JP2024521679A - ゲノムセーフハーバー - Google Patents

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ロバート コティン,
シャーロット マクギネス,
セバスチャン アギーレ,
シャノン ロンカー,
ロバート ギフォード,
マシュー エー. キャンベル,
ラミレス, マルコ アントニオ ケサダ
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シンテニー セラピューティクス, インコーポレイテッド
ユニバーシティ オブ マサチューセッツ
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Abstract

ゲノムセーフハーバー(GSH)遺伝子座を含む組成物、およびそれを使用する方法が、開示される。新規GSH遺伝子座を同定する方法がさらに開示される。本発明は、本明細書で同定される新規GSH遺伝子座が、例えば、患者を(例えば、遺伝子治療により)処置するまたは医薬(例えば、生物製剤もしくはワクチン)を調製するために必要な、様々な導入遺伝子の安定的挿入および予測可能な発現において特に有用であるという発見に、少なくとも一部は基づく。

Description

関連出願の相互参照
本願は、2021年5月20日に出願された米国特許仮出願第63/190,996号の優先権の利益を主張するものであり、その全内容は全体がこの参照により本明細書に組み込まれる。
背景
機能的導入遺伝子および他の遺伝子エレメントの安定的挿入によるヒトゲノムの改変は、生物医学研究および薬(例えば、遺伝子治療のための)において非常に有益である。遺伝子改変されたヒト細胞もまた、遺伝子機能の研究ならびにレポーター系を使用する追跡および系譜解析に有益である。すべてのこれらの応用は、導入された遺伝子のそれらの新たな環境における確実な機能に依存する。しかし、ランダムに挿入された遺伝子は、位置効果およびサイレンシングに供され、その結果、それらの発現は、不確実かつ予測不能なものとなる。セントロメアおよびサブテロメア領域は、特に、導入遺伝子サイレンシングを起こしやすい。
相互に、新たに組み込まれた遺伝子は、周囲の内在性遺伝子およびクロマチンに影響を与えることがあり、細胞挙動を変更する可能性、または細胞形質転換に有利に働く可能性がある。結果として、治療的遺伝子移入の成功にもかかわらず、幹細胞遺伝子治療後の癌遺伝子の挿入による活性化に関連する悪性形質転換の症例が存在しており、これは、新たに組み込まれるDNAが位置する場所の重要性を強調する。加えて、前駆細胞のゲノムへの外来DNAの挿入は、特定の細胞型への最終分化に有害効果を及ぼすことがある。
ゲノムセーフハーバー(GSH)は、体細胞、前駆細胞または生殖系列細胞の生存率、および個体発生過程に大幅な影響を与えることなく、構成的発現活性または条件的/誘導性発現活性のどちらかによる外来性DNAの挿入を受け入れる遺伝子座を指す。GSH遺伝子座の利用可能性は、レポーター遺伝子、自殺遺伝子、選択可能な遺伝子、または治療用遺伝子を発現させるのに極めて有用である。
3つの遺伝子内部位が、GSHとして提案されている(AAVS1、CCR5およびROSA26ならびにマウス細胞におけるアルブミン)(例えば、すべてが参照により組み込まれる米国特許第7,951,925号、同第8,771,985号、同第8,110,379号、同第7,951,925号、米国特許出願公開第20100218264号、同第20110265198号、同第20130137104号、同第20130122591号、同第20130177983号、同第20130177960号、同第20150056705号および同第20150159172号を参照されたい)。しかし、これらの提案GSHは、比較的遺伝子リッチな領域であり、がんに関連付けられている遺伝子の付近にある。AAVS1に隣接する遺伝子は、一部のプロモーターによって温存され得るが、複数の組織における安全性検証は、まだ行われていない。また、エンドヌクレアーゼ媒介標的化の場合によくあることだが、特に、二対立遺伝子の破壊後の、破壊された遺伝子の不必要性は、さらに調査されるべきである。
米国特許第7,951,925号明細書 米国特許第8,771,985号明細書 米国特許第8,110,379号明細書 米国特許第7,951,925号明細書 米国特許出願公開第20100218264号明細書 米国特許出願公開第20110265198号明細書 米国特許出願公開第20130137104号明細書 米国特許出願公開第20130122591号明細書 米国特許出願公開第20130177983号明細書 米国特許出願公開第20130177960号明細書 米国特許出願公開第20150056705号明細書 米国特許出願公開第20150159172号明細書
したがって、追加のGSH遺伝子座の同定および検証、ならびに同定されたGSH遺伝子座についての様々な組成物および方法が、大いに必要とされている。
発明の概要
本発明は、本明細書で同定される新規GSH遺伝子座が、例えば、患者を(例えば、遺伝子治療により)処置するまたは医薬(例えば、生物製剤もしくはワクチン)を調製するために必要な、様々な導入遺伝子の安定的挿入および予測可能な発現において特に有用であるという発見に、少なくとも一部は基づく。
ある特定の態様では、新規GSH遺伝子座を同定する様々な方法が、本明細書において提供される。そのような方法は、機能アッセイはもちろんin silicoアプローチも含む。同定されたGSHを検証するための様々なin vitro、ex vivo、およびin vivo方法が、本明細書でさらに提供され、これらの方法には、マーカー遺伝子の挿入効率および発現レベルを評定するための、細胞(例えば、ヒト細胞)内のGSH遺伝子座へのマーカー遺伝子のde novoの標的化された挿入;前駆細胞または幹細胞の分化に対するその影響をin vitroで決定するための、前駆細胞または幹細胞におけるGSH遺伝子座へのマーカー遺伝子の標的化された挿入;前駆細胞または幹細胞における遺伝子座へのマーカー遺伝子の標的化された挿入、および細胞を免疫枯渇マウスに生着させて、in vivoですべての発生系譜におけるマーカー遺伝子発現を決定すること;細胞におけるGSH遺伝子座へのマーカー遺伝子の標的化された挿入、および包括的細胞転写プロファイルを(例えば、RNAseqまたはマイクロアレイを使用して)決定して、細胞の全体的な転写プロファイルに対するGSH遺伝子座における挿入の影響を決定すること;ならびに/またはマウスのゲノムDNAが、遺伝子座に挿入されたマーカー遺伝子を有する、トランスジェニックノックインマウスを生成することが含まれる。
ある特定の態様では、本明細書に記載されるGSH遺伝子座を含む様々な組成物が、本明細書において提供される。例えば、本明細書に記載されるGSH核酸の少なくとも一部分を含む核酸ベクターが、本明細書において提供される。好ましい実施形態では、GSH遺伝子座に対して相同性を有する配列(5’および3’相同性アーム)は少なくとも1つの非GSH核酸に隣接しており、その結果、相同性アームは、GSH遺伝子座への少なくとも1つの非GSH核酸の組込みを助長する。そのような非GSH核酸は、タンパク質またはその断片、例えば、ヒトタンパク質またはその断片;治療用タンパク質もしくはその断片、抗原結合性タンパク質、またはペプチド;自殺遺伝子、例えば、単純ヘルペスウイルス-1チミジンキナーゼ(HSV-TK);ウイルスタンパク質またはその断片;ヌクレアーゼ;マーカー;および/あるいは薬物耐性タンパク質をコードする核酸を含み得る。本開示の様々な核酸ベクターを含むウイルスベクターも、本明細書において提供される。本開示の核酸ベクターを含む細胞、ならびにゲノム内のGSHに組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含む細胞が、本明細書においてさらに提供される。加えて、核酸ベクター、ウイルスベクター、および/または細胞を含む、医薬組成物が、細胞のゲノム内のGSHに組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含むトランスジェニック生物とともに、提供される。
ある特定の態様では、本明細書に記載される組成物を使用および産生する方法が、ここで提供される。そのような方法には、様々な疾患を予防または処置する方法;細胞内のまたは対象におけるタンパク質のレベルおよび/または活性をモジュレートする(例えば、タンパク質レベルを、前記タンパク質をコードする遺伝子の追加のコピーを導入することにより、上昇させる、またはタンパク質レベルを、前記タンパク質をコードする遺伝子を下方制御するもしくは消失させる非コーディングRNAおよび/もしくはCRISPR遺伝子編集を導入することにより、低下させる)方法;生物製剤、例えば、抗原結合性タンパク質および/または治療用タンパク質(例えば、インスリン)を製造する方法;遺伝子治療用のものを含む、ウイルスベクターを製造する方法が含まれる。本開示のGSH遺伝子座にウイルス表面タンパク質を組み込むための組成物および方法であって、ウイルス抗原を対象に曝露して免疫応答を誘導することによるin vivo免疫化を可能にする、組成物および方法が、本明細書においてさらに提供される。重要なこととして、そのようなウイルス抗原を、ウイルス抗原のパルス状発現を可能にする本開示の誘導性プロモーターを使用することにより、間欠的にオンおよびオフにすることができる。
図1は、安全な遺伝子治療についての現在の課題、および無差別な(ランダムな)DNA組込みについての可能性のある結果を示す。無差別な遺伝子の治療的組込みは、挿入変異誘発、遺伝毒性につながるか、または目的の(例えば、本明細書において非GSH核酸により包含される)遺伝子の発現に影響を与えることがあるという山のような証拠があり、遺伝子治療の展望を実現する上での大きな障壁となる。
図2Aおよび図2Bは、GSHへの標的化された組込みが、予測可能な導入遺伝子発現を可能にし、宿主ゲノムにおける挿入変異誘発のリスクを低下させることを示す。図2Bは、シンテニーGSHが、関連検索モデル全体にわたって予測可能性をもたらし、非臨床開発および臨床開発を助長することを示す。永続的遺伝子導入のための安全な十分に特徴付けられた遺伝子座の使用は、安全かつ上首尾のex vivoおよびin vivo遺伝子治療処置の必要条件になる可能性が十分にある。
図3は、GSH遺伝子座を同定するための代表的な方法の図を示す。
図4A~図4Cは、新規GSH遺伝子座の特徴付けを示す。ヒトCD34+造血幹細胞(HSC)の分化能を試験するためのCFU(コロニー形成単位)アッセイ。図4Aは、本明細書で行われるアッセイを示す概略図である。本明細書で同定される新規GSH遺伝子座であるSYNTX-GSH1への遺伝子指向性組込みは、コミットされた赤血球系前駆体へのHSC分化の成功を可能にした。図4Bは、コミットされた赤血球系前駆体における高度な導入遺伝子発現(GFP)を示す。図4Cは、HSC分化(赤血球生成)を説明する図を示す。 同上。
図5A~図5Bは、本明細書で同定されるGSH遺伝子座へのマーカー遺伝子の遺伝子編集を示す。図5Aは、本明細書で同定されるCD34+HSCにおけるGSHへの遺伝子編集効率を示す。以前から知られているGSH遺伝子座であるAAVS1を陽性対照として使用した。図5Bは、コミットされたCD71+/CD235a+赤芽球への初代CD34+HSCの分化が、SYNTX-GSH(SYNTX-GSH1およびSYNTX-GSH2)への遺伝子挿入後に影響を受けなかったことを示す。
図6A~図6Bは、異なるGSH遺伝子座に組み込まれたマーカー遺伝子(GFP)の発現を示す。GFP発現を、CD34+HSCにおけるSYNTX-GSHおよびAAVS1(陽性対照)への遺伝子編集の14日後に決定した。(SYNTX-GSH1およびSYNTX-GSH2)。SYNTX-GSHへの遺伝子編集は、AAVS1への編集よりも効率的であった。編集された細胞は、遺伝子編集の2週間後にGFPを安定的に発現し、CD34+HSCから赤血球系前駆体への分化を進めた。SYNTX-GSH1および2編集細胞は、AAVS1編集細胞よりも高レベルの導入遺伝子(GFP)を発現した。(SYNTX-GSH1およびSYNTX-GSH2)。
図7A~図7Dは、細胞の包括的転写プロファイルに対するSYNTX-GSHへの導入遺伝子ノックインの影響を示す。図7Aは、RNAseqによる細胞摂動解析実験設計を示す。図7Bは、野生型細胞およびAAVS1と比較してSYNTX-GSH1およびSYNTX-GSH2について行ったRNAseq解析を示す。図7Cは、主成分分析を示す。図7Dは、ノックイン細胞系における組み込まれたマーカー遺伝子GFPの発現を示す。SYNTX-GSHへの導入遺伝子組込みは、細胞の転写プロファイルに対してAAVS1部位への組込みよりも少ない影響を及ぼした。SYNTX-GSH1およびSYNTX-GSH2は、ヒト細胞においてAAVS1よりも高度かつ安定した導入遺伝子発現を示した。 同上。
図8A~図8Cは、細胞継代にわたってのGFP発現の安定性を決定することによりGSH性能を評定する。図8Aは、実験の概略図を示す。図8Bおよび図8Cは、SYNTX-GSH遺伝子座に挿入されたマーカー遺伝子(GFP)の発現を示す。4つの異なるSYNTX-GSH遺伝子座への導入遺伝子組込みは、異なる編集効率および導入遺伝子発現を生じさせる結果となった。SYNTX-GSH1およびSYNTX-GSH2は、AAVS1よりも高度かつ安定した導入遺伝子発現を示した。SYNTX-GSH3およびSYNTX-GSH4は、より低い発現レベルを示し、より低い発現レベルを必要とする遺伝子(例えば、致死遺伝子)の挿入に有用であり得る。本明細書で同定されるGSH遺伝子座は、特定の遺伝子治療プログラムに適応するための異なる特徴を有する個々のGSHのパレットを提供する。 同上。
図9Aおよび図9Bは、AAV ITRの二次構造、およびローリングヘアピン複製モデルの概略図を示す。図9Aは、広大な二次構造を形成するAAV ITRの構造を示す。ITRは、2つの立体配置(フリップおよびフロップ)を獲得し得る。図9Bは、ウイルス核酸が複製するローリングヘアピン複製モデルを示す概略図を示す。 同上。
図10は、5’末端で1つまたは複数のHS配列と隣接しているβ-グロビンプロモーターに作動可能に連結されたβ-グロビン遺伝子を含有する異種核酸/導入遺伝子構築物を表す概略図を示す。哺乳動物β-グロビン遺伝子は、一連の5つのDNase I高感受性部位(HS1~HS5)を含有する遺伝子座調節領域(LCR)と呼ばれる制御領域により制御される。HSは、β-グロビン遺伝子の効率的発現に必要である。各導入遺伝子構築物は、2つの相同性アーム(5’相同性アームおよび3’相同性アーム)の間に置かれており、これによって、相同組換えによる標的細胞ゲノムにおける部位特異的組込みが助長される。
図11は、様々なプロモーターを含有する異種核酸/導入遺伝子構築物を表す概略図を示す。各プロモーター(例えば、CAGプロモーター、AHSPプロモーター、MNDプロモーター、W-Aプロモーター、PKLRプロモーター)は、目的の導入遺伝子に作動可能に連結されており、構築物全体は、2つの相同性アーム(5’相同性アームおよび3’相同性アーム)の間に置かれており、これによって、相同組換えによる標的細胞ゲノムのGSH遺伝子座における部位特異的組込みが助長される。
図12は、PKLRの赤血球系特異的プロモーターの部分DNA配列を示す。上流制御ドメインを含む469bp領域。ヒトプロモーターとラットPK-Rプロモーターの間で保存されるエレメントが点線で描示されている。PK-R転写開始部位のシトシンに下線が引かれている。上流270bp領域における、GATA-1、CAC/Sp1モチーフ、および制御エレメントPKR-RE1が、ボックス内に示されている(矢印により示されている配向)。
図13Aおよび図13Bは、本明細書に記載される組換えビリオンの標的とされ得る例示的なmiRNAを示す。エリスロパルボウイルスの組換えビリオンは、miRNA配列を含み得る。あるいは、組換えビリオンは、miRNAを不活性化する核酸配列を含み得る。 同上。
図14は、パルス状遺伝子発現系を示す。概略図は、発現の負の制御と正の制御の両方を示す。例I(上のパネル)は、ASO(アンチセンスオリゴヌクレオチドASOまたはAON)が転写後に遺伝子発現を負に制御し得ることを示す。ASOがなければ、一次転写物(左側)は、翻訳可能なmRNAにスプライシングされる(上のライン)。イントロンの3’末端/第2エクソンの5’末端におけるスプライスアクセプターに相補的なASO(赤線)の追加は、スプライシングに干渉する。したがって、ASOの存在下では、イントロンは、転写物中に残存する。プロセシングされていないRNAは、翻訳不可能であるか、翻訳によって非機能性タンパク質を作り出す。例II(下のパネル)は、ASOが転写後に遺伝子発現に良い影響を与え得ることを説明する。一次転写物(左側)は、4つのエクソンを含有する:第1エクソン、第3エクソンおよび第4エクソンは、治療用タンパク質をコードし、第2エクソンは、ナンセンス変異またはアウトオブフレーム変異(OOF)のどちらかを含有する。そのような第2エクソンを任意の導入遺伝子に操作して入れることができる。ASOがなければ、転写物はプロセシングされて、4つのエクソンを含む成熟mRNAになる(下のライン)、すなわち、ナンセンス変異またはOOF変異を有する第2エクソンが残存する。結果として、得られるmRNAは、短縮型または非機能性タンパク質に翻訳される。対照的に、ASOの追加は、スプライシングに干渉し、成熟mRNAは、第1エクソン、第3エクソンおよび第4エクソンからなる、すなわち、ナンセンス変異またはOOF変異を有する第2エクソンが切り出される。結果として、デフォルト状態(ASOなし)では、治療用タンパク質は作り出されない。ASOの追加時にのみ、治療タンパク質が作り出され、それによって正の制御が生じる結果となる。
図15は、ATACseqのカバレッジおよびピークを示す。EVE挿入部位が、プロットの中央に黒い縦線で示されている。各ドナーについて、ATACseqのカバレッジが、滑らかな灰色の線として示されているとともに、コールされたピークが、ドナーごとに色分けされた縦棒として示されている。ドナーにわたってEVE挿入から最も近いピークまでの距離は、1,144塩基対であり、これは、利用可能なクロマチンを示す。
発明の詳細な説明
ある特定の態様では、GSH遺伝子座を同定および検証する新規方法;新たに同定されたGSH遺伝子座;前記GSH遺伝子座の配列を含む組成物;患者を(例えば、遺伝子治療または細胞療法によって)処置する、医薬(例えば、生物製剤またはワクチン)を調製する、および本明細書に記載される他の応用のために、GSH遺伝子座およびそれを含む組成物を使用する方法が、本明細書において提供される。
定義
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、冠詞の文法上の目的語の1つまたは1つより多く(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書では使用される。例として、「エレメント(an element)」は、1つのエレメントまたは1つより多くのエレメントを意味する。
用語「投与すること」は、治療がその意図された機能を果たすことを可能にする投与経路を含むように意図されている。投与経路の例としては、注射(筋肉内、皮下、静脈内、非経口、腹腔内、くも膜下腔内、腫瘍内、鼻腔内、頭蓋内、硝子体内、網膜下など)経路が挙げられる。投与経路は、吸入、ならびに骨髄への直接注射も含む。注射は、ボーラス注射であることもあり、または持続注入であることもある。投与経路に依存して、薬剤を、吸収を改善するために、またはその意図された機能を果たすその能力に悪影響を与え得る自然条件からそれを保護するために、選択された材料でコーティングするか、またはその中に配置することができる。
用語「cetacea」は、数ある中でも特に、ヒゲクジラ、ハクジラ、イルカおよびネズミイルカ、ならびに近縁種を含み、魚雷型のほとんど毛のない体を有し、パドル形の前肢を有するが後肢を有さず、頭頂部に外に開口した1つまたは2つの鼻孔を有し、移動運動に使用される水平に平らになった尾を有する、水生海洋哺乳動物の分類上の(下)目を指す。
用語「chiroptera」は、本当に飛ぶことができる哺乳動物の分類上の目を指し、コウモリを含む。
本明細書で使用される場合、「ドナー配列」は、宿主細胞ゲノムに挿入されることになる、または宿主細胞ゲノムの修復鋳型として使用されることになる、ポリヌクレオチドを指す。ドナー配列は、改変を含むことができ、この改変は、遺伝子編集中に行われることが望ましい。組み入れられることになる配列を標的配列における相同性指向型修復によって標的核酸分子に導入することができ、それによって、元の標的配列からドナー配列に含まれる配列への標的配列の変更が生じる。したがって、ドナー配列に含まれる配列は、標的配列に対する、挿入、欠失、インデル、点変異、変異の修復などであり得る。ドナー配列は、例えば、一本鎖DNA分子;二本鎖DNA分子;DNA/RNAハイブリッド分子;およびDNA/modRNA(改変RNA)ハイブリッド分子であり得る。実施形態では、ドナー配列は、相同性アームとは無関係である。編集は、RNAおよびDNA編集であり得る。ドナー配列は、所望の遺伝子編集の性質に依存して、宿主細胞ゲノムにとって内在性であることも、外来性であることもある。
用語「内在性ウイルスエレメント」または「EVE」は、ウイルスに由来するDNA配列であり、非ウイルス生物の生殖系列の中に存在する。EVEは、ウイルスゲノム全体(プロウイルス)であることも、ウイルスゲノムの断片であることもある。それらは、ウイルスDNA配列が、生存可能な生物を産生し続ける胚細胞のゲノムに組み込まれたときに生じる。新たに確立されたEVEは、宿主種においてある世代から次の世代へ対立遺伝子として遺伝され得、固定に至ることさえあり得る。
用語「相同組換え」は、当技術分野において認知されており、標的ゲノムにおける核酸挿入に関して使用される場合、それは、相同性依存型修復を含むように意図されている。
用語「相同(性)」または「相同の」は、本明細書で使用される場合、配列をアラインし、最大配列同一性パーセントを達成するために必要に応じてギャップを導入した後、標的染色体上の対応する配列内のヌクレオチド残基と同一である、相同性アーム内のヌクレオチド残基のパーセンテージとして定義される。核酸配列の領域間の場合の同一性は、公知のコンピュータアルゴリズム、例えば、「FASTA」プログラムを使用して、例えば、Pearson et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444におけるようにデフォルトパラメーターを使用して、同一性のパーセンテージとして決定することができる(他のプログラムとしては、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J., et al., Nucleic Acids Research 12(I):387 (1984))、BLASTP, BLASTN, FASTAAtschul, S. F., et al., J Molec Biol 215:403 (1990); Guide to Huge Computers,Martin J. Bishop, ed., Academic Press, San Diego, 1994およびCarillo et al. (1988)SIAM J Applied Math 48:1073が挙げられる)。例えば、アメリカ国立生物工学情報センターのデータベースのBLAST機能を使用して、同一性を決定することができる。他の市販のまたは公開されているプログラムとしては、DNAStar「MegAlign」プログラム(Madison、Wis.)およびUniversity of Wisconsin Genetics Computer Group(UWG)「Gap」プログラム(Madison Wis.))が挙げられる。一部の実施形態では、例えば修復鋳型の相同性アームの、核酸配列(例えば、DNA配列)は、配列が、宿主細胞の対応するネイティブまたは未編集核酸配列(例えば、ゲノム配列)と少なくともまたは約30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である場合、「相同」とみなされる。
本明細書で使用される場合、「相同性アーム」は、相同組換えによってドナー配列をゲノムに標的化するのに好適であるポリヌクレオチドを指す。典型的には、2つの相同性アームは、ドナー配列に隣接しており、各相同性アームは、組込みの遺伝子座の上流および下流のゲノム配列を含む。
用語「lagomorpha」は、ウサギ、野ウサギ、およびナキウサギを含む2つの科(Leporidae科を構成するLeporidaeおよびOchotonidae属)で構成される、上顎に前後に並んでいる2対の切歯、通常は柔らかい毛、および短いまたは痕跡尾を有する、齧歯類の草食性哺乳動物の分類上の目を指す。
用語「Macropodidae」は、長い後肢および弱く発達した前肢を有するすべての跳躍動物であり、概して無害な陸生草食動物である、カンガルー、ワラビー、およびネズミカンガルーを含む、双門歯類の有袋哺乳動物の分類学上の科を指す。
用語「monotremata」は、カモノハシおよびハリモグラを含む産卵哺乳動物の分類学上の目を指す。
用語「プロウイルス」は、宿主細胞のDNAに組み込まれたまたは挿入されたときのウイルスのゲノムを指す。プロウイルスは、細胞染色体に連結されているレトロウイルスゲノムの二重鎖DNA形態を指す。プロウイルスは、RNAゲノムの逆転写およびその後の宿主細胞の染色体DNAへの組込みにより作り出される。
用語「primate」は、立体的な奥行き知覚をもたらす両眼視の高度な発達、掴むための手および足の特殊化、ならびに大脳半球の拡大を特に特徴とし、ヒト、類人猿、サルおよび近縁種(例えば、キツネザルおよびメガネザル)を含む、哺乳動物の分類学上の目を指す。
本明細書で使用される場合、「Rep」は、ウイルスゲノムの複製を可能にするために必要な機能を提供することができる、任意の非構造レプリカーゼ、Repタンパク質、またはRepタンパク質の組合せを指す。
用語「Rodentia」は、両顎に縁部がノミ型である単一対の切歯を有する、比較的小さい齧歯類の哺乳動物(例えば、マウス、リス、またはビーバー)の分類上の目を指す。それは、すべての齧歯類を含む。
用語「対象」または「患者」は、任意の健康なもしくは罹病した動物、哺乳動物もしくはヒト、または任意の動物、哺乳動物もしくはヒトを指す。一部の実施形態では、対象は、血液学的疾患に罹患している。本発明の方法の様々な実施形態では、対象は、処置を受けていない。他の実施形態では、対象は、処置を受けている。
用語「シンテニー(の)」は、異なる種における一連の遺伝子の類似の構成または順序付けを指す。
物質または細胞またはビリオンの「治療有効量」は、処置される患者において、好ましくは、ヒトまたは非ヒト哺乳動物において、医学的に望ましい結果(例えば、臨床改善)を許容可能な損益比で生じさせることができる量である。
用語「分類学上の目」は、植物および動物の、それらの推定される自然な関係性による秩序ある分類を指す。ゲノム配列データの解析に基づく、種の関連性は、物理的な関係性から推論される自然な関係性への定量的な代替アプローチを提供する。
用語「処置すること」は、予防的および/または治療的処置を含む。用語「予防的または治療的」処置は、当技術分野において認知されており、対象への本明細書に記載される組成物の1つまたは複数の投与を含む。望ましくない状態(例えば、疾患、または対象の他の望ましくない状況)の臨床症状発現の前に施される場合には、処置は予防的であり(すなわち、望ましくない状態を発症しないように対象を保護し)、その一方で、望ましくない状態の症状発現後に施される場合、処置は治療的である(すなわち、既存の望ましくない状態またはその副作用を減少、寛解または安定化することを意図している)。
ゲノムセーフハーバー(GSH)
本明細書では同義で「GSH」または「セーフハーバー遺伝子」または「セーフハーバー遺伝子座」とも呼ばれる、用語「ゲノムセーフハーバー」は、外来性核酸を組み込むために使用され得る、ゲノムDNAの領域または特定の部位を含む、ゲノム内の位置であって、組込みが、単独での外来性核酸の追加によって宿主細胞の成長に対するいかなる顕著な有害効果も引き起こさない、位置を指す。つまり、GSHは、内在性遺伝子の活性に対する顕著な否定的な帰結も、がんの促進も伴うことなく、核酸配列を、その配列が予測可能な様式で組み込まれて機能する(例えば、目的のタンパク質を発現する)ことができるように、挿入することができる、ゲノム内の遺伝子または遺伝子座を指す。例えば、GSHは、新たに挿入された遺伝子エレメントが、確実に、(i)予測可能に機能する(例えば、予測可能な発現)、および(ii)宿主ゲノムの大幅な変更を引き起こさず、それによって宿主細胞または生物へのリスクを回避する、および(iii)好ましくは、挿入された核酸が、近隣の遺伝子からのいずれのリードスルー発現による摂動も受けない、および(iv)近くの遺伝子を活性化しないという様式で、新たな遺伝子材料の組込みを受け入れることができる、宿主細胞ゲノム内の部位である。GSHは、特定の部位であることもあり、ゲノムDNAの領域であることもある。GSHは、内在性遺伝子構造または発現に有害に影響を与えることなく目的のすべての組織において安定的かつ確実に導入遺伝子を発現することができる、染色体の部位であり得る。一部の実施形態では、GSHは、外来性核酸の挿入が細胞の正しく分化する(例えば、幹細胞の分化)能力を大幅に変更しない、遺伝子座または遺伝子である。一部の実施形態では、GSHはまた、挿入された核酸配列を効率的におよび非セーフハーバー部位よりも高レベルで発現することができる、遺伝子座または遺伝子である。
したがって、GSHは、宿主細胞または生物に対する顕著な有害効果を伴うことなく新たに組み込まれたDNAの予測可能な発現を受け入れることができる、ヒトおよびモデル種ゲノムの遺伝子内、遺伝子間または遺伝子外領域を含む。GSHは、イントロンまたはエクソン遺伝子配列ならびに遺伝子間または遺伝子外配列を含み得る。理論に限定されるものではないが、有用なセーフハーバーは、導入遺伝子にコードされたタンパク質または非コーディングRNAの所望のレベルを生じさせるのに十分な導入遺伝子発現を可能にしなければならない。GSHはまた、細胞に悪性形質転換の素因を与えてはならず、前駆細胞分化に干渉してはならず、正常な細胞機能を大幅に変更してはならない。GSHを偶発的な良好な組込み事象と区別するものは、GSHの予備知識および検証に基づく成果の予測可能性である。
一部の実施形態では、GSHは、オフターゲット活性が制限されており、遺伝毒性、または外来DNAの組込み時に挿入による発癌を引き起こすリスクが最小限である一方、オフターゲット活性を最小限に抑えて非常に特異的なヌクレアーゼを利用できる、安全な標的化された遺伝子送達を可能にする。
ゲノムセーフハーバーの同定
GSH遺伝子座を同定する例示的な方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、例示的な方法のいずれか1つは、GSH遺伝子座を同定するために使用される。一部の実施形態では、少なくとも2つの例示的な方法の組合せが、GSH遺伝子座を同定するために使用される。一部の実施形態では、少なくとも3つの例示的な方法の組合せが、GSH遺伝子座を同定するために使用される。複数の例示的な方法のいずれか1つまたは組合せは、必要に応じて、同定されたGSH遺伝子座を検証するための少なくとも1つのアッセイ(in vitro、ex vivo、またはin vivo)をさらに含み得る。
方法1:マーカーのランダム挿入によるGSH遺伝子座の機能的同定
ある特定の態様では、ゲノムセーフハーバー(GSH)遺伝子座を同定する方法であって、(a)細胞内のゲノムへの少なくとも1つのマーカー遺伝子のランダム挿入を誘導するステップ;(b)マーカー遺伝子の発現の安定性および/またはレベルを決定するステップ;ならびに(c)挿入されたマーカー遺伝子が安定したおよび/または高レベルの発現を示すゲノム遺伝子座をGSHとして同定するステップを含む方法が、本明細書において提供される。好ましい実施形態では、方法は、(a)挿入されたマーカー遺伝子が細胞生存率に影響を与えないゲノム遺伝子座を同定するステップ、および/または(b)挿入されたマーカーが細胞の分化能力に影響を与えないゲノム遺伝子座を同定するステップをさらに含む。したがって、一部の実施形態では、GSH遺伝子座でのマーカー遺伝子の挿入は、細胞(例えば、幹細胞または前駆細胞)の多能性にも、全能性にも、複能性にも影響を与えない。
一部の実施形態では、方法に使用される細胞は、細胞系、初代細胞、幹細胞、または前駆細胞から選択される。一部の実施形態では、細胞は、幹細胞である。一部のそのような実施形態では、幹細胞は、胚性幹細胞、組織特異的幹細胞、間葉系幹細胞、および人工多能性幹細胞(iPSC)から選択される。
一部の実施形態では、方法に使用される細胞は、造血幹細胞、造血CD34+細胞、および表皮幹細胞、上皮幹細胞、神経系幹細胞、肺前駆細胞、および肝臓前駆細胞から選択される。
一部の実施形態では、方法に使用される細胞は、哺乳動物細胞である。一部のそのような実施形態では、哺乳動物細胞は、マウス細胞、イヌ細胞、ブタ細胞、非ヒト霊長類(NHP)細胞、またはヒト細胞である。
ある特定の実施形態では、細胞内のゲノムへの少なくとも1つのマーカー遺伝子のランダム挿入は、(a)細胞に、必要に応じてプラスミドである、マーカー遺伝子を含む核酸分子をトランスフェクトすること;または(b)細胞にマーカー遺伝子を含む組込みウイルスを形質導入することにより、誘導される。一部の実施形態では、ランダム挿入は、細胞にマーカー遺伝子を含む組込みウイルスを形質導入することにより誘導され、組込みウイルスは、レトロウイルスである。一部の実施形態では、レトロウイルスは、ガンマレトロウイルスである。
ある特定の実施形態では、方法は、スクリーニング可能なマーカーおよび/または選択可能なマーカーを含む少なくとも1つのマーカー遺伝子を使用する。一部の実施形態では、スクリーニング可能なマーカー遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ベータ-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、および/またはベータ-グルクロニダーゼをコードする。一部の実施形態では、選択可能なマーカー遺伝子は、抗生物質耐性遺伝子である。一部のそのような実施形態では、抗生物質耐性遺伝子は、ブラストサイジンS-デアミナーゼまたはアミノ3’-グリコシルホスホトランスフェラーゼ(ネオマイシン耐性遺伝子)をコードする。
ある特定の実施形態では、方法は、プロモーターに作動可能に連結されていないマーカー遺伝子を使用する。ここで、プロモーターのないマーカーの使用は、近隣のプロモーターおよび制御エレメントを使用して外来性核酸の発現を可能にするGSH遺伝子座の同定を可能にする。一部の実施形態では、近隣のプロモーターは、組織特異的プロモーターである。
ある特定の実施形態では、マーカー遺伝子は、プロモーターに作動可能に連結されている。一部の実施形態では、プロモーターは、組織特異的プロモーターである。
一部の実施形態では、同定されるGSHは、遺伝子内型(例えば、エクソン型もしくはイントロン型)または遺伝子間型である。好ましい実施形態では、同定されるGSHは、イントロン型または遺伝子間型である。
方法2:内在性ウイルスエレメント(EVE)を使用するGSH遺伝子座の同定
ある特定の態様では、例えば、後生動物種のゲノムにおける、内在性ウイルスエレメント(EVE)と呼ばれる、任意のプロウイルスレムナント(例えば、パルボウイルスレムナント)を同定するために、進化生物学を使用してGSH遺伝子座を同定する方法が、本明細書において提供される。本明細書に記載される結果は、種の枝分かれの前にEVEが前駆種の生殖系列に取得され得、したがって、進化した種または子孫種すべてがEVE対立遺伝子を保持することを実証する。その一方で、「内在化」事象の前に進化または枝分かれした近縁の種は、空の遺伝子座を保持する。単に説明に役立つ例として、Macropodidae(カンガルーおよび類縁種)における遺伝子間型EVEにより占有される遺伝子座は、Didelphis virginiana(Didelphis virgiana)(北米オッポサム)をはじめとする他の有袋動物において同定可能である。これらの非占有遺伝子座は、他の分類学上の科において同定可能であり、EVEオープンリーディングフレームは破壊されているが、ウイルス配列は、全能性胚細胞のゲノムに挿入された外来DNAを示し、したがって、候補ゲノムセーフハーバー遺伝子座が同定される。EVEをGSH遺伝子座として同定する理論的根拠は、EVE遺伝子座での挿入が、生物の生存能、機能、成長、分化および種分化に影響を与えなかったことによって、外来性核酸の挿入を可能にする不活性部位が得られることである。
一部の実施形態では、EVEは、遺伝子内型または遺伝子間型である。一部の実施形態では、EVEは、遺伝子内型である。一部の実施形態では、EVEは、イントロン型またはエクソン型である。一部の実施形態では、EVEは、イントロン型である。例えば、一部の実施形態では、GSH遺伝子座は、進化系列においてEVEの挿入を許容したエクソン遺伝子座である。好ましい実施形態では、GSHは、イントロン遺伝子座またはエクソン遺伝子座である。そのような遺伝子座については、能動的に転写される外来性核酸の挿入によって近くの遺伝子または制御配列の機能および構造を破壊する可能性が低い。
ある特定の態様では、GSH遺伝子座を同定する方法であって、(a)後生動物種のゲノムにおける内在性ウイルスエレメント(EVE)の存在および位置を決定するステップ;(b)EVEの近位にある遺伝子間またはイントロン境界を決定するステップ;ならびに(c)EVEを含む遺伝子間またはイントロン遺伝子座をGSH遺伝子座として同定するステップを含む方法が、本明細書において提供される。
一部の実施形態では、EVEの存在および位置は、ウイルスエレメントと相同の配列をin silicoで検索することにより決定される。一部の実施形態では、後生動物種におけるEVEは、ウイルスエレメントの配列と少なくとも、約または最大で10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である配列を含む。
一部の実施形態では、EVEの近位にある遺伝子間またはイントロン境界は、EVEに隣接する配列と遺伝子間またはイントロン境界が分かっている1つまたは複数の種のそのオルソロガス配列とをアラインすることにより決定される。一部の実施形態では、EVEの近位にある遺伝子間またはイントロン境界は、遺伝子間またはイントロン境界が分かっている1つまたは複数の種におけるオルソロガス配列の配列と少なくとも、約または最大で10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である配列を含む。
一部の実施形態では、方法は、GSH遺伝子座が哺乳動物ゲノム内にあることを特定し、必要に応じて、哺乳動物ゲノムは、マウスゲノム、イヌゲノム、ブタゲノム、NHPゲノム、またはヒトゲノムである。
一部の実施形態では、EVEは、非ウイルス宿主細胞のDNAに組み込まれたウイルスゲノムである、プロウイルスを含む。一部の実施形態では、EVEは、ウイルスゲノムの一部分または断片を含む。一部の実施形態では、EVEは、レトロウイルスからのプロウイルスを含む。一部の実施形態では、EVEは、レトロウイルスからのものではない。一部の実施形態では、EVEは、非レトロウイルスからの、プロウイルス、またはウイルスゲノムの断片を含む。
一部の実施形態では、EVEは、ウイルス核酸、ウイルスDNA、またはウイルスRNAのDNAコピーを含む。一部の実施形態では、EVEは、ウイルス核酸を含む。一部の実施形態では、EVE、またはEVEにおけるウイルス核酸は、構造もしくは非構造ウイルスタンパク質、またはその断片をコードする。
一部の実施形態では、EVEは、レトロウイルスからのウイルス核酸を含む。一部の実施形態では、EVEは、非レトロウイルス、パルボウイルス、および/またはサーコウイルスからのウイルス核酸を含む。一部の実施形態では、パルボウイルスは、B19、マウス微小ウイルス(mvm)、RA-1、AAV、ブファウイルス、ホコウイルス、ボカウイルス、および本明細書に記載されるパルボウイルスのいずれか1つ(例えば、表1A~1Dに収載されているパルボウイルス)から選択される。一部の実施形態では、パルボウイルスは、AAVである。一部の実施形態では、ウイルス核酸は、サーコウイルスからのものである。一部の実施形態では、サーコウイルスは、ブタサーコウイルス(PCV)(例えば、PCV-1、PCV-2)である。一部の実施形態では、EVEにおけるウイルス核酸は、非レトロウイルス核酸を含む。一部の実施形態では、非レトロウイルス核酸は、非構造または構造ウイルスタンパク質(例えば、それぞれ、rep(複製)タンパク質、またはcap(カプシド)タンパク質)をコードする。
一部の実施形態では、EVEまたはウイルス核酸は、構造または非構造ウイルスタンパク質をコードする。一部の実施形態では、EVEまたはウイルス核酸は、Repおよびアセンブリ活性化非構造(NS)タンパク質(例えば、ウイルス複製、カプシドアセンブリなどに必要とされるもの)、ならびに/または構造(S)ウイルスタンパク質(カプシドタンパク質、例えば、VP)をコードする。そのようなタンパク質としては、Rep78、Rep68、Rep52およびRep40を含むがこれらに限定されない、Rep(複製)タンパク質;ならびに例えばAAVからの、VP1、VP2およびVP3を含むがこれらに限定されない、Cap(カプシドタンパク質)が挙げられるが、それらに限定されない。構造タンパク質としては、例えばAAVからの、構造タンパク質A、B、およびCも挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、EVEは、Francois et al. "Discovery of parvovirus-related sequences inan unexpected broad range of animals." Nature Scientific reports 6 (2016)の補足表S2において開示されている非構造(NS)タンパク質または構造(S)タンパク質のすべてまたは一部をコードする核酸である。
一部の実施形態では、哺乳動物ゲノムにおけるGSHを同定するための方法は、ゲノムDNAにおける内在性ウイルスエレメント(EVE)またはプロウイルス核酸挿入を同定するための、分類上の階級内の複数の種による前駆種から推測されるゲノムDNAの配列の初期シークエンシングおよび/またはin silico解析を含む。
一部の実施形態では、後生動物種のゲノム配列は、EVEの存在について解析される。後生動物種は、Cetacea、Chiropetera、Lagomorpha、およびMacropodiadaeを含むがこれらに限定されない、任意の系統発生学的分類群からのものであり得る。したがって、一部の実施形態では、後生動物種は、Cetacea、Chiropetera、Lagomorpha、およびMacropodiadaeから選択される。他の後生動物種、例えば、rodentia、primate、monotremataも、評定され得る。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるLui et al, J Virology 2011; 9863-9876の図4A、4Bに収載されているような、他の種が使用され得る。
一部の実施形態では、EVEは、Parvoviridae科のウイルスであるパルボウイルスからの核酸を含む。Parvoviridae科は、脊椎動物宿主に感染するParvovirinae、および無脊椎動物宿主に感染するDensovirinaeという、2つの亜科を含有する。各亜科は、いくつかの属に細区分されている。
一部の実施形態では、EVEは、Densovirinaeからの、次の属のいずれか1つからの核酸を含む:ambidensovirus、brevidensovirus、hepandensovirus、iteradensovirus、およびpenstyldensovirus。
一部の実施形態では、EVEは、Parvovirinaeからの、次の属のいずれか1つからの核酸を含む:amdoparvovirus、aveparvovirus、bocaparvovirus、copiparvovirus、dependoparvovirus、erythroparvovirus、protoparvovirus、およびtetraparvovirus。一部の実施形態では、EVEは、erythroparvovirusまたはdependoparvovirusからの核酸を含む。
一部の実施形態では、EVEは、以下の属を含む、Densovirinaeの亜科からのものである:
a.Ambidensovirus属。タイプ種:Lepidopteran ambidensovirus 1。属は、11の認知されている種を含む。
b.Brevidensovirus属。タイプ種:Dipteran brevidensovirus 1。属は、2つの認知されている種を含む。
c.Hepandensovirus属。タイプ種:Decapod densovirus 1。属は、単一の認知されている種を含む。
d.Iteradensovirus属。タイプ種:Lepidopteran iteradensovirus 1。属は、5つの認知されている種を含む。
e.Penstyldensovirus属。タイプ種:Decapod penstyldensovirus 1。属は、単一の認知されている種を含む。
f.割り当てられていない属。タイプ種:Orthopteran densovirus 1。属は、単一の認知されている種を含む。
一部の実施形態では、EVEは、以下の属を含む、Parvovirinaeの亜科からのものである:
a.Amdoparvovirus属。タイプ種:Carnivore amdoparvovirus 1。属は、ミンクおよびキツネに感染する、4つの認知されている種を含む。
b.Aveparvovirus属。タイプ種:Galliform aveparvovirus 1。属は、シチメンチョウおよびニワトリに感染する、単一の種を含む。
c.Bocaparvovirus属。タイプ種:Ungulate bocaparvovirus 1。属は、primateをはじめとする複数の目からの哺乳動物に感染する21の認知されている種を含む。
d.Copiparvovirus属。タイプ種:Ungulate copiparvovirus 1。属は、ブタおよび雌ウシに感染する、2つの認知されている種を含む。
e.Dependoparvovirus属。タイプ種:Adeno-associated dependoparvovirus A。属は、哺乳動物、鳥類または爬虫類に感染する7つの認知されている種を含む。
f.Erythroparvovirus属。タイプ種:Primate erythroparvovirus 1。属は、哺乳動物、特に、霊長類、シマリスまたは雌ウシに感染する6つの認知されている種を含む。
g.Protoparvovirus属。タイプ種:Rodent protoparvovirus 1。属は、primateをはじめとする複数の目からの哺乳動物に感染する11の認知されている種を含む。
h.Tetraparvovirus属。タイプ種:Primate tetraparvovirus 1。属は、霊長類、コウモリ、ブタ、雌ウシおよびヒツジに感染する、6つの認知されている種を含む。
表1A: Parvovirinae亜科におけるErythroparvovirusの例示的なウイルス
表1B:Parvovirinae亜科における例示的なウイルス

表1C: Parvovirinae亜科におけるProtoparvovirusの例示的なウイルス

表1D: Parvovirinae亜科におけるTetraparvovirusの例示的なウイルス

Parvovirinae亜科は、主として温血動物宿主に関連する。これらのうち、parvovirus属のRA-1ウイルス、erythrovirus属のB19ウイルス、およびdependovirus属のアデノ随伴ウイルス(AAV)1~9は、ヒトウイルスである。一部の実施形態では、EVEは、5つの属:ヒトに感染し得るウイルスからの核酸を含む:Bocaparvovirus(ヒトボカウイルス1~4、HboV1~4)、Dependoparvovirus(アデノ随伴ウイルス;少なくとも12の血清型が同定されている)、Erythroparvovirus(パルボウイルスB19、B19)、Protoparvovirus(ブファウイルス1~2、BuV1~2)およびTetraparvovirus(ヒトパルボウイルス4 Gl-3、PARV4 Gl-3)において認知されている。
一部の実施形態では、EVEは、パルボウイルスからのものであり、一部の実施形態では、EVEは、AAV(アデノ随伴ウイルス)からの核酸を含む。Parvovirus科の構成員であるアデノ随伴ウイルス(AAV)は、4.7キロベース(kb)~6kbの一本鎖線状DNAゲノムを有する、小さい、エンベロープを持たない、正二十面体のウイルスである。AAVは、このウイルスが精製アデノウイルスストックにおいて夾雑物として発見されたため、Dependoparvovirus属に割り当てられており、当初はアデノウイルス随伴(またはサテライト)ウイルスと呼ばれていた。AAVの生活環は、AAVゲノムが、感染後、宿主細胞染色体DNAの、多くの場合、例えばAAVS1などの、定義された遺伝子座に、組み込まれ得る、潜伏期;および細胞がアデノウイルスもしくは単純ヘルペスウイルスとAAVに同時感染するか、または潜伏感染細胞に重複感染し、その後、組み込まれたゲノムがレスキューされ、複製され、感染性ウイルスにパッケージングされる、溶解期を含む。血清学的調査解析に基づいて、AAVへの曝露は、ヒトおよび他の霊長類において高頻度に見られ、様々な組織試料からいくつかの血清型が単離されている。血清型2、3、6および13は、培養ヒト細胞において発見され、AAV5は、臨床検体から単離されたが、AAV血清型1、4、および7~12は、非ヒト霊長類(NHP)組織試料または細胞から単離された。2013年現在で、13のAAV血清型が記載されている。Weitzman, et al. (2011). "Adeno-Associated Virus Biology."In Snyder, R. O.; Moullier, P. Adeno-associated virus methods and protocols.Totowa, NJ: Humana Press. ISBN 978-1- 61779-370-7;Mori S, et al., (2004)."Two novel adeno-associated viruses from cynomolgus monkey: pseudotypingcharacterization of capsid protein." Virology 330 (2): 375-83)。
一部の実施形態では、EVEは、表1A~1Dに収載されているパルボウイルスのいずれかからの核酸もしくは核酸の一部分;または表1A~1Dに収載されているパルボウイルスのいずれかからの核酸もしくは核酸の一部分に対して少なくとも、約、もしくは最大で30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、もしくは100%の同一性を有する配列を含む核酸を含む。
一部の実施形態では、EVEは、AAVの任意の血清型からの核酸もしくは核酸の一部分;またはAAVの任意の血清型からの核酸もしくは核酸の一部分に対して少なくとも、約もしくは最大で30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、もしくは100%の同一性を有する配列を含む核酸を含む。一部の実施形態では、AAVは、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV 10、AAV11、AAV12、またはAAV13から選択される。
一部の実施形態では、EVEは、B19、マウス微小ウイルス(MVM)、RA-1、AAV、ブファウイルス、ホコウイルス、ボカウイルス、もしくは表1A~1Dに収載されているウイルスのいずれか、またはその変種、つまり、少なくとももしくは約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%の核酸もしくはアミノ酸配列同一性を有するウイルス、から選択される群のいずれかからの核酸配列を含む。
方法3:オルソロガス生物におけるGSH遺伝子座を同定する方法
ある特定の態様では、オルソロガス生物におけるGSH遺伝子座を同定する方法であって、(a)本明細書に記載される方法のいずれか1つに従って(例えば、機能的方法(方法1)、またはEVEを利用する方法(方法2)を使用して)A種におけるGSH遺伝子座を同定するステップ;(b)(i)A種におけるGSH遺伝子座の近位にある少なくとも1つのシス作用性エレメントおよび(ii)B種における対応するシス作用性エレメントの位置を決定するステップ;ならびに(c)B種における遺伝子座をGSH遺伝子座として同定するステップであって、B種における遺伝子座と少なくとも1つのシス作用性エレメントの間の距離が、A種におけるGSH遺伝子座と対応するシス作用性エレメントの間の距離に実質的に比例する、ステップを含む方法が、本明細書において提供される。
本明細書に記載される場合、A種および/またはB種におけるGSH遺伝子座の近位にある少なくとも1つのシス作用性エレメントは、公知であり得るか、または代替的に、そのようなエレメントの位置は、配列解析により(例えば、GSH遺伝子座の近位にある少なくとも1つのシス作用性エレメントが公知である、1つもしくは複数の生物におけるGSH遺伝子座に隣接する配列とそれらのオルソロガス配列とをアラインすることにより)決定され得る。一部の実施形態では、A種またはB種における少なくとも1つのシス作用性エレメントは、少なくとも1つのオルソロガス生物における公知のシス作用性エレメントと少なくともまたは約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である配列を含む。一部の実施形態では、A種におけるGSH遺伝子座の近位にある少なくとも1つのシス作用性エレメントは、B種におけるGSH遺伝子座の近位にある少なくとも1つのシス作用性エレメントと少なくともまたは約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である。
あるいは、当業者は、GSH遺伝子座の近位にある少なくとも1つのシス作用性エレメントを実験により決定する方法(例えば、RNA seqによりまたはcDNAをクローニングすることによりRNA配列を決定すること;およびそれをゲノム配列と比較して、スプライシングドナー部位、スプライシングアクセプター部位、ポリアデニル化部位などをマッピングすること)を理解しているであろう。
多くのシス作用性エレメントが当技術分野において公知である。一部の実施形態では、少なくとも1つのシス作用性エレメントは、スプライシングドナー部位、スプライシングアクセプター部位、ポリピリミジントラクト、ポリアデニル化シグナル、エンハンサー、プロモーター、ターミネーター、スプライシング制御エレメント、イントロンスプライシングエンハンサー、およびイントロンスプライシングサイレンサーから選択される。
ある特定の実施形態では、少なくとも1つのシス作用性エレメントは、2つまたはそれより多くのシス作用性エレメントを含む。
一部の実施形態では、少なくとも1つのシス作用性エレメントは、2つのシス作用性エレメントを含み、第1のシス作用性エレメントは、GSH遺伝子座の上流(すなわち、5’側)に位置し、第2のシス作用性エレメントは、GSH遺伝子座の下流(すなわち、3’側)に位置する。
一部の実施形態では、B種における2つのシス作用性エレメント間の距離に対する少なくとも1つのシス作用性エレメントとGSH遺伝子座の間の距離は、A種における2つのシス作用性エレメント間の距離に対する対応するシス作用性エレメントとGSH遺伝子座の間の距離に実質的に比例する。
一部の実施形態では、B種における少なくとも1つのシス作用性エレメントからGSH遺伝子座の間の距離は、A種における少なくとも1つのシス作用性エレメントからGSH遺伝子座の間の距離の少なくとも、約、または最大で1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、210%、220%、230%、240%、250%、260%、270%、280%、290%、300%、310%、320%、330%、340%、350%、360%、370%、380%、390%、400%、410%、420%、430%、440%、450%、460%、470%、480%、490%、500%、510%、520%、530%、540%、550%、560%、570%、580%、590%、600%、610%、620%、630%、640%、650%、660%、670%、680%、690%、700%、710%、720%、730%、740%、750%、760%、770%、780%、790%、800%、810%、820%、830%、840%、850%、860%、870%、880%、890%、900%、910%、920%、930%、940%、950%、960%、970%、980%、990%、または1000%である。
一部の実施形態では、B種における少なくとも1つのシス作用性エレメントからGSH遺伝子座の間の距離は、A種における少なくとも1つのシス作用性エレメントからGSH遺伝子座の間の距離の少なくとも20%、しかし最大で500%である。
一部の実施形態では、B種における少なくとも1つのシス作用性エレメントからGSH遺伝子座の間の距離は、A種における少なくとも1つのシス作用性エレメントからGSH遺伝子座の間の距離の少なくとも80%、しかし最大で250%である。
一部の実施形態では、B種における少なくとも1つのシス作用性エレメントからGSH遺伝子座の間の距離は、A種における少なくとも1つのシス作用性エレメントからGSH遺伝子座の間の距離の少なくとも90%、しかし最大で110%である。
一部の実施形態では、方法は、哺乳動物ゲノム内のGSH遺伝子座を同定する。一部の実施形態では、哺乳動物ゲノムは、マウスゲノム、イヌゲノム、ブタゲノム、NHPゲノム、またはヒトゲノムである。
上述の、GSH遺伝子座を同定するいずれか1つの方法は、任意の他の方法におけるステップおよび/または考慮事項をさらに含むことがあり、すなわち、本明細書に記載される方法の任意の数を任意の順番で組み合わせることができる。例えば、方法1によるGSH遺伝子座の機能的同定は、方法2の(例えば、EVEを同定する)ステップおよび/または考慮事項をさらに含み得る。方法1は、方法3の(例えば、オルソロガス生物におけるGSH遺伝子座を同定する)ステップおよび/または考慮事項をさらに含み得る。同様に、方法2は、方法3のステップおよび/または考慮事項をさらに含み得る。あるいは、方法1は、方法2および方法3のステップおよび/または考慮事項をさらに含み得る。
GSH遺伝子座またはGSHの核酸領域を選択するための必要に応じた基準
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法に従って同定されるGSHは、既知の遺伝子もしくはゲノム制御配列から遠く離れている遺伝子外部位もしくは遺伝子間部位、または破壊を許容できると思われる(遺伝子内の)遺伝子内部位である。
一部の実施形態では、GSHは、イントロンまたはエクソン遺伝子配列を含む遺伝子内DNAを含む、遺伝子を含み得る。
一部の実施形態では、本明細書で開示される機能的in vitroおよびin vivo解析を使用して同定されたGSHを検証することに加えて、必要に応じて、候補GSHを、バイオインフォマティクスを使用して、例えば、候補GSHがある特定の基準を満たすかどうかを決定すること、例えば、これに限定されないが、次のうちのいずれか1つまたは複数について評定することにより、評定することができる:がん遺伝子または癌原遺伝子への近接、遺伝子内の位置または遺伝子の5’末端付近の位置、選択されたハウスキーピング遺伝子内の位置、遺伝子外領域における位置、mRNAへの近接、超保存領域への近接、ならびに長鎖型非コーディングRNAおよび他のそのようなゲノム領域への近接。例として、以前に同定されたGSH AAVS1(アデノ随伴ウイルス組込み部位1)は、第19染色体上のアデノ随伴ウイルス共通組込み部位として同定されており、第19染色体(19q13.42位)に位置し、主として、in vitroでAAVに感染させた培養ヒト細胞系のゲノムにおける野生型AAVの組込みの反復回収部位として同定された。AAVS1遺伝子座における組込みは、明確に詳しく説明されていない機能を有するタンパク質をコードする遺伝子ホスファターゼ1制御サブユニット12C(PPP1R12C;これはMBS85としても公知)を中断する。PPP1R12Cの一方または両方の対立遺伝子を破壊することがもたらす生物の帰結は、現在のところ不明である。肉眼的異常も、分化不全も、標的とされる導入遺伝子をAAVS1に保有するヒトおよびマウス多能性幹細胞では、観察されなかった。AAVS1部位の以前の評定は、標的とされる対立遺伝子の機能性を保存し、標的とされない細胞におけるレベルに匹敵するレベルでPPP1R12Cの発現を維持する、Rep媒介標的化を概して使用した。AAVS1はまた、iPSCまたはCD34+細胞へのZFN媒介組換えを使用して評定された。
当初の特徴付けによれば、AAVS1遺伝子座は、>4kbであり、第19染色体ヌクレオチド55,113,873~55,117,983(ヒトゲノムアセンブリGRCh38/hg38)として同定され、プロテインホスファターゼ1制御サブユニット12CをコードするPPP1R12C遺伝子の第1エクソンとオーバーラップしている。この>4kb領域は、極めてG+Cヌクレオチド含量リッチであり、特に遺伝子リッチな第19染色体の遺伝子リッチ領域であり(Sadelain et al, Nature Revs Cancer, 2012; 12; 51-58の図1Aを参照されたい)、一部の組み込まれたプロモーターは、実際には近隣の遺伝子を活性化またはシス活性化し得るが、異なる組織におけるその帰結は、現在のところ不明である。
AAVS1 GSHは、潜伏感染クローン細胞系(Detroit 6 clone 7374 IIID5)から生成された組換えバクテリオファージゲノムライブラリーを用いて潜伏感染ヒト細胞系におけるAAVプロウイルス構造を特徴付けることにより同定され(Kotin and Bems 1989)、Kotinらは、プロウイルスに隣接する非ウイルスの細胞DNAを単離し、「左側に」および「右側に」隣接しているDNA断片のサブセットをプローブとして使用して、無関係に得られた潜伏感染クローン細胞系のパネルをスクリーニングした。クローン分離株のおおよそ70%において、AAV DNAが、細胞特異的プローブによって検出された(Kotinet al. 1991;Kotin et al. 1990)。組込み前の部位についての配列解析によって、AAV逆方向末端反復の一部分とほぼ相同であることが同定された(Kotin,Linden, and Bems 1992)。特徴的な中断された回文構造を欠いているが、AAVS1遺伝子座は、末端分割部位とも呼ばれる、結合およびニッキングするp5 Repタンパク質を保持した(Chioriniet al. 1994;Chiorini et al. 1995;Im and Muzyczka 1989, 1990, 1992)。興味深いことに、ヒトオルソログは、DNA合成のp5 Rep in vitro起点として機能し、したがって、AAVS1組込みがRep依存性プロセスであるという初期の推論を裏付けた(Kotinet al., 1990;Kotin et al., 1992;Urcelay et al. 1995;Weitzman et al. 1994)。シスでのRep結合エレメントは、AAV組込みに必要とされること、および標的化された非相同組換えプロセスへのRepタンパク質の関与についてのさらなる裏付けを提供することが示された(Urabe,et al., Linden, Bems)。これらのエレメントは、RNA-プライマー非依存性鎖置換DNA(リーディング鎖)合成を可能にするRep結合およびニッキング部位の配置として、Rep媒介DNA合成の最小起点を規定する。
野生型アデノ随伴ウイルスは、増殖性または潜伏感染のどちらかを引き起こすことがあり、この感染では、多くの場合、野生型ウイルスゲノムが、培養細胞におけるヒト第19染色体上のAAVS1遺伝子座に組み込まれる(Kotin and Bems 1989;Kotin et al. 1990)。AAVのこのユニークな態様は、iPSC遺伝子改変の第1のいわゆる「セーフハーバー」の1つとして利用されている。AAVS1は、当初の定義(Kotinet al., 1991)によれば、第19染色体上のヌクレオチド55,113,873~55,117,983の間(ヒトゲノムアセンブリGRCh38/hg38)に位置し、プロテインホスファターゼ1制御サブユニット12CをコードするPPP1R12C遺伝子の第1エクソンとオーバーラップしている。興味深いことに、PPP1R12C第1エクソン、5’非翻訳領域は、次の配列内に示されるDNA合成の機能的AAV起点を含有する(Urcelayet al. 1995):GCTC Rep結合モチーフおよび末端分割部位(GGTTGG)は、太字フォントで示される:

驚くべきことに、ヒト第19染色体AAVS1セーフハーバーは、プロテインホスファターゼ制御1制御サブユニット12Cをコードする遺伝子であるPPP1R12Cのエクソン領域内にある。エクソン組込み部位の選択は、明白でなく、恐らく直感に反する。外来DNAの挿入および発現は、内在性遺伝子の発現を妨害する可能性が高いからである。どうやら、この遺伝子座へのAAVゲノムの挿入は、細胞生存率またはiPSC分化に有害な影響を与えないようである(DeKelver et al. 2010;Wang et al. 2012;Zou et al. 201 1)。組込みは、非相同組換えによって起こり、この非相同組換えは、両方の組換え基質上でのトランスでのAAV Repタンパク質の存在およびシスでのAAV DNA合成の最小起点を必要とし、ひいてはAAVおよびゲノムDNAのRepタンパク質媒介の並置を可能にする(Weitzmanet al. 1994)。
DNA合成のRep依存性最小起点は、AAV2 trs AGT|TGGおよびAAV5 trs AGTG|TGG(縦線はニッキング位置を示す)により例示されるように、p5 Repタンパク質結合エレメント(RBE)および適切な位置にある末端分割部位(trs)からなる。加えて、細胞タンパク質複合体の関与が推測されたが、まだ同定も特徴付けもされていない。
これらのウイルス複製エレメントは、非常に効率的に機能するはずであり、そうでなければウイルスは、複製適応性の欠如に起因して消滅することになり、その一方で、AAVS1における小さい、非コーディング、約35bpエレメントは、宿主において全く機能しないことがある。しかし、AAVS1遺伝子座は、体細胞セーフハーバーとして確立されており、全能性または生殖系列細胞における遺伝子座の破壊は、個体発生過程に干渉し得る。
AAVS1遺伝子座は、高度に保存されるPPP1R12C遺伝子の5’UTR内にある。DNA合成のRep依存性最小起点は、ヒト、チンパンジーおよびゴリラPPP1R12C遺伝子の5’UTRに保存される。しかし、齧歯類種(マウスおよびラット)では、隣接する非コーディングDNAと比較して好ましい末端分割部位内で置換が発生する頻度が高い。選択されたまたは獲得した遺伝子型ではなく偶発的な遺伝子型は、5’UTR内の他の種の特定の配列の効率に影響を与え得る。
一部の実施形態では、本明細書における実施形態に従って同定される候補GSHは、オフターゲット活性が制限されており、遺伝毒性、または外来DNAの組込み時に挿入による発癌を引き起こすリスクが最小限である一方、オフターゲット活性を最小限に抑えて非常に特異的なヌクレアーゼを利用できる、安全な標的化された遺伝子送達を達成することができる場合、GSHの基準を満たすものと同定される。
GSHは、本明細書に記載のin vitroおよびin vivoアッセイに基づいて検証されるが、一部の実施形態では、GSHが特定の基準に該当するかどうかの決定に基づく追加の選択が使用され得る。例えば、一部の実施形態では、本明細書で同定されるGSH遺伝子座は、不必要な遺伝子のエクソン、イントロンまたは非翻訳領域に位置する。解析は、腫瘍内のプロウイルスの組込み部位が、一般に、転写の開始点の付近に、転写単位の上流またはまさに転写単位内のどちらかに、多くの場合、5’イントロン内に、存在することを示す。これらの位置におけるプロウイルスには、ウイルスプロモーターよってまたはウイルスエンハンサー挿入によってのどちらかで転写率を増加させることにより発現を異常制御する傾向がある。したがって、一部の実施形態では、本明細書で同定されるGSH遺伝子座は、がん遺伝子の近位にないことに基づいて選択される。一部の実施形態では、GSHは、がん遺伝子の転写の開始点の付近に、例えば、がん遺伝子または癌原遺伝子の5’イントロンの上流またはその中に、位置する組込み部位を有さない。そのようながん遺伝子は、当業者に周知であり、Sadelain et al., Nature Revs Cancer, 2012; 12; 51-58の表1において開示されており、この参考文献は、その全体が本明細書に組み込まれる。がんに関与する遺伝子の例示的なデータベース、例えば、Atlas遺伝子セット、CAN遺伝子セット、CIS(RTCGD)遺伝子セット、および下の表2に記載されるものは、周知である。
表2:がんに関与する遺伝子の例示的なデータベース
*遺伝子リスト、および出典へのリンクは、Bushman labがん遺伝子リストウェブサイト(World Wide Webのbushmanlab.org/links/genelistsを参照されたい)で入手可能である。CAN、がん;CIS、共通挿入部位;最後の欄の参考文献は、Sadelainet al., Nature Revs Cancer (2012) 12:51-58における参考文献番号を表す。
一部の実施形態では、本明細書で同定されるGSH遺伝子座は、(i)遺伝子転写単位の外側;(ii)任意の遺伝子の5’末端から5~50キロベース(kb)の間、離れて位置する;(iii)がん関連遺伝子から5~300kbの間、離れて位置する;(iv)任意の同定されたマイクロRNAから5~300kb離れて位置する;ならびに(v)超保存領域および長鎖型非コーディングRNAの外側、から選択される1つまたは複数の特性を有する。一部の実施形態では、本明細書で同定されるGSH遺伝子座は、次の特性のいずれかまたは複数を有する:(i)遺伝子転写単位の外側;(ii)任意の遺伝子の5’末端から>50キロベース(kb)に位置する;(iii)がん関連遺伝子から>300kbに位置する;(iv)任意の同定されたマイクロRNAから>300kbに位置する;ならびに(v)超保存領域および長鎖型非コーディングRNAの外側。形質導入された人工多能性幹細胞におけるレンチウイルスベクター組込みの研究において、5,000を超える組込み部位の解析により、組込みの約17%がセーフハーバー内で起こることが明らかになった。これらのセーフハーバーに組み込まれたベクターは、内在性遺伝子発現を摂動することなく、それらの導入遺伝子から治療レベルのβ-グロビンを発現することができた。
相同性および配列アラインメント
相同性は、本明細書で使用される場合、同じ核酸鎖の2つの領域間のまたは2つの異なる核酸鎖の領域間のヌクレオチド配列同一性のパーセンテージを指す。両方の領域におけるヌクレオチド残基位置が同じヌクレオチド残基により占有されている場合には、領域は、その位置において相同である。第1の領域は、第2の領域と、各領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基位置が同じ残基により占有されている場合、相同である。2つの領域間の相同性は、同じヌクレオチド残基により占有される2つの領域のヌクレオチド残基位置の割合によって表される。例として、ヌクレオチド配列5’-ATTGCC-3’を有する領域と、ヌクレオチド配列5’-TATGGC-3’を有する領域は、50%相同性を共有する。好ましくは、第1の領域は、第1の部分を含み、第2の領域は、第2の部分を含み、そうすることで、部分の各々のヌクレオチド残基位置の少なくとも約50%、好ましくは、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%は、同じヌクレオチド残基により占有される。より好ましくは、部分の各々のすべてのヌクレオチド残基位置は、同じヌクレオチド残基により占有される。
核酸について、用語「実質的相同性」は、2つの核酸、またはその指定配列が、最適にアラインされ、比較されたとき、適切なヌクレオチド挿入または欠失を含めて、ヌクレオチドの少なくとも約60%、通常は、ヌクレオチドの少なくともまたは約30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%、より好ましくは、少なくとも約97%、98%、99%またはそれより高度に同一であることを示す。あるいは、実質的相同性は、セグメントが選択的ハイブリダイゼーション条件下で鎖の相補体とハイブリダイズする場合、存在する。
2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れて、配列により共有される同一位置の数の関数(すなわち、同一性%=同一位置の#/位置の総#×100)である。2つの配列間の配列の比較および同一性パーセントの決定は、下の非限定的な例で記載されるように、数学的アルゴリズムを使用して遂行することができる。
2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(world wide webのGCG社ウェブサイトで入手可能)のGAPプログラムを使用し、NWSgapdna.CMP行列、および40、50、60、70または80のギャップ重み、および1、2、3、4、5または6の長さ重みを使用して、決定することができる。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み入れられているE.MeyersおよびW.Millerのアルゴリズム(CABIOS, 4:11 17 (1989))を使用し、PAM120重み残基表、12のギャップ長ペナルティおよび4のギャップペナルティを使用して、決定することもできる。加えて、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(world wide webのGCG社ウェブサイトで入手可能)のGAPプログラムに組み入れられているNeedlemanおよびWunsch(J.Mol. Biol. (48):444 453 (1970))アルゴリズムを使用し、Blosum 62行列またはPAM250行列のどちらか、および16、14、12、10、8、6または4のギャップ重み、および1、2、3、4、5または6の長さ重みを使用して、決定することができる。
本発明の核酸およびタンパク質配列を、例えば関連配列を同定するために、公開データベースに対する検索を行うための「問い合わせ配列」としてさらに使用することができる。そのような検索は、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403 10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行うことができる。BLASTヌクレオチド検索をNBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12で行って、本発明の核酸分子と相同のヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索をXBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で行って、本発明のタンパク質分子と相同のアミノ酸配列を得ることができる。比較のためのギャップ付きアラインメントを得るために、Altschulet al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389 3402に記載されているようなギャップ付きBLASTを利用することができる。BLASTおよびギャップ付きBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用することができる(world wide webのNCBIウェブサイトで入手可能)。
in vitroおよびin vivoアッセイを使用するGSHの検証
理論に限定されるものではないが、有用なGSH領域は、ベクターにコードされたタンパク質または非コーディングRNAの所望のレベルを得るために十分な導入遺伝子発現を可能にしなければならず、細胞に悪性形質転換の素因を与えても、細胞機能を大幅にネガティブに変更してもいけない。
