JP2024524925A - 歪み最適化マルチビーム走査システム - Google Patents

歪み最適化マルチビーム走査システム

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高スループット、高分解能、および高信頼性のウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子検査システムおよびマルチビーム荷電粒子検査システムを動作させる方法が提供される。この方法およびマルチビーム荷電粒子線検査システムは、前記マルチビーム荷電粒子検査システムの光軸に対してある角度で伝搬するビームレット用の一括マルチビームラスタースキャナの走査歪み等の走査誘起収差を低減および補償するための手段を備える。

Description

本発明は、マルチビーム荷電粒子検査システムおよびマルチビーム荷電粒子検査システムを動作させる方法に関する。より詳細に、本発明は、複数の一次荷電粒子ビームレットの偏向を走査するための最適化スキャナシステムと、極小の歪みおよび高度なスティグマ補正での検査のための走査型補正器と、によりもたらされる高分解能のウェハ検査のためのマルチビーム荷電粒子線検査システムに関する。この方法およびマルチビーム荷電粒子線検査システムによれば、大きな結像視野の全体にわたる高精度なウェハ検査が可能となる。
半導体装置等の微細構造体の小型化および高機能化の開発継続に伴い、微細構造体の微小寸法の加工および検査のための平面加工技術および検査システムのさらなる開発および最適化が求められている。半導体装置の開発および加工には、たとえばテストウェーハの設計検証が必要であり、平面加工技術には、信頼性のある高スループットの加工のためのプロセス最適化を伴う。また近年、半導体装置のリバースエンジニアリングおよび個別のカスタマイズ構成のため、半導体ウェハの解析が必要となっている。したがって、ウェハ上の微細構造体を高精度に調べる高スループット検査ツールが求められている。
半導体装置の製造に用いられる通常のシリコンウェハは、直径が最大12インチ(300mm)である。各ウェハは、最大およそ800平方mmサイズの30~60個の繰り返しエリア(「ダイ」)に分割される。半導体装置は、平面集積技術によってウェハの表面に層状に加工された複数の半導体構造を含む。半導体ウェハは、それに関連する加工プロセスのため、通常は平らな表面を有する。集積半導体構造のフィーチャサイズは、数μmから5nmの限界寸法(CD)まで縮まっており、近い将来には、たとえば、3nm未満(たとえば、2nm)あるいは1nm未満のフィーチャサイズまたは限界寸法(CD)までさらに小さくなる。前述の小さな構造サイズでは、非常に広い面積で短時間に限界寸法のサイズの欠陥を識別する必要がある。いくつかの用途の場合、検査装置が提供する測定の精度に対する仕様要件はさらに高く、たとえば、2倍または1桁分である。たとえば、半導体フィーチャの幅は、1nm未満(たとえば、0.3nm以下)の精度で測定する必要があり、半導体構造の相対位置は、1nm未満(たとえば、0.3nm以下)の重ね合わせ精度で決定する必要がある。
したがって、本発明の目的は、1nm未満、0.3nmあるいは0.1nm未満の精度での半導体フィーチャの高精度な測定を可能にする荷電粒子システムおよび荷電粒子システムを高スループットで動作させる方法を提供することである。
荷電粒子顕微鏡(CPM)の分野で最近開発されたのがマルチビーム荷電粒子顕微鏡(multi beam charged particle microscope)(MSEM)である。マルチビーム走査型電子顕微鏡は、たとえば米国特許第7244949号および米国特許出願公開第2019/0355544号に開示されている。マルチビーム電子顕微鏡においては、たとえば一次放射として4~10000本の電子ビームを含むことから各電子ビームが隣接する電子ビームから1~200マイクロメートルの距離だけ分離された電子ビームレットのアレイによってサンプルが照射される。たとえば、マルチビーム荷電粒子顕微鏡では、およそ100本の分離された電子ビームすなわちビームレットが六角形のアレイ状に配置され、およそ10μmの距離だけ分離されている。複数の一次荷電粒子ビームレットは、共通の対物レンズによって、調査対象サンプル(たとえば、可動ステージに備え付けられたウェハチャックに固定された半導体ウェハ)の表面に集束される。一次荷電粒子ビームレットによるウェハ表面の照射中は、一次荷電粒子ビームレットの焦点により形成された複数の交差点から相互作用生成物(たとえば、二次電子)が生じる一方、相互作用生成物の量およびエネルギーは、ウェハ表面の材料組成およびトポグラフィによって決まる。相互作用生成物が複数の二次荷電粒子ビームレットを形成し、これが共通の対物レンズによって収集され、マルチビーム検査システムの投射結像系によって、検出器平面に配置されている検出器上へとガイドされる。検出器は、それぞれが複数の検出画素を備える複数の検出エリアを含み、複数の二次荷電粒子ビームレットそれぞれの強度分布を検出するため、たとえば100μm×100μmの像パッチが得られる。従来技術のマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、一連の静電・磁気素子を備える。静電・磁気素子の少なくとも一部を調整することによって、複数本の二次荷電粒子ビームの焦点位置およびスティグマを調整可能である。従来技術のマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、一次または二次荷電粒子の少なくとも1つのクロスオーバ面を備える。従来技術のマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、調整を容易化する検出システムを備える。従来技術のマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、サンプル表面のエリア全体にわたって複数の一次荷電粒子ビームレットを一括走査することによりサンプル表面の像パッチを得るための少なくとも1つの偏向スキャナを備える。マルチビーム荷電粒子顕微鏡およびマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法のより詳細については、2021年4月29日に出願されたPCT/EP2021/061216に記載されており、これを本明細書に援用する。
ただし、ウェハ検査用の荷電粒子顕微鏡においては、高信頼性かつ高再現性の結像が実行され得るように、結像条件を安定に保つことが望まれる。スループットは、複数のパラメータ(たとえば、ステージおよび新たな測定部位での再位置合わせの速度)のほか、取得時間当たりの測定面積自体によって決まる。後者は、ビームレットの滞留時間(dwell time)、分解能、および数によって決まる。また、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の場合は、時間のかかる像の後処理が必要となる。たとえば、複数の像副視野からの像パッチの一体的なステッチングの前に、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の検出システムにより生成された信号をデジタル的に補正する必要がある。
複数の一次荷電粒子ビームレットは、ラスター構成(たとえば、六角形ラスター構成)内の通常のラスター位置から劣化する可能性がある。また、複数の一次荷電粒子ビームレットは、平面エリアセグメント内のラスター走査動作の通常のラスター位置から劣化する可能性があり、マルチビーム荷電粒子検査システムの分解能は、複数の一次荷電粒子ビームレットの個々のビームレットの個々の走査位置ごとに異なり、個々の走査位置によって決まり得る。これらの複数の一次荷電粒子ビームレット間の走査誘起歪み差については、これまで対処がなされていない。複数の一次荷電粒子ビームレットについて、各ビームレットは、共通の走査偏向器の交差ボリュームに異なる角度で入射し、異なる出射角に偏向され、共通の走査偏向器の交差ボリュームを異なる経路で横断する。したがって、各ビームレットは、走査動作において、異なる歪みパターンとなる。従来技術のシングルビーム動的補正器は、複数の一次ビームレットの任意の走査誘起歪みの緩和に適さない。米国特許出願公開第2009/0001267号は、5つの一次荷電粒子ビームレットを含むマルチビーム荷電粒子システムの一次ビームレイアウトまたは静的ラスターパターン構成の校正を示している。ラスターパターンの異状について、一次ビームレイアウトの回転、一次ビームレイアウトのスケールアップまたはスケールダウン、一次ビームレイアウト全体のシフトという3つの原因が示されている。したがって、米国特許出願公開第2009/0001267号では、複数の一次ビームレットの静的焦点により形成された静的一次ビームラスターパターンの基本1次歪み(回転、拡大、グローバルシフト、または変位)を考慮している。また、米国特許出願公開第2009/0001267号には、一括ラスタースキャナの1次特性(複数の一次ビームレットを一括ラスター走査するための偏向幅および偏向方向)の校正を含む。そして、これら一次ビームレイアウトの基本誤差の補償のための手段が論じられているが、静的ラスターパターンの高次歪み(たとえば、3次歪み)に対しては解決手段が提供されていない。一次ビームレイアウトおよび任意選択として二次電子ビーム経路の校正後であっても、個々の一次ビームレットそれぞれの走査中は走査歪みが導入されるが、複数の一次ビームレットの静的ラスターパターンの校正では対処できない。
米国特許出願公開第2019/0088440号は、複数の一次ビームレットの焦点のスポットサイズおよび形状を制御するための複数の電極を備える複数の開口を含むマルチビーム生成ユニットのマルチアパーチャプレートを提案している。ただし、像走査中の走査歪み収差を制御する動的な手段が設けられていない。
当技術分野においては、シングルビーム走査システム用の動的な補正器がよく知られている。たとえば、単一の荷電粒子ビームの走査中に単一の走査電子ビームの視野曲率または視野依存の非点収差を動的に補償可能な方法がよく知られている。走査偏向器の線形走査パワーに3次の補正視野項を追加することによって、単一ビームの走査誘起3次歪みを補償することができる。ただし、従来技術の方法では、光軸に対して単一の入射角および単一の出射角の単一のビーム経路で走査偏向器の交差ボリュームを横断する単一のビームに対して動的な収差が補正される。
国際特許出願公開第WO2007/028596号は、複数の一次荷電粒子ビームレットに対して所定の偏向を行うように構成されているマルチアパーチャプレートの構成を記載している。これらの構成によれば、複数のビームレットの一括偏向が実行され、たとえば、動作モードの高速切り替えが実現され得る。特定の一例においては、複数のビームレットをビーム絞りへと偏向させることにより、一次ビームレットの数が変化する。一例においては、一対の連続するマルチアパーチャプレートの機械的レイアウトおよび2つのマルチアパーチャプレート間の適当な電圧差の適用によって、複数の一次ビームレットそれぞれの個々の偏向角が決まる。これにより、たとえば複数のビームレットの所定の偏心特性が実現される。ただし、国際特許出願公開第WO2007/028596号は、走査誘起歪みを取り扱う解決手段を提供していない。国際特許出願公開第WO2007/028596号は、いわゆるブランキングアパーチャアレイ(blanking aperture arrays)に言及している。国際特許出願公開第WO2007/028596号のモード切り替え動作と同様に、ブランキングアパーチャアレイは、オン状態とオフ状態との間でビームレットの高速二元切り替え動作を行うように構成されており、個々の一次ビームレットの高精度な個々の連続走査偏向のための如何なる手段も提供していない。
米国特許第6897458号は、マルチカラムシステムの複数のビームレットの一括走査偏向のための走査偏向器アレイを示している。米国特許出願公開第2010/0248166号は、一次ビームレットそれぞれの位置を調整するための静的偏向器アレイと組み合わせた、複数の一次ビームレットの一括走査偏向のための一括走査偏向器を示している。静的偏向器アレイは、静的ラスター構成内で静的焦点を調整する目的に役立つ。
本発明の課題は、高スループットの高精度かつ高分解能像取得を可能にする手段を備えるマルチビーム荷電粒子検査システムを提供することである。本発明の一課題は、測定タスクの仕様要件内の所定のラスター位置からの逸脱を伴う平面エリアセグメントの高精度像取得を実現するマルチビーム荷電粒子検査システムを提供することである。
分解能およびスループットに対する要求の高まりから、従来の荷電粒子顕微鏡は限界に来ている。シングルビーム補正荷電粒子顕微鏡においてさえ、残留する走査誘起歪み、走査誘起非点収差または球面収差等の走査誘起収差(scanning induced aberrations)によって分解能および精度が低下する。したがって、本発明の課題は、高スループットの高精度かつ高分解能像取得を可能にする手段を備える荷電粒子検査システムを提供することである。本発明の別の目的は、マルチビームシステムの一括偏向スキャナによる像走査動作中の複数の一次ビームレットの走査誘起歪み差の補正のための手段を提供することである。本発明の別の目的は、ウェハ表面での複数の一次ビームレットのラスター走査および集束のための一括偏向スキャナまたは結像光学素子の歪み誤差変動を補償することである。
本発明の実施形態によれば、荷電粒子顕微鏡の走査誘起収差が抑えられる。本発明は、改良されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡、マルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる改良された方法、およびマルチビーム荷電粒子顕微鏡を校正する改良された方法を提供する。これらの改良により、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の像視野の全体にわたる複数のJ個の一次荷電粒子ビームレット(primary charged particle beamlets)の一括ラスター走査(collective raster scanning)時に誘起される走査誘起歪み等の走査誘起収差が抑えられる。改良されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、走査誘起収差を補償するための手段を備える。走査誘起収差を補償するための手段は、使用時、複数のJ個の一次荷電粒子ビームレットのうちの少なくとも第1の一次荷電粒子ビームレットに影響を及ぼすように構成されている少なくとも1つの静電補正素子(electrostatic correction element)と、使用時、複数のJ個の一次荷電粒子ビームレットの一括ラスター走査偏向(collective raster scanning deflection)と同期して、静電補正素子を動作させる制御手段と、を備える。改良された動作方法は、一括ラスター走査偏向器によって、複数のJ個の一次荷電粒子ビームレットのラスター走査と同期して、走査誘起歪み等の走査誘起収差を最小化するように構成されている。一括ラスター走査偏向器は、複数のJ個の像副視野を含む像視野の全体にわたって、ウェハ等の物体の全表面積で複数のJ個の一次荷電粒子ビームレットをラスター走査するように構成および制御される。複数のJ個の一次ビームレットはそれぞれ、対応する像副視野の全体にわたってラスター走査される。横方向延伸が約8μm~12μm(たとえば、10μm)の像副視野それぞれにおいて、複数のJ個の一次荷電粒子ビームレットと同期した一次荷電粒子ビームレットの走査偏向によって、約0.5nm~3nm(たとえば、1nmまたは2nm)の分解能で複数の像画素位置を曝すことにより、表面積に関する像情報が取得される。本発明によれば、対応する像副視野における各一次荷電粒子ビームレットの走査誘起歪みが抑えられる。走査誘起歪みは、対応する像副視野において、一次荷電粒子ビームレットごとに異なり得る。一例においては、複数の像副視野における走査誘起歪み間の差が抑えられる。一例においては、改良された校正方法により、複数の像副視野それぞれにおいて、約0.1nm~5nmの走査誘起歪みが決定され、走査誘起歪みが少なく改良されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させるのに適した制御パラメータが決定される。改良されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作時には、制御パラメータの適用によって、複数のJ個の一次荷電粒子ビームレットの走査誘起歪みを抑える。これにより、複数のJ個の像副視野における走査誘起歪みが抑えられる。たとえば、複数の像副視野における走査誘起歪み間の差が抑えられる。改良された校正方法は、走査誘起歪みを決定するとともに、制御手段の制御パラメータを導出する(derive)ように構成されている。ただし、本発明は、複数の一次荷電粒子ビームレットの走査誘起歪みに限定されず、複数のJ個の一次荷電粒子ビームレットの走査誘起非点収差の変動または差、走査誘起焦点位置変化の変動または差、走査誘起球面収差の変動または差等の走査誘起収差に適用され得る。
本発明のいくつかの実施形態に係るウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を生成するための荷電粒子マルチビームレット生成器(charged-particle multi-beamlet generator)(300)と、複数のJ個の一次荷電粒子ビームレット(3)によって、物体面(object plane)(101)に配置されているウェハ表面(25)上の像パッチ(image patch)(17.1)を照射すること(illuminating)により、使用時、ウェハ表面(25)から放出される複数のJ個の二次電子ビームレット(secondary electron beamlets)(9)を生成するための物体照射ユニット(object irradiation unit)(100)と、投射系(projection system)(205)および像センサ(207)を備え、複数のJ個の二次電子ビームレット(9)を像センサ(207)上に結像する(image)とともに、使用時、ウェハ表面(25)の像パッチ(17.1)のデジタル像を取得するための検出ユニット(200)と、を備える。像パッチ(17.1)は、複数のJ個の像副視野(31)に分割され、副視野がそれぞれ、一次荷電粒子ビームレットに対応する。マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、少なくとも第1の一組の偏向電極と、使用時、複数のJ個の一次荷電粒子ビームレット(3)が横断する交差ボリューム(intersection volume)(189)と、を備える一括マルチビームラスタースキャナ(collective multi-beam raster scanner)(110)と、使用時、第1の方向またはp方向の複数のJ個の一次荷電粒子ビームレット(3)の一括ラスター走査のため、少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を第1の一組の偏向電極に与えるように構成されている制御ユニット(800)と、をさらに備える。マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、少なくとも第1の一次荷電粒子ビームレットの残留走査誘起歪みを個別に補償する手段をさらに備える。複数のJ個の一次荷電粒子ビームレットは、第1の傾斜角β1で交差ボリューム(189)に入射する第1の一次荷電粒子ビームレットと、β1と異なる第2の傾斜角β2で交差ボリューム(189)に入射する第2の一次荷電粒子ビームレットと、を少なくとも含む。像走査時、第1の一次ビームレットは、一括マルチビームラスタースキャナ(110)により、第1の像副視野の全体にわたってラスター走査され、第2の一次ビームレットは、一括マルチビームラスタースキャナ(110)により、第2の像副視野の全体にわたって同期的にラスター走査される。各像副視野の直径は、約5μm~12μm(たとえば、8μmまたは10μm)である。少なくとも第1の一次荷電粒子ビームレットの残留走査誘起歪みを補償する手段によって、第1の像副視野と第2の像副視野との間の走査誘起歪みの差が最小限に抑えられる。結果として、使用時には、第1および第2の副視野内の所定の各ラスター座標の全体にわたって、たとえば1nm、0.3nm未満、あるいは0.1nm未満の所定の閾値を下回る逸脱で第1および第2の一次荷電粒子ビームレットの両焦点がラスター走査される。残留走査誘起歪みを補償する手段は、一括マルチビームラスタースキャナ(110)による複数の一次荷電粒子ビームレットの走査偏向に同期して動作するように構成されている。
一例において、残留走査誘起歪みを補償する手段は、第1の一次荷電粒子ビームレットおよび第2の一次荷電粒子ビームレットを含む複数の一次ビームレットの残留走査誘起歪みを個別に補償する走査誘起歪み補償器アレイを備える。
一例において、残留走査誘起歪みを補償する手段は、β1から逸脱する傾斜角β2で交差ボリューム(189)に入射する第1の一次荷電粒子ビームレットおよび第2の一次荷電粒子ビームレットを含む複数の一次ビームレットの走査誘起歪みの低減のため、所定の不均質走査偏向電界分布(predetermined inhomogeneous scanning deflection field distribution)を交差ボリューム(189)に生成するように構成されている一括ラスタースキャナ(110)の手段を備える。
マルチビーム荷電粒子顕微鏡は、使用時に走査偏向電圧差VSp(t)が与えられる少なくとも1つの一次荷電粒子ビームレットの長ストローク走査偏向のためのラスタースキャナを備える。走査偏向電圧差VSp(t)は、時間的に変動する電圧差(たとえば、電圧傾斜(voltage ramp))であって、複数の一次荷電粒子ビームレットの一括走査偏向のためにラスタースキャナ電極に印加される。マルチビーム荷電粒子顕微鏡は、使用時に第1の補正電圧差VC1(t)が与えられる少なくとも第1の走査補正素子をさらに備える。補正電圧差VC1(t)は、静的電圧変換ユニットによって、走査偏向電圧差VSp(t)から生成されるが、これによって、走査偏向電圧差VSp(t)は本質的に、少なくとも1桁、好ましくは2桁以上、補正電圧差VC1(t)まで小さくなる。静的電圧変換ユニットは、複数の制御信号により制御されるプログラム可能抵抗器列またはアレイを備え得る。これにより、補正電圧差VC1(t)は小さくなって、走査偏向電圧差VSp(t)に比例する。これにより、一括ラスタースキャナと同期して、複数の走査補正素子を高速制御可能となる。通常、走査偏向の時間周波数は、約80MHz~200MHz(たとえば、100MHz)である。本発明に係る静的電圧変換ユニットによれば、複数の同期補正電圧差を約80MHz~200MHzの同じ時間周波数で複数の補正素子に与えることができる。本発明に係る静的電圧変換ユニットによれば、複数の一次荷電粒子ビームレットそれぞれの長ストローク走査偏向(たとえば、10μm)に対する走査偏向電圧差VSp(t)は、複数の一次荷電粒子ビームレットそれぞれの補正的な短ストローク走査偏向(たとえば、5nm)に対する補正電圧差VC1(t)へと小さくなるため、一次荷電粒子ビームレットの個々の走査誘起歪みが抑えられる。したがって、本発明の実施形態によれば、長ストローク偏向の場合の走査電圧間で、たとえば約100MHzの走査周波数にて約-100V~100Vの走査偏向電圧差VSp(t)を生成するとともに、走査偏向電圧差VSp(t)と同期して、たとえば100MHzの同じ走査周波数にて最大約100mVの複数の補正電圧差VCi(t)を生成することができる。
一例において、第1の走査補正素子は、長ストローク偏向と同期して、少なくとも第1の一次荷電粒子ビームレットの短ストローク偏向を行うように構成されている第1の走査偏向素子(first scanning deflection element)である。一例においては、たとえば±5μmの像副視野Dの寸法の全体にわたって、第1の長ストロークラスタースキャナにより複数の荷電粒子ビームレットがラスター走査され、長ストロークラスタースキャナと並列に同期して、走査補正器アレイを構成する複数の短ストロークラスタースキャナにより複数の一次ビームレットそれぞれの走査誘起歪みが補償されるが、この走査誘起歪みは、最大で±5nmである。個々のビームレットの走査誘起収差を抑えるための各短ストローク走査偏向素子は、長ストローク走査動作と同期して、走査パワーが約3桁小さくなる。各ビームレットは、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の対物レンズによって、走査座標よりも3桁を超える精度で所定の走査座標に集束される。たとえば、5.0μmの像副視野の最大像高での所定の最大走査座標は、3nm未満、好ましくは0.3nm未満あるいは0.1nm未満の精度で実現される。
マルチビーム荷電粒子顕微鏡は、使用時に、走査偏向電圧差VSp(t)と同期および比例する別の補正電圧差VCi(t)が与えられる別の走査補正素子を備え得る。これにより、像走査(image scan)時には、走査誘起偏心収差(scanning induced telecentricity aberration)または走査誘起非点収差等の走査誘起収差が抑えられる。第1の方向またはp方向の一次ビームレットの長ストローク走査偏向に対する走査偏向電圧差VSp(t)を超えて、p方向と垂直な第2の方向またはq方向の長ストローク走査偏向のための長ストロークラスタースキャナに第2の走査偏向電圧差VSq(t)を与えることができる。使用時には、第2の走査偏向電圧差VSq(t)と同期および比例する別の補正電圧差VCj(t)が走査補正素子に与えられる。
第1の実施形態において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡は、複数の一次荷電粒子ビームレットの長ストローク走査偏向用の一括マルチビームラスタースキャナを備える。一括マルチビームラスタースキャナ内には、第1の走査補正素子が設けられており、一括マルチビームラスタースキャナの走査誘起収差は、修正されたラスタースキャナの設計によって最小限に抑えられる。通常、走査誘起収差は、一括マルチビームラスタースキャナの交差ボリュームを伝搬するビームレットの伝搬角βが大きくなると増大する。修正された偏向スキャナの設計によれば、不均質可変偏向静電界が生成され、これにより、角度βで交差ボリュームを伝搬するビームレット、特に、大きな角度βで交差ボリュームを伝搬するビームレットに対して、走査誘起収差が最小限に抑えられる。一例において、一括マルチビームラスタースキャナは、一組の偏向電極と、使用時に走査偏向電界のほか、補正電界を生成するように構成されている少なくとも第1の一組の補正電極と、を備える。不均質補正電界は、一組の偏向電極に与えられた走査電圧差と同期して一組の補正電極に与えられた走査電圧差により生成される走査補正電界(scanning correction field)である。一例においては、所定の不均質偏向静電界によって、たとえばマルチビーム荷電粒子顕微鏡の対物レンズに誘起された付加的な走査誘起収差が最小限に抑えられる。一組の補正電極および一組の補正電極に与えられた走査電圧差は、一組の偏向電極に与えられた走査電圧差と同期して、所定の不均質偏向静電界を生成するように構成されており、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の走査誘起収差が最小限に抑えられる。
第1の実施形態において、ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を生成するための荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)によって、物体面(101)に配置されているウェハ表面(25)上の像パッチ(17.1)を照射することにより、使用時、ウェハ表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)を生成するための物体照射ユニット(100)と、投射系(205)および像センサ(207)を備え、複数の二次電子ビームレット(9)を像センサ(207)上に結像するとともに、使用時、ウェハ表面(25)の像パッチ(17.1)のデジタル像を取得するための検出ユニット(200)と、を備える。マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、少なくとも第1の一組の偏向電極と、使用時、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)が横断する交差ボリューム(189)と、を備える一括マルチビームラスタースキャナ(110)と、使用時、第1の方向またはp方向の複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の一括ラスター走査のため、少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を第1の一組の偏向電極に与えるように構成されている制御ユニット(800)と、をさらに備える。一括マルチビームラスタースキャナ(110)は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の光軸から逸脱する傾斜角βで交差ボリューム(189)に入射する一次荷電粒子ビームレットの走査誘起収差の低減のため、所定の不均質走査偏向電界分布を交差ボリューム(189)に生成するように構成されている。
一例において、第1の一組の偏向電極のうちのある偏向電極は、空間的に分離された2つの電極で構成されており、制御ユニット(800)は、使用時、第1および第2の走査電圧差VSp1(t)およびVSp2(t)を空間的に分離された2つの電極に与えるように構成されており、第1および第2の走査電圧差VSp1(t)およびVSp2(t)は、異なる。
一例において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の一括マルチビームラスタースキャナ(110)は、使用時、第1の方向と垂直な第2の方向またはq方向の複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査偏向のため、交差ボリューム(189)において複数の一次荷電粒子ビームレット(3)が横断する第2の所定の不均質走査偏向電界分布を生成するための第2の一組の偏向電極を備えており、制御ユニット(800)は、使用時、少なくとも第2の走査電圧差VSq(t)を第2の一組の偏向電極に与えるように構成されている。
一例において、一括マルチビームラスタースキャナ(110)の少なくとも第1の一組または第2の一組の偏向電極の形状および形体は、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の交差ボリューム(189)の断面に適合されている。一例において、交差ボリューム(189)の断面は、六角形状であり、第1の一組または第2の一組の偏向電極は、楕円の周囲に配置されている。一例において、交差ボリューム(189)の断面は、矩形状であり、第1の一組または第2の一組の偏向電極は、矩形の周囲に配置されている。これにより、不均質静電界分布の所定の電界不均質性を生成可能である。
一例において、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の平均伝搬方向において、第1の一組の偏向電極および第2の一組の偏向電極は、異なる長さを有する。これにより、不均質静電界分布の所定の電界不均質性を生成可能である。
一例において、一括マルチビームラスタースキャナ(110)は、使用時、所定の不均質静電界分布に寄与する所定の走査補正電界を生成するように構成されている第1の一組の補正電極(185、193)をさらに備える。一例において、第1の一組の補正電極のうちのある電極(185.1、185.2、185.3、185.4)は、第1の一組の偏向電極のうちのある電極と第2の一組の偏向電極のうちのある電極との間の空間において、交差ボリューム(189)の外側に配置されている。一例において、一括マルチビームラスタースキャナ(110)は、使用時、所定の不均質静電界分布に寄与する所定の第2の走査補正電界を生成するように構成されている第2の一組の補正電極(187、195)をさらに備える。
一例において、一括マルチビームラスタースキャナ(110)は、交差ボリュームに対する所定の不均質走査偏向電界分布の横方向位置を調整するように構成されており、制御ユニット(800)は、使用時、第1の一組の偏向電極または第2の一組の偏向電極の少なくとも一方に電圧オフセットを与えるように構成されている。これにより、所定の不均質静電界分布の位置が調整され、複数の一次荷電粒子ビームレット間の走査誘起収差の差が最小限に抑えられる。
一例において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と一括マルチビームラスタースキャナ(110)との間に配置され、交差ボリューム(189)に対する複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の横方向位置を調整するように構成および設定されている第1の静的偏向系(first static deflection system)(701)を備える。これにより、所定の不均質静電界分布に対する複数の一次荷電粒子ビームレットの位置が調整され、複数の一次荷電粒子ビームレット間の走査誘起収差の差が最小限に抑えられる。
一例において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と一括マルチビームラスタースキャナ(110)との間に配置され、交差ボリューム(189)の入射側における複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の平均入射角を調整するように構成および設定されている第2の静的偏向系(701)をさらに備えるが、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の平均入射角は、個々の一次ビームレットの複数の入射角の平均値である。これにより、複数の一次荷電粒子ビームレット間の走査誘起収差が最小限に抑えられる。
第2の実施形態において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の物体照射ユニットは、ラスターまたは像走査時の各一次ビームレットの走査誘起収差を個別に補償するための走査歪み補償器アレイ(scanning distortion compensator array)等、第1のマルチビーム走査補正器またはマルチビーム走査補正システムを備える。第1のマルチビーム走査補正システムは、長ストローク一括マルチビームラスタースキャナによる一括ラスター走査時にサンプルの表面で個々のビームレットの位置を制御する。一括マルチビームラスタースキャナは、像副視野の延伸が約D=8μmまたは12μmの基板の表面上の像副視野それぞれの全体にわたって、複数の一次荷電粒子ビームレットを一括偏向させる。一括マルチビーム走査偏向器としては、第1の実施形態に係る最適化されたマルチビーム走査偏向器が可能である。第1のマルチビーム走査補正システムは、複数の偏向素子が設けられた複数のアパーチャ(apertures)を備えるアレイ素子として構成されており、複数の一次ビームレットはそれぞれ、一括マルチビームラスタースキャナによる複数の一次ビームレットの一括ラスター走査と同期して、異なる量の走査偏向により個別に走査偏向可能である。走査歪み補償器アレイ等のマルチビーム走査補正システムは、約r=1nm~5nmの残留走査歪みを各ビームレットに対して個別に、0.3nm未満、好ましくは0.2nm未満あるいは0.1nm未満の値へと動的に補正する。
本発明の第2の実施形態によれば、ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を生成するための荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)によって、物体面(101)に配置されているウェハ表面(25)上の像パッチ(17.1)を照射することにより、使用時、ウェハ表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)を生成するための物体照射ユニット(100)と、投射系(205)および像センサ(207)を備え、複数の二次電子ビームレット(9)を像センサ(207)上に結像する(image)とともに、使用時、ウェハ表面(25)の像パッチ(17.1)のデジタル像を取得するための検出ユニット(200)と、一括マルチビームラスタースキャナ(110)と、を備える。マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、一括マルチビームラスタースキャナ(110)の上流で複数の一次荷電粒子の伝搬方向に配置され、使用時、複数の一次荷電粒子ビームレットのうちの対応する一次荷電粒子ビームレットを透過するようにそれぞれ構成されている複数のアパーチャを備える走査歪み補償器アレイ(601)であり、複数のアパーチャがそれぞれ、各対応する一次荷電粒子ビームレットを第1の方向またはp方向に個別に偏向させるための第1の偏向素子と、各対応する一次荷電粒子ビームレットを第1の方向と垂直な第2の方向またはq方向に個別に偏向させるための第2の偏向素子と、を備え、前記複数の偏向素子がそれぞれ、前記複数のアパーチャそれぞれの周囲に配置されている、走査歪み補償器アレイ(601)と、使用時、第1の方向またはp方向の複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査偏向のため、少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を一括マルチビームラスタースキャナ(110)に与えるように構成されている制御ユニット(800)と、して構成されているマルチビーム走査補正システムをさらに備える。走査偏向補償器アレイ(601)は、第1の方向において、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査偏向時の走査誘起収差を補償するため、複数の第1の補正電圧差を複数の第1の偏向素子に与えるように構成されている第1の静的電圧変換ユニットまたはアレイ(611)と、複数の第2の補正電圧差を複数の第2の偏向素子に与えるように構成されている第2の静的電圧変換アレイ(612)と、を備える走査アレイ制御ユニット(scanning array control unit)(622)をさらに備える。第1の静的電圧変換アレイ(611)および第2の静的電圧変換アレイ(612)は、制御ユニット(800)に結合され、第1の走査電圧差VSp(t)と同期して、少なくとも複数の第1の電圧差成分を複数の第1および第2の偏向素子それぞれに与えるように構成されている。
