JP2024520669A - 選択的ペニシラミン置換による、非オピオイド系作用機序を有する強力な鎮痛性ペプチドの開発 - Google Patents

選択的ペニシラミン置換による、非オピオイド系作用機序を有する強力な鎮痛性ペプチドの開発 Download PDF

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ジョセフ マイケル マッキントッシュ,
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Abstract

RgIA4 ペプチド類似体に関連する組成物と使用方法を提供する。RgIA4 ペプチド類似体は、α9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体に結合可能に構成された認識指紋領域を含み得る。このRgIA4 ペプチド類似体は、少なくとも2種類のジスルフィド架橋、即ち、第1のシステインと第2の システインとの間のシステイン間ジスルフィド架橋 、及び第1のペニシラミンと第3のシステインとの間のペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋を含み得る。 上記RgIA4 ペプチド類似体は、上記 9α10ニコチン性アセチルコリン受容体に対して、RgIA4ペプチドが持つ結合親和性の少なくとも50%の結合親和性を持ち得る。α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体に対するRgIA4ペプチドの効力を、RgIA4ペプチド類似体内で維持する方法は、本開示の組成物を用い得る。α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体結合に起因する状態を治療する方法は、治療学的有効量の上記組成物を被験者に投与することを含み得る。

Description

関連出願
本出願は、2021年6月3日出願の米国仮特許出願第63/196,655号、及び2021年7月7日出願の米国仮特許出願第63/197,931に対する優先権を主張し、これらの内容はその全体が引用形式にて本明細書に組み込まれる。
連邦政府の関心
本発明は、米国国立衛生研究所によってグラント番号P01 GM048677及びR01 GM103801による連邦政府の支援を受けており、連邦政府が一定の権利を有する。
本開示は、ペプチド、それらの類似体、及びそれらの治療的使用に関する。したがって、本開示は概して生物学、細胞生理学、化学、薬学、医薬品、その他の健康科学の各分野に関する。
有毒捕食動物が産生する化合物は多様な構造、活性、薬理作用を持つことが知られている。これらの化合物は、獲物を無力化したり捕食者から身を守る上でごく少量あれば十分である。毒物成分の実質的な画分は低分子のタンパクやペプチドであり、このうち後者は固相合成が可能で、創薬の可能性を秘めるものである。例えば、高血圧治療用のアンジオテンシン変換酵素阻害剤(例:カプトプリル)、心臓発作治療用の抗血小板薬(例:エプチフィバチド)、及び2型糖尿病治療用のグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)作動薬(例:エキセナチド)が挙げられる。
イモガイは、多毛類、軟体動物及び魚を捕食する、捕食性の海洋カタツムリである。イモガイには830種類以上の種類が知られており、その各々が、様々な受容体及びイオン・チャネルを標的とした異なる数百種類のペプチドの独自の混合物を産生する。イモガイ・ペプチドのサブセットであるα-コノトキシン類(α-Ctx)は、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)の阻害剤である。これら nAChRは、神経、免疫細胞、及び骨格筋等の組織内に見られる多様な受容体サブタイプを有する五量体のリガンド依存性イオン・チャネルである。
世界上で5300万人以上の人々がオピオイドを使用している。オピオイドの過剰摂取による死者が1日450人以上に上ることから、重症ないし慢性の痛みの治療用に非オピオイド薬を見いだすことが望まれている。現状で臨床利用可能な医薬品は、痛みは治療するが、その基礎疾患状態を改善するものではない。
一態様において、合成鎮痛性ペプチドはアミノ酸配列G C X1 T D P R C X2 (R-3-Y) Q C X3 X4(配列番号3)を含み得る。 一側面において、X1 はL-ペニシラミン(L-Pen)、D-ペニシラミン(D-Pen)、及びL-システインからなる群より選択され得る。他の側面において、X2はL-アルギニン、D-アルギニン、又はシトルリンからなる群より選択され得る。他の側面において、X3は何らかのアミノ酸であり得る。他の側面において、X4は何らかのアミノ酸であり得る。更に他の側面において、R-3-Yは3-Rチロシンであり得る。一側面において、3-Rチロシンは 3-クロロチロシン、3-フルオロチロシン、3-ヨードチロシン、3-ブロモチロシン、及びチロシンからなる群より選択されるペプチド残基であり得る。
別の態様において、RgIA4 ペプチド類似体はα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体へ結合可能に構成された認識指紋領域を備え得る。一態様において、RgIA4 ペプチド類似体は少なくとも2種類のジスルフィド架橋、即ち、第1のシステインと 第2のシステインとの間のシステイン間ジスルフィド架橋と、第1のペニシラミンと第3のシステインとの間のペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋と、を有し得る。別の態様において、RgIA4 ペプチド類似体は、α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体に対して、RgIA4ペプチドが持つ結合親和性の少なくとも50%の結合親和性を持ち得る。
更に他の態様において、α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体に対するRgIA4ペプチドの効力を、RgIA4ペプチド類似体内で維持する方法は、第1のシステインと第2のシステインとの間のシステイン間ジスルフィド架橋、及び第1のペニシラミンと第3のシステインとの間のペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋を設ける工程を備え得る。別の側面において、上記方法は、第3のシステインにβ-ホモチロシンを結合させる工程を備え得る。別の側面において、上記方法は、L-シトルリン、D-シトルリン、L-アルギニン、D-アルギニン、L-リジン、D-リジン、L-オルニチン、及びD-オルニチンからなる群より選択されるC末端残基を設ける工程を備え得る。
更なる態様において、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)α9α10サブタイプに起因する被験者の状態又は症状を治療又は予防する方法は、本開示の組成物を治療学的有効量にて該被験者に投与することを含み得る。
以上、後述する発明の詳細な説明の理解を助け、本開示の技術分野における貢献度が正しく評価されるよう、本開示のより重要な特徴をかなり広く大まかに説明してきた。本開示のその他の特徴は、下記の発明の詳細な説明と添付図面及び特許請求の範囲、ならびに本開示の実践を通じて、より明確となろう。
本開示の特徴及び利点は、以下に述べる発明の詳細な説明を、本開示の特徴を例示的に説明する添付図面と併せて検討することで明らかとなろう。
図1は、一例として25%ヒト血清中のRgIA4 及びRgIA-5474の安定性を示す。上段パネル:RgIA4 及びRgIA-5474について、各々の球形及びリボン形の標準ペプチドの混合物(約1:1)のHPLCチャートを示す。下段パネル:24時間後の血清中安定性(n=6)。反応は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)、C18カラム使用、濃度勾配は40分間に亘り緩衝液Bを10%~50%の範囲内で変化、流速1mL/分の条件でモニタ。 図2は、一例として、マウスのオキサリプラチン誘発性末梢神経障害におけるRgIA-5474の効果を示す。マウスには、以下の方法で毎日、オキサリプラチン(ox;3.5 mg/kg)を腹腔内注射した。対照群にはビヒクルを注射した。RgIA-5474を滅菌生理食塩水(sal)に溶解し、毎日皮下注射した。逃避反射潜時を冷感異痛の指標とした。冷感異痛試験は、8日目、15日目、及び22日目において、4μg/kg(パネルA)及び40μg/kg(パネルB)のRgIA-5474 の投与から24時間後に行った。値は、各実験群のマウス8匹から得られた値の平均 ± 標準誤差の形で表した。***P < 0.001、**P < 0.01、*P < 0.05 を、ビヒクルに対する有意差と認める。 図3は、一例として、ヒトα9α10 nAChR に対するRgIAの進化を示す。 図4Aは、一例として線形RgIA-5474 のHPLCチャートを示す。HPLCチャートは、RP-HPLC、C18カラム使用、濃度勾配は40分間に亘り緩衝液Bを10%~50%の範囲内で直線変化、の条件で測定した。 図4B は、一例として単環形RgIA-5474 のHPLCチャートを示す。HPLCチャートは、RP-HPLC、C18カラム使用、濃度勾配は40分間に亘り緩衝液Bを10%~50%の範囲内で直線変化、の条件で測定。 図4Cは、一例として完全折畳み形のRgIA-5474 のHPLCチャートを示す。HPLCチャートは、RP-HPLC、C18カラム使用、濃度勾配は40分間に亘り緩衝液Bを10%~50%の範囲内で直線変化、の条件で測定。 図5Aは、一例として、完全折畳み形ペプチド類似体のHPLCチャートを示す。HPLCチャートは、室温、RP-HPLC、分析用C18Vydacカラム(218TP54、250×4.6mm、粒径5μm)使用、濃度勾配は40分間に亘り緩衝液Bを10%~50%の範囲内で変化、流速1mL/分、使用緩衝液は0.1%(体積比)TFA水溶液(緩衝液A)、及び0.092%TFA(体積比)を含む60%アセトニトリル水溶液(体積比)(緩衝液B)の条件で測定。RgIA-5493のHPLCチャートは、45℃、濃度勾配は40分間に亘り緩衝液B(90%アセトニトリルを含む0.1%TFA水溶液)を10%~50%の範囲内で変化、流速1mL/分、の条件で測定。 図5Bは、一例として、完全折畳み形ペプチド類似体のHPLCチャートを示す。HPLCチャートは、RP-HPLC、分析用C18 Vydacカラム(218TP54、250×4.6mm、粒径5μm)使用、濃度勾配は40分間に亘り緩衝液Bを10%~50%の範囲内で変化、流速1mL/分、使用緩衝液:0.1%(体積比)TFA水溶液(緩衝液A)、及び0.092%TFA(体積比)を含む60%アセトニトリル水溶液(体積比)(緩衝液B)の条件で測定。 図6A は、一例として、ヒトα9α10 nAChR阻害の濃度反応曲線を示す。 ヒトα9α10 nAChRをアフリカツメガエル(X. laevis)の 卵母細胞内に異種発現させ、ペプチドの阻害能を後述する二電極電圧クランプ法による電気生理学的手法で測定した。各データは、3~5個の卵母細胞から得られた値の平均 ± 標準誤差の形で表した。 図6B は、一例として、ヒトα9α10 nAChR阻害の濃度反応曲線を示す。 ヒトα9α10 nAChRをアフリカツメガエル(X. laevis)の 卵母細胞内に異種発現させ、ペプチドの阻害能を後述する二電極電圧クランプ法による電気生理学的手法で測定した。各データは、3~5個の卵母細胞から得られた値の平均 ± 標準誤差の形で表した。 図6C は、一例として、ヒトα9α10 nAChR阻害の濃度反応曲線を示す。 ヒトα9α10 nAChRをアフリカツメガエル(X. laevis)の 卵母細胞内に異種発現させ、ペプチドの阻害能を後述する二電極電圧クランプ法による電気生理学的手法で測定した。各データは、3~5個の卵母細胞から得られた値の平均 ± 標準誤差の形で表した。 図7は、一例として、RgIA-5711によるヒトα9α10 nAChR 阻害の濃度反応曲線を示す。ラットα9α10 nAChRをアフリカツメガエル(X. laevis)の 卵母細胞内に異種発現させ、ペプチドの阻害能を後述する二電極電圧クランプ法による電気生理学的手法で測定した。各データは、3~5個の卵母細胞から得られた値の平均 ± 標準誤差の形で表した。 図8は、一例として、25%ヒト血清におけるRgIA5の安定性を示す。左パネル: 球形の標準 RgIA5のHPLCチャート。右パネル:24時間後の血清中安定性(n=6)。24時間後に、球形は41%(±0.5)、リボン形は59%(±0.5)が残存していた。反応は、RP-HPLC、C18カラム使用、濃度勾配は40分間に亘り緩衝液Bを10%~50%の範囲内で変化、流速1mL/分の条件でモニタ。 図9Aは、一例として、RgIA-5474 によるヒトα7 nAChR阻害の濃度反応曲線を示す。ヒトα9α10 nAChRをアフリカツメガエル(X. laevis)の 卵母細胞内に異種発現させ、ペプチドの阻害能を後述する二電極電圧クランプ法による電気生理学的手法で測定した。各データは、3~5個の卵母細胞から得られた値の平均 ± 標準誤差の形で表した。 図9Bは、一例として、RgIA-5474によるラットα9α10 nAChR 阻害の濃度反応曲線を示す。ラットα9α10 nAChRをアフリカツメガエル(X. laevis)の 卵母細胞内に異種発現させ、ペプチドの阻害能を後述する二電極電圧クランプ法による電気生理学的手法で測定した。各データは、3~5個の卵母細胞から得られた値の平均 ± 標準誤差の形で表した。
これらの図面は本開示の様々な側面を説明するためのものであり、特許請求の範囲において特に制限しない限り、寸法、材料、構成、配置、または比率に関して本開示を制限する意図は無い。
以下、例示的な実施態様を幾つか、当業者が本開示を実施可能な程度に詳しく説明するが、本開示の趣旨と範囲を逸脱しない限りにおいて、他の実施態様や本開示の様々な変更が行われてもよいものと理解されるべきである。したがって、以下に述べる本開示の実施態様のより詳細な説明は、特許請求の範囲に記載された本開示の範囲を制限するものではなく、単に本開示の特徴や特性を制限すること無く描写し、本開示の最良の作用を記述し、当業者による本開示の実施を十分に可能とすることを目的とする。したがって、本開示の範囲は、専ら添付の特許請求の範囲のみによって規定されるものである。
定義
本開示を説明し、権利請求を行うにあたり、以下の各用語を用いる。
単数形の不定冠詞および定冠詞は、本文脈内で明確に規定しない限り、複数の指示対象も含むものとする。したがって、例えば単数形で 「ペプチド」と記載した場合、1つまたはそれ以上のペプチドを指し、また「容易とする」と記載した場合、1つまたはそれ以上の工程を容易化することを指す。
本明細書中で用いる「実質的に」の語は、ある作用、特性、性質 、状態、構造、項目、又は結果の程度が完全である、又は完全に近いことを表す。例えば、ある物体が「実質的に」内包されるとは、その物体が完全に内包されているか、又はほぼ完全に内包されていることを示す場合がある。完璧な完全性からの逸脱に関する厳密な許容範囲は、特段の文脈に依存する場合がある。しかし一般的には、完全に近いとは、完璧な完全性が達成された場合と概ね同等な結果が全体として得られることに相当する。したがって「実質的に」の語は、作用、特性、性質、状態、構造、項目、又は結果を完全に、またはほぼ完全に欠いていることに言及する否定的な文脈の中でも、等しく用いられ得る。例えば、粒子を「実質的に含まない」組成物とは、粒子を完全に欠いている場合、又は、組成物があたかも粒子を完全に欠いていた場合と同様の効果を奏する場合、を含み得る。言い換えれば、或る成分や元素を「実質的に含まない」組成物は、その測定可能な効果が見当たらないだけで、実際にはそのような要素を含んでいる可能性がある。
本明細書中で用いる「約」の語は、それが付加された用語、測定値、又は値に柔軟性と不正確さを与える。特に断らない限り、「約」の語を或る特定の数値や数値範囲に対して用いる場合、その「約」を付けなかった場合の数値や数値範囲もサポートするものと解釈される。例えば、便宜や簡便さを期して「約50Å~約80Å」記載される数値範囲は、「50Å~80Å」もサポートする。更に、本明細書において、実際の数値に「約」の語が付いた場合もサポートする。例えば、「約30」という記載は30をやや超えるかやや下回る値のみならず、実際の値30もサポートされるものと理解される。或る特定の変数に対する柔軟性の程度は、当業者が容易に決定できる。ただし、特に断らない限り、「約」の語は一般に2%未満の柔軟性を含み、多くの場合は1%未満であり、場合によって0.01%未満である。
本明細書中で用いる「治療する」、「治療」、「治療中の」等の語は、無症状又は症状のある被験者に対し、治療薬を投薬するか、治療を施すことを意味する。換言すれば、「治療する」、「治療」、「治療中の」の各語は、症状(例えば、発症した症状)を軽減または取り除く行為、又は予防的な 治療(例えば、無症状の被験者に対する、発症を予防するための投薬)を表し得る。かかる予防的な治療は、症状の予防、予防処置、予防策等と称されることもある。
本明細書で用いる「治療薬」、「活性薬剤」等の用語は交換的に用いることができ、適量または有効量を被験者に投与した時に、該被験者に有益又は前向きな効果をもたらすことができる薬剤を指す。一側面において、上記治療薬又は活性薬剤は、RgIA4 ペプチド類似体であり得る。「追加の活性薬剤」、「補助的な活性薬剤」、「第2の活性薬剤」等の用語は交換的に用いることができ、RgIA4 ペプチド類似体以外の化合物、分子、又材料であり得る。
本明細書で用いる「製剤」及び「組成物」の語は交換的に用いることができ、2種類以上の化合物、元素、又は分子の混合物を指す。或る側面において、この「製剤」及び「組成物」の用語を、1種類以上の活性薬剤と担体又はその他の賦形剤との混合物を指す為に用いてよい。更に、「投薬形態」の用語は、被験者へ投与する形( 例えば、特定の形態、形状、ビヒクル等)に整えられた1種類以上の製剤又は組成物を包含する。例えば、「経口投薬形態」 は被験者の口内へ投与するのに適し得る。「局所投薬形態」は被験者の皮膚に擦り込む等の方法による投与に適し得る。
本明細書において、「治療位置」とは、治療が望まれる被験者の体表又は体内の位置を指す。例えば、痛みを治療する場合、治療部位は痛みを呈する領域であり得る。更に、本明細書で用いる「投与位置」は、治療が望まれる被験者の体表又は体内の位置を指す。更に、点滴製剤にとっての投与位置は、点滴器具が被験者の循環系に挿入される領域であってよい。更に、局所投与製剤にとっての投与位置は、該局所投与製剤が投与される皮膚又は粘膜の領域であってよい。幾つかの実施形態において、投与位置は実質的に治療位置と同一である(例えば、組成物又は製剤が治療位置に直接に投与される場合)。別の実施形態では、投与位置は治療位置とは異なる(例えば、治療位置に対して遠位である)。この様な場合、たとえ、投与が治療位置の遠位で行われたとしても、上記組成物又は製剤は治療位置において治療効果を発揮する。
本明細書において、「局所組成物」又は「局所投与」等の語は、皮膚又は粘膜表面へ直接投与するのに適した組成物を指し、そこから有効量の薬剤が放出される。幾つかの実施態様において、局所組成物は局所的又は局所化された治療効果を呈し得る(例えば、投与位置またはその近傍)。例えば、或る局所組成物を傷、病変部、火傷、口内炎等(例えば、治療位置)に塗布した場合、該組成物は最初こそ投与位置およびその周辺で治療効果を及ぼすが、それ以降は実質的に効果を及ぼさない。他の実施形態では、上記局所組成物は領域効果を呈し得る。例えば、或る局所組成物を指、腕、足首、関節等、身体の或る領域の皮膚表面に塗布した場合、該組成物はその領域内では治療効果を及ぼすが、領域外では実質的に効果を及ぼさない。例えば、足首の領域に塗布した局所組成物は、該足首とその周辺には浮腫、関節炎、痛みを低減する等の治療効果を及ぼす。他の実施形態において、局所組成物は全身的な効果を及ぼす。幾つかの側面において、上記局所組成物は、薬剤又は活性薬剤自身が治療位置に到達するという作用機構によって治療効果を与え得る。他の側面において、上記局所組成物は、生物化学的カスケード事象や、酵素的カスケードその他のシグナル伝達(例えば、細胞信号伝達、又は細胞間/細胞内信号伝達) 事象の様な仲介的作用機序によって効果を奏することができ、最終的には治療位置にて所望の治療効果が発揮される。幾つかの例において、かかる仲介的機序は、投与位置の遠位からの治療を可能とする。更に別の例において、遠位の治療位置から治療を行った場合、上記活性薬剤は投与位置から治療位置まで皮膚組織やその他の組織を通って移動し、直接的な効果を及ぼす。
