JP2509342B2 - ガラス素子の成形型およびその製作方法 - Google Patents

ガラス素子の成形型およびその製作方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、不連続な成形面を有する、ガラス素子の成
形型およびその製作方法に関し、特に光線を曲げたり分
割するために不連続な機能面を有するプリズム、ポリゴ
ンミラー、ペンタプリズム、光学レンズ等を形成するの
に好適な形成型およびその製作方法に係わる。
〔従来の技術〕
従来、不連続な機能面(光が入出射または反射する
面)を持つプリズム等のガラス素子は、ガラスを研削、
研磨等により直接冷間加工することによって製造されて
きたが、最近要求される機能の多様化により形状が複雑
化、高精度化しており、不連続部分の段差、鋭角なエッ
ジ等のような、これまでの機械加工では加工が困難ある
いは不可能なものが現れてきた。
一方、近年では、成形型材料に特殊な材料を用いると
共にその表面を光学鏡面とした成形型によってガラスを
直かにプレス成形し、成形後に研削、研磨を必要としな
い光学鏡面を得るプレス成形法が盛んに研究され、一部
実用化されるに至っている。ガラスレンズを直接プレス
成形するこの方法は研削および研磨工程を省略できると
いう利点のほか、非球面レンズを安価に製造できるとい
う利点があり、きわめて有用な方法である。
〔発明が解決しようとする課題〕
そこで、不連続の機能面を有するガラス素子の製造に
もこのプレス成形法を用いれば効率のよい量産が可能と
考えられる。
しかしながら、このプレス成形のための成形型には、
機械加工が比較的に難しいセラミックス等の特殊な材料
が用いられるため、形状が複雑で寸法精度や面精度の高
い成形型は、前述のガラス素子の冷間加工の場合と同様
に、機構加工することが困難であるかまたは不可能であ
る。
そこで本発明は、形状が複雑で精度が高いものでも、
容易に製作可能なプレス成形用成形型と、その製作方法
を提供せんとするものである。
〔課題を解決するための手段〕
本出願人は、成形型がガラス素子のように必ずしも一
体加工する必要がない点に着目し、成形型を成形面の不
連続部分から分割したものを製作し、これを組み合わせ
ることにより、形状が複雑で精度が高いものでも、簡単
に製作できることを見出した。
この思想に従って、不連続な成形面を有する、本発明
のガラス素子の成形型は、成形型が不連続な個々の成形
面の境界から分割された形をしていて、耐熱性無機接着
剤等により互いに固定連結されて組み合わせられた型要
素と、この型要素の成形面に少なくとも一層のセラミッ
クス薄膜層とを備えていることを特徴とする。
更に、成形型の製作方法は、成形型を不連続な個々の
成形面の境界から分割した形を有する型要素を、機械加
工によって形成し、この型要素を耐熱性無機接着剤等に
よって互いに固定連結して組み合わせ、この組み合わせ
の前およびまたは後で、成形面に少なくとも一層のセラ
ミックス薄膜層をコーティングすることを特徴とする。
〔実施例〕
次に、図を参照して本発明の実施例を詳しく説明す
る。
第1図と第2図は、第1の実施例による成形型の外観
形状と縦断面を示している。この成形型1は第4図に示
す形状のガラス素子(例えばプリズム)をプレス成形す
るために、上型または下型として使用されるものであ
る。
成形型1は小径の上側円柱部分1′と、大径の下側円
柱部分1″とを有し、上側円柱部分1′の上面には、ガ
ラス素子の機能面(光が入出射または反射する面)に対
応する形をした形成面2が形成されている。この成形面
2は不連続の二つの面2a,2bからなり、この両面は境界
線方向にそれぞれ逆向きに等角度で傾斜している。形成
面2の外径は約5mm、不連続面の段差部の最大値は約0.1
mmである。成形型1は不連続の二つの面2a,2bの境界線
に沿って垂直方向に2分割されている。分割された成形
型1の個々の部分を本明細書では型要素と称する。この
型要素1a,1bは第2図に示すように、耐熱性無機接着剤
3によって接着されている。
この割型形式の成形型1は次のようにして製作する。
まず、型要素1a,1bの母材を機械加工によって別々に作
る。この加工は個々の成形面2a,2bが連続面であるので
容易である。型要素1a,1bの母材の材質としては、例え
ばシリコンカーバイド焼結材が使用される。次に、この
