JP2024528893A - 網膜神経変性を予防するための組成物及び方法 - Google Patents

網膜神経変性を予防するための組成物及び方法 Download PDF

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Abstract

本開示によれば、黄斑変性疾患を有する患者における、光受容体外節破壊、RPE脂質沈着、神経変性、血管新生、またはそれらの任意の組み合わせを予防または逆転させるための方法が提供される。本開示の方法は、患者に、治療上有効な量のApoM含有組成物を投与するステップを含む。【選択図】図5C

Description

(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年7月28日出願の米国仮特許出願第63/226,756号に基づく優先権を主張する。上記出願の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載)
本発明は、米国国立衛生研究所から交付された助成金番号EY019287の下に、米国政府の支援を受けてなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
(技術分野)
本開示は、一般に、網膜神経変性を予防するための組成物及び方法に関する。
加齢性黄斑変性(AMD)は、先進国における50歳以上の人々の失明原因の第1位である。初期のAMDは、網膜下に脂質に富むドルーゼンが蓄積することを特徴とする。AMDは、萎縮や血管新生を特徴とする進行型に進行し得る。軽度または重度の神経変性の兆候は、どの段階でも現れ得る。
本開示は、一般に、網膜神経変性を予防するための組成物及び方法に関する。
一態様では、本開示によれば、黄斑変性疾患を有する患者における黄斑変性疾患を予防または逆転させるための方法であって、患者に、治療上有効な量のApoM含有組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。いくつかの態様では、黄斑変性疾患は、加齢性黄斑変性(AMD)、若年性黄斑変性、及び糖尿病性網膜症からなる群から選択される。いくつかの態様では、治療上有効な量のApoM含有組成物は、患者における、光受容体外節破壊、RPE脂質沈着、神経変性、血管新生、またはそれらの任意の組み合わせを予防または逆転させる。
他の目的及び特徴は、以下で、一部は明らかになり、一部は示されるであろう。
以下の図面は、本開示の様々な態様を示す。
図1Aは、錐体光受容体及び桿体光受容体の構造を示す概略図である。 図1Bは、脂質及び細胞膜の代謝を示す概略図である。 図2は、高密度リポタンパク質(HDL)を含む脂質がシャペロンApoMによって細胞膜を横切ってシャトル輸送され、それにより、免疫系、心臓血管系、及び中枢神経系を調節し、臓器線維症を引き起こす可能性のある細胞遊走、生存、運命、及び遺伝子発現などのさらなる細胞効果をもたらすことを示す概略図である。 図3は、マウスApoMノックアウト(KO)実験の設計を示す概略図である。 図4Aは、ApoM Tg+マウス及びApoM KOマウスにおける暗所視a波の振幅対強度のグラフである。 図4Bは、ApoM Tg+マウス及びApoM KOマウスにおける暗所視b波の振幅対強度のグラフである。 図4Cは、ApoM Tg+マウス及びApoM KOマウスにおける明所視b波の振幅対強度のグラフである。 図5Aは、ApoM KOマウスの網膜色素上皮の透過型電子顕微鏡像である。 図5Bは、ApoM Tg+マウスの網膜色素上皮の透過型電子顕微鏡像である。 図5Cは、図5A及び図5Bの画像の網膜色素上皮に見られる脂質滴の数を定量化したグラフである。 図6Aは、ApoM KOマウスの光受容体の透過型電子顕微鏡画像である。 図6Bは、ApoM Tg+マウスの光受容体の透過型電子顕微鏡画像である。 図7Aは、ApoM KOマウスの光受容体の別の透過型電子顕微鏡画像である。 図7Bは、ApoM Tg+マウスの光受容体の別の透過型電子顕微鏡画像である。 図8は、外網状層、光受容体、色素上皮、ブランチ膜、脈絡膜を含む眼の構造を示す概略図である。 図9は、遺伝子組換えS1P1R-RPE-RPEノックアウトマウスの作製と、その後の実験及び分析におけるそれらの使用を示す概略図である。 図10は、一連の実験における生殖細胞系ApoMノックアウトマウスの使用を示す概略図である。 図11Aは、ApoM対照及びApoM変異マウスにおける暗所視a波の振幅対強度のグラフである。 図11Bは、ApoM対照及びApoM変異マウスにおける暗所視b波の振幅対強度のグラフである。 図11Cは、ApoM対照及びApoM変異マウスにおける明所視b波の振幅対強度のグラフである。 図12Aは、ApoM変異マウスの網膜色素上皮の透過型電子顕微鏡像である。 図12Bは、ApoM対照マウスの網膜色素上皮の透過型電子顕微鏡像である。 図13は、対照の網膜色素上皮、ApoM KO、及びApoM変異マウスの透過型電子顕微鏡画像中に見られる脂質滴の数を定量化したグラフである。 図14(A)は、野生型マウスの脈絡膜血管新生の蛍光コントラスト画像である。図14(B)は、ApoMヘテロ接合マウスの脈絡膜血管新生の蛍光コントラスト画像である。図14(C)は、ApoM KOマウスの脈絡膜血管新生の蛍光コントラスト画像である。 図15は、野生型マウス、ApoM KOマウス、及びApoMヘテロ接合マウスの蛍光コントラスト画像中に見られる脈絡膜血管新生病変のサイズを定量化したグラフである。 図16は、AMDに罹患していない対照患者及びAMD患者におけるApoM/コレステロール濃度比を定量化したグラフである。
当業者であれば、以下に説明する図面は説明のみを目的としていることを理解するであろう。以下に説明する図面は、本教示の範囲をいかなる形でも限定することを意図していない。
本開示は、アポリポタンパク質M(ApoM)に富む血漿の外因性投与により、初期加齢性黄斑変性(AMD)の動物モデルにおける脂質沈着及び神経変性の両方を低減させることできるという知見に基づくものである。この効果はApoM特異的であり、ApoM欠乏血漿ではこの効果は得られない。解剖学的に、ApoMの外因性投与は、光受容体外節破壊及びRPE脂質沈着を防ぐことが電子顕微鏡検査により分かり、また、神経変性を逆転させることが視覚電気生理学的測定により分かった。
外因性ApoMは、従来、眼球の血管新生を阻害することが見出されていたが、脂質沈着または神経変性の逆転は実証されていなかった。本明細書の実施例に記載されるように、本開示の組成物及び方法は、初期段階のAMDの治療、及び、確立された治療法が存在しない網膜神経変性に関連する他の疾患に対する治療を提供する。
様々な態様では、これに限定しないが、加齢性黄斑変性(AMD)、若年性黄斑変性、及び糖尿病性網膜症を含む様々な疾患に関連する光受容体外節破壊、RPE脂質沈着、及び/または神経変性を予防または逆転させるための組成物及び治療方法が開示される。様々な態様では、本開示の組成物は、外因性投与されるアポリポタンパク質M(ApoM)を含む。いくつかの態様では、本開示の組成物は、外因性投与されるアポリポタンパク質M(ApoM)に富む血漿を含む。
本明細書の実施例に記載されるように、アポリポタンパク質M(ApoM)に富む血漿の外因性投与は、初期加齢性黄斑変性(AMD)の動物モデルにおいて、脂質沈着及び神経変性の両方を低減させることができる。この効果はApoM特異的であり、ApoM欠乏血漿ではこの効果は得られない。解剖学的に、ApoMの外因性投与は、光受容体外節破壊及びRPE脂質沈着を防ぐことが電子顕微鏡検査により分かり、また、神経変性を逆転させることが視覚電気生理学的測定により分かった。
本明細書の実施例に記載されるように、外因性ApoMは、黄斑変性(若年性及び加齢性)などの疾患に見られる網膜神経変性を予防し、視力低下を防ぐことができる。糖尿病の初期疾患は神経変性によって特徴付けられるが、これも、本開示の組成物及び方法を用いて予防することができる。