本明細書において、「経皮」とは、皮膚表面に投与された薬剤が無傷の皮膚表面を通過する際の投与経路を指す。経皮投与された薬剤又は活性薬剤は、投与位置から治療位置へ移動し、治療効果を及ぼす。 経皮組成物及び投薬形態は、該組成物を皮膚表面に保持することを助けるバッキングフィルム、貼付材、保液剤(reservoir)等の構造及び/又は装置を含み得る。更に、経皮組成物は、活性薬剤が投与位置から治療位置へ移動する(例えば、皮膚を通過して被験者の循環系へ入る)ことを補助又は促進する薬剤、例えば 浸透促進剤又は透過促進剤を含み得る。幾つかの実施形態において、かかる浸透促進剤又は透過促進剤は、局所製剤と併用し得る。
「皮膚」又は「皮膚表面」の語は、1層以上の表皮層からなる被験者の皮膚の外皮のみならず、呼吸器(鼻、肺を含む)、口腔(口及び頬)、膣、及び直腸腔の粘膜の様な粘膜の表面を含む。したがって、「経皮」の語は「経粘膜」を包含する場合がある。
本明細書において、第1の治療薬 と第2の 治療薬とを 「併用投与」するとは、適切な時間枠内で行われる同時投与を含み得る。一例において、適切な時間枠とは、1時間、45分、30分、15分、5分、2分、1分、又はこれらの組合せの1つ以上である。同時投与は同じ組成物から行われても、異なる組成物から行われてもよい。
本明細書において、「被験者」とは、本明細書で開示する方法または装置で恩恵を受ける可能性がある哺乳類を指す。被験者には、ヒトの他、ウマ、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、ウサギ、水棲哺乳類等の動物も含まれる。或る特定の側面において、上記被験者はヒトである。
本明細書において、例えば「初期用量」、「開始用量」、「維持用量」の様に用いられる「用法・用量」又は「レジメン」の語は、被験者に対して本開示の組成物をどの様に、いつ、どのくらいの分量で、どのくらいの期間、投与し得るかを表す。 例えば、被験者に対する初期用量又は開始用量は、約15mcg/1mL~約1500mcg/1mLの1日量を2回に分け、少なくとも12時間の間隔をあけ、食事時(例えば、朝食時に1回、夕食時に1回)に服用することを毎日、30日間繰り返す、の如くに定めることができる。
本明細書において、「1日量」とは、24時間の期間内に被験者に投与される活性薬剤(例えば、RgIA4 ペプチド類似体) の量を示す。この1日量は、24時間の期間内に2回以上に分けて投与され得る。或る実施形態において、1日量は24時間の期間内の2回投与とすることができる。以上を踏まえて、「初期用量」又は「初期1日量」とは、初期レジメン中又は或るレジメン中の用量を表す。
本明細書において、薬剤の「有効量」又は「治療学的有効量」とは、該薬剤の有効性が既知である症状の治療において治療効果が得られる、該薬剤の無毒にして十分な量を表す。或る物質がその目標とするタスクを達成する能力は、様々な生物学的要因によって影響を受けると理解される。したがって、「有効量」又は「治療学的有効量」は、場合によってはかかる生物学的要因に依存し得る。また、治療効果の達成は、医師又は有資格医療従事者により当該技術分野で既知の評価方法を用いて測定し得るが、治療応答には個人差があり、治療効果の達成の判断はやや主観的な判断になると考えられる。有効量の決定は医学及び薬学分野における通常のスキルの範囲内で行われればよい。例えば、Meiner and Tonascia, “Clinical Trials: Design, Conduct, and Analysis”, Monographs in Epidemiology and Biostatistics, Vol. 8 (1986), を参照。本論文の内容は、本明細書に組み込まれる。
本明細書において、「急性」 症状とは、急速に発現し、緊急ケア又は準緊急ケアを要する明確な症状を指す。一方、「慢性」症状とは、典型的にはゆっくりと発現し、長期に亘って長引くないし進行する症状を指す。急性症状の例としては喘息発作、気管支炎、心臓発作、肺炎等が挙げられるが、これらに限定されない。慢性症状の例としては関節炎、糖尿病、高血圧、高コレステロール症等が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において、「 認識指紋領域 」とは、受容体に結合するペプチドの領域を示す。 一例において、RgIA4ペプチド又はRgIA4類似体の認識指紋領域 は、Asp5-Pro6-Arg7から構成され得る。
本明細書において、「選択性」とは、グループ内(例えば細胞群内)又はグループ間(例えば、生存不能な細胞群と生存可能な細胞群との間)に差異をもたらす作用の修飾を示す。例えば、上記作用は受容体結合であり、上記グループは第1受容体及び第2受容体であり得る。例えば、第1受容体の「選択的な受容体結合 」 を第2受容体と比べた場合、第1受容体と第2受容体の差は選択比で表される。一例において、上記選択比は1:1が最小である。一例において、選択比は 1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、100:1等、及びこれらの組合せから選ばれる少なくとも1つの比よりも大きい値であり得る。
本明細書において、「安定性」とは、或る活性薬剤 が活性型に維持されることを指す。一例において、或るペプチドの安定性は、所定の時間経過後に活性型で存在するペプチドの濃度の目安となり得る。
本明細書において、「効力」とは、所定の応答を助ける活性薬剤の濃度を示す。一例において、或るペプチド(例えば、RgIA、RgIA4、又はRgIA4 類似体) の効力は、50%効果濃度(EC50)、50%阻害濃度(IC50)、50%有効量(ED50)、又はこれらの組合せの1つ以上であり得る。
本明細書において、或るペプチド(例えば、RgIA、RgIA4、又はRgIA4 類似体)の或る受容体に対する「結合親和性」とは、リガンドの不在下で受容体の50%を占有し得るペプチドの濃度を表す。一例において、この結合親和性は、式K=IC50/([A]/EC50)+1)を用いてIC50から算出される阻害定数(K)である。ここで、[A]は作動薬の所定濃度、EC50は受容体の50%活性化を作動薬の濃度である。別の例において、蛍光消光、等温滴定熱測定、又は表面プラズモン共鳴等の方法を用いて解離定数(K)を直接求め、これをリガンド親和性としてもよい。
本明細書において、「D-置換類似体」は、L-アミノ酸の1つ以上がD-アミノ酸で置換された、本開示のRgIA 及びRgIA4類似体を含む。上記D-アミノ酸は、類似体のアミノ酸配列内にみられるアミノ酸と同種であっても、或いは異なる種であってもよい。したがって、D-類似体は変異体でもある。
本明細書において、「変異体」は本開示のRgIA類似体を含み、そこでは1つ以上のアミノ酸が非アミノ酸成分に置換されているか、又はそのアミノ酸が或る官能基と結合しているか、又は或る官能基が或るアミノ酸に会合している。修飾アミノ酸は例えば、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸(ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーとの共有結合や非共有結合、又は融合)、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化 アミノ酸、アシル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、ホスホリル化アミノ酸、脂肪酸等の脂質部と結合したアミノ酸、又は誘導体化剤と複合化したアミノ酸であってよい。修飾アミノ酸が存在することにより、例えば、(a)血清中のポリペプチド半減期及び/生体内機能半減期の延長、(b)ポリペプチドの抗原性の低減、(c)ポリペプチドの保存安定性の増大、(d)ペプチドの溶解度の増大、(e)循環時間の延長、及び/又は(f)生体利用効率の増大、例えば、曲線下面積(AUC) の増大が容易となる。アミノ酸の修飾は、例えば、遺伝子組替え生産中(例えば、哺乳類細胞内への発現中におけるN-X-S/TモチーフへのN型糖鎖修飾)に共翻訳的に行うか、又は翻訳後に行うか、又は合成手段によって行うことができる。上記修飾アミノ酸 は、アミノ酸配列に内包されるか、配列の末端に存在し得る。変異体には、本明細書中に記載される誘導体が含まれ得る。
本明細書において、「I-3-Y」又は「iY」は3-ヨードチロシンを表し、「3-Rチロシン」 及び「R-3-Y」は3-クロロチロシン、3-フルオロチロシン、3-ヨードチロシン、3-ブロモチロシン、及びチロシンからなる群より選択されるペプチド残基を表す。
本明細書において、「Cit」はシトルリンを表す。
本明細書において、「b3hY」はβ-3-ホモチロシンを表す。
本明細書において、「bhY」はβ-ホモチロシンを表す。
本明細書において、「3-R-bhY」は3-クロロ-β-ホモチロシン、3-フルオロ-β-ホモチロシン、3-ヨード-β-ホモチロシン、3-ブロモ-β-ホモチロシン、及びβ-ホモチロシンからなる群より選択されるペプチド残基を表す。
本明細書において、「3-R-b3hY」は3-クロロ-β-3-ホモチロシン、3-フルオロ-β-3-ホモチロシン、3-ヨード-β-3-ホモチロシン、3-ブロモ-β-3-ホモチロシン、及びβ-3-ホモチロシンからなる群より選択されるペプチド残基を表す。
本明細書において、「Xaa」は何らかのアミノ酸を表す。 更に本明細書の記述において、Xaaは何らかのアミノ酸をサポートする。例えば、Xaa は何らかのアミノ酸又はその誘導体をサポートする。Xaaがサポートするアミノ酸の例として、アラニン(Ala又はA)、アルギニン(Arg又はR)、アスパラギン(Asn又はN)、アスパラギン酸(Asp又はD)、システイン(Cys又はC)、グルタミン酸(Gly又はE)、グルタミン(Gln又はQ)、グリシン(Gly又はG)、ヒスチジン(His又はH)、イソロイシン(Ile又はI)、ロイシン(Leu又はL)、リジン(Lys又はK)、メチオニン(Met又はM)、フェニルアラニン(Phe又はF)、プロリン(Pro又はP)、セリン(Ser又はS)、スレオニン(Thr又はT)、トリプトファン(Tyr又はW)、チロシン(Tyr又はY)、バリン(Val又はV)、セレノシステイン(Sec又はU)等、又はこれらの組合せが挙げられる。
本明細書において、本明細書が開示する「RgIA類似体の変異体」又は「RgIA4類似体の変異体」には、本開示のRgIAペプチド 又は本開示のRgIA4ペプチドに比べて、1つ以上のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されているペプチドが含まれる。
本開示の実施形態は、上述のRgIA類似体並びに変異体、D-置換類似体、修飾体、上記RgIA類似体の誘導体を含む。幾つかの実施形態において、これら変異体、D-置換類似体、修飾体及び置換体は、配列に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個の配列の付加、欠失、置換、交換、結合、会合又は並べ替え(permutation)を生じたものである。本明細書で述べる各類似体ペプチドもまた、本開示の類似体ペプチド配列の1位、2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位、9位、10位、11位、12位、13位、14位、又は15位に付加、欠失、置換、交換、複合、会合又は並べ替え(permutation)を有するものである。
幾つかの実施形態において、Xaaポジションは類似体ペプチドのどの位置に含まれていてもよく、ここでXaaは付加、欠失、置換、交換、結合、会合又は並べ替え(permutation)を表す。特段の実施形態において、各類似体ペプチドはその1位、2位、3位、4位、5位、6位、7位、8位、9位、10位、11位、12位、13位、14位、又は15位の1つ以上に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個のXaaポジションを有する。
類似体は2つ以上の変位(付加、欠失、置換、交換、結合、会合又は並べ替え) を持つことができ、変異体、D-置換類似体、修飾体、及び/又は誘導体の1つ以上であり得る。即ち、類似体、変異体、D-置換類似体、修飾体、及び/又は誘導体の分類項目の1つを持つことが、他の分類項目を持つことを妨げるものではなく、本明細書中ではこれら全てを「類似体ペプチド」と総称する。
アミノ酸の置換は、保存的であっても非保存的であってもよい。本開示のRgIA類似体の変異体は、1つ以上の保存的アミノ酸置換を有する変異体を含み得る。本明細書において、「保存的置換」は下記の各保存的置換グループのいずれかに見られる置換を含む。グループ1:アラニン(Ala又はA)、グリシン(Gly又はG)、セリン(Ser又はS)、スレオニン(Thr又はT);グループ2:アスパラギン酸(Asp又はD)、グルタミン酸(Glu又はE);グループ3:アスパラギン(Asn又はN)、グルタミン(Gln又はQ);グループ4:アルギニン(Arg又はR)、リジン(Lys又はK)、ヒスチジン(His又はH);グループ5:イソロイシン(Ile又はI)、ロイシン(Leu又はL)、メチオニン(Met又はM)、バリン(Val又はV);及びグループ6:フェニルアラニン(Phe又はF)、チロシン(Tyr又はY)、トリプトファン(Trp又はW)。
更に、アミノ酸は、類似の機能、化学構造、又は組成(例えば、酸性、塩基性、脂肪族、芳香族、イオウ含有)によって、複数の保存的置換グループにグループ分けされる。例えば、脂肪族グループには、置換目的としてGly、Ala、Val、Leu、及びIleが含まれる。他者と互いに保存的置換されると考えられるその他のアミノ酸のグループとしては、含硫黄アミノ酸: Met 及びCys;酸性アミノ酸:Asp、Glu、Asn、及びGln;非極性又は弱極性の低分子量脂肪族アミノ酸:Ala、Ser、Thr、Pro、及びGly;負電荷を持つ極性アミノ酸及びそのアミド:Asp、Asn、Glu、及びGln;正電荷を持つ極性アミノ酸:His、Arg、及びLys;非極性の高分子量アミノ酸:Met、Leu、Ile、Val、及びCys;及び高分子量芳香族アミノ酸:Phe、Tyr、及びTrpが挙げられる。更なる情報は、Creighton(1984), Proteins, W.H. Freeman and Companyに記載されている。
本明細書において、「陽性アミノ酸」はタンパク質を構成する陽性アミノ酸である His、Arg、及びLys 、並びにタンパク質を構成しない陽性アミノ酸を含む。
本明細書において、「芳香族アミノ酸」は、タンパクを構成する 芳香族アミノ酸である Phe、Tyr、及びTrp、並びにタンパクを構成しない芳香族アミノ酸を含む。
本明細書で開示又は参照されるRgIA類似体又はRgIA4類似体の変異体は、本明細書で開示または参照されるペプチドに対して少なくとも70%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、又は少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む。より具体的には、本明細書で開示又は参照されるRgIA類似体又はRgIA4類似体の変異体は、配列番号1-11のいずれかと70%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと80%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと81%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと82%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと83%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと84%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと85%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと86%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと87%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと88%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと89%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと90%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと91%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと92%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと93%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと94%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと95%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと96%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと97%の配列同一性を有するペプチド;配列番号1-11のいずれかと98%の配列同一性を有するペプチド;又は配列番号1-11のいずれかと99%の配列同一性を有するペプチド、を含む。
合成鎮痛性ペプチドのC末端は、カルボン酸又はアミド基であってよい。本開示はまたRgIA類似体に関し、該類似体は更に(i)チロシン、3-ヨードチロシン、蛍光タグ、脂質、炭水化物、又はβ-ホモアミノ酸、D/L-スルホノ-γ-AAペプチド、L-γ-AAペプチド等をC末端へ付加するか、及び/又は(ii)チロシン、3-ヨードチロシン、ピログルタミン酸、蛍光タグ、脂質、炭水化物、又はβ-ホモアミノ酸等をN末端へ付加することで修飾される。
本明細書において、「遺伝子」とは、ペプチドをエンコードする核酸配列を指す。この定義は、種々の配列多型、変異、及び/又は配列変異体を含むが、これらの変更はエンコードされたペプチドの機能に影響を与えない。この「遺伝子」なる語には、コード配列のみならず、プロモーター、エンハンサー、及び終止領域等の調節領域も含まれる。「遺伝子」は更に、あらゆるイントロンや、mRNA 転写産物からスプライシングされた他のDNA配列 、並びに別のスプライシング部位から生じた変異体を含み得る。ペプチドをエンコードする核酸配列は、ペプチドの発現を指向するDNA又はRNAであり得る。これらの核酸配列は、RNAに転写されるDNA鎖配列、又はタンパク質に翻訳されるRNA配列であってよい。上記核酸配列は、全長核酸配列、並びに全長タンパク質に由来する非全長配列の双方を含む。これらの配列は、天然配列の縮重コドン、又は或る特定の細胞型で好まれるコドンの生成用に導入される配列を含み得る。ペプチドをエンコードするための本開示の遺伝子配列は、公開されているデータベースや出版物から入手できる。
本明細書において、特定のアミノ酸の記載は、特定のアミノ酸及び何らかの類似体、変異体、D-置換類似体、修飾体、及び/又はその誘導体をサポートする。一例において、チロシンと記載した場合、それは3-クロロチロシン、3-フルオロチロシン、3-ヨードチロシン、チロシン、オルソチロシン、3-ニトロチロシン、3-アミノチロシン、O-メチルチロシン、2,6-ジメチルチロシン、β-ホモチロシン、Boc-Tyr(3,5-I2)-OSu、[CpRu(Fmoc-チロシン)]CF3CO2、O-(2-ニトロベンジル)-L-チロシン塩酸塩、3-ニトロ-L-チロシンエチルエステル塩酸塩、N-(2,2,2-トリフルオロメチル)-L-チロシンエチルエステル、DL-O-チロシン等、又はこれらの組合せをも明確にサポートする。 一例において、システインと記載した場合、それはシステイン、L-システイン酸一水和物、L-システインスルフィン酸一水和物、セレノL-等、又はこれらの組合せをも明確にサポートする。 一例において、リジンと記載した場合、それはFmoc-Lys(Me,Boc)-OH、Fmoc-Lys(Me)3-OH塩酸塩、Fmoc-L-Lys(Nvoc)-OH、Fmoc-Lys(palmitoyl)-OH、Fmoc-L-光リジン、DL-5-ヒドロキシリジン塩酸塩、H-L-光リジン塩酸塩等、又はこれらの組合せをも明確にサポートする。