型要素1a,1bの母材の少なくとも成形面2a,2bの範囲にそ
れぞれ、光学鏡形成用のシリコンカーバイドをCVD法に
より約50〜300μm程度の厚さで被覆する。このシリコ
ンカーバイドの層は成形面2a,2bの最終形状および表面
状態とはかけ離れているため、研削および研磨加工によ
り所定の形状および面粗さ(鏡面)に仕上げる。次に、
接着剤3によって型要素1a,1bの割り合わせ面を互いに
接着する。そして最後に、成形面2の前記シリコンカー
バイト層に、離型効果のある硬質炭素薄膜層をスパッタ
リングにより200Å〜1μm被覆することにより、成形
型1が出来上がる。
前記接着剤3としては例えばアルミナを主成分とした
ペースト状の耐熱性無機接着剤が使用される。この接着
剤は、セラミックス、ガラス等に強い接着力を有し、耐
熱温度が1650℃、接着強度が110 kgf/cm2とプレス成形
に充分耐え得る性質を持つ。この接着剤3の厚さは通
常、10〜50μmである。
上記のようにして製作された成形型1は、第3図に示
すようにプレス成形用の上型4として、あるいは下型5
として使用される。第3図において、6は円筒状の胴
型、7は成形されるガラスである。ガラスの成形は、非
酸化性雰囲気(例えば窒素雰囲気)でガラスを加熱、軟
化し、上型4でプレスすることによって簡単に行われ
る。成形されたガラス素子は、研削、研磨を必要としな
い光学鏡面を有する。このガラス素子(プリズム)を第
4図に示す。このガラス素子7′は不連続な機能面8a,8
bの境界の稜線部9と谷部10の面だれが非常に小さい
(例えば0.05mm以下である)。これは、成形型1の分割
形成により、成形型1の稜線部と谷部を非常に正確に形
成できるようになったことを起因する。
なお、上記成形型1を用いて、プレス温度600℃、プ
レス圧力40〜80kg/cm2で1000回プレス成形した結果、成
形型1は異常に見られず、高い面精度の光学素子7′が
得られた。
上記構造の成形型1は製作方法の次のような変形例で
も製作可能である。
先ず、第1の変形例では、型要素1a,1bの母材の材質
として超硬合金のタングステンカーバイドを用い、型要
素を接着した後、成形面2に硬質炭素薄膜層をスパッタ
リングにより100〜1000Åの厚さでコーティングする。
第2の変形例では、型要素1a,1bの母材の材質として
シリコンカーバイド焼結材を用い、個々の成形面2a,2b
にシリコンカーバイドをCVD法により被覆し、研削およ
び研磨加工により所定の形状および面粗さに仕上げ、型
要素接着後、前記シリコンカーバイド層の上に更に、シ
リコンカーバイドをスパッタリングにより100〜1000Å
の厚さでコーティングし、更にその上に硬質炭素薄膜層
をスパッタリングによって200Å〜1μmの厚さでコー
ティングする。この場合、スパッタリングによって形成
されたシリコンカーバイド層は、CVD法によるシリコン
カーバイド層と硬質炭素薄膜層の密着性を高める作用が
ある。
第3の変形例では、型要素1a,1bの母材の材質として
石英ガラスを用い、型要素接着後、シリコンカーバイド
をスパッタリングにより100〜1000Åの厚さで成形面2
にコーティングし、その上に硬質炭素薄膜層をスパッタ
リングによって200Å〜1μmの厚さでコーティングす
る。
第4の変形例では、型要素1a,1bの母材の材質として
アルミナの単結晶を用い、成形面に、前記第3の変形例
と同じように、シリコンカーバイドを硬質炭素薄膜層を
コーティングする。
これらの第1から第4の変形例の場合には前記第1実
施例の製作方法の場合と同様に、アルミナを主成分とし
た耐熱性無機接着剤が使用される。しかし、第1実施例
の製作方法の場合もこの第1から第4変形例の場合に
も、他の種類の接着剤、例えばジルコンを主成分とした
ペースト状の耐熱性無機接着剤を使用することができ
る。更に、硬質炭素薄膜層はスパッタリングだけでな
く、真空蒸着、イオンプレーティング、プラズマCVD法
によってもコーティング可能である。
第5図と第6図には第2実施例による成形型11が示し
てある。この場合、型要素11a,11bは接着剤によって直
接接着されてないで、上側円柱部分11′に嵌合された、
成形型11と同じ材質のスリーブ12によって互いに保持さ
れ、このスリーブ12が接着剤13によって成形型11に接着
されている。
第7図に示す第3実施例による成形型14の場合には、
