JP2500374B2 - 連続多段加速式同軸ガン - Google Patents

連続多段加速式同軸ガン

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JP2500374B2
JP2500374B2 JP5318423A JP31842393A JP2500374B2 JP 2500374 B2 JP2500374 B2 JP 2500374B2 JP 5318423 A JP5318423 A JP 5318423A JP 31842393 A JP31842393 A JP 31842393A JP 2500374 B2 JP2500374 B2 JP 2500374B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は核融合炉で自己点火状態
の実現は不可欠なプラズマの超高温加熱に用いる連続多
段加速式高エネルギー定常モード同軸ガンに関する。
【0002】本発明を応用する技術分野は電磁流体工
学、気体力学、粒子ビーム工学、核融合発電、ロケット
推進工学等であり、超高温プラズマ生成器及び高性能な
宇宙ロケット推進器に応用でき、高効率で高エネルギー
ビームの発生可能な大出力が得られ電磁加速器として連
続多段加速式同軸ガンを提供するにある。
【0003】本発明が適用できる具体的製品は磁場閉じ
込め型核融合実験装置及び炉、大量中性子発生器、高比
推力高効率電磁推進器、固体への大電流注入器、その他
大電力高エネルギーイオンビームが必要な装置等であ
る。
【0004】
【従来の技術】同軸ガンは電磁加速器のうち最も簡単な
構造を持つもので、核融合研究用として超高プラズマの
生成に、また比推力の高い宇宙ロケット推進器等に応用
すべく、その研究・開発は高エネルギー化及び高効率化
を目標に1960年代初頭いらい多く国々で研究されてきて
おり、目標の達成は両分野の大きな発展を約束するもの
となっている。従来の同軸ガンの構造は二本の円筒電極
を同軸上に配した単純なもので、両極間には動径方向に
電流が貫流するよう電源が接続されており、注入された
中性ガスを電離しプラズマを生成すると共に自己場との
作用により駆動力が起生しプラズマが加速されるよう設
定されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この単純構造
の同軸ガンは下記の二つの問題点を抱えていることが指
摘されており、そのままでは目標の達成は困難である。
【0006】(a)表皮効果によりプラズマ駆動電流は
ガンの入口・出口の両端部に集中する。この駆動電流の
集中により、電極が局所的に大きな焼損を受けるばかり
でなく、高エネルギーへのプラズマ加速も阻害されてし
まう。
【0007】(b)電磁力は超音速流に対してのみ加速
に有効に寄与し、亜音速流に対してはむしろ壁となり流
れを閉塞に導く作用をもつ。従って、ガン入口へ超音速
流を供給したときのみ滑らかに高エネルギーへの加速が
許される。同軸ガンへのプラズマ供給は注入した中性ガ
スの電離によっているが、電離過程のプラズマ流は常に
亜音速となることに注意すれば、従来の同軸ガンではエ
ネルギーの高い超音速状態への滑らかな加速は不可能と
結論される。
【0008】上記(b)の問題点は本発明者により初め
て指摘されたもので〔プラズマ・核融合学会誌69(1993)
684 ,同69(1993)806 〕、同軸ガン入口に超音速プラズ
マ流を滑らかに供給する特別な超音速イオン源の発明
(特願平4−343827号)により、問題はすでに解決され
ている。本発明は上述の問題点(a)を解決し、発明さ
れた超音速イオン源を用いて目標の同軸ガンを実現する
ことに関している。原理的に(a)は両端部に印加され
る起電力を選択的に小さくできれば解決するが、その最
初の提案例として栗木〔ながれ、(1989)15〕のものを
