JP2024521364A - 組換えワクシニアウイルスにより免疫応答を誘導するための方法および組成物 - Google Patents

組換えワクシニアウイルスにより免疫応答を誘導するための方法および組成物 Download PDF

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Abstract

対象において抗原への免疫応答を誘導するための方法が開示される。本方法は、細胞外ビリオンタンパク質F13のコード配列が、F13の伝染性軟属腫ウイルスホモログであるMC021のコード配列で置き換えられた、組換えワクシニアウイルスの有効量を対象に投与するステップを含み、組換えワクシニアウイルスが、抗原の免疫原性エピトープをコードする核酸を含む。

Description

本出願は、2021年6月6日に出願された米国特許出願第63/202,295号の優先権を主張するものである。前述の出願の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された助成金第AI067391号および同AI117105号の下に政府支援によりなされたものである。政府は、本発明に対して権原を有する。
分野
本出願は、全体として医学的処置の分野に、特に、免疫応答を誘導するための組換えワクシニアウイルスの使用に関する。
ウイルス糖タンパク質は、ウイルスの最も外側のエンベロープの主成分であり、ウイルスのライフサイクルの非常に重要な面に活発に関与している。ウイルスとその宿主の間の相互作用は、多くの場合、ウイルス糖タンパク質と宿主細胞受容体との間の相互作用によって決定され、したがって、ウイルスのエンベロープに見いだされる糖タンパク質の欠失/突然変異によって、宿主細胞侵入、宿主範囲、および病原体の認識が影響を受けることが多い。したがって、ウイルス糖タンパク質は中和抗体の主たる標的である。次いで、要因のこのような組み合わせによってウイルスの病原性が影響を受ける。
オルソポックスウイルス属のプロトタイプのメンバーであるワクシニアウイルス(VACV)は、その複製サイクルの過程で形態学的および抗原的に異なる2つの感染型ビリオン:細胞内成熟ビリオン(IMV)および細胞外ビリオン(EV)を産生する。IMV産生の後、サブセットがトランスゴルジ網へと細胞内輸送され、そこで、さらなる2つの膜が付加されて細胞内エンベロープビリオン(IEV)を産生する。IEVは、細胞表面に輸送される一過性の形態であり、細胞表面で、細胞膜との融合によってウイルスのEV形態が放出されるが、このことは、細胞間拡散および遠達伝播にとって極めて重要である。IMVには見いだされずEV中に見いだされる4種のタンパク質(A33、A34、B5およびF13)は、オルソポックスウイルス属のメンバー間で高度に保存されている。これら4種のタンパク質のうちのいずれか1つの欠失により小プラーク表現型がもたらされるが、このことは、感染性EVの効率的産生へのそれらの極めて重要な役割を表す。これら4種のうち、F13の欠失が、EV産生と感染性の双方における欠陥が理由で、EV産生に対して最も多大な影響を及ぼす。
VACVは、天然痘に対する防御免疫をもたらした、史上最大かつ最も成功したワクチン接種プログラムの重要なコンポーネントであったが、また、多くのウイルスワクチンベクター、腫瘍溶解性ベクターおよび遺伝子治療ベクターへのベースとして広範に使用されてもいる。しかし、患者においてVACVの使用によって起こる多数の合併症があり、それらの大部分が、投与の当初の部位からのウイルスの制御できない複製および拡散に起因する。したがって、ワクチンベクターとしてのその免疫原性を維持するが、病原性、感染性および副作用が低減した、より安全な、組換えまたは改変されたVACVが求められている。
本出願の一態様は、対象において抗原への免疫応答を誘導するための方法に関する。本方法は、細胞外ビリオンタンパク質F13(p37、37-kDaタンパク質、VACWR052、NCBI Gene ID 3707509としても知られる)が、F13の伝染性軟属腫ウイルスホモログであるMC021で置き換えられた、組換えワクシニアウイルスの有効量を対象に投与するステップを含み、組換えワクシニアウイルスが、抗原の免疫原性エピトープをコードする核酸を含む。
一部の実施形態では、抗原はウイルス抗原である。一部の実施形態では、ウイルス抗原はSARS-Cov-2由来の抗原である。一部の実施形態では、抗原は細菌抗原である。一部の実施形態では、抗原は腫瘍抗原である。
一部の実施形態では、組換えワクシニアウイルスは、経皮、皮下、または筋肉内で投与される。
本出願の別の態様は、対象において標的への防御免疫応答を誘導するための方法に関する。本方法は、細胞外ビリオンタンパク質F13が、F13の伝染性軟属腫ウイルスホモログであるMC021で置き換えられた組換えワクシニアウイルスの有効量を対象に投与するステップを含み、組換えワクシニアウイルスが、標的由来の免疫原をコードする核酸を含む。
一部の実施形態では、標的は、ウイルス、細菌および寄生虫などの微生物である。一部の実施形態では、標的はSARS-Cov-2である。一部の実施形態では、標的は腫瘍細胞などの細胞である。
本出願の別の態様は、(a)細胞外ビリオンタンパク質F13が、F13の伝染性軟属腫ウイルスホモログであるMC021で置き換えられた組換えワクシニアウイルス;および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であって、経皮接種、皮下注射または筋肉内注射用に製剤化される、医薬組成物に関する。
一部の実施形態では、組換えワクシニアウイルスは、抗原の免疫原性エピトープをコードする核酸を含み、標的細胞の感染時に抗原のエピトープを発現することができる。一部の実施形態では、抗原はSARS-CoV-2由来の抗原である。
一部の実施形態では、組換えワクシニアウイルスはエンベロープウイルスであり、ウイルスエンベロープは、MC021に加えて、さらなる外来性糖タンパク質またはその一部を含み、さらなる外来性糖タンパク質は、異なるウイルス由来のウイルスタンパク質である。一部の実施形態では、さらなる外来性糖タンパク質は、SARS-CoV-2由来のウイルスタンパク質である。
次に本開示について詳細に説明し、本開示が例示的な実施形態に関連して説明されるが、本開示は図および添付の特許請求の範囲に例示される特定の実施形態によって限定されるものではない。
本出願の組換えワクシニアウイルスゲノムの一実施形態の概略図である。 EV膜の糖タンパク質含量を示す図である。(パネルA)RK13細胞に、MOI 5で表示のウイルスを感染させた。24hpiで、細胞外ビリオンをCsCl密度勾配遠心分離によって精製した。勾配からの画分を勾配の底から滴下して収集し、OD260によって解析し、CsClの濃度を屈折率測定法によって決定した。(パネルB)EVを含有する画分を収集し(左)、感染細胞を採取し(右)、以下を用いたウェスタンブロットによって解析した:ウサギ抗HA抗血清とそれに続くHRPコンジュゲートされたロバ抗ウサギ抗体、ラット抗B5 MAbとそれに続くAlexa Fluor 647コンジュゲートされたロバ抗ラット抗体、ウサギ抗A33抗血清とそれに続くHRPコンジュゲートされたロバ抗ウサギ抗体、ウサギ抗L1抗血清とそれに続くAlexa Fluor 647コンジュゲートされたロバ抗ウサギ抗体、およびマウス抗アクチンMAbとそれに続くAlexa Fluor 647コンジュゲートされたロバ抗マウス抗体。キロダルトン表示の質量およびマーカータンパク質の位置を、EVライセートブロットの右側および細胞ライセートブロットの左側に示す。 フローバイロメトリー向けのゲーティング戦略を示す図である。RK13細胞にMOI 5でvF13L-HAを24時間感染させた。細胞外ビリオンをスクロースクッションを通して遠心分離し、固定し、mCherry蛍光強度によるフローサイトメトリーによって解析した。続いて、ビリオンを表すmCherry+集団を糖タンパク質の取り込みについて解析した。FSCスケールの上端にあるイベント(前方散乱)は除外した。 フローバイロメトリーによって解析されたEV糖タンパク質含量を示す図である。(パネルA)RK13細胞に、MOI 5で表示のウイルスを感染させ、37℃で一晩インキュベートした。翌日、EVをスクロースクッションを通して遠心分離し、固定し、以下を用いて染色した:ウサギ抗HA抗血清とそれに続くCy2コンジュゲートされたロバ抗ウサギ抗体、ラット抗B5 MAbとそれに続くDylight 405コンジュゲートされたロバ抗ラット抗体、およびウサギ抗A33抗血清とそれに続くAlexa Fluor 647コンジュゲートされたロバ抗ウサギ抗体。EV膜におけるF13-HA/MC021-HA(左)、B5(中央)、およびA33(右)の取り込みについて代表的な箱ひげ図を示す。****、p<0.001、一元配置ANOVAを受けたターキーの多重比較検定による。(パネルB)vF13L-HA(列;左)、vMC021L-HA(列;中央)、およびvΔF13L(列右)から産生されたEVの、ウイルス表面上でのB5およびF13-HA/MC021-HA(段;上)、A33およびF13-HA/MC021-HA(段;中)、ならびにA33およびB5(段;下)の取り込みに関する代表的なドットブロット。すべてのR2値が有意であった(****、p<0.001)。 蛍光活性化ビリオン選別スキームを示す図である。RK13細胞に、MOI 5でvF13L-HA/B5R-GFPを24時間感染させた。細胞外ビリオンをスクロースクッションを通して遠心分離し、蛍光活性化ビリオン選別によって解析した。ビリオンを、図3におけるように、mCherry蛍光強度に対してまずゲーティングし、mCherry+イベントを、その後に、GFP蛍光強度(B5GFPHIGH、B5GFPMED、およびB5GFPLOW)に基づいて選別した。Y軸は、より容易な視覚化のために、選別されたイベントの数(n)に対して正規化されたカウントであり、nは各集団について表示されている。 B5-GFP組換えウイルスプラーク表現型およびフローバイロメトリーを示す図である。(パネルA)BSC-40細胞の単層に表示のウイルスを感染させ、37℃で一晩インキュベートした。2時間後、接種材料を除去し、細胞を半固体培地でオーバーレイした。3日後、細胞単層を蛍光顕微鏡により画像化し、次いでクリスタルバイオレットで染色し画像化した。(パネルB)RK13細胞に、MOI 5で表示のウイルスを感染させ、37℃で一晩インキュベートした。翌日、細胞外ビリオンをスクロースクッションを通して遠心分離し、固定し、以下を用いて染色した:ウサギ抗HA抗血清とそれに続くCy5コンジュゲートされたロバ抗ウサギ抗体、ラット抗B5 MAbとそれに続くDylight 405コンジュゲートされたロバ抗ラット抗体、およびウサギ抗A33抗血清とそれに続くAlexa Fluor 750コンジュゲートされたヤギ抗ウサギ抗体。EV膜におけるF13-HA/MC021-HA(左)、B5(左中)、A33(右中)、およびB5-GFP(右)の取り込みについて代表的な箱ひげ図を示す。****、p<0.001、一元配置ANOVAを受けたターキーの多重比較検定による。 蛍光活性化ビリオン選別および感染性アッセイを示す図である。RK13細胞に、MOI 5で表示のウイルスを感染させ、37℃で一晩インキュベートした。翌日、EVをスクロースクッションを通して遠心分離し、蛍光活性化ビリオン選別によって解析した。ビリオンをGFP蛍光強度に基づいて3つのプール(B5GFPHIGH、B5GFPMED、およびB5GFPLOW)に選別し、(パネルA)総ゲノムコピーおよび(パネルB)細胞結合についてqPCRによって解析した。(パネルC)比感染性を、総ゲノムコピー(qPCRによる)とプラーク形成単位(プラークアッセイによる)を比較することによって算出した。**、p<0.01および****、p<0.001、一元配置ANOVAを受けたターキーの多重比較検定による。 病原性および免疫を示す図である。(パネルA~F)野生型C57Bl/6マウスに片耳の耳介に表示のウイルス10,000pfuを感染させ、組織病状を可視化(パネルA~C)させ、組織の腫脹(パネルD)、感染部位にての病変の発達(パネルE)および感染部位にての組織喪失(パネルF)を測定した。グラフに2つの実験からプールされたデータを示した(n=10)。(パネルG)STAT1-/-マウス(n≧3)に各耳介に表示のウイルス10,000pfuを皮内感染させ、生存を感染後28日間モニタリングした。グラフは、2つの実験からプールされたデータを表す(n=7~10)。(パネルH)野生型C57Bl/6マウスを片耳の耳介に表示のウイルス10,000pfuで免疫し、38日後に血清を採取し、VACV-GFPによる感染を阻害する血清希釈の能力をフローサイトメトリーによりアッセイした。(パネルI)野生型C57Bl/6マウスを片耳の耳介で表示のウイルス10,000pfuで免疫し、主要抗原決定基B8、A8、A3、K3、A47およびA42への脾臓のCD8+T細胞応答を従来の細胞内サイトカイン分泌アッセイによりアッセイした。(パネルJ)野生型Balb/cマウスを片耳の耳介で表示のウイルス10,000pfuで免疫し、次いで35日後に毒性マウス病原体ECTV 3000pfuを用いる足蹠感染により曝露した。マウスの生存を組み合わせた2つの実験から示す(n=10)。