一例において、制御ユニット(800)は、使用時、第1の方向と垂直な第2の方向またはq方向の複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査偏向のため、第2の走査電圧差VSq(t)を一括マルチビームラスタースキャナ(110)に与えるように構成されている。第1の静的電圧変換アレイ(first static voltage conversion array)(611)および第2の静的電圧変換アレイ(612)は、制御ユニット(800)に結合され、第2の走査電圧差VSq(t)と同期して、少なくとも複数の第2の電圧差成分を複数の第1および第2の偏向素子それぞれに与えるように構成されている。一例において、第1の静的電圧変換アレイ(611)は、制御ユニット(800)に結合され、第1の走査電圧差VSp(t)および第2の走査電圧差VSq(t)とそれぞれ同期して、第1の電圧成分および第2の電圧成分を複数の第1の偏向素子それぞれに与えるように構成されている。
一例において、第1または第2の静的電圧変換アレイ(611、612)は、プログラム可能抵抗器アレイ(programmable resistor array)として構成されている。
これにより、像走査と同期して、物体表面上の複数の一次荷電粒子ビームレットの複数の焦点の走査位置が調整され、複数の一次荷電粒子ビームレット間の走査誘起歪み差が最小限に抑えられる。
第3の実施形態において、物体照射ユニットは、走査誘起偏心収差の補償のための第2のマルチビーム走査補正システム(たとえば、走査補償器アレイ(scanning compensator array)(602))であり、サンプルの表面での個々のビームレットの入射角の個別制御のため、第1のマルチビーム走査補正システムと一括マルチビームラスタースキャナとの間に配置されている、第2のマルチビーム走査補正システムを備える。走査誘起偏心収差の補償のための第2の走査補償器アレイ(602)は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の中間像面(intermediate image plane)(321)の近傍に配置され、一次荷電粒子ビームレット(3)それぞれの像走査時の走査誘起偏心収差を補償するため、複数のアパーチャに配置されている複数の偏向素子と、第2の静的電圧変換アレイを備え、複数の第2の補正電圧差を複数の偏向素子それぞれに与えるように構成されている第2の走査アレイ制御ユニット(622.2)と、を備える。これにより、複数の一次ビームレットはそれぞれ、一括マルチビーム偏向スキャナによる複数の一次ビームレットの一括偏向走査と同期して、異なる量の偏向により個別に偏向可能である。これにより、像走査と同期して、物体表面上の複数の一次荷電粒子ビームレットの入射角が調整され、複数の一次荷電粒子ビームレットそれぞれの走査誘起偏心誤差が最小限に抑えられる。
一例において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)のラスター走査時の複数の一次ビームレット(3)の各ビームレットの走査誘起非点収差(scanning induced astigmatism)または焦点面逸脱(focus plane deviation)等の走査誘起収差の補償のための走査非点収差補正器アレイまたは走査レンズアレイとして構成されているマルチビーム走査補正システムをさらに備える。これにより、像走査と同期して、物体表面上の複数の一次荷電粒子ビームレットそれぞれの非点収差等の結像収差が調整され、複数の一次荷電粒子ビームレットそれぞれの走査誘起結像収差が最小限に抑えられる。
第4の実施形態においては、マルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法であって、走査誘起収差の測定による荷電粒子顕微鏡の校正のステップを含む、方法が提供される。別のステップにおいては、静的制御パラメータまたは信号が導出され、補正電極または第1もしくは第2の走査補正システムの駆動電圧差VC(t)の生成のための低減係数が生成される。そして、静的制御パラメータおよび低減された駆動電圧差が第1または第2の走査補正システムに与えられる。像走査時には、低減係数によって、走査偏向電圧差VS(t)が少なくとも1つの駆動または補正電圧差VC(t)へと低減され、補正電極に与えられるため、荷電粒子顕微鏡の動作時の走査誘起収差が抑えられる。
第5の実施形態において、ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を生成するための荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)によって、物体面(101)に配置されているウェハ表面(25)上の像パッチ(17.1)を照射することにより、使用時、ウェハ表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)を生成するための物体照射ユニット(100)と、投射系(205)および像センサ(207)を備え、複数の二次電子ビームレット(9)を像センサ(207)上に結像する(image)とともに、使用時、ウェハ表面(25)の像パッチ(17.1)のデジタル像を取得するための検出ユニット(200)と、少なくとも第1の一組の偏向電極および複数の一次荷電粒子ビームレット(3)が横断する交差ボリューム(189)を備える一括マルチビームラスタースキャナ(110)と、を備える。マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と一括マルチビームラスタースキャナ(110)との間に配置され、交差ボリューム(189)に対する複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の横方向位置を調整するように構成されている第1の静的偏向系(701)をさらに備える。制御ユニット(800)は、使用時、第1の方向またはp方向の複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査偏向のため、少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を一括マルチビームラスタースキャナ(110)に与えるように構成されている。マルチビーム荷電粒子顕微鏡の一括マルチビームラスタースキャナには、使用時に複数の一次荷電粒子ビームレットが伝搬する交差ボリュームが設定されている。第1の実施形態によれば、一括マルチビームラスタースキャナは、不均質走査偏向静電界を交差ボリュームに生成するように構成されている。残留走査誘起収差は、一括マルチビーム偏向スキャナの交差ボリュームにおける複数の一次ビームレットの横方向横断位置および入射角によって決まる。第5の実施形態において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡は、一括マルチビーム偏向スキャナの上流に第1の静的偏向器を備える。第1の静的偏向器により、交差ボリュームにおいて、複数の一次荷電粒子ビームレットの横方向横断位置または入射角が調整される。一例において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の物体照射ユニットは、第1の静的偏向器と一括マルチビームラスタースキャナとの間に、複数の一次ビームレットの横方向横断位置および入射角の調整のための第2の静的偏向器を備える。動作方法においては、第1の静的偏向器によって、交差ボリュームでの横断位置が所定の位置へと調整され、第2の静的偏向器によって、交差ボリューム上の複数の一次ビームレットの平均入射角が調整される。
一例において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と一括マルチビームラスタースキャナ(110)との間に、交差ボリューム(189)の入射側での複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の平均入射角を調整するように構成および設定されている第2の静的偏向系(703)を備える。
これにより、像走査と同期して、物体表面上の複数の一次荷電粒子ビームレットそれぞれの歪みまたは非点収差等の走査誘起結像収差が抑えられ、複数の一次荷電粒子ビームレットそれぞれの走査誘起結像収差が最小限に抑えられる。
第6の実施形態においては、横方向の変位または傾斜が可能な長ストロークラスタースキャナを備える改良されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡が提供される。一例において、横方向の変位または傾斜は、付加的な補正電極により、交差ボリュームに対して偏向静電界を横方向に変位もしくは傾斜させること、または、本発明の第1の実施形態の偏向電極および補正電極に複数の所定の電圧オフセットを与えることによって実現される。代替的な一例において、長ストロークラスタースキャナは、交差ボリュームに対する偏向静電界の変位のため、ガイド要素またはステージを含む機械的手段と、偏向電極および任意選択としての補正電極の横方向位置または傾斜角の調整のための少なくとも1つのアクチュエータと、を備える。
これにより、像走査と同期して、物体表面上の複数の一次荷電粒子ビームレットそれぞれの歪みまたは非点収差等の走査誘起結像収差が抑えられ、複数の一次荷電粒子ビームレットそれぞれの走査誘起結像収差が最小限に抑えられる。
第7の実施形態においては、第5および第6の実施形態の組み合わせを含む改良されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡が提供される。
一例においては、マルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法が提供される。第1のステップ1においては、システムが校正され、実際の制御パラメータがメモリに格納される。第2のステップ2においては、一括マルチビームラスタースキャナの交差ボリュームにおける複数の一次ビームレットのビーム位置が調整される。第5の実施形態に係る一例においては、第1および任意選択としての第2の静的偏向器によって、調整が実現される。第6の実施形態に係る一例においては、一括マルチビーム偏向スキャナに与えられたオフセット信号によって、不均質偏向電界の横方向変位が取得される。第3のステップにおいては、制御信号が与えられる。一例においては、ステップ1において格納された実際の制御パラメータによって、制御信号から補正電界が生成され、走査電圧差と同期する補正電圧差が与えられた補正電極によって、走査補正電界が生成される。一例においては、静的制御信号から、複数の補正電圧差が生成され、マルチビーム走査補正システムによって、ビームレットそれぞれが個別に偏向される。これにより、像走査と同期して、物体表面上の複数の一次荷電粒子ビームレットそれぞれの歪みまたは非点収差等の走査誘起結像収差が抑えられ、複数の一次荷電粒子ビームレットそれぞれの走査誘起結像収差が最小限に抑えられる。
第8の実施形態においては、上述の第1~第7の実施形態の手段のうちの少なくとも2つが組み合わされ、走査誘起収差のさらなる低減が実現される。
本発明の第9の実施形態においては、ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡であって、少なくとも第1の一次荷電粒子ビームレットを生成するためのビームレット生成器と、第1の一次荷電粒子ビームレットによって、物体面に配置されているサンプルの表面の像副視野を照射するための物体照射ユニットと、一括ラスタースキャナとを備えるマルチビーム荷電粒子顕微鏡が提供される。マルチビーム荷電粒子顕微鏡は、像副視野の全体にわたる第1の方向またはp方向の少なくとも1つの第1の一次荷電粒子ビームレットの走査偏向のため、使用時、少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を一括ラスタースキャナに与えるように構成されている制御ユニットであり、像副視野が、少なくとも5μm、好ましくは8μm以上の横方向延伸を有する、制御ユニットと、使用時、第1の一次荷電粒子ビームレットに影響を及ぼすための第1の走査補正電界を生成するように構成されている少なくとも第1の走査補正器と、をさらに備える。制御ユニットは、第1の走査電圧差VSp(t)を第1の走査補正器に与えるように構成されており、第1の走査補正器は、複数の一次荷電粒子ビームレットの一括走査偏向と同期して、第1の一次荷電粒子ビームレットの走査誘起収差を抑えるように構成されている。第1の走査補正器は、第1の走査電圧差VSp(t)を少なくとも第1の走査補正電圧差VCp(t)に変換するための静的電圧変換ユニットであり、第1の走査電圧差VSp(t)と同期して、第1の走査補正電界を生成するように構成されている、静的電圧変換ユニットを備える。静的電圧変換ユニットは、第1の走査電圧差VSp(t)に比例する第1の走査補正電圧差VCp(t)を生成するように構成されるように、複数の静的制御信号によりプログラムされるように構成されている少なくとも1つのプログラム可能抵抗器列を備え得る。制御ユニットは、一括ラスタースキャナによる複数の一次荷電粒子ビームレットの一括ラスター走査と第1の走査補正電界を同期させるように構成されている第1の遅延ラインを備え得る。第1の走査補正器は、使用時、少なくとも第1の一次荷電粒子ビームレットの約0.5nm~5nmの走査誘起歪みを0.3nm未満、好ましくは0.2nm未満または0.1nm未満の小さな量へと補償するように構成されている少なくとも第1の偏向素子を備える。同様に、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の他の走査誘起収差(たとえば、走査誘起非点収差)についても低減可能であるが、これは通常、第1の一次荷電粒子ビームレットの像副視野の像高の増大とともに大きくなる。一例において、走査誘起収差は、残留走査誘起歪みであり、第1の偏向素子は、使用時、第1の方向の一括ラスタースキャナによる複数の一次荷電粒子ビームレットの走査偏向と同期して、第1の方向の第1の一次荷電粒子ビームレットの走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている。第2の偏向素子は、使用時、第1の方向の一括ラスタースキャナによる複数の一次荷電粒子ビームレットの走査偏向と同期して、第1の方向と垂直な第2の方向の第1の一次荷電粒子ビームレットの走査誘起歪みを個別に補償するように構成可能である。一般的に、走査誘起収差は、走査誘起歪み、走査誘起非点収差、走査誘起偏心収差、走査誘起球面収差、または走査誘起コマから成る群の少なくとも1つである。一例において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡は、分散、視野曲率、または静的球面収差の補正のための静的補正システムを備える。一例において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡は、一括ラスタースキャナによる第1の一次荷電粒子ビームレットのラスター走査時の第2の走査誘起収差を抑えるように構成されている第2の走査補正器をさらに備え、第2の走査誘起収差は、たとえば走査誘起非点収差、走査誘起偏心収差、走査誘起球面収差、または走査誘起コマである。
本発明の第4の実施形態においては、荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と、物体照射ユニット(100)と、検出ユニット(200)と、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を一括ラスター走査するための一括マルチビームラスタースキャナ(110)と、一括マルチビームラスタースキャナ(110)の上流で複数の一次荷電粒子の伝搬方向に配置されている走査歪み補償器アレイ(601)と、制御ユニット(800)と、を備えるマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法が提供される。この方法は、
少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を走査アレイ制御ユニット(622)に与えるステップと、
少なくとも第1の電圧差VSp(t)および複数の静的制御信号から、複数の電圧差成分を生成するステップと、
複数の電圧差成分を走査歪み補償器アレイ(601)の複数の偏向素子に与えることにより、複数の一次荷電粒子ビームレットの各ビームレットを個別に走査偏向させて、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の一括ラスター走査時の走査誘起歪みを補償するステップと、
を含む。
一例において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法は、
基準物体の像パッチの全体にわたって複数の一次荷電粒子をラスター走査することにより、走査誘起歪みを決定するステップと、
各一次荷電粒子ビームレットについて、走査誘起歪みの少なくとも線形部の複数の振幅を抽出するステップと、
複数の振幅それぞれから、複数の静的制御信号を導出するステップと、
複数の静的制御信号を走査歪み補償器アレイ(601)の走査アレイ制御ユニット(622)に与えるステップと、
をさらに含む。
本発明の実施形態によれば、複数の一次ビームレットの一括ラスター走査動作と並行に同期して、個々の一次ビームレットの走査誘起収差が補償される。個々の一次ビームレットの走査誘起収差は、複数の個々の電圧差が生成される走査補正器(第1の走査補正器を含む)によって補償される。複数の個々の電圧差は、ラスタースキャナによる第1の走査方向の長ストロークラスター走査に対して生成された電圧差VSp(t)から生成される。したがって、一実施形態に係るウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、少なくとも第1の個々のビームレットを含む複数の一次ビームレットを生成するための生成器と、複数の一次ビームレットによって、物体面に配置されているサンプルの表面上の像パッチを照射することにより、使用時、表面から放出される複数の二次電子ビームレットを生成するための物体照射ユニットと、投射系および像センサを備え、複数の二次電子ビームレットを像センサ上に結像するとともに、使用時、サンプルの表面の像パッチのデジタル像を取得するための検出ユニットと、を備える。実施形態に係るウェハ検査用のマルチビーム顕微鏡は、少なくとも第1の一組の偏向電極および複数の一次ビームレットが横断する交差ボリュームを備える一括マルチビームラスタースキャナと、使用時、少なくとも第1の個々の一次ビームレットに影響を及ぼすための第1の走査静電界を生成するように構成されている少なくとも第1の走査補正器と、第1の方向またはp方向の複数の一次ビームレットの一括ラスター走査のため、使用時、少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を第1の一組の偏向電極に与えるように構成されている制御ユニットと、をさらに備える。制御ユニットは、第1の走査電圧差VSp(t)を第1の走査補正器に与えるようにさらに構成されており、第1の走査補正器は、少なくとも第1の個々のビームレットの走査誘起収差を抑えるように構成されている。一例において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の第1の走査補正器は、第1の走査電圧差VSp(t)を少なくとも第1の走査補正電圧差VCp(t)に変換するための第1の静的電圧変換ユニットであり、第1の走査電圧差VSp(t)と同期して、第1の走査補正電界を生成するように構成されている、第1の静的電圧変換ユニットを備える。一例において、第1の静的電圧変換ユニットは、第1の走査電圧差VSp(t)に比例する第1の走査補正電圧差VCp(t)を生成するように構成されている。一例において、静的電圧変換ユニットは、複数の静的制御信号によりプログラムされるように構成されている少なくとも1つのプログラム可能抵抗器列を備える。一例において、制御ユニットは、一括マルチビームラスタースキャナによる複数の一次ビームレットの一括ラスター走査と第1の走査補正電界を同期させるように構成されている第1の遅延ラインを備える。
一例において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の第1の走査補正器は、使用時、複数の一次ビームレットそれぞれについて、走査誘起歪みを補償するように構成されている複数の偏向素子を備える。たとえば、複数の偏向素子は、使用時、第1の方向の一括マルチビームラスタースキャナによる複数の一次ビームレットの走査偏向と同期して、第1の方向の第1の個々の一次ビームレットの走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている第1の偏向素子と、使用時、第1の方向の一括マルチビームラスタースキャナによる複数の一次ビームレットの走査偏向と同期して、第1の方向と垂直な第2の方向の第1の個々のビームレットの走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている第2の偏向素子と、を含む。複数の偏向素子は、使用時、第1の方向の一括マルチビームラスタースキャナによる複数の一次ビームレットの走査偏向と同期して、第1の方向の第2の個々の一次ビームレットの走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている第3の偏向素子をさらに含む。複数の偏向素子は、使用時、第1の方向の個々の一次ビームレットの走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている他の偏向素子と、使用時、第1の方向の一括マルチビームラスタースキャナによる複数の一次ビームレットの走査偏向と同期して、第2の方向の個々の一次ビームレットの走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている他の偏向素子と、を含む。一例において、静的電圧変換ユニットは、複数の偏向素子のうちのある偏向素子にそれぞれ電気的に接続されている複数のプログラム可能抵抗器列を備えており、複数のプログラム可能抵抗器列は、複数の静的制御信号により制御され、使用時、第1の走査電圧差VSp(t)とそれぞれ同期して、複数の走査補正電圧差VCAp(i,t)を生成するように構成されているプログラム可能抵抗器アレイを構成する。
一例において、第1の走査補正器は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の光軸から逸脱する傾斜角βで交差ボリュームに入射する個々の一次ビームレットの走査誘起収差の低減のため、使用時、一括マルチビーム偏向系の交差ボリュームにおいて生成された不均質静電界分布に寄与するように構成されている少なくとも1つの補正電極を備える。
一実施形態に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法は、走査電圧差VSp(t)を生成するステップと、走査電圧差VSp(t)を一括マルチビームラスタースキャナに与えることにより、第1の方向において、一括マルチビームラスタースキャナにより複数の一次ビームレットを一括偏向走査するステップと、を含む。この方法は、走査電圧差VSp(t)から、走査電圧差VSp(t)と同期して、少なくとも第1の走査補正電圧差VCp(t)を生成するステップと、第1の走査補正電圧差VCp(t)を走査補正器の偏向素子に与えることにより、少なくとも1つの個々の一次ビームレットの走査誘起収差を抑えるステップと、をさらに含む。第1の走査補正電圧差VCp(t)を生成するため、この方法は、複数の静的制御信号を走査補正器に与えることにより、第1の走査補正電圧差VCp(t)を生成するステップを含む。少なくとも1つの一次ビームレットの走査偏向の同期および少なくとも1つの個々のビームレットの走査誘起収差の低減のため、この方法は、第1の走査補正電圧差VCp(t)と走査電圧差VSp(t)との間の所定の時間遅延を生成するステップをさらに含む。
第1~第9の実施形態に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、像またはラスター走査時の像視野における走査位置(p,q)に応じて、少なくとも1つの走査補正電圧差を少なくとも1つの走査補正器または補償素子に与えるように構成されている静的電圧変換アレイを備える。静的電圧変換アレイは、少なくとも1つの共通の長ストローク走査電圧差から、走査補正電圧差を与えることにより、像走査時の像視野における走査位置(p,q)に対する走査誘起収差の依存性を維持するように構成されている。一例において、静的電圧変換アレイは、複数の静的制御信号によりプログラム可能である。マルチビーム荷電粒子顕微鏡は、複数の静的制御信号を静的電圧変換アレイに与えるように構成されている制御ユニットをさらに備える。一例において、制御ユニットは、校正測定により複数の静的制御信号を生成するように構成されている。一例において、制御ユニットは、荷電粒子顕微鏡のステータスのモニタリングによって、複数の静的制御信号を生成するように構成されている。
制御ユニットは、使用時、第1の方向またはp方向の単一または複数の一次ビームレットの長ストローク走査偏向のため、少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を第1の一組の偏向電極に与えるように構成されている。制御ユニットは、第1の走査電圧差VSp(t)を第1の走査補正器に与えるようにさらに構成されており、第1の走査補正器は、少なくとも第1の個々の一次ビームレットの走査誘起収差を抑えるように構成されている。一例において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の第1の走査補正器は、第1の走査電圧差VSp(t)を少なくとも第1の走査補正電圧差VCp(t)に変換するための第1の静的電圧変換ユニットであり、第1の走査電圧差VSp(t)と同期して、第1の走査静電界を生成するように構成されている、第1の静的電圧変換ユニットを備える。第1の静的電圧変換ユニットは、第1の走査電圧差VSp(t)に比例する第1の走査補正電圧差VCp(t)を生成するように構成されている。
一例の静的電圧変換アレイは、複数の静的制御信号によりプログラムされるように構成されているプログラム可能抵抗器アレイとして実施される。プログラム可能抵抗器アレイによって、複数のビームレットそれぞれの走査歪みの補償に必要な動的信号は、一括マルチビームラスタースキャナを駆動するための走査制御ユニットにより生成される走査電圧差VSp(t)およびVSq(t)から得られる2つの走査制御電圧差VCp(t)およびVCq(t)のみに抑えられる。これら2つの制御電圧差VCp(t)およびVCq(t)により、たとえば走査誘起歪み、走査誘起偏心収差、または走査誘起非点収差について、走査誘起収差の補償または補正が実現される。一例において、制御ユニットは、一括マルチビームラスタースキャナによる複数の一次ビームレットの一括ラスター走査と第1の走査補正電界を同期させるように構成されている第1の遅延ラインを備える。補償または補正は、遅延ラインを介して直接つながっているため、走査電圧差VSp(t)およびVSq(t)に直接依存する。したがって、走査誘起収差の補償または補正は、走査動作と同期するとともに、各像副視野の走査座標(p,q)に比例する。一例において、走査誘起収差の大部分を構成する走査誘起収差の線形部は、走査電圧差VSp(t)およびVSq(t)に対して制御電圧差VCp(t)およびVCq(t)が比例することにより補償される。複数の像副視野および対応するビームレットそれぞれについて、走査誘起収差の線形部の振幅は異なり、所要の制御信号は、たとえば共通の制御電圧差VCp(t)およびVCq(t)から電極ごとに対応する比例電圧差が生成されるプログラム可能抵抗器アレイによって、共通の制御電圧差VCp(t)およびVCq(t)から導出される。たとえば走査歪み補償器アレイの電極または一括マルチビームラスタースキャナの補正電極に与えられる個々の電圧差は、プラグラム可能抵抗器アレイのプログラム可能抵抗器列を介して、共通の制御電圧差VCp(t)およびVCq(t)に直接結合される。たとえば、個々のビームレットの走査誘起収差の補償のために電極に与えられる個々の電圧差は、各プログラム可能抵抗器列がプログラムされる複数の所定の静的制御信号によって制御される。これにより、個々の電圧差は、走査電圧差VSp(t)およびVSq(t)ひいては各像副視野の走査座標(p,q)にも比例する。たとえば、少なくとも1つの静的電圧変換アレイおよび個々の偏向電極に至る導電性接続ラインを含む走査歪み補償器アレイの適正なエンジニアリングにより、伝搬効果(すなわち、異なる偏向器の時間遅延)が抑えられ、50MHz以上(たとえば、約80MHzあるいは100MHz)のダイナミックレンジでの走査誘起収差の高度に動的な補償が可能である。ここで、一括マルチビーム偏向系による複数の一次荷電粒子ビームレットの走査偏向と走査誘起収差の補償を同期させるため、静的遅延ラインが実施される。また、高度に動的な補正電圧差を電極に与えるための導電性接続は、高周波接続として構成可能であり、たとえば接地ラインによりシールド可能であって、クロストークまたは放射損失が回避される。
一例において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の走査補正器は、使用時、複数の一次ビームレットそれぞれについて、走査誘起歪みを補償するように構成されている複数の偏向素子を備える。たとえば、複数の偏向素子は、使用時、第1の方向の一括マルチビームラスタースキャナによる複数の一次ビームレットの走査偏向と同期して、第1の方向の第1の個々のビームレットの走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている第1の偏向素子と、使用時、第1の方向の一括マルチビームラスタースキャナによる複数の一次ビームレットの走査偏向と同期して、第1の方向と垂直な第2の方向の第1の個々のビームレットの走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている第2の偏向素子と、を含む。複数の偏向素子は、使用時、第1の方向の一括マルチビームラスタースキャナによる複数の一次ビームレットの走査偏向と同期して、第1の方向の第2の個々のビームレットの走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている第3の偏向素子をさらに含む。一例において、静的電圧変換ユニットは、複数の偏向素子のうちのある偏向素子にそれぞれ接続されている複数のプログラム可能抵抗器列を備えており、複数のプログラム可能抵抗器列は、複数の静的制御信号により制御され、使用時、第1の走査電圧差VSp(t)とそれぞれ同期して、複数の走査補正電圧差VCAp(i,t)を生成するように構成されているプログラム可能抵抗器アレイを構成する。
一例において、第1の走査補正器は、マルチビーム粒子顕微鏡の光軸から逸脱するある角度で交差ボリュームの少なくとも1つのセグメントに伝搬する個々の一次ビームレットの走査誘起収差の低減のため、使用時、一括マルチビーム偏向系の交差ボリュームにおいて生成された不均質静電界分布に寄与するように構成されている少なくとも1つの補正電極を備える。
一実施形態に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法は、走査電圧差VSp(t)を生成するステップと、走査電圧差VSp(t)を一括マルチビームラスタースキャナに与えることにより、第1の方向において、一括マルチビームラスタースキャナにより複数の一次ビームレットを一括偏向走査するステップと、を含む。この方法は、走査電圧差VSp(t)から、走査電圧差VSp(t)と同期して、少なくとも第1の走査補正電圧差VCp(t)を生成するステップと、第1の走査補正電圧差VCp(t)を走査補正器の偏向素子に与えることにより、複数の一次ビームレットのうちの少なくとも1つの個々のビームレットの走査誘起収差を抑えるステップと、をさらに含む。第1の走査補正電圧差VCp(t)を生成するため、この方法は、複数の静的制御信号を走査補正器に与えることにより、第1の走査補正電圧差VCp(t)を生成するステップを含む。複数の一次ビームレットの一括ラスター走査の同期および少なくとも1つの個々のビームレットの走査誘起収差の低減のため、この方法は、第1の走査補正電圧差VCp(t)と走査電圧差VSp(t)との間の所定の時間遅延を生成するステップをさらに含む。
いくつかの例において、ウェハ表面上での複数の一次荷電粒子ビームレットの走査は、第1の一括マルチビームラスタースキャナ(110)によって第1の方向にのみ実現され、ウェハは、ウェハステージによって第2の方向に連続移動する。本例において、第2の方向の走査電圧差VSq(t)は、一定の電圧差またはゼロである。
第1の実施形態に係る複数の一次荷電粒子を一括偏向走査するための一括マルチビームラスタースキャナによれば、使用時の走査誘起収差が抑えられる。また、偏向走査のために所定の不均質電界分布を生成するための一括マルチビームラスタースキャナの最適化された設計によって、走査誘起収差が抑えられる。一括マルチビームラスタースキャナの交差ボリュームを通る伝搬角がビームレットごとに異なることから、残留走査誘起収差もビームレットごとに異なる。一般的には、たとえば光軸に対する距離が類似する帯状の複数の視野点に対して非線形走査収差が最小限に抑えられている場合であっても、他のビームレットに対応するその他の視野点に対して、たとえば残留走査歪みが存在することになる。したがって、本発明は、異なる対称位置で偏向スキャナを横断する2本以上のビームを含むマルチビームシステムと、たとえばマルチビーム走査型電子顕微鏡の大きな視野と、に対して重要である。走査偏向器におけるビーム角の角度拡がりは、対物レンズの焦点距離fで除した視野パッチサイズに対応する。fがそれほど大きくはなり得ず、対物レンズの直径の実用限界により制限されるため、角度拡がりは、シングルビームスキャナと比較して、マルチSEMスキャナでは非常に大きくなる。視野パッチサイズは、たとえば通常のシングルビームSEMと比較して10倍大きい。重ね合わせまたは絶対位置精度が1nmの場合、一括マルチビームラスタースキャナにより与えられる比は、100.000:1である。したがって、16ビットの分解能では不十分であり、偏向電圧差VSp(t)およびVSq(t)を生成するための32ビットDAC変換に対応して、少なくとも32ビットが必要である。
通常、対物レンズは、厚い磁気レンズを含む。複数の一次荷電粒子ビームレットの横断経路は、すべての視野点に対して異なり、走査中に変化する。これにより、走査時には、対物レンズによって、残留収差および個々のビームレット間の収差の差が導入される。偏向電極の修正設計によれば、像走査時の像副視野における走査誘起歪みが抑えられる。たとえば、偏向電極の複数対への分離、偏向電極の方位角方向もしくは長手方向の延伸の修正、または複数の一次荷電粒子ビームレットのラスター構成に対する偏向電極の最適化または適合により、像副視野における走査誘起歪みが抑えられる。また、補正電極の追加によって、走査歪みがさらに抑えられ得る。好適な一例において、偏向系の性能は、対物レンズ(102)等の他の光学素子により誘起される結像収差とともに最適化されるため、一次荷電粒子ビームレットそれぞれについて、複数の像副視野における走査誘起歪みがさらに抑えられる。多数の偏向電極および補正電極による自由度の追加により、複数の偏向電極および複数の補正電極に印加される複数の電圧の調整によって、偏向系の製造公差またはドリフトを補償することができる。第1の実施形態に係る修正された偏向系では、たとえば少なくとも15%、少なくとも20%あるいは30%だけ、残留走査誘起歪みを抑えることができる。従来の偏向系による未補正の走査歪み(たとえば、約2nm)と比較して、第1の実施形態によれば、たとえば1.5nm未満の残留走査歪みが実現される。さらなる改良も実現可能ではあるものの、位置合わせ誤差、ノイズ、およびドリフトの影響を受けやすくなる。結像性能の付加的な改良については、第2の実施形態において記載する。これにより、走査歪みが少なくとも80%だけ抑えられ、0.3nm未満の残留走査誘起歪みが実現される。第1~第8の実施形態の手段のいずれかによって、一括マルチビームラスタースキャナおよび対物レンズ等の他の光学素子による走査誘起収差が補償され、走査誘起収差が効果的に最小化される。第8の実施形態に記載のような実施形態の組み合わせによって、残留走査歪みが少なくとも90%(たとえば、95%)だけ抑えられ、たとえば0.2nm未満、好ましくは0.1nm未満、あるいはさらに小さな残留走査誘起歪みが実現される。