本明細書で開示される候補GSH領域を検証するための方法および組成物には、これらに限定されないが、バイオインフォマティクス、in vitro遺伝子発現アッセイ、近くの遺伝子を問い合わせるためのin vitroおよびin vivo発現アレイ、異種間移植モデルにおけるin vitroで方向付けられた分化またはin vivo再構成アッセイ、シンテニー領域における遺伝子導入、ならびに個体からの患者データベースの解析が含まれる。したがって、本明細書に記載されるGSH遺伝子座を同定するための方法のいずれか1つまたは組合せは、少なくとも1つをin vitro、ex vivo、および/またはin vivoで行うことをさらに含み得る。
一部の実施形態では、GSHの検証は、導入された遺伝子の生殖系列組込みがないことをチェックするために決定され、それによって遺伝子治療ベクターの生殖系列伝播があるリスクが低下される。
標的遺伝子座または候補GSHの同定後、一連のin vitroおよびin vivoアッセイが、安全性、特に、発癌可能性の非存在を立証するために使用され得る。in vitro発癌性アッセイは、以前の遺伝子治療T細胞産物特徴付けにおける経験に基づき得る。
一部の実施形態では、GSHは、いくつかのアッセイにより検証され得る。一部の実施形態では、機能アッセイは、(a)ヒト細胞における遺伝子座へのマーカー遺伝子の挿入、およびin vitroでのマーカー遺伝子発現を測定すること;(b)前駆細胞または幹細胞におけるオルソロガス遺伝子座へのマーカー遺伝子の挿入、および免疫枯渇マウスに細胞を生着させることおよび/またはすべての発生系譜におけるマーカー遺伝子発現を評定すること;(c)候補GSH遺伝子座に挿入されたマーカー遺伝子を有する造血CD34+細胞を最終分化細胞型に分化させること;または(d)マウスのゲノムDNAが候補GSH遺伝子座に挿入されたマーカー遺伝子を有し、マーカー遺伝子が、組織特異的もしくは誘導性プロモーターに動作可能に連結されている、トランスジェニックノックインマウスを生成することのうちのいずれか1つまたは複数から選択される。
一部の実施形態では、少なくとも1つのin vitro、ex vivo、および/またはin vivoアッセイは、(a)細胞(例えば、ヒト細胞)内の遺伝子座へのマーカー遺伝子のde novoの標的化された挿入、および(i)細胞生存率、(ii)挿入効率および/または(iii)マーカー遺伝子発現を決定すること;
(b)前駆細胞または幹細胞における遺伝子座へのマーカー遺伝子の標的化された挿入、およびin vitroで分化させ、(i)すべての発生系譜におけるマーカー遺伝子発現を、および/または(ii)マーカー遺伝子の挿入が前記前駆細胞もしくは幹細胞の分化に影響を与えるかどうかを決定すること;
(c)前駆細胞または幹細胞における遺伝子座へのマーカー遺伝子の標的化された挿入、および細胞を免疫枯渇マウスに生着させ、in vivoですべての発生系譜におけるマーカー遺伝子発現を評定すること;
d)細胞における遺伝子座へのマーカー遺伝子の標的化された挿入、および包括的細胞転写プロファイルを(例えば、RNAseqまたはマイクロアレイを使用して)決定すること;ならびに
e)マウスのゲノムDNAが遺伝子座に挿入されたマーカー遺伝子を有し、必要に応じて、マーカー遺伝子が、組織特異的または誘導性プロモーターに動作可能に連結されている、トランスジェニックノックインマウスを生成すること
から選択される。
一部の実施形態では、検証アッセイにおいて使用される幹細胞は、胚性幹細胞、組織特異的幹細胞、間葉系幹細胞、および人工多能性幹細胞(iPSC)から選択される。一部の実施形態では、細胞、前駆細胞または幹細胞は、造血幹細胞、造血CD34+細胞、および表皮幹細胞、上皮幹細胞、神経系幹細胞、肺前駆細胞、筋肉サテライト細胞、腸K細胞、および肝臓前駆細胞から選択される。
GSHを検証するための例示的なin vitroアッセイ
一部の実施形態では、GSHを検証するための機能アッセイは、ヒト細胞の遺伝子座へのマーカー遺伝子の挿入、およびin vitroでのマーカーの発現の決定を含む。一部の実施形態では、マーカー遺伝子は、相同組換えにより導入される。一部の実施形態では、マーカー遺伝子は、プロモーター、例えば、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターに、動作可能に連結されている。マーカー遺伝子の遺伝子発現の決定および定量化は、当業者に一般に公知の任意の方法、例えば、例えばRT-PCR、Affymetrix遺伝子アレイ、トランスクリプトーム解析を使用する遺伝子発現;および/またはタンパク質発現解析(例えば、ウェスタンブロット)などによって、行うことができる。一部の実施形態では、組み込まれたマーカー導入遺伝子の近隣の遺伝子発現に対する効果は、in vitroで培養細胞において決定される。
一部の実施形態では、マーカー遺伝子は、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞またはマウス細胞またはラット細胞に、導入される。一部の実施形態では、細胞は、細胞系、例えば、線維芽細胞系、HEK293細胞などである。一部の実施形態では、アッセイに使用される細胞は、多能性細胞、例えば、iPSCまたはクローン可能な細胞型、例えばTリンパ球である。一部の実施形態では、初代細胞を含む、様々な異なる細胞集団へのマーカー遺伝子の挿入の遺伝子発現が、評定される。一部の実施形態では、導入されたマーカー遺伝子を有するiPSCは、異なる系列におけるマーカー遺伝子の一貫性があり、かつ確実な遺伝子発現をチェックするために複数の系列に分化される。
一部の実施形態では、マーカー遺伝子は、例えばCD34+細胞などの造血細胞のゲノム内の候補GSH遺伝子座に挿入され、異なる最終分化細胞型に分化される。
一部の実施形態では、候補GSHに導入されたマーカー遺伝子を有する細胞集団は、可能性のある組織機能不全および/または形質転換について評定され得る。例えば、CD34+細胞またはiPSCは、正常な系列分化とはまるで異なる異常な分化、および/またはがんのリスクを示す増殖増加について評定される。
一部の実施形態では、近位遺伝子の遺伝子発現レベルが決定される。例えば、一部の実施形態では、組み込まれたマーカー遺伝子が、周囲もしくは近隣の遺伝子発現の異常な遺伝子発現、または他の異常制御、例えば、近隣の遺伝子の遺伝子発現の下方制御もしくは上方制御をもたらす場合、候補遺伝子座は、好適なGSHとして選択されない。一部の実施形態では、近隣の遺伝子の発現レベルの変化が検出されない場合、候補遺伝子座は、GSHとしてノミネートまたは選択される。一部の実施形態では、隣接、近位または近隣の遺伝子の遺伝子発現が決定され、近位または近隣の遺伝子は、マーカー遺伝子の挿入部位から(上流にまたは下流に)約350kb、もしくは約300kb、もしくは約250kb、もしくは約200kb、もしくは約100kb以内の、または10~100kbの間の、または約1~10kbの間の、または1kb未満の距離にあり得る(すなわち、挿入遺伝子座の5’または3’のどちらかにおいて隣接する遺伝子またはRNA配列)。
一部の実施形態では、標的とされる候補GSH遺伝子座のエピジェネティックな特色およびプロファイルは、マーカー遺伝子の導入が、GSH、および/または組込み部位の上流もしくは下流約350kb以内の周囲もしくは近隣の遺伝子の、エピジェネティックシグネチャー(例えば、ヒストン改変、DNA改変、ユークロマチンまたはヘテロクロマチンタンパク質の会合など)に影響を与えるかどうかを決定するために、マーカー遺伝子の導入の前および後に評定される。
一部の実施形態では、候補GSH遺伝子座へのマーカー遺伝子の挿入は、遺伝子座が、異なる組み込まれる転写単位を受け入れることができるかどうかを確かめるために、評定される。一部の実施形態では、プロモーター、エンハンサー、ならびに遺伝子座調節領域、マトリックス付着領域およびインスレーターエレメントをはじめとするクロマチン決定因子を含む、様々な異なる遺伝子エレメントに動作可能に連結されているマーカー遺伝子の遺伝子発現が評定され、一部の実施形態では、マーカー遺伝子の挿入部位から(上流にまたは下流に)約350kb、もしくは約300kb、もしくは約250kb、もしくは約200kb、もしくは約100kb以内の、または10~100kbの間の、または約1~10kbの間の、または1kb未満の距離の、近隣の遺伝子の遺伝子発現も評定される。
一部の実施形態では、プロモーターに作動可能に連結されていないマーカー遺伝子が、近隣の遺伝子の任意のプロモーターおよび/または他の制御エレメントの効果を評定するためにGSH遺伝子座に挿入される。
一部の実施形態では、本明細書で実証されるように、候補GSH遺伝子座へのマーカー遺伝子の挿入は、それが包括的転写パターンを変化させるかどうかを確かめるために、評定される。そのような解析は、例えば、DNAまたはRNAの次世代シークエンシング(NGS)、Affymetrix遺伝子アレイなどにより遂行され得る。
一部の実施形態では、GSH遺伝子座が特定の遺伝子と関連付けられる場合、遺伝子が必要でないか不必要であることを検証するために、遺伝子のノックダウンが評定され得る。本明細書で開示される例示的な例として、SYNTX-GSH2は、いくつかの異なるコーディング遺伝子およびRNA遺伝子に包囲されている。したがって、一部の実施形態では、SYNTX-GSH2のRNAiノックダウンによる近隣の細胞の細胞機能および遺伝子発現に対する効果が評定され得、GSH遺伝子座における候補遺伝子のノックダウンに有意な効果がない場合、遺伝子は、GSHとして検証され得る。また、RNAiを使用してGSH遺伝子をノックダウンするin vitroアッセイは、エンドヌクレアーゼ媒介標的化の場合によくあるような、特に、二対立遺伝子の破壊に起因する、遺伝子の不必要性を決定するために重要である。
一部の実施形態では、がん化学療法細胞傷害剤は、遺伝毒性および発癌性の可能性があるため、これらのタイプの薬物の前臨床評価のための標準的なin vitro研究を使用して、GSH遺伝子座破壊を評定することもできる。例えば、サイトカインおよび細胞シグナル伝達なしで成長する初代T細胞の能力は、発癌性形質転換の特色である。
例えば、一部の実施形態では、マーカー遺伝子をT細胞、例えばSB-728-T細胞、の候補GSH遺伝子座に導入し、サイトカイン支援なしで数週間培養し、正常な細胞死が起こることを実証することができる。
他の実施形態では、古典的な生物学的細胞形質転換アッセイは、線維芽細胞の足場非依存性成長であり、発癌性の厳密な試験である。それに基づいて、一部の実施形態では、マーカー遺伝子を線維芽細胞における標的GSH遺伝子座に挿入し、足場非依存性成長について評定することができる。発癌性を評価するための他のin vitroアッセイまたは試験、例えば、マウス小核試験、足場非依存性成長、およびマウスリンパ腫TK遺伝子変異アッセイを、使用することができる。
一部の実施形態では、マーカー遺伝子は、蛍光レポーター遺伝子、例えば、GFP、RFPなど、および生物発光レポーター遺伝子のいずれかから選択される。例示的なマーカー遺伝子は、本明細書に記載されている。
一部の実施形態では、マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子配列は、限定なく、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼおよび当技術分野において周知の他のものをコードする、DNA配列を含む。それらの発現を駆動する制御エレメントと会合している場合、レポーター配列は、酵素的アッセイ、X線撮影アッセイ、比色アッセイ、蛍光アッセイまたは他の分光アッセイ、蛍光活性化細胞選別アッセイ、ならびに酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫組織化学的検査をはじめとする免疫学的アッセイを含む、従来の手段により検出可能なシグナルを提供する。例えば、マーカー配列が、LacZ遺伝子である場合、シグナルを伝えるベクターの存在は、β-ガラクトシダーゼ活性についてのアッセイにより検出される。一部の実施形態では、マーカー遺伝子が緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼである場合、シグナルを伝えるベクターは、照度計における可視光吸収または光生成に基づく比色分析によって、それぞれ測定され得る。そのようなレポーターは、例えば、核酸の組織特異的標的化能力および組織特異的プロモーター制御活性を検証するのに有用であり得る。
一部の実施形態では、バイオインフォマティクスを使用して、例えば、その全体が本明細書に組み込まれるPapapetrou et al., 2011, Na. Biotechnology, 29; 73-78に記載されているように、患者由来の自己iPSCのデータベースの配列を再調査して、GSHを検証することができる。
加えて、GSHおよびGSH内の標的組込み部位が同定されたら、バイオインフォマティクスおよびまたはウェブベースのツールを使用して、可能性のあるオフターゲット部位を同定することができる。例えば、CRISPR/Cas9標的を設計する、およびオフターゲット部位を予測するための、Predicted Report of Genome-wide Nuclease Off-Target Sites(PROGNOS、world wide webのbaolab.bme.gatech.edu/Research/BioinformaticTools/prognos.htmlで)およびCRISPOR(world wide webのcrispor.tefor.net/で)などの、バイオインフォマティクスツール。CRISPORおよびPROGNOSは、ZFNおよびTALENのための可能性のあるゲノムワイドなヌクレアーゼ標的部位のレポートを提供し得る。特定の標的部位が同定されると、プログラムは、可能性のあるオフターゲット部位をランク付けするリストを提供し得る。
GSHを検証するためのin vivoアッセイ
一部の実施形態では、GSHを機能的に検証するためのin vivoアッセイが行われ得る。一部の実施形態では、GSHのin vivo評価が、シンテニー領域に組み込まれている導入遺伝子を担持するトランスジェニックマウスにおいて行われ得る。
一部の実施形態では、GSHを検証するためのin vivo機能アッセイは、iPSCの遺伝子座へのマーカー遺伝子の挿入、および免疫不全マウスへの移植を含む。一部の実施形態では、iPSCおよび免疫不全マウスに植え込まれた改変iPSCへのマーカー遺伝子の挿入が、ある期間にわたって評定される。そのようなin vivoアッセイによって、非定型のまたは異常な分化(例えば、造血性形質転換および/またはクローン性造血偏重における変化)はじめとする任意の遺伝毒性事象を評定すること、ならびに腫瘍原性細胞の増生を稀な事象からの評定することが可能になる。
造血細胞を用いる免疫不全マウスにおけるそのようなin vivo方法は、当業者に周知であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれるZhou, et al. "Mouse transplant models for evaluating theoncogenic risk of a self-inactivating XSCID lentiviral vector." PloS one8.4 (2013): e62333において開示されており、ここでは、導入された改変造血細胞またはiPSCからの悪性病変発生率が、対照またはGSHにおける標的遺伝子座にマーカー遺伝子が導入されていない細胞と比較して評定され得る。一部の実施形態では、造血器悪性病変が評定され得る。一部の実施形態では、レシピエント免疫不全マウスにおける末梢血細胞の系列分布が、ミエロイド偏重、およびGSH遺伝子座に挿入されたマーカー遺伝子に起因する挿入形質転換または有害効果のシグナルを決定するために評定される。
一部の実施形態では、レシピエントマウス株が免疫不全であるため、腫瘍がそのようなマウスにおいて生ずる場合、これらの腫瘍を特徴付け、それらがヒト起源のものであるかどうかを評価することができる。腫瘍がヒト起源のものであった場合には、それらのクローン性を、GSH遺伝子座におけるマーカー遺伝子の挿入、またはオンもしくはオフターゲット部位、例えば隣接RNA配列もしくは遺伝子の、任意の異常制御遺伝子発現(上方制御もしくは下方制御)に関して、さらに評価する必要があるだろう。しかし、マーカー遺伝子導入細胞において観察されるクローン性は、必ずしも等しい因果関係であるとは限らず、それどころか、腫瘍のクローン起源を単に表す無害な標識であることもある。
一部の実施形態では、ヒトT細胞が免疫不全NOGマウスにおいて維持され得るという事実に頼るin vivoアッセイが、使用され得る。そのようなアッセイは、マーカー遺伝子を標的GSH遺伝子座および改変ヒトT細胞に導入し、NOGモデルにおいて何カ月も生存および拡大させ、非改変T細胞と比較することを必要とする。一部の実施形態では、動物がGVHDで死ぬ前の細胞増殖の最長期間が2カ月とされ、NOGマウスにおいて確実なGVHDをもたらす用量およびドナーを定義する、ヒトT細胞xeno-GVHDを有するモデルが、使用され得る。2カ月後、動物が安楽死させられ、組織が、新生物についての組織学的検査、ヒト細胞を検出するための免疫染色、ならびにオンターゲットおよびオフターゲット部位の改変遺伝子発現の検出のための遺伝子発現解析(例えば、GSH挿入遺伝子座の周囲の隣接遺伝子のAffymetrixアレイまたはRT-PCR)によって評価される。
一部の実施形態では、候補遺伝子座をGSHとして機能的に検証するための別のin vivoアッセイは、ノックイントランスジェニック動物またはトランスジェニックマウスを生成することである。
iPSCまたはTリンパ球または他の宿主細胞のGSHへのマーカー遺伝子の遺伝子編集成功についての試験
当技術分野において周知のアッセイを使用して、in vitroモデルとin vivoモデルの両方においてマーカー遺伝子の挿入の効率を試験することができる。マーカー遺伝子の発現を、当業者は、所望の導入遺伝子のmRNAおよびタンパク質レベルを測定すること(例えば、逆転写PCR、ウェスタンブロット解析、および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA))により評定することができる。一部の実施形態では、例えば、蛍光顕微鏡検査または発光プレートリーダーによってレポータータンパク質の発現を調査することにより、所望の導入遺伝子の発現を評定するために使用することができる、マーカーまたはレポータータンパク質の発現。in vivoでの応用のために、タンパク質機能アッセイを使用して所与の遺伝子および/または遺伝子産物の機能性を試験して、遺伝子編集が首尾よく起こったかどうかを決定することができる。細胞または対象における遺伝子編集の効果は、少なくとも、約、もしくは最大で1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、10カ月、12カ月、18カ月、2年、5年、10年、20年続くこともあり、または永久であることもあることが、本明細書では企図される。
マーカー/レポーター遺伝子
マーカー/レポーター遺伝子は、スクリーニング可能または選択可能であり得る。
例示的なマーカー遺伝子としては、蛍光レポーター遺伝子、例えば、GFP、RFPなど、および生物発光レポーター遺伝子のいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なマーカー遺伝子としては、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT) ベータ-ガラクトシダーゼ、ベータ-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、GFP-2、tagGFP、turboGFP、sfGFP、EGFP、Emerald、Azami Green、Monomeric Azami Green、CopGFP、AceGFP、ZsGreenl)、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、EYFP、Citrine、Venus YPet、PhiYFP、ZsYellowl)、シアン蛍光タンパク質(例えば、ECFP、Cerulean、CyPet AmCyanl、Midoriishi-Cyan) 赤色蛍光タンパク質(例えば、mKate、mKate2、mPlum、DsRed単量体、mCherry、mRFP1、DsRed-Express、DsRed2、HcRed-Tandem、HcRed 1、AsRed2、eqFP6l 1、mRaspberry、mStrawberry、Jred)、橙色蛍光タンパク質(例えば、mOrange、mKO、Kusabira-Orange、単量体Kusabira-Orange、mTangerine、tdTomato)、および青色蛍光タンパク質(BFP)をはじめとする自己蛍光タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
マーカー遺伝子は、限定なく、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼおよび当技術分野において周知の他のものをコードする、DNA配列も含み得る。それらの発現を駆動する制御エレメントと会合している場合、レポーター配列は、酵素的アッセイ、X線撮影アッセイ、比色アッセイ、蛍光アッセイまたは他の分光アッセイ、蛍光活性化細胞選別アッセイ、ならびに酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫組織化学的検査をはじめとする免疫学的アッセイを含む、従来の手段により検出可能なシグナルを提供する。例えば、マーカー配列が、LacZ遺伝子である場合、シグナルを伝えるベクターの存在は、β-ガラクトシダーゼ活性についてのアッセイにより検出される。一部の実施形態では、マーカー遺伝子が緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼである場合、シグナルを伝えるベクターは、照度計における可視光吸収または光生成に基づく比色分析によって、それぞれ測定され得る。そのようなレポーターは、例えば、核酸の組織特異的標的化能力および組織特異的プロモーター制御活性を検証するのに有用であり得る。
マーカー遺伝子は、抗生物質耐性(例えば、アンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、ピューロマイシン耐性)を媒介するタンパク質(例えば、ブラストサイジンS-デアミナーゼ、アミノ3’-グリコシルホスホトランスフェラーゼ)をコードする配列;着色または蛍光または発光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、高感度緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)ならびに細胞成長速度および/または遺伝子増幅を向上させる結果となる細胞代謝を媒介するタンパク質(例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ)をコードする配列を含むが、これらに限定されない。
GSHの少なくとも一部分を含むベクター
ある特定の態様では、本明細書で開示される方法を使用して同定されるGSHの一部分または領域を少なくとも含むベクター組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター)が、本明細書において提供される。GSHの部分または領域は、改変され得、例えば、点変異によって、本明細書で同定されるGSH遺伝子の遺伝子機能が破壊またはノックアウトされ得る。他の実施形態では、ベクター内のGSHの部分または領域は、挿入されたガイドRNA(gRNA)、例えば、本明細書で開示されるヌクレアーゼのためのガイドRNAを含むように改変され得る。一部の実施形態では、GSHベクターは、本明細書で開示されるガイドRNA(gRNA)の標的部位、または代替的に、本明細書で開示される目的の核酸の導入のための制限クローニング部位を含み得る。他の実施形態では、loxPなどのリコンビナーゼ認識部位が、rAAVまたは他の遺伝子移入ベクターから発現されるCreリコンビナーゼを使用する指向性組換えを助長するために導入され得る。GSHに挿入されたloxP部位は、組織特異的様式でCreを発現するtgマウスの育種によっても使用され得る。
例示的な例として、ベクター組成物は、プラスミド、コスミド、または人工染色体(例えば、BAC)、ミニサークル核酸、または組換えウイルスベクター(例えば、rAd、AAV、rHSV、BEV、またはそのバリアント)であり得る。一部の実施形態では、ベクターは、リコンビナーゼ認識部位(RRS)、例えば、LoxP部位、attP、AttB部位などを含み得る。
ある特定の実施形態では、ベクター内の核酸は、本明細書に記載される方法においてゲノムセーフハーバー(GSH)として同定されるGSH核酸の少なくとも一部分を含む。例えば、一部の実施形態では、核酸は、ベクター、例えば、プラスミド、コスミド、または例えばBACなどの人工染色体内に存在する。一部の実施形態では、核酸組成物は、GSHにおける標的組込み部位と、標的組込み部位に隣接するGSH核酸の5’および3’部分とを、少なくとも含む。
一部の実施形態では、ベクター組成物は、長さ30~1000ヌクレオチドの間、1~3kbの間、3~5kbの間、5~10kbの間、もしくは10~50kbの間、50~100kbの間、もしくは100~300kbの間、もしくは100~350kbの間であるか、または10塩基対~350kbの間の任意の整数である、GSH核酸配列を含む。
一部の実施形態では、ベクター組成物は、GSHの5’領域を含む第1の核酸配列、および/またはGSHの3’領域を含む第2の核酸配列を含む、核酸配列を含む。一部の実施形態では、5’領域は、標的組込み部位の近傍内かつ上流にあり、GSHの3’領域は、標的組込み部位の近傍かつ下流にある。
プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター;ヘルペスウイルス(HSV)ベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、バクテリオファージベクターなどを含むがこれらに限定されない、任意のベクター系を使用することができる。それら全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,534,261号、同第6,607,882号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号、および同第7,163,824号も参照されたい。さらに、これらのベクターのいずれかが、処置に必要とされる配列の1つまたは複数を含み得ることは、明らかであろう。したがって、目的の1つまたは複数の核酸が細胞に導入される場合、目的の核酸が、目的の遺伝子編集核酸である場合、追加のヌクレアーゼおよび/またはドナー配列が、同じベクター上または異なるベクター上に担持され得る。複数のベクターが使用される場合、各ベクターは、本明細書に記載の目的の1つまたは複数の核酸を含み得る。
GSHの少なくとも一部分を含む核ベクター
ある特定の態様では、本明細書に記載される方法のいずれか1つで同定されるGSH核酸の少なくとも一部分を含む核酸ベクターが、本明細書において提供される。一部の実施形態では、GSH核酸は、非翻訳配列またはイントロンを含む。一部の実施形態では、GSHは、表3に収載されているGSHの配列またはその断片と少なくとも、約または最大で30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である配列を含む。一部の実施形態では、GSHは、SYNTX-GSH1、SYNTX-GSH2、SYNTX-GSH3またはSYNTX-GSH4のゲノムDNAの配列またはその断片と少なくとも、約または最大で30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である配列を含む。
一部の実施形態では、本開示の核酸ベクターは、少なくとも1つの非GSH核酸を含む(さらなる説明については下記を参照されたい)。
一部の実施形態では、本開示の核酸ベクターは、(a)転写制御エレメント(例えば、エンハンサー、転写終結配列、非翻訳領域(5’または3’UTR)、近位プロモーターエレメント、遺伝子座調節領域(例えば、β-グロビンLCR、またはβ-グロビンLCRのDNase高感受性部位(HS))、ポリアデニル化シグナル配列)、および/または(b)翻訳制御エレメント(例えば、コザック配列、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後制御エレメント)をさらに含む。
一部の実施形態では、核酸ベクターは、 プラスミド、ミニサークル、コスミド、人工染色体(例えば、BAC)、線状共有結合閉鎖(LCC)DNAベクター(例えば、ミニサークル、ミニベクターおよびミニノット)、線状共有結合閉鎖(LCC)ベクター(例えば、MIDGE、MiLV、ミニストリング(ministering)、ミニプラスミド)、ミニイントロンプラスミド、pDNA発現ベクター、またはそのバリアントから選択される。
一部の実施形態では、核酸ベクターは、原核細胞または真核細胞を形質転換することができ、複製および/または発現であり得る。ベクターは、原核生物ベクター、例えばプラスミド、またはシャトルベクター、昆虫ベクター、または真核生物ベクターであり得る。発現ベクターはまた、例えば、Sambrook et al, 上掲、ならびに米国特許出願公開第20030232410号、同第20050208489号、同第20050026157号、同第20050064474号および同第20060188987号、ならびに国際公開WO2007/014275に記載されている標準的な技法を使用する、植物細胞、動物細胞、好ましくは、哺乳動物細胞もしくはヒト細胞、真菌細胞、細菌細胞、または原生動物細胞への投与のためのものであり得る。
本開示の核酸ベクターは、例えば、DNAプラスミド、裸の核酸、裸のファージDNA、ミニサークルDNA、および線状プラスミド(例えば、US2009/0263900において開示されている)、ならびにリポソームまたはポロキサマーなどの送達ビヒクルと複合体化した核酸を含む。環状DNA発現ベクターまたはミニサークルベクターは、WO2002/083889、WO2014/170,238、WO2004/099420、WO20 102/026099、米国特許第6,143,530号、同第5,622,866号、同第7,622,252号、同第8,460,924号、同第6,277,608号、米国特許出願公開第2003/0032092号、同第2004/0214329号において開示されており、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書で開示される方法および組成物において好適な核酸ベクターは、線状共有結合閉鎖DNAベクター(例えば、Nafissi and Slavcev "Construction and characterization of anin-vivo linear covalently closed DNA vector production system." Microbialcell factories 11.1 (2012): 154に記載されている)、ならびに線状共有結合閉鎖(UCC)ミニプラスミド(例えば、Slavcev,Sum, and Nafissi "Optimized production of a safe and efficient genetherapeutic vaccine versus HIV via a linear covalently closed DNAminivector." BMC Infectious Diseases 14. S2 (2014): P74により記載れている)、DNAミニストリング(例えば、米国特許第9,290,778号;Nafiseh,et al. "DNA ministrings: highly safe and effective gene deliveryvectors." Molecular Therapy - Nucleic Acids 3.6 (2014): el65;Wong,Shirley, et al. "Production of double-stranded DNA ministrings."Journal of visualized experiments: JoVE 108 (2016)に記載されている)、またはceDNAベクター(例えば、UiU, et al, (2013) Production and Characterization of Novel RecombinantAdeno-Associated Virus Replicative-Form Genomes: A Eukaryotic Source of DNA forGene Transfer. PLoS ONE 8(8): e69879)を含む。
核酸ベクターは、例えば、最小化ベクター、プラスミド(抗生物質を含まないプラスミドを含む)、ミニプラスミド、ミニサークル、ミニベクター、例えば、Hardee, Cinnamon L., et al. "Advances in non-viral DNA vectorsfor gene therapy." Genes 8.2 (2017): 65に記載されているものも含む。環状共有結合閉鎖ベクター(CCCベクター)の例としては、ミニサークル、ミニベクターおよびミニノットが挙げられる。線状共有結合閉鎖(LCC)ベクターの例としては、MIDGE、MiLV、ミニストリングが挙げられる。ミニイントロンプラスミドも使用することができる。これらは、Hardee,Cinnamon L., et al. "Advances in non-viral DNA vectors for genetherapy." Genes 8.2 (2017): 65の表2に記載されている。
核酸ベクターは、例えば、総説論文Gill, et al,"Progress and prospects: the design and production of plasmidvectors." Gene therapy 16.2 (2009): 165-171、およびYin, Hao, et al."Non-viral vectors for gene-based therapy." Nature Reviews Genetics15.8 (2014): 541- 555に記載されているようなプラスミドDNAベクター(pDNA発現ベクター)をさらに含む。
標的ゲノムのGSH遺伝子座への組込みのための核酸ベクター
ある特定の態様では、目的の標的ゲノムのGSH遺伝子座への組込みに使用される、本明細書に記載される核酸ベクター(例えば、GSHの少なくとも一部分を含む核酸ベクター)が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、核酸ベクター(例えば、GSHの少なくとも一部分を含む核酸ベクター)は、標的ゲノムのGSH遺伝子座への組込みのための追加の配列または改変(例えば、GSH配列と相同の配列のある特定の配向)をさらに含む。標的ゲノムへの組込みは、相同組換えまたは非相同末端結合(NHEJ)などの、細胞プロセスにより駆動され得る。組込みは、外因的に導入されたヌクレアーゼにより開始および/または助長されることもある。
好ましい実施形態では、核酸ベクターは、少なくとも1つの非GSH核酸を含む。一部の実施形態では、非GSH核酸は、標的ゲノムのGSH遺伝子座に組み込まれる運命にある。
一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸(順配向または逆配向のどちらか)は、GSH 5’相同性アームおよび/またはGSH 3’相同性アームと隣接しており、相同性アームは、標的GSH核酸と少なくとも、約または最大で30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である核酸配列を含む。
一部の実施形態では、GSH相同性アームは、長さ10~5000塩基対の間、50~3000塩基対の間、100~1500塩基対の間であるか、または10~10,000塩基対間の任意の整数である。一部の実施形態では、GSH相同性アームは、長さ100~1500塩基対の間である。一部の実施形態では、GSH相同性アームは、長さ少なくとも30塩基対である。好ましい実施形態では、GSH相同性アームは、細胞のゲノム内のGSH遺伝子座への相同性依存型組込みを媒介するのに十分な長さである。
一部の実施形態では、GSH相同性アームと隣接している少なくとも1つの非GSH核酸は、GSHにおける順配向での組込みのための配向にある。一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、GSHにおける逆配向での組込みのための配向にある。
一部の実施形態では、核酸は、制限クローニング部位を含む。一部の実施形態では、制限クローニング部位は、標的ゲノムのGSH遺伝子座に組み込まれる運命にある少なくとも1つの非GSH核酸のクローニングを助長するために、GSH-5’相同性アームおよび/または3’GSH相同性アームと隣接している。
したがって、一部の実施形態では、核酸ベクター組成物は、(a)GSH 5’相同性アーム、(b)制限クローニング部位を含む核酸配列、および(c)GSH 3’相同性アームを含み、5’相同性アームおよび3’相同性アームは、本明細書で開示される方法に従って同定されるGSH遺伝子座に位置する標的部位に結合し、5’および3’相同性アームは、ゲノムセーフ内に位置する遺伝子座への相同組換えによる(相同性アーム間に位置する核酸の)挿入を可能にする。一部の実施形態では、そのような核酸ベクターは、標的ゲノムのGSH遺伝子座に組み込まれる運命にある少なくとも1つの非GSH核酸をさらに含む。
5’および3’相同性アームは、宿主細胞のゲノム内のGSH標的配列と相同である任意の配列であり得る。一部の実施形態では、5’および3’相同性アームは、本明細書に記載されるGSHの部分と相同であり得る。さらに、5’および3’相同性アームは、非コードまたはコードヌクレオチド配列であり得る。
一部の実施形態では、5’および/または3’相同性アームは、染色体上の組込みまたはDNA切断部位の直ぐ上流および/または下流の配列と相同であり得る。あるいは、5’および/または3’相同性アームは、組込みまたはDNA切断部位から遠く離れている、例えば、組込みもしくはDNA切断部位から少なくとも、約または最大で1、2、5、10、15、20、25、30、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1025、1050、1075、1100、1125、1150、1175、1200、1225、1250、1275、1300、1325、1350、1375、1400、1425、1450、1475、1500、1525、1550、1575、1600、1625、1650、1675、1700、1725、1750、1775、1800、1825、1850、1875、1900、1925、1950、1975、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500、4600、4700、4800、4900、5000、もしくはそれより多い塩基対離れている、またはDNA切断部位(例えば、外因的に導入されたヌクレアーゼにより誘導されたDNA切断(DNA break)であり得る)と部分的にもしくは完全にオーバーラップしている、配列と相同であり得る。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列の3’相同性アームは、ウイルスベクターのITRの近位にある。
一部の実施形態では、核酸は、相同組換えにより標的ゲノムに組み込まれ、続いて、外因的に導入されたヌクレアーゼによりDNA切断形成が誘導される。一部の実施形態では、ヌクレアーゼは、TALEN、ZFN、メガヌクレアーゼ、メガTAL、またはCRISPRエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼまたはそのバリアント)である。一部の実施形態では、CRISPRエンドヌクレアーゼは、ガイドRNAとの複合体で存在する。
したがって、一部の実施形態では、本開示の核酸ベクターは、ヌクレアーゼ(例えば、Cas9またはそのバリアント、ZFN、TALEN)および/またはガイドRNAをコードする核酸をさらに含み、ヌクレアーゼまたはヌクレアーゼ/gRNA複合体は、GSHにおいてDNA切断を生じさせ、このDNA切断はドナー核酸を使用して修復され、それによって、GSHに少なくとも1つの非GSH核酸が組み込まれる。他の実施形態では、ヌクレアーゼおよび/またはガイドRNAをコードする核酸は、1つまたは複数の無関係の核酸ベクターで提供される。
5’相同性アームと3’相同性アームの間に位置する核酸の組込みのために、5’および/または3’相同性アームは、GSHへの標的化に十分な長さであり、かつ相同組換えによるゲノムへの組込みを可能にする(例えば、ガイドする)べきである。正確な位置での組込みの尤度を上昇させ、相同組換えの確率を向上させるために、5’および/または3’相同性アームは、十分な数のヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態では、5’および/または3’相同性アームは、少なくとも10塩基対、しかし最大で5,000塩基対、少なくとも50塩基対、しかし最大で5,000塩基対、少なくとも100塩基対、しかし最大で5,000塩基対、少なくとも200塩基対、しかし最大で5,000塩基対、少なくとも250塩基対、しかし最大で5,000塩基対、または少なくとも300塩基対、しかし最大で5,000塩基対を含み得る。一部の実施形態では、5’および/または3’相同性アームは、約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、または500塩基対を含む。相同性アームの長さおよび組換え頻度に関する詳細な情報は、当技術分野で公知であり、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるZhang et al. "Efficient precise knock in with a double cut HDRdonor after CRISPR/Cas9-mediated double-stranded DNA cleavage." Genomebiology 18.1 (2017): 35を参照されたい。
本開示の核酸ベクターを、当技術分野において公知の任意の方法、例えば、化学的方法、電気穿孔、核酸ベクターを含む細胞との融合、形質導入などにより、標的細胞にそのゲノムへの組込みのために導入することができる。一部の実施形態では、本開示の核酸ベクターは、形質導入時に標的細胞のゲノムに組み込まれる。
非GSH核酸
本開示のベクター(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター)は、少なくとも1つの非GSH核酸を含み得る。非GSH核酸は、本明細書で同定されるGSHの配列を含まない任意の核酸、例えば、GSHとは異種である配列を有する核酸、例えば、GSH遺伝子座に元々存在しない核酸配列、例えば導入遺伝子を指し得る。非GSH核酸は、複製に必要なおよび/またはベクターを維持するために必要な配列、例えば、複製基点、選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子、例えば、組込み成功についての選択またはスクリーニングに役立つマーカー)などを含み得る。好ましい実施形態では、非GSH核酸は、標的ゲノムに組み込まれる運命にある核酸配列を含む。好ましい実施形態では、そのような非GSH核酸は、治療または研究目的にかなう配列、例えば、有害な内在性遺伝子を下方制御するもの、欠損遺伝子を上方制御するものなどを含み得る。
ある特定の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、プロモーターに作動可能に連結されていない。一部の実施形態では、非GSH核酸は、発現が意図されたものではない配列を含み得る。他の実施形態では、非GSH核酸は、発現が意図されたものである配列を含み得、発現は、組込み部位の付近の内在性プロモーターにより駆動され得る。近隣のプロモーターの使用が、治療用遺伝子の発現に使用されている(例えば、遺伝子発現がアルブミンプロモーターにより助長される、アルブミン遺伝子座への目的の遺伝子のLogicBio Therapeuticの組込みを参照されたい)。
ある特定の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、プロモーターに作動可能に連結されている。一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、プロモーターに作動可能に連結されており、プロモーターは、(a)それが作動可能に連結されている核酸とは異種のプロモーター;(b)核酸の組織特異的発現を助長するプロモーター;(c)核酸の構成的発現を助長するプロモーター;(d)誘導性プロモーター;(e)動物DNAウイルスの最初期プロモーター;(f)昆虫ウイルスの最初期プロモーター;および(g)昆虫細胞プロモーターから選択される。
本明細書中で説明されるように、一部の実施形態では、誘導性プロモーターは、小分子、代謝物、オリゴヌクレオチド、リボスイッチ、ペプチド、ペプチドミメティック、ホルモン、ホルモンアナログ、および光から選択される作用因子によりモジュレートされる。一部の実施形態では、作用因子は、テトラサイクリン、キュメート(cumate)、タモキシフェン、エストロゲン、およびアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、ラパマイシン、FKCsA、青色光、アブシジン酸(ABA)、およびリボスイッチから選択される。
一部の実施形態では、プロモーターは、造血幹細胞、造血CD34+細胞、および表皮幹細胞、上皮幹細胞、神経系幹細胞、肺前駆細胞、筋肉サテライト細胞、腸K細胞、ニューロン細胞、気道上皮細胞、または肝臓前駆細胞における組織特異的発現を助長する。
一部の実施形態では、プロモーターは、CMVプロモーター、β-グロビンプロモーター、CAGプロモーター、AHSPプロモーター、MNDプロモーター、ウィスコット・アルドリッチプロモーター、PKLRプロモーター、多角体(polh)プロモーター、および最初期1遺伝子(IE-1)プロモーターから選択される。
一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、標的細胞の内在性遺伝子の発現を増加または回復させる。
他の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、標的細胞の内在性遺伝子の発現を減少または消失させる。
一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、追加の制御エレメントをさらに含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、(a)転写制御エレメント(例えば、エンハンサー、転写終結配列、非翻訳領域(5’または3’UTR)、近位プロモーターエレメント、遺伝子座調節領域(例えば、β-グロビンLCR、またはβ-グロビンLCRのDNase高感受性部位(HS))、ポリアデニル化シグナル配列)、および/または(b)翻訳制御エレメント(例えば、コザック配列、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後制御エレメント)を含む。
一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、下で説明されるようなコーディングRNAまたは非コーディングRNAをコードし得る。
少なくとも1つの非GSH核酸を細胞のGSH遺伝子座に挿入する方法であって、本明細書に記載される核酸ベクターのいずれか1つ、本明細書に記載されるウイルスベクターのいずれか1つ、または本明細書に記載される医薬組成物のいずれか1つを細胞に導入するステップを含み、そうすることで、ゲノム内のGSH遺伝子座と非GSH核酸に隣接するGSH 5’相同性アームおよびGSH 3’相同性アームの相同組換えによって非GSH核酸がGSH遺伝子座に組み込まれる、方法が、本明細書においてさらに提供される。一部の実施形態では、非GSH核酸は、順配向でGSHに組み込まれる。他の実施形態では、非GSH核酸は、逆配向でGSHに組み込まれる。
非コーディングRNAおよびコーディングRNA
ある特定の態様では、少なくとも1つの非GSH核酸が本明細書において提供され、非GSH核酸は、コーディングRNAをコードする配列を含む。
一部の実施形態では、コーディングRNAをコードする配列は、標的細胞における発現のためにコドン最適化されている。一部の実施形態では、コーディングRNAをコードする少なくとも1つの非GSH核酸は、膜局在または分泌ポリペプチドの産生を可能にする、シグナルペプチドをコードする配列をさらに含む。
一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、(a)タンパク質またはその断片、好ましくは、ヒトタンパク質またはその断片;
(b)治療用タンパク質もしくはその断片、抗原結合性タンパク質、またはペプチド;(c)自殺遺伝子、必要に応じて、単純ヘルペスウイルス-1チミジンキナーゼ(HSV-TK);(d)ウイルスタンパク質またはその断片;(e)ヌクレアーゼ、必要に応じて、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、メガTAL、またはCRISPRエンドヌクレアーゼ、(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼまたはそのバリアント);(f)マーカー、例えば、ルシフェラーゼまたはGFP;および/あるいは(g)薬物耐性タンパク質、例えば、抗生物質耐性遺伝子、例えばネオマイシン耐性をコードする配列を含む。
一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、ウイルスタンパク質またはその断片をコードする配列を含む。一部の実施形態では、ウイルスタンパク質またはその断片は、構造タンパク質(例えば、VP1、VP2、VP3)または非構造タンパク質(例えば、Repタンパク質)を含む。そのような非GSH核酸は、組換えウイルスタンパク質を産生するための(例えば、ワクチン産生のための)細胞の操作、および/または組換えウイルス粒子(例えば、AAVなど)を産生するための細胞の操作に有用であり得る。一部の実施形態では、ウイルスタンパク質またはその断片は、(a)パルボウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、VP1、VP2、VP3、NS1、もしくはRep;(b)レトロウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、エンベロープタンパク質、gag、pol、もしくはVSV-G;(c)アデノウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、E1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、もしくは構造タンパク質(例えば、A、B、C);および/または(d)単純ヘルペスウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、ICP27、ICP4、もしくはpacを含む。
一部の実施形態では、ウイルスタンパク質をコードする少なくとも1つの非GSH核酸は、ウイルスの表面タンパク質またはその断片をコードする。一部の実施形態では、(a)表面タンパク質もしくはその断片は、宿主において免疫応答を惹起する免疫原性表面タンパク質である、(b)表面タンパク質もしくはその断片は、シグナルペプチドをさらに含む、(c)表面タンパク質もしくはその断片をコードする遺伝子は、誘導性プロモーターに作動可能に連結されている、および/または(d)表面タンパク質もしくはその断片をコードする核酸は、自殺遺伝子をさらに含む。一部の実施形態では、表面タンパク質は、コロナウイルス(例えば、MERS、SARS)、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、ヒトパピローマウイルス、デングウイルス血清型1、デングウイルス血清型2、デングウイルス血清型3、デングウイルス血清型4、ジカウイルス(zika, virus)、ウエストナイルウイルス、黄熱病ウイルス、チクングニアウイルス、マヤロウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、またはニパウイルスのものである。一部の実施形態では、表面タンパク質は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質である。
一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、タンパク質またはその断片をコードする配列を含む。一部の実施形態では、タンパク質またはその断片をコードする配列を含む少なくとも1つの非GSH核酸は、ヘモグロビン遺伝子(HBA1、HBA2、HBB、HBG1、HBG2、HBD、HBE1、および/またはHBZ)、アルファ-ヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)、凝固第VIII因子、凝固第IX因子、フォン・ヴィレブランド因子、ジストロフィンまたは短縮型ジストロフィン、マイクロジストロフィン、ユートロフィンまたは短縮型ユートロフィン、マイクロユートロフィン、ウシェリン(USH2A)、GBA1、プレプロインスリン、インスリン、GIP、GLP-1、CEP290、ATPB1、ATPB11、ABCB4、CPS1、ATP7B、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、KIND1、INS、F8またはその断片(例えば、Bドメイン欠失ポリペプチドをコードする断片(例えば、VIII SQ、p-VIII))、IRGM、NOD2、ATG2B、ATG9、ATG5、ATG7、ATG16L1、BECN1、EI24/PIG8、TECPR2、WDR45/WIP14、CHMP2B、CHMP4B、Dynein、EPG5、HspB8、LAMP2、LC3b UVRAG、VCP/p97、ZFYVE26、PARK2/Parkin、PARK6/PINK1、SQSTM1/p62、SMURF、AMPK、ULK1、RPE65、CHM、RPGR、PDE6B、CNGA3、GUCY2D、RS1、ABCA4、MYO7A、HFE、ヘプシジン、可溶性形態(例えば、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体またはIL-1β受容体の)をコードする遺伝子、および嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)から選択される。
一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、抗原結合性タンパク質をコードする配列を含む。一部の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、抗体またはその抗原結合性断片であり、必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、抗体、Fv、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、半抗体-scFv、タンデムscFv、Fab/scFv-Fc、タンデムFab’、一本鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(TandAb)、Fab/scFv-Fc、scFv-Fc、ヘテロ二量体IgG(CrossMab)、DART、およびダイアボディから選択される。
一部の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、TNFα、CD20、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-6、BLyS、APRIL、IFN-ガンマなど)、Her2、RANKL、IL-6R、GM-CSF、CCR5、または病原体(例えば、細菌毒素、ウイルスカプシドタンパク質など)に特異的に結合する。
一部の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ、アナキンラ、リツキシマブ、アバタセプト、トシリズマブ、ナタリズマブ、カナキヌマブ、アタシセプト、ベリムマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、フォントリズマブ、トラスツズマブ、デノスマブ、サリルマブ、レンジルマブ、ギムシルマブ、シルツキシマブ、レロンリマブ、およびそれらの抗原結合性断片から選択される。
したがって、一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、受容体、毒素、ホルモン、酵素、マーカー遺伝子(上記参照)によりコードされるマーカータンパク質、または細胞表面タンパク質、または治療用タンパク質、ペプチドもしくは抗体もしくはその断片をコードする。一部の実施形態では、本明細書で開示されるベクター組成物における使用のための目的の核酸は、細胞における発現が所望される任意のポリペプチドをコードし、このポリペプチドには、これらに限定されないが、抗原結合性タンパク質(例えば、抗体)、抗原、酵素、受容体(細胞表面または核)、ホルモン、リンホカイン、サイトカイン、マーカーポリペプチド、増殖因子、および前述のもののいずれかの機能的断片が含まれる。コード配列は、例えば、cDNAであり得る。
コーディングRNAは、タグが目的のタンパク質に融合して検出および/または精製を助長するように、タグ、例えばエピトープタグをコードする配列をさらに含み得る。例示的なタグとしては、例えば、FLAG、His、myc、Tap、HAまたは任意の検出可能なアミノ酸配列の1つまたは複数のコピーが挙げられる。
分泌が意図されるタンパク質が、シグナルペプチドを含むこと、およびそのようなタンパク質をコードする核酸が、シグナルペプチドをコードする核酸配列を含むことは、当業者には理解される。
ある特定の実施形態では、本明細書で開示されるベクター組成物における使用のための少なくとも1つの非GSH核酸は、標的化された組込みを受けた細胞の選択を可能にするマーカー遺伝子(本明細書に記載される)をコードする核酸配列、および追加の機能性をコードする連結された配列を含む。
一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、例えば、哺乳動物におけるポリペプチド欠損またはポリペプチド過剰などの、哺乳動物における1つまたは複数の遺伝的欠損または機能不全を予防または処置する方法、特に、細胞および組織内のそのようなポリペプチドの欠損に関連付けられる障害の1つまたは複数を呈するヒトにおける欠損を予防する、処置する、またはその重症度もしくは程度を低下させるための方法、における使用のための核酸を含む。方法は、本明細書に記載の核酸ベクター、ウイルスベクター、または前記核酸ベクターもしくはウイルスベクターを含む細胞の中の、1つまたは複数の治療用ペプチド、ポリペプチド、siRNA、マイクロRNA、アンチセンスヌクレオチドなどをコードする核酸(例えば、本開示により記載の核酸)の、好ましくは、薬学的に許容される組成物での、欠損または障害を、そのような障害を患っている対象において予防または処置するのに十分な量および期間での、対象への投与を含む。
したがって、一部の実施形態では、本明細書で開示されるベクター組成物における使用のための少なくとも1つの非GSH核酸は、哺乳動物対象における疾患の処置または予防に有用である1つまたは複数のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードし得る。
本明細書で開示される組成物および方法における使用のための例示的な非GSH核酸としては、BDNF、CNTF、CSF、EGF、FGF、G-SCF、GM-CSF、ゴナドトロピン、IFN、IFG-1、M-CSF、NGF、PDGF、PEDF、TGF、VEGF、TGF-B2、TNF、プロラクチン、ソマトトロピン、XIAP1、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-10(187A)、ウイルスIL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、VEGF、FGF、SDF-1、コネキシン40、コネキシン43、SCN4a、HIFia、SERCa2a、ADCY1、およびADCY6が挙げられるが、これらに限定されない。
一部の実施形態では、核酸は、哺乳動物βグロビン遺伝子(例えば、HBA1、HBA2、HBB、HBG1、HBG2、HBD、HBE1、および/またはHBZ)、アルファ-ヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)、B細胞リンパ腫/白血病11A(BCL11A)遺伝子、クルッペル様因子1(KLF1)遺伝子、CCR5遺伝子、CXCR4遺伝子、PPP1R12C(AAVS1)遺伝子、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子、アルブミン遺伝子、第VIII因子遺伝子、第IX因子遺伝子、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)遺伝子、ハンチンチン(HTT)遺伝子、ロドプシン(RHO)遺伝子、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子、F8もしくはその断片(例えば、Bドメイン欠失ポリペプチドをコードする断片(例えば、VIII SQ、p-VIII))、サーファクタントタンパク質B遺伝子(SFTPB)、T細胞受容体アルファ(TRAC)遺伝子、T細胞受容体ベータ(TRBC)遺伝子、プログラム細胞死1(PD1)遺伝子、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)遺伝子、ヒト白血球抗原(HLA)A遺伝子、HLA B遺伝子、HLA C遺伝子、HLA-DPA遺伝子、HLA-DQ遺伝子、HLA-DRA遺伝子、LMP7遺伝子、抗原ペプチド輸送体(TAP)1遺伝子、TAP2遺伝子、タパシン遺伝子(TAPBP)、クラスII主要組織適合遺伝子複合体トランス活性化因子(CUT A)遺伝子、ジストロフィン遺伝子(DMD)、グルココルチコイド受容体遺伝子(GR)、IL2RG遺伝子、RFX5遺伝子、FAD2遺伝子、FAD3遺伝子、ZP15遺伝子、KASII遺伝子、MDH遺伝子、および/またはEPSPS遺伝子からなる群から選択される、コード配列またはその断片を含み得る。
一部の実施形態では、非GSH核酸を使用して、対象における発現が低減されている、サイレンシングされている、または別様に機能不全である遺伝子(例えば、がんを有する対象におけるサイレンシングされた腫瘍サプレッサー)の発現を回復させることができる。同様に、一部の実施形態では、非GSH核酸を使用して、対象において異常に発現される遺伝子(例えば、がんを有する対象において発現される癌遺伝子)の発現をノックダウンすることもできる。
一部の実施形態では、機能不全遺伝子は、がんを有する対象においてサイレンシングされた腫瘍サプレッサーである。一部の実施形態では、機能不全遺伝子は、がんを有する対象において異常に発現される癌遺伝子である。がんに関連する例示的な遺伝子(癌遺伝子および腫瘍サプレッサー)としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:AARS、ABCB 1、ABCC4、ABI2、ABL1、ABL2、ACK1、ACP2、ACY1、ADSL、AK1、AKR1C2、AKT1、ALB、ANPEP、ANXAS、ANXA7、AP2M1、APC、ARHGAPS、ARHGEFS、ARID4A、ASNS、ATF4、ATM、ATPSB、ATPSO、AXL、BARD1、BAX、BCL2、BHLHB2、BLMH、BRAF、BRCA1、BRCA2、BTK、CANX、CAP1、CAPN1、CAPNS1、CAV1、CBFB、CBLB、CCL2、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CCTS、CCYR61、CD24、CD44、CD59、CDC20、CDC25、CDC25A、CDC25B、CDC2LS、CDK10、CDK4、CDK5、CDK9、CDKL1、CDKN1A、CDKN1B、CDKN1C、CDKN2A、CDKN2B、CDKN2D、CEBPG、CENPC1、CGRRF1、CHAF1A、CIB1、CKMT1、CLK1、CLK2、CLK3、CLNS1A、CLTC、COL1A1、COL6A3、COX6C、COX7A2、CRAT、CRHR1、CSF1R、CSK、CSNK1G2、CTNNA1、CTNNB1、CTPS、CTSC、CTSD、CUL1、CYR61、DCC、DCN、DDX10、DEK、DHCR7、DHRS2、DHX8、DLG3、DVL1、DVL3、E2F1、E2F3、E2F5、EGFR、EGR1、EIF5、EPHA2、ERBB2、ERBB3、ERBB4、ERCC3、ETV1、ETV3、ETV6、F2R、FASTK、FBN1、FBN2、FES、FGFR1、FGR、FKBP8、FN1、FOS、FOSL1、FOSL2、FOXG1A、FOXO1A、FRAP1、FRZB、FTL、FZD2、FZDS、FZD9、G22P1、GAS6、GCNSL2、GDF1S、GNA13、GNAS、GNB2、GNB2L1、GPR39、GRB2、GSK3A、GSPT1、GTF21、HDAC1、HDGF、HMMR、HPRT1、HRB、HSPA4、HSPAS、HSPA8、HSPB1、HSPH1、HYAL1、HYOU1、ICAM1、ID1、ID2、IDUA、IER3、IFITM1、IGF1R、IGF2R、IGFBP3、IGFBP4、IGFBPS、IL1B、ILK、ING1、IRF3、ITGA3、ITGA6、ITGB4、JAK1、JARID1A、JUN、JUNB、JUND、K-ALPHA-1、KIT、KITLG、KLK10、KPNA2、KRAS2、KRT18、KRT2A、KRT9、LAMB1、LAMP2、LCK、LCN2、LEP、LITAF、LRPAP1、LTF、LYN、LZTR1、MADH1、MAP2K2、MAP3K8、MAPK12、MAPK13、MAPKAPK3、MAPRE1、MARS、MAS1、MCC、MCM2、MCM4、MDM2、MDM4、MET、MGST1、MICB、MLLT3、MME、MMP1、MMP14、MMP17、MMP2、MNDA、MSH2、MSH6、MT3、MYB、MYBL1、MYBL2、MYC、MYCLI、MYCN、MYD88、MYL9、MYLK、NEO1、NF1、NF2、NFKB I、NFKB2、NFSF7、NID、NINJ1、NMBR、NME1、NME2、NME3、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH4、NPM1、NQO1、NR1D1、NR2F1、NR2F6、NRAS、NRG1、NSEP1、OSM、PA2G4、PABPC1、PCNA、PCTK1、PCTK2、PCTK3、PDGFA、PDGFB、PDGFRA、PDPK1、PEA15、PFDN4、PFDN5、PGAM1、PHB、PIK3CA、PIK3CB、PIK3CG、PIM1、PKM2、PKMYT1、PLK2、PPARD、PPARG、PPIH、PPP1CA、PPP2RSA、PRDX2、PRDX4、PRKAR1A、PRKCBP1、PRNP、PRSS15、PSMA1、PTCH、PTEN、PTGS1、PTMA、PTN、PTPRN、RABSA、RAC1、RADSO、RAF1、RALBP1、RAP1A、RARA、RARB、RASGRF1、RB1、RBBP4、RBL2、REA、REL、RELA、RELB、RET、RFC2、RGS19、RHOA、RHOB、RHOC、RHOD、RIPK1、RPN2、RPS6KB1、RRM1、SARS、SELENBP1、SEMA3C、SEMA4D、SEPP1、SERPINH1、SFN、SFPQ、SFRS7、SHB、SHH、SIAH2、SIVA、SIVA TP53、SKI、SKIL、SLC16A1、SLC1A4、SLC20A1、SMO、SMPD1、SNAI2、SND1、SNRPB2、SOCS1、SOCS3、SOD1、SORT1、SPINT2、SPRY2、SRC、SRPX、STAT1、STAT2、STAT3、STAT5B、STC1、TAF1、TBL3、TBRG4、TCF1、TCF7L2、TFAP2C、TFDP1、TFDP2、TGFA、TGFB1、TGFBR1、TGFBR2、TGFBR3、THBS1、TIE、TIMP1、TIMP3、TJP1、TK1、TLE1、TNF、TNFRSF10A、TNFRSF10B、TNFRSF1A、TNFRSF1B、TNFRSF6、TNFSF7、TNK1、TOB1、TP53、TP53BP2、TP5313、TP73、TPBG、TPT1、TRADD、TRAM1、TRRAP、TSG101、TUFM、TXNRD1、TYR03、UBC、UBE2L6、UCHL1、USP7、VDAC1、VEGF、VHL、VIL2、WEE1、WNT1、WNT2、WNT2B、WNT3、WNTSA、WT1、XRCC 1、YES 1、YWHAB、YWHAZ、ZAP70、およびZNF9。
一部の実施形態では、機能不全遺伝子は、HBBである。一部の実施形態では、HBBは、β-グロビン産生を低減または消失させる少なくとも1つのナンセンス、フレームシフトまたはスプライシング変異を含む。一部の実施形態では、HBBは、HBBのプロモーター領域またはポリアデニル化シグナルの少なくとも1つの変異を含む。一部の実施形態では、HBB変異は、c.17A>T、c.-1360G、c.92+1G>A、c.92+6T>C、c.93-21G>A、c.1180T、c.316-106OG、c.25_26delAA、c.27_28insG、c.92+5G>C、c.1180T、c.135delC、c.315+1G>A、c.-78A>G、c.52A>T、c.59A>G、c.92+5G>C、c.l24_127delTTCT、c.316-1970T、c.-78A>G、c.52A>T、c.l24_127delTTCT、c.316-197C>T、C.-1380T、c.-79A>G、c.92+5G>C、c.75T>A、c.316-2A>G、およびc.316-2A>Cのうちの少なくとも1つである。
ある特定の実施形態では、鎌状赤血球症は、抗鎌状化活性を含む1つまたは複数の変異を含むHBBバリアントを導入する遺伝子治療(例えば、幹細胞遺伝子治療)によって改善される。一部の実施形態では、HBBバリアントは、二重変異体(βAS2;T87QおよびE22A)であり得る。他の実施形態では、HBBバリアントは、三重変異体β-グロビンバリアント(βAS3;T87Q、E22AおよびG16D)であり得る。β16におけるグリシンからアスパラギン酸への改変は、α鎖への結合についての鎌状グロビン(βS、HbS)に対する競合優位性をもたらす。β22におけるグルタミン酸からアラニンへの改変は、α20ヒスチジンとの軸方向の相互作用を部分的に増強する。これらの改変は、単一T87Q改変バリアントのものより優れたおよび胎児グロビンに匹敵する抗鎌状化特性を生じさせる結果となる。SCDマウスモデルにおいて、βAS3を担持するSINレンチウイルスを形質導入した骨髄幹細胞の移植は、赤血球生理機能およびSCD臨床症状を逆転させた。それに基づいて、このバリアントは、臨床試験(識別番号:NCT02247843)において試験中である、Cytotherapy (2018) 20(7): 899-910。
一部の実施形態では、機能不全遺伝子は、CFTRである。一部の実施形態では、CFTRは、ΔF508、R553X、R74W、R668C、S977F、L997F、K1060T、A1067T、R1070Q、R1066H、T3381、R334W、G85E、A46D、I336K、H1054D、M1V、E92K、V520F、H1085R、R560T、L927P、R560S、N1303K、M1101K、L1077P、R1066M、R1066C、L1065P、Y569D、A561E、A559T、S492F、L467P、R347P、S341P、I507del、G1061R、G542X、W1282X、および2184InsAから選択される変異を含む。
目的の核酸が、タンパク質またはポリペプチドをコードすることができること、および保存的アミノ酸置換を生じさせる結果となる変異を導入遺伝子に行って、タンパク質またはポリペプチドの、機能的に等価のバリアント、またはホモログをもたらし得ることは、当業者には理解されるであろう。一部の態様では、本開示は、導入遺伝子の保存的アミノ酸置換を生じさせる結果となる配列変更を包含する。一部の実施形態では、非GSH核酸は、ドミナントネガティブ変異を有する遺伝子をコードする。例えば、本明細書で定義される目的の核酸は、野生型タンパク質と同じエレメントと相互作用し、それによって野生型タンパク質の機能の一部の態様を遮断する、変異型タンパク質をコードする。
一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、誘導性プロモーターおよび/または組織特異的プロモーターに動作可能に連結されている自殺遺伝子をさらに含み得る。したがって、そのようなベクターを使用して、シグナルによって細胞を死滅させる、または特定のおよび個別のシグナルによってアポトーシスもしくはプログラム細胞死を受けるように細胞を誘導することができる。遺伝子標的化または遺伝子編集系が予想どおりに機能しない場合には、自殺遺伝子を含むそのようなベクターを非常口として使用することができる。あるいは、自殺遺伝子を使用して、がん細胞を死滅させる、または例えば化学療法に対する、がん細胞の感受性を高めることができる。例示的な自殺遺伝子は、当技術分野において周知であり、チミジンキナーゼ(TK、ウイルスの)、シトシンデアミナーゼ(CD、細菌のおよび酵母の)、カルボキシペプチダーゼG2(CPG2、細菌の)およびニトロレダクターゼ(NTR、細菌の)を含む。一部の実施形態では、自殺遺伝子は、単純ヘルペスウイルス-1チミジンキナーゼ(HSV-TK)である。
細胞への目的の任意の配列の標的化された挿入の方法が、さらに本明細書に記載される。一部の実施形態では、目的の核酸は、発現が幹細胞の特定の分化系列に関連していることが公知である遺伝子または遺伝子の群をコードする核酸である。細胞の運命に関与する遺伝子または幹細胞分化の他のマーカーを含む配列を、挿入することもできる。例えば、そのような遺伝子を含有する、プロモーター不含構築物を、特定領域(遺伝子座)に挿入することができ、その結果、その遺伝子座における内在性プロモーターが遺伝子産物の発現を駆動する。
同様に、ある特定の実施形態では、本明細書で同定されるGSH遺伝子座におけるゲノム改変(例えば、導入遺伝子組込み)は、そのセーフハーバー遺伝子座に見られるプロモーターを利用すること、または挿入前に目的の核酸に融合されている本明細書に記載の外来性プロモーターもしくは調節エレメントによる導入遺伝子の発現制御を可能にすること、どちらかをすることができる目的の核酸の組込みを可能にする。
ある特定の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、非コーディングRNAをコードする配列を含む。一部の実施形態では、非コーディングRNAは、アンチセンスポリヌクレオチド、lncRNA、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA、snoRNA、snRNA、scaRNA、および/またはガイドRNAを含む。一部の実施形態では、非コーディングRNAは、DMT-1、フェロポーチン、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、IL-1β受容体、変異タンパク質(例えば、変異HFE、CFTR)をコードする遺伝子から選択される遺伝子を標的とする。
がん(例えば、癌遺伝子)に関連する遺伝子産物の発現をモジュレートすることができる低分子核酸を使用して、がんを予防または処置することができる。一部の実施形態では、非GSH核酸は、がんに関連する遺伝子産物(またはがんに関連する遺伝子の発現を阻害する機能的RNA)を使用のために、例えば、処置のために、例えば、がんを詳しく調べるためのまたはがんを予防もしくは処置する治療薬を同定するための、研究を目的として、コードする。
非GSH核酸は、タンパク質またはポリペプチドの、機能的に等価のバリアント、またはホモログをもたらし得る、保存的アミノ酸置換を生じさせる結果となる1つまたは複数の変異を含むことができることも、当業者には理解される。さらに、本開示では、ドミナントネガティブ変異を有する本明細書に記載されるGSH遺伝子座に組み込まれた目的の核酸が企図される。例えば、目的の核酸は、野生型タンパク質と同じエレメントと相互作用し、それによって野生型タンパク質の機能の一部の態様を遮断する、変異型タンパク質をコードし得る。