本開示において、「構成する(comprises)」 「構成している(comprising)」「含有している(containing)」及び「有する(having)」等の語は、米国特許法によりこれらに付される意味を有し、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」等を意味することができ、一般的にはオープンタームと解釈される。 「~からなる(consisting of)」又は「~は~からなる(consists of)」はクローズドタームであり、これらの語に繋げて具体的に示される構成要素、構造、工程等のみを含み、これも同じく米国特許法に準拠する。「基本的に~から構成されている(consisting essentially of)」又は「基本的に~から構成される(consists essentially of)」は、米国特許法によりこれらに一般的に付される意味を有する。特に、これらの語は一般的にはクローズドタームであるが、例外として、これらと共に用いられる物の基本的且つ新規な特性又は機能に実質的な影響を与えない追加の項目、材料、構成要素、工程、又は要素等の包含は許容される。例えば、微量元素が或る組成物中に含まれているが、該組成物の性質や特性に影響を与えない場合、その組成物が「基本的に~から構成されている(consisting essentially of)」なる表現が用いられていれば、たとえこの表現の後に続く一連の項目の中に明確に記載されていなくても、該微量元素は許容される。文章内で「構成している(comprising)」又は「含んでいる(including)」等のオープンタームを用いた場合、「基本的に~から構成される(consisting essentially of)」 なる表現や「~からなる(consisting of)」なる表現も、明示されたと同様に直接的にサポートすべきであると解釈され、逆も又同様である。
本明細書および特許請求の範囲の記述中、「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」等の語があれば、それらは類似の要素間の区別に用いられており、必ずしも特定の順番や年代順を表すものではない。この様な用語法は或る適切な状況下で相互交換的であると解釈され、例えば本明細書で述べる各実施例は、本明細書中で述べられている順序以外の順序で、あるいは別途記載されている順序で実施することができる。同様に、本明細書で述べる或る方法が一連の工程からなる場合、ここに記載される工程の順序は必ずしもこれらの工程が実行される唯一の順序ではなく、記載された工程の一部が省略されてもよく、及び/又は、ここに記載されていない何らかの工程を上記方法に追加してもよい。
本明細書において、「増大した」、「減少した」、「より良い」、「より劣る」、「より高い」、「より低い」、「増強された」、「向上した」、「最大化された」、「最小化された」等の比較語は、装置、構成要素、組成物、生物学的応答、生物学的状態、又は活性が、周辺又は近隣の領域にある、同様の状態に置かれ、単一の装置又は組成物内にあり、或いは複数の同等の装置又は組成物内にあり、あるグループ又はクラスに属し、或いは複数のグループ又はクラスに属する、他の装置、構成要素、組成物、生物学的応答、生物学的状態、又は活性と比べて、或いはオリジナル(例えば未治療)又はベースライン状態と比べて、又は当該技術分野で既知の状態と比べて、測定可能に異なっている状態を表す。例えば、神経痛軽減効果が「改善された」或るα-RgIA4 類似体は、他のα-RgIA4類似体に比べ、安定性、結合効率、効力、その他の性能関連の性質の少なくとも1つに改善を示している可能性がある。
本明細書で用いる「連結された(coupled)」の語は、化学的、機械的、電気的、又は非電気的な様式で、直接的に又は間接的に接続された状態と定義される。 本明細書で用いる「隣接している(adjacent)」の語は、2つの構造又や要素の近接状態を表す。特に、「隣接している」と認められた要素同士は、当接されていていも結合されていてもよい。これらの要素同士は近隣にあっても近接していてもよく、必ずしも互いに接触していなくてもよい。近接の正確な度合いは、特段の文脈に依存する場合がある。
本明細書において、複数の項目、構造要素、構成要素、及び/又は材料は、便宜上、共通のリストにまとめて提示される場合がある。但し、これらのリストは、リスト内の各要素がそれぞれ別個の特色ある要素として識別されるものと解釈すべきである。したがって、当該リストのいかなる個々の要素も、単にそれらが特段の断りもなく同一グループとして提示されているからという理由で、同じリスト内の他要素との事実上同等であると見なされてはならない。
本明細書において、「少なくとも1つの (at least one of)」の語は「1つ以上の(one or more)」と同義に用いる。例えば、「少なくともA、B 及びCの1つ」とはAのみ、Bのみ、Cのみ、及び各々の組合せを明示的に含む。
濃度、量、レベルその他の数値データは、本明細書において範囲形式で記載される場合がある。かかる範囲形式は単に簡便さを期して用いるものであり、ここに限界値として明示されている数値を含むのみならず、その範囲内に含まれるあらゆる個々の数値又は部分範囲(sub-range)又は小数単位も、あたかもこれら個々の数値や部分範囲らが明示されているかの如くに含まれるものとして、柔軟に解釈すべきである。一例として、「約1~約5」なる数値範囲は、ここに明示されている約1、約5、という数値のみならず、これら個々の値、及び上記の範囲の部分範囲も含むものとする。したがって、この数値範囲に含まれる値としては、2、3、4の様な個々の数値;1~3、2~4、3~5等の様な部分範囲;並びに個別の数値1、2、3、4、5が挙げられる。同じ原則は、最小値か最大値の一方だけが記載された数値範囲にも適用される。更に、かかる解釈は、記載されている範囲の規模や性質とは無関係に適用されるものとする。
何らかの方法又は方法クレイムに記載されるあらゆる工程は、如何なる順序で実施されてよく、特許請求の範囲に記載された順序に制限されない。ミーンズ・プラス・ファンクション・クレイム、別名ステップ・プラス・ファンクション・クレイムは、或る特定のクレイムに下記の全ての条件がその制限の中に含まれる場合に限り、採用される。その条件とは、a)「~のための手段(means for)」又は「~する工程(step for)」が明示されている;及びb)対応する機能が明示されている、である。ミーンズ・プラス・ファンクション・クレイムをサポートする構造、材料又は作用は、本明細書中に明示されている。したがって、本発明の範囲は、本明細書中の記載や例示ではなく、 専ら添付の特許請求の範囲およびその法的同等物によって規定されるものとする。
本明細書中に「一実施形態において」又は「一側面において」なる句があった場合、それは必ずしも常に同一の実施形態又は側面を意味するものではない。本明細書の全体を通じて「一例」と言う場合、それは、その例に関連して記載された或る特段の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書の各所に「一例において」なる句があった場合、それらが全て同じ実施形態を指しているわけではない。
実施形態の例
以下、これから開示する実施形態を最初に概観し、続いて具体的な実施形態をより詳しく説明する。第1の概要は、読者による当該技術思想のより速やかな理解を助けることを意図しているが、その重点や必須の特徴を同定することは意図しておらず、また、特許請求の範囲に記載された主題を制限することも意図していない。
末梢神経系から中枢神経系にかけて分布するニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は、一群の膜貫通型のリガンド依存性陽イオン・チャネルであり、高速なシナプス伝達を媒介する他、神経因性疼痛、パーキンソン病、統合失調症、アルコール依存症、薬物依存症等の広範囲な神経系障害に関与している。異なる nAChRサブユニットα、β、γ、δ、εが、これらのホモ又はヘテロ5量体型の受容体内で様々な組合せで会合し、顕著な薬理学的及び生物物理学的機能を有する複雑で多様なnAChRサブタイプを生み出している。この nAChRは、以前から鎮痛薬を開発する上でのターゲットと目されているが、その進展は治療濃度域の狭さと、無差別なサブタイプ攻撃による副作用によって妨げられてきた。
毒物由来の化合物は、神経薬理学及び創薬において広く関心を集めている。α-コノトキシン類はイモガイ由来のジスルフィド含有低分子ペプチドであり、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR) を標的とし、難治性疼痛の非オピオイド的治療用として臨床開発が進められている。標的である受容体との相互作用については改良が重ねられてきたが、哺乳類系に使用するには薬理的性質の増強が必要である。
動物モデルでは、このイモガイ毒由来のペプチドα-CtxVc1、RgIA、及びGeXIVAはα9α10 nAChRを介した鎮痛作用を発揮することができる。 第2世代類似体であるRgIA4が表す鎮痛効果は、治療停止後も数週間持続できる。これらの知見は、α9α10 nAChRが疼痛治療薬の創薬の有望なターゲットであり、イモガイ由来のペプチドが強力な鎮痛効果を与え得ることを示している。
天然のα-コノトキシンは動物モデルでは有望であるが、ヒトnAChRに対する効力が概して低い。近年の研究により、α9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR) サブタイプの阻害が、化学療法誘発性の神経因性疼痛における非オピオイド系機序に従うことが明らかにされている。
RgIA は、13個のアミノ酸残基からなり、正電荷を持ち、ジスルフィド含量の多いペプチドであり、海洋性カタツムリであるカンムリイモ (Conus regius)の毒中に存在する。このペプチドの生物活性型は、ジスルフィド結合(2Cys-8Cys、3Cys-12Cys)を持つ球形であり、ラットα9α10 nAChR(IC50 = 1.49 nM) を強力にブロックするが、ヒトα9α10 nAChR に対しては効力が300分の1に低下してしまう。このジスルフィド架橋は、全体構造の安定化、及びペプチドのチャネルとの相互作用に利用できる可能性がある。大きな活性の低下は、上記RgIA システイン架橋のいずれか一方をジカルバ架橋に置き換えた時に観測された。 トランス-及びシス-[3,12]-ジカルバRgIA類似体 は、それぞれIC50=1.15μM及び1.47μMにて、ラットα9α10 nAChRのブロック効力を600分の1よりも大きく低下させた。[2,8]-ジスルフィド架橋を同様に置き換えた場合には、cis -類似体、trans-類似体のいずれにもα9α10 nAChRに対する活性が観測されなかった。同様の効果は、α9α10 nAChR 及びγ-アミノブチル酸タイプB受容体(GABABR)の強力な阻害剤であるα-Ctx Vc1.1にも観測された。
α9α10 nAChR阻害剤の中でも、親配列 α-RgIAを修飾して生み出された第2世代類似体α-RgIA4は、「生物種間の親和性ギャップ(species-related affinity gap)」を飛び越え、他のサブタイプや他の疼痛関連受容体を阻害すること無く(例えば、選択性 >1000倍)、齧歯類(IC50= 0.9 nM)とヒトα9α10 nAChR(IC50 =1.5 nM)の双方に対して高い効力を発揮する。したがってα-RgIA4には、非オピオイド系鎮痛薬の創薬におけるリード化合物としての可能性がある。
しかしながら、ジスルフィド含量の多い他のペプチド薬分子と同様、プロテアーゼ耐性が低く、血清中半減期が短いために、α-RgIA4は候補として有望ではない。この問題に対処するため、ペニシラミン及び他のタンパクを構成しないアミノ酸を含み得るRgIA4類似体を合成し得る。RgIA4類似体の中には、親RgIA4 類似体よりも1桁強力なピコモル親和性を持つものがある。最も高い親和性を有する類似体RgIA-5474は、高選択性、RgIA4よりも高い血清中安定性、及び強力な鎮痛作用を有する。即ち、RgIA-5474はRgIA4ペプチドに比べ、ヒトα9α10 nAChR に対して30倍高い効力を示し、ジスルフィド結合のシャッフルに対してより高い安定性を示す。更に、RgIA-5474はα9α10 nAChRを強力にブロックするが、オピオイド関連又は他の疼痛関連の標的をブロックしない。RgIA-5474は更に、化学療法誘発性の神経因性疼痛を効果的に改善させた。
一実施形態において、RgIA4 ペプチド類似体は α9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体に結合可能に構成された認識指紋領域を含むことができ、第1のシステインと 第2のシステインとの間のシステイン間ジスルフィド架橋、 及び第1のペニシラミンと 第3のシステインとの間のペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋、という少なくとも2種類のジスルフィド架橋を含み得る。 一側面において、上記RgIA4 ペプチド類似体はα9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体に対し、RgIA4ペプチドが持つ結合親和性の少なくとも50%結合親和性を持ち得る。
他の実施形態において、合成鎮痛性ペプチドはアミノ酸配列 G C X1 T D P R C X2 (R-3-Y) Q C X3 X4(配列番号3)から構成され得る。 一側面において、X1はL-ペニシラミン(L-Pen)、D-ペニシラミン(D-Pen)、及びL-システインからなる群より選択され得る。別の側面において、X2 はL-アルギニン、D-アルギニン、及びシトルリンからなる群より選択され得る。 別の側面において、X3 は何らかのアミノ酸であり得る。別の側面において、X4 は何らかのアミノ酸であり得る。更に別の側面において、R-3-Yは3-Rチロシンであり得る。
更に他の実施形態において、α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体に対するRgIA4ペプチドの効力をRgIA4ペプチド類似体内で維持する方法は、第1のシステインと第2のシステインとの間のシステイン間ジスルフィド架橋、及び第1のペニシラミンと第3のシステインとの間のペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋を設ける工程とを含み得る。別の側面において、上記方法は上記第3のシステインにβ-ホモチロシンを結合させる工程を含み得る。別の側面において、上記方法はL-シトルリン、D-シトルリン、L-アルギニン、D-アルギニン、L-リジン、D-リジン、L-オルニチン、及びD-オルニチンからなる群より選択されるC末端残基を設ける工程を含み得る。
他の実施形態において、α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体結合に起因する被験者の状態を治療する方法は、本開示の上記組成物を、治療学的有効量にて該被験者に投与することを含み得る。
α-RgIA4類似体
RgIA4ペプチドの類似体は、修飾によりその安定性、結合親和性、溶解度、効力、選択性等が未修飾のRgIA4ペプチドと比べて増強された、種々の小領域(subregion)を含み得る。例えば、或るRgIA4 ペプチド類似体は、α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体に結合可能に構成された認識指紋領域を含み得る。一例において、この認識指紋領域は、L-アスパラギン酸を5位に、L-プロリンを6位に、且つL-アルギニンを7位に含むRgIA4 ペプチド類似体の領域であり得る。
上記RgIA4ペプチドの安定性及び効力は、ヒト血清中で低下し得る。Penで置換すると、4個のCys残基の中のどれが置換されるかによって広範な変化が現れる。4ヶ所のうち3ヶ所は失活に繋がり得る。逆に、3Cys残基の置換は、活性の維持につながり得る。
従って、一側面において、RgIA4 ペプチド類似体は少なくとも2つのジスルフィド架橋、即ち(a)第1のシステイン(例えば、2位)と第2のシステイン(例えば、8位)との間のシステイン間ジスルフィド架橋、及び(b)第1のペニシラミン(例えば、3位)と 第3のシステイン(例えば、12位) との間のペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋、を含み得る。或るRgIA4ペプチドの第3のシステインがペニシラミンに置換されると、RgIA4 ペプチド類似体の安定性及び効力が 、RgIA4ペプチドの安定性に比べて向上し得る。
一側面において、上記ペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋は、RgIA4ペプチド、ペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋を持たないRgIA4 ペプチド類似体等、又はこれらの組合せの1つ以上と比べて、ジスルフィド架橋のスクランブル、ジスルフィド架橋の分解等、又はこれらの組合せの1つ以上を減少させ得る。
別の側面において、上記ペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋は、 RgIA4 ペプチド類似体のヒト血清中安定性を、RgIA4ペプチドのヒト血清中安定性よりも容易に高めることができる。 一側面において、ヒト血清中安定性は、上記RgIA4 ペプチド類似体を25%AB型ヒト血清中、37℃で30分間、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間、72時間、1週間、2週間等、またはこれらの組合せの少なくともいずれかの期間インキュベートした後に球形で残存するRgIA4 ペプチド類似体の量によって測定され得る。一側面において、上記RgIA4 ペプチド類似体のヒト血清中安定性は、上記RgIA4ペプチドのヒト血清中安定性に比べて、10%、20%、40%、60%、80%、100%、200%、300%、400%、500%又は1000%の少なくともいずれかの割合で大きい値であり得る。
上記ペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋はまた、還元グルタチオン中におけるRgIA4 ペプチド類似体の安定性を、還元グルタチオン中におけるRgIA4ペプチドの安定性よりも高めることを促進する。 一側面において、還元グルタチオン中における上記安定性は、上記RgIA4 ペプチド類似体又は上記RgIA4ペプチドを、10当量の還元グルタチオンを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)に溶解し、37℃で30分間、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間、72時間、1週間、2週間等、またはこれらの組合せの少なくともいずれかの期間インキュベートした後の残存量によって測定され得る。一側面において、上記α-RgIA4 ペプチド類似体の還元グルタチオン中安定性は、上記RgIA4ペプチドの還元グルタチオン中安定性に比べて、10%、20%、40%、60%、80%、100%、200%、300%、400%、500%、又は1000%の少なくともいずれかの割合で大きい値であり得る。
α-RgIA4 ペプチド類似体の保存安定性は、α-RgIA4ペプチドの保存安定性に比べて増強され得る。一例において、上記保存安定性は、周囲湿度及び周囲温度において或る選択された保存時間で保存した後に測定され得る。或る場合において、1日、1 週間、2週間、4 週間、3 ヶ月、6 ヶ月、1年、又はこれらの組合せの少なくともいずれかより長い期間の測定を行い、α-RgIA4 ペプチド類似体とα-RgIA4ペプチドとの間で安定性の増強を比較し得る。
上記RgIA4 ペプチド類似体の球形が維持されていることにより、α9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体に対するその結合親和性を、α9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体に対するRgIA4ペプチドの結合親和性よりも増強し得る。一例において、上記RgIA4 ペプチド類似体はα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体に対し、RgIA4ペプチドが持つ結合親和性の少なくとも50%の結合親和性を持ち得る。一側面において、α9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体に対するその結合親和性 は、RgIA4ペプチドが持つ結合親和性と実質的に等しい、又はRgIA4ペプチドが持つ結合親和性より大きくてよい。