挙げることができる。栗木は外部円筒電極をラバールノ
ズル状に整形し、入口と出口の電極間距離を中央部より
広げ両端部の起電力を弱めることを試みたが、実際的に
は両端部の電極間隔を十分広く設定することは困難であ
り、さしたる効果は確認されるに至っていない。
【0009】両端部の起電力を大幅に確実に弱める方法
として、抵抗体を用いる方法が本発明者により発明(特
願平4−343828号)されているが、その欠陥として抵抗
体による電力損のため理論駆動効率が従来の単純配位と
同一値をとり、ほぼ65%に留まってしまうことが挙げら
れる。
【0010】すなわち、従来の同軸ガンでは、表皮効果
によりガンの入口・出口の両端部への極度なプラズマの
駆動電流の集中が現われ、電極の焼損をもたらすばかり
でなく効率的なプラズマ加速も妨げられてしまう欠点が
あった。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、連続的・多段
的にプラズマを加速することにより電流集中を防止して
加速効率を改善し、ビームエネルギーの大幅な向上を達
成すると共に、電流集中に伴う電極の局所的な焼損を解
消し、プラズマの純化を図り、長寿命で安定な運転が可
能な同軸ガン型加速器の実現を目的とするものである。
【0012】本発明は、超音速プラズマを発生させる複
数個の同軸円筒状通路の各端部中心に設けた陰極と、各
通路の出口側に絶縁壁を介して設けた陽極と、前記陰極
と陽極との間に設けた超音速プラズマ生成用イオン源電
源と、前記陽極より外方に延在して設けた絶縁壁プラズ
マガイドとを具備して成る超音速イオン源Aにおいて、
その出口側に絶縁壁プラズマガイドを介して同軸に接続
した内部電極給電フランジBと、これに引続いて同軸に
接続した多段プラズマ加速管Cと、内部電極給電フラン
ジに設けられたスロット或は集電板を介して多段プラズ
マ加速管の多段に絶縁集積した電極との間にそれぞれ接
続した加速段数と同数で互い絶縁された独立の素子で構
成される主プラズマ駆動電源Dとより成り、前記多段プ
ラズマ加速管は同軸通路を形成する電極を輪切りにして
電極間に絶縁板を介挿し多段に絶縁集積体とした多段電
極より成り、各段の加速用電極に主プラズマ駆動電源D
の構成素子を接続し、多段加速反磁性電流層を形成し、
超音速イオン源で発生した超音速プラズマ流を更に多段
プラズマ加速管の同軸通路で高エネルギーに連続して多
段加速させるように構成したことを特徴とする連続多段
加速式同軸ガンにある。
【作用】
【0013】本発明の基本着想は、表皮効果による両端
部への電流集中を防ぐことにあり、従来の一対の同軸円
筒電極に代わり、一対の薄い同軸円環電極からなる素子
を互いに絶縁して多数積み重ねたスタックを用いて電流
分散を図ることにある。これは、従来の同軸ガンの内外
二本の円筒電極対を輪切りにして多数の薄い円環状電極
とし、互い絶縁したうえで内外の対応する一対の電極素
子を積み重ねてスタックとし、各素子にそれぞれ独立し
たプラズマ駆動電源を接続し、駆動電流値が全素子で同
一となるよう各電源電圧を調整することで実現できる。
いま、各電極素子でプラズマが順次加速されてゆくこと
に注目すれば、本発明は連続的に滑らかにプラズマを多
段加速することにより問題を解決したものと言える。
【0014】
【実施例】以下図面について、本発明の連続多段加速式
同軸ガンの実施の具体例について詳述する。図1におい
て、本発明の連続多段加速式同軸ガンは主として、超音
速イオン源Aと、この出力側に接続された多段プラズマ
加速管Cと、両者を結合する内部電極給電フランジB
と、主プラズマ駆動電源Dとの主要構成要素より成る。
本発明の超音速イオン源Aは、1は陰極、2は陽極を示
し、陰極1と陽極2との間にイオン源電源3を接続す
る。4はガス導入弁、5はアーク拘束壁、6はアーク駆
動電流、7は絶縁壁プラズマガイドを示す。ガス導入弁
4より注入された注入ガス流8は矢印の如く左右に分か
