JP2024514148A - 前駆期ハンチントン病の治療 - Google Patents

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Abstract

本開示によれば、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGのリピート数を有する前駆期ハンチントン病の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を患者に投与するステップを含む、方法が提供される。【選択図】なし

Description

本発明は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGのリピート数を有する前駆期ハンチントン病の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を患者に投与するステップを含む、方法に関する。
ハンチントン病
ハンチントン病(HD)は、常染色体優性遺伝形式をとるまれな致死的神経変性疾患である。この疾患は、進行性の運動異常、認知機能低下、精神科的症状、及び行動上の症状によって特徴付けられる。HDの徴候や症状は何年もかけて徐々に進行し、一般的には30~50歳の間に特徴的な運動症状(「運動起始」)に基づいて診断される。疾患の進行に伴い、患者は、機能低下、障害の増加、自立の喪失、及び、症状発現から15~30年以内の早死を経験する。この段階的な悪化は、神経変性プロセスが、患者の生涯を通じて起こっていることの証拠である。
HDは、ハンチンチン(Htt)遺伝子のエクソン1におけるCAGリピート数の伸長によって引き起こされる。CAGリピート長が35以下の場合(非キャリア)は、HDを発症するリスクがない。CAGリピート長が36以上の場合は、疾患と関連する。CAGリピート長が長いほど、疾患の発症が早くなり、また、疾患の進行がより重篤化する。
遺伝子キャリアにおけるHDの発症に先行する広範な神経変性は、脳内の特定の画像測定法を用いて、また、体液バイオマーカーの濃度を測定することによってモニタすることができる。脳体積の減少は、脳全体、とりわけ、線条体の下部構造体である尾状核及び被殻で見られる。
HDは、不顕性期(premanifest stage)と顕性期(manifest stage)とに分けられる。
HDの遺伝子伸長(CAGリピート長が36以上)を有する患者のうち、疾患の臨床診断基準を満たさない者を「不顕性期」と呼ぶ。不顕性期HDの患者は、診断を下すのに十分な運動症状がまだ発現していないため、臨床診断は下されない。
HDの不顕性期は、発症前期(presymptomatic stage)と前駆期(prodromal stage)との2つの段階に分けられる。発症前期の患者は、臨床的には同年齢の健常者とは見分けがつかず、HDの特徴を示さない。
前駆期の患者は、発症前期の患者とは見分けがつき、検出可能な神経解剖学的変化(すなわち、脳及びその下部構造体である尾状核及び被殻の体積の減少)を表す微細な運動、認知、または精神医学的な徴候または特徴を示す。これらの特徴は、発症前期の患者では観察されない(図1)。しかしながら、前駆期の患者は、完全な機能的能力を維持している。顕性期の患者は、前駆期の患者とは異なる(図2)。顕性期の患者は、HDの決定的な特徴である運動徴候に基づいて正式に診断される。舞踏病は最も明らかな運動症状であり、顕在期の患者では顕著であるが、前駆期の患者では観察されない。加えて、顕性期の患者は、運動亢進や運動緩慢などの他の運動機能の障害、粗大運動協調技能の障害、言語障害、歩行障害、及び、姿勢障害などを示す。また、顕性期の患者は、認知機能や機能的能力の著しい低下を示す(図2)。
現在利用可能な治療法
顕性期ハンチントン病(HD)の舞踏病の治療薬として承認されているのは、テトラベナジン(Xenazine)とデューテトラベナジン(Austedo)との2種類のみである。この2つの薬物の作用機序は共通しており、VMAT2(小胞モノアミン輸送体2)によるシナプス小胞へのドパミンの取り込みを阻害することにより、ドパミンの輸送及び分解を妨げている。重要なことには、これらの薬物は、舞踏病が発現してからでしか舞踏病を治療することができず、舞踏病の発現を予防することはできない。現在のところ、HDの症状を改善したり、HDの発症を遅らせたり、HDの発症を予防したりすることができる、前駆期の患者に対する承認された薬物や治療法は存在しない。
本出願人は、米国特許第10,322,119号及び米国特許第11,207,310号に開示されているように、プリドピジンが早期HD(早期HDとは、HDの初期段階にある顕性期患者を指す)における機能的能力を維持、改善、または、低下を軽減することを示している。前述のように、前駆期HDの患者は、顕性期HDの患者に見られる機能的能力の低下を示さない。
HDの発症を遅らせるために、HDの兆候を遅らせたり、前駆期の症状を改善、維持、または症状の悪化を軽減したりするための医薬品を開発することに対する、大きなアンメットニーズが存在している。前駆期は、顕性期とは異なる特徴を有し、顕性期HDの診断に至らないまま何年も続くことがある。
プリドピジン
プリドピジン(4-[3-(メチルスルホニル)フェニル]-1-プロピル-ピペリジン)(旧名ACR16)は、選択的かつ高親和性のシグマ-1受容体(S1R)アゴニスト(Ki=0.57μM)である。
いくつかの実施形態では、本開示は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGのリピート数を有する前駆期ハンチントン病の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を患者に投与するステップを含む、方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本開示は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGのリピート数を有する前駆期ハンチントン病(HD)の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を患者に投与するステップを含み、前駆期ハンチントン病(HD)の患者の統一ハンチントン病評価尺度の全機能的能力(UHDRS-TFC)のスコアは13である。他の実施形態では、前駆期ハンチントン病(HD)の患者の診断信頼レベル(DCL)は1、2、または3である。他の実施形態では、前駆期ハンチントン病(HD)の患者の合計運動スコア(TMS)を含む運動機能障害のスコアは5~10である。他の実施形態では、前駆期ハンチントン病(HD)の患者の自立性スコア(IS)は90%以上である。別の実施形態では、前駆期ハンチントン病(HD)の患者のハンチントン病統合病期分類システム(HD-ISS)で分類された病期はステージ1またはステージ2である。
一実施形態では、本開示の方法で使用される組成物は、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩と、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせとを含む。
Figure 2024514148000001
一実施形態では、本開示の方法は、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を、10~225mg/日の用量で投与することを含む。
一実施形態では、本開示の方法で使用される組成物は、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩と、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせとを含み、化合物1または化合物4は、プリドピジンに対して0.001~1.0%の重量パーセントを有する。
発明と見なされる主題は、本明細書の結論部分で特に指摘され、明確に主張されている。しかしながら、本発明は、構成及び動作方法の両方に関して、また、その目的、特徴、及び利点と共に、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読むことによって最もよく理解されるであろう。
図1は、前駆期HDの被験者と発症前期のHD遺伝子キャリアとの臨床的差異を示す表である。全脳体積は、開示されているように、年齢を一致させた対照または発症前期の被験者に対する全頭蓋内容積及び損失の割合として表される。尾状核及び被殻の体積を頭蓋内容積で割り、1000を掛けた。抗サッカードエラーテストは、反射的反応を抑制する能力(反射的抑制)を評価し、スコアが高いほど障害の程度が高いことを示す。眼球運動は、統一ハンチントン病評価尺度-全機能的能力(UHDRS-TMS)の眼球運動に関するサブ項目を用いて測定した。ストループワードリーディング(SWR)テストは、認知的干渉を抑制する能力を評価し、スコアが低いほど障害の程度が高いことを示す。トレイルメイキングテストAは、一組の番号付きドットを結ぶのにかかる時間を測定することによって意思決定及び視覚的注意を評価し、スコアが高いほど障害の程度が高いことを示す。意味流暢性タスクでは、治験参加者(被験者)は1分以内に指定されたカテゴリからできるだけ多くの物体をリストアップするように指示され、スコアが低いほど障害の程度が高いことを示す。音素流暢性タスクでは、治験参加者は、特定の文字で始まって、特定の文字で終わる単語をできるだけ多くリストアップするように指示され、スコアが低いほど障害の程度が高いことを示す。非言語流暢性タスクでは、治験参加者は、5分以内にできるだけ多くの絵を描くように指示され、スコアが低いほど障害の程度が高いことを示す。スポットザチェンジテストでは、推測の総数に対する正解数(k)の補正を示す。数値が低いほど悪化していることを示す。k=(H+CR-1)N式中、H=ヒット数、CR=正解棄却数、N=表示項目数=5である。 症状チェックリスト90改訂版(Symptom Checklist-90-Revised instrument)は、幅広い心理的問題や精神病理学の症状を評価するのに役立つ。ベックうつ病質問票(BDI)は、広く使用されている、うつ病の重症度を評価するための自己報告式の質問票であり、スコアが高いほどうつ病が重症であることを示す。ベック絶望感尺度(BHS)は、絶望の3つの主要な態様(将来に対する感情、意欲の喪失、期待)を測定する。BHSは、自殺傾向の指標として用いることができ、スコアが高いほど重症であることを示す。 図2は、前駆期HDの被験者と顕性期のHD被験者との臨床的差異を示す表である。全脳体積は、開示されているように、年齢を一致させた対照または発症前期の被験者に対する全頭蓋内容積及び損失の割合として表される。抗サッカードエラーテストは、反射的反応を抑制する能力(反射的抑制)を評価し、スコアが高いほど障害の程度が高いことを示す。スピードタッピングテストは微細運動機能の精度を評価し、ばらつきが大きいほど障害が大きいことを示す(SD-標準偏差)。舌の突き出し力は、事前に較正された力変換器を使用して測定され、ばらつきは対数分散係数として表される。ストループワードリーディング(SWR)テストは、認知的干渉を抑制する能力を評価し、スコアが低いほど障害の程度が高いことを示す。記号数字モダリティテスト(SDMT)は、集中力及び意思決定を評価し、スコアが低いほど障害の程度が高いことを示します。トレイルメイキングテストは、一組の点(数字(A)、または、数字と文字との組み合わせ(B))を結ぶのにかかる時間を測定することによって意思決定及び視覚的注意を評価し、スコアが高いほど障害の程度が高いことを示す。情報サンプリング(ビーズタスク)は、抽出されたビーズの数をカウントすることによって、被験者が意思決定を行う前にどれだけの情報を集めているかを評価する。 ペンシルバニア大学嗅覚識別テスト(University of Pennsylvania Smell Identification Test:UPSIT)は、香りを識別するための一般的な信頼性の高いテストであり、スコアが低いほど障害の程度が高いことを示す。感情認識課題では、被験者に人の顔写真から感情を特定させ、正解数を評価する。スコアが低いほど障害の程度が高いことを示す。視覚的物体・空間知覚(VOSP)の一連のタスクは、物体認識と知覚処理を評価する。被験者は15の動物や物体のシルエットを識別し、正解数をカウントする。スコアが低いほど障害の程度が高いことを示す。スポットザチェンジテストでは、推測の総数に対する正解数(k)の補正を示す。数値が低いほど悪化していることを示す。k=(H+CR-1)N式中、H=ヒット数、CR=正解棄却数、N=表示項目数=5である。
図示の簡略化及び明確化のために、図示されている要素は必ずしも一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確化のために、他の要素と比較して誇張されている場合がある。さらに、適切と考えられる場合には、対応する要素または類似する要素を示すために、参照番号が図面間で繰り返し使用される。
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、本発明は、これらの具体的な詳細を用いることなく実施してもよいことは、当業者には理解されるであろう。他の例では、よく知られている方法、手順、及び構成要素は、本発明を不明瞭にしないように、詳細に記載されていない。
いくつかの実施形態では、本開示は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGのリピート数を有する前駆期ハンチントン病の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を患者に投与するステップを含む方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本開示は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGのリピート数を有する前駆期ハンチントン病の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩と、下記の化合物1~7のうちの少なくとも1つの化合物またはその薬学的に許容される塩とを含む組成物を、患者に投与するステップを含む方法を提供する。
Figure 2024514148000002
いくつかの実施形態では、本開示は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGのリピート数を有する前駆期ハンチントン病の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩と、上記の化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、上記の化合物4もしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせとを含む組成物を、患者に投与するステップを含む方法を提供する。