一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、RNA干渉を媒介する非コーディングRNAを含む。例えば、非コーディングRNAは、低分子干渉RNAを含む。低分子干渉RNA(siRNA)は、標的核酸の発現を、例えばRNAiにより、阻害するように機能する作用因子である。siRNAは、化学的に合成されることもあり、in vitro転写により作り出されることもあり、または宿主細胞内で産生されることもある。一部の実施形態では、siRNAは、長さ約15~約40ヌクレオチド、好ましくは約15~約28ヌクレオチド、より好ましくは長さ約19~約25ヌクレオチド、より好ましくは、長さ約19、20、21または22ヌクレオチドの二本鎖RNA(dsRNA)分子であり、各鎖上に約0、1、2、3、4または5ヌクレオチドの長さを有する3’および/または5’オーバーハングを含有し得る。オーバーハングの長さは、2本の鎖の間で無関係であり、すなわち、1つの鎖上のオーバーハングの長さは、第2の鎖上のオーバーハングの長さに依存しない。好ましくは、siRNAは、標的メッセンジャーRNA(mRNA)の分解または特異的な転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)によってRNA干渉を促進することができる。
他の実施形態では、siRNAは、低分子ヘアピン(ステムループとも呼ばれる)RNA(shRNA)である。一部の実施形態では、これらのshRNAは、短い(例えば、19~25ヌクレオチド)アンチセンス鎖、続いて、5~9ヌクレオチドのループ、および類似のセンス鎖で構成される。あるいは、センス鎖がヌクレオチドループ構造より前にあることもあり、アンチセンス鎖が後に続くこともある。これらのshRNAは、プラスミド、レトロウイルスおよびレンチウイルスに含有され、例えば、pol III U6プロモーターまたは別のプロモーターから、発現されることがある(例えば、参照により本明細書に組み込まれるStewart, et al. (2003) RNA Apr;9(4):493-501を参照されたい)。
一部の実施形態では、非コーディングRNAは、piRNAを含む。piwi結合RNA(piRNA)は、低分子非コーディングRNA分子の最も大きいクラスである。piRNAは、piwiタンパク質との相互作用によってRNA-タンパク質複合体を形成する。これらのpiRNA複合体は、生殖系列細胞におけるレトロトランスポゾンと他の遺伝子エレメントのエピジェネティックおよび転写後遺伝子サイレンシングの両方、特に、精子形成の際のものに関連付けられている。それらは、マイクロRNA(miRNA)とはサイズの点で明確に異なり(21~24ntではなく26~31nt)、配列保存を欠いており、複雑性が増している。しかし、他の低分子RNAと同様、piRNAは、遺伝子サイレンシング、特にトランスポゾンのサイレンシング、に関与すると考えられている。piRNAの大多数は、トランスポゾン配列に対してアンチセンスであり、これは、トランスポゾンがpiRNA標的であることを示唆する。哺乳動物では、トランスポゾンサイレンシングにおけるpiRNAの活性は、胚の発生中に最も重要なものであり、C.elegansとヒトの両方において、piRNAは、精子形成に不可欠であると思われる。piRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)の形成によってRNAサイレンシングに関与する。
一部の実施形態では、非コーディングRNAは、miRNAを含む。miRNAおよび他の低分子干渉核酸は、標的RNA転写物切断/分解、または標的メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳抑制によって、遺伝子発現を制御する。miRNAは、概して最終19~25非翻訳RNA産物として、自然に発現される。miRNAは、標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)との配列特異的相互作用によってそれらの活性を示す。これらの内因的に発現されるmiRNAは、ヘアピン前駆体を形成し、これらのヘアピン前駆体が、その後、miRNA二本鎖へ、さらに、「成熟」一本鎖miRNA分子へとプロセシングされる。この成熟miRNAは、例えば、標的mRNAの3’UTR領域における、標的部位を、成熟miRNAとの相補性に基づいて特定する、多タンパク質複合体であるmiRISCをガイドする。図13Aおよび図13Bは、miRNA遺伝子およびそれらのホモログの、または本明細書に記載される核酸によりコードされる低分子干渉核酸(例えば、miRNAスポンジ、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TuD RNA)の標的としての、非限定的リストを開示する。
miRNAは、それが標的とするmRNAの機能を阻害し、結果として、mRNAによりコードされるポリペプチドの発現を阻害する。したがって、miRNAの活性を(部分的にまたは完全に)遮断すること(例えば、miRNAをサイレンシングすること)は、発現が阻害されるポリペプチドの発現を有効に誘導するまたは回復させる(ポリペプチドを抑制解除する)ことができる。一部の実施形態では、miRNAのmRNA標的によりコードされるポリペプチドの抑制解除は、様々な方法のいずれか1つによって細胞におけるmiRNA活性を阻害することにより果たされる。例えば、miRNAの活性を遮断することは、miRNAに相補的または実質的に相補的である低分子干渉核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、miRNAスポンジ、TuD RNA)とのハイブリダイゼーションによって、miRNAのその標的mRNAとの相互作用を遮断することにより、果たすことができる。本明細書で使用される場合、miRNAに実質的に相補的である低分子干渉核酸は、miRNAとハイブリダイズすることおよびmiRNAの活性を遮断することができるものである。一部の実施形態では、miRNAに実質的に相補的である低分子干渉核酸は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18塩基を除いてすべてがmiRNAと相補的である低分子干渉核酸である。一部の実施形態では、miRNAに実質的に相補的である低分子干渉核酸は、少なくとも1塩基がmiRNAと相補的である低分子干渉核酸である。
遺伝子編集系
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法および組成物は、標的ゲノム内の本開示のGSHに核酸を組み込むために使用される。一部の実施形態では、組込みは、外因的に導入されたヌクレアーゼにより開始および/または助長され、ヌクレアーゼにより誘導されるDNA切断は、相同組換えのガイドとして相同性アームを使用して修復され、それにより前記相同性アームと隣接している核酸が標的ゲノムに挿入される。
一部の実施形態では、遺伝子編集系は、内在性遺伝子の発現を、ある特定の改変を遺伝子または制御エレメントに導入することによってノックダウンするために、GSHに導入される。一部の実施形態では、遺伝子編集系は、遺伝子の有害なコピーを除去するために内在性遺伝子のすべてまたは一部分をノックアウトまたは欠失させるために、GSHに導入され得る。一部の実施形態では、遺伝子発現のそのような負のモジュレーションが制御され、例えば、遺伝子編集系は、誘導性プロモーターまたは組織特異的プロモーター下にあり得、これらのプロモーターによって、例えば時間的調節を伴う、選択的な遺伝子の下方制御(例えば、遺伝子を分化のある特定の段階で欠失させることができる)、および/または遺伝子の組織特異的ノックダウンもしくはノックアウトが可能になる。
例えば、二本鎖切断(DSB)は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはTALエフェクタードメインヌクレアーゼ(TALEN)などの、部位特異的ヌクレアーゼにより作り出され得る。例えば、それらの開示が参照により本明細書に組み込まれる、Urnov et al. (2010) Nature 435(7042):646-51;米国特許第8,586,526号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,503,717号、同第6,689,558号、同第7,067,317号、同第7,262,054号を参照されたい。
別のヌクレアーゼ系は、CRISPR/Cas系として公知の細菌および古細菌に見られる、いわゆる獲得免疫系の使用を含む。CRISPR/Cas系は、細菌の40%および古細菌の90%に見られ、それらの系の複雑性の点で異なる。例えば、米国特許第8,697,359号を参照されたい。CRISPR遺伝子座(クラスター化され規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返し)は、外来DNAの短いセグメントが、短い反復回文構造配列の間に組み込まれている、生物のゲノム内の領域である。これらの遺伝子座が転写され、RNA転写物(「プレcrRNA」)がプロセシングされて短鎖CRISPR RNA(crRNA)になる。3つのタイプのCRISPR/Cas系があり、すべてが、これらのRNAと、「Cas」タンパク質(CRISPR関連)として公知のタンパク質とを含む。タイプIおよびIIIの両方は、プレcrRNAをプロセシングするCasエンドヌクレアーゼを有し、このプレcrRNAは、完全にプロセシングされてcrRNAになると、crRNAに相補的である核酸を切断することができる多Casタンパク質複合体をアセンブルする。
タイプII系では、crRNAは、プレcrRNA内の反復配列に相補的なトランス活性化RNA(tracrRNA)がCas9タンパク質またはそのバリアントの存在下で二本鎖特異的RNase IIIによるプロセシングを誘発する、異なる機序を使用して産生される。Cas9は、その際、成熟crRNAに相補的である標的DNAを切断することができるが、Cas9による切断は、crRNAと標的DNAの間の塩基対合、およびPAM配列(プロトスペーサー隣接モチーフ)と呼ばれるcrRNA内の短いモチーフの存在の両方に依存している(Qi et al (2013) Cell 152: 1173を参照されたい)。加えて、tracrRNAはまた、それがcrRNAとその3’末端で塩基対合し、この会合がCas9活性を誘発するので、存在しなければならない。
Cas9タンパク質は、少なくとも2つのヌクレアーゼドメインを有し、一方のヌクレアーゼドメインは、HNHエンドヌクレアーゼと同様であるが、他方は、Ruvエンドヌクレアーゼドメインに似ている。HNHタイプのドメインは、crRNAに相補的であるDNA鎖の切断を担当するが、Ruvドメインは、非相補鎖を切断すると思われる。Cas9のバリアント、例えば、オフターゲット活性を低下させるCas9ニッカーゼ変異体(例えば、Ran et al. (2014) Cell 154(6): 1380-1389を参照されたい)、nCas、Cas9-D10Aは、当技術分野で認知されている。
crRNA-tracrRNA複合体の必要を、crRNAとtracrRNAのアニーリングによって通常は形成されるヘアピンを含む操作された「シングルガイドRNA」(sgRNA)の使用により回避することができる(Jinek et al (2012) Science 337:816および Cong et al (2013)Sciencexpress/10.1126/science.1231143を参照されたい)。したがって、外因的に導入されCRISPRエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9またはそのバリアント)およびガイドRNA(例えば、sgRNAまたはgRNA)は、標的細胞のゲノム内の特定の遺伝子座におけるDNA切断を誘導することができる。標的化に好適なシングルガイドRNAまたはガイドRNA(sgRNAまたはgRNA)配列の非限定的な例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0056705号の表1に示されている。加えて、sgRNAまたはgRNAは、本明細書に記載されるGSH遺伝子座の配列を含み得る。
一部の実施形態では、遺伝子編集核酸配列は、配列特異的ヌクレアーゼ、1つもしくは複数のガイドRNA(gRNA)、CRISPR/Cas、リボ核タンパク質(RNP)またはこれらの任意の組合せからなる群から選択される分子をコードする。一部の実施形態では、配列特異的ヌクレアーゼは、TALヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、メガTAL、またはCRISPR/Cas系のRNAガイドエンドヌクレアーゼ(例えば、Casタンパク質、例えば、CAS1~9、Csy、Cse、Cpfl、Cmr、Csx、Csf、cpfl、nCAS、またはその他)を含む。これらの遺伝子編集系は、当業者に公知であり、例えば、それら全体が参照により組み込まれる国際特許出願番号PCT/US2013/038536および米国特許出願公開第2017-0191078-A9号に記載されているTALENSを参照されたい。CRISPR cas9系は、当技術分野において公知であり、2013年3月に出願された米国特許出願第13/842,859号、および米国特許第8,697,359号、同第8771,945号、同第8795,965号、同第8,865,406号、同第8,871,445号に記載されている。GSHは、不活性化されたヌクレアーゼ系、例えば、CRISPRiもしくはCRISPRa dCas系、nCas、またはCas13系にも有用である。
ガイドRNA(gRNA)
一般に、ガイド配列は、標的ポリヌクレオチド配列との、標的配列とハイブリダイズする、およびRNAにガイドされるエンドヌクレアーゼ複合体の選択されたゲノム標的配列への配列特異的標的化を指示するのに十分な、相補性を有する、任意のポリヌクレオチド配列である。一部の実施形態では、ガイドRNAは、標的配列に、および例えば、リボ核タンパク質(RNP)、例えばCRISPR/Cas複合体を形成することができるCRISPR関連タンパク質に、結合する。
一部の実施形態では、ガイドRNA(gRNA)配列は、gRNA配列をゲノム内の所望の部位に指向させる標的化配列を含み、ガイド配列の、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼとの会合を可能にするcrRNAおよび/またはtracrRNA配列に融合されている。一部の実施形態では、ガイド配列とその対応する標的配列との相補性度は、好適なアラインメントアルゴリズムを使用して最適にアラインされたとき、少なくとも、約または最大で20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、またはそれより高度である。最適なアラインメントは、配列をアラインするための任意の好適なアルゴリズム、例えば、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler変換に基づくアルゴリズム(例えば、Burrows-Wheelerアライナー)、ClustalW、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies、ELAND(Illumina、San Diego、Calif.)、SOAP、およびMaq、の使用によって決定することができる。
ガイド配列を選択して任意の標的配列を標的とすることができる。一部の実施形態では、標的配列は、細胞のゲノム内のまたは本明細書で開示されるGSH内の配列である。一部の実施形態では、ガイドRNAは、標的とされるDNA配列のどちらかの鎖に相補的であり得る。RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼによる標的化された切断のためには、ゲノム内の唯一の標的配列がゲノム内に1回より多く出現する標的配列よりも好ましいことは、当業者には理解される。バイオインフォマティクスソフトウェアを使用して、ガイドRNAのオフターゲット効果を予測し、その効果を最小限に抑えることができる(例えば、Naito et al. "CRISPRdirect: software for designing CRISPR/Casguide RNA with reduced off-target sites" Bioinformatics (2014), epub;Heigweret al. "E-CRISP: fast CRISPR target site identification" Nat. Methods11:122-123 (2014);Bae et al. "Cas-OFFinder: a fast and versatile algorithmthat searches for potential off-target sites of Cas9 RNA-guidedendonucleases" Bioinformatics 30(10): 1473-1475 (2014);Aach et al."CasFinder: Flexible algorithm for identifying specific Cas9 targets ingenomes" BioRxiv (2014)を参照されたい)。
一般に、「crRNA/tracrRNA融合配列」は、この用語が本明細書で使用される場合、特有の標的化配列に融合されており、ガイドRNAとRNAにガイドされるエンドヌクレアーゼとを含む複合体の形成を可能にするように機能する、核酸配列を指す。そのような配列は、(i)本明細書に記載の標的配列に対応する「プロトスペーサー」と呼ばれる可変配列と、(ii)CRISPRリピートとを含む、原核生物におけるCRISPR RNA(crRNA)配列をモデル化したものであり得る。同様に、融合体のtracrRNA(「トランス活性化CRISPR RNA」)部分は、エンドヌクレアーゼ複合体の形成を可能にするために、原核生物におけるtracrRNA配列(例えば、ヘアピン)と同様の二次構造を含むように設計され得る。一部の実施形態では、単一の転写物は、転写終結配列、例えば、ポリT配列、例えば6つのTヌクレオチドをさらに含む。一部の実施形態では、ガイドRNAは、2つのRNA分子を含み得、本明細書では「デュアルガイドRNA」または「dgRNA」と呼ばれる。一部の実施形態では、dgRNAは、crRNAを含む第1のRNA分子と、tracrRNAを含む第2のRNA分子とを含み得る。第1および第2のRNA分子は、crRNA上のフラッグポールとtracrRNAとの塩基対合によってRNA二本鎖を形成し得る。dgRNAを使用する場合、フラッグポールは、長さに関して上限を設ける必要がない。
他の実施形態では、ガイドRNAは、単一のRNA分子を含み得、本明細書では「シングルガイドRNA」または「sgRNA」と呼ばれる。一部の実施形態では、sgRNAは、tracrRNAに共有結合で連結されたcrRNAを含み得る。一部の実施形態では、crRNAおよびtracrRNAは、リンカーを介して共有結合で連結され得る。一部の実施形態では、sgRNAは、crRNA上のフラッグポールとtracrRNAとの塩基対合によるステム-ループ構造を含み得る。一部の実施形態では、シングルガイドRNAは、長さ少なくとも、約または最大で50、60、70、80、90、100、110、120またはそれを超えるヌクレオチド数(例えば、長さ75~120、75~110、75~100、75~90、75~80、80~120、80~110、80~100、80~90、85~120、85~110、85~100、85~90、90~120、90~110、90~100、100~120、100~120ヌクレオチド)である。一部の実施形態では、GSH遺伝子座への目的の核酸の組込みのための本明細書に記載の核酸ベクター、またはその組成物は、少なくとも1つのgRNAをコードする核酸を含む。例えば、第2のポリヌクレオチド配列は、1つのgRNA~50のgRNAの間、または少なくとも、約もしくは最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50のgRNAをコードし得る。異なるgRNAをコードするポリヌクレオチド配列の各々をプロモーターに作動可能に連結させることができる。一部の実施形態では、異なるgRNAに作動可能に連結されているプロモーターは、同じプロモーターであり得る。異なるgRNAに作動可能に連結されているプロモーターは、異なるプロモーターであり得る。プロモーターは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、抑制可能なプロモーター、または制御可能なプロモーターであり得る。
一部の実施形態では、非GSH核酸は、Casニッカーゼ(nCas;例えば、Cas9ニッカーゼまたはCas9-D10A)をコードする核酸を含む別のベクターを構成するか、またはそのベクターとともに標的細胞に導入される。そのようなnCas酵素は、本明細書に記載のGSHに対して相同性を含むガイドRNAとともに使用され、例えば、物理的に拘束された配列を解放するためにまたはねじれ解消をもたらすために使用され得ることが、本明細書では企図される。物理的に拘束された配列を解放することは、例えば、ゲノム配列との相互作用のために相同性指向型修復(HDR)鋳型相同性アームを露出させるようにベクターを「巻き戻す」ことができる。
一部の実施形態では、ジンクフィンガーヌクレアーゼは、所望の核酸の組込みを助長するDNA切断を誘導するために使用される。本明細書では同義で使用される「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」または「ZFN」は、完全にアセンブルされるとDNAを切断することができる少なくとも1つのヌクレアーゼまたはヌクレアーゼの一部に有効に連結されている少なくとも1つのジンクフィンガーDNA結合ドメインを含むキメラタンパク質分子を指す。「ジンクフィンガー」は、本明細書で使用される場合、DNA配列を認識し、それに結合する、タンパク質構造を指す。ジンクフィンガードメインは、ヒトプロテオームにおいて最も多く見られるDNA結合モチーフである。単一のジンクフィンガーは、おおよそ30のアミノ酸を含有し、ドメインは、概して、塩基対ごとに単一のアミノ酸側鎖の相互作用によりDNAの連続する3つの塩基対に結合することによって機能する。
一部の実施形態では、本明細書に記載される組込みのための核酸は、例えば、Porroet al., Promoterless gene targeting without nucleases rescues lethality of aCrigler-Najjar syndrome mouse model, EMBO Molecular Medicine, (2017)に記載されているような、ヌクレアーゼ不使用の相同性依存型修復系で、標的ゲノムに組み込まれる。一部の実施形態では、in vivo遺伝子標的化アプローチは、ヌクレアーゼの使用を伴わない、ドナー配列の挿入に好適である。一部の実施形態では、ドナー配列は、プロモーター不含であり得る。
一部の実施形態では、制限部位間に位置するヌクレアーゼは、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼであり得る。本明細書で使用される場合、用語「RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼ」は、選択された標的DNA配列に相補的な領域を含むRNA分子と複合体を形成し、したがって、RNA分子が、選択された配列に結合してエンドヌクレアーゼ活性を本明細書で同定されるGSHにおける選択された標的DNA配列に指向させる、エンドヌクレアーゼを指す。
CRISPR/Cas系
当技術分野で認知され、上で説明したように、CRISPR-CAS9系は、生物の遺伝子配列を変更することができる、タンパク質とリボ核酸(「RNA」)の組合せを含む(例えば、米国特許出願公開第2014/0170753号を参照されたい)。CRISPR-Cas9は、哺乳動物細胞における非相同末端結合(NHEJ)または相同組換えによるCas9媒介ゲノム編集のための1セットのツールを提供する。当業者は、タイプI、タイプIIおよびタイプIIIなどの、いくつかの公知CRISPR系から選択することができる。一部の実施形態では、GSH遺伝子座への目的の核酸の組込みのための、本明細書に記載される核酸を、ガイドRNA、tracrRNA、またはCas(例えば、Cas9またはそのバリアント)などの、これらの系の1つまたは複数の構成成分をコードする配列を含むように設計することができる。ある特定の実施形態では、単一のプロモーターが、ガイド配列およびtracrRNAの発現を駆動し、別のプロモーターが、Cas(例えば、Cas9またはそのバリアント)発現を駆動する。ある特定のCasヌクレアーゼが、標的核酸配列に隣接するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の存在を必要とすることは、当業者には理解されるであろう。
Cas(例えば、Cas9またはそのバリアント)を含む、RNAにガイドされるヌクレアーゼは、本明細書に記載される核酸の組込みを開始および/または助長するのに好適である。ガイドRNAを、DNAの同じ鎖または相補鎖に指向させることができる。
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法および組成物は、CRISPRi(CRISPR干渉)および/もしくはCRISPRa(CRISPR活性化)系を含み、かつ/またはそれを宿主細胞に送達するために使用することができる。CRISPRiおよびCRISPRa系は、二本鎖切断(DSB)を生成することができない不活性化されたRNAにガイドされるエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9またはそのバリアント)を含む。これは、エンドヌクレアーゼが、ガイドRNAとの組合せで、ゲノム内の標的配列に特異的に結合し、RNA依存性の逆転写制御をもたらすことを可能にする。
したがって、一部の実施形態では、GSH遺伝子座への目的の核酸の組込みのための、本明細書に記載される核酸組成物および方法は、エンドヌクレアーゼ活性を欠いているが、部位特異的様式でDNAを結合する能力を保持する、不活性化されたエンドヌクレアーゼ、例えば、RNAにガイドされるエンドヌクレアーゼおよび/またはCas9もしくはそのバリアントを、例えば、1つまたは複数のガイドRNAおよび/またはsgRNAとの組合せで、含み得る。一部の実施形態では、ベクターは、1つまたは複数のtracrRNA、ガイドRNAまたはsgRNAをさらに含み得る。一部の実施形態では、不活性化されたエンドヌクレアーゼは、転写活性化ドメインをさらに含み得る。
一部の実施形態では、GSH遺伝子座への目的の核酸の組込みのための、本明細書に記載される核酸組成物および方法は、ハイブリッドリコンビナーゼを含み得る。例えば、Cys2-His2ジンクフィンガーまたはTALエフェクターDNA結合ドメインに融合された、セリンリコンビナーゼのリゾルバーゼ/インベルターゼファミリーに由来する活性化された触媒ドメインに基づくハイブリッドリコンビナーゼは、哺乳動物細胞における標的化特異性を改善することができるクラスの試薬であり、卓越した部位特異的組込み率を達成する。好適なハイブリッドリコンビナーゼとしては、Gaj et al. Enhancing the Specificity of Recombinase -Mediated GenomeEngineering through Dimer Interface Redesign, Journal of the American ChemicalSociety, (2014)に記載されているものが挙げられる。
本明細書に記載されるヌクレアーゼを、配列特異的ヌクレアーゼを設計するために変更、例えば操作、することができる(例えば、米国特許第8,021,867号を参照されたい)。例えば、各々の内容が、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる、Certo et al. Nature Methods (2012) 9:073-975;米国特許第8,304,222号、同第8,021,867号、同第8,119,381号、同第8,124,369号、同第8,129,134号、同第8,133,697号、同第8,143,015号、同第8,143,016号、同第8,148,098号、または同第8,163,514号に記載されている方法を使用して、ヌクレアーゼを設計することができる。あるいは、部位特異的切断特性を有するヌクレアーゼを、市販の技術、例えば、Precision BioSciencesのDirected Nuclease Editor(商標)ゲノム編集技術を使用して得ることができる。
メガTAL
一部の実施形態では、本明細書に記載されるヌクレアーゼは、メガTALであり得る。メガTALは、転写活性化因子様(TAL)エフェクタードメインとメガヌクレアーゼドメインとを含む、操作された融合タンパク質である。メガTALは、TALの標的特異性操作の容易さを保持し、その上、オフターゲット効果および全体的な酵素サイズを低減させ、活性を増大させる。メガTAL構築および使用は、より詳細に、例えば、Boissel et al. 2014 Nucleic Acids Research 42(4):2591-601およびBoissel2015 Methods Mol Biol 1239: 171-196に記載されている。メガTAL媒介遺伝子ノックアウトおよび遺伝子編集のためのプロトコールは、当技術分野において公知であり、例えば、Satheret al. Science Translational Medicine 2015 7(307):ra156およびBoissel et al. 2014Nucleic Acids Research 42(4):2591-601を参照されたい。メガTALを、本明細書に記載される方法および組成物のいずれかにおいて、代替エンドヌクレアーゼとして使用することができる。
制御配列
本明細書で開示される核酸ベクターは、転写または翻訳制御配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、インスレーター、配列内リボソーム進入部位、2Aペプチドおよび/またはポリアデニル化シグナルをコードする配列も含み得る。
一部の実施形態では、制御配列は、本明細書に記載の目的の核酸などの、プロモーター配列に作動可能に連結されている遺伝子の転写を指示することができる好適なプロモーター配列を含む。実施形態では、エンハンサー配列は、プロモーターの有効性を増大させるためにプロモーターの上流に設けられる。一部の実施形態では、制御配列は、エンハンサーおよびプロモーターを含み、第2のヌクレオチド配列は、ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列の上流にイントロン配列を含み、イントロンは、1つまたは複数のヌクレアーゼ切断部位を含み、プロモーターは、ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。
本明細書に記載されるものを含む、適切なプロモーターは、ウイルスに由来することがあり、したがってウイルスプロモーターと呼ばれることがあり、または原核もしくは真核生物を含む任意の生物に由来することがある。一部の実施形態では、プロモーターは、昆虫細胞または哺乳動物細胞に由来する。好適なプロモーターを使用して、任意のRNAポリメラーゼ(例えば、pol I、pol II、pol III)によって発現を駆動することができる。例示的なプロモーターとしては、SV40初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス長い末端反復(LTR)プロモーター;アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えばCMV最初期プロモーター領域(CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトU6核内低分子プロモーター(Miyagishi et al., Nature Biotechnology 20, 497-500 (2002))、増強U6プロモーター(例えば、Xiaet al., Nucleic Acids Res. 2003 Sep. 1; 31(17))、ヒトH1プロモーター(H1)などが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、これらのプロモーターは、1つまたは複数のヌクレアーゼ切断部位を含むように変更される。
プロモーターは、発現をさらに増強するためにならびに/またはその空間的発現および/もしくは時間的発現を変更するために、1つまたは複数の特異的転写制御配列を含み得る。プロモーターは、転写の開始部位から数千塩基対ほどもの位置にあり得る遠位のエンハンサーまたはリプレッサーエレメントも含み得る。プロモーターは、ウイルス、細菌、真菌、植物、昆虫および動物をはじめとする供給源に由来し得る。プロモーターは、発現が起こる細胞、組織もしくは臓器に関して、または発現が起こる発生段階に関して、または生理的ストレス、病原体、金属イオンもしくは誘発剤などの外部刺激に応答して、構成的にまたは差次的に遺伝子構成成分の発現を制御し得る。プロモーターの代表的な例としては、バクテリオファージT7プロモーター、バクテリオファージT3プロモーター、SP6プロモーター、lacオペレーター-プロモーター、tacプロモーター、SV40後期プロモーター、SV40初期プロモーター、RSV-LTRプロモーター、CMV IEプロモーター、SV40初期プロモーターまたはSV40後期プロモーターおよびCMV IEプロモーター、ならびに下に列挙されるプロモーターが挙げられる。そのようなプロモーターおよび/またはエンハンサーは、例えば、目的の任意の遺伝子、例えば、分子、ドナー配列、治療用タンパク質などを編集する遺伝子)の発現に使用され得る。例えば、核酸は、DNAエンドヌクレアーゼまたはCRISPR/Cas9に基づく系に作動可能に連結されているプロモーターを含み得る。CRISPR/Cas9に基づく系または部位特異的ヌクレアーゼコード配列に作動可能に連結されているプロモーターは、サルウイルス40(SV40)からのプロモーター、CAGプロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロモーター、例えば、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)長い末端反復(LTR)プロモーター、モロニーウイルスプロモーター、トリ白血病ウイルス(ALV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えば、CMV最初期プロモーター、エプスタイン・バーウイルス(EBV)プロモーター、またはラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターであり得る。プロモーターはまた、ヒトユビキチンC(hUbC)、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、またはヒトメタロチオネイン(metalothionein)などの、ヒト遺伝子からのプロモーターであり得る。プロモーターはまた、天然のまたは合成の、肝臓特異的プロモーターなどの組織特異的プロモーターであり得る。一部の実施形態では、肝細胞の表面に存在する低密度リポタンパク質(LDL)受容体による、肝細胞への、ベクターを含む組成物の内在性ApoE特異的標的化を使用して、肝臓への送達を達成することができる。一部の実施形態では、制御エレメントのアセンブリを有するin silicoで設計された合成プロモーターが使用される。これらの合成プロモーターは、天然に存在せず、標的組織における最適な発現、制御された発現、またはウイルスカプシドへの収容、いずれかのために設計される。
一部の実施形態では、プロモーターは、(a)核酸とは異種のプロモーター、(b)核酸の組織特異的発現を助長するプロモーターであって、好ましくは、造血細胞特異的発現または赤血球系列特異的発現を助長するプロモーター、(c)核酸の構成的発現を助長するプロモーター、および(d)必要に応じて代謝物または小分子または化学物質に応答して、誘導的に発現されるプロモーターから選択され得る。誘導性プロモーターの例としては、テトラサイクリン、キュメート、ラパマイシン、FKCsA、ABA、タモキシフェン、青色光、およびリボスイッチにより制御されるものが挙げられる。追加の詳細は、例えば、参照により組み込まれるKallunki et al. (2019) Cells 8:E796に提供されている。一部の実施形態では、プロモーターは、CMVプロモーター、β-グロビンプロモーター、CAGプロモーター、AHSPプロモーター、MNDプロモーター、ウィスコット・アルドリッチプロモーター、およびPKLRプロモーターから選択される。「パルス状遺伝子発現および調節可能な遺伝子発現」のセクションも参照されたい。
内在性遺伝子の発生および系列特異的発現を指示する、かなりの数の遺伝子およびそれらの調節エレメント(プロモーターおよびエンハンサー)が、公知である。したがって、幹細胞に挿入される調節エレメントおよび/または遺伝子産物の選択は、どの系列がおよびどの発生段階が目的のものであるのかに依存することになる。加えて、系列特異的発現および幹細胞分化のより細かい機序の差異に関するさらなる詳細が分かっているので、それを実験プロトコールに組み入れて、広範な所望の幹細胞の効率的な単離のために系を十分に最適化することができる。
任意の系列特異的もしくは細胞運命制御エレメント(例えば、プロモーター)または細胞マーカー遺伝子を、本明細書に記載される組成物および方法において使用することができる。系列特異的および細胞運命遺伝子またはマーカーは、当業者に周知であり、目的の特定の系列を評価するために容易に選択することができる。それらの非限定的な例としては、遺伝子、例えば、Ang2、Flkl、VEGFR、MHC遺伝子、aP2、GFAP、Otx2(例えば、米国特許第5,639,618号を参照されたい)、Dlx(Porteus et al. (1991) Neuron 7:221-229)、Nix(Price et al. (1991)Nature 351:748-751)、Emx(Simeone et al. (1992) EMBO J. 11:2541- 2550)、Wnt(Roelinkand Nuse (1991) Genes Dev. 5:381-388)、En(McMahon et al.)、Hox(Chisaka et al.(1991) Nature 350:473-479)、アセチルコリン受容体ベータ鎖(ACHRP)(Otl et al. (1994) J. Cell.Biochem. Supplement 18A: 177)から得られる制御エレメントが挙げられるが、これらに限定されない。制御エレメントを得ることができる系列特異的遺伝子の他の例は、インターネット経由で容易にアクセスでき、当業者に周知である、NCBI-GEOウェブサイトで入手可能である。
配列
本明細書で使用される場合、コード領域は、アミノ酸残基に翻訳されるコドンを含むヌクレオチド配列の領域を指し、これに対して非コード領域は、アミノ酸に翻訳されないヌクレオチド配列の領域を指す。転写される非コード配列は、上流(5’-UTR)、下流(3’-UTR)、またはイントロン型であり得る。転写されない非コード配列は、シス作用性の制御機能、例えば、エンハンサーおよびプロモーターを有するか、または「スペーサー」、DNAにおいて別々の官能基に使用される転写されないDNA、例えば、ポリリンカー、もしくはベクターゲノムのサイズを増加させるために使用される「スタッファー」DNAとしての役割を果たすことがある。
「の補体」または「相補的」は、2つの核酸鎖の領域間のまたは同じ核酸鎖の2つの領域間の配列相補性の広い概念を指す。第1の核酸領域のアデニン残基が、第1の領域と逆平行である第2の核酸領域の残基と、残基がチミジンまたはウラシルである場合、特異的水素結合を形成する(塩基対合する)ことができることは、公知である。同様に、第1の核酸鎖のシトシン残基が、第1の鎖と逆平行である第2の核酸鎖の残基と、残基がグアニンである場合、塩基対合することができることは、公知である。核酸の第1の領域は、同じまたは異なる核酸の第2の領域と、2つの領域が逆平行の形で配置されたときに第1の領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基が第2の領域の残基と塩基対合することができる場合、相補的である。一部の実施形態では、第1の領域は、第1の部分を含み、第2の領域は、第2の部分を含み、それによって、第1および第2の部分が逆平行の形で配置されたときに、第1の部分のヌクレオチド残基の少なくとも、約または最大で30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%は、第2の部分中のヌクレオチド残基と塩基対合することができる。他の実施形態では、第1の部分のすべてのヌクレオチド残基は、第2の部分中のヌクレオチド残基と塩基対合することができる。
核酸は、それが別の核酸配列と機能的な関係に置かれているとき、作動可能に連結されている。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を与える場合、コード配列に作動可能に連結されている。転写制御配列に関して、作動可能に連結されているは、連結されているDNA配列が連続しており、2つのタンパク質コード領域を接合する必要がある場合には、連続しており、かつリーディングフレームにあることを意味する。
特定のタンパク質のアミノ酸配列とタンパク質をコードし得るヌクレオチド配列との間には、遺伝コード(下に示される)により定義されるような公知の確かな対応関係がある。同様に、特定の核酸のヌクレオチド配列とその核酸によりコードされるアミノ酸配列との間には、遺伝コードにより定義されるような公知の確かな対応関係がある。
遺伝コード
アラニン(Ala、A) GCA、GCC、GCG、GCT
アルギニン(Arg、R) AGA、ACG、CGA、CGC、CGG、CGT
アスパラギン(Asn、N) AAC、AAT
アスパラギン酸(Asp、D) GAC、GAT
システイン(Cys、C) TGC、TGT
グルタミン酸(Glu、E) GAA、GAG
グルタミン(Gln、Q) CAA、CAG
グリシン(Gly、G) GGA、GGC、GGG、GGT
ヒスチジン(His、H) CAC、CAT
イソロイシン(Ile、I) ATA、ATC、ATT
ロイシン(Leu、L) CTA、CTC、CTG、CTT、TTA、TTG
リシン(Lys、K) AAA、AAG
メチオニン(Met、M) ATG
フェニルアラニン(Phe、F) TTC、TTT
プロリン(Pro、P) CCA、CCC、CCG、CCT
セリン(Ser、S) AGC、AGT、TCA、TCC、TCG、TCT
トレオニン(Thr、T) ACA、ACC、ACG、ACT
トリプトファン(Trp、W) TGG
チロシン(Tyr、Y) TAC、TAT
バリン(Val、V) GTA、GTC、GTG、GTT
終結シグナル(末端) TAA、TAG、TGA
遺伝コードの重要かつ周知の特色は、タンパク質を作るために使用されるアミノ酸の大部分に1つより多くのコードヌクレオチドトリプレットが用いられ得る(上で例証される)、その縮重である。したがって、いくつかの異なるヌクレオチド配列が所与のアミノ酸配列をコードし得る。遺伝コードの普遍性により、そのようなヌクレオチド配列は機能的に等価とみなされるものと規定される。それらは、ミトコンドリアおよび色素体および同様の共生オルガネラはわずかに異なる遺伝コードを有するが、すべての生物において同じアミノ酸配列を結果として産生するからである。すべてのコドンが同様の翻訳効率で利用されるとは限らないが、レアコドンは、tRNAプールを制限することに起因してタンパク質産生を低下させ得る。さらに、時には、プリンまたはピリミジンのメチル化バリアントが所与のヌクレオチド配列に見られることがある。そのようなメチル化は、トリヌクレオチドコドンと対応するアミノ酸とのコーディング関係に影響を与えない。
ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させる際、アミノ酸のハイドロパシー指数が考慮され得る。タンパク質に対する相互作用性生物機能の付与におけるハイドロパシーアミノ酸指数の重要性は、当技術分野において一般に理解されている。アミノ酸の相対的ハイドロパシー性が、結果として生ずるタンパク質の二次構造の一因となり、そしてまたその二次構造が、タンパク質と他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を規定するというのが、定説である。各アミノ酸には、それらの疎水性および電荷特徴に基づいてハイドロパシー指数が割り当てられており、これらは、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);トレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタメート(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパルテート(<RTI 3.5);アスパラギン(-3.5);リシン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)である。
ある特定のアミノ酸は、同様のハイドロパシー指数またはスコアを有する他のアミノ酸によって置換され、それでもやはり、同様の生物活性を有するタンパク質をもたらす、すなわち、それでもやはり、生物機能的に等価のタンパク質を得ることができることは、当技術分野において公知である。
したがって、上で概要が述べられたように、アミノ酸置換は、アミノ酸側鎖置換基、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなど、の相対的類似性に、一般に基づく。様々な上述の特徴を考慮に入れる例示的な置換は、当業者に周知であり、アルギニンとリシン;グルタメートとアスパルテート;セリンとトレオニン;グルタミンとアスパラギン;およびバリンとロイシンとイソロイシンを含む。
ポリペプチドをコードする核酸を、アミノ酸配列を変更することなくある特定の宿主細胞用にコドン最適化することができることも、当技術分野において公知である。コドン最適化は、タンパク質産生を増加させるために同義コドン変化を使用する遺伝子操作アプローチを言い表す。これは、ほとんどのアミノ酸が1つより多くのコドンによりコードされるので、可能である。レアコドンをに使用されるもので置き換えることは、タンパク質発現を増加させることが示されている。
上述のことを考慮して、本明細書に記載される核酸(例えば、治療用核酸)(またはその任意の部分)をコードするDNAまたはRNAのヌクレオチド配列を使用してポリペプチドアミノ酸配列を導出し、遺伝コードを使用してDNAまたはRNAをアミノ酸配列に翻訳することができる。同様に、ポリペプチドアミノ酸配列については、ポリペプチドをコードし得る対応するヌクレオチド配列を、遺伝コード(これは、その冗長性のため、任意の所与のアミノ酸配列について複数の核酸配列を生じさせることになる)から推論することができる。したがって、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列についての本明細書における記載および/または開示は、ヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列についての記載および/または開示も含むとみなされたい。同様に、本明細書におけるポリペプチドアミノ酸配列についての記載および/または開示は、アミノ酸配列をコードし得るすべての可能性のあるヌクレオチド配列についての記載および/または開示も含むとみなされたい。
最後に、本発明において有用な核酸およびポリペプチド分子についての核酸およびアミノ酸配列情報は、当技術分野において周知であり、アメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)などの公開データベースで容易に入手可能である。
表3: GSH遺伝子座の例示的な配列
*表3における座標は、ヒトゲノムアセンブリGRCh38/hg38からのものである。
*cDNA、ssDNA、およびRNA核酸分子(例えば、ウリジンで置き換えられたチミジン)、コードされたタンパク質のオルソログまたはバリアントをコードする核酸分子、ならびに上に列挙されたいずれかの配列番号の核酸配列とそれらの完全長にわたって少なくとも、約もしくは最大で30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%のもしくはそれより高度な同一性を有する核酸配列を含む核酸配列またはその一部分が、上記に含まれる。そのような核酸分子は、本明細書にさらに記載されるような完全長核酸の機能を有し得る。
*代表的なGSH遺伝子座の例示的な特徴付けについては実施例3の表5を参照されたい。
パルス状遺伝子発現および調節可能な遺伝子発現
ある特定の態様では、本開示のベクター(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター)、細胞、医薬組成物、および/または方法は、パルス状および/または調節可能な遺伝子発現を利用する。本明細書で使用される場合、調節可能な遺伝子発現は、例えば、導入遺伝子の発現をオンまたはオフにするために小分子またはオリゴヌクレオチド(例えば、それぞれ、テトラサイクリンまたはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASOまたはAON))を使用して、意のままに導入遺伝子発現を制御することを可能にする。調節可能な遺伝子発現は、多くの場合、誘導性プロモーターまたは抑制可能なプロモーターを使用して達成されるが、調節可能な制御は、転写に加えて遺伝子発現の制御を含むように意図されている。
したがって、調節可能な遺伝子発現は、転写レベル、転写後レベル、翻訳レベル、および/または翻訳後レベルでの時間的制御を包含するように意図されている。調節可能な発現は、遺伝子発現の空間的調節に対応する。例えば、導入遺伝子の空間的調節は、導入遺伝子を組織特異的プロモーターのもとに置き、次いで、時間的調節を媒介する、発現をモジュレートする作用因子(例えば、テトラサイクリンまたはASO)と組み合わせることにより、助長され得る。
パルス状遺伝子発現は、導入遺伝子の産生を一定の間隔でオンにすることおよびオフにすることを指す。任意の調節可能な遺伝子発現系をパルス状遺伝子発現に利用することができる。加えて、本明細書では、本明細書に記載される任意の遺伝子発現のモジュレーションをパルス状遺伝子発現と組み合わせて使用することができることが企図される。
パルス状遺伝子発現は、遺伝子治療の成功に重要なものである。生理的および長期タンパク質発現レベルを得ることは、依然として、遺伝子治療への応用における大きな課題である。導入遺伝子の高レベルの発現は、処置から何カ月も後にERストレスおよび小胞体ストレス応答を誘導し、これは、炎症誘発状態および細胞死につながり、治療の恩恵を台無しにすることになる。パルス状導入遺伝子発現戦略(PTES)は、標的細胞に過剰発現ストレスを免れさせ、発現の経時的な漸減を伴わない導入遺伝子の長期発現を可能にすることができる。加えて、パルス状および/または調節可能な発現は、例えば、導入遺伝子によりコードされるタンパク質の産生効率および/または安定性を改善することができる。
一部の実施形態では、本明細書に記載されるPTESは、試薬が、発現をオンにするまたは脱抑制するまで、デフォルト状態がオフであり、それによって、患者の特定の必要に見合うような用量の修正が可能になり、したがって、より大きな安全性および長期恩恵をもたらす、調節可能な発現系である。パルスのタイミングは、目的のタンパク質の初期血清レベル(t0)および半減期(t1/2)から決定することができる(実施例11を参照されたい)。
例示的な調節可能な発現系
テトラサイクリンにより調節されるオペレーター系
細菌制御エレメントである、E.coliのTn10特定テトラサイクリン耐性オペロンを使用して、遺伝子発現を制御することができる。例えば、この系には3つの例示的な立体配置がある:(1)Tetオペレーター(TetO)が構成的プロモーターと目的の遺伝子の間に挿入されている、抑制に基づく立体配置であって、オペレーターへのtetリプレッサー(TetR)の結合が、下流の遺伝子発現を抑制する、立体配置。この系では、テトラサイクリンの追加によりTetRとTetOとの会合の破壊が結果として生じ、それによってTetO依存性遺伝子発現が誘発される。(2)タンデムTetO配列が、最小構成的プロモーターの上流に位置し、その後に目的の遺伝子のcDNAが続く、Tetオフ立体配置。ここで、TetRと単純ヘルペスウイルス1型に由来する真核生物トランス活性化因子であるVP16(tTA)とからなるキメラタンパク質が、転写活性化因子に変換され、発現プラスミドが、オペレータープラスミドと一緒にトランスフェクトされる。したがって、テトラサイクリンを伴う細胞の培養は、外来性遺伝子の発現のスイッチをオフにするが、テトラサイクリンを除去するとそのスイッチがオンになる。(3)テトラサイクリンが成長培地に添加されたときに外来性遺伝子が発現される、Tetオン立体配置。テトラサイクリンが、TetO依存性遺伝子発現を制御するために必要な低濃度で哺乳動物細胞にとって非毒性であったとしても、その継続的存在は、望ましくないことがある。したがって、rtTAと呼ばれる、4つのアミノ酸置換を有する変異型tTAを、tTAのランダム変異誘発により発生させた。tTAとは異なり、rtTAは、テトラサイクリンの存在下でTetO配列に結合し、それによって、サイレントな最小プロモーターを活性化する。
キュメートにより調節されるオペレーター系
キュメートにより調節されるオペレーターは、Pseudomonas putidaにおけるp-cmtおよびp-cymオペロンから生じる。対応するリプレッサーは、プロモーターとp-シメン分解経路における第1の遺伝子の開始部との間の不完全な反復を認識するN末端DNA結合ドメインを含有する。テトラサイクリンにより調節されるオペレーター系と同様に、キュメートオペレーター(CuO)およびそのリプレッサー(CymR)を操作して3つの立体配置にすることができる:(1)構成的プロモーターの下流にCuOを置くことにより実現されるリプレッサー立体配置であって、CuOへのCymRの結合が下流の遺伝子発現を効率的に抑制する、立体配置。キュメートの追加がCymRを放出させ、それによって下流の遺伝子発現が誘発される。(2)キメラ分子(cTA)がCymRとVP16の融合によって形成される、アクチベーター立体配置。この立体配置では、最小プロモーターは、多量体化したオペレーター結合部位(6×CuO)の下流に置かれた。(3)ランダム変異誘発およびスクリーニング後、キュメートを追加するとCuOに結合するcTA変異体(rcTA)が生成される、リバースアクチベーター立体配置。この立体配置では、キュメートの追加が下流の遺伝子発現を誘発する。
タンパク質-タンパク質相互作用に基づくキメラ系
1.FKBP12とmTORとの相互作用の調節による標的遺伝子の誘導
ラパマイシンおよびそのアナログFK506は、サイトゾルタンパク質FKBP12に結合する。この複合体は、さらにmTORに結合し、3要素複合体を形成する。したがって、FKBP12およびmTORを、それぞれ、ZFHD1のDNA結合ドメインおよびNF-κB p65タンパク質の活性化ドメインと融合させると、両方のドメインが架橋されて、ラパマイシン依存形式で目的の遺伝子の発現が駆動される。FK506およびラパマイシンの免疫抑制および細胞周期阻害効果に起因して、FK506およびシクロスポリンA(タンパク質シクロフィリンと複合体化した免疫抑制剤)のヘテロ二量体である新たな合成化合物、FKCsA、が開発され、毒性も免疫抑制効果も示さないことが示された。遺伝子発現を誘発するために、FKCsAの細胞への添加によって、Gal4 DNA結合ドメイン(Gal4DBD)と融合したFKBP12、およびVP16と融合したシクロフィリンがヒンジで連結され、それによって上流の活性化配列(UAS、Gal4DBD結合部位)の下流の目的の遺伝子の発現が活性化される。
2.PYL1とABI1との相互作用の調節による標的遺伝子の誘導
2つの植物タンパク質の間のアブシジン酸(ABA)により制御される相互作用が、哺乳動物細胞において時間的および定量的に遺伝子発現を制御するために使用される。2つのタンパク質は、PYL1(アブジシン酸受容体)およびABI1(プロテインホスファターゼ2C56)であり、これらは、植物におけるストレス応答および発生決定に必要なABAシグナル伝達経路の重要なプレーヤーである。PYL1-ABA-ABI1複合体の結晶構造に従って、PYL1(アミノ酸33~209)およびABI1(アミノ酸126~423)の相互作用相補的表面を、キメラタンパク質構築に選択した。同様に、Gal4DBDをABI1と、VP16をPYL1と融合させた。結果として、このABA-アクチベーターカセットおよびUAS駆動レポーターを哺乳動物細胞にトランスフェクトした後、ABAは、レポーターの産生を顕著に誘導した。ラパマイシン系と比較して、ABA系には、2つの説得力のある利点がある:第1に、ABAは、植物抽出物および植物油を含有する多くの食品に存在する-それに毒性がないことは、米国環境保護庁(EPA)による広範な評価により裏付けられている;第2に、ABAシグナル伝達経路は哺乳動物細胞には存在しないので、ラパマイシン系の場合のように競合する内在性結合性タンパク質が存在するはずがない。ABI1による可能性のある予想外の基質のいかなる触媒もさらに回避するために、そのホスファターゼ活性に不可欠である変異をキメラタンパク質に導入した。
3.感光性タンパク質-タンパク質相互作用による標的遺伝子の誘導
光により切替え可能な2つの導入遺伝子系が、光誘起タンパク質-タンパク質相互作用を利用して開発された。第1のものは、真菌の概日リズムの分子基礎からインスピレーションを得た。Neurospora crassaからの光受容体および光-酸素-電圧(LOV)ドメイン含有タンパク質である、vivid(VVD)は、青色光活性化によって迅速に入れ替わる二量体を形成する。したがって、VVDおよびGal4残基1~65からなるキメラタンパク質は、青色光照明下で二量体化し、転写活性化因子になるが、青色光の非存在下では活性二量体が解離する。これは、UASの下流のレポーターの発現を、青色光を利用する時空間様式でスイッチオンおよびオフすることができることを意味する。その上、VVDの変異誘発最適化は、バックグラウンド発現を最小レベルにさらに低下させ、系を、より一層、実現可能なものにした。光により切替え可能な別の導入遺伝子系(光活性化可能な(PA)-Tet-OFF/ON)は、クリプトクロム2(Cry2)光受容体およびクリプトクロム相互作用性塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックス1(CIB1)からなる、Arabidopsis thaliana由来青色光応答性ヘテロ二量体形成を利用する。Cry2のN末端部分のフォトリアーゼ相同性領域(PHR)は、非共有結合によりフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)に結合する発色団結合ドメインである。CIB1は、Cry2と青色光依存的に相互作用する。それ故、誘導性発現系を作製するために、PHRが、p65の転写活性化ドメインと融合され、CIB1が、TetR(残基1~206)のDNA結合、二量体化およびテトラサイクリン結合ドメインと融合された。その結果、レポーター遺伝子は、青色光照明でスイッチオンされ得るが、スイッチオフは、青色光の非存在またはテトラサイクリンの追加のどちらかによる2つの方法で達成され得る。その一方で、テトラサイクリン非感受性変異であるH100Yは、照明に完全に依存することが証明された。TetRをrtTAに置き換えたが同じキメラ構造を適用することにより、レポーター遺伝子を、青色光照明またはテトラサイクリンのどちらかでスイッチオンすること、および青色光の非存在またはテトラサイクリンの除去のどちらかによってスイッチオフすることができる。一般に、光により切替え可能な導入遺伝子系の2つの利点は、他のすべての系を圧倒する。一方は、それらの迅速なオンおよびオフサイクルである。概日リズムの性質に起因して、2つの上述のタンパク質-タンパク質相互作用は、動的であり、高速の応答および反転をもたらす。1~2分の短い光パルスであってもルシフェラーゼ発現を十分に誘導し、この発現は、1.1時間後にピークに達して3時間後にバックグラウンドレベルに減衰することが示されている。もう一方の利点は、その正確な空間的誘導である。制限されたエリアまたは細胞集団内の照明を、高性能の照明光源を用いて実現することができ、それによって、レポーター発現を、目的の、ある特定の細胞または細胞内領域において、選択的に誘導することができる。これらのユニークな特色は、将来の細胞-細胞挙動研究を大幅に促進するばかりでなく、臨床遺伝子治療の巨大な可能性ももたらす。
4.タモキシフェンにより調節される系
最もよく特徴付けられている「リバーシブルスイッチ」モデルの1つである、タモキシフェン誘導性の系は、いくつかの有益な特色を有する(例えば、Whitfield et al. (2015) Cold Spring Harb Protoc. 2015(3):227-234により概説されている)。この系では、哺乳動物エストロゲン受容体のホルモン結合ドメインが、異種制御ドメインとして使用される。リガンドが結合すると、受容体は、その阻害性複合体から放出され、融合タンパク質が機能性になる。例えば、エストロゲン受容体(ER)のリガンド結合ドメイン(LBD)を導入遺伝子と融合させることができ、その産物は、抗エストロゲンタモキシフェンまたはその誘導体4-OHタモキシフェン(4-OH-TAM)により活性化され得るキメラタンパク質である。
この系は、ゲノムを改変する制御可能なリコンビナーゼを生成するために、リコンビナーゼと組み合わせて使用されている。例えば、単一のプラスミド系または2つのプラスミド系のどちらかを使用して、誘導性遺伝子発現を達成することができる。第1の成功事例は、マウス胚細胞で行われた。2つのプラスミドが一緒にトランスフェクトされた。一方は、Cre-ER構成的発現プラスミドであり、もう一方は、LoxPと隣接しており、それにβ-ガラクトシダーゼ(LacZ)オープンリーディングフレームが続く、遺伝子トラップ配列を含有した。結果として、Cre-loxP媒介組換えが誘発され、遺伝子トラップ配列が切除されたときにのみ、LacZの発現を回復させることができた。これらの手段により、レポーター遺伝子を、未分化胚性幹細胞および胚様体においてばかりでなく、10日齢のキメラ胎児のすべての組織または特定の分化した成体組織においても、誘導することができた。別の例では、ベビーハムスター腎(BHK)細胞において高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)発現を誘導するために、およびプラスミド構築を単純化するために、LoxP部位と隣接しているCre-ER cDNAが、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターとEGFPコード配列の間に挿入された。この系では、Cre-ERは、4-OH-TAMなしでEGFPの転写を遮断するための遺伝子トラップとして機能する。4-OH-TAMによるリコンビナーゼ活性の着火は、Cre-ERカセットをメルトオフし、PGKプロモーターにより駆動されるEGFP発現を回復させる。内在性ステロイドにより発揮される効果を排除するために、(1)G525R変異を有するマウスERTM、(2)G521R変異を有するヒトERT、および(3)3つの変異G400V/M543/L544Aを含有するヒトERT2という、3つの別個のERが主として利用される。
5.リボスイッチにより制御可能な発現系
リボスイッチにより制御可能な発現系は、ハンマーヘッドリボザイム(アプタザイム)と連結された細菌由来RNAアプタマーを利用する。アプタマーは、全装置のための分子センサーおよび変換器としての役割を果たし、その一方で、リボザイムは、高次構造変化およびmRNA切断に伴うシグナルに応答する。例えば、グラム陽性菌のアプタザイムは、過剰なグルコサミン-6-リン酸(GlcN6P)を直接感知し、glms遺伝子のmRNAを切断し、そのタンパク質産物は、フルクトース-6-リン酸(Fru6P)およびグルコサミンをGlcN6Pに変換する酵素である。テトラサイクリン、テオフィリン、グアニンなどに応答するこれらのアプタザイムは、目的の遺伝子をノックダウンするようにも、過剰発現するようにも、操作された(例えば、Yokobayashi et al. (2019) Curr Opin Chem Biol 52:72-78により概説されているとおり)。
6.ASO(アンチセンスオリゴヌクレオチド)により制御される発現系
ASOは、DNAまたはRNAに結合することができる。ASOは、有効な遺伝子制御がRNAレベルで作用して、RISC複合体を活性化し、mRNAを分解するか、またはシス作用性エレメントの認識に干渉することが実証されている。ASOは、細胞に効率的にトランスフェクトする脂質ナノ粒子で常套的に製剤化されている。ASOは、機能獲得(すなわち、ドミナントネガティブ)、転写物、またはホモ接合体劣性遺伝病のいずれかの、「ノックダウン」応用に使用される。ASOが、変異型対立遺伝子からの転写物に対して特異的でない、ドミナントネガティブ変異によって引き起こされる疾患、例えば、ハンチントン病および他のポリグルタミン伸長疾患では、正常な細胞機能の回復は、外来性ASOに対する配列相補性を低下させる代替同義コドンを有するベクター送達導入遺伝子を使用する遺伝子置き換えを使用して果たすことができる。したがって、ASOは、内在性対立遺伝子から転写物を枯渇させるが、ベクター駆動転写物は、影響を受けない。
図14で説明されるように、ASOは、遺伝子発現を負または正のどちらかに制御するようにスプライシングをモジュレートすることができる(Havens and Hastings (2016) Nucleic Acids Research 44:6549-6563も参照されたい)。図11の例Iは、ASO(アンチセンスオリゴヌクレオチドASOまたはAON)が転写後に遺伝子発現を負に制御することができることを示す。ASOがなければ、一次転写物は、翻訳可能なmRNAにスプライシングされる。イントロンの3’末端/第2エクソンの5’末端におけるスプライスアクセプターに相補的なASO(赤線)の追加は、スプライシングに干渉する。したがって、ASOの存在下では、イントロンは、転写物中に残存する。イントロンを含むこのプロセシングされていないRNAは、翻訳不可能であるか、または翻訳によって非機能性タンパク質を作り出す。
図11の例IIも、ASOが転写後に遺伝子発現に良い影響を及ぼし得ることを説明する。一次転写物(左側)は、4つのエクソンを含有する:第1エクソン、第3エクソンおよび第4エクソンは、治療用タンパク質をコードし、第2エクソンは、ナンセンス変異またはアウトオブフレーム変異(OOF)のどちらかを含有する。そのような第2エクソンを任意の導入遺伝子に操作して入れることができる。ASOがなければ、転写物はプロセシングされて、4つのエクソンを含む成熟mRNAになる、すなわち、ナンセンス変異またはOOF変異を有する第2エクソンが残存する。結果として、得られるmRNAは、短縮型または非機能性タンパク質に翻訳される。対照的に、ASOの追加は、スプライシングに干渉し、成熟mRNAは、第1エクソン、第3エクソンおよび第4エクソンからなる、すなわち、ナンセンス変異またはOOF変異を有する第2エクソンが切り出される。結果として、デフォルト状態(ASOなし)では、治療用タンパク質は作り出されない。ASOの追加時にのみ、治療タンパク質が作り出され、それによって正の制御が生じる結果となる。
これらのアプローチは、構成的に活性な導入遺伝子発現のノックダウン、すなわち、デフォルトオンを可能にする。一部の実施形態では、デフォルトオン状態が好ましい。他の実施形態では、デフォルトオフ条件が好ましい。
血友病Aのための例示的なパルス状遺伝子発現
ある特定の態様では、本明細書において提供されるベクター(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター)、細胞、医薬組成物、および方法は、血友病Aに罹患している対象のための遺伝子治療にパルス状遺伝子発現を使用する。一部の実施形態では、ASOにより制御される発現系は、ヒト凝固第VIII因子(FVIII)をコードする遺伝子を血友病Aに罹患している対象の肝細胞に形質導入するために使用される。一部の実施形態では、パルス状遺伝子発現(FVIIIをコードする導入遺伝子が、ある特定の間隔でオンおよびオフにされる)が、産生されるFVIIIの量を制御するために使用される(実施例11を参照されたい)。本明細書に記載される、FVIIIまたはその活性断片(例えば、そのBドメインが欠失しているもの)をコードする導入遺伝子の送達および制御、組成物および方法は、まだ解決されていない長年にわたる切実な医療ニーズに対処する。
2020年に、FDAは、血友病A(HemA)の処置剤としてのバロクトコジーンロクサパルボベク(またはBMN270)についてのBiomarinの生物製剤承認申請(BLA)を承認しなかった。組換えアデノ随伴ウイルス5型(rAAV5)は、ヒト凝固第VIII因子(FVIII)の遺伝子の誘導体をHemA患者の肝臓に送達した。より高い用量で、FVIIIは、発現され、処置される患者を有効に「治癒させる」生理レベルに等しいまたはそれより高いレベルで患者の循環に分泌された。しかし、長期発現レベルは、3年の追跡調査中に毎年0.5から0.33に低下した。FVIII発現は、臨床的に有益であるレベルのままであったが、FDAは、発現が同じ率で降下し続けた場合に患者が彼らの血友病表現型に戻ることになることに懸念を示した。減少発現パターンについての明確な説明がない:血友病Bについての以前の臨床研究は、FIX発現の欠如が、プロセシングされたAAVカプシド抗原により惹起される急性炎症に主として起因することを立証した。しかし、予防的ステロイド処置は、カプシド免疫応答を減弱または消失させ、今では、肝臓を対象としたrAAV処置には常套的である。FVIII発現の喪失を釈明するいくつかの可能性のある説明が、本明細書では企図される。
FVIIIは、微生物発現系でも真核生物発現系でも産生することが困難な組換えタンパク質であった。FVIIIの「Bドメイン」欠失バージョンの開発は、オープンリーディングフレームのサイズを低減させ、発現レベルを改善した。しかし、FVIII発現レベルは、それでもやはり他のタンパク質より実質的に低かった。これらの低いレベルを克服するために、Biomarinは、臨床研究においてベクター用量を増加させた。患者は、kgあたり6E+13のベクター粒子(ベクターゲノム、またはvgと呼ばれる)で処置された。大型動物モデルに基づいて、ごく少数の肝細胞がrAAV5-FVIIIを取り込み(形質導入され)、細胞あたりのvgの数が多い結果として、その後、比較的大量のFVIIIを発現する。FVIII発現の代謝要求は、肝細胞タンパク質発現の通常の要件を妨げる可能性が高い。タンパク質のフォールディングおよび分泌に通常関与する肝細胞細胞内コンパートメントに、FVIIIが過度に詰め込まれる可能性がある。FVIII生産を生じさせる内皮細胞は、この活性に特化している可能性が高く、高度に制御されたネイティブFVIIIプロモーターの転写調節下で単一のX染色体上の対立遺伝子からFVIIIを産生する。
したがって、FVIIIをコードする導入遺伝子の発現の漸減を防止するために、導入遺伝子が一定の間隔でオンおよびオフにされて長期有効性が達成される。パルスのタイミングは、FVIIIタンパク質の血清レベルおよび半減期に基づいて決定される(詳細については実施例11を参照されたい)。血友病Aの予防または処置のためのFVIIIにとって理想的な状態は、一過性に活性化されるまではオフである。ASOを使用して、一次転写物におけるシス作用性エレメントに干渉することによりマイナス効果またはプラス効果のどちらかを惹起することができ、それによって、パルス状遺伝子発現の制御に柔軟性がもたらされる。
ウイルスベクター
ある特定の態様では、本明細書に記載される核酸ベクター(例えば、本開示のGSH遺伝子座の少なくとも一部分を含むもの、本開示のGSH遺伝子座への組込みのための核酸ベクター、など)を含むウイルスベクターが、本明細書において提供される。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、rAd、AAV、rHSV、レトロウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、レンチウイルス、ワクシニアウイルスベクター、HSV 1型(HSV-1)-AAVハイブリッドベクター、バキュロウイルス発現ベクター系(BEVS)、およびこれらのバリアントから選択される。
具体的には、ウイルスベクターは、外来性DNAの断片を細胞への移入のために挿入することができる、ウイルスまたはウイルスの染色体材料を指す。その生活環にDNA段階を含む任意のウイルスを、対象方法および組成物においてウイルスベクターとして使用することができる。例えば、ウイルスは、一本鎖DNA(ssDNA)ウイルスまたは二本鎖DNA(dsDNA)ウイルスであり得る。それらの生活環にDNA段階を有するRNAウイルス、例えば、DNAに逆転写されるレトロウイルス、例えば、MMLV、レンチウイルスも、好適である。ウイルスは、組込みウイルスまたは非組込みウイルスであり得る。
本明細書で開示される方法および組成物における使用のために包含されるウイルスベクターは、総説論文Hendrie, Paul C., and David W. Russell. "Gene targeting withviral vectors." Molecular Therapy 12.1 (2005): 9-17 およびPerez-Pinera,"Advances in targeted genome editing." Current opinion in chemicalbiology 16.3 (2012): 268-277において論じられている。
アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターは、本明細書で開示される核酸ベクター組成物としての使用のために包含され、in vivoおよびex vivo遺伝子治療手順に有用である(例えば、West et al., Virology 160:38-47 (1987);米国特許第4,797,368号;WO93/24641;Kotin,Human Gene Therapy 5:793-801 (1994);Muzyczka, J. Clin. Invest. 94:1351 (1994)を参照されたい。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号;Tratschinet al, Mol. Cell. Biol. 5:3251-3260 (1985);Tratschin, et al., Mol. Cell. Biol.4:2072-2081 (1984);Hermonat & Muzyczka, PNAS 81:6466-6470 (1984);およびSamulskiet al., J. Virol. 63:03822-3828 (1989)をはじめとするいくつかの公表文献に記載されている。少なくとも6つのウイルスベクターアプローチが、現在、臨床試験における遺伝子移入に利用可能であり、これらは、形質導入剤を生成するためのヘルパー細胞系に挿入された遺伝子による欠陥ベクターの補完を含むアプローチを利用する。
好ましい実施形態では、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスである。アデノ随伴ウイルス、または「AAV」とは、ウイルスそれ自体またはその誘導体を意味する。用語は、すべてのサブタイプ、および天然に存在する形態と組換え形態の両方、例えば、AAV1型(AAV-1)、AAV2型(AAV-2)、AAV3型(AAV-3)、AAV4型(AAV-4)、AAV5型(AAV-5)、AAV6型(AAV-6)、AAV7型(AAV-7)、AAV8型(AAV-8)、AAV 9型(AAV-9)、AAV10型(AAV-10)、AAV11型(AAV-11)、AAV12型(AAV-12)、AAV13型(AAV-13)、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、ヒツジAAV、ハイブリッドAAV(すなわち、1つのAAVサブタイプのカプシドタンパク質と別のサブタイプのゲノム材料とを含むAAV)、変異型AAVカプシドタンパク質またはキメラAAVカプシド(すなわちAAVの2つもしくはそれより多くの異なる血清型、例えば、AAV-DJ、AAV-LK3、AAV-LK19に由来する、領域もしくはドメインもしくは個々のアミノ酸を有するカプシドタンパク質)を含むAAVを、別段の要求がある場合を除き、網羅する。「霊長類AAV」は、霊長類に感染するAAVを指し、「非霊長類AAV」は、非霊長類哺乳動物に感染するAAVを指し、「ウシAAV」は、ウシ亜科の哺乳動物に感染するAAVを指すなど。
