JP2501891Y2 - 熱分解装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は反応ガスクロマトグラフィにおいて、プラス
チックやゴムなどの試料を加熱して分解させたり、吸着
ガスを離脱させたりしてガスを発生させ、分析用カラム
へ供給する熱分解装置に関するものである。

（従来の技術） 熱分解装置としては、加熱炉中に水平方向に延びる熱
分解炉を備え、ボートに試料を乗せてその熱分解炉中に
設置するボート方式の熱分解装置と、加熱炉中に垂直方
向に設けられた熱分解炉の上端から試料を落下させる落
下方式の熱分解装置がそれぞれ単独で製品化されてい
る。

（考案が解決しようとする課題） ボート方式の熱分解装置は、ボートに1g程度の多量の
試料を装填することができ、比較的低い温度での発生ガ
スを測定する場合に適した構造であるが、試料を高温部
に挿入する動作が必要であるため、試料の加熱速度にば
らつきが生じ、結果としてデータの再現性を損なう。

落下方式の熱分解装置は、試料が熱分解炉の定位置に
達する時間が一定になるため、加熱速度が一定になり、
データの再現性が高い利点をもつ。その反面、試料の量
や形状などに制約を受ける。また、落下した試料の残渣
を熱分解炉の上端から取り出す作業が必要であり、操作
が煩わしい。

本考案はボート方式と落下方式の両方の欠点を補い、
両方式の長所を備えた熱分解装置を提供することを目的
とするものである。

（課題を解決するための手段） 本考案では、熱分解炉として水平部分と上方向に延び
る垂直部分とをもつ逆Ｔ字型の熱分解炉を用いる。熱分
解炉の水平部分の一端にはボートを熱分解炉の水平部分
と垂直部分との分岐部分に設置するボート出入機構を備
え、水平部分の他端はガスクロマトグラフのカラムに導
き、垂直部分の上部には試料を落下させる機構を備え
る。熱分解炉を加熱するために加熱炉を設ける。

（作用） 多量の試料を測定したり、低温で測定したりする場合
は、ボートに試料を入れて熱分解炉の水平部分から分岐
部分に入れて試料を加熱する。このときは、ボート方式
の熱分解炉として機能する。

試料が少量の場合や、再現性が強く要求される場合に
は、水平部分から空のボートを挿入して分岐部分に設置
しておき、垂直部分から試料を落下させてボート上に落
とし、ボート上で加熱する。試料の残渣はボート内に留
まり、ボートとともに加熱炉から引き出される。

（実施例） 図は一実施例を表わす。

１は熱分解炉であり、高温に耐えるように例えば石英
管で形成されている。熱分解炉１は水平部分1aと、水平
部分1aから上方向に延びる垂直部分1bとを備えている。

垂直部分1bの終端には回転コック３が備えられ、横向
きに開放口４が設けられている。回転コック３には貫通
穴が開けられ、回転コック３の回転によりその貫通穴が
垂直部分1b又は開放口４に切り換えられるようになって
いる。回転コック３の貫通穴には開放口４から適量の試
料が入れられ、その貫通穴が垂直部分1bを向くと開放口
４が閉じられるとともに、試料が落下する。

熱分解炉の水平部分1aの一方の途中には回転コック２
が設けられている。回転コック２にはボート５を挿入す
る貫通穴が開けられている。７は操作棒であり、操作棒
７の先端にはボート５が取りつけられている。操作棒７
の途中には熱分解炉のその一方の水平部分を外部から気
密に保つシール部材６が設けられている。ボート５、シ
ール部材６及び操作棒７は一体として組み立てられてお
り、熱分解炉１から取り外すことができる。

熱分解炉の水平部分1aの他方は流路10を経てガスクロ
マトグラフのカラムオーブン11内に設けられた分析用カ
ラムに接続される。12はカラムオーブンの断熱材であ
る。