本開示の方法、組成物、及び使用のいくつかの実施形態では、プリドピジン、化合物1または化合物4の薬学的に許容される塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、D,L-酒石酸塩、L-酒石酸塩、D-酒石酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、ヘミコハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、グリコール酸塩、サッカラート、ギ酸塩、ベシル酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、リンゴ酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、シュウ酸塩、トシル酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、パモ酸塩(すなわち、1,1´-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))、過塩素酸塩、アコン酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、エンボン酸塩、エナント酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、フタル酸塩、ソルビン酸塩、及び、ステアリン酸塩からなる群から選択される。他の実施形態では、薬学的に許容される塩は、塩酸塩である。別の実施形態では、組成物は、プリドピジン塩酸塩を含む。
当業者であれば、前駆期HDの患者とは、ハンチンチン(HTT)遺伝子に少なくとも36のCAGのリピート数を有し、図1に定義されるような発症前期の患者とは異なる特徴を有する患者を指すことを理解するだろう。前駆期HD患者には、顕性期HDの臨床診断に必要とされる徴候や症状が見られない。
[HDの病期の診断及び臨床的評価]
HDの徴候及び症状を評価するために、様々な臨床的尺度または診断的尺度が用いられる。これらの尺度により、HDの発症前期、前駆期、及び顕性期が区別される。例えば、統一ハンチントン病評価尺度(UHDRS)は、運動、機能、認知、及び行動の各領域を評価する。診断信頼スコアまたは診断信頼レベル(DCL)は、運動障害がHDに起因するという診断の信頼性の度合に関連している。
診断信頼レベル(DCL)
別の実施形態では、前駆期HDの被験者は、診断信頼レベル(DCL)が、1、2、または3である。
前駆期HDの被験者の臨床的評価には、診断信頼スコアまたは診断信頼レベル(DCL)が含まれ、これらでは、運動徴候とHDとに関する臨床医の所見を、0(運動異常なし)から4(運動異常がHDに起因する可能性が99%以上である)までのステージ(段階)で評価する。DCLのステージ0では、被験者に運動障害は認められず、したがって、発症前期と見なされる。DCLのステージ1、ステージ2、及びステージ3は、前駆期と見なされる。DCLのステージ1では、運動異常はHDに非特異的であると臨床医により判断される(信頼度は50%未満)。DCLのステージ2は、前駆期であり、運動異常がHDの徴候である可能性があると臨床医により判断される(信頼度は50~89%)。DCLのステージ3では、運動異常はHDの結果である可能性が高いと臨床医により判断され(信頼度は90~98%)、この段階では認知及び行動の徴候も明らかになり、HD顕性期と診断される場合もある。DCLのステージ4では、運動徴候及び症状がHDの結果であると臨床医により判断され(信頼度は99%以上)、認知障害や行動障害の評価を追加することなくHDの正式な診断が下される。このモデルは、運動症状が疾患の不均一性の中で比較的ロバストであり容易に識別できるため、有利である。
一実施形態では、本開示は、ハンチンチン遺伝子に少なくとも36のCAGリピート数を有する被験者において、被験者が少なくとも6ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも6年、少なくとも7年、少なくとも8年、少なくとも9年、または少なくとも10年の期間にわたってDCLのステージ1~3を維持するように、前駆期HDを治療する方法を提供する。別の実施形態では、本開示の方法を用いて治療された被験者は、10年以上の期間にわたってDCLのステージ1~3を維持する。
別の実施形態では、本開示の方法を用いて治療された被験者は、DCLのステージが1段階改善される。別の実施形態では、本開示の方法を用いて治療された被験者は、DCLのステージが2段階改善される。別の実施形態では、本開示の方法を用いて治療された被験者は、DCLのステージが3段階改善される。別の実施形態では、本開示の方法を用いて治療された被験者は、DCLがステージ0にまで改善される。
疾病負荷スコア(DBS)/CAP(CAG-Age Product)スコア
顕性期HDの臨床的発症年齢は様々であり、ハンチンチン(HTT)遺伝子のCAGリピート伸長の長さの影響を受ける。同様に、CAGリピート長は、疾患の進行速度に影響を与える。疾病負荷スコア(DBS)及びCAPスコアは両方とも、下記の式を用いて、年齢及びCAGリピート長の関数として計算される。
DBSまたはCAP=年齢×(CAG-L)
Lは、CAG長を、HD病理に関連する分布のほぼ下端に固定する30~35の範囲の定数値であり、一般的に使用される値は35.5または33.66である。場合によっては、CAPスコアは、正規化される。
このスコアは、個人が、変異HTT遺伝子の毒性作用に曝露される期間の長さ及び重症度の指標となる。疾病負荷スコア(DBS)またはCAPスコアは、様々な年齢やCAGリピート長を有する被験者のコホートから得られた時系列データを伝えるために用いられる。
いくつかの研究では、治験参加者(被験者)のDBSスコアまたはCAPスコアが報告されている。ケンブリッジのコホート研究の報告では、発症前期の被験者(n=9)と前駆期の被験者(n=10)の小規模コホートのDBSスコアはそれぞれ、181.5±38.1と296.1±60.9であった(Mason et al., Predicting clinical diagnosis in Huntington's disease: An imaging polymarker. Ann Neurol. 2018 Mar;83(3):532-543)。TRACK-HD試験では、発症前期の被験者(n=60)と前駆期の被験者(n=58)のDBSスコアはそれぞれ、237.9±31.4と312.8±32.5であった(Tabrizi et al., Biological and clinical manifestations of Huntington's disease in the longitudinal TRACK-HD study: cross-sectional analysis of baseline data. Lancet Neurol. 2009 Sep;8(9):791-801)。顕性期HDへの移行時のDBSスコアまたはCAPスコアは通常、400を超える(Ross et al., Huntington disease: natural history, biomarkers and prospects for therapeutics. Nat Rev Neurol. 2014 Apr;10(4):204-16. doi: 10.1038/nrneurol.2014.24. Epub 2014 Mar 11)。
最近作成されたハンチントン病(HD)の統合病期分類システム(ISS)は、明確に区別できる臨床的ランドマークに基づいて特定の病期を定義し、発症前期HDの被験者、前駆期HDの被験者、及び、顕性期HDの被験者を区別する。
ハンチントン病統合病期分類システム(HD-ISS)
別の実施形態では、前駆期HDの被験者は、ISSのステージ1またはステージ2によって特徴付けられる。
HD-ISSは、HDのすべての病期に対応する、エビデンスに基づく病期分類システムである。ISSは、疾患ステージの臨界遷移を特定するために、ランドマーク評価及びカットオフ値を定義している。HD-ISSには、4つのステージがある。ISSのステージ0(発症前期)は、HDに関連する病理学的マーカー、徴候、または症状に検出可能な変化がない、すべてのHD遺伝子キャリアを含む。ISSのステージ1(前駆期)では、神経変性や特定の徴候の発現を示す病理学的変化、具体的には脳下部構造体である尾状核及び被殻の体積の変化が検出される。ISSステージ2(前駆期)は、機能的能力の低下を伴わない認知及び運動の両方の明確な臨床徴候または症状の存在によって定義される。ISSのステージ3(顕性期)は、機能的能力の低下を伴う。
表1は、疾病負荷スコア(DBS)またはCAPスコア、診断信頼レベル(DCL)、及び、HD-ISSを用いて、発症前期、前駆期、及び顕性期の差異を要約したものである。
Figure 2024514148000003
加えて、前駆期HD(ハンチントン病)の被験者の変化を評価するために、前駆期に特有の臨床尺度、すなわち、前駆期HDの機能評価尺度タスクフォース(Functional Rating Scale Taskforce for pre-Huntington Disease:FuRST-pHD)が特別に開発された。
[前駆期HDにおける疾患進行を評価するための特定の臨床ツール]
前駆期ハンチントン病の機能評価尺度タスクフォース(FuRST-pHD)
FuRST-pHDは、被験者から報告されたアウトカムに基づく尺度であり、顕性期HDの変化に対して感度が高い。FuRST-pHDは、作業能力、社会的相互作用、及び金銭的取引などの、前駆期HDに特有の変化に敏感に反応するように設計されている。7つの面接質問により、前駆期HDと顕性期早期HDとが区別される。7つの面接質問には(前駆期対顕性期で)、片足でのバランス(0.51対1.56)、歩行時のバランス(0.44対1.17)、微細運動能力(0.16対1.28)、複雑運動行動(0.18対0.9)、筆記(0.49対1.55)、不器用さ(0.55対1.29)、機能的影響(0.44対1.24)が含まれる(Vaccarino et al., Assessment of motor symptoms and functional impact in prodromal and early huntington disease. PLoS Curr. 2011 Jun 14;2:RRN1244)。
自立性スコア(IS)
UHDRS-ISは、UHDRS機能評価の一部である(Huntington's Study Group 1996)。これは、被験者の自立の程度を、10%(経管栄養、トータルベッドケア)から100%(特別な介護は不要)までのパーセンテージで示す評価尺度である。スコアの値は、0または5で終わる必要がある(例えば、10%、15%、20%など)。
一実施形態では、前駆期HDの被験者のISは、90%以上である。別の実施形態では、前駆期HDの被験者のISは、95%以上である。別の実施形態では、前駆期HDの被験者のISは、95%である。別の実施形態では、前駆期HDの被験者のISは、100%である。
いくつかの実施形態では、本開示は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGリピート数を有する前駆期ハンチントン病(HD)の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を前駆期HD患者に投与するステップを含み、それにより、前駆期HD患者のUHDRS-自立度尺度(UHDRS-IS)を維持する、UHDRS-ISを改善する、または、UHDRS-ISのベースラインからの悪化を遅らせる方法を提供する。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、自立性スコア(IS)において5%の改善を示す。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、6ヶ月間にわたってISを維持する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年の期間にわたってISを維持する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、10年以上の期間にわたってISを維持する。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、ISの悪化が、同一の期間にわたって未治療の被験者に見られる悪化よりも5%少ない。ISを維持することにより、顕性期HDと診断されるのを遅らせることができる。
[運動機能]
前駆期HDの被験者は、発症前期の被験者とは区別される微妙な運動行動及び認知の特徴を有しているが、顕性期HDの臨床診断に必要な明確な運動症状を欠いている。
運動機能は、UHDRSの合計運動スコア(TMS)で評価するのが一般的である。
合計運動スコア(TMS)
別の実施形態では、前駆期HDの被験者は、合計運動スコア(TMS)が5~10の運動機能の障害によって特徴付けられる。別の実施形態では、前駆期HDの被験者は、合計運動スコア(TMS)が10の運動機能の障害によって特徴付けられる。別の実施形態では、前駆期HDの被験者は、合計運動スコア(TMS)が9の運動機能の障害によって特徴付けられる。別の実施形態では、前駆期HDの被験者は、合計運動スコア(TMS)が8の運動機能の障害によって特徴付けられる。別の実施形態では、前駆期HDの被験者は、合計運動スコア(TMS)が7の運動機能の障害によって特徴付けられる。別の実施形態では、前駆期HDの被験者は、合計運動スコア(TMS)が6の運動機能の障害によって特徴付けられる。別の実施形態では、前駆期HDの被験者は、合計運動スコア(TMS)が5の運動機能の障害によって特徴付けられる。
別の実施形態では、前駆期HDの被験者は、無意識の指鳴らし、軽度の機能障害、水平方向の追跡眼球運動の減少によって特徴付けられる(Wild, E. J. and S. J. Tabrizi (2014). Huntington's Disease. Premanifest and Early Huntington's Disease, Oxford University Press)。