特定の理論に拘束されるものではないが、光受容体のユニークな構造及び機能は、その層状プロファイルの継続的な維持を必要とする。例えば、光受容体は、適切な機能を維持するために、脂質に富む外節の一部を概日的に排出する必要がある。そのためには、脂質及び細胞膜の代謝を厳格にコントロールする必要がある。この代謝が阻害されると、光受容体に悪影響がもたらされる。ABCA1/ABCG1ノックアウトマウスが初期の加齢性黄斑変性(AMD)に類似した表現型を示すことから明らかなように、一対のコレステロール排出輸送体であるABCA1及びABCG1は、光受容体の適切な機能の維持に役立つことが証明されている。AMDの患者は、健常対照群と比較して血漿中のApoM濃度が低いことが観察された(図16)。
様々な態様では、外因性ApoMによるABCA1/ABCG1ノックアウトモデルの治療は、網膜神経変性に対して治療効果を示した。特定の理論に拘束されるものではないが、ApoMは、S1Pの中心的なシャペロンであり、HDLのシャトリングに加えてS1PRの活性化を可能にする。S1PRは、重要な細胞生存経路を制御する多くの経路の上流にある。S1PRは現在までに5つの異なるアイソフォームが特定されており、異なるアイソフォームは異なる組織において異なる発現を示し、異なる機能を有することが知られている。ApoMによってシャペロンされたS1Pは、1~5の番号が付けられた5つの異なるS1P受容体と相互作用する。
光受容体外節に隣接する、網膜色素上皮(RPE)と呼ばれるユニークな上皮層は、光受容体のデブリや脈絡膜に存在する体循環からの栄養や老廃物の交換を担っている。RPEは、体循環と密接な接触を保ち、光受容体の代謝に極めて重要であることから、S1P受容体は、RPE及び光受容体の機能維持に不可欠な役割を果たしていると考えられている。
分子工学
以下の定義及び方法は、本開示をより良く定義し、本開示の実施において当業者を導くために提供される。特に断りのない限り、用語は、関連分野の当業者による従来の使用法にしたがって理解されるべきである。
本明細書で使用するとき、「異種DNA配列」、「外因性DNA断片」、または「異種核酸」という用語は、それぞれ、特定の宿主細胞とは異なるソースに由来する配列、または、特定の宿主細胞と同じソースに由来する場合には、その元の形態から改変された配列を指す。したがって、宿主細胞の異種遺伝子は、特定の宿主細胞にとって内因性であるが、例えば、DNAシャッフルやクローニングを用いて改変された遺伝子を含む。また、これらの用語は、天然に存在するDNA配列の天然に存在しない複数のコピーも含む。したがって、これらの用語は、細胞にとって異質または異種であるか、あるいは、細胞にとって相同であるが、宿主細胞の核酸内の通常見られない位置にあるDNA断片を指す。外因性DNA断片は、外因性ポリペプチドを産生するために発現される。「相同」なDNA配列とは、それが導入される宿主細胞と自然に結合するDNA配列である。
発現ベクター、発現構築物、プラスミド、または組換えDNA構築物は、例えば宿主細胞における特定の核酸の転写または翻訳を可能にする一連の特定の核酸エレメントを用いた、組換え手段または直接化学合成を含む人為的介入によって生成された核酸を指すと一般的に理解される。発現ベクターは、プラスミド、ウイルス、または核酸断片の一部であり得る。一般的に、発現ベクターは、プロモータに作動可能に連結された、転写される核酸を含み得る。
「プロモータ」は、一般的に、核酸の転写を指示する核酸制御配列として理解される。誘導性プロモータは、一般的に、特定の刺激に応答して作動可能に連結された遺伝子の転写を媒介するプロモータとして理解される。プロモータは、ポリメラーゼII型プロモータの場合、TATAエレメントなどの転写開始部位の近くに必要な核酸配列を含むことができる。プロモータは、任意選択で、遠位エンハンサーまたはリプレッサーエレメントを含むことができ、これらは転写開始部位から数千塩基対離れたところに位置することができる。
本明細書で使用するとき、「転写可能な核酸分子」とは、RNA分子に転写可能な核酸分子を指す。転写可能核酸分子が機能的mRNA分子に転写されるように(すなわち、翻訳されてタンパク質産物として発現される)、構築物を細胞に導入する方法が知られている。また、構築物は、目的の特定のRNA分子の翻訳を阻害するために、アンチセンスRNA分子を発現できるように構築してもよい。本開示を実施するために、構築物及び宿主細胞を作製及び使用するための従来の組成物及び方法は、当業者によく知られている(Sambrook and Russel (2006) Condensed Protocols from Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN-10: 0879697717; Ausubel et al. (2002) Short Protocols in Molecular Biology, 5th ed., Current Protocols, ISBN-10: 0471250929; Sambrook and Russel (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN-10: 0879695773; Elhai, J. and Wolk, C. P. 1988. Methods in Enzymology 167, 747-754を参照)。
「転写開始部位」または「開始部位」とは、転写配列の一部である最初のヌクレオチドを囲む位置のことであり、位置+1とも定義される。この部位を基準として、遺伝子の他のすべての配列とその制御領域に番号を付けることができる。下流配列(すなわち、3´方向のさらなるタンパク質コード配列)を正とし、上流配列(5´方向の制御領域の大部分)を負とすることができる。
「作動可能に連結された」または「機能的に連結された」とは、好ましくは、一方の機能が他方の機能の影響を受けるように、単一の核酸断片上の核酸配列が結合していることを指す。例えば、調節DNA配列がコードDNA配列の発現に影響を及ぼすように配置されている場合(すなわち、コード配列または機能性RNAがプロモータの転写制御下にある場合)、調節DNA配列は、RNAまたはポリペプチドをコードするDNA配列に「作動可能に連結されている」または「結合している」と言われる。コード配列は、センスまたはアンチセンスの方向で調節配列に作動可能に連結され得る。2つの核酸分子は、単一の隣接する核酸分子の一部であってもよいし、隣接していてもよい。例えば、プロモータが細胞内で目的の遺伝子の転写を調節または媒介する場合、プロモータは目的の遺伝子に作動可能に連結される。
「構築物」とは、一般的に、プラスミド、コスミド、ウイルス、自律的に複製する核酸分子、ファージ、または、直鎖状もしくは環状の一本鎖もしくは二本鎖DNAもしくはRNA核酸分子などの組換え核酸分子であって、任意の供給源に由来し、ゲノム統合または自律的な複製が可能であり、かつ、1以上の核酸分子が作動可能に連結された核酸分子からなるものと理解される。
本開示の構築物は、3´転写終結核酸分子に作動可能に連結された転写可能核酸分子に作動可能に連結されたプロモータを含むことができる。加えて、構築物は、これに限定しないが、例えば、3´非翻訳領域(3´UTR)からの追加の調節核酸分子を含むことができる。また、構築物は、これに限定しないが、翻訳開始において重要な役割を果たし、かつ発現構築物における遺伝的構成要素である、mRNA核酸分子の5´非翻訳領域(5´UTR)を含むことができる。これらの追加的な上流及び下流の調節核酸分子は、プロモータ構築物上に存在する他の要素に対して天然または異種の供給源に由来し得る。
「形質転換」という用語は、核酸断片を宿主細胞のゲノムに導入し、遺伝的に安定な遺伝をもたらすことを指す。形質転換された核酸断片を含む宿主細胞を「トランスジェニック」細胞といい、トランスジェニック細胞を含む生物を「トランスジェニック生物」という。
「形質転換」、「トランスジェニック」、及び「組換え」とは、異種核酸分子が導入された細菌、シアノバクテリア、動物、または植物などの宿主細胞または生物を指す。核酸分子は、当技術分野で一般的に知られており、ゲノムに安定して組み込むことができる(例えば、「Sambrook 1989; Innis 1995; Gelfand 1995; Innis & Gelfand 1999」を参照)。PCRの既知の方法としては、これに限定しないが、ペアプライマー、ネストプライマー、単一特異的プライマー、縮退プライマー、遺伝子特異的プライマー、ベクター特異的プライマー、部分的ミスマッチプライマーなどを用いる方法が挙げられる。「未形質転換」という用語は、形質転換プロセスを経ていない正常細胞を指す。