組換えAAVベクターまたはrAAVベクターは、AAV起源でないポリヌクレオチド配列(すなわち、AAVとは異種のポリヌクレオチド)、典型的には、細胞に組み込まれることになる目的の核酸配列(例えば、非GSH核酸)を含む、AAVウイルスまたはAAVウイルス染色体材料を意味する。一般に、異種ポリヌクレオチドは、少なくとも1つの、一般には2つのAAV逆方向末端反復配列(ITR)と隣接している。一部の事例では、組換えウイルスベクターは、組換えウイルスベクター材料のパッケージングに重要なウイルス遺伝子も含む。「パッケージング」とは、ウイルス粒子、例えばAAVウイルス粒子、のアセンブリおよびカプシド形成に至る一連の細胞内事象を意味する。AAVパッケージングに重要な核酸配列(すなわち、「パッケージング遺伝子」)の例としては、AAV「rep」および「cap」遺伝子が挙げられ、これらは、それぞれ、アデノ随伴ウイルスの複製およびカプシド形成タンパク質をコードする。用語rAAVベクターは、rAAVベクター粒子とrAAVベクタープラスミドの両方を包含する。
ウイルス粒子は、ウイルスに基づくポリヌクレオチド、例えばウイルスゲノム(野生型ウイルスにおけるなど)、または例えば対象標的化ベクター(組換えウイルスにおけるなど)をカプシド形成するカプシドを含む、ウイルスの単一の単位を指す。AAVウイルス粒子は、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質(典型的には、すべてが野生型AAVのカプシドタンパク質で)とカプシド形成されたポリヌクレオチドAAVベクターとで構成されるウイルス粒子を指す。粒子が異種ポリヌクレオチド(すなわち、野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド、例えば、哺乳動物細胞に送達されることになる導入遺伝子)を含む場合、それは、概して、rAAVベクター粒子または単にrAAVベクターと呼ばれる。したがって、rAAV粒子の産生は、rAAVベクターの産生を必然的に含み、それ故、ベクターは、rAAV粒子内に含有される。
一部の実施形態では、組換えアデノ随伴ウイルス(「rAAV」)ベクターは、導入遺伝子発現カセットに隣接するAAV 145bp逆方向末端反復のみを保持するプラスミドに由来する。形質導入細胞のゲノムへの組込みに起因する効率的な遺伝子移入および安定した形質遺伝子送達は、このベクター系の肝要な特色である。(Wagner et al., Lancet 351:9117 1702-3 (1998)、Kearns et al., GeneTher. 9:748-55 (1996))。AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、およびAAVrh.10ならびに任意の新規AAV血清型を含むすべてのAAV血清型も、本発明に従って使用することができる。
複製欠損組換えアデノウイルスベクター(Ad)も、本明細書における使用に包含され、高力価で産生され、いくつかの異なる細胞型に容易に感染し得る。臨床試験におけるAdベクターの使用の一例は、筋肉内注射による抗腫瘍免疫化のためのポリヌクレオチド治療を含んだ(Sterman et al., Hum. Gene Ther. 7: 1083-9 (1998))。臨床試験における遺伝子移入のためのアデノウイルスベクターの使用のさらなる例としては、Roseneckeret al., Infection 24:1 5-10 (1996);Sterman et al., Hum. Gene Ther. 9:71083-1089 (1998);Welsh et al., Hum. Gene Ther. 2:205-18 (1995);Alvarez et al.,Hum. Gene Ther. 5:597-613 (1997);Topf et al., Gene Ther. 5:507-513 (1998);Stermanet al., Hum. Gene Ther. 7:1083-1089 (1998)が挙げられる。
レトロウイルスベクターは、本明細書で開示される核酸ベクター組成物としての使用のために包含される。pLASNおよびMFG-Sは、臨床試験において使用されたレトロウイルスベクターの例である(Dunbar et al, Blood 85:3048-305 (1995);Kohn et al., Nat. Med.1:1017-102 (1995);Malech et al, PNAS 94:22 12133-12138 (1997))。
本明細書で開示される方法および組成物において好適なベクターは、レンチウイルスベクター、例えば、Picanco-Castro. "Advances in lentiviral vectors: a patentreview." Recent patents on DNA & gene sequences 6.2 (2012): 82-90において開示されているものを含む。レトロウイルスのトロピズムは、外来外被タンパク質を組み込むこと、標的細胞の潜在的標的集団を拡大することにより、変更することができる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に形質導入または感染し、概して、高いウイルス力価を生じさせることができる、レトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子移入系の選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大6~10kbの外来配列のパッケージング能があるシス作用性の長い末端反復(LTR)から構成される。最小シス作用性LTRは、ベクターの複製およびパッケージングに十分なものであり、したがって、これらのベクターは、治療用遺伝子を標的細胞に組み込んで永続的導入遺伝子発現をもたらすために使用される。広く使用されているレトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびこれらの組合せに基づくものが挙げられる(例えば、Buchscheret al., J. Virol. 66:2731-2739 (1992);Johann et al, J. Virol. 66:1635-1640(1992);Sommerfelt et al, Virol. 176:58-59' (1990);Wilson et al, J. Virol.63:2374-2378 (1989);Miller et al, J. Virol. 65:2220- 2224 (1991);PCT/US94/05700を参照されたい)。本明細書における使用のための他のレトロウイルスベクターは、Sweeney,Nathan Paul, et al. "Delivery of large transgene cassettes by foamy virusvector." Scientific reports 7 (2017) 8085において開示されているような、泡沫状ウイルスを含む。
レンチウイルス移入ベクターを、一般に、当技術分野において周知の方法により産生することができる。例えば、米国特許第5,994,136号、同第6,165,782号、および同第6,428,953号、米国特許出願公開第2014/0315294号を参照されたく、Merten et al "Production of lentiviral vectors." MolecularTherapy-Methods & Clinical Development 3 (2016): 16017およびMerten, et al."Large-scale manufacture and characterization of a lentiviral vectorproduced for clinical ex vivo gene therapy application." Human genetherapy 22.3 (2010): 343-356に記載されており、これらの参考文献の各々は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、レンチウイルスは、インテグラーゼ欠損型レンチウイルスベクター(IDLV)である。IDLVを、記載されているように、例えば、Leavittet al. (1996) J. Virol. 70(2):721-728;Philippe et al. (2006) Proc. Nat II Acad.ScL USA 103(47): 17684-17689;およびWO06/010834において開示されているような、例えば、ネイティブレンチウイルスインテグラーゼ遺伝子の1つまたは複数の変異を含むレンチウイルスベクターを使用して、産生することができる。本明細書で開示される方法および組成物における使用のためのレンチウイルスは、特許第6,207,455号、同第5,994,136号、同第7,250,299号、同第6,235,522号、同第6,312,682号、同第6,485,965号、同第5,817,491号、同第5,591,624号において開示されている。
本明細書で開示される方法および組成物において好適なベクターは、非組込み型レンチウイルスベクター(IDLV)を含む。例えば、Ory et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 11382-1 1388;Dullet al. (1998) J. Virol. 72:8463-8471;Zuffery et al. (1998) J. Virol.72:9873-9880;Follenzi et al. (2000) Nature Genetics 25:217-222;米国特許出願公開第2009/054985号を参照されたい。ある特定の実施形態では、IDLVは、Leavittet al. (1996) J. Virol. 70(2):721-728に記載されているような、インテグラーゼタンパク質の64位に変異(D64V)を含むHIVレンチウイルスベクターである。本明細書における使用に好適なさらなるIDLVベクターは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第12/288,847号に記載されている。
本明細書で開示される方法および組成物において好適なベクターは、US2013/0136,768において開示されているような、組換えHCMVおよびRHCMVベクターを含む。
造血幹細胞、例えばCD34+細胞、への目的の核酸の導入のために本明細書において有用な核酸ベクターは、アデノウイルス35型を含む。免疫細胞(例えば、T細胞)への目的の核酸の導入のために本明細書において有用な核酸ベクターは、非組込み型レンチウイルスベクターを含む。例えば、Ory et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:11382-11388;Dull etal. (1998) J. Virol. 72:8463- 8471;Zuffery et al. (1998) J. Virol. 72:9873-9880;Follenziet al. (2000) Nature Genetics 25:217-222を参照されたい。
本明細書において開示される方法および組成物において好適なベクターは、Felberbaum,"The baculovirus expression vector system: a commercial manufacturing platformfor viral vaccines and gene therapy vectors." Biotechnology journal 10.5(2015): 702-714において論じられている、バキュロウイルス発現ベクター系(BEVS)を含む。
本明細書で開示される方法および組成物において好適なベクターは、例えば、Heister,Thomas, et al. "Herpes simplex virus type 1/adeno-associated virus hybridvectors mediate site-specific integration at the adeno-associated viruspreintegration site, AAVS1, on human chromosome 19." Journal of virology76.14 (2002): 7163-7173, and 5,965,441において開示されているような、HSV 1型(HSV-1)-AAVハイブリッドベクターを含む。例えば、米国特許第6,218,186号において開示されている、他のハイブリッドベクターを、使用することができる。
1つまたは複数の核酸ベクターおよび/またはウイルスベクターを含む細胞
ある特定の態様では、本開示の少なくとも1つの核酸ベクターまたは本開示の少なくとも1つのウイルスベクターを含む細胞が、本明細書において提供される。
一部の実施形態では、細胞は、細胞系または初代細胞から選択される。
一部の実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、細菌細胞、酵母細胞、または植物細胞であり、必要に応じて、哺乳動物細胞は、ヒト細胞または齧歯類細胞である。一部の実施形態では、細胞は、昆虫細胞であり、昆虫細胞は、lepidopteraの種に由来する。一部の実施形態では、lepidopteraの種は、Spodoptera frugiperda、Spodoptera littoralis、Spodoptera exigua、またはTrichoplusia niである。一部の実施形態では、昆虫細胞は、Sf9である。
一部の実施形態では、細胞は、造血細胞、造血前駆細胞、造血幹細胞、赤血球系列細胞、巨核球、赤血球系前駆細胞(EPC)、CD34+細胞、CD44+細胞、赤血球、CD36+細胞、間葉系幹細胞、神経細胞、腸細胞、腸幹細胞、消化管上皮細胞、内皮細胞、腸内分泌細胞、肺細胞、肺前駆細胞、エンテロサイト、肝臓細胞(例えば、肝細胞、肝星細胞、クッパー細胞(KC)、肝臓類洞内皮細胞(LSEC)、肝臓前駆細胞)、幹細胞、前駆細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、皮膚線維芽細胞、マクロファージ、脳微小血管内皮細胞(BMVEC)、神経系幹細胞、筋肉サテライト細胞、上皮細胞、気道上皮細胞、筋肉前駆細胞、赤血球系前駆細胞、リンパ系前駆細胞、Bリンパ芽球細胞、B細胞、T細胞、好塩基球性風土病性バーキットリンパ腫(EBL)、多染性赤芽球、表皮幹細胞、上皮幹細胞、胚性幹細胞、P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞、ケラチノサイト、膵臓β細胞、K細胞、L細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞、MDCK細胞、Vero細胞、CHO、BHK1、NS0、Sp2/0、HeLa、A549、および正染性赤芽球から選択される。
少なくとも1つの非GSH核酸が1つまたは複数のGSH遺伝子座に組み込まれている細胞
ウイルスベクターは、DNAおよびRNAウイルスを含み、これらは、細胞への送達後にエピソームゲノムまたは組み込まれたゲノムのどちらかを有する。遺伝子治療手順の総説については、Anderson, Science 256:808-813 (1992);Nabel & Felgner, TIBTECH11:211-217 (1993);Mitani & Caskey, TIBTECH 11:162-166 (1993);Dillon,TIBTECH 11: 167-175 (1993);Miller, Nature 357:455-460 (1992);Van Brunt,Biotechnology 6(10): 1149-1154 (1988);Vigne, Restorative Neurology andNeuroscience 8:35-36 (1995);Kremer & Perricaudet, British Medical Bulletin5 1(1):3 1-44 (1995);Haddada et al., in Current Topics in Microbiology andImmunology Doerfler and Bohm (eds.) (1995);およびYu et al., Gene Therapy 1:13-26(1994)を参照されたい。
したがって、ある特定の態様では、細胞のゲノム内のGSHに組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含む細胞であって、GSHが表3から選択される、細胞が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、GSH核酸は、非翻訳配列またはイントロンを含む。一部の実施形態では、GSHは、SYNTX-GSH1、SYNTX-GSH2、SYNTX-GSH3、およびSYNTX-GSH4から選択される。一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、本明細書に記載される1つまたは複数のGSH遺伝子座に組み込まれる。
細胞は、本明細書に記載される核酸ベクターのいずれか1つの少なくとも1つに組み込まれていることがあることが本明細書で企図される。一部の実施形態では、核酸ベクターのいずれか1つは、本明細書に記載されるウイルスベクターのいずれか1つにより細胞に送達される。
ある特定の実施形態では、細胞は、GSHに順配向で組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、逆配向でGSHに組み込まれる。
ある特定の実施形態では、細胞は、GSHに組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含み、少なくとも1つの非GSH核酸は、(a)プロモーターに作動可能に連結されている、または(b)プロモーターに作動可能に連結されていない。
一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、プロモーターに作動可能に連結されており、プロモーターは、(a)それが作動可能に連結されている核酸とは異種のプロモーター;(b)核酸の組織特異的発現を助長するプロモーター;(c)核酸の構成的発現を助長するプロモーター;(d)誘導性プロモーター;(e)動物DNAウイルスの最初期プロモーター;(f)昆虫ウイルスの最初期プロモーター;および(g)昆虫細胞プロモーターから選択される。
一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸に作動可能に連結されている誘導性プロモーターは、小分子、代謝物、オリゴヌクレオチド、リボスイッチ、ペプチド、ペプチドミメティック、ホルモン、ホルモンアナログ、および光から選択される作用因子によりモジュレートされる。一部の実施形態では、作用因子は、テトラサイクリン、キュメート、タモキシフェン、エストロゲン、およびアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、ラパマイシン、FKCsA、青色光、アブシジン酸(ABA)、およびリボスイッチから選択される。
一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸の組織特異的発現を助長するプロモーターは、造血幹細胞、造血CD34+細胞、および表皮幹細胞、上皮幹細胞、神経系幹細胞、肺前駆細胞、筋肉サテライト細胞、腸K細胞、ニューロン細胞、気道上皮細胞、または肝臓前駆細胞における組織特異的発現を助長するプロモーターである。
一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸に作動可能に連結されているプロモーターは、CMVプロモーター、β-グロビンプロモーター、CAGプロモーター、AHSPプロモーター、MNDプロモーター、ウィスコット・アルドリッチプロモーター、PKLRプロモーター、多角体(polh)プロモーター、および最初期1遺伝子(IE-1)プロモーターから選択される。
ある特定の実施形態では、細胞は、GSHに組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含み、少なくとも1つの非GSH核酸は、コーディングRNAをコードする配列を含む。一部の実施形態では、コーディングRNAをコードする配列は、標的細胞における発現のためにコドン最適化されている。一部の実施形態では、コーディングRNAをコードする少なくとも1つの非GSH核酸は、シグナルペプチドをコードする配列をさらに含む。
一部の実施形態では、細胞は、GSHに組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含み、コーディングRNAをコードする少なくとも1つの非GSH核酸は、(a)タンパク質またはその断片、好ましくは、ヒトタンパク質またはその断片;(b)治療用タンパク質もしくはその断片、抗原結合性タンパク質、またはペプチド;(c)自殺遺伝子、必要に応じて、単純ヘルペスウイルス-1チミジンキナーゼ(HSV-TK);(d)ウイルスタンパク質またはその断片;(e)ヌクレアーゼ、必要に応じて、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、メガTAL、またはCRISPRエンドヌクレアーゼ、(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼまたはそのバリアント);(f)マーカー、例えば、ルシフェラーゼまたはGFP;および/あるいは(g)薬物耐性タンパク質、例えば、抗生物質耐性遺伝子、例えばネオマイシン耐性をコードする配列を含む。
ウイルスタンパク質またはその断片は、構造タンパク質(例えば、VP1、VP2、VP3)または非構造タンパク質(例えば、Repタンパク質)を含み得る。一部の実施形態では、ウイルスタンパク質またはその断片は、(a)パルボウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、VP1、VP2、VP3、NS1、もしくはRep;(b)レトロウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、エンベロープタンパク質、gag、pol、もしくはVSV-G;(c)アデノウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、E1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、もしくは構造タンパク質(例えば、A、B、C);および/または(d)単純ヘルペスウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、ICP27、ICP4、もしくはpacを含む。
一部の実施形態では、細胞は、ウイルスの表面タンパク質であるウイルスタンパク質をコードする少なくとも1つの非GSH核酸を含む。一部の実施形態では、ウイルスタンパク質をコードする少なくとも1つの非GSH核酸は、ウイルスの表面タンパク質またはその断片をコードする。一部の実施形態では、(a)表面タンパク質もしくはその断片は、宿主において免疫応答を惹起する免疫原性表面タンパク質である、(b)表面タンパク質もしくはその断片は、シグナルペプチドをさらに含む、(c)表面タンパク質もしくはその断片をコードする遺伝子は、誘導性プロモーターに作動可能に連結されている、および/または(d)表面タンパク質もしくはその断片をコードする核酸は、自殺遺伝子をさらに含む。そのような核酸を含む細胞は、ワクチンとしての使用のためのin vitroで組換えウイルスタンパク質を産生することに有用なだけでなく、in vivoでのin vivo免疫化のためのウイルスタンパク質の発現のために対象に植え込むことにも有用である。ウイルスタンパク質のin vivo産生は、誘導性プロモーターのもとでのものであり得、したがって、in vivoで産生される免疫原量はもちろん、産生の継続期間も、誘導性プロモーターをモジュレートするシグナルまたは薬剤を使用して微調整することができる(例えば、本明細書に記載されているパルス状発現系のセクションを参照されたい)。
一部の実施形態では、in vitroでワクチンを産生するための、またはin vivo免疫化のための、そのような細胞は、ウイルス表面タンパク質を発現し、表面タンパク質は、コロナウイルス(例えば、MERS、SARS)、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、ヒトパピローマウイルス、デングウイルス血清型1、デングウイルス血清型2、デングウイルス血清型3、デングウイルス血清型4、ジカウイルス、ウエストナイルウイルス、黄熱病ウイルス、チクングニアウイルス、マヤロウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、またはニパウイルスのものである。一部の実施形態では、表面タンパク質は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質である。
一部の実施形態では、細胞は、GSHに組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含み、少なくとも1つの非GSH核酸は、ポリペプチドまたはその断片をコードする。好ましい実施形態では、そのようなポリペプチドまたはその断片は、治療用タンパク質またはその断片である。一部の実施形態では、タンパク質またはその断片をコードする配列を含む少なくとも1つの非GSH核酸は、ヘモグロビン遺伝子(HBA1、HBA2、HBB、HBG1、HBG2、HBD、HBE1、および/またはHBZ)、アルファ-ヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)、凝固第VIII因子、凝固第IX因子、フォン・ヴィレブランド因子、ジストロフィンまたは短縮型ジストロフィン、マイクロジストロフィン、ユートロフィンまたは短縮型ユートロフィン、マイクロユートロフィン、ウシェリン(USH2A)、GBA1、プレプロインスリン、インスリン、GIP、GLP-1、CEP290、ATPB1、ATPB11、ABCB4、CPS1、ATP7B、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、KIND1、INS、F8またはその断片(例えば、Bドメイン欠失ポリペプチドをコードする断片(例えば、VIII SQ、p-VIII))、IRGM、NOD2、ATG2B、ATG9、ATG5、ATG7、ATG16L1、BECN1、EI24/PIG8、TECPR2、WDR45/WIP14、CHMP2B、CHMP4B、Dynein、EPG5、HspB8、LAMP2、LC3b UVRAG、VCP/p97、ZFYVE26、PARK2/Parkin、PARK6/PINK1、SQSTM1/p62、SMURF、AMPK、ULK1、RPE65、CHM、RPGR、PDE6B、CNGA3、GUCY2D、RS1、ABCA4、MYO7A、HFE、ヘプシジン、可溶性形態(例えば、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体またはIL-1β受容体の)をコードする遺伝子、および嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)から選択される。
一部の実施形態では、少なくとも1つの非GSH核酸は、自殺タンパク質をコードする配列を含む。
一部の実施形態では、細胞は、GSHに組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含み、少なくとも1つの非GSH核酸は、抗原結合性タンパク質をコードする。一部の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、抗体またはその抗原結合性断片であり、必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、抗体、Fv、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、半抗体-scFv、タンデムscFv、Fab/scFv-Fc、タンデムFab’、一本鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(TandAb)、Fab/scFv-Fc、scFv-Fc、ヘテロ二量体IgG(CrossMab)、DART、およびダイアボディから選択される。
一部の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、TNFα、CD20、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-6、BLyS、APRIL、IFN-ガンマなど)、Her2、RANKL、IL-6R、GM-CSF、CCR5、または病原体(例えば、細菌毒素、ウイルスカプシドタンパク質など)に特異的に結合する。
一部の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ、アナキンラ、リツキシマブ、アバタセプト、トシリズマブ、ナタリズマブ、カナキヌマブ、アタシセプト、ベリムマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、フォントリズマブ、トラスツズマブ、デノスマブ、サリルマブ、レンジルマブ、ギムシルマブ、シルツキシマブ、レロンリマブ、およびそれらの抗原結合性断片から選択される。
GSHに組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含む細胞であって、少なくとも1つの非GSH核酸が、非コーディングRNAをコードする配列を含む、細胞が、本明細書においてさらに企図される。一部の実施形態では、非コーディングRNAは、lncRNA、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA、snoRNA、snRNA、scaRNA、および/またはガイドRNAを含む。一部の実施形態では、非コーディングRNAは、DMT-1、フェロポーチン、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、IL-1β受容体、変異タンパク質(例えば、変異HFE、CFTR)をコードする遺伝子から選択される遺伝子を標的とする。
一部の実施形態では、細胞は、GSHに組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含み、少なくとも1つの非GSH核酸は、標的細胞の内在性遺伝子の発現を増加または回復させる。一部の実施形態では、細胞は、GSHに組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含み、この少なくとも1つの非GSH核酸は、標的細胞の内在性遺伝子の発現を減少または消失させる。
一部の実施形態では、細胞は、GSHに組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含み、少なくとも1つの非GSH核酸は、(a)転写制御エレメント(例えば、エンハンサー、転写終結配列、非翻訳領域(5’または3’UTR)、近位プロモーターエレメント、遺伝子座調節領域(例えば、β-グロビンLCR、またはβ-グロビンLCRのDNase高感受性部位(HS))、ポリアデニル化シグナル配列)、および/または(b)翻訳制御エレメント(例えば、コザック配列、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後制御エレメント)をさらに含む。
一部の実施形態では、細胞は、細胞系または初代細胞から選択される。
一部の実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、細菌細胞、酵母細胞、または植物細胞であり、必要に応じて、哺乳動物細胞は、ヒト細胞または齧歯類細胞である。一部の実施形態では、細胞は、昆虫細胞であり、昆虫細胞は、lepidopteraの種に由来する。一部の実施形態では、lepidopteraの種は、Spodoptera frugiperda、Spodoptera littoralis、Spodoptera exigua、またはTrichoplusia niである。一部の実施形態では、昆虫細胞は、Sf9である。
一部の実施形態では、細胞は、造血細胞、造血前駆細胞、造血幹細胞、赤血球系列細胞、巨核球、赤血球系前駆細胞(EPC)、CD34+細胞、CD44+細胞、赤血球、CD36+細胞、間葉系幹細胞、神経細胞、腸細胞、腸幹細胞、消化管上皮細胞、内皮細胞、腸内分泌細胞、肺細胞、肺前駆細胞、エンテロサイト、肝臓細胞(例えば、肝細胞、肝星細胞、クッパー細胞(KC)、肝臓類洞内皮細胞(LSEC)、肝臓前駆細胞)、幹細胞、前駆細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、皮膚線維芽細胞、マクロファージ、脳微小血管内皮細胞(BMVEC)、神経系幹細胞、筋肉サテライト細胞、上皮細胞、気道上皮細胞、筋肉前駆細胞、赤血球系前駆細胞、リンパ系前駆細胞、Bリンパ芽球細胞、B細胞、T細胞、好塩基球性風土病性バーキットリンパ腫(EBL)、多染性赤芽球、表皮幹細胞、上皮幹細胞、胚性幹細胞、P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞、ケラチノサイト、膵臓β細胞、K細胞、L細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞、MDCK細胞、Vero細胞、CHO、BHK1、NS0、Sp2/0、HeLa、A549、および正染性赤芽球から選択される。
本開示の核酸ベクターもしくはウイルスベクターを含む細胞、またはGSHに組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含む細胞のさらなる説明が、以下に提供される。
細胞
本開示の核酸、核酸ベクターまたはウイルスベクターを含む細胞が、本明細書において提供される。本発明のさらなる目的は、本発明による核酸、核酸ベクターおよび/またはウイルスベクターによってトランスフェクト、感染、形質導入または形質転換された細胞に関する。用語「形質転換」は、細胞への「外来」(すなわち、外因性または細胞外)遺伝子、DNAまたはRNA配列の導入であって、その結果、細胞が、導入された遺伝子または配列を発現して、所望の物質、典型的には、導入された遺伝子または配列によりコードされるタンパク質または酵素を産生する、導入を意味する。導入されたDNAまたはRNAを受け取って発現する細胞は、「形質導入され」ている。
本発明の核酸または核酸ベクターを使用して、好適な発現系において本発明の組換えポリペプチドを産生することができる。用語「発現系」は、例えば、ベクターにより担持され、細胞に導入された外来DNAによりコードされるタンパク質の発現に、好適な条件下にある、細胞および適合性ベクターを意味する。
一般的な発現系としては、E.coli細胞およびプラスミドベクター、昆虫細胞およびバキュロウイルスベクター、ならびに哺乳動物細胞およびベクターが挙げられる。細胞の他の例としては、限定なく、原核細胞(例えば、細菌)および真核細胞(例えば、酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など)が挙げられる。具体的な例としては、E.coli、KluyveromycesまたはSaccharomyces酵母、哺乳動物細胞系(例えば、Vero細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞など)、ならびに初代または樹立哺乳動物細胞培養物(例えば、リンパ芽球、線維芽細胞、胚細胞、上皮細胞、神経の細胞、脂肪細胞などから産生されるもの)が挙げられる。例には、マウスSP2/0-Ag14細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63-Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(本明細書では、以降、「DHFR遺伝子」と呼ばれる)を欠くCHO細胞(Urlaub G et al; 1980)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL 1662、本明細書では、以降、「YB2/0細胞」と呼ばれる)なども含まれる。YB2/0細胞は、この細胞に発現されたときにキメラまたはヒト化抗体のADCC活性が増強されるので、好ましい。
本発明は、本発明に従って本発明の抗体またはポリペプチドを発現する組換え細胞を産生する方法であって、(i)本明細書に記載の組換え核酸、核酸ベクターまたはウイルスベクターをコンピテント細胞にin vitroまたはex vivoで導入するステップ、(ii)得られた組換え細胞をin vitroまたはex vivoで培養するステップ、ならびに(iii)必要に応じて、抗原結合性タンパク質(例えば、抗体)またはポリペプチド(例えば、インスリン)を発現および/または分泌する細胞を選択するステップからなるステップを含む方法にも関する。そのような組換え細胞を、本明細書に記載される様々なポリペプチドの産生に使用することができる。
本明細書で使用される場合の細胞は、本開示のベクターを含有することができる、および核酸によりコードされる発現産物(例えば、mRNA、タンパク質)を産生することが可能な、任意の型の細胞を含む。一部の態様での細胞は、接着細胞、または懸濁細胞、すなわち、懸濁液中で成長する細胞である。様々な態様での細胞は、培養細胞、または初代細胞、すなわち、生物、例えばヒト、から直接単離されたものである。細胞は、任意の細胞型のものであり得、任意の型の組織が起源のものであり得、任意の発生段階のものであり得る。
ある特定の態様では、抗原結合性タンパク質は、グリコシル化タンパク質であり、細胞は、グリコシル化コンピテント細胞である。様々な態様では、グリコシル化コンピテント細胞は、酵母細胞、糸状真菌細胞、原生動物細胞、藻類細胞、昆虫細胞、または哺乳動物細胞を含むがこれらに限定されない、真核細胞である。そのような細胞は、当技術分野において記載されている。例えば、Frenzel, et al., Front Immunol 4: 217 (2013)を参照されたい。様々な態様では、真核細胞は、哺乳動物細胞である。様々な態様では、哺乳動物細胞は、非ヒト哺乳動物細胞である。一部の態様では、細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞およびその派生物(例えば、CHO-K1、CHO pro-3)、マウス骨髄腫細胞(例えば、NS0、GS-NS0、Sp2/0)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)活性が欠損するように操作された細胞(例えば、DUKX-X11、DG44)、ヒト胎児腎293(HEK293)細胞またはその派生物(例えば、HEK293T、HEK293-EBNA)、アフリカミドリザル(greenAfrican monkey)腎細胞(例えば、COS細胞、VERO細胞)、ヒト子宮頸がん細胞(例えば、HeLa)、ヒトの骨の骨肉腫上皮細胞U2-OS、腺癌性ヒト肺胞基底上皮細胞A549、ヒト線維肉腫細胞HT1080、マウス脳腫瘍細胞CAD、胚性癌細胞P19、マウス胚線維芽細胞NIH 3T3、マウス線維芽細胞L929、マウス神経芽腫細胞N2a、ヒト乳がん細胞MCF-7、網膜芽細胞腫細胞Y79、ヒト網膜芽細胞腫細胞SO-Rb50、ヒト肝臓がん細胞Hep G2、マウスB骨髄腫細胞J558L、またはベビーハムスター腎(BHK)細胞(Gailletet al. 2007;Khan, Adv Pharm Bull 3(2): 257-263 (2013))である。
一部の実施形態では、ベクターを増幅または複製することを目的として、細胞は、一部の態様では、原核細胞、例えば、細菌細胞である。
本明細書に記載される少なくとも1つの細胞を含む細胞の集団も、本開示により提供される。一部の態様での細胞の集団は、記載されるベクターを含む細胞を、それらのベクターのいずれも含まない少なくとも1つの他の細胞に加えて含む、異種集団である。あるいは、一部の態様では、細胞の集団は、ベクターを含む細胞を主として含む(例えば、本質的にそれらの細胞からなる)、実質的に同種の集団である。一部の態様での集団は、集団内のすべての細胞が、ベクターを含む単一の細胞のクローンであり、したがって、集団のすべての細胞がそのベクターを含む、細胞のクローン集団である。本開示の様々な実施形態では、細胞の集団は、本明細書に記載のベクターを含む細胞を含むクローン集団である。
ある特定の態様では、細胞は、対象にとって自己または同種異系である、ヒト細胞である。一部の実施形態では、本発明の核酸は、ウイルスベクターによって形質導入されるか、または他の好適な方法(例えば、電気穿孔など)で形質転換される。そのような細胞は、疾患または状態、例えばがん、の長期の処置のために対象に移入される(例えば、移植される、植え込まれる、など)。
トランスジェニック生物
ある特定の態様では、細胞のゲノム内のGSHに組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含むトランスジェニック生物であって、GSHが表3から選択される、トランスジェニック生物が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、GSHは、SYNTX-GSH1、SYNTX-GSH2、SYNTX-GSH3、およびSYNTX-GSH4から選択される。
一部の実施形態では、トランスジェニック生物は、本開示の核酸ベクター、ウイルスベクターおよび/または細胞のいずれか1つを含む。一部の実施形態では、トランスジェニック生物は、本開示の細胞を含む。
トランスジェニック生物は、単細胞および多細胞生物を含む任意の生物に由来し得る。そのような生物は、動物、植物、真菌、細菌、原生生物、魚類などを包含する。一部の実施形態では、トランスジェニック生物は、哺乳動物または植物である。一部の実施形態では、トランスジェニック生物は、真菌(例えば、酵母)、細菌または原生生物(protest)である。一部の実施形態では、トランスジェニック生物は、魚類である。一部の実施形態では、トランスジェニック生物は、齧歯類(例えば、マウス、ラット)である。一部の実施形態では、トランスジェニック生物は、齧歯類または植物であり、必要に応じて、齧歯類は、マウスである。一部の実施形態では、トランスジェニック生物は、哺乳動物または植物であり、必要に応じて、哺乳動物は、齧歯類(例えば、マウス、ラット)、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ、ラマまたはウサギである。
トランスジェニック生物を生成するための生物の生殖系列の遺伝子改変は、本明細書に記載される方法および当技術分野において周知の方法を使用して、本開示の核酸ベクターおよびウイルスベクターのいずれか1つを導入することにより果たすことができる。
医薬組成物
ある特定の態様では、本開示の核酸ベクターのいずれか1つ、本開示のウイルスベクターのいずれか1つ、および/または本開示の細胞のいずれか1つを含む、医薬組成物が、本明細書において提供される。核酸ベクター、ウイルスベクター、および細胞の任意の組合せが、本明細書では企図され、そのような組合せは、強力な治療用医薬組成物を提供し得る。
医薬組成物は、担体および/または希釈剤をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、薬学的に許容される担体は、医薬品投与に適合する、任意のおよびすべての溶媒、分散媒、抗菌剤および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含むように意図されている。医薬活性物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と非適合性である場合を除いて、組成物におけるその使用が企図される。適合性を決定するために、様々な関連する因子、例えば、容積オスモル濃度、粘度、および/または塩基性度(baricity)が考慮され得る。補助活性化合物が組成物に組み込まれることもある。
本発明の医薬組成物は、その意図された投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例としては、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口、鼻腔内(例えば、吸入)、経皮、経粘膜、血管内、脳内、非経口、腹腔内、硬膜外、脊髄内、胸骨内、関節内、滑膜内、腫瘍内、くも膜下腔内、動脈内、心臓内、筋肉内、肺内、および直腸投与が挙げられる。ある特定の実施形態では、骨髄への直接注射が企図される。非経口、皮内または皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、次の構成成分を含み得る:滅菌希釈剤、例えば、注射用蒸留水、食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩;および等張性の調整用の薬剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHを、酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムで、調整することができる。非経口調製物を、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジまたは複数用量用バイアルに封入することができる。
注射可能な使用に好適な医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射用溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。例えば、リンゲル液および乳酸リンゲル液は、IV治療薬の製剤化用にUSPにより承認されており、これらの溶液は、一部の実施形態で使用される。ある特定の実施形態では、生物活性を保持するための賦形剤とベクターの適合性が、好適な方法に従って確立される。骨髄への静脈内投与または注射に好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、CremoPhor EL(商標)(BASF、Parsippany、NJ)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合に、組成物は、無菌でなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度に流動性でなければならない。それは、製造および保管条件下で安定していなければならず、細菌および真菌などの微生物の夾雑作用から保存される必要がある。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)およびこれらの好適な混合物を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用により、分散液の場合は必要粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。微生物の作用の阻害は、様々な抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって、それらが、本明細書に記載されるウイルス組成物の完全性/活性に影響を与えない範囲で、達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。
滅菌注射用溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて、上に列挙されている成分の1つまたは組合せと共に、適切な溶媒に添合し、その後、濾過滅菌することにより、調製することができる。一般に、分散液は、塩基性分散媒と上に列挙されているものからの他の必要成分とを含有する滅菌ビヒクルに活性化合物を添合することにより、調製される。
吸入による投与については、本明細書に記載されるウイルスベクターまたは核酸ベクターは、好適な噴射剤、例えば、二酸化炭素などのガスを含有する加圧された容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーから、エアロゾルスプレーの形態で送達される。
全身投与を経粘膜手段により行うこともできる。経粘膜投与のために、バリアを透過するために適切な浸透剤が、製剤に使用される。そのような浸透剤は、当技術分野において一般に公知であり、例えば、経粘膜投与のために、界面活性物質、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、点鼻薬または坐薬の使用によって果たすことができる。
核酸ベクターの送達
核酸を細胞に送達するための様々な技法および方法が、当技術分野において公知であり、GSHの一部分を含む非ウイルスベクター、または5’および3’GSH特異的相同性アームを含む核酸ベクターをはじめとする、本明細書に記載される核酸ベクターの送達における使用のために包含される。例えば、核酸を、脂質ナノ粒子(LNP)、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、リポプレックス、またはコア・シェル型ナノ粒子に製剤化することができる。典型的に、LNPは、核酸分子、1つまたは複数のイオン化可能なまたはカチオン性脂質(またはその塩)、1つまたは複数の非イオン性または中性脂質(例えば、リン脂質)、凝集を防止する分子(例えば、PEGまたはPEG-脂質コンジュゲート)、および必要に応じてステロール(例えば、コレステロール)で構成される。例示的な脂質ナノ粒子およびそれを調製するための方法は、例えば、WO2015/074085、WO2016081029、WO2015/199952、WO2017/117528、WO2017/075531、WO2017/004143、WO2012/040184、WO2012/061259、WO2011/149733、WO2013/158579、WO2014/130607、WO2011/022460、WO2013/148541、WO2013/116126、WO2011/153120、WO2012/044638、WO2012/054365、WO2008/042973、WO2010/129709、WO2010/144740、WO2012/099755、WO2013/049328、WO2013/086322、WO2013/086354、WO2013/086373、WO2014/008334、WO2011/075656、WO2011/071860、WO2009/132131、WO2010/088537、WO2010/054401、WO2010/054384、WO2010/054406、WO2010/054405、WO2010/048536、WO2009/082607、WO2012/016184、WO2014/152211、WO2017/049074、WO1996/040964、WO1999/018933、WO2009/086558、WO2010/129687、WO2010/147992、WO2010/042877、WO2009/108235、WO2014/081887、W02005/120461、WO2011/000106、WO2011/000107、WO2015/011633、WO2005/120152、WO2011/141705、WO2016/197133、WO2015/011633、WO2013/126803、WO2012/000104、WO2011/141705、WO2006/007712、WO2011/038160、WO2005/121348、WO2005/120152、WO2011/066651、WO2009/127060、WO2011/141704、WO2006/074546、WO2005/121348、WO2006/069782、WO2009/027337、WO2012/030901、WO2012/031043、WO2012/031046、WO2013/006825、WO2013/033563、WO2013/040429、WO2014/043544、WO2016/130963、WO2017/181026、およびWO2013/089151に記載されており、これらのすべての内容は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、核酸に加えて、脂質を次のモル比で含む:50%カチオン性脂質、10%非イオン性脂質(例えば、リン脂質、例えばジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC))、38.5%コレステロール、および1.5%PEG-脂質(例えば、2-[2-(w-メトキシ(ポリエチレングリコール2000)エトキシ]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(PEG2000-DMA))。
細胞に核酸を送達するための別の方法は、核酸を細胞により内在化されるリガンドとコンジュゲートさせることによる。例えば、リガンドは、細胞表面の受容体を結合し、エンドサイトーシスによって内在化され得る。リガンドを核酸中のヌクレオチドに共有結合で連結させることができる。核酸を細胞に送達するための例示的なコンジュゲートは、例えば、WO2015/006740、WO2014/025805、WO2012/037254、WO2009/082606、WO2009/073809、WO2009/018332、WO2006/112872、WO2004/090108、WO2004/091515、WO2017/177326に記載されており、これらのすべての内容は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
核酸を電気穿孔により細胞に送達することもできる。一般に、電気穿孔は、細胞の透過性を増加させることによって核酸が原形質膜を横断することを可能にするために、パルス電流を使用する。電気穿孔技法は、当技術分野において周知であり、核酸をin vivoでおよび臨床的に送達するために使用される。例えば、Andre et al., Curr Gene Ther. 2010 10:267-280;Chiarella et al, CurrGene Ther. 2010 10:281-286;Hojman, Curr Gene Ther. 2010 10: 128-138を参照されたく、これらのすべての内容は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。電気穿孔デバイスは、BTX(登録商標)Instruments(Holliston、MA)(例えば、AgilePulse In Vivo System)およびInovio(Blue Bell、PA)(例えば、Inovio SP-5P筋肉内送達デバイスまたはCELLECTRA(登録商標)3000皮内送達デバイス)を含むがこれらに限定されない、多くの会社から世界中で販売されている。電気穿孔を、核酸ベクターの投与後、投与前および/または投与中に使用することができる。電気穿孔を利用して核酸を送達するためのさらなる例示的な方法および装置は、例えば、米国特許第5,273,525号、同第6,520,950号、同第6,654,636号および同第6,972,013号に記載されており、これらのすべての内容は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
核酸をトランスフェクションにより細胞に送達することもできる。有用なトランスフェクション方法としては、脂質媒介トランスフェクション、カチオン性ポリマー媒介トランスフェクション、またはリン酸カルシウム沈降法が挙げられるが、これらに限定されない。トランスフェクション試薬は、当技術分野において周知であり、TurboFect Transfection Reagent(Thermo Fisher Scientific)、Pro-Ject Reagent(Thermo Fisher Scientific)、TRANSPASS(商標)P Protein Transfection Reagent(New England Biolabs)、CHARIOT(商標)Protein Delivery Reagent(Active Motif)、PROTEOJUICE(商標)Protein Transfection Reagent(EMD Millipore)、293フェクチン、LIPOFECTAMINE(商標)2000、LIPOFECTAMINE(商標)3000(Thermo Fisher Scientific)、FIPOFECTAMINE(商標)(Thermo Fisher Scientific)、FIPOFECTIN(商標)(Thermo Fisher Scientific)、DMRIE-C、CEFFFECTIN(商標)(Thermo Fisher Scientific)、OFIGOFECTAMINE(商標)(Thermo Fisher Scientific)、FIPOFECTACE(商標)、FUGENE(商標)(Roche、Basel、Switzerland)、FUGENE(商標)HD(Roche)、TRANSFECTAM(商標)(Transfectam、Promega、Madison、Wis.)、TFX-10(商標)(Promega)、TFX-20(商標)(Promega)、TFX-50(商標)(Promega)、TRANSFECTIN(商標)(BioRad、Hercules、Calif.)、SIFENTFECT(商標)(Bio-Rad)、Effectene(商標)(Qiagen、Valencia、Calif.)、DC-chol(Avanti Polar Lipids)、GENEPORTER(商標)(Gene Therapy Systems、San Diego、Calif.)、DHARMAFECT 1(商標)(Dharmacon、Lafayette、Colo)、DHARMAFECT 2(商標)(Dharmacon)、DHARMAFECT 3(商標)(Dharmacon)、DHARMAFECT 4(商標)(Dharmacon)、ESCORT(商標)III(Sigma、St.Louis、Mo.)、およびESCORT(商標)IV(Sigma Chemical Co.)を含むが、これらに限定されない。核酸を、当業者に公知のマイクロ流体工学方法によって細胞に送達することもできる。
in vivoまたはex vivoでの核酸の非ウイルス送達方法は、電気穿孔、リポフェクション(米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号、ならびに市販の試薬、例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標)を参照されたい)、マイクロインジェクション、バイオリスティック法、ビロソーム、リポソーム(例えば、Crystal, Science 270:404-410 (1995);Blaese et al., Cancer Gene Ther.2:291-297 (1995);Behr et al., Bioconjugate Chem. 5:382-389 (1994);Remy et al.,Bioconjugate Chem. 5:647-654 (1994);Gao et al., Gene Therapy 2:710-722 (1995);Ahmadet al., Cancer Res. 52:4817-4820 (1992);米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号、および同第4,946,787号を参照されたい)、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質核酸(lipidmucleicacid)コンジュゲート、裸のDNA、人工ビリオン、ウイルスベクター系(例えば、WO2007/014275に記載されているようなレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴、ワクシニアおよび単純ヘルペスウイルスベクター)、および薬剤増進DNA取込みを含む。例えば、Sonitron 2000システム(Rich-Mar)を使用する、ソノポレーションも、核酸の送達に使用することができる。
本明細書に記載の核酸を含むベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソームなど)を、in vivoでの細胞の形質導入のために生物に直接投与することもできる。あるいは、裸のDNAを投与することができる。投与は、注射、注入、局所的適用および電気穿孔を含むがこれらに限定されない、血液または組織との最終的な接触に分子を導入するために通常使用される経路のいずれかによる。そのような核酸を投与する好適な方法は利用可能であり、当業者に周知であり、1つより多くの経路を、特定の組成物を投与するために使用することができるが、特定の経路は、多くの場合、別の経路よりも迅速かつ有効な反応をもたらし得る。
造血幹細胞への、本明細書で開示される核酸ベクター組成物の導入のための方法は、例えば、米国特許第5,928,638号において開示されている。
本明細書で開示される核酸ベクター組成物を、診断、研究のための、または遺伝子治療(例えば、トランスフェクトされた細胞の宿主生物への再注入による)のための、ex vivo細胞トランスフェクションに使用することができる。一部の実施形態では、細胞は、対象生物から単離され、本明細書で開示される核酸ベクター組成物をトランスフェクトされ、対象生物(例えば、患者または対象)に再注入されて戻される。ex vivoトランスフェクションに好適な様々な細胞型は、当業者に周知である(例えば、患者から細胞を単離し、培養する方法の論述について、Freshney et al., Culture of Animal Cells, A Manual of BasicTechnique (3rd ed. 1994))およびそこに引用されている参考文献を参照されたい)。
一部の実施形態では、幹細胞は、細胞トランスフェクションおよび遺伝子治療のためのex vivo手順に使用される。幹細胞を使用する利点は、それらをin vitroで他の細胞型に分化させることができる、またはそれらを骨髄に生着させる哺乳動物(例えば、細胞のドナー)に導入することができることである。GM-CSF、IFN-γおよびTNF-αなどのサイトカインを使用して臨床的に重要な免疫細胞型にCD34+細胞をin vitroで分化させる方法は、公知である(Inaba et al., J. Exp. Med. 176: 1693-1702 (1992)を参照されたい)。
幹細胞は、公知の方法を使用して形質導入および分化のために単離される。例えば、幹細胞は、CD4+およびCD8+(T細胞)、CD45+(panb細胞)、GR-1(顆粒細胞)およびlad(分化した抗原提示細胞)(Inaba et al., J. Exp. Med. 176:1693-1702 (1992)を参照されたい)などの、望ましくない細胞を結合する抗体を用いて骨髄細胞をパニングすることにより、骨髄細胞から単離される。一部の実施形態では、使用されることになる細胞は、卵母細胞である。他の実施形態では、モデル生物に由来する細胞が使用され得る。これらは、ツメガエル、昆虫細胞(例えば、drosophilia)および線虫細胞に由来する細胞を含み得る。
キット
ある特定の態様では、本開示の核酸ベクターのいずれか1つ、本開示のウイルスベクターのいずれか1つ、本開示の細胞のいずれか1つ、および/または本開示の医薬組成物のいずれか1つを含む、キットが、ここで提供される。
一部の実施形態では、本明細書に開示の方法に従って同定される標的GSHへの遺伝子または核酸配列、およびその遺伝子または核酸配列の組込みを決定するためのプライマーセットの、挿入のためのキット。
一部の実施形態では、キットは、(a)本明細書に記載のベクター組成物と、ベクターの3’GSH特異的相同性アームと5’GSH特異的相同性アームの間に位置する制限部位間に位置する核酸の相同組換えによる組込みを決定するためのプライマー対とを含む。一部の実施形態では、キットは、組込み部位に及ぶプライマー対であって、少なくとも1つのGSH 5’プライマーおよび少なくとも1つのGSH 3’プライマーを含み、GSHが、本明細書で開示される方法に従って同定され、少なくとも1つのGSH 5’プライマーが、組込み部位の上流のGSHの領域に結合し、少なくとも1つのGSH 3’プライマーが、組込み部位の下流のGSHの領域に少なくとも結合する、プライマー対を含む。そのようなプライマー対は、陰性対照としての役割を果たすように機能することができ、組込みが起こっていないときには短いPCR産物を生じさせ、核酸挿入が起こったときには挿入された核酸を組み込んだPCR産物を生じさせないか、またはそれを組み込んだ長いPCR産物を生じさせる。
一部の実施形態では、キットは、(a)1つまたは複数のGSHベクターに含まれているGSH特異的シングルガイドおよびRNAガイド核酸配列と、(b)GSHベクターを含むGSHノックインベクターとを含むことができ、(a)または(b)の配列のうちの1つまたは複数は、本明細書に記載のベクターに含まれている。一部の実施形態では、GSHベクターは、GSH-CRISPR-Casベクターであるか、または本明細書に記載の遺伝子編集遺伝子を含むような他のGSH-遺伝子編集ベクターである。一部の実施形態では、GSH CRISPR-Casベクターは、GSH-sgRNA核酸配列およびCas9核酸配列を含む。
他の実施形態では、キットは、GSH 5’相同性アームおよびGSH 3’相同性アームを含む、GSHノックインドナーベクターをさらに含むことができ、GSH 5’相同性アームおよびGSH 3’相同性アームは、本明細書で開示される方法に従って同定されるゲノムセーフハーバー(GSH)における配列に少なくとも、約または最大で30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%相補的であり、GSH 5’および3’相同性アームは、GSH 5’相同性アームとGSH 3’相同性アームの間に位置する核酸配列の、相同組換えによる、ゲノムセーフハーバー内に位置する遺伝子座への挿入を可能にする(すなわち、ガイドする)。例示的な例として、一部の実施形態では、GSH Cas9ノックインドナーベクターは、SYNTX-GSH1 5’相同性アームおよびSYNTX-GSH1 3’相同性アームを含む、SYNTX-GSH1 Cas9ノックインドナーベクターであり、SYNTX-GSH1 5’相同性アームおよびSYNTX-GSH1 3’相同性アームは、SYNTX-GSH1ゲノムセーフハーバー遺伝子座に少なくとも、約または最大で30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%相補的であり、SYNTX-GSH1 5’および3’相同性アームは、GSH 5’相同性アームとGSH 3’相同性アームの間に位置する核酸の、相同組換えによる、SYNTX-GSH1ゲノムセーフハーバー内の遺伝子座への挿入をガイドする。
一部の実施形態では、キットは、GSH Cas9ノックインドナーベクターであるGSHベクターを含む。
一部の実施形態では、キットは、少なくとも1つのGSH 5’プライマーおよび少なくとも1つのGSH 3’プライマーをさらに含み、少なくとも1つのGSH 5’プライマーは、組込み部位の上流のGSHの領域に少なくとも、約または最大で30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%相補的であり、少なくとも1つのGSH 3’プライマーは、組込み部位の下流のGSHの領域に少なくとも、約または最大で30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%相補的である。
一部の実施形態では、キットは、2つのプライマー対を含むことができ、各プライマー対は陽性対照として機能する。例えば、一部の実施形態では、キットは、(a)組込み部位の上流のGSHの領域に結合するフォワードGSH 5’プライマーとGSH配列内の組込み部位に挿入された核酸の配列に結合するリバースGSH 5’プライマーとを含む少なくとも2つのGSH 5’プライマー;および(b)GSH配列における組込み部位に挿入された核酸の3’末端に位置する配列に結合するフォワードGSH 3’プライマーと組込み部位の下流のGSHの領域に結合するリバースGSH 3’プライマーとを含む少なくとも2つのGSH 3’プライマーを含む。そのような実施形態では、プライマー対は、陽性としての役割を果たすように機能し、組込みが起こったときにのみPCR産物を生じさせることができ、組込みが起こっていないときにはPCR産物を生じさせない。
一部の実施形態では、キットは、組込み部位の上流のGSHの領域に少なくとも80%相補的であるフォワードGSH 5’プライマーと、GSH配列内の組込み部位に挿入された核酸における配列に少なくとも、約または最大で30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%相補的であるリバースGSH 5’プライマーとを含む、少なくとも2つのGSH 5’プライマーを含み得る。
一部の実施形態では、キットは、GSH配列内の組込み部位に挿入された核酸の3’末端に位置する配列に少なくとも、約または最大で30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%相補的であるフォワードGSH3’プライマーと、組込み部位の下流のGSHの領域に少なくとも、約または最大で30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%相補的であるリバースGSH 3’プライマーとを含む、少なくとも2つのGSH 3’プライマーをさらに含み得る。
一部の実施形態では、キットは、本明細書に記載される核酸ベクターのいずれか1つを含む。
一部の実施形態では、キットは、本明細書に記載されるウイルスベクターのいずれか1つを含む。
一部の実施形態では、キットは、本明細書に記載される細胞のいずれか1つを含む。
一部の実施形態では、キットは、本開示の医薬組成物のいずれか1つを含む。
一部の実施形態では、キットは、核酸ベクター、ウイルスベクター、細胞および医薬組成物の任意の組合せを含む。
核酸、ウイルスベクター、細胞、および/または医薬組成物は、好適な容器にパッケージングされ得る。キットは、キットが設計される特定の用途を助長するための追加の構成成分を含み得る。加えて、本開示により包含されるキットは、キットの使用を開示または記載する使用説明資料も含み得る。
生物製剤の製造におけるGSHの使用
生物製剤を調製するための本明細書で同定されるGSH遺伝子座の使用が、本明細書において提供される。注目すべきことに、本明細書で同定されるGSH遺伝子座は、生物製剤を発現する遺伝子の安定した組込みを細胞に施すことにより生物製剤の大規模製造を可能にする点で特に有用である。
抗体、ペプチドおよび組換えタンパク質を含む、タンパク質に基づく治療薬は、製薬業界による開発における新製品の大部分を占めている(Ho & Chien 2014, PMID: 24186148)。そのような製品は、非哺乳動物(細菌、酵母、植物および昆虫細胞)、および哺乳動物系(齧歯類およびヒト由来の細胞)を含む、様々なプラットフォームで生産される。哺乳動物発現系は、これらの細胞または細胞系が、ヒトに見られるものと同様の翻訳後改変を有する大きい複雑なタンパク質を産生することができるので、通常、バイオ医薬品を製造するのに好ましいプラットフォームである。生物製剤製造に使用される様々な哺乳動物細胞系の中でも、ヒト由来の細胞系は、それらのグリコシル化機序が、齧歯類由来の細胞系(例えば、CHO、BHK1、NS0、Sp2/0)などの異なる細胞に由来する副産物に見られる免疫原性のリスクをなくすので、治療用糖タンパク質生産の基質として魅力的である。これらの非ヒト細胞系は、免疫原性グリカン、例えば、ガラクトース-α1,3-ガラクトース(α-ガラクトース)およびN-グリコリルノイラミン酸(NGNA)を生成し得る、異なる翻訳後改変経路を有する(Butlerand Spearman 2014, PMID: 25005678)。ヒト集団にはこれらの両方のN-グリカンに対する循環抗体が多く見られるので、そのような非ヒト細胞系を許容可能なグリコシル化プロファイルを有するクローンについてスクリーニングする必要がある(Dumont,J. et al PMID: 26383226)。
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、治療用タンパク質の生産に一般に使用されている異数性細胞である。CHO細胞染色体は、構造異常を有し、細胞増殖中に構造および数の変化を来す。増殖中に、それらは、DNA複製および修復のエラーならびに染色体分配の誤りに起因して、ゲノム変化、例えば、変異、欠失、重複および他の構造の変更を継続的に来す。結果として、他の一般に使用される細胞系、例えば、HEK293、MDCKおよびVero細胞と共に、これらの細胞は、染色体数の広い分布を有する。したがって、これらの細胞系は、細胞表現型または生産性に対するゲノムおよびエピゲノム多様性または変化の形態における異質性と関連する。
生物製剤の生産に影響を与え得るそのような異質性は、生物製剤を発現する導入遺伝子のランダムな組込みにより悪化する。ヒト細胞系生成のための現行のプロセスは、ゲノムへの目的の遺伝子のランダムな組込みに基づき、その結果、クローン多様性と呼ばれる、高いゲノムおよび表現型可変性を有する組換えクローンが生じることになる。この可変性は、製品の予測値に影響を与え、プロセスの合理化、および費用対効果の高い治療用糖タンパク質生産の達成を制約する。
加えて、ランダムに組み込まれた導入遺伝子の発現は、予測不可能であり、エピジェネティック効果に起因して経時的に不安定になる傾向がある。さらに、ランダムな組込みは、多くの場合、細胞あたり複数の組込み体を生じさせ、これにより、宿主細胞遺伝子が破壊または活性化される結果となる場合がある。バイオ医薬品業界は、組換えタンパク質、特にモノクローナル抗体、の収率および品質を改善するために相当な資金をつぎ込んでいる。このプロセスは、多くの場合、安定な細胞の異種集団からの高収率細胞クローンの選択で始まる。クローン多様性を、一部は、宿主細胞ゲノムの可塑性およびエピジェネティックインプリンティングにより、説明することができる。これは、反復される染色体再編、高い変異率およびゲノム不安定性(Vcelar et al. 2018 PMID: 29328552)、ならびに導入遺伝子発現に悪影響を与える非必須遺伝子の発現の抑制に反映される。ゲノム多様性はまた、「位置効果」として公知の、異なるゲノム遺伝子座における複数のコピーに挿入され得るベクターのランダムな組込みに起因して起こり、周囲のゲノム環境の重要性を強調する(Wilson,C. et al 1990 PMID: 2275824)。さらに、エピジェネティック制御はまた、導入遺伝子の発現に影響を及ぼし、酸素および栄養素レベルなどの環境条件によるまたは産生プロセス中の毒性副産物の蓄積による影響を受け得る。クローン異質性は、所望の性能を有する細胞系を見つけるために、時間のかかる労働集約的なスクリーニングを必要とする。クローン選択プロセスは、ハイスループットスクリーニングを使用する単一細胞クローニングを含むことがあるが、これは、本質的にランダムなプロセスである。
対照的に、GSH遺伝子座は、予測可能な発現に確実に使用され得る。第1に、それは、導入遺伝子のランダムな組込みにより誘導されるゲノム異質性をなくす。このようなことは、高忠実度相同組換え、および/またはヌクレアーゼにより開始される組換え(例えば、CRISPR)により媒介される。第2に、導入遺伝子は、安定した組込みばかりでなく安定した発現も可能にするゲノムの位置に挿入される。導入遺伝子が、生物製剤の生産に選択される細胞内の重要な遺伝子を破壊する心配がない。この安定的発現も予測可能である。GSHは、既知の転写環境を提供するので、例えば、近くの抑圧的(例えば、ヘテロクロマチン)環境による、導入遺伝子の「位置効果」もサイレンシングもない。結果として、GSH遺伝子座における導入遺伝子挿入は、細胞周期恒常性に影響を与えず、高いバイオ製品収率を可能にする。
したがって、生物製剤を製造する方法であって、(a)(i)本明細書に記載される核酸ベクターのいずれか1つを含む細胞、(ii)本明細書に記載されるウイルスベクターのいずれか1つを含む細胞、もしくは(iii)本明細書に記載される細胞のいずれか1つを、培養し、発現された生物製剤を回収するステップ;または(b)本明細書で企図されるトランスジェニック生物のいずれか1つから発現された生物製剤を回収するステップを含む方法が、本明細書において提供される。
