JP2024517598A - 発光体を含むプラスチック製品 - Google Patents

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Abstract

本発明は、少なくとも1つのプラスチックと、一般式(I):Lu3-a-b-nLnb(Mg1-zCaz)aLin(Al1-u-vGauScv)5-a-2n(Si1-d-eZrdHfe)a+2nO12(I)[式中、a=0~1、1≧b>0、d=0~1、e=0~1、n=0~1、z=0~1、u=0~1、v=0~1であるが、ただし、u+v≦1でかつd+e≦1が成り立ち、Lnは、プラセオジム(Pr)、ガドリニウム(Gd)、エルビウム(Er)、ネオジム(Nd)およびイットリウム(Y)からなる群から選択される]の少なくとも1つの発光体とを含むプラスチック製品、ならびに該プラスチック製品を含むおよび/または該プラスチック製品から製造される物品に関する。

Description

本発明は、抗菌特性を有する発光体とプラスチックとを含むプラスチック製品、ならびに該プラスチック製品を含むおよび/または該プラスチック製品から製造される物品に関する。
人間は、細菌、真菌およびウイルスなどの何百万もの微生物に日々曝されている。これらの微生物の多くは有用であり、あるいは必要でさえある。そうとはいえ、これらの有害性の低い代表的なものだけでなく、病気を引き起こす、あるいは死に至ることさえある細菌、真菌およびウイルスも存在する。
微生物は、他人との日常的な交流や、他人が使用した物品との接触によって感染し得る。特に衛生に敏感な分野では、表面に抗菌加工が施される。使用分野は特に、病院内の医療器具や消耗品の表面、外来患者用の医療施設や福祉施設である。これらに加えて、公共空間、食品分野および動物飼育での表面もある。病原性微生物の蔓延は、介護分野や医療分野、そして多くの人が狭い空間を移動するあらゆる場所で、現在大きな問題となっている。現在、標準的な抗生物質に対して抵抗性を有する、いわゆる多剤耐性菌の発生の増加も特にリスクが高い。
接触面に病原体が蔓延するリスクを低減するため、接触面は、殺生物剤での加工や、化学的あるいは物理的処理が施されることが多い。例えば殺生物剤や消毒剤のような化学物質や、例えば熱、寒冷、放射線および超音波のような物理的方法を用いることで、微生物を死滅させたり、微生物の繁殖過程に決定的な影響を与えたりすることができる。
化学的および物理的方法は、ほとんどの場合において微生物の破壊に極めて効果的であるにもかかわらず、処理された表面の破壊を招く場合があるため、短期間の効果しか得られないことや、状況によっては幾つかの用途に適さないことが多い。化学物質はさらに、耐性菌の発生を促進する場合がある。化学物質を使用した場合のさらなる欠点は、人間や環境に対する危険性である。長年にわたり消毒剤として使用されてきた、例えばホルムアルデヒドのような特定の物質は、現在では発癌性や環境への有害性が疑われている。さらなる欠点は、消毒を定期的に行わなければならないことである。そこで、代替的に、抗菌活性物質をプラスチック組成物に配合し、放出と同時にその効果を発揮させる方法もある。
独国特許出願公開第102005048131号明細書には、例えば、熱可塑性エラストマーと、ビス(4置換アミノ-1-ピリジニウム)アルカンの群からの少なくとも1つの活性物質とを含むプラスチック組成物が記載されている。このプラスチック組成物は、抗菌作用を有する。この組成物の効果は、プラスチック組成物の表面から環境への抗菌活性物質の放出に基づいている。たとえ放出速度が低くても、抗菌活性物質の放出は、人間や環境を危険に曝すおそれがある。
国際公開第2009/013016号には、抗菌活性成分としてオルトリン酸銀または部分的に還元されたオルトリン酸銀の粒子を含む抗菌プラスチック生成物が記載されている。抗菌効力は、表面での銀カチオンの放出に基づくと想定されている。使用されるプラスチックは、毒性効果を避けるため、低い銀放出プラトーを有しなければならない。たとえ放出速度が低くても、抗菌活性物質の放出は、人間や環境を危険に曝すおそれがある。
同様に、二酸化チタン粒子や適切なバンドギャップを有する他の半導体粒子が、光の作用下で抗菌活性物質を生成し得ることも知られている。この場合、これらの粒子が、粒子のバンドギャップに対応する波長を有する光の作用下で大気中酸素および(空中)湿分からラジカルを生成することが利用される。その後、これらのラジカルは、細菌やウイルスに拡散し、これらをラジカル反応によって無害化することができる。したがってこの場合には、生成されたラジカルが抗菌活性物質である。したがって、この場合にも抗菌活性物質の放出が起こり、これが人間や環境を危険に曝すおそれがある。さらに近年、二酸化チタン粒子は、特にそれが吸入された場合には「ヒト発癌物質の可能性が高い」と分類されている。しかし、二酸化チタン粒子による光触媒作用で生成されるラジカルの酸化作用によって、二酸化チタン粒子を取り囲む有機マトリックス(コーティング材やプラスチック)も攻撃されるため、この場合には、無機のまたは酸化しにくいマトリックス(例えばゾル・ゲル技術でのマトリックス)に限定されている。
同様に、特定の色素が抗菌活性物質を生成し得ることも知られている。これは、適切な波長の光の作用下で光子のエネルギーの吸収により電子的に励起された状態となり得る色素である。このエネルギーは、大気中酸素と接触すると色素分子から三重項酸素分子()に移動し、これによりこの三重項酸素分子は、電子的に励起した一重項状態に変換される。こうして得られた一重項酸素()は強力な酸化剤であり、この酸化剤は、細菌やウイルスと触れるとこれらを死滅させることができる。したがってこの場合には、生成された一重項酸素()が、抗菌活性物質である。これに非常に頻繁に使用されるのが、他の有機色素よりも酸化に強い多環式芳香族色素である。この場合にも、微生物を死滅させるために、微生物と接触した際の化学的作用が利用される。
上記の半導体粒子や色素がプラスチックマトリックスに埋め込まれている場合、これらの半導体粒子や色素には少なくとも2つの大きな欠点がある。これらの半導体粒子や色素によって生成され得る活性種が微生物と接触し、次いでこの微生物を死滅させ得るようにするには、これらの半導体粒子や色素がプラスチックマトリックスから離れる必要がある。このように、微生物が死滅する際にたどる経路は、やはり化学的なものであり、純粋に物理的なものではない。したがって、このような材料は殺生物剤規制(2012年5月22日付欧州議会・理事会規則(EU)第528/2012号、2019年現行版)の対象となる。第2の欠点は、このような材料がプラスチックマトリックスに埋め込まれている場合、抗菌活性物質を生成するために拡散プロセスが必要になるという単純な事実にある。例えば、上記の色素の場合、色素に到達するためにはがプラスチックマトリックスの中へと拡散しなければならず、微生物と相互作用できるようにするためには、今度はがプラスチックマトリックスから外へと拡散しなければならない。半導体材料から生成されるラジカルも同様であり、この場合には酸素だけでなく水もマトリックスに拡散する必要がある。プラスチックマトリックスを通過する過程で、抗菌活性物質の大部分、すなわち生成されたラジカルの大部分がプラスチックマトリックスと化学的に相互作用/反応し、それに伴って微生物の死滅に関して不活性となる。さらに、それによってプラスチックマトリックスが損傷される。
また、物理的な方法を用いることで、抗菌活性物質を使用せずに済むことも知られている。例えば、医療分野や衛生分野において、例えば水、ガスまたは表面を殺菌するためにUV線を使用することが知られている。例えば、UV線は、水中の潜在的な病原性微生物の数を減少させるために、飲料水処理に長い間使用されている。この場合、有利には100nm~280nmの波長範囲のUV-C線(UVC線とも呼ばれる)が使用される。各種波長の電磁放射線の使用は、各種タンパク質、微生物、組織または細胞中に含まれる(例えばDNAまたはRNA中の)アミノ酸または核酸の各種吸収、および個々の酸間のペプチド結合を考慮すべきである。例えば、DNA/RNAは、電磁放射線を200nm~300nmの波長範囲内で良好に吸収し、250nm~280nmの波長範囲内で特に良好に吸収するため、この放射線は、DNA/RNAの不活性化に特に適している。したがって、このような照射によって、病原性微生物(特にウイルス、細菌、酵母、カビ)を不活性化することが可能である。照射の時間および強度によって、DNAやRNAの構造を破壊することができる。したがって、代謝活性のある細胞を不活性化すること、および/またはその繁殖能力を排除することが可能である。UV光照射の利点は、微生物がそれに対する耐性を獲得できないことである。しかし、これらの物理的方法は、特殊な装置を必要とし、通常は訓練を受けた人が定期的に繰り返さなければならないため、このことが、これらの方法を広く使用することを困難なものとしている。
さらに、UV光の波長範囲の電磁放射線を直接照射するだけでなく、いわゆるアップコンバージョン効果を利用することも知られている。この場合、UV光以上の波長を有する電磁放射線、特に可視光または赤外光を、より短波長の電磁放射線に変換できる発光体粒子を使用することにより、個々の発光体粒子からのUV-C線の放出を達成することが可能である。