本発明の実施形態によれば、複数の一次ビームレットの一括ラスター走査と並行に同期して、個々の一次ビームレットの走査誘起収差が補償される。個々の一次ビームレットの走査誘起収差は、複数の個々の電圧差の提供または複数の個々の電圧差の生成がなされる走査補正器(第1の走査補正器を含む)によって補償される。走査誘起収差の補正または補償のための複数の個々の電圧差は、一括マルチビームラスタースキャナによる一括ラスター走査のために生成される電圧差VSp(t)およびVSq(t)から生成される。本発明は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の走査誘起収差、特に、走査誘起歪みを最小限に抑えるための解決手段を提供する。従来のマルチビーム荷電粒子顕微鏡の結像性能は、走査歪み[dp,dq]により低下する。たとえば、走査誘起歪みにより、ウェハ表面の像パッチのデジタル像の全体にわたって、重ね合わせ誤差ならびに画素間隔もしくは画素サイズの変動が発生する。多数(J個)のビームレットを含むシステムの場合は、走査誘起歪みが大きくなり、2nm~5nm以上の値に達する可能性もある。走査歪みのほか、走査非点収差または走査焦点ずれ等の他の走査誘起結像収差によっても結像性能は低下する。本発明の一態様として、所要の走査補正は、走査誘起収差に対応する巨大データレートの低減により実現され、走査収差の補償を高速に行うことができる。走査誘起収差の補正または補償は、像副視野それぞれについて、走査誘起収差を所定の一組の走査誘起収差ベクトルに展開することと、複数の像副視野それぞれについて、正規化走査誘起収差ベクトルの複数の振幅を決定することと、各像副視野の振幅から、複数の静的補正または補償制御信号を導出することと、各像副視野において、第1および第2の走査方向(p,q)の共通の走査電圧差VSp(t)、VSq(t)に比例する静電補償または補正素子のための制御電圧差を取得することと、によって可能となり、このように比例することは、静的補正または補償制御信号により制御される静的電圧変換アレイによって実現される。たとえば、複数のJ個の像副視野において、一括マルチビームラスタースキャナによる複数のJ個の一次荷電粒子ビームレットの走査により並行して走査された場合の複数のJ個の線形走査歪みは、ビームレットごとの少なくとも1つの補正静電界により補償され、少なくとも1つの静電補償または補正素子により生成されるため、J個のビームレットそれぞれについて、少なくとも1つの静電補償または補正素子の補正電圧差がそれぞれ、静的電圧変換アレイにより与えられる。静的電圧変換アレイは、たとえば複数のプログラム可能抵抗器列を備えるプログラム可能抵抗器アレイとして実施され、一括マルチビームラスタースキャナによる第1および第2の方向(p,q)の複数のJ個の一次荷電粒子ビームレットの並行走査に対して、高度に動的な2つの駆動信号が共通の走査電圧差VSp(t)およびVSq(t)に比例する。
別途詳細については、実施形態の例において記載する。他の実施形態には、上述の例および実施形態の組み合わせまたは変形を含む。
以下、添付の図面を参照して、さらに詳細を開示する。
一実施形態に係る、マルチビーム荷電粒子顕微鏡システムを示す図である。 第1および第2の像パッチを含む第1の検査部位ならびに第2の検査部位の座標を示す図である。 複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の静的歪みオフセットを示す図である。 軸方向ビームレットの走査偏向器における走査偏向を示す図である。 伝搬角βの軸外ビームレットの走査誘起歪みを有する走査偏向器における走査偏向を示す図である。 伝搬角βの軸外ビームレットの場合の走査誘起偏心収差を示す図である。 a)走査歪みベクトルdp、dqおよびb)走査歪みの振幅について、像副視野座標(p,q)を伴う像副視野の全体にわたる走査時の単一ビームレットの通常の走査誘起歪みを示す図である。 複数の一次荷電粒子ビームレットについて、像副視野中心座標をxij、yijとする像副視野ごとの最大走査歪みベクトルを示す図である。 複数の一次荷電粒子ビームレットの交差ボリュームの内側に不均質偏向静電界を生成するための一括マルチビームラスタースキャナの偏向電極および補正電極の2つの例を示す図である。 a)単一の偏向電極の場合、b)2つの個々の電極により構成された偏向電極の場合について、走査偏向のための走査角αに応じた電圧差を示す図である。 複数の一次荷電粒子ビームレットの交差ボリュームの内側に不均質偏向静電界を生成するため、伝搬方向に配置されている一括マルチビームラスタースキャナの偏向電極および補正電極を示す図である。 複数の一次荷電粒子ビームレットの交差ボリュームの内側に不均質偏向静電界を生成するための異なる長さの偏向電極を示す図である。 偏心収差のマルチビーム走査歪み補償器アレイまたは走査補償器アレイの複数のアパーチャに配置されている複数の偏向素子を示す図である。 走査歪み補償器アレイの例における走査アレイ制御ユニットを示す図である。 静的電圧変換ユニットの一例としてのプログラム可能抵抗器アレイを示す図である。 走査電圧差の例における駆動信号の一例を示す図である。 走査誘起収差が抑えられたマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法を示す図である。 a)、b)は、4つの線形歪みベクトルSDV(i)の像パッチ座標(x,y)に対する通常の視野依存性および副視野座標(p,q)を有する像副視野におけるそれぞれのシグネチャを示す図である。 c)、d)は、4つの線形歪みベクトルSDV(i)の像パッチ座標(x,y)に対する通常の視野依存性および副視野座標(p,q)を有する像副視野におけるそれぞれのシグネチャを示す図である。 e)、f)は、4つの線形歪みベクトルSDV(i)の像パッチ座標(x,y)に対する通常の視野依存性および副視野座標(p,q)を有する像副視野におけるそれぞれのシグネチャを示す図である。 g)、h)は、4つの線形歪みベクトルSDV(i)の像パッチ座標(x,y)に対する通常の視野依存性および副視野座標(p,q)を有する像副視野におけるそれぞれのシグネチャを示す図である。 調整用の付加的な第1および第2の静的マルチビーム偏向系を備えるマルチビーム荷電粒子顕微鏡を示す図である。 位置ずれを伴うシステムの走査誘起歪み収差の像パッチ座標(x,y)に対する通常の視野依存性を示す図である。 本発明の第8の実施形態に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡を示す図である。 複数の一次荷電粒子ビームレットの交差ボリュームの内側に不均質偏向静電界を生成するための光軸に対してある傾斜角の走査補正電極の一例を示す図である。
後述の例示的な実施形態において、機能および構造が類似する構成要素は、可能な限り、同様または同一の参照番号で示す。
図1の模式的表現は、本発明のいくつかの実施形態に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡システム1の基本的な特徴および機能を示している。図中で使用する記号は、図示の構成要素の物理的構成を表すのではなく、それぞれの各機能を記号で表すために選定したものであることに留意されたい。図示のようなシステムは、対物レンズ102の物体面101に上面25が配置されているウェハ等の物体7の表面に複数の一次荷電粒子ビームスポット5を生成するための複数の一次電子ビームレット3を用いたマルチビーム走査型電子顕微鏡(MSEMまたはマルチSEM)のものである。簡素化のため、5つの一次荷電粒子ビームレット3および5つの一次荷電粒子ビームスポット5のみを示している。マルチビームレット荷電粒子顕微鏡システム1の特徴および機能は、電子またはイオン(特に、ヘリウムイオン)等の他種の一次荷電粒子を使用することにより実施可能である。
顕微鏡システム1は、物体照射ユニット100、検出ユニット200、および一次荷電粒子ビーム経路13から二次荷電粒子ビーム経路11を分離するビームスプリッタユニット400を備える。物体照射ユニット100は、複数の一次荷電粒子ビームレット3を生成するための荷電粒子マルチビーム生成器300を備え、サンプルステージ500によってウェハ7の表面25が配置される物体面101に複数の一次荷電粒子ビームレット3を集束させるように構成されている。
一次ビーム生成器300は、物体照射ユニット100の視野曲率を補償するために通常は球状の湾曲面である中間像面321において、複数の一次荷電粒子ビームレットスポット311を生成する。一次ビームレット生成器300は、一次荷電粒子(たとえば、電子)源301を備える。一次荷電粒子源301は、少なくとも1つのコリメータレンズ303により平行化されて平行ビームを構成する発散一次荷電粒子ビーム309を放出する。コリメータレンズ303は通例、1つまたは複数の静電または磁気レンズ、あるいは静電レンズおよび磁気レンズの組み合わせから成る。平行化された一次荷電粒子ビームは、一次マルチビーム構成ユニット305に入射する。マルチビーム構成ユニット305は基本的に、一次荷電粒子ビーム309により照射される第1のマルチアパーチャプレート306.1を備える。第1のマルチアパーチャプレート306.1は、平行化一次荷電粒子ビーム309の透過によって複数の一次荷電粒子ビームレット3を生成するためのラスター構成の複数のアパーチャを備える。マルチビームレット構成ユニット305は、ビーム309の電子の移動方向に対して、第1のマルチアパーチャプレート306.1の下流に配置されている少なくとも他のマルチアパーチャプレート306.2および306.3を備える。たとえば、第2のマルチアパーチャプレート306.2は、マイクロレンズアレイの機能を有し、中間像面321において複数の一次ビームレット3の焦点位置が調整されるように、規定の電位に設定されるのが好ましい。第3のマルチアパーチャアクティブプレート構成306.3(図示せず)は、複数のアパーチャごとに個々の静電素子を備えることにより、複数のビームレットそれぞれに個別の影響を及ぼす。マルチアパーチャアクティブプレート構成306.3は、静的偏向器アレイ、マイクロレンズアレイ、または非点収差補正器アレイを構成するマイクロレンズ用の円形電極、多極電極、または一連の多極電極等の静電素子を備える1つまたは複数のマルチアパーチャプレートから成る。マルチビームレット構成ユニット305には、隣り合う第1の静電視野レンズ307が構成されており、第2の視野レンズ308および第2のマルチアパーチャプレート306.2と併せて、複数の一次荷電粒子ビームレット3が中間像面321またはその近傍に集束される。マルチビームレット構成ユニット305の下流には、本発明の第2の実施形態に係る走査歪み補償器アレイ601が配置されている。走査歪み補償器アレイ601については、以下により詳しく説明する。
中間像面321またはその近傍においては、複数の荷電粒子ビームレット3それぞれを個別に操作する静電素子(たとえば、偏向器)を備える複数のアパーチャを含む静的ビームステアリングマルチアパーチャプレート390が配置されている。ビームステアリングマルチアパーチャプレート390のアパーチャには、複数の一次荷電粒子ビームレット3の焦点スポットが中間像面またはそれぞれの横方向設計位置からずれている場合であっても、一次荷電粒子ビームレット3の通過を可能にする大きな直径が設定されている。中間像面の近傍には、本発明の第3の実施形態に係る、走査誘起偏心誤差を補償するための走査補償器アレイ602が配置されている。走査誘起偏心誤差を補償するための走査補償器アレイ602については、以下により詳しく説明する。一例においては、ビームステアリングマルチアパーチャプレート390および走査補償器アレイ602を単一のマルチアパーチャ素子として構成することも可能である。
中間像面321を通過する一次荷電粒子ビームレット3の複数の焦点は、視野レンズ群103と、物体7の調査面25が配置される物体面101の対物レンズ102と、によって結像される。物体照射システム100は、第1のビームクロスオーバ108に近接して、ビーム伝搬方向または対物レンズ102の光軸105と垂直な方向に複数の荷電粒子ビームレット3を偏向可能な一括マルチビームラスタースキャナ110をさらに備える。図1の例において、光軸105は、z方向と平行である。本発明の第1の実施形態に係る一括マルチビームラスタースキャナ110は、複数の一次荷電粒子が異なる伝搬角βで当該一括マルチビームラスタースキャナ110を通過する場合の最小走査誘起歪みに対して最適化されている。第1の実施形態に係る一括マルチビームラスタースキャナ110の詳細については、以下に説明する。対物レンズ102および一括マルチビームラスタースキャナ110は、ウェハ表面25と垂直なマルチビームレット荷電粒子顕微鏡システム1の光軸105を中心とする。そして、像面101に配置されているウェハ表面25が一括マルチビームラスタースキャナ110によってラスター走査される。これにより、ラスター構成に配置されている複数のビームスポット5を構成する複数の一次荷電粒子ビームレット3がウェハ表面101上で同期して走査される。一例において、複数の一次荷電粒子ビームレット3の焦点スポット5のラスター構成は、およそ100本以上の一次荷電粒子ビームレット3の六角形ラスターである。一次ビームスポット5は、距離がおよそ6μm~15μmで、直径が5nm未満(たとえば、3nm、2nm、あるいはそれ以下)である。一例においては、ビームスポットサイズがおよそ2nmであり、2つの隣り合うビームスポット間の距離が8μmである。複数の一次ビームスポット5それぞれの各走査位置においては、複数の二次電子が生成され、一次ビームスポット5と同じラスター構成の複数の二次電子ビームレット9を構成する。各ビームスポット5で生成される二次荷電粒子ビームレットの強度は、対応するスポットを照らす衝突一次荷電粒子ビームレット3の強度、ビームスポット5下の物体7の材料組成およびトポグラフィによって決まる。サンプル帯電ユニット503により生成された静電界によって二次荷電粒子ビームレット9が加速され、対物レンズ102により収集され、ビームスプリッタ400によって検出ユニット200へと案内される。検出ユニット200は、二次電子ビームレット9を像センサ207上に結像して、複数の二次荷電粒子像スポット15を形成する。検出器は、複数の検出器画素または個々の検出器を含む。複数の二次荷電粒子ビームスポット15それぞれについて強度が別々に検出され、ウェハ表面25の材料組成が高分解能で検出されて、高スループットの大きな像パッチが実現される。たとえば、8μmピッチの10×10ビームレットのラスターによって、一括マルチビームラスタースキャナ110による1回の像走査で約88μm×88μmの像パッチが生成され、像分解能は、たとえば2nm以下である。たとえば、像パッチは、ビームスポットサイズの半分でサンプリングされるため、各ビームレットの像ラインあたりの画素数が8000画素となり、100個のビームレットにより生成される像パッチを表すデジタルデータセットは、64億画素を含む。像データは、制御ユニット800により収集される。たとえば並列処理を用いた像データの収集および処理の詳細については、独国特許出願第102019000470.1号および米国特許第9536702号に記載されており、これらを本明細書に援用する。
複数の二次電子ビームレット9は、第1の一括マルチビームラスタースキャナ110を通過する際に走査偏向され、ビームスプリッタユニット400によって、検出ユニット200の二次ビーム経路11をたどるようにガイドされる。複数の二次電子ビームレット9は、一次荷電粒子ビームレット3と反対方向に推移し、ビームスプリッタユニット400は、通例は磁界または磁界および静電界の組み合わせによって、一次ビーム経路13から二次ビーム経路11を分離するように構成されている。任意選択としては、一次または二次ビーム経路にも付加的な磁気補正素子420が存在する。投射系205は、投射系制御ユニット820に接続されている少なくとも第2の一括ラスタースキャナ222をさらに備える。制御ユニット800は、複数の二次電子焦点スポット15の位置が像センサ207で一定に保たれるように、複数の二次電子ビームレット9の複数の焦点15の位置の残差を補償するように構成されている。
検出ユニット200の投射系205は、他の静電または磁気レンズ208、209、210と、アパーチャ214が配置されている複数の二次電子ビームレット9の第2のクロスオーバ212を含む。一例において、アパーチャ214は、投射系制御ユニット820に接続されている検出器(図示せず)をさらに備える。投射系制御ユニット820は、少なくとも1つの静電レンズ206および第3の偏向ユニット218にさらに接続されている。投射系205は、複数の二次電子ビームレット9それぞれに個別の影響を及ぼすアパーチャおよび電極を備える少なくとも第1のマルチアパーチャ補正器220と、任意選択としての別の能動素子216(たとえば、制御ユニット800に接続されている多極素子)と、をさらに備える。
像センサ207は、投射レンズ205によって像センサ207上に集束された二次電子ビームレット9のラスター構成に適合したパターンの検知エリアのアレイにより構成されている。これにより、像センサ207に入射するその他の二次電子ビームレット9から独立して、個々の二次電子ビームレット9を検出可能となる。複数の電気信号が生成され、デジタル像データに変換されて、制御ユニット800において処理される。像走査中、制御ユニット800は、像センサ207のトリガによって、複数の二次電子ビームレット9からの複数の時間分解強度信号を所定の時間区間において検出するように構成されており、複数の一次荷電粒子ビームレット3のすべての走査位置から、像パッチのデジタル像が蓄積され、一体的にステッチングされる。
図1に示す像センサ207としては、CMOSまたはCCDセンサ等の電子感受性検出器アレイが可能である。このような電子感受性検出器アレイは、シンチレータ素子またはシンチレータ素子のアレイ等の電子-光子変換ユニットを備え得る。一例において、像センサ207は、複数の二次電子粒子像スポット15の焦点面に配置されている電子-光子変換ユニットまたはシンチレータプレートとして構成可能である。本例において、像センサ207は、複数の光電子増倍管またはアバランシェフォトダイオード(図示せず)等の専用光子検出素子において、二次荷電粒子像スポット15で電子-光子変換ユニットにより生成された光子を結像してガイドする中継光学系をさらに備え得る。このような像センサは、上記引用の米国特許第9536702号に開示されている。一例において、中継光学系は、光を分割して第1の低速光検出器および第2の高速光検出器にガイドするビームスプリッタをさらに備える。第2の高速光検出器は、たとえばアバランシェフォトダイオード等のフォトダイオードアレイによって構成されており、複数の一次荷電粒子ビームレット3の走査速度に応じて複数の二次電子ビームレット9の像信号を分解するのに十分高速である。第1の低速光検出器は、CMOSまたはCCDセンサであるのが好ましく、複数の二次電子ビームレット9または焦点スポット15をモニタリングするとともに、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作を制御するための高分解能センサデータ信号を提供する。
本例において、一次荷電粒子源は、エミッタチップおよび抽出電極を特徴とする電子源301の形態で実施されている。たとえばヘリウムイオンのように、電子以外の一次荷電粒子を使用する場合は、一次荷電粒子源301の構成を図示のものと異ならせることができる。一次荷電粒子源301、アクティブマルチアパーチャアクティブプレート構成306.1・・・306.3、およびビームステアリングマルチアパーチャプレート390は、制御ユニット800に接続されている一次ビームレット制御モジュール830によって制御される。
ステージ500は、複数の一次荷電粒子ビームレット3の走査による像パッチの取得時には移動せず、像パッチの取得後、次に取得する像パッチまで移動するのが好ましい。代替的な一実施態様において、ステージ500は、一括マルチビームラスタースキャナ110による複数の一次荷電粒子ビームレット3の第1の方向の走査によって像が取得されている間、第2の方向に連続移動する。ステージの移動およびステージの位置は、レーザ干渉計、格子干渉計、共焦点マイクロレンズアレイ等、当技術分野において知られているセンサによりモニタリングおよび制御される。
像パッチの取得によるウェハ検査の方法を図2においてより詳しく説明する。ウェハは、第1の像パッチ17.1の中心21.1で、そのウェハ表面25を複数の一次荷電粒子ビームレット3の焦点面内として配置されている。像パッチ17.1・・・kの所定の位置は、半導体フィーチャの検査のためのウェハの検査部位に対応する。用途は、ウェハ表面25に限定されず、たとえば半導体加工に用いられるリソグラフィマスクにも適用可能である。したがって、単語「ウェハ(wafer)」は、半導体ウェハに限定されず、半導体加工時に使用または加工される一般的な物体を含むものとする。
第1の検査部位33および第2の検査部位35の所定の位置は、標準的なファイルフォーマットの検査ファイルからロードされる。所定の第1の検査部位33は、複数の像パッチ(たとえば、第1の像パッチ17.1および第2の像パッチ17.2)に分割されており、第1の像パッチ17.1の第1の中心位置21.1は、検査タスクの第1の像取得ステップのため、マルチビーム荷電粒子顕微鏡システム1の光軸105下に位置合わせされる。第1の像パッチの第1の中心21.1は、第1の像パッチ17.1の取得のための第1のローカルウェハ座標系の原点として選択される。当技術分野においては、ウェハ表面25が位置決めされ、ウェハ座標の局所座標系が生成されるようにウェハ7を位置合わせする方法がよく知られている。
複数の一次ビームレット3は、各像パッチ17.1・・・kにおいて、規則的なラスター構成にて分布しており、ラスター走査機構による走査によって、像パッチのデジタル像が生成される。本例において、複数の一次荷電粒子ビームレット3は、N個の一次ビームスポット5.11、5.12~5.1NがN個のビームスポットとして第1のラインに存在し、M本のラインでビームスポット5.11~5.MNを含む矩形のラスター構成に配置されている。簡素化のため、M=5×N=5個のビームスポットを図示しているが、ビームスポットの数J=M×Nは、これより大きくすることも可能であり(たとえば、J=61ビームレットまたは約100ビームレット以上)、複数のビームスポット5.11~5.MNは、六角形または円形等のさまざまなラスター構成を有し得る。
一次荷電粒子ビームレットはそれぞれ、ウェハ表面25上で走査され、図示のように、ビームスポット5.11および5.MNを含む一次荷電粒子ビームレットの例では、走査経路27.11および27.MNが存在する。複数の一次荷電粒子それぞれの走査は、たとえば走査経路27.11・・・27.MNによる前後移動にて実行されるが、各一次荷電粒子ビームレットの各焦点5.11・・・5.MNは、たとえば本例における像副視野31.mnの最も左側の像点である像副視野ラインの開始位置からのx方向の一括マルチビーム走査偏向系110の走査によって移動する。そして、右側位置への一次荷電粒子ビームレット3の一括走査により各焦点5.11・・・5.MNが一括走査された後、一括マルチビームラスタースキャナ110は、各副視野31.11・・・31.MNにおける次のラインのライン開始位置へと複数の荷電粒子ビームレットそれぞれを並行して移動させる。後続の走査ラインのライン開始位置に戻す移動は、フライバックと称する。複数の一次荷電粒子ビームレット3が走査経路27.11~27.MNを並行にたどることから、各副視野31.11~31.MNの複数の走査像が並行して得られる。像取得に関しては、上述の通り、焦点5.11~5.MNで複数の二次電子が放出され、複数の二次電子ビームレット9が生成される。複数の二次電子ビームレット9は、対物レンズ102により収集され、第1の一括マルチビームラスタースキャナ110を通過し、検出ユニット200にガイドされて、像センサ207により検出される。複数の二次電子ビームレット9それぞれのデータの連続ストリームが走査経路27.11・・・27.MNと同期して複数の二次元データセットに変換され、各像副視野のデジタル像データを構成する。複数の像副視野の複数のデジタル像は最終的に、像ステッチングユニットによる一体的なステッチングによって、第1の像パッチ17.1のデジタル像を構成する。各像副視野には、副視野31.mnおよび副視野31.m(n+1)の重畳エリア39によって示すように、隣り合う像副視野との小さな重畳エリアが設定されている。
次に、ウェハ検査タスクの要件または仕様を説明する。高スループットのウェハ検査の場合は、像後処理に要する時間を含めて、各像パッチ17.1・・・kの像取得の時間を高速にする必要がある。一方、像分解能、像精度、および再現性等の像品質に関する厳しい仕様を維持する必要もある。たとえば、像分解能の要件は通常、高い再現性で2nm以下である。像精度は、像忠実度とも称する。たとえば、フィーチャのエッジ位置、一般的にはフィーチャの絶対位置精度は、高い絶対精度で決まることになる。通常、位置精度の要件は、分解能要件のおよそ50%以下である。たとえば、測定タスクでは、1nm未満、0.3nmあるいは0.1nm未満の精度にて、半導体フィーチャの寸法の絶対精度を必要とする。したがって、複数の一次荷電粒子ビームレット3の焦点スポット5それぞれの横方向位置精度は、1nm未満(たとえば、0.3nm未満あるいは0.1nm未満)にする必要がある。高い像再現性の下、同じエリアの繰り返し像取得では、第1および第2の繰り返しデジタル像が生成され、第1および第2の繰り返しデジタル像間の差が所定の閾値を下回ることが了解される。たとえば、第1および第2の繰り返しデジタル像間の像歪みの差は、1nm未満(たとえば、0.3nmあるいは好ましくは0.1nm未満)が必要であり、像コントラストの差は、10%未満が必要である。このように、結像動作の繰り返しによっても、同様の像結果が得られる。このことは、たとえば異なるウェハダイにおける類似の半導体構造の像取得および比較、あるいは、CADデータによる像シミュレーションもしくはデータベースから得られた代表像または基準像に対する取得像の比較にとって重要である。
ウェハ検査タスクの要件または仕様のうちの1つがスループットである。取得時間当たりの測定面積は、ビームレットの滞留時間、分解能、および数によって決まる。滞留時間の通常の例は、20ns~80nsである。したがって、高速像センサ207における画素レートは、12MHz~50MHzの範囲であり、毎分およそ15個~20個の像パッチまたはフレームを取得することも可能である。100個のビームレットの場合、画素サイズが0.5nmの高分解能モードでのスループットの通常の例は、およそ0.045平方mm/分(平方ミリメートル/分)であり、ビームレットの増数の場合(たとえば、ビームレットが10000個で滞留時間が25nsの場合)は、7平方mm/分を超えるスループットが可能である。ただし、従来技術のシステムにおいては、デジタル像処理に対する要件がスループットを大幅に制限する。たとえば、従来技術の走査歪みのデジタル補償は、非常に時間がかかるため望ましくない。本発明の実施形態においては、像後処理の要件が抑えられ、高精度な測定タスクのスループットが向上する。本発明の実施形態によれば、上述の要件内に像性能仕様を十分に維持しつつ、ウェハ検査タスクの高スループットを実現可能である。
荷電粒子顕微鏡1の結像性能は、物体照射ユニット100の静電または磁気素子の設計および高次収差のほか、たとえば一次マルチビームレット構成ユニット305の製造公差によって制限される。結像性能は、たとえば複数の荷電粒子ビームレットの歪み、焦点収差、偏心、および非点収差等の収差によって制限される。図3は、像面101における複数の一次荷電粒子ビームレット3の通常の静的歪み収差を一例として示している。複数の一次荷電粒子ビームレット3は、像面において集束され、ラスター構成(本例においては、六角形ラスター)の複数の一次荷電粒子ビームスポット5(3つを示す)を構成する。理想的なシステムにおいては、一括マルチビームラスタースキャナ110がオフに切り替えられた状態で、対応する像副視野31.mn(添え字mがライン番号、nが列番号)の中心位置29.mn(図2参照)にビームスポット5がそれぞれ形成される。ただし、現実のシステムにおいては、図3の静的歪みベクトルで示すような、理想的なラスター上の理想的な位置からわずかに逸脱する位置にビームスポット5が形成される。一次ビームスポット141の図示の例の場合、六角形ラスター上の理想的な位置からの逸脱は、歪みベクトル143により表される。歪みベクトルは、理想的な位置からの横方向差分[dx,dy]を与え、歪みベクトルの最大絶対値としては、数ナノメートルの範囲(たとえば、1nm超、2nmあるいは5nm超)が可能である。通常、現実のシステムの静的歪みベクトルは、マルチアパーチャアクティブプレート構成306.2のいずれか等、静的偏向素子のアレイによって測定および補償される。また、静的歪みのドリフトまたは動的変化は、2020年5月28日に出願された独国特許出願第102020206739.2に記載のように考慮および補償されるが、これを本明細書に援用する。収差の制御および補償は、モニタリングもしくは検出システム、ならびに、たとえば像走査時に複数回、補償器を駆動し得る制御ループによって実現され、これによりマルチビーム荷電粒子顕微鏡1の収差が補償される。
ただし、荷電粒子顕微鏡の結像性能は、物体照射ユニット100の静電または磁気素子の設計収差およびドリフト収差のみならず、特に、第1の一括マルチビームラスタースキャナ110によっても制限される。シングルビーム顕微鏡については、偏向走査システムおよびそれぞれの特性が十分に調査されている。ただし、マルチビーム顕微鏡の場合、複数の荷電粒子ビームレットの走査偏向のための従来の偏向走査システムは、従来技術において開示されていない固有の特性を示す。この固有の特性については、図4の偏向スキャナを通るビーム経路にてより詳しく示している。
図4aは、偏向電極153.1および153.2ならびに電圧源を備える従来技術の走査偏向器110を通る単一の一次荷電粒子ビームのビーム経路を示している。簡素化のため、第1の方向のラスター走査偏向用の偏向スキャナ電極のみを示している。使用時には、走査偏向電圧差VSp(t)が印加され、電極153.1および153.2間に等電位線155を伴って静電界が形成される。像パッチ中心29.cを伴う像パッチ31.cに対応する軸方向荷電粒子ビームレット150aは、光軸105と一致し、静電界により偏向して、現実のビーム経路151fに沿って偏向電極153.1および153.2間で交差ボリューム189を通過する。ビーム軌道(beam trajectory)は、ピボット点(pivot point)159に単一の仮想偏向を有する1次ビーム経路150aおよび150fにより近似可能である。経路150zに沿って進行する荷電粒子ビームレットは、対物レンズ102によって、図4aの下部に示す物体面101に集束される。副視野座標は、副視野31.cの中心点29.cに対する相対座標(p,q)にて与えられる。
座標pfの最大副視野点への最大偏向の場合は、最大電圧差VSpmaxが印加され、距離pzの副視野点への入射ビームレット150aの偏向の場合は、対応する電圧VSpが印加され、入射ビームレット150aは、ビーム経路150zの方向に偏向角αだけ偏向する。偏向器の非線形性は、偏向角αおよび偏向器電圧差VSpの関数依存性を決定することにより補償される。関数依存性VSp(sin(α))の校正により、単一の一次荷電粒子ビームレットの偏向走査のための単一の共通ピボット点159を伴って、単一の荷電粒子ビームレットに対するほぼ理想的なスキャナが実現される。なお、像面におけるビームスポット位置の横方向変位(p,q)は、sin(α)を乗じた対物レンズ102の焦点距離fに比例することに留意されたい。帯状の視野点の例では、pz=fsin(αz)である。小さな角度αの場合、関数sin(α)は通常、αで近似される。以下により詳しく説明する通り、シングルビーム顕微鏡の場合は走査誘起歪みを最小化可能である、という事実にも関わらず、非点収差、焦点ずれ、コマ、または球面収差等の他の走査誘起収差によって、視野サイズの大きな荷電粒子顕微鏡の分解能が低下し得る。また、視野サイズが大きくなるにつれ、仮想ピボット点159からの逸脱がますます有意となる。
マルチビームシステムにおいては、同じ偏向スキャナによって、関数依存性VSp(sin(α))に応じた同じ電圧差で複数の荷電粒子ビームレットが並行して走査される。図4bにおいて、複数の一次荷電粒子ビームレットのクロスオーバ108は、軸方向一次ビームレット150aの仮想ピボット点159と一致し、荷電粒子ビームレットはそれぞれ、異なる角度で静電界を通過する。像副視野中心29.oを伴う対応する副視野31.oと併せて、入射角βの荷電粒子ビームレット157aを示している。角度βは、対物レンズ102の焦点距離fを用いることにより、中心座標29.oから光軸105までの距離Xとsin(β)=X/fで関連付けられている。偏向スキャナ110がオフに切り替えられた状態で(VSp(t)=0V)、ビームレットは、経路157aを進み、対物レンズ102によって副視野31.oの中心点29.oに集束される。ただし、電圧差が印加された場合は、図4aに示すように、偏向スキャナが軸方向ビームレットに対して略理想的である、という事実にも関わらず、入射角βの視野ビームレットに対しては理想的ではない。偏向電界の有限厚さのため、静電界を通る経路長は、異なる入射角βの入射ビームレットごとに異なり、現実のビーム経路157zおよび157fは、理想的な1次ビーム経路163zおよび163fから逸脱する。これを座標pzおよびpfの2つの副視野点に対するビーム経路について、現実のビーム経路157zおよび157fで示す。現実のビーム経路157zおよび157fの角度は、理想的なビーム経路163zおよび163fの角度から逸脱しており、各ビームは、ビームクロスオーバ108から逸脱する異なる仮想ピボット点161zおよび161fで仮想的に偏向する。たとえば、電圧VSp(sin(α0))が印加される場合、一次荷電粒子ビームレット157aは、角度α0の代わりに角度α1だけ偏向し、仮想偏向点161zを含むビーム経路157zをたどる。したがって、荷電粒子ビームスポットが局所歪みベクトルdpzだけ歪む。
偏向角の逸脱は、入射角βの増大とともに大きくなり、一括マルチビームラスタースキャナ110によって大きな走査誘起歪みが生じる。本発明の第1の実施形態においては、一括マルチビームラスタースキャナ110の設計および動作の修正によって、走査誘起歪みが抑えられる。本発明の第2の実施形態においては、第1のマルチビーム走査補正システム601が提供され、残留走査誘起歪みがさらに抑えられる。
偏向角αの差によって走査誘起歪みが生じ、仮想ピボット点の位置の差が走査誘起偏心収差の原因となる。図5は、走査一括マルチビームラスタースキャナ110の前段のシステム171を簡易的に示しており、ここから、複数の一次荷電粒子が第1の一括マルチビームラスタースキャナ110に入射する。軸方向荷電粒子ビームレット3.0および軸外ビームレット3.1を含む2つのビームレットによって複数の荷電粒子ビームレットを示しているが、これらは、ラスタースキャナ110の交差ボリューム189を通過し、対物レンズ102により集束されて、ウェハ7の表面25上の焦点5.0および5.1で示す複数の焦点を構成する。ラスタースキャナ110がオフ状態で、電極153に電圧差VSpが印加されていない場合、ビームスポット5.0および5.1は、各像副視野の中心点29.0および29.1にある。電圧差VSp(sin(α0))が印加されている場合、ビームレット3.0は、理想的な経路150をたどって、帯状の視野点Z0に偏向する。図5の線形表現において、ビームレット3.0は、図4aの仮想ピボット点159に対応するビームクロスオーバ108において偏向しているように見える。したがって、ビームレット3.0は、中心位置29.0と同じ入射角でウェハ表面25を照射する。軸外ビームレット3.1は、対応する像副視野の対応する帯状の視野点Z1へと偏向する。軸外ビームレット3.1は、ビームクロスオーバ108から逸脱する仮想偏向点161で代表的なビーム経路157に沿って偏向しているように見える。したがって、帯状の視野点Z1に対する走査位置でのビームレット3.1の偏心角は、中心視野29.1での偏心角から逸脱しており、上述の歪みのほか、ビームレット3.1の走査誘起偏心収差に対応する。本発明の第3の実施形態においては、第2のマルチビーム走査補正システム602によって走査誘起偏心収差が抑えられる。
