納するようにしたこと、上記針離脱手段は注射を終え
た注射針を付したままの注射器を針先が下側になるよう
片手に保持したまま、容器上方内部の受孔内にほぼ直立
状態で差し入れたまま下方に押下することにより自動的
な針除去を敏速的確に出来るようにしたこと、にある。

【０００８】即ち、本発明の具体的構成を添付実施例図
にもとづいて説明すると、本発明は筒状の容器本体１、
この本体１内部にあって上側を処理室２、下側を針収納
室３に夫々区分する固定中仕切４、この中仕切４と上側
に組対して両者間に圧縮スプリング５を縮設保持して処
理室２内に上下動自在とされた可動スプリング受板６、
この受板６の上側に固定され可動スプリング受板６と連
動自在とされた処理室可動蓋１７、この可動蓋１７の下
面に径方向に摺動自在とされ常時は別の圧縮スプリング
８によって一方向に弾力付勢されている針離脱用スライ
ダ９、このスライダ９の下面に突設された一対の離脱爪
１０、１０、上記可動蓋１７、スライダ９及び可動スプ
リング受板６を貫通する注射針嵌挿用受孔１４、１５、
６１とを含み、常時は前記圧縮スプリング５の上向付勢
弾力により可動スプリング受板６及び可動蓋１７を容器
本体１内部の最上位に上昇停止せしめると共に前記針離
脱用スライダ９を圧縮スプリング８の横向付勢弾力によ
って一側縁９２を上記可動蓋１７の内周壁１７３に当止
せしめるも、使用時に注射器７の針取付ノズル１２の肩
部１３１を概ね直立状態で前記受孔１４の孔縁１４１に
係止して上記上向弾力に抗して上記可動蓋１７、スライ
ダ９及び可動スプリング受板６を押し下げた際、上記横
向付勢弾力に抗して上記スライダ９を反方向に移動せし
めてその離脱爪１０、１０を前記注射針１３の上縁１２
１に対して接線方向より横断せしめて該注射針１３を針
取付ノズル１２より強制離脱落下せしめるように構成し
た使用済注射針の離脱・収納容器に関する。

【０００９】

【実施例及び作用】以下に本発明の具体的構成と作用を
実施例によって更に詳述する。使用前の構成は図１、図
５、図６及び図１０を参照されると判り易いであろう。
図に於て１は例えばポリプロピレン製の円筒状容器本体
であり、圧縮コイルスプリング５の受座５０をほぼ中央
に有し２室の仕切りをする中仕切４により上方を処理室
２、下方を針収納室３に夫々区分するよう本体１内に上
側部で嵌合固定されている。上側のスプリング受板６は
スプリング受座６０及び受孔６１をほぼ中央に、円周上
の一端に直径方向に沿ったスロット１６を夫々有し、そ
の上側に配置された浅い円型倒椀型の処理室可動蓋１７
の内腔に嵌納固定されている。この処理室可動蓋１７は
円周上の一端に上記スロット１６に整合する別のスロッ
ト１８を備えていてスプリング受板６と可動蓋１７とを
組み合わせた状態で両スロット１６、１８は前記中仕切
４の上面の円周方向一個所に立設され斜辺１０１が求心
方向に配向されている直角三角形状突起１９に夫々摺動
自在に嵌合されている。

【００１０】容器本体１の最上位には深い円型倒椀状で
大きな内径の受孔１１１をもった上蓋１１が当該本体１
に対して嵌合固定されている。可動蓋１７の下面には図
５、７及び図１０によって明らかな如く、その直径方向
に摺動自在な針離脱用スライダ９が、一双の径方向の条
縁７０、７０及び脱落防止短条８０、８０によって保持
されていて、可動蓋１７の内面に設けたスプリング掛１
７１、１７２とスライダ９のスプリング掛１７３間に両
脚スプリング８が閉脚架設され、その縮設弾力がスライ
ダ９を図中右方の直径方向に常時付加されてスライダ９
の右端９２を可動蓋１７の内周壁１７３の内面に当止さ
れている。このスライダ９のほぼ中央部には注射針１３
を套嵌した注射器の取付ノズル１２を遊嵌する受孔１５
及びこれに連設された幅狭な条溝１５１が設けられてい
て、常時は上蓋１１の受孔１１１、可動蓋１７の受孔１
４、スライダ９の受孔１５及びスプリング受板６の受孔
６１が連通開口状に保持されている。