アップコンバージョンを示す発光体は、抗菌活性物質を生成することなく、UV-C線によって抗菌作用を達成することができる。適切な発光体を使用することにより、抗菌活性物質に付随する上記の欠点を克服することが可能であろう。
国際公開第2009/064845号には、例えば、電磁エネルギーをUV-C線またはより短波長の電磁放射線に変換するための組成物が記載されており、該組成物は、最初の電磁エネルギー(A)を別の電磁エネルギー(B)に変換することができる少なくとも1つの発光体であって、ここで、別の電磁エネルギー(B)は、UV-C線、X線またはガンマ線を含むものとする、発光体;および該発光体を含む有機または無機媒体を含む。有機媒体としては、特にプラスチック樹脂が記載されている。アップコンバージョンの特性を有し、UV-C線を放出し、それにより殺菌作用を有する発光体を利用するという概念は、国際公開第2009/064845号に原理的に開示されている。しかし、国際公開第2009/064845号は、実施可能な教示を構成するものではなく、単に概念的なものである。特に、具体例は示されていない。しかし、特に国際公開第2009/064845号には、本発明による発光体は開示されていない。さらに、国際公開第2009/064845号に記載された多数のUV発光体のうち、抗菌作用が特に考えられるような、ある波長のUV線(UV-C線)を潜在的に特に放出することができるものは、ほんのわずかしかない。また、記載されている発光体では、X線やガンマ線を放出できるようなアップコンバージョンの達成は原理的に不可能であり、なぜならば、そのようなアップコンバージョンは、原子核から離れた電子からd軌道への電子遷移に基づいており、一方で、X線は、原子核に近い強く結合した電子から低位軌道への電子遷移に基づいており、ガンマ線は、原子核の自発変換(崩壊)の場合、あるいは99mTcのような準安定原子核の不活性化の場合にのみ発生するためである。
よって、抗菌活性物質を放出することなく抗菌作用を有するプラスチック製品は、先行技術から知られていない。
したがって、先行技術の欠点を有しないプラスチック製品および該プラスチック製品から製造される物品がさらに必要とされていた。特に、該プラスチック製品は、抗菌活性物質の放出を必要とせずに抗菌作用を有することが望まれていた。
したがって、本発明の課題は、先行技術の少なくとも1つの欠点を克服したプラスチック製品および該プラスチック製品から製造される物品を提供することであった。特に、本発明の課題は、抗菌活性物質の放出を必要とせずに抗菌作用を有するプラスチック製品および該プラスチック製品から製造される物品を提供することであった。明示的に言及されていないさらなる課題は、以下の発明の詳細な説明、実施例および特許請求の範囲の全体的な文脈から明らかとなる。
驚くべきことに、プラスチック製品は、特許請求の範囲に記載されている特定の発光体を含む場合に、抗菌活性物質を放出しなくても抗菌作用を有し得ることが見出された。
したがって、本発明の課題は、独立請求項の主題によって達成される。本発明の有利な構成は、従属請求項、実施例および発明の詳細な説明から得ることができる。
したがって、本発明の第1の主題は、少なくとも1つのプラスチックと、一般式(I):
Lu3-a-b-nLn(Mg1-zCaLi(Al1-u-vGaSc5-a-2n(Si1-d-eZrHfa+2n12 (I)
[式中、
a=0~1、1≧b>0、d=0~1、e=0~1、n=0~1、z=0~1、u=0~1、v=0~1であるが、ただし、u+v≦1でかつd+e≦1が成り立ち、
Lnは、プラセオジム(Pr)、ガドリニウム(Gd)、エルビウム(Er)、ネオジム(Nd)およびイットリウム(Y)からなる群から選択される]の少なくとも1つの発光体とを含むプラスチック製品である。
本発明のプラスチック製品は、その抗菌作用が、抗菌活性物質の放出に基づくのではなく、純粋に物理的な作用原理に基づくという、先行技術のプラスチック製品に対する利点を有する。
ここで、プラスチック製品が、少なくとも1つのプラスチックと、少なくとも1つの発光体とを含むプラスチック組成物を含むことが好ましい。
したがって、プラスチック組成物を含むかまたはそれからなるプラスチック製品であって、ここで、該プラスチック組成物が、少なくとも1つのプラスチックと、一般式(I):
Lu3-a-b-nLn(Mg1-zCaLi(Al1-u-vGaSc5-a-2n(Si1-d-eZrHfa+2n12 (I)
[式中、
a=0~1、1≧b>0、d=0~1、e=0~1、n=0~1、z=0~1、u=0~1、v=0~1であるが、ただし、u+v≦1でかつd+e≦1が成り立ち、
Lnは、プラセオジム(Pr)、ガドリニウム(Gd)、エルビウム(Er)、ネオジム(Nd)およびイットリウム(Y)からなる群から選択される]の少なくとも1つの発光体とを含むかまたはそれからなるものとするプラスチック製品が好ましい。
発光体にプラセオジムがドープされていることが好ましい。発光体にプラセオジムがドープされ、ガドリニウムがコドープされていることがさらに好ましい。
発光体が少なくとも部分的に結晶質であることが好ましい。したがって、発光体が部分的または完全に結晶質であることが好ましい。したがって、発光体は、少なくとも全体が非晶質でないことが有利である。したがって、発光体は、溶融物が非晶質状態で固化したもの(ガラス)でないことが好ましい。
発光体は、少なくとも1つのアルカリ金属イオンおよび/または少なくとも1つのアルカリ土類金属イオンを含む、結晶質ガーネットまたはランタノイドイオンがドープされた結晶質ガーネットであることが有利である。ここで、特に好ましくは、結晶質ガーネットにはプラセオジムがドープされ、任意にガドリニウムがコドープされている。
発光体は有利には、一般式(Ia):
(Lu1-x-yGd3-a-b-nLn(Mg1-zCaz)aLi(Al1-u-vGaSc5-a-2n(Si1-d-eZrHfa+2n12 (Ia)
[式中、
a=0~1、1≧b>0、d=0~1、e=0~1、n=0~1、x=0~1、y=0~1、z=0~1、u=0~1、v=0~1であるが、ただし、x+y≦1、u+v≦1でかつd+e≦1が成り立ち、
Lnは、プラセオジム(Pr)、エルビウム(Er)およびネオジム(Nd)からなる群から選択される]の化合物から選択される。
発光体が、一般式(Ib)、(Ic)、(Id)および/または(Id):
(Lu1-x-yGd3-bPr(Al1-u-vGaSc12 (Ib)
[式中、
b=0.001~0.05、x=0~1、y=0~1、u=0~1、v=0~1であるが、ただし、x+y≦1でかつu+v≦1が成り立つ];
(Lu1-x-yGd3-b-aPr(Mg1-zCaa+bAl5-a-bSia+b12 (Ic)
[式中、
1≧b>0、a>0、x=0~1、y=0~1、z=0~1であるが、ただし、x+y≦1が成り立つ];
(Lu1-x-yGd2-bPr(Ca1-zMg)Al(Zr1-fHf)O12 (Id)
[式中、
b>0、x=0~1、y=0~1、z=0~1、f=0~1であるが、ただし、x+y≦1が成り立つ];
(Lu1-x-yGd1-bPr(Ca1-zMgAl(Zr1-fHf12 (Id
[式中、
0.5≧b>0、x=0~1、y=0~1、z=0~1、f=0~1であるが、ただし、x+y≦1が成り立つ]
の化合物から選択されていることがさらに好ましい。
発光体が、以下の一般式:
(Lu1-x-yGd3-bPr(Al1-fGa12
(Lu1-x-yGd3-bPr(Al1-fSc12
(Lu1-x-yGd3-bPr(Ga1-fSc12
(Lu1-x-yGd2-bPrCaAlSiO12
(Lu1-x-yGd1-bPrCaAlSi12
(Lu1-x-yGd2-bPrMgAlSiO12
(Lu1-x-yGd1-bPrMgAlSi12
(Lu1-x-yGd2-bPrCaAl(Zr1-fHf)O12
(Lu1-x-yGd1-bPrCaAl(Zr1-fHf12
(Lu1-x-yGd2-bPrMgAl(Zr1-fHf)O12、または
(Lu1-x-yGd1-bPrMgAl(Zr1-fHf12
[式中、
b=0.001~0.05、x=0~1、y=0~1、f=0~1であるが、ただし、x+y≦1が成り立つ]の化合物から選択されていることがさらにより好ましい。
発光体が式Lu2-bPrLiAlSi12[式中、1≧b>0、好ましくは1>b>0、さらにより好ましくはb=0.001~0.050、特に好ましくはb=0.02である]の化合物であることが有利である。
発光体は、有利には式LuLiAlSi12:Prの化合物である。
ここで、本発明に必要な発光体は、特許出願EP19202897.5およびPCT/EP2020/077796に開示されていることに留意すべきである。
発光体は好ましくは、より低エネルギーでより長波長の、2000nm~400nmの範囲、好ましくは800nm~400nmの範囲の電磁放射線を照射すると、より高エネルギーでより短波長の、400nm~100nmの範囲、好ましくは300nm~200nmの範囲の電磁放射線を放出する発光体である。ここで、より高エネルギーでより短波長の電磁放射線の発光極大の強度が、少なくとも1×10カウント/(mm・s)であり、好ましくは1×10カウント/(mm・s)より高く、特に好ましくは1×10カウント/(mm・s)より高いことがさらに好ましい。これらの特性値を求めるために、発光を、レーザ、特に445nmで75mWの出力および/または488nmで150mWの出力を有するレーザを用いて励起させることが好ましい。