「野生型」とは、自然界に存在するウイルスまたは生物で、既知の変異がないものを指す。
上記の要求されるパーセント同一性を有し、発現したタンパク質の要求される活性を保持する変異ヌクレオチド及びそれらのコードされたポリペプチドの設計、生成、及び試験は、当業者の技術範囲内である。例えば、変異体の定向進化及び迅速単離は、これに限定しないが、「Link et al. (2007) Nature Reviews 5(9), 680-688; Sanger et al. (1991) Gene 97(1), 119-123; Ghadessy et al. (2001) Proc Natl Acad Sci USA 98(8) 4552-4557」などの文献に記載される方法に従うことができる。したがって、当業者は、例えば、本明細書に記載された参照配列に対して少なくとも95~99%の同一性を有する多数のヌクレオチド及び/またはポリペプチド変異体を作製し、当技術分野で一般的な方法に従って所望の表現型をスクリーニングすることができる。
ヌクレオチド及び/またはアミノ酸配列の同一性パーセント(%)とは、2つの配列を整列させたときに、参照配列と比較して、候補配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸残基と同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸残基の割合として理解される。同一性パーセントを決定するために、配列を整列させ、必要であればギャップを導入して配列同一性パーセントを最大にする。同一性パーセントを決定するための配列整列手順は、当業者によく知られている。多くの場合、BLAST、BLAST2、ALIGN2、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの一般的に入手可能なコンピュータソフトウェアが、配列の整列に使用される。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、整列を測定するための適切なパラメータを決定することができる。配列が整列されたとき、或る配列Aの或る配列Bに対する配列同一性パーセント(これは、或る配列Bに対して配列同一性パーセントを有すると言い換えることもできる)は、次のようにして計算することができる:配列同一性パーセント=X/Y100、ここで、Xは、配列整列プログラムまたはアルゴリズムによるAとBの整列によって完全な一致としてスコアされた残基の数であり、Yは、B中の残基の総数である。配列Aの長さが配列Bの長さと等しくない場合、A対Bの配列同一性パーセントは、B対Aの配列同一性パーセントと等しくならない。
一般的に、必要な活性が保持されている限り、保存的置換は任意の位置で行うことができる。置換されたアミノ酸が元のアミノ酸と同様の性質を有する、いわゆる保存的交換、例えば、GluのAspによる置換、GlnのAsnによる置換、ValのIleによる置換、LeuのIleによる置換、SerのThrによる置換を行うことができる。例えば、類似の性質を有するアミノ酸としては、脂肪族アミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン)、水酸基または硫黄/セレニウム含有アミノ酸(例えば、セリン、システイン、セレノシステイン、スレオニン、メチオニン)、環状アミノ酸(例えば、プロリン)、芳香族アミノ酸(例えば、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)、塩基性アミノ酸(例えば、ヒスチジン、リジン、アルギニン)、及び、酸性アミノ酸またはそのアミド(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン)が挙げられる。欠失とは、アミノ酸が直接結合によって置換されることである。欠失の位置には、ポリペプチドの末端や個々のタンパク質ドメイン間の結合が含まれる。挿入は、アミノ酸のポリペプチド鎖への導入であり、直接結合は形式的には1以上のアミノ酸に置換される。アミノ酸配列は、例えば活性が改善されたまたは調節が変更されたポリペプチドを生成することができる、当技術分野で知られているコンピューターシミュレーションプログラムの助けを借りて調節することができる。これらの人工的に生成されたポリペプチド配列に基づいて、そのような調節されたポリペプチドをコードする対応する核酸分子を、所望の宿主細胞の特異的コドン使用法を用いてインビトロで合成することができる。
「高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、6XSSC緩衝液(すなわち、0.9Mの塩化ナトリウムと0.09Mのクエン酸ナトリウム)中での、65°Cでのハイブリダイゼーションと定義される。これらの条件が与えられた場合、2つの配列間のDNA二重鎖の融解温度(Tm)を計算することによって、所与の配列のセットがハイブリダイズするかどうかを決定することができる。特定の二本鎖の融解温度が6XSSCの塩条件下で65°Cより低い場合、2つの配列はハイブリダイズしない。一方、同じ塩条件下で融解温度が65°C以上であれば、2つの配列はハイブリダイズする。一般的に、ハイブリダイズしたDNA:DNA配列の融解温度は、次の式を用いて決定することができる:T=81.5°C+16.6(log10[Na])+0.41(画分G/C含量)-0.63(%ホルムアミド)-(600/l)。さらに、DNA:DNAハイブリッドのTは、ヌクレオチド同一性が1%減少するごとに1~1.5°C減少する(例えば、「Sambrook and Russel, 2006」を参照)。
宿主細胞は、当技術分野で公知の様々な標準的技術を用いて形質転換することができる(例えば、「Sambrook and Russel (2006) Condensed Protocols from Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN-10: 0879697717; Ausubel et al. (2002) Short Protocols in Molecular Biology, 5th ed., Current Protocols, ISBN-10: 0471250929; Sambrook and Russel (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN-10: 0879695773; Elhai, J. and Wolk, C. P. 1988. Methods in Enzymology 167, 747-754」を参照)。このような技術としては、これに限定しないが、ウイルス感染、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、マイクロプロジェクタイル媒介送達、受容体媒介取り込み、細胞融合、エレクトロポレーションなどが挙げられる。トランスフェクトされた細胞は、宿主細胞ゲノムに安定に組み込まれた発現ベクターを含む組換え宿主細胞を提供するために選択し、増殖させることができる。
Figure 2024528893000002
Figure 2024528893000003
Figure 2024528893000004
宿主細胞に導入され得る例示的な核酸には、例えば、他の種由来のDNA配列または遺伝子、あるいは、同じ種に由来するか、または同じ種に存在するが、遺伝子工学的方法によってレシピエント細胞に組み込まれる遺伝子または配列が含まれる。また、「外因性」という用語は、形質転換される細胞内に通常は存在しない遺伝子、あるいは、形質転換DNA断片または遺伝子に見られるような形態、構造などでおそらくは単に存在しないか、または通常は存在するが、天然の発現パターンとは異なる態様で発現させたい、例えば過剰発現させたい遺伝子を指すことを意図している。したがって、「外因性」遺伝子またはDNAという用語は、レシピエント細胞に導入される遺伝子またはDNA断片を指すことを意図している。外因性DNAに含まれるDNAの種類としては、細胞内に既に存在するDNA、同じ種類の生物の別の個体からのDNA、異なる生物からのDNA、または遺伝子のアンチセンスメッセージを含むDNA配列、及び、遺伝子の合成または改変バージョンをコードするDNA配列などの、外部から生成されたDNAを挙げることができる。