一部の実施形態では、生物製剤は、抗原結合性タンパク質である。一部の実施形態では、生物製剤は、抗体またはその抗原結合性断片であり、必要に応じて、抗体またはその抗原結合性断片は、抗体、Fv、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、半抗体-scFv、タンデムscFv、Fab/scFv-Fc、タンデムFab’、一本鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(TandAb)、Fab/scFv-Fc、scFv-Fc、ヘテロ二量体IgG(CrossMab)、DART、およびダイアボディから選択される。
一部の実施形態では、生物製剤は、TNFα、CD20、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-6、BLyS、APRIL、IFN-ガンマなど)、Her2、RANKL、IL-6R、GM-CSF、またはCCR5に特異的に結合する。
一部の実施形態では、生物製剤は、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ、アナキンラ、リツキシマブ、アバタセプト、トシリズマブ、ナタリズマブ、カナキヌマブ、アタシセプト、ベリムマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、フォントリズマブ、トラスツズマブ、デノスマブ、サリルマブ、レンジルマブ、ギムシルマブ、シルツキシマブ、レロンリマブ、およびそれらの抗原結合性断片から選択される。
一部の実施形態では、生物製剤は、治療用タンパク質であり、必要に応じて、治療用タンパク質は、インスリンである。
抗原結合性タンパク質
本開示の抗原結合性タンパク質は、当技術分野において公知の抗原結合性タンパク質の多くの形態のいずれか1つをとり得る。様々な実施形態では、本開示の抗原結合性タンパク質は、抗体、または抗原結合性抗体断片、操作された抗体タンパク質産物(例えば、抗体の断片を含むもの)、リガンド結合性もしくは受容体結合性タンパク質またはその断片、または融合タンパク質の形態をとる。
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、従来の免疫グロブリン形式を有し、重鎖および軽鎖を含み、可変および定常領域を含む、タンパク質を指す。例えば、抗体は、同一の2対のポリペプチド鎖の「Y字型」構造であるIgGであって、各対が、1つの「軽」鎖(典型的には約25kDaの分子量を有する)および1つの「重」鎖(典型的には約50~70kDaの分子量を有する)を有する、IgGであり得る。抗体は、可変領域および定常領域を有する。IgG形式における可変領域は、一般に、約100~110またはそれより多くのアミノ酸であり、3つの相補性決定領域(CDR)を含み、主として抗原認識を担当し、異なる抗原に結合する他の抗体間で実質的に異なる。定常領域は、抗体が免疫系の細胞および分子を動員することを可能にする。可変領域は、各軽鎖および重鎖のN末端領域で作られており、その一方で、定常領域は、重鎖および軽鎖各々のC末端部分で作られている。(Janeway et al., "Structure of the Antibody Molecule and theImmunoglobulin Genes", Immunobiology: The Immune System in Health andDisease, 4th ed. Elsevier Science Ltd./Garland Publishing, (1999))。
抗体のCDRの一般構造および特性は、当技術分野において説明されている。手短に述べると、抗体足場において、CDRは、重鎖および軽鎖可変領域におけるフレームワーク内に埋め込まれており、そこでそれらは、抗原結合および認識を主として担当する領域を構成している。可変領域は、典型的に、少なくとも3つの重鎖または軽鎖CDR(Kabat et al., 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H., Bethesda, Md.;Chothia and Lesk, 1987, J. Mol.Biol. 196:901-917;Chothia et al., 1989, Nature 342: 877-883も参照されたい)を、フレームワーク領域(Kabatet al., 1991によりフレームワーク領域1~4、FR1、FR2、FR3、およびFR4と表記される;Chothia and Lesk, 1987, 上掲も参照されたい)内に含む。
CDRは、相補性決定領域(CDR)を指し、そのうちの3つが、軽鎖可変領域(CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3)の結合特性を構成し、3つが、重鎖可変領域(CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3)の結合特性を構成する。CDRは、抗体分子の機能活性に寄与し、足場またはフレームワーク領域を構成するアミノ酸配列により分離されている。正確な定義的なCDR境界および長さは、異なる分類および番号付けシステムに従う。それ故、CDRは、Kabat、Chothia、contactまたは任意の他の境界定義によって言及される。異なる境界にもかかわらず、これらのシステムの各々は、可変配列内のいわゆる「超可変領域」を構成するものが、ある程度、オーバーラップしている。したがって、これらのシステムによるCDR定義は、隣接フレームワーク領域に関しては長さおよび境界エリアが異なり得る。例えば、Kabat、Chothia、および/またはMacCallumら(Kabat et al., in "Sequences of Proteins of ImmunologicalInterest," 5th Edition, U.S. Department of Health and Human Services, 1992;Chothiaet al. (1987) J. Mol. Biol. 196, 901;およびMacCallum et al., J. Mol. Biol. (1996)262, 732、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
抗体は、当技術分野において公知の任意の定常領域を含み得る。ヒト軽鎖は、カッパおよびラムダ軽鎖として分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファまたはイプシロンとして分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEとして規定する。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むがこれらに限定されない、いくつかのサブクラスを有する。IgMは、IgM1およびIgM2を含むがこれらに限定されない、サブクラスを有する。本開示の実施形態は、抗体のすべてのそのようなクラスまたはアイソタイプを含む。軽鎖定常領域は、例えば、カッパ型またはラムダ型軽鎖定常領域、例えば、ヒトカッパ型またはラムダ型軽鎖定常領域であり得る。重鎖定常領域は、例えば、アルファ型、デルタ型、イプシロン型、ガンマ型またはミュー型重鎖定常領域、例えば、ヒトアルファ型、デルタ型、イプシロン型、ガンマ型またはミュー型重鎖定常領域であり得る。したがって、様々な実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のいずれか1つを含む、アイソタイプIgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMの抗体である。様々な態様では、抗体は、半減期/安定性を改善するために、または抗体をより発現/製造性に好適なものにするために、天然に存在する対応物と比べて1つまたは複数のアミノ酸改変を含む定常領域を含む。様々な事例では、抗体は、天然に存在する対応物に存在するC末端Lys残基が除去または切り取られている、定常領域を含む。
抗体は、モノクローナル抗体であり得る。一部の実施形態では、抗体は、哺乳動物、例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター、ヒトなどにより産生される天然に存在する抗体と実質的に同様である配列を含む。このことに関連して、抗体を、哺乳動物抗体、例えば、マウス抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ウマ抗体、ニワトリ抗体、ハムスター抗体、ヒト抗体などとみなすことができる。ある特定の態様では、抗体結合性タンパク質は、抗体、例えば、ヒト抗体である。ある特定の態様では、抗体結合性タンパク質は、キメラ抗体またはヒト化抗体である。用語「キメラ抗体」は、2つまたはそれより多くの異なる抗体からのドメインを含有する抗体を指す。キメラ抗体は、例えば、1つの種からの定常ドメイン、および第2の種からの可変ドメインを含有し得、またはより一般的には、少なくとも2つの種からのアミノ酸配列のストレッチを含有し得る。キメラ抗体はまた、同じ種内の2つまたはそれより多くの異なる抗体のドメインを含有し得る。用語「ヒト化された」は、抗体に関して使用されるとき、非ヒト供給源からのCDR領域を少なくとも有する抗体であって、元の供給源抗体よりも真のヒト抗体に類似する構造および免疫学的機能を有するように操作されている、抗体を指す。例えば、ヒト化することは、マウス抗体などの非ヒト抗体からのCDRをヒト抗体にグラフトすることを含み得る。ヒト化することはまた、アミノ酸置換を選択して非ヒト配列をヒト配列との類似性がより高いものにすることを含み得る。ヒト抗体重鎖および軽鎖定常領域についての配列情報をはじめとする情報は、Uniprotデータベースはもちろん、抗体操作および産生分野の当業者に周知の他のデータベース経由でも公開されている。例えば、IgG2定常領域は、Uniprot番号P01859としてUniprotデータベースから入手可能であり、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
抗体は、例えばパパインおよびペプシンなどの、酵素により断片に切断され得る。パパインは、抗体を切断して、2つのFab’断片および単一のFc断片を生じさせる。ペプシンは、抗体を切断して、F(ab’)断片およびpFc’断片を生じさせる。本開示の様々な態様では、本開示の抗原結合性タンパク質は、抗体の抗原結合性断片(別名、抗原結合性抗体断片、抗原結合性断片、抗原結合性部分)である。様々な事例では、抗原結合性抗体断片は、Fab’断片またはF(ab’)断片である。
抗体のアーキテクチャーは、少なくとも約12~150kDaの分子量範囲にわたり、単量体(n=1)から、二量体(n=2)までの、三量体(n=3)までの、四量体(n=4)までの、および潜在的にはより高次の、結合価(n)範囲を有する、多様な代替抗体形式を作出するために活用されており、そのような代替抗体形式は、本明細書では「抗体タンパク質産物」と呼ばれる。抗体タンパク質産物としては、完全抗体構造に基づくもの、ならびに完全抗原結合能を保持する抗体断片を模倣するもの、例えば、scFv、FabおよびVHH/VH(下で論じられる)が挙げられる。その完全な抗原結合部位を保持する最小抗原結合性断片は、もっぱら可変(V)領域からなるFv断片である。可溶性、可撓性アミノ酸ペプチドリンカーが、分子の安定化のためにV領域をscFv(一本鎖断片可変)断片に接続するために使用されるか、または定常(C)ドメインが、V領域に追加されてFab’断片が生成される。scFv断片とFab’断片の両方は、宿主細胞、例えば、原核生物宿主細胞において、容易に産生され得る。他の抗体タンパク質産物としては、ジスルフィドにより結合安定化されたscFv(ds-scFv)、一本鎖Fab’(scFab’)、ならびにダイアボディ、トリアボディおよびテトラボディのような二量体および多量体抗体形式、またはオリゴマー化ドメインに連結されたscFvからなる異なる形式を含むミニボディ(miniAb)が挙げられる。最小断片は、ラクダ科動物重鎖AbのVHH/VH、ならびに単一ドメインAb(sdAb)である。新規抗体形式を作出するために最も頻繁に使用されている基本単位は、約15アミノ酸残基のペプチドリンカーにより連結された重鎖および軽鎖からのVドメイン(VHおよびVLドメイン)を含む、一本鎖可変(V)ドメイン抗体断片(scFv)である。ペプチボディまたはペプチド-Fc融合体は、さらに別の抗体タンパク質産物である。ペプチボディの構造は、Fcドメイン上にグラフトされた生物活性ペプチドからなる。ペプチボディは、当技術分野において十分に説明されている。例えば、Shimamoto et al., mAbs 4(5): 586-591 (2012)を参照されたい。
他の抗体タンパク質産物としては、一本鎖抗体(SCA);ダイアボディ;トリアボディ;テトラボディなどが挙げられる。
様々な態様では、本開示の抗原結合性タンパク質は、これらの抗体タンパク質産物のいずれか1つを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。
様々な態様では、本開示の抗原結合性タンパク質は、scFv、Fab’、F(ab’)2、VHH/VH、Fv断片、ds-scFv、scFab’、半抗体-scFv、ヘテロ二量体Fab/scFv-Fc、ヘテロ二量体scFv-Fc、ヘテロ二量体IgG(CrossMab)、タンデムscFv、タンデムバイパラトピックscFv、Fab/scFv-Fc、タンデムFab’、一本鎖ダイアボディ、二量体抗体、多量体抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、miniAb、ラクダ科動物重鎖抗体のペプチボディVHH/VH、sdAb、ダイアボディ(一本鎖ダイアボディ、ホモ二量体ダイアボディ、ヘテロ二量体ダイアボディ、タンデムダイアボディ(TandAb)、自己二量体化するダイアボディ)、トリアボディ、テトラボディのいずれか1つを含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。任意の二重特異性抗原結合性タンパク質形式を使用してバイパラトピック抗原結合性タンパク質形式を生成することができることは、当業者には理解されるであろう。一部の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、二重親和性再標的化抗体(DART)である。一部の実施形態では、抗原結合性タンパク質は、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)である。
例示的な生物製剤
例示的な抗原結合性タンパク質としては、例えば、CD40、Toll様受容体(TLR)、OX40、GITR、CD27に、または4-1BBに結合する抗体、T細胞二重特異性抗体、抗IL-2受容体抗体、抗CD3抗体、OKT3(ムロモナブ)、オテリキシズマブ、テプリズマブ、ビシリズマブ、抗CD4抗体、クレノリキシマブ、ケリキシマブ、ザノリムマブ、抗CD11抗体、エファリズマブ、抗CD18抗体、エルリズマブ、ロベリズマブ、抗CD20抗体、アフツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、パスコリズマブ、リツキシマブ、抗CD23抗体、ルミリキシマブ、抗CD40抗体、テネリキシマブ、トラリズマブ、抗CD40L抗体、ルプリズマブ、抗CD62L抗体、アセリズマブ、抗CD80抗体、ガリキシマブ、抗CD147抗体、ガビリモマブ、Bリンパ球刺激因子(BLyS)阻害抗体、ベリムマブ、CTLA4-Ig融合タンパク質、アバタセプト、ベラタセプト、抗CTLA4抗体、イピリムマブ、トレメリムマブ、抗エオタキシン1抗体、ベルチリムマブ、抗a4-インテグリン抗体、ナタリズマブ、抗IL-6R抗体、トシリズマブ、抗LFA-1抗体、オデュリモマブ、抗CD25抗体、バシリキシマブ、ダクリズマブ、イノリモマブ、抗CD5抗体、ゾリモマブ、抗CD2抗体、シプリズマブ、ネレリモマブ、ファラリモマブ、アトリズマブ、アトロリムマブ、セデリズマブ、ドルリモマブアリトクス、ドルリキシズマブ、フォントリズマブ、ガンテネルマブ、ゴミリキシマブ、レブリリズマブ(lebrilizumab)、マスリモマブ、モロリムマブ、ペキセリズマブ、レスリズマブ、ロベリズマブ、タリズマブ、テリモマブアリトクス、バパリキシマブ、ベパリモマブ、アフリベルセプト、アレファセプト、リロナセプト、IL-1受容体アンタゴニスト、アナキンラ、抗IL-5抗体、メポリズマブ、IgE阻害剤、オマリズマブ、タリズマブ、IL12阻害剤、IL23阻害剤、ウステキヌマブなどが挙げられる。
例示的な生物製剤は、本明細書に記載の治療用タンパク質のいずれか1つもしくはその断片または当技術分野において公知のものを含み得る。例えば、生物製剤は、ヘモグロビン遺伝子(HBA1、HBA2、HBB、HBG1、HBG2、HBD、HBE1、および/またはHBZ)、アルファ-ヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)、凝固第VIII因子、凝固第IX因子、フォン・ヴィレブランド因子、ジストロフィンまたは短縮型ジストロフィン、マイクロジストロフィン、ユートロフィンまたは短縮型ユートロフィン、マイクロユートロフィン、ウシェリン(USH2A)、GBA1、プレプロインスリン、インスリン、GIP、GLP-1、CEP290、ATPB1、ATPB11、ABCB4、CPS1、ATP7B、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、KIND1、INS、F8またはその断片(例えば、Bドメイン欠失ポリペプチドをコードする断片(例えば、VIII SQ、p-VIII))、IRGM、NOD2、ATG2B、ATG9、ATG5、ATG7、ATG16L1、BECN1、EI24/PIG8、TECPR2、WDR45/WIP14、CHMP2B、CHMP4B、Dynein、EPG5、HspB8、LAMP2、LC3b UVRAG、VCP/p97、ZFYVE26、PARK2/Parkin、PARK6/PINK1、SQSTM1/p62、SMURF、AMPK、ULK1、RPE65、CHM、RPGR、PDE6B、CNGA3、GUCY2D、RS1、ABCA4、MYO7A、HFE、ヘプシジン、可溶性形態(例えば、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体またはIL-1β受容体の)をコードする遺伝子、および嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)から選択される、組換えポリペプチドまたはその断片を含み得る。
FDAにより承認された生物製剤の完全なリストは、World Wide Webのfda.gov/vaccines-blood-biologics/development-approval-process-cber/biological-approvals-yearで、およびPurple Book(World Wide Webのpurplebooksearch.fda.gov/で)において入手可能である。本明細書で使用される場合、生物製剤は、バイオシミラーを包含する。
製造方法
生物製剤を生産する方法も、本明細書において提供される。一部の実施形態では、方法は、生物製剤をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む宿主細胞を細胞培養培地で培養するステップ、および分泌された生物製剤を細胞培養培地から収集するステップを含む。宿主細胞は、本明細書に記載される宿主細胞のいずれかであり得る。様々な態様では、宿主細胞は、CHO細胞、NS0細胞、COS細胞、VERO細胞、およびBHK細胞からなる群から選択される。様々な態様では、宿主細胞を培養するステップは、宿主細胞の成長および拡大を支援するために成長培地で宿主細胞を培養するステップを含む。様々な態様では、成長培地は、細胞密度、細胞生存率および生産性をタイミングよく増加させる。様々な態様では、成長培地は、アミノ酸、ビタミン、無機塩、グルコース、および血清を、成長因子、ホルモンおよび接着因子の供給源として含む。様々な態様では、成長培地は、アミノ酸、ビタミン、微量元素、無機塩、脂質およびインスリンまたはインスリン様成長因子からなる、完全既知組成培地である。栄養素に加えて、成長培地は、pHおよび重量オスモル濃度の維持にも役立つ。いくつかの成長培地が市販されており、当技術分野において説明されている。例えば、Arora, "Cell Culture Media: A Review" Mater Methods 3:175(2013)を参照されたい。
様々な態様では、方法は、フィード培地で宿主細胞を培養するステップを含む。様々な態様では、方法は、フィード培地において流加モードで培養するステップを含む。組換えタンパク質生産方法は、当技術分野において公知である。例えば、Li et al., "Cell culture processes for monoclonal antibodyproduction" MAbs 2(5): 466-477 (2010)を参照されたい。
生物製剤を作製する方法は、細胞培養物またはその上清からのタンパク質を精製するための、および好ましくは、精製されたタンパク質を回収するための、1つまたは複数のステップを含み得る。様々な態様では、方法は、1つまたは複数のクロマトグラフィーステップ、例えば、親和性クロマトグラフィー(例えば、プロテインA親和性クロマトグラフィー、ヒスチジン(His)タグ用のニッケル樹脂)、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーを含む。様々な態様では、方法は、プロテインA親和性クロマトグラフィー樹脂を使用してタンパク質を精製するステップを含む。
様々な実施形態では、方法は、精製されたタンパク質などを製剤化するステップをさらに含み、それによって、精製されたタンパク質を含む製剤が得られる。そのようなステップは、Formulation and Process Development Strategies for Manufacturing,eds. Jameel and Hershenson, John Wiley & Sons, Inc. (Hoboken, NJ), 2010に記載されている。
様々な態様では、生物製剤は、融合タンパク質である。例えば、生物製剤は、ポリペプチド(例えば、Fcドメイン)に連結された抗原結合性タンパク質であり得る。したがって、本開示は、融合タンパク質を生産する方法をさらに提供する。様々な実施形態では、方法は、本明細書に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む宿主細胞を細胞培養培地で培養するステップ、および融合タンパク質を細胞培養培地から収集するステップを含む。
ウイルスベクターの製造におけるGSHの使用
組換えウイルスベクター(例えば、AAVベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなど)は、治療および研究における重要なツールである。例えば、組換えAAVベクターは、in vivo遺伝子移入のための臨床的に確証されたツールである。AAVベクターの適用は、多くの遺伝性疾患に大きな可能性をもたらすが、現行のベクター生産方法には、ヒトの試験の需要にばかりでなく、基礎生物学、毒物学および有効性の前臨床研究、特に、大量の高品質ベクターを必要とするある特定の遺伝性疾患が関係する研究の需要にも見合うように改善する余地がまだある。例えば、筋ジストロフィーの遺伝子治療は、体内の最も大きな臓器である筋肉における全身遺伝子移入を必要とする。多くの人々が罹患する他の遺伝性疾患、例えば、鎌状赤血球貧血または嚢胞性線維症は、組換えベクターの大規模な調製を必要とする。
AAV生産のための方法に最もよく使用されているものの1つは、ヒト胎児腎由来細胞(HEK293)プラットフォームである。ベクター生産の最も広く使用されているプロトコールは、HEK293細胞などの宿主細胞におけるシスおよびトランス構成成分(アデノウイルスから単離されたヘルパー遺伝子と共に、ベクタープラスミドおよびパッケージングプラスミド)を用いる、ヘルパーウイルス不使用の一過性トランスフェクション方法に基づく。一過性トランスフェクション方法は、ベクタープラスミド構築が簡単であり、アデノウイルスを含まない高力価AAVベクターを生成するものであるが、拡張性が限られており、臨床研究に供給するには対費用効果が低い。
第2の戦略は、細胞にAAVベクターならびにRepおよびCap遺伝子を運ぶためにrHSVベクターを利用する、組換え単純ヘルペスウイルス(rHSV)に基づくAAV生産系である。
第3の方法は、AAV Rep/cap遺伝子および目的の遺伝子を安定的に保有する、HeLaまたはA549に由来するAAV産生細胞系に基づく。AAVベクターカセットは、宿主ゲノムに安定的に組み込まれた(Clark et al., 1995, PMID: 8590738)、またはカセットを含有するアデノウイルスにより導入された。連続培養での安定した細胞系は、継代数が増すにつれて遺伝的不安定性に陥る。ランダムに組み込まれたウイルス遺伝子は、細胞不安定性を増大させ、安定した細胞繁殖能力を時期尚早に低下させ、ひいてはベクター生産性に影響を与える可能性がある。高生産性の安定した細胞クローンの選択は、費用が嵩み、何カ月もかかり得る。さらに、細胞繁殖は、組換えタンパク質の恒常性、翻訳後改変および分泌を変更し得る。
安定した細胞系を生じさせるAAVベクターを生成するためのGSHの使用(例えば、GSH遺伝子座での、例えばウイルスカプシドおよび/または組換えタンパク質(例えば、gag、pol、repなど)をコードする、遺伝子の組込み)は、高いベクター生産性に達する生産細胞の品質を意図された継代にわたって保証する。また、GSHの使用は、繁殖中の細胞プロテオスタシスの摂動を最小限に抑え、異なる生産バッチにわたって製品再現性を増す。同様の理論的根拠を、ベクター生産に必要な1つまたは複数の構成成分が、定義されたGSH遺伝子座に挿入される、他のウイルスベクター、例えば、アデノウイルス由来のベクター、レトロウイルスおよびレンチウイルス由来のベクター、ヘルペスウイルス由来のベクターならびにアルファウイルス由来のベクター、例えば、セムリキ森林ウイルス(SFV)ベクターの製造、に適用することができる。これらの構成成分の発現を、望ましくない早期発現を軽減して、ベクター構成成分の増幅およびその後の導入遺伝子パッケージングが始まる前にある特定の宿主細胞数に達するように、モジュレートすることができる(例えば、誘導性プロモーターを使用して、または後期プロモーターに対して早期プロモーターを使用して)。哺乳動物細胞系におけるベクターの製造プロセスは、製造および品質管理に関連する費用を低下させると同時に、患者の利益に直接影響を及ぼす細胞安定性、生産性、再現性および製品安全性を増大させることにより、大きな恩恵をGSHの使用から享受し得る。それ故、ランダムに生成される産生細胞系とは対照的に、rAAV生産のためのGSHへの指向性組換えは、プロセスを何カ月もまたはさらには何年も加速させることになる。
それ故、ある態様では、ウイルスベクターを製造する方法が本明細書において提供される。例えば、ウイルスアセンブリに必要な核酸配列、例えば、宿主細胞における発現のために少なくとも1つの発現調節配列に作動可能に連結されている、1つもしくは複数のウイルス構造タンパク質(gag、VP1、VP2、VP3など)および/または1つもしくは複数の複製タンパク質をコードするものを、宿主細胞のGSH遺伝子座に組み込むことができる。少なくとも1つの機能的ウイルス複製起点を含み、必要に応じて、GSH部位における組込みのための非GSH核酸をさらに含む核酸を、そのような細胞に提供し、ウイルスベクターを生産することができる。
したがって、一部の実施形態では、方法は、(1)(i)少なくとも1つの機能的ウイルス複製起点(例えば、少なくとも1つのITRヌクレオチド配列)を含み、必要に応じて、標的細胞における発現のためのプロモーターに作動可能に連結されている核酸をさらに含む、核酸配列と、(ii)宿主細胞における発現のための少なくとも1つの発現調節配列に作動可能に連結されている、1つまたは複数のウイルス構造タンパク質(例えば、カプシドタンパク質、例えば、gag、VP1、VP2、VP3、そのバリアント)をコードする少なくとも1つの遺伝子を含む核酸配列と、(iii)宿主細胞における発現のための少なくとも1つの発現調節配列に作動可能に連結されている1つまたは複数のウイルス複製タンパク質(例えば、Rep、pol)をコードする少なくとも1つの遺伝子を含む核酸配列とを含む宿主細胞を用意するステップであって、必要に応じて、少なくとも1つの複製タンパク質が、(a)宿主細胞における発現のための少なくとも1つの発現調節配列に作動可能に連結されている、機能的複製タンパク質をコードするRep52もしくはRep40コード配列またはその断片、および/あるいは(b)宿主細胞における発現のための少なくとも1つの発現調節配列に作動可能に連結されているRep78またはRep68コード配列を含み、(i)、(ii)および(iii)のうちの少なくとも1つが、宿主細胞ゲノム内の表3から選択される少なくとも1つのGSHに安定的に組み込まれ、少なくとも1つのベクターが、存在する場合/とき、宿主細胞ゲノムに安定的に組み込まれない(i)、(ii)および(iii)の残部を含む、ステップ;ならびに(2)宿主細胞を、組換えウイルスベクターが産生されるような条件下で維持するステップを含む。
一部の実施形態では、(ii)または(iii)は、GSHに組み込まれる。一部の実施形態では、(ii)および(iii)は、GSHに組み込まれる。
一部の実施形態では、少なくとも1つの機能的ウイルス複製起点(例えば、少なくとも1つのITRヌクレオチド配列)は、(a)ディペンドパルボウイルスITR、および/または(b)AAV ITR、必要に応じて、AAV2 ITRを含む。
ある特定の実施形態では、ITRは、野生型ITRに構造的に類似している、Rep結合エレメントおよびtrsを有する、末端回文構造である。ITRは、AAV1~AAV13およびAAVrh.10のいずれか1つから選択され得る。ある特定の実施形態では、ITRは、AAV2 RBEおよびtrsを有する。一部の実施形態では、ITRは、異なるAAVのキメラである。一部の実施形態では、ITRおよびRepタンパク質は、AAV5からのものである。一部の実施形態では、ITRは、合成のものであり、RBEモチーフおよびtrs GGTTGG、AGTTGG、AGTTGA、...RRTTRRから構成される。B/B’およびC/C’ステムからなる末端回文構造の典型的なT字形構造を、フォールディング予測(unafold.rna.albany.edu/?q=mfold/DNA-Folding-FormのURL(http)で入手可能)に基づいて、全体的な二次構造を維持する置換および挿入を用いて合成的に改変することもできる。ITR二次構造の安定性は、ギブズ自由エネルギー、デルタGによって示され、値が低いほど、すなわち、負が大きいほど、より大きい安定性を示す。完全長、145nt ITRは、計算ΔG=-69.91kcal/molを有する。BおよびCステム:GCCCGGGCAAAGCCCGGGCGTCGGGCGACCTTTGGTCGCCCGは、ΔG=-22.44kcal/molを有する。ΔG=-15kcal/mol~-30kcal/molである構造を生じさせる結果となる置換および挿入は、機能的に等価であり、野生型ディペンドパルボウイルスITRと異ならない。
一部の実施形態では、宿主細胞における発現のための少なくとも1つの発現調節配列は、(a)プロモーター、および/または(b)コザック様発現調節配列を含む。
一部の実施形態では、プロモーターは、(a)動物DNAウイルスの最初期プロモーター、(b)昆虫ウイルスの最初期プロモーター、(c)昆虫細胞プロモーター、または(d)誘導性プロモーターを含む。一部の実施形態では、動物DNAウイルスは、サイトメガロウイルス(CMV)、ディペンドパルボウイルス、またはAAVである。一部の実施形態では、昆虫ウイルスプロモーターは、lepidopteraのウイルス、またはバキュロウイルスからのものであり、必要に応じて、バキュロウイルスは、Autographa californicaマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMNPV)である。一部の実施形態では、プロモーターは、ポリへドリン(polh)または最初期1遺伝子(IE-1)プロモーターである。
一部の実施形態では、プロモーターは、誘導性プロモーターである。一部の実施形態では、誘導性プロモーターは、小分子、代謝物、オリゴヌクレオチド、リボスイッチ、ペプチド、ペプチドミメティック、ホルモン、ホルモンアナログ、および光から選択される作用因子によりモジュレートされる。一部の実施形態では、作用因子は、テトラサイクリン、キュメート、タモキシフェン、エストロゲン、およびアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、ラパマイシン、FKCsA、青色光、アブシジン酸(ABA)、およびリボスイッチから選択される。
一部の実施形態では、方法は、(a)AAV複製タンパク質、必要に応じて、Rep52および/もしくはRep78である、ウイルス複製タンパク質;ならびにまたは(b)AAVカプシドタンパク質であるウイルス構造タンパク質を含む。一部の実施形態では、AAV複製タンパク質またはAAVカプシドタンパク質は、AAV2のものである。
一部の実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物細胞または昆虫細胞である。
一部の実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物細胞であり、哺乳動物細胞は、ヒト細胞または齧歯類細胞である。一部の実施形態では、哺乳動物細胞は、HEK293、HEK293T、HeLa、およびA549から選択される。
一部の実施形態では、宿主細胞は、昆虫細胞であり、昆虫細胞は、lepidopteraの種に由来する。一部の実施形態では、lepidopteraの種は、Spodoptera frugiperda、Spodoptera littoralis、Spodoptera exigua、またはTrichoplusia niである。一部の実施形態では、昆虫細胞は、Sf9である。
一部の実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルス由来ベクター(例えば、AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス由来ベクター(例えば、レンチウイルス)、ヘルペスウイルス由来ベクター、およびアルファウイルス由来ベクター(例えば、セムリキ森林ウイルス(SFV)ベクター)から選択される。
ウイルスベクターを製造するそのような方法は、本明細書に記載される任意のまたはすべてのウイルスベクターならびに当技術分野において公知のものの製造における使用のためのものであることが本明細書で企図される。
感染症に対するワクチンの調製におけるGSHの使用
ある特定の態様では、感染症(例えば、細菌感染症、真菌感染症、ウイルス感染症)に対して対象を免疫化するための方法および組成物が、本明細書において提供される。
一部の実施形態では、本明細書において提供される組成物(例えば、GSH遺伝子座に組み込まれた非GSH核酸を含む、核酸ベクター、ウイルスベクター、および細胞)および方法は、例えば、免疫応答を誘導するおよび/または免疫原性タンパク質に対する抗体を産生するように1つまたは複数の用量で対象に投与することにより、ワクチンとして使用され得る組換えタンパク質、例えば、ウイルス、細菌または真菌の免疫原性表面タンパク質の、産生を助長する。
一部の実施形態では、本明細書において提供される組成物および方法は、ウイルス、細菌もしくは真菌の1つもしくは複数の表面タンパク質;または細菌もしくは真菌により産生される毒素(例えば、破傷風毒素、ジフテリア毒素、ボツリヌス毒素、Pseudomonas外毒素A)に対する抗原結合性タンパク質を産生し、その導入が対象を感染から保護し得る。一部の実施形態では、そのような抗原結合性タンパク質は、in vitroで生産され、対象に投与される。他の実施形態では、そのような抗原結合性タンパク質を含む細胞(例えば、前記タンパク質をコードする遺伝子を本明細書に記載されるGSH遺伝子座に組み込むことができる)を対象に投与することができる。一部の実施形態では、そのような遺伝子は、組織特異的プロモーターまたは誘導性プロモーターのもとにある。
一部の実施形態では、ウイルス、細菌または真菌の表面タンパク質をコードする核酸を、本開示のGSH遺伝子座に組み込むように、細胞を操作することができる。好ましい実施形態では、表面タンパク質は、ウイルスのものである。そのような細胞、またはそのような細胞を含む医薬組成物を、in vivo免疫化のための免疫原性ウイルスタンパク質源として対象に投与することができる。一部の実施形態では、細胞は、対象にとって自己である。他の実施形態では、細胞は、対象にとって同種異系である。そのような細胞は、in vivo免疫化におけるその使用後、そのような細胞が、自殺遺伝子をオンにすることにより消失され得るように、自殺遺伝子(例えば、GSHに組み込まれた)をさらに含み得る。
一部の実施形態では、(a)表面タンパク質もしくはその断片は、宿主において免疫応答を惹起する免疫原性表面タンパク質である、(b)表面タンパク質もしくはその断片は、シグナルペプチドをさらに含む、(c)表面タンパク質もしくはその断片をコードする核酸は、誘導性プロモーターに作動可能に連結されている、および/または(d)表面タンパク質もしくはその断片をコードする核酸は、自殺遺伝子をさらに含む。好ましい実施形態では、ウイルスタンパク質のin vivo産生は、誘導性プロモーターのもとでのものであり得、したがって、in vivoで産生される免疫原量はもちろん、産生の継続期間も、誘導性プロモーターをモジュレートするシグナルまたは薬剤を使用して微調整することができる(例えば、本明細書に記載されているパルス状発現系のセクションを参照されたい)。
一部の実施形態では、in vitroでワクチンを産生するための、またはin vivo免疫化のための、そのような細胞は、ウイルス表面タンパク質を発現し、表面タンパク質は、コロナウイルス(例えば、MERS、SARS)、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、ヒトパピローマウイルス、デングウイルス血清型1、デングウイルス血清型2、デングウイルス血清型3、デングウイルス血清型4、ジカウイルス、ウエストナイルウイルス、黄熱病ウイルス、チクングニアウイルス、マヤロウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、またはニパウイルスのものである。一部の実施形態では、表面タンパク質は、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質である。
疾患の予防または処置(例えば、遺伝子治療)におけるGSHの使用
ある特定の態様では、疾患を予防または処置する方法であって、それを必要とする対象に、本開示の核酸ベクター、ウイルスベクター、細胞、および/または医薬組成物のいずれか1つの有効量を投与するステップを含む方法が、本明細書において提供される。本明細書において提供される組成物および方法は、本開示の任意の疾患(例えば、例示的な疾患を参照されたい)を予防または処置するために好適であることが、本明細書では企図される。
一部の実施形態では、疾患は、感染症、内皮機能不全、嚢胞性線維症、心血管疾患、腎疾患、がん、ヘモグロビン異常症、貧血、血友病(例えば、血友病A)、骨髄増殖性障害、凝血異常、鎌状赤血球症、アルファサラセミア、ベータサラセミア、ファンコニ貧血、家族性肝内胆汁うっ滞症、皮膚の遺伝性障害(例えば、表皮水疱症)、眼の遺伝性疾患(例えば、遺伝性網膜ジストロフィー、例えば、レーバー先天性黒内障(LCA)、網膜色素変性(RP)、コロイデレミア、色覚異常、網膜分離症、シュタルガルト病、アッシャー症候群1B型)、ファブリー、ゴーシェ、ニーマン(Nieman)・ピックA、ニーマン・ピックB、GM1ガングリオシドーシス、ムコ多糖症(MPS)I型(ハーラー、シャイエ、ハーラー/シャイエ)、MPS II型(ハンター)、MPS VI型(マロトー・ラミー)、血液がん、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、肝硬変、肝細胞癌、膵炎、真性糖尿病、心筋症、関節炎、性腺機能低下症、心疾患、心臓発作、甲状腺機能低下症、耐糖能障害、関節症、肝線維症、ウイルソン病、潰瘍性大腸炎、クローン病、テイ・サックス病、神経変性障害、脊髄性筋萎縮症1型、ハンチントン病、カナバン病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、若年性慢性関節炎、乾癬、および強直性脊椎炎、および自己免疫疾患、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、運動失調)、炎症性疾患、炎症性腸疾患、クローン病、関節リウマチ、ループス、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患/COPD、肺線維症、シェーグレン病、高血糖障害、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、インスリン抵抗性糖尿病(例えば、メンデンホール症候群、ウェルナー症候群、妖精症、および脂肪萎縮性糖尿病)、脂質異常症、高脂血症、低密度リポタンパク質(LDL)上昇、高密度リポタンパク質(HDL)低下、トリグリセリド上昇、メタボリックシンドローム、肝臓疾患、腎疾患、心血管疾患、虚血、脳卒中、再灌流中の合併症、筋変性、萎縮、老化の症状(例えば、筋萎縮症、フレイル、代謝障害、軽度の炎症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、加齢性認知症および孤発型アルツハイマー病、前がん状態、およびうつ状態をはじめとする精神医学的状態)、脊髄損傷、動脈硬化症、感染性疾患(例えば、細菌性、真菌性、ウイルス性)、AIDS、結核、胚発生障害、不妊症、リソソーム蓄積症、活性化因子欠損症/GM2ガングリオシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症(aspartylglucoaminuria)、コレステロールエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠損症、シスチン症、ダノン病、ファーバー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(I、IIおよびIII型)、GM1ガングリオシドーシス、(乳児型、遅発乳児型/若年型および成人型/慢性)、ハンター症候群(MPS II)、I細胞病/ムコリピドーシスII、乳児型遊離シアル酸蓄積症(ISSD)、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損症、クラッベ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、ハーラー症候群、シャイエ症候群、ハーラー・シャイエ症候群、サンフィリッポ症候群、モルキオAおよびB型、マロトー・ラミー、スライ症候群、ムコリピドーシス、多種スルフェート欠損症(multiplesulfate deficiency)、神経セロイドリポフスチン症、CLN6病、ヤンスキー・ビールショースキー病、ポンペ病、濃化異骨症、サンドホフ病、シンドラー病、およびウォールマン病から選択される。
一部の実施形態では、感染症は、細菌感染症、真菌感染症、またはウイルス感染症である。
一部の実施形態では、感染症は、ウイルス感染症であり、ウイルス感染症は、コロナウイルス(例えば、MERS、SARS)、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、ヒトパピローマウイルス、デングウイルス血清型1、デングウイルス血清型2、デングウイルス血清型3、デングウイルス血清型4、ジカウイルス、ウエストナイルウイルス、黄熱病ウイルス、チクングニアウイルス、マヤロウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、またはニパウイルスによるものである。一部の実施形態では、ウイルス感染症は、SARS-CoV-2によるものである。
一部の実施形態では、核酸ベクター、細胞、および/または医薬組成物は、対象に、血管内、脳内、非経口、腹腔内、静脈内、硬膜外、脊髄内、胸骨内、関節内、滑膜内、くも膜下腔内、腫瘍内、動脈内、心臓内、筋肉内、鼻腔内、肺内、皮膚移植、または経口投与によって投与される。
一部の実施形態では、細胞は、対象にとって自己または同種異系である。
ある特定の態様では、細胞内のタンパク質のレベルおよび/または活性をモジュレートする方法であって、本開示の核酸ベクター、ウイルスベクター、および/または医薬組成物のいずれか1つを導入するステップを含む方法が、本明細書においてさらに提供される。
一部の実施形態では、タンパク質のレベルおよび/または活性は、上昇する。他の実施形態では、レベルおよび/または活性は、低下または消失する。
治療のために形質導入細胞をin vitroまたはex vivoで使用することの利点がある。第1に、標的細胞ゲノムのGSH遺伝子座における導入遺伝子の組込みの成功を、患者にそれらを投与する前に検証することができる。第2に、形質導入細胞を、それを必要とする対象に、組換えビリオンなしで投与することができる。これは、免疫応答の誘発に対するまたは組換えビリオンを不活性化する中和抗体の誘導に対する一切の懸念をなくす。したがって、形質導入細胞を安全に再投薬することができ、または用量を一切の有害効果なく漸増することができる。
一部の実施形態では、方法は、(a)CFTRもしくはその断片、(b)内在性の変異体形態のCFTRを標的とする少なくとも1つの非コーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、gRNA、アンチセンスRNA)、(c)内在性の変異体形態のCFTRを標的とするCRISPR/Cas系;および/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組合せをコードする核酸を含むウイルスベクターを、それを必要とする対象に投与するステップを含む。本明細書中で説明されるように、そのようなウイルスベクターは、GSH配列と隣接している前記核酸を含み、したがって、それらは、本開示のGSHに組み込まれる。一部の実施形態では、そのようなウイルスベクター、または前記核酸を含む核酸ベクターは、細胞にin vitroで形質導入され、形質導入された細胞が対象に投与される。好ましい実施形態では、細胞は、対象にとって自己である。一部の実施形態では、少なくとも1つの核酸ベクター、ウイルスベクター、または医薬組成物は、鼻腔内または肺内投与によって肺に送達される。一部の実施形態では、少なくとも1つの核酸ベクター、ウイルスベクター、または医薬組成物は、細胞において(a)CFTRもしくはその断片の発現を増加させる;および/または(b)内在性の変異体形態のCFTRの発現を減少させる。一部の実施形態では、核酸ベクター、ウイルスベクター、または医薬組成物は、嚢胞性線維症を予防または処置する。
任意の変異体形態の内在性タンパク質を有する対象が、(a)野生型タンパク質もしくはその機能的等価物(例えば、断片)、(b)変異型タンパク質をコードする内在性核酸を標的とする少なくとも1つの非コーディングRNA、(c)変異型タンパク質をコードする内在性核酸を標的とするCRISPR/Cas系、および/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれかの任意の組合せをコードする核酸を含む核酸ベクターまたはウイルスベクターを導入することによって恩恵を受け得ることは、当業者には理解されるであろう。したがって、そのような方法を、変異型タンパク質を野生型タンパク質またはその機能的等価物と置き換えることによって恩恵を受けることになる任意の疾患に罹患している対象に適用することができる。
一部の実施形態では、疾患を予防または処置する方法は、少なくとも1つの核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、または細胞を再投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、少なくとも1回の追加の量を再投与するステップは、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、または細胞の初回有効量を投与した後の処置において減弱後に行われる。一部の実施形態では、少なくとも1回の追加の量は、初回有効量と同じである。一部の実施形態では、少なくとも1回の追加の量は、初回有効量より多い。一部の実施形態では、少なくとも1回の追加の量は、初回有効量より少ない。ある特定の実施形態では、少なくとも1回の追加の量は、内在性遺伝子、および/または核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物もしくは細胞の核酸の発現に基づいて、増加または減少される。内在性遺伝子は、その発現が、例えば、疾患の診断および/または予後を示すまたはそれに関連している、バイオマーカー遺伝子を含む。
ある特定の態様では、疾患を予防または処置する方法は、核酸の発現をモジュレートする作用因子を対象に投与するまたはその作用因子と細胞を接触させるステップをさらに含む。一部の実施形態では、作用因子は、小分子、代謝物、オリゴヌクレオチド、リボスイッチ、ペプチド、ペプチドミメティック、ホルモン、ホルモンアナログ、および光から選択される。一部の実施形態では、作用因子は、テトラサイクリン、キュメート、タモキシフェン、エストロゲン、およびアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)から選択される。一部の実施形態では、方法は、作用因子を、間隔を置いて1回または複数回、再投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、作用因子の再投与は、核酸のパルス状発現を生じさせる結果となる。一部の実施形態では、間隔の間の時間および/または作用因子の量は、核酸から発現されるタンパク質の血清濃度および/または半減期に基づいて増加または減少される。
例示的な疾患
皮膚の遺伝性障害-表皮水疱症(EB)-のための遺伝子治療におけるGSHの使用
ある特定の態様では、本明細書に記載される方法および組成物は、EBなどの異なる皮膚障害を予防および/または処置するために使用され得る。
ヒト表皮は、別個の層状細胞層において組織化されたケラチノサイトで主として構成されている。基底ケラチノサイトの表皮基底膜への接着は、上皮中間径フィラメント網を皮膚係留細線維に連結させる多タンパク質複合体であるヘミデスモソーム(HD)によって媒介される。ヘミデスモソームは、いくつかの細胞質および膜貫通タンパク質のクラスター化によって形成される。HD1/プレクチンと水疱性類天疱瘡抗原1(BP230)とを含む細胞質HD斑構成成分は、原形質膜の細胞質表面において細胞骨格のエレメントのためのリンカーとしての役割を果たす。α6β4インテグリンと水疱性類天疱瘡抗原2(BP180)とを含むHDの膜貫通構成要素は、細胞内部を細胞外基質タンパク質に接続する細胞受容体として機能する。ヘミデスモソーム媒介接着は、LAMA3、LAMB3およびLAMC2として公知の3つの異なる遺伝子によりそれぞれコードされる別個のポリペプチドであるα3、β3、およびγ2により形成される主要基底層構成成分であるラミニン-5へのα6β4インテグリンの結合に依存する。ラミニン-5は、HD形成を促進するために表皮ケラチノサイトの基底面のα6β4インテグリンとはもちろん、基底膜ゾーン完全性を増強するために皮膚係留細線維中のVII型コラーゲンのアミノ末端NC-1ドメインとも、物理的に相互作用する。皮膚の完全性を維持する上でのこれらのタンパク質の関連性は、表皮水疱症(EB)を有する患者に存在する体細胞変異の同定によって立証されている。
様々な遺伝子(例えば、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、およびKIND1)における少なくとも16の遺伝子変異が、異なるタイプのEBと関連付けられている。ケラチノサイトは、皮膚-表皮結合部の維持に関与するタンパク質の合成を担当するので、この疾患を予防または処置するための遺伝子治療介入は、これらの細胞の遺伝子改変を必要とする。
ケラチノサイトは、皮膚-表皮結合部の維持に関与するタンパク質の合成を担当するので、この疾患を処置するための遺伝子治療介入は、これらの細胞の遺伝子改変を必要とすることになる。それ故、EBなどの皮膚障害のためのケラチノサイトの改変は、表皮幹細胞、つまり、ホロクローン形成細胞のゲノム(例えば、本開示のGSH遺伝子座)への導入遺伝子の安定した組込みを必要とする。P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞ホロクローンは、最大増殖能を有し、上皮幹細胞とみなされる。GSH遺伝子座の使用は、分化プロセスに影響を与えることなく、ケラチノサイトの分化全体を通して安定したかつ持続的な導入遺伝子発現を可能にし、皮膚同種異系移植片を再生する最大増殖能を可能にする。この方法は、EB患者に多大な恩恵をもたらし得る。
したがって、ある特定の態様では、表皮水疱症を予防または処置する方法であって、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、および/またはKIND1をコードする核酸を含む少なくとも1つの核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物および/または細胞が対象に投与される方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、細胞は、表皮幹細胞である。一部の実施形態では、表皮幹細胞は、ホロクローン形成細胞である。一部の実施形態では、ホロクローン形成細胞は、P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞である。一部の実施形態では、細胞は、ケラチノサイトである。一部の実施形態では、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、および/またはKIND1をコードする核酸は、組織特異的プロモーター、必要に応じて、表皮幹細胞、ホロクローン形成細胞、P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞、および/またはケラチノサイトの組織特異的プロモーターのもとにある。一部のそのような実施形態では、改変された表皮幹細胞、P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞、またはケラチノサイトが、皮膚移植片として皮膚表面に適用される。
腸内分泌KおよびL細胞においてプレプロインスリンを発現させるためのGSHの使用-I型糖尿病
ある特定の態様では、本明細書に記載される方法および組成物は、I型糖尿病などの、異常なインスリンレベルを伴う疾患を予防および/または処置するために使用され得る。
小腸内の、特に、十二指腸および空腸内の、腸内分泌細胞は、1型真性糖尿病を有する患者を処置するためのインスリン遺伝子移入戦略の魅力的な標的のように見える。K細胞およびL細胞は、管腔内の栄養素、特にグルコース、に応答するように生得的に特殊化されおり、血中にGIPおよびGLP-1を分泌し、グルコース誘発インスリン応答を強化する。正常な個体では、食事後にGIP、GLP-1およびインスリンが達する動態および血漿濃度は、非常に似ており、(Orskov et al., 1996, Fujita et al., 2004)、1型真性糖尿病を有する患者におけるGIPおよびGLP-1のものもそうである(Vilsbollet al., 2003)。さらに、K細胞およびL細胞は、成熟インスリンへのプロインスリンのプロセシングを可能にするPC1/3およびPC2ペプチダーゼを合成する。最終的に、K細胞およびL細胞は、1型真性糖尿病を有する患者の免疫系によって破壊されない(Vilsbollet al., 2003)。
胃腸の腸内分泌K細胞およびL細胞は、グルコース依存性インスリン分泌刺激ペプチド(GIP)およびグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)をそれぞれ放出する。それらの共通の発生学的起源に起因して、膵臓β細胞、K細胞およびL細胞は、(i)プロインスリンのインスリンへの変換に必要なPC1/3およびPC2ペプチダーゼの発現、(ii)GLUT-2グルコース輸送体の存在、(iii)それらのそれぞれのホルモンを貯蔵し、容易に分泌することができる顆粒を伴うホルモン分泌のためのグルコース依存性機序をはじめとする、顕著な類似性を示す(Spooner et al., 1970、Baggio & Drucker 2007)。それにもかかわらず、胃腸の腸内分泌細胞は、1型真性糖尿病を有する患者に見られる膵臓β細胞の自己免疫介在性崩壊を受けにくい(Vilsbollet al., 2003)。興味深いことに、健康な個体では、血漿GIPおよびGLP-1レベルは、食事後の血漿インスリンレベルの変化に動態的に一致する(Fujitaet al., 2004)。したがって、1型真性糖尿病を有する患者の胃腸の腸内分泌細胞を、プレプロインスリン遺伝子を発現するように(例えば、プレプロインスリンタンパク質またはその転写バリアント、例えば、NP_000198.1、NP_001172026.1、NP_001172027.1、および/またはNP_001278826.1をコードするインスリン遺伝子、INSを導入することにより)操作することは、食後の血糖の正常化を達成することになる。
ゴーシェ病のための遺伝子治療応用におけるGSHの使用
ある特定の態様では、本明細書に記載される方法および組成物は、ゴーシェ病を予防および/または処置するために使用され得る。
ゴーシェ病(GD、OMIM #230800、ORPHA355)は、最も一般的なスフィンゴリピドーシスである。GDは、第1染色体(1q21)上に位置するGBA1遺伝子の変異により引き起こされる、稀な常染色体劣性の遺伝性疾患である。この疾患は、グルコシルセラミド(GlcCer)をセラミドとグルコースに加水分解するリソソーム酵素、グルコセレブロシダーゼ(GCase、これはグルコシルセラミダーゼまたは酸性β-グルコシダーゼとも呼ばれる)の活性の著しい低下をもたらす。300を超えるGBA変異が、GBA1遺伝子に関して記載されている(PMID:18338393)。疾患表現型は、可変的であるが、3つの臨床形態が同定されている:1型は、最も一般的であり、典型的には神経学的損傷を引き起こさず、これに対して、2および3型は、神経学的障害により特徴付けられる。しかし、これらの差異は、絶対的なものではなく、神経障害性GDは、1型における軽度の末期の錐体外路症候群から2型における重度の末期の胎児水腫に及ぶ表現型連続体を表すという認識が高まっている。
GBA1遺伝子の変異は、GCase活性の著しい低下につながる。この欠損の帰結は、ゴーシェ細胞へのそれらの形質転換を誘導する、マクロファージにおけるGCase基質であるGlcCerの蓄積によるものと一般に考えられる。ゴーシェ細胞は、主として、骨髄、脾臓および肝臓に浸潤するが、脳のような他の臓器にも浸潤し、疾患の症状の主な要因とみなされる。単球/マクロファージ系列は、GlcCer源であるスフィンゴ糖脂質を大量に含有する赤血球系および白血球の排除におけるそれらの役割のため、優先的に変更される。神経学的病変の病態生理学機序は、依然として説明が乏しく、ニューロンにおけるGlcCerの代謝回転は低く、その蓄積は、残留GCase活性が劇的に低下された場合にのみ、すなわち、いくつかのタイプのGBA1変異によってのみ、有意である。脳に浸潤するゴーシェ細胞は、炎症誘発状態を引き起こし、神経学的合併症につながる可能性が高い。非常に多くのサイトカイン、ケモカインおよび他の分子-IL-1β、IL-6、IL-8、TNFα(腫瘍壊死因子)、M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)、MIP-1β、IL-18、IL-10、TGFβ、CCL-18、キトトリオシダーゼ、CD14s、およびCD163sを含む-が、ゴーシェ患者の血漿中に増加した量で存在し、血液学的合併症および組織合併症に関与し得る。
遺伝子置換療法は、ヒトGBA発現および機能を修復するための、例えば、自己CD34+幹細胞におけるGBA1遺伝子のex vivoでの修正による、治療法の選択肢を提供する。本開示のゲノムセーフハーバー遺伝子座(GSH)内への修正されたGBA1遺伝子の挿入後に、陽性CD34+細胞クローンを、細胞恒常性を変更することなく、単離および増幅することができる。操作された細胞(例えば、本開示のウイルスベクター、または核酸ベクターを含む細胞を形質導入されたもの)を、患者に注入して戻すことができ、その患者において、それらは、骨髄に生着し直され、グルコシルセラミドをセラミドにプロセシングすることができるGBA発現が修正された安定したクローンに由来する細胞系列を提供し、ひいては、修正された細胞のリソソーム内への毒性副産物の蓄積を減少させることができる。CD34+幹細胞にGBA遺伝子を挿入するためのGSH遺伝子座の使用は、GDの神経学的合併症を最小限に抑えることができる生理的タンパク質発現レベルを有する一方で重度のGD病態の主要駆動因子である、単球およびマクロファージをはじめとする複数の細胞系列への安全な分化を可能にする。
眼の遺伝性疾患のための遺伝子治療におけるGSHの使用
ある特定の態様では、本明細書に記載される方法および組成物は、遺伝性網膜ジストロフィー(IRD)などの眼疾患を予防および/または処置するために使用され得る。
遺伝性網膜ジストロフィー(IRD)は、進行性網膜変性を引き起こす遺伝子異常に関連する希少障害の一群を構成する。患者は、若年から中年期に始まる重度の両側性かつ不可逆的な視力喪失を有する。最も一般的なIRDに関連する200を超える遺伝子異常がある。患者からの分化した体細胞を多能性幹細胞に変換する能力は、複数のIRDを処置するための新たなツールをもたらす。これらの人工多能性幹細胞(iPSC)に由来する細胞は、可能性のある薬理剤および遺伝子治療の治療および毒性効果をスクリーニングおよび試験するために今では使用されている。より重要なこととして、iPSCは、自己細胞療法のための容易に利用可能な組織源を提供するためにも使用され得る。これまでのところ、iPSC技術の最大の潜在的恩恵は、網膜疾患の処置における恩恵である。
網膜は、眼内の複雑な神経血管組織である。それは、網膜および脈絡膜の循環によって栄養を与えられるニューロンの網を含有する。桿体および錐体光受容器と呼ばれる特殊化したニューロン細胞が、眼に入る光を捕捉する。光受容器内の光伝達、ならびに網膜内の双極、アマクリン、水平および神経節細胞による下流の神経情報処理を経て、光シグナルは、脳の一次および二次視覚野に伝達されて、視覚を可能にする(Chen et al., 2019 PMCID: PMC4470196)。これらの特殊化したニューロン細胞の機能は、ミュラーグリア細胞および網膜色素上皮(RPE)によって支持される。
患者特異的網膜細胞(例えば、対象にとって自己のもの)を得るための代替方法は、網膜系列への分化に患者由来の成体幹細胞を使用することである。皮膚線維芽細胞は、患者から日常的に単離され、山中因子の一過性発現により多能性幹細胞(iPSC)に変換され得る。修正された自己細胞を移植するための細胞療法と遺伝子治療の組合せは、複数の遺伝性網膜症に対処する可能性がある。自己iPSCに遺伝子治療ベクターを形質導入して、特定のゲノムセーフハーバー遺伝子座に機能的遺伝子を挿入することができる。
GSHの使用は、不完全な分化、標的とされる細胞のクローン拡大、または導入遺伝子発現に影響を与えることなどの、望ましくない効果を伴わない、所望の最終細胞型(例えば、RPE、光受容器)への安全かつ予測可能なiPSC分化を可能にするために、不可欠である。最終的には、特徴付けられたGSHの使用は、遺伝性網膜ジストロフィーのための長期の患者特異的な治療的処置を生じさせるための重要なツールを提供する。
したがって、IRDに罹患している患者に欠損しているタンパク質をコードする核酸が、本開示のGSH遺伝子座に組み込まれる。一部の実施形態では、核酸は、RPE65をコードする。RPE65の遺伝子治療は、幼児期に始まる重度の視力喪失を呈し得る、レーバー先天性黒内障(LCA)または網膜色素変性(RP)に対してFDAにより承認されている。一部の実施形態では、核酸は、X連鎖進行性網膜変性であるコロイデレミアを処置する、CHMをコードする。一部の実施形態では、核酸は、X連鎖性RPを処置する、RPGRをコードする。一部の実施形態では、核酸は、RPを処置する、PDE6Bをコードする。一部の実施形態では、核酸は、色覚異常を処置する、CNGA3をコードする。一部の実施形態では、核酸は、LCAを処置する、GUCY2Dをコードする。一部の実施形態では、核酸は、網膜層の早発性分裂により特徴付けられる疾患であるX連鎖性網膜分離症を処置する、RS1をコードする。一部の実施形態では、核酸は、最も一般的な網膜ジストロフィーであるシュタルガルト病を処置する、ABCA4をコードする。一部の実施形態では、核酸は、アッシャー症候群1B型を処置する、MYO7Aをコードする。この疾患に罹患している患者は、先天性難聴、RPからの早期視力喪失、および前庭機能不全を有する。
ヘモクロマトーシスのための遺伝子治療におけるGSHの使用
ある特定の態様では、本明細書に記載される方法および組成物は、ヘモクロマトーシスを予防および/または処置するために使用され得る。
遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)は、常染色体劣性遺伝性障害であり、白人に最も多く見られる遺伝性疾患である(アメリカ疾病管理予防センター;world wide webのcdc.govにて)。米国では推定100万名の人々が遺伝性ヘモクロマトーシスを有しており、これは、嚢胞性線維症および筋ジストロフィーを合わせた有病率を上回る(Bacon,Powell et al. 1999)。HHは、鉄吸収の異常制御により特徴付けられる。HH患者では、鉄吸収が正常に機能せず、身体が鉄を過剰に吸収する。高レベルの細胞内の鉄の堆積は、遺伝毒性の酸素ラジカルの形成および脂質過酸化を誘導し、それによって炎症誘発応答が確立され、その結果、いくつかの臓器の慢性的損傷が生じることになる。疾患の臨床的特色は、肝臓、心臓および膵臓の実質細胞内への鉄の何十年にも及ぶ継続的な蓄積の結果として生じる。最も進行した形態のHHは、肝硬変、肝細胞がん、真性糖尿病、性腺機能低下症、心筋症、関節炎、および皮膚色素沈着として現れる。腸の絨毛におけるエンテロサイトは、腸管腔からの鉄の頂端取込みを媒介し、次いで、鉄は、細胞から循環に排出される。頂端の二価金属輸送体-1(DMT1)は、鉄を管腔から細胞に輸送し、その一方で、側底膜結合輸送体であるフェロポーチンは、鉄をエンテロサイトから循環に排出する(Ezquer,Nunez et al. 2006)。HH患者は、経上皮鉄取込みの増加を示し、これは、体内鉄蓄積およびその後の慢性合併症(肝硬変、肝細胞癌、膵炎、心筋症、関節炎および糖尿病)につながる。
遺伝性ヘモクロマトーシスの最も一般的な原因は、第6染色体上で同定されたヒト恒常性鉄制御因子(HFE)遺伝子の変異である。HFEの変異は、HH症例のほぼ90%の原因となる。HFE遺伝子は、主要組織適合遺伝子複合体MHCクラスI様分子をコードする。HFEは、β2-ミクログロブリンに結合し、これが、原形質膜へのその局在を決定する(Waheed, Parkkila et al. 1997)。HHに関連するHFEについて記載されている主な変異は、第4エクソンにおける単一ヌクレオチド変化であり、これは、プロセシングされていないHFEタンパク質の282位におけるチロシンによるシステインアミノ酸置換(C282Y)を生じさせる結果となる(Feder,Gnirke et al. 1996)。この変異は、ゴルジ体における適切な翻訳後プロセシングに影響を与え、β2-ミクログロブリンとのその相互作用、および細胞膜内へのその後の局在化を妨げる。(Feder,Tsuchihashi et al. 1997、Waheed, Parkkila et al. 1997)。アスパラギン酸部分がHFEタンパク質の63位におけるヒスチジンに置き換わる(H63D)、HFE遺伝子の第2の変異も、報告されている(Gochee,Powell et al. 2002)。変異し、アンフォールドしたHFEタンパク質は、次いで、ER-ゴルジ網内に蓄積され、それによって、小胞体ストレス応答(UPR)の活性化が誘導され、ひいては、炎症誘発性プログラムおよび疾患のその後の転帰が悪化する(deAlmeida and de Sousa 2008、Liu, Lee et al. 2011)。HFEは、腸細胞において鉄の移入と鉄の排出の機構の両方の活性を協調させるものであり、肝臓におけるヘプシジン遺伝子の転写制御に関与する多タンパク質複合体の一部である。HFE機能の喪失は、鉄取込みの負の制御因子である、ヘプシジン発現の劇的な低下にも、関連している。HFEまたはヘプシジンの欠如は、その結果として、食事に含まれる鉄の取込みの増加、および異なる臓器における蓄積をもたらす。
疾患の別のより重度の形態は、若年性ヘモクロマトーシス(JH)である。この型のヘモクロマトーシスは、遺伝性であり、II型ヘモクロマトーシスと記載される。II型ヘモクロマトーシスは、影響を受ける遺伝子に依存してIIa型またはIIb型としてカテゴリー分けされる。IIaおよびIIb型は、早期鉄過剰症発症が、30歳より前に起こる。帰結は、重度の心疾患または心臓発作、甲状腺機能低下症、月経がほとんどないもしくは無月経、または性腺機能低下症である。ヘモクロマトーシスIIa型は、第19染色体におけるヘプシジン遺伝子の常染色体劣性変異によって生じる。
若年性ヘモクロマトーシスは、10歳以前から20歳代に概して起こる重度の鉄過剰症の発症により特徴付けられる。男性および女性が等しく罹患する。顕著な臨床的特色としては、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症、心筋症、耐糖能障害および糖尿病、関節症、ならびに肝線維症または肝硬変が挙げられる。肝細胞がんは、ときおり報告されているが、心臓病変が、罹病率および死亡率の主な原因である。
興味深いことに、この疾患のための唯一受け入れられている処置は、中世のものであり、赤血球中のヘム分子との非共有結合性配位によって主として運ばれる鉄負荷量を低減させるための定期的な放血(瀉血)を含む。現在のところ、血清フェリチンレベルが50ng/mL未満に低下し、トランスフェリン飽和度が30%未満の値に降下するまで(2~3年を要す)、最初は200~250mgの鉄を各々含有する1または2単位の血液(500~1000mL)が、毎週除去される。したがって、侵襲的な放血は少ないが、生涯にわたる維持療法は、トランスフェリン飽和度値を50%未満に、かつ血清トランスフェリンレベルを100ng/mL未満に保つことが必須となる(Wojcik, Speechley et al. 2002)。
異なる病因のヘモクロマトーシスのための治療は、腸上皮細胞による頂端鉄取込みを著しく阻害するエンテロサイト中のsiRNAの使用によるDMT1タンパク質合成の阻害である(Ezquer, Nunez et al. 2006)。二価金属輸送体DMT-1は、銅イオンも輸送することも最近示されており(Arredondoet al., 2003)、したがって、DMT-1遺伝子発現の阻害は、細胞からの銅の排出が減少される状態であるウイルソン病での肝傷害を軽減するのに有用である。HH患者のエンテロサイトにおける無調節の鉄取込みを減少させることは、いくつかの罹患した臓器内への鉄蓄積を制限することになる。
鉄負荷量を調節するための別のアプローチは、側底鉄排出を低減するための、エンテロサイトにおけるフェロポーチン遺伝子発現の阻害によるものである。この場合、吸収された鉄は、エンテロサイトの内部にのみ蓄積されるであろう。さらに、鉄の蓄積は、二重阻害効果を生じさせるIRE/IRP機序により頂端DMT-1輸送体遺伝子の発現の低減に至るはずである。さらに、一切の蓄積された鉄が、エンテロサイトの正常な脱落により腸管腔へと失われることになる。
野生型HFEが、エンテロサイトにおける本明細書に記載されるGSH遺伝子座に組み込まれる、本開示の方法および組成物、例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞は、HFE活性を回復させる、またDMT-1およびフェロポーチンの発現を正にモジュレートすることもでき、したがって、幅広い治療効果を有する。DMT-1をサイレンシングするために野生型HFEとsiRNAとを共発現させるおよび/または同時投与する、本明細書に記載の1つまたは複数の組成物を使用するコンビナトリアル戦略も、臨床的恩恵を高めることができる。
ペプチドヘプシジンは、鉄代謝の主要制御因子である。それは、主に肝臓において合成され、20~25アミノ酸ペプチドとして分泌される。ヘプシジン遺伝子の変異は、若年性ヘモクロマトーシスの原因となる(Roetto, Papanikolaou et al. 2003)。HFEは、肝臓におけるヘプシジンの発現をモジュレートする。ヘプシジンは、細網内皮マクロファージからおよび鉄の腸吸収を媒介するエンテロサイトからの鉄放出を負に制御する(Nemeth,Tuttle et al. 2004、Nemeth, Roetto et al. 2005、Rivera, Liu et al. 2005)。肝臓における本開示のGSH遺伝子座への、ヘプシジンを発現する核酸の安定した組込みは、身体による鉄の取込みを低減させ、鉄過剰症に関連する毒性を低下させ、それによって、すべての形態のヘモクロマトーシスを予防することができる。
ある特定の態様では、(a)ヘプシジンもしくはその断片、および/または恒常性鉄制御因子(HFE)もしくはその断片;(b)DMT-1、フェロポーチン、および/または内在性の変異体形態のHFEを標的とする、少なくとも1つの非コーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、gRNA、アンチセンスRNA);(c)DMT-1、フェロポーチン、および/または内在性の変異体形態のHFEを標的とする、CRISPR/Cas系;ならびに/あるいは(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組合せをコードする核酸を含む少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞)を使用して疾患を予防または処置する方法が、本明細書において提供される。
一部の実施形態では、断片は、生物活性断片である。
一部の実施形態では、対象に、
a)ヘプシジンまたはその断片(例えば、肝細胞におけるもの);
b)HFEまたはその断片(例えば、肝細胞またはエンテロサイトにおけるもの);
c)内在性の変異体形態のHFEを標的とする、少なくとも1つの非コーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、gRNA、siRNA、アンチセンスRNA)(例えば、肝細胞またはエンテロサイトにおけるもの);
d)DMT-1を標的とする、少なくとも1つの非コーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、gRNA、アンチセンスRNA)(例えば、エンテロサイトにおけるもの);
e)フェロポーチンを標的とする、少なくとも1つの非コーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、gRNA、アンチセンスRNA)(例えば、エンテロサイトにおけるもの);あるいは
f)a)~e)dのいずれか1つの2つまたはそれより多くの組合せ
をコードする核酸を含む組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞(例えば、肝細胞、エンテロサイト))が少なくとも投与される。
一部の実施形態では、方法は、b)~e)のいずれか1つの2つまたはそれより多くの組合せを含む。
一部の実施形態では、組換えビリオンまたは医薬組成物は、a)細胞におけるHFEもしくはその断片および/またはヘプシジンもしくはその断片の発現を増加させる;ならびに/あるいはb)細胞におけるDMT-1、フェロポーチン、および/または内在性の変異体形態のHFEの発現を減少させる。一部の実施形態では、少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞)は、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、および/またはウイルソン病を予防または処置する。
炎症性腸疾患(IBD)