上記RgIA4 ペプチド類似体の結合親和性は、チェン-プルソフ (Cheng-Prusoff)の式で算出されるRgIA4 ペプチド類似体のIC50値に関連付けることができる。一側面において、上記RgIA4 ペプチド類似体のα9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値は、α9α10 RgIA4ペプチドのニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも25.0分の1未満であるか、上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも10.0分の1未満である、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも5.0分の1未満である、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも2.0分の1未満である、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値と実質的に等しい、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の2.0倍を超えない、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の3.0倍を超えない、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の5.0倍を超えない、またはこれらの組合せであり得る。
上記RgIA4 ペプチド類似体は、他の方法で修飾することにより、その安定性、結合親和性、溶解度、効力、選択性等を、未修飾のRgIA4ペプチドに比べて増強させ得る。β-アミノ酸は天然のα-アミノ酸の同族体であり、アミノ酸主鎖のカルボキシ基の直前にメチレン基を1つ余分に有する。側鎖はα炭素、β炭素のいずれかに結合してよく(それぞれβ2-又はβ3-類似体と称する)、或いは両方に結合して抗力を維持し、且つタンパク分解に対する耐性を高めてもよい。一側面において、上記RgIA4 ペプチド類似体は12位のシステインに結合し得る13位のβ3-ホモチロシンを含み得る。
上記RgIA4 ペプチド類似体は、その安定性、結合親和性、溶解度、効力、選択性等を、未修飾のRgIA4ペプチドに比べて増強させる様な他の修飾を含み得る。Penを導入すると疎水性が増し、それに伴う沈殿が生ずる可能性がある。C末端位置に正電荷を持つ残基を付加すると、上記RgIA4 ペプチド類似体はその効力に実質的な影響を及ぼすことなく、溶解性が増大され得る。一側面において、上記RgIA4 ペプチド類似体は、L-シトルリン、D-シトルリン、L-アルギニン、D-アルギニン、L-リジン、D-リジン、L-オルニチン、及びD-オルニチンからなる群より選択されるC末端残基を含み得る。一側面において、上記RgIA4 ペプチド類似体は、C末端残基を持たないRgIA4 ペプチド類似体の溶解度に比べて、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、又は200倍、500倍、又は1000倍の少なくともいずれかの倍率で高い溶解度を持ち得る。
一側面において、上記RgIA4 ペプチド類似体はそのα9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体選択性を、RgIA4ペプチドの α9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体選択性と実質的に同等なレベルに高めることができる。一例において、上記RgIA4 ペプチド類似体はそのα9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体選択性を、或る異なるニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR) サブタイプに対する選択性に比べて、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、又は200倍、500倍、又は1000倍の少なくともいずれかの倍率で高めることができる。一側面において、上記の異なるnAChRサブタイプは、α1β1δε、α2β2、α2β4、α3β2、α3β4 α4β2、α4β4、α6/α3β2β3、α6/α3β4、α7、又はこれらの組合せからなる群から選択され得る。
RgIA4ペプチドを修飾する場合、RgIA4 ペプチド類似体の安全性プロファイルは、RgIA4ペプチドの安全性プロファイルと同等に維持されるか、又はこれより増強され得る。一側面において、上記RgIA4 ペプチド類似体は、上記RgIA4ペプチドの安全性プロファイルと実質的に等しい、又はそれより大きい安全性プロファイルを持ち得る。一例において、この安全性プロファイル1つ以上の側面により測定される。一側面において、ホールセルパッチクランプ法による自動分析を行った場合に、上記類似体は100μMの濃度でヒトether-a-go-go関連遺伝子(hERG)Kチャネルの25%未満を阻害し得る。別の側面において、CYP分析を行った場合に、上記類似体は100μMの濃度で20%未満の阻害活性を持ち得る。
一側面において、上記RgIA4 ペプチド類似体はアミノ酸配列G C (Pen) T D P R C X5 I3Y Q C β3hY X6(配列番号10)から構成され得る。一側面において、X5 はL-シトルリン、D-シトルリン、L-アルギニン D-アルギニン等、又はこれらの組合せからなる群より選択され得る。 別の側面において、X6はL-アルギニン、D-アルギニン等、又はこれらの組合せからなる群より選択され得る。
別の側面において、上記 RgIA4 ペプチド類似体はアミノ酸配列 G C (Pen) T D P R C X5 I3Y Q C 3-R-β3hY X6(配列番号11)から構成され得る。一側面において、X5はL-シトルリン、D-シトルリン、L-アルギニン D-アルギニン等、又はこれらの組合せからなる群より選択され得る。別の側面において、X6はL-アルギニン、D-アルギニン等、又はこれらの組合せからなる群より選択され得る。別の側面において、3-R-β3hYは 3-クロロ-β-3-ホモチロシン、3-フルオロ-β-3-ホモチロシン、3-ヨード-β-3-ホモチロシン、3-ブロモ-β-3-ホモチロシン、及びβ-3-ホモチロシンからなる群より選択されるペプチド残基であり得る。
別の例において、合成鎮痛性ペプチドはアミノ酸配列 G C X1 T D P R C X2 (R-3-Y) Q C X3 X4(配列番号3)から構成され得る。 一側面において、X1はL-ペニシラミン(L-Pen)、D-ペニシラミン(D-Pen)、及びL-システインからなる群より選択され得る。別の側面において、X2 はL-アルギニン、D-アルギニン、又はシトルリンからなる群より選択され得る。別の側面において、X3は何らかの アミノ酸 であってよく、X4は何らかのアミノ酸であり得る。別の側面において、R-3-Y は3-Rチロシンであり得る。一例において、R-3チロシン及びR-3-Yはペプチド残基 からなる群より選択され3-クロロチロシン、3-フルオロチロシン、3-ヨードチロシン、3-ブロモチロシン、及びチロシンからなる群より選択されるペプチド残基であり得る。
一例において、X1 はL-Penであってよく、X2 はL-アルギニンであってよく、X3 はβ-ホモチロシン、3-R-β-ホモチロシン(3-R-bhY)、L-チロシン、及びD-チロシンからなる群より選択されてよく、X4はL-アルギニン及びD-アルギニンからなる群より選択されてよい。一例において、3-R-bhYは3-クロロ-β-ホモチロシン、3-フルオロ-β-ホモチロシン、3-ヨード-β-ホモチロシン、3-ブロモ-β-ホモチロシン、及びβ-ホモチロシンからなる群より選択されるペプチド残基であり得る。一例において、β-ホモチロシンはβ-3-ホモ-L-チロシンであり得る。 別の例において、β-ホモチロシンはβ-2-ホモ-L-チロシンであり得る。
別の例において、合成鎮痛性ペプチドはアミノ酸配列G C L-Pen T D P R C R (R-3-Y) Q C X3 X4(配列番号4)から構成され得る。この例において、X3 は何らかのアミノ酸であってよく、X4は何らかのアミノ酸であってよく、R-3-Yは3-Rチロシンであってよく、ここで R-3-Yは3-クロロチロシン、3-フルオロチロシン、3-ヨードチロシン、3-ブロモチロシン、及びチロシンからなる群より選択されるペプチド残基であり得る。
別の例において、合成鎮痛性ペプチドはアミノ酸配列G C L-Pen T D P R C R (I-3-Y) Q C X3 X4(配列番号5)から構成され得る。この例において、X3は何らかのアミノ酸であってよく、X4は何らかのアミノ酸であってよく、I-3-Y は 3-ヨード-L-チロシンであってよい。
別の例において、合成鎮痛性ペプチドはアミノ酸配列G C L-Pen T D P R C R (I-3-Y) Q C (bhY) X4(配列番号6)から構成され得る。この例において、X4 は何らかのアミノ酸であってよく、I-3-Yは3-ヨード-L-チロシンであってよく、bhY はβ-ホモチロシンであってよい。一例において、bhYはβ-3-ホモ-L-チロシンであってよい。別の例において、bhYはβ-2-ホモ-L-チロシンであってよい。
別の例において、合成鎮痛性ペプチドはアミノ酸配列G C L-Pen T D P R C R (I-3-Y) Q C (3-R-bhY) X4(配列番号7)から構成され得る。この例において、X4は何らかのアミノ酸であってよく、I-3-Yは 3-ヨード-L-チロシンであってよく、3-R-bhY は3-クロロ-β-ホモチロシン、3-フルオロ-β-ホモチロシン、3-ヨード-β-ホモチロシン、3-ブロモ-β-ホモチロシン、及びβ-ホモチロシンからなる群より選択されるペプチド残基であってよい。一例において、bhY はβ-3-ホモ-L-チロシンであってよい。別の例において、bhYはβ-2-ホモ-L-チロシンであってよい。
別の例において、合成鎮痛性ペプチドはアミノ酸配列G C L-Pen T D P R C R (I-3-Y) Q C (bhY) R(配列番号8)から構成され得る。この例において、I-3-Yは3-ヨード-L-チロシンであってよく、bhYはβ-ホモチロシンであってよい。一例において、bhYはβ-3-ホモ-L-チロシンであってよい。別の例において、bhYはβ-2-ホモ-L-チロシンであってよい。
別の例において、合成鎮痛性ペプチドはアミノ酸配列G C L-Pen T D P R C R (I-3-Y) Q C (3-R-bhY) R(配列番号9)から構成され得る。この例において、I-3-Y は3-ヨード-L-チロシンであってよく、3-R-bhYは3-クロロ-β-ホモチロシン、3-フルオロ-β-ホモチロシン、3-ヨード-β-ホモチロシン、3-ブロモ-β-ホモチロシン、及びβ-ホモチロシンからなる群より選択されるペプチド残基であってよい。 一例において bhYはβ-3-ホモ-L-チロシンであってよい。 別の例において、bhYはβ-2-ホモ-L-チロシンであってよい。
別の実施形態において、α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体に対するRgIA4ペプチドの効力を、RgIA4ペプチド類似体内で維持する方法は、第1のシステインと第2のシステインとの間のシステイン間ジスルフィド架橋、及び第1のペニシラミンと第3のシステインとの間のペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋を設ける工程を含み得る。一側面において、上記方法は、上記第3のシステインにβ-ホモチロシンを結合させる工程を含み得る。別の側面において、上記方法は、L-シトルリン、D-シトルリン、L-アルギニン、D-アルギニン、L-リジン、D-リジン、L-オルニチン、及びD-オルニチンからなる群より選択されるC末端残基を設ける工程を含み得る。
一側面において、上記方法は、α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体を或る選択されたIC50値で阻害する工程を含み得る。一例において、上記RgIA4 ペプチド類似体は、α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体を下記の IC50値、即ち、上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも25.0分の1未満である、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも10.0分の1未満である、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値 の少なくとも5.0分の1未満である、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の 少なくとも2.0分の1未満である、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値と実質的に等しい、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の2.0倍を超えない、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の3.0倍を超えない、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の5.0倍を超えないIC50値で阻害し得る。
一側面において、上記方法はα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体に或る特定の選択性を与え得る。一例において、上記RgIA4 ペプチド類似体は、或る異なるニコチン性アセチルコリン受容体選択性(nAChR)サブタイプに対する選択性に比べて、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、又は200倍、500倍、又は1000倍の少なくともいずれかの倍率で高いα9α10 nAChR選択性を与え得る。
別の側面において、上記方法は、RgIA4ペプチドと比べて或る特定の値のヒト血清中安定性を与え得る。一側面において、上記RgIA4 ペプチド類似体は、α-RgIA4ペプチドのヒト血清中安定性の10%、20%、40%、60%、80%、100%、200%、300%、400%、500%、1000%の少なくともいずれかの割合で大きいヒト血清中安定性を与え得る。
別の側面において、上記方法は、RgIA4ペプチド の還元グルタチオン中安定性に比べてRgIA4ペプチドに比べて或る特定の値の還元グルタチオン中安定性を与える。一例において、上記RgIA4 ペプチド類似体は、RgIA4ペプチドの還元グルタチオン中安定性の10%、20%、40%、60%、80%、100%、200%、300%、400%、500%、又は1000%の少なくともいずれかの割合で大きい還元グルタチオン中安定性を与え得る。
別の側面において、上記方法は、RgIA4ペプチドと比べて特定の値のヒト血清中溶解度を与え得る。一例において、上記RgIA4 ペプチド類似体は、C末端残基を持たないRgIA4 ペプチド類似体に比べて、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、又は200倍、500倍、又は1000倍の少なくともいずれかの倍率で高い溶解度を与え得る。
組成物及び投薬形態s
以上を踏まえ、1つ以上の実施形態において、組成物は治療学的有効量の本開示の類似体と、薬学的に許容される担体とを組合せてなる。
一側面において、上記類似体は約0.0001重量%~約10重量%の濃度で存在し得る。一例において、上記類似体は組成物中に約0.0001重量%~約1重量%の濃度で存在し得る。別の例において、上記類似体は組成物中に約0.001重量%~約1重量%の濃度で存在し得る。更なる一例において、上記類似体は組成物中に約0.01重量%~約0.1重量%の濃度で存在し得る。幾つかの例において、上記類似体は組成物中に約0.005重量%~約0.05重量%の濃度で存在し得る。
一側面において、上記薬学的に許容される担体は水、等張化剤、緩衝剤、防腐剤等、又はこれらの組合せの1つ以上を含み得る。
幾つかの例において、上記担体は等張化剤を含み得る。等張化剤の例として塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、マンニトール、ソルビトール、デキストロース、グリセリン、プロピレングリコール、エタノール、トレハロース、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、DulbeccoのPBS、Alsever’s 溶液、Tris-緩衝化生理食塩水(TBS)、水、また平衡塩溶液(BSS)としてHank’s BSS、Earle’s BSS、Grey’s BSS、Puck’s BSS、Simm’s BSS、Tyrode’s BSS、BSS Plus等、並びにこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。上記等張化剤は、上記組成物に適切な張度を与え得る。一側面において、上記組成物の張度は約250~約350ミリオスモル/リットル(mOsm/L)であり得る。別の側面において、上記組成物の張度は約277~約310mOsm/Lであり得る。
幾つかの例において、上記担体はpH調整剤又は緩衝剤を含み得る。pH調整剤又は緩衝剤の例として数多くの酸、塩基及びこれらの組合せが挙げられ、具体的には塩酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酒石酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリエタノールアミン(TRIS)緩衝液等、又はこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、治療用組成物のpHは約5~約9、又は約6~約8であり得る。別の例において、治療用組成物のpHは約5~約6であり得る。
幾つかの例において、上記担体は防腐剤を含み得る。防腐剤の例としてアスコルビン酸、アセチルシステイン、亜硫酸水素塩、メタ亜硫酸水素塩、モノチオグリセロール、フェノール、メタクレゾール、ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、塩化ミリスチル-γ-ピコリニウム、2-フェノキシエタノール、硝酸フェニル水銀、クロロブタノール、チメロサール、トコフェロール等、又はこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
一側面において、上記組成物は更に追加の活性薬剤を含み得る。 一側面において、上記追加の活性薬剤は抗炎症剤、麻酔薬、第2の鎮痛性ペプチド、非ペプチド鎮痛剤等、又はこれらの組合せからなる群から選択されるいずれかであるが、これらに限定されない。
一例において、上記追加の活性薬剤は抗炎症剤であり得る。抗炎症剤の例としイブプロフェン、ナプロキセン、アスピリン、ジクロフェナク、セレコキシブ、スリンダク、オキサプロジン、ピロキシカム、インドメタシン、メロキシカム、フェノプロフェン、ジフルニサル、エトドラク、ケトロラク、メクロフェナム酸、ナブメトン、サルサレート、ケトプロフェン、トルメチン、フルルビプロフェン、メフェナム酸、ファモチジン、ブロムフェナク、ネパフェナク、プレドニソン、コルチゾン、ヒドロコルチソン、メチルプレドニソロン、デフラザコート、プレドニソロン、フルドロコルチゾン、アムシノニド、ジプロピオン酸ベタメゾン、クロベタゾール、クロコルトロン、デキサメタゾン、ジフロラゾン、デュタステリド、ピバル酸フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオロメトロン、プロピオン酸フルチカゾン、フルランドレノリド、ヒドロフルメチアジド等、これらの水和物、これらの酸、これらの塩基、又はこれらの塩、又はこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
一例において、上記追加の活性薬剤は麻酔薬であり得る。麻酔薬の例として アルチカイン、ブピバカイン、シンコカイン、エチドカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、プリロカイン、ロピバカイン、トリメカイン等、又はこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
一例において、上記追加の活性薬剤 は 第2の鎮痛性ペプチドであり得る。 一例において、上記追加の活性薬剤は非ペプチド鎮痛剤であり得る。非ペプチド鎮痛剤の例としてはアセトアミノフェン、コデイン、ジヒドロコデイン、トラマドール、メペリジン、ヒドロコドン、オキシコドン、モルヒネ、フェンタニル、ヒドロモルフォン、ブプレノルフィン、メサドン、ジモルフィン、ペチジン等、これらの水和物、これらの酸、これらの塩基、又これらの塩、又はこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