複数の荷電粒子ビームレット3それぞれの走査位置における焦点位置の逸脱は、副視野31.11~31.MNそれぞれについて、走査歪みベクトル場により表される。図6は、像副視野31.15の例における走査歪みを示している(図7参照)。本開示の全体を通して、各像副視野31.mnの各中心に対する像副視野座標(p,q)が使用され、走査歪みは、個々の像副視野31.mnについて、像副視野座標(p,q)の関数としてベクトル[dp,dq]により表される。各像副視野の中心位置(p,q)=(0,0)は、光軸105に対する(x,y)座標で表される。各像中心座標は、図3に示すように、静的オフセット(dx,dy)により(x,y)座標の関数として、所定の理想的なラスター構成から歪ませることができる。静的な歪みは通常、静的マルチアパーチャプレート306.2により補償され、走査歪み[dp,dq]には考慮されない。走査歪みは、各像副視野31.11・・・31.MNにおいて異なることから、一般的には、局所像副視野座標(p,q)および像副視野の離散中心座標(xij,yij)を使用して、4次元走査歪みベクトル[dp,dq]=[dp,dq](p,q;xij,yij)により表される。
図6は、像副視野31.15の全体にわたる走査歪みベクトル[dp,dq]を示している。本例において、最大走査歪みは、最大像副視野座標p=q=6μmにあり、走査歪みベクトル[dp,dq]=[2.7nm,-1.6nm]である。この像副視野における最大走査歪みベクトルの長さは、3.5nmである。像副視野における通常の最大走査歪み収差は、1nm~4nmの範囲であるが、5nmを超える場合もある。
図7は、複数のJ=61個の一次荷電粒子ビームレットを六角形ラスター構成にて含む、完全に位置合わせされた従来のマルチビーム荷電粒子顕微鏡の例における各像副視野31.11~31.MNの最大走査歪みを示している。各像副視野の最大走査歪みを円の面積で示している。マルチビーム荷電粒子顕微鏡の光軸上の像副視野31.55の最大走査歪みは、微小またはほぼゼロである。最大走査歪みは、光軸までの像副視野の距離の増大に伴って大きくなり、光軸までの距離が最大となる像副視野31.15または31.91において、すべての最大走査歪みの中の最大値、ひいては、ビームクロスオーバ108における光軸105に対して、最大の伝搬角βに達する。円の面積は、各副視野の走査歪みの最大値を表しており、円の直径は、ライン197で示す通り、光軸からの像副視野中心の距離に伴って線形に増大する。本例において、走査歪みは、副視野座標(p,q)に対する線形依存性および像副視野中心位置(x,y)に対する二次依存性の割合が支配的である。
図7の例において、一括マルチビームラスタースキャナ110は、中心副視野31.55の軸方向ビームレットに対しては、走査誘起歪みを抑え、交差ボリュームに対する入射角βが大きな一次ビームレットに対応する副視野の走査誘起歪みを最大化するように構成されている。本発明の一例において、一括マルチビームラスタースキャナ110の走査偏向電圧VSp(t)およびVSq(t)は、軸方向ビームレットの走査誘起歪みを犠牲にして最大走査誘起歪みを最小限に抑えるように構成されているため、中心副視野31.55の軸方向ビームレットがいくらかの走査誘起歪みを示すものの、最大走査誘起歪みは、たとえば5nm~3nm未満へと小さくなる。
本発明の第1の実施形態において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の走査歪みを含む走査結像収差は、一括マルチビームラスタースキャナ110の設計の改良によって小さくなる。第1の実施形態に係る改良された一括マルチビームラスタースキャナ110は、横方向に最適化された偏向静電界を生成して、動作時、異なる角度βで静電界に入射して伝搬する一次ビームレットが補正偏向角αだけ偏向し、複数の一次荷電粒子ビームレット3のビームクロスオーバに対応する共通の仮想ピボット点で偏向して見えるようにすることで走査歪みを最小限に抑える。修正された一括マルチビームラスタースキャナ110は、物理的設計が最適化された一組の偏向電極と、複数の一次荷電粒子ビームレットの走査偏向時の偏向静電界を動的に調整するための一組の補正電極と、を備える。一例において、一組の補正電極は、2つの偏向電極間に配置されている補正電極を含む。一例において、一組の補正電極は、一次荷電粒子ビームレットの伝搬方向における偏向電極のうちの少なくとも1つの上流または下流に配置されている少なくとも1つの補正電極を含む。第1の実施形態においては、最適化されたマルチビーム偏向スキャナの設計によって、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の走査歪みを含む走査結像収差が抑えられるが、ここでは、偏向系110の収差および荷電粒子顕微鏡(たとえば、対物レンズ102)の付加的な走査収差が補償される。
図8aは、第1の実施形態の第1の例を示している。一組の走査偏向電極は、第1の方向の複数の一次荷電粒子ビームレットの走査偏向のための第1の偏向電極181.1および181.2と、第2の方向の複数の一次荷電粒子ビームレットの走査偏向のための第2の一組の偏向電極183.1および183.2と、を含む。均質偏向電界を生成するように最適化された一組の偏向電極の設計については、たとえばシングル電子ビームシステムについて、DESIGN OF A NON-EQUISECTORED 20-ELECTRODE DEFLECTOR FOR E-BEAM LITHOGRAPHY USING A FIELD EMISSION ELECTRON BEAM by E.R. Weidlich, Microelectronic Engineering Vol. 11, p.347-350 (1990)に記載されており、これを本明細書に援用する。複数の一次荷電粒子ビームレットは、六角形ラスター構成に配置されており、各ビームレットは、六角形ラスター中の位置に対応して一括マルチビームラスタースキャナ110を通る異なる伝搬角(βx,βy)を有する。したがって、複数の一次荷電粒子ビームレットの交差ボリューム189の断面は、略六角形状である。磁気対物レンズ102による複数の一次荷電粒子ビームレットの回転を補償するため、グローバルx-y座標系に対して、一組の偏向電極181および183ならびに交差ボリューム189が回転する。図7に示す走査歪みの最大面積を矢印191で示している。修正された偏向スキャナの設計には、円形状(点線)から逸脱する一組の偏向電極の構成を含む。本例においては、偏向電極が楕円形状に配置されており、最大走査歪みのエリアの方向における交差ボリューム189までの偏向電極のより短い距離を矢印191で示している。本例において、偏向電極は、方位角方向の延伸が異なる。第2の方向の偏向走査のための偏向電極183.1および183.2の方位角方向の延伸φ3は、第1の方向の偏向走査のための偏向電極181.1および181.2の方位角方向の延伸φ1と異なる。
また、交差ボリューム189の外側には、一組の偏向電極間で連続して、電極185.1、185.2、185.3、185.4を含む一組の補正電極185が配置されている。使用時には、一組の偏向電極に対する走査電圧差VSp(t)およびVSq(t)と同期して、複数の補正電圧差VC(i=1・・・4,t)が補正電極に印加される。使用時には、補正電極185が可変補正偏向電界を生成し、一組の偏向電極181および183により生成された偏向電界に追加される。一組の補正電極は、使用時に補正電界を生成するように構成されているが、これは特に、走査時の六角形ラスター構成の角部における最大伝搬角のビームレットに作用する。走査時には、たとえば図6に示すように、走査歪みに応じて補正電圧差VC(i=1・・・4,t)が変化する。これにより、像走査時の走査歪みが抑えられる。
図8bは、第1の実施形態の第2の例を示しており、ラスター構成の対称性に対して、修正された一括マルチビームラスタースキャナ110が適応されている。本例において、複数の一次荷電粒子ビームレットは、対応する角度βx、βyの直交座標系または矩形のラスター構成に配置されており、交差ボリューム189の断面は、略矩形の形態を有する。図8aと同様に、図8bの偏向系110は、グローバル座標系(x,y)に対して回転することにより、一括マルチビームラスタースキャナ110の下流に配置されている対物レンズ102(図1参照)による回転を予備補償する。複数の一次荷電粒子ビームレットの走査偏向のための偏向電界を生成するための一組の偏向電極181および183は、矩形状に配置されており、第1の方向の偏向またはラスター走査のための偏向電極181.11、181.12、181.21、および181.22と、第2の方向の偏向またはラスター走査のための偏向電極183.11、183.12、183.21、および183.22と、を含む。一括マルチビームラスタースキャナ110は、最大伝搬角のビームレットの近傍に配置されている第1の補正電極185.1~185.4を含む第1の一組の補正電極185をさらに備える。第1の一組の補正電極185は、特に角度ひいては走査誘起歪みが大きな一次荷電粒子ビームレットに作用する不均質補正電界を局所的に追加するように構成されている。次に、一括マルチビームラスタースキャナ110は、各対の偏向電極181または183と第1の補正電極185との間に配置されている第2の一組の補正電極187.1~187.8をさらに具備する。第2の一組の補正電極によって、補正電界生成の自由度を追加することにより、たとえば第1の一組の補正電極により生成される不均質補正電界の範囲を制御する。
本例において、像走査時に偏向電界を生成するための各偏向電極は、一対の偏向電極(たとえば、第1の方向の走査偏向のための第1の一対の偏向電極181.11および181.12ならびに第2の一対の偏向電極181.21および181.22)として構成されている。一対の2つ以上の電極による偏向電極の構成によって、自由度がさらに高くなる。たとえば、偏向電極181.11~181.22による第1の方向の像走査時には、可変不均質走査偏向電界が生成され得るが、これは、交差ボリュームの中心エリア190においては均質である一方、エリア189を通る大きな伝搬角βのビームレットに対しては所定の可変不均質性を有する。また、偏向電極183.11~183.22による第2の方向の像走査時には、第2の方向の走査偏向に同期して、偏向電極181.11~181.22により第1の走査方向の所定の可変不均質走査補正電界を生成可能であり、たとえば、より大きな伝搬角のビームレットについて、像回転の形態の走査歪みを補償することができる。また、自由度が高くなると、たとえば現実の一括マルチビームラスタースキャナ110の製造公差を補償することができる。
図9は、図8bに係る修正された偏向スキャナの一態様を示しており、一括マルチビームラスタースキャナ110の複数対の偏向電極に対する電圧差の修正選択によって、偏向スキャナの性能が最適化されている。本例において、第1の方向の偏向走査のための偏向電極181は、第1の一対の偏向電極181.11および181.12と、第2の一対の偏向電極181.21および181.22と、を含む。図9aにおいては、一対の偏向電極を備える偏向スキャナの偏向角VSp(sinα)の関数として、所要の電圧差を示している。このグラフは、第1の方向の偏向走査のため、二対の偏向電極181.1および181.2に印加される所要の電圧差175を示している。線形ライン173からの電圧差175の逸脱によって、上述のような非線形効果が補償される。二対の偏向電極の場合の修正電圧差を図9bに示す。使用時には、一方の符号の第1の電圧差177.1が対向する一方の電極181.11および181.21にそれぞれ印加され、反対の符号の第2の電圧差177.2が対向する他方の電極181.12および181.22にそれぞれ印加される。複数対の電極に印加される平均電圧差は、電圧差175と同じである。軸方向ビームレットおよび光軸に近いビームレットは、図8bの内側エリア190を透過する。このエリアにおいては、電圧差177.1および177.2により生成される静電界の差の影響はほとんどない。また、第2の方向の走査のための複数対の電極183.11~183.22への可変オフセット電圧179.1および179.2(図示は原寸に比例しない)によって、残留回転を補償可能である。これにより、エリア189の外側ゾーンを透過するビームレットは、わずかに不均質な偏向電界を受けることになる。これにより、走査誘起歪みが抑えられ得る。
図10は、第1の実施形態の別の例を示している。本例において、一組の補正電極は、複数の一次荷電粒子ビームレット3の伝搬方向における偏向電極の上流または下流に配置されている電極を含む。第1および第2の偏向電極181.11、181.12は、第1および第2の偏向電極181.31、181.32に対向して、第1の方向X’の偏向走査を行うように構成されている。複数の一次荷電粒子ビームレットは、その逸脱によって、横方向延伸が異なるzセグメント189.1~189.3を含むビーム管を構成する交差ボリューム189を透過する。本例においては、一組の第1の補正電極195.1~195.4が設けられ、複数の一次荷電粒子ビームレットの走査偏向時の補正電界を追加するように構成されている。補正電極は、一次荷電粒子ビームレットの伝搬方向(図10におけるz方向)において、偏向電極181の上流および下流に配置されている。これらのz位置において、伝搬角がより大きな一次ビームレット(たとえば、ビームレット3.1および3.2等)は、光軸105までの距離が長くなり、補正電極により生成された不均質補正電界の影響は、ビームレットの伝搬角とともに大きくなる。そして、付加的な第2の一組の補正電極193.1~193.4が自由度を追加することにより、交差ボリューム189における修正された不均質走査偏向電界を最適化する。図10に断面を示す補正電極193~195は、一次ビームレットの周囲に沿ってセグメント状に配置されることにより、図8に示す補正電極と同様に、複数の荷電粒子ビームレットに局所的な影響を及ぼす。使用時には、可変補正電圧差が補正電極に印加され、偏向走査時には、時間的に変動する不均質補正電界が走査偏向電界と同期して追加される。たとえば、偏向電界においては、一次荷電粒子ビームレット3.1が右方に偏向するとともに経路3.1fに沿って伝搬し、補正電極193.2および195.2により生成された補正電界を透過する一方、経路3.2fをたどる一次荷電粒子ビームレット3.2については、電極193.2および195.2からさらに離れて、不均質補正電界を通過しない。これにより、異なる像副視野における異なる局所走査歪みの変動の補正が可能となる。
図11は、修正された偏向走査システム110の別の態様を示している。第1の方向の走査偏向のための偏向電極181.1および181.2の長さZ1および第2の方向の走査偏向のための偏向電極183.1および183.2の長さZ3によってz方向の偏向電極の長さまたは長手方向延伸を調整することにより、たとえば図8aの矢印191で示される4つの角部の大きな走査歪みを抑えることができる。
偏向電極の修正設計によって、一括マルチビームラスタースキャナ110の交差ボリューム189の内側に所定の不均質静電界が与えられる。所定の不均質静電界が経時的に可変であることから、複数の一次荷電粒子ビームレットの偏向走査が実現され、光軸へと大きな角度βで交差ボリュームを透過するビームレットの走査誘起歪み等の走査誘起収差が最小限に抑えられる。第1の例において、偏向電極は、大きな角度βで交差ボリューム189を透過する一次ビームレットに対する不均質性が増大する所定の不均質走査偏向静電界を生成するように構成されている。第2の例においては、像走査時に大きな走査偏向角αで交差ボリューム189を透過する一次ビームレットに対する不均質性を可変増大させる付加的な補正電極が設けられている。走査電極の形状および位置ならびに補正電極の形状および位置は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の設計およびシミュレーション時に最適化される。一例においては、光学系の他の要素の付加的な収差が考慮される。走査偏向電界および走査補正電界の生成に必要な理論的電圧差VS(t)およびVC(t)が演算され、走査補正電圧差VC(t)の生成のための制御信号がマルチビーム荷電粒子顕微鏡1の制御ユニット800のメモリに格納される。マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の調整および校正時に、走査偏向および補正電界に必要な電圧差VS(t)およびVC(t)が調整および校正され、校正された電圧差VS(t)および走査補正電圧差VC(t)の生成のための制御信号がマルチビーム荷電粒子顕微鏡1の制御ユニット800のメモリに格納される。像走査時には、校正された電圧差VS(t)およびVC(t)が生成される。走査電圧差VS(t)と同期する補正電圧差VC(t)の生成の一例については後述する。一例においては、第1または第2の走査方向における放物線状またはより高次の形状の補正電界によって、走査偏向電界の不均質性が生じる。一例においては、光軸上で鞍点の形状を有し、第1および第2の方向において反対符号の放物線状またはより高次の不均質性を示す補正電界によって、偏向電界の不均質性が生じる。
図21は、所定の不均質電界分布を伴う一括ラスタースキャナ110の別の例を示している。本例においては、荷電粒子顕微鏡の光軸とある角度を成す付加的な電極153.1a、153.1c、153.2a、および153.2cが設けられている。これにより、交差ボリューム189の荷電粒子ビームレットの入射側および出射側において、電界の傾斜角が制御される。光軸とある傾斜角を成す補正電極によって、入射角が異なる複数のビームレット(光軸と平行なビームレット3.0および光軸に対する最大角β2のビームレット3.1を含む)に対する走査偏向電界の効果を最適化することができる。
本発明の第2の実施形態によれば、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、像走査時の残留走査誘起歪みを補償するように構成されている走査歪み補償器アレイ601等のマルチビーム走査補正システムを備える(図1参照)。一次荷電粒子ビーム経路における走査歪み補償器アレイ601によって、個々の一次荷電粒子ビームレットが個別に影響を受け、各一次ビームレットの数nmの走査偏向によって、長ストローク一括マルチビームラスタースキャナ110により誘起された走査歪みが個々の像副視野ごとに補償される。図12~図15には、走査歪み補償器アレイ601を示している。短ストローク走査歪み補償器アレイ601は、マルチアパーチャアレイ620として構成されており、複数の一次荷電粒子ビームレット3のラスター構成(本例においては、六角形ラスター構成)に配置されている複数のアパーチャを備える。マルチアパーチャアレイ620の態様を図12に示す。アパーチャのうちの3つを参照番号685.1~685.3で示す。複数のアパーチャそれぞれの周囲には、複数の電極681.1~681.8が配置されている。本例において、電極の数は、アパーチャ685ごとに8つであるが、4つ以上等の他の個数も可能である。電極681は、相互かつマルチアパーチャアレイ620の担体に対して、電気的に絶縁されている。電極はそれぞれ、導電性ライン607によって高速アレイ走査制御モジュールに接続されている。
原理上は、図3に記載のような静的歪みの静的補償に対して、静的マルチアパーチャアレイ620の設計が知られているにも関わらず、従来の方法では、走査誘起収差の走査補正または補償が不可能である。走査補正のため、走査動作と同期して、ビームレットごとに少なくとも2つの高度に動的な走査補正電圧差(たとえば、8つの走査補正電圧差)が生成され、真空中の最高走査速度でJ個の一次ビームレットそれぞれに与えられる。像ラスター走査と同期して、一連の所定の走査電圧差VCA(t)を電極681それぞれに印加することにより、長ストローク一括マルチビームラスタースキャナ110による走査偏向と同期して、アパーチャ685のうちの1つを通過する各一次荷電粒子ビームレットが走査偏向する。これにより、像副視野に対応する個々のビームレットの反対方向の偏向によって、たとえば最大3nmの残留走査誘起歪みの量だけ、像副視野中の走査歪みが補償される。静電効果のみが関与することから、長ストロークラスター走査と同期して、対応するアパーチャ685を透過する荷電粒子ビームレットを高速に、個別に調整または変更することができる。
アパーチャ685.3の例において、より詳細を説明する。アパーチャ685.3を通過する一次荷電粒子ビームレットの第1の方向またはp方向の偏向走査のための第1の一組の電極687.1および687.2が設けられている。また、アパーチャ685.3を通過する一次荷電粒子ビームレットの第2の方向またはq方向の偏向走査のための第2の一組の電極688.1および688.2を示している。アパーチャ685.3を通過する荷電粒子ビームレットの他の操作のため、非点収差を補正する電極等の他の電極を設けることもできる。
第1および第2の一組の偏向電極に印加される複数の走査補正電圧差VCA(t)は、一括マルチビームラスタースキャナ110に与えられるラスター走査電圧差VSp(t)およびVSq(t)と同期して、約20MHz~50MHzの信号周波数で与えられる。図13は、本発明の第2の実施形態にかかる走査歪み補償器アレイ601の構成を示しており、複数のJ=M×N個の一次荷電粒子ビームレットの偏向走査が可能であって、荷電粒子ビームレットの数Jは、10ビームレット超、好ましくはJ=61以上(たとえば、J>100ビームレットあるいはJ>1000ビームレット)である。ビームレットごとに少なくとも4つの偏向電極を考慮して、J個のビームレットの偏向走査のための駆動信号または電圧差VCA(i=1・・・4J,t)の数は、少なくとも4J個であり、4J個の信号または電圧差VCA(i=1・・・4J,t)はそれぞれ、各画素における約25nsの滞留時間に応じて、信号周波数が約20MHz~50MHz以上である。したがって、データレートは通常、10ギガビット/秒を超える。図13および図14は、一括走査電圧VSp(t)およびVSq(t)に適用される静的電圧変換アレイ611および612の例において、このような高データレートを実現する一例を示している。走査歪み補償器アレイ601は、図12に示すような偏向電極を伴う複数のアパーチャ685を備えるマルチアパーチャプレート620と、走査アレイ制御ユニット622と、を備える。第1の方向の偏向走査のための各電極は、導電性ライン607.1および第1の複数の導電性ライン613を介して、第1の静的電圧変換アレイまたはユニット611の出力に接続されている。第1の静的電圧変換アレイ611は、走査アレイ制御ユニット622の動作制御メモリ626により与えられる第1の静的制御信号615によって制御される。第1の方向の複数の一次荷電粒子ビームレットそれぞれの並行偏向走査のための第1の走査偏向電圧差VCAp(t)は、第1の電力線609を介して、走査電圧生成器(図示せず)により与えられる。第1の走査偏向電圧差VCAp(t)は、一括マルチビーム走査偏向器110による偏向走査用に生成された一括走査電圧VSp(t)に比例する。第1の方向は、副視野座標pの方向であって、像面のx方向と平行である。走査アレイ制御ユニット622は、第1の方向の走査補正のための各一組の偏向電極(たとえば、図12の電極687.1および687.2)に対する静的制御信号を含む第1の複数の制御信号615を格納するためのメモリ626を備える。第1の静的電圧変換アレイ611は、第1の走査偏向電圧差VCAp(t)と同期して、第1の方向の荷電粒子ビームレットそれぞれの走査偏向のための一組のu個の偏向電極に対する複数の適当な電圧差VCAp(u=1・・・2J,t)を生成する。第1の方向の偏向のために偏向電極(たとえば、電極687.1および687.2)に印加される各電圧差は、走査偏向電圧差VCAp(t)ひいては一括走査電圧差VSp(t)に比例する。
第2の方向の偏向走査のためのv個の第2の電極(たとえば、図12に示すようなアパーチャ685.3の電極688.1および688.2を含む)それぞれと導電性ライン614および配線607.2を介して接続されている第2の静的電圧変換アレイ612には、第2の一組の静的制御信号616が与えられる。第2の静的電圧変換アレイ612は、第2の電力線610を介して与えられる第2の走査偏向電圧差VCAq(t)からの低減により、第2の方向(ここでは、副視野座標qの方向であって、像面のy方向と平行)のビームレットの走査偏向のためのv個の偏向電極ごとに、複数の第2の電圧差VCAq(v=1・・・2J,t)を生成する。このため、第2の方向の偏向のために偏向電極(たとえば、電極688.1および688.2)それぞれに印加される各電圧差は、走査偏向電圧差VCAq(t)ひいては一括走査電圧差VSq(t)に比例する。
図6に示すように、像副視野中の走査歪みベクトル[dp,dq]は一般的に、第1の方向(ここでは、p座標)のほか、第2の方向(ここでは、q座標)の走査歪みベクトル成分を有する。したがって、図13の例においては、第1および第2の電圧変換ユニット611、612が信号線618により接続されているほか、第1の走査偏向電圧差VCAp(t)に比例する第2の方向の走査偏向のための複数の電圧差VCp(v,t)が生成され、第2の方向の走査のための複数の電極に与えられており、VCAq(u,t)に関してその逆もまた同様である。これにより、一括マルチビームラスタースキャナ110に与えられる一括走査信号VSp(t)およびVSp(t)と同期して、第1の方向および第2の方向の残留走査歪みベクトル成分dp(p,q)およびdq(p,q)が補償される。走査歪みの振幅||dp,dq||が小さい(たとえば、3nm未満または1.5nm未満)ことから、複数の荷電粒子ビームレットそれぞれの走査誘起歪みの個々の補償に必要な電圧差は非常に小さく、たとえば100mV未満、10mV未満、あるいはそれ以下である。
静的電圧変換アレイまたはユニット611または612の一例は、可変入力電圧に比例する複数の出力電圧を生成するプログラム可能抵抗器アレイにより与えられる。図14は、静的電圧変換アレイ611の一例を示している。本例において、静的電圧変換アレイ611は、複数の荷電粒子ビームレットそれぞれの走査誘起歪み(dp,dq)の個々の補償のため、可変駆動電圧VCAp(t)およびVCAq(t)を複数の電圧差VCAp(u,t)およびVCAp(v,t)へと個別に低くするためのプログラム可能抵抗器アレイとして構成されている。静的電圧変換アレイ611は、駆動電圧VCAp(t)と同期する第1の電圧差VCAp(u,t)および駆動電圧VCAq(t)と同期する第2の電圧差VCAq(u,t)を含む電圧差の少なくとも2つの成分をu=1・・・2J個の補正偏向電極それぞれに与える。第1および第2の駆動電圧VCAp(u,t)およびVCAq(u,t)は、電圧加算器641.uにより加算され、u番目の各電極(たとえば、第1の方向の個々の一次ビームレットの走査誘起歪みを補償するための電極687.1)に与えられる。j=1・・・4J個の偏向電極それぞれについて、抵抗が大きくなる第1の一連の抵抗器633.j(たとえば、1Ω、2Ω、4Ω、8Ωの一連の抵抗器)が連続して配置されており、各抵抗器と並列に一連のトランジスタ639.nが配置されている。たとえば、偏向電極687.1の場合は、電力線609で与えられる駆動電圧VCAp(t)の低減のため、第1の一連の抵抗器633.11~633.14が第1の一連のトランジスタ639.11~639.14と並列に配置されており、電圧の低減量は、第1の一連のトランジスタ639.11~639.14に与えられる複数の静的制御信号635.11~635.14により制御される。たとえば、抵抗器639.13のゲートに与えられる制御信号635.13によってトランジスタ639.13をオフ状態からオン状態へと切り替えることにより、対応する抵抗器633.13がブリッジされ、抵抗器633.13による電圧降下は生じない。トランジスタ639.11~639.14がオフ状態の場合は、対応する抵抗器633.11~633.14によって駆動電圧(たとえば、走査偏向電圧差VCAp(t))が低下する。すべてのトランジスタがオフ状態に切り替えられた場合は、駆動電圧差VCAp(t)が最小値まで低下し、対応するビームレットの最小偏向が実現される。すべてのトランジスタがオン状態に切り替えられた場合は、最大走査偏向電圧差VCAp(t)が対応する電極に印加され、対応するビームレットの最大偏向が実現される。これにより、たとえばビームレットの最大約5nmの走査歪み最大値が補償される。4つの抵抗器が連続することにより、最大電圧差と最小電圧差との間の16個の異なる電圧レベルへと駆動電圧差VCAp(t)を低減可能であるため、約5nmの最大残留歪みを約0.3nmに抑えることができる。
一連のトランジスタ639に与えられる複数の静的制御信号635によってトランジスタをオンまたはオフ状態に切り替えて保持することにより、マルチアパーチャアレイ620の複数の電極ごとに走査偏向電圧差VCAp(t)が所定の方法で小さくなる。特定のu番目の電極(たとえば、図12の電極687.1)に与えられる出力電圧VCAp(u,t)613.1は、駆動電圧VCAp(t)と同期する第1の補正電圧成分VCAp(u,t)を含むが、これは、第1の方向またはp方向の一次荷電粒子ビームレットの長ストロークラスター走査のための第1の走査偏向電圧差VSp(t)に比例する。
一例において、第1の方向(たとえば、p方向)の走査補正は、第2の方向(たとえば、q方向)の走査位置によって決まる。したがって、静的電圧変換アレイ611は、電力線610が与える第2の走査偏向電圧差VCAq(t)によって駆動される抵抗器633.3を含むプログラム可能抵抗器アレイに接続されている電圧結合器641.1をさらに備える。一組の駆動信号637.11~637.14によって、駆動電圧VCAq(t)と同期する第2の補正電圧成分VCAq(u,t)が第2の走査偏向電圧差VCAq(t)に比例して生成され、第2の方向またはq方向の長ストロークラスター走査のための第2の走査偏向電圧差VSq(t)に比例および同期する第1の補正電圧成分に追加される。
一例において、第2の方向(ここでは、q方向)の走査補正は、第1の方向(ここでは、p方向)の走査位置によって決まる。したがって、静的電圧変換アレイ611は、電力線609が与える第1の走査偏向電圧差VCAp(t)によって駆動される別のプログラム可能抵抗器アレイを備える。一組の駆動信号(図示せず)によって、駆動電圧VCAp(t)と同期する第2の補正電圧成分VCAp(v,t)が第1の走査偏向電圧差VSp(t)に比例して生成されるが、これは、第2の方向またはq方向の走査歪みベクトル成分dq(p,q)の補償のため、第1の方向の走査位置に比例する。
走査偏向電圧差を所定の電圧差まで小さくして走査誘起歪みを補償するための抵抗器、トランジスタ、および静的制御信号の数Lは、一例としてL=4により説明しているが、これより多くすることもできる。また、電圧結合器641を付加的な電圧差信号に接続して、たとえば個々の所定の電圧オフセットをアパーチャ685それぞれに与えることにより、図3に示すような静的歪みオフセットを補償することも可能である。プログラム可能抵抗器アレイは、準静的電圧変換器の一例であって、これにより、大量のデータレートを生成して、走査歪み補償器アレイ601の4J個の電極に与えることができる。たとえば、各ソースフォロワトランジスタについて、各ソースフォロワトランジスタの各ゲートに与えられる静的信号に比例する量へと駆動電圧差を制限するプログラム可能ソースフォロワトランジスタのアレイ等、同等の実施も可能である。
複数の静的制御信号(制御信号635.11~635.14および制御信号637.11~637.14を含む)は、走査歪み補償器アレイ601の少なくとも4J個の電極ごとに校正ステップにおいて決定され、走査アレイ制御ユニット622のメモリ626に格納される。メモリ626に格納された静的制御信号は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作時(たとえば、第1の像パッチおよび第2の像パッチの像取得の間)に修正可能である。したがって、走査アレイ制御ユニット622は、データ接続631を介して、動作制御ユニット800に接続されている(図13参照)。一例において、走査アレイ制御ユニット622は、クロック線624に接続されることにより、走査歪み補償器アレイ601の動作を一括マルチビームラスタースキャナ110と同期させる。像パッチの像取得時には、複数の静的制御信号615および616が一定であり、各像副視野中の走査歪みは、4J個の偏向電極に与えられる複数の4J個の電圧差により補正されるため、4J個の電圧差はそれぞれ、第1および第2の走査偏向電圧差VCAp(t)およびVCAq(t)に比例する第1および第2の成分を含み、これらは、長ストローク一括マルチビームラスタスースキャナ110の偏向スキャナ電極に与えられる走査偏向電圧差VSp(t)およびVSq(t)に同期する。これにより、第2の実施形態によれば、対物レンズ102等の付加的な光学素子との組み合わせによって一括マルチビームラスタースキャナ110により生じた走査歪みは、走査歪み補償器アレイ601により補償される。
一例において、ラスター構成の一次荷電粒子ビームレットの数Jは、J=100である。各ビームレットについて、走査誘起歪み[dp,dq]の補正には、補正電圧差を伴う少なくとも4つの電極が必要であるため、プログラム可能抵抗器アレイによって4J=400個の補正電圧差が生成され、複数の電極に与えられる。各電極について、電圧差は、2つの成分(第1の走査方向に対する線形依存性を有する第1の成分および第2の走査方向に対する線形依存性を有する第2の成分)の重ね合わせであり、4J=400個の電極に対する8J=800個の電圧差成分の生成には、8J=800個のプログラム可能抵抗器列を必要とする。たとえば、連続する4つの抵抗器および電圧差の成分それぞれの生成のための4つの制御信号によって、10倍を超える(たとえば、最大16倍の)残留走査歪みの低減が実現される。また、複数の32J=3200個の静的制御信号を予め決定して、動作制御ユニット622のメモリから与えることができる。
5つ以上のプログラム可能抵抗器(たとえば、8つの抵抗器)を連続して設けることにより、さらなる低減が可能であって、100倍を超える(たとえば、最大256倍の)走査誘起歪みの低減が実現され得る。これにより、走査歪みは、少なくとも10倍、好ましくは100倍を超えて抑えられる。
第1および第2の方向のビームレットの走査偏向のための通常の第1および第2の走査偏向電圧VSp(t)およびVSq(t)を図15に示す。一括マルチビームラスタースキャナ110による第1の方向(各副視野中のp座標であって、x座標と平行)の走査偏向のため、上述の通り、線形傾斜から逸脱して偏向スキャナの非線形効果を補償する一連の高速電圧傾斜VSp(t)が生成される。ライン番号nの時間区間tl(n)の後は、第2の方向(ここでは、ウェハレベルでのq方向であって、y座標と平行)の偏向のための走査偏向電圧VSq(t)が番号(n+1)の次のラインのビームレットを偏向するように変化して、走査偏向電圧VSp(t)がVSpminに戻される。時間区間tl(n+1)における次の電圧傾斜では、ラインの端部がVSpmaxに達するまで、ライン(n+1)のビームレットが走査偏向する。時間区間tbは、上述のフライバック区間である。両電圧が段階的に生成および提供され、たとえば、第1の電圧傾斜VSp(t)は、一連の一定電圧を含むが、これらは、次の画素へのビームの偏向のための偏向電圧へと電圧VSp(t)が変化するまで、各画素での滞留時間tdにおいて一定である(拡大詳細部参照)。
走査用ウェハステージを備えるシステムにおいては、複数の荷電粒子ビームレットが第1の方向にのみ走査偏向する一方、第2の方向のビームレットの位置は一定であることに留意するものとする。本例においては、VSq(t)が一定である。
図15に示す電圧差VSp(t)、VSq(t)は、一括マルチビームラスタースキャナ110による複数の一次荷電粒子ビームレットのラスター走査偏向のために与えられる電圧差VSp(t)およびVSq(t)の代表である。また、電圧差VSp(t)、VSq(t)は、上述の走査歪み補償器アレイ601の電力線609および610に与えられるような駆動電圧VCAp(t)およびVCAq(t)の代表である。ただし、最大および最小電圧差VCApmin、VCApmaxおよびVCAqmin、VCAqmaxは、少なくとも2桁異なる。長ストローク一括マルチビームラスタースキャナ110の最大走査電圧差は通常、一次荷電粒子の数Jに応じて、VSpmax=約10V以上である。走査歪みの補償のための最大駆動電圧差VCApmaxは、最大走査歪みに応じて、たとえば約5nm未満(たとえば、2nmまたは1.5nm)の最大走査歪みの補償を目的として決定可能である。したがって、走査歪み補償器アレイ601の場合、図15に係る電圧傾斜の最大電圧VCApmaxは通常、10mV~100mVの範囲(たとえば、約50mV)である。
通常、対称な走査システムの場合、走査電圧差の最小値は、走査電圧差の最大値と対称である。特に、走査歪みの線形部の場合、最小電圧差は、VCApmin=-VCApmax、VCAqmin=-VCAqmaxにより与えられる。マルチビーム荷電粒子顕微鏡の製造誤差または熱ドリフトは、複数の一次荷電粒子ビームレットそれぞれに対して付加的な静的歪みオフセットを誘起する可能性があり、上述のような静的歪み補償器306による補償が可能である。
一例において、走査歪み補償器アレイ601に与えられる駆動電圧VCAp(t)およびVCAq(t)は、一括マルチビームラスタースキャナ110に使用されるのと同じ走査電圧生成器により、走査電圧差VSp(t)およびVSq(t)と同期して生成することも可能であるし、抵抗器によって、走査電圧差VSp(t)およびVSq(t)から必要な最大電圧VCApmaxおよびVCAqmaxに低減することも可能である。これにより、プログラム可能抵抗器アレイを備える走査歪み補償器アレイ601がもたらす走査歪み補正は、一括マルチビームラスタースキャナ110による走査偏向と直接結合される。