型要素14a,14bを互いに固定するために、成形型14と同
じ材質の台座15が使用され、この台座15と型要素14a,14
bの底面が接着剤16によって接着されている。
第8図に示す第4実施例による成形型17は4分割の割
型として形成されている。4個の個々の型要素の形成面
17a,17b,17c,17dは時計回りと同じ方向に同じ角度だけ
傾斜をつけた形をし、中心で合致している。寸法は例え
ば外径が7mmで、段差部の最大段差値が0.2mmである。成
形型17は個々の成形面17a,17b,17c,17dの間から四つの
型要素に分割され、割り合わせ面が第1実施例と同様に
接着剤で接着されている。この成形型17を用いてプレス
成形されたガラス素子18が第9図に示してある。このガ
ラス素子18は成形型17の成形面17a,17b,17c,17dが転写
された四つの光の機能面19a,19b,19c,19dを有する。
上記第2実施例、第3実施例および第4実施例の成形
型11,14,17も、前記第1実施例の製作方法またはその変
形例によって製作可能である。
以上、実施例について説明したが、本発明は上記実施
例に限定されるものではない。例えば、成形型は不連続
の成形面の境界のところから分割されるため、成形面の
形状に応じていろいろな態様に分割可能である。更に、
型要素の組み合わせも、成形型や成形面の形状に応じて
接着剤、スリーブおよび台座以外の方法で行うことがで
きる。
〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明は、不連続な成形面の境
界から成形型を分割して機械加工し、その後接着等によ
って組み合わせるようにしたので、複雑な形状の成形型
でも容易に製作可能である。更に、本発明の好ましい態
様によれば、光学鏡面を形成するシリコンカーバイトを
成形面にコーティングしたので、非常に高い面精度が得
られ、また硬質炭素薄膜をコーティングしたので、成形
されたガラス素子の離型が容易である。
従って、本発明により、複雑な形状のものでも製作が
容易で、ガラスの直接的なプレス成形法に使用可能であ
る成形型が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の第1実施例による成形型の斜視図、第
2図は第1実施例による成形型の縦断面図、第3図は第
1実施例による成形型を用いてガラスをプレス成形する
状態を示す縦断面図、第4図は第1実施例による成形型
を用いて成形されたガラス素子を示す斜視図、第5図は
第2実施例による成形型の斜視図、第6図は第2実施例
による成形型の縦断面図、第7図は第3実施例による成
形型の縦断面図、第8図は第4実施例による成形型の斜
視図、第9図は第4実施例による成形型を用いて成形さ
れたガラス素子を示す斜視図である。 1,11,14,17……成形型、1′,11′……上側円柱部分、
1″……下側円柱部分、1a,1b,11a,11b,14a,14b……型
要素、2,2a,2b,17a,17b,17c,17d……成形面、3,13,16…
…耐熱性無機接着剤、4……上型、5……下型、6……
胴型、7……ガラス、7′,18……ガラス素子、8a,8b,1
9a,19b,19c,19d……機能面、9……稜線部、10……谷
部、12……スリーブ、15……台座

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】不連続な成形面を有する、ガラス素子の成
    形型において、 成形型が不連続な個々の成形面の境界から分割された形
    をしていて、耐熱性無機接着剤等により互いに固定連結
    されて組み合わせられた型要素と、 この型要素の成形面に少なくとも一層のセラミックス薄
    膜層とを備えていることを特徴とするガラス素子の成形
    型。
  2. 【請求項2】成形型を不連続な個々の成形面の境界から
    分割した形を有する型要素を、機械加工によって形成
    し、 この型要素を耐熱性無機接着剤等によって互いに固定連
    結して組み合わせ、 この組み合わせの前およびまたは後で、成形面に少なく
    とも一層のセラミックス薄膜層をコーティングすること
    を特徴とする、ガラス素子の成形型の製作方法。
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