発光体、特に式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)または(Id)の発光体は有利には、17° 2Θ~19° 2Θおよび31° 2Θ~35° 2ΘのXRPDシグナルを有し、ここで、シグナルは好ましくは、Bragg-Brentano幾何学およびCu-Kα線によって求められる。測定方法の詳細は、特許出願EP19202897.5およびPCT/EP2020/077796から得ることができる。
特許出願EP19202897.5およびPCT/EP2020/077796は、発光体、特に式(I)、(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)および(Id)による発光体の製造を対象としている。そこに記載されているのは、以下の工程を含む方法である:
i)ランタノイド硝酸塩、ランタノイド炭酸塩、ランタノイドカルボン酸塩から、好ましくはランタノイド酢酸塩、ランタノイド硫酸塩および/もしくはランタノイド酸化物、またはこれらの少なくとも2つの混合物から選択される少なくとも1つのランタノイド塩を提供する工程であって、ここで、ランタノイド酸化物またはランタノイド塩中のランタノイドイオンは、プラセオジム、ガドリニウム、エルビウムおよびネオジムから選択され、コドープの場合は、これらのうちの少なくとも2つが使用されるものとする、工程、
ii)ガーネット結晶格子の形成のために、ルテチウム源、ケイ素源、アルミニウム源またはイットリウム源から選択される少なくとも1つの元素を提供する工程であって、ここで、該源は、以下:
a)少なくとも1つのランタノイド塩またはランタノイド酸化物、好ましくはランタノイド硝酸塩、ランタノイド炭酸塩、ランタノイドカルボン酸塩、ランタノイド酢酸塩、ランタノイド硫酸塩および/もしくはランタノイド酸化物、またはこれらの少なくとも2つの混合物であり、特に好ましくは、ランタノイドイオンはランタノイド酸化物であり、かつ/またはランタノイド塩はルテチウムであるものとする、および/または
b)ケイ素源、および/または
c)アルミニウム源、および/または
d)イットリウム塩もしくは酸化イットリウム、またはこれらの混合物
から選択されるものとする、工程、
iii)任意に、少なくとも1つのアルカリ土類金属塩および/またはアルカリ土類金属酸化物を提供する工程、および/または
iv)任意に、少なくとも1つのアルカリ金属塩を提供する工程、および
v)錯化剤を提供する工程、
- i)、ii)、iii)、iv)およびv)を酸に溶解させる工程、
- 酸および任意に錯化剤を、任意に撹拌しながら高温で蒸発させる工程、
- 反応生成物を100℃超の温度で乾燥させて、濃縮反応生成物を得る工程、
- 反応生成物を少なくとも600℃までの温度で1~10時間加熱して有機化合物を除去して、中間体を得る工程、
- 中間体を少なくとも1200℃まで0.5~10時間加熱する工程、
- 冷却する工程、および
- ランタノイドイオンドープガーネットを得る工程。
この方法のさらに詳細な実施形態は、EP19202897.5およびPCT/EP2020/077796から得ることができる。
驚くべきことに、EP19202897.5およびPCT/EP2020/077796による発光体は、抗菌作用の原因となる必要なアップコンバージョン特性を有することが判明した。したがって、これらの発光体は、UV光を超える波長を有する電磁放射線、特に可視光または赤外光を、より短波長の、具体的には、例えば微生物のDNAやRNAを破壊することができる範囲の波長の電磁放射線に変換することができる。したがって、これらの発光体は、本発明によるプラスチック製品に非常に適している。
発光体の製造時に1800℃、有利には1700℃、特に1600℃の温度を超えないことが好ましい。
発光体が、0.1~100μm、有利には0.1~10μm、特に0.1~5μmの粒径d50を有することが好ましい。ここで、粒径は、有利にはISO 13320:2020および/またはUSP429に準拠して、例えばHoriba社製LA-950 Laser Particle Size Analyzer機器を用いて測定される。
本発明によるプラスチック製品に発光体を良好に組み込みかつ/または安定化させるために、有利には種々の添加剤を添加することが可能である。
全発光体の総量の重量割合が、プラスチック製品の総重量に対して0.02%~<50.00%、有利には0.05%~10.00%、特に1.00%~7.00%であることがさらに好ましい。
発光体がプラスチックに埋め込まれていることがさらに好ましい。したがって、発光体がプラスチック中に部分的または完全に埋め込まれていることが好ましい。したがって、プラスチックが発光体のマトリックスを形成していることが好ましい。発光体がプラスチック中に分散していることが特に好ましい。したがって、発光体がプラスチック中に部分的または完全に分散していることが特に好ましい。したがって、発光体が、粒状固体としてプラスチック中に分散していることが有利である。したがって、発光体が、粒状固体としてプラスチック中に部分的または完全に分散していることが有利である。
本発明によるプラスチック製品は、少なくとも1つの発光体に加えてさらに、少なくとも1つのプラスチックをも含む。原則として、先行技術から知られているすべてのプラスチックが該当するが、励起および発光に重要なスペクトル範囲の光に対して十分に透明であることが条件である。適切なプラスチックあるいはその選別方法は、当業者に知られている。
少なくとも1つのプラスチックが、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂からなる群から選択され、有利には熱可塑性樹脂から選択されることが好ましい。
ここで、「熱可塑性樹脂」とは、使用温度以上で流動遷移範囲を有するポリマーを指す。熱可塑性樹脂は、原則として、非晶質熱可塑性樹脂の場合にはガラス転移温度(Tg)以上、(半)結晶質熱可塑性樹脂の場合は溶融温度(Tm)以上で流動性となる直鎖状または分岐状のポリマーである。熱可塑性樹脂は、軟化した状態で、圧縮、押出成形、射出成形または他の成形加工によって成形部品に加工することができる。この場合、鎖の運動性が非常に大きくなるため、ポリマー分子は互いに滑りやすくなり、材料は融液状態(流動範囲、ポリマーメルト)に達する。熱可塑性樹脂にはさらに、顕著なエントロピー弾性を有する熱塑性加工可能なプラスチック、いわゆる熱可塑性エラストマーも含まれる。熱可塑性樹脂には、直鎖状または熱的に不安定な方法で架橋されたポリマー分子からなるすべてのプラスチックが含まれ、その例としては、ポリオレフィン、ビニルポリマー、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアセテート、ポリカーボネート、および一部のポリウレタンやアイオノマー、さらにはTPE-熱可塑性エラストマーも挙げられる(ROEMPP ONLINE, vers. 4.0, Carlowitz u. Wierer, Kunststoffe (Merkblaetter), 1. Kapitel Thermoplaste, Berlin: Springer Verlag (1987), Domininghaus, S.95ff.)。
プラスチックとして熱可塑性樹脂が選択される場合、熱可塑性樹脂が、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(アルキル)(メタ)アクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)および熱可塑性エラストマー(TPE)からなる群から選択されることが好ましく、ここで、熱可塑性エラストマーは有利には、熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPA、TPE-A)、熱可塑性コポリエステルエラストマー(TPC、TPE-E)、オレフィンをベースとする熱可塑性エラストマー(TPO、TPE-O)、熱可塑性スチレンブロック共重合体(TPS、TPES)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性加硫物(TPV、TPE-V)およびオレフィンをベースとする架橋熱可塑性エラストマー(TPV、TPE-V)からなる群から選択される。
ここで、「(メタ)アクリル」という表現は、「メタクリル」および/または「アクリル」を表し、「ポリ(アルキル)(メタ)アクリレート」という表現は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび任意にさらなるモノマーのホモポリマーまたはコポリマーを表す。
同様に好ましい一実施形態において、プラスチックは、熱硬化性樹脂からなる群から選択される。