図15は、簡素表現であり、4つのラインのみの走査電圧差VSp(t)、VSq(t)を示しているが、走査ラインの数はこれよりも多く、たとえばM=5000以上である。
また、第1の実施形態に係る一括マルチビームラスタースキャナ110の一組の補正電極の制御(たとえば、一組の補正電極185.1~185.4、187.1~187.4、または195.1~195.4の制御)に対しても、第1および第2の走査補正電圧差VSp(t)およびVSq(t)に比例する複数の補正電圧差VCp(t)およびVCq(t)を与えるための電圧変換ユニット611または612の類似の実施態様を使用可能である。これにより、偏向電極による偏向走査のための駆動電圧差VSp(t)およびVSq(t)と同期して、複数の補正電圧差が補正電極に与えられる。
一例においては、走査歪み補償器アレイ601によって、走査誘起非点収差または焦点面の変化等の他の走査誘起収差も同様に補償される。動的な走査歪みは通常、摂動を受けたシステムおよび摂動を受けていないシステムに対して発生する動的なスポット形状収差と関連付けられる。一例においては、走査歪み補償器アレイに類似する走査非点収差補正器アレイが設けられ、上述のようなプログラム可能抵抗器アレイまたはネットワークによって、各非点収差補正器電極の補正電圧差が生成される。非点収差および焦点ずれ等の収差の補償のための対応する電極を伴って、このようなマルチアパーチャプレートが複数(たとえば、2つまたは3つ)連続して配置されている。複数の補正電圧は、駆動電圧差VSp(t)、VSq(t)によって同様に与えられる。たとえば、スティグマ補正(stigmation correction)用の2つの電圧差VCCp(t)およびVCCq(t)が必要である。同様に、以下により詳しく説明する通り、偏心収差の走査補償器アレイ620の構成および動作が可能である。
図1には、走査歪み補償器アレイ601のいくつかの態様を示している。一例において、走査歪み補償器アレイ601は、一次マルチビームレット構成ユニット305の後(たとえば、一次マルチビームレット構成ユニット305と第1の視野レンズ307との間)、複数の一次荷電粒子ビームレットの伝搬方向に設けられている。一例において、走査歪み補償器アレイ601は、アクティブマルチアパーチャプレート構成306.1または306.2の付加的な要素として設けられており、これにより、たとえば図3に示す静的歪みオフセット等の静的収差が補償される。別の例において、走査歪み補償器アレイ601は、一次マルチビームレット構成ユニット305の要素である。また、上述の通り、走査歪み補償器アレイ601は、図3に示すような静的歪みオフセットを補償するように構成することも可能である。走査歪み補償器アレイ601によって、像またはラスター走査時には、長ストロークラスター走査と同期して、一括マルチビームラスタースキャナ110による複数の一次荷電粒子ビームレットの一括ラスター走査により導入された走査誘起歪みの反対方向に、中間像面321における各荷電粒子ビームレット焦点311の位置が変化する。
第3の実施形態において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡は、上述のような走査偏心誤差の補償のための走査補償器アレイ等、第2のマルチビーム走査補正システムを備える。走査誘起偏心誤差を補償するための走査補償器アレイ602は、中間像面321の近傍に配置されている。走査偏心誤差を補償するための走査補償器アレイ602は、走査歪み補償器アレイ601と同様に構成されており、走査誘起偏心誤差を補償するための複数の制御信号が与えられる。走査偏心誤差を補償するための走査補償器アレイ602は、静的偏心誤差の補償のための静的補償器390に追加して配置することも可能であるし、偏心誤差の静的オフセットの補償のための複数のオフセット電圧を追加で与えるように構成することも可能である。走査偏心誤差を補償するための走査補償器アレイ602によって、像走査時に複数の一次荷電粒子ビームレットがそれぞれ、逸脱が3mrad未満あるいはそれ以下の角度90°でウェハ表面25に衝突するように、中間像面311の近傍の各ビームレットの個々の伝搬角を調整することにより走査誘起偏心誤差が補償される。
第4の実施形態によれば、走査歪みが抑えられたマルチビーム荷電粒子顕微鏡と、走査歪みが抑えられたマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法と、が提供される。偏向スキャナの最適化および調整、ならびに、たとえば走査歪み補償器アレイ601の複数の制御信号の導出のため、図6aに示すような各像副視野の走査歪み[dp、dq]は、像副視野座標(p,q)のべき級数で展開される。
複素表記は、以下に従う。
γ=p+iq
dγ=dp+idq
走査歪みのa+b=1での最低次または線形部は、以下により記述される。
また、混合角μ、直交性からの逸脱ω、および回転角ρを用いて、以下のように書くことができる。
したがって、4つの線形走査歪みを記述する1つの方法は、4つの線形歪収差のスケールM、直角性SQ、直交性OR、および回転ROTにより以下のように与えられる。
SQ=1-cot(μ)
ROT=ρ
より高次の歪みは、たとえば糸巻き歪み(pincushion distortion)のような3次歪みである。通常、副視野ごとの線形歪み収差は、走査誘起歪み全体の80%より大きく寄与する。第2の実施形態に係る走査歪み補償器アレイ601によれば、各像副視野における走査位置(p,q)に比例する走査電圧差VSp(t)およびVSq(t)に比例して偏向電極に与えられる複数の電圧差により、線形走査歪みを補償可能である。走査歪みの線形部は、ラスター座標(n,m)を有する像副視野ごとに、4つの正規化線形歪み収差ベクトルM、SQ、OR、およびROTによって記述される。これにより、走査歪み(dp,dq)の線形部が補償される。
一例において、線形部M、SQ、OR、およびROTは、4つの正規化ベクトルSDV(i)によって記述され、SDV(1)がMを、SDV(2)がSQを、SDV(3)がORを、SDV(4)がROTを表す。また、走査歪みの線形部は、正規化走査歪みベクトルの複数の振幅A(i;n,m)によって以下のように記述される。
[dp,dq](p,q;n,m)=E・ΣiA(i;n,m)・SDV(i;p,q)
一例において、正規化は、各線形歪みベクトルSDV(i)の最大値を1nmに設定し、添え字(n,m)のすべての副視野に対して、振幅の最大合計をmax{ΣiA(i;n,m)}=1に設定することにより実現される。そして、スケーリング係数Eは、走査誘起歪み[dp,dq](p,q;n,m)の最大強度を表す乗算係数である。
図16は、走査歪みが抑えられたマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法を示している。走査歪みが抑えられたマルチビーム荷電粒子顕微鏡1を動作させる方法の第1のステップS1においては、残留走査歪みの線形部が決定される。この決定は、たとえば校正サンプルにおける走査歪みの校正測定により実現される。校正サンプルは、被校正位置に複数の被校正構造を含むとともに、ウェハステージ上に提供可能である。一例において、校正は、複数の荷電粒子ビームレットのラスター構成に類似するラスター構成の複数の繰り返しパターンを含み、第1および第2の測定間の少なくとも1つの像副視野に対応する長さの校正パターンの相対変位によって、走査歪み校正測定が繰り返される。第1および第2の測定の差を導出して、走査歪みに対応する像副視野間の相対的な差を決定することができる。そして、測定された走査歪みが解析され、各副視野(nm)の走査歪み誤差ベクトル[dp,dq]の分解によって、像副視野(n,m)ごとの線形部M(nm)、SQ(nm)、OR(nm)、およびROT(nm)が演算される。最大走査歪みベクトルが決定され、スケーリング係数Eが決定され、複数の振幅A(i;n,m)が決定される。
ステップS2においては、走査歪み補償器アレイ601に必要な補正電圧差VCApmax、VCAqmaxの最大値がスケーリング係数Eから決定され、第1および第2の低減係数F1およびF2が決定される。低減係数F1およびF2は、一括マルチビームラスタースキャナ110に与えられる走査電圧差VSp(t)、VSq(t)から、複数の一次荷電粒子ビームレットの走査補正のための補正電圧差VCAp(t)、VCAq(t)を実現するように決定される。
ステップS3においては、像副視野座標(n,m)に対する線形歪みベクトルSDV(i)の複数の振幅A(i;n,m)の依存性に応じて、プログラム可能抵抗器アレイ611および612の制御のための複数の制御信号635および637が導出される(参照番号については図12~図14参照)。各ビームレットまたは各像副視野座標(n,m)それぞれについて、走査歪み補償器アレイ601の複数のアパーチャ685それぞれの偏向電極687、688ごとに、複数の振幅A(i;n,m)から、プログラム可能抵抗器アレイ611および612の制御のための複数(少なくとも8つ)の制御信号635および637が導出され、動作制御ユニット622のメモリに格納される。制御信号は、像副視野座標(n,m)の走査誘起歪みに必要な補償から導出される。振幅A(i;n,m)を任意の単位で最大歪み1にスケーリングすると、線形ベクトル成分は行列要素に対応し、プログラム可能抵抗器アレイの対応する制御パラメータは、行列乗算および連続する抵抗器の数に応じたビット長の2進数への変換により演算可能である。
ステップS4においては、像走査時に、複数の制御信号635および637がプログラム可能抵抗器アレイ611および612に与えられる。走査電圧差VSp(t)およびVSq(t)が低減係数F1およびF2により小さくなり、小さくなった補正電圧差VCAp(t)、VCAq(t)がプログラム可能抵抗器アレイ611の電力線609および610に与えられる。これにより、像走査時には、複数の一次荷電粒子ビームレットが一括ラスタースキャナ110によって走査偏向し、残留走査歪みの線形部が走査歪み補償器アレイ601により補償される。
これにより、残留走査歪みが少なくとも80%だけ(たとえば、10倍)抑えられ、たとえば0.3nm未満あるいは0.2nm未満の残留走査誘起歪みが実現される。
図17は、六角形ラスター構成のJ=61個のビームレットを伴うマルチビーム荷電粒子顕微鏡の例において、複数の一次荷電粒子ビームレットに対する線形走査歪みベクトルの通常の視野依存性を示している。像17a、像17c、像17e、および像17gの全体を通して、正数を円で示し、負数を正方形で示し、線形歪みベクトルの最大値または最小値を円または正方形の面積で表している。図17bは、像副視野中心座標(xnm,ynm)を有する像パッチを構成するJ=61個のビームレットそれぞれについて、正規化線形スケールSDV(1)≒Mを示し、図17aは、線形スケールSDV(1)の依存性を示している。図17dは、図17cの像パッチ座標(xnm,ynm)の全体に分布する正規化直角性SDV(2)≒SQを示している。図17fは、図17eに示す像パッチ依存性を有する像副視野の像副視野座標(p,q)における通常の正規化直交性SDV(3)≒ORを示している。図17gは、図17hに示す正規化回転を伴うJ=61個のビームレットそれぞれについて、像パッチ座標(xnm,ynm)の正規化回転ROT=SDV(4)を示している。
一例において、線形歪みベクトルSDV(i)の視野依存性は、振幅A(i;n,m)の多項式展開によって、以下により記述される。
多項式G(j;x,y)は、像副視野中心位置に対する線形走査歪みベクトルSDVの依存性を表す。これにより、走査歪みは、2つの多項式GおよびSDVの積により記述され、振幅は行列
により記述される。
通常、歪み振幅の視野依存性の支配的な部分は、少数の多項式G(たとえば、多項式展開Gの放物線項)により与えられる。本例において、残留走査歪みは、たとえば3×4行列
により記述される。少なくとも8J個(Jは一次荷電粒子の数)のプログラム可能抵抗器列を備えるプログラム可能抵抗器アレイを有する代わりに、G(j;x,y)の放物線項それぞれを第1の固定抵抗器アレイにおいて実施し、走査歪みベクトルSDV(i)それぞれを第2の固定抵抗器アレイにおいて実施することができる。連続する第1および第2の固定抵抗器アレイによって走査歪み補償器アレイ601の複数の電極に与えられる電圧差は、行列
の3×4個の振幅を有するプログラム可能抵抗器アレイにより制御される。
図14に記載のような混合要素641では、像副視野中のp座標の第1の方向の走査のための走査電圧差VSp(t)に比例する第1の成分と、像副視野中のq座標の第2の方向の走査のための走査電圧差VSq(t)に比例する第2の成分と、を含む補正電圧が与えられる。これにより、走査誘起収差の線形部が補償される。電力線609および610で与えられる駆動電圧差VCAp(t)およびVCAq(t)は、補正素子の駆動に必要な最大駆動電圧差に応じて、走査電圧差VSp(t)およびVSq(t)から低減可能である。これにより、像副視野座標(p,q)に対する線形像副視野依存性の線形成分が補償される。各像副視野の補正または補償の振幅は、たとえば補償器または補正電極ごとに一連の抵抗器を備える静的プログラム可能抵抗器アレイ611により与えられる。像副視野座標(p,q)に対する走査誘起収差の高次依存性を有する高次部分は、他の電圧差成分(たとえば、像副視野座標(p,q)に対する二次依存性を有する第3の成分(たとえば、pおよびqの積))を追加することにより補償可能である。一例において、静的電圧変換アレイは、第1および第2の駆動電圧差VCAp(t)およびVCAq(t)の積に比例する第3の駆動電圧差VCApq(t)を生成する非線形電圧低減ユニットまたは非線形電圧増幅器をさらに備える。例示的な非線形電圧低減ユニットは、第1の駆動電圧差VCAp(t)をゲートに、第2の駆動電圧差VCAq(t)をドレインに有し、容量が既知の偏向電極に接続されているソースフォロワトランジスタを備える。非線形電圧変換ユニットの他の例では、ツェナーダイオードの非線形応答を利用する。
同様の設定により、像副視野ごとの少なくとも一連の抵抗器によって、像パッチ座標(xij,yij)に対する依存性を補償可能である。これにより、像パッチ座標(xij,yij)に対する最大像副視野歪みの二次依存性または高次依存性が補償される。
マルチビーム荷電粒子顕微鏡の使用時には、同様の方法によって、走査偏心誤差を補償するための走査補償器アレイ602が動作する。走査誘起偏心誤差が線形成分において同様に展開され、これに応じて、走査誘起偏心誤差を補償するための制御信号が導出される。
マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の使用時には、同様の方法によって、非点収差または焦点ずれ等の走査収差を補償するための走査補償器アレイが動作する。走査誘起収差が線形成分において同様に展開され、これに応じて、走査誘起収差を補償するためのマルチビーム非点収差補正器アレイまたはマルチビームレンズアレイ用の制御信号が導出される。
同様の方法により、第1の実施形態に係る一括マルチビームラスタースキャナ110の複数の補正電極に対して校正された補正電圧差VCp(t)およびVCq(t)が導出され、一括マルチビームラスタースキャナ110の複数の補正電極に与えられ得る。これにより、残留走査歪みが少なくとも10%(たとえば、20%)だけ抑えられ、たとえば1.5nm未満の残留走査誘起歪みが実現され得る。
同様の方法において、第1の実施形態に係る一括マルチビームラスタースキャナ110の複数の補正電極に対して校正された補正電圧差VCp(t)およびVCq(t)と、第2の実施形態に係る走査歪み補償器アレイ601に対する偏向電圧差VCAp(t)およびVCAq(t)と、がいずれも導出され、走査歪みを補正または補償するための手段に与えられる。残留走査歪みは、少なくとも90%(たとえば、95%)だけ抑えられ、たとえば0.2nm未満、好ましくは0.1nm未満の残留走査誘起歪みが実現され得る。
第5の実施形態によれば、走査歪みを抑えるように改良されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡と、走査歪みが抑えられたマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる改良方法と、が提供される。改良されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、第1の実施形態に係る一括マルチビームラスタースキャナ110を備え、所定の不均質走査偏向静電界によって、走査歪みが抑えられる。改良されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、第1の実施形態に係る一括マルチビームラスタースキャナ110において、複数の一次荷電粒子ビームレットの位置を調整するための少なくとも第1の静的一括マルチビーム偏向系701をさらに備える。これにより、複数の一次荷電粒子ビームレットのラスター構成に対する一括マルチビームラスタースキャナ110の位置ずれによる残留走査誘起歪みが抑えられる。図18は、一例における改良されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡1を示している。ここでは、図1と同じ参照番号を使用している。図1に記載の要素のほか、第5の実施形態に係る改良されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、複数の一次荷電粒子ビームレット3を横方向(x/y方向)に偏向させることにより、一括マルチビームラスタースキャナ110に対するビームクロスオーバ108の横方向位置を調整するための第1の静的一括偏向系701を備える。これにより、一括マルチビームラスタースキャナ110を透過する複数の一次荷電粒子ビームレットに対する一括マルチビームラスタースキャナ110の横方向位置ずれによる走査歪みがさらに抑えられる。
一例において、第5の実施形態に係る改良されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、複数の一次荷電粒子ビームレットを横方向(x/y方向)に偏向させることにより、光軸に対する複数の一次荷電粒子ビームレットの平均伝搬角を調整するための第2の静的一括偏向系703をさらに備える。これにより、一括マルチビームラスタースキャナ110を透過する複数の一次荷電粒子ビームレットに対する一括マルチビームラスタースキャナ110の横方向位置ずれによる走査歪みがさらに抑えられる。第1の静的偏向系701および第2の静的偏向系703は、静的調整制御ユニット870に接続されており、これは、一括マルチビームラスタースキャナ110の交差ボリューム189を通る複数の一次荷電粒子ビームレット3の位置および平均伝搬方向を調整するための複数の静的電圧差を与える。
走査歪みは、上述の交差ボリュームにおいてビームレットが走査偏向静電界を伝搬する位置および伝搬角の影響を受けやすい。特に、本発明の第1の実施形態に係る最適化された一括マルチビームラスタースキャナ110により、残留走査誘起歪みは、複数の一次荷電粒子ビームレット3のビームクロスオーバ108の横方向位置に対する一括マルチビームラスタースキャナ110の位置ずれの影響を受けやすい。そこで、第1の静的偏向系701および第2の静的偏向系703によって、複数の一次荷電粒子ビームレットの横方向位置および伝搬角が調整される。
第5の実施形態に係る改良されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法において、残留走査誘起歪みは、第4の実施形態に係るステップ1に記載の通り測定される。そして、残留走査歪みが解析され、位置ずれによる走査歪み成分が決定される。調整ユニット870によって静的電圧が決定され、第1の静的偏向系701および第2の静的偏向系703に与えられ、残留走査歪みが再度測定される。そして、残留走査歪みが解析され、残留位置ずれによる残留走査歪み成分が再度決定される。このプロセスは、残留位置ずれによる残留走査歪み成分が所定の閾値を下回るまで繰り返される。この調整方法は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作中に繰り返すことができ、たとえば、マルチビーム荷電粒子顕微鏡のドリフトによる走査誘起収差が補償され得る。
位置ずれによる走査歪みの通常の視野依存性を図19に示す。一般的に、位置ずれによる走査歪みは、完全に位置合わせされたマルチビーム荷電粒子顕微鏡の残留走査歪みとは異なる視野依存性を有する。一例においては、走査歪みのさまざまな視野依存性に関して、理想的な位置に対する要素の変位の感度を決定可能であり、走査歪みの測定および走査歪みの視野依存性の決定によって、完全に位置合わせされたマルチビーム荷電粒子顕微鏡を実現するのに必要な調整を導出可能である。
第6の実施形態においては、横方向の変位または傾斜が可能な一括マルチビームラスタースキャナ110を備える改良されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡が提供される。一例において、横方向の変位または傾斜は、付加的な補正電極により、交差ボリューム189に対して偏向静電界を横方向に変位もしくは傾斜させること、または、本発明の第1の実施形態の偏向電極および補正電極に複数の所定の電圧オフセットを与えることによって実現される。代替的な一例において、一括マルチビームラスタースキャナ110は、交差ボリューム189に対する偏向静電界の変位のため、ガイド要素またはステージを含む機械的手段と、偏向電極および任意選択としての補正電極の横方向位置または傾斜角の調整のための少なくとも1つのアクチュエータと、を備える。
付加的な手段によって、交差ボリューム189に対する不均質偏向電界の横方向変位および傾斜がもたらされるため、複数の一次荷電粒子ビームレットの横方向位置および平均伝搬角に対する不均質偏向電界の調整が実現される。たとえば、一括偏向スキャナ110における交差ボリューム189中の四極または多極電界の生成による方法が提供される。四極または多極電界は、偏向電極に対する所定の電圧差(たとえば、第1の方向の偏向走査のための第1の偏向電極に与えられる第1の同一電圧差および第2の方向の偏向走査のための第2の偏向電極に与えられる第2の同一電圧差)の印加により生成され得る。たとえば、第2の電圧差は、-1を乗じた第1の電圧差により与えられる。位置合わせまたは調整時には、四極または多極電界を生成するための第1および第2の電圧差が変更され、荷電粒子顕微鏡1の光軸105に沿って進む中心の一次ビームレットがモニタリングされる。その後、第1および第2の電圧差の変更による四極または多極電界の変化中、中心の一次ビームレットの焦点位置が変化しない間は、四極または多極電界の横方向位置または傾斜角が変更される。四極または多極電界が光軸を中心とする場合は、四極または多極電界の強度が変化する場合にも、中心の一次ビームレットはウェハ上で移動しない。これにより残留走査歪みが最小限に抑えられる。
第7の実施形態においては、第5および第6の実施形態の組み合わせを含む改良されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡が提供されるため、偏向スキャナの内側の不均質偏向静電界は、たとえば複数の電極に与えられる所定のオフセット電圧により、交差ボリュームに対して横方向に変位することで、たとえばマルチビーム荷電粒子顕微鏡の対物レンズに対して調整される。これにより、ラスタースキャナ110およびたとえば、対物レンズ102等の位置ずれによる走査収差が補償される。その後、第1および第2の静的偏向器により、不均質偏向静電界分布の調整位置に対して、複数の一次荷電粒子ビームレットが横方向に調整される。
本発明の実施形態によれば、改良されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡システム1と、マルチビーム荷電粒子顕微鏡システム1を動作させて、高精度かつ高スループットのウェハ検査タスクを実行する方法と、が提供される。ウェハ検査用の改良されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡システム1は、走査歪み、走査偏心収差、または走査誘起非点収差等の走査誘起収差を補償または補正する手段を有する。第8の実施形態においては、上述の実施形態の手段が組み合わされ、走査誘起収差の最大低減が実現される。第8の実施形態に係るウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡1を図20に示す。第8の実施形態の例においては、上記実施形態それぞれの改良されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡システム1および動作方法の別途詳細を説明する。上記図面と同じ参照番号を使用するため、上記図面を同様に参照するものとする。
ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、複数の一次荷電粒子ビームレット3を生成するための荷電粒子マルチビームレット生成器300を備える。マルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、物体面101に配置されているウェハ表面25から放出される複数の二次電子ビームレット9の生成のため、ウェハ表面25の全体にわたって、複数の一次荷電粒子ビームレット3それぞれを各像副視野において走査するための第1の一括マルチビームラスタースキャナ110を備える物体照射ユニット100をさらに備える。複数の二次電子ビームレット9は、当該複数の二次電子ビームレット9を像センサ207上に結像するとともに、使用時、ウェハ表面25の第1の像パッチ17のデジタル像を取得するための検出ユニット200および第2の一括マルチビームラスタースキャナ222によって結像される。マルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、第1の像パッチ17のデジタル像の取得時に、物体面101においてウェハ表面25を位置決めおよび保持するためのサンプルステージ500をさらに備える。
マルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、制御ユニット800を備える。制御ユニット800は、像データ取得ユニット810をさらに備える。使用時、電子感受性像センサ207は、複数の二次電子強度値の像センサデータの大きな像データストリームを受信し、像データを制御ユニット800の像データ取得ユニット810に供給する。像データ取得ユニット810は、像センサ207のセンサ信号を像ステッチングユニット812に与えるように構成されている。本発明の実施形態に係る走査誘起収差の抑制(たとえば、走査誘起歪みの抑制)によって、デジタル像処理を伴わない高速の像ステッチングが可能となり、各像副視野からのデジタルデータの一体的なステッチングによって、高速かつ低演算負荷で像パッチのデジタル像を構成する。これにより、ウェハ検査タスクのスループットが向上する。デジタル像処理を伴わない高速像ステッチングに対して設定された像ステッチングユニット812によれば、最終デジタル像が出力ユニット814に直接提供され、たとえば半導体フィーチャの欠陥または寸法の解析がなされる。
複数の一次荷電粒子ビームレット3は、使用時、本発明の第1の実施形態に係る第1の一括マルチビームラスタースキャナ110の交差ボリューム189を伝搬する。第1の一括マルチビームラスタースキャナ110の第1の走査電極は、使用時、複数の一次荷電粒子ビームレット3の長ストローク走査偏向のため、第1の走査偏向電界分布を交差ボリューム189に生成する。第1の一括マルチビームラスタースキャナ110の第2の走査電極は、使用時、第1の方向と垂直な第2の方向もしくはq方向の複数の一次荷電粒子ビームレット3の長ストローク走査偏向のため、第2の走査偏向電界分布を交差ボリュームに生成する。制御ユニット800は、第1の方向もしくはp方向ならびに第2の方向もしくはq方向の複数の一次荷電粒子ビームレット3の走査偏向のための走査偏向電圧差VSp(t)およびVSq(t)を生成するように構成されている走査偏向制御モジュール860を備える。走査偏向電圧差VSp(t)およびVSq(t)の一例を図15に示す。
制御ユニット800は、遅延ラインアレイ862を備える。走査偏向制御モジュール860は、走査偏向電圧差VSp(t)およびVSq(t)を時間遅延させた複数のコピーを生成するように構成されている遅延ラインアレイ862に対して、走査偏向電圧差VSp(t)およびVSq(t)を与えるように構成されている。たとえば、第1の方向の複数の一次荷電粒子ビームレット3の走査偏向のため、第1の時間遅延t1を有する走査偏向電圧差VSp(t)の第1のコピーが第1の一括マルチビームラスタースキャナ(110)に与えられる。
第1の一括マルチビームラスタースキャナ110は、たとえば図8および図10に示すような補正電極185、187、193、または195として、第1の実施形態に係る複数の補正電極を含む補正素子112をさらに備える。補正素子112は、複数の一次荷電粒子ビームレット3の走査偏向時の走査誘起歪みを抑えるため、偏向静電界分布の可変不均質性を交差ボリュームに生じさせるように構成されている。第1の一括マルチビームラスタースキャナ110は、遅延ラインアレイ862のある遅延ラインを介して走査偏向制御モジュール860に接続されている静的電圧変換アレイを備える走査補正制御モジュール120をさらに備える。走査補正制御モジュール120は、第2の実施形態の走査アレイ制御ユニット622と同様に構成されている。上述の通り、補正素子112等の他の走査補正素子に対しても同様に、図13および図14の走査アレイ制御ユニット622の要素および特徴を適用可能である。
遅延ラインアレイ862は、第2の時間遅延t2を有する走査偏向電圧差VSp(t)およびVSq(t)の第2のコピーを走査補正制御モジュール120に与えるように構成されている。走査補正制御モジュール120は、走査偏向電圧差VSp(t)およびVSq(t)の第2のコピーを、静電界分布の所定の不均質性を生じさせるのに必要な第1の補正電圧差VC1p(t)およびVC1q(t)へと小さくする静的電圧低減ユニットをさらに備える。第1の補正電圧差VC1p(t)は、たとえば第1の方向またはp方向の走査偏向のための走査偏向電圧差VSp(t)より少なくとも1桁小さい。第1の補正電圧差VC1p(t)およびVC1q(t)から、走査補正制御モジュール120の静的電圧変換アレイによって、複数の補正電圧差が生成される。一例において、静的電圧変換アレイは、図13および図14に示すようなプログラム可能抵抗器アレイである。複数の補正電圧差は、補正素子112の複数の補正電極に与えられる。走査補正制御モジュール120のプログラム可能抵抗器アレイは、走査補正制御モジュール120のメモリに格納されている複数の第1の静的制御信号により制御される。校正ステップにおいては、一次ビーム経路制御モジュール830によって、複数の第1の静的制御信号を変更可能である。
遅延ラインアレイ862は、複数の二次電子ビームレット9の走査のため、第3の時間遅延t3を有する走査偏向電圧差VSp(t)およびVSq(t)の第3のコピーを第2の一括マルチビームラスタースキャナ222に与えるようにさらに構成されている。これにより、二次電子ビームレット9のビームスポットは、像検出器207において一定に保たれる。
マルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、本発明の第2の実施形態に係る第1の走査アレイ制御ユニット622.1を備える走査歪み補償器アレイ601を具備する。第1の走査アレイ制御ユニット622.1は、遅延ラインアレイ862を介して走査偏向制御モジュール860に接続されている。遅延ラインアレイ862は、第4の時間遅延t4を有する走査偏向電圧差VSp(t)およびVSq(t)の第4のコピーを第1の走査アレイ制御ユニット622.1に与えるように構成されている。第1の走査アレイ制御ユニット622.1は、走査偏向電圧差VSp(t)およびVSq(t)の第4のコピーを、走査歪み補償器アレイ601によるビームレットの所定の最大偏向の生成に必要な第2の補正電圧差VC2p(t)およびVC2q(t)へと小さくする静的電圧低減ユニットを備える。第2の補正電圧差VC2p(t)は、たとえば第1の方向またはp方向の走査偏向のための走査偏向電圧差VSp(t)より少なくとも2桁小さい。上記説明においては、VC2p(t)の記号としてVCAp(t)を使用している。
マルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、本発明の第3の実施形態に係る、走査誘起偏心誤差を補償するための走査補償器アレイ602を具備する。走査補償器アレイ602は、第2の走査アレイ制御ユニット622.2を備える。第2の走査アレイ制御ユニット622.2は、遅延ラインアレイ862を介して走査偏向制御モジュール860に接続されている。遅延ラインアレイ862は、第5の時間遅延t5を有する走査偏向電圧差VSp(t)およびVSq(t)の第5のコピーを第2の走査アレイ制御ユニット622.2に与えるように構成されている。第2の走査アレイ制御ユニット622.2は、走査偏向電圧差VSp(t)およびVSq(t)の第5のコピーを、走査誘起偏心誤差の補償のための走査補償器アレイ602によるビームレットの伝搬角の所定の最大補正の生成に必要な第3の補正電圧差VC3p(t)およびVC3q(t)へと小さくする静的電圧低減ユニットを備える。第3の補正電圧差VC3p(t)は、たとえば第1の方向またはp方向の走査偏向のための走査偏向電圧差VSp(t)より少なくとも2桁小さい。
複数の所定の時間遅延を有する走査偏向電圧差VSp(t)およびVSq(t)の複数のコピーを与えることにより、たとえば走査歪み補償器アレイ601および偏心収差の走査補償器アレイ602による走査誘起歪みの補償が複数の荷電粒子ビームレット3の走査偏向と同期する。第1~第5の時間遅延t1・・・t5は、たとえばマルチビーム荷電粒子顕微鏡1の設計時に決定され、設定または校正ステップにおいて調整され、遅延ラインアレイ862に格納される。
第8の実施形態のマルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、本発明の第5の実施形態に係る、一次ビーム経路制御モジュール830に接続されている第1の静的偏向器701をさらに具備する。図18に示す静的調整制御ユニット870としては、一次ビーム経路制御モジュール830の一部が可能である。校正ステップにおいては、第1の一括マルチビームラスタースキャナ110における複数の一次荷電粒子ビームレットの横方向位置が決定される。使用時、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、第1の静的偏向器701によって、第1の一括マルチビームラスタースキャナ110の交差ボリューム189における複数の一次荷電粒子ビームレットの横方向位置を調整するように構成されている。マルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、一次ビーム経路制御モジュール830に接続されている第2の静的偏向器703を具備する。校正ステップにおいては、第1の一括マルチビームラスタースキャナ110の交差ボリュームにおける複数の一次荷電粒子ビームレットの平均入射角が決定される。使用時、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、第2の静的偏向器703によって、第1の一括マルチビームラスタースキャナ110の交差ボリューム189における複数の一次荷電粒子ビームレット3の平均入射角を調整するように構成されている。
走査補正制御モジュール120ならびに第1および第2の走査アレイ制御ユニット622.1および622.2はさらに、一次ビーム経路制御モジュール830に接続されており、校正結果または他の手段によって、本発明の第4の実施形態に記載の通り、静的電圧変換ユニットに対して調整された静的制御信号が与えられる。一次ビーム経路制御モジュール830は制御動作プロセッサ840に接続されているが、これは、たとえば第4の実施形態に係る校正測定によって、走査誘起歪みの測定ステップを含む校正ステップから実際の一組の静的制御信号を導出する。
一例において、像ステッチングユニット812は、制御動作プロセッサ840に接続されており、ステッチング品質パラメータを導出して制御動作プロセッサ840に与えるように構成されている。ステッチング品質パラメータが所定の閾値を下回る場合、制御動作プロセッサ840は、走査誘起歪みの補償のための実際の一組の制御信号の生成のため、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の校正を開始するように構成されている。ステッチング品質パラメータの一例は、図2に示すように、2つの隣り合う像副視野の重畳エリア39における像コントラストである。たとえば0.3nm未満、好ましくは0.1nm未満に抑えられている走査誘起収差では、デジタル像処理を伴わない像ステッチングが可能であり、重畳エリア39における2つの像副視野からのデジタル像データの重ね合わせによる像ステッチングによって、像コントラストが高くなる。重畳エリア39における像コントラストは、たとえばマルチビーム荷電粒子顕微鏡1のドリフトまたは位置ずれによる残留走査誘起歪みによって低下する。重畳エリア39における像コントラストは、ステッチング品質パラメータの一例であり、走査誘起収差の補償または補正の品質のインジケータ、ひいては、たとえばマルチビーム荷電粒子顕微鏡1のドリフトまたは位置ずれのインジケータとして使用可能である。校正ステップにおいては、像副視野ごとに走査誘起収差が決定される。たとえば、制御動作プロセッサ840は、たとえば第4の実施形態に記載のような展開によって、走査誘起歪み[dp,dq](p,q;xij,yij)を解析するように構成されており、また、一括マルチビームラスタースキャナ110の補正素子112、走査歪み補償器アレイ601、偏心収差の走査補償器アレイ602、第1の静的マルチビーム偏向系701、および第2の静的マルチビーム偏向系703に対する複数の実際の静的制御信号を導出するように構成されている。制御動作プロセッサ840は、複数の実際の静的制御信号を一次ビーム経路制御モジュール830に与えるように構成されており、これは、複数の実際の静的制御信号をマルチビーム荷電粒子顕微鏡1の個々の補償器または補正素子112、601、602、701、または702に与えるように構成されている。