添付の構造および図に例を例示しながら、本出願のある特定の態様および例示的な実施形態を詳細に参照する。本出願の態様は方法、材料および例を含めて例示的な実施形態と組み合わされて説明され、このような説明は非限定的なものであり、本出願の範囲は、一般的に知られた、または、本明細書に組み込まれたあらゆる均等物、代替物および改変物を包含することを意図したものである。別段の定義がされない限り、本明細書で使用されるあらゆる技術用語および科学用語は本出願が属する技術分野の当業者であれば通常に理解される意味と同じ意味を有する。当業者であれば、本出願の態様および実施形態の実施において使用され得る、本明細書に記載のものと同様のまたは均等な多くの技術および材料を理解するであろう。本出願の記載された態様および実施形態は記載された方法および材料に限定されるものではない。
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、「a」、「an」および「the」という単数形は、内容が明確に別様に示していない限り、複数の指示対象を包含する。
範囲については、「約(about)」特定のある数値から、および/または、「約」特定の別の数値までとして本明細書に表現される場合がある。このような範囲が表現されている場合、別の実施形態には当該の特定のある数値から、および/または、当該の特定の他の数値までが含まれる。同様に、数値が「約」という先行詞の使用により近似として表現されている場合、特定の数値は別の実施形態を形成することが理解される。さらに、各範囲の終点は、他方の終点と関連する、および他方の終点から独立しているという双方で、有意であることも理解される。本明細書に開示された数値がいくつかあること、および、各数値はその数値自体に加えて、「約」当該の特定の数値としても本明細書に開示されていることがさらに理解される。例えば、数値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。ある数値が「その数値以下」、「その数値以上」として開示されている場合、当業者によって適当に理解されるように、数値同士の間の可能な範囲も開示されていることも理解される。例えば、数値「10」が開示されている場合、「10以下」および「10以上」も開示されている。
I.定義
本明細書で使用される「ワクシニアウイルス」という用語は、ポックスウイルスファミリーに属する大きく、複雑な、エンベロープウイルスを指す。ワクシニアウイルスは、およそ200のタンパク質をコードする、長さおよそ190kbpの線状の二本鎖DNAゲノムを有する。ワクシニアウイルス株には、それらに限定されないが、Western Reserve (WR)、Copenhagen、Tashkent、Tian Tan、Lister、Wyeth、IHD-J、およびIHD-W、Brighton、Ankara、MVA、Dairen I、LIPV、LC16M8、LC16MO、LIVP、WR 65-16、Connaught、New York City Board of Healthワクシニアウイルス株の株、これらに由来する株またはこれらの改変型の株が含まれる。
「組換えワクシニアウイルス」とは、1つまたは複数の異種ヌクレオチドを含有するワクシニアウイルスを指し、これは、ウイルス感染細胞において、異種ヌクレオチドを複製するか、または前記ヌクレオチド、ペプチド、異種ペプチド、もしくは異種ヌクレオチドによってコードされるタンパク質を発現する。組換えウイルスは、ウイルスの自然状態では見いだされない遺伝子または遺伝子断片をセンス形態またはアンチセンス形態で発現することができる。加えて、組換えウイルスは、自然状態のウイルスに見いだされる遺伝子を発現することができる。しかし、上記遺伝子は、人為的手段によってウイルスの遺伝子へと再導入されたかまたはレスキューされた改変遺伝子である。
本明細書で使用される場合、「免疫応答」という用語は、抗原またはワクチンなどの刺激への、B細胞、T細胞、樹状細胞、マクロファージまたは多形核球(PMN)などの免疫系の細胞の応答を指す。免疫応答には、例えばインターフェロンまたはサイトカインを分泌する上皮細胞を含めて、宿主防御応答に関与する身体の任意の細胞が含まれ得る。免疫応答には、それらに限定されないが、自然免疫応答および/または適応免疫応答が含まれる。免疫応答を測定する方法は当技術分野で周知であり、それには、例えば、リンパ球(例えばB細胞もしくはT細胞)の増殖および/または活性を測定すること、サイトカインまたはケモカインの分泌、炎症、抗体産生などを測定することが含まれる。
「防御免疫応答」および「防御免疫」という用語は、宿主にとってたいていは外来性の1つまたは複数の抗原の存在によって特徴付けられる、感染から(例えば、感染を防止するかまたは感染に伴う疾患の発生を防止する)または疾患状態から対象における防御を、対象の免疫系が容易にすることができるような、免疫応答または免疫の状態を指す。
「抗原」という用語は、免疫応答を誘発しかつ抗原に対する特異的抗体(液性応答)または細胞傷害性Tリンパ球(細胞性応答)を生成させることができる、物質または分子を指す。したがって、抗原または免疫原は、抗体またはリンパ球などの免疫系のコンポーネントによって認識することができる。抗原は、単一のエピトープ程度に小さい場合もあれば、またはより大きい場合もあり、かつ複数のエピトープを含む場合もある。したがって、抗原のサイズは、約5~12個のアミノ酸(例えば、ペプチド)程度に小さい場合もあり、多量体および融合タンパク質、キメラタンパク質、またはアゴニストのタンパク質もしくはペプチドを含めて、部分タンパク質、完全長タンパク質程度に大きい場合もある。加えて、抗原は炭水化物を含む場合がある。抗原または免疫原は、微生物(または病原体)由来の抗原、ネオ抗原、腫瘍細胞抗原または自己抗原であってもよい。微生物由来の(または病原体由来の)抗原/免疫原は、細菌、ウイルス、原虫または真菌由来とすることができる。
「免疫原」という用語は、T細胞受容体(TCR)またはB細胞受容体(BCRもしくは抗体)などの免疫学的受容体によって認識される能力を有する分子を指す。免疫原は、少なくとも1つのエピトープ、例えば、T細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープを提示するのであれば、天然であっても非天然であってもよい。
「免疫原性」という用語は、抗原または免疫原のエピトープの存在によって起こされる反応を指す。「エピトープ」という用語は、免疫応答を誘発するのに十分である抗原決定基を指す。これらは、特定の免疫応答を誘発するように、抗原性である分子上の特定の化学基またはペプチド配列であり、例えば、エピトープは、B細胞および/またはT細胞が応答する抗原の領域である。エピトープは、連続性のアミノ酸、またはタンパク質の三次フォールディングにより並置された非連続性のアミノ酸の両方から形成され得る。当業者であれば、T細胞エピトープはサイズおよび組成においてB細胞エピトープとは異なること、ならびにクラスI MHC経路を通して提示されるエピトープは、クラスII MHC経路を通して提示されるエピトープとは異なることを理解するであろう。
「腫瘍抗原」、「腫瘍特異的抗原」およびそれの「腫瘍関連抗原」という用語は、前腫瘍性状態、過形成状態、または腫瘍性状態に関連する抗原を参照して使用される。このような抗原は、がんと関連している場合もあり、がんの原因物質である場合もある。
「ネオ抗原」という用語は、本明細書では、例えば、腫瘍細胞における突然変異または腫瘍細胞に特異的な翻訳後修飾を介して、ある抗原を対応する野生型の親抗原と明確に区別させている少なくとも1つの改変を有する当該抗原を参照して使用される。上記改変は、フレームシフト、非フレームシフトインデル(例えば、小さな挿入もしくは欠失(例えばヌクレオチドの))または置換多型(インデル)、ミスセンスまたはナンセンス置換、スプライス部位の改変、ゲノム再構成または遺伝子融合、スプライスバリアント、異常なリン酸化またはグリコシル化などの対象のDNAにおける突然変異の結果とすることができる。ある特定の実施形態では、ネオ抗原は腫瘍抗原である。
腫瘍抗原には、それらに限定されないが、任意の腫瘍またはがん由来の抗原が含まれるが、腫瘍またはがんには、それらに限定されないが、黒色腫、扁平上皮癌、乳がん、頭頸部癌、甲状腺癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、精巣がん、前立腺がん、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、脳がん、脈管肉腫、血管肉腫、肥満細胞腫瘍、白血病、リンパ腫、原発性肝がん、肺がん、膵臓がん、消化器がん(結腸直腸がんを含む)、腎臓細胞癌、造血器腫瘍およびそれらの転移性がんが含まれる。
「ワクチン」という用語は、ワクチンのレシピエントまたは宿主において免疫応答を誘導する組成物を指す。ワクチンは、レシピエントにおいて、1つもしくは複数の抗原への液性(例えば、中和抗体)応答、1つもしくは複数の抗原に対する細胞性免疫応答(例えば、細胞傷害性Tリンパ球(CTL))の応答、または両方を誘導し、その結果、例えば、現在のもしくは続発性の微生物感染または例えば1つまたは複数のネオ抗原またはがん抗原の存在によって特徴付けられる疾患状態に対する部分的または完全な防御を、レシピエントにおいてもたらすことができる。ワクチンの例としては、それらに限定されないが、弱毒化生ワクチン、不活化ワクチン、サブユニットワクチン(タンパク質またはペプチド)、糖ベースのワクチン(コンジュゲート型または天然)、細菌ベクターワクチンおよびウイルスベクターワクチンが挙げられる。
「ワクチン接種」という用語は、個体の免疫系を刺激して、病原体または非天然抗原を含有する宿主細胞への適応免疫を宿主において発達させる抗原物質の投与を指す。ワクチン接種により、微生物感染またはがんなどの疾患に関連する抗原特異的細胞もしくはエピトープ特異的細胞に伴う1つもしくは複数の症状を防止もしくは改善することができる:および/または前述の疾患状態に伴う1つもしくは複数の症状の重症度もしくは頻度を減ずることができる。
「免疫する」という用語は、ワクチン接種などによって対象が感染症または疾患状態から防御されることをもたらすことに参照して使用される。
「防御」、「免疫防御」および「防御応答」という用語は、宿主に、続発性感染、活動性感染またはある特定の疾患状態への部分的または完全な耐性をもたらして、同義に使用される。ワクチン接種された宿主内で生成される中和抗体により、この防御がもたらされ得る。他の状況では、CTL応答によりこの防御がもたらされ得る。状況によっては、中和抗体と細胞性免疫(例えばCTL)応答の両方によりこの防御がもたらされる。
「アジュバント」という用語は、本出願のワクチン組成物と同時に投与された場合、ワクチン組成物への免疫応答を加速、延長、増強および/またはブーストする作用剤を指す。アジュバントは、例えばリンパ球の動員、B細胞および/もしくはT細胞の刺激、樹状細胞の刺激ならびに/またはマクロファージの刺激をはじめとするいくつかの機構によって免疫応答を増強することができる。
「制御配列」または「調節配列」という用語は、プロモーター配列、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流調節ドメイン、複製起点、内部リボソーム侵入部位(「IRES」)、エンハンサーなどを指すDNA配列を指すが、これらはコード配列の複製、転写および翻訳をレシピエント細胞において集合的にもたらす。選択されたコード配列が適当な宿主細胞において複製、転写および翻訳されることが可能である限り、これらの制御配列のすべてが常に存在する必要はない。制御/調節配列には、多くのタイプの宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を方向付けるもの、および、ある特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を方向付けるもの(例えば、組織特異的調節配列)が含まれる。
ある核酸配列が別の核酸配列と機能的関係に置かれている場合、前者の核酸配列は後者の核酸配列に「作動可能に連結されて」いる。一般に、「作動可能に連結されて」とは、連結されているDNA配列またはRNA配列が連続性であること、分泌リーダーの場合は連続性でありかつリーディング相内にあることを意味する。さらに、プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響を与える場合にはコード配列に作動可能に連結されていると言われ、リボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置されている場合には、コード配列に作動可能に連結されている。しかし、エンハンサーは連続性である必要はない。発現ベクターは、イントロンまたはキメライントロンをさらに含むことができる。