一側面において、上記追加の活性薬剤は約0.0001重量%~約10重量%の濃度で存在し得る。一例において、上記追加の活性薬剤は組成物中に約0.0001重量%~約1重量%の濃度で存在し得る。別の例において、上記追加の活性薬剤は組成物中に約0.001重量%~約1重量%の濃度で存在し得る。更なる一例において、上記追加の活性薬剤は組成物中に約0.01重量%~約0.1重量%の濃度で存在し得る。幾つかの例において、上記追加の活性薬剤は組成物中に約0.005重量%~約0.05重量%の濃度で存在し得る。
別の側面において、上記組成物は 溶液、懸濁液、エマルジョン、ゲル、ハイドロゲル、温度応答性ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、貼付材(adhesive)、保液材(liquid reservoir)、パッチ、又はこれらの組合せのいずれかの剤形を有し得る。幾つかの側面において、上記組成物は 局所投薬、経皮投薬、静脈内投薬、皮下投薬等、又はこれらの組合せに好適であり得る。一側面において、上記組成物は皮下注射に好適である得る。
治療方法
更に他の実施形態において、α9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体結合に起因する被験者の状態を治療する方法は、治療学的有効量の上記組成物を被験者に投与することを含み得る。一側面において、上記症状は痛みであり得る。別の側面において、上記症状は脊椎多発神経根症であり得る。別の側面において、上記症状は帯状疱疹後神経痛であり得る。別の側面において、上記症状は三叉神経痛であり得る。別の側面において、上記症状は複合性局所疼痛症候群であり得る。 別の側面において、上記症状は多発性硬化症であり得る。
上記症状が痛みである場合、この痛みとは、化学療法誘発性神経障害(CIPN)、糖尿病性神経障害、関節炎性神経障害、変形性関節炎性神経障害等、又はこれらの組合せのいずれか1つ以上を含む神経因性疼痛であり得る。別の側面において、上記痛みはHIV関連痛であり得る。別の側面において、上記痛みはハンセン病関連痛であり得る。別の側面において、上記痛みは術後疼痛、外傷後疼痛等、又はこれらの組合せの1つであり得る。
別の側面において、上記症状は癌であり得る。上記癌は、上皮性癌、肺癌、乳癌等、又はこれらの組合せの1つ以上を含み得る。
別の側面において、上記症状は炎症であり得る。一側面において、上記炎症は免疫細胞に媒介されるか、リウマチを伴う等であり、又はこれらの組合せであり得る。ここで治療の対象となる炎症状態としては、炎症、慢性炎症、リウマチ性疾患(関節炎、狼瘡、強直性脊椎炎、線維筋痛症、腱鞘炎、滑液包炎、強皮症、及び痛風を含む)、敗血症、線維筋痛症、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎及びクローン病を含む)、サルコドーシス、子宮内膜症、子宮筋腫、炎症性皮膚疾患(乾癬及び創傷治癒障害を含む)、肺の炎症状態(喘息及び慢性閉塞性肺疾患)、神経系の炎症を伴う疾患 (多発性硬化症、パーキンソン病及びアルツハイマー病を含む)、歯周病、及び心臓血管病が挙げられる。
一側面において、上記組成物は、約25μl~約1mlの上記α-RgIA4 類似体を含む投薬形態とすることができる。別の側面において、上記組成物は約1ml~約5mlの上記α-RgIA4 類似体を含む投薬形態とすることができる。一側面において、上記組成物 は約5ml~約10mlの上記α-RgIA4 類似体を含む投薬形態とすることができる。
他の実施形態において、上記治療は、投与後の選択時間内に症状を軽減し得る。治療学的有効量の上記局所組成物の投与は、状態に付随する症状を軽減し得る。別の側面において、上記治療は、投与後の選択時間内に症状を少なくとも10%軽減し得る。一例において、上記治療は、投与後の選択時間内に症状を少なくとも20%軽減し得る。更なる一例において、上記治療は、投与後の選択時間内に症状を少なくとも30%軽減し得る。更なる一例において、上記治療は、投与後の選択時間内に症状を少なくとも50%軽減し得る。
症状の軽減をもたらす投与後の選択時間は、変化し得る。一例において、上記選択時間は投与後15秒未満であり得る。 別の例において、上記選択時間は投与後30 秒未満であり得る。別の例において、上記選択時間は投与後60 秒未満であり得る。別の例において、上記選択時間は投与後5分未満であり得る。別の例において、上記選択時間は投与後15分未満であり得る。別の例において、上記選択時間は投与後30分未満であり得る。
更に別の側面において、治療学的有効量の上記組成物は被験者に1日1~10回投与し得る。一例において、上記組成物は被験者に1日1~10回投与し得る。別の例において、上記組成物は被験者に1日1~5回投与し得る。更に別の例において、上記組成物は被験者に1日3~5回投与し得る。
更なる一側面において、治療学的有効量の上記組成物は被験者に用量にしたがって投与し得る。一例において、上記組成物は約1日~約12ヶ月の期間に亘り、少なくとも1日1回投与し得る。別の例において、上記組成物は約1日~約6ヶ月の期間に亘り、少なくとも1日1回投与し得る。更に別の例において、上記組成物は約1日~約3ヶ月の期間に亘り、少なくとも1日1回投与し得る。更に別の例において、上記組成物は約1日~約1ヶ月の期間に亘り、少なくとも1日1回投与し得る。
別の側面において、治療学的有効量の上記組成物の投与は、皮下投薬、経皮投薬、局所投薬、静脈内投薬等、又はこれらを組合せた形態をとり得る。
別の側面において、α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体結合に起因する被験者の状態を治療するために用いられる組成物は、治療学的有効量の上記組成物からなり得る。別の側面において、α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体結合に起因する被験者の状態を治療するための医薬品の製造における上記組成物の使用法は、治療学的有効量の上記組成物を用い得る。
配列表
表1にRgIA、RgIA4 及びRgIA4 類似体のアミノ酸配列を示す。
Figure 2024520669000002
実施例
一例において、合成鎮痛性ペプチドはアミノ酸配列G C X1 T D P R C X2 (R-3-Y) Q C X3 X4(配列番号3)から構成されてよく、ここでX1はL-ペニシラミン(L-Pen)、D-ペニシラミン(D-Pen)、及びL-システインからなる群より選択され、X2はL-アルギニン、D-アルギニン、又はシトルリンからなる群より選択され、X3は何らかのアミノ酸であり、X4は何らかのアミノ酸であり、R-3-Yは3-Rチロシンであり、ここで3-Rチロシンは3-クロロチロシン、3-フルオロチロシン、3-ヨードチロシン、3-ブロモチロシン、及びチロシンからなる群より選択されるペプチド残基であってよい。
別の例において、X1はL-Penであり得る。
別の例において、X2はL-アルギニンであり得る。
別の例において、X3はβ-ホモチロシン、L-チロシン、及びD-チロシンからなる群より選択され得る。
別の例において、X4はL-アルギニン及びD-アルギニンからなる群より選択され得る。
別の例において、上記合成鎮痛性ペプチドはアミノ酸配列G C L-Pen T D P R C R (R-3-Y) Q C X3 X4(配列番号4)から構成され得る。
別の例において、上記合成鎮痛性ペプチドはアミノ酸配列G C L-Pen T D P R C R (I-3-Y) Q C X3 X4(配列番号5)から構成され得る。
別の例において、上記合成鎮痛性ペプチドはアミノ酸配列G C L-Pen T D P R C R (I-3-Y) Q C (bhY) X4(配列番号6)から構成され得る。
別の例において、上記合成鎮痛性ペプチドはアミノ酸配列G C L-Pen T D P R C R (I-3-Y) Q C (3-R-bhY) X4(配列番号7)から構成され得る。
別の例において、上記合成鎮痛性ペプチドはアミノ酸配列G C L-Pen T D P R C R (I-3-Y) Q C (bhY) R(配列番号8)から構成され得る。
別の例において、上記合成鎮痛性ペプチドはアミノ酸配列G C L-Pen T D P R C R (I-3-Y) Q C (3-R-bhY) R(配列番号9)から構成され得る。
別の例において、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR) α9α10サブタイプに起因する被験者の状態または障害を治療又は予防する方法は、上記合成鎮痛性ペプチドからなる組成物を治療学的有効量にて該被験者に投与することを含み得る.
別の例において、被験者の痛みを軽減する方法は、上記合成鎮痛性ペプチドからなる組成物を治療学的有効量にて被験者に投与することを含み得る。
別の例において、糖尿病性神経障害に伴う被験者の痛みを低減又は緩和する方法は、上記合成鎮痛性ペプチドからなる組成物を治療学的有効量にて該被験者に投与することを含み得る。
別の例において、化学療法に起因する被験者の痛みを低減又は緩和する方法は、上記合成鎮痛性ペプチドからなる組成物を治療学的有効量にて該被験者に投与することを含み得る。
別の例において、合成鎮痛性ペプチドの安定性を増大させる方法は、上記合成鎮痛性ペプチドを添加(provide)することを含み得る。
別の例において、合成鎮痛性ペプチドの効力を増大させる方法は、上記合成鎮痛性ペプチドを添加(provide)することを含み得る。
別の例において、合成鎮痛性ペプチドは、配列番号3~配列番号9からなる群より選択されるアミノ酸配列から構成され得る。
別の例において、RgIA4 ペプチド類似体は、α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体へ結合可能に構成された認識指紋領域と、少なくとも2種類のジスルフィド架橋、即ち、第1のシステインと 第2のシステインとの間のシステイン間ジスルフィド架橋と、第1のペニシラミンと第3のシステインとの間のペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋と、から構成されてよく、該RgIA4ペプチド類似体は、上記α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体に対して、RgIA4ペプチドが持つ結合親和性の少なくとも50%の結合親和性を持ち得る。
別の例において、 上記RgIA4ペプチド類似体は第3のシステインに結合したβ-ホモチロシンを含み得る。
別の例において、α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体に対する上記結合親和性は、上記RgIA4ペプチドの結合親和性と実質的に等しいか、又は該RgIA4ペプチドの結合親和性よりも大きくてよい。
別の例において、上記ペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋は、RgIA4ペプチドの効力に比べて効力の増強をもたらし得る。
別の例において、上記RgIA4 ペプチド類似体のα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値は、該RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも25.0分の1未満である、又は該RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも10.0分の1未満である、又は該RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも5.0分の1未満である、又は該RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも2.0分の1未満である、又は該RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値と実質的に等しい、又は該RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の2.0倍を超えない、又は該RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の3.0倍を超えない、又は該RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の5.0倍を超えない、値であり得る。
別の例において、上記ペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋は、ジスルフィド架橋のスクランブル化、ジスルフィド架橋の分解、又はこれらの組合せの1つ以上を、RgIA4ペプチド又はペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋を含まないRgIA4 ペプチド類似体に比べて減少させ得る。
別の例において、上記ペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋は、ヒト血清中の上記RgIA4 ペプチド類似体に対して、RgIA4ペプチドのヒト血清中安定性よりも高い安定性をもたらし、該ヒト血清中安定性は、該RgIA4 ペプチド類似体を25%AB型ヒト血清中、37℃で1、2、4、8、24、48、又は72時間の少なくともいずれかの期間インキュベートした後に球形で残存するRgIA4 ペプチド類似体の量によって測定される。
別の例において、上記RgIA4 ペプチド類似体のヒト血清中安定性は、上記RgIA4ペプチドのヒト血清中安定性に比べて、10%、20%、40%、60%、80%、100%、200%、300%、400%、500%、1000%の少なくともいずれかの割合で大きい値であり得る。
別の例において、上記RgIA4 ペプチド類似体は、RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体選択性と実質的に等しい α9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体選択性をもたらし得る。
別の例において、上記RgIA4 ペプチド類似体は、或る異なるニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR) サブタイプに対する選択性に比べて、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、又は200倍、500倍、又は1000倍の少なくともいずれかの倍率だけ高いα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体選択性をもたらし得る。
別の例において、上記異なるnAChR サブタイプは、α1β1、α2β2、α2β4、α3β2、α3β4 α4β2、α4β4、α6/α3β2β3、α6/α3β4、α7、又はこれらの組合せからなる群より選択され得る。
別の例において、上記RgIA4 ペプチド類似体は、 L-シトルリン、D-シトルリン、L-アルギニン、D-アルギニン、L-リジン、D-リジン、L-オルニチン、及びD-オルニチンからなる群より選択されるC末端残基を有し得る。
別の例において、上記RgIA4 ペプチド類似体は、C末端残基を持たない上記RgIA4 ペプチド類似体の溶解度に比べて、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、又は200倍、500倍、又は1000倍の少なくともいずれかの倍率で高い溶解度をもたらし得る。
別の例において、 上記RgIA4 ペプチド類似体はその還元グルタチオン中安定性が、RgIA4ペプチドの還元グルタチオン中安定性よりも高く、該還元グルタチオン中安定性は、0.1mg/mLの該RgIA4 ペプチド類似体又はRgIA4ペプチドを、10当量の還元グルタチオンを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)に溶解し、37℃で1、2、4、8、24、48、又は72時間の少なくともいずれかの期間インキュベートした後の残存量によって測定され得る。る。
別の例において、還元グルタチオン中における上記α-RgIA4 ペプチド類似体の安定性は、上記RgIA4ペプチドの還元グルタチオン中安定性に比べて、10%、20%、40%、60%、80%、100%、200%、300%、400%、500%、又は1000%の少なくともいずれかの割合で大きい値であり得る。
別の例において、上記RgIA4 ペプチド類似体は、RgIA4ペプチドと実質的に等しいかそれより大きい安全性プロファイルをもたらし、該安全性プロファイルが下記の少なくとも一方、即ち、ホールセルパッチクランプ法による自動分析の結果、上記類似体が100μMの濃度でヒトether-a-go-go関連遺伝子(hERG)Kチャネルの25%未満を阻害するか、又はCYP分析の結果、上記類似体が100μMの濃度で20%未満の阻害活性を有する、ことによって測定され得る。
別の例において、上記RgIA4 ペプチド類似体は上記アミノ酸配列G C (Pen) T D P R C X5 I3Y Q C β3hY X6(配列番号10)から構成されてよく、ここでX5 はL-シトルリン、D-シトルリン、L-アルギニン 及びD-アルギニンからなる群より選択され、X6 はL-アルギニン及びD-アルギニンからなる群より選択される 。
別の例において、X5はL-アルギニンであってよく、X6はL-アルギニンであってよい。
別の例において、上記RgIA4 ペプチド類似体は上記アミノ酸配列 G C (Pen) T D P R C X5 I3Y Q C (3-R-β3hY) X6(配列番号11)から構成されてよく、ここでX5 はL-シトルリン、D-シトルリン、L-アルギニン及びD-アルギニンからなる群より選択され、X6はL-アルギニン及びD-アルギニンからなる群より選択される。
別の例において、X5はL-アルギニンであり、X6はL-アルギニンであり得る。
別の例において、組成物は、治療学的有効量のRgIA4ペプチド類似体と、薬学的に許容される担体とを組み合わせたものであり得る。
別の例において、上記組成物は局所、経皮、静脈内、又は皮下投与に適合し得る。
別の例において、上記組成物は追加の活性薬剤を更に含み得る。
別の例において、 上記追加の活性薬剤は抗炎症剤、麻酔薬、第2の鎮痛性ペプチド、非ペプチド鎮痛剤、及びこれらの組合せからなる群より選択され得る。
別の例において、 上記追加の活性薬剤は約0.0001重量%~約10重量%の濃度で存在し得る。
別の例において、上記組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、ゲル、ハイドロゲル、温度応答性ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、貼付材(adhesive)、保液材(liquid reservoir)、パッチ、又はこれらの組合せのいずれかの剤形を有し得る。
別の例において、上記組成物は皮下注射に適合し得る。
別の例において、上記薬学的に許容される担体は、水、等張化剤、緩衝剤、防腐剤、又はこれらの組合せの1つ以上を含み得る。
別の例において、α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体に対するRgIA4ペプチドの効力を、RgIA4ペプチド類似体内で維持する方法は、第1のシステインと第2のシステインとの間のシステイン間ジスルフィド架橋、及び第1のペニシラミンと第3のシステインとの間のペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋を設ける工程と、該第3のシステインにβ-ホモチロシンを結合させる工程と、L-シトルリン、D-シトルリン、L-アルギニン、D-アルギニン、L-リジン、D-リジン、L-オルニチン、及びD-オルニチンからなる群より選択されるC末端残基を設ける工程と、から構成され得る。
別の例において、上記RgIA4 ペプチド類似体は、上記α9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体を下記のIC50値、即ち、上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも25.0分の1未満である、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも10.0分の1未満である、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値 の少なくとも5.0分の1未満である、又は上記RgIA4ペプチド のα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも2.0分の1未満である、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値と実質的に等しい、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の2.0倍を超えない、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の3.0倍を超えない、又は上記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の5.0倍を超えない、IC50値で阻害し得る。