れて、陰極1,1に至り、ここで電離されてイオン源出
力プラズマ流9となり矢印の如く多段プラズマ加速管C
の領域に進行する。超高速イオン源Aの出口端には絶縁
壁プラズマガイド7が設けられて、生成したプラズマを
絶縁してガイドするよう構成される。この絶縁壁プラズ
マガイド7の作用は内部電極給電フランジに起生する磁
場の作用により発生したプラズマが陽極2の方に吸引さ
れエネルギーロスとならないために必要である。多段プ
ラズマ加速管Cにおいては、多段プラズマ加速管を構成
する電極素子13の数と同数の電気的に独立な(準)定常
なプラズマを発生する主プラズマ駆動電源が設けられ、
各電源は加速に有効な方位角方向磁場成分以外の誤差成
分が極力発生しないよう対称的に内部電極給電フランジ
Bの外部集電板15及び内部集電板17を通して対応する電
極素子13及び21の各電極素子に結合される。
【0015】図1及び図2に示す超高速イオン源Aのガ
ス導入弁4を通して注入された中性ガスより成る注入ガ
ス流8は、周辺部に配置されている複数個の熱アークジ
ェット部に導かれ、イオン源電源3により維持されてい
るアーク放電により電離されプラズマ化される。また、
このプラズマはアーク拘束壁5による熱ピンチ効果によ
る強調作用により効率的に加熱されると共に加速され音
速に至り、さらに拡がりノズルを構成している陽極部2
を通過してプラズマ流9は超音速流となり、絶縁壁プラ
ズマガイド7を通して内部電極給電フランジBに設定さ
れている絶縁壁5及び絶縁壁プラズマガイド7で覆われ
たプラズマ膨張箱18に放出される。なお、プラズマ膨張
箱18の役割は、複数個の熱アークジェット源から放出さ
れる超音速プラズマ流9を膨張させ、均一化して多段プ
ラズマ加速管Cに供給することにある。また、絶縁壁プ
ラズマガイド7は内外の集電板15,17の張り出しのため
形成される方位角方向磁場成分がプラズマ流9に与える
影響を消去する役割を担うものである。
【0016】図1に示した本発明の同軸ガンは、外部加
速磁場が不要で簡単な構造を持つ電磁波加速器である同
軸ガンにより、高エネルギー・大電力プラズマビームを
効率よく生成する方法に関しており、プラズマの加速を
妨げる生成過程を加速過程から明確に分離し、さらに電
磁力が加速に最も有効に作用するよう多段プラズマ加速
器系を構成することにあり、下記の諸特徴を具備するよ
う構成するものである。
【0017】本発明の超音速イオン源Aは、陰極1と陽
極2との間にアーク駆動用イオン源電源3を接続し、陰
極1と陽極2の間にアーク駆動電流6を流すと、陰極1
より陽極2の中心孔に向けて電子流が発生し、これがガ
ス導入弁4より送られる注入ガス流8を電離し、イオン
源出力流としてプラズマ流9を生成し、且つ強力にオー
ム加熱する。この強力な加熱により、プラズマ流はアー
ク拘束壁5を通過中に音速に至るまで増速され、陽極2
の中心孔入口に注入される。陽極中心孔は下流に向けて
拡大ノズルを形成しており、そのため音速で供給された
プラズマ流は自己圧力で超音速に加速され、加速の反作
用で電子流の陽極2への吸収を促し、超音速流を減速に
導く陽極中心孔内での更なる加熱を防止し、効率よく超
音速プラズマ流9を生成する。
【0018】超音速プラズマ流9の生成の第一歩は注入
ガス流8の電離にあるが、既に述べたとおりイオン源の
入口付近の電離されたばかりの初期のプラズマ流9は亜
音速であり、前述のとおりプラズマへの熱入力のみがプ
ラズマ加速に有効となる。図1は拡がりノズル状をした
アーク拘束壁5を持つ陽極2と陰極1間のアーク放電に
より熱エネルギーが注入されてプラズマ流が加速され、
超音速プラズマ流9を生成するものである。アーク拘束
壁5は大きな軸電流を持つアーク柱を絞り込み、プラズ
マの安定化と共にエネルギー注入効率の向上を計るため
に設置されるものである。なおアーク拘束壁5中を貫流