熱硬化性樹脂とは、オリゴマー(専門的にはプレポリマー)から、あまり一般的ではないがモノマーまたはポリマーから、共有結合を介した不可逆的で高密度な架橋によって形成されるプラスチックである。ここで、「熱硬化性」という用語は、架橋前の原料(反応性樹脂を参照)と、硬化した、ほぼ完全に非晶質の樹脂の総称との双方に使用される。熱硬化性樹脂は、低温ではエネルギー弾性を示し、高温でも粘性流動を生じることができず、非常に限定された変形性を有する弾性挙動を示す。熱硬化性樹脂には特に、工業的に重要な物質群であるジアリルフタレート樹脂(DAP)、エポキシ樹脂(EP)、尿素-ホルムアルデヒド樹脂(UF)、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂(MF)、メラミン-フェノール-ホルムアルデヒド樹脂(MPF)、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂(PF)、ビニルエステル樹脂(VE)および不飽和ポリエステル樹脂(UP、UPES)が含まれる(ROEMPP ONLINE, vers. 3.7, Becker, G. W.; Braun, D.; Woebcken, W., Kunststoff-Handbuch, Band 10: Duroplaste, 2. Aufl.; Hanser: Muenchen,(1988); Elias (6.) 1, 7, 476 ff.)。
プラスチックとして熱硬化性樹脂が選択される場合、熱硬化性樹脂が、ジアリルフタレート樹脂(DAP)、エポキシ樹脂(EP)、尿素-ホルムアルデヒド樹脂(UF)、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂(MF)、メラミン-フェノール-ホルムアルデヒド樹脂(MPF)、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂(PF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP、UPES)、ビニルエステル樹脂(VE)およびポリウレタン(PU)からなる群から選択されることが好ましい。
プラスチックは有利には、芳香族基、C-C二重結合およびC-C三重結合を実質的に含まないかまたは完全に含まず、後者は、硬化後のプラスチックの状態、すなわち、有利にはプラスチック製品の構成成分として存在するプラスチックの状態に適用される。
光と材料およびその材料表面との物理的相互作用は、当業者に知られている。材料およびその材料表面に応じて、光の入射時に多数の効果が生じる。入射光は部分的に吸収され、部分的に反射され、また散乱されることもある。また、光はまず吸収され、その後再び放出されることもある。不透明、半透明または透光性の材料の場合、光は物体を通り抜けることもできる(透過)。材料は、透明でも半透明でもよい。場合によっては、光が表面で偏光したり、回折したりすることさえある。物体によっては、発光したり(イルミネーション・ディスプレイ、LEDセグメント、ディスプレイ)、別の光の色で蛍光を発したり、燐光(残光)を発するものさえある。
有利には、プラスチックは低共振性である。低共振性とは、本発明の趣意において、プラスチックが低吸収性、低反射性、低拡散反射性および低散乱性を示すことを意味する。対照的に、透過率が有利には顕著であることが望ましい。
低共振性プラスチックは、より低エネルギーでより長波長の、2000nm~400nmの範囲、特に800nm~400nmの範囲のより多くの電磁放射線がプラスチックを通過し、その結果、そこから今度は、より高エネルギーでより短波長の、400nm~100nmの範囲、好ましくは300nm~200nmの範囲のより多くの電磁放射線が放出され得るため、改善された抗菌作用を有する。
プラスチックの透過率は有利には、260nmの波長で、有利には100μmの材料厚で測定した場合に、少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、特に好ましくは少なくとも70%である。
プラスチックの透過率は有利には、500nmの波長で、有利には100μmの材料厚で測定した場合に、少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、特に好ましくは少なくとも70%である。
上記の透過率は、プラスチックの適合性についての十分な基準を構成するが、必須の基準ではないことに留意すべきである。例えば、低い透過率を有してはいるが、光を単に散乱させるだけであるプラスチックも適切であり得る。これは、半結晶質または結晶質のプラスチックの場合に該当し得る。したがって、抗菌作用の発揮にとってむしろ重要となるのは、放射線がプラスチックに吸収されないことである。
本発明では、発光波長として例えば260nmの波長を、励起波長として例えば500nmの波長を選択したが、これは、一方ではアップコンバージョンに、他方では抗菌作用にかなりの程度関与する。
ここで、透過率は有利には、実施例に記載されているように測定される。透過率は有利には、Analytik Jena社製“Specord 200 Plus”UV/VISツインビーム分光計で測定される。内部波長較正には、酸化ホルミウムフィルターが使用される。重水素ランプの単色光(紫外域)またはタングステンハロゲンランプの単色光(可視域)が試料に照射される。スペクトルバンド幅は、1.4nmである。単色光は、測定チャネルと対照チャネルとに分けられ、これにより対照試料に対する直接的な測定を可能にする。試料を透過した放射線は、フォトダイオードで検出され、処理される。試料の材料厚(層厚)は、有利には100μmである。
プラスチックは有利には、本発明によるプラスチック製品が高い化学的および機械的安定性を有するように選択される。抗菌プラスチック製品は、定期的な消毒やさらなる衛生対策を必要とする領域で頻繁に使用されるため、化学的および機械的安定性は特に重要である。
全プラスチックの総量の重量割合が、本発明によるプラスチック製品の総重量に対して>50.00%~99.98%、有利には90.00%~99.95%、特に93.00%~99.00%であることが好ましい。
プラスチック製品が、着色剤、例えば顔料または色素、光およびUV安定剤、例えばヒンダードアミン光安定剤(HALS)、熱安定剤、UV吸収剤であるが、ただしUV-C吸収性材料を除くもの、IR吸収剤、無機または有機難燃剤、耐熱剤、酸化防止剤、架橋添加剤およびポリマー、有機または無機ベースの繊維強化添加材、例えばセルロース繊維、亜麻繊維、竹繊維、ガラス繊維または炭素繊維、帯電防止添加剤、耐衝撃性改良剤、臭気吸収剤、バリア特性を改善するための添加剤およびポリマー、無機および有機充填剤、ならびに助剤からなる群から選択されるさらなる添加剤を含むことが好ましい。これらの添加材は、当業者に知られている。プラスチック製品が抗菌活性物質を含まないことが好ましい。添加物質の選別においては、当然のことながら、発光体の抗菌作用が損なわれないように留意すべきである。例えば、着色剤およびUV吸収剤の選別、あるいは使用量の選択において、発光体の励起に必要な放射線、および発光体によって放出されるUV-C線が、抗菌作用が妨げられる程度に吸収されることのないように留意すべきである。
本発明によるプラスチック組成物は好ましくは、上記のさらなる添加物質を、多くとも10%、有利には多くとも5%、特に多くとも2%の重量割合で含む。
本発明によるプラスチック製品は有利には、細菌、酵母、カビ、藻類、寄生体および/またはウイルスに対する抗菌作用を有する。
プラスチック製品の「抗菌作用」とは、プラスチック製品が微生物の増殖および/または繁殖を制限または防止することを意味すると理解される。これに限定されるものではないが、ここで、微生物には、単細胞性または多細胞性の、DNAまたはRNAベースの、原核生物または真核生物の微生物、および繁殖可能な感染性有機構造体(ウイルス、ビリオンおよびウイルソイド、ウイロイド)であって、活性または不活性(休止)代謝を伴うものおよび代謝を伴わないものが含まれる。抗菌作用は、化学的(材料ベースの)性質のものであってもよいし、物理的(放射線、熱、機械的効果)性質のものであってもよい。
本発明によるプラスチック製品は有利には、以下のものに対する抗菌作用を有する:
- 院内感染の病原体、有利にはエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・バウマンニイ(Acinetobacter baumannii)、シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、エンテロバクター(Enterobacter)、コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphteria)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、ロタウイルス、バクテリオファージ;
- 通性病原性環境生物、有利にはクリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum)、ジアルジア・ランブリア(Giardia lamblia)、アメーバ(アルカントアメーバ属(Arcanthamoeba spp.)、ナエグレリア属(Naegleria spp.))、E.コリ(E.coli)、大腸菌群、糞便性連鎖球菌、サルモネラ属(Salmonella spp.)、シゲラ属(Shigella spp.)、レギノネラ属(Leginonella spec.)、シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、マイコバクテリア属(Mykobakteria spp.)、腸管ウイルス(例えば、ポリオおよびA型肝炎ウイルス);