別の例において、上記RgIA4 ペプチド類似体は、或る異なるニコチン性アセチルコリン受容体選択性(nAChR)サブタイプに対する選択性に比べて、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、又は200倍、500倍、又は1000倍の少なくともいずれかの倍率で高いα9α10 nAChR選択性をもたらし得る。
別の例において、上記RgIA4 ペプチド類似体は、α-RgIA4ペプチドのヒト血清中安定性に比べて10%、20%、40%、60%、80%、100%、200%、300%、400%、500%、1000%の少なくともいずれかの割合で高いヒト血清中安定性をもたらし得る。
別の例において、上記RgIA4 ペプチド類似体は、上記C末端残基を持たないRgIA4 ペプチド類似体の溶解度に比べて、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、又は200倍、500倍、又は1000倍の少なくともいずれかの倍率で高い溶解度をもたらし得る。
別の例において、上記RgIA4 ペプチド類似体は、RgIA4ペプチドの還元グルタチオン中安定性に比べて、10%、20%、40%、60%、80%、100%、200%、300%、400%、500%、又は1000%の少なくともいずれかの割合で大きい還元グルタチオン中安定性をもたらし得る。
別の例において、α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体結合に起因する被験者の状態を治療する方法は、上記組成物を治療学的有効量にて上記被験者に投与することを含み得る。
別の例において、上記症状は痛みであり得る。
別の例において、 上記痛みは、化学療法誘発性神経障害(CIPN)、糖尿病性神経障害、関節炎性神経障害、変形性関節炎性神経障害、又はこれらの組合せのいずれか1つ以上を含む神経因性疼痛であり得る。
別の例において、上記痛みはHIV関連痛であり得る。
別の例において、上記痛みはハンセン病関連痛であり得る。
別の例において、上記痛みは術後疼痛及び外傷後疼痛の少なくとも1つであり得る。
別の例において、上記症状は脊椎多発神経根症であり得る。
別の例において、上記症状は帯状疱疹後神経痛であり得る。
別の例において、上記症状は三叉神経痛であり得る。
別の例において、上記症状は複合性局所疼痛症候群であり得る。
別の例において、上記症状は癌であり得る。
別の例において、上記癌は上皮性癌、肺癌、乳癌、又はこれらの組合せの1つ以上であり得る。
別の例において、上記症状は多発性硬化症であり得る。
別の例において、上記症状は炎症であり得る。
別の例において、上記炎症は免疫細胞に媒介されるか、リウマチに付随するか、又はこれらの組合せであり得る。
別の例において、上記治療は、投与後の選択時間内に症状を少なくとも10%軽減させ得る。
別の例において、上記方法は、治療学的有効量の上記組成物を被験者に1日1~5回投与することを含み得る。
別の例において、上記方法は、治療学的有効量の上記組成物を被験者に対し、1日から約3ヶ月の期間中、少なくとも1日1回の用法に基づいて投与することを含み得る。
別の例において、上記方法は治療学的有効量の上記組成物を、皮下投薬、経皮投薬、局所投薬、静脈内投薬、又はこれらの組合せによる投薬形態にて投与することを更に含み得る。
別の例において、組成物は、被験者におけるα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体結合に起因する状態を治療するためのものであり、被験者にとっての治療学的有効量を含み得る。
別の例において、α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体結合に起因する被験者の状態を治療するための医薬品の製造における組成物の使用法は、上記組成物を被験者にとっての治療学的有効量にて用いることを含み得る。
実験例:
以下に述べる実施例は、本開示の然るべき実施形態についてより明快な理解を深めるためのものであり、これらに制限を加えるものではない。
実施例1:ペプチドの固相合成
本明細書で述べるペプチドは全て、Apex396自動ペプチド合成装置(AAPPTec;ケンタッキー州ルイビル)を用い、Fmoc-Tyr(tBu) Wang樹脂(ロード量0.49 mmol/g;Peptides International社;ケンタッキー州ルイビル)、Fmoc-Arg(Pbf)-Wang樹脂(ロード量0.3 mmol/g;Peptides International社)、Fmoc-Lys(Boc)-Wang樹脂(ロード量0.3 mmol/g;Peptides International社)、Fmoc-Orn(Boc)-Wang樹脂(0.73 mmol/g;Bachem社;カリフォルニア州トーランス)、Fmoc-Cit-Wang樹脂(0.42 mmol/g;Santa Cruz Biotechnology社;テキサス州ダラス)、Fmoc-Glu(OtBu)-Wang樹脂LL(Millipore Sigma社;マサチューセッツ州バーリントン)及びFmoc-Asp(OtBu)-Wang樹脂(0.51 mmol/g;Peptides International社)を用いた標準固相Fmoc(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)プロトコルを適用し、0.05mmolスケールで合成した。
Fmoc-3-ヨード-L-Tyr-OH(Peptides International社) (I3Y)を除く全ての標準アミノ酸、即ちFmoc-Pen(Trt)-OH(Pen)、Fmoc-Cit-OH及びFmoc-β-HTyr(tBu)-OHは、AAPPTec社から購入した。個々のアミノ酸の側鎖保護は、以下のとおりである。Argは2,2,4,6,7-ペンタメチル-ジヒドロベンゾフラン-5-スルフォニル(Pbf)で保護。Thr、Tyr、β-HTyrはtert-ブチル基(tBu)で保護。Lysはtert-ブトキシカルボニル基(Boc)で保護。Glnはトリチル基(Trt)で保護。ジスルフィド架橋を正しく折り畳むために、トリチル基で保護したPen残基を別のPen(Trt)と、又はトリチル基で保護されたCys残基とペア化し、他方のCys残基のペアはアセトアミノメチル基(Acm)で保護しておく。カップリングの活性化は、1当量の0.4Mベンゾトリアゾ-1-リルオキシトリピロリジノ-ホスホニウム・ヘキサフルオロリン酸塩(ChemImpex社;イリノイ州ウッドデール)及び2当量の2M N,N-ジイソプロピルエチルアミン(Millipore Sigma社;ミズーリ州セントルイス)を用い、溶媒である N-メチル-2-ピロリドン(Fisher Scientific社;マサチューセッツ州ウォルサム)中で行った。各カップリング反応では、10倍過剰量の標準アミノ酸と5倍過剰量の特別なアミノ酸を使用し、それぞれ60分間及び90分間反応させた。Fmoc脱保護は、N,N-ジメチルホルムアミド(Fisher Scientific社)に溶解した20%(v/v)ピペリジン(Alfa Aesar社;マサチューセッツ州テュークスベリー) を用いて20分間行った。
非天然アミノ酸を用いると、線形ペプチドの合成の材料費がかさむ。アミノ酸と樹脂の価格にもとづく0.05mmolスケールでの合成の概算費用は、RgIAで1.2ドル、RgIA4とRgIA5で2.9ドル、RgIA-5474で9ドルである。
実施例2:ペプチドの脱離、精製、及び酸化的折り畳み
ペプチドの脱離、精製、及び酸化的折り畳み
本明細書で述べる合成ペプチドには、RgIA-5474の樹脂からの脱離、精製、及び2段階(two-operation)酸化的折り畳みについて述べるプロトコルを適用した。
RgIA-5474の脱離と精製
上記ペプチドは、トリフルオロ酢酸(TFA)/フェノール/エタンジチオール/チオアニソール/水(体積比で9:0.75:0.25:0.5:0.5)(各々Fisher Scientific社、Millipore Sigma社、Millipore Sigma社、Acros Organics社)からなる試薬 Kを用いて、樹脂から脱離させた。続いて、この脱離混合物を濾過し、150mLの冷却メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE;Fisher Scientific社)を用いて沈殿させた。この粗ペプチドを7,000G、7分間の遠心分離で沈殿させ、150mLの冷却MTBEで2回洗浄した。粗ペプチドを50mLのHPLC緩衝液Bで希釈し、調製用C18 Vydac カラム(218TP101522、250×22mm、粒径5μm)を用いる逆相(RP)HPLCで精製した。溶出条件は、緩衝液Bの直線濃度勾配10%~50%、40分間、流速20mL/minとした。HPLC緩衝液は、0.1%(体積比)TFAを含む水溶液(緩衝液A)、及び0.092% TFA(体積比)を含む60%アセトニトリル水溶液(Fisher Scientific社)(体積比)(緩衝液B)とした。溶出液は220/280nmでの吸光度でモニタした。ペプチドの純度は分析用C18 Vydac RP-HPLC(218TP54、250×4.6mm、粒径5μm)を用い、上述と同じ濃度勾配、流速1mL/分の条件で評価した。約200mgの樹脂から、4,318nmolの線形 RgIA-5474 が調製された。この線形RgIA-5474のHPLCチャートを図4Aに示す。HPLCチャートの取得条件は、RP-HPLC、C18カラム使用、緩衝液Bの直線濃度勾配10%~50%、40分間である。
実施例3:ジスルフィド結合の形成
RgIA-5474 第1のジスルフィド結合形成(2Cys-8Cys)
20mMフェリシアン化カリウム(0.659 g;2 mmol;Millipore Sigma社)と0.1M Tris塩基(1.21 g;10 mmol;Millipore Sigma社)とを100mLのナノピュア水に溶解した溶液に、緩衝液Aで希釈して全体を150mLとした4,318nmolの線形 RgIA-5474を滴下した(ペプチド 最終濃度は約20 μM、pH7.5)。この反応は、45分間、室温で行い、250mLの緩衝液Aで希釈してpHを下げることにより停止させた。続いて、反応混合物をディスポーザブル C18カートリッジ(Thermo Fisher社、Hypersep Spe C18 1000 mg/8 mL)に通過させ、緩衝液Bを用いてペプチドを溶出した。反応効率とペプチドの純度を、線形ペプチドについて上述した如く、分析用RP-HPLCで分析した。4,318nmolの線形ペプチドから、2,387nmolsの単環形RgIA-5474が得られた(収率55%、純度85%)。 単環形RgIA-5474のHPLCチャートを図4Bに示す。HPLCチャートの取得条件は、RP-HPLC、C18カラム使用、緩衝液Bの直線濃度勾配10%~50%、40分間である。
RgIA-5474 第2のジスルフィド結合形成(3Pen-12Cys).
アセトアミノメチル基の脱離と、第2のジスルフィド架橋形成はヨウ素酸化により行った。76mgのヨウ素(2 mmols;Acros Organics社) を15mLのアセトニトリルに加え、完全に溶解するまで撹拌した。続いて45mLのナノピュア水を加え、更に1.8mLのTFAを加えた。90mLの緩衝液Aで希釈した2,387nmolsの単環形RgIA-5474の溶液を、60mLの10mMヨウ素液(上述の通り調製)に滴下し、室温で10分間反応させた。ペプチドの最終濃度は20μM付近に保った。 1Mアスコルビン酸(0.176 g、1 mmol;Research Products International社、イリノイ州マウントプロスペクドMount Prospect、IL)を水( 1mL)に溶解して新たに調製した水溶液を5~10滴、溶液が透明になるまで滴下して反応を抑制した。続いて反応液を緩衝液Aで5倍に希釈し、線形ペプチドについて上述した如く、調製用C18カラムを用いたRP-HPLCで精製し、1,568nmolの完全折畳み形RgIA-5474を得た。
RgIA-5474の純度及び最終収率を、分析用C18カラムを用いたRP-HPLCにより、線形ペプチドについて上述した濃度勾配を適用して測定し、それぞれ96%及び36%(線形ペプチドの出発量にもとづく) と算出された。質量の算出値RgIA-5474 [MH]+1= 1887.75は、ユタ大学の質量分析・プロテオミクス基幹研究所(Mass Spectrometry and Proteomics Core Facility)にあるマトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間(MALDI-TOF)質量分析、及びエレクトロスプレーイオン化(ESI)により、[M+H]+1= 1887.59 であると検証された。完全折畳み形のRgIA-5474のHPLCチャートを図4Cに示す。HPLCチャートの取得条件は、Vydac RP-HPLC(218TP54、250×4.6mm、粒径5μm)カラム使用、緩衝液Bの直線濃度勾配10%~50%、40分間である。分析用RP-HPLCで決定した完全折り畳み形のペプチドの純度は、いずれも95%以上である。結果を図5A及び5Bに示す。全ての完全折り畳み形ペプチドの質量分析結果、純度、及び保持時間(RT)を、表3Aに示す。
Figure 2024520669000003
図5Aに示す様に、チャートは室温、分析用C18 Vydac RP-HPLC(218TP54、250×4.6mm、粒径5μm)使用、緩衝液Bの濃度勾配10%~50%、40分間、流速1mL/分の条件で取得した。使用緩衝液は、0.1%(体積比)TFA水溶液(緩衝液A)と、0.092%TFA(体積比)を含む60%アセトニトリル水溶液(Fisher Scientific社)(体積比)(緩衝液B)である。RgIA-5493のHPLCチャートは、45℃、緩衝液B(90%アセトニトリルを含む0.1%TFA水溶液)の直線濃度勾配10%~50%、40分間、流速1mL/分の条件で取得した。
図5Bに示す様に、チャートは分析用C18 Vydac RP-HPLC(218TP54、250×4.6mm、粒径5μm)使用、緩衝液Bの濃度勾配10%~50%、40分間、流速1mL/分の条件で取得した。使用緩衝液は、0.1%(体積比)TFA水溶液(緩衝液A)と、0.092%TFA(体積比)を含む60%アセトニトリル水溶液(Fisher Scientific社)(体積比)(緩衝液B)である。
実施例4:選択的ペニシラミン置換がIC 50 に及ぼす影響
ここではペニシラミン(Pen)を用いて検討する。 β,β-ジメチル置換システインはジスルフィド架橋及び全体的なペプチドの立体配座に対し、小型ではあるが効果的な局所的空間制約を導入することができる。RgIAの類似体であるRgIA4 を用いることができる。RgIA4配列中の各Cys残基を順次L-Pen残基に置き換え、ヒトα9α10 nAChR に対する効果を検討した。結果を表4Aに示す。
Figure 2024520669000004
Figure 2024520669000005
Pen残基の位置がペプチド効力に影響を与えた。2Cys-8Cys ジスルフィド架橋中の2CysをL-Penで置換すると、ヒトα9α10 nAChR に対する効力が、RgIA4に比べて800分の1に減少した(RgIA4 IC50 = 1.5 nMに対して、 RgIA5439 IC50 >1200 nM)。同様に、2Cys-8Cysジスルフィド架橋中の8CysをL-Penで置換すると、ヒトα9α10 nAChRに対する効力が、RgIA4に比べて600分の1に減少した(IC50= 1.5 nM に対して、RgIA5440 IC50 >1000 nM)。2Cys-8Cys ジスルフィド架橋中の2Cysと8Cysの両方をL-Penで置換した場合も、同等の効果が得られた(RgIA-5493 IC50 >1000 nM)。2Cysと8Cysとの間のジスルフィド架橋は、α-コノトキシンと神経性nA-ChRとの間の相互作用に関与すると考えられてきた。Penの嵩高い2つのβ-メチル基が、この相互作用を邪魔している可能性がある。Pen残基の2つのメチル基が立体配座にどの様な影響を及ぼしているかは、NMRで調べることができる。
これに対し、3Cys-12Cys ジスルフィド架橋中のCysをPenで置換すると、効力の低下が抑えられた。3Cys-12Cys ジスルフィド架橋中の12Cysの置換により、効力は約16分の1に低下した(RgIA4 IC50 = 1.5 nMに対して、RgIA-5409 IC50 = 24 nM)。同程度の効力の低下が、3Cys-12Cys ジスルフィド架橋中の3Cysと12Cysの両方を置換した場合にも見られた(RgIA-5446 IC50 >33 nM)。
しかし、3位をL-Penで置換したRgIA-5408類似体は、低ナノモル親和性を維持した(RgIA-5408 IC50= 1.3 nM)。この傾向は、RgIAのもう1つの類似体であるRgIA5.22の3Cys をL-Pen で置換した場合にも観察された。こうして生じたペプチドであるRgIA-5432は、RgIA5と同等の強さでヒトα9α10 nAChRをフロックした(RgIA-5432 IC50 = 0.39 nM 及びRgIA5 IC50= 0.44 nM)。
CysをPenで置換すると、どのCysが置換されたかにより様々な効果が現れた。4ヶ所中3ヶ所のCysをPenで置換すると、所望の活性が大きく損なわれた。対照的に、3CysをPenで置換しても所望の活性は維持された。このことは、選択的なCys 置換が所望の高親和性をもたらすことを示している。RgIA-5474で抗力の増大が見られたことも、配列内にPenが存在した結果であることが判明した。このことを確認するために、3Pen 残基を3Cysで置換したRgIA-5474の類似体を合成した。
実施例5:側鎖の配向が IC 50 に及ぼす効果
各システインの側鎖の空間配向も或る役割を果たしている。天然RgIA中の各L-Cys をD-Cysで個々に置換する実験において、2Cys又は12Cysを変異させると類似体はヒトα9α10 nAChR に対して不活性となった(IC50 >10 μM)。加えて、天然RgIAの各L-Cysを個別にD-Cys と置換する実験において、3Cys と8Cys を変異させた類似体は抗力が劇的に低下した(各々IC50 = 6440 nM 及びIC50 = 6950 nM)。同様の効果は、配列中の個々のCysをD-Penで置換した場合にも観察された。この結果得られた類似体は、10μM濃度にてヒトα9α10 nAChR に対する活性を殆ど又は全く示さなかった。
実施例6:C末端の修飾がIC 50 に及ぼす効果
第1の試験グループ中、RgIA5 のPen含有類似体である RgIA-5432が最も強力だったので、これをペプチドの次のセットの設計に用いた。Pen残基を導入すると、3Pen RgIA-5432はその疎水性が増し、沈殿し易くなった。正電荷を持つL-ArgをC末端である14位に付加させると、図6Aに示した様に、ペプチドはその効力に影響を及ぼすことなく溶解度を増大させた。13Tyrと14Argの双方をそれぞれ D-Tyr とD-Argで置換すると、RgIA-5433の効力は約4分の1に低下した。このことは、C末端残基の空間配向がペプチドの受容体結合能に影響を及ぼすことを示している。
Figure 2024520669000006
RgIAの構造活性相関(SAR)を検討したところ、第1のループ内残基である5Asp、6Pro、及び7Arg はペプチド をnAChRへの結合に仕向ける役割を果たし、9ArgはnAChRのα9α10サブタイプに対する選択性を促進する役割を果たす。また、SARデータから、Arg13Tyr変異がRgIA 効力を増強し得ることが明らかになった。β-アミノ酸は天然α-アミノ酸の同族体であり、アミノ酸主鎖のカルボキシ基の直前にメチレン基を1つ余分に有する。側鎖はα炭素、β炭素のいずれかに結合してよく(それぞれβ2-又はβ3-類似体と称する)、或いは両方に結合してもよい。側鎖の結合位置13Tyrを維持するために、この残基をβ3-ホモチロシン(β3hY) で置換して類似体 RgIA-5474(IC50 = 0.0504 nM)を合成した。RgIA-5474 類似体中にこの変化が存在することにより、天然RgIAのヒトα9α10 nAChRに対する効果が9000倍に増強された。