いくつかの実施形態では、本開示は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGリピート数を有する前駆期ハンチントン病(HD)の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を前駆期HD患者に投与するステップを含み、それにより、前駆期HD患者の運動機能を維持する、運動機能を改善する、または、運動機能の低下を遅らせる方法を提供する。
運動能力は、例えば、UHDRSの合計運動スコア(TMS)、舞踏病を除くUHDRSのTMS、ジストニアを除くUHDRSのTMS、または、舞踏病及びジストニアの両方を除く改変された運動スコア(mMS)などによって測定される。TMSでは、スコアが低いほど運動機能が良好であることを示す。したがって、TMSの低下は、運動機能の改善を示す。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、UHDRS-TMSにおいて、少なくとも1単位、少なくとも2単位、少なくとも3単位、少なくとも4単位、または少なくとも5単位の改善を示す。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、TMSにおいて5~10単位の改善を示す。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、6ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年の期間にわたってTMSを維持する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、10~15年間にわたってTMSを維持する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、15年以上の期間にわたってTMSを維持する。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、同一の期間にわたってプリドピジンを含む組成物を投与されなかった被験者と比較して、少なくとも1単位のTMSの改善を示す。プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、同一の期間にわたってプリドピジンを含む組成物を投与されなかった被験者と比較して、少なくとも5~10単位のTMSの改善を示す。プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、同一の期間にわたってプリドピジンを含む組成物を投与されなかった被験者と比較して、少なくとも10単位のTMSの改善を示す。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、6ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年の期間にわたって、GAITriteの歩幅の変動性を維持する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、10~15年間にわたって、GAITriteの歩幅の変動性を維持する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、15年以上の期間にわたって、GAITriteの歩幅の変動性を維持する。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、または少なくとも20%のGAITriteの歩幅の変動性の減少を示す。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者が示すGAITriteの歩幅の変動性の減少は、プリドピジンを含む組成物を投与されなかった被験者が同じ期間に示した悪化と比較して少なくとも1%少なかった。一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者が示すGAITriteの歩幅の変動性の減少は、プリドピジンを含む組成物を投与されなかった被験者が同じ期間に示した悪化と比較して少なくとも5~10%少なかった。一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者が示すGAITriteの歩幅の変動性の減少は、プリドピジンを含む組成物を投与されなかった被験者が同じ期間に示した悪化と比較して少なくとも10%少なかった。
いくつかの実施形態では、本開示は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGリピート数を有する前駆期ハンチントン病(HD)の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を前駆期HD患者に投与するステップを含み、それにより、前駆期HD患者のUHDRS-合計運動スコア(UHDRS-TMS)におけるドメイン歩行、タンデム歩行、及びレトロパルスピルテストの合計によって定義される歩行及びバランススコアを維持、改善、またはベースラインからの低下を遅らせる方法を提供する。
また、前駆期HDの被験者は、以下に詳述するような定量的運動評価の変化を示す。
定量的運動評価(Q-Motor)
定量的運動評価(Q-Motor)は、特定の運動機能の客観的な評価であり、事前に較正された、温度に依存しない力変換器及び3次元位置センサを使用して、標準化された偏りのない測定値を提供する。Q-MOTORは、顕性期HD、前駆期HD、及び不顕性期HDの各コホートにおける運動徴候の検出に使用されている。Q-MOTORは、脳体積、UHDRSの全機能的能力(TFC)及びTMSの変化と相関する感度の高い尺度である。
別の実施形態では、前駆期HDの被験者は、健常対照と比較して、Q-MOTOR指タップ速度頻度の減少、Q-MOTOR指タップの開始間隔の減少、Q-MOTOR指タップのタップ間隔の減少、Q-MOTORピーク間隔の減少、Q-MOTOR回内/回外ハンドタップ頻度の減少、Q-MOTORハンドタップの開始間隔の減少、握力の低下、舌力の低下、またはそれらの任意の組み合わせが認められた。
前駆期の被験者と発症前期の被験者とを区別する、及び、前駆期の被験者と顕性期の被験者とを区別する定量化可能な運動評価は、指のタップ速度である。この評価法では、治験参加者(被験者)は、2つの聴覚的合図間に可能な限り速い速度で、タッピング装置上で人差し指でタップすることが求められる。タップ持続時間、開始間隔、タップ間隔、ピーク間隔が測定される。TRACK-HD試験では、前駆期の被験者は、これらすべての尺度において、発症前期の被験者に対する有意差を示した(すべて、p<0.05)。同様に、前駆期の被験者は、顕性期HDの被験者に対する有意差を示した(すべて、p<0.0001)(Bechtel et al., Tapping linked to function and structure in premanifest and symptomatic Huntington disease. Neurology. 2010 Dec 14;75(24):2150-60)。
別の実施形態では、前駆症状のHDの被験者は、健常対照と比較して、舌力が有意に低下することによって特徴付けられる。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、Q-MOTOR指タップ速度頻度の減少、Q-MOTOR指タップの開始間隔の減少、Q-MOTOR指タップのタップ間隔の減少、Q-MOTORピーク間隔の減少、Q-MOTOR回内/回外ハンドタップ頻度の減少、Q-MOTORハンドタップの開始間隔の減少、握力の低下、舌力の低下、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年の期間にわたって悪化を示さなかった。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、Q-MOTOR指タップ速度頻度の減少、Q-MOTOR指タップの開始間隔の減少、Q-MOTOR指タップのタップ間隔の減少、Q-MOTORピーク間隔の減少、Q-MOTOR回内/回外ハンドタップ頻度の減少、Q-MOTORハンドタップの開始間隔の減少、握力の低下、舌力の低下、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、少なくとも1%の改善を示した。他の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、または少なくとも10%の改善を示した。
一実施形態では、前駆期の被験者における本明細書に記載されている特徴を治療することにより、顕性期HDの症状の発症を、少なくとも6ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年遅らせることができる。別の実施形態では、前駆期の被験者における本明細書に記載されている特徴を治療することにより、顕性期HDの症状の発症を、10~15年遅らせることができる。別の実施形態では、前駆期の被験者における本明細書に記載されている特徴を治療することにより、顕性期HDの症状の発症を、15年以上遅らせることができる。
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、Q-MOTOR指タップ速度頻度の減少、Q-MOTOR指タップの開始間隔の減少、Q-MOTOR指タップのタップ間隔の減少、Q-MOTORピーク間隔の減少、Q-MOTOR回内/回外ハンドタップ頻度の減少、Q-MOTORハンドタップの開始間隔の減少、握力の低下、舌力の低下、またはそれらの任意の組み合わせによって測定される運動機能の障害を改善する。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、Q-Motorの尺度において、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、または少なくとも15%の改善を示す。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、Q-Motorの尺度において、15~25%の改善を示す。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、Q-MOTOR指タップ速度頻度の減少、Q-MOTOR指タップの開始間隔の減少、Q-MOTOR指タップのタップ間隔の減少、Q-MOTORピーク間隔の減少、Q-MOTOR回内/回外ハンドタップ頻度の減少、Q-MOTORハンドタップの開始間隔の減少、握力の低下、舌力の低下、またはそれらの任意の組み合わせによって測定されるQ-MOTORの尺度を、6ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年の期間にわたって維持する/低下させない。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、Q-MOTOR指タップ速度頻度の減少、Q-MOTOR指タップの開始間隔の減少、Q-MOTOR指タップのタップ間隔の減少、Q-MOTORピーク間隔の減少、Q-MOTOR回内/回外ハンドタップ頻度の減少、Q-MOTORハンドタップの開始間隔の減少、握力の低下、舌力の低下、またはそれらの任意の組み合わせによって測定されるQ-MOTORの尺度を、10~15年間にわたって維持する/低下させない。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、Q-MOTOR指タップ速度頻度の減少、Q-MOTOR指タップの開始間隔の減少、Q-MOTOR指タップのタップ間隔の減少、Q-MOTORピーク間隔の減少、Q-MOTOR回内/回外ハンドタップ頻度の減少、Q-MOTORハンドタップの開始間隔の減少、握力の低下、舌力の低下、またはそれらの任意の組み合わせによって測定されるQ-MOTORの尺度を、15年以上の期間にわたって維持する/低下させない。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、Q-MOTOR指タップ速度頻度の減少、Q-MOTOR指タップの開始間隔の減少、Q-MOTOR指タップのタップ間隔の減少、Q-MOTORピーク間隔の減少、Q-MOTOR回内/回外ハンドタップ頻度の減少、Q-MOTORハンドタップの開始間隔の減少、握力の低下、舌力の低下、またはそれらの任意の組み合わせによって測定されるQ-MOTORの尺度の悪化は、プリドピジンを含む組成物を投与されなかった被験者が同じ期間に示した悪化と比較して、少なくとも5%少なかった。一実施形態では、プリドピジンを含む組成で治療された前駆症状の被験者は、Q-MOTORの尺度の悪化は、プリドピジンを含む組成物を投与されなかった被験者が同じ期間に示した悪化と比較して、少なくとも5~20%少なかった。一実施形態では、プリドピジンを含む組成で治療された前駆症状の被験者は、Q-MOTORの尺度の悪化は、プリドピジンを含む組成物を投与されなかった被験者が同じ期間に示した悪化と比較して、少なくとも20~50%少なかった。一実施形態では、プリドピジンを含む組成で治療された前駆症状の被験者は、Q-MOTORの尺度の悪化は、プリドピジンを含む組成物を投与されなかった被験者が同じ期間に示した悪化と比較して、50%以上少なかった。
眼球運動機能
発症前期HDの被験者及び顕性期HDの被験者と比較して、前駆期HDの被験者では、抗サッケードエラー率に差が認められる。抗サッケード試験では、被験者は、静止物体に視線を集中させ、片側に刺激を与える。そして、刺激が与えられた側と反対側にサッケード(両目を同時に素早く動かすこと)を行うように指示される。刺激に対する反射的なサッケードを抑制できなかった場合、エラーとなる。抗サッケード試験では、意図的な動作と、刺激を見るための反射反応を抑制する能力との両方が必要とされる。抗サッケードエラーは、脳の下部構造体である被殻、補足運動野、前頭葉眼球運動野の機能障害を示し、エラー率が高いほど悪化を示す。