炎症性腸疾患(IBD)は、ヒト消化管の慢性炎症を伴う一連の障害を含む。IBDの最も一般的な形態は、潰瘍性大腸炎およびクローン病である。これらは、慢性再発性腸炎により特徴付けられる複雑な多因子障害である。病因は、大部分が依然として不明であるが、最近の研究は、遺伝的要因、環境、微生物叢、および自己免疫応答が、病態形成に寄与する要因であることを示唆している(Hendrickson, Gokhale et al. 2002)。米国では推定300万名の人々がIBDと診断されており(world wide webのcdc.gov/ibd/data-statistics.htmにて)、毎年70,000名が、新たにクローン病または潰瘍性大腸炎と診断される。現在のところ、これらの有痛の障害の治療法はなく、処置は、63億ドルの推定年間経済的医療負担に相当する(Limanskiy,Vyas et al. 2019)。IBDに関連する多因子構成成分は、NFkB経路により活性化される遺伝子によって基本的に媒介される、炎症誘発性プログラムの活性化に収束する。IBD病理生物学を媒介するIBD中に誘導される主な炎症誘発性サイトカインは、TNFα、IL-1β、IL-12およびIL-6である。
一部の実施形態では、少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞)は、可溶性形態のTNFα受容体、可溶性形態のIL-6受容体、可溶性形態のIL-12受容体、および/または可溶性形態のIL-1β受容体を発現させるために使用される。これらの可溶性形態の前記受容体は、小腸粘膜固有層(lamina propia)に分泌され得、そこでそれらはリガンド(例えば、炎症誘発性サイトカイン)を特異的に中和する。
可溶性形態の膜結合型受容体は、可溶性分泌形態のその受容体をコードする遺伝子を送達することにより発現され得る。例えば、TNFαの17kDa可溶性部分は、26kDa II型膜貫通アイソフォームのTNFα変換酵素(TACE;ADAM-17)によるタンパク質分解的切断後に、細胞から放出されることが公知である(Kriegler et al. (1988) Cell 53:45-53)。したがって、シグナルペプチド(例えば、IL-2シグナルペプチド;例えば、Ardestaniet al. (2013) Cancer Res. 73:3938-3950を参照されたい)に融合された17kDa部分(または細胞外ドメインの任意の所望の部分、例えば、リガンドと相互作用して拮抗/中和されることになる部分)をコードする遺伝子を含む本開示の組換えビリオンを、それを必要とする対象(例えば、IBDまたは他の炎症性障害に罹患している対象)にin vivoで送達して、前記対象において可溶性形態のTNFαを発現させることができる。あるいは、分泌される可溶性形態の膜タンパク質をコードする遺伝子を含むそのようなビリオンを、in vitroまたはex vivoで、自己細胞または同種異系細胞のどちらかに形質導入することができ、それを必要とする対象に前記細胞を移入して、対象を処置することができる。同様の戦略を任意の膜結合タンパク質に使用することができる。
ある特定の態様では、(a)可溶性形態のTNFα受容体、可溶性形態のIL-6受容体、可溶性形態のIL-12受容体、および/または可溶性形態のIL-1β受容体;(b)TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体および/またはIL-1β受容体を標的とする少なくとも1つの非コーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、gRNA、アンチセンスRNA);(c)TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体および/またはIL-1β受容体を標的とするCRISPR/Cas系;ならびに/あるいは(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組合せをコードする核酸を含む、少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞)が、本明細書において提供される。
一部の実施形態では、少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞)は、a)細胞における可溶性形態のTNFα受容体、可溶性形態のIL-6受容体、可溶性形態のIL-12受容体または可溶性形態のIL-1β受容体の発現を増加させる;および/あるいはb)細胞におけるTNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体またはIL-1β受容体の発現を減少させる。
一部の実施形態では、少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞)は、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、若年性慢性関節炎、乾癬、および/または強直性脊椎炎を予防または処置する。
したがって、前記治療用遺伝子および/または治療剤を含む本開示の少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞)は、対象における慢性炎症をモジュレートし、T細胞、NK細胞、および他のエフェクター免疫細胞の活性化を減少させることにより治療の恩恵をもたらし、損傷した上皮バリアのその後の修復を可能にする。治療の恩恵を、本明細書において提供される組合せ戦略によってさらに高めることができる。
オートファジー関連疾患
本明細書に記載されるGSH遺伝子座を利用する本開示の方法および少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞)は、オートファジー-リソソーム経路の極めて重要な構成成分をモジュレートするために使用され得る。オートファジーは、分化および発生、細胞および組織恒常性、タンパク質およびオルガネラ品質管理、代謝、免疫、ならびに老化および多様な疾患に対する防御において極めて重要な役割を果たす。マクロオートファジー形態のオートファジー(本明細書では以降、オートファジーと呼ばれる)は、細胞生体エネルギーを(細胞質構成成分を再循環させることにより)および細胞質の品質を(タンパク質凝集体、損傷したオルガネラ、脂質滴、および細胞内病原体を消失させることにより)調節する、進化的に保存されたリソソーム分解経路である(Levine, Packer et al. 2015)。加えて、リソソーム分解とは無関係に、オートファジー機構を、ファゴサイトーシス、アポトーシスによる死細胞のクリアランス、分泌、エキソサイトーシス、抗原提示、および炎症シグナル伝達の制御のプロセスに配備することができる。広範な細胞機能の結果として、オートファジー経路は、老化ならびにある特定のがん、感染症、神経変性障害、代謝性疾患、炎症性疾患および筋肉疾患に対する防御に肝要な役割を果たす(Levine,Packer et al. 2015)。
非常に多くの疾患が、望ましくない潜在的に細胞傷害性の細胞残屑、例えば、ミスフォールディングしたタンパク質凝集体、核酸、および/またはミトコンドリアなどの損傷したオルガネラの小片、の蓄積に関連している。オートファジーはまた、脂質を分解し、脂肪酸の異化利用を可能にし、ガングリオシドーシス、例えば、GM1、テイ・サックス病などの、脂肪酸代謝疾患に対して多大な影響を及ぼす。リソソーム蓄積障害などのいくつかの稀な常染色体障害は、蓄積された「細胞のゴミ」を分解することができないことに関連しており、分解できないことの結果として、一般に、低レベルだが慢性的な炎症性プログラムが開始されることになり、組織損傷およびがんなどの複数の深刻な帰結に至る。
損傷関連分子パターン(DAMP)として公知の、蓄積された細胞質材料は、インフラマソームタンパク質のTLR1~10、cGAS、IFI16、RIG-I、MDA5、NLRPファミリーを含む、無数のパターン認識受容体(PRR)のリガンドであると考えられる。外来および自己分子を感知すると、PRRは、NFkBシグナル伝達経路、IFN-I経路、IFN-II経路、IFN-III経路、およびオートファジー経路(AMPK、ベクリンI、PI3K経路を含む)の活性化などの、基本的な細胞プロセスを実行する自己分泌および傍分泌能力によって複数のシグナル伝達カスケードを誘導する。異なる事象が栄養飢餓状態または運動などのオートファジープログラムを開始させることが提唱されている。血糖調節薬メトホルミンなどのAMPK活性化剤が、オートファジーを活性化し、実験動物の寿命を延ばすことは公知である。オートファジーの活性化における第1の分子事象は、Atgファミリーのタンパク質などのタンパク質の集合を誘発する異なるカスケード事象による、細胞内、サイトゾル、二重膜構造(オートファゴソーム)の形成である。オートファゴソームは、細胞内に存在するDAMPおよび/またはPAMPを封入し、これは、膜の核形成段階として公知の現象である。オートファジー経路の次のステップは、オートファゴソームの伸長および閉鎖である。最後に、この成熟し、完全に形成されたオートファゴソーム(antophagosomes)は、低pH環境で幅広く作用するヌクレアーゼおよびプロテアーゼを含有するリソソームと融合し、オートリソソームを形成し、そこで、カーゴは、可溶性かつ非毒性の構成要素構成成分に分解され、結果として、DAMPの細胞質内存在量が減少する。
肝臓、中枢神経系(CNS)または消化管をはじめとする特定の組織におけるオートファジーの誘導は、無数の異なる慢性障害を患っている患者に大きな恩恵をもたらし得る。したがって、IRGM、NOD2、ATG2B、ATG9、ATG5、ATG7、ATG16L1、BECN1、EI24/PIG8、TECPR2、WDR45/WIP14、CHMP2B、CHMP4B、Dynein、EPG5、HspB8、LAMP2、LC3b UVRAG、VCP/p97、ZFYVE26、PARK2/Parkin、PARK6/PINK1、SQSTM1/p62、SMURF、AMPK、およびULK1から選択されるタンパク質またはその断片をコードする核酸を含む、少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞)が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞)は、細胞における前記タンパク質またはその断片の発現を増加させる。一部の実施形態では、少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞)は、オートファジーをモジュレートする。一部の実施形態では、少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞)は、オートファジー関連疾患を予防または処置する。
一部の実施形態では、オートファジー関連疾患は、がん、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、運動失調)、炎症性疾患、炎症性腸疾患、クローン病、関節リウマチ、ループス、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmony disease)/COPD、肺線維症、嚢胞性線維症、シェーグレン病、高血糖障害、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、インスリン抵抗性糖尿病(例えば、メンデンホール症候群、ウェルナー症候群、妖精症、および脂肪萎縮性糖尿病)、脂質異常症、高脂血症、低密度リポタンパク質(LDL)上昇、高密度リポタンパク質(HDL)低下、トリグリセリド上昇、メタボリックシンドローム、肝臓疾患、腎疾患、心血管疾患、虚血、脳卒中、再灌流中の合併症、筋変性、萎縮、老化の症状(例えば、筋萎縮症、フレイル、代謝障害、軽度の炎症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、加齢性認知症および孤発型アルツハイマー病、前がん状態、およびうつ状態をはじめとする精神医学的状態)、脊髄損傷、動脈硬化症、感染性疾患(例えば、細菌性、真菌性、ウイルス性)、AIDS、結核、胚発生障害、不妊症、リソソーム蓄積症、活性化因子欠損症/GM2ガングリオシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、コレステロールエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠損症、シスチン症、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(I、IIおよびIII型)、GM1ガングリオシドーシス、(乳児型、遅発乳児型/若年型および成人型/慢性)、ハンター症候群(MPS II)、I細胞病/ムコリピドーシスII、乳児型遊離シアル酸蓄積症(ISSD)、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損症、クラッベ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、ハーラー症候群、シャイエ症候群、ハーラー・シャイエ症候群、サンフィリッポ症候群、モルキオAおよびB型、マロトー・ラミー、スライ症候群、ムコリピドーシス、多種スルフェート欠損症、ニーマン・ピック病、神経セロイドリポフスチン症、CLN6病、ヤンスキー・ビールショースキー病、ポンペ病、濃化異骨症、サンドホフ病、シンドラー病、テイ・サックス、およびウォールマン病から選択される。
本明細書で使用される場合、用語「オートファジー関連疾患」は、オートファジーまたは細胞自己消化における破壊によって生じる疾患を指す。オートファジー機能不全は、非常に多くの他の病状および/または状態の中でも特に、がん、神経変性、微生物感染症および老化に関連している。オートファジーは、細胞の保護プロセスとして主要な役割を果たすが、それは、細胞死にも関与する。オートファジーによって媒介される(これは、病状または状態それ自体が、処置されることになる患者または対象におけるオートファジーの増加または減少の関数として現れ得ること、および処置または予防が、患者または対象におけるオートファジーの阻害剤またはアゴニストの投与を必要とするという事実を指す)病状および/または状態には、以下のものが含まれる:例えば、がんの転移を含む、がん;リソソーム蓄積症(本明細書において下で論じられる);神経変性(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病;他の運動失調を含む);免疫応答(T細胞成熟、B細胞およびT細胞恒常性;損傷性炎症に対抗する)および例えば、クローン病をはじめとする炎症性腸疾患、関節リウマチ、ループス、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患/COPD、肺線維症、嚢胞性線維症、シェーグレン病を含む、慢性炎症性疾患(オートファジーが正常に機能しないとき過剰なサイトカインを促進し得る);高血糖性障害、I型糖尿病、II型糖尿病(脂質代謝島機能および/または構造に影響を与え、過剰なオートファジーは、膵b細胞死をもたらし得る)、および次のものを含む関連高血糖性障害:重度のインスリン抵抗性、高インスリン血症、インスリン抵抗性糖尿病(例えば、メンデンホール症候群、ウェルナー症候群、妖精症、および脂肪萎縮性糖尿病)および脂質異常症(例えば、肥満対象により示されるような高脂血症、低密度リポタンパク質(LDL)上昇、高密度リポタンパク質(HDL)低下、およびトリグリセリド上昇)およびメタボリックシンドローム;肝臓疾患(細胞実体-小胞体の過剰なオートファジー性除去);腎疾患(斑におけるアポトーシス、糸球体疾患);心血管疾患(特に、虚血、脳卒中、圧負荷、および再灌流中の合併症を含む);筋肉変性および萎縮;老化の症状(筋萎縮症、フレイル、代謝障害、軽度の炎症、アテローム性動脈硬化症および関連状態、例えば、脳卒中、加齢性認知症および孤発型アルツハイマー病をはじめとする心臓および神経性の中枢性と末梢性両方の症状発現、前がん状態、ならびにうつ状態をはじめとする精神医学的状態を含む、加齢に伴う症状および慢性状態の発症または重症度または頻度の改善または遅延を含む);脳卒中および脊髄損傷、動脈硬化症;数ある中でも特に、AIDSおよび結核を含む、細菌性、真菌性、細胞性およびウイルス性のもの(感染性疾患に関連する二次的病状または状態を含む)を含む、感染性疾患(微生物感染症;微生物を除去し、微生物産物に対する防御的炎症反応をもたらし、微生物成長の増進、自然免疫の制御、のための微生物による宿主のオートファジーへの適応を制限する);発生(赤血球分化を含む)、胚発生/受胎能/不妊症(胚着床、および栄養素の経胎盤供給の終了後の新生児の生存、プログラム細胞死の間の死細胞の除去)および老化(オートファジーの増加は、損傷したオルガネラまたは凝集した高分子の除去をもたらして、健康を向上させ、寿命を延ばすが、小児/若年成人におけるオートファジーレベルの上昇は、筋肉および臓器の消耗をもたらし、その結果、老化/早老症となり得る)。
用語「リソソーム蓄積障害」は、リソソーム蓄積の異常によって引き起こされる病状または状態を指す。これらの病状または状態は、一般に、リソソーム機能障害の際に起こる。リソソーム蓄積障害は、通常は、脂質、糖タンパク質またはムコ多糖の代謝に必要とされる酵素の欠損の帰結としての、リソソーム機能不全により引き起こされる。リソソーム蓄積障害の発生は(集合的に)、約1:5,000~1:10,000の発生率で生じる。リソソームは、一般に、望ましくない材料を細胞が利用することができる物質にプロセシングするため、細胞の再循環センターと呼ばれる。リソソームは、高度に特殊化された酵素によってこの望ましくない物を分解する。リソソーム障害は、一般に、特定の酵素が過少に存在するまたは完全に失われている場合に誘発される。これが起こると、物質が細胞内に蓄積する。言い換えると、リソソームが正常に機能しないと、分解され再循環することになっている過剰な産物が、細胞内に貯蔵される。リソソーム蓄積障害は、遺伝性疾患であるが、これらを、本明細書に記載のオートファジーモジュレーター(オートスタチン)を使用して処置することができる。これらの疾患のすべては、共通の生化学的特徴、すなわち、すべてのリソソーム障害がリソソーム内へ物質の異常な蓄積によって生じるということを共有する。リソソーム蓄積症には主として小児が罹患し、これらの小児は、多くの場合、帰結として人生の早い段階で、多くが生後数カ月または数年以内に、死亡する。多くの他の小児は、彼らの特定の障害の様々な症状を数年患った後にこの疾患で死亡する。
リソソーム蓄積症の例としては、例えば、数ある中でも特に、活性化因子欠損症/GM2ガングリオシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、コレステロールエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠損症、シスチン症、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(I、IIおよびIII型)、GM1ガングリオシドーシス(乳児型、遅発乳児型/若年型および成人型/慢性を含む)、ハンター症候群(MPS II)、I細胞病/ムコリピドーシスII、乳児型遊離シアル酸蓄積症(ISSD)、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損症、クラッベ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、ハーラー症候群、シャイエ症候群、ハーラー・シャイエ症候群、サンフィリッポ症候群、モルキオAおよびB型、マロトー・ラミー、スライ症候群、ムコリピドーシス、多種スルフェート欠損症、ニーマン・ピック病、神経セロイドリポフスチン症、CLN6病、ヤンスキー・ビールショースキー病、ポンペ病、濃化異骨症、サンドホフ病、シンドラー病、テイ・サックス、およびウォールマン病が挙げられる。
感染症
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法および組成物は、細菌感染症、細菌敗血症性ショック、真菌感染症、および/またはウイルス感染症の処置または予防に関する。
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法および組成物は、ウイルス感染症、例えば、呼吸器ウイルス感染症、例えば、コロナウイルス感染症(例えば、MERS(中東呼吸器症候群)感染症、重症急性呼吸器症候群(SARS)感染症、例えばSARS-CoV-2感染症)、インフルエンザ感染症、および/または呼吸器合胞体ウイルス感染症の処置または予防に関する。一部の実施形態では、本明細書に記載され、本明細書において提供される方法および固体剤形は、コロナウイルス感染症(例えば、MERS感染症、重症急性呼吸器症候群(SARS)感染症、例えばSARS-CoV-2感染症)の処置のためのものである。一部の実施形態では、COVID-19を処置するための方法および組成物が、本明細書において提供される。
一部の実施形態では、感染症は、ウイルス感染症であり、ウイルス感染症は、コロナウイルス(例えば、MERS、SARS)、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、ヒトパピローマウイルス、デングウイルス血清型1、デングウイルス血清型2、デングウイルス血清型3、デングウイルス血清型4、ジカウイルス、ウエストナイルウイルス、黄熱病ウイルス、チクングニアウイルス、マヤロウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、またはニパウイルスによるものである。一部の実施形態では、ウイルス感染症は、SARS-CoV-2によるものである。
炎症性障害
本明細書に記載される方法および/または少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または組成物)を、例えば、自己免疫疾患、例えば、慢性炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、乾癬、マックス・ウエルズ症候群、関節リウマチ、多発性硬化症、もしくは橋本病;アレルギー性疾患、例えば、食物アレルギー、花粉症、もしくは喘息;感染性疾患、例えば、Clostridium difficileによる感染症;炎症性疾患、例えば、TNF媒介炎症性疾患(例えば、胃腸管の炎症性疾患、例えば回腸嚢炎、心血管炎症性状態、例えばアテローム性動脈硬化症、または炎症性肺疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患)を予防もしくは処置する(その有害効果を部分的にまたは完全に低減させる)ために;臓器移植、もしくは組織拒絶反応が起こる可能性がある他の状況において拒絶反応を抑制するための医薬組成物;免疫機能を改善するための医薬組成物;または免疫細胞の増殖もしくは機能を抑制するための医薬組成物に、使用することができる。
一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物は、炎症の処置または予防に有用である。ある特定の実施形態では、下で論じられるような、筋骨格の炎症、血管の炎症、神経の炎症、消化器系炎症、眼の炎症、生殖器系の炎症、および他の炎症を含む、身体の任意の組織および臓器の炎症。
筋骨格系の免疫障害は、手、手首、肘、肩、顎、脊椎、頸部、臀部、膝、足首および足の関節を含む、骨格関節を冒す状態、ならびに腱などの、骨に筋肉を接続する組織を冒す状態を含むが、これらに限定されない。本明細書に記載される方法および組成物で処置され得るそのような免疫障害の例としては、関節炎(例えば、変形性関節症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、急性および慢性感染性関節炎、痛風および偽痛風に関連する関節炎、ならびに若年性特発性関節炎を含む)、腱炎、滑膜炎、腱鞘炎、滑液包炎、結合組織炎(線維筋痛症)、上顆炎、筋炎、および骨炎(例えば、パジェット病、恥骨骨炎、および嚢胞性線維性骨炎(osteitis fibrosa cystic)を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
眼の免疫障害は、瞼をはじめとする目の任意の構造を冒す免疫障害を指す。本明細書に記載される方法および組成物で処置され得る眼の免疫障害の例としては、眼瞼炎、眼瞼皮膚弛緩症、結膜炎、涙腺炎、角膜炎、乾性角結膜炎(ドライアイ)、強膜炎、睫毛乱生症、およびぶどう膜炎が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に記載される方法および組成物で処置され得る神経系免疫障害の例としては、脳炎、ギラン・バレー症候群、髄膜炎、神経性筋強直症、ナルコレプシー、多発性硬化症、脊髄炎および統合失調症が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載される方法および組成物で処置され得る脈管構造またはリンパ系の炎症の例としては、関節硬化症、関節炎、静脈炎、血管炎、およびリンパ管炎が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に記載される方法および医薬組成物で処置され得る消化器系免疫障害の例としては、胆管炎、胆嚢炎、腸炎、全腸炎、胃炎、胃腸炎、炎症性腸疾患、回腸炎、および直腸炎が挙げられるが、これらに限定されない。炎症性腸疾患は、例えば、ある特定の当技術分野で認知されている形態の一群の関連状態を含む。いくつかの主要な形態の炎症性腸疾患が公知であり、クローン病(局所性腸疾患、例えば、不活性および活性形態)および潰瘍性大腸炎(例えば、不活性および活性形態)が、これらの状態のうち最も一般的である。加えて、炎症性腸疾患は、過敏性腸症候群、顕微鏡的大腸炎、リンパ球性-形質細胞性腸炎、セリアック病、コラーゲン大腸炎、リンパ球性大腸炎および好酸球性全腸炎を包含する。他のあまり一般的でない形態のIBDは、不確定大腸炎、偽膜性大腸炎(壊死性大腸炎)、虚血性炎症性腸疾患、ベーチェット病、サルコイドーシス、強皮症、IBD関連異形成、異形成関連腫瘤または病変、および原発性硬化性胆管炎を含む。
本明細書に記載される方法および医薬組成物で処置され得る生殖器系免疫障害の例としては、子宮頸管炎、絨毛膜羊膜炎、子宮内膜炎、精巣上体炎、臍炎、卵巣炎、精巣炎、卵管炎、卵管卵巣膿瘍、尿道炎、膣炎、外陰炎、および外陰部痛が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に記載される方法および少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞)は、炎症性構成成分を有する自己免疫状態を予防または処置するために使用され得る。そのような状態は、急性汎発性全身性脱毛症、ベーチェット病、シャガス病、慢性疲労症候群、自律神経障害、脳脊髄炎、強直性脊椎炎、再生不良性貧血、化膿性汗腺炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎、セリアック病、クローン病、1型真性糖尿病、2型糖尿病、巨細胞動脈炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、川崎病、エリテマトーデス、顕微鏡的大腸炎、顕微鏡的多発動脈炎、混合性結合組織病、マックス・ウエルズ症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、視神経炎、オード甲状腺炎、天疱瘡、結節性多発動脈炎、多発性筋痛、関節リウマチ、ライター症候群、シェーグレン症候群、側頭動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、温式自己免疫性溶血性貧血、間質性膀胱炎、ライム病、モルフェア、乾癬、サルコイドーシス、強皮症、潰瘍性大腸炎、および白斑を含むが、これらに限定されない。
本明細書に記載される方法および少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞)は、炎症性構成成分を有するT細胞媒介過敏性疾患を予防または処置するために使用され得る。そのような状態は、接触過敏症、接触皮膚炎(ツタウルシに起因するものを含む)、蕁麻疹(uticaria)、皮膚アレルギー、呼吸アレルギー(枯草熱、アレルギー性鼻炎、イエダニアレルギー)およびグルテン過敏性腸症(セリアック病)を含むが、これらに限定されない。
方法および医薬組成物で処置され得る他の免疫障害は、例えば、虫垂炎、皮膚炎、皮膚筋炎、心内膜炎、結合組織炎、歯肉炎、舌炎、肝炎、化膿性汗腺炎、虹彩炎、咽頭炎、乳腺炎、心筋炎、腎炎、耳炎、膵炎、耳下腺炎、心膜炎、腹膜炎、喉頭炎、胸膜炎、間質性肺炎、前立腺炎、腎盂腎炎、および口内炎(stomatisi)、移植片拒絶反応(臓器、例えば、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓(例えば、島細胞)、骨髄、角膜、小腸、皮膚同種異系移植片、皮膚同種移植片、および心臓弁異種移植片、血清病(sewrumsickness)、および移植片対宿主病を含む)、急性膵炎、慢性膵炎、急性呼吸窮迫症候群、セザリー症候群(Sexary's syndrome)、先天性副腎皮質過形成症(congenitaladrenal hyperplasis)、非化膿性甲状腺炎、がんに関連する高カルシウム血症、天疱瘡、水疱性疱疹状皮膚炎、重度の多形紅斑、剥離性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、季節性または通年性アレルギー性鼻炎、気管支喘息、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、薬物過敏症反応、アレルギー性結膜炎、角膜炎、眼部帯状疱疹、虹彩炎および虹彩毛様体炎(oiridocyclitis)、脈絡網膜炎、視神経炎、症候性サルコイドーシス、電撃性または播種性肺結核化学療法、成人の特発性血小板減少性紫斑病、成人の続発性血小板減少症、後天性(自己免疫性)溶血性貧血、限局性腸炎、自己免疫性血管炎、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患、実質臓器移植片拒絶反応、敗血症を含む。好ましい処置は、移植片拒絶反応、関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、1型糖尿病、喘息、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、および感染性状態を伴う炎症(例えば、敗血症)の処置を含む。
神経変性障害および神経炎症性障害
本明細書に記載される方法および/または少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞)は、神経変性疾患および神経学的疾患を予防または処置するために使用され得る。ある特定の実施形態では、神経変性疾患および/または神経学的疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、プリオン病、ハンチントン病、運動ニューロン疾患(MND)、脊髄小脳失調症、脊髄性筋萎縮症、ジストニア、特発性頭蓋内圧亢進症、癲癇、神経系疾患、中枢神経系疾患、運動障害、多発性硬化症、脳症、末梢性ニューロパチー、術後認知機能障害、前頭側頭型認知症、脳卒中、一過性虚血性発作、血管性認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病、多発性硬化症、プリオン病、ピック病、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病、レビー小体型認知症、進行性核上性麻痺、ボクサー認知症(慢性外傷性脳症)、前頭側頭型認知症、第17染色体に連鎖したパーキンソニズム、リティコ・ボディグ病、神経原線維変化型老年期認知症、神経節膠腫、神経節細胞腫、髄膜血管腫症、亜急性硬化性全脳炎、鉛脳症、結節性硬化症、ハラーフォルデン・シュパッツ病、リポフスチン沈着症、嗜銀顆粒病、および前頭側頭葉変性症である。
本明細書に記載される方法および/または少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞)を使用して、例えば、炎症を緩和する1つまたは複数のサイトカインをコードする遺伝子を含む核酸を送達するために本開示の組換えビリオンを使用して、神経炎症および/または神経炎症性疾患を予防または処置することができる。神経炎症性疾患は、自己免疫疾患、炎症性疾患、神経変性疾患、神経筋疾患、または精神医学的疾患を含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、本明細書において提供される方法および組成物は、脳の炎症、末梢神経の炎症、神経の炎症、脊髄の炎症、眼の炎症、および/または他の炎症を含む、中枢神経系の炎症の処置または予防に有用である。
本明細書に記載される方法および組成物で処置され得る神経炎症に関連する障害または神経炎症性障害の例としては、脳炎(脳の炎症)、脳脊髄炎(脳および脊髄の炎症)、髄膜炎(脳および脊髄を包囲する膜の炎症)、ギラン・バレー症候群、神経性筋強直症、ナルコレプシー、多発性硬化症、脊髄炎、統合失調症、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、急性視神経炎(AON)、横断性脊髄炎、視神経脊髄炎(NMO)、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭葉型認知症、視神経炎、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、自己免疫性脳炎、抗NMDA受容体脳炎、ラスムッセン脳炎、小児急性壊死性脳症(ANEC)、オプソクローヌス・ミオクローヌス運動失調症候群、外傷性脳損傷、ハンチントン病、うつ状態、不安、片頭痛、重症筋無力症、急性虚血性脳卒中、癲癇、シヌクレイン病、前頭側頭型認知症、進行性非流暢性失語症、意味性認知症、頷き症候群、脳虚血、神経障害性疼痛、自閉症スペクトラム障害、線維筋痛症候群、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、全身性エリテマトーデス、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND)、脊髄小脳失調症、脊髄性筋萎縮症、ジストニア、特発性頭蓋内圧亢進症、神経系疾患、中枢神経系疾患、運動障害、脳症、末梢性ニューロパチー、または術後認知機能障害が挙げられるが、これらに限定されない。
がん
本明細書中で説明されるように、本明細書において提供される方法および/または少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞)は、例えば腫瘍サプレッサーをコードする核酸の、本開示のGSH遺伝子座への組込みを含み得る。同様に、本明細書において提供される方法および/または少なくとも1つの組成物(例えば、核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞)は、例えば癌遺伝子を下方制御する、非コーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、gRNA、アンチセンスRNA)をコードする核酸の組込みを含み得る。
がん、腫瘍、または過剰増殖性障害は、発がん性の細胞に特有の特徴、例えば、無調節の増殖、不死性、転移能、速い成長および増殖速度、ならびにある特定の特徴的な形態学的特色を有する、細胞の存在を指す。がん細胞は、多くの場合、腫瘍の形態であるが、そのような細胞は、単独で動物体内で存在することがあるか、または白血病細胞などの非腫瘍原性のがん細胞であることがある。がんは、B細胞がん、(例えば、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、ヘアリー細胞白血病、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、原発性眼内リンパ腫、重鎖病、例えば、アルファ鎖病、ガンマ鎖病およびミュー鎖病など、良性単クローン性免疫グロブリン血症、ならびに免疫細胞性アミロイドーシス)、T細胞がん(例えば、Tリンパ芽球性リンパ腫/白血病、非ホジキンリンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(例えば、菌状息肉症、セザリー症候群)、成人T細胞白血病/リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、節外性ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫、腸症関連腸T細胞リンパ腫(EATL)、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、ホジキンリンパ腫)、黒色腫、乳がん、肺がん、気管支がん、結腸直腸がん、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、卵巣がん、膀胱がん、脳または中枢神経系がん、末梢神経系がん、食道がん、子宮頸がん、子宮または子宮内膜がん、口腔または咽頭のがん、肝臓がん、腎臓がん、精巣がん、胆道がん、小腸または虫垂がん、唾液腺がん、甲状腺がん、副腎がん、骨肉腫、軟骨肉腫、血液学的組織のがんなどを含むが、これらに限定されない。本発明により包含される方法に適用可能ながんの種類の他の非限定的な例としては、ヒト肉腫および癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、結腸直腸がん、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、ヘパトーマ、胆管癌、肝臓がん、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウイルムス腫瘍、子宮頸がん、骨がん、脳腫瘍、精巣がん、肺癌、小細胞肺癌(SCLC)、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞種、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞種、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫;白血病、例えば、急性リンパ性白血病および急性骨髄球性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤白血病);慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ性白血病);ならびに真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、ならびに重鎖病が挙げられる。一部の実施形態では、がんは、本質的に上皮のものであり、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、婦人科がん、腎がん、喉頭がん、肺がん、口腔がん、頭頸部がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、または皮膚がんを含むが、これらに限定されない。他の実施形態では、がんは、乳がん、前立腺がん、肺がん、または結腸がんである。さらに他の実施形態では、上皮がんは、非小細胞肺がん、非乳頭型腎細胞癌、子宮頸癌、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌)、または乳癌である。上皮がんは、これらに限定されないが、漿液性、類内膜、粘液性、明細胞、ブレンナー、または未分化型を含めて、様々な他の方法で特徴付けられ得る。
家族性肝内胆汁うっ滞
本明細書に記載される方法および/または組成物は、1、2および3型PFICをそれぞれ生じさせる結果となるATPB1、ATPB11およびABCB4遺伝子の変異に関連する遺伝性疾患である家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)を予防または処置するために使用され得る。この稀な常染色体劣性疾患は、肝臓における小管増生、およびガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)活性の上昇に伴う進行性肝内胆汁うっ滞により特徴付けられる、胆汁分泌経路の破壊を促す。ABCB4変異は、この疾患の最も多く見られる形態である。ABCB4遺伝子は、第7染色体q21.1上に位置し、PFIC3を引き起こすことに関与する脂質フリッパーゼ(floppase)MDR3タンパク質をコードする。MDR3は、主として肝臓の胆管側膜に発現され、リン脂質トランスロケーター、すなわち、ホスファチジルコリン(PC)として働く。MDR3は、肝細胞膜を、胆汁酸塩の界面活性物質活性から保護する。PFIC3障害は、胆汁へのホスファチジルコリン(PC)の分泌の低減、ひいては胆汁分泌輸送系を損なわせることより特徴付けられる(Davit-Spraul,et al., PMID: 20422496)。PC分泌の低減は、肝臓における毒性の原因となり、結果として、炎症誘発性プログラムが活性化することになり、それに伴って肝細胞が破壊され、さらに肝内肝硬変へと進行する。この疾患の他のあまり見られない形態は、ATPB1およびATPB11遺伝子の変異によって引き起こされ、同様の転帰に至る。したがって、ATPB1、ATPB11、および/またはABCB4の遺伝子治療は、家族性肝内胆汁うっ滞の予防および/または処置に有用である。
ウイルソン病
本明細書に記載される方法および/または組成物は、ウイルソン病(WD)を予防または処置するために使用され得る。WDは、銅輸送P型ATPaseをコードするATP7B遺伝子の変異に関連する、一遺伝子性、常染色体劣性遺伝性状態である。ATP7Bの600より多くの病原性バリアントが同定されており、単一ヌクレオチドミスセンスおよびナンセンス変異が最も一般的であり、それに挿入/欠失が続き、稀に、スプライス部位変異がある。ATP7Bは、肝臓において最も高度に発現されるが、腎臓、胎盤、乳腺、脳および肺にも見られる。ATPB7破壊は、細胞内銅レベルの上昇につながる。ヒトの食事による銅摂取量は、約1.5~2.5mg/日であり、これが胃および十二指腸で吸収され、循環アルブミンに結合され、制御および排泄のために肝臓に輸送される。抗酸化タンパク質1(ATOX1)は、銅依存性タンパク質-タンパク質相互作用により銅をATPB7に送達する。肝細胞内で、ATP7Bは、トランスゴルジ網(TGN)または細胞質小胞のどちらかにおいて2つの重要な機能を果たす。TGN内で、ATP7Bは、6つの銅分子をアポセルロプラスミンにパッケージングすることによりセルロプラスミンを活性化し、次いでそれが血漿に分泌される。細胞質内で、ATP7Bは、過剰な銅を小胞内に捕捉し、それをエキソサイトーシスによって頂端胆管側膜を横断して胆汁へと排出する(Bull et al., 1993;Tanzi et al., 1993;Yamaguchi et al., 1999;Cater etal., 2007)。銅の合成と排出の両方におけるATP7B輸送体の二元的役割に起因して、その機能の欠陥は、酸化ストレスおよびフリーラジカル形成を誘発する銅蓄積、ならびに酸化ストレスとは無関係に生じるミトコンドリア機能不全をもたらす。複合効果は、肝および脳組織はもちろん他の臓器においても炎症誘発状態の誘導およびその後の細胞死を生じさせる結果となる。
リソソーム蓄積障害
本明細書に記載される方法および/または組成物は、リソソーム蓄積症(LSD)を予防または処置するために使用され得る。これらは、酵素欠損の結果としての身体の細胞内への様々な毒性材料の異常な集積により特徴付けられる遺伝性代謝疾患である。本明細書に記載される方法および組成物は、一部の場合には脳白質の変化を含む、複数の臓器を冒す重度の高アンモニア血症により支配される破壊性の代謝疾患により特徴付けられる、稀な常染色体劣性障害である、カルバモイルリン酸シンターゼ1欠損(CPS1D)を予防または処置するために使用され得る。CPS1は、ヒトにおける窒素廃棄の主要経路である尿素回路の第1のステップである律速ステップを触媒するので、肝臓尿素生成において最も重要な役割を果たす。CPS1欠損症は、尿素回路障害およびアンモニアの蓄積につながる。したがって、顕著な高アンモニア血症および尿素回路の下流の産生の減少が、CPS1欠損症を有する患者に見られ得る。超過剰なアンモニアは、中枢神経系に入り得、脳に対してその毒性効果を発揮する。アンモニアの蓄積は、毒性を誘導し、細胞死をもたらす。
血液学的疾患
ある特定の態様では、下で説明される血液学的疾患に加えて、本明細書に記載される方法および/または組成物は、内皮機能不全、嚢胞性線維症、心血管疾患、末梢血管疾患、脳卒中、心疾患(例えば、先天性心疾患を含む)、糖尿病、インスリン抵抗性、慢性腎不全、アテローム性動脈硬化症、腫瘍成長(例えば、内皮細胞のものを含む)、転移、高血圧(例えば、肺動脈性高血圧症、他の形態の肺高血圧)、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、C型肝炎、肝硬変、高脂血症、高コレステロール血症、メタボリックシンドローム、腎疾患、炎症、および静脈血栓症などの、疾患の処置または予防に使用され得る。
ある特定の態様では、血液学的疾患は、以下のもののいずれか1つを含む:ヘモグロビン異常症(例えば、鎌状赤血球症、サラセミア、メトヘモグロビン血症)、貧血(鉄欠乏性貧血、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、骨髄異形成症候群、骨髄線維症、好中球減少、顆粒球減少症、グランツマン血小板無力症、血小板減少症、ウィスコット・オルドリッチ症候群、骨髄増殖性障害(例えば、真性赤血球増加症、赤血球増加症、白血球増加症、血小板増加症)、凝固障害、血液がん、ヘモクロマトーシス、無脾症、脾機能亢進症(例えば、ゴーシェ病)、血液貪食性リンパ組織球症、tempi症候群、およびAIDS。
一部の実施形態では、例示的な溶血性貧血として、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、先天性赤血球形成異常性貧血、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症(G6PD)、ピルビン酸キナーゼ欠損症、自己免疫性溶血性貧血(例えば、特発性貧血、全身性エリテマトーデス(SLE)、エバンス症候群、寒冷凝集素症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症、伝染性単核症)、同種免疫性溶血性貧血(例えば、新生児溶血性疾患、例えば、Rh病、新生児ABO溶血性疾患、新生児抗Kell溶血性疾患、アカゲザルc新生児溶血性疾患、アカゲザルE新生児溶血性疾患)、発作性夜間ヘモグロビン尿症、微小血管性溶血性貧血、ファンコニ貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、および後天性赤芽球ろうが挙げられる。
一部の実施形態では、例示的な凝固障害としては、血小板増加症、播種性血管内凝固、血友病(例えば、血友病A、血友病B、血友病C)、フォン・ヴィレブランド病、および抗リン脂質抗体症候群が挙げられる。
一部の実施形態では、例示的な血液がんとしては、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、T細胞リンパ腫(例えば、肝脾T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、形質細胞腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄球性白血病(AML)、急性巨核芽球性白血病、慢性特発性骨髄線維症、慢性骨髄性白血病(CML)、T細胞性前リンパ球性白血病、B細胞性前リンパ球性白血病、慢性好中球性白血病、ヘアリー細胞白血病、T細胞大顆粒リンパ球白血病、AIDS関連リンパ腫、セザリー症候群、ワルデンストレームマクログロブリン血症、慢性骨髄増殖性新生物、ランゲルハンス細胞組織球症、骨髄異形成症候群、および侵攻性NK細胞白血病が挙げられる。
本明細書で使用される場合、ヘモグロビン異常症は、血液中の異常なヘモグロビン分子の存在を伴う任意の障害を含む。ヘモグロビン異常症の例としては、ヘモグロビンC症、ヘモグロビン鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血、およびサラセミアが挙げられるが、これらに限定されない。異常なヘモグロビンの組合せが血液中に存在するヘモグロビン異常症(例えば、鎌状赤血球/Hb-C症)も挙げられる。
本明細書で使用される場合、サラセミアは、ヘモグロビンの産生不全により特徴付けられる遺伝性障害を指す。サラセミアの例としては、α-およびβ-サラセミアが挙げられる。β-サラセミアは、ベータグロビン鎖の変異により引き起こされ、主または副形態で存在し得る。主形態のβ-サラセミアでは、小児は、出生時には正常であるが、生後1年の間に貧血を発症する。軽度の形態のβ-サラセミアは、小さい赤血球を産生し、サラセミアは、グロビン鎖からの遺伝子(単数または複数)の欠失により引き起こされ、α-サラセミアは、典型的には、HBA1およびHBA2遺伝子に関する欠失によって生じる。これらの遺伝子の両方が、ヘモグロビンの構成成分(サブユニット)であるα-グロビンをコードする。各細胞ゲノムにHBA1遺伝子の2つのコピーおよびHBA2遺伝子の2つのコピーがある。結果として、α-グロビンを産生する4つの対立遺伝子がある。異なる型のサラセミアが、これらの対立遺伝子の一部またはすべての喪失によって生じる。最も重度の形態のサラセミアであるHb Bart症候群は、4つすべてのα-グロビン対立遺伝子の喪失によって生じる。HbH症は、4つのα-グロビン対立遺伝子のうちの3つの喪失により引き起こされる。これら2つの状態では、α-グロビンの不足が、細胞による正常なヘモグロビンの作製を妨げる。それどころか、細胞は、ヘモグロビンBart(Hb Bart)またはヘモグロビンH(HbH)と呼ばれる異常な形態のヘモグロビンを産生する。これらの異常なヘモグロビン分子は、酸素を身体の組織に有効に運ぶことができない。Hb BartまたはHbHによる正常なヘモグロビンの置換は、貧血、およびサラセミアに関連する他の深刻な健康問題を引き起こす。
本明細書で使用される場合、鎌状赤血球症は、グロビン遺伝子の変異によって生じ、常低酸素条件下で、典型的な両凹形態を、毛細血管を巡ることができない、したがって低酸素症を悪化させる、異常な、硬い、鎌形に変換する、赤血球により特徴付けられる、染色体劣性遺伝性血液障害の一群を指す。それらは、グルタミン酸が、ペプチドのアミノ酸6位においてバリンにより置換されており、変異matを有する第2のβ-遺伝子が、臨床表現型につながるHbSの結晶化を可能にする、β-グロビン鎖バリアントをコードするβs-遺伝子の存在により定義される。鎌状赤血球貧血は、HbSを引き起こす変異がホモ接合性である患者における特異的形態の鎌状赤血球症を指す。他の一般的な形態の鎌状赤血球症としては、HbS/β-サラセミア、HbS/HbCおよびHbS/HbDが挙げられる。
ある特定の実施形態では、ヘモグロビンC症、ヘモグロビン鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血、遺伝性貧血、サラセミア、β-サラセミア、重症型サラセミア、中間型サラセミア、a-サラセミア、およびヘモグロビンH症からなる群から選択されるヘモグロビン異常症を処置、予防または改善するための方法および組成物が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、ヘモグロビン異常症は、β-サラセミアである。一部の実施形態では、ヘモグロビン異常症は、鎌状赤血球貧血である。様々な実施形態では、本明細書に記載されるウイルスベクターは、遺伝子治療を必要とする対象の細胞、組織または臓器への直接注射によりin vivoで投与される。様々な他の実施形態では、細胞は、本明細書に記載される組換えビリオンをin vitroまたはex vivoで形質導入される。次いで、細胞は、遺伝子治療を必要とする対象に、例えば、本明細書で開示される医薬製剤中で、投与される。
上記のとおり、対象におけるヘモグロビン異常症を予防または処置する方法および組成物が、本明細書において提供される。様々な実施形態では、方法は、本明細書に記載されるウイルスベクターを形質導入された細胞または前記細胞(例えば、HSC、CD34+もしくはCD36細胞、赤血球系列細胞、胚性幹細胞、またはiPSC)の集団の有効量を対象に投与するステップを含む。処置または予防のために、投与される量は、所望の臨床的恩恵を生じさせるのに有効な量であり得る。有効量は、1回または一連の投与で提供され得る。有効量は、ボーラスでまたは持続潅流により提供され得る。有効量は、1つまたは複数の用量で対象に投与され得る。処置または予防に関して、有効量は、疾患の進行を和らげる、改善する、安定化する、反転させるもしくは緩徐にするのに、または疾患の病理学的帰結を別様に軽減するのに、十分である量である。有効量は、一般に、医師により個別的に決定され、当業者の通常の技能の範囲内である。有効量を達成するために適切な投薬量を決定する際に、いくつかの因子が概して考慮される。これらの因子は、対象の年齢、性別および体重、処置される状態、状態の重症度を含む。
血友病A
血友病Aは、血液が正常に凝固しない遺伝性の出血性障害である。血友病Aを有する人々は、傷害、外科手術または歯科手技後に正常よりも多く出血する。この障害は、重度、中等度または軽度であり得る。重度の場合、大量出血が、軽傷後に、または傷害がない場合(自然出血)でも起こる。関節、筋肉、脳または臓器への出血は、疼痛および他の重篤な合併症を引き起こし得る。より軽症型では、自然出血はなく、障害は、外科手術または重傷後にのみ診断され得る。血友病Aは、第VIII因子と呼ばれるタンパク質のレベルが低いことにより引き起こされる。第VIII因子は、血餅を形成するために必要である。この障害は、X連鎖劣性様式で遺伝され、F8遺伝子の変化(変異)により引き起こされる。血友病Aの診断は、臨床症状によって、および血液中の凝固因子の量を測定するための特定の臨床検査によって行われる。主な予防または処置は、凝固第VIII因子が静脈に点滴注入またはゆっくりと注射される、補充療法である。血友病Aには、主として男性が罹患する。予防または処置によって、この障害を有する大部分の人々は、健康が回復する。重度血友病Aを有する一部の人々は、他の健康状態、および障害の稀な合併症の存在に起因して、寿命が短いことがある。
血友病Aに罹患している患者は、ヒトにおいて治療の恩恵をもたらすために必要な活性を保持する(Rangarajan et al. (2017) N Engl J Med 377:2519-30)、完全長第VIII因子(FVIII)またはBドメイン欠失FVIII(例えば、FVIII-SQ、p-VIII、p-VIII-LMW;Sandberget al. (2001) Thromb Haemost 85:93-100)をコードするF8導入遺伝子を導入する遺伝子治療によって恩恵を受けることになる。本開示の組換えビリオン、医薬組成物、および方法は、AAVと比較してより大きい遺伝子をパッケージングする組換えビリオンの能力、低い免疫原性、およびパルス状遺伝子制御(実施例9およびセクション「パルス状遺伝子発現または誘導性遺伝子発現」を参照されたい)に一部は起因して、血友病Aに罹患している患者のための改善されたウイルスベクターおよび予防/処置方法を提供する。
一部の実施形態では、処理される疾患は、表4で提示されるものから選択されるものを含む。
表4
一部の実施形態では、本開示の細胞うちの1つまたは複数の投与後、対象の末梢血が収集され、ヘモグロビンレベルが測定される。治療的に意義のあるレベルのヘモグロビンが、ウイルスベクター、またはウイルスベクターを形質導入した細胞の投与後に産生される。ヘモグロビンの治療的に意義のあるレベルは、(1)貧血を改善するのに、(2)正常なヘモグロビンを含有する赤血球を産生する対象の能力を改善するもしくは回復させるのに、(3)対象における無効赤血球生成を改善もしくは修正するのに、(4)髄外造血(例えば、脾および肝髄外造血)を改善もしくは修正するのに、ならびに/または(S)例えば末梢組織および臓器における、鉄蓄積を低減させるのに十分である、ヘモグロビンのレベルである。ヘモグロビンの治療的に意義のあるレベルは、少なくとも約7g/dL Hb、少なくとも約7.5g/dL Hb、少なくとも約8g/dL Hb、少なくとも約8.5g/dL Hb、少なくとも約9g/dL Hb、少なくとも約9.5g/dL Hb、少なくとも約10g/dL Hb、少なくとも約10.5g/dL Hb、少なくとも約11g/dL Hb、少なくとも約11.5g/dL Hb、少なくとも約12g/dL Hb、少なくとも約12.5g/dL Hb、少なくとも約13g/dL Hb、少なくとも約13.5g/dL Hb、少なくとも約14g/dL Hb、少なくとも約14.5g/dL Hb、または少なくとも約15g/dL Hbであり得る。加えてまたはあるいは、ヘモグロビンの治療的に意義のあるレベルは、約7g/dL Hb~約7.5g/dL Hb、約7.5g/dL Hb~約8g/dL Hb、約8g/dL Hb~約8.5g/dL Hb、約8.5g/dL Hb~約9g/dL Hb、約9g/dL Hb~約9.5g/dL Hb、約9.5g/dL Hb~約10g/dL Hb、約10g/dL Hb~約10.5g/dL Hb、約10.5g/dL Hb~約11g/dL Hb、約11g/dL Hb~約11.5g/dL Hb、約11.5g/dL Hb~約12g/dL Hb、約12g/dL Hb~約12.5g/dL Hb、約12.5g/dL Hb~約13g/dL Hb、約13g/dL Hb~約13.5g/dL Hb、約13.5g/dL Hb~約14g/dL Hb、約14g/dL Hb~約14.5g/dL Hb、約14.5g/dL Hb~約15g/dL Hb、約7g/dL Hb~約8g/dL Hb、約8g/dL Hb~約9g/dL Hb、約9g/dL Hb~約10g/dL Hb、約10g/dL Hb~約11g/dL Hb、約11g/dL Hb~約12g/dL Hb、約12g/dL Hb~約13g/dL Hb、約13g/dL Hb~約14g/dL Hb、約14g/dL Hb~約15g/dL Hb、約7g/dL Hb~約9g/dL Hb、約9g/dL Hb~約11g/dL Hb、約11g/dL Hb~約13g/dL Hb、または約13g/dL Hb~約15g/dL Hbであり得る。ある特定の実施形態では、ヘモグロビンの治療的に意義のあるレベルは、対象において少なくとも3日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1カ月間、少なくとも2カ月間、少なくとも4カ月間、少なくとも約6カ月間、少なくとも約12カ月(または1年)間、少なくとも約24カ月(または2年)間、維持される。ある特定の実施形態では、ヘモグロビンの治療的に意義のあるレベルは、対象において最大約6カ月間、最大約12カ月(または1年)間、最大約24カ月(または2年)間、維持される。ある特定の実施形態では、ヘモグロビンの治療的に意義のあるレベルは、対象において約3日間、約1週間、約2週間、約1カ月間、約2カ月間、約4カ月間、約6カ月間、約12カ月(または1年)間、約24カ月(または2年)間、維持される。ある特定の実施形態では、ヘモグロビンの治療的に意義のあるレベルは、対象において約6カ月~約12カ月(例えば、約6カ月~約8カ月、約8カ月~約10カ月、約10カ月~約12カ月)間、約12カ月~約18カ月(例えば、約12カ月~約14カ月、約14カ月~約16カ月、または約16カ月~約18カ月)間、または約18カ月~約24カ月(例えば、約18カ月~約20カ月、約20カ月~約22カ月、または約22カ月~約24カ月)間、維持される。
ある特定の実施形態では、細胞は、細胞を投与される対象にとって自己である。一部の実施形態では、細胞は、細胞を投与される対象にとって自己である、骨髄または末梢循環中の動員細胞からのものである。他の実施形態では、細胞は、細胞を投与される対象にとって同種異系である。一部の実施形態では、細胞は、細胞が投与される対象にとって自己である、骨髄からのものである。
本開示は、対象における白血球(white blood cell)または白血球(leukocyte)と比較して赤血球(red blood cell)または赤血球(erythrocyte)の割合を増加させる方法も提供する。様々な実施形態では、方法は、本明細書に記載される少なくとも1つの組成物(核酸ベクター、ウイルスベクター、医薬組成物、および/または細胞(例えば、HSC、CD34+もしくはCD36細胞、赤血球系列細胞、胚性幹細胞、またはiPSC))の有効量を対象に投与するステップであって、対象における造血幹細胞の赤血球子孫細胞の割合が、造血幹細胞中の白血球子孫細胞と比較して増加される、ステップを含む。
投与されることになる細胞の量は、予防または処置される対象および/または疾患によって異なることになる。一部の実施形態では、約1×10~約1×10細胞/kg、約1×10~約1×10細胞/kg、約1×10~約1×10細胞kg、約1×10~約1×10細胞/kg、約1×10~約1×10細胞/kg、または約1×10~約1×1010細胞/kgの本開示の細胞が、対象に投与される。必要に応じて、対象は、細胞の複数用量を必要とし得る。有効用量とみなされるものの正確な決定は、各対象についての、彼らのサイズ、年齢、性別、体重、および特定の対象の状態をはじめとする、個別の因子に基づき得る。当業者は、本開示および当技術分野における知識から投薬量を容易に確定することができる。
いずれかの特定の理論に縛られるものではないが、本明細書に記載される組成物および方法により提供される重要な利点は、本開示のGSH遺伝子座を利用することにより、任意の疾患(例えば、ヘモグロビン異常症、嚢胞性線維症、ヘモクロマトーシス)に罹患している対象を処置する、または任意の疾患を対象、例えば、そのような疾患を発症するリスクがある者において予防する、効率的な方法である。リスクのある対象を、彼らが有するある特定の遺伝子変異、および/または環境もしくは物理的因子(例えば、対象の性別、年齢)により、同定することができる。高効率的かつ安全な遺伝子治療は、本明細書に記載される組成物および方法を使用することにより達成される。例えば、GSHへの核酸(例えば、治療用核酸)の標的化された組込みは、細胞内の細胞遺伝子の有害な変異、形質転換、または癌遺伝子活性化の可能性を低下させる。
例示的な実施形態
項1
ゲノムセーフハーバー(GSH)遺伝子座を同定する方法であって、
(a)細胞内のゲノムへの少なくとも1つのマーカー遺伝子のランダム挿入を誘導するステップ;
(b)前記マーカー遺伝子の発現の安定性および/またはレベルを決定するステップ;ならびに
(c)挿入された前記マーカー遺伝子が安定したおよび/または高レベルの発現を示すゲノム遺伝子座をGSHとして同定するステップ
を含む方法。
項2
(a)挿入された前記マーカー遺伝子が細胞生存率に影響を与えないゲノム遺伝子座を同定するステップ、および/または
(b)挿入された前記マーカーが前記細胞の分化能力(例えば、多能性、複能性)に影響を与えないゲノム遺伝子座を同定するステップ
をさらに含む、項1に記載の方法。
項3
前記細胞が、細胞系、初代細胞、幹細胞または前駆細胞から選択され、必要に応じて、前記細胞が、幹細胞または前駆細胞である、項1または2に記載の方法。
項4
前記細胞が、胚性幹細胞、組織特異的幹細胞、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、造血幹細胞、造血CD34+細胞、および表皮幹細胞、上皮幹細胞、神経系幹細胞、肺前駆細胞、および肝臓前駆細胞から選択される、項1から3のいずれか一項に記載の方法。
項5
前記細胞が、哺乳動物細胞であり、必要に応じて、前記哺乳動物細胞が、マウス細胞、イヌ細胞、ブタ細胞、非ヒト霊長類(NHP)細胞、またはヒト細胞である、項1から4のいずれか一項に記載の方法。
項6
前記ランダム挿入が、
(a)前記細胞に、前記マーカー遺伝子を含む核酸分子をトランスフェクトすることであって、必要に応じて前記核酸分子がプラスミドである、こと;または
(b)前記細胞に前記マーカー遺伝子を含む組込みウイルスを形質導入すること
により誘導される、項1から5のいずれか一項に記載の方法。
項7
前記ランダム挿入が、前記細胞に前記マーカー遺伝子を含む組込みウイルスを形質導入することにより誘導され、前記組込みウイルスが、レトロウイルスであり、必要に応じて、前記レトロウイルスが、ガンマレトロウイルスである、項1から6のいずれか一項に記載の方法。
項8
前記少なくとも1つのマーカー遺伝子が、スクリーニング可能なマーカーおよび/または選択可能なマーカーを含み、必要に応じて、
(a)前記スクリーニング可能なマーカー遺伝子が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ベータ-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、および/もしくはベータ-グルクロニダーゼをコードする、ならびに/または
(b)前記選択可能なマーカーが、抗生物質耐性遺伝子であり、必要に応じて、前記抗生物質耐性遺伝子が、ブラストサイジンS-デアミナーゼもしくはアミノ3’-グリコシルホスホトランスフェラーゼ(ネオマイシン耐性遺伝子)をコードする、
項1から7のいずれか一項に記載の方法。
項9
前記マーカー遺伝子が、プロモーターに作動可能に連結されていない、項1から8のいずれか一項に記載の方法。
項10
前記マーカー遺伝子が、プロモーターに作動可能に連結されており、必要に応じて、前記プロモーターが、組織特異的プロモーターである、項1から8のいずれか一項に記載の方法。
項11
前記GSHが、イントロン型、エクソン型、または遺伝子間型である、項1から10のいずれか一項に記載の方法。
項12
GSH遺伝子座を同定する方法であって、
(a)後生動物種のゲノムにおける内在性ウイルスエレメント(EVE)の存在および位置を決定するステップ;
(b)前記EVEの近位にある遺伝子間またはイントロン境界を決定するステップ;ならびに
(c)前記EVEを含む遺伝子間またはイントロン遺伝子座をGSH遺伝子座として同定するステップ
を含む方法。
項13
(a)EVEの前記存在および位置が、ウイルスエレメントと相同の配列をin silicoで検索することにより決定される;ならびに/または
(b)前記EVEの近位にある前記遺伝子間もしくはイントロン境界が、前記EVEに隣接する配列と遺伝子間もしくはイントロン境界が分かっている1つもしくは複数の種のそのオルソロガス配列とをアラインすることにより決定される、
項12に記載の方法。
項14
オルソロガス生物におけるGSH遺伝子座を同定する方法であって、
(a)項1から13のいずれか一項に記載の方法に従ってA種におけるGSH遺伝子座を同定するステップ;
(b)(i)A種における前記GSH遺伝子座の近位にある少なくとも1つのシス作用性エレメントおよび(ii)B種における対応するシス作用性エレメントの位置を決定するステップ;ならびに
(c)B種における遺伝子座をGSH遺伝子座として同定するステップであって、B種における前記遺伝子座と少なくとも1つのシス作用性エレメントの間の距離が、A種における前記GSH遺伝子座と対応するシス作用性エレメントの間の距離に実質的に比例する、ステップ
を含む方法。
項15
前記少なくとも1つのシス作用性エレメントが、スプライシングドナー部位、スプライシングアクセプター部位、ポリピリミジントラクト、ポリアデニル化シグナル、エンハンサー、プロモーター、ターミネーター、スプライシング制御エレメント、イントロンスプライシングエンハンサー、およびイントロンスプライシングサイレンサーから選択される、項14に記載の方法。
項16
前記少なくとも1つのシス作用性エレメントが、2つまたはそれより多くのシス作用性エレメントを含む、項14または15に記載の方法。
項17
前記少なくとも1つのシス作用性エレメントが、2つのシス作用性エレメントを含み、第1のシス作用性エレメントが、前記GSH遺伝子座の上流(すなわち、5’側)に位置し、第2のシス作用性エレメントが、前記GSH遺伝子座の下流(すなわち、3’側)に位置する、項14から16のいずれか一項に記載の方法。
項18
B種における2つのシス作用性エレメント間の距離に対する前記少なくとも1つのシス作用性エレメントと前記GSH遺伝子座の間の距離が、A種における2つのシス作用性エレメント間の距離に対する前記対応するシス作用性エレメントと前記GSH遺伝子座の間の距離に実質的に比例する、項17に記載の方法。
項19
B種における前記少なくとも1つのシス作用性エレメントから前記GSH遺伝子座の間の距離が、A種における前記少なくとも1つのシス作用性エレメントから前記GSH遺伝子座の間の距離の少なくとも20%、しかし最大で500%である、項14から18のいずれか一項に記載の方法。
項20
B種における前記少なくとも1つのシス作用性エレメントから前記GSH遺伝子座の間の距離が、A種における前記少なくとも1つのシス作用性エレメントから前記GSH遺伝子座の間の距離の少なくとも80%、しかし最大で250%である、項14から19のいずれか一項に記載の方法。
項21
前記GSH遺伝子座が、哺乳動物ゲノム内にあり、必要に応じて、前記哺乳動物ゲノムが、マウスゲノム、イヌゲノム、ブタゲノム、NHPゲノム、またはヒトゲノムである、項12から20のいずれか一項に記載の方法。
項22
前記EVEまたは前記ウイルスエレメントが、
(a)ウイルスゲノムのプロウイルスまたはその断片を含む;
(b)ウイルス核酸、ウイルスDNA、またはウイルスRNAのDNAコピーを含む;および/あるいは
(c)構造もしくは非構造ウイルスタンパク質、またはその断片をコードする、
項12から21のいずれか一項に記載の方法。
項23
前記EVEが、レトロウイルス、非レトロウイルス、パルボウイルス、またはサーコウイルスからのウイルス核酸を含む、項12から22のいずれか一項に記載の方法。
項24
(a)前記パルボウイルスが、B19、マウス微小ウイルス(mvm)、RA-1、AAV、ブファウイルス、ホコウイルス、ボカウイルス、および表1A~1Dに収載されているパルボウイルスのいずれか1つから選択され、必要に応じて、前記パルボウイルスが、AAVである;ならびに/または
(b)前記サーコウイルスが、ブタサーコウイルス(PCV)(例えば、PCV-1、PCV-2)である、
項23に記載の方法。
項25
前記後生動物種が、Cetacea、Chiropetera、Lagomorpha、およびMacropodiadaeから選択される、項14から24のいずれか一項に記載の方法。
項26
項12から25のいずれか一項に記載の方法をさらに含む、項1から11のいずれか一項に記載の方法。
項27
少なくとも1つのin vitro、ex vivo、および/またはin vivoアッセイを行うステップをさらに含む、項1から26のいずれか一項に記載の方法。
項28
前記少なくとも1つのin vitro、ex vivo、および/またはin vivoアッセイが、
(a)細胞(例えば、ヒト細胞)内の遺伝子座へのマーカー遺伝子のde novoの標的化された挿入、および(i)細胞生存率、(ii)挿入効率および/または(iii)マーカー遺伝子発現を決定すること;
(b)前駆細胞または幹細胞における遺伝子座へのマーカー遺伝子の標的化された挿入、およびin vitroで分化させ、(i)すべての発生系譜におけるマーカー遺伝子発現を、および/または(ii)前記マーカー遺伝子の前記挿入が前記前駆細胞もしくは幹細胞の分化に影響を与えるかどうかを決定すること;
(c)前駆細胞または幹細胞における遺伝子座へのマーカー遺伝子の標的化された挿入、および前記細胞を免疫枯渇マウスに生着させ、in vivoですべての発生系譜におけるマーカー遺伝子発現を評定すること;
(d)細胞における遺伝子座へのマーカー遺伝子の標的化された挿入、および包括的細胞転写プロファイルを(例えば、RNAseqまたはマイクロアレイを使用して)決定すること;ならびに
(e)トランスジェニックノックインマウスを生成することであって、前記マウスのゲノムDNAが前記遺伝子座に挿入されたマーカー遺伝子を有し、必要に応じて、前記マーカー遺伝子が、組織特異的または誘導性プロモーターに動作可能に連結されている、こと
から選択される、項27に記載の方法。
項29
前記前駆細胞または前記幹細胞が、胚性幹細胞、組織特異的幹細胞、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、造血幹細胞、造血CD34+細胞、および表皮幹細胞、上皮幹細胞、神経系幹細胞、肺前駆細胞、筋肉サテライト細胞、腸K細胞、および肝臓前駆細胞から選択される、項28に記載の方法。
項30
項1から29のいずれか一項に記載の方法において同定されたGSH核酸の少なくとも一部分を含む、核酸ベクター。
項31
前記GSH核酸が、非翻訳配列またはイントロンを含む、項30に記載の核酸ベクター。
項32
前記GSHが、表3に収載されているGSHのいずれか1つまたはその断片の配列と少なくとも65%同一である配列を含む、項30または31に記載の核酸ベクター。
項33
前記GSHが、SYNTX-GSH1、SYNTX-GSH2、SYNTX-GSH3またはSYNTX-GSH4のゲノムDNAまたはその断片の配列と少なくとも65%同一である配列を含む、項30から32のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
項34
少なくとも1つの非GSH核酸、例えば、GSHとは異種である配列を有する核酸、例えば、GSH遺伝子座に元々存在しない核酸配列、例えば導入遺伝子をさらに含む、項30から33のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
項35
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、GSH 5’相同性アームおよび/またはGSH 3’相同性アームと隣接しており、前記相同性アームが、標的GSH核酸と少なくとも約65%同一である核酸配列を含む、項34に記載の核酸ベクター。
項36
前記GSH相同性アームが、長さ10~5000塩基対の間であり、必要に応じて、前記GSH相同性アームが、長さ100~1500塩基対の間である、項35に記載の核酸ベクター。
項37
前記GSH相同性アームが、長さ少なくとも30塩基対である、項35に記載の核酸ベクター。
項38
前記GSH相同性アームが、細胞のゲノム内のGSH遺伝子座への相同性依存型組込みを媒介するのに十分な長さである、項35から37のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
項39
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、順配向での前記GSHへの組込みのための配向にある、項35から38のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
項40
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、逆配向での前記GSHへの組込みのための配向にある、項35から38のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
項41
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、(a)プロモーターに作動可能に連結されている、または(b)プロモーターに作動可能に連結されていない、項34から40のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
項42
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、プロモーターに作動可能に連結されており、前記プロモーターが、
(a)それが作動可能に連結されている前記核酸とは異種のプロモーター;
(b)前記核酸の組織特異的発現を助長するプロモーター;
(c)前記核酸の構成的発現を助長するプロモーター;
(d)誘導性プロモーター;
(e)動物DNAウイルスの最初期プロモーター;
(f)昆虫ウイルスの最初期プロモーター;および
(g)昆虫細胞プロモーター
から選択される、項41に記載の核酸ベクター。
項43
前記誘導性プロモーターが、小分子、代謝物、オリゴヌクレオチド、リボスイッチ、ペプチド、ペプチドミメティック、ホルモン、ホルモンアナログ、および光から選択される作用因子によりモジュレートされる、項42に記載の核酸ベクター。
項44
前記作用因子が、テトラサイクリン、キュメート、タモキシフェン、エストロゲン、およびアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、ラパマイシン、FKCsA、青色光、アブシジン酸(ABA)、およびリボスイッチから選択される、項43に記載の核酸ベクター。
項45
前記プロモーターが、造血幹細胞、造血CD34+細胞、および表皮幹細胞、上皮幹細胞、神経系幹細胞、肺前駆細胞、筋肉サテライト細胞、腸K細胞、ニューロン細胞、気道上皮細胞、または肝臓前駆細胞における組織特異的発現を助長する、項42に記載の核酸ベクター。