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、その最も広い文脈において捉えるべきであり、正確な転写開始のためのTATAボックスまたはイニシエーターエレメントをはじめとする、ゲノム遺伝子由来の転写調節エレメント(TRE)またはそれ由来のキメラTREを含むが、発生刺激および/または外部刺激、ならびにトランス活性化調節タンパク質または核酸に応答して、それへと作動可能に連結された遺伝子の活性化または抑制を調節するさらなるTRE(すなわち、上流活性化配列、転写因子結合部位、エンハンサー、およびサイレンサー)を伴うまたは伴わない場合がある。プロモーターは、構成的に活性である場合もあれば、1種以上の組織タイプまたは細胞タイプにおいて発生段階で調節される様式で活性である場合もある。プロモーターはゲノム断片を含有する場合もあれば、組み合わされた1つまたは複数のTREのキメラを含有する場合もある。
「それを必要とする患者に」、「処置を必要とする患者に」または「処置を必要とする対象」という語句には、微生物に対するワクチン接種のための本開示の核酸およびタンパク質免疫原の投与から恩恵を受けると思われる、哺乳動物対象などの対象が含まれる。
「治療有効量」、「薬理学的有効量」および「生理学的有効量」という用語は、免疫防御の閾値レベルをもたらすのに必要とされるワクチン組成物の量を意味して、同義に使用される。精密な量は、例えば、利用される特定の免疫源、組成物の成分および物理特性、意図される患者集団、患者の検討事項などの数多くの要因に左右されることになるが、本明細書で提供される情報またはそうでなければ関連文献で入手可能な情報に基づいて、当業者であれば容易に決定することができる。
「改善する」、「向上させる」または「減少させる」という用語は、本文脈で使用される場合、本明細書に記載される処置の開始前の同一個体の測定値、または本明細書に記載される処置がない場合でのある対照個体(または複数の対照個体)の測定値などの、ベースライン測定値と比較した数値またはパラメータを指す。
II.免疫応答を誘導するための方法
本出願の一態様は、対象において標的抗原への免疫応答を誘導するための方法に関する。本方法は、細胞外ビリオンタンパク質F13が、F13の伝染性軟属腫ウイルスホモログであるMC021で置き換えられた組換えワクシニアウイルスの有効量を対象に投与するステップを含み、組換えワクシニアウイルスが、標的抗原の免疫原性エピトープをコードする核酸を含む。F13およびMC021の完全なアミノ酸配列を下に列記する:
ワクシニアウイルスF13:
MWPFASVPAGAKCRLVETLPENMDFRSDHLTTFECFNEIITLAKKYIYIASFCCNPLSTTRGALIFDKLKEASEKGIKIIVLLDERGKRNLGELQSHCPDINFITVNIDKKNNVGLLLGCFWVSDDERCYVGNASFTGGSIHTIKTLGVYSDYPPLATDLRRRFDTFKAFNSAKNSWLNLCSAACCLPVSTAYHIKNPIGGVFFTDSPEHLLGYSRDLDTDVVIDKLRSAKTSIDIEHLAIVPTTRVDGNSYYWPDIYNSIIEAAINRGVKIRLLVGNWDKNDVYSMATARSLDALCVQNDLSVKVFTIQNNTKLLIVDDEYVHITSANFDGTHYQNHGFVSFNSIDKQLVSEAKKIFERDWVSSHSKSLKI(配列番号1)
MC021:
MGNLTSARPAGCKIVETLPATLPLALPTGSMLTYDCFDTLISQTQRELCIASYCCNLRSTPEGGHVLLRLLELARADVRVTIIVDEQSRDADATQLAGVPNLRYLKLDVGELPGGKPGSLLSSFWVSDKRRFYLGSASLTGGSISTIKSLGVYSECEPLARDLRRRFRDYERLCARRCVRCLSLSTRFHLRRHCENAFFSDAPESLIGSTRTFDADAVLAHVQAARSTIDMELLSLVPLVRDEDSVQYWPRMHDALVRAALERNVRVRLLVGLWHRSDVFSLAAVKGLHELGVGHADISVRVFAIPGAKGDAVNNTKLLVVDDEYVHVTSADMDGTHYARHAFVSFNCAERAFARALGALFERDWQSSFSSPLPRAPPPEPATLLPVN(配列番号2)
一部の実施形態では、標的抗原はウイルス抗原である。一部の実施形態では、標的抗原は細菌抗原である。一部の実施形態では、標的抗原は腫瘍抗原である。
本出願の別の態様は、対象において標的微生物または標的細胞への防御免疫応答を誘導するための方法である。本方法は、細胞外ビリオンタンパク質F13がMC021で置き換えられた組換えワクシニアウイルスの有効量を対象に投与するステップを含み、組換えワクシニアウイルスは標的由来の免疫原または抗原をコードする核酸を含む。
一部の実施形態では、標的微生物はウイルスである。一部の実施形態では、標的微生物は細菌である。一部の実施形態では、標的微生物は寄生虫である。一部の実施形態では、標的微生物は真菌である。一部の実施形態では、標的細胞は腫瘍細胞である。
免疫応答の標的
標的抗原、標的微生物または標的細胞は、任意の抗原、微生物または細胞とすることができ、この場合、抗原、微生物または細胞に対する免疫応答が望まれるかまたは必要とされる。一部の実施形態では、標的抗原は、標的微生物または標的細胞に由来する。一部の実施形態では、標的抗原は、標的微生物または標的細胞の表面タンパク質内の領域であるポリペプチドを含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、対象において免疫応答または防御免疫応答を誘導するための、当業者であれば既知のエピトープを含む。
一部の実施形態では、本出願の方法は、標的ウイルスに対するワクチン接種のために使用される。標的ウイルスはRNAウイルスである。ワクチン接種に向けた例示的なRNAウイルスとしては、以下が挙げられる:レトロウイルス(例えば、HIV-1、HIV-2、HTLV-I、HTLV-II);ブニヤウイルス(例えば、リフトバレー熱ウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス);フィロウイルス(例えば、エボラウイルス、マールブルグウイルス);フラビウイルス(例えば、C型肝炎ウイルス、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス、ジカウイルス、黄熱病ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、GBウイルスC);エンテロウイルス(A型~L型、コクサッキーウイルス(A型~C型)、エコーウイルス、ライノウイルス(A型~C型)、ポリオウイルスを含めて);オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザA型、B型、C型、D型、A亜型H1N1、H5N1、H3N2を含めて);パラミクソウイルス(例えば、ルブラウイルス(おたふく風邪)、ルベオラウイルス(麻疹)、呼吸器合胞体ウイルス、ニューカッスル病、パラインフルエンザ);パルボウイルス(例えば、パルボウイルスB19ウイルス);ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス);アレナウイルス(例えば、リンパ球性脈絡膜炎ウイルスおよびいくつかのラッサ熱ウイルス、グアナリトウイルス、フニンウイルス、ラッサウイルス、ルホウイルス、マチュポウイルス、サビアウイルス、ホワイトウォーターアロヨウイルスを含めて);アルファウイルス(例えば、ベネズエラ馬脳炎ウイルス、東部馬脳炎ウイルス、西部馬脳炎ウイルス);A型肝炎ウイルス;D型肝炎ウイルス;E型肝炎ウイルス;ならびに、それらの任意の型、亜型、クレードまたはサブクレード。
一部の実施形態では、RNAウイルスは、Orthocoronavirinae科のコロナウイルス(CoV)である。遺伝的に多様なOrthocoronavirinae科は、4つの属(アルファ、ベータ、ガンマ、デルタコロナウイルス)に分けられる。4つの属は、サブグループ1aアルファコロナウイルス、サブグループ1bアルファコロナウイルス、サブグループ2aベータコロナウイルス、サブグループ2bベータコロナウイルス、サブグループ2cベータコロナウイルスおよびサブグループ2dベータコロナウイルスに、さらに分けられる。
ヒトCoVはアルファおよびベータサブグループに限定される。ワクチン接種に向けた例示的ヒトCoVとしては、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、およびHCoV-HKU1が挙げられる。
一部の実施形態では、ワクチン接種に向けたRNAウイルスは、インフルエンザA型ウイルスなどの呼吸器ウイルスである。インフルエンザAウイルスは、ウイルスの表面上の2種のタンパク質、ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)に基づいて亜型に分けられる。既知の18のHA亜型および既知の11のNA亜型がある。HAタンパク質とNAタンパク質のさまざまな多数の組み合わせが可能である。例えば、「H7N2ウイルス」とは、HA7タンパク質およびNA2タンパク質を有するインフルエンザAウイルスの亜型を指す。同様に、「H5N1」ウイルスはHA5タンパク質およびNA1タンパク質を有する。A型インフルエンザウイルスを、本開示の方法および組成物によるワクチン接種に向けて標的化することができ、本開示の方法および組成物を使用して、さまざまな亜型、例えば、H1N1、H3N2、H5N1、H5N2、H5N3、H5N4、H5N5、H5N6、H5N7、H5N8、およびH5N9、H7N1、H7N2、H7N3、H7N4、H7N5、H7N6、H7N7、H7N8、およびH7N9、H9N1、H9N2、H9N3、H9N4、H9N5、H9N6、H9N7、H9N8、H9N9、H17N10、H18N11ならびにそれらの組み合わせを標的とすることができる。
一部の実施形態では、ワクチン接種に向けたウイルスはDNAウイルスである。ワクチン接種に向けた例示的なDNAウイルスとしては、以下が挙げられる:ヘルペスウイルス(例えば、HSV-1、HSV-2、EBV、VZV、HCMV-1、HHV-6、HHV-7、HHV-8)、パピローマウイルス(例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)1、2、4、6、11、16、18、26、30、31、33、34、35、39、40、41、42、43、44、45、51、52、54、55、56、57、58、59、61、62、64、67、68、69、70の各型);ポックスウイルス(例えば、天然痘ウイルス)、ヘパドナビウイルス(B型肝炎ウイルス);アネロウイルス(例えば、輸血感染ウイルスまたはトルクテノウイルス(TTV));ならびに、それらの任意の型、亜型、クレードまたはサブクレード。
一部の実施形態では、本出願の方法は、腫瘍抗原または腫瘍細胞に対する免疫応答を導入するために使用される。本明細書で使用される場合、「腫瘍抗原」、「腫瘍特異的抗原」およびそれの「腫瘍関連抗原」という用語は、前腫瘍性状態、過形成状態、または腫瘍性状態に関連する抗原を参照して使用される。このような抗原は、がんと関連している場合もあり、がんの原因物質である場合もある。「ネオ抗原」という用語は、例えば、腫瘍細胞における突然変異または腫瘍細胞に特異的な翻訳後修飾を介して、ある抗原を対応する野生型の親抗原と明確に区別させている少なくとも1つの改変を有する当該抗原を指す。上記改変は、フレームシフト、非フレームシフトインデル(例えば、小さな挿入もしくは欠失(例えばヌクレオチドの))または置換多型(インデル)、ミスセンスまたはナンセンス置換、スプライス部位の改変、ゲノム再構成または遺伝子融合、スプライスバリアント、異常なリン酸化またはグリコシル化などの対象のDNAにおける突然変異の結果とすることができる。ある特定の実施形態では、ネオ抗原は腫瘍抗原である。
腫瘍抗原には、それらに限定されないが、任意の腫瘍またはがん由来の抗原が含まれ、腫瘍またはがんには、それらに限定されないが、黒色腫、扁平上皮癌、乳がん、頭頸部癌、甲状腺癌、軟部組織肉腫、骨肉腫、精巣がん、前立腺がん、卵巣がん、膀胱がん、皮膚がん、脳がん、脈管肉腫、血管肉腫、肥満細胞腫瘍、白血病、リンパ腫、原発性肝がん、肺がん、膵臓がん、消化器がん(結腸直腸がんを含む)、腎臓細胞癌、造血器腫瘍および転移性がんが含まれる。
組換えワクシニアウイルス