TRACK-HD試験では、発症前期HDの被験者と健常対照との間に、抗サッケードエラー率の差は認められなかった(-0.5%、p=0.88)。しかし、前駆期HDの被験者は、発症前期HDの被験者と比較して、エラー率が有意に増加(悪化)した(前駆期HDの被験者対発症前期HDの被験者で+8.17%、p=0.03)。また、抗サッケードエラー率は、前駆期HDの被験者と顕性期早期HDの被験者とを区別することができ、顕性期HDの被験者は前駆期HDの被験者と比較してエラー率が有意に増加(悪化)した(顕性期HD対前駆期HDの被験者で+14.16%、p=0.0002)。したがって、前駆期HDの被験者は、発症前期HDの被験者及び顕性期HDの被験者の両方に対して、抗サッケードエラー率に差が認められた(Tabrizi et al., Biological and clinical manifestations of Huntington's disease in the longitudinal TRACK-HD study: cross-sectional analysis of baseline data. Lancet Neurol. 2009 Sep;8(9):791-801)。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、少なくとも6ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年の期間にわたって、抗サッケードエラー率の悪化を示さない。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、5~15年間にわたって、抗サッケードエラー率の悪化を示さない。いくつかの実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、10年以上の期間にわたって、抗サッケードエラー率の悪化を示さない。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、または少なくとも5%の抗サッケードエラー率の減少(改善)を示す。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、5~10%の抗サッケードエラー率の減少(改善)を示す。いくつかの実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、10%以上の抗サッケードエラー率の減少(改善)を示す。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、プリドピジンを含む組成物を投与されなかった前駆期の被験者と比較して、同じ期間における抗サッケードエラー率の悪化が1%、2%、3%、4%、または5%少なかった。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者はプリドピジンを含む組成物を投与されなかった前駆期の被験者と比較して、同じ期間における抗サッケードエラー率の悪化が5~10%少なかった。いくつかの実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、プリドピジンを含む組成物を投与されなかった前駆期の被験者と比較して、同じ期間における抗サッケードエラー率の悪化が10%以上少なかった。
眼球運動
前駆期HDの被験者(35人)及び発症前期(35人)HDの被験者の各コホートで眼球の異常を調べ、非キャリア対照(27人)と比較した。追跡眼球運動はUHDRS-TMS尺度の追跡眼球運動の項目を用いて測定し、0(正常)~4(実施できない、最も重度)の尺度で評価した。発症前期の被験者と非キャリア対照とでは、水平方向の追跡眼球運動が影響を受ける頻度は同程度であった(それぞれ、5.7%対3.7%)。一方、前駆期の被験者では、非キャリア対照と比較して、追跡眼球運動の悪化を示した割合が有意に高かった(17.1%)(p=0.004)。垂直方向の追跡眼球運動でも、影響を受ける頻度は同様であり、発症前期群では22.9%、非キャリアグループでは22.2%であった。前駆期HDでは、非ャリア群と比較して、影響を受ける頻度が有意に高く、42.9%、p=0.075であった(Winder JY, Roos RAC. Premanifest Huntington's disease: Examination of oculomotor abnormalities in clinical practice. PLoS One. 2018 Mar 1;13(3):e0193866)。
[認知機能]
前駆期HDの被験者は、認知機能の尺度において、発症前期の被験者及び顕性期HDの被験者とは異なる。
前駆期の被験者の認知領域は、例えば、記号数字モダリティテスト、ペースタッピングテスト、ケンブリッジのワンタッチストッキング(略称)、感情認識、トレイルメイキングテストB、ホプキンス言語学習テストを含む認知評価バッテリー(CAB)によって測定することができる。
一実施形態では、前駆期HDの被験者は、ペースタッピング、ケンブリッジのワンタッチストッキング、感情認識、トレイルメイキングテストA及びB、ホプキンス言語学習テスト、マップサーチ、嗅覚識別、スポットザチェンジ、行の向きの判断、スピードタッピング、及びモントリオール認知評価(MoCA)を含むHD認知評価バッテリー(CAB)のスコアによって評価される認知変化によって特徴付けられ、そのスコアは健常対照と比較して悪化している。
前駆期HDの被験者の認知領域は、ホプキンス言語学習テストの改訂版(HVLT-R)によって測定することができる。また、前駆期HDの被験者の認知領域は、ペースタッピングテスト、モントリオール認知評価(MoCA)、または記号数字モダリティテスト(SDMT)によって測定することもできる。さらに、前駆期HDの被験者の認知領域は、トレイルメイキングテストB(TMT-B)、サークルトレーシング(直接)、サークルトレーシング(間接)、またはそれらの任意の組み合わせによって測定することができる。
さらに、本開示は、前駆期HD患者の認知機能の低下を改善、予防、または遅延させる方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本開示は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGリピート数を有する前駆期ハンチントン病(HD)の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を前駆期HD患者に投与するステップを含み、それにより、前駆期HD患者の認知機能の低下を改善、予防、または遅延させる方法を提供する。
記号数字モダリティテスト(SDMT)
認知機能低下を評価するための最も感度の高い尺度の1つは、記号数字モダリティテスト(SDMT)である。
治験参加者(被験者)は、数字1~9に対応する記号の列を提示され、その記号のみを含む列に正しい数字を書くか、または、その記号のみを含む列を口頭で報告する課題を課される。SDMTは、視空間的注意、処理速度、作業記憶(ワーキングメモリ)を測定する。
正式なHD診断の前後にHD遺伝子キャリアを対象とした複数の病歴研究では、SDMTのベースライン値及び経時的な低下の両方によって、発症前期、前駆期、及び顕性期のHDの被験者が区別される。
HD-若年成人研究(YAS)における発症前期HDの被験者は、非HDキャリアと同様のSDMT値を示した(59.7対60.7、p=0.62)。
前駆期HDの被験者(n=16)と顕在期HDの被験者(n=22)とのSDMTの差を、認知的柔軟性を調査する研究で評価した。顕在期HDの被験者のスコアは、前駆期HDの被験者のスコアと比較して有意に悪かった(20.7±10.4対50.8±8.2、p<0.0001、値が低いほど重症度が高いことを示す)(Heim et al., Time will tell: Decision making in premanifest and manifest Huntington's disease. Brain Behav. 2020 Nov;10(11):e01843)。
発症前期の被験者は、いかなる神経精神医学的尺度または神経認知学的尺度においても、年齢を一致させた非キャリア対照との差を示さなかった。
SDMTの経時的な減少は、認知機能低下の感度の高い尺度である。前駆期の被験者(n=46)は、健常対照と比較して、ベースラインからの有意な年間変化(-4.11)を示した(CI95%、-6.73~-1.49、p=0.003)。発症前期の被験者(n=58)は、健常対照(p=0.346)との差を示さなかった(Tabrizi et al., Predictors of phenotypic progression and disease onset in premanifest and early-stage Huntington's disease in the TRACK-HD study: analysis of 36-month observational data. Lancet Neurol. 2013 Jul;12(7):637-49; Tabrizi et al., Potential endpoints for clinical trials in premanifest and early Huntington's disease in the TRACK-HD study: analysis of 24 month observational data. Lancet Neurol. 2012 Jan;11(1):42-53)。
一実施形態では、前駆期HDの被験者は、記号数字モダリティテスト(SDMT)のスコアが40以上であること;ストループワード読解(SWR)のスコアが80以上であること;サークルトレース直接テストでの円環長さが6.6(log cm)以上であること;サークルトレース間接テストでの円環長さが5.4(log cm)以上であること;スポットザチェンジの5秒差の数値修正スコア(Δ)が健常対照と比較して-0.4~-1.5減少していること;またはそれらの任意の組み合わせからなる認知機能の障害によって特徴付けられる。
本開示は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGリピート数を有する前駆期ハンチントン病(HD)の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を前駆期HD患者に投与するステップを含み、それにより、前駆期HD患者のSDMTテストのスコアを維持する、スコアを改善する、またはスコアの低下を遅らせる方法をさらに提供する。
一実施形態では、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を投与された前駆期の被験者は、6ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年の期間にわたってSDMTスコアを維持する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、10年以上の期間にわたってSDMTスコアを維持する。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、SDMTスコアの1~20ポイントの改善を示す。一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、SDMTスコアが最大5ポイント改善される。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、SDMTスコアが5~10ポイント改善される。いくつかの実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、SDMTスコアが10~15ポイント改善される。他の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、SDMTスコアが15~20ポイント改善される。いくつかの実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、SDMTスコアが20~30ポイント改善される。いくつかの実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、SDMTスコアが30~40ポイント改善される。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、プリドピジンを含む組成物を投与されなかった被験者と比較して、SDMTスコアの低下が1年につき少なくとも1ポイント遅くなる。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、プリドピジンを含む組成物を投与されなかった被験者と比較して、SDMTスコアの低下が1年につき少なくとも2ポイント遅くなる。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、プリドピジンを含む組成物を投与されなかった被験者と比較して、SDMTスコアの低下が1年につき少なくとも3ポイント遅くなる。一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、プリドピジンを含む組成物を投与されなかった被験者と比較して、SDMTスコアの低下が1年につき1~10ポイント遅くなる。
ストループワードテスト
本開示は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGリピート数を有する前駆期ハンチントン病(HD)の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を前駆期HD患者に投与するステップを含み、それにより、ストループワードテスト(SWR)のスコアを維持する、スコアを改善する、またはベースラインからの低下を遅らせる方法をさらに提供する。一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、6ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年の期間にわたってSWRスコアを維持する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、10年以上の期間にわたってSWRスコアを維持する。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、SWRスコアが1~20ポイント改善される。一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、SWRスコアが最大5ポイント改善される。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、SWRスコアが5~10ポイント改善される。いくつかの実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、SWRスコアが10~15ポイント改善される。他の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、SWRスコアが15~20ポイント改善される。いくつかの実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、SWRスコアが最大20ポイント改善される。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、プリドピジンを含む組成物を投与されなかった被験者と比較して、SWRスコアの低下が少なくとも1年につき1ポイント遅くなる。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、プリドピジンを含む組成物を投与されなかった被験者と比較して、SWRスコアの低下が少なくとも1年につき2ポイント遅くなる。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、プリドピジンを含む組成物を投与されなかった被験者と比較して、SWRスコアの低下が少なくとも1年につき3ポイント遅くなる。一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、プリドピジンを含む組成物を投与されなかった被験者と比較して、SWRスコアの低下が少なくとも1年につき1~10ポイント遅くなる。