飽和濃度(10 nM)では、RgIA-5474 はRgIAに対して結合後に解離しにくい(slow off-rate) 挙動を示し、5分間のペプチド・ウォッシュアウト後の回収量は、10μMのRgIAでは99%を超えていたのに対し(データは割愛)、RgIA-5474では3%(±1.7)であった。これらの結果は、14Arg残基が一部、モジュレーションを介して親和性に寄与していることを示している。14位に D-Argを導入すると、その抗力は表6Aに示す如く、全L型類似体に比べて7分の1に低下した(IC50 = 0.36 nM)。このことは、受容体内における14Argの側鎖の配置が抗力に影響を及ぼし得ることを示している。
実施例 7:C末端の電荷がIC 50 に及ぼす効果
C末端Argの役割を解明するため、正電荷、中性、又は負電荷を持つ他のアミノ酸で14Argを置換した一連のRgIA-5474類似体 (表7A参照)を調製した。14Lysと14Orn(オルニチン。タンパクを構成しない アミノ酸であり、第1アミンの形で終端するLysよりもメチレン基1つ分、短い側鎖を持つ)で置換して得られた各類似体は、それぞれ効力が7分の1、5分の1に低下した。中性の 14Cit(シトルリン。無電荷のアルギニン類似体で、カルバモイルアミノ基の形で終端する)で置換すると、抗力が8分の1に低下した。したがって、14Argの付加は、Argのグアニジウム基を介した1つ以上の水素結合を、受容体残基又は近隣のコア結合部位との間に形成可能とする。負電荷を持つGluで14位を置換すると、効力は28分の1に低下した(RgIA-5687はIC50 =1.4 nM)。
Figure 2024520669000007
データを総合すると、RgIA-5474の高い効力に寄与する構成要素は、下記の如く幾つかが考えられる。即ち、(i)ペプチドの第1のループに導入された変異(Ser4Thr)と第2のループに導入された変異(Tyr10I3Tyr、Arg11Gln)、(ii)C末端の修飾(Arg13Tyr)、及び(iii)一連の類似体において、β-ホモチロシンは14Argの側鎖をペプチドの主鎖からメチレン基1つ分遠ざけ、これによりグアニジニウム基とチャネルの相互作用が促進されたこと、である。
実施例8: RgIA4 及びRgIA-5474のヒト血清中安定性
方法-血清中安定性の測定
150nmolのRgIA4 及びRgIA-5474を250μLの水に溶解し、この溶液を750μLのヒト血清溶液(AB型男性のヒト血漿を滅菌濾過し、1回解凍し、15分間予備遠心を行って脂質を除去し、250μLの上清を500μLの水に添加したもの;Millipore Sigma社)に添加し、25%ヒト血清を調製した。血清濃度を25%としたのは、反応速度が血清濃度に直線的に依存すること、及びペプチド濃度は律速因子ではないからである。この溶液中におけるペプチドの最終濃度は150μMであった。上記ペプチド-血清溶液を37℃でインキュベートし、24時間後に100μLずつサンプル溶液を採取し、50μLの氷冷したアセトニトリル(HPLCグレード)で処理し、氷浴上で15分間冷却した。この懸濁液を13,000rpmで5分間、室温で遠心した。続いて、上清の10μLを採取し、90μLの緩衝液A(0.1%TFA水溶液)で希釈して、HPLCサンプルを調製した。
サンプルはRP-HPLCにて、緩衝液Bに40分間に亘り10%~50%の直線勾配を付けながら測定した。280nmにおけるペプチドのピーク面積を積算し、残存ペプチド量を初期ペプチド量と比較してグラフ化した。血清中安定性の測定は、各ペプチドにつき3検体を用い、2回ずつ繰り返した。標準ペプチドRgIA4の合成は前述したとおりであり、リボン形のRgIA4はRgIA4に関して述べたプロトコルに従って合成し、99%の純度で得られた(RT及びMSのデータは表3Aに示す)。リボン形のRgIA-5474は RgIA-5474に関して述べたプロトコルに従って合成し、そのジスルフィド架橋は、3Pen-8Cysを最初に形成し、2Cys-12Cys を次に形成した。このリボン形のRgIA-5474は、99%の純度で得られた(RT及びMSのデータは表3Aに示す)。
結果:
RgIA-5474のヒト血清中安定性をRgIA4と比較した。血清濃度を25%としたのは、反応速度を血清濃度に対して直線的依存とすること、及びペプチド濃度が律速因子ではないことを実証するためである。図1にRgIA4とRgIA-5474の25% ヒト血清中安定性を示す。上段のパネルは、標準ペプチドであるRgIA4 及びRgIA-5474について、各々の球形及びリボン形の標準ペプチドの混合物(約1:1)のHPLCチャートを示す。下段のパネルは、24時間後の血清中安定性(n=6)を示す。反応は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)、C18カラム使用、40分間に亘る緩衝液Bの濃度勾配10%~50%、流速1mL/分の条件でモニタした。RgIA5の血清中安定性のデータを図8に示す。
図1に示す様に、RgIA-5474はその構造的完全性を維持しており、24時間後に94%(±0.7)が球形、6%(±0.7)がリボン形で存在していた。これに対し、RgIA4 のジスルフィド結合を実質的に再シャッフルすると、64%(±0.5)が球形、36%(±0.5)がリボン形で存在する結果となった(HPLCピーク面積から算出。n=6)。このデータは、ペニシラミンのジスルフィド架橋に対する保護効果を示しており、これはそのβ,β-ジメチル基が立体障害を発揮し、再シャッフル速度を低下させた為である。
実施例9:α9α10 nAChRに対するRgIA-5474の選択性
方法: 受容体の薬理学的性質
非nAChR 標的に対する合成RgIA-5474の作用を、Eurofins Cerep社の創薬支援サービス(Pharma Discovery Service) (フランス国Celle l’Evescault)によるCYP阻害試験で検討した。自動化パッチクランプ法による電気生理学的分析で、ヒトether-a-go-go-related 遺伝子(hERG)の機能を調べた。RgIA-5474は退役軍人省メディカル・センター・リサーチ・サービス(R&D-22) 、オレゴン州ポートランドにおいて、セロトニン、ドーパミン及びオピオイドの各受容体、及び生体アミン輸送に対する効果を検討した。この分析の詳細とデータを表9B~9Fに示す。
選択性:
類似体 RgIA-5474 は、合成した一連の類似体の中でも最も活性の強いペプチドで、α9α10 nAChRに対して高い選択性を示した。このRgIA-5474ペプチドの選択性をヒト及びラットnAChRの幾つかの異なるサブタイプについて検討した結果を表9Aに示す。RgIA-5474ペプチドは、ヒト7 nAChRを除く全ての試験対象のサブタイプに対して不活性であり(IC50 >10,000 nM)、そのヒト7 nAChRに対しても効力はヒトα9α10 nAChR に対する効力の2000分の1であった。RgIA-5474 はラットα9α10 nAChRに対するその効力を IC50 = 0.39 nMに維持したが、ラット7に対しては顕著な低下が観察された。RgIA-5474は更に、μ-、δ- 及びκ-の各オピオイド受容体サブタイプ;N-及びL-型Ca2+チャネル;セロトニン-及びノルエピネフリン-トランスポーター;広範囲な関連受容体及びイオン・チャネルについても検討したが、表9B~9Fに示す様に、その活性はマイクロモル・レベルで低いか、或いは認められなかった。したがって、RgIA-5474は選択性の高いペプチドである。
Figure 2024520669000008
イオン・チャネル、受容体 及びトランスポーターに対するrgia-5474の結合活性
非nAChR 標的に対する合成RgIA-5474の作用を、Eurofins Cerep社の創薬支援サービス(Pharma Discovery Service) (フランス国Celle l’Evescault)による結合試験で検討した。上記ペプチドを0.1μM及び10μMでスクリーニングし、各実験は2回ずつ行った。表9Bに10μM(2回の実験の平均)の場合の結果を示すが、例外としてニコチン性ニューロンα7については100nMの場合の結果も示した(*)。個々の放射性リガンドはKd濃度で使用した。特に断らない限り、安定的又は過渡的にトランスフェクトされたヒト・チャネル受容体又はトランスポーターを発現する組替え細胞株を使用した(ラットの大脳皮質、小脳、又は脊椎を使用)。結合活性は、各標的に特異的な放射性ラベル・リガンドの結合の阻害率(%)として算出した。 阻害又は刺激が50%より高ければ、「有意な効果あり」とした。ヒトether-a-go-go関連遺伝子 (hERG) 機能の評価には自動化パッチクランプ法による電気生理学的分析を用い、心臓毒性の可能性を予測した。各ペプチドのIC50は、表9Cに示す如く、 10nmol、100nmol、1μM、10μM及び100μMの各濃度で2検体ずつ行った。「N.C.」は「算出せず (not calculated)」の意である。ヒトGABAB1b 受容体に対するRgIA-5474s のアゴニスト活性及び阻害剤活性は、ヒト組替えRBL細胞を用い、蛍光分析で測定した。
機能IC50 及びEC50の決定に際しては、実験を2回ずつ別々に行い、ペプチドは3nM~10μMの間の8段階の濃度で添加した。結果を表9Dに示す。効力は、既知の作動薬のコントロール応答値に対する割合(%)として算出した。阻害又は刺激が50%より高ければ、「有意な効果あり」とした。「N.C.」は「算出せず (not calculated)」の意である。
RgIA-5474 はまた、0.1μM及び10μMの濃度にてチトクロームP450阻害分析によっても検討した。濃度10μM時の結果と、2回の分析の平均値を表9Eに示す。
最後に、RgIA-5474は退役軍人省メディカル・センター・リサーチ・サービス(R&D-22) 、オレゴン州ポートランドにおいて、セロトニン、ドーパミン及びオピオイドの各受容体、及び生体アミン輸送に対する効果についても検討した。結果を表9Fに示す。各受容体について、ペプチドは独立した2回の実験で、各々少なくとも3検体を用いて試験を行った。データは、既知のコントロール特異的結合に対する割合(%)で表す。数値は特に断らない限り、2回の独立した実験で得られた「平均±誤差範囲」であり、各値は少なくとも3検体を用いて算出した。
Figure 2024520669000009
Figure 2024520669000010
Figure 2024520669000011
Figure 2024520669000012
Figure 2024520669000013
実施例10:RgIA-5474の鎮痛効果
方法 - マウスにおけるオキサリプラチン誘発性末梢神経障害
マウスに神経障害を誘導した。オキサリプラチン(MedChem Express社、ニュージャージー州モンマス・ジャンクション)を0.875μg/μL濃度で0.9%NaClに溶解し、滅菌濾過した。RgIA-5474を0.01及び0.001μg/μL濃度で0.9%NaClに溶解し、滅菌濾過した。マウスを同個体数ずつ4グループに分け(n=8個体)、生理食塩水(腹腔内)+生理食塩水(皮下)、オキサリプラチン(3.5 mg/kg 腹腔内) + 生理食塩水(皮下)、オキサリプラチン(3.5 mg/kg、腹腔内) + RgIA-5474 (40 μg/kg、皮下)、及びオキサリプラチン(3.5 mg/kg、腹腔内)+ RgIA-5474 (4 μg/kg、皮下)をそれぞれ注射した。マウスには水曜日、木曜日、金曜日に1日1回の注射を行い、月曜日と火曜日に再び注射を行った。マウスへの注射を週7回ではなく週5回に簡略化したのは、関連化合物の過去のデータに基づいている。週7回投与により週5回投与に比べて鎮痛効果が増強されたか否かについては、検討していない。マウスは水曜日、日々の注射前(前回の注射から24時間後)に試験に供した。この注射パターンをさらに2週間、22日目まで繰り返し、再びマウスを毎水曜日に試験に供し、効果を追跡した。試験はコールド・プレート試験チャンバ(IITC Life Science社)を用いて行った。マウスを室温(23℃)で2~5分間馴化させた。続いて温度を1分間10℃の速度で低下させた。マウスが両前肢を持ち上げ、身震いや舐める動作を示したところで試験を中止した。前肢を交互に持ち上げる行動は点数化しなかった。試験期間中を通して、注射した化合物の種類は秘匿した。データはダネットの多重比較検定を用いる一元配置分散分析(one-way ANOVA) (GraphPad Prism社、GraphPadソフトウェア、カリフォルニア州サンディエゴ)により行った。
結果:
RgIA-5474の鎮痛作用の分析結果を図2に示す。マウスには毎日、前述の様にオキサリプラチン(ox;3.5 mg/kg) を腹腔内注射した。対照群のマウスにはビヒクルを投与した。RgIA-5474は滅菌生理食塩水(sal)に溶解し、毎日、皮下注射した。冷感異痛の尺度として、逃避反射潜時を用いた。この冷感異痛試験は、8日目、15日目、及び22日目に、RgIA-5474 を4μg/kg(パネルA)及び40μg/kg(パネルB)投与して24時間後に行った。実験値は各実験につき8匹のマウスの「平均±SEM」で表した。 ***P < 0.001、**P < 0.01、*P < 0.05 をビヒクルに対する「有意差あり」とする。
化学療法誘発性の末梢神経障害は、各種の癌の治療に用いられる白金製剤の副作用である。この痛みは、オピオイド使用量をかなり増大させることで取り除くことができる。多くの場合、痛みは一部可逆的であるが、症状は何年も続く場合があり、神経損傷は永続的であり得る。現状では神経障害を防止又は治療する承認薬は、 化学療法による治療の早期中止を余儀なくされる場合が多い。今回、マウスのオキサリプラチン誘発性末梢神経障害モデルを用いてRgIA-5474を検討した。RgIA-5474は化学療法誘発性の冷感異痛又は痛みを伴う寒冷感作を改善させることができた。
オピオイド系の薬物群は、耐性を発現させ得る。オピオイドの慢性的な使用は、治療効果を低減させ、初期鎮痛を達成するための用量を増やしてしまう。この現象は、オピオイドの使用を停止した後、より高い用量で使用を再開した場合に偶発的な過量投薬をしばしば引き起こす。RgIA-5474の定用量では耐性は観察されなかった。3週間に亘って15回投薬を行った段階では、治療効果は明白でなかった。また、RgIA-5474の治療効果 は治療停止後4週間持続した。
ペニシラミン及びβ-ホモチロシンを選択的に導入することにより、天然型ペプチドの活性がより高められ、これにより効力、選択性、スルフィドの再シャッフル耐性が増大した。したがって、このクラスのペプチドの活性に果たすジスルフィドの役割が確認され、追加の残基がα9α10 nAChRに対する効力に貢献していることが示された。したがって、RgIA-5474は、高い効力、選択性、及び非オピオイド系作用機序を持つペプチドである。
実施例11:電圧クランプによる記録
方法 - 二電極電圧クランプ法による記録
クローン・ラット又はヒトnAChR サブタイプを発現させるために、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)(Xenopus1社、ミシガン州デクスター)の卵母細胞を用いた。記録は、注射から1~5日後に行った。卵母細胞の電圧を室温で-70mVに固定し、60秒間隔でアセチルコリンの急速静注を1秒間行うパルスを印可し、RgIA類似体を本明細書で述べる様に流した。阻害剤ブロックに続く電流の急増を抑えるために、特記したケースについてはCa2+に代えてBa2+を用いた。α9α10 及びα7 nAChRの阻害をヒル勾配値に対してプロットした濃度反応曲線を図6A~6C、7、9A、9B及び表4Bに示す。
図6A~6Cは、ヒトα9α10 nAChR阻害の濃度反応曲線である。ヒトα9α10 nAChRをX. laevis 卵母細胞中に異種発現させた。各種ペプチドの抗力を、本明細書中で述べた二電極電圧クランプ法による電気生理学的手法で評価した。各データ点は、卵母細胞から得られた平均±SEM で表す。
図7は、RgIA-5711によるヒトα9α10 nAChR阻害の濃度反応曲線である。ラットα9α10 nAChRをX. laevis 卵母細胞中に異種発現させ、当該ペプチドの抗力を、本明細書中で述べた二電極電圧クランプ法による電気生理学的手法で評価した。各データ点は、卵母細胞から得られた平均±SEM で表す。
図9Aは、RgIA-5474によるヒトα7 nAChR阻害の濃度反応曲線である。ヒトα7 nAChRをX. laevis 卵母細胞中に異種発現させ、当該ペプチドの抗力を、本明細書中で述べた二電極電圧クランプ法による電気生理学的手法で評価した。各データ点は、卵母細胞から得られた平均±SEM で表す。
図9Bは、RgIA-5474によるラットα9α10 nAChR阻害の濃度反応曲線である。ラットα9α10 nAChRをX. laevis 卵母細胞中に異種発現させ、当該ペプチドの抗力を、本明細書中で述べた二電極電圧クランプ法による電気生理学的手法で評価した。各データ点は、卵母細胞から得られた平均±SEM で表す。
本技術を説明するための各フローチャートは、或る特定の実行順を意味し得るが、この実行順は図示されたものと異なっていてもよい。例えば、2つ以上のブロックを、図示されている順番とは入れ替えてもよい。更に、2つ以上の立て繋がりのブロックを並列にする他、部分的に並列にしてもよい。構成によっては、フローチャート内の1つ以上のブロックを省略する他、飛ばしてもよい。各ブロックの番号は、 使い勝手、アカウンティング、性能、測定、トラブルシューティング等の目的で、論理の流れに沿って付してよい。
図面に示した例を参照し、またこれらを説明するために特定の言葉を用いたが、これらは本技術の範囲に制限を加えることを何ら意図しないものと理解される。本明細書に記載した特徴の変更や更なる改変、及び明細書に記載した実施例の更なる応用も、上記記載の範囲内に含まれるものと理解される。
更に、上述の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施例において如何様にも組み合わせてよい。以上の説明では、上記技術の実施例の十分な理解を助けるべく、様々な構成例等、数々の具体的な詳細を述べてきた。但し、上記技術はこれら具体的な詳細の1つ以上を含めることなく、或いは他の方法、構成要素、装置等を組み合わせても実施可能であると認識される。他の例では、上記技術の側面を曖昧にすることがない様、よく知られた構造や作用については詳述していない。
上記主題を構造上の特徴及び/又は作用に特化した言葉で説明してきたが、特許請求の範囲で定義された当該主題は、上述の具体的な特徴や作用に必ずしも限定されないものと理解されるべきである。むしろ、上記の具体的な特徴や作用は、特許請求の範囲に記載された技術の実行例として開示したものである。上述の技術の趣旨と範囲を逸脱しない限りにおいて、数々の改変や別の構成が案出されてもよい。
上述の詳細な説明は、具体的な実施形態の例を参照しながら行ってきたが、特許請求の範囲に述べた本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、様々な改変や変更も可能であると理解される。上記の詳細な説明と添付図面は、限定的ではなく単に説明を目的としており、上述のような改変や変更があったとしても、それらは全て、本明細書で述べた本開示の範囲内に含まれる意図である。

Claims (73)

  1. アミノ酸配列 G C X1 T D P R C X2 (R-3-Y) Q C X3 X4(配列番号3)からなる合成鎮痛性ペプチドであって、
    X1はL-ペニシラミン(L-Pen)、D-ペニシラミン(D-Pen)、及びL-システインからなる群より選択され、
    X2はL-アルギニン、D-アルギニン、又はシトルリンからなる群より選択され、
    X3は何らかのアミノ酸であり、
    X4は何らかのアミノ酸であり、
    R-3-Yは3-Rチロシンであり、該 3-Rチロシンは3-クロロチロシン、3-フルオロチロシン、3-ヨードチロシン、3-ブロモチロシン、及びチロシンからなる群より選択されるペプチド残基であってよい、合成鎮痛性ペプチド。
  2. X1がL-Penである、請求項1に記載の合成鎮痛性ペプチド。
  3. X2 がL-アルギニンである、請求項1に記載の合成鎮痛性ペプチ
    ド 。
  4. X3 がβ-ホモチロシン、L-チロシン、及びD-チロシンからなる群より選択される、請求項1に記載の合成鎮痛性ペプチド。
  5. X4 がL-アルギニン及びD-アルギニンからなる群より選択される、請求項1に記載の合成鎮痛性ペプチド。
  6. アミノ酸配列 G C L-Pen T D P R C R (R-3-Y) Q C X3 X4(配列番号4)からなる、請求項1に記載の合成鎮痛性ペプチド。
  7. アミノ酸配列 G C L-Pen T D P R C R (I-3-Y) Q C X3 X4(配列番号5)からなる、請求項1に記載の合成鎮痛性ペプチド。
  8. アミノ酸配列 G C L-Pen T D P R C R (I-3-Y) Q C (bhY) X4(配列番号6)からなる、請求項1に記載の合成鎮痛性ペプチド。