【００１１】容器本体１と同様、上記上蓋１１、可動蓋
１７、スライダ９及び中仕切６はいずれも同質のプラス
チックス製である。図例のものは収納室３の内底には注
射針１３に付着した血液、残留薬液の殺菌吸液パット２
０が設けられ、容器本体１を廃棄した場合の防菌・衛生
上の配慮がなされている。

【００１２】次に実施例品の使用方法を図１乃至図４及
び図８乃至図９にもとづいて説明する。 （ａ）使用済注射器７を下側にして針付きのまま片手で
保持しつつ本収納容器の上方より受孔１１１、１４、１
５、６１内に差し入れる（図２）。 （ｂ）続いて圧縮コイルスプリング５の上方付勢弾力に
抗して針取付ノズル１２の肩部１２１を受孔１４の孔縁
１４１に係止したままこれを下側に押し込む。これによ
ってスライダ９を含む可動蓋１７及び可動スプリング受
板６は一体のまま固定中仕切４に対して下方に平行移動
する。即ちこの移動はスロット１８、１６と突起１９と
の遊嵌によって許容される。特に斜辺１０１を求心方向
に配向させた直角三角形状の突起１９とスロット１８、
１６との嵌合範囲は上方より下方に向かってその嵌合領
域を順次深くする（図３）。

【００１３】（ｃ）一方、常態位に於てはスライダ９は
スプリング８の弾力によって突起１９の最頂部に対し僅
かながら接触した状態に位置しているが（図１）、上記
の下方への強制移動によってスライダ９の図中右側端９
２はスロット１８と突起１９との嵌合が進むにつれ、当
該突起１９の斜辺１０１によってスプリング８の弾力に
抗して順次図中左方へ水平移動される（図５乃至図
７）。 （ｄ）この時、注射器７のノズル１２は最初、円形の受
孔１５内に遊挿されていたものの、上記下方への移動に
よって幅狭な溝孔１５１内に移動しスライダ９に対する
遊び範囲が小さくなる（図７）。

【００１４】（ｅ）スライダ９の下面にはスライド方向
に対して平行な一対の離脱爪１０、１０が設けられその
スライド方向前端には先行漸浅状のテーパ面１０２、１
０２が施されているので、移動が更に進むと注射針１３
の上縁（フランジ）１３１に対して上記離脱爪１０、１
０が接線方向から２個所で接当した後、当該上縁１３１
を下方に押し込むことになり、これが進むと注射針１３
は取付ノズル１２より急速且つ的確に離脱される（図
８、９）。本発明者の経験によると、針はずしの種々の
考えられ得る方策を試みたが、実施例の如く一対の平行
にして先行漸浅状のテーパ面１０２をもった爪１０、１
０によるものが最も効率的な手段であることが判明して
いる。

【００１５】（ｆ）注射針１３の離脱は注射器７を保持
している片腕に触覚として伝わるから、覚知後、直ちに
注射器７に対する押力を抜くことによって、圧縮コイル
スプリング５の復元弾力によって可動蓋１７、可動スプ
リング受板６ともども図１の状態に復帰し、また、スラ
イダ９もスプリング８の弾力によって図５の位置に一挙
に復帰し、これによって次の針離脱に備えることとな
る。 （ｇ）離脱された注射針１３は中仕切４の中央孔４１を
経て下方の針収納室３内に落下し収納される。針収納室
３の収納空間は１日当たりに使用される平均注射回数×
一定の連続日数（例えば５日間）を算定し適宜設計すれ
ばよい。実施例の如く室底に殺菌吸液パット２０を内蔵
することは防菌・衛生上から望ましい。 （ｈ）廃棄は針収納室３内に注射針１３を収納したまま
然るべき保管をした後、廃品業者に委託すればよい。

【００１６】

【発明の効果】叙述した所から既に理解された如く、本
発明によると、作業者が注射を終えた直後、片手にて針
付きの注射器を容器の上方より差し入れてこれを下方に
押し込むことにより、注射針の自動離脱落下収納が可能
となるので、作業者（含回収業者）の手、指が注射の直
後から廃棄に至る間、注射針の除去のため一切触れずに
済むと言う従来品にない予防感染上の福音をもたらすの
みならず、その作業も片手で済ませるので、簡便且つ量
産処理が可能であり、更には除去注射針は収納室内に外
界とは閉ざされた状態で保管されるので、医療現場関係
者、入院、来院患者はもとより回収廃棄関係者にとって
も刺傷から伝染のおそれもなく衛生上も好ましい等・・
・幾多の優れた効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の離脱・収納容器の一実施例を示す、使
用直前の縦断正面図。