本明細書に記載されたアプローチに従って開発された宿主株は、当技術分野で既知の様々な手段によって評価することができる(例えば、「Studier (2005) Protein Expr Purif. 41(1), 207-234; Gellissen, ed. (2005) Production of Recombinant Proteins: Novel Microbial and Eukaryotic Expression Systems, Wiley-VCH, ISBN-10: 3527310363; Baneyx (2004) Protein Expression Technologies, Taylor & Francis, ISBN-10: 0954523253」を参照)。
遺伝子をダウンレギュレーションまたはサイレンシングする方法は、当技術分野で既知である。例えば、発現したタンパク質活性は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、タンパク質アプタマー、ヌクレオチドアプタマー、及びRNA干渉(RNAi)を用いて下方制御または除去することができる(例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA (miRNA))(例えば、「Rinaldi and Wood (2017) Nature Reviews Neurology 14, describing ASO therapies; Fanning and Symonds (2006) Handb Exp Pharmacol. 173, 289-303G, describing hammerhead ribozymes and small hairpin RNA; Helene, et al. (1992) Ann. N.Y. Acad. Sci. 660, 27-36; Maher (1992) Bioassays 14(12): 807-15, describing targeting deoxyribonucleotide sequences; Lee et al. (2006) Curr Opin Chem Biol. 10, 1-8, describing aptamers; Reynolds et al. (2004) Nature Biotechnology 22(3), 326 - 330, describing RNAi; Pushparaj and Melendez (2006) Clinical and Experimental Pharmacology and Physiology 33(5-6), 504-510, describing RNAi; Dillon et al. (2005) Annual Review of Physiology 67, 147-173, describing RNAi; Dykxhoorn and Lieberman (2005) Annual Review of Medicine 56, 401-423, describing RNAi」を参照)。RNAi分子は、様々な供給源から市販されている(例えば、「Ambion, TX; Sigma Aldrich, MO; Invitrogen」)。様々なアルゴリズムを用いたいくつかのsiRNA分子設計プログラムが当技術分野で知られている(例えば、「Cenix algorithm, Ambion; BLOCK-iT(tm) RNAi Designer, Invitrogen; siRNA Whitehead Institute Design Tools, Bioinofrmatics & Research Computing」を参照)。最適なsiRNA配列の定義に影響する特性としては、siRNAの末端におけるG/C含量、siRNAの特定の内部ドメインのTm、siRNAの長さ、CDS(コード領域)内の標的配列の位置、及び、3´オーバーハングのヌクレオチド含量が挙げられる。
ゲノム編集
本明細書に記載されるように、miR-29シグナルは、ゲノム編集を用いて調節する(例えば、増強する)ことができる。ゲノム編集の方法はよく知られている(例えば、「Aldi 2018 Nature Communications 9(1911)」を参照)。したがって、本明細書において別段の記載がある場合を除き、本開示の方法は、そのような方法に従って実施することができる。
例えば、ゲノム編集は、CRISPR/Cas9、CRISPR-Cpf1、TALEN、またはZNFを含むことができる。miRNA-29産生を増強するゲノム編集によるECM関連遺伝子発現の適切な遮断は、膀胱線維症からの保護をもたらすことができる。
一例として、CRISPR/CRISPR関連(Cas)システムは、哺乳類細胞における所望のゲノム部位を標的とする新しいクラスのゲノム編集ツールである。最近発表されたII型CRISPR/Casシステムは、Cas9ヌクレアーゼを使用して、20ヌクレオチドのDNA配列にハイブリダイズし、Cas9が認識するNGGモチーフ(したがって、(N)20NGG標的DNA配列)の直前の合成ガイドRNAと複合体化することにより、ゲノム部位を標的とする。その結果、NGGモチーフの3ヌクレオチド上流で二本鎖切断が生じる。二本鎖切断は、非相同末端結合または相同性指向性修復を誘発する。非相同末端結合は、エラーが起こりやすく、遺伝子の対立遺伝子をノックアウトするフレームシフト変異を誘発する。相同指向性修復は、外部から導入された二本鎖または一本鎖DNA修復テンプレートを用いて、ゲノムの変異をノックインまたは修正することができる。したがって、例えばCRISPR/Casシステムを使用したゲノム編集は、miR-29シグナルの増強によって標的細胞のECM形成を低減する治療用途に有用なツールとなり得る。
例えば、本開示の方法は、細胞内の標的ポリヌクレオチド配列を変更する方法であって、ポリヌクレオチド配列をCasタンパク質に接触させるステップを含む、方法を含む。
製剤
本開示の薬剤及び組成物は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる「Remington's Pharmaceutical Sciences (A.R. Gennaro, Ed.), 21st edition, ISBN: 0781746736 (2005)」に記載されているように、1以上の薬学的に許容される担体または賦形剤を用いて、任意の従来の方法により製剤することができる。そのような製剤は、対象(患者)への適切な投与のための形態を提供するために、適切な量の担体と共に、精製された形態であり得る本開示の生物学的活性剤を治療上有効な量で含む。
「製剤」という用語は、薬物を、ヒトなどの対象への投与に適した形態で調製することを指す。したがって、「製剤」は、希釈剤または担体を含む薬学的に許容される賦形剤を含むことができる。
本明細書で使用するとき、「薬学的に許容される」という用語は、薬理学的活性の許容できない損失または許容できない副作用を引き起こさない物質または成分のことである。薬学的に許容される成分の例としては、米国薬局方(USP29)及び国民医薬品集(NF24)、米国薬局方条約(United States Pharmacopeial Convention, Inc, Rockville, Maryland, 200)(「USP/NF」)、またはより最近の版にモノグラフが記載されているもの、及び、FDAの継続的に更新されている非活性成分検索オンラインデータベースに記載されている成分が挙げられる。なお、USP/NF等に記載されていない他の有用な成分を使用してもよい。
本明細書で使用するとき、「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、ありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、または吸収遅延剤を含むことができる。薬学的に活性な物質に対するこのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野において既知である(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences (A.R. Gennaro, Ed.), 21st edition, ISBN: 0781746736 (2005)」を参照。)。従来の媒体または薬剤が活性成分と不適合である場合を除き、治療用組成物におけるその使用が考えられる。また、補助的な活性成分も、組成物に組むことができる。