言語流暢性及び非言語流暢性
スウェーデンコホートにおいて、前駆期HDの被験者(n=16)と発症前期HDの被験者(n=16)の言語流暢性及び非言語流暢性を調査し、非キャリア対照(n=38)と比較した。音素流暢性テスト(phonemic fluency test)では、治験参加者(被験者)に、3分間で、Sで始まりAで終わる単語をできるだけ多く作ってもらい、その単語数とエラー数の合計をカウントした。意味流暢性テスト(semantic fluency test)では、治験参加者に、1分間で、果物と野菜の2つのカテゴリの単語をできるだけ多くの話してもらい、その単語数をカウントした。非言語流暢性は、デザイン流暢性テストを用いて評価した。治験参加者に、5分以内に、実物を表現できないユニークな絵をできるだけ多く描いてもらい、その絵の数をカウントした。発症前期HDキャリアでは、音素流暢性(27.6±8.9対32.2±9.6、p=0.322)及び意味流暢性(24.2±5.5対24.9±7.0、p=1)において、非キャリア対照との差を示さなかった。一方、前駆期の被験者では、音素流暢性(20.1±10.2vs,32.2±9.6,p<0.001)及び意味流暢性(19.7±4.9対24.9±7.0、p<0.022)において、非キャリア対照と比較して有意な悪化を示した(Robins Wahlin et al., Non-Verbal and Verbal Fluency in Prodromal Huntington's Disease. Dement Geriatr Cogn Dis Extra. 2015 Dec 18;5(3):517-29)。
視覚
顕性期HDの被験者では視覚障害が存在し、これにより、前駆期HDの被験者と顕性期HDの被験者とを区別することができる。視覚は、前駆期HDの被験者(n=22)、顕性期HDの被験者(n=22)、非キャリア対照(n=18)において、動物シルエットテスト及び物体シルエットテストを用いて評価した。正解数をカウントした;スコアが低いほど悪化していることを示す。前駆期HDの被験者では、どちらのテストにおいても、非キャリア対照との差は認められなかった。一方、前駆期HDの被験者では、動物シルエットテスト(12.2±1.6vs.9.2±1.9、p<0.001)、物体シルエットテスト(10.3±3.5vs.7.2±3.1、p=0.001)のいずれにおいても、顕性期HDの被験者に対する有意な差が認められた(Coppen et al., Visual Object Perception in Premanifest and Early Manifest Huntington's Disease. Arch Clin Neuropsychol. 2019 Nov 27;34(8):1320-1328)。
いくつかの実施形態では、本開示は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGリピート数を有する前駆期ハンチントン病(HD)の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を前駆期HD患者に投与するステップを含み、それにより、前駆期HD患者の複合統合ハンチントン病評価尺度(cUHDRS)、UHDRS臨床尺度のTFC、TMS、SDMT及びSWRの尺度を改善する方法を提供する。
[行動異常]
いくつかの実施形態では、本開示は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGリピート数を有する前駆期ハンチントン病(HD)の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を前駆期HD患者に投与するステップを含み、それにより、前駆期HD患者の行動異常を改善する方法を提供する。一実施形態では、行動異常には、抑うつ気分、自殺念慮、不安、易刺激性、怒りまたは攻撃的行動、無気力、固執的な思考または行動、強迫的行動、偏執的思考または妄想、幻覚、見当識障害行動、及び、それらの任意の組み合わせが含まれる。
一実施形態では、問題行動評価スコア(PBA-S)は、抑うつ気分、自殺念慮、不安、易刺激性、怒りまたは攻撃的行動、無気力、固執的な思考または行動、強迫的行動、偏執的思考または妄想、幻覚、及び、見当識障害行動を評価する。PBA-Sでは、スコアが高いほど悪化していることを示す。
一実施形態では、前駆期HDの被験者は、易刺激性及び無気力を含む行動変化を有し、健常対照と比較した問題行動評価(PBA)の無気力スコアの差が0.5~1の間、または、健常対照と比較したPBAの易刺激性スコアの差が1.3~1.8の間である。
前駆期の被験者の行動及び/または精神状態は、易刺激性についての問題行動評価によっても測定することができる。また、前駆期の被験者の行動及び/または精神状態は、自発性または無気力の欠如についての問題行動評価によっても測定することができる。また、前駆期の被験者の行動及び/または精神状態は、問題行動評価の短形式アパシー(apathy)小項目によっても測定することができる。また、前駆期の被験者の行動及び/または精神状態は、アパシー評価尺度(AES)によっても測定することができる。また、前駆期の被験者の行動及び/または精神状態は、強迫性についての問題行動評価によっても測定することができる。また、前駆期の被験者の行動及び/または精神状態は、見当識障害行動についての問題行動評価によっても測定することができる。いくつかの実施形態では、前駆期の被験者の行動及び/または精神状態は、問題行動評価の短形式のアパシー(apathy)小項目または問題行動評価の(短形式PBA-S)によっても測定することができる。PBA-Sでは、抑うつ気分、自殺念慮、不安、易刺激性、怒りまたは攻撃的行動、無気力、固執的な思考やまたは行動、強迫的行動、偏執的思考または妄想、幻覚、及び、見当識障害行動などの項目を、重症度及び頻度の両方で評価する。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、6ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年の期間にわたって、PBA-Sの合計スコアを維持する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、10年以上の期間にわたって、PBAの易刺激性スコアを維持する。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、PBA-Sスコアにおいて、0.5~10単位の改善を示す。一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、PBA-Sスコアが最大1単位改善される。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、PBA-Sスコアが1~5単位改善される。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、PBA-Sスコアが5~10単位改善される。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、プリドピジンを含む組成物が投与されなかった被験者と比較して、PBA-Sスコアの低下が1年につき少なくとも0.5単位遅くなる。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物を投与された前駆期の被験者は、プリドピジンを含む組成物が投与されなかった被験者と比較して、PBA-Sスコアの低下が1年につき少なくとも1単位遅くなる。
PREDICT-HD経時的観察試験に参加した発症前期HDの被験者(n=207)及び前駆期HDの被験者(n=284)について、うつ病を比較した。うつ病は、一般的に用いられる自己評価尺度である、ベックうつ病質問票(Beck Depression Inventory II:BDI-II)及びベック絶望感尺度(Beck Hopelessness Scale:BHS)を用いて測定した。両尺度において両群間に有意差が認められ(p<0.05)、前駆期HDの被験者ではより重度のうつ病及び無力感が認められた(Epping et al., Characterization of depression in prodromal Huntington disease in the neurobiological predictors of HD (PREDICT-HD) study. J Psychiatr Res. 2013 Oct;47(10):1423-31)。
本開示はさらに、前駆期HDの被験者の行動及び/または精神状態の低下を予防または遅延させる方法を提供する。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期HDの被験者は、6ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年の期間にわたって、BDIまたはBHSの合計スコアを維持する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期HDの被験者は、10以上の期間にわたって、BDIまたはBHSスコアを維持する。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期HDの被験者は、BDIまたはBHSスコアにおいて、0.5~10単位の改善を示す。一実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期HDの被験者は、BDIまたはBHSスコアが最大1単位改善される。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期HDの被験者は、BDIまたはBHSスコアが1~5単位改善される。いくつかの実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期HDの被験者は、BDIまたはBHSスコアが5~10単位改善される。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期HDの被験者は、プリドピジンを含む組成物が投与されなかった被験者と比較して、BDIまたはBHSスコアの低下が1年につき少なくとも0.5単位遅くなる。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期HDの被験者は、プリドピジンを含む組成物が投与されなかった被験者と比較して、BDIまたはBHSスコアの低下が1年につき少なくとも1単位遅くなる。
[画像バイオマーカー及び体液バイオマーカーによって、前駆期HDの被験者を、発症前期HD遺伝子キャリア及び顕性期HDの被験者から区別することができる]
画像バイオマーカー
前駆期HDの被験者には、前駆期HDの被験者を顕性期HDの被験者から区別するユニークな画像バイオマーカー、すなわち、脳下部構造体である尾状核及び被殻における体積変化が認められる。
脳体積
一実施形態では、前駆期HDの被験者には、脳の総体積の減少、尾状核の体積の減少、被殻の体積の減少、白質の体積の減少、灰白質の体積の減少、心室容量の増加、またはそれらの任意の組み合わせから選択される神経画像異常が認められる。別の実施形態では、前駆期HDの被験者には、脳の総体積の減少が認められる。別の実施形態では、前駆期HDの被験者には、尾状核の体積の減少が認められる。別の実施形態では、前駆期HDの被験者には、被殻の体積の減少が認められる。別の実施形態では、前駆期HDの被験者には、白質の体積の減少が認められる。別の実施形態では、前駆期HDの被験者には、灰白質の体積の減少が認められる。
いくつかの実施形態では、本開示は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGリピート数を有する前駆期ハンチントン病(HD)の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を前駆期HD患者に投与するステップを含み、それにより、前駆期HD患者の脳の総体積や尾状核、被殻、白質、または灰白質の体積を維持する、脳の総体積や尾状核、被殻、白質、灰白質の体積の減少を遅らせる、心室容量を維持する、または、心室容量の増加を遅らせる方法を提供する。一実施形態では、脳の総体積の減少は、約1~4%である。別の実施形態では、脳の総体積の減少は、2%である。一実施形態では、尾状核の体積の減少は、約10~25%である。一実施形態では、被殻の体積を頭蓋内容積で割って1000倍すると、被殻の体積は4.3未満になる。一実施形態では、被殻の体積を頭蓋内容積で割って1000倍すると、被殻の体積は6未満にある。一実施形態では、被殻の体積の減少は、約10~25%である。一実施形態では、白質の体積の減少は、健常対照と比較して15~25mLの間である。一実施形態では、灰白質の体積の減少は、健常対照と比較して15~25mLの間でoである。一実施形態では、心室容量の増加は、健常対照と比較して最大25mLである。
機能的結合性
また、機能的結合性によって、前駆期HDの被験者と症候期HDの被験者とを区別することができる。
デフォルトモードネットワーク(DMN)は、脳が認知タスクに関与していないときに活性化され、認知タスクに関与したときに非活性化される一連の脳領域である。DMNは、認知処理に極めて重要であり、安静状態fMRI(rs-fMRI)によって評価することができる。
DMN機能の変化は、いくつかの神経変性疾患、すなわち、ALS、AD、前頭側頭型認知症(FTD)などにおける、認知機能の低下と関連している。HDでは、タスク関連の脳活性化パターンの異常が、前駆期HDの被験者で早期に観察されるが、発症前期HDの被験者では観察されない。
一実施形態では、前駆期HDの被験者は、デフォルトモードネットワーク(DMN)の結合性が低下する。