項46
前記プロモーターが、CMVプロモーター、β-グロビンプロモーター、CAGプロモーター、AHSPプロモーター、MNDプロモーター、ウィスコット・アルドリッチプロモーター、PKLRプロモーター、多角体(polh)プロモーター、および最初期1遺伝子(IE-1)プロモーターから選択される、項41または42に記載の核酸ベクター。
項47
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、コーディングRNAをコードする配列を含む、項34から46のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
項48
コーディングRNAをコードする前記配列が、標的細胞における発現のためにコドン最適化されている、項47に記載の核酸ベクター。
項49
コーディングRNAをコードする前記少なくとも1つの非GSH核酸が、シグナルペプチドをコードする配列をさらに含む、項47または48に記載の核酸ベクター。
項50
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、
(a)タンパク質またはその断片、好ましくは、ヒトタンパク質またはその断片;
(b)治療用タンパク質もしくはその断片、抗原結合性タンパク質、またはペプチド;
(c)自殺遺伝子、必要に応じて、単純ヘルペスウイルス-1チミジンキナーゼ(HSV-TK);
(d)ウイルスタンパク質またはその断片;
(e)ヌクレアーゼ、必要に応じて、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、メガTAL、またはCRISPRエンドヌクレアーゼ、(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼまたはそのバリアント);
(f)マーカー、例えば、ルシフェラーゼまたはGFP;および/あるいは
(g)薬物耐性タンパク質、例えば、抗生物質耐性遺伝子、例えばネオマイシン耐性
をコードする配列を含む、項34から49のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
項51
前記ウイルスタンパク質またはその断片が、構造タンパク質(例えば、VP1、VP2、VP3)または非構造タンパク質(例えば、Repタンパク質)を含む、項50に記載の核酸ベクター。
項52
前記ウイルスタンパク質またはその断片が、
(a)パルボウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、VP1、VP2、VP3、NS1、もしくはRep;
(b)レトロウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、エンベロープタンパク質、gag、pol、もしくはVSV-G;
(c)アデノウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、E1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、もしくは構造タンパク質(例えば、A、B、C);および/または
(d)単純ヘルペスウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、ICP27、ICP4、もしくはpac
を含む、項50または51に記載の核酸ベクター。
項53
ウイルスタンパク質をコードする前記少なくとも1つの非GSH核酸が、ウイルスの表面タンパク質またはその断片をコードする、項50から52のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
項54
(a)前記表面タンパク質もしくはその断片が、宿主において免疫応答を惹起する免疫原性表面タンパク質である、(b)前記表面タンパク質もしくはその断片が、シグナルペプチドをさらに含む、(c)前記表面タンパク質もしくはその断片をコードする遺伝子が、誘導性プロモーターに作動可能に連結されている、および/または(d)前記表面タンパク質もしくはその断片をコードする核酸が、自殺遺伝子をさらに含む、項53に記載の核酸ベクター。
項55
前記表面タンパク質が、コロナウイルス(例えば、MERS、SARS)、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、ヒトパピローマウイルス、デングウイルス血清型1、デングウイルス血清型2、デングウイルス血清型3、デングウイルス血清型4、ジカウイルス、ウエストナイルウイルス、黄熱病ウイルス、チクングニアウイルス、マヤロウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、またはニパウイルスのものである、項53または54に記載の核酸ベクター。
項56
前記表面タンパク質が、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質である、項53から55のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
項57
タンパク質またはその断片をコードする配列を含む前記少なくとも1つの非GSH核酸が、ヘモグロビン遺伝子(HBA1、HBA2、HBB、HBG1、HBG2、HBD、HBE1、および/またはHBZ)、アルファ-ヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)、凝固第VIII因子、凝固第IX因子、フォン・ヴィレブランド因子、ジストロフィンまたは短縮型ジストロフィン、マイクロジストロフィン、ユートロフィンまたは短縮型ユートロフィン、マイクロユートロフィン、ウシェリン(USH2A)、GBA1、プレプロインスリン、インスリン、GIP、GLP-1、CEP290、ATPB1、ATPB11、ABCB4、CPS1、ATP7B、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、KIND1、INS、F8またはその断片(例えば、Bドメイン欠失ポリペプチドをコードする断片(例えば、VIII SQ、p-VIII))、IRGM、NOD2、ATG2B、ATG9、ATG5、ATG7、ATG16L1、BECN1、EI24/PIG8、TECPR2、WDR45/WIP14、CHMP2B、CHMP4B、Dynein、EPG5、HspB8、LAMP2、LC3b UVRAG、VCP/p97、ZFYVE26、PARK2/Parkin、PARK6/PINK1、SQSTM1/p62、SMURF、AMPK、ULK1、RPE65、CHM、RPGR、PDE6B、CNGA3、GUCY2D、RS1、ABCA4、MYO7A、HFE、ヘプシジン、可溶性形態(例えば、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体またはIL-1β受容体の)をコードする遺伝子、および嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)から選択される、項50に記載の核酸ベクター。
項58
前記抗原結合性タンパク質が、抗体またはその抗原結合性断片であり、必要に応じて、前記抗体またはその抗原結合性断片が、抗体、Fv、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、半抗体-scFv、タンデムscFv、Fab/scFv-Fc、タンデムFab’、一本鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(TandAb)、Fab/scFv-Fc、scFv-Fc、ヘテロ二量体IgG(CrossMab)、DART、およびダイアボディから選択される、項50に記載の核酸ベクター。
項59
前記抗原結合性タンパク質が、TNFα、CD20、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-6、BLyS、APRIL、IFN-ガンマなど)、Her2、RANKL、IL-6R、GM-CSF、CCR5、または病原体(例えば、細菌毒素、ウイルスカプシドタンパク質など)に特異的に結合する、項50または51に記載の核酸ベクター。
項60
前記抗原結合性タンパク質が、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ、アナキンラ、リツキシマブ、アバタセプト、トシリズマブ、ナタリズマブ、カナキヌマブ、アタシセプト、ベリムマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、フォントリズマブ、トラスツズマブ、デノスマブ、サリルマブ、レンジルマブ、ギムシルマブ、シルツキシマブ、レロンリマブ、およびそれらの抗原結合性断片から選択される、項50、58、および59のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
項61
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、非コーディングRNAをコードする配列を含み、必要に応じて、前記非コーディングRNAが、アンチセンスポリヌクレオチド、lncRNA、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA、snoRNA、snRNA、scaRNA、および/またはガイドRNAを含む、項34から46のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
項62
前記非コーディングRNAが、DMT-1、フェロポーチン、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、IL-1β受容体、および変異タンパク質(例えば、変異HFE、CFTR)をコードする遺伝子から選択される遺伝子を標的とする、項61に記載の核酸ベクター。
項63
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、標的細胞の内在性遺伝子の発現を増加または回復させる、項34から62のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
項64
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、標的細胞の内在性遺伝子の発現を減少または消失させる、項34から62のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
項65
(a)転写制御エレメント(例えば、エンハンサー、転写終結配列、非翻訳領域(5’または3’UTR)、近位プロモーターエレメント、遺伝子座調節領域(例えば、β-グロビンLCR、またはβ-グロビンLCRのDNase高感受性部位(HS))、ポリアデニル化シグナル配列)、および/または
(b)翻訳制御エレメント(例えば、コザック配列、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後制御エレメント)
をさらに含む、項30から64のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
項66
プラスミド、ミニサークル、コスミド、人工染色体(例えば、BAC)、線状共有結合閉鎖(LCC)DNAベクター(例えば、ミニサークル、ミニベクターおよびミニノット)、線状共有結合閉鎖(LCC)ベクター(例えば、MIDGE、MiLV、ミニストリング(ministering)、ミニプラスミド)、ミニイントロンプラスミド、pDNA発現ベクター、またはそのバリアントから選択される、項30から65のいずれかに記載の核酸ベクター。
項67
項1から29のいずれか一項に記載の方法で同定されたGSH核酸の少なくとも一部分;項30から66のいずれか一項に記載の核酸ベクター内のGSHの少なくとも一部分;表3に収載されているGSHのいずれか1つの少なくとも一部分;および/または項30から66のいずれか一項に記載の核酸ベクターを含む、ウイルスベクター。
項68
rAd、AAV、rHSV、レトロウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、レンチウイルス、ワクシニアウイルスベクター、HSV 1型(HSV-1)-AAVハイブリッドベクター、バキュロウイルス発現ベクター系(BEVS)、およびそれらのバリアントから選択される、項67に記載のウイルスベクター。
項69
項30から66のいずれか一項に記載の核酸ベクターまたは項67もしくは68に記載のウイルスベクターを含む、細胞。
項70
細胞系または初代細胞から選択される、項69に記載の細胞。
項71
哺乳動物細胞、昆虫細胞、細菌細胞、酵母細胞、または植物細胞であり、必要に応じて、前記哺乳動物細胞が、ヒト細胞または齧歯類細胞である、項69から70に記載の細胞。
項72
昆虫細胞であり、前記昆虫細胞が、lepidopteraの種に由来する、項69から71のいずれか一項に記載の細胞。
項73
lepidopteraの前記種が、Spodoptera frugiperda、Spodoptera littoralis、Spodoptera exigua、またはTrichoplusia niである、項72に記載の細胞。
項74
前記昆虫細胞が、Sf9である、項69から73のいずれか一項に記載の細胞。
項75
造血細胞、造血前駆細胞、造血幹細胞、赤血球系列細胞、巨核球、赤血球系前駆細胞(EPC)、CD34+細胞、CD44+細胞、赤血球、CD36+細胞、間葉系幹細胞、神経細胞、腸細胞、腸幹細胞、消化管上皮細胞、内皮細胞、腸内分泌細胞、肺細胞、肺前駆細胞、エンテロサイト、肝臓細胞(例えば、肝細胞、肝星細胞、クッパー細胞(KC)、肝臓類洞内皮細胞(LSEC)、肝臓前駆細胞)、幹細胞、前駆細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、皮膚線維芽細胞、マクロファージ、脳微小血管内皮細胞(BMVEC)、神経系幹細胞、筋肉サテライト細胞、上皮細胞、気道上皮細胞、筋肉前駆細胞、赤血球系前駆細胞、リンパ系前駆細胞、Bリンパ芽球細胞、B細胞、T細胞、好塩基球性風土病性バーキットリンパ腫(EBL)、多染性赤芽球、表皮幹細胞、上皮幹細胞、胚性幹細胞、P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞、ケラチノサイト、膵臓β細胞、K細胞、L細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞、MDCK細胞、Vero細胞、CHO、BHK1、NS0、Sp2/0、HeLa、A549、および正染性赤芽球から選択される、項69から74のいずれか一項に記載の細胞。
項76
細胞のゲノム内のGSHに組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含む細胞であって、前記GSHが、表3から選択される、細胞。
項77
前記GSH核酸が、非翻訳配列またはイントロンを含む、項76に記載の細胞。
項78
前記GSHが、SYNTX-GSH1、SYNTX-GSH2、SYNTX-GSH3およびSYNTX-GSH4から選択される、項76または77に記載の細胞。
項79
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、順配向で前記GSHに組み込まれている、項76から78のいずれか一項に記載の細胞。
項80
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、逆配向で前記GSHに組み込まれている、項76から78のいずれか一項に記載の細胞。
項81
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、(a)プロモーターに作動可能に連結されている、または(b)プロモーターに作動可能に連結されていない、項76か80のいずれか一項に記載の細胞。
項82
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、プロモーターに作動可能に連結されており、前記プロモーターが、
(a)それが作動可能に連結されている前記核酸とは異種のプロモーター;
(b)前記核酸の組織特異的発現を助長するプロモーター;
(c)前記核酸の構成的発現を助長するプロモーター;
(d)誘導性プロモーター;
(e)動物DNAウイルスの最初期プロモーター;
(f)昆虫ウイルスの最初期プロモーター;および
(g)昆虫細胞プロモーター
から選択される、項81に記載の細胞。
項83
前記誘導性プロモーターが、小分子、代謝物、オリゴヌクレオチド、リボスイッチ、ペプチド、ペプチドミメティック、ホルモン、ホルモンアナログ、および光から選択される作用因子によりモジュレートされる、項82に記載の細胞。
項84
前記作用因子が、テトラサイクリン、キュメート、タモキシフェン、エストロゲン、およびアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、ラパマイシン、FKCsA、青色光、アブシジン酸(ABA)、およびリボスイッチから選択される、項83に記載の細胞。
項85
前記プロモーターが、造血幹細胞、造血CD34+細胞、および表皮幹細胞、上皮幹細胞、神経系幹細胞、肺前駆細胞、筋肉サテライト細胞、腸K細胞、ニューロン細胞、気道上皮細胞、または肝臓前駆細胞における組織特異的発現を助長する、項82に記載の細胞。
項86
前記プロモーターが、CMVプロモーター、β-グロビンプロモーター、CAGプロモーター、AHSPプロモーター、MNDプロモーター、ウィスコット・アルドリッチプロモーター、PKLRプロモーター、多角体(polh)プロモーター、および最初期1遺伝子(IE-1)プロモーターから選択される、項81または82に記載の細胞。
項87
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、コーディングRNAをコードする配列を含む、項52から58のいずれか一項に記載の細胞。
項88
コーディングRNAをコードする前記配列が、標的細胞における発現のためにコドン最適化されている、項87に記載の細胞。
項89
コーディングRNAをコードする前記少なくとも1つの非GSH核酸が、シグナルペプチドをコードする配列をさらに含む、項87または88に記載の細胞。
項90
コーディングRNAをコードする前記少なくとも1つの非GSH核酸が、
(a)タンパク質またはその断片、好ましくは、ヒトタンパク質またはその断片;
(b)治療用タンパク質もしくはその断片、抗原結合性タンパク質、またはペプチド;
(c)自殺遺伝子、必要に応じて、単純ヘルペスウイルス-1チミジンキナーゼ(HSV-TK);
(d)ウイルスタンパク質またはその断片;
(e)ヌクレアーゼ、必要に応じて、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、メガTAL、またはCRISPRエンドヌクレアーゼ、(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼまたはそのバリアント);
(f)マーカー、例えば、ルシフェラーゼまたはGFP;および/あるいは
(g)薬物耐性タンパク質、例えば、抗生物質耐性遺伝子、例えばネオマイシン耐性
をコードする配列を含む、項76から89のいずれか一項に記載の細胞。
項91
前記ウイルスタンパク質またはその断片が、構造タンパク質(例えば、VP1、VP2、VP3)または非構造タンパク質(例えば、Repタンパク質)を含む、項90に記載の細胞。
項92
前記ウイルスタンパク質またはその断片が、
(a)パルボウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、VP1、VP2、VP3、NS1、もしくはRep;
(b)レトロウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、エンベロープタンパク質、gag、pol、もしくはVSV-G;
(c)アデノウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、E1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、もしくは構造タンパク質(例えば、A、B、C);および/または
(d)単純ヘルペスウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、ICP27、ICP4、もしくはpac
を含む、項90または91に記載の細胞。
項93
ウイルスタンパク質をコードする遺伝子が、ウイルスの表面タンパク質またはその断片をコードする、項90から92のいずれか一項に記載の細胞。
項94
(a)前記表面タンパク質が、免疫応答を惹起する免疫原性表面タンパク質もしくはその断片である、(b)前記表面タンパク質もしくはその断片が、シグナルペプチドをさらに含む、(c)前記遺伝子が、誘導性プロモーターに作動可能に連結されている、および/または(d)前記表面タンパク質もしくはその断片をコードする核酸が、自殺遺伝子をさらに含む、項93に記載の細胞。
項95
前記表面タンパク質が、コロナウイルス(例えば、MERS、SARS)、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、ヒトパピローマウイルス、デングウイルス血清型1、デングウイルス血清型2、デングウイルス血清型3、デングウイルス血清型4、ジカウイルス、ウエストナイルウイルス、黄熱病ウイルス、チクングニアウイルス、マヤロウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、またはニパウイルスのものである、項93または94に記載の細胞。
項96
前記表面タンパク質が、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質である、項93から95のいずれか一項に記載の細胞。
項97
タンパク質またはその断片をコードする配列を含む前記少なくとも1つの非GSH核酸が、ヘモグロビン遺伝子(HBA1、HBA2、HBB、HBG1、HBG2、HBD、HBE1、および/またはHBZ)、アルファ-ヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)、凝固第VIII因子、凝固第IX因子、フォン・ヴィレブランド因子、ジストロフィンまたは短縮型ジストロフィン、マイクロジストロフィン、ユートロフィンまたは短縮型ユートロフィン、マイクロユートロフィン、ウシェリン(USH2A)、GBA1、プレプロインスリン、インスリン、GIP、GLP-1、CEP290、ATPB1、ATPB11、ABCB4、CPS1、ATP7B、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、KIND1、INS、F8またはその断片(例えば、Bドメイン欠失ポリペプチドをコードする断片(例えば、VIII SQ、p-VIII))、IRGM、NOD2、ATG2B、ATG9、ATG5、ATG7、ATG16L1、BECN1、EI24/PIG8、TECPR2、WDR45/WIP14、CHMP2B、CHMP4B、Dynein、EPG5、HspB8、LAMP2、LC3b UVRAG、VCP/p97、ZFYVE26、PARK2/Parkin、PARK6/PINK1、SQSTM1/p62、SMURF、AMPK、ULK1、RPE65、CHM、RPGR、PDE6B、CNGA3、GUCY2D、RS1、ABCA4、MYO7A、HFE、ヘプシジン、可溶性形態(例えば、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体またはIL-1β受容体の)をコードする遺伝子、および嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)から選択される、項90に記載の細胞。
項98
前記抗原結合性タンパク質が、抗体またはその抗原結合性断片であり、必要に応じて、前記抗体またはその抗原結合性断片が、抗体、Fv、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、半抗体-scFv、タンデムscFv、Fab/scFv-Fc、タンデムFab’、一本鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(TandAb)、Fab/scFv-Fc、scFv-Fc、ヘテロ二量体IgG(CrossMab)、DART、およびダイアボディから選択される、項90に記載の細胞。
項99
前記抗原結合性タンパク質が、TNFα、CD20、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-6、BLyS、APRIL、IFN-ガンマなど)、Her2、RANKL、IL-6R、GM-CSF、CCR5、または病原体(例えば、細菌毒素、ウイルスカプシドタンパク質など)に特異的に結合する、項90または91に記載の細胞。
項100
前記抗原結合性タンパク質が、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ、アナキンラ、リツキシマブ、アバタセプト、トシリズマブ、ナタリズマブ、カナキヌマブ、アタシセプト、ベリムマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、フォントリズマブ、トラスツズマブ、デノスマブ、サリルマブ、レンジルマブ、ギムシルマブ、シルツキシマブ、レロンリマブ、およびそれらの抗原結合性断片から選択される、項90、98、および99のいずれか一項に記載の細胞。
項101
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、非コーディングRNAをコードする配列を含み、必要に応じて、前記非コーディングRNAが、lncRNA、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA、snoRNA、snRNA、scaRNA、および/またはガイドRNAを含む、項76から86のいずれか一項に記載の細胞。
項102
前記非コーディングRNAが、DMT-1、フェロポーチン、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、IL-1β受容体、変異タンパク質(例えば、変異HFE、CFTR)をコードする遺伝子から選択される遺伝子を標的とする、項101に記載の細胞。
項103
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、標的細胞の内在性遺伝子の発現を増加または回復させる、項76から102のいずれか一項に記載の細胞。
項104
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、標的細胞の内在性遺伝子の発現を減少または消失させる、項76から102のいずれか一項に記載の細胞。
項105
前記少なくとも1つの非GSH核酸が、
(a)転写制御エレメント(例えば、エンハンサー、転写終結配列、非翻訳領域(5’または3’UTR)、近位プロモーターエレメント、遺伝子座調節領域(例えば、β-グロビンLCR、またはβ-グロビンLCRのDNase高感受性部位(HS))、ポリアデニル化シグナル配列)、および/または
(b)翻訳制御エレメント(例えば、コザック配列、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後制御エレメント)
をさらに含む、項76から104のいずれか一項に記載の細胞。
項106
細胞系または初代細胞から選択される、項76から105のいずれか一項に記載の細胞。
項107
哺乳動物細胞、昆虫細胞、細菌細胞、酵母細胞、または植物細胞であり、必要に応じて、前記哺乳動物細胞が、ヒト細胞または齧歯類細胞である、項76から106のいずれか一項に記載の細胞。
項108
昆虫細胞であり、前記昆虫細胞が、lepidopteraの種に由来する、項76から107のいずれか一項に記載の細胞。
項109
lepidopteraの前記種が、Spodoptera frugiperda、Spodoptera littoralis、Spodoptera exigua、またはTrichoplusia niである、項108に記載の細胞。
項110
前記昆虫細胞が、Sf9である、項107から109のいずれか一項に記載の細胞。
項111
造血細胞、造血前駆細胞、造血幹細胞、赤血球系列細胞、巨核球、赤血球系前駆細胞(EPC)、CD34+細胞、CD44+細胞、赤血球、CD36+細胞、間葉系幹細胞、神経細胞、腸細胞、腸幹細胞、消化管上皮細胞、内皮細胞、腸内分泌細胞、肺細胞、肺前駆細胞、エンテロサイト、肝臓細胞(例えば、肝細胞、肝星細胞、クッパー細胞(KC)、肝臓類洞内皮細胞(LSEC)、肝臓前駆細胞)、幹細胞、前駆細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、皮膚線維芽細胞、マクロファージ、脳微小血管内皮細胞(BMVEC)、神経系幹細胞、筋肉サテライト細胞、上皮細胞、気道上皮細胞、筋肉前駆細胞、赤血球系前駆細胞、リンパ系前駆細胞、Bリンパ芽球細胞、B細胞、T細胞、好塩基球性風土病性バーキットリンパ腫(EBL)、多染性赤芽球、表皮幹細胞、上皮幹細胞、胚性幹細胞、P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞、ケラチノサイト、膵臓β細胞、K細胞、L細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞、MDCK細胞、Vero細胞、CHO、BHK1、NS0、Sp2/0、HeLa、A549、および正染性赤芽球から選択される、項76から110のいずれか一項に記載の細胞。
項112
項30から66のいずれか一項に記載の核酸ベクター、項67もしくは68に記載のウイルスベクター、および/または項69から111のいずれか一項に記載の細胞を含む、医薬組成物。
項113
細胞のゲノム内のGSHに組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含むトランスジェニック生物であって、前記GSHが、表3から選択される、トランスジェニック生物。
項114
前記GSHが、SYNTX-GSH1、SYNTX-GSH2、SYNTX-GSH3およびSYNTX-GSH4から選択される、項113に記載のトランスジェニック生物。
項115
項69から114のいずれか一項に記載の細胞を含む、トランスジェニック生物。
項116
哺乳動物または植物であり、必要に応じて、前記哺乳動物が、齧歯類(例えば、マウス、ラット)、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ、ラマまたはウサギである、項115に記載のトランスジェニック生物。
項117
少なくとも1つの非GSH核酸を細胞のGSH遺伝子座に挿入する方法であって、項30から66のいずれか一項に記載の核酸ベクター、項67もしくは68に記載のウイルスベクター、または項112に記載の医薬組成物を前記細胞に導入するステップを含み、そうすることで、ゲノム内の前記GSH遺伝子座と前記非GSH核酸に隣接するGSH 5’相同性アームおよびGSH 3’相同性アームの相同組換えによって前記非GSH核酸が前記GSH遺伝子座に組み込まれる、方法。
項118
前記非GSH核酸が、順配向で前記GSHに組み込まれる、項117に記載の方法。
項119
前記非GSH核酸が、逆配向で前記GSHに組み込まれる、項117に記載の方法。
項120
疾患を予防または処置する方法であって、項30から66のいずれか一項に記載の核酸ベクター、項67もしくは68に記載のウイルスベクター、項69から111のいずれか一項に記載の細胞、および/または項112に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法。
項121
前記疾患が、感染症、内皮機能不全、嚢胞性線維症、心血管疾患、腎疾患、がん、ヘモグロビン異常症、貧血、血友病(例えば、血友病A)、骨髄増殖性障害、凝血異常、鎌状赤血球症、アルファサラセミア、ベータサラセミア、ファンコニ貧血、家族性肝内胆汁うっ滞症、皮膚の遺伝性障害(例えば、表皮水疱症)、眼の遺伝性疾患(例えば、遺伝性網膜ジストロフィー、例えば、レーバー先天性黒内障(LCA)、網膜色素変性(RP)、コロイデレミア、色覚異常、網膜分離症、シュタルガルト病、アッシャー症候群1B型)、ファブリー、ゴーシェ、ニーマン・ピックA、ニーマン・ピックB、GM1ガングリオシドーシス、ムコ多糖症(MPS)I型(ハーラー、シャイエ、ハーラー/シャイエ)、MPS II型(ハンター)、MPS VI型(マロトー・ラミー)、血液がん、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、肝硬変、肝細胞癌、膵炎、真性糖尿病、心筋症、関節炎、性腺機能低下症、心疾患、心臓発作、甲状腺機能低下症、耐糖能障害、関節症、肝線維症、ウイルソン病、潰瘍性大腸炎、クローン病、テイ・サックス病、神経変性障害、脊髄性筋萎縮症1型、ハンチントン病、カナバン病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、若年性慢性関節炎、乾癬、および強直性脊椎炎、および自己免疫疾患、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、運動失調)、炎症性疾患、炎症性腸疾患、クローン病、関節リウマチ、ループス、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患/COPD、肺線維症、シェーグレン病、高血糖障害、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、インスリン抵抗性糖尿病(例えば、メンデンホール症候群、ウェルナー症候群、妖精症、および脂肪萎縮性糖尿病)、脂質異常症、高脂血症、低密度リポタンパク質(LDL)上昇、高密度リポタンパク質(HDL)低下、トリグリセリド上昇、メタボリックシンドローム、肝臓疾患、腎疾患、心血管疾患、虚血、脳卒中、再灌流中の合併症、筋変性、萎縮、老化の症状(例えば、筋萎縮症、フレイル、代謝障害、軽度の炎症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、加齢性認知症および孤発型アルツハイマー病、前がん状態、およびうつ状態をはじめとする精神医学的状態)、脊髄損傷、動脈硬化症、感染性疾患(例えば、細菌性、真菌性、ウイルス性)、AIDS、結核、胚発生障害、不妊症、リソソーム蓄積症、活性化因子欠損症/GM2ガングリオシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、コレステロールエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠損症、シスチン症、ダノン病、ファーバー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(I、IIおよびIII型)、GM1ガングリオシドーシス、(乳児型、遅発乳児型/若年型および成人型/慢性)、ハンター症候群(MPS II)、I細胞病/ムコリピドーシスII、乳児型遊離シアル酸蓄積症(ISSD)、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損症、クラッベ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、ハーラー症候群、シャイエ症候群、ハーラー・シャイエ症候群、サンフィリッポ症候群、モルキオAおよびB型、マロトー・ラミー、スライ症候群、ムコリピドーシス、多種スルフェート欠損症、神経セロイドリポフスチン症、CLN6病、ヤンスキー・ビールショースキー病、ポンペ病、濃化異骨症、サンドホフ病、シンドラー病、およびウォールマン病から選択される、項120に記載の方法。
項122
前記感染症が、細菌感染症、真菌感染症、またはウイルス感染症である、項121に記載の方法。
項123
前記感染症が、前記ウイルス感染症であり、前記ウイルス感染症が、コロナウイルス(例えば、MERS、SARS)、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、ヒトパピローマウイルス、デングウイルス血清型1、デングウイルス血清型2、デングウイルス血清型3、デングウイルス血清型4、ジカウイルス、ウエストナイルウイルス、黄熱病ウイルス、チクングニアウイルス、マヤロウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、またはニパウイルスによるものである、項121または122に記載の方法。
項124
前記ウイルス感染症が、SARS-CoV-2によるものである、項122または123に記載の方法。
項125
前記核酸ベクター、前記細胞、および/または前記医薬組成物が、前記対象に、血管内、脳内、非経口、腹腔内、静脈内、硬膜外、脊髄内、胸骨内、関節内、滑膜内、くも膜下腔内、腫瘍内、動脈内、心臓内、筋肉内、鼻腔内、肺内、皮膚移植、または経口投与によって投与される、項120から124のいずれか一項に記載の方法。
項126
前記細胞が、前記対象にとって自己または同種異系である、項120から125のいずれか一項に記載の方法。
項127
細胞内のタンパク質のレベルおよび/または活性をモジュレートする方法であって、項30から66のいずれか一項に記載の核酸ベクター、項67もしくは68に記載のウイルスベクター、および/または項112に記載の医薬組成物を前記細胞に導入するステップを含む方法。
項128
前記レベルおよび/または活性が、上昇する、項127に記載の方法。
項129
前記レベルおよび/または活性が、低下または消失する、項128に記載の方法。
項130
生物製剤を製造する方法であって、
(a)(i)項30から66のいずれか一項に記載の核酸ベクターを含む細胞、(ii)項67もしくは68に記載のウイルスベクターを含む細胞、または(iii)項69から111のいずれか一項に記載の細胞を培養し、発現された生物製剤を回収するステップ;あるいは
(b)前記発現された生物製剤を、項115または116に記載のトランスジェニック生物から回収するステップ
を含む方法。
項131
前記生物製剤が、抗原結合性タンパク質である、項130に記載の方法。
項132
前記生物製剤が、抗体またはその抗原結合性断片であり、必要に応じて、前記抗体またはその抗原結合性断片が、抗体、Fv、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、半抗体-scFv、タンデムscFv、Fab/scFv-Fc、タンデムFab’、一本鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(TandAb)、Fab/scFv-Fc、scFv-Fc、ヘテロ二量体IgG(CrossMab)、DART、およびダイアボディから選択される、項130または131に記載の方法。
項133
前記生物製剤が、TNFα、CD20、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-6、BLyS、APRIL、IFN-ガンマなど)、Her2、RANKL、IL-6R、GM-CSF、またはCCR5に特異的に結合する、項130から132のいずれか一項に記載の方法。
項134
前記生物製剤が、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ、アナキンラ、リツキシマブ、アバタセプト、トシリズマブ、ナタリズマブ、カナキヌマブ、アタシセプト、ベリムマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、フォントリズマブ、トラスツズマブ、デノスマブ、サリルマブ、レンジルマブ、ギムシルマブ、シルツキシマブ、レロンリマブ、およびそれらの抗原結合性断片から選択される、項130から133のいずれか一項に記載の方法。
項135
前記生物製剤が、治療用タンパク質であり、必要に応じて、前記治療用タンパク質が、インスリンである、項130から134のいずれか一項に記載の方法。
項136
ウイルスベクター(例えば、遺伝子治療またはワクチン)を製造する方法であって、
(1)
(i)少なくとも1つの機能的ウイルス複製起点(例えば、少なくとも1つのITRヌクレオチド配列)を含み、
必要に応じて、標的細胞における発現のためのプロモーターに作動可能に連結されている核酸をさらに含む、核酸配列と、
(ii)宿主細胞における発現のための少なくとも1つの発現調節配列に作動可能に連結されている、1つまたは複数のウイルス構造タンパク質(例えば、カプシドタンパク質、例えば、gag、VP1、VP2、VP3、そのバリアント)をコードする少なくとも1つの遺伝子を含む核酸配列と、
(iii)宿主細胞における発現のための少なくとも1つの発現調節配列に作動可能に連結されている1つまたは複数の複製タンパク質(例えば、Rep、pol)をコードする少なくとも1つの遺伝子を含む核酸配列と
を含む宿主細胞を用意するステップであって、
必要に応じて、前記少なくとも1つの複製タンパク質が、(a)宿主細胞における発現のための少なくとも1つの発現調節配列に作動可能に連結されている、機能的複製タンパク質をコードするRep52もしくはRep40コード配列またはその断片、および/あるいは(b)宿主細胞における発現のための少なくとも1つの発現調節配列に作動可能に連結されているRep78またはRep68コード配列を含み、
(i)、(ii)および(iii)のうちの少なくとも1つが、宿主細胞ゲノム内の表3から選択される少なくとも1つのGSHに安定的に組み込まれ、少なくとも1つのベクターが、存在する場合/とき、前記宿主細胞ゲノムに安定的に組み込まれない前記(i)、(ii)および(iii)の残部を含む、ステップ;ならびに
(2)前記宿主細胞を、組換えウイルスベクターが産生されるような条件下で維持するステップ
を含む方法。
項137
(ii)または(iii)が、GSHに組み込まれる、項136に記載の方法。
項138
(ii)および(iii)が、GSHに組み込まれる、項136に記載の方法。
項139
前記少なくとも1つの機能的ウイルス複製起点(例えば、少なくとも1つのITRヌクレオチド配列)が、
(a)ディペンドパルボウイルスITR、および/または
(b)AAV ITR、必要に応じて、AAV2 ITR
を含む、項136から138のいずれか一項に記載の方法。
項140
前記宿主細胞における発現のための前記少なくとも1つの発現調節配列が、
(a)プロモーター、および/または
(b)コザック様発現調節配列
を含む、項136から139のいずれか一項に記載の方法。
項141
前記プロモーターが、
(a)動物DNAウイルスの最初期プロモーター、
(b)昆虫ウイルスの最初期プロモーター、
(c)昆虫細胞プロモーター、または
(d)誘導性プロモーター
を含む、項140に記載の方法。
項142
前記動物DNAウイルスが、サイトメガロウイルス(CMV)、ディペンドパルボウイルス、またはAAVである、項141に記載の方法。
項143
前記昆虫ウイルスが、lepidopteraのウイルス、またはバキュロウイルスであり、必要に応じて、前記バキュロウイルスが、Autographa californicaマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMNPV)である、項141に記載の方法。
項144
前記プロモーターが、ポリへドリン(polh)または最初期1遺伝子(IE-1)プロモーターである、項140または141に記載の方法。
項145
前記プロモーターが、誘導性プロモーターである、項140または141に記載の方法。
項146
前記誘導性プロモーターが、小分子、代謝物、オリゴヌクレオチド、リボスイッチ、ペプチド、ペプチドミメティック、ホルモン、ホルモンアナログ、および光から選択される作用因子によりモジュレートされる、項145に記載の方法。
項147
前記作用因子が、テトラサイクリン、キュメート、タモキシフェン、エストロゲン、およびアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、ラパマイシン、FKCsA、青色光、アブシジン酸(ABA)、およびリボスイッチから選択される、項146に記載の方法。
項148
(a)前記ウイルス複製タンパク質が、AAV複製タンパク質、必要に応じて、Rep52および/もしくはRep78タンパク質である;ならびに/または
(b)前記ウイルス構造タンパク質が、AAVカプシドタンパク質である、
項136から147のいずれか一項に記載の方法。
項149
前記AAVが、AAV2である、項148に記載の方法。
項150
項67または68に記載のウイルスベクターを製造する、項136から149のいずれか一項に記載の方法。
項151
前記宿主細胞が、哺乳動物細胞または昆虫細胞である、項136から150のいずれか一項に記載の方法。
項152
前記宿主細胞が、哺乳動物細胞であり、前記哺乳動物細胞が、ヒト細胞または齧歯類細胞である、項151に記載の方法。
項153
前記哺乳動物細胞が、HEK293、HEK293T、HeLa、およびA549から選択される、項151または152に記載の方法。
項154
前記宿主細胞が、昆虫細胞であり、前記昆虫細胞が、lepidopteraの種に由来する、項151に記載の方法。
項155
lepidopteraの前記種が、Spodoptera frugiperda、Spodoptera littoralis、Spodoptera exigua、またはTrichoplusia niである、項154に記載の方法。
項156
前記昆虫細胞が、Sf9である、項151、154および155のいずれか一項に記載の方法。
項157
前記ウイルスベクターが、アデノウイルス由来ベクター(例えば、AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス由来ベクター(例えば、レンチウイルス)、ヘルペスウイルス由来ベクター、およびアルファウイルス由来ベクター(例えば、セムリキ森林ウイルス(SFV)ベクター)から選択される、項136から156のいずれか一項に記載の方法。
項158
項30から66のいずれか一項に記載の核酸ベクター、項67もしくは68に記載のウイルスベクター、項69から111のいずれか一項に記載の細胞、および/または項112に記載の医薬組成物を含む、キット。
(実施例1)
EVEの存在および位置を決定することによるGSH遺伝子座の同定
ゲノムスクリーニング
44の種(Katzourakis and Gifford (2010) PLOSGenetics 6(11):e1001191の表S1)の染色体アセンブリおよび全ゲノムショットガンアセンブリを、tBLASTn、およびゲノムが全長<100Kbである哺乳動物ウイルス群(2009年国際ウイルス分類委員会(ICTV)マスター種リストから選択した)に由来する代表的なペプチド配列のライブラリーを使用してin silicoでスクリーニングした。ウイルスペプチドと高同一性(すなわち、e値、0.0001)マッチに及ぶ宿主ゲノム配列を抽出し、Blastおよび手作業での編集を使用して推定的ウイルスORFを推測した。次いで、推定的EVEペプチドを使用して、Genbank非冗長(nr)データベースを相互tBLASTn検索でスクリーニングした。レトロウイルス、ウイルスクローニングベクター、とのマッチ、および宿主遺伝子座との非特異的マッチをフィルターにかけ、破棄した。残りの配列を、それらがGenbankおよびPFAMデータベースにおけるウイルスタンパク質に明確にマッチした場合、ウイルスとみなした。これらのエレメントについての遺伝子構造を、ICTVにより認証された最も近縁なウイルス属を代表するウイルスのタイプ種のヌクレオチド配列と推定的EVEペプチド配列を比較することにより決定した。ウイルス領域とゲノム領域との境界を、ウイルスペプチド、宿主種のゲノム、および近縁宿主種へのマッチに隣接する配列の解析により同定した。ウイルス挿入に隣接する配列は、それらが以下:(i)類縁宿主種において空の挿入部位として存在した、(ii)宿主タンパク質に対して非常に大きな類似性(すなわち、e値<1×10-9)を開示した;または(iii)非ウイルス性および高い反復性(宿主ゲノムあたり>50コピー)の場合、ゲノム配列とみなした。挿入は、>100bpのゲノム隣接配列をウイルスマッチのいずれかの側で同定することができた場合、内在性とみなした。>100bpの明確な(すなわち、>80%ヌクレオチド同一性)隣接配列が、宿主姉妹分類群において同定された挿入は、オルソロガスな挿入とみなした。PERLスクリプトを使用して、BLAST検索および配列抽出を自動化した。
系統発生解析
Blastを使用して推測した推定的EVE配列を、MUSCLEおよびMAAFTを使用して近縁ウイルスとアラインし、手作業で編集した(Edgar (2004) Nucleic Acids Res 32:1792-1797)。RAXML(Stamatakis (2006)Bioinformatics 22:2688-2690)とのアミノ酸配列アラインメントを使用して、いずれの場合にも、ProtTest(Abascal etal. (2005) Bioinformatics 21:2104-2105)により決定されるような最良適合置換モデルを実行して、最大尤度(ML)系統発生を概算した。MLツリーのサポートを、1000のノンパラメトリックブートストラップ複製で評価した。データセットの最良適合モデルは、Parvoviridae:ディペンドウイルスNS1遺伝子(JTT+C、17分類群にわたって332アミノ酸)、Parvoviridae:パルボウイルスNS1遺伝子(JTT+C、13分類群にわたって293アミノ酸)、Circoviridae:Rep遺伝子(Blosum62+C+F、14分類群にわたって235アミノ酸)、Hepadnaviridae:ポリメラーゼ遺伝子(JTT+C+F、9分類群にわたって661アミノ酸)、Orthomyxoviridae:GP遺伝子(WAG+C+F、5分類群にわたって482アミノ酸)、Reoviridae:VP5遺伝子(Dayhoff+C+F、4分類群にわたって171アミノ酸)、Bunyaviridae:フレボウイルスNP遺伝子(LG+C、12分類群にわたって247アミノ酸)、Bunyaviridae:ナイロウイルスNP遺伝子(LG+C、5分類群にわたって446アミノ酸)、Flaviviridae:主としてNS3遺伝子(LG+C+F、8分類群にわたって1846アミノ酸)、Filoviridae:NP遺伝子(JTT+C、29分類群にわたって369アミノ酸)、Filoviridae:L遺伝子(LG+C+F、9分類群にわたって517アミノ酸)、Bornaviridae:NP遺伝子(JTT+C、73分類群にわたって147アミノ酸)、Bornaviridae:L遺伝子(JTT+C+F、12分類群にわたって1243アミノ酸)、Rhabdoviridae:NP遺伝子(LG+C、34分類群にわたって220アミノ酸)、Rhabdoviridae:L遺伝子(LG+C+F、26分類群にわたって383アミノ酸)であった。
(実施例2)
オルソロガス生物におけるGSH遺伝子座を同定する方法
シス作用性エレメント(同様のサイズのイントロン)に対する位置
宿主種(EVEが、本明細書に記載される方法のいずれか1つを使用して同定される、宿主種)と非宿主種との配列相同性を欠いていることにより、非宿主種におけるEVEの挿入の位置は、不正確に決定される。EVE挿入の相対位置を使用して、近似を行うことができる。例えば、宿主および非宿主各々は、オルソログ宿主および近縁非宿主ゲノム配列に基づいて1200ヌクレオチド(nt)イントロンを有する。宿主種において、イントロンのスプライスドナー部位から800ntおよびスプライスアクセプター部位から400である位置にEVEを挿入する。配列同一性を欠いていること、例えば、≦60%同一性は、本明細書では、例えば、スプライスドナー部位から800ntおよびスプライスアクセプター部位から400ntである、GSHが、非宿主イントロン内にあることを示す。他のシス作用性エレメントおよびモチーフを、GSH遺伝子座の位置を決定するために使用してもよい。
シス作用性エレメント(異なるのサイズのイントロン)からの比例距離
宿主種のイントロンが、配列同一性を欠いており、非宿主イントロンと長さが異なる場合、EVE挿入部位および遺伝子ランドマーク、例えばシス作用性エレメント(例えば、スプライシングドナー部位またはスプライシングアクセプター部位)の比例距離を使用する。例えば、宿主種は、1200nt長であるイントロンを有するが、オルソログ非宿主イントロンが2400nt長であるので、比例距離を使用する。宿主種では、スプライシングドナー部位から800に挿入されたEVEは、2/3のイントロンサイズ(800/1200)に位置する。非宿主イントロンにおける比例距離2/3は、スプライシングドナー部位から1600ntである。したがって、非宿主種におけるGSH遺伝子座は、スプライシングドナー部位から1600ntであり、スプライシングアクセプター部位から800ntである。
(実施例3)
新規GSH遺伝子座の特徴付け
マーカー遺伝子発現および細胞分化に対する異なるGSHの影響の評定
ヒト初代CD34+HSCを使用して、異なる推定的GSHへの遺伝子導入の影響を評価した。オンラインガイドRNA予測ソフトウェア(ChopChop、Broad、IDT)を使用して、CRISPR/Cas9媒介遺伝子挿入のための相同性アームおよびガイドRNAを設計し、合成した。レポーター遺伝子を推定的GSH遺伝子座に挿入し、形質転換細胞を、サイトカインを補足したメチルセルロースに播種する(CFUアッセイ)か、サイトカインを補足した液体培地中で維持して、赤血球系前駆体への分化(赤血球系分化)を促進した。
CFUアッセイ
幹細胞の色および形態を顕微鏡下での可視化によりモニターするコロニー形成単位(CFU)アッセイによって、幹細胞分化の評価を行った。コミットされた赤血球系前駆体、例えば、CFU-GEMM、BFU-E、またはCFU-Eの同定を、特徴的な特色、例えば、細胞コロニーの細胞形態および細胞色、の同定により行った(図4A~図4C)。並行して、GFPの発現をUV光でモニターした。
赤血球系分化
赤血球生成の2つの異なる本物の細胞マーカー(CD71およびCD235)の定量化を、フローサイトメトリーにより行い(図5Aおよび図5B)、前駆細胞のコミットメント成功が示された。
結果:評価した条件、WT(非編集)、AAVS1編集、SYNTX-GSH1編集およびSYNTX-GSH2編集の間で、有意差は観察されなかった。図4A~図4Cおよび図5A~図5Bに示されている結果は、新規推定的セーフハーバー遺伝子座であるSYNTX-GSH1およびSYNTX-GSH2が、赤血球に分化する初代ヒトHSCの能力を撹乱しなかったことを示す。GFP発現細胞の安定性を、導入遺伝子追加後14日間にわたってフローサイトメトリーによりモニターした(図6A~図6B)。
結果:示されている期間にわたって、SYNTX-GSH1遺伝子座に編集された細胞は、GFP陽性細胞のより高いパーセンテージを示し、これに続いて高いパーセンテージを、SYNTX-GSH2遺伝子座に編集された細胞が示した(図6A~図6B)。これらの結果は、新規GSHへの遺伝子編集が、AAVS1対照遺伝子座への編集よりも安定かつ安全な遺伝子導入を可能にしたことを実証する。したがって、同定された遺伝子座(SYNTX-GSH)を、幹細胞の永続的遺伝子導入のためのGSHとして使用することができ、異なるex vivo遺伝子治療に使用することができる。
表5:代表的なGSH遺伝子座の例示的な特徴付け。
*「最良のgRNAを決定するための鋳型なし実験」という表現は、ゲノムセーフハーバーのための異なるgRNAを、1)GSH部位をCRISPR/Cas9によって編集することができることを確認する、および2)率が高いほうが相同性依存型修復(HDR)編集率を向上させることができるので、どのgRNAによって最高の二本鎖切断率が得られるのかを決定するために、試験したことを示す。
(実施例4)
包括的細胞トランスクリプトームに対するGSHへの遺伝子追加の影響の評定。
ヒト由来のHEK293細胞を使用して、異なるGSH遺伝子座へのレポーター遺伝子(GFP)の挿入後に包括的ゲノム発現を評価した。HEK293細胞を、示されている遺伝子座(AAVS1、SYNTX-GSH1およびSYNTX-GSH2)内への前に説明したようなCRISPR/Cas9遺伝子挿入によって編集した。WTとして示されている非編集細胞を基礎遺伝子発現の対照として使用した。手短に述べると、陽性GFP細胞をクローニングし、プロセシングに必要な細胞数に達するまで増幅させた。標準手順に従って、全RNAを抽出し、使用して、mRNAライブラリーを作出した。条件ごとに三連でRNAseqを行った。発現レベルを評定し、異なる細胞クローン間で比較した(図7B~図7D)。
結果:各の条件について観察された転写ランドスケープは、AAVS1遺伝子座への遺伝子挿入が、基礎条件(WT、非編集)から最も遠く、すなわち、最も破壊的であり、その次が、SYNTX-GSH1への挿入を有する細胞であることを、明確に示した。SYNTX-GSH2への挿入は、WT非編集細胞と同様の発現パターンで細胞トランスクリプトームの最小の障害を示し、これは、提案遺伝子座(SYNTX-GSH1およびSYNTX-GSH2)が、ヒト細胞における導入遺伝子組込みのための安全な部位としてある/挙動することを実証する。このデータは、評価した条件(WT、AAVS1、SYNTX-GSH1およびSYNTX-GSH2)間で最も可変的な上位1000遺伝子の差を定量化する主成分分析(図7C)によって裏付けられ、SYNTX-GSH1およびSYNTX-GSH2がAAVS1遺伝子座よりも安全な組込み遺伝子座であることを示す。
最後に、導入遺伝子発現(GFP)の評価は、SYNTX-GSH1およびSYNTX-GSH2がベンチマークAAVS1遺伝子座よりも高度な導入遺伝子発現を促進することを実証する、以前の結果を補強する。
(実施例5)
ゲノムセーフハーバー遺伝子座が編集されたHEK293細胞-GFP発現の安定性
細胞継代にわたってのGFP発現の安定性によるGSH性能の評定
ヒト由来のHEK293細胞を使用して、数細胞継代にわたっての導入遺伝子発現(GFP)の安定性に対する異なる選択されたGSHへの遺伝子編集の影響を評価した。オンラインガイドRNA予測ソフトウェア(ChopChopおよびBroad)を使用して、CRISPR/Cas9媒介遺伝子挿入のための相同性アームおよびガイドRNAを設計し、合成した。レポーター遺伝子(GFP)を異なる推定的GSH遺伝子座に挿入した。非編集細胞を基礎対照(WT)として使用し、AAVS1遺伝子座(対照)、SYNTX-GSH1、SYNTX-GSH2、SYNTX-GSH3およびSYNTX-GSH4への遺伝子の追加を行った。すべての条件における細胞を、30日の培養期間に相当する12継代にわたって維持し、UV光顕微鏡を使用することによりGFPをモニターした。
結果:SYNTX-GSH1への遺伝子の追加は、初期継代でおよび評価期間(P12)中に最高のGFP発現を実証し、SYNTX-GSH2遺伝子座に編集した細胞がこれに続いた。これら2つの遺伝子座は、AAVS1対照よりも高度かつ安定したGFP発現を示した。他の評価した遺伝子間遺伝子座は、より低いGFP発現レベルおよび安定性を示した。これらのデータは、細胞恒常性および好都合な安全かつ高レベルの導入遺伝子発現の極端な摂動を生じさせることのない、遺伝子の追加について評価したGSH(例えば、SYNTX-GSH1およびSYNTX-GSH2)の寛容性および安全性を確証した。
代表的なGSH遺伝子座の例示的な特徴付けについては表5も参照されたい。
(実施例6)
CD34+細胞の精製
開示される方法における使用のためのCD34+細胞を、次の論文に記載されているものなどの好適な方法に従って精製することができる:Hayakama et al., Busulfan produces efficient human cell engraftment inNOD/LtSz-scid IL2Rγ null mice, Stem Cells 27(1): 175-182 (2009);Ochi et al.,Multicolor Staining of Globin Subtypes Reveals Impaired Globin Switching DuringErythropoiesis in Human Pluripotent Stem Cells, Stem Cells TranslationalMedicine 3:792-800 (2014);およびMcIntosh et al., Nonirradiated NOD,B6.SCID Il2rγ-l-KitW4l/W4l (NBSGW) Mice Support Multilineage Engraftment of HumanHematopoietic Cells, Stem Cell Reports 4: 171-180 (2015)。
(実施例7)
ウイルスベクターを使用する赤血球系前駆細胞へのin vitroまたはex vivo形質導入
組換えウイルスベクター(AAV)を使用して赤血球系前駆細胞に形質導入する。遺伝子型修正細胞における導入遺伝子発現は、分化した細胞の表現型のレスキューを助長し、臨床的改善をもたらす。
機能獲得型変異により引き起こされるヘモグロビン異常症(Hemaglobinopathies)は、常染色体劣性形質として遺伝される。ヘテロ接合体の個体は、無症状であるまたは軽度に罹患する、どちらかの傾向があるが、両方の対立遺伝子に変異を有する個体は、重度に罹患する。それ故、単一の対立遺伝子を修正するまたは置き換えることは、臨床的に有益である。
ベータサラセミアおよび鎌状赤血球症(SCD)の両方は、ヘモグロビンベータ(HbB)を発現する遺伝子の異なる変異により引き起こされるので、遺伝子置き換え戦略は、どちらの疾患を有する患者にも恩恵をもたらす。HbB発現カセットを送達するレンチウイルスベクター(LV)を使用するSCDについての臨床研究がある。b-グロビンオープンリーディングフレーム(ORF)は、グロビン対立遺伝子の遺伝子座調節領域(LCR)およびb-グロビンプロモーターによって制御される。LVに適合するように、最小LCRを、DNAメチル化およびヘテロクロマチンの形成を阻害する3つのDNAse高感受性部位(HS)にマッピングした。LVがランダムに組み込まれると、ヘテロクロマチンに組み込まれ、その結果、赤血球前駆細胞(例えば、赤芽球)におけるb-グロビン発現の遮断が生じ、ひいては表現型が修正されない場合がある。
LCRエレメントであるHSは、LV DNAの開いたユークロマチン構造を維持する。
ゲノムセーフハーバー(GSH)遺伝子座へのHbBカセットの挿入。哺乳動物ゲノムのおおよそ45%を構成する転位因子とは対照的に、遺伝性の組み込まれたパルボウイルスゲノム(または内在性ウイルスエレメント、EVE)は、何百もの種にわたって非常に少数の遺伝子座に存在する。EVEは、短いタイムラインでは胚発生、発達、成熟などに、地質学的タイムラインでは進化/種分化に影響を与えない、外来DNAの挿入を許容する部位のゲノムマーカーである。恐らく、外来DNA挿入の破壊効果に起因して、1億年にわたって多くの多様な種に蓄積されてきたEVE遺伝子座はほとんど存在しない。EVEを保有する非常に多様な系統発生学的分類群の中の多くの種にもかかわらず、影響を受けるゲノム遺伝子座の数は限られているようであり、これは、モデル系、例えばマウス、におけるGSHとしてのEVEの実験的解析を容易にする。哺乳動物種間のEVE遺伝子座の保存は、我々がヒトおよびマウスゲノム内の相同部位を決定することを可能にする。しかし、すべてのGSHが、すべての組織型において長期間、安定した発現を支持するとは限らない可能性が高い。RNAseqおよびATAC-seqデータベースを含む、in silico解析を使用して、GSH遺伝子座を、標的組織において活発に発現されるサブゲノム領域にマッピングすることができる。それ故、ベータ-グロビン症について、赤芽球は、特に興味深い。
赤芽球においてクロマチンを活発に発現する活性クロマチン領域であるGSH遺伝子座を利用することによって、LVが組み込まれたLCRエレメントを、ユークロマチン化を確実にするために使用する必要は、回避される。
標的化ヌクレアーゼを用いる相同性指向型修復(HDR)プロセスは、組換えの効率および特異性を改善する。治療用遺伝子に隣接する「相同性アーム」は、標的となる遺伝子座にベクターDNAを指向させる。細胞のDNA修復経路酵素、または人工プロセス、例えばCRISPR/Cas9ヌクレアーゼ、のどちらかによる組換えは、導入遺伝子をGSHに組み込む。
b-グロビンプロモーターに加えて、他のプロモーターが、非常に多くの細胞型においておよびトランスジェニックマウス株においても、長期、高レベル発現に使用されている。
例えば、ヘモグロビンは、2×HbAおよび2×HbB鎖で構成されるヘテロ四量体である。HbBの非存在下では、HbA鎖は、自己会合し、細胞傷害性凝集体を形成する。a-グロビンサブユニットの凝集を防止するために、アルファ-ヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)を前赤血球において共発現させる。AHSPプロモーターは、赤血球前駆体において非常に活性であり、十分に特徴付けられている。
別の例として、CAGプロモーターエンハンサーは、ニワトリベータ-グロビンプロモーターと第1エクソンと第1イントロンと第2エクソンのスプライスアクセプターとに融合されたサイトメガロウイルスエンハンサーから操作された合成プロモーターである。
別の例として、MNDプロモーターは、活性造血細胞である。
別の例として、ウィスコット・アルドリッチプロモーターは、造血細胞において活性である。
別の例として、PKLRプロモーターは、造血細胞において活性である。
末梢血幹細胞(PBSC)を白血球アフェレーシス(leukophresis)により単離する。
HemoFreezeバッグの中の冷凍保存末梢血細胞を、37℃水浴での急速解凍により回収する。これらの解凍細胞を4℃の4%HSAに懸濁させ、450gで5分間、4℃での遠心分離により2回洗浄する。10%HSAに重層し、450gで15分間、4℃での遠心分離により、血小板を2回除去する。Ficoll-Hypaque(FH;1.077g/cm3;Pharmacia Fine Chemicals、Piscataway、NJ、USA)に重層し、400gで25分間、4℃で遠心分離することにより、赤血球を除去する。界面単核細胞(P1-、FH細胞)を収集し、洗浄溶液で2回洗浄し、4℃の4%HSAに再懸濁させる(MN細胞)。ナイロンファイバーシリンジ(NF-S)を使用して接着細胞を除去する。5グラムのNFを、50mL使い捨てシリンジに充填する。単核細胞をさらなる50mLシリンジに移し、NF-Sに穏やかに注入し、その後、4℃で5分間、インキュベートした。その後、MN細胞をNF-Sのプランジャー経由で50mLシリンジに収集し、細胞を50mLのコニカルチューブにプールする。これらのプールした細胞を400gで5分間、4℃で遠心分離し、4℃の4%HSAに再懸濁させる(NF細胞)。その後、直ちに、細胞懸濁液を、Isolex Magnetic Cell Separation System(Isolex 50;Baxter Healthcare、Immunotherapy Division、Newbury、UK)を製造業者の使用説明書に従って用いてCD34+選択のために処理する。手短に述べると、細胞を9C5マウス免疫グロブリンG1(IgG1)抗ヒトCD34抗体(10mg/1×108NF細胞)とともに15分間、4℃で、緩徐に転倒回転させながらインキュベートする。感作後、細胞を4℃の4%HSAによって洗浄して一切の過剰な/未結合抗体を除去する。その後、Dynabeads(Oslo、Norway)を、感作され洗浄された細胞に、1:10の最終ビーズ/細胞比で添加する。4℃で30分間、混合した後、細胞結合マイクロスフェアおよび遊離マイクロスフェアは、磁石(Dynal MPC-1、Dynal、Fort Lee、NJ、USA)によって壁に付着し、マイクロスフェアに結合していない一切の遊離細胞を除去する。この洗浄手順を、2回、4℃の4%HSAで繰り返す。DynabeadsとCD34+細胞との連結を30分間、4℃でPR34+ Stem Cell Releasing Agentにより切断する。遊離DynabeadsをCD34+細胞から磁石によって除去する。1%ACD-Aおよび1%HSAを含有する25℃のD-PBSを細胞の収集に使用する。得られた細胞産物をフローサイトメトリーにより照合する。
代表的なGSH遺伝子座の例示的な特徴付けについては表5を参照されたい。
(実施例8)
核酸ベクターのin vivoでの発現
上で説明したベクターからのin vivoタンパク質発現をマウスにおいて決定する。上で説明したように、HbB遺伝子カセットを、5’および3’GSH特異的相同性アーム(例えば、SYNTX-GSH1GSH遺伝子座、または表3に収載されているもののいずれか1つ)を含むように操作する。一部の実験では、5’および3’GSH特異的相同性アームは、大きい(各々、最大2Kb)。一部の実験では、ベクターは、CRISPR/Cas9ヌクレアーゼと、DNA切断を生じさせて相同性アームとGSH遺伝子座の相同組換えを開始させるgRNAとをコードする配列を、さらに含む。一部の実験では、核酸ベクターを脂質ナノ粒子(LNP)で送達する。他の実験では、本明細書に記載する方法および/または当技術分野において公知の方法に従って、核酸ベクターをウイルスベクターにパッケージングする。
一部の実験では、陰性対照を、例えば、スクランブルされた相同性アーム配列を有する対照ベクターによって、確立するか、または組換えの効率をチェックするために相同性アームを有さないほうが適切であることもある。HbB遺伝子カセットを含む核酸ベクターは、プロモーター、WPREエレメント、およびpAをさらに含む。
ヌクレアーゼ発現単位を、トランスで、例えば、別々の核酸ベクターまたはウイルスベクター、例えば、Cas9 mRNA、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、変異「ニッカーゼ」エンドヌクレアーゼ、クラスII CRISPR/Cas系(CPF1)で、送達することができる。実験では、LNPを送達の選択肢として使用することができる。当業者に一般に公知の方法に従って、5’または3’酵素ペプチド配列に融合された核局在化シグナル(NLS)を使用することにより、核内への輸送を増加させることができる。他の実施形態では、NLSを内部に挿入することができ、その結果、NLSは、ヌクレアーゼの表面に露出され、ヌクレアーゼとしてのその機能に干渉しない。
ヌクレーゼが、所望の部位において二本鎖切断(DSB)を誘導するのに適している場合、1つまたは複数のシングルガイドRNAもまたトランスで、本明細書に記載のsgRNA発現ベクターまたは化学的に合成された合成sgRNA(sgRNA=シングルガイドRNA標的配列)のどちらかとして、送達される。sgRNAは、好適なシングルガイドRNA配列を選択することができる、例えばattools.genome-engineering.orgなどの、自由に利用できるソフトウェア/アルゴリズムを使用して選択することができる。
5’GSH特異的相同性アームは、おおよそ350bp長であり得、本明細書に記載する場合、10~5000bpの間の範囲であり得る。一部の実験では、3’GSH特異的相同性アームは、5’GSH特異的相同性アームと同じ長さでも、それより長いことも、短いこともあり、本明細書に記載する場合、おおよそ2000bp長、または50~2000bpの間の範囲であり得る。相同性アームの長さおよび組換え頻度に関する詳細な研究は、例えば、Jian-Ping Zhang et al., Genome Biology, 2017により報告されている。
ナノ粒子内の核酸ベクター、またはウイルスベクター(例えば、AAVベクター)を、尾静脈注射によりマウスに投与する。この送達モダリティーで、体内のすべての臓器に到達できる。
(実施例9)
ウイルスベクターの構築
ウイルスベクターのための核酸
ベクターゲノム設計は、逆方向末端反復(ITR)、例えば、AAV末端回文構造のITR配座異性体、および発現または転写カセットからなる。一般的な発現カセットは、典型的にはエンハンサーおよびプロモーターエレメントとして特徴付けられる、制御エレメントからなる。RNAポリメラーゼ複合体により転写される領域は、シス作用性制御エレメント、例えばTATAボックス、および5’非翻訳エクソン配列、イントロン配列、翻訳エクソン配列、3’非翻訳領域、ポリアデニル化シグナル配列からなる。転写後エレメントは、翻訳開始のためのコザックモチーフ、およびウドチャック肝炎ウイルス転写後制御エレメントを含む。特定のベクターは、商業サービスプロバイダーを使用して化学的に合成し、Escherichia coliにおける繁殖のためにプラスミドにライゲーションする。プラスミドは、最小限、多重クローニング部位、少なくとも1つの抗生物質耐性遺伝子、プラスミド複製起点、およびバキュロウイルスゲノムへの組込みを助長する配列を含有する。2つの一般に使用されているアプローチは、以下のものである:(1)E.coliが、プラスミド遺伝子をバクミドに移入するためにトランスポザーゼ媒介組換えを使用するバキュロウイルスゲノム(バクミド)を保有する、細菌系。組換えバクミドを有するE.coliは、選択培地を用いて調製した寒天プレート上で成長させることにより、検出することができる。「陽性」コロニーを浮遊培養培地で拡大させ、接種後約3日後にバクミドを収集する。その後、Sf9細胞にバクミドをトランスフェクトし、これにより、許容昆虫細胞において感染性の組換えバキュロウイルス粒子が産生される。(2)あるいは、挿入物に隣接するバキュロウイルスDNAの数百塩基対を有するシャトルプラスミドにベクターDNAを挿入する。シャトルプラスミドおよび線状化バキュロウイルスサブゲノムDNAによるSf9細胞へのコトランスフェクションは、感染性組換えバキュロウイルスを産生する削除されたバキュロウイルスエレメントを回復させる。Sf9細胞がAAV非構造またはRepタンパク質を発現しない限り、≦6kbベクターDNAは、バキュロウイルスゲノム(約135kb)内に存在し、バキュロウイルスとして繁殖される。次いで、Repタンパク質は、ITRに対して作用し、ベクターおよびバキュロウイルスゲノムの分割が可能になり、その後、ベクターゲノムは、バキュロウイルスゲノムを自律的に複製する(図1B)。
DNAで構成される核酸
DNAは、一本鎖状または自己相補的(self-complimentary)(すなわち、分子内二重鎖)のどちらかであり得る。図9Bで説明されるように、ベクターDNAのRep媒介複製は、いくつかの中間体を経由して進行する。これらの複製中間体は、一本鎖ビリオンゲノムにプロセシングされるが、産物の繁殖力は、一本鎖ビリオンゲノムへのプロセシングを圧倒し得る。この場合、RFmとして表される(図9B)、分子内二重鎖分子からなる複製中間体は、AAVカプシドにパッケージングされる。自己相補的ベクターゲノムのパッケージングが、機能性ITRの存在にもかかわらず起こる。
DNAは、Repタンパク質依存性の複製基点(ori)を有し得る。oriは、Rep結合エレメント(RBE)からなり、末端回文構造内にあり得る。逆方向末端反復(ITR)と呼ばれるこの末端回文構造は、2つの内部回文構造を有する全回文構造配列からなり得る。ITRは、カプシド内の複製およびカプシド形成に必要なシス作用性モチーフを有し得る。
RBEは、Rep結合エレメントのカノニカルGCTCを表し;RBE’は、非カノニカルRBEである、ITRクロスアームの先端における不対TTTを表し;trsは、末端分割部位5’AGTTGG、GGTTGGなどを表す。Repの触媒性チロシン(Y156)は、trsを切断し、解離しやすい5’チミジンと共有結合性連結を形成する。trsの変異は、非効率的切断または切断の減少をもたらし、その結果、自己相補的DNAが生じることになる。あるいは、自己相補的ビリオンゲノムが、RFmの不完全なプロセシングのカプシド形成によって生ずる。
ウイルスベクターのDNA複製
AAV ITRを利用する複製は、「ローリングヘアピン」複製と呼ばれる。一本鎖ビリオンDNAの場合、ITRは、エネルギー的に安定なT字形構造(図9A)を形成し、これは、宿主細胞DNAポリメラーゼ複合体によるDNA伸長のためのプライマーとしての機能を果たす(図9B)。DNA合成は、相補鎖がITRを介して共有結合で連結される、二重鎖中間体が結果として生じることになる、リーディング鎖プロセッシブプロセスである(図9B)。p5 Repタンパク質結合は、ローリングサークル複製(RCR)タンパク質に構造的に関連しており、ITRに結合し、それによってマルチサブユニット複合体が形成される。Repタンパク質のヘリカーゼ活性は、ITRをほどき、それによって、末端分割部位(5’-GGT|TGA-3’)を有する一本鎖バブルが作り出される。チミジン間のホスホジエステル結合は、Repタンパク質触媒性チロシン(AAV2=Y156)のヒドロキシル基による攻撃を受け、5’チミジンとともにチロシン-チミジンジエステルを形成する。細胞DNAポリメラーゼ複合体は、末端分割部位に新たに作り出された3-OHを伸長し、その結果、末端配列は鋳型鎖に戻る(図9B)。核タンパク質複合体の分割は、未知のプロセスによって起こる。