「安定的な」製剤または組成物は、商業的に適正な期間、例えば、少なくとも約1日、少なくとも約1週間、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約1年、または少なくとも約2年の期間にわたって、例えば約0°C~約60°Cなどの適切な温度での貯蔵を可能にするのに十分な安定性を有する組成物を指す。
製剤は、投与形態に適合すべきである。本開示で使用する薬剤は、これに限定しないが、非経口、肺、経口、局所、皮内、腫瘍内、鼻腔内、吸入(例えば、エアロゾル)、植込み、筋肉内、腹腔内、静脈内、髄腔内、頭蓋内、脳室内、皮下、鼻腔内、硬膜外、眼内、経皮、頬、及び直腸などの様々な経路を用いて対象(患者)に投与するための既知の方法に従って製剤化することができる。また、個々の薬剤は、1以上の追加の薬剤と組み合わせて、あるいは、他の生物学的に活性な薬剤または生物学的に不活性な薬剤と共に投与することができる。このような生物学的に活性または不活性な薬剤は、薬剤と流体的または機械的に連通させてもよいし、あるいは、イオン性、共有結合性、ファンデルワールス結合、疎水性、親水性、または他の物理的な力によって薬剤に結合させてもよい。
制御放出型(または徐放型)製剤は、薬剤の活性を延長し、投与回数を減らすために製剤化することができる。また、制御放出型製剤は、作用の開始時間または薬剤の血中濃度などの他の特性に影響を与え、その結果、副作用の発生に影響を与えるために使用することができる。放出制御型製剤は、最初に所望の治療効果をもたらす量の薬剤を放出し、その後、他の量の薬剤を徐々にまたは継続的に放出し、それにより、長期間にわたって治療効果のレベルを維持するように設計することができる。体内の薬物の濃度をほぼ一定に維持するために、薬物は、体内で代謝または排泄される薬物の量に取って代わる量で製剤から放出される。薬剤の制御放出は、様々な誘導因子、例えば、pH変化、温度変化、酵素、水、または他の生理学的条件もしくは分子などによって刺激され得る。
また、本開示の薬剤または組成物は、以下にさらに記載されるように、他の治療法と組み合わせて使用することもできる。したがって、本明細書に記載された治療法に加えて、疾患、障害、または状態の治療に有効であることが知られている他の治療法を対象(患者)に提供することもできる。
治療方法
また、本開示によれば、治療上有効な量のApoMまたはApoM含有血漿の投与を必要とする患者における膀胱線維症を治療、予防、または逆転させて、患者の網膜における光受容体外節破壊、RPE脂質沈着、及び/または神経変性を予防、低減、または逆転させる方法が提供される。
本開示の治療方法は、一般的に、それを必要とする患者に対して実施される。本開示の治療方法を必要とする患者は、膀胱線維症を有する患者、膀胱線維症と診断された患者、膀胱線維症を有する疑いのある患者、または、膀胱線維症を発症する危険性のある患者であり得る。治療の必要性の決定は、一般的に、問題となっている疾患または状態に一致する病歴、身体診察、または診断検査によって評価される。本開示の方法によって治療可能な様々な状態の診断は、当業者の技術の範囲内である。対象は、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、マウス、ラット、サル、ハムスター、モルモット、ヒト、ニワトリなどの哺乳動物を含む動物対象であり得る。例えば、対象は、ヒト対象であり得る。
一般的に、安全かつ有効な量のApoMまたはApoM含有血漿とは、例えば、望ましくない副作用を最小限に抑えつつ、対象に所望の治療効果をもたらす量である。様々な実施形態では、本開示のApoMまたはApoM含有血漿の有効量は、光受容体外節破壊、RPE脂質沈着及び/または神経変性を実質的に阻害する、光受容体外節破壊、RPE脂質沈着及び/または神経変性の進行を実質的に遅らせる、または、光受容体外節破壊、RPE脂質沈着及び/または神経変性の発症を実質的に制限することができる。
本開示の方法によれば、投与は、非経口投与、肺投与、経口投与、局所投与、皮内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、腫瘍内投与、髄腔内投与、頭蓋内投与、脳室内投与、皮下投与、鼻腔内投与、硬膜外投与、眼内投与、口腔投与、または直腸投与であり得る。
本開示の治療に使用する場合、治療上有効な量のApoMまたはApoM含有血漿は、純粋な形態で、または、そのような形態が存在する場合には、薬学的に許容される塩形態で、薬学的に許容される賦形剤の有無にかかわらず使用することができる。例えば、本開示の化合物は、任意の医療に適用可能な妥当な利益/リスク比で、膀胱線維症を予防、軽減、または逆転させるのに十分な量を投与することができる。
単一の剤形(製剤)を製造するために薬学的に許容される担体と組み合わせることができる本開示の組成物の量は、治療される対象または宿主及び特定の投与方法に応じて変更される。必要な治療上有効な量は、多数の個々の用量の投与によって到達することができるので、各剤形の個々の用量に含まれる薬剤の単位含量は、それ自体が治療上有効な量を構成する必要はないことを当業者には理解されるであろう。
本開示の組成物の毒性及び治療効果は、LD50(集団の50%に致死的な用量)及びED50(集団の50%に治療的上有効な用量)を測定するための細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果と用量比は、LD50/ED50の比として表すことができる治療指数であり、より大きな治療指数が最適であることが当技術分野では一般的に理解されている。
任意の特定の対象に対する特定の治療上有効な用量レベルは、様々な因子、例えば、治療される疾患及びその重症度;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物;対象の年齢、体重、相対的な健康状態、性別及び食事;投与時期;投与経路;使用した組成物の排泄率;治療期間;使用される特定の化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物;医学分野でよく知られている同様の因子などに依存する(例えば、「Koda-Kimble et al. (2004) Applied Therapeutics: The Clinical Use of Drugs, Lippincott Williams & Wilkins, ISBN 0781748453; Winter (2003) Basic Clinical Pharmacokinetics, 4th ed., Lippincott Williams & Wilkins, ISBN 0781741475; Sharqel (2004) Applied Biopharmaceutics & Pharmacokinetics, McGraw-Hill/Appleton & Lange, ISBN 0071375503」を参照)。例えば、組成物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルから開始し、所望の効果が達成されるまで組成物の用量を徐々に増加させることは、当業者の技術の範囲内である。必要に応じて、1日の有効量を複数回に分けて投与してもよい。したがって、単回投与組成物は、1日用量を構成するために、そのような量またはその約数を含み得る。しかしながら、本開示の化合物及び組成物の1日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されるであろう。
繰り返しになるが、本明細書に記載された状態、疾患、障害、及び病態のそれぞれ、並びに他のものは、本開示の組成物及び方法から利益を得ることができる。一般的に、状態、疾患、障害または病態を治療することは、その状態、疾患、障害または病態に罹患しているか、あるいは、罹患する可能性があるが、その臨床症状または不顕性症状をまだ経験していないか、または示していない哺乳動物における臨床症状の出現を予防、逆転、または遅らせることを含む。また、治療は、状態、疾患、障害または病態を阻害すること、例えば、疾患またはその少なくとも1つの臨床的症状または不顕性症状の発生を阻止または軽減することを含み得る。さらに、治療は、疾患を緩和すること、例えば、状態、疾患、障害または病態、あるいは、その臨床的症状または不顕性症状の少なくとも1つの退縮を引き起こすことを含み得る。治療対象に対する利益は、統計的に有意であるか、あるいは、少なくとも対象または医師に分かるものである。