するアーク駆動電流は軸に沿っているため、その電磁力
はアーク柱を絞り込む動径方向のみに作用しプラズマ加
速には関係しない。
【0019】同軸ガン型の電磁加速器では、加速領域の
幾何学的形状を同軸円筒とするのが自然な形状となるか
ら、最も合理的な超音速イオン源Aの配位は、図2に示
したような有極放電型プラズマジェットを複数個同軸円
筒状に束ねたものにするのが好ましい。図2は複数個の
熱駆動型アークジェットを同軸円筒状に束ねて設けた場
合を示すもので、ガス導入弁4よりのガス流8を複数の
通路に分割して、陰極1と陽極2との対を同軸円筒状に
複数対設け、有極放電型としてアーク駆動電流6を電源
3より陽極2へ流して、分岐したそれぞれのガス流8を
電離し、超音速に加速する超音速イオン源Aを設け、超
音速プラズマ流9を得るようにしたものである。
【0020】本発明の連続多段加速式同軸ガンにおいて
は、超音速イオン源Aの出口側の絶縁壁プラズマガイド
7の外側に内部電極給電フランジBと多段プラズマ加速
管Cとを取付け、これに主プラズマ駆動電源Dを接続
し、内部電極給電フランジBの外部集電板15と、多段プ
ラズマ加速管Cの円環状電極素子13との間を主プラズマ
駆動電源Dでそれぞれの外部集電板15と電極素子13とを
接続し、各電極素子13は交互に絶縁板14をはさんだ円環
状電極の積層体として各外部集電板15よりそれぞれ給電
するよう構成する。
【0021】図3は内部電極給電フランジBの一例を示
すもので、図3(A),図3(B)はその縦断面及びそ
のA−A断面を示す図であり、外部集電板15は内部電極
給電棒16を介して内部集電板17に接続される。内部集電
板17の各端子は、内部集電導線20により内部電極素子21
の各電極素子に接続する。
【0022】図4は多段プラズマ加速管Cの断面図及び
側面図であって、外部電極素子13と内部電極素子21との
関係を示す。図1より明らかなように、主プラズマ駆動
電源Dは、内部電極給フランジBと多段プラズマ加速管
Cとを接続し、多段プラズマ加速をするよう構成したも
のである。内部電極給フランジBにおいては、外部集電
板15より内部電極棒16を介して内部集電板17に接続せら
れる。外部集電板15は主プラズマ電源Dのバラスト抵抗
10、コンデンサ11、サイリスタ12を介して多段プラズマ
加速管Cの電極素子13の各端子13A,13B,----に接続
される。一方、内部集電板17は内部配線20により多段プ
ラズマ加速管Cの内部電極素子21の各端子21A,21B,
----に接続し、円環状電極素子を絶縁物を介して積層し
て多段プラズマ駆動電流を構成し、多段プラズマ加速が
できるように構成する。電極素子13の各端子13A,13B
の間は絶縁板14で絶縁し、外部電極素子13が多段に絶縁
して積層体を構成して配置せられ、内部電極素子21の各
端子21A,21B,----の間も絶縁板22により多段に絶縁
して配置せられる。外部電極素子13の端子13A,13B,
----と内部電極素子21の各端子21A,21B,----とそれ
ぞれの電極素子とが対応して接続されるように構成す
る。
【0023】本発明の目的はとする絶縁破壊に悩まされ
ることが無い電磁加速は論理的には大電流イオンビーム
を安定して引き出せる最も合理的な方式であるが、上記
のように従来の実績では確かに大電流は引き出せるもの
のビームの収束性が悪くエネルギー効率が低いため、基
本的な絶縁破壊の問題を抱えている静電加速器系に比べ
ても魅力は乏しいとされてきた。しかし一方、この実績
は不満足な収束性と低いエネルギー効率が理論値どうり
に改善されれば、大電流が引き出し得る理想的な電磁加
速器開発が可能なことを示唆するものと解釈できる。
【0024】本発明の目的とするエネルギー効率が高く
収束性の良いビームを生成するには、流れに乱れの誘発
がない滑らかな加速が不可欠となる。駆動力が気体力の
みの不活性気体の加速の場合、滑らかな加速過程はユゴ