本出願の組換えワクシニアウイルスは、細胞外ビリオンタンパク質F13のコード配列がF13の伝染性軟属腫ウイルスホモログであるMC021のコード配列で置き換えられたワクシニアウイルスである。このような組換えワクシニアウイルスを調製するための方法は、当技術分野で周知である。このような組換えワクシニアウイルスを生成するための例示的な手順を実施例1に記載する。組換えワクシニアウイルスは任意のワクシニアウイルス株から生成することができる。一部の実施形態では、組換えワクシニアウイルスは、ワクシニアCopenhagen、ACAM 2000、ACAM 3000、International Health Department(IHD)ワクシニア株、ワクシニアLister、欠損性ワクシニアLister、ワクシニアWyeth、ワクシニアAnkara、改変ワクシニアAnkara(MVA)、MVA-575(ECACC V00120707)、MVA-BN(ECACC V00083008)およびNew York Board of Healthワクシニア株からなる群に由来する。図1は、組換えワクシニアウイルスゲノムの図的表現である。除去され、伝染性軟属腫ウイルス由来のMC021L遺伝子と置き換えられた、F13Lとしても知られるVACWR052のおおよその位置を示す。
一部の実施形態では、組換えワクシニアウイルスは、標的微生物もしくは標的細胞由来の抗原/免疫原、抗原/免疫原の断片、および/または抗原/免疫原のエピトープをコードするヌクレオチド配列を含む。コード配列は、コードされた抗原/免疫原および/またはその断片/エピトープの発現を制御する調節エレメントに作動可能に連結されている。一部の実施形態では、調節エレメントはポックスウイルスプロモーターである。典型的には、コード配列および調節エレメントは、任意の遺伝子間領域などの目立たない領域に挿入される。代替的に、コード配列によって、ウイルスの複製および形態形成に必須ではない遺伝子を置き換えることもできる。例としては、それらに限定されないが、チミジンキナーゼ、血球凝集素、ワクシニアウイルス増殖因子、リボヌクレオチドレダクターゼサブユニット遺伝子(それぞれ、J2R、A56R、C11R、F4LおよびI4L)が挙げられる。こういったキメラ遺伝子を、次いで、強力なポックスウイルスプロモーターの下に配置させ、目立たない領域のゲノムに挿入することが可能である。
一部の実施形態では、本出願の組換えワクシニアウイルスは、放出されたワクシニアウイルスのエンベロープ上で標的糖タンパク質抗原を発現するように構成され、その結果、組換えワクシニアウイルスの接種後に宿主において標的糖タンパク質抗原に対する免疫応答を誘導する。一部の実施形態では、外来性糖タンパク質(例えば、他のウイルス由来の糖タンパク質)が、外来性糖タンパク質の細胞外ドメインのコード配列をA33およびA34(II型糖タンパク質の場合)またはB5(I型糖タンパク質の場合)のいずれかの膜貫通ドメインおよび細胞質尾部ドメインのコード配列に融合させることによって、組換えワクシニアウイルスのエンベロープに向けられる。こういったキメラ遺伝子を、次いで、強力なポックスウイルス後期プロモーターの下に配置させ、目立たない領域のゲノムに挿入することが可能である。標的糖タンパク質抗原の例としては、それらに限定されないが、インフルエンザ(AおよびB)ヘマグルチニン/ノイラミニダーゼ、コロナウイルススパイクタンパク質、HIV gp120、フラビウイルス(ジカウイルス、黄熱病ウイルス、西ナイルウイルス、デング熱ウイルス)Eタンパク質、ヒトヘルペスウイルス(HHV1、HHV2、HHV3、HHV4、HHV5、HHV6、HHV7およびHHV8)および糖タンパク質gB、gD、gO、gM、gN、gHgLが挙げられる。
投薬量および投与経路
本出願の組換えワクシニアウイルスは、組換えウイルスが投与後に所望の免疫応答を起こすことができる限り、任意の投与経路によって投与することができる。一部の実施形態では、本出願の組換えワクシニアウイルスは、経皮接種(皮膚の乱刺)によって投与される。一部の実施形態では、本出願の組換えワクシニアウイルスは皮下投与によって投与される。一部の実施形態では、本出願の組換えワクシニアウイルスは筋肉内投与によって投与される。
一部の実施形態では、本出願の組換えワクシニアウイルスは、1×104~1×108PFUの範囲の用量で投与される。一部の実施形態では、本出願の組換えワクシニアウイルスは、1×104~1×105PFU、1×104~3×105PFU、1×104~1×106PFU、1×104~3×106PFU、1×104~1×107PFU、1×104~3×107PFU、3×104~1×105PFU、3×104~3×105PFU、3×104~3×106PFU、3×104~3×106PFU、3×104~1×107PFU、3×104~3×107PFU、3×104~1×108PFU、1×105~3×105PFU、1×105~1×106PFU、1×105~3×106PFU、1×105~1×107PFU、1×105~3×107PFU、1×105~1×108PFU、3×105~1×106PFU、3×105~3×106PFU、3×105~1×107PFU、3×105~3×107PFU、3×105~1×108PFU、1×106~3×106PFU、1×106~1×107PFU、1×106~3×107PFU、1×106~1×108PFU、3×106~1×107PFU、3×106~3×107PFU、3×106~1×108PFU、1×107~3×107PFU、1×107~1×108PFUまたは3×107~1×108PFUの範囲の用量で投与される。
一部の実施形態では、本出願の組換えワクシニアウイルスは、5×105~2×106PFUの範囲の用量で経皮、皮下、または筋肉内で投与される。一部の実施形態では、本出願の組換えワクシニアウイルスは、1×106PFUの範囲の用量で経皮、皮下、または筋肉内で投与される。
一部の実施形態では、上記の用量は、1、2、3、4、5、6または7日の間隔で2、3、4または5回投与される。一部の実施形態では、上記の用量は、1、2、3、4、5、6または7週間の間隔で2、3、4または5回投与される。一部の実施形態では、上記の用量は、1、2、3、4、5、6または7か月の間隔で2、3、4または5回投与される。一部の実施形態では、単回用量を複数回の注射に分割する。例えば、1×106PFUの単回用量を、それぞれ5×105PFUの2回の用量に分割し、1、2、3、4、5、6または7日の間隔で投与してもよい。
一部の実施形態では、投薬レジメンは、患者の体格、体重、年齢および性別、疾患の性質および段階、疾患の攻撃性、ならびに組成物の投与経路に基づいて修正される。
III.併用療法
一部の実施形態では、本出願の組換えワクシニアウイルスは、1種以上のさらなる作用剤と組み合わせで投与される。一部の実施形態では、1種以上のさらなる作用剤は、コロナウイルスに対する抗ウイルス剤などの抗ウイルス剤を含む。例示的な抗ウイルス剤としては、それらに限定されないが、以下が挙げられる:ウイルスポリメラーゼ阻害剤、例えばレムデシビル、GS-441524、ファビラビル、EIDD-2801、EIDD-2901、EIDD-1931、リバビリン、6-アザウリジン;回復期血漿;中和mAbまたはコロナウイルスの付着もしくは侵入を阻害するmAb、例えばREGN10933、REGN10987、LY3819253、AZD7442、BRII-196、CT-P59、JS016、SCTA01、STI-1499、TY027、47D11;抗IL6モノクローナル抗体、例えばトシリズマブ;Mproを標的とするプロテアーゼ阻害剤、例えばロピナビル、リトナビル、ジピリダモール、およびダノプレビル;イベルメクチン;サラカチニブ;TMPRSS2を標的とするプロテアーゼ阻害剤、例えばカモスタット、ナフォマスタット、およびメシル酸ナフォマスタット;Sタンパク質標的薬、例えばアルビドール(ウミフェノビル)およびヒドロキシクロロキン;サイトカイン、例えばインターフェロン、デキサメタゾン、アナキンラ、ヒドロコルチゾン、アジスロマイシン、ウリナスタチンおよびシクレソニド;ヤヌスキナーゼ阻害剤、例えばルキソリチニブおよびバリシチニブ;AXLキナーゼ阻害剤、例えばベムセンチニブ;ジヒドロオロチン酸デヒドロゲナーゼ(DHODH)阻害剤、例えばPTC299;組換えACE2;HR2P-EK1C4、IPB03および上で本明細書に記載のその他のリポペプチド融合阻害剤;フルボキサミン;アピロモド;シクレソニド;テトラヒドロキノリンオキソカルバゼート;GC373;ビタミンD;Zn2+;ならびにそれらの組み合わせ。
本出願の組成物と組み合わせで使用するためのさらなる抗ウイルス剤には、それらに限定されないが、以下が含まれる:アバカビル、アシクロビル、アデホビル、アマンタジン、アムドキソビル、アンプレナビル、抗プロテアーゼ、アプリシタビン、アルビドール、アルテミシニン、アタザナフィル、アトリプラ、アジドチミジン(AZT)、アジスロマイシン、ベビリマト、ボセプレビル、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、クロロキン、シドフォビル、コンビビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ジピボキシル、ドコサノール、エドクスジン、エファビレンツ、エルビテグラビル、エルブシタビン、エムトリシタビン、エンフビリチド、エンテカビル、エトラビリン、ファムシクロビル、ホスカーネット、ホスアンプレナビル、ガンシクロビル、グロボイドナンA、GSK-572、HIV融合阻害剤、ヒドロキシクロロキン、ヒペリシン、イバリズマブ、イドクスウリジン、イムノビル、インジナビル、インターフェロン(I、II、III型)、ラミブジン、レルシビリン、ロピニビル、ロビリド、マラビロック、マリバビル、MK-2048、モリキサン(NOV-205)、モロキシジン、ネルフマビル、ネビラピン、ネクサビル、非ヌクレオチドHIV RT阻害剤、オセルタミビル、ペグ化インターフェロン(例えば、ペグインターフェロンアルファ-2a)、ペンシクロビル、ペンサイクロビル、ペラミビル、プレコナリール、ポドフィロトキシン、ラシビル、ラルテグラビル、レムデシビル、レスキモド、リバビリン、リファンピン、リルピビリン、リマンチジン、リトナビル、サキニビル、スタンピジン、スタブジン、タリバビリン、テノホビル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンチジン、ツルバダ、バラシクロビル(バルトレックス)、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビクリビロック、ビダラビン、ビベコン、ザルシタビン、ザナミビル(リレンザ)、ジドブジン、硫酸亜鉛、およびそれらの組み合わせ。
一部の実施形態では、本出願の組換えワクシニアウイルスは、1種以上のさらなる抗がん剤と組み合わせで投与される。抗がん剤は以下のものとすることができる:アルキル化剤;アントラサイクリン系抗生物質;抗代謝物質;解毒剤;インターフェロン;ポリクローナルもしくはモノクローナル抗体;チェックポイント調節因子(例えば、PD-1もしくはPDL-1もしくはCTL-4阻害剤);EGFR阻害剤;HER2阻害剤;ヒストンデアセチラーゼ阻害剤;ホルモンもしくは抗ホルモン剤;有糸分裂阻害剤;ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)阻害剤;Akt阻害剤;哺乳動物標的のラパマイシン(mTOR)阻害剤;プロテアソーム阻害剤;ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤;Ras/MAPK経路阻害剤;中心体のデクラスタリング剤;マルチキナーゼ阻害剤;セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤;チロシンキナーゼ阻害剤;VEGF/VEGFR阻害剤;タキサンもしくはタキサン誘導体、アロマターゼ阻害剤、アントラサイクリン、微小管標的薬、トポイソメラーゼ毒薬、分子標的もしくは酵素(例えば、キナーゼもしくはタンパク質メチルトランスフェラーゼ)の阻害剤、シチジンアナログ、またはそれらの組み合わせ。
IV.医薬組成物
本出願の別の態様は、医薬組成物に関する。医薬組成物は、本出願の組換えワクシニアウイルス(すなわち、細胞外ビリオンタンパク質F13が、F13の伝染性軟属腫ウイルスホモログであるMC021で置き換えられた組換えワクシニアウイルス)および薬学的に許容される担体を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、皮下注射または皮膚接種用に製剤化される。
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、必要に応じて、動物またはヒトに投与される場合、有害反応、アレルギー反応または他の不都合な反応を生じない分子実体または組成物を指す。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語には、医薬投与に適合する、あらゆる溶媒、可溶化剤、充填剤、安定剤、界面活性剤、結合剤、吸収剤、基剤、緩衝剤、賦形剤、滑沢剤、徐放性ビヒクル、希釈剤、乳化剤、湿潤剤、滑沢剤、ゲル、分散媒、コーティング、抗菌剤または抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される担体は血清アルブミンを含む。薬学的に活性な物質のためのそのような担体および作用剤の使用については、当技術分野で周知である。