ApoMまたはApoM含有血漿の投与は、単回で行うこともできるし、治療期間にわたって行うこともできる。例えば、ApoMまたはApoM含有血漿は、毎日、毎週、隔週、または毎月投与することができる。急性疾患の治療の場合、治療期間は、通常少なくとも数日である。特定の病態では、治療期間は、数日から数週間に及ぶこともある。例えば、治療期間は、1週間、2週間、または3週間に及ぶことがある。より慢性的な病態では、治療期間は、数週間から数ヵ月、場合によっては1年以上に及ぶこともある。
本開示の方法に従った治療は、膀胱線維症の予防、軽減、または逆転のための従来の治療法の前、同時、または後に実施することができる。
ApoMまたはApoM含有血漿は、抗生物質、抗炎症剤、または他の薬剤などの他の薬剤と同時にまたは連続して投与することができる。例えば、ApoMまたはApoM含有血漿は、抗生物質や抗炎症剤などの他の薬剤と同時に投与することができる。同時投与は、それぞれが1以上のApoMまたはApoM含有血漿、抗生物質、抗炎症剤、または他の薬剤を含有する別々の組成物の投与によって行うことができる。あるいは、同時投与は、2以上のApoMまたはApoM含有血漿、抗生物質、抗炎症剤、または他の薬剤を含有する単一の組成物の投与によって行うことができる。ApoMまたはApoM含有血漿は、抗生物質、抗炎症剤、または他の薬剤と共に連続的に投与することができる。例えば、ApoMまたはApoM含有血漿は、抗生物質、抗炎症剤、または他の薬剤の投与の前または後に投与することができる。
投与
本開示の薬剤及び組成物は、本開示の方法に従って、当技術分野で既知の様々な手段で投与することができる。薬剤及び組成物は、外因性薬剤または内因性薬剤のいずれかとして治療に使用することができる。外因性薬剤とは、体外で生産または製造され、体内に投与される薬剤である。内因性薬剤とは、体内または体内の他の臓器への送達のために、何らかの種類の装置(生物学的またはその他)によって体内で生または製造される薬剤である。
上述したように、投与は、非経口投与、肺投与、経口投与、局所投与、皮内投与、腫瘍内投与、鼻腔内投与、吸入(例えば、エアロゾルで)、植込み、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、髄腔内投与、頭蓋内投与、脳室内投与、皮下投与、鼻腔内投与、硬膜外投与、髄腔内投与、眼内投与、経皮投与、口腔投与、及び直腸投与であり得る。
本開示の薬剤及び組成物は、当技術分野でよく知られている様々な方法で投与することができる。投与方法としては、例えば、経口摂取、直接注射(例えば、全身注射または定位注射)、目的の因子を分泌するように操作された細胞の植込み、薬物放出性生体材料、ポリマーマトリクス、ゲル、透過性膜、浸透性システム、多層コーティング、微粒子、植込み可能なマトリックスデバイス、ミニ浸透性ポンプ、植込み可能なポンプ、注射可能なゲルまたはヒドロゲル、リポソーム、ミセル(例えば、30μm以下)、ナノスフェア(例えば、1μm未満)、マイクロスフェア(例えば、1~100μm)、リザーバデバイス、上記のいずれかの組み合わせ、または、様々な割合で所望の放出プロフィールを提供する他の適切な送達媒体が挙げられる。
リポタンパク質担体またはより大きなリポタンパク質粒子も使用することができる。
いくつかの実施態様では、ApoMは、免疫グロブリン(例えば、ApoM-Fc)に融合され得る。
薬剤または組成物の放出制御送達の他の方法は、当業者に既知であり、本開示の範囲内である。
送達システムは、例えば、インスリンまたは化学療法を特定の臓器または腫瘍に送達するために使用されるのと同様の方法で薬剤または組成物を投与するために使用できる注入ポンプを含み得る。一般的に、このようなシステムを使用して、薬剤または組成物を、選択された部位で制御された期間にわたって薬剤を放出する生分解性かつ生体適合性の高分子インプラントと組み合わせて投与することができる。高分子材料の例としては、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリエチレンビニルアセテート、それらのコポリマー、及び、それらの組み合わせが挙げられる。加えて、制御放出システムは、治療標的の近くに配置することができるため、全身投与量のほんの一部しか必要としない。
薬剤は、様々な担体送達系に封入して投与することができる。担体送達系の例としては、ミクロスフェア、ヒドロゲル、ポリマーインプラント、スマートポリマー担体、リポソームなどが挙げられる(例えば、「Uchegbu and Schatzlein, eds. (2006) Polymers in Drug Delivery, CRC, ISBN-10: 0849325331」を参照)。分子または生体分子薬剤送達のための担体ベースのシステムは、以下のことが可能である:細胞内送達を提供すること;生体分子/薬剤放出率を調整すること;作用部位に到達する生体分子の割合を増加させること;薬物の作用部位への輸送を改善すること;他の薬剤または賦形剤との共局在沈着を可能にすること;インビボでの薬剤の安定性を改善すること;クリアランスを減少させることにより作用部位における薬剤の滞留時間を延長すること;非標的組織への薬剤の非特異的送達を減少させること;薬剤による刺激を減少させること;薬剤の初期高用量による毒性を低下させること;薬剤の免疫原性を変化させること;投与回数を減らすこと;製品の味を改善すること;製品の保存期間を改善すること。
スクリーニング
本開示によれば、スクリーニングの方法も提供される。
主題の方法は、様々な異なる候補分子(例えば、潜在的に治療候補分子)のスクリーニングに利用される。本開示の方法に従ってスクリーニングするための候補物質として、これに限定しないが、組織または細胞の画分、核酸、ポリペプチド、siRNA、アンチセンス分子、アプタマー、リボザイム、三重らせん化合物、抗体、及び、低分子(例えば、約2000mw未満、または約1000mw未満、または約800mw未満)の有機分子または無機分子(例えば、塩、金属)が挙げられる。
候補分子は、様々な化学クラス、例えば、分子量が50ダルトン以上で約2500ダルトン未満の低分子有機化合物などの有機分子を包含する。候補分子は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含むことができ、一般的に、少なくともアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を含み、通常は、少なくとも2つの官能化学基を含む。候補分子は、環状炭素または複素環構造及び/または1以上の上記の官能基で置換された芳香族または多芳香族構造を含むことができる。
候補分子は、化合物のライブラリーデータベース中の化合物であってもよい。当業者であれば、例えば、スクリーニングのために市販されている化合物に関する多数のデータベースに一般的に精通しているであろう(例えば、12の異なる分子サブセットにわたる270万の化合物を有するZINCデータベース(UCSF);「Irwin and Shoichet (2005) J Chem Inf Model 45, 177-182」を参照)。また、当業者であれば、さらなる試験のために、市販の供給源や望ましい化合物及び化合物クラスを同定するための様々な検索エンジンにも精通しているであろう(例えば、ZINCデータベース;eMolecules.com;ベンダーが提供する市販化合物の電子ライブラリ(ChemBridge, Princeton BioMolecular, Ambinter SARL, Enamine, ASDI, Life Chemicalsなど)を参照)。