- 食品中の病原菌、有利にはバシルス・セレウス(Bacillus cereus)、カンピロバクター属(Campylobacter spp.)、クロストリジウム・ボツリナム(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ペルフリンゲンス(Clostridium perfringens)、クロノバクター属(Cronobacter spp.)、E.コリ(E.coli)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、サルモネラ属(Salmonella spp.)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ビブリオ属(Vibrio spp.)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)、バクテリオファージ。
プラスチック製品が、温度25℃、圧力p=1.01325barで固体であることがさらに好ましい。
プラスチック製品が、成形コンパウンド、成形体、成形部品、ワークピース、半製品、完成部品、粒状材料、マスターバッチ、繊維およびフィルムからなる群から選択され、有利には、成形体、成形部品、ワークピース、半生製品、完成部品、繊維およびフィルムからなる群から選択されることが有利である。
プラスチック製品が、コーティングでなく、またコーティングを有しないことが好ましく、有利には40μm未満の層厚を有するコーティング、特に31μm未満の層厚を有するコーティング、すなわち例えば30μmの層厚を有するコーティングでなく、またこうしたコーティングを有しないことが好ましい。本発明におけるコーティングとは、液体コーティング剤を固体表面に施与し、次いで液体組成物、すなわち液体コーティング剤を(乾燥、固化または化学反応によって)硬化させることによって得られる層を意味すると理解される。本発明において、コーティングとは、共押出成形によって製造された層、例えば共押出成形によって製造された多層フィルムの層(例えば、内層または外層(カバー層))を明示的に意味するとは理解されない。
本発明のプラスチック製品が、成形体、成形部品、ワークピース、半製品、完成部品、繊維およびフィルム、特にフィルムからなる群から選択されている場合、プラスチック製品は有利には、成形コンパウンド、粒状材料および/またはマスターバッチから製造される。その場合、成形コンパウンド、粒状材料および/またはマスターバッチが、本発明により使用されるプラスチックおよび本発明により使用される発光体を含むか、またはそれらからなることが好ましい。
本発明によるプラスチック製品は、有利には規格DIN 8580:2003-09に記載されているように、多数の製造方法により得ることができる。
半製品および/または完成品のような本発明のプラスチック製品が、有利には一次成形法および/または変形加工法によって製造されることが好ましい。
ここで、液体状態からの一次成形および可塑性状態からの一次成形からなる群から選択される、有利には重力注型、加圧注型、低圧注型、遠心注型、ディップ成形、繊維強化プラスチックの一次成形、圧縮成形、射出成形、トランスファー成形、ストランド加圧、押出成形、延伸成形、カレンダー成形、ブロー成形およびモデリングからなる群から選択される一次成形法が好ましい。これらの一次成形法は、例えば規格DIN 8580:2003-09に記載されている。
ここでさらに、深絞り、熱成形および圧延からなる群から選択される変形加工法が好ましい。適切な変形加工法は、例えば規格DIN 8580:2003-09に記載されている。
本発明によるプラスチック製品が、押出成形、カレンダー成形および/または圧延によって、非常に特に好ましくは押出成形によって製造されることが特に好ましい。
本発明によるプラスチック製品が、3D印刷によって、有利には、熱溶解積層法(FDM)または溶融フィラメント造形法(FFF)とも呼ばれる溶融積層法で製造されることがさらに好ましい。
プラスチックが熱可塑性樹脂から選択されるプラスチック製品は、例えば二軸押出機、BUSSニーダーのような様々な混合ユニットで、ロールで、および当業者に知られている他のユニットで、熱可塑性樹脂を溶融し、発光体を添加することによって製造することができ、その後、直接使用することも、成形体あるいは部品を製造するための別個のプロセスで使用することもできる。このようなプロセスは、これに限定されるものではないが例えば、射出成形、異形材、シート、フィルムの押出成形、および熱成形プロセスであり得る。
得られる部品は、しばしば成形体とも呼ばれ、ここで、部品または成形体という用語は、熱可塑性プラスチック製品に限定されるものではない。本発明によるプラスチック製品の併用により製造される多成分部品、例えば共押出成形または積層された多層シートもしくはフィルム、または多成分射出成形における部品は、本発明のさらなる主題である。
本発明によるプラスチック製品の利点の1つは、発光体粒子がプラスチック製品中に有利には均一に分布しているため、(例えば、変形加工、穿孔、鋸引き、研削、材料除去加工によって)新たな表面が形成された際に、この表面が直ちに抗菌特性を備えていることである。しかし、例えば、コストを節約して抗菌性表面を生成するために、粒子を備えた薄層の共押出成形を行うことも可能であり、この場合には、プラスチック製品は、完全な抗菌性ではなく(すなわち、その体積全体にわたって抗菌性であるわけではなく)、表面の一部のみが抗菌性となるであろう。この場合、押出成形された材料は、抗菌コーティングのように挙動する。本発明の趣意において、共押出成形された材料の抗菌層は、コーティングとはみなされないことが指摘される。共押出成形された材料の抗菌層は、熱可塑性加工プロセスにより得られるものである。これとは異なり、コーティングは、固体表面に液体を施与し、この液体をさらなる段階で硬化させるという加工プロセスにより得られるものである。
本発明によるプラスチック製品は、抗菌作用を有する物品の製造に使用することができる。
ここで、抗菌作用を有する物品とは、その表面の少なくとも一部で微生物の増殖および/または繁殖を制限または防止する物品である。
したがって、本発明のさらなる主題は、本発明によるプラスチック製品を含むおよび/または該プラスチック製品から製造される物品である。
この物品は、プラスチック製品と同様に、本発明によるプラスチック製品とは異なるさらなる部分(例えば、部品)および構成要素を有することができる。このような部分や構成要素は、例えば金属製や木材製であってよく、また発光体を含まないプラスチック製品であってもよい。
本発明によるプラスチック製品、または該プラスチック製品を含むおよび/または該プラスチック製品から製造される本発明による物品は有利には、衛生施設、病院および/または食品産業で使用される。
しかしこれらはまた、公共空間の他の分野、例えば、幼稚園、学校、介護施設、老人ホーム、大規模な食堂および/またはスイミングプールで使用することもできる。
本発明によるプラスチック製品または本発明による物品は、家庭用品/家庭用機器または家庭用品/家庭用機器の一部、例えば、部品または操作要素(例えば、回転制御装置、スイッチ、電機子など)であってもよい。慣例的な家庭用品/家庭用機器の例は、コーヒーメーカー、ストーブ、洗濯機、食器洗浄機および容器(例えば、洗剤、柔軟剤、洗浄剤、食品、香辛料、医薬品、ケア剤および化粧品用)である。
本発明によるプラスチック製品、または該プラスチック製品を含むおよび/または該プラスチック製品から製造される物品は有利には、以下のものから選択される:
- 台所および実験室の作業台、
- フィルム、繊維、異形ストリップ、装飾ストリップおよびケーブル、
- 医療用品および医療機器、特に、血液や血液成分のような体液を収集および/または保存するためのカテーテルおよび容器、
- 衛生施設、病院および/または食品産業用の物品、
- 自動車(例えば、レンタカーやカーシェアリング車)、ボート、列車および/または航空機の装飾カバーシェード、取付部品、内装部品または外装部品、
- 家電製品、
- 家庭用品/家庭用機器、
- 玩具、
- スポーツ用品、
- サウナ、浴場、「スパ」および/またはウェルネス・センターなどのレジャー施設における物品、
- 家具、
- 公共交通機関における物品、
- 包装材であって、特にまた食品分野における包装材、
- 前述の物体の表面(例えば、プラスチック表面またはテキスタイル表面)、
- または前述の物体の部品および操作要素。
本発明の主題につき、図1および図2を参照してより詳細に説明するが、本発明の主題はそれらに限定されるものではない。
寒天平板試験の構成を示す図である。発光体試料
Figure 2024517598000001
を、コンフルエントに植菌されたニュートリエント寒天平板
Figure 2024517598000002
に施与し、室温で24±1時間、一定の照光下でインキュベートした。アップコンバージョンの効果による抗菌効力について検証するため、試料をさらに暗所でインキュベートした。