例示的な担体または賦形剤としては、それらに限定されないが、以下が挙げられる:炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、さまざまな糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、ポリエチレングリコールなどのポリマー、水、生理食塩水、等張水溶液、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、0.3%水性グリシン、グリセロール、エタノールなど、ならびにそれらの組み合わせ。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコールもしくは塩化ナトリウム、またはアルブミン、リポタンパク質およびグロブリンなどの安定性の増強のための糖タンパク質を含めることが好ましいであろう。薬学的に許容される担体は、治療剤の貯蔵寿命または有効性を増強する、湿潤剤または乳化剤、保存剤または緩衝剤などの少量の補助物質をさらに含むことができる。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される担体は血清アルブミンを含む。
改変してもよい製剤特性には、例えば、pHおよび浸透圧が含まれる。例えば、非経口投与した場合に製剤の有効性を促進するために、ヒトの血液または組織のpHおよび浸透圧と類似のpHおよび浸透圧を有する製剤を得ることが望ましいとすることができる。
本開示では緩衝剤は、他の目的の中でも特に医薬製剤の総pHの操作にとって有用である(とりわけ非経口投与にとって望ましい)。当技術分野で既知のさまざまな緩衝剤を、例えば、クエン酸、リン酸、酒石酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、乳酸、酢酸、重炭酸、または炭酸イオンの種々の形態を含めて、有機または無機酸、塩基、またはアミノ酸の種々の塩を、本製剤に使用することができる。本開示において、ここに開示される組成物の非経口投与形態で使用するために特に有利な緩衝剤には、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、コハク酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムを含めて、ナトリウムまたはカリウムの緩衝剤が含まれる。
塩化ナトリウムを、0~300mMの濃度(液体剤形の場合、最適には150mM)で、溶液の張度を改変するために使用することができる。凍結防止剤を、主として0~10%スクロースであるが(最適には0.5~1.0%)、凍結乾燥の剤形向けに含めることができる。適切な他の凍結防止剤にはトレハロースおよびラクトースが含まれる。増量剤を、主として1~10%のマンニトール(最適には2~4%)であるが、凍結乾燥の剤形向けに含めることができる。安定剤を、主として1~50mM L-メチオニン(最適には5~10mM)であるが、液体と凍結乾燥の剤形の両方で使用することができる。グリシン、アルギニンを含む適切な他の増量剤を、0~0.05%のポリソルベート-80(最適には0.005~0.01%)として含めることができる。
一実施形態では、リン酸ナトリウムを20mMに近似する濃度で用いておよそ7.0のpHを得る。特に有効なリン酸ナトリウム緩衝系は、リン酸一ナトリウム一水和物およびリン酸二ナトリウム七水和物を含む。リン酸一ナトリウムとリン酸二ナトリウムのこの組み合わせが使用される場合、それぞれの有利な濃度は、リン酸一ナトリウム約0.5~約1.5mg/ml、リン酸二ナトリウム約2.0~約4.0mg/mlであり、この場合、好ましい濃度はリン酸一ナトリウム約0.9mg/mlおよびリン酸二ナトリウム約3.4mg/mlである。製剤のpHは使用する緩衝剤の量にしたがって変化する。
投与の剤形および意図する経路に応じて、さまざまな濃度の緩衝剤を使用してまたは他の添加物を使用して組成物のpHを調整し、その結果他の範囲を包含することがあるいは有利とすることができる。本開示の組成物にとって有用なpHの範囲にはpH約2.0~pH約12.0が含まれる。
一部の実施形態では、医薬組成物はアジュバントをさらに含む。アジュバントの例としては、それらに限定されないが、以下が挙げられる:油中水型または水中油型エマルジョン(例えば、フロイントのアジュバント(完全および不完全)、MONTANIDE(商標)ISA 51、MONTANIDE(商標)ISA 720VG、MONTANIDE(商標)ISA 50V、MONTANIDE(商標)ISA 206、MONTANIDE(商標)IMS 1312、MF59(登録商標)およびAS03)、アルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムおよび硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバンとも呼ばれる))、リポソーム、ビロソーム、3-O-デサシル-4’-モノホスホリルリピドA(MPL)およびMPLを含有するアジュバント(例えば、AS01、AS02、およびAS04);サポニンベースのアジュバントを含めて、サポニンベースのアジュバント(例えば、iscoms、iscomマトリックス、ISCOMATRIX(商標)アジュバント、MATRIX-M(商標)アジュバント、MATRIX-C(商標)アジュバント、MatrixQ(商標)アジュバント、ABISCO(商標)-100アジュバント、ABISCO(商標)-300アジュバント、ISCOPREP(商標)アジュバントおよびQS-21誘導体およびQS-21誘導体を含めて誘導体);例えば、Quillaja saponaria、Panax ginseng、Panax notoginseng、Panax quinquefolium、Platycodon grandiflorum、Polygala senega、Polygala tenuifolia、Quillaja brasiliensis、Astragalus membranaceusおよびAchyranthes bidentate由来のサポニン誘導体;ポリアミノ酸、アミノ酸のコポリマー、サポニン、パラフィン油、ムラミルジペプチド、リグレシン(Vetrepharm、Athens GA)、アブリジン、リポソーム、油、Corynebacterium parvum、カルメット・ゲラン桿菌、酸化鉄、アルギン酸ナトリウム、非メチル化CpGモチーフ、グルカン、3De-O-アシル化モノホスホリルリピドA(MPL)、MF59(Novartis)、AS03(GlaxoSmithKline)、AS04(GlaxoSmithKline)、ならびにデキストラン硫酸。加えて、トリパルミトイル-S-グリセリルシステイニル-セリル-セリン(P3CSS)などの脂質に1つまたは複数のタンパク質免疫原をコンジュゲートさせることによって、CTL応答をプライムすることができる。ある特定の実施形態では、ワクチン組成物は、QS-21を50μg/用量/対象で含む。
本出願の医薬組成物は、無菌条件下で凍結乾燥粉末として保存し、投与前に無菌の水溶液と組み合わせてもよい。水溶液は、上述の、pH調整剤および緩衝化剤、張度調整剤などの、物理的条件を近似するのに必要とされる、薬学的に許容される補助物質を含有してもよい。代替的に、本出願の医薬組成物は、投与前に懸濁液、好ましくは水性懸濁液として保存してもよい。
本開示の医薬組成物は、その意図された投与経路と適合するように製剤化される。投与経路の例としては、経皮投与および皮下投与が挙げられる。皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含むことができる:滅菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン;プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張度調整用の作用剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基を用いて調整することができる。組成物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または複数回用量バイアルに封入することができる。
投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、本出願の医薬組成物を単位剤形で製剤化することがとりわけ有利である。
本開示を、以下の実施例によりさらに例示するが、以下の実施例は本発明を限定するものと解釈されるべきではない。本出願全体を通して引用されるあらゆる参考文献、特許および公開された特許出願の内容ならびにそれらの図面および表は、参照により本明細書に組み込まれる。
実施例1
材料および方法
細胞
BSC-40細胞はATCCから入手し、10%ウシ胎児血清(FBS)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で維持した。RK13細胞はATCCから入手し、10%FBSを補充したアール最小必須培地(EMEM)で維持した。
ウイルスおよび感染。
vF13L-HAおよびvΔF13Lは、Bernard Moss(国立衛生研究所、Bethesda)によって好意で提供されたものであり、それらの生成については以前に記載されている(R.Blasco、B.Moss、Extracellular vaccinia virus formation and cell-to-cell virus transmission are prevented by deletion of the gene encoding the 37,000-Dalton outer envelope protein.Journal of virology 65、5910~5920頁(1991);M.Husain、B.Moss、Vaccinia virus F13L protein with a conserved phospholipase catalytic motif induces colocalization of the B5R envelope glycoprotein in post-Golgi vesicles.Journal of virology 75、7528~7542頁(2001);M.Husain、A.Weisberg、B.Moss、Topology of epitope-tagged F13L protein, a major membrane component of extracellular vaccinia virions.Virology 308、233~242頁(2003);T.R.Fuerst、E.G.Niles、F.W.Studier、B.Moss、Eukaryotic transient-expression system based on recombinant vaccinia virus that synthesizes bacteriophage T7 RNA polymerase.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 83、8122~8126頁(1986))。vMC021L-HAについては以前に記載されている(S.R.Monticelli、P.Bryk、B.M.Ward、The Molluscum Contagiosum Gene MC021L Partially Compensates for the Loss of Its Vaccinia Virus Homolog F13L.Journal of virology 10.1128/jvi.01496-20、JVI.01496-01420(2020))。vF13L-HA/A4L-mCherryおよびvΔF13L/A4-mCherryについては以前に記載されている(P.Bryk、M.G.Brewer、B.M.Ward、Vaccinia virus phospholipase protein F13 promotes the rapid entry of extracellular virions into cells.Journal of virology 10.1128/jvi.02154-17(2018))。vMC021L-HA/A4L-mCherryは、HeLa細胞にvMC021L-HAを感染させ、これに続いて、赤色蛍光タンパク質、mCherryを発現するプラスミドをトランスフェクトし、A4のN末端に500bpのフランキングホモロジーを用いて融合し、赤色プラークの生産によりスクリーニングすることによって生成した。MC021L/F13L遺伝子座の配列を決定して、その完全性を検証した。vF13L-HA/B5R-GFP/A4L-mCherry、vMC021L-HA/B5R-GFP/A4L-mCherry、およびvΔF13L/B5R-GFP/A4L-mCherryは、それぞれ、HeLa細胞にvF13L-HA/A4L-mCherry、vMC021L-HA/A4L-mCherry、およびvΔF13L/A4L-mCherryを感染させ、これに続いて、pB5R-GFPをトランスフェクトし(B.M.Ward、B.Moss、Visualization of intracellular movement of vaccinia virus virions containing a green fluorescent protein-B5R membrane protein chimera.Journal of virology 75、4802~4813頁(2001);B.M.Ward、B.Moss、Golgi Network Targeting and Plasma Membrane Internalization Signals in Vaccinia Virus B5R Envelope Protein.Journal of virology 74、3771~3780頁(2000))、緑色および赤色のプラークの生産によりスクリーニングすることによって生成した。VACV-GFPは以前に記載されたものである(C.C.Norbury、D.Malide、J.S.Gibbs、J.R.Bennink、J.W.Yewdell、Visualizing priming of virus-specific CD8+ T cells by infected dendritic cells in vivo.Nat Immunol 3、265~271頁(2002))。