本開示の方法に従ったスクリーニングのための候補分子には、リード様化合物及び薬物様化合物の両方が挙げられる。リード様化合物は、一般的に、比較的少ない特徴(例えば、約3未満の水素ドナー及び/または約6未満の水素アクセプタ;約-2~約4の疎水性特性xlogP)を有する比較的小さい足場様構造(例えば、約150~約350kDの分子量)を有すると理解される(例えば、「Angewante (1999) Chemie Int. ed. Engl. 24, 3943-3948」を参照)。対照的に、薬物様化合物は、一般的に、比較的多い特徴(例えば、約10未満の水素受容体及び/または約8未満の回転可能な結合;約5未満の疎水性特性xlogP)を有する比較的大きな足場(例えば、約150~約500kDの分子量)を有すると理解される(例えば、「Lipinski (2000) J. Pharm. Tox. Methods 44, 235-249」を参照)。初期スクリーニングは、リード様化合物を用いて行うことができる。
空間配向データからリード化合物を設計するとき、特定の分子構造が「薬物様」であることを理解することは有用である。このような特徴付けは、経験的に認識された一連の性質に基づくことができ、薬局方の既知の薬物の広範な類似性を比較することによって導き出される。薬物がこれらの特徴のすべて、あるいはいずれかを満たす必要はないが、薬物様であれば、薬物候補が臨床的成功を収める可能性がはるかに高い。
これらの「薬物様な」特徴のいくつかは、リピンスキーの4つの法則(数字の5が多いことから、一般的に「ルールオブファイブ」として知られている)に要約されている。これらの法則は、一般的に経口吸収に関連し、リード化合物の最適化の際に化合物の生物学的利用能を予測するために使用されるが、本開示の方法を使用することによって達成され得るような合理的な薬物設計の努力の際にリード分子を構築するための効果的なガイドラインとして機能する。
4つの「ルールオブファイブ」は、候補薬物様化合物が以下の特性のうち少なくとも3つを有するべきであると述べている。(i)重量が500ダルトン未満;(ii)対数Pが5未満;(iii)水素結合供与体(OH基とNH基の合計)が5個以下;(iv)水素結合受容体(N原子とO原子の合計)が10個以下。また、薬物様分子は、一般的、約8Å~約15Åのスパン(幅)を有する。
キット
また、本開示によれば、キットも提供される。本開示のキットは、本開示の薬剤または組成物、及び特定の実施形態では投与のための説明書を含むことができる。このようなキットは、本開示の方法の性能を促進することができる。キットとして供提供される場合、本開示の組成物の異なる成分を別々の容器に包装し、使用の直前に混合してもよい。成分としては、これに限定しないが、本明細書に記載されたApoMまたはApoM含有血漿を含む組成物が挙げられる。このような成分の個別の包装は、所望であれば、本開示の組成物を含む1以上の単位剤形を含むパックまたはディスペンサ装置に提示することができる。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチックの箔を含み得る。また、このような構成要素の個別の包装は、特定の場合には、構成要素の活性を失うことなく長期保存を可能にする。
また、キットは、例えば、別個に包装された凍結乾燥活性成分に添加される滅菌水または生理食塩水などの、別個の容器に入った試薬を含むことができる。例えば、密封されたガラス製アンプルは凍結乾燥された成分を含み、別のアンプルは滅菌水または滅菌生理食塩水を含み、それぞれは窒素などの中性の非反応ガス下で包装されている。アンプルは、ガラス、ポリカーボネートなどの有機ポリマー、ポリスチレン、セラミック、金属、または、試薬を保持するために一般的に使用される任意の他の材料から構成することができる。適切な容器の他の例としては、アンプルと同様の材料から作製されたボトル、及び、アルミニウムや合金などで内部が箔張りされた筒が挙げられる。他の容器としては、試験管、バイアル、フラスコ、ボトル、注射器などが挙げられる。容器は、皮下注射針で貫通可能なストッパーを有するボトルなどの無菌アクセスポートを有していてもよい。他の容器は、容易に取り外し可能な膜で仕切られた2つのコンパートメントを有し、膜を取り外すと成分が混合される。取り外し可能な膜は、ガラス、プラスチック、ゴムなどであり得る。
特定の実施形態では、キットは、取扱説明書と共に提供され得る。取扱説明書は、紙または他の基材に印刷してもよいし、あるいは、電子的に読み取り可能な媒体またはビデオとして提供してもよい。取扱説明書は、キットに物理的に関連付けられていない場合がある。その場合、キットの製造業者または販売業者が指定するインターネットウェブサイトにユーザを誘導するようにしてもよい。
分子生物学プロトコルを利用する本開示の組成物及び方法は、当技術分野で既知の様々な標準技術に従うことができる(例えば、「Sambrook and Russel (2006) Condensed Protocols from Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN-10: 0879697717; Ausubel et al. (2002) Short Protocols in Molecular Biology, 5th ed., Current Protocols, ISBN-10: 0471250929; Sambrook and Russel (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN-10: 0879695773; Elhai, J. and Wolk, C. P. 1988. Methods in Enzymology 167, 747-754; Studier (2005) Protein Expr Purif. 41(1), 207-234; Gellissen, ed. (2005) Production of Recombinant Proteins: Novel Microbial and Eukaryotic Expression Systems, Wiley-VCH, ISBN-10: 3527310363; Baneyx (2004) Protein Expression Technologies, Taylor & Francis, ISBN-10: 0954523253」を参照)。
本明細書に記載された定義及び方法は、本開示をより良く定義し、本開示の実施において当業者を導くために提供される。特に断りのない限り、用語は、関連分野の当業者による従来の使用法にしたがって理解されるべきである。
いくつかの実施形態では、本開示の所定の実施形態を説明及び請求するために使用される、成分の量、特性、例えば分子量、反応条件などを表す数は、いくつかの例では、「約」という用語により修飾されるものとして理解されるべきである。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、或る値が、その値を決定するために用いられている装置または方法についての平均の標準偏差を含むことを示すために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、特定の実施形態によって得ようとする所望の特性に応じて変更可能な近似値である。いくつかの実施形態では、数値的パラメータは、報告された有効桁数を考慮して、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。本開示のいくつかの実施形態の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるとはいえ、特定の実施例に示される数値は、実行可能な限り正確に報告される。本開示のいくつかの実施形態で示される数値は、それらの各試験測定値において見られる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を含み得る。本明細書における値の範囲の記載は、その範囲内に入る個別の値を個々に指定するため簡略化された方法としての役割を果たすことを単に意図している。本明細書において特に指定しない限り、個々の値は、本明細書において個々に記載されているかのように明細書に組み込まれる。離散的な値の列挙は、各値の間の範囲を含むと理解される。
いくつかの実施形態では、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」という用語、並びに、特定の実施形態を説明する文脈において(とりわけ、以下の特許請求の範囲の特定の文脈において)使用される同様の用語は、特に断りのない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈することができる。いくつかの実施形態では、特許請求の範囲を含めて、本明細書で使用される「または」という用語は、選択肢のみを指すか、または選択肢が相互に排他的であると明示的に示されない限り、「及び/または」を意味するために使用される。