上述の実施形態は、走査時の走査誘起収差の補償のため、一次ビーム経路13または複数の一次荷電粒子3に適用されるのが好ましい。ただし、一実施形態を二次ビーム経路11に適用することにより、たとえば走査誘起コントラスト変動を補正することも可能である。ここで図1を参照する。複数の二次電子ビームレットは、第1の一括マルチビームラスタースキャナ110および第2の一括マルチビームラスタースキャナ222の組み合わせによって偏向走査され、像コントラストは、たとえばアパーチャフィルタ214により制御される。二次電子ビームレット11の走査誘起偏心収差等、二次ビーム経路11における走査誘起収差は、走査誘起コントラスト変動の原因となるが、これは、第2または第3の実施形態と同様に、たとえば要素220の位置で二次ビーム経路11に配置されているマルチビーム走査補正システムにより補償可能である。
マルチビーム荷電粒子顕微鏡およびマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法によって、たとえば走査誘起歪みが補償される。一括マルチビームラスタースキャナ(110)は、交差ボリューム(189)を構成しており、複数の一次ビームレット(3)の一括ラスター走査を実行して、像パッチ(17)の像走査を行うように構成されている。複数の一次ビームレットには、少なくとも像パッチ(17)の第1の像副視野(31.55)の全体にわたって走査される第1の一次ビームレット(3.55)および第2の像副視野(31.15)の全体にわたって同期走査される第2の一次ビームレット(3.15)を含む。第1の一次ビームレットは、第1の角度β1で交差ボリューム(189)を横断し、第2の一次ビームレットは、第1の角度β1と異なる第2の角度β2で交差ボリューム(189)を横断する。したがって、従来のラスタースキャナおよび従来のラスタースキャナを動作させる方法では、第1のビームレットと第2のビームレットとの間で走査誘起歪みの大きな差が生じる。制御ユニット(800)に接続さている第1の走査補正器(601)によれば、第1の像副視野(31.55)における第1の一次ビームレット(3.55)と第2の像副視野(31.15)における第2の一次ビームレット(3.15)との間の走査誘起歪み差が抑えられる。また、偏心収差の第2の走査補償器アレイ602によって、走査誘起歪み差と同様に、第1の像副視野(31.55)における第1の一次ビームレット(3.55)と第2の像副視野(31.15)における第2の一次ビームレット(3.15)との間の走査誘起偏心差が補償される。
第1の一括ラスタースキャナ110は、寸法が約8μm~12μm(たとえば、D=10μm)で走査範囲が±5μmの対応する像副視野の全体にわたる各ビームレットの長ストロークラスター走査に対して設定されている。第1の走査補正器(601)は、第2の短ストロークラスタースキャナを構成するが、これによって、たとえば最大5nmの小さな走査範囲で各ビームレットの走査誘起歪みが個別に補正される。これにより、走査誘起歪みが抑えられ、たとえば5.0μmの走査座標に対して3桁を超える精度(0.5nm、好ましくは0.3nmあるいはそれ以下の精度)でラスター走査座標が実現される。
本発明は、複数の一次荷電粒子ビームレットが異なる角度で交差ボリュームを横断する場合のマルチビーム荷電粒子システムにとって重要である。マルチビーム荷電粒子顕微鏡は、複数の一次ビームレットを生成するためのマルチビームレット生成器を備える。このようなマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)において、ビームレット生成器は、少なくとも第1および第2の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)を生成し、第1の走査補正器は、使用時、たとえば第2の一次荷電粒子ビームレット(3.1または3.2)の走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている複数の偏向素子をさらに備える。マルチビーム荷電粒子顕微鏡は、複数の一次ビームレットによって、物体面に配置されているサンプルの表面上の像パッチを一体的に構成する複数の像副視野を照射することにより、使用時、表面から放出される複数の二次電子ビームレットを生成するための物体照射ユニットと、投射系および像センサを備え、複数の二次電子ビームレットを像センサ上に結像するとともに、使用時、サンプルの表面の像パッチのデジタル像を取得するための検出ユニットと、をさらに備える。一実施形態に係るウェハ検査用のマルチビーム顕微鏡は、一括マルチビームラスタースキャナをさらに備える。一括マルチビームラスタースキャナは、少なくとも第1の一組の偏向電極と、第1の一組の偏向電極間で複数の一次ビームレットが横断する交差ボリュームと、を備える。交差ボリュームは、異なる入射角で当該交差ボリュームに入射する複数の一次ビームレットが透過するように構成されている。マルチビーム荷電粒子顕微鏡は、走査誘起収差の補正のための少なくとも第1の走査補正器または補償素子をさらに備える。第1の走査補正器は、使用時、少なくとも第1の個々のビームレットに影響を及ぼすための第1の走査静電界を生成するように構成されている。
本発明の一実施形態に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、複数の一次荷電粒子ビームレットを生成するためのビームレット生成器と、物体面101に配置されているサンプル7の表面25上の像副視野を照射することにより、使用時、各像副視野内の一次ビームレット3の焦点5から放出される複数の二次電子ビームレット9を生成するための物体照射ユニット100と、を備える。副視野は通常、少なくとも5μm、好ましくは8μm、12μm以上の横方向延伸を有する。物体照射ユニット100は、第1~第3の静電または磁気レンズと、対物レンズ102と、をさらに備える。マルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、使用時、サンプルの表面の各像副視野のデジタル像を取得するための検出ユニット200をさらに備える。検出ユニット200は、電子センサ207と、任意選択としての静電または電磁偏向素子222と、を備える。マルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、一次ビームレット3を一次ビーム経路13に沿ってガイドするとともに、二次ビームレット9を二次ビーム経路11に沿ってガイドするための電磁ビームスプリッタシステム400をさらに備える。対物レンズ102により収集された二次ビームレット9は、磁気ビームスプリッタシステム400によって一次ビームレット3と反対に伝搬するため、一次ビームレット3から分離される。
一実施形態に係るウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、長ストローク一括ラスタースキャナ110をさらに備える。一括ラスタースキャナ110は、少なくとも第1の一組の偏向電極(181)と、第1の一組の偏向電極(181)間で複数の一次荷電粒子ビームレット3が横断する交差ボリューム189と、を備える。第9の実施形態に係るウェハ検査用の荷電粒子顕微鏡1は、使用時、第1の方向またはp方向の複数の第1の一次荷電粒子ビームレット3の長ストローク走査偏向のため、交差ボリューム189における偏向静電界の生成のために少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を第1の一組の偏向電極(181)に与えることにより、使用時、延伸が1μm超(たとえば、約8~10μm)の像副視野の全体にわたって、一次ビームレットを走査するように構成されている制御ユニット800をさらに備える。
マルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、複数の一次荷電粒子ビームレット3の走査誘起収差の補正のための少なくとも第1の走査補正器112をさらに備える。第1の走査補正器112は、使用時、複数の一次ビームレット3に影響を及ぼすための第1の走査静電界を生成するように構成されており、制御ユニット800は、第1の走査電圧差VSp(t)を第1の走査補正器112に与えるようにさらに構成されており、第1の走査補正器は、少なくとも第1の一次荷電粒子ビームレット3.1の走査誘起収差を抑えるように構成されている。一例において、第1の走査補正器112は、第1の走査電圧差VSp(t)を少なくとも第1の走査補正電圧差VCp(t)に変換するための第1の静的電圧変換ユニットであり、第1の走査電圧差VSp(t)と同期して、走査補正電極185により第1の走査補正電界を生成するように構成されている、静的電圧変換ユニットを備える。上述の通り、静的電圧変換ユニットは、走査補正電圧差VCp(t)の生成のため、複数の静的制御信号によりプログラムされるように構成されている少なくとも1つのプログラム可能抵抗器列を備え得る。したがって、第1の走査補正器112は、一次ビーム経路制御モジュール830に接続されている。一例において、第1の静的電圧変換ユニットは、第1の走査電圧差VSp(t)に比例または線形依存する第1の走査補正電圧差VCp(t)を生成するように構成されている。走査誘起収差の補正を同期させるため、制御ユニット800は、ラスタースキャナ(110)による複数の一次荷電粒子ビームレット3の長ストロークラスター走査偏向と第1の走査補正電界を同期させるように構成されている少なくとも第1の遅延ラインを含む遅延ラインアレイ862をさらに備える。上述の要素により、少なくとも第1の短ストローク偏向素子185を備える第1の走査補正器112は、使用時、走査誘起収差(たとえば、約0.5nm~3nmの量の走査誘起非点収差)を0.3nm未満、好ましくは0.2nmまたは0.1nm未満の残留走査誘起非点収差へと補償するように構成されている。一例において、第1の補正素子185は、使用時、第1の方向のラスタースキャナ1110による第1の一次荷電粒子ビームレット1003の走査偏向と同期して、第1の一次荷電粒子ビームレット3.1の走査誘起非点収差を個別に補償するように構成されている。
別の例においては、残留歪みが補償される。長ストローク走査偏向器110により、延伸が1μm超の像副視野の全体にわたって一次ビームレット3.1が走査されている間、第1の走査補正器112は、使用時、同期する短ストローク偏向器のように作用して、走査誘起歪みの反対方向の一次ビームレット3.1の同期する短ストローク走査偏向により、最大約5nmの走査誘起歪みを補償する。一例において、第1の走査補正器112は、使用時、第1の方向の一括ラスタースキャナ110による第1の一次荷電粒子ビームレット3.1の走査偏向と同期して、第1の方向と垂直な第2の方向の第1の一次荷電粒子ビームレット3.1の走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている第2の補正素子187を備える。
第9の実施形態に係る、走査誘起収差が抑えられたマルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、偏向電圧差VSp(t)の印加による複数の一次荷電粒子ビームレット3の長ストローク偏向のための長ストローク偏向系110と、使用時に補正電圧差VC(t)が与えられる複数の一次ビームレットの個々のビームレットの走査誘起収差の補正のための走査補正システムと、を備える。補正電圧差VC(t)は、一組の静的制御信号により制御される静的電圧変換ユニット(たとえば、プログラム可能抵抗器列またはアレイ)によって、偏向電圧差Vp(t)から生成される。これにより、たとえば0.5nm~5nmの小さな走査誘起収差は、0.3nm未満、好ましくは0.2nm未満あるいは0.1nm未満の残留収差へと効果的に小さくなる。
条項の使用によって、本発明およびいくつかの実施形態をさらに説明することも可能である。ただし、本発明は、これらの条項に限定されないものとする。
条項1:ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)であって、
複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を生成する荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と、
複数の一次荷電粒子ビームレット(3)によって、物体面(101)に配置されているウェハ表面(25)上の像パッチ(17.1)を照射することにより、使用時、ウェハ表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)を生成するための物体照射ユニット(100)と、
投射系(205)および像センサ(207)を備え、複数の二次電子ビームレット(9)を像センサ(207)上に結像するとともに、使用時、ウェハ表面(25)の像パッチ(17.1)のデジタル像を取得するための検出ユニット(200)と、
少なくとも第1の一組の偏向電極と、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)が使用時に横断する交差ボリューム(189)と、を備える一括マルチビームラスタースキャナ(110)と、
使用時、第1の方向またはp方向の複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査偏向のため、少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を第1の一組の偏向電極に与えるように構成されている制御ユニット(800)と、
を備え、
一括マルチビームラスタースキャナ(110)が、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の光軸から逸脱する傾斜角β1で交差ボリューム(189)に入射する第1の一次荷電粒子ビームレットの走査誘起収差の低減のため、所定の不均質走査偏向電界分布を交差ボリューム(189)に生成するように構成されている、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項2:第1の一組の偏向電極のうちのある偏向電極が、空間的に分離された2つの電極で構成されており、制御ユニット(800)が、使用時、第1および第2の走査電圧差VSp1(t)およびVSp2(t)を空間的に分離された2つの電極に与えるように構成されており、第1および第2の走査電圧差VSp1(t)およびVSp2(t)が、異なる、条項1に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項3:一括マルチビームラスタースキャナ(110)が、使用時、第2の方向またはq方向の複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査偏向のため、交差ボリューム(189)において複数の一次荷電粒子ビームレット(3)が横断する第2の所定の不均質走査偏向電界分布を生成するための第2の一組の偏向電極を備えており、制御ユニット(800)が、使用時、少なくとも第2の走査電圧差VSq(t)を第2の一組の偏向電極に与えるように構成されている、条項1または2に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項4:一括マルチビームラスタースキャナ(110)の少なくとも第1の一組または第2の一組の偏向電極の形状および形体が、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の交差ボリューム(189)の断面に適応されている、条項4に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項5:複数の一次荷電粒子(3)の平均伝搬方向において、第1の一組の偏向電極および第2の一組の偏向電極が、異なる長さを有する、条項3または4に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項6:一括マルチビームラスタースキャナ(110)が、使用時、所定の不均質静電界分布に寄与する所定の走査補正電界を生成するように構成されている第1の一組の補正電極(185、193)をさらに備える、条項1~5のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項7:第1の一組の補正電極のうちのある電極(185.1、185.2、185.3、185.4)が、第1の一組の偏向電極のうちのある電極と第2の一組の偏向電極のうちのある電極との間の空間において、交差ボリューム(189)の外側に配置されている、条項6に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項8:一括マルチビームラスタースキャナ(110)が、使用時、所定の不均質静電界分布に寄与する所定の第2の走査補正電界を生成するように構成されている第2の一組の補正電極(187、195)をさらに備える、条項6または7に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項9:一括マルチビームラスタースキャナ(110)が、交差ボリュームに対する所定の不均質走査偏向電界分布の横方向位置を調整するように構成されており、制御ユニット(800)が、使用時、第1の一組の偏向電極または第2の一組の偏向電極の少なくとも一方に電圧オフセットを与えるように構成されている、条項1~8のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項10:荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と一括マルチビームラスタースキャナ(110)との間に配置され、交差ボリューム(189)に対する複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の横方向位置を調整するように構成および設定されている第1の静的偏向系(701)をさらに備える、条項1~9のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項11:荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と一括マルチビームラスタースキャナ(110)との間に、交差ボリューム(189)の入射側での複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の平均入射角を調整するように構成および設定されている第2の静的偏向系(701)をさらに備える、条項1~10のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項12:一次荷電粒子ビームレット(3)それぞれの像走査時の走査誘起収差を補償するため、複数のアパーチャに配置されている複数の偏向素子と、第1の静的電圧変換アレイを備え、複数の第1の補正電圧差を複数の偏向素子それぞれに与えるように構成されている第1の走査アレイ制御ユニット(622.1)と、を備える、走査歪み補償器アレイ(601)をさらに備える、条項1~11のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項13:一括マルチビームラスタースキャナ(110)による複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査のため、第1の走査アレイ制御ユニット(622.1)によって、複数の第1の補正電圧差がそれぞれ、走査電圧差VSp(t)またはVSq(t)の少なくとも一方に接続されている、条項12に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項14:走査誘起偏心収差の補償のための走査補償器アレイ(602)であり、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の中間像面(321)の近傍に配置され、一次荷電粒子ビームレット(3)それぞれの像走査時の走査誘起偏心収差を補償するため、複数のアパーチャに配置されている複数の偏向素子と、第2の静的電圧変換アレイを備え、複数の第2の補正電圧差を複数の偏向素子それぞれに与えるように構成されている第2の走査アレイ制御ユニット(622.2)と、を備える、走査補償器アレイ(602)をさらに備える、条項1~13のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項15:一括マルチビームラスタースキャナ(110)による複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査のため、複数の第2の補正電圧差がそれぞれ、走査電圧差VSp(t)またはVSq(t)の少なくとも一方に接続されている電圧差を含む、条項14に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項16:ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)であって、
複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を生成する荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と、
複数の一次荷電粒子ビームレット(3)によって、物体面(101)に配置されているウェハ表面(25)上の像パッチ(17.1)を照射することにより、使用時、ウェハ表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)を生成するための物体照射ユニット(100)と、
投射系(205)および像センサ(207)を備え、複数の二次電子ビームレット(9)を像センサ(207)上に結像するとともに、使用時、ウェハ表面(25)の像パッチ(17.1)のデジタル像を取得するための検出ユニット(200)と、
一括マルチビームラスタースキャナ(110)と、
一括マルチビームラスタースキャナ(110)の上流で複数の一次荷電粒子の伝搬方向に配置され、使用時、複数の一次荷電粒子ビームレットのうちの対応する一次荷電粒子ビームレットを透過するようにそれぞれ構成されている複数のアパーチャを備える走査歪み補償器アレイ(601)であり、複数のアパーチャが、各対応する一次荷電粒子ビームレットを第1の方向またはp方向に個別に偏向させるための複数の第1の偏向素子と、各対応する一次荷電粒子ビームレットを第1の方向と垂直な第2の方向またはq方向に個別に偏向させるための複数の第2の偏向素子と、を備え、複数の偏向素子がそれぞれ、複数のアパーチャそれぞれの周囲に配置されている、走査歪み補償器アレイ(601)と、
使用時、第1の方向またはp方向の複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査偏向のため、少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を一括マルチビームラスタースキャナ(110)に与えるように構成されている制御ユニット(800)と、
を備え、
走査偏向補償器アレイ(601)が、第1の方向において、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査偏向時の走査誘起収差を補償するため、複数の第1の補正電圧差を複数の第1の偏向素子に与えるように構成されている第1の静的電圧変換アレイ(611)と、複数の第2の補正電圧差を複数の第2の偏向素子に与えるように構成されている第2の静的電圧変換アレイ(612)と、を備える走査アレイ制御ユニット(622)をさらに備える、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項17:第1の静的電圧変換アレイ(611)が、制御ユニット(800)に結合され、第1の走査電圧差VSp(t)と同期して、少なくとも複数の第1の電圧差成分を複数の第1および第2の偏向素子それぞれに与えるように構成されている、条項16に記載のウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項18:制御ユニット(800)が、使用時、第2の方向またはq方向の複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査偏向のため、第2の走査電圧差VSq(t)を一括マルチビームラスタースキャナ(110)に与えるように構成されている、条項16または17に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項19:第1の静的電圧変換アレイ(611)および第2の静的電圧変換アレイ(612)が、制御ユニット(800)に結合され、第2の走査電圧差VSq(t)と同期して、少なくとも複数の第2の電圧差成分を複数の第1および第2の偏向素子それぞれに与えるように構成されている、条項18に記載のウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項20:第1の静的電圧変換アレイ(611)が、制御ユニット(800)に結合され、少なくとも、第1の走査電圧差VSp(t)と同期した第1の電圧差成分および第2の走査電圧差VSq(t)と同期した第2の電圧差成分を、複数の第1の偏向素子のそれぞれに与えるように構成されている、条項18または19に記載のウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項21:第1または第2の静的電圧変換アレイ(611、612)が、プログラム可能抵抗器アレイとして構成されている、条項16~20のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項22:一括マルチビームラスタースキャナ(110)が、少なくとも第1の一組の偏向電極と、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)が横断する交差ボリューム(189)と、を備え、一括マルチビームラスタースキャナ(110)が、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の光軸から逸脱する傾斜角βで交差ボリューム(189)に入射する一次荷電粒子ビームレットの走査誘起収差の低減のため、所定の不均質走査偏向電界分布を交差ボリューム(189)に生成するように構成されている、条項16~21のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項23:第1の一組の偏向電極のうちのある偏向電極が、空間的に分離された2つの電極で構成されており、制御ユニット(800)が、使用時、第1および第2の走査電圧差VSp1(t)およびVSp2(t)を空間的に分離された2つの電極に与えるように構成されており、第1および第2の走査電圧差VSp1(t)およびVSp2(t)が、異なる、条項22に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項24:一括マルチビームラスタースキャナ(110)が、使用時、第2の方向またはq方向の複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査偏向のため、交差ボリューム(189)において複数の一次荷電粒子ビームレット(3)が横断する第2の所定の不均質走査偏向電界分布を生成するための第2の一組の偏向電極を備える、条項22または23に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項25:一括マルチビームラスタースキャナ(110)の少なくとも第1の一組または第2の一組の偏向電極の形状および形体が、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の交差ボリューム(189)の断面に適応されている、条項24に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項26:複数の一次荷電粒子(3)の平均伝搬方向において、第1の一組の偏向電極および第2の一組の偏向電極が、異なる長さを有する、条項24または25に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項27:一括マルチビームラスタースキャナ(110)が、使用時、所定の不均質静電界分布に寄与する所定の走査補正電界を生成するように構成されている第1の一組の補正電極(185、193)をさらに備える、条項16~26のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項28:第1の一組の補正電極のうちのある電極(185.1、185.2、185.3、185.4)が、第1の一組の偏向電極のうちのある電極と第2の一組の偏向電極のうちのある電極との間の空間に配置されている、条項27に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項29:一括マルチビームラスタースキャナ(110)が、使用時、所定の不均質静電界分布に寄与する所定の第2の走査補正電界を生成するように構成されている第2の一組の補正電極(187、195)をさらに備える、条項27または28に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項30:一括マルチビームラスタースキャナ(110)が、交差ボリュームに対する所定の不均質走査偏向電界分布の横方向位置を調整するように構成されており、制御ユニット(800)が、使用時、第1の一組の偏向電極または第2の一組の偏向電極の少なくとも一方に電圧オフセットを与えるように構成されている、条項16~29のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項31:荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と一括マルチビームラスタースキャナ(110)との間に配置され、交差ボリューム(189)に対する複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の横方向位置を調整するように構成および設定されている第1の静的偏向系(701)をさらに備える、条項16~30のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項32:荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と一括マルチビームラスタースキャナ(110)との間に、交差ボリューム(189)の入射側での複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の平均入射角を調整するように構成および設定されている第2の静的偏向系(701)をさらに備える、条項16~31のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項33:走査誘起偏心収差の補償のための走査補償器アレイ(602)であり、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の中間像面(321)の近傍に配置され、一次荷電粒子ビームレット(3)それぞれの像走査時の走査誘起偏心収差を補償するため、複数のアパーチャに配置されている複数の偏向素子と、第2の静的電圧変換アレイを備え、複数の第2の補正電圧差を複数の偏向素子それぞれに与えるように構成されている第2の走査アレイ制御ユニット(622.2)と、を備える、走査補償器アレイ(602)をさらに備える、条項16~32のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項34:複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の各ビームレットの焦点面逸脱の走査誘起非点収差等の走査誘起収差の補償のための別の走査補償器アレイをさらに備える、条項16~33のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項35:ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)であって、
複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を生成する荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と、
複数の一次荷電粒子ビームレット(3)によって、物体面(101)に配置されているウェハ表面(25)上の像パッチ(17.1)を照射することにより、使用時、ウェハ表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)を生成するための物体照射ユニット(100)と、
投射系(205)および像センサ(207)を備え、複数の二次電子ビームレット(9)を像センサ(207)上に結像するとともに、使用時、ウェハ表面(25)の像パッチ(17.1)のデジタル像を取得するための検出ユニット(200)と、
少なくとも第1の一組の偏向電極と、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)が使用時に横断する交差ボリューム(189)と、を備える一括マルチビームラスタースキャナ(110)と、
使用時、第1の方向またはp方向の複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査偏向のため、少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を一括マルチビームラスタースキャナ(110)に与えるように構成されている制御ユニット(800)と、
荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と一括マルチビームラスタースキャナ(110)との間に配置され、交差ボリューム(189)に対する複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の横方向位置を調整するように構成されている第1の静的偏向系(701)と、
を備える、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項36:荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と一括マルチビームラスタースキャナ(110)との間に、交差ボリューム(189)の入射側での複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の平均入射角を調整するように構成および設定されている第2の静的偏向系(701)をさらに備える、条項35に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項37:荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と、物体照射ユニット(100)と、検出ユニット(200)と、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を一括ラスター走査するための一括マルチビームラスタースキャナ(110)と、一括マルチビームラスタースキャナ(110)の上流で複数の一次荷電粒子の伝搬方向に配置されている走査歪み補償器アレイ(601)と、制御ユニット(800)と、を備えるマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法であって、
少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を走査アレイ制御ユニット(622)に与えるステップと、
少なくとも第1の電圧差VSp(t)および複数の制御信号から、複数の電圧差成分を生成するステップと、
複数の電圧差成分を走査歪み補償器アレイ(601)の複数の偏向素子に与えることにより、複数の一次荷電粒子ビームレットの各ビームレットを個別に走査偏向させて、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査偏向時の複数の走査誘起歪みを補償するステップと、
を含む、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