転写法の構成を示す図である。発光体を含むプラスチック製品を、コンフルエントに植菌されたニュートリエント寒天平板に所定のおもりで押し付ける(1)。こうして転写された細菌を、照光下または暗状態で室温にてインキュベートする(2)。抗菌効果の検出を、所定のおもりを用いてニュートリエント寒天に押し当てることによって行う(3)。
以下、実施例を挙げるが、これは、単に当業者に本発明の実施形態を明らかにするためのものである。これらは決して、特許請求される主題の限定を表すものではない。
実施例
1 方法および材料
1.1 透過率の測定
透過率の測定を、Analytik Jena社製“Specord 200 Plus”UV/VISツインビーム分光計で行った。内部波長較正には、酸化ホルミウムフィルターを使用する。重水素ランプの単色光(紫外域)またはタングステンハロゲンランプの単色光(可視域)を試料に照射した。スペクトルバンド幅は、1.4nmである。単色光を、測定チャネルと対照チャネルとに分け、それにより対照試料に対する直接的な測定が可能となる。試料を透過した放射線をフォトダイオードで検出し、処理する。測定を、透過モードで行った。測定範囲は190~1100nmであり、ステップ幅は1nmであった。測定速度は10nm/sであり、これは、0.1sの積分時間に相当する。
1.2 機器
・UPESあるいはUP試料製造用Speedmixer、Hauschild Engineering社製FAC 150.1型FVZ
・実験室用天秤Sartorius MSE 6202 S 100 DO
・血球計数装置(トーマ計数チャンバー)、Brandt社製
・振盪式水浴:GFL 1083、Byk Gardner社製
・Specord 200 PlusUV/VISツインビーム分光計、Analytik Jena社製
・二軸押出機Leistritz ZSE27MX-44Dの形態のコンパウンド製造用押出機:Leistritz Extrusionstechnik GmbH社製
・843322型Brabender機器Univex Take offキャストフィルムユニットおよび840806型Brabender機器インフレートフィルムユニットを備えたBrabender GmbH & Co KG社製815801型Brabender Lab Stationの形態のインフレートフィルムまたはキャストフィルム製造用システム
・AXXICON社(ドイツ)製射出成形ダイを備えたシート/成形体製造用射出成形機ES200/50HL型、Engel Schwertberg社(オーストリア)製。
1.3 ニュートリエント培地
- Casoブロス:Merck KGaA Millipore社製
- CASOニュートリエント寒天培地:Oxoid社製。
1.4 プラスチック製品を製造するための材料およびその加工パラメータ
プラスチック製品を製造するための材料、原料あるいはプラスチックを表1に示す。加工パラメータは、熱可塑性樹脂(PE、PP)については示されているが、熱硬化性樹脂(UPES)については内容物のみが記載されており、加工は、試料の製造に関連して具体的に説明されている。
Figure 2024517598000003
1.5 透過率測定によるプラスチックの選別
いくつかのプラスチックについてUV/VIS透過スペクトルを測定した。試料の製造については、2.3.1に記載されている。プラスチックの適合性に関する十分な基準(ただし、不可欠な基準ではない)は、材料厚100μmで波長260nmおよび500nmでの透過率が少なくとも60%であることである。
Figure 2024517598000004
2 抗菌効力についての検証
2.1 発光体の選別
以下の発光体を使用した:
・特許出願EP19202897.5およびPCT/EP2020/077796の実施例5にしたがって、すなわち以下の規定にしたがって製造したLuLiAlSi12:Pr:
「実施例5:(Lu0.99Pr0.01LiAlSi12
3.1516g(7.9200mmol)のLu、0.0272g(0.0267mmol)のPr11、9.0032g(24.0000mmol)のAl(NO・9HO、0.2956g(4.0000mmol)のLiCO、3.3333g(16.0000mmol)のSi(OCおよび40.3470g(192.0000mmol)のクエン酸を、希硝酸に溶解させた。この溶液を65℃で激しく撹拌し、ゾルを得た。このゾルを150℃で一晩乾燥させてゲルにした。その後、マッフル炉にて空気中で1000℃にて4時間か焼して、有機残留物を除去した。空気中で1600℃にて1時間のさらなるか焼ステップを実施して、生成物相を得た。」
・以下の規定にしたがって製造したLi
1.8473g(25.0000mmol)のLiと2.8756g(25.000mmol)のNHPOとを、メノウ乳鉢中でアセトン中にて混合した。調製したこの混合物を、標準的な(空気)雰囲気下で500℃にて6時間か焼した。標準的な(空気)雰囲気下で650℃にてさらに12時間か焼して、生成物を得た。
・以下の規定にしたがって製造したBaYSi10:Pr3+
2.1273g(10.7800mmol)のBaCO、1.9828g(33.0000mmol)のSiO、2.4839g(11.0000mmol)および0.0187g(0.0183mmol)のPr11を、メノウ乳鉢中でアセトン中にて混合した。調製したこの混合物を、CO雰囲気下で1400℃にて6時間か焼して、生成物を得た。
・以下の規定にしたがって製造したCaScSi12:Pr3+,Na(1%):
1.8119g(18.1030mmol)のCaCO、0.0104g(0.0102mmol)のPr11、0.8428g(6.1110mmol)のSc、および0.0032g(0.0306mmol)のNaCOを、熱濃硝酸に溶解させた。この溶液を濃縮して、硝酸塩を得た。この硝酸塩に、常に撹拌しながら水を加えた。1.1043g(18.3790mmol)のSiOを20mLの水と混合し、超音波浴に入れて凝集物を分離した。この分散液を、上記の硝酸水溶液に投入し、混合した。そこに11.1314g(121.1300mmol)のC11NOを添加した。この溶液を濃縮した。この反応生成物を、150℃で乾燥させた。次いで、この反応生成物をマッフル炉で標準的な(空気)雰囲気下で1000℃にて2時間か焼した。フォーミングガス(N/H;95%/5%)下に1300℃で4時間さらにか焼を行って、生成物を得た。
2.2 発光体の抗菌効力についての検証
まず、発光体自体の抗菌効力を試験した。グラム陽性被験生物およびグラム陰性被験生物に対する発光体の効力を試験した。
試験を、DVGW(Deutscher Verein des Gas- und Wasserfachesドイツガス水道技術科学協会)のワークシートW 294“UV-Geraete zur Desinfektion in der Wasserversorgung”でUVシステムのバイオドシメトリ試験に使用されているB.サブチリス(B.subtilis)について行った。これは、グラム陽性の芽胞形成細菌として、UV線に特に鈍感であるため、UV線の抗菌作用について検証するための「ワーストケース」として好適である。
さらに、グラム陰性菌に対する抗菌効力を示すために、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)に対する抗菌作用も試験した。E.コリ(E.coli)は、グラム陰性好気性細菌であり、ヒトの腸管内に多く存在するため、糞便汚染の典型的な指標となる。他の組織がE.コリ(E.coli)に汚染された場合、例えば泌尿生殖器感染症などの感染症を引き起こすことが多い。
2.2.1 寒天平板試験
寒天平板試験により、被験生物であるB.サブチリス(B.subtilis)およびE.コリ(E.coli)に対する発光体の抗菌作用について検証した。
試験のために、固形のニュートリエント寒天平板に被験生物の菌懸濁液をコンフルエントに植菌した。植菌したニュートリエント平板に、発光体試料を施与した(図1)。この平板を、適切な増殖条件下でインキュベートした。この平板をインキュベートした後、ニュートリエント平板上の発光体の集積部およびその周辺にコロニー増殖のないゾーンが同心円状に形成されることをもとに、増殖抑制特性を評価した。
被験生物として、バシルス・サブチリス亜種スピジゼニイ(Bacillus subtilis subsp. spizizenii)(DSM 347、ATCC 6633)およびエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)(DSM 1116;ATCC 9637)を使用した。被験生物を、懸濁液中で10細胞/mlの最終濃度で使用した。
菌懸濁液を、各菌株の予備培養物の希釈により作製した。希釈を、滅菌脱イオン水で行った。被験生物の予備培養物を、滅菌カゼインペプトン-大豆粉ペプトン(CASO)ブロス中で作製した。B.サブチリス(B.subtilis)の予備培養物を、30℃で16±1時間、振盪水浴中で一定の振盪下にインキュベートした。E.コリ(E.coli)の予備培養物を、36℃で、マグネチックスターラーバーの入った恒温の三角フラスコ中で、350rpmで一定に撹拌しながらインキュベートした。予備培養物の細胞価を、血球計数装置(トーマ計数チャンバー)を用いた顕微鏡検査で求めた。