「含む(comprise)」、「有する(have)」、及び「含む(include)」という用語は、オープンエンドの連結動詞である。これらの動詞の1以上の任意の変化形または時制、例えば「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「含む(includes)」、及び「含んでいる(including)」もまた、オープンエンドである。例えば、1以上のステップを「含む(comprises)」、「有する(has)」、または「含む(includes)」任意の方法は、それらの1以上のステップのみを有することに限定されず、他の挙げられていないステップも包含し得る。同様に、1以上の特徴を「含む(comprises)」、「有する(has)」または「含む(includes)」任意の組成物または装置は、それらの1以上の特徴のみを有することに限定されず、他の挙げられていない特徴を包含し得る。
本明細書に記載されたすべての方法は、本明細書中で特に断りのない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書の特定の実施形態に関して提供される任意の及びすべての実施例、または例示的な言語(例えば、「~など」)の使用は、単に、本開示をより良く明らかにすることを意図しており、特に請求項に記載されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書におけるいかなる文言も、請求項に記載されていない任意の要素が本開示の実施に必須であることを示すと解釈されるべきではない。
本明細書に開示された本開示の代替要素または実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各グループのメンバーは、個々に、またはグループの他のメンバーまたは本明細書に記載されている他の要素との任意の組み合わせで言及及び請求することができる。グループの1以上のメンバーは、利便性または特許性の理由から、グループに包含するか、またはグループから削除することができる。そのような包含または削除が行われた場合、本明細書は、修正されたグループを含むものと見なされ、したがって、添付の特許請求の範囲において使用されるすべてのマーカッシュグループの記述を満たす。
本出願において引用されたすべての刊行物、特許、特許出願、及び他の文献は、それらの個々が具体的かつ個別に示された場合と同じ程度に、すべての目的のためにその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書における文献の引用は、それが本開示の先行技術であることを認めるものと解釈されるべきではない。
本開示を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲に定義される本開示の範囲を逸脱することなく、修正、変形、及び同等の実施形態が可能であることは明らかであろう。さらに、本開示におけるすべての実施例が、非限定的な実施例として提供されていることを理解されたい。
実施例
上記の非限定的な実施例は、本開示をさらに説明するために提供された。本実施例に開示された技術は、本願発明者が本開示の実施において良好に機能することを見出したアプローチを表すものであり、したがって、本開示の実施態様の例を構成すると考えることができることを、当業者であれば理解できるであろう。また、本開示に照らして本開示の特定の実施形態に様々な変更を加えることができ、それでも依然として、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、同様または類似の結果を得ることができることを、当業者であれば理解できるであろう。
実施例1.ABCA1/ABCG1光受容体及びマクロファージノックアウトへのApoM投与
ApoM投与によるABCA1/ABCG1光受容体及びマクロファージノックアウトの改善メカニズムを明らかにするために、以下の実験を行った。
ABCA1/ABCG1光受容体ノックアウトマウスを高脂肪食で飼育した。図3に示すように、マウス群の第1のグループにApoM含有血漿(ApoMTg)を投与し、第2のグループにApoM欠乏血漿(ApoMKO)を投与した。
網膜電図(ERG)は、UTAS BigShot System(LKC Technologies Inc.)を使用して行った。マウスを一晩暗順応させた。赤色光照射下で、マウスに、86.9mg/kgのケタミン及び13.4mg/kgのキシラジンを腹腔内注射して麻酔した。1%硫酸アトロピン点眼薬(Bausch & Lomb)で瞳孔を拡張させた。ヒーティングパッドで体温を37°Cに維持した。コンタクトレンズ電極を適切な基準電極及び接地電極と両側に配置した。刺激は、10分間の順応時間の後、暗闇または薄暗い(30.0カンデラ[cd]/m)背景照明の存在下での全視野白色光フラッシュ(10μs)で行った。生データは、MATLABソフトウェア(MathWorks)を用いて処理した。a波の振幅は、試験前の平均ベースラインから平均トレースの最も負の点まで測定し、b波の振幅は、その点から最も高い正の点まで測定した。網膜電図(ERG)により、ApoM Tg投与マウスでは、ABCA1/ABCG1-rod/-rod ノックアウトのApoM KO投与マウスと比較して、より高い網膜電図振幅が観察された(図4A、図4B、図4C)。
ApoM Tg投与マウスの網膜色素上皮のTEM画像を取得し(図5B)、ApoM KO投与マウス(図5A)と比較した。ApoM Tg投与マウスの網膜色素上皮では、ApoM KO処理マウスと比較して、有意に少ない脂質滴が観察された(図5C)。加えて、光受容体の外節の破壊は、ApoM KO投与マウス(図6A及び図7A)でのみ観察され、ApoM Tg投与マウス(図6B及び図7B)では観察されなかった。
S1Pと結合しない変異ApoMに富む漿ではレスキューされないので、この作用はApoM特異的である。これらの結果は、ApoMの特異性及び潜在的機序を実証した。
図9に示すように、スフィンゴシン-1-リン酸受容体1をノックアウトしたマウス(S1P1R-RPE-RPE)で同様の実験を実施した。
実施例2:APOMノックアウトの光受容体への影響
ApoMノックアウトの光受容体に対する全身作用を特性化するために、以下の実験を行った。
ApoMノックアウトマウス(ApoM変異体)及びApoM対照マウスに、実施例1に記載した網膜電図(ERG)を行った。網膜電図(ERG)により、ApoM変異マウスと比較して、より高い網膜電図振幅がApoM対照マウスで観察された(図11A、図11B、図11C)。
ApoM変異マウスの網膜色素上皮のTEM画像を取得し(図12A)、ApoM対照マウス(図12B)と比較した。ApoM対照投与マウスの網膜色素上皮では、ApoM KOマウスまたはApoM変異マウスと比較して、有意に少ない脂質滴が観察された(図13)。加えて、網膜画像は、ApoM KOマウス(図14(C))及び野生型マウス(図14(A))と比較して、ApoM変異マウス(図14(B))においてより広範な脈絡膜血管新生(CNV)を示した。ApoM変異体マウスでは、ApoM KOマウス及び野生型マウスと比較して、より高いCNV病変サイズが観察された(図15)。

Claims (3)

  1. 黄斑変性疾患を有する患者における黄斑変性疾患を予防または逆転させるための方法であって、
    前記患者に、治療上有効な量のApoM含有組成物を投与するステップを含む、方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、
    前記黄斑変性疾患は、加齢性黄斑変性(AMD)、若年性黄斑変性、及び糖尿病性網膜症からなる群から選択される、方法。
  3. 請求項1に記載の方法であって、
    治療上有効な量の前記ApoM含有組成物は、前記患者における、光受容体外節破壊、RPE脂質沈着、神経変性、血管新生、またはそれらの任意の組み合わせを予防または逆転させる、方法。
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