カプシド形成
正二十面体ウイルスカプシドへのDNAのカプシド形成またはパッケージングは、DNAを限られた体積に圧縮する背圧によって作り出される反発力に打ち勝つエネルギー源を必要とする能動的なプロセスである。NS/Repタンパク質のATPase活性は、ガンマリン酸を加水分解することによりトリヌクレオチドの貯蔵化学エネルギーを変換する。生成された背圧が、カプシド内に収容され得るDNAの長さを決定し、すなわち、ATPase/ヘリカーゼの推進力は、例えば、4,800ヌクレオチドがパッケージングされると到達され得る、最大12pNを「押す」ことができる。AAV p19 Repタンパク質は、効率的カプシド形成に必要である、単量体の非プロセッシブヘリカーゼである。Repとカプシドとの物理的相互作用を裏付けるデータは乏しいが、背圧に打ち勝つには、安定した相互作用をパッケージングヘリカーゼとカプシド間に形成する必要がある。これらの相互作用の性質は不明であり、核因子が非構造タンパク質とカプシドとの相互作用を安定化または媒介し得る。
(実施例10)
昆虫細胞を使用するウイルスベクターの産生
ウイルス複製タンパク質(Rep)および/またはウイルスカプシドタンパク質(VP1、VP2、VP3など)をコードする少なくとも1つの核酸がGSH遺伝子座(例えば、SYNTX-GSH1遺伝子座)に組み込まれている、Sf9細胞を、調製する。Sf9細胞を、無血清昆虫細胞培養培地(HyClone SFX-Insect Cell Culture Medium)で成長させ、エルレンマイヤー振盪フラスコ(Corning)からWave単回使用用バイオリアクター(GE Healthcare)に移す。細胞密度および生存率を、Cellometer Autor 2000(Nexelcom)を使用して毎日決定する。体積を調整して、mLあたり200万~500万個の細胞の細胞密度を維持する。最終体積(10L)、およびmLあたり250万個の細胞の密度で、バキュロウイルス感染昆虫細胞(BIIC)を1:10,000(v:v)で添加する(凍結保存されたもの、100×濃縮細胞「プラグ」)。高度に希釈されたBIICは、感染多重度(MOI)が非常に低いRep-VP-Bac、NS-Bac、およびvg-Bacを放出し、一次感染中に同時感染される細胞は事実上ない。しかし、後続の感染サイクルは、非常に高いMOIを達成する多数の必要なバキュロウイルス各々を放出し、各細胞が非常に多数のウイルス粒子に確実に感染する。細胞を、4日間、または生存率が≦30%に降下するまで、培養下で維持する。
(実施例11)
ウイルスベクターの精製
ウイルスベクターまたはウイルス粒子は、細胞画分と細胞外画分の両方に分配される。最大数の粒子を回収するために、細胞培養培地を含む生物量全体を処理する。細胞内ウイルスベクターを放出するために、Triton(登録商標)-X 100(x%)を、バイオリアクターに、継続的に撹拌しながら1時間添加する。温度を27℃から37℃に上昇させ、その後、Benzonase(EMD Merck)またはTurbonuclease(Accelagen,Inc.)を、バイオリアクターに、継続的に撹拌しながら添加する(mLあたり2u)。段階的デプスフィルターを使用して生物量を清澄化し、その後、濾過滅菌(0.2μm)し、滅菌バイオプロセシングバッグに収集する。免疫親和性クロマトグラフィー媒体およびQ-Sepharoseアニオン交換を使用する逐次カラムクロマトグラフィーを使用して、ウイルスベクターを回収する。UV吸収、pH、および伝導度を表示し記録するクロマトグラムを使用して、洗浄および溶出ステップの完了を決定する。各ステップの相対効率を、ウェスタンブロット解析により、ならびに定量的に、投入材料(「ロード」)、フロースルー、洗浄液および溶出物のアリコートのddPCRまたはqPCR解析により、決定する。
免疫親和性クロマトグラフィーは、ラマおよび他のラクダ科動物種において産生される単一ドメイン免疫グロブリンのVhH領域である、「ナノボディ」を使用する。ナノボディを産生するために、抗体プロバイダーは、ウイルスベクター、すなわち、ビリオンゲノムを有さないアセンブルされたカプシドを用いて、ラマを免疫化する。ウイルスベクターを、VP-Bacを感染させたSf9細胞において調製し、塩化セシウム等密度勾配、続いて、サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200)を使用して精製する。プライム(1×)/ブースト(2×)免疫化プロトコールの後、抗体サービスプロバイダーは、ラマから採血し、末梢血単核細胞を単離するか、またはmRNAを有核血液細胞から抽出する。保存VhH CDR隣接領域(FR1およびFR 4)に対して特異的なプライマーを使用する逆転写によってcDNAが生じ、それを、T7Select 10-3bファージディスプレイライブラリー(EMD-Millipore)を生成するために使用されるプラスミドにクローニングする。ウイルスベクターのカプシドと相互作用するファージを富化するための数ラウンドのパニング後、ファージクローンを斑から単離する。組換えファージを感染させたE.coliをアガロースに混合し、LB-寒天プレート上に重層として塗布する。E.coliは、溶解した細菌の場合、「菌叢」を確立する集密度に成長し、プレート上に斑として現れる。ウイルスベクターに結合するファージを同定するために、ニトロセルロースフィルターを寒天プレートの表面に置いてタンパク質を斑からフィルターへ移動させる。共有結合で連結されたホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)(EZLink Plus Activated Peroxidase Kit、ThermoFisher)によって改変したウイルスベクターカプシドとともにフィルターをインキュベートし、リン酸緩衝食塩水で洗浄する。発色基質(Novex HRP Chromogenic Substrate、ThermoFisher)または化学発光基質(Pierce ECL Western Blotting Substrate、ThermoFisher)のどちらかを用いて、HRP活性を検出することができる。ファージ中のcDNAの配列を決定し、細菌発現プラスミドにライゲーションし、精製用の6xHisタグとともに発現させる。キレートカラムで精製したナノボディを、クロマトグラフィー媒体であるNHS活性化Sepharose 4 Fast Flow(GE Healthcare)に共有結合で連結させる。
ウイルスベクターを、清澄化Sf9細胞溶解物から、ナノボディ-Sepharoseカラムの結合、その洗浄、およびそれからの溶出により回収する。結合効率を、カラムロードおよびフロースルーのウェスタンブロッティングにより決定する。洗浄ステップは、UV280nm吸光度がベースライン(すなわち、ロード前)値に戻ったとき、完了とみなす。酸性pHシフトによってウイルス粒子が放出され、それらのウイルス粒子が、ナノボディ-Sepharose媒体から溶出される。溶出液を50nM Tris-Cl、pH7.2の中に収集して溶出媒体を中和する。
ウイルスベクター粒子の濃度を、ウイルスベクター特異的ELISAおよびqPCRを使用して決定し、それを使用して、充填粒子、すなわちベクターゲノム含有粒子、のパーセンテージを概算することができる。
(実施例12)
パルス状遺伝子発現
SYNTX-GSH1遺伝子座に対して相同性を有する5’および3’相同性アームと隣接している、第VIII因子(FVIII)、F8、またはBドメイン欠失ポリペプチドをコードする断片をコードする核酸を含む、ウイルスベクターを使用して、血友病Aの治療として肝細胞に形質導入する。相同性アームは、SYNTX-GSH1遺伝子座への、FVIII、F8、またはBドメイン欠失ポリペプチドをコードする断片をコードする核酸の、相同組換え媒介挿入を安定的に可能にする。FVIIIは、抗血友病因子(AHF)としても公知の、必須血液凝固タンパク質である。ヒトでは、第VIII因子は、F8遺伝子によりコードされる。この遺伝子の欠損は、劣性X連鎖凝固障害である血友病Aを生じさせる結果となる。第VIII因子は、肝臓類洞細胞および肝臓の外側の内皮細胞において全身で産生される。
以前に、血友病Aを処置するためにF8遺伝子の発現を増加させることが試みられた。例えば、バロクトコジーンロクサパルボベク(BMN270または__としても公知)、ヒト第VIII因子のアデノウイルス随伴ウイルス(AAV5)ベクター媒介遺伝子移入が、重度の血友病Aを有する患者において試験された(ClinicalTrials.gov識別子:NCT02576795;NCT03370913;NCT03392974;NCT03520712)。しかし、FDAは、長期安全性および有効性データを要請して、2020年にその承認を却下した。長期データは、後に導入遺伝子の漸進的な遺伝子発現をもたらす可能性がある投薬量増加に関する懸念をなくすために必要であり得る。
FVIIIは、微生物発現系でも真核生物発現系でも産生することが困難な組換えタンパク質であった。「Bドメイン」が欠失したものの開発は、発現レベルを改善し、オープンリーディングフレームのサイズを低減したが、FVIII発現レベルは、他のタンパク質よりも実質的に低かった。これらの低いレベルを克服するために、バロクトコジーンロクサパルボベクウイルスベクターの臨床用量を増加させた。患者を、kgあたり6E+13のベクター粒子(ベクターゲノム、またはvgと呼ばれる)で処置した。大型動物モデルに基づいて、ごく少数の肝細胞にrAAV5-FVIIIによって形質導入した。細胞あたりのvgの数が多いの結果として、形質導入細胞は、比較的大量のFVIIIを発現する。FVIII発現の代謝要求は、肝細胞タンパク質発現の通常の要件を妨げる可能性が高い。タンパク質のフォールディングおよび分泌に通常関与する肝細胞細胞内コンパートメントに、FVIIIが過度に詰め込まれる可能性がある。FVIII生産を生じさせる内皮細胞は、この活性に特化している可能性が高く、高度に制御されたネイティブFVIIIプロモーターの転写調節下で単一のX染色体上の対立遺伝子からFVIIIを産生する。
したがって、本明細書では、肝細胞恒常性の摂動は、炎症状態を誘導する細胞ストレスを生じさせると仮定する。代謝負担およびタンパク質フォールディング/搬出負担は、rAAV-FVIIIベクターにおいて使用される構成的、高活性プロモーターの使用により悪化する。炎症およびサイトカイン産生は、細胞代謝回転および細胞死につながり得る。
この問題を回避するために、および血友病Aのための治療に対する長年にわたる切実な要求に対処するために、(a)遺伝子F8、または(b)Bドメイン欠失を有し、上で説明したように、SYNTX-GSH1遺伝子座に対して相同性を有する5’および3’相同性アームと隣接している、遺伝子F8を含むように、ウイルスベクターを操作する。バロクトコジーンロクサパルボベクの臨床試験において使用された構成的かつ高活性のプロモーターとは対照的に、誘導性発現系を用いてウイルスベクターを調製する。
誘導性発現系は、試薬が発現をオンにするかまたは脱抑制するまで転写的にオフのデフォルト状態にF8遺伝子を保つ(例えば、図14を参照されたい)。パルス状発現は、肝細胞に過剰発現ストレスを免れさせる。パルスのタイミング(すなわち、遺伝子発現をオンにするタイミング)は、FVIIIの初期血清レベル(t0)および半減期(t1/2)から決定することができる。t1/2は9~14日であると概算されるため、14日(2週間)のt1/2を使用し、軽度の血友病をFVIIIレベル≧5%正常と定義する。
導入遺伝子発現=150%
5%に降下するまで68日
ここでは、発現を毎月誘導し、その結果、FVIIIの治療レベルを得る。
細胞におけるt1/2を増加させる広範なASO化学構造(アンチセンスオリゴヌクレオチドASOまたはAON)が開発されている。ここでは、比較的短いt1/2を有するASO化学構造を使用して、ASOが細胞からクリアランスされるにつれて減少するFVIII発現のパルスを達成する。最適なt1/2を、数ある中でも特に、形質導入細胞数、プロモーター活性、および転写物成熟の動態に基づいて、経験的に決定する。
参照による組込み
本明細書において言及するすべての公表文献、特許および特許出願は、個々の公表文献、特許または特許出願の各々が参照により組み込まれると具体的にかつ個々に示されているかのごとく、これによりそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、本明細書におけるあらゆる定義を含めて、本願が優先するものとする。
等価物
当業者は、本明細書に記載する本発明の特定の実施形態の多くの等価物を認識するか、または日常の実験のみを使用してそのような等価物を突き止めることができるであろう。そのような等価物は、後続の特許請求の範囲により包含されることが意図される。

Claims (158)

  1. ゲノムセーフハーバー(GSH)遺伝子座を同定する方法であって、
    (a)細胞内のゲノムへの少なくとも1つのマーカー遺伝子のランダム挿入を誘導するステップ;
    (b)前記マーカー遺伝子の発現の安定性および/またはレベルを決定するステップ;ならびに
    (c)挿入された前記マーカー遺伝子が安定したおよび/または高レベルの発現を示すゲノム遺伝子座をGSHとして同定するステップ
    を含む方法。
  2. (a)挿入された前記マーカー遺伝子が細胞生存率に影響を与えないゲノム遺伝子座を同定するステップ、および/または
    (b)挿入された前記マーカーが前記細胞の分化能力(例えば、多能性、複能性)に影響を与えないゲノム遺伝子座を同定するステップ
    をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記細胞が、細胞系、初代細胞、幹細胞または前駆細胞から選択され、必要に応じて、前記細胞が、幹細胞または前駆細胞である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記細胞が、胚性幹細胞、組織特異的幹細胞、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、造血幹細胞、造血CD34+細胞、および表皮幹細胞、上皮幹細胞、神経系幹細胞、肺前駆細胞、および肝臓前駆細胞から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記細胞が、哺乳動物細胞であり、必要に応じて、前記哺乳動物細胞が、マウス細胞、イヌ細胞、ブタ細胞、非ヒト霊長類(NHP)細胞、またはヒト細胞である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記ランダム挿入が、
    (a)前記細胞に、前記マーカー遺伝子を含む核酸分子をトランスフェクトすることであって、必要に応じて前記核酸分子がプラスミドである、こと;または
    (b)前記細胞に前記マーカー遺伝子を含む組込みウイルスを形質導入すること
    により誘導される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記ランダム挿入が、前記細胞に前記マーカー遺伝子を含む組込みウイルスを形質導入することにより誘導され、前記組込みウイルスが、レトロウイルスであり、必要に応じて、前記レトロウイルスが、ガンマレトロウイルスである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記少なくとも1つのマーカー遺伝子が、スクリーニング可能なマーカーおよび/または選択可能なマーカーを含み、必要に応じて、
    (a)前記スクリーニング可能なマーカー遺伝子が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ベータ-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、および/もしくはベータ-グルクロニダーゼをコードする、ならびに/または
    (b)前記選択可能なマーカーが、抗生物質耐性遺伝子であり、必要に応じて、前記抗生物質耐性遺伝子が、ブラストサイジンS-デアミナーゼもしくはアミノ3’-グリコシルホスホトランスフェラーゼ(ネオマイシン耐性遺伝子)をコードする、
    請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記マーカー遺伝子が、プロモーターに作動可能に連結されていない、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記マーカー遺伝子が、プロモーターに作動可能に連結されており、必要に応じて、前記プロモーターが、組織特異的プロモーターである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記GSHが、イントロン型、エクソン型、または遺伝子間型である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. GSH遺伝子座を同定する方法であって、
    (a)後生動物種のゲノムにおける内在性ウイルスエレメント(EVE)の存在および位置を決定するステップ;
    (b)前記EVEの近位にある遺伝子間またはイントロン境界を決定するステップ;ならびに
    (c)前記EVEを含む遺伝子間またはイントロン遺伝子座をGSH遺伝子座として同定するステップ
    を含む方法。
  13. (a)EVEの前記存在および位置が、ウイルスエレメントと相同の配列をin silicoで検索することにより決定される;ならびに/または
    (b)前記EVEの近位にある前記遺伝子間もしくはイントロン境界が、前記EVEに隣接する配列と遺伝子間もしくはイントロン境界が分かっている1つもしくは複数の種のそのオルソロガス配列とをアラインすることにより決定される、
    請求項12に記載の方法。
  14. オルソロガス生物におけるGSH遺伝子座を同定する方法であって、
    (a)請求項1から13のいずれか一項に記載の方法に従ってA種におけるGSH遺伝子座を同定するステップ;
    (b)(i)A種における前記GSH遺伝子座の近位にある少なくとも1つのシス作用性エレメントおよび(ii)B種における対応するシス作用性エレメントの位置を決定するステップ;ならびに
    (c)B種における遺伝子座をGSH遺伝子座として同定するステップであって、B種における前記遺伝子座と少なくとも1つのシス作用性エレメントの間の距離が、A種における前記GSH遺伝子座と対応するシス作用性エレメントの間の距離に実質的に比例する、ステップ
    を含む方法。
  15. 前記少なくとも1つのシス作用性エレメントが、スプライシングドナー部位、スプライシングアクセプター部位、ポリピリミジントラクト、ポリアデニル化シグナル、エンハンサー、プロモーター、ターミネーター、スプライシング制御エレメント、イントロンスプライシングエンハンサー、およびイントロンスプライシングサイレンサーから選択される、請求項14に記載の方法。
  16. 前記少なくとも1つのシス作用性エレメントが、2つまたはそれより多くのシス作用性エレメントを含む、請求項14または15に記載の方法。
  17. 前記少なくとも1つのシス作用性エレメントが、2つのシス作用性エレメントを含み、第1のシス作用性エレメントが、前記GSH遺伝子座の上流(すなわち、5’側)に位置し、第2のシス作用性エレメントが、前記GSH遺伝子座の下流(すなわち、3’側)に位置する、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
  18. B種における2つのシス作用性エレメント間の距離に対する前記少なくとも1つのシス作用性エレメントと前記GSH遺伝子座の間の距離が、A種における2つのシス作用性エレメント間の距離に対する前記対応するシス作用性エレメントと前記GSH遺伝子座の間の距離に実質的に比例する、請求項17に記載の方法。
  19. B種における前記少なくとも1つのシス作用性エレメントから前記GSH遺伝子座の間の距離が、A種における前記少なくとも1つのシス作用性エレメントから前記GSH遺伝子座の間の距離の少なくとも20%、しかし最大で500%である、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
  20. B種における前記少なくとも1つのシス作用性エレメントから前記GSH遺伝子座の間の距離が、A種における前記少なくとも1つのシス作用性エレメントから前記GSH遺伝子座の間の距離の少なくとも80%、しかし最大で250%である、請求項14から19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 前記GSH遺伝子座が、哺乳動物ゲノム内にあり、必要に応じて、前記哺乳動物ゲノムが、マウスゲノム、イヌゲノム、ブタゲノム、NHPゲノム、またはヒトゲノムである、請求項12から20のいずれか一項に記載の方法。
  22. 前記EVEまたは前記ウイルスエレメントが、
    (a)ウイルスゲノムのプロウイルスまたはその断片を含む;
    (b)ウイルス核酸、ウイルスDNA、またはウイルスRNAのDNAコピーを含む;および/あるいは
    (c)構造もしくは非構造ウイルスタンパク質、またはその断片をコードする、
    請求項12から21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 前記EVEが、レトロウイルス、非レトロウイルス、パルボウイルス、またはサーコウイルスからのウイルス核酸を含む、請求項12から22のいずれか一項に記載の方法。
  24. (a)前記パルボウイルスが、B19、マウス微小ウイルス(mvm)、RA-1、AAV、ブファウイルス、ホコウイルス、ボカウイルス、および表1A~1Dに収載されているパルボウイルスのいずれか1つから選択され、必要に応じて、前記パルボウイルスが、AAVである;ならびに/または
    (b)前記サーコウイルスが、ブタサーコウイルス(PCV)(例えば、PCV-1、PCV-2)である、
    請求項23に記載の方法。
  25. 前記後生動物種が、Cetacea、Chiropetera、Lagomorpha、およびMacropodiadaeから選択される、請求項14から24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 請求項12から25のいずれか一項に記載の方法をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
  27. 少なくとも1つのin vitro、ex vivo、および/またはin vivoアッセイを行うステップをさらに含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
  28. 前記少なくとも1つのin vitro、ex vivo、および/またはin vivoアッセイが、
    (a)細胞(例えば、ヒト細胞)内の遺伝子座へのマーカー遺伝子のde novoの標的化された挿入、および(i)細胞生存率、(ii)挿入効率および/または(iii)マーカー遺伝子発現を決定すること;
    (b)前駆細胞または幹細胞における遺伝子座へのマーカー遺伝子の標的化された挿入、およびin vitroで分化させ、(i)すべての発生系譜におけるマーカー遺伝子発現を、および/または(ii)前記マーカー遺伝子の前記挿入が前記前駆細胞もしくは幹細胞の分化に影響を与えるかどうかを決定すること;
    (c)前駆細胞または幹細胞における遺伝子座へのマーカー遺伝子の標的化された挿入、および前記細胞を免疫枯渇マウスに生着させ、in vivoですべての発生系譜におけるマーカー遺伝子発現を評定すること;
    (d)細胞における遺伝子座へのマーカー遺伝子の標的化された挿入、および包括的細胞転写プロファイルを(例えば、RNAseqまたはマイクロアレイを使用して)決定すること;ならびに
    (e)トランスジェニックノックインマウスを生成することであって、前記マウスのゲノムDNAが前記遺伝子座に挿入されたマーカー遺伝子を有し、必要に応じて、前記マーカー遺伝子が、組織特異的または誘導性プロモーターに動作可能に連結されている、こと
    から選択される、請求項27に記載の方法。
  29. 前記前駆細胞または前記幹細胞が、胚性幹細胞、組織特異的幹細胞、間葉系幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、造血幹細胞、造血CD34+細胞、および表皮幹細胞、上皮幹細胞、神経系幹細胞、肺前駆細胞、筋肉サテライト細胞、腸K細胞、および肝臓前駆細胞から選択される、請求項28に記載の方法。
  30. 請求項1から29のいずれか一項に記載の方法において同定されたGSH核酸の少なくとも一部分を含む、核酸ベクター。
  31. 前記GSH核酸が、非翻訳配列またはイントロンを含む、請求項30に記載の核酸ベクター。
  32. 前記GSHが、表3に収載されているGSHのいずれか1つまたはその断片の配列と少なくとも65%同一である配列を含む、請求項30または31に記載の核酸ベクター。
  33. 前記GSHが、SYNTX-GSH1、SYNTX-GSH2、SYNTX-GSH3またはSYNTX-GSH4のゲノムDNAまたはその断片の配列と少なくとも65%同一である配列を含む、請求項30から32のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
  34. 少なくとも1つの非GSH核酸、例えば、GSHとは異種である配列を有する核酸、例えば、GSH遺伝子座に元々存在しない核酸配列、例えば導入遺伝子をさらに含む、請求項30から33のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
  35. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、GSH 5’相同性アームおよび/またはGSH 3’相同性アームと隣接しており、前記相同性アームが、標的GSH核酸と少なくとも約65%同一である核酸配列を含む、請求項34に記載の核酸ベクター。
  36. 前記GSH相同性アームが、長さ10~5000塩基対の間であり、必要に応じて、前記GSH相同性アームが、長さ100~1500塩基対の間である、請求項35に記載の核酸ベクター。
  37. 前記GSH相同性アームが、長さ少なくとも30塩基対である、請求項35に記載の核酸ベクター。
  38. 前記GSH相同性アームが、細胞のゲノム内のGSH遺伝子座への相同性依存型組込みを媒介するのに十分な長さである、請求項35から37のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
  39. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、順配向での前記GSHへの組込みのための配向にある、請求項35から38のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
  40. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、逆配向での前記GSHへの組込みのための配向にある、請求項35から38のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
  41. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、(a)プロモーターに作動可能に連結されている、または(b)プロモーターに作動可能に連結されていない、請求項34から40のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
  42. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、プロモーターに作動可能に連結されており、前記プロモーターが、
    (a)それが作動可能に連結されている前記核酸とは異種のプロモーター;
    (b)前記核酸の組織特異的発現を助長するプロモーター;
    (c)前記核酸の構成的発現を助長するプロモーター;
    (d)誘導性プロモーター;
    (e)動物DNAウイルスの最初期プロモーター;
    (f)昆虫ウイルスの最初期プロモーター;および
    (g)昆虫細胞プロモーター
    から選択される、請求項41に記載の核酸ベクター。
  43. 前記誘導性プロモーターが、小分子、代謝物、オリゴヌクレオチド、リボスイッチ、ペプチド、ペプチドミメティック、ホルモン、ホルモンアナログ、および光から選択される作用因子によりモジュレートされる、請求項42に記載の核酸ベクター。
  44. 前記作用因子が、テトラサイクリン、キュメート、タモキシフェン、エストロゲン、およびアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、ラパマイシン、FKCsA、青色光、アブシジン酸(ABA)、およびリボスイッチから選択される、請求項43に記載の核酸ベクター。
  45. 前記プロモーターが、造血幹細胞、造血CD34+細胞、および表皮幹細胞、上皮幹細胞、神経系幹細胞、肺前駆細胞、筋肉サテライト細胞、腸K細胞、ニューロン細胞、気道上皮細胞、または肝臓前駆細胞における組織特異的発現を助長する、請求項42に記載の核酸ベクター。
  46. 前記プロモーターが、CMVプロモーター、β-グロビンプロモーター、CAGプロモーター、AHSPプロモーター、MNDプロモーター、ウィスコット・アルドリッチプロモーター、PKLRプロモーター、多角体(polh)プロモーター、および最初期1遺伝子(IE-1)プロモーターから選択される、請求項41または42に記載の核酸ベクター。
  47. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、コーディングRNAをコードする配列を含む、請求項34から46のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
  48. コーディングRNAをコードする前記配列が、標的細胞における発現のためにコドン最適化されている、請求項47に記載の核酸ベクター。
  49. コーディングRNAをコードする前記少なくとも1つの非GSH核酸が、シグナルペプチドをコードする配列をさらに含む、請求項47または48に記載の核酸ベクター。
  50. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、
    (a)タンパク質またはその断片、好ましくは、ヒトタンパク質またはその断片;
    (b)治療用タンパク質もしくはその断片、抗原結合性タンパク質、またはペプチド;
    (c)自殺遺伝子、必要に応じて、単純ヘルペスウイルス-1チミジンキナーゼ(HSV-TK);
    (d)ウイルスタンパク質またはその断片;
    (e)ヌクレアーゼ、必要に応じて、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、メガTAL、またはCRISPRエンドヌクレアーゼ、(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼまたはそのバリアント);
    (f)マーカー、例えば、ルシフェラーゼまたはGFP;および/あるいは
    (g)薬物耐性タンパク質、例えば、抗生物質耐性遺伝子、例えばネオマイシン耐性
    をコードする配列を含む、請求項34から49のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
  51. 前記ウイルスタンパク質またはその断片が、構造タンパク質(例えば、VP1、VP2、VP3)または非構造タンパク質(例えば、Repタンパク質)を含む、請求項50に記載の核酸ベクター。
  52. 前記ウイルスタンパク質またはその断片が、
    (a)パルボウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、VP1、VP2、VP3、NS1、もしくはRep;
    (b)レトロウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、エンベロープタンパク質、gag、pol、もしくはVSV-G;
    (c)アデノウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、E1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、もしくは構造タンパク質(例えば、A、B、C);および/または
    (d)単純ヘルペスウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、ICP27、ICP4、もしくはpac
    を含む、請求項50または51に記載の核酸ベクター。
  53. ウイルスタンパク質をコードする前記少なくとも1つの非GSH核酸が、ウイルスの表面タンパク質またはその断片をコードする、請求項50から52のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
  54. (a)前記表面タンパク質もしくはその断片が、宿主において免疫応答を惹起する免疫原性表面タンパク質である、(b)前記表面タンパク質もしくはその断片が、シグナルペプチドをさらに含む、(c)前記表面タンパク質もしくはその断片をコードする遺伝子が、誘導性プロモーターに作動可能に連結されている、および/または(d)前記表面タンパク質もしくはその断片をコードする核酸が、自殺遺伝子をさらに含む、請求項53に記載の核酸ベクター。
  55. 前記表面タンパク質が、コロナウイルス(例えば、MERS、SARS)、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、ヒトパピローマウイルス、デングウイルス血清型1、デングウイルス血清型2、デングウイルス血清型3、デングウイルス血清型4、ジカウイルス、ウエストナイルウイルス、黄熱病ウイルス、チクングニアウイルス、マヤロウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、またはニパウイルスのものである、請求項53または54に記載の核酸ベクター。
  56. 前記表面タンパク質が、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質である、請求項53から55のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
  57. タンパク質またはその断片をコードする配列を含む前記少なくとも1つの非GSH核酸が、ヘモグロビン遺伝子(HBA1、HBA2、HBB、HBG1、HBG2、HBD、HBE1、および/またはHBZ)、アルファ-ヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)、凝固第VIII因子、凝固第IX因子、フォン・ヴィレブランド因子、ジストロフィンまたは短縮型ジストロフィン、マイクロジストロフィン、ユートロフィンまたは短縮型ユートロフィン、マイクロユートロフィン、ウシェリン(USH2A)、GBA1、プレプロインスリン、インスリン、GIP、GLP-1、CEP290、ATPB1、ATPB11、ABCB4、CPS1、ATP7B、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、KIND1、INS、F8またはその断片(例えば、Bドメイン欠失ポリペプチドをコードする断片(例えば、VIII SQ、p-VIII))、IRGM、NOD2、ATG2B、ATG9、ATG5、ATG7、ATG16L1、BECN1、EI24/PIG8、TECPR2、WDR45/WIP14、CHMP2B、CHMP4B、Dynein、EPG5、HspB8、LAMP2、LC3b UVRAG、VCP/p97、ZFYVE26、PARK2/Parkin、PARK6/PINK1、SQSTM1/p62、SMURF、AMPK、ULK1、RPE65、CHM、RPGR、PDE6B、CNGA3、GUCY2D、RS1、ABCA4、MYO7A、HFE、ヘプシジン、可溶性形態(例えば、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体またはIL-1β受容体の)をコードする遺伝子、および嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)から選択される、請求項50に記載の核酸ベクター。
  58. 前記抗原結合性タンパク質が、抗体またはその抗原結合性断片であり、必要に応じて、前記抗体またはその抗原結合性断片が、抗体、Fv、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、半抗体-scFv、タンデムscFv、Fab/scFv-Fc、タンデムFab’、一本鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(TandAb)、Fab/scFv-Fc、scFv-Fc、ヘテロ二量体IgG(CrossMab)、DART、およびダイアボディから選択される、請求項50に記載の核酸ベクター。
  59. 前記抗原結合性タンパク質が、TNFα、CD20、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-6、BLyS、APRIL、IFN-ガンマなど)、Her2、RANKL、IL-6R、GM-CSF、CCR5、または病原体(例えば、細菌毒素、ウイルスカプシドタンパク質など)に特異的に結合する、請求項50または51に記載の核酸ベクター。
  60. 前記抗原結合性タンパク質が、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ、アナキンラ、リツキシマブ、アバタセプト、トシリズマブ、ナタリズマブ、カナキヌマブ、アタシセプト、ベリムマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、フォントリズマブ、トラスツズマブ、デノスマブ、サリルマブ、レンジルマブ、ギムシルマブ、シルツキシマブ、レロンリマブ、およびそれらの抗原結合性断片から選択される、請求項50、58、および59のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
  61. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、非コーディングRNAをコードする配列を含み、必要に応じて、前記非コーディングRNAが、アンチセンスポリヌクレオチド、lncRNA、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA、snoRNA、snRNA、scaRNA、および/またはガイドRNAを含む、請求項34から46のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
  62. 前記非コーディングRNAが、DMT-1、フェロポーチン、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、IL-1β受容体、および変異タンパク質(例えば、変異HFE、CFTR)をコードする遺伝子から選択される遺伝子を標的とする、請求項61に記載の核酸ベクター。
  63. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、標的細胞の内在性遺伝子の発現を増加または回復させる、請求項34から62のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
  64. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、標的細胞の内在性遺伝子の発現を減少または消失させる、請求項34から62のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
  65. (a)転写制御エレメント(例えば、エンハンサー、転写終結配列、非翻訳領域(5’または3’UTR)、近位プロモーターエレメント、遺伝子座調節領域(例えば、β-グロビンLCR、またはβ-グロビンLCRのDNase高感受性部位(HS))、ポリアデニル化シグナル配列)、および/または
    (b)翻訳制御エレメント(例えば、コザック配列、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後制御エレメント)
    をさらに含む、請求項30から64のいずれか一項に記載の核酸ベクター。
  66. プラスミド、ミニサークル、コスミド、人工染色体(例えば、BAC)、線状共有結合閉鎖(LCC)DNAベクター(例えば、ミニサークル、ミニベクターおよびミニノット)、線状共有結合閉鎖(LCC)ベクター(例えば、MIDGE、MiLV、ミニストリング(ministering)、ミニプラスミド)、ミニイントロンプラスミド、pDNA発現ベクター、またはそのバリアントから選択される、請求項30から65のいずれかに記載の核酸ベクター。
  67. 請求項1から29のいずれか一項に記載の方法で同定されたGSH核酸の少なくとも一部分;請求項30から66のいずれか一項に記載の核酸ベクター内のGSHの少なくとも一部分;表3に収載されているGSHのいずれか1つの少なくとも一部分;および/または請求項30から66のいずれか一項に記載の核酸ベクターを含む、ウイルスベクター。
  68. rAd、AAV、rHSV、レトロウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、レンチウイルス、ワクシニアウイルスベクター、HSV 1型(HSV-1)-AAVハイブリッドベクター、バキュロウイルス発現ベクター系(BEVS)、およびそれらのバリアントから選択される、請求項67に記載のウイルスベクター。
  69. 請求項30から66のいずれか一項に記載の核酸ベクターまたは請求項67もしくは68に記載のウイルスベクターを含む、細胞。
  70. 細胞系または初代細胞から選択される、請求項69に記載の細胞。
  71. 哺乳動物細胞、昆虫細胞、細菌細胞、酵母細胞、または植物細胞であり、必要に応じて、前記哺乳動物細胞が、ヒト細胞または齧歯類細胞である、請求項69から70に記載の細胞。
  72. 昆虫細胞であり、前記昆虫細胞が、lepidopteraの種に由来する、請求項69から71のいずれか一項に記載の細胞。
  73. lepidopteraの前記種が、Spodoptera frugiperda、Spodoptera littoralis、Spodoptera exigua、またはTrichoplusia niである、請求項72に記載の細胞。
  74. 前記昆虫細胞が、Sf9である、請求項69から73のいずれか一項に記載の細胞。
  75. 造血細胞、造血前駆細胞、造血幹細胞、赤血球系列細胞、巨核球、赤血球系前駆細胞(EPC)、CD34+細胞、CD44+細胞、赤血球、CD36+細胞、間葉系幹細胞、神経細胞、腸細胞、腸幹細胞、消化管上皮細胞、内皮細胞、腸内分泌細胞、肺細胞、肺前駆細胞、エンテロサイト、肝臓細胞(例えば、肝細胞、肝星細胞、クッパー細胞(KC)、肝臓類洞内皮細胞(LSEC)、肝臓前駆細胞)、幹細胞、前駆細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、皮膚線維芽細胞、マクロファージ、脳微小血管内皮細胞(BMVEC)、神経系幹細胞、筋肉サテライト細胞、上皮細胞、気道上皮細胞、筋肉前駆細胞、赤血球系前駆細胞、リンパ系前駆細胞、Bリンパ芽球細胞、B細胞、T細胞、好塩基球性風土病性バーキットリンパ腫(EBL)、多染性赤芽球、表皮幹細胞、上皮幹細胞、胚性幹細胞、P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞、ケラチノサイト、膵臓β細胞、K細胞、L細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞、MDCK細胞、Vero細胞、CHO、BHK1、NS0、Sp2/0、HeLa、A549、および正染性赤芽球から選択される、請求項69から74のいずれか一項に記載の細胞。
  76. 細胞のゲノム内のGSHに組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含む細胞であって、前記GSHが、表3から選択される、細胞。
  77. 前記GSH核酸が、非翻訳配列またはイントロンを含む、請求項76に記載の細胞。
  78. 前記GSHが、SYNTX-GSH1、SYNTX-GSH2、SYNTX-GSH3およびSYNTX-GSH4から選択される、請求項76または77に記載の細胞。
  79. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、順配向で前記GSHに組み込まれている、請求項76から78のいずれか一項に記載の細胞。
  80. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、逆配向で前記GSHに組み込まれている、請求項76から78のいずれか一項に記載の細胞。
  81. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、(a)プロモーターに作動可能に連結されている、または(b)プロモーターに作動可能に連結されていない、請求項76か80のいずれか一項に記載の細胞。
  82. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、プロモーターに作動可能に連結されており、前記プロモーターが、
    (a)それが作動可能に連結されている前記核酸とは異種のプロモーター;
    (b)前記核酸の組織特異的発現を助長するプロモーター;
    (c)前記核酸の構成的発現を助長するプロモーター;
    (d)誘導性プロモーター;
    (e)動物DNAウイルスの最初期プロモーター;
    (f)昆虫ウイルスの最初期プロモーター;および
    (g)昆虫細胞プロモーター
    から選択される、請求項81に記載の細胞。
  83. 前記誘導性プロモーターが、小分子、代謝物、オリゴヌクレオチド、リボスイッチ、ペプチド、ペプチドミメティック、ホルモン、ホルモンアナログ、および光から選択される作用因子によりモジュレートされる、請求項82に記載の細胞。
  84. 前記作用因子が、テトラサイクリン、キュメート、タモキシフェン、エストロゲン、およびアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、ラパマイシン、FKCsA、青色光、アブシジン酸(ABA)、およびリボスイッチから選択される、請求項83に記載の細胞。
  85. 前記プロモーターが、造血幹細胞、造血CD34+細胞、および表皮幹細胞、上皮幹細胞、神経系幹細胞、肺前駆細胞、筋肉サテライト細胞、腸K細胞、ニューロン細胞、気道上皮細胞、または肝臓前駆細胞における組織特異的発現を助長する、請求項82に記載の細胞。
  86. 前記プロモーターが、CMVプロモーター、β-グロビンプロモーター、CAGプロモーター、AHSPプロモーター、MNDプロモーター、ウィスコット・アルドリッチプロモーター、PKLRプロモーター、多角体(polh)プロモーター、および最初期1遺伝子(IE-1)プロモーターから選択される、請求項81または82に記載の細胞。
  87. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、コーディングRNAをコードする配列を含む、請求項52から58のいずれか一項に記載の細胞。
  88. コーディングRNAをコードする前記配列が、標的細胞における発現のためにコドン最適化されている、請求項87に記載の細胞。
  89. コーディングRNAをコードする前記少なくとも1つの非GSH核酸が、シグナルペプチドをコードする配列をさらに含む、請求項87または88に記載の細胞。
  90. コーディングRNAをコードする前記少なくとも1つの非GSH核酸が、
    (a)タンパク質またはその断片、好ましくは、ヒトタンパク質またはその断片;
    (b)治療用タンパク質もしくはその断片、抗原結合性タンパク質、またはペプチド;
    (c)自殺遺伝子、必要に応じて、単純ヘルペスウイルス-1チミジンキナーゼ(HSV-TK);
    (d)ウイルスタンパク質またはその断片;
    (e)ヌクレアーゼ、必要に応じて、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、メガTAL、またはCRISPRエンドヌクレアーゼ、(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼまたはそのバリアント);
    (f)マーカー、例えば、ルシフェラーゼまたはGFP;および/あるいは
    (g)薬物耐性タンパク質、例えば、抗生物質耐性遺伝子、例えばネオマイシン耐性
    をコードする配列を含む、請求項76から89のいずれか一項に記載の細胞。
  91. 前記ウイルスタンパク質またはその断片が、構造タンパク質(例えば、VP1、VP2、VP3)または非構造タンパク質(例えば、Repタンパク質)を含む、請求項90に記載の細胞。
  92. 前記ウイルスタンパク質またはその断片が、
    (a)パルボウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、VP1、VP2、VP3、NS1、もしくはRep;
    (b)レトロウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、エンベロープタンパク質、gag、pol、もしくはVSV-G;
    (c)アデノウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、E1A、E1B、E2A、E2B、E3、E4、もしくは構造タンパク質(例えば、A、B、C);および/または
    (d)単純ヘルペスウイルスタンパク質もしくはその断片、必要に応じて、ICP27、ICP4、もしくはpac
    を含む、請求項90または91に記載の細胞。
  93. ウイルスタンパク質をコードする遺伝子が、ウイルスの表面タンパク質またはその断片をコードする、請求項90から92のいずれか一項に記載の細胞。
  94. (a)前記表面タンパク質が、免疫応答を惹起する免疫原性表面タンパク質もしくはその断片である、(b)前記表面タンパク質もしくはその断片が、シグナルペプチドをさらに含む、(c)前記遺伝子が、誘導性プロモーターに作動可能に連結されている、および/または(d)前記表面タンパク質もしくはその断片をコードする核酸が、自殺遺伝子をさらに含む、請求項93に記載の細胞。
  95. 前記表面タンパク質が、コロナウイルス(例えば、MERS、SARS)、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、ヒトパピローマウイルス、デングウイルス血清型1、デングウイルス血清型2、デングウイルス血清型3、デングウイルス血清型4、ジカウイルス、ウエストナイルウイルス、黄熱病ウイルス、チクングニアウイルス、マヤロウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、またはニパウイルスのものである、請求項93または94に記載の細胞。
  96. 前記表面タンパク質が、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質である、請求項93から95のいずれか一項に記載の細胞。
  97. タンパク質またはその断片をコードする配列を含む前記少なくとも1つの非GSH核酸が、ヘモグロビン遺伝子(HBA1、HBA2、HBB、HBG1、HBG2、HBD、HBE1、および/またはHBZ)、アルファ-ヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)、凝固第VIII因子、凝固第IX因子、フォン・ヴィレブランド因子、ジストロフィンまたは短縮型ジストロフィン、マイクロジストロフィン、ユートロフィンまたは短縮型ユートロフィン、マイクロユートロフィン、ウシェリン(USH2A)、GBA1、プレプロインスリン、インスリン、GIP、GLP-1、CEP290、ATPB1、ATPB11、ABCB4、CPS1、ATP7B、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、KIND1、INS、F8またはその断片(例えば、Bドメイン欠失ポリペプチドをコードする断片(例えば、VIII SQ、p-VIII))、IRGM、NOD2、ATG2B、ATG9、ATG5、ATG7、ATG16L1、BECN1、EI24/PIG8、TECPR2、WDR45/WIP14、CHMP2B、CHMP4B、Dynein、EPG5、HspB8、LAMP2、LC3b UVRAG、VCP/p97、ZFYVE26、PARK2/Parkin、PARK6/PINK1、SQSTM1/p62、SMURF、AMPK、ULK1、RPE65、CHM、RPGR、PDE6B、CNGA3、GUCY2D、RS1、ABCA4、MYO7A、HFE、ヘプシジン、可溶性形態(例えば、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体またはIL-1β受容体の)をコードする遺伝子、および嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)から選択される、請求項90に記載の細胞。
  98. 前記抗原結合性タンパク質が、抗体またはその抗原結合性断片であり、必要に応じて、前記抗体またはその抗原結合性断片が、抗体、Fv、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、半抗体-scFv、タンデムscFv、Fab/scFv-Fc、タンデムFab’、一本鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(TandAb)、Fab/scFv-Fc、scFv-Fc、ヘテロ二量体IgG(CrossMab)、DART、およびダイアボディから選択される、請求項90に記載の細胞。
  99. 前記抗原結合性タンパク質が、TNFα、CD20、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-6、BLyS、APRIL、IFN-ガンマなど)、Her2、RANKL、IL-6R、GM-CSF、CCR5、または病原体(例えば、細菌毒素、ウイルスカプシドタンパク質など)に特異的に結合する、請求項90または91に記載の細胞。
  100. 前記抗原結合性タンパク質が、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ、アナキンラ、リツキシマブ、アバタセプト、トシリズマブ、ナタリズマブ、カナキヌマブ、アタシセプト、ベリムマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、フォントリズマブ、トラスツズマブ、デノスマブ、サリルマブ、レンジルマブ、ギムシルマブ、シルツキシマブ、レロンリマブ、およびそれらの抗原結合性断片から選択される、請求項90、98、および99のいずれか一項に記載の細胞。
  101. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、非コーディングRNAをコードする配列を含み、必要に応じて、前記非コーディングRNAが、lncRNA、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA、snoRNA、snRNA、scaRNA、および/またはガイドRNAを含む、請求項76から86のいずれか一項に記載の細胞。
  102. 前記非コーディングRNAが、DMT-1、フェロポーチン、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、IL-1β受容体、変異タンパク質(例えば、変異HFE、CFTR)をコードする遺伝子から選択される遺伝子を標的とする、請求項101に記載の細胞。
  103. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、標的細胞の内在性遺伝子の発現を増加または回復させる、請求項76から102のいずれか一項に記載の細胞。
  104. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、標的細胞の内在性遺伝子の発現を減少または消失させる、請求項76から102のいずれか一項に記載の細胞。
  105. 前記少なくとも1つの非GSH核酸が、
    (a)転写制御エレメント(例えば、エンハンサー、転写終結配列、非翻訳領域(5’または3’UTR)、近位プロモーターエレメント、遺伝子座調節領域(例えば、β-グロビンLCR、またはβ-グロビンLCRのDNase高感受性部位(HS))、ポリアデニル化シグナル配列)、および/または
    (b)翻訳制御エレメント(例えば、コザック配列、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後制御エレメント)
    をさらに含む、請求項76から104のいずれか一項に記載の細胞。
  106. 細胞系または初代細胞から選択される、請求項76から105のいずれか一項に記載の細胞。
  107. 哺乳動物細胞、昆虫細胞、細菌細胞、酵母細胞、または植物細胞であり、必要に応じて、前記哺乳動物細胞が、ヒト細胞または齧歯類細胞である、請求項76から106のいずれか一項に記載の細胞。
  108. 昆虫細胞であり、前記昆虫細胞が、lepidopteraの種に由来する、請求項76から107のいずれか一項に記載の細胞。
  109. lepidopteraの前記種が、Spodoptera frugiperda、Spodoptera littoralis、Spodoptera exigua、またはTrichoplusia niである、請求項108に記載の細胞。
  110. 前記昆虫細胞が、Sf9である、請求項107から109のいずれか一項に記載の細胞。
  111. 造血細胞、造血前駆細胞、造血幹細胞、赤血球系列細胞、巨核球、赤血球系前駆細胞(EPC)、CD34+細胞、CD44+細胞、赤血球、CD36+細胞、間葉系幹細胞、神経細胞、腸細胞、腸幹細胞、消化管上皮細胞、内皮細胞、腸内分泌細胞、肺細胞、肺前駆細胞、エンテロサイト、肝臓細胞(例えば、肝細胞、肝星細胞、クッパー細胞(KC)、肝臓類洞内皮細胞(LSEC)、肝臓前駆細胞)、幹細胞、前駆細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、皮膚線維芽細胞、マクロファージ、脳微小血管内皮細胞(BMVEC)、神経系幹細胞、筋肉サテライト細胞、上皮細胞、気道上皮細胞、筋肉前駆細胞、赤血球系前駆細胞、リンパ系前駆細胞、Bリンパ芽球細胞、B細胞、T細胞、好塩基球性風土病性バーキットリンパ腫(EBL)、多染性赤芽球、表皮幹細胞、上皮幹細胞、胚性幹細胞、P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞、ケラチノサイト、膵臓β細胞、K細胞、L細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞、MDCK細胞、Vero細胞、CHO、BHK1、NS0、Sp2/0、HeLa、A549、および正染性赤芽球から選択される、請求項76から110のいずれか一項に記載の細胞。
  112. 請求項30から66のいずれか一項に記載の核酸ベクター、請求項67もしくは68に記載のウイルスベクター、および/または請求項69から111のいずれか一項に記載の細胞を含む、医薬組成物。
  113. 細胞のゲノム内のGSHに組み込まれた少なくとも1つの非GSH核酸を含むトランスジェニック生物であって、前記GSHが、表3から選択される、トランスジェニック生物。
  114. 前記GSHが、SYNTX-GSH1、SYNTX-GSH2、SYNTX-GSH3およびSYNTX-GSH4から選択される、請求項113に記載のトランスジェニック生物。
  115. 請求項69から114のいずれか一項に記載の細胞を含む、トランスジェニック生物。
  116. 哺乳動物または植物であり、必要に応じて、前記哺乳動物が、齧歯類(例えば、マウス、ラット)、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ、ラマまたはウサギである、請求項115に記載のトランスジェニック生物。
  117. 少なくとも1つの非GSH核酸を細胞のGSH遺伝子座に挿入する方法であって、請求項30から66のいずれか一項に記載の核酸ベクター、請求項67もしくは68に記載のウイルスベクター、または請求項112に記載の医薬組成物を前記細胞に導入するステップを含み、そうすることで、ゲノム内の前記GSH遺伝子座と、前記非GSH核酸に隣接するGSH 5’相同性アームおよびGSH 3’相同性アームの相同組換えによって前記非GSH核酸が前記GSH遺伝子座に組み込まれる、方法。
  118. 前記非GSH核酸が、順配向で前記GSHに組み込まれる、請求項117に記載の方法。
  119. 前記非GSH核酸が、逆配向で前記GSHに組み込まれる、請求項117に記載の方法。
  120. 疾患を予防または処置する方法であって、請求項30から66のいずれか一項に記載の核酸ベクター、請求項67もしくは68に記載のウイルスベクター、請求項69から111のいずれか一項に記載の細胞、および/または請求項112に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法。
  121. 前記疾患が、感染症、内皮機能不全、嚢胞性線維症、心血管疾患、腎疾患、がん、ヘモグロビン異常症、貧血、血友病(例えば、血友病A)、骨髄増殖性障害、凝血異常、鎌状赤血球症、アルファサラセミア、ベータサラセミア、ファンコニ貧血、家族性肝内胆汁うっ滞症、皮膚の遺伝性障害(例えば、表皮水疱症)、眼の遺伝性疾患(例えば、遺伝性網膜ジストロフィー、例えば、レーバー先天性黒内障(LCA)、網膜色素変性(RP)、コロイデレミア、色覚異常、網膜分離症、シュタルガルト病、アッシャー症候群1B型)、ファブリー、ゴーシェ、ニーマン・ピックA、ニーマン・ピックB、GM1ガングリオシドーシス、ムコ多糖症(MPS)I型(ハーラー、シャイエ、ハーラー/シャイエ)、MPS II型(ハンター)、MPS VI型(マロトー・ラミー)、血液がん、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、肝硬変、肝細胞癌、膵炎、真性糖尿病、心筋症、関節炎、性腺機能低下症、心疾患、心臓発作、甲状腺機能低下症、耐糖能障害、関節症、肝線維症、ウイルソン病、潰瘍性大腸炎、クローン病、テイ・サックス病、神経変性障害、脊髄性筋萎縮症1型、ハンチントン病、カナバン病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、若年性慢性関節炎、乾癬、および強直性脊椎炎、および自己免疫疾患、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、運動失調)、炎症性疾患、炎症性腸疾患、クローン病、関節リウマチ、ループス、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患/COPD、肺線維症、シェーグレン病、高血糖障害、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、インスリン抵抗性糖尿病(例えば、メンデンホール症候群、ウェルナー症候群、妖精症、および脂肪萎縮性糖尿病)、脂質異常症、高脂血症、低密度リポタンパク質(LDL)上昇、高密度リポタンパク質(HDL)低下、トリグリセリド上昇、メタボリックシンドローム、肝臓疾患、腎疾患、心血管疾患、虚血、脳卒中、再灌流中の合併症、筋変性、萎縮、老化の症状(例えば、筋萎縮症、フレイル、代謝障害、軽度の炎症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、加齢性認知症および孤発型アルツハイマー病、前がん状態、およびうつ状態をはじめとする精神医学的状態)、脊髄損傷、動脈硬化症、感染性疾患(例えば、細菌性、真菌性、ウイルス性)、AIDS、結核、胚発生障害、不妊症、リソソーム蓄積症、活性化因子欠損症/GM2ガングリオシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、コレステロールエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠損症、シスチン症、ダノン病、ファーバー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(I、IIおよびIII型)、GM1ガングリオシドーシス、(乳児型、遅発乳児型/若年型および成人型/慢性)、ハンター症候群(MPS II)、I細胞病/ムコリピドーシスII、乳児型遊離シアル酸蓄積症(ISSD)、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損症、クラッベ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、ハーラー症候群、シャイエ症候群、ハーラー・シャイエ症候群、サンフィリッポ症候群、モルキオAおよびB型、マロトー・ラミー、スライ症候群、ムコリピドーシス、多種スルフェート欠損症、神経セロイドリポフスチン症、CLN6病、ヤンスキー・ビールショースキー病、ポンペ病、濃化異骨症、サンドホフ病、シンドラー病、およびウォールマン病から選択される、請求項120に記載の方法。
  122. 前記感染症が、細菌感染症、真菌感染症、またはウイルス感染症である、請求項121に記載の方法。
  123. 前記感染症が、前記ウイルス感染症であり、前記ウイルス感染症が、コロナウイルス(例えば、MERS、SARS)、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、E型肝炎、ヒトパピローマウイルス、デングウイルス血清型1、デングウイルス血清型2、デングウイルス血清型3、デングウイルス血清型4、ジカウイルス、ウエストナイルウイルス、黄熱病ウイルス、チクングニアウイルス、マヤロウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、またはニパウイルスによるものである、請求項121または122に記載の方法。
  124. 前記ウイルス感染症が、SARS-CoV-2によるものである、請求項122または123に記載の方法。
  125. 前記核酸ベクター、前記細胞、および/または前記医薬組成物が、前記対象に、血管内、脳内、非経口、腹腔内、静脈内、硬膜外、脊髄内、胸骨内、関節内、滑膜内、くも膜下腔内、腫瘍内、動脈内、心臓内、筋肉内、鼻腔内、肺内、皮膚移植、または経口投与によって投与される、請求項120から124のいずれか一項に記載の方法。
  126. 前記細胞が、前記対象にとって自己または同種異系である、請求項120から125のいずれか一項に記載の方法。
  127. 細胞内のタンパク質のレベルおよび/または活性をモジュレートする方法であって、請求項30から66のいずれか一項に記載の核酸ベクター、請求項67もしくは68に記載のウイルスベクター、および/または請求項112に記載の医薬組成物を前記細胞に導入するステップを含む方法。
  128. 前記レベルおよび/または活性が、上昇する、請求項127に記載の方法。
  129. 前記レベルおよび/または活性が、低下または消失する、請求項128に記載の方法。
  130. 生物製剤を製造する方法であって、
    (a)(i)請求項30から66のいずれか一項に記載の核酸ベクターを含む細胞、(ii)請求項67もしくは68に記載のウイルスベクターを含む細胞、または(iii)請求項69から111のいずれか一項に記載の細胞を培養し、発現された生物製剤を回収するステップ;あるいは
    (b)前記発現された生物製剤を、請求項115または116に記載のトランスジェニック生物から回収するステップ
    を含む方法。
  131. 前記生物製剤が、抗原結合性タンパク質である、請求項130に記載の方法。
  132. 前記生物製剤が、抗体またはその抗原結合性断片であり、必要に応じて、前記抗体またはその抗原結合性断片が、抗体、Fv、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、半抗体-scFv、タンデムscFv、Fab/scFv-Fc、タンデムFab’、一本鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(TandAb)、Fab/scFv-Fc、scFv-Fc、ヘテロ二量体IgG(CrossMab)、DART、およびダイアボディから選択される、請求項130または131に記載の方法。
  133. 前記生物製剤が、TNFα、CD20、サイトカイン(例えば、IL-1、IL-6、BLyS、APRIL、IFN-ガンマなど)、Her2、RANKL、IL-6R、GM-CSF、またはCCR5に特異的に結合する、請求項130から132のいずれか一項に記載の方法。
  134. 前記生物製剤が、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ、アナキンラ、リツキシマブ、アバタセプト、トシリズマブ、ナタリズマブ、カナキヌマブ、アタシセプト、ベリムマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、フォントリズマブ、トラスツズマブ、デノスマブ、サリルマブ、レンジルマブ、ギムシルマブ、シルツキシマブ、レロンリマブ、およびそれらの抗原結合性断片から選択される、請求項130から133のいずれか一項に記載の方法。
  135. 前記生物製剤が、治療用タンパク質であり、必要に応じて、前記治療用タンパク質が、インスリンである、請求項130から134のいずれか一項に記載の方法。
  136. ウイルスベクター(例えば、遺伝子治療またはワクチン)を製造する方法であって、
    (1)
    (i)少なくとも1つの機能的ウイルス複製起点(例えば、少なくとも1つのITRヌクレオチド配列)を含み、
    必要に応じて、標的細胞における発現のためのプロモーターに作動可能に連結されている核酸をさらに含む、核酸配列と、
    (ii)宿主細胞における発現のための少なくとも1つの発現調節配列に作動可能に連結されている、1つまたは複数のウイルス構造タンパク質(例えば、カプシドタンパク質、例えば、gag、VP1、VP2、VP3、そのバリアント)をコードする少なくとも1つの遺伝子を含む核酸配列と、
    (iii)宿主細胞における発現のための少なくとも1つの発現調節配列に作動可能に連結されている1つまたは複数の複製タンパク質(例えば、Rep、pol)をコードする少なくとも1つの遺伝子を含む核酸配列と
    を含む宿主細胞を用意するステップであって、
    必要に応じて、前記少なくとも1つの複製タンパク質が、(a)宿主細胞における発現のための少なくとも1つの発現調節配列に作動可能に連結されている、機能的複製タンパク質をコードするRep52もしくはRep40コード配列またはその断片、および/あるいは(b)宿主細胞における発現のための少なくとも1つの発現調節配列に作動可能に連結されているRep78またはRep68コード配列を含み、
    (i)、(ii)および(iii)のうちの少なくとも1つが、宿主細胞ゲノム内の表3から選択される少なくとも1つのGSHに安定的に組み込まれ、少なくとも1つのベクターが、存在する場合/とき、前記宿主細胞ゲノムに安定的に組み込まれない前記(i)、(ii)および(iii)の残部を含む、ステップ;ならびに
    (2)前記宿主細胞を、組換えウイルスベクターが産生されるような条件下で維持するステップ
    を含む方法。
  137. (ii)または(iii)が、GSHに組み込まれる、請求項136に記載の方法。
  138. (ii)および(iii)が、GSHに組み込まれる、請求項136に記載の方法。
  139. 前記少なくとも1つの機能的ウイルス複製起点(例えば、少なくとも1つのITRヌクレオチド配列)が、
    (a)ディペンドパルボウイルスITR、および/または
    (b)AAV ITR、必要に応じて、AAV2 ITR
    を含む、請求項136から138のいずれか一項に記載の方法。
  140. 前記宿主細胞における発現のための前記少なくとも1つの発現調節配列が、
    (a)プロモーター、および/または
    (b)コザック様発現調節配列
    を含む、請求項136から139のいずれか一項に記載の方法。
  141. 前記プロモーターが、
    (a)動物DNAウイルスの最初期プロモーター、
    (b)昆虫ウイルスの最初期プロモーター、
    (c)昆虫細胞プロモーター、または
    (d)誘導性プロモーター
    を含む、請求項140に記載の方法。
  142. 前記動物DNAウイルスが、サイトメガロウイルス(CMV)、ディペンドパルボウイルス、またはAAVである、請求項141に記載の方法。
  143. 前記昆虫ウイルスが、lepidopteraのウイルス、またはバキュロウイルスであり、必要に応じて、前記バキュロウイルスが、Autographa californicaマルチカプシド核多角体病ウイルス(AcMNPV)である、請求項141に記載の方法。
  144. 前記プロモーターが、ポリへドリン(polh)または最初期1遺伝子(IE-1)プロモーターである、請求項140または141に記載の方法。
  145. 前記プロモーターが、誘導性プロモーターである、請求項140または141に記載の方法。
  146. 前記誘導性プロモーターが、小分子、代謝物、オリゴヌクレオチド、リボスイッチ、ペプチド、ペプチドミメティック、ホルモン、ホルモンアナログ、および光から選択される作用因子によりモジュレートされる、請求項145に記載の方法。
  147. 前記作用因子が、テトラサイクリン、キュメート、タモキシフェン、エストロゲン、およびアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、ラパマイシン、FKCsA、青色光、アブシジン酸(ABA)、およびリボスイッチから選択される、請求項146に記載の方法。
  148. (a)前記ウイルス複製タンパク質が、AAV複製タンパク質、必要に応じて、Rep52および/もしくはRep78タンパク質である;ならびに/または
    (b)前記ウイルス構造タンパク質が、AAVカプシドタンパク質である、
    請求項136から147のいずれか一項に記載の方法。
  149. 前記AAVが、AAV2である、請求項148に記載の方法。
  150. 請求項67または68に記載のウイルスベクターを製造する、請求項136から149のいずれか一項に記載の方法。
  151. 前記宿主細胞が、哺乳動物細胞または昆虫細胞である、請求項136から150のいずれか一項に記載の方法。
  152. 前記宿主細胞が、哺乳動物細胞であり、前記哺乳動物細胞が、ヒト細胞または齧歯類細胞である、請求項151に記載の方法。
  153. 前記哺乳動物細胞が、HEK293、HEK293T、HeLa、およびA549から選択される、請求項151または152に記載の方法。
  154. 前記宿主細胞が、昆虫細胞であり、前記昆虫細胞が、lepidopteraの種に由来する、請求項151に記載の方法。
  155. lepidopteraの前記種が、Spodoptera frugiperda、Spodoptera littoralis、Spodoptera exigua、またはTrichoplusia niである、請求項154に記載の方法。
  156. 前記昆虫細胞が、Sf9である、請求項151、154および155のいずれか一項に記載の方法。
  157. 前記ウイルスベクターが、アデノウイルス由来ベクター(例えば、AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス由来ベクター(例えば、レンチウイルス)、ヘルペスウイルス由来ベクター、およびアルファウイルス由来ベクター(例えば、セムリキ森林ウイルス(SFV)ベクター)から選択される、請求項136から156のいずれか一項に記載の方法。
  158. 請求項30から66のいずれか一項に記載の核酸ベクター、請求項67もしくは68に記載のウイルスベクター、請求項69から111のいずれか一項に記載の細胞、および/または請求項112に記載の医薬組成物を含む、キット。
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