DMNにマッピングされる脳領域、楔前部、及び下頭頂葉の機能的結合を、発症から遠い(発症前期)被験者群と発症に近い(前駆期)不顕性期被験者群とで比較した。各群を、疾病負荷スコア(DBS)によって層別化した。DBSの中央値は両群間で有意に異なっていた(発症前期対前駆期:224±44対364±43、p=0.001)。前駆期HDの被験者は、後帯状皮質/楔前部(PCC、p=0.006)及び両側の下頭頂葉(左、p=0.005;右、p=0.006)における左尾状核の機能的結合性の低下が認められた。発症前期の被験者と非HDキャリアとの間に有意差は認められなかった(Pini et al., Striatal connectivity in pre-manifest Huntington's disease is differentially affected by disease burden. Eur J Neurol. 2020 Nov;27(11):2147-2157)。
グルコース代謝
グルコース代謝によって、前駆期HDの被験者と顕性期HDの被験者とを区別することができる。
いくつかの実施形態では、本開示は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGリピート数を有する前駆期ハンチントン病(HD)の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を前駆期HD患者に投与するステップを含み、それにより、前駆期HD患者の脳へのグルコース代謝の取り込みを促進する方法を提供する。一実施形態では、脳領域は、尾状核、被殻、またはそれらの組み合わせを含む。別の実施形態では、脳領域は、尾状核を含む。別の実施形態では、脳領域は、被殻を含む。別の実施形態では、脳領域は、尾状核及び被殻を含む。
脳のグルコース代謝は、フルオロデオキシグルコース(FDG)の取り込みによって評価され、陽電子放射断層撮影([18F]FDG-PET)によって測定される。脳のグルコース代謝は、疾患の進行を評価する感度の高い尺度として一般的に使用されている。相対的FDG分布は、神経変性疾患の研究で一般的に使用される、局所シナプス活性の間接的マーカーである。前駆期HDの被験者では、前線条体、尾状核、及び被殻に代謝低下が認められた。発症前期HDの被験者では、FDG-PETによる糖代謝の変化は認められなかった。
前駆期HDの被験者12人を対象とした研究では、グルコース代謝を44ヵ月にわたって経時的に調べた。ベースラインでは、局所代謝は、対照と比較して、尾状核及び被殻(前駆期対対照は0.74±0.05対0.93±0.02、p<0.005)、並びに、帯状皮質(前駆期対対照は0.88±0.01対0.99±0.02、p<0.0001)で低下していた。局所代謝は、線条体(p<0.005)及び視床(p<0.01)で徐々に低下した(Feigin et al., Thalamic metabolism and symptom onset in preclinical Huntington's disease. Brain. 2007 Nov;130(Pt 11):2858-67. doi: 10.1093/brain/awm217. Epub 2007 Sep 24)。
非キャリア被験者(n=11)、前駆期HDの被験者(n=13)、初期段階の顕性期HDの被験者(n=10)で、FDG-PETを用いて、尾状核における局所的な脳グルコース利用を評価した。前駆期の被験者のグルコース利用率は、非キャリア対照と比較してわずかに低く(7.2±1.08mg/100gm/分対8.2±1.0mg/100gm/分)、HDの被験者では有意に低かった(Hayden et al., Positron emission tomography in the early diagnosis of Huntington's disease. Neurology. 1986 Jul;36(7):888-94)。
発症前期の被験者(n=8)、前駆期の被験者(n=7)、顕性期HDの被験者(n=18)、及び正常対照18名において、FDG-PETを用いて代謝変化を評価した。発症前期の被験者の大部分では(7/8、88%)では、線条体のFDG分布は正常であった。しかし、前駆期の被験者のうち、FDG分布が正常であったのは4/7(57%)のみであり、3/7(43%)が軽度の代謝低下を示した。顕性期HDの被験者は、健常対照(p<0.001)及び前駆期の被験者(p<0.001)の両方と比較して、有意な代謝低下を示した(Lopez-Mora et al., Striatal hypometabolism in premanifest and manifest Huntington's disease patients. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2016 Nov;43(12):2183-2189. doi: 10.1007/s00259-016-3445-y. Epub 2016 Jun 28)。
一実施形態では、前駆期HDの被験者は、健常対照と比較して、尾状核へのグルコース取り込みの減少、淡蒼球へのブドウ糖取り込みの減少、被殻へのグルコース取り込みの低下、線条体へのグルコース取り込みの減少によって特徴付けられる。
[体液バイオマーカー]
ニューロフィラメント光のレベル
体液(すなわち、脳脊髄液(CSF)、血液、血清、及び血漿)中のニューロフィラメント軽タンパク質(NfL)濃度は、前駆期HDにおける神経変性のバイオマーカーとして使用される。したがって、前駆期HDの被験者の血漿、血清、血液、またはCSF中のNfL濃度は、前駆期HDの被験者における神経障害を評価または予測する手段を提供する。血漿及びCSF中のNfL濃度を、TRACK-HDコホートで評価した。非キャリア対照(n=97)では、血漿中のNfL濃度は、平均18.11±25.61pg/mLであった。発症前期HDキャリア(n=58)では、血漿中のNfL濃度は、平均28.36±22.24pg/mLであった(p<0.0001対対照)。前駆期HDの被験者(n=46)では、NfL濃度は、平均39.39±14.19pg/mLであった(p<0.0001対発症前期)。疾患の初期段階の顕性期HDの被験者(n=66)では、NfL濃度は、平均52.18±20.52pg/mLであった(p<0.0001対前駆期)(Byrne et al., Neurofilament light protein in blood as a potential biomarker of neurodegeneration in Huntington's disease: a retrospective cohort analysis. Lancet Neurol. 2017 Aug;16(8):601-609)。
いくつかの実施形態では、本開示は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGリピート数を有する前駆期ハンチントン病(HD)の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を前駆期HD患者に投与するステップを含み、それにより、前駆期HD患者のNfl濃度を維持する、Nfl濃度の増加を予防する、または、Nfl濃度の増加を遅らせる方法を提供する。別の実施形態では、本開示の方法は、Nfl濃度を維持するまたは低下させることを含む。別の実施形態では、本開示の方法は、Nfl濃度の増加を予防することを含む。別の実施形態では、本開示の方法は、Nfl濃度の増加を遅らせることを含む。別の実施形態では、本開示の方法は、NfL濃度を低下させることを含む。
一実施形態では、前駆期HDの被験者は、血液中のニューロフィラメント(NfL)濃度が25~50pg/mLであること、及び、CSF中のNfL濃度が最大で2000pg/mLであることによって特徴付けられる。
別の実施形態では、前駆期HDの被験者は、血漿、血清、または脳脊髄液(CSF)中のニューロフィラメント光(NfL)のレベルが増加する。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、6ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年の期間にわたってNfL濃度を維持する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、10~15年間にわたってNfL濃度を維持する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、15年以上の期間にわたってNfL濃度を維持する。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、血漿中のNfL濃度が、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、または少なくとも10%低下する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、血漿中のNfL濃度が10~20%低下する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、血漿中のNfL濃度が20~30%低下する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、血漿中のNfL濃度が30~40%低下する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、血漿中のNfL濃度が40~50%低下する。
神経炎症
一実施形態では、前駆期HDの被験者は、神経炎症の増加、ミクログリアの活性化、星状細胞の活性化、IL-6濃度の上昇、またはそれらの任意の組み合わせによって特徴付けられる。
別の実施形態では、前駆期HDの被験者は、神経炎症の増加、ミクログリアの活性化、星状細胞の活性化、またはそれらの任意の組み合わせを有する。別の実施形態では、前駆期HDの被験者は、神経炎症の増加を有する。別の実施形態では、前駆期HDの被験者は、ミクログリアの活性化を有する。別の実施形態では、前駆期HDの被験者は、星状細胞の活性化を有する。別の実施形態では、前駆期HDの被験者は、神経炎症の増加と、ミクログリアの活性化及び/または星状細胞の活性化とを有する。
炎症性バイオマーカーであるインターロイキン-6(IL-6)のCSF中濃度によって、前駆期HDの被験者と発症前期HD遺伝子キャリアとを区別することができる。
免疫系はHDの病因に関与しており、HDでは、CSF中の炎症性サイトカインIL-6濃度が上昇する。この上昇は、HDの病因に寄与する初期発生であることが示唆されている。
HD-YAS研究では、CSF中のIL-6濃度を、発症前期HD遺伝子キャリア群と非キャリア対照群とで比較したところ、両群間に差は認められなかった(遺伝子キャリア群対対照群は0.98対1.01log pg/mL、p=0.68)。
CSF中のIL-6濃度を、非キャリア対照群(n=14)と前駆期HD群(n=3)とで比較したところ、前駆期HD群では非キャリア対照群に対して有意に上昇していた(前駆期HD対非キャリア対照群は0.9対0.7log pg/mLp=0.041)(Scahill et al., Biological and clinical characteristics of gene carriers far from predicted onset in the Huntington's disease Young Adult Study (HD-YAS): a cross-sectional analysis. Lancet Neurol. 2020 Jun;19(6):502-512)。
いくつかの実施形態では、本開示は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGリピート数を有する前駆期ハンチントン病(HD)の患者を治療する方法であって、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を前駆期HD患者に投与するステップを含み、それにより、前駆期HD患者の神経炎症を低減させる方法を提供する。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、6ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年の期間にわたってIL-6濃度を維持する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、10~15年間にわたってIL-6濃度を維持する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、15年以上の期間にわたってIL-6濃度を維持する。
いくつかの実施形態では、前駆期の被験者は、体液バイオマーカーの濃度の上昇によって、発症前期遺伝子キャリアと区別される。いくつかの実施形態では、前駆期の被験者は、バイオマーカーの濃度の低下によって、顕性期HDの被験者と区別される。
一実施形態では、バイオマーカーは、CSF中のYKL-40である。一実施形態では、バイオマーカーは、CSFまたは血漿中のIL-8である。一実施形態では、バイオマーカーは、CSF中のニューログラニンである。一実施形態では、バイオマーカーは、CSF中のタウ(tau)である。別の実施形態では、バイオマーカーは、血漿中のタウである。一実施形態では、バイオマーカーは、CSF中のリン酸化タウである。別の実施形態では、バイオマーカーは、血漿中のリン酸化タウである。一実施形態では、バイオマーカーは、CSF中のGFAPである。一実施形態では、バイオマーカーは、プロエンケファリンである。別の実施形態では、バイオマーカーは、血漿中のGFAPである。一実施形態では、バイオマーカーは、総Httタンパク質である。別の実施形態では、バイオマーカーは、変異Htt(mHtt)である。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、体液バイオマーカーの濃度が、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、または少なくとも10%低下する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、体液バイオマーカーの濃度が10~20%低下する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、体液バイオマーカーの濃度が20~30%低下する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、体液バイオマーカーの濃度が30~40%低下する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、体液バイオマーカー濃度が40~50%低下する。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、6ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年の期間にわたって体液バイオマーカーの濃度を維持する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、10~15年間にわたって体液バイオマーカーの濃度を維持する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、15年以上の期間にわたって体液バイオマーカーの濃度を維持する。