寒天平板試験のために、10細胞/mlの菌懸濁液1.0mlを、滅菌したCASO寒天平板上に、ニュートリエント寒天のコンフルエントな被覆が保証されるように均一に分配した。施与した菌懸濁液を、ニュートリエント寒天上で室温(22±2℃)にて300±30秒間平衡化した後、発光体を中央に施与した。さらに、炭酸カルシウムおよび酸化銅を、それぞれ陰性対照および陽性対照としてニュートリエント平板の中央に施与した。酸化銅には増殖抑制効果があることが知られているが、炭酸カルシウムには増殖抑制効果は認められないはずである。
ニュートリエント平板を、一定の照光下で室温にて24±1時間インキュベートした。同一のバッチを、さらに暗所でもインキュベートした。
この照光下および暗所でのインキュベーションは、もし照光状態でのみ増殖抑制効果があれば、発光体のアップコンバージョンを示唆することになる。
すべての試料および対照物について三重反復試験を行い、24±1時間のインキュベーション時間中に照光ありおよびなしで試験した。
「発光体」という用語と「発光体粒子」という用語とは、同義語として用いられる。
2.2.2 寒天平板試験の結果
細菌に対する発光体の増殖抑制効果を、室温で24±1時間後に目視で検出した(表3)。
ニュートリエント寒天上で、集積した発光体粒子または対照粒子の周辺およびその位置に細菌のコロニー増殖のないゾーンが同心円状に生じた場合、増殖抑制効果がある。
ニュートリエント寒天上で、集積した発光体粒子または対照粒子の周辺およびその位置に細菌のコロニー増殖が検出された場合、増殖抑制効果はない。
室温で24±1時間後に照光下でインキュベートした後、B.サブチリス(B.subtilis)およびE.コリ(E.coli)に対して発光体LuLiAlSi12:Prの増殖抑制効果を検出することができた。他の発光体では、増殖抑制作用は検出できなかった(表3)。
すべての発光体について、集積した発光体粒子の周辺およびその位置で、暗所でのインキュベート条件下では、細菌のコロニー増殖を検出することはできなかった。
この結果は、発光体LuLiAlSi12:Prの抗菌作用の原因が、光励起状態におけるUV発光の物理的効果であることを明確に示している。暗状態ではアップコンバージョンが起こらないため、発光体の抗菌作用は、暗状態では検出できなかった。
炭酸カルシウムを用いた対照物では、明所でも暗所でも、細菌の増殖抑制を示すゾーンは認められなかった。それに対して、酸化銅を用いた対照物では、明所でも暗所でも、細菌のコロニー増殖のない同心円状のゾーンが認められる。
発光体はさらに、真正の細菌汚染を示さなかった。
この結果は、発光体LuLiAlSi12:Prが本発明によるプラスチック製品に適していることを示している。以下、この発光体を、本発明による発光体とも呼ぶ。
Figure 2024517598000005
2.3 本発明によるプラスチック製品の抗菌効力についての検証
発光体LuLiAlSi12:Pr自体が抗菌作用を有することは、2.2で示すことができた。以下、この抗菌作用を本発明によるプラスチック製品においても認めることができることを示す。
ここで、「抗菌作用」、「抗菌効果」、「抗菌効力」および「抗菌特性」という用語は、同義語として用いられていることに留意すべきである。
本発明によるプラスチック製品の抗菌効力について検証するために、発光体LuLiAlSi12:Prをプラスチックに組み込む。
2.3.1 プラスチック製品の製造
以下、本発明によるおよび本発明によらないプラスチック製品の製造に使用した応用技術的方法について記載する。
2.3.1.1 熱可塑性試験体用混合物を製造するための熱可塑性コンパウンドの製造
対応するプラスチック(PE、PP)と発光体とからなる各2.5kgのプレミックスを製造した。発光体を、プレミックスの全組成に対してそれぞれ示された重量割合で添加した(%または同義で重量%にて示す)。それぞれ、発光体不含の比較混合物について検討した。発光体を1%および5%含有する混合物を製造した。
次いで、得られたプレミックスをBrabender計量ユニットに導入し、搬送スクリューを通じて二軸押出機Leistritz ZSE27MX-44D(製造元Leistritz Extrusionstechnik GmbH)に供給して加工した。各コンパウンドを得るための加工を、所定の回転数(rpm)および所定の温度設定で行った。次いで、プラスチックストランドを造粒し、その際、ストランド冷却のために3.20mの水浴を使用した。各プラスチックの温度プロファイルを、技術データシートにしたがって選択した。各種プラスチックの温度、回転数および圧力は、表1から得ることができる。
プレミックスでは、発光体を良好に混合できるようにするため、プラスチックを(例えば、事前に粉砕することにより)可能な限り粉末として使用する。
2.3.1.2 PEベースのインフレートフィルム、またはPPベースのインフレートフィルムもしくはキャストフィルムの形態のプラスチック製品の製造
フィルムの製造に、Brabender GmbH & Co KG社製815801型Brabender Lab Stationを使用し、これに付属するBrabender社製625249,120型ミニ押出機を使用して材料をダイに供給した。キャストフィルム用の幅15cmのスロットダイを取り付けるか、または直径10cmのインフレートフィルムヘッドを使用した。次いで、キャストフィルムを、843322型Brabender機器Univex Take offで巻き取り、インフレートフィルムを、840806型Brabender機器で巻き取った。フィルム製造の条件は、処理したプラスチックの技術データシートから得たものであり、すべてのフィルムを18m/分の速度で製造した。転写法(2.3.2参照)を実施するため、得られたフィルムを2.5cm×4cmのサイズにカットした。この方法を用いて、2.3.1.1にしたがって発光体含有コンパウンドおよび発光体不含コンパウンドとして予め製造しておいたプラスチック製品を、フィルムに加工した。
2.3.1.3 UPESをベースとするプラスチック製品の製造
UPESをベースとするプラスチック製品を製造するために、前述のSpeedmixerを使用し、発光体を含有する表4に示す各成分を以下のように順次投入した。プラスチック製品の主成分、すなわちUPES(表1参照)をSpeedmixerのポットに導入し、触媒(混合物の総重量に対して0.98重量%)を2500rpmで15秒間混ぜ入れる。次いで、促進剤(混合物の総重量に対して0.29重量%)を同様に2500rpmで15秒間混ぜ入れた。配合物に発光体を添加する場合、本発明による発光体(混合物の総重量に対して0重量%、1重量%または5重量%)を、触媒および促進剤の添加前にUPESに直接添加し、次いで、この混合物を2500rpmで60秒間混合した。その後に、触媒および促進剤を添加した。
次の工程では、この混合物を直径10cmのアルミニウム皿に注いだ。これらのアルミニウム皿を、予め50℃のホットプレート上で5分間予熱しておき、充填中およびその後さらに2分間、このホットプレート上に置いた。その後、充填されたアルミ皿を室温で24時間おき、その後、80℃のオーブンに5時間入れた。その後、得られたプラスチック製品をオーブンから取り出し、ヒュームフード内で室温にてさらに24時間放置した。その後、得られた発光体を含むまたは含まないプラスチック製品の抗菌作用を試験した。
2.3.1.4 PP成形体(シート)の製造
製造したコンパウンドを射出成形機(ES 200/50HL型、Engel Schwertberg社製、オーストリア)で加工し、サイズ6cm×6cm、厚さ2mmの平滑シート(射出成形ダイ:平滑二重シート、AXXICON社製)にした。射出成形条件は、PPの技術データシートから得た。予め2.3.1.1にしたがってコンパウンドとして製造しておいた、発光体を1%および5%含有するPPベースのプラスチック製品を、発光体不含のものと比較した。
2.3.2 転写法の実施
被験生物として、ここでもバシルス・サブチリス亜種スピジゼニイ(Bacillus subtilis subsp. spizizenii)(DSM 347、ATCC 6633)を使用した。10細胞/mLの最終濃度のB.サブチリス(B.subtilis)懸濁液1mlを、滅菌したCASO寒天平板上に、ニュートリエント寒天のコンフルエントな被覆が保証されるように均一に分配した。施与した菌懸濁液を、ニュートリエント寒天上で室温(22±2℃)にて300±30秒間平衡化した。菌懸濁液を、それぞれの菌株の予備培養物の希釈により作製した。希釈を、滅菌脱イオン水で行った。被験生物の予備培養物を、滅菌CASOブロス中で作製した。B.サブチリス(B.subtilis)の予備培養物を、30℃で16±1時間、振盪水浴中で一定の振盪下にインキュベートした。予備培養物の細胞価を、血球計数装置(トーマ計数チャンバー)を用いた顕微鏡検査で求めた。
転写法の目的は、プラスチック表面の抗菌作用を、乾燥した無生物表面上で現実に近い条件下でシミュレートすることである。この目的のために、上記のようにして得られたプラスチック製品を、コンフルエントにB.サブチリス(B.subtilis)を植菌したニュートリエント寒天平板に所定の90±1gのおもりで60±5秒間押し付けた。この工程によって、細菌は半乾燥状態でプラスチック製品の表面に移動した。その後、プラスチック製品を、植菌面を上にして空のペトリ皿に入れ、照光下で室温にて0時間、1時間、2時間および4時間インキュベートした。