水平部分1aと垂直部分1bには、キャリアガスコントロ
ーラ15及び配管14を経て分岐管と抵抗管13が接続されて
おり、分岐比が調整されたキャリアガスが供給されるよ
うになっている。

熱分解炉１の分岐部分はこの熱分解炉１の中心部分で
ある。熱分解炉１を加熱し分岐部分の温度を設定温度に
保つために、加熱炉８が設けられている。熱分解炉１の
水平部分からカラムにガスを導く流路10の部分にも加熱
炉９が設けられている。加熱炉8,9は室温から約1000℃
の範囲の温度に任意に設定できる互いに独立したコント
ローラを備えている。

次に本実施例の動作について説明する。

待機状態のときはボート５、シール部材６及び操作棒
７からなるボート組立体は熱分解炉１から取り外されて
おり、水平部分1aの回転コック２は通路が閉じる状態に
回転させられており、垂直部分1bの回転コック３も通路
を閉じる状態に回転させられており、加熱炉8,10は所定
の温度に保たれている。

多量の試料を測定する場合など、ボート５に試料を乗
せて加熱する場合は、熱分解炉１の外部でボート５に試
料を乗せ、水平部分1aの一端開口部からボート５を挿入
し、シール部材６が水平部分1aの管内に入ってシール機
能を果たしたとき回転コック２の通路を開け、回転コッ
ク２の貫通穴を経てボート５を加熱位置である分岐部分
まで押し込む。一定時間後、ボート５を引き抜き、回転
コック２を閉じ、その間の発生ガスをキャリアガスでカ
ラムに送り出して分析する。

垂直部分1bを用いて試料を落下させる場合は、水平部
分1aには空のボート５を予め加熱位置まで挿入してお
き、熱分解炉１を一定温度に加熱しておく。回転コック
３の貫通穴に開放口４から試料を入れ、回転コック３を
回転させて試料を落下させ、ボート５上で加熱してガス
を発生させる。その後、上記と同様に、一定時間後、ボ
ート５を引き抜き、回転コック２を閉じ、その間の発生
ガスをキャリアガスでカラムに送り出して分析する。

ボート５を引き抜くと試料の残渣が取り出される。

（考案の効果） 本考案では熱分解炉に水平部分と垂直部分を設けたの
で、ボート方式の熱分解装置としても、また落下方式の
熱分析装置としても用いることができる。熱分解装置を
用いる測定の一例としてプラスチックの評価があるが、
プラスチックの評価では高温における燃焼又は分解の際
の発生ガスと成形温度程度の温度下における発生ガスを
ともに測定する必要がある。前者の場合は熱分解炉を高
温にして垂直部分から試料を落下させ、後者の場合には
熱分解炉の温度を下げて多量の試料をボートに乗せ、水
平部分から試料を挿入するようにすればよい。このよう
に、分析の目的によって最良の機能を発揮させるには、
１台の熱分解装置で試料導入手段の異なる機能、すなわ
ちボート方式と落下方式の両機能をもたせることによ
り、商品価値を高めることができる。さらに分析精度を
向上させるためには、ボート自体の温度を正確に読み取
る手段を付加すればよい。

落下方式で測定する場合にも落下位置にボートを予め
設定しておくことができ、加熱後の試料残渣を容易に取
り出すことができる。

【図面の簡単な説明】 図は一実施例を示す垂直断面図である。 １……熱分解炉、1a……水平部分、1b……垂直部分、2,
3……回転コック、５……ボート、６……シール部材、
７……操作棒、8,9……加熱炉、11……カラムオーブ
ン。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】熱分解炉が水平部分と、この水平部分から
   分岐して上方向に延びる垂直部分とをもち、前記水平部
   分の一端にはボートを前記水平部分と前記垂直部分の分
   岐部分に設置するボート出入機構を備え、前記水平部分
   の他端はガスクロマトグラフのカラムに導かれており、
   前記垂直部分の上部には試料を落下させる機構を備え、
   この熱分解炉を加熱する加熱炉が設けられている熱分解
   装置。