ニオの方程式で記述され、流れが貯気槽での静止状態か
ら高い運動エネルギーをもつ超音速プラズマ流に至るに
は、ダクト断面積が流れに沿って縮小し拡大するラバー
ルノズルの形成が不可欠なことである。
【0025】一方、本発明の目的とする電磁加速による
滑らかな加速が実現する条件解明には、気体力に加え電
磁力が作用している滑らかなプラズマ流の物理像の把握
が重要となる。いまZ軸方向(同軸方向)に飛行する断
面積一定な滑らかなプラズマビームを想定し、粒子、運
動量及びエネルギーの三つの保存則を用いれば、下記の
等価ダクト断面積Ax を持つユゴニオの方程式が導か
れ、滑らかな加速の実現には気体の場合と同様のAx に
対する条件が賦課されることが示される。
【数1】
【0026】ここでMはマッハ数、v1 はイオンの軸方
向速度、Tはプラズマ温度、EHallはホール電場、jiz
は軸方向イオン電流密度、WH はプラズマへの正味熱入
力を表している。ホール電場EHallは電磁力
【外1】 × のZ軸方向成分により生成するため常に正値を取ること
に注意すれば、式 (1)は電磁力の流れに沿ってAx を押
し広げ、熱入力は絞り込む作用を持つことを示してい
る。また式 (1)はAx のラバールノズル形成を要請して
いることから、流れの滑らかな加速のためには、亜音速
状態(M<1)ではAx の絞り込みが必要で、超音速状
態(M>1)ではAx の拡張が必要となってくる。これ
は亜音速状態ではAx を押し広げる電磁力はプラズマ加
速dv1 /dzの負方向へ寄与する。つまり電磁力はむ
しろ加速を妨害すると言う一見奇妙な結果が結論される
ことになる。この奇妙な挙動はプラズマの圧縮性に起因
する流れの自己調整運動の結果であるが、十分な熱入力
(プラズマ加熱)がなければ電磁力によりプラズマ流は
閉塞を来してしまうことを意味し、滑らかな流れを実現
するためには極めて重要であるにも関わらず従来の設計
では全く考慮されていない。事実、電離と加速が同様に
進行することを期待し、作業流体として中性ガスを注入
するのみの従来の単純な方式では、電離により生成され
た電子のエネルギーは中性ガスのそれを大幅に凌駕して
いるため、生成された初期プラズマ流は常に亜音速とな
り、十分に大きな熱入力がないかぎり電磁力により流れ
は常に閉塞することになる。プラズマへの熱入力はジュ
ール加熱により注入されるが、従来方式による初期プラ
ズマ流では電離、輻射及び電子の熱伝導等による熱損失
が大きいため熱入力が不十分であり、流れは必ず閉塞状
態に陥ってしまう。即ちこれは流れの加速のために印加
した電磁力はむしろ流れの抑止作用をもつことを意味
し、従来方式の致命的な欠陥と結論できる。
【0027】滑らかな流れを想定したモデルでの流れの
閉塞は、実際的には流れが継続的に加速器入口付近に蓄
積することを意味するものではなく、系は閉塞後の挙動
に支配されることになるので初歩的な考察を試みる。閉
塞による流速の減少は密度の増大と共に熱エネルギーの
蓄積を促すため、プラズマ圧の増加をもたらし、プラズ
マ圧が駆動電流による磁気圧を凌駕した時、プラズマは
下流へ放出され閉塞状態が解消するため、局所的な蓄積
は発生することはない。但し、下流への流れの放出はプ
ラズマ圧の低下を招くため、流れは再び閉塞状態に陥っ
てしまうことになり、閉塞・放出のサイクルが繰り返さ
れる。つまり巨視的には流れは時間的、空間的な構造を
形成して維持されることになる。非平衡状態を扱う近代
熱力学ではこのような構造を散逸構造と称しているが、
散逸構造を形成している系のエントロピー生成率は滑ら
かな熱力学的分枝上の系よりも大きいため、駆動効率の
低下は必然的となる。またそのような系は巨視的には一
種の秩序を有するものの、その形成には不安定性が大き
く関与することから、微視的には予測が不可能な乱流状
態にあることを意味し、滑らかな流れでの収束性の保証
を無効にすることは言うまでもない。先に述べた速度ク