  9. アミノ酸配列 G C L-Pen T D P R C R (I-3-Y) Q C (3-R-bhY) X4(配列番号7)からなる、請求項1に記載の合成鎮痛性ペプチド。
  10. アミノ酸配列 G C L-Pen T D P R C R (I-3-Y) Q C (bhY) R(配列番号8)からなる、請求項1に記載の合成鎮痛性ペプチド。
  11. アミノ酸配列 G C L-Pen T D P R C R (I-3-Y) Q C (3-R-bhY) R(配列番号9)からなる、請求項1に記載の合成鎮痛性ペプチド。
  12. ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)α9α10サブタイプに起因する被験者の状態又は障害を治療又は予防する方法であって、請求項1に記載の前記ペプチドからなる組成物を治療学的有効量にて該被験者に投与することを含む、方法。
  13. 被験者の痛みを低減する方法であって、請求項1に記載の前記ペプチドからなる組成物を治療学的有効量にて該被験者に投与することを含む、方法。
  14. 糖尿病性神経障害に伴う被験者の痛みを低減又は緩和する方法であって、請求項1に記載の前記ペプチドからなる組成物を治療学的有効量にて該被験者に投与することを含む、方法。
  15. 化学療法に起因する被験者の痛みを低減又は緩和する方法であって、請求項1に記載の前記ペプチドからなる組成物を治療学的有効量にて該被験者に投与することを含む、方法。
  16. 合成鎮痛性ペプチドの安定性を増大させる方法であって、請求項1に記載の前記ペプチドを添加(provide)することを含む、方法。
  17. 合成鎮痛性ペプチドの効力を増大させる方法であって、請求項1に記載の前記ペプチドを添加(provide)することを含む、方法。
  18. 配列番号3~配列番号9からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、合成鎮痛性ペプチド。
  19. α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体へ結合可能に構成された認識指紋領域と、
    少なくとも2種類のジスルフィド架橋、即ち、第1のシステインと第2のシステインとの間のシステイン間ジスルフィド架橋と、第1のペニシラミンと第3のシステインとの間のペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋と、
    を有するRgIA4 ペプチド類似体であって、
    前記RgIA4 ペプチド類似体は、前記α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体に対して、RgIA4ペプチドが持つ結合親和性の少なくとも50%の結合親和性を持つ、RgIA4 ペプチド類似体。
  20. 前記第3のシステインに結合したβ-ホモチロシンを更に含む、請求項19に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  21. 前記α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体に対する前記結合親和性が、
    前記RgIA4ペプチドの前記結合親和性と実質的に等しい、又は
    前記RgIA4ペプチドの前記結合親和性よりも大きい、請求項19に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  22. 前記ペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋が、RgIA4ペプチドの効力に比べて効力の増強をもたらす、請求項19に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  23. 前記RgIA4 ペプチド類似体のα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値が、
    前記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも25.0分の1未満である、又は
    前記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも10.0分の1未満である、又は
    前記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも5.0分の1未満である、又は
    前記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも2.0分の1未満である、又は
    前記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値と実質的に等しい、又は
    前記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の2.0倍を超えない、又は
    前記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の3.0倍を超えない、又は
    前記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の5.0倍を超えない、請求項19に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  24. 前記ペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋が、ジスルフィド架橋のスクランブル化、ジスルフィド架橋の分解、又はこれらの組合せの1つ以上を、RgIA4ペプチド又はペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋を含まないRgIA4 ペプチド類似体に比べて減少させる、請求項19に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  25. 前記ペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋が、ヒト血清中の前記RgIA4 ペプチド類似体に対して、RgIA4ペプチドのヒト血清中安定性よりも高い安定性をもたらし、
    前記ヒト血清中安定性は、前記RgIA4 ペプチド類似体を25%AB型ヒト血清中、37℃で1、2、4、8、24、48、又は72時間の少なくともいずれかの期間インキュベートした後に球形で残存するRgIA4 ペプチド類似体の量によって測定される、請求項19に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  26. 前記RgIA4 ペプチド類似体のヒト血清中安定性が、前記RgIA4ペプチドのヒト血清中安定性に比べて、10%、20%、40%、60%、80%、100%、200%、300%、400%、500%、1000%の少なくともいずれかの割合で大きい、請求項25に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  27. 前記RgIA4 ペプチド類似体が、RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体選択性と実質的に等しい α9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体選択性をもたらす、請求項19に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  28. 前記RgIA4 ペプチド類似体が、或る異なるニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR) サブタイプに対する選択性に比べて、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、又は200倍、500倍、又は1000倍の少なくともいずれかの倍率で高いα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体選択性をもたらす、請求項19に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  29. 前記異なるnAChR サブタイプがα1β1δε、α2β2、α2β4、α3β2、α3β4 α4β2、α4β4、α6/α3β2β3、α6/α3β4、α7、又はこれらの組合せからなる群より選択される、請求項28に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  30. 前記RgIA4 ペプチド類似体は、L-シトルリン、D-シトルリン、L-アルギニン、D-アルギニン、L-リジン、D-リジン、L-オルニチン、及びD-オルニチンからなる群より選択されるC末端残基を有する、請求項19に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  31. 前記RgIA4 ペプチド類似体は、前記C末端残基を持たないRgIA4 ペプチド類似体の溶解度に比べて、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、又は200倍、500倍、又は1000倍の少なくともいずれかの倍率で高い溶解度をもたらす、請求項30に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  32. 前記RgIA4 ペプチド類似体はその還元グルタチオン中安定性が、RgIA4ペプチド還元グルタチオン中安定性よりも高く、
    前記還元グルタチオン中安定性は、0.1mg/mLの前記RgIA4 ペプチド類似体又は前記RgIA4ペプチドを、10当量の還元グルタチオンを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)に溶解し、37℃で1、2、4、8、24、48、又は72時間の少なくともいずれかの期間インキュベートした後の残存量によって測定される、請求項19に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  33. 前記還元グルタチオン中における前記α-RgIA4 ペプチド類似体の安定性は、前記還元グルタチオン中におけるRgIA4ペプチドの安定性に比べて、10%、20%、40%、60%、80%、100%、200%、300%、400%、500%、又は1000%の少なくともいずれかの割合で大きい、請求項32に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  34. 前記RgIA4 ペプチド類似体は、RgIA4ペプチドと実質的に等しいかそれより大きい安全性プロファイルをもたらし、該安全性プロファイルが下記の少なくとも一方、即ち、
    ホールセルパッチクランプ法による自動分析の結果、前記類似体が100μMの濃度でヒトether-a-go-go関連遺伝子(hERG)Kチャネルの25%未満を阻害するか、又は
    CYP分析の結果、前記類似体が100μMの濃度で20%未満の阻害活性を有する、
    ことによって測定される、請求項19に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  35. 前記RgIA4 ペプチド類似体は前記アミノ酸配列 G C (Pen) T D P R C X5 I3Y Q C β3hY X6(配列番号10)からなり、
    X5 はL-シトルリン、D-シトルリン、L-アルギニン 及びD-アルギニンからなる群より選択され、
    X6 はL-アルギニン及びD-アルギニンからなる群より選択される、請求項19に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  36. X5がL-アルギニンであり、X6がL-アルギニンである、請求項35に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  37. 前記RgIA4 ペプチド類似体は、前記アミノ酸配列 G C (Pen) T D P R C X5 I3Y Q C (3-R-β3hY) X6(配列番号11)からなり、
    X5 はL-シトルリン、D-シトルリン、L-アルギニン及びD-アルギニンからなる群より選択され、
    X6はL-アルギニン及びD-アルギニンからなる群より選択される、請求項19に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  38. X5がL-アルギニンであり、X6がL-アルギニンである、請求項37に記載のRgIA4 ペプチド類似体。
  39. 治療学的有効量の請求項17に記載のRgIA4 ペプチド類似体と、薬学的に許容される担体とを組合せてなる、組成物。
  40. 局所、経皮、静脈内、又は皮下投与に適合する、請求項39に記載の組成物。
  41. 追加の活性薬剤を更に含む、請求項39に記載の組成物。
  42. 前記追加の活性薬剤が、抗炎症剤、麻酔薬、第2の鎮痛性ペプチド、非ペプチド鎮痛剤、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項41に記載の組成物。
  43. 前記追加の活性薬剤が約0.0001重量%~約10重量%の濃度で存在する、請求項41に記載の組成物。
  44. 前記組成物が、溶液、懸濁液、エマルジョン、ゲル、ハイドロゲル、温度応答性ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、貼付材(adhesive)、保液材(liquid reservoir)、パッチ、又はこれらの組合せのいずれかの剤形を有する、請求項39に記載の組成物。
  45. 皮下注射に適合する、請求項39に記載の組成物。
  46. 前記薬学的に許容される担体は、水、等張化剤、緩衝剤、防腐剤、又はこれらの組合せの1つ以上を含む 、請求項39に記載の組成物。
  47. α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体に対するRgIA4ペプチドの効力を、RgIA4ペプチド類似体内で維持する方法であって、
    第1のシステインと第2のシステインとの間のシステイン間ジスルフィド架橋、及び第1のペニシラミンと第3のシステインとの間のペニシラミン-システイン間ジスルフィド架橋を設ける工程と、
    前記第3のシステインにβ-ホモチロシンを結合させる工程と、
    L-シトルリン、D-シトルリン、L-アルギニン、D-アルギニン、L-リジン、D-リジン、L-オルニチン、及びD-オルニチンからなる群より選択されるC末端残基を設ける工程と、
    を有する方法。
  48. 前記RgIA4 ペプチド類似体は、前記α9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体を下記のIC50値、即ち、
    前記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも25.0分の1未満である、又は
    前記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の少なくとも10.0分の1未満である、又は
    前記RgIA4ペプチドのα9α10 ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値 の少なくとも5.0分の1未満である、又は
    前記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の 少なくとも2.0分の1未満である、又は
    前記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値と実質的に等しい、又は
    前記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の2.0倍を超えない、又は
    前記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の3.0倍を超えない、又は
    前記RgIA4ペプチドのα9α10ニコチン性アセチルコリン受容体IC50値の5.0倍を超えない、
    IC50値で阻害する、請求項47に記載の方法。
  49. 前記RgIA4 ペプチド類似体が、或る異なるニコチン性アセチルコリン受容体選択性(nAChR)サブタイプに対する選択性に比べて、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、又は200倍、500倍、又は1000倍の少なくともいずれかの倍率で高いα9α10 nAChR選択性をもたらす、請求項47に記載の方法。
  50. 前記RgIA4 ペプチド類似体が、α-RgIA4ペプチドのヒト血清中安定性の10%、20%、40%、60%、80%、100%、200%、300%、400%、500%、1000%の少なくともいずれかの割合で大きいヒト血清中安定性をもたらす、請求項47に記載の方法。
  51. 前記RgIA4 ペプチド類似体は、前記C末端残基を持たないRgIA4 ペプチド類似体の溶解度に比べて、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、又は200倍、500倍、又は1000倍の少なくともいずれかの倍率で高い溶解度をもたらす、請求項47に記載の方法。
  52. 前記RgIA4 ペプチド類似体は、RgIA4ペプチドの前記還元グルタチオン中安定性に比べて、10%、20%、40%、60%、80%、100%、200%、300%、400%、500%、又は1000%の少なくともいずれかの割合で大きい還元グルタチオン中安定性をもたらす、請求項47に記載の方法。
  53. α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体結合に起因する被験者の状態を治療する方法であって、
    請求項39に記載の前記組成物を、治療学的有効量にて前記被験者に投与することを含む、方法。
  54. 前記症状が痛みである、請求項53に記載の方法。
  55. 前記痛みが、化学療法誘発性神経障害(CIPN)、糖尿病性神経障害、関節炎性神経障害、変形性関節炎性神経障害、又はこれらの組合せのいずれか1つ以上を含む神経因性疼痛である、請求項54に記載の方法。
  56. 前記痛みがHIV関連痛である、請求項54に記載の方法。
  57. 前記痛みがハンセン病関連痛である、請求項54に記載の方法。
  58. 前記痛みが術後疼痛及び外傷後疼痛の少なくとも1つである、請求項54に記載の方法。
  59. 前記症状が脊椎多発神経根症である、請求項53に記載の方法。
  60. 前記症状が帯状疱疹後神経痛である、請求項53に記載の方法。
  61. 前記症状が三叉神経痛である、請求項53に記載の方法。
  62. 前記症状が複合性局所疼痛症候群である、請求項53に記載の方法。
  63. 前記症状が癌である、請求項53に記載の方法。
  64. 前記癌が、上皮性癌、肺癌、乳癌、又はこれらの組合せの1つ以上である、請求項63に記載の方法。
  65. 前記症状が多発性硬化症である、請求項53に記載の方法。
  66. 前記症状が炎症である、請求項53に記載の方法。
  67. 前記炎症が免疫細胞に媒介されるか、リウマチに付随するか、又はこれらの組合せである、請求項66に記載の方法。
  68. 前記治療が、投与後の選択時間内に症状を少なくとも10%軽減させる、請求項53に記載の方法。
  69. 前記治療学的有効量の前記組成物を、前記被験者に1日1~5回投与することを更に含む、請求項53に記載の方法。
  70. 前記治療学的有効量の前記組成物を前記被験者に対し、1日から約3ヶ月の期間中、少なくとも1日1回の用法に基づいて投与することを更に含む、請求項53に記載の方法。
  71. 前記治療学的有効量の前記組成物を、皮下投薬、経皮投薬、局所投薬、静脈内投薬、又はこれらの組合せによる投薬形態にて投与することを更に含む、請求項53に記載の方法。
  72. 被験者における、α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体結合に起因する状態を治療するための組成物であって、
    請求項39に記載の前記組成物を被験者にとっての治療学的有効量にて含む、組成物。
  73. α9α10ニコチン性アセチルコリン受容体結合に起因する被験者の状態を治療するための医薬品の製造における組成物の使用法であって、
    請求項39に記載の前記組成物を被験者にとっての治療学的有効量にて用いる、使用法。
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