マウス。
C57BL/6マウスまたはBalb/cマウスは、Charles River LaboratoriesまたはJackson Laboratoriesから購入した。STAT1+/-マウスのつがいは、Jackson Laboratoriesから購入し、Penn State Hershey College of Medicineの特定病原体不在の動物施設で繁殖させた。皮内(i.d.)VACV感染の場合、7~10週齢のマウスをケタミン/キシラジンで麻酔し、各耳介にVACV 104PFUを<10μLで注射した。足蹠ECTV感染症の場合、マウスに右足蹠にECTV Moscow 3000PFUを注射した。VACVによるSTAT1-/-マウスの致死的曝露、またはECTVによるBalb/cマウスの致死的曝露の間、感染後の28日間、マウスを死亡について1日2回モニタリングした。耳の病原性をモニタリングするために、0.0001インチマイクロメーター(Mitutoyo、Aurora、IL)を使用して耳の厚さを測定した。その後、病変の進行およびその後の組織喪失を毎日測定した。
プラークアッセイおよびウイルス定量化。
プラークアッセイを以前に記載のとおりに実施した(S.R.Monticelli、P.Bryk、B.M.Ward、The Molluscum Contagiosum Gene MC021L Partially Compensates for the Loss of Its Vaccinia Virus Homolog F13L.Journal of virology 10.1128/jvi.01496-20、JVI.01496-01420(2020))。3日後、Image-Pro Plusソフトウェア(Media Cybernetics)により制御される冷却電荷結合素子(Cooke)を備えたLeica DMIRB倒立蛍光顕微鏡を使用してプラークを画像化した。画像について、Photoshop(Adobe)を使用して編集し、最小限の処理を行った。ウイルスゲノムを、以前に記載のとおりにqPCRによって定量化した(J.L.Baker、B.M.Ward、Development and comparison of a quantitative TaqMan-MGB real-time PCR assay to three other methods of quantifying vaccinia virions.Journal of virological methods 196、126~132頁(2014))。
EEVの解析。
CsCl勾配によるEV精製を、以前に記載のとおりに実施した(Monticelli 2020)。ウイルスペレットをタンパク質ゲル試料緩衝剤で希釈し、以前に記載のとおりにウェスタンブロッティングによって解析した(S.R.Monticelli、A.K.Earley、J.Tate、B.M.Ward、The Ectodomain of the Vaccinia Virus Glycoprotein A34 Is Required for Cell Binding by Extracellular Virions and Contains a Large Region Capable of Interaction with Glycoprotein B5.Journal of virology 93、e01343-01318 2019))。以下の抗体を使用した:ウサギ抗HA抗血清(Sigma)、ラット抗B5 MAb(M.Schmelzら、Assembly of vaccinia virus:the second wrapping cisterna is derived from the trans Golgi network.Journal of virology 68、130~147頁(1994))、ウサギ抗A33抗血清(NR-628;BEI Resources)、マウス抗アクチンMAb(Sigma)、およびウサギ抗L1抗血清(NR-631;BEI-Resources)。HRP-およびAlexa Fluor 647コンジュゲートされたロバ抗ラット抗体および抗マウス抗体は、Jackson ImmunoResearch Laboratoriesから購入した。HRPを、製造業者の説明書にしたがって化学発光試薬(Pierce)を使用して検出した。蛍光および化学発光のシグナルを、Kodak Image Station 4000mm Pro(Carestream Health Inc.)を使用して捕獲した。
フローバイロメトリー。
RK13細胞に、37℃でMOI 5で表示のウイルスを感染させた。翌日、細胞培養上清を収集し、913×gで10分間の低速遠心分離によって清澄化した。清澄化上清を、最終濃度70%エタノールへと濾過済み100%エタノールと混合し、室温で一晩インキュベートし、翌日、913×gで10分間の低速遠心分離によって清澄化した。清澄化上清を36%スクロースクッション上にオーバーレイし、100,000×gで40分間遠心分離してEVをペレット化した。図の凡例に記載のように、EVを、一次抗体を含有するTris-EDTA(TE)緩衝剤に再懸濁し、4℃で3時間インキュベートした。次いで、EVを16,000×gで10分間ペレット化し、TE緩衝剤で3回洗浄し、図の凡例に記載のように二次抗体を含有するTE緩衝剤に再懸濁し、4℃でインキュベートした。3時間後、EVをペレット化し、洗浄し、上記のようにTE緩衝剤に再懸濁した。染色EVを、適当なレーザーとフィルターを使用して、LSRII-18カラーBD Biosciencesフローサイトメーターで解析した。ビリオンを、図の凡例に記載のように、mCherry+イベント(A4-mCherry)をゲーティングすることによってデブリから分離し、mCherry+イベントをCy2(HAまたはB5-GFP)、Alexa Fluor 647(A33またはHA)、Dylight 405(B5)、およびAlexa Fluor 750(A33)ポジティブイベントについてゲーティングした。以下の抗体を使用した:ウサギ抗HA抗血清(Sigma)、ラット抗B5 MAb(12)、およびマウス抗A33MAb(NR-49231;BEI Resources)。Alexa Fluor 647コンジュゲートされたロバ抗マウスおよび抗ウサギ抗体、Dylight 405コンジュゲートされたロバ抗ラット抗体、ならびにCy2コンジュゲートされたロバ抗ウサギ抗体は、Jackson ImmunoResearch Laboratoriesから購入した。Alexa Fluor 750コンジュゲートされたヤギ抗マウス抗体は、Invitrogenから購入した。すべてのデータを、FACSDiva 8.0.1(BD Biosciences)およびFCS Express 7(De Novo Software)を使用して解析した。
蛍光活性化ビリオン選別。
RK13細胞に、37℃でMOI 5で表示のウイルスを感染させた。翌日、細胞培養上清を収集し、913×gで10分間の低速遠心分離によって清澄化し、36%スクロースクッション上にオーバーレイし、100,000×gで40分間遠心分離してEVをペレット化した。EVをTE緩衝剤に再懸濁し、適当なレーザーとフィルターを使用して、BD FACSAria IIフローサイトメーターを備えたBSL-2設備で、選別した。ポジティブビリオンを、610/20バンドパスフィルターを通してmCherry+イベント(A4-mCherry)をゲーティングすることによってまず単離し、525/50バンドパスフィルターを通して高、中、および低のGFP蛍光発光に基づいて選別した。選別EVを16,000×gで10分間ペレット化し、qPCR、結合、およびプラークの各アッセイ用にTE緩衝剤に再懸濁した。
細胞結合。
ウイルス結合アッセイを実施し、以前に記載のとおりにqPCRによって定量化した(P.Bryk、M.G.Brewer、B.M.Ward、Vaccinia virus phospholipase protein F13 promotes the rapid entry of extracellular virions into cells.Journal of virology 10.1128/jvi.02154-17(2018);Monticelli 2020、Monticelli 2019、S.R.Monticelli、A.K.Earley、R.Stone、C.C.Norbury、B.M.Ward、Vaccinia Virus Glycoproteins A33,A34,and B5 Form a Complex for Efficient Endoplasmic Reticulum to trans-Golgi Network Transport.Journal of virology 94、e02155-02119(2020);J.L.Baker、B.M.Ward、Development and comparison of a quantitative TaqMan-MGB real-time PCR assay to three other methods of quantifying vaccinia virions.Journal of virological methods 196、126~132頁(2014))。
中和抗体。
中和抗体力価を測定するためのフローサイトメトリーアッセイは、以前に記載されている(P.L.Earl、J.L.Americo、B.Moss、Development and use of a vaccinia virus neutralization assay based on flow cytometric detection of green fluorescent protein.J Virol 77、10684~10688頁(2003))。
細胞内サイトカイン染色アッセイ。
単細胞懸濁液を脾臓から生成し、リンパ球をLymphocyte Separation Medium(Cambrex)上での遠心分離によって単離し、次いで各VACVペプチド1μMで4時間刺激し、その後に、ブレフェルジンA(BFA;Sigma)10μg/mLを添加した。VACV由来のペプチドB8、A8、A3、K3、A47およびA42については以前に記載されている(A.R.Hersperger、N.A.Siciliano、B.C.DeHaven、A.E.Snook、L.C.Eisenlohr、Epithelial immunization induces polyfunctional CD8+ T cells and optimal mousepox protection.J Virol 88、9472~9475頁(2014))。ペプチド刺激の後、細胞を10%マウス正常マウス血清を含有する2.4G2上清中で遮断し、次いでCD8について染色した。細胞を2%パラホルムアルデヒドで固定し、次いで透過処理し、10%正常マウス血清および0.5%サポニンを補充した2.4G2上清中で細胞内IFN-γについて染色した。サイトカイン陽性TCD8+の正味の頻度および数を、非刺激のバックグラウンド応答を差し引くことによって算出した。
実施例2
MC021-HAの発現により、糖タンパク質の量が増加したEVがもたらされる。
vMC021L-HAによって産生されるEVは、そのホモログF13-HAと比較して、より多くのMC021-HAを取り込む。糖タンパク質、A33、A34、およびB5は、EV標的細胞の結合および外膜の溶解において複数の役割を果たしており、そういった糖タンパク質の取り込みの欠失または変更により、感染性が低いEVの生産がもたらされる。F13/MC021のレベルに差異があることを考慮すると、vMC021-HAがEVの糖タンパク質含量を変化させ、その結果、その感染性の低下をもたらすことができた可能性がある。