一実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、体液バイオマーカーの濃度が、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、または少なくとも10%低下する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、体液バイオマーカーの濃度が10~20%低下する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、体液バイオマーカーの濃度が20~30%低下する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、体液バイオマーカーの濃度が30~40%低下する。別の実施形態では、プリドピジンを含む組成物が投与された前駆期の被験者は、体液バイオマーカーの濃度が50~50%低下する。
本開示の方法のいくつかの実施形態では、前駆期の被験者は、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGリピート数を有する。
いくつかの実施形態では、ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGリピート数を有する前駆期HDの被験者に対してプリドピジンを含む組成物を投与することによって、HDの臨床的発症を予防することができる。
一実施形態では、HDの臨床的発症は、機能的能力の低下(TFC<13)、運動機能の障害(TMS>20、及び、DCL段階=4)、行動上の問題(すなわち、PBA-S尺度または他の規制当局が認めた臨床尺度で測定された、うつ病、不安)、人格の変化、歩行及び平衡の障害、認知機能の低下(SDMT、SWR、HD-CAB、または他の一般的な臨床検査、すなわちミニメンタルステート検査によって測定)、不随意運動、動眼機能の低下(すなわち、抗サッケードエラー率)、脳の総体積の減少、尾状核または被殻の体積の減少、NfLまたはIL-6の濃度の増加、または、それらの任意の組み合わせを含む。
一実施形態では、本開示の方法で使用される組成物は、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩と、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせと、を含む。
Figure 2024514148000004
別の実施形態では、本開示の組成物は、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩と、化合物1またはその薬学的に許容される塩とを含む。別の実施形態では、本開示の組成物は、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩と、化合物4またはその薬学的に許容される塩とを含む。別の実施形態では、本開示の組成物は、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩と、化合物1またはその薬学的に許容される塩と、化合物4またはその薬学的に許容される塩とを含む。
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を、10~225mg/日の用量で投与することを含む。他の実施形態では、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩は、10~100mg/日の1日用量で投与される。他の実施形態では、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩は、10~45mg/日の1日用量で投与される。他の実施形態では、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩は、20~60mg/日の1日用量で投与される。他の実施形態では、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩は、70~150mg/日の1日用量で投与される。他の実施形態では、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩は、45~225mg/日の1日用量で投与される。他の実施形態では、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩は、90~225mg/日の1日用量で投与される。
一実施形態では、本開示の医薬組成物は、1日1回(qd)、1日2回(bid)、または1日3回投与される。別の実施形態では、各投与時に、等量の医薬組成物が投与される。一実施形態では、1回用量は、少なくとも6時間間隔、少なくとも7時間間隔、少なくとも8時間間隔、少なくとも9時間間隔、少なくとも10時間間隔、または、少なくとも11時間間隔で投与される。
一実施形態では、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、または、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩は、プリドピジンに対して0.001~10%の重量パーセントを有する。一実施形態では、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、または、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩は、プリドピジンに対して0.001~1.0%の重量パーセントを有する。一実施形態では、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、または、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩は、プリドピジンに対して0.005~0.2%の重量パーセントを有する。一実施形態では、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、または、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩は、プリドピジンに対して0.005~0.3%の重量パーセントを有する。一実施形態では、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、または、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩は、プリドピジンに対して0.005~0.4%の重量パーセントを有する。一実施形態では、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、または、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩は、プリドピジンに対して0.005~0.5%の重量パーセントを有する。一実施形態では、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、または、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩は、プリドピジンに対して0.1~0.3%の重量パーセントを有する。一実施形態では、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、または、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩は、プリドピジンに対して0.2~0.5%の重量パーセントを有する。一実施形態では、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、または、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩は、プリドピジンに対して0.1~0.9%の重量パーセントを有する。一実施形態では、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、または、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩は、プリドピジンに対して0.2~0.8%の重量パーセントを有する。一実施形態では、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、または、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩は、プリドピジンに対して0.3~0.7%の重量パーセントを有する。一実施形態では、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、または、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩は、プリドピジンに対して0.4~0.6%の重量パーセントを有する。一実施形態では、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、または、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩は、プリドピジンに対して1~3%の重量パーセントを有する。一実施形態では、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、または、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩は、プリドピジンに対して2~5%の重量パーセントを有する。一実施形態では、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、または、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩は、プリドピジンに対して4~7%の重量パーセントを有する。一実施形態では、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、または、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩は、プリドピジンに対して5~10%の重量パーセントを有する。
[用語]
本明細書で使用するとき、特に明記しない限り、以下の各用語は、以下に記載する定義を有するものとする。
冠詞「a」、「an」、及び「the」は、非限定的である。例えば、「本発明(the method)」には、その語句の意味の最も広い定義が含まれ、複数の方法であり得る。
本明細書で使用するとき、「対象への投与」または「(ヒト)患者への投与」とは、病的状態などの状態に関連する症状を緩和、治癒、または軽減するための、医薬品、薬物、または治療薬の対象/患者への投与、投薬、または適用を意味する。投与は、定期的に行われ得る。
本明細書で使用するとき、ミリグラムで測定されるプリドピジンの「量」または「用量」とは、製剤の形態に関わらず、製剤に含有されるプリドピジンのミリグラム(mg)を指す。例えば、「プリドピジン90mgの用量」は、製剤の形態に関わらず、製剤に含有されるプリドピジンの量が90mgであることを意味する。したがって、プリドピジン塩酸塩などの塩の形態である場合、プリドピジン90mgの用量を提供するために必要な塩形態の重量は、追加の塩イオンの存在に起因して、90mgよりも大きくなるであろう。
本明細書で使用するとき、「プリドピジン」とは、プリドピジン塩基またはその薬学的に許容される塩もしくはその誘導体、例えば、重水素濃縮のプリドピジンまたは塩を意味する。重水素濃縮のプリドピジンまたはその塩、及びそれらの製造方法の例は、米国特許出願公開第2013-0197031号、同第2016-0166559号、及び同第2016-0095847号に記載されている(これらの各特許文献の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される)。特定の実施形態では、プリドピジンは、HCl塩または酒石酸塩などの薬学的に許容される塩である。好ましくは、本明細書に記載の本発明の実施形態では、プリドピジンは、その塩酸塩の形態である。
「重水素濃縮の(重水素リッチな)」とは、所定量の化合物において、その化合物の或る関連部位における重水素の存在量が、その部位に天然に存在する重水素の存在量よりも多いことを意味する。重水素の天然の存在量は、約0.0156%である。したがって、「重水素濃縮の」化合物では、或る関連部位における重水素の存在量は、0.0156%超であり、0.0156~100%の範囲であり得る。重水素濃縮の化合物は、水素を重水素と交換するか、または、重水素リッチな出発物質を使用して化合物を合成することによって得ることができる。
[薬学的に許容される塩]
本発明にしたがって使用するための活性化合物は、意図する投与に適した任意の形態で提供され得る。適切な形態としては、本開示の化合物の薬学的に(すなわち生理学的に)許容される塩、及び、本開示の化合物のプレドラッグ形態またはプロドラッグ形態が挙げられる。
薬学的に許容される付加塩の例としては、これに限定しないが、非毒性の無機酸または有機酸の付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、L-酒石酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、アコン酸塩、アスコルビン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、エンボン酸塩、エナント酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トルエン-p-スルホン酸塩などが挙げられる。これらの塩は、当該技術分野でよく知られている方法によって形成することができる。
[医薬組成物]