条項38:基準物体の像パッチの全体にわたって複数の一次荷電粒子を走査することにより、複数の走査誘起歪みを決定するステップと、
各一次荷電粒子ビームレットについて、複数の走査誘起歪みそれぞれの少なくとも線形部の複数の振幅を抽出するステップと、
複数の振幅それぞれから、複数の制御信号を導出するステップと、
複数の制御信号を走査歪み補償器アレイ(601)の走査アレイ制御ユニットに与えるステップと、
をさらに含む、条項37に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
条項39:ウェハ検査用のマルチビーム顕微鏡(1)であって、
少なくとも第1の個々のビームレットを含む複数の一次ビームレット(3)を生成するためのマルチビームレット生成器(300)と、
複数の一次ビームレット(3)によって、物体面(101)に配置されているサンプルの表面(25)上の像パッチ(17.1)を照射することにより、使用時、表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)を生成するための物体照射ユニット(100)と、
投射系(205)および像センサ(207)を備え、複数の二次電子ビームレット(9)を像センサ(207)上に結像するとともに、使用時、サンプルの表面(25)の像パッチ(17.1)のデジタル像を取得するための検出ユニット(200)と、
少なくとも第1の一組の偏向電極と、複数の一次ビームレット(3)が横断する交差ボリューム(189)と、を備える一括マルチビームラスタースキャナ(110)と、
使用時、少なくとも第1の個々のビームレットに影響を及ぼすための第1の走査静電界を生成するように構成されている少なくとも第1の走査補正器と、
使用時、第1の方向またはp方向の複数の一次ビームレット(3)の一括ラスター走査のため、少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を第1の一組の偏向電極に与えるように構成されている制御ユニット(800)と、
を備え、
制御ユニット(800)が、第1の走査電圧差VSp(t)を第1の走査補正器に与えるようにさらに構成されており、第1の走査補正器が、少なくとも第1の個々のビームレットの走査誘起収差を抑えるように構成されている、マルチビーム顕微鏡(1)。
条項40:第1の走査補正器が、第1の走査電圧差VSp(t)を少なくとも第1の走査補正電圧差VCp(t)に変換するための第1の静的電圧変換ユニットであり、第1の走査電圧差VSp(t)と同期して、第1の走査静電界を生成するように構成されている、第1の静的電圧変換ユニットを備える、条項39に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項41:静的電圧変換ユニットが、複数の静的制御信号によりプログラムされるように構成されている少なくとも1つのプログラム可能抵抗器列を備える、条項40に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項42:第1の静的電圧変換ユニットが、第1の走査電圧差VSp(t)に比例する第1の走査補正電圧差VCp(t)を生成するように構成されている、条項40または41に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項43:制御ユニット(800)が、一括マルチビームラスタースキャナ(110)による複数の一次ビームレット(3)の一括ラスター走査と第1の走査補正電界を同期させるように構成されている第1の遅延ラインをさらに備える、条項39~42のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項44:第1の走査補正器が、使用時、複数の一次ビームレット(3)それぞれについて、走査誘起歪みを補償するように構成されている複数の偏向素子を備える、条項39~43のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項45:複数の偏向素子が、使用時、第1の方向の一括マルチビームラスタースキャナ(110)による複数の一次ビームレット(3)の走査偏向と同期して、第1の方向の第1の個々のビームレットの走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている第1の偏向素子を含む、条項44に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項46:複数の偏向素子が、使用時、第2の方向に垂直な第1の方向の一括マルチビームラスタースキャナ(110)による複数の一次ビームレット(3)の走査偏向と同期して、第1の方向と垂直な第2の方向の第1の個々のビームレットの走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている第2の偏向素子をさらに含む、条項45に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項47:複数の偏向素子が、使用時、垂直な第1の方向の一括マルチビームラスタースキャナ(110)による複数の一次ビームレット(3)の走査偏向と同期して、第1の方向の第2の個々のビームレットの走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている第3の偏向素子をさらに含む、条項45または46に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項48:静的電圧変換ユニットが、複数の偏向素子のうちのある偏向素子にそれぞれ接続されている複数のプログラム可能抵抗器列を備えており、複数のプログラム可能抵抗器列が、複数の静的制御信号により制御され、使用時、第1の走査電圧差VSp(t)とそれぞれ同期して、複数の走査補正電圧差VCAp(i,t)を生成するように構成されているプログラム可能抵抗器アレイを構成する、条項44~47のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項49:第1の走査補正器が、使用時、当該マルチビーム粒子顕微鏡(1)の光軸から逸脱する傾斜角βで交差ボリューム(189)に入射する個々の一次ビームレットの走査誘起収差の低減のため、一括マルチビーム偏向系(110)の交差ボリューム(189)において生成された不均質静電界分布に寄与するように構成されている少なくとも1つの補正電極を備える、条項39~43のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項50:マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法であって、
走査電圧差VSp(t)を生成するステップと、
走査電圧差VSp(t)を一括マルチビームラスタースキャナ(110)に与えることにより、第1の方向において、一括マルチビームラスタースキャナ(110)により複数の一次ビームレット(3)を一括偏向走査するステップと、
走査電圧差VSp(t)から、走査電圧差VSp(t)と同期して、少なくとも第1の走査補正電圧差VCp(t)を生成するステップと、
第1の走査補正電圧差VCp(t)を走査補正器の偏向素子に与えることにより、複数の一次ビームレット(3)のうちの少なくとも1つの個々のビームレットの走査誘起収差を抑えるステップと、
を含む、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
条項51:複数の静的制御信号を走査補正器に与えることにより、第1の走査補正電圧差VCp(t)を生成するステップをさらに含む、条項50に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
条項52:第1の走査補正電圧差VCp(t)と走査電圧差VSp(t)との間の所定の時間遅延を生成することにより、複数の一次ビームレット(3)の一括ラスター走査を同期させるとともに、少なくとも1つの個々のビームレットの走査誘起収差を抑えるステップをさらに含む、条項50または51に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
条項53:ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1、1001)であって、
少なくとも第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)を生成するためのビームレット生成器と、
第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)によって、物体面(101)に配置されているサンプルの表面(25)の像視野を照射するための物体照射ユニット(100)と、
少なくとも第1の一組の偏向電極(153)と、第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)が横断する交差ボリューム(189)と、を備えるラスタースキャナ(110)と、
使用時、像視野の全体にわたる第1の方向またはp方向の第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)の走査偏向のため、少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を第1の一組の偏向電極(153)に与えるように構成されている制御ユニット(800)であり、像視野が、少なくとも5μm、好ましくは8μm以上の横方向延伸を有する、制御ユニット(800)と、
使用時、第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)に影響を及ぼすための第1の走査補正電界を生成するように構成されている少なくとも第1の走査補正器(601、185、193)と、
を備え、
制御ユニット(800)が、第1の走査電圧差VSp(t)を第1の走査補正器(601、185、193)に与えるようにさらに構成されており、第1の走査補正器(601、185、193)が、第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)の走査偏向と同期して、第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)の走査誘起収差を抑えるように構成されている、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1、1001)。
条項54:第1の走査補正器(601、185、193)が、第1の走査電圧差VSp(t)を少なくとも第1の走査補正電圧差VCp(t)に変換するための静的電圧変換ユニットであり、第1の走査電圧差VSp(t)と同期して、第1の走査補正電界を生成するように構成されている、静的電圧変換ユニットを備える、条項53に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項55:静的電圧変換ユニットが、複数の静的制御信号によりプログラムされるように構成されている少なくとも1つのプログラム可能抵抗器列を備える、条項54に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項56:静的電圧変換ユニットが、第1の走査電圧差VSp(t)に比例する第1の走査補正電圧差VCp(t)を生成するように構成されている、条項54または55に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項57:制御ユニット(800)が、ラスタースキャナ(110)による第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)のラスター走査と第1の走査補正電界を同期させるように構成されている第1の遅延ラインをさらに備える、条項53~56のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項58:第1の走査補正器(601、185、193)が、使用時、第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)の約0.5nm~5nmの走査誘起収差を0.3nm未満、好ましくは0.2nm未満または0.1nm未満の小さな量へと補償するように構成されている少なくとも第1の偏向素子を備える、条項53~57のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項59:走査誘起収差が、走査誘起歪みである、条項58に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項60:第1の偏向素子が、使用時、第1の方向のラスタースキャナ(110)による第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)の走査偏向と同期して、第1の方向の第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)の走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている、条項58または59に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項61:使用時、第1の方向のラスタースキャナ(110)による第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)の走査偏向と同期して、第1の方向と垂直な第2の方向の第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)の走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている第2の偏向素子をさらに備える、条項60に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項62:走査誘起収差が、走査誘起非点収差、走査誘起偏心収差、走査誘起球面収差、または走査誘起コマから成る群の少なくとも1つである、条項58に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項63:少なくとも第2の一次荷電粒子ビームレット(3.1または3.2)を生成するためのビームレット生成器をさらに備える、条項53~62のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項64:第1の走査補正器が、使用時、第2の一次荷電粒子ビームレット(3.1または3.2)の走査誘起収差を個別に補償するように構成されている第3の偏向素子をさらに備える、条項63に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項65:静的電圧変換ユニットが、第1の偏向素子に接続され、複数の静的制御信号により制御され、使用時、第1の走査電圧差VSp(t)と同期して、走査補正電圧差VCAp(t)を生成するように構成されている少なくとも第1のプログラム可能抵抗器列を備える、条項64に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項66:ラスタースキャナ(110)による少なくとも第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)のラスター走査時の第2の走査誘起収差を抑えるように構成されている第2の走査補正器(602、187、195)をさらに備える、条項53~65のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項67:ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)であって、
少なくとも第1の一次ビームレットおよび第2の一次ビームレットを含む複数の一次ビームレット(3)を生成するためのマルチビームレット生成器(300)と、
物体面(101)に配置されているウェハの表面(25)上の像パッチ(17)を照射することにより、使用時、表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)を生成するための物体照射ユニット(100)と、
交差ボリューム(189)を構成する一括マルチビームラスタースキャナ(110)であり、少なくとも像パッチ(17)の第1の像副視野(31.55)の全体にわたって走査される第1の一次ビームレット(3.55)および第2の像副視野(31.15)の全体にわたって同期走査される第2の一次ビームレット(3.15)を含む複数の一次ビームレット(3)の一括ラスター走査の実行によって像パッチ(17)の像走査を構成するように構成されている、一括マルチビームラスタースキャナ(110)と、
投射系(205)および像センサ(207)を備え、複数の二次電子ビームレット(9)を像センサ(207)上に結像するとともに、像走査時のデジタル像を取得するための検出ユニット(200)と、
制御ユニット(800)に接続され、像走査時、第1の像副視野(31.55)における第1の一次ビームレット(3.55)と第2の像副視野(31.15)における第2の一次ビームレット(3.15)との間の走査誘起歪み差を抑えるように構成されている第1の走査補正器(601)と、
を備える、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項68:第1の走査補正器(601)が、使用時、第1の一次ビームレット(3.55)に影響を及ぼすための第1の走査静電界および第2の一次ビームレット(3.55)に個別に影響を及ぼすための第2の走査静電界を含む、複数の一次ビームレットに影響を及ぼすための複数の走査静電界を生成するように構成されている、条項67に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項69:第1の走査補正器(601)が、使用時、第1の一次ビームレット(3.55)の第1の走査誘起歪みおよび第2の一次ビームレット(3.15)の第2の走査誘起歪みを含む複数の一次ビームレット(3)それぞれの複数の走査誘起歪みを補償するように構成されている第1の偏向素子および第2の偏向素子を含む複数の偏向素子を備える、条項68に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項70:制御ユニット(800)が、使用時、第1の走査電圧差VSp(t)を一括マルチビームラスタースキャナ(110)に与えるように構成されており、第1の走査補正器(601)が、第1の走査電圧差VSp(t)を複数の走査補正電圧差VCAp(i,t)に変換するための走査アレイ制御ユニット(622)であり、使用時、第1の走査電圧差VSp(t)と同期して、複数の静電界を生成するように構成されている、走査アレイ制御ユニット(622)を備える、条項68または69に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項71:走査アレイ制御ユニット(622)が、使用時、第1の走査電圧差VSp(t)から、複数の走査補正電圧差VCAp(i,t)を生成するように構成されている複数の静的電圧変換ユニット(611、612)を備える、条項70に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項72:複数の静的電圧変換ユニット(611、612)がそれぞれ、複数の静的制御信号により制御されるように構成されているプログラム可能抵抗器列として構成されている、条項71に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項73:制御ユニット(800)が、一括マルチビームラスタースキャナ(110)による複数の一次ビームレット(3)の一括ラスター走査と第1の走査補正器(601)の複数の走査静電界を同期させるように構成されている第1の遅延ラインをさらに備える、条項68~72のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項74:第1の偏向素子が、使用時、第1の方向の一括マルチビームラスタースキャナ(110)による複数の一次ビームレット(3)の走査偏向と同期して、第1の方向の第1の一次ビームレット(3.55)の走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている、条項69~73のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項75:第1の偏向素子が、使用時、第1の方向の一括マルチビームラスタースキャナ(110)による複数の一次ビームレット(3)の走査偏向と同期して、第1の方向と垂直な第2の方向の第1の一次ビームレット(3.55)の走査誘起歪みを個別に補償するようにさらに構成されている、条項74に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項76:第2の偏向素子が、使用時、第1の方向の一括マルチビームラスタースキャナ(110)による複数の一次ビームレット(3)の走査偏向と同期して、第1の方向の第2の一次ビームレットの走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている、条項74または75に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項77:使用時、第1の一次ビームレットが、第1の角度β1で交差ボリューム(189)を横断し、第2の一次ビームレットが、第1の角度β1と異なる第2の角度β2で交差ボリューム(189)を横断する、条項67~76のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項78:制御ユニット(800)に接続され、像走査時、第1の像副視野(31.55)における第1の一次ビームレット(3.55)と第2の像副視野(31.15)における第2の一次ビームレット(3.15)との間の走査誘起偏心差を抑えるように構成されている第2の走査補正器(602)をさらに備える、条項67~77のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項79:マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法であって、
走査電圧差VSp(t)を生成するステップと、
走査電圧差VSp(t)を一括マルチビームラスタースキャナ(110)に与えることにより、第1の方向において、一括マルチビームラスタースキャナ(110)により複数の一次ビームレット(3)を一括偏向走査するステップと、
複数の静的電圧変換ユニットによって、走査電圧差VSp(t)から、走査電圧差VSp(t)と同期して、複数の走査補正電圧差VCAp(i,t)を生成するステップと、
複数の走査補正電圧差VCAp(i,t)を走査補正器の複数の偏向素子に与えることにより、複数の一次ビームレット(3)の走査誘起歪みを抑えるステップと、
を含む、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
条項80:複数の静的制御信号を複数の静的電圧変換ユニットに与えることにより、複数の走査補正電圧差VCAp(i,t)を生成するステップをさらに含む、条項79に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
条項81:複数の走査補正電圧差VCAp(i,t)と走査電圧差VSp(t)との間の所定の時間遅延を生成することにより、複数の一次ビームレット(3)の一括ラスター走査を同期させるとともに、走査誘起歪みを抑えるステップをさらに含む、条項79または80に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
条項82:基準物体の像パッチの全体にわたって複数の一次荷電粒子を走査することにより、走査誘起歪みを決定するステップと、
各一次荷電粒子ビームレットについて、走査誘起歪みの少なくとも線形部の複数の振幅を抽出するステップと、
複数の振幅それぞれから、複数の静的制御信号を導出するステップと、
をさらに含む、条項79に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
条項83:ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)であって、
少なくとも第1の一次ビームレット(3.0、3.1、3.2)を含む複数の一次荷電粒子ビームレット(3)のラスター走査を実行するための第1の長ストロークラスタースキャナ(110)であり、ウェハ表面(25)上の像副視野(31)の延伸D=5μm~12μmに対応する走査範囲にわたって、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)それぞれを一括走査偏向させるように構成されている、第1の長ストロークラスタースキャナ(110)と、
第1の一次ビームレット(3.0、3.1、3.2)を含む各一次荷電粒子ビームレットの走査誘起収差を個別に補正するように構成されている第2の短ストロークラスタースキャナ(601)であり、走査誘起収差が、第1の長ストロークラスタースキャナ(110)による一括走査偏向時に導入される、第2の短ストロークラスタースキャナ(601)と、
個々の走査誘起収差の補正のため、第2の短ストロークラスタースキャナ(601)を第1の長ストロークラスタースキャナ(110)の走査偏向と同期させるように構成されている制御ユニット(800)と、
を備える、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項84:走査誘起収差が、走査歪みであり、第2の短ストロークラスタースキャナ(601)が、最大走査歪みrm(|rm|<D/1000)に対応する走査範囲の全体にわたって、各一次ビームレットを走査偏向させるように構成されている、条項83に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項85:当該荷電粒子顕微鏡(1)が、走査誘起偏心収差の走査補正を実行するための第3の短ストロークラスタースキャナ(602)であり、第1の長ストロークラスタースキャナ(110)による複数の一次ビームレット(3)の走査偏向時に導入される走査誘起偏心収差を補正するように構成されている、第3の短ストロークラスタースキャナ(602)を備え、制御ユニット(800)が、第1の長ストロークラスタースキャナ(110)による複数の一次ビームレットの走査偏向および第2の短ストロークラスタースキャナ(601)による走査誘起収差の走査補正と第3の短ストロークラスタースキャナ(602)を同期させるように構成されている、条項83または84に記載の荷電粒子顕微鏡(1)。
条項86:走査電圧差VSp(t)を複数の走査補正電圧差VCAp(i,t)に変換して、走査誘起収差の走査補正を実行するための少なくとも1つの走査アレイ制御ユニット(622)をさらに備える、条項83~85のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項87:走査アレイ制御ユニット(622)が、使用時、第1の走査電圧差VSp(t)から、複数の走査補正電圧差VCAp(i,t)を生成するように構成されている複数の静的電圧変換ユニット(611、612)を備える、条項86に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項88:複数の静的電圧変換ユニット(611、612)がそれぞれ、複数の静的制御信号により制御されるように構成されているプログラム可能抵抗器列として構成されている、条項87に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項89:複数の一次ビームレット(3)を生成するためのビームレット生成器(300)と、物体面(101)に配置されている物体(7)の表面(25)の複数の像パッチ(17)を照射することにより、使用時、表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)を生成するための物体照射ユニット(100)と、をさらに備える、条項83~88のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
条項90:ビームレット生成器(300)が、少なくとも第2の一次ビームレットを生成するように構成され、第1の長ストロークラスタースキャナ(110)が、ウェハ表面上の像副視野の延伸Dに対応する走査範囲の全体にわたって、少なくとも第1および第2の一次ビームレットそれぞれを一括走査偏向するように構成され、第2の短ストロークラスタースキャナ(601)が、第1および第2の一次ビームレットの走査誘起収差を個別に補正するように構成されている、条項89に記載の荷電粒子ビーム顕微鏡(1)。
条項91:投射系(205)および像センサ(207)を備え、複数の二次電子ビームレット(9)を像センサ(207)上に結像するとともに、像走査時のデジタル像を取得するための検出ユニット(200)をさらに備える、条項83~90のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム顕微鏡(1)。
上記説明から明らかとなるように、上記例および実施形態の組み合わせおよび種々改良が可能であり、上記実施形態または例にも同様に適用可能である。一次ビームの荷電粒子としては、たとえば電子が可能であるが、Heイオン等の他の荷電粒子も可能である。二次電子には、狭義の二次電子のほか、後方散乱電子または後方散乱電子により生成される第2の二次電子等、一次荷電粒子ビームレットのサンプルとの相互作用により生成されるその他任意の二次荷電粒子も含む。別の例においては、二次電子の代わりに二次イオンが収集され得る。
1 マルチビーム荷電粒子顕微鏡システム
3 一次荷電粒子ビームレット(複数の一次荷電粒子ビームレットを構成)
5 一次荷電粒子ビームスポット
7 物体
9 二次電子ビームレット(複数の二次電子ビームレットを構成)
11 二次電子ビーム経路
13 一次ビーム経路
15 二次荷電粒子像スポット
17 像パッチ
19 像パッチの重畳エリア
21 像パッチ中心位置
25 ウェハ表面
27 一次ビームレットの走査経路
29 像副視野の中心
31 像副視野
33 第1の検査部位
35 第2の検査部位
39 副視野31の重畳エリア
100 物体照射ユニット
101 物体または像面
102 対物レンズ
103 視野レンズ群
105 マルチビーム荷電粒子顕微鏡システムの光軸
108 第1のビームクロスオーバ
110 第1のマルチビームラスタースキャナ
112 マルチビームラスタースキャナの補正素子
120 走査補正制御モジュール
141 一次ビームスポット位置の例
143 一次ビームスポットの静的変位ベクトル
150 中心ビームレット
151 現実のビームレット軌道
153 偏向電極
155 静電ポテンシャルの等電位線
157 軸外または視野ビームレット
159 仮想共通ピボット点
161 仮想ピボット点
163 1次ビーム経路
171 スキャナ110前段システム
173 線形曲線
175 偏向角の関数としての電圧差
177 複数対の電極から成る偏向電極に印加される偏向角の関数としての電圧差
179 複数対の電極から成る偏向電極に印加される偏向角の関数としてのオフセット電圧
181 第1の方向の偏向のための偏向電極
183 第2の方向の偏向のための偏向電極
185 第1の一組の補正電極
187 第2の一組の補正電極
189 横断ビームの交差ボリューム
190 交差ボリュームの内側エリア
191 非対称方向
193 第1の一組の補正電極
195 第2の一組の補正電極
197 線形依存性を示すライン
200 検出ユニット
205 投射系
206 静電レンズ
207 像センサ
208 結像レンズ
209 結像レンズ
210 結像レンズ
212 第2のクロスオーバ
214 アパーチャフィルタ
216 能動素子
218 第3の偏向系
220 マルチアパーチャ補正器
222 第2の偏向系
300 荷電粒子マルチビームレット生成器
301 荷電粒子源
303 コリメータレンズ
305 一次マルチビームレット構成ユニット
306 アクティブマルチアパーチャプレート
307 第1の視野レンズ
308 第2の視野レンズ
309 電子ビーム
311 一次電子ビームレットスポット
321 中間像面
390 ビームステアリングマルチアパーチャプレート
400 ビームスプリッタユニット
420 磁気素子
500 サンプルステージ
503 サンプル電圧源
601 第1の走査補正器または走査歪み補償器アレイ
602 第2の走査補正器または偏心収差の走査補償器アレイ
607 導電性ライン
609 第1の電力線
610 第2の電力線
611 第1の電圧変換ユニット
612 第2の電圧変換ユニット
613 第1の複数の導電性ライン
614 第2の複数の導電性ライン
615 第1の複数の制御信号
616 第2の複数の制御信号
618 接続信号線
620 マルチアパーチャプレート
622 走査アレイ制御ユニット
624 クロック線
626 動作制御メモリ
631 データまたは電圧接続線
633 抵抗器列
635 第1の一組の制御信号
637 第2の一組の制御信号
639 トランジスタ列
641 電圧結合器
681 電極
685 1つまたは複数のアパーチャ
687 第1の方向の偏向用の電極
688 第2の方向の偏向用の電極
701 第1の静的マルチビーム偏向系
703 第2の静的マルチビーム偏向系
800 制御ユニット
810 像データ取得ユニット
812 像ステッチングユニット
814 像データ出力
820 投射系制御モジュール
830 一次ビーム経路制御モジュール
840 制御動作プロセッサ
860 走査偏向制御モジュール
862 遅延ラインのアレイ
870 静的調整制御ユニット

Claims (64)

  1. ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)であって、
    複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を生成するための荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と、
    前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)によって、物体面(101)に配置されている物体(7)の表面(25)上の像パッチ(17.1)を照射することにより、使用時、前記表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)を生成するための物体照射ユニット(100)と、
    投射系(205)および像センサ(207)を備え、前記複数の二次電子ビームレット(9)を前記像センサ(207)上に結像する(image)とともに、使用時、前記ウェハ表面(25)の前記像パッチ(17.1)のデジタル像を取得するための検出ユニット(200)と、
    一括マルチビームラスタースキャナ(110)と、
    前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)の上流で前記複数の一次荷電粒子の伝搬方向に配置され、複数のアパーチャを備える走査歪み補償器アレイ(601)であって、前記複数のアパーチャのそれぞれは、使用時、前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)のうちの対応する一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)を透過するように構成され、前記複数のアパーチャは、各対応する一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)を第1の方向またはp方向に個別に偏向させるための複数の第1の偏向素子と、各対応する一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)を前記第1の方向と垂直な第2の方向またはq方向に個別に偏向させるための複数の第2の偏向素子と、を備え、前記複数の偏向素子のそれぞれは、前記複数のアパーチャのそれぞれの周囲に配置されている、走査歪み補償器アレイ(601)と、
    使用時、前記第1の方向またはp方向の前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査偏向のため、少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)に与えるように構成されている制御ユニット(800)と、
    を備え、
    前記走査歪み補償器アレイ(601)は、前記第1の方向の前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の前記走査偏向時の走査誘起収差を補償するため、複数の第1の補正電圧差を前記複数の第1の偏向素子に与えるように構成されている第1の静的電圧変換アレイ(611)と、複数の第2の補正電圧差を前記複数の第2の偏向素子に与えるように構成されている第2の静的電圧変換アレイ(612)と、を備える走査アレイ制御ユニット(622)をさらに備える、
    マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  2. 前記第1の静的電圧変換アレイ(611)は、前記制御ユニット(800)に結合され、前記第1の走査電圧差VSp(t)と同期して、少なくとも複数の第1の電圧差成分を前記複数の第1および第2の偏向素子それぞれに与えるように構成されている、請求項1に記載のウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  3. 前記制御ユニット(800)は、使用時、第2の方向またはq方向の前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査偏向のため、第2の走査電圧差VSq(t)を前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)に与えるように構成されている、請求項1または2に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  4. 前記第1の静的電圧変換アレイ(611)および前記第2の静的電圧変換アレイ(612)は、前記制御ユニット(800)に結合され、前記第2の走査電圧差VSq(t)と同期して、少なくとも複数の第2の電圧差成分を前記複数の第1および第2の偏向素子それぞれに与えるように構成されている、請求項3に記載のウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  5. 前記第1の静的電圧変換アレイ(611)は、前記制御ユニット(800)に結合され、少なくとも、前記第1の走査電圧差VSp(t)と同期した第1の電圧差成分および前記第2の走査電圧差VSq(t)と同期した第2の電圧差成分を、前記複数の第1の偏向素子のそれぞれに与えるように構成されている、請求項3または4に記載のウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  6. 前記第1または第2の静的電圧変換アレイ(611、612)は、プログラム可能抵抗器アレイとして構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  7. 前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)は、少なくとも第1の一組の偏向電極と、前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)が横断する交差ボリューム(189)と、を備え、前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)は、前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の光軸から逸脱する傾斜角βで前記交差ボリューム(189)に入射する一次荷電粒子ビームレットの走査誘起収差の低減のため、所定の不均質走査偏向電界分布を前記交差ボリューム(189)に生成するように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  8. 前記第1の一組の偏向電極のうちのある偏向電極は、空間的に分離された2つの電極で構成され、前記制御ユニット(800)は、使用時、第1および第2の走査電圧差VSp1(t)およびVSp2(t)を空間的に分離された前記2つの電極に与えるように構成されており、前記第1および第2の走査電圧差VSp1(t)およびVSp2(t)は異なる、請求項7に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  9. 前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)は、使用時、第2の方向またはq方向の前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査偏向のため、前記交差ボリューム(189)において前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)が横断する第2の所定の不均質走査偏向電界分布を生成するための第2の一組の偏向電極を備える、請求項7または8に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  10. 前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)の前記少なくとも第1の一組または第2の一組の偏向電極の形状および形体は、前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の前記交差ボリューム(189)の断面に適合されている、請求項9に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  11. 前記複数の一次荷電粒子(3)の平均伝搬方向において、前記第1の一組の偏向電極および前記第2の一組の偏向電極は、異なる長さを有する、請求項9または10に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  12. 前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)は、使用時、前記所定の不均質静電界分布に寄与する所定の走査補正電界を生成するように構成されている第1の一組の補正電極(185、193)をさらに備える、請求項7~11のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  13. 前記第1の一組の補正電極のうちのある電極(185.1、185.2、185.3、185.4)が、前記第1の一組の偏向電極のうちのある電極と前記第2の一組の偏向電極のうちのある電極との間の空間に配置されている、請求項12に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  14. 前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)は、使用時、前記所定の不均質静電界分布に寄与する所定の第2の走査補正電界を生成するように構成されている第2の一組の補正電極(187、195)をさらに備える、請求項11または12に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  15. 前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)は、前記交差ボリュームに対する前記所定の不均質走査偏向電界分布の横方向位置を調整するように構成されており、前記制御ユニット(800)は、使用時、前記第1の一組の偏向電極または前記第2の一組の偏向電極の少なくとも一方に電圧オフセットを与えるように構成されている、請求項1~14のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  16. 前記荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)との間に配置され、前記交差ボリューム(189)に対する前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の横方向位置を調整するように構成および設定されている第1の静的偏向系(701)をさらに備える、請求項1~15のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  17. 前記荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)との間に配置され、前記交差ボリューム(189)の入射側における前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の平均入射角を調整するように構成および設定されている第2の静的偏向系(701)をさらに備える、請求項1~16のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  18. 走査誘起偏心収差の補償のための走査補償器アレイ(602)であって、前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の中間像面(321)の近傍に配置され、前記一次荷電粒子ビームレット(3)それぞれの像走査時の走査誘起偏心収差を補償するため、複数のアパーチャに配置されている複数の偏向素子と、第2の静的電圧変換アレイを備え、複数の第2の補正電圧差を前記複数の偏向素子それぞれに与えるように構成されている第2の走査アレイ制御ユニット(622.2)と、を備える、走査補償器アレイ(602)をさらに備える、請求項1~17のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  19. 前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の各ビームレットの走査誘起非点収差または焦点面逸脱等の走査誘起収差の補償のためのさらなる走査補償器アレイをさらに備える、請求項1~18のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  20. 荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と、物体照射ユニット(100)と、検出ユニット(200)と、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を一括ラスター走査するための一括マルチビームラスタースキャナ(110)と、前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)の上流で複数の一次荷電粒子の伝搬方向に配置されている走査歪み補償器アレイ(601)と、制御ユニット(800)と、を備えるマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法であって、
    少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を走査アレイ制御ユニット(622)に与えるステップと、
    少なくとも前記第1の電圧差VSp(t)および複数の静的制御信号(635)から、複数の電圧差成分を生成するステップと、
    前記複数の電圧差成分を前記走査歪み補償器アレイ(601)の複数の偏向素子に与えることにより、前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の各ビームレット(3.0、3.1、3.2)を個別に走査偏向させて、前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査偏向時の複数の走査誘起歪みを補償するステップと、
    を含む、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
  21. 基準物体の像パッチ(17)の全体にわたって複数の一次荷電粒子(3)を走査することにより、複数の走査誘起歪みを決定するステップと、
    各一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)について、前記複数の走査誘起歪みそれぞれの少なくとも線形部の複数の振幅を抽出するステップと、
    前記複数の振幅それぞれから、前記複数の制御信号(635)を導出するステップと、
    前記複数の制御信号(635)を前記走査歪み補償器アレイ(601)の前記走査アレイ制御ユニット(622)に与えるステップと、
    をさらに含む、請求項20に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
  22. ウェハ検査用のマルチビーム顕微鏡(1)であって、
    少なくとも第1の個々のビームレットを含む複数の一次ビームレット(3)を生成するためのマルチビームレット生成器(300)と、
    前記複数の一次ビームレット(3)によって、物体面(101)に配置されている物体(7)の表面(25)上の像パッチ(17.1)を照射することにより、使用時、前記表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)を生成するための物体照射ユニット(100)と、
    投射系(205)および像センサ(207)を備え、前記複数の二次電子ビームレット(9)を前記像センサ(207)上に結像する(image)とともに、使用時、前記物体(7)の前記表面(25)の前記像パッチ(17.1)のデジタル像を取得するための検出ユニット(200)と、
    少なくとも第1の一組の偏向電極と、前記複数の一次ビームレット(3)が横断する交差ボリューム(189)と、を備える一括マルチビームラスタースキャナ(110)と、
    使用時、少なくとも前記第1の個々のビームレットに影響を及ぼすための第1の走査静電界を生成するように構成されている少なくとも第1の走査補正器と、
    使用時、第1の方向またはp方向の前記複数の一次ビームレット(3)の一括ラスター走査のため、少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を前記第1の一組の偏向電極に与えるように構成されている制御ユニット(800)と、
    を備え、
    前記制御ユニット(800)が、前記第1の走査電圧差VSp(t)を前記第1の走査補正器に与えるようにさらに構成されており、前記第1の走査補正器が、少なくとも前記第1の個々のビームレットの走査誘起収差を抑えるように構成されている、マルチビーム顕微鏡(1)。
  23. 前記第1の走査補正器が、前記第1の走査電圧差VSp(t)を少なくとも第1の走査補正電圧差VCp(t)に変換するための第1の静的電圧変換ユニットであり、前記第1の走査電圧差VSp(t)と同期して、前記第1の走査静電界を生成するように構成されている、第1の静的電圧変換ユニットを備える、請求項22に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  24. 前記静的電圧変換ユニットが、複数の静的制御信号(635)によりプログラムされるように構成されている少なくとも1つのプログラム可能抵抗器列を備える、請求項23に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  25. 前記第1の静的電圧変換ユニットが、前記第1の走査電圧差VSp(t)に比例する前記第1の走査補正電圧差VCp(t)を生成するように構成されている、請求項22または23に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  26. 前記制御ユニット(800)が、前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)による前記複数の一次ビームレット(3)の一括ラスター走査と前記第1の走査補正電界を同期させるように構成されている第1の遅延ラインをさらに備える、請求項22~25のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  27. 前記第1の走査補正器が、使用時、前記複数の一次ビームレット(3)の各一次ビームレットについて、走査誘起歪みを補償するように構成されている複数の偏向素子を備える、請求項22~26のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  28. 前記複数の偏向素子が、使用時、前記第1の方向の前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)による前記複数の一次ビームレット(3)の前記走査偏向と同期して、前記第1の方向の前記第1の個々のビームレットの走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている第1の偏向素子を含む、請求項27に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  29. 前記複数の偏向素子が、使用時、前記第1の方向の前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)による前記複数の一次ビームレット(3)の前記走査偏向と同期して、前記第1の方向と垂直な第2の方向の前記第1の個々のビームレットの走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている第2の偏向素子をさらに含む、請求項28に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  30. 前記複数の偏向素子が、使用時、垂直な前記第1の方向の前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)による前記複数の一次ビームレット(3)の前記走査偏向と同期して、前記第1の方向の第2の個々のビームレットの走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている第3の偏向素子をさらに含む、請求項28または29に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  31. 前記静的電圧変換ユニットが、前記複数の偏向素子のうちのある偏向素子にそれぞれ接続されている複数のプログラム可能抵抗器列を備えており、前記複数のプログラム可能抵抗器列が、複数の静的制御信号により制御され、使用時、前記第1の走査電圧差VSp(t)とそれぞれ同期して、複数の走査補正電圧差VCAp(i,t)を生成するように構成されているプログラム可能抵抗器アレイを構成する、請求項27~30のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  32. マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法であって、
    走査電圧差VSp(t)を生成するステップと、
    前記走査電圧差VSp(t)を一括マルチビームラスタースキャナ(110)に与えることにより、第1の方向において、前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)により複数の一次ビームレット(3)を一括偏向走査するステップと、
    前記走査電圧差VSp(t)から、前記走査電圧差VSp(t)と同期して、少なくとも第1の走査補正電圧差VCp(t)を生成するステップと、
    前記第1の走査補正電圧差VCp(t)を走査補正器の偏向素子に与えることにより、前記複数の一次ビームレット(3)のうちの少なくとも1つの個々のビームレットの走査誘起収差を抑えるステップと、
    を含む、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
  33. 複数の静的制御信号を前記走査補正器に与えることにより、前記第1の走査補正電圧差VCp(t)を生成するステップをさらに含む、請求項32に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
  34. 前記第1の走査補正電圧差VCp(t)と前記走査電圧差VSp(t)との間の所定の時間遅延を生成することにより、前記複数の一次ビームレット(3)の一括ラスター走査を同期させるとともに、前記少なくとも1つの個々のビームレットの前記走査誘起収差を抑えるステップをさらに含む、請求項32または33に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
  35. ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)であって、
    少なくとも第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)を含む複数の一次荷電粒子ビームレットを生成するためのビームレット生成器(300)と、
    前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)によって、物体面(101)に配置されているサンプルの表面(25)の像視野を照射するための物体照射ユニット(100)と、
    少なくとも第1の一組の偏向電極(153)と、前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)が横断する交差ボリューム(189)と、を備える一括ラスタースキャナ(110)と、
    対応する像副視野の全体にわたる第1の方向またはp方向の前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)それぞれの走査偏向のため、使用時、少なくとも第1の走査電圧差VSp(t)を前記第1の一組の偏向電極(153)に与えるように構成されている制御ユニット(800)であり、各像副視野が、少なくとも5μm、好ましくは8μm以上の横方向延伸を有する、制御ユニット(800)と、
    使用時、前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)に個別に影響を及ぼすための第1の走査補正電界を生成するように構成されている少なくとも第1の走査補正器(601、185、193)と、
    を備え、
    前記制御ユニット(800)が、前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の前記一括走査偏向と同期して、前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)それぞれの前記走査誘起収差の差を抑えるように構成されている前記第1の走査補正器(601、185、193)に前記第1の走査電圧差VSp(t)を与えるようにさらに構成されている、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  36. 前記第1の走査補正器(601、185、193)が、前記第1の走査電圧差VSp(t)を少なくとも第1の走査補正電圧差VCp(t)に変換するための静的電圧変換ユニットであり、前記第1の走査電圧差VSp(t)と同期して、前記第1の走査補正電界を生成するように構成されている、静的電圧変換ユニットを備える、請求項35に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  37. 前記静的電圧変換ユニットが、複数の静的制御信号によりプログラムされるように構成されている少なくとも1つのプログラム可能抵抗器列を備える、請求項36に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  38. 前記静的電圧変換ユニットが、前記第1の走査電圧差VSp(t)に比例する前記第1の走査補正電圧差VCp(t)を生成するように構成されている、請求項36または37に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  39. 前記制御ユニット(800)が、前記一括ラスタースキャナ(110)による前記第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)の前記ラスター走査と前記第1の走査補正電界を同期させるように構成されている第1の遅延ラインをさらに備える、請求項35~38のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  40. 前記第1の走査補正器(601、185、193)が、使用時、約0.5nm~5nmの前記第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)の走査誘起収差を補償して、0.3nm未満、好ましくは0.2nm未満または0.1nm未満の量に抑えるように構成されている少なくとも第1の偏向素子を備える、請求項35~39のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  41. 前記走査誘起収差が、走査誘起歪みである、請求項40に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  42. 前記第1の偏向素子が、使用時、前記第1の方向の前記ラスタースキャナ(110)による前記第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)の前記走査偏向と同期して、前記第1の方向の前記第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)の走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている、請求項40または41に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  43. 使用時、前記第1の方向の前記ラスタースキャナ(110)による前記第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)の前記走査偏向と同期して、前記第1の方向と垂直な第2の方向の前記第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)の走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている第2の偏向素子をさらに備える、請求項42に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  44. 前記走査誘起収差が、走査誘起非点収差、走査誘起偏心収差、走査誘起球面収差、または走査誘起コマから成る群の少なくとも1つである、請求項40に記載の荷電粒子顕微鏡(1)。
  45. 前記ビームレット生成器(300)が、少なくとも第2の一次荷電粒子ビームレット(3.1または3.2)を生成する、請求項35~44のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1、1001)。
  46. 前記第1の走査補正器が、使用時、前記第2の一次荷電粒子ビームレット(3.1または3.2)の走査誘起収差を個別に補償するように構成されている第3の偏向素子をさらに備える、請求項45に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  47. 前記静的電圧変換ユニットが、前記第1の偏向素子に接続され、複数の静的制御信号により制御される少なくとも第1のプログラム可能抵抗器列であり、使用時、前記第1の走査電圧差VSp(t)と同期して、走査補正電圧差VCAp(t)を生成するように構成されている、第1のプログラム可能抵抗器列を備える、請求項36~46のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  48. 前記ラスタースキャナ(110)による前記少なくとも第1の一次荷電粒子ビームレット(3.0、3.1、3.2)のラスター走査時の第2の走査誘起収差を抑えるように構成されている第2の走査補正器(602、187、195)をさらに備える、請求項35~47のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  49. ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)であって、
    少なくとも第1の一次ビームレットおよび第2の一次ビームレットを含む複数の一次ビームレット(3)を生成するためのマルチビームレット生成器(300)と、
    物体面(101)に配置されているウェハ(7)の表面(25)の像パッチ(17)を照射することにより、使用時、前記表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)を生成するための物体照射ユニット(100)と、
    交差ボリューム(189)を構成する一括マルチビームラスタースキャナ(110)であり、少なくとも前記像パッチ(17)の第1の像副視野(31.55)の全体にわたって走査される前記第1の一次ビームレット(3.55)および第2の像副視野(31.15)の全体にわたって同期走査される前記第2の一次ビームレット(3.15)を含む前記複数の一次ビームレット(3)の一括ラスター走査の実行によって前記像パッチ(17)の像走査を構成するように構成されている、一括マルチビームラスタースキャナ(110)と、
    投射系(205)および像センサ(207)を備え、前記複数の二次電子ビームレット(9)を前記像センサ(207)上に結像する(image)とともに、前記像走査時のデジタル像を取得するための検出ユニット(200)と、
    制御ユニット(800)に接続され、前記像走査時、前記第1の像副視野(31.55)における前記第1の一次ビームレット(3.55)と前記第2の像副視野(31.15)における前記第2の一次ビームレット(3.15)との間の走査誘起歪み差を抑えるように構成されている第1の走査補正器(601)と、
    を備える、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  50. 前記第1の走査補正器(601)が、使用時、前記第1の一次ビームレット(3.55)に影響を及ぼすための第1の走査静電界および前記第2の一次ビームレット(3.55)に個別に影響を及ぼすための第2の走査静電界を含む、前記複数の一次ビームレットに影響を及ぼすための複数の走査静電界を生成するように構成されている、請求項49に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  51. 前記第1の走査補正器(601)が、使用時、前記第1の一次ビームレット(3.55)の第1の走査誘起歪みおよび前記第2の一次ビームレット(3.15)の第2の走査誘起歪みを含む前記複数の一次ビームレット(3)それぞれの複数の走査誘起歪みを補償するように構成されている第1の偏向素子および第2の偏向素子を含む複数の偏向素子を備える、請求項50に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  52. 前記制御ユニット(800)が、使用時、第1の走査電圧差VSp(t)を前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)に与えるように構成されており、前記第1の走査補正器(601)が、前記第1の走査電圧差VSp(t)を複数の走査補正電圧差VCAp(i,t)に変換するための走査アレイ制御ユニット(622)であり、使用時、前記第1の走査電圧差VSp(t)と同期して、前記複数の静電界を生成するように構成されている、走査アレイ制御ユニット(622)を備える、請求項49~51のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  53. 前記走査アレイ制御ユニット(622)が、使用時、前記第1の走査電圧差VSp(t)から、前記複数の走査補正電圧差VCAp(i,t)を生成するように構成されている複数の静的電圧変換ユニット(611、612)を備える、請求項52に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  54. 前記複数の静的電圧変換ユニット(611、612)がそれぞれ、複数の静的制御信号により制御されるように構成されているプログラム可能抵抗器列として構成されている、請求項53に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  55. 前記制御ユニット(800)が、前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)による前記複数の一次ビームレット(3)の前記一括ラスター走査と前記第1の走査補正器(601)の前記複数の走査静電界を同期させるように構成されている第1の遅延ラインをさらに備える、請求項49~54のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  56. 前記第1の偏向素子が、使用時、第1の方向の前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)による前記複数の一次ビームレット(3)の前記走査偏向と同期して、前記第1の方向の前記第1の一次ビームレット(3.55)の走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている、請求項51~55のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  57. 前記第1の偏向素子が、使用時、前記第1の方向の前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)による前記複数の一次ビームレット(3)の前記走査偏向と同期して、前記第1の方向と垂直な第2の方向の前記第1の一次ビームレット(3.55)の走査誘起歪みを個別に補償するようにさらに構成されている、請求項56に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  58. 前記第2の偏向素子が、使用時、前記第1の方向の前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)による前記複数の一次ビームレット(3)の前記走査偏向と同期して、前記第1の方向の前記第2の一次ビームレットの走査誘起歪みを個別に補償するように構成されている、請求項56または57に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  59. 使用時、前記第1の一次ビームレットが、第1の角度β1で前記交差ボリューム(189)を横断し、前記第2の一次ビームレットが、前記第1の角度β1と異なる第2の角度β2で前記交差ボリューム(189)を横断する、請求項49~58のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  60. 制御ユニット(800)に接続され、前記像走査時、前記第1の像副視野(31.55)における前記第1の一次ビームレット(3.55)と前記第2の像副視野(31.15)における前記第2の一次ビームレット(3.15)との間の走査誘起偏心差を抑えるように構成されている第2の走査補正器(602)をさらに備える、請求項49~59のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
  61. マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法であって、
    走査電圧差VSp(t)を生成するステップと、
    前記走査電圧差VSp(t)を一括マルチビームラスタースキャナ(110)に与えることにより、第1の方向において、前記一括マルチビームラスタースキャナ(110)により複数の一次ビームレット(3)を一括偏向走査するステップと、
    複数の静的電圧変換ユニットによって、前記走査電圧差VSp(t)から、前記走査電圧差VSp(t)と同期して、複数の走査補正電圧差VCAp(i,t)を生成するステップと、
    前記複数の走査補正電圧差VCAp(i,t)を走査補正器の複数の偏向素子に与えることにより、前記複数の一次ビームレット(3)の前記走査誘起歪みを抑えるステップと、
    を含む、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
  62. 複数の静的制御信号を前記複数の静的電圧変換ユニットに与えることにより、前記複数の走査補正電圧差VCAp(i,t)を生成するステップをさらに含む、請求項61に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
  63. 前記複数の走査補正電圧差VCAp(i,t)と前記走査電圧差VSp(t)との間の所定の時間遅延を生成することにより、前記複数の一次ビームレット(3)の一括ラスター走査を同期させるとともに、前記走査誘起収差を抑えるステップをさらに含む、請求項61または62に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
  64. 基準物体の像パッチの全体にわたって複数の一次荷電粒子ビームレットを走査することにより、前記走査誘起歪みを決定するステップと、
    各一次荷電粒子ビームレットについて、走査誘起歪みの少なくとも線形部の複数の振幅を抽出するステップと、
    前記複数の振幅それぞれから、前記複数の静的制御信号を導出するステップと、
    をさらに含む、請求項62に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
JP2023577601A 2021-06-16 歪み最適化マルチビーム走査システム Pending JP2024524925A (ja)

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