ランプを含む同軸ガンの理論値からの大きなへだたり
も、流れの閉塞による散逸構造の形成で理解される。
【0028】本発明の超音速プラズマ生成理論は上で考
察した従来の技術の欠陥である流れの閉塞による散逸構
造の形成を排除するよう系を設定することと超音速イオ
ン源Aの次に内部電極給電フランジBを介して多段プラ
ズマ加速管Cを設け、これを主プラズマ駆動電源Dで絶
縁板でそれぞれ絶縁して電極を多段の積層体構造とする
ことにより、多段のプラズマ駆動電流層を形成し多段プ
ラズマ加速をすることに関している。閉塞の要因は系へ
の中性ガス注入直後の熱入力の不足にあることから、本
発明はまず第一段目に熱入力のみにより流れを電離し、
超音速に加速する超音速プラズマイオン源Aを設け、そ
の流れを確実に第二段目の電磁加速器である多段プラズ
マ加速管Cへ導く二段階加速方式の採用に基礎を置いて
いる。この系はイオン源とビーム加速系が直接結合して
いる静電加速器系と同じ構成を持っており、超音速プラ
ズマ生成器はイオン源と見なせるため以下超音速イオン
源と呼ぶことにする。
【0029】多段プラズマ加速管Cの動作原理は、 (1)ビームの駆動力として物理的に許される静電力、電
磁力及び気体力の3つの力のうち、電磁力の利用が最も
合理的であり、原理的には静電力利用型に比べて1000倍
も凌駕する高い出力密度が引き出せる。
【0030】(2)電磁力は亜音速プラズマ流の閉塞作用
をもつ。しかし、この困難は超音速プラズマを加速器に
供給する超音速イオン源Aの採用で解決される。
【0031】(3)上述の超音速イオン源Aは、ガスを導
入しプラズマ化する電離過程で流れが常に亜音速となる
ことに対処するもので、静電型でのイオン源と同様の役
割を持っており、それは熱アークジェットを素子として
構成できる。
【0032】多段プラズマ加速管Cでは、電流を貫流す
る薄い電極素子にも表皮効果が現われる。スタックを構
成する素子数Nが多数でN≫1の時、入口から数えてh
番目の素子に現われる電流層の特性厚さLj
【数2】 で算定できる。但し、βk は入口に入射されるビームの
初期速度ν0 及び出口からの出射速度νk で定まる定数
でβk =(ν0 /νk )(1−ν0 /νk )で定義され
ている。またLj0は従来の単純配位での電流層厚さであ
り、ηをプラズマの抵効率とすればLj0=η/〔μ
0 (νk −ν0 )〕で与えられる。従って、いま仮に電
極近傍を含めたプラズマ駆動電流路の平均的な電子温度
を1eVとすれば、水素プラズマビームを1keVで噴
出させる場合にはLj0〜1.5 mmとなり電流集中の発生が
うかがえる。式 (1)のLj は入口付近のh<N/2の場
合では負となるが、それは電流集中が素子の入口に形成
されることを意味し、またh>N/2の場合での正値が
出口に形成されることを意味している。また、中心付近
の素子を除きLj 〜Lj0となっているが、これはスタッ
ク化により個々の電極素子での電流集中の緩和はないこ
とを示している。但し、電磁加速器の全駆動電流を一定
に固定した場合、従来のものは2層の電流層で駆動電流
を支えるのに対し、本発明のスタック方式ではN個の電
流層で支えており、電流密度は大幅に低減し平均的に電
流集中が緩和され、電極は損傷を免れる。電流密度の低
減はまた駆動効率の改善を意味しており、簡単のために
全ての電流層の構造は同一と仮定すれば、N層のスタッ
クの駆動効率
【外2】 は従来構造の駆動効率
【外3】 で表わすことが可能で下記の数式が導ける。
【数3】
【0033】ビームエネルギー100 keVを引き出す重
水素ビーム源、及び化学燃料の約100 倍の比推力45,000
s(ビームエネルギー1keV)を有する軽水素ロケっ
トはそれぞれ核融合研究及びロケっト推進の分野で目標
の仕様であるが、本発明を用いての輪郭を描いてみる。
ガンからの射出エネルギーVk とスタック素子数Nとの