本発明にしたがって使用するための活性化合物は、原料化合物の形態で投与してもよいが、活性化合物またはその薬学的に許容される塩は、1以上のアジュバント、賦形剤、担体、緩衝液、希釈剤、及び/または他の一般的な医薬補助剤と共に、医薬組成物中に含めることが好ましい。
一実施形態では、本発明は、活性化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体と、1以上の薬学的に許容される担体と、任意選択で、当分野で既知のかつ使用される他の治療成分及び/または予防成分と、を含む医薬組成物を提供する。担体は、医薬組成物の他の成分に適合し、かつ、本開示の医薬組成物が投与される対象にとって有害でないという意味で、「許容される」ものでなければならない。
本開示の医薬組成物は、所望の治療に適した任意の便利な経路で投与され得る。好ましい投与経路としては、とりわけ、錠剤、カプセル、マルチパーティクル(ビーズ、顆粒、小型錠剤)、粉末、または液体の形態による経口投与、及び、とりわけ、皮膚、皮下、筋肉内、または静脈内注射による非経口投与が挙げられる。本開示の医薬組成物は、固体の経口剤形である。
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される放出速度制御賦形剤を含む徐放性製剤または調整放出製剤である。放出速度制御賦形剤の非限定的な例としては、水素化ヒマシ油、ポリエチレンオキシド、エチルセルロースヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコールポリマー、ポリクリレート、ポリメタクリレート、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチルコポリマー、モノステアリン酸グリセリン、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。一実施形態では、放出速度制御賦形剤の総量は、製剤の全重量の約8~70%、例えば約10~50%、例えば約20~50%、例えば約30~50%、または例えば約30~40%である。いくつかの実施形態では、調整放出製剤は、国際公開第WO2015/112601号に開示されている通りである。
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、即放性製剤として製剤化される。いくつかの実施形態では、即放性製剤は、国際公開第WO2019/046568号に記載されている通りである。
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩と、下記の構造式で表される化合物1~7のうちの少なくとも1つの化合物またはその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物を使用する。
Figure 2024514148000005
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩と、化合物1またはその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物を使用する。他の実施形態では、本開示の方法は、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩と、化合物2またはその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物を使用する。他の実施形態では、本開示の方法は、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩と、化合物3またはその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物を使用する。他の実施形態では、本開示の方法は、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩と、化合物4またはその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物を使用する。他の実施形態では、本開示の方法は、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩と、化合物5またはその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物を使用する。他の実施形態では、本開示の方法は、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩と、化合物6またはその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物を使用する。他の実施形態では、本開示の方法は、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩と、化合物7またはその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物を使用する。他の実施形態では、本開示の方法は、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩と、化合物1またはその薬学的に許容される塩及び/または化合物4またはその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物を使用する。
一実施形態では、化合物1、化合物2、化合物3、化合物4、化合物5、化合物6、化合物7、またはそれらの薬学的に許容される塩のそれぞれは、プリドピジンに対して、0.001~10重量%(w/w%)、0.001~1.0重量%、0.005~0.01重量%、0.01~0.1重量%、0.05~0.5重量%、0.05~0.3重量%、0.1~1重量%、1~5重量%、1~10重量%、または、5~10重量%の重量パーセントを有する。
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩と、化合物1~7のうちの少なくとも1つの化合物またはその薬学的に許容される塩とを含む医薬組成物を使用し、プリドピジン及び/または化合物1~7またはそれらの塩は、重水素濃縮されている。重水素濃縮のプリドピジンまたはその塩、及びそれらの製造方法の例は、米国特許出願公開第2013/0197031号、同第2016/0166559号、及び同第2016/0095847号に記載されている(これらの各特許文献の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される)。
「重水素濃縮の(重水素リッチな)」とは、所定量の化合物において、その化合物の或る関連部位における重水素の存在量が、その部位に天然に存在する重水素の存在量よりも多いことを意味する。重水素の天然の存在量は、約0.0156%である。したがって、「重水素濃縮の」化合物では、或る関連部位における重水素の存在量は、0.0156%超であり、0.0156~100%の範囲であり得る。重水素濃縮の化合物は、水素を重水素と交換するか、または、重水素リッチな出発物質を使用して化合物を合成することによって得ることができる。
製剤化と投与の技術の詳細については、「Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co., Easton, PA)」の最新版を参照されたい。
実施例
実施例1:プリドピジンによる前駆期HDの治療
前駆期HDの治療に対するプリドピジンの有効性を、無作為化二重盲検プラセボ対照試験で評価した。治験参加者は、プリドピジン45mgを1日2回投与する群(50人)と、プラセボを投与する群(50人)とに1:1の割合で無作為に割り付け、52週間にわたって投与を行った。組み入れ基準は、HTT遺伝子のCAGリピート数が36以上、DCLが2または3、UHDRS-TMSが5~10、TFCが13、記号数字モダリティテスト(SDMT)スコアが40~60、CAPスコアが[年齢×(CAG-33.66)]≧250であった。
プリドピジンの有効性は、運動評価、構造的及び機能的イメージング、代謝イメージング(FDG-PET)、体液バイオマーカー濃度、並びに、認知及び精神医学的評価によって評価した。
45mgのプリドピジンを1日2回投与したプリドピジン投与群は、プラセボ群と比較して、運動尺度であるTMS及びQ-Motor指タッピングにおいて、維持、改善、または、悪化の低減が認められた。また、プリドピジン投与群では、プラセボ群と比較して、線条体構造である尾状核及び被殻の体積、並びに脳の総体積及び皮質の厚さにおいて、減少しなかった、または減少が少なかった。
また、プリドピジン投与群では、プラセボ投与群と比較して、心室容量の減少または維持を示すか、または心室容量の増加が小さかった。
45mgのプリドピジンを1日2回投与したプリドピジン投与群は、プラセボ投与群と比較して、DMN及び機能的結合性の維持、または悪化の低減が認められた。HD-CABの一連のテストによって評価された認知機能評価において、45mgのプリドピジンを1日2回投与したプリドピジン投与群は、プラセボ群と比較して、改善、維持、または、悪化の低減が認められた。SDMTで評価される認知機能評価において、45mgのプリドピジンを1日2回投与したプリドピジン投与群は、プラセボ群と比較して、認知機能評価の改善、維持、または、悪化の低減が認められた。プリドピジン投与群は、PBA-s合計スコア及びPBA-s無気力スコアにおいて、プラセボ群と比較して、改善、または、悪化の低減が認められた。
加えて、プリドピジン投与群は、プラセボ群と比較して、CSF及び/または血漿中の体液バイオマーカーであるNfL、リン酸タウ、及びプロエンケファリンの濃度の低下または維持が認められた。
治験期間中、プリドピジン群では、プラセボ群と比較して、顕性期HDへ移行した治験参加者が少なかった。
これらのデータは、45mgのプリドピジンの1日2回投与は、前駆期HDの治療、及び、顕性期HDの診断につながる症状の発症を遅らせるのに有効であることを示す。
本明細書では、本発明のいくつかの特徴を図示し、説明してきたが、様々な改変、置換、変更、及び均等物が、当業者であれば想到し得るであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の要旨の範囲内に含まれるそのような全ての改変及び変更を包含することを意図していることを理解されたい。

Claims (13)

  1. ハンチンチン(Htt)遺伝子に少なくとも36のCAGのリピート数を有する前駆期ハンチントン病(HD)の患者を治療する方法であって、
    プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩を含む組成物を前記前駆期ハンチントン病(HD)の患者に投与するステップを含む、方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、
    前記前駆期ハンチントン病(HD)の患者の統一ハンチントン病評価尺度の全機能的能力(UHDRS-TFC)のスコアは13である、方法。
  3. 請求項1に記載の方法であって、
    前記前駆期ハンチントン病(HD)の患者の診断信頼レベル(DCL)は1、2、または3である、方法。
  4. 請求項1または2に記載の方法であって、
    前記前駆期ハンチントン病(HD)の患者の合計運動スコア(TMS)を含む運動機能障害のスコアは5~10である、方法。
  5. 請求項1に記載の方法であって、
    前記前駆期ハンチントン病(HD)の患者の自立性スコア(IS)は90%以上である、方法。
  6. 請求項1に記載の方法であって、
    前記前駆期ハンチントン病(HD)の患者のハンチントン病統合病期分類システム(HD-ISS)で分類された病期はステージ1またはステージ2である、方法。
  7. 請求項1に記載の方法であって、
    前記前駆期ハンチントン病(HD)の患者は、記号数字モダリティテスト(SDMT)の結果が40~60である、方法。
  8. 請求項1~7のいずれかに記載の方法であって、
    前記プリドピジンまたはその薬学的に許容される塩は、10~225mg/日の用量で投与される、方法。
  9. 請求項1~8のいずれかに記載の方法であって、
    前記組成物は、化合物1もしくはその薬学的に許容される塩、化合物4もしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらの組み合わせをさらに含む、方法。
    Figure 2024514148000006
  10. 請求項9に記載の方法であって、
    前記化合物1または前記化合物4は、前記プリドピジンに対して0.001~1.0%の重量パーセントを有する、方法。
  11. 請求項10に記載の方法であって、
    前記化合物1または前記化合物4は、前記プリドピジンに対して0.05~0.5%の重量パーセントを有する、方法。
  12. 請求項9に記載の方法であって、
    前記化合物1または前記化合物4は、前記プリドピジンに対して0.05~0.3%の重量パーセントを有する、方法。
  13. 請求項1~12のいずれかに記載の方法であって、
    前記薬学的に許容される塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、D,L-酒石酸塩、L-酒石酸塩、D-酒石酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、ヘミコハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、グリコール酸塩、サッカラート、ギ酸塩、ベシル酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、リンゴ酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、シュウ酸塩、トシル酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、パモ酸塩(すなわち、1,1´-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))、過塩素酸塩、アコン酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、エンボン酸塩、エナント酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、フタル酸塩、ソルビン酸塩、または、ステアリン酸塩である、方法。
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