B5およびA33がEVのエンベロープに取り込まれたかどうか判定するために、vF13L-HA/A4L-mCherry、vMC021L-HA/A4L-mCherry、およびvΔF13L/A4L-mCherry(それぞれ、vF13L-HA、vMC021L-HA、およびvΔF13Lと呼ばれる)を感染させた細胞から放出されたEVを収集し、CsCl勾配超遠心分離によって精製した(図2)。EVを表す、1.24g/mlにてのビリオンの単一ピークが、各ウイルスに存在した。対照的に、IMVは、IMVが分画されると知られるCsCl 1.28g/mlにてOD260によってほとんどまたはまったく検出されなかった。したがって、EVを含む、CsCl 1.24g/mlにての画分および両側の画分を収集し、中に含有されるEVを単離し、ウェスタンブロットによって解析した(図2、パネルB)。ロードしたEVの量を平衡させるために、試料をIMVタンパク質L1の量に対して最初に正規化した。MC021-HAは、F13-HAよりも大幅に取り込まれているように思えた。同様に、vMC021L-HAを感染させた細胞によって産生されたEVも、vF13L-HAおよびvΔF13Lによって産生されたEVと比較して、より多くのB5およびA33を取り込んだ。感染細胞ライセートのウェスタンブロットにより、F13-HA/MC021-HA、A33、およびB5の発現が確認された(図2、パネルB)。
vMC021L-HAは小プラーク表現型を呈するが、増量したF13-HA/MC021-HA、A33、およびB5が、このウイルスによって産生されたEVの外膜に取り込まれた(図2、パネルB)。したがって、フローバイロメトリーアッセイを使用して、個々のEVの糖タンパク質の取り込みについて定量的に調べた(図4)。A33、B5、およびF13またはMC021上のいずれかのHAエピトープタグに特異的な抗体を使用して、固定VACV EVを蛍光標識し、フローサイトメトリーを使用して解析した。注目すべきことに、使用したすべての組換えウイルスが、mCherryに融合されたコアタンパク質A4を発現する。したがって、個々のビリオンが、mCherry蛍光によってデブリおよび細胞外小胞から最初に区別された(図3)。
次に、mCherry+ビリオンを、F13-HA/MC021-HA(HA)、A33、およびB5のレベルについて調べた。図2と一致して、vMC021L-HAによって産生されたEVは、vF13L-HAおよびvΔF13L EVによって産生されたEVと比較して、およそ2倍のB5およびおよそ3倍のA33を取り込んだ(図4、パネルA)。同様に、F13L-HAよりも多くのMC021-HAがEV中に見いだされたが、一方、vΔF13Lによって産生されたEVについてはシグナルがほとんどまたはまったく検出されなかった(図4、パネルA)。驚くべきことに、vF13L-HAおよびvΔF13L EVによって産生されたEVは、等量のB5シグナルおよびA33シグナルを含有したが、このことが示唆するところは、F13の存在/非存在は取り込まれるB5およびA33の量に影響しなかったこと、である。
検出タンパク質とこれらの取り込みの増加との間の関係をよりよく理解するために、それらのA33シグナル(y軸)に対するそれらのHAシグナル(x軸)、すなわちF13またはMC021について(図4、パネルB、上段)、B5に対するHAについて(図4、パネルB、中段)、およびB5に対するA33について(図4、パネルB、下段)、EVをプロットした。相関値(R2)を算出して、タンパク質の取り込みに直線関係があるか判定した。全体として、B5:HA、B5:A33、およびA33:HAの相関値は、vF13L-HAとvMC021L-HAの両方について高く、このことが指示するところは、取り込まれるタンパク質の1つの各増加に対して、他の2つのタンパク質についても同等の増加があったこと、である。こういった直線関係が指示するところは、これらのタンパク質の化学量論量がエンベロープメントの過程で取り込まれること、である。対照的に、vΔF13Lについては、B5またはA33とのいずれかとのHAシグナルの対比較のR2値が低かった(図4、パネルB;右列、上段および中段)。興味深いことに、vΔF13Lによって産生されたビリオンのB5:A33に最高の相関関係が見られた。vF13L-HAとvMC021L-HAの間で相関値がかなり類似していたことを考慮すると、その場合、MC021-HAは、全体的にタンパク質の取り込みを増加させるが、糖タンパク質の取り込みの化学量論的関係は変化させない。
vMC021L-HA EVのタンパク質の取り込みの増加は、単一のビリオンではなく複数のビリオンの同時解析(コインシデンス解析)がもたらされることになる、ビリオン凝集の結果である。コアタンパク質の量は変化してはならない;したがって、mCherryシグナルをHA、B5、およびA33に対してプロットして、タンパク質の取り込みに関して検出された増加がビリオン凝集の結果であるかどうかを確認した。各ウイルスについて、mCherryシグナルは、B5、A33、またはHAと相関関係がほとんどまたはまったくなく(表1)、このことが指示するところは、これらのタンパク質のレベルは、存在するコアタンパク質の量と無関係であったこと、である。したがって、ビリオン凝集は、ウイルス同士の間のHA、B5、またはA33の各取り込みにおける大きな差異の原因ではなく、vMC021L-HAによって産生されるEVのタンパク質の取り込みの増加はMC021-HAの発現によるものとすることができる。
本出願が開示するところは、F13が細胞内エンベロープメント過程でEVのエンベロープへと取り込まれる糖タンパク質の量を制御すること、である;F13は糖タンパク質の取り込みを制限するが、一方、MOCVホモログはより多くの取り込みを促進する。同時に、MC021の量の増加がエンベロープ内で見いだされる(図2、パネルBおよび図4、パネルA)。各ビリオンで見いだされるA33、B5、およびF13/MC021の量の間の強い相関関係が指示するところは、それらの取り込み間の化学量論的関係であり、このことによって、少なくともこれら3つのタンパク質が複合体として取り込まれることが指示される。F13L-HAもMC021L-HAも両方とも同一のF13Lプロモーターから発現されたのであるが、F13-HAと比較してより多量のMC021-HAが感染細胞からのライセート中に検出された(図2、パネルB)。MC021のレベルの上昇は、EVタンパク質とIMV表面上のタンパク質の間の相互作用を促進することによるエンベロープ取り込みの増加の原因でもある可能性がある。すべてではないにしても、極めて重要な4種のEVタンパク質(A33、A34、B5、およびF13)のうちの少なくとも1つが、マトリックス様タンパク質として機能して、IMVのエンベロープメントを促進し、その結果EVを形成することは、大いにあり得る。したがって、マトリックス様複合体の形成の増加は、EVタンパク質とIMVタンパク質間の相互作用の上昇をもたらし、したがって、このことは、放出されたビリオンへの取り込みの増加の原因であると思われる。
実施例3
B5-GFPは、EV産生について機能的にB5に取って代わることができる。
A33、A34、および/またはB5の取り込みの低下は、EVの感染性の低下および小プラーク表現型と相関する。しかし、糖タンパク質の取り込みの増加がEVの感染性の欠失と相関したのはこれが初めてである。これらの結果が示唆するところは、最適EV感染性に必要とされる最適糖タンパク質濃度が存在すること、である。
この仮説を検証するために、3つの組換えウイルスのB5R遺伝子をB5R-GFP(ここでは、vF13L-HA/B5R-GFP、vMC021L-HA/B5R-GFP、およびvΔF13L/B5R-GFPと呼ぶ)で置き換えて、抗体を使用せずに、放出されたEV中の糖タンパク質B5のレベルをモニタリングした。B5にGFPを付加すると、感染過程でB5に機能的に取って代わることができ、B5-GFPは生細胞におけるIEVの放出を研究するための有用なツールであると判明した。B5-GFPが、vMC021L-HA感染の状況においてB5に機能的に取って代わることができたことを検証するために、A4L-mCherry親ウイルスのプラーク表現型を、B5の代わりにB5-GFPを発現する新規な組換え体と比較した(図6、パネルA)。これらのウイルスのプラーク表現型の比較によって、vF13L-HAとvF13L-HA/B5R-GFP、VMC021L-HAとvMC021L-HA/B5R-GFP、およびvΔF13LとvΔF13L/B5R-GFPの間に差異はないことが明らかになったが、このことが示唆するところは、B5-GFPは感染過程でB5に機能的に取って代わることができること、である。
意外にも、フローバイロメトリー解析により、解析した組換えウイルス3つすべてについてビリオン当たりの幅広いタンパク質の取り込みが明らかになったが、このことにより、エンベロープ組成の確率過程が示唆された(図4および6)。さらに、糖タンパク質含量の増加により、細胞結合の低下およびvMC021L-HAの感染性の全体的な減少がもたらされる。細胞受容体と相互作用するビリオン糖タンパク質などの多価系では、粒子表面のリガンド(糖タンパク質)の数の増加によって結合親和性の上昇がもたらされるはずであると一般に認められている。ビリオン表面上の糖タンパク質密度の全体的な上昇が細胞結合にとって等しく有害であったこと、を発見することは予期せぬことである。
実施例4
B5へのGFPの付加によって、HA、A33、およびB5の取り込みプロファイルは影響を受けない。
MC021-HAの発現は、B5と比べてB5-GFPの取り込みに影響を与える可能性がある。A4L-mCherry/B5R-GFP組換え体の取り込みプロファイルがA4L-mCherry親ウイルスの取り込みプロファイル(図4)と似ていたか判定するために、新規の組換えウイルスによって産生されたEVをフローバイロメトリーによって解析した。データの解析が示すところは、A4-mCherry親ウイルスに類似の取り込みプロファイルがB5-GFPウイルスについて観察されたこと(図6、パネルB)、この場合、vMC021L-HA/B5R-GFP EVはvF13L-HA/B5R-GFPと比較して、およそ2~3倍多いHA、A33、およびB5を取り込んでいたこと、である。さらに、B5シグナル(x軸)をA33シグナル(y軸)に対して、HAをB5に対して、A33をHAに対してプロットした相関プロットを作成した(表2)。相関値(R2)を算出し、親ウイルスによる結果(図4、パネルB)と同様であることがわかった。まとめると、これらの結果が指示するところは、B5-GFPウイルスは機能性と糖タンパク質の取り込みパターンの両方において親ウイルスに似ていたこと、である。GFP蛍光がこれらの固定試料では検出されなかったが、使用したエタノール固定プロトコルによるGFPの変性に起因する可能性が高い。
実施例5
中間レベルのB5-GPを含有するEVは、B5-GFP量がそれよりも高いか低いEVと比較して、より高い比感染性を有する。
B5-GFPウイルスが親A4-mCherryウイルスのプラーク表現型および取り込みプロファイルを再現することを検証した後(図6)、蛍光活性化ビリオン選別(FAVS)実験を非固定EVを使用して行った。上記のように、EVを、mCherry+イベントに対してゲーティングすることによって特定し、次いで、高、中または低のGFP蛍光強度(それぞれ、B5GFPHIGH、B5GFPMEDおよびB5GFPLOWと呼ばれる;図5)に基づいて選別した。図4パネルBのデータに基づいて、それらのB5-GFP含量にしたがって選別したが、A33およびF13/MC021のレベルは、B5-GFPのレベルと相関するはずである。EV選別の後、これら3つの群の感染特性について調査した(図7)。
vMC021L-HA/B5R-GFP EVが、vF13L-HA/B5R-GFPとvΔF13L/B5R-GFP EVの両方と比較してより多くのB5を取り込んでいることを考慮すると、vMC021L-HA/B5R-GFP EVの総量のうちのより大きなパーセンテージがB5GFPHIGH内に入るであろうと予想された。このことを試験するために、B5GFPHIGH、B5GFPMED、およびB5GFPL0Wを含むウイルスゲノムコピーの総数のパーセンテージをqPCRによって定量化した(図6、パネルA)。vF13L-HA/B5R-GFPとvΔF13L/B5R-GFPの両方の場合、EVのおよそ50%がB5GFPHIGHまたはB5GFPMEDのいずれかであり、その他の50%はB5GFPL0Wであった。しかし、予想通り、vMC021L-HA/B5R-GFPの場合、B5GFPL0WであったEVの割合はB5GFPHIGHおよびB5GFPMEDにシフトしたが、一方、EVのおよそ70%がB5GFPHIGHまたはB5GFPMEDのいずれかであり、わずか30%がB5GFPLOWであった。