関係は、
【数4】 で与えられ、ji はイオンビーム等価電流密度、Lは素
子の厚さ、また<jr >は素子を貫流するプラズマ駆動
電流の許容平均値を表わしている。電磁加速器では静電
加速器のように空間電荷制限に患わされることがないた
め、ここではjiを大型の静電型ビーム装置の1000倍程
度としji =200 A/cm2 を採用する。式(1)によれば
j は薄い。従って、Lも薄いほうが望ましく、L=5
mmとした。またアーク放電のデータを参照し、<jr
=2A/mm2 を仮定する。これらの基礎データを基に、
式 (2), (3)を用いて上記目標仕様のスタック素子数、
及び駆動効率の見積りを下記に示したが、連続多段加速
式とすることで本発明の連続多段加速式同軸ガンは高効
率で出力密度の高いコンパクトな加速器に仕上がること
が結論できる。
【数5】
【0034】更に本発明では、このようなプラズマジェ
ットで得られる超音速プラズマ流9を滑らかに電磁加速
器の入口まで導くために、図1,図2に図示した絶縁壁
プラズマガイド7を設けている。超音速プラズマ流9が
多段プラズマ加速管Cの入口まで到達するには、加速領
域から外部に漏れだしているプラズマ加速磁場を横切る
必要があり、そのため運動方向と磁場方向の双方に垂直
な方向に起電力が発生することになる。いまこの起電力
が流れの外側にある構造材等の導体を通して短絡する
時、短絡電流と磁場の作用で流れの抑止力が現れ、イオ
ン源から加速管への滑らかな輸送は阻止されてしまうこ
とになる。絶縁壁プラズマガイド7はそのような短絡を
阻止し、イオン源から加速器までの滑らかなプラズマ輸
送を保証するためのものである。
【0035】本発明の超音速イオン源束の同軸ガンへの
実施例を図1に示している。図1において、同軸に配位
した陰極1より陽極2への複数の注入ガス流8,8を電
離し、絶縁壁プラズマガイド7により、前記プラズマイ
オン流が多段プラズマ加速管Cの内側を支える構造材と
短絡しないようにプラズマイオン流を絶縁して送り出
す。19は高エネルギープラズマ流で、滑らかなプラズマ
輸送ができるようにすることが必要である。このためこ
の高エネルギープラズマ流19は内部電極素子21とその外
側を取囲く外部電極素子13間で同軸ガン型電磁加速器で
ある多段プラズマ加速管Cが同軸円筒形超音速イオン源
Aに直結して形成され、超音速プラズマ流9はここで更
に電磁加速され、高エネルギープラズマ流19ができるの
である。23は同軸ガン型電磁加速式多段プラズマ加速管
Cの内部電極給電棒16とプラズマ9との間を絶縁する絶
縁壁である。この場合、絶縁壁プラズマガイド23は内部
電極素子21と外部電極素子13との間を流れる電流による
方位角方向の磁場と超音速イオン源Aからの軸方向プラ
ズマ流により起生する動径方向の起電力が、同軸ガン終
端部の内部電極給電フランジBを通して短絡されること
を防いでおり、その役割は重要である。
【0036】
【発明の効果】本発明は核融合研究で常用されている静
電加速方式のビーム加熱器に比べ、103 〜104 倍の格段
に高い出力密度のイオンビームを高効率で生成する基本
原理に関するもので、本発明の実施により収束性の良い
大電力ビームが大幅に安価で入手可能となるため、次に
列記した多数の実施効果があり、その実用性は高い。
【0037】:安価な大電力ビームを実現することに
より高温プラズマを容易に入手し得ることになり、核融
合研究を加速する。 :磁場閉じこめ型の核融合炉に供するプラズマ加熱器
が大幅に安価に製造できるので、商用炉の経済性が向上
する。 :大粒子束中性子源の建設が可能となる。 :軽イオンビームによる慣性核融合炉実現の要となっ
ているビームの収束性が向上する。 :水素を推進剤とし比推力及びエネルギー効率の高い
電磁推進器が実現され、ミッション速度の大幅な向上が
可能となる。 :安価で安定した個体への高エネルギーイオン注入器
が実現できる。