【図２】図１の状態より注射針を注射器ごと容器の上方
へ差し入れた状態を示す縦断正面図。

【図３】図２の状態より注射器を更に下方に押し込んだ
状態を示す縦断正面図。

【図４】図３の状態から注射針を離脱・落下させ、可動
蓋、スライダ及び可動スプリング受板がスプリングの弾
力によって図１の状態に復元した様子を示す縦断正面
図。

【図５】スライダの常態位の平面図。

【図６】同側面図。

【図７】スライダが図５の状態から針離脱のため摺動し
た状態を示すスライダの平面図。

【図８】注射針と離脱爪との関係を示す要部側面図。

【図９】同平面図。

【図１０】本実施例離脱・収納容器全体の分解斜視図。

【符号の説明】

１ 容器本体 ２ 処理室 ３ 針収納室 ４ 中仕切 ５ 圧縮スプリング ６ 可動スプリング受板 ７ 注射器 ８ 圧縮スプリング ９ 針離脱用スライダ １０ 離脱爪 １１ 上蓋 １１１ 受孔 １２ 針取付ノズル １３ 注射針 １４ 受孔 １５ 受孔 １６ スロット １７ 処理室可動蓋 １８ スロット １９ 突起 ２０ 殺菌・吸液パット

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 筒状の容器本体（１）、この本体（１）
   内部にあって上側を処理室（２）、下側を針収納室
   （３）に夫々区分する固定中仕切（４）、この中仕切
   （４）と上側に組対して両者間に圧縮スプリング（５）
   を縮設保持して処理室（２）内に上下動自在とされた可
   動スプリング受板（６）、この受板（６）の上側に固定
   され可動スプリング受板（６）と連動自在とされた処理
   室可動蓋（１７）、この可動蓋（１７）の下面に径方向
   に摺動自在とされ常時は別の圧縮スプリング（８）によ
   って一方向に弾力付勢されている針離脱用スライダ
   （９）、このスライダ（９）の下面に突設された一対の
   離脱爪（１０、１０）、上記可動蓋（１７）、スライダ
   （９）及び可動スプリング受板（６）を貫通する注射針
   嵌挿用受孔（１４）、（１５）、（６１）とを含み、常
   時は前記圧縮スプリング（５）の上向付勢弾力により可
   動スプリング受板（６）及び可動蓋（１７）を容器本体
   （１）内部の最上位に上昇停止せしめると共に前記針離
   脱用スライダ（９）を圧縮スプリング（８）の横向付勢
   弾力によって一側縁（９２）を上記可動蓋（１７）の内
   周壁（１７３）に当止せしめるも、使用時に注射器
   （７）の針取付ノズル（１２）の肩部（１２１）を概ね
   直立状態で前記受孔（１４）の孔縁（１４１）に係止し
   て上記上向弾力に抗して上記可動蓋（１７）、スライダ
   （９）及び可動スプリング受板（６）を押し下げた際、
   上記横向付勢弾力に抗して上記スライダ（９）を反方向
   に移動せしめてその離脱爪（１０、１０）を前記注射針
   （１３）の上縁（１３１）に対して接線方向より横断せ
   しめて該注射針（１３）を針取付ノズル（１２）より強
   制離脱落下せしめるように構成した使用済注射針の離脱
   ・収納容器。
2. 【請求項２】 中仕切（４）は周方向一個所に斜辺（１
   ０１）が求心方向に配向されたほぼ直角三角形状の突起
   （１０）を備え、可動蓋（１７）及び可動スプリング受
   板（６）の周方向には上記突起（１０）に嵌合する縦方
   向のスロット（１８）、（１６）を夫々具備し、スロッ
   ト（１８）、（１６）と突起（１０）との嵌合により可
   動蓋（１７）及び可動スプリング受板（６）の上下移動
   が許容され且つこの移動によって上記突起（１０）の斜
   辺（１０１）が前記スライダ（９）の一側縁（９２）に
   対する当接位置を順位変動し得るようになした請求項１
   記載の離脱・収納容器。
3. 【請求項３】 可動蓋（１７）が容器本体（１）内の最
   上位に上昇停止している時は一側縁（９２）と斜辺（１
   ０１）は非接触状態であるが、可動蓋（１７）の降下に
   つれ一側縁（９２）が斜辺（１０１）に当接して圧縮ス
   プリング（８）の横向弾力に抗してこれを反方向に順次
   移動せしめる如くなした請求項２記載の離脱・収納容
   器。