次に、B5GFPHIGH、B5GFPMED、およびB5GFPL0W由来のEVを、高感度qPCRベースの結合アッセイを使用して細胞結合について試験した(図7、パネルB)。vF13L-HA/B5R-GFPの場合、B5GFPMED EVは最高の結合効率およそ76%を呈したが、B5GFPHIGHおよびB5GFPL0W EVは、およそ45~50%の、B5RGFPMEDと比較して結合効率の有意な減少を示した。同様のパターンが、vΔF13L/B5R-GFP EVとvMC021L-HA/B5R-GFP EVの両方に対して観察されたが、後者の場合、B5GFPLOW EVはB5RGFPMEDと比較して結合効率のおよそ25%の有意な減少を呈した。これらの結果が示唆するところは、組換えウイルスにかかわらず、中間量のB5を含有するEVは、より多量またはより少量の糖タンパク質を有するEVよりも細胞への結合時に良好であったこと、である。
ゲノムコピーの総数をプラーク形成単位(PFU)と比較することによって、vF13L-HA/B5R-GFPおよびvMC021L-HA/B5R-GFPにより産生されるB5GFPHIGH、B5GFPMED、およびB5GFPLOWの各EVについて比感染性を算出した、(図7、パネルC)。vF13L-HA/B5R-GFPの場合、B5GFPMED EVについては2.53ゲノムコピーごとに1個でプラークがもたらされたが、この数は、それぞれ、B5GFPLOWおよびB5GFPHIGH EVについては13.89個ごとに1個および15.30個ごとに1個へと、ほぼ5倍に上昇した。同様に、vMC021L-HA/B5R-GFPの場合、2.71ゲノムコピーごとに1個でプラークがもたらされたB5GFPMED EVと比較して、B5GFPLOWおよびB5GFPHIGH EVでは比感染性およそ6倍の上昇を呈したが、それぞれ、16.16ゲノムコピーごとに1個でおよび16.20ゲノムコピーごとに1個でプラークがもたらされた。重要なことに、比感染性データは結合データと相関していた。まとめると、本データが示すところは、EVの糖タンパク質の取り込みと感染性の間には直接的な関係があること、およびさらに、使用した組換えウイルスにかかわらず、高度に感染性のEVを産生するには最適のまたは「ちょうど良い」量の糖タンパク質を取り込む必要があること、である。
実施例6
vMC021L-HAは、in vivoで弱毒化されるが、免疫原性を保持する。
vMC021L-HAは、vF13L-HAと同量のEVを産生したが、小プラーク表現型を示した(図6、パネルA)。さらに、vMC021L-HA EVは、糖タンパク質A33およびB5の量が増加したが、両方とも中和抗体の標的であることが示されてきた。これらの結果を考慮して、vMC021L-HAはin vivoで弱毒化されると思われるが、それでもなお抗原の放出により防御免疫応答を生成することができる可能性があると仮説を立てた。
この仮説を試験するために、天然痘ウイルス撲滅プログラムにおける感染の自然経路とワクシニアによる免疫経路の両方を模倣する経路で、野生型マウスを皮内感染させた。皮内感染の14日後、VACV WR(Western Reserve)を感染させたマウスで組織病状を容易に特定することができたが(図8、パネルA)、vΔF13L(図8、パネルB)またはvMC021L-HA(図8、パネルC)のいずれかでの感染後は、病状は容易には観察できなかった。
このことを定量化するために、皮膚VACV感染に通常伴う特徴的な腫脹(図8、パネルD)、病変発達(図8、パネルE)、および組織喪失(図8、パネルF)の測定を行った。vΔF13LまたはvMC021L-HAのいずれかの感染は局所組織のいくらかの腫脹を起こしたが、これはVACV WRによる感染と比較してはるかに減少しており、vΔF13LまたはvMC021L-HAのいずれかの感染後の病変の発達またはその後の組織喪失はまったく観察されなかった。STAT1-/-マウスはオルソポックスウイルス感染に対して特に感受性があり、この感受性は限られた用量のウイルスによる皮膚感染にまで及ぶことがわかった(図8、パネルG)。vF13L-HAによる感染の後、すべてのSTAT1-/-マウスが感染後8日までに死亡した。しかし、vMC021L-HAまたはvΔF13L-HAのいずれかを感染させたマウスはすべて、感染後28日目の実験終了まで生存した。したがって、vMC021L-HAおよびvΔF13L-HAはin vivoで減弱されるが、vMC021L-HAによって呈されるEV糖タンパク質の増加がこの減弱の一因を担う。
EV感染性の低下がin vivoで免疫原性の同等の減少を引き起こしたかどうかを評価するために、野生型マウスにVACV WR、vF13L-HA、vΔF13LまたはvMC021L-HAを皮内感染させ、感染38日後に血清を採取した。感染動物の各コホートからの血清の希釈度がin vitroでVACV-GFPを遮断する能力について調べた。VACV WRまたはvF13L-HAのいずれかでの免疫により、およそ1:250の希釈度で感染の50%を遮断する血清抗体が産生されたが、一方、vΔF13Lでの免疫により、およそ1:30の希釈度で感染の50%を遮断する血清抗体が産生されるにすぎなかった(図8、パネルH)。しかし、vMC021L-HAにおけるEV糖タンパク質のレベル上昇と一致して、このウイルスでの免疫により、およそ1:200の希釈度で、VACV WRで免疫されたものよりわずかすぐ下のレベルで感染の50%を遮断する血清抗体が産生されたことがわかった(図8、パネルH)。H2bバックグラウンドでのマウスにおけるB8、A8、A3、K3、A47およびA42エピトープを含めて、複数のエピトープを標的とする強力なTCD8+応答も、感染8日後にVACV WRによって誘導される(図8、パネルI)。同様のT細胞応答が、vF13L-HAでの免疫後に観察されるが、vΔF13Lでの免疫は、調べたすべての決定基へかなり減少した応答を誘導し、A47エピトープおよびA42エピトープに対してバックグラウンドを超えるが検出限界であった(図8、パネルI)。
対照的に、vMC021L-HAの免疫原性はEV糖タンパク質に対してのみ増強されると考えられたが、すべての決定基に対するT細胞応答であって、vΔF13Lでの免疫を受けて誘導される応答を著しく上回り、多くの場合、VACV WRまたはvF13L-HAによる免疫後に観察された応答に接近する、T細胞応答が観察された。したがって、vMC021L-HAの免疫原性は、in vitroでの拡散とin vivoでの病状の誘導における双方の顕著な減少にもかかわらず、インタクトであるように思える。防御免疫の相関関係の機能性を評価するために、感受性Balb/cマウスをVACV WR、vΔF13L、またはvMC021L-HAで免疫し、35日後に毒性の強いマウスポックスウイルスエクトロメリア(ECTV)に曝露した。免疫を受けなかったマウスはすべてECTV感染の8日以内に死亡したが、一方、vΔF13で免疫したマウスの40%が、毒性感染を食い止めるための適応免疫系の失敗を指示すると思われる時点である、感染後10日目と20日目の間に死亡した。しかし、VACV WRまたはvMC021L-HAのいずれかで免疫したマウスはすべて上記曝露を生き延びたが、このことにより、vMC021L-HAによる機能的防御免疫の誘導が指示される。
本出願が実証するところは、F13が外側のEV膜に取り込まれるEV糖タンパク質の相対量を制限すること、および、感染性に必要とされる糖タンパク質に関し最適濃度が存在すること、である。外膜のEV糖タンパク質の濃度を変化させることによる予期せぬ副効果とは、免疫原性ビリオンが感染細胞から通常の量で産生されること、および、こういったビリオンによって中和抗体応答の標的であるEVタンパク質のレベルの増大が発揮され得ること、である。その結果が、免疫時に識別可能な病状をまったく引き起こさないが、野生型VACVでの感染時に誘導されるレベルに接近するレベルで中和抗体を産生する、組換えVACVである。予想外なことに、このベクターはまた、効率的に拡散するVACVのホールマークである強力なTCD8+応答も誘発した。しかし、不活化VACVビリオンでの免疫は効果的なTCD8+応答を誘導することができ、したがって、感染した細胞による免疫の部位にてのEVの産生が、複製するのにまたはこの免疫原性をさらには上回るのに十分なウイルス粒子を産生する可能性がある。
したがって、EV糖タンパク質含量を注意深く操作することで、従来のVACVベクターの副作用を発揮しないが、非複製ベクターと比べて免疫原性の顕著な増強を発揮する、効果的な免疫原性ウイルスベクターを生産することができる。
上にさまざまな実施形態について記載してきたが、そのような開示は、例としてのみ提示されており、限定するものではないことを理解されたい。よって、本組成物および方法の広さおよび範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物にしたがってのみ定義されるべきである。
上記説明は本発明を実施する方法を当業者に教示するためのものであり、上記説明を読み解くことで当業者であれば明らかとなるであろう上記説明の自明である改変および変形のすべてを詳述することを意図するものではない。しかし、そのようなすべての自明である改変および変形は、下記の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれることが意図されている。特許請求の範囲は、文脈が特に反対のことを示していない限り、そこで意図された目的を満たすのに効果的である任意の順序で、成分および工程をカバーすることを意図するものである。

Claims (20)

  1. 対象において抗原への免疫応答を誘導するための方法であって、
    細胞外ビリオンタンパク質F13が、F13の伝染性軟属腫ウイルスホモログであるMC021で置き換えられた組換えワクシニアウイルスの有効量を対象に投与するステップを含み、
    組換えワクシニアウイルスが、抗原の免疫原性エピトープをコードする核酸を含む、
    方法。
  2. 前記抗原がウイルス抗原である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ウイルス抗原がSARS-Cov-2由来の抗原である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記抗原が細菌抗原である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記抗原が腫瘍抗原である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記組換えワクシニアウイルスが経皮、皮下、または筋肉内で投与される、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
  7. 対象において標的への防御免疫応答を誘導するための方法であって、
    細胞外ビリオンタンパク質F13が、F13の伝染性軟属腫ウイルスホモログであるMC021で置き換えられた組換えワクシニアウイルスの有効量を対象に投与するステップを含み、
    前記組換えワクシニアウイルスが、標的由来の免疫原をコードする核酸を含む、
    方法。
  8. 前記標的が微生物である、請求項7に記載の方法。
  9. 前記微生物がウイルスである、請求項8に記載の方法。
  10. 前記ウイルスがSARS-Cov-2である、請求項9に記載の方法。
  11. 前記微生物が細菌である、請求項8に記載の方法。
  12. 前記標的が腫瘍細胞である、請求項7に記載の方法。
  13. 前記組換えワクシニアウイルスが経皮、皮下、または筋肉内で投与される、請求項7から12のいずれかに記載の方法。
  14. 前記組換えワクシニアウイルスがアジュバントとともに投与される、請求項7から13のいずれかに記載の方法。
  15. (a)細胞外ビリオンタンパク質F13が、F13の伝染性軟属腫ウイルスホモログであるMC021で置き換えられた組換えワクシニアウイルス;および
    (b)薬学的に許容される担体
    を含む医薬組成物であって、
    経皮接種、皮下注射または筋肉内注射用に製剤化される、
    医薬組成物。
  16. 前記組換えワクシニアウイルスが、抗原の免疫原性エピトープをコードする核酸を含み、標的細胞の感染時に抗原のエピトープを発現することができる、請求項15に記載の医薬組成物。
  17. 前記抗原がウイルス抗原である、請求項16に記載の医薬組成物。
  18. 前記ウイルス抗原がSARS-CoV-2由来の抗原である、請求項17に記載の医薬組成物。
  19. 前記組換えワクシニアウイルスがエンベロープウイルスであり、ウイルスエンベロープが、MC021に加えて、さらなる外来性糖タンパク質またはその一部を含み、前記さらなる外来性糖タンパク質が、異なるウイルス由来のウイルスタンパク質である、請求項15から18のいずれかに記載の医薬組成物。
  20. 前記異なるウイルスがSARS-CoV-2である、請求項19に記載の医薬組成物。
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