【0038】本発明は大電力高エネルギーイオンビーム
発生装置、磁場閉じこめ型核融合実験装置及び同実験
炉、超大電力パルス軽イオンビーム圧縮型慣性核融合実
験装置及び同実験炉、大粒子束中性子発生装置、高比推
力高効率電磁推進器、大電流イオン注入器の製作に当
り、安価で安定した運転が可能な収束性の良い大電力イ
オンビーム発生用連続多段加速式同軸ガンの利用を可能
とする。
【0039】本発明は単数または複数個の熱駆動型アー
クジェットにより生成される超音速プラズマ流をイオン
源とする多段連続電磁加速式同軸ガンで超音速プラズマ
流を多段プラズマ加速管の入射口へ誘導するに際し漏れ
加速磁場により誘起する抑止力を絶縁物(絶縁壁プラズ
マガイド7、絶縁壁23)等を配置して消去する特別な構
造を有すること及び超音速プラズマ流を更に多段に電磁
加速することにより、高エネルギープラズマ流を生成で
きる工業上大なる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の連続多段加速式同軸ガンの原理
説明用模式図である。
【図2】図2(A)及び図2(B)は本発明において、
使用する超音速イオン源の原理を示す縦断面図及び横断
図である。
【図3】図3(A),(B)は本発明において、使用す
る内部電極給電フランジの縦断面断面図及び横断側面図
である。
【図4】図4(A),(B)は本発明において、使用す
る多段プラズマ加速管の縦断面断面図及び横断側面図で
ある。
【符号の説明】
A 超音速イオン源 B 内部電極給電フランジ C 多段プラズマ加速管 D 主プラズマ駆動電源 1 陰極 2 陽極 3 イオン源電源 4 ガス導入弁 5 アーク拘束壁 6 アーク駆動電流 7 絶縁壁プラズマガイド 8 注入ガス流 9 超音速プラズマ流 10 パラスト抵抗 11 コンデンサ 12 サイリスタ 13 電極素子 14 絶縁板 15 外部集電板 16 内部電極給電棒 17 内部集電板 18 プラズマ膨張箱 19 高エネルギープラズマ流 20 内部配線 21 内部電極素子 22 絶縁板 23 絶縁壁

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 超音速プラズマを発生させる複数個の同
    軸円筒状通路の各端部中心に設けた陰極と、各通路の出
    口側に絶縁壁を介して設けた陽極と、前記陰極と陽極と
    の間に設けた超音速プラズマ生成用イオン源電源と、前
    記陽極より外方に延在して設けた絶縁壁プラズマガイド
    とを具備して成る超音速イオン源Aにおいて、その出口
    側に絶縁壁プラズマガイドを介して同軸に接続した内部
    電極給電フランジBと、これに引続いて同軸に接続した
    多段プラズマ加速管Cと、内部電極給電フランジに設け
    られたスロット或は集電板を介して多段プラズマ加速管
    の多段に絶縁集積した電極との間にそれぞれ接続した加
    速段数と同数で互い絶縁された独立の素子で構成される
    主プラズマ駆動電源Dとより成り、前記多段プラズマ加
    速管は同軸通路を形成する電極を輪切りにして電極間に
    絶縁板を介挿し多段に絶縁集積体とした多段電極より成
    り、各段の加速用電極に主プラズマ駆動電源Dの構成素
    子を接続し、多段加速反磁性電流層を形成し、超音速イ
    オン源で発生した超音速プラズマ流を更に多段プラズマ
    加速管の同軸通路で高エネルギーに連続して多段加速さ
    せるように構成したことを特徴とする連続多段加速式同
    軸ガン。
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プラズマ・核融合学会誌、69[6](1993年6月)P.684−699

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