アップコンバージョン効果による抗菌作用について検証するため、フィルムの植菌面をさらに暗所でも室温にて0時間、1時間、2時間、4時間インキュベートした。
すべての試料および対照物について三重反復試験を行い、インキュベーション時間中に照光ありおよびなしで試験した。
対応するインキュベート時間後の抗菌効果の検出を、押し当て試験(図2)による培養性の判定によって行う。
B.サブチリス(B.subtilis)の培養性について検証するために、0時間、1時間、2時間、4時間のインキュベート時間の後、フィルムの植菌面を、滅菌ニュートリエント寒天平板に所定の90±1gのおもりで60±5秒間押し付けた。このニュートリエント寒天を、次いで30℃で24±1時間にわたって静的にインキュベートした。生じた細菌コロニーを、目視により定性評価した。
2.3.3 転写法の結果
増殖抑制効果は、転写法において、B.サブチリス(B.subtilis)の培養性の低下によって確認することができる。結果を表4にまとめた。
プラスチック製品表面の付着菌の培養性について、インキュベート時間の増加とともに明らかな増殖の低減が明らかとなった。発光体LuLiAlSi12:Prは、ブランク試料(発光体不含のプラスチック製品)および暗所でインキュベートしたプラスチック製品と比較して、B.サブチリス(B.subtilis)の培養性を著しく低下させる。この低下は、1時間インキュベートした後でもすでに、一定の照光下で測定可能である。培養性の低下は、一定の照光下で4時間のインキュベーション時間まで増大する。暗所でインキュベートしたプラスチック製品は、4時間のインキュベーション期間にわたって培養性の低下を示さない。培養可能なバクテリアの数が4時間の期間にわたって変化しないことから、発光体の抗菌効果が照光状態でのみ存在することが判明し得る。よって、ここでもアップコンバージョン効果が存在する。プラスチック製品はさらに、真正の汚染を示さない。表4から見て取れるように、1重量%または5重量%の発光体を使用した場合、いずれのプラスチック製品も、照光状態では抗菌作用を示すのに対して、発光体不含の、または非照光状態のプラスチック製品は、抗菌作用を示さない。
Figure 2024517598000006

Claims (15)

  1. 少なくとも1つのプラスチックと、一般式(I):
    Lu3-a-b-nLn(Mg1-zCaLi(Al1-u-vGaSc5-a-2n(Si1-d-eZrHfa+2n12 (I)
    [式中、
    a=0~1、1≧b>0、d=0~1、e=0~1、n=0~1、z=0~1、u=0~1、v=0~1であるが、ただし、u+v≦1でかつd+e≦1が成り立ち、
    Lnは、プラセオジム(Pr)、ガドリニウム(Gd)、エルビウム(Er)、ネオジム(Nd)およびイットリウム(Y)からなる群から選択される]の少なくとも1つの発光体とを含む、プラスチック製品。
  2. 前記発光体にプラセオジムがドープされていることを特徴とする、請求項1記載のプラスチック製品。
  3. 前記発光体が、少なくとも部分的に結晶質であることを特徴とする、請求項1または2記載のプラスチック製品。
  4. 前記発光体が、一般式(Ia):
    (Lu1-x-yGd3-a-b-nLn(Mg1-zCaz)aLi(Al1-u-vGaSc5-a-2n(Si1-d-eZrHfa+2n12 (Ia)
    [式中、
    a=0~1、1≧b>0、d=0~1、e=0~1、n=0~1、x=0~1、y=0~1、z=0~1、u=0~1、v=0~1であるが、ただし、x+y≦1、u+v≦1でかつd+e≦1が成り立ち、
    Lnは、プラセオジム(Pr)、エルビウム(Er)およびネオジム(Nd)からなる群から選択される]の化合物から選択されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のプラスチック製品。
  5. 前記発光体が、式Lu2-bPrLiAlSi12[式中、1≧b>0、好ましくは1>b>0、さらにより好ましくはb=0.001~0.050、特に好ましくはb=0.02である]の化合物であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のプラスチック製品。
  6. 前記発光体が、より低エネルギーでより長波長の、2000nm~400nmの範囲、好ましくは800nm~400nmの範囲の電磁放射線を照射すると、より高エネルギーでより短波長の、400nm~100nmの範囲、好ましくは300nm~200nmの範囲の電磁放射線を放出し、有利には、前記より高エネルギーでより短波長の電磁放射線の発光極大の強度は、少なくとも1×10カウント/(mm・s)の、好ましくは1×10カウント/(mm・s)より高い、特に好ましくは1×10カウント/(mm・s)より高い強度であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のプラスチック製品。
  7. 前記発光体が、17° 2Θ~19° 2Θおよび31° 2Θ~35° 2Θの範囲のXRPDシグナルを有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のプラスチック製品。
  8. 前記発光体が、0.1~100μm、有利には0.1~10μm、特に0.1~5μmの粒径d50を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のプラスチック製品。
  9. 全発光体の総量の重量割合が、前記プラスチック製品の総重量に対して0.02%~<50.00%、有利には0.05%~10.00%、特に1.00%~7.00%であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のプラスチック製品。
  10. 前記少なくとも1つのプラスチックが、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂からなる群から選択され、有利には熱可塑性樹脂から選択されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のプラスチック製品。
  11. a)前記熱可塑性樹脂が、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(アルキル)(メタ)アクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COP)および熱可塑性エラストマー(TPE)からなる群から選択され、ここで、前記熱可塑性エラストマーは有利には、熱可塑性ポリアミドエラストマー(TPA、TPE-A)、熱可塑性コポリエステルエラストマー(TPC、TPE-E)、オレフィンをベースとする熱可塑性エラストマー(TPO、TPE-O)、熱可塑性スチレンブロック共重合体(TPS、TPES)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性加硫物(TPV、TPE-V)およびオレフィンをベースとする架橋熱可塑性エラストマー(TPV、TPE-V)からなる群から選択され、かつ/または
    b)前記熱硬化性樹脂が、ジアリルフタレート樹脂(DAP)、エポキシ樹脂(EP)、尿素-ホルムアルデヒド樹脂(UF)、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂(MF)、メラミン-フェノール-ホルムアルデヒド樹脂(MPF)、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂(PF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP、UPES)、ビニルエステル樹脂(VE)およびポリウレタン(PU)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10記載のプラスチック製品。
  12. 全プラスチックの総量の重量割合が、前記プラスチック製品の総重量に対して>50.00%~99.98%、有利には90.00%~99.95%、特に93.00%~99.00%であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載のプラスチック製品。
  13. 前記プラスチック製品が、細菌、酵母、カビ、藻類、寄生体および/またはウイルスに対する抗菌作用を有することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載のプラスチック製品。
  14. 前記プラスチック製品が、成形コンパウンド、成形体、成形部品、ワークピース、半製品、完成部品、粒状材料、マスターバッチ、繊維およびフィルムからなる群から選択され、有利には、成形体、成形部品、ワークピース、半生製品、完成部品、繊維およびフィルムからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載のプラスチック製品。
  15. 請求項1から14までのいずれか1項記載のプラスチック製品を含むおよび/または前記プラスチック製品から製造される、物品。
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