JP2024089626A - 多環芳香族化合物 - Google Patents

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琢次 畠山
和樹 重松
亮介 川角
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Kyoto University
SK Materials JNC Co Ltd
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Kyoto University
SK Materials JNC Co Ltd
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Abstract

【課題】有機EL素子等の有機デバイス用材料として有用な新規化合物を提供する。
【解決手段】式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物;
Figure 2024089626000207

(A環~I環は置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環、ZCは=C(-RC)-(RCは水素または置換基)または=N-であり、式(1)、式(2)、および式(3)各式中のA~G環の少なくとも1つは式(X)で表される置換基を含み、RXは置換基、LXは単結合または2価の連結基、X1~X4は>N-RNX(RNXはアリール等)>O、または>Sであり、RNXはX1~X4が結合する環の1つまたは2つと結合していてもよい。)
【選択図】なし

Description

本発明は、多環芳香族化合物に関する。本発明はまた、上記多環芳香族化合物を用いた有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタおよび有機薄膜太陽電池などの有機デバイス、並びに、表示装置および照明装置に関する。
従来、電界発光する発光素子を用いた表示装置は、省電力化や薄型化が可能なことから、種々研究され、さらに、有機材料から成る有機電界発光素子は、軽量化や大型化が容易なことから活発に検討されてきた。特に、光の三原色の1つである青色や緑色などの発光特性を有する有機材料の開発、および正孔、電子などの電荷輸送能(半導体や超電導体となる可能性を有する)を備えた有機材料の開発については、高分子化合物、低分子化合物を問わずこれまで活発に研究されてきた。
有機EL素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、当該一対の電極間に配置され、有機化合物を含む一層または複数の層とからなる構造を有する。有機化合物を含む層には、発光層や、正孔、電子などの電荷を輸送または注入する電荷輸送/注入層などがあるが、これらの層に適当な種々の有機材料が開発されている。
その中で、特許文献1および2では、ホウ素を含有する多環芳香族化合物が、有機電界発光素子等の材料として有用であることが開示されている。この多環芳香族化合物を含有する有機電界発光素子は、良好な外部量子効率を有することが報告されている。
国際公開第2015/102118号 国際公開第2018/212169号
上述のように、有機EL素子に用いられる材料としては種々の材料が開発されているが、有機EL素子用材料の選択肢を増やすために、従来とは異なる化合物からなる材料の開発が望まれている。
本発明は有機EL素子等の有機デバイス用材料として有用な新規化合物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討し、特許文献1および2に記載の化合物と同様にホウ素を含む構造を有する化合物において、さらに高効率で長寿命の有機EL素子の製造を可能とする多環芳香族化合物が得られることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下のような多環芳香族化合物、さらには以下のような多環芳香族化合物を含む有機デバイス用材料等を提供する。
<1> 式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物;
Figure 2024089626000001
式(1)、式(2)および式(3)中、
A環、B環、C環、D環、E環、F環、およびG環はそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環であり、ZCはそれぞれ独立して=C(-RC)-または=N-であり、RCはそれぞれ独立して水素または置換基であり、
ただし、
式(1)においては、A環、B環、およびC環からなる群より選択される少なくとも1つは式(X)で表される置換基を前記アリール環または前記ヘテロアリール環への置換基として含み、
式(2)においては、A環、B環、D環、およびE環からなる群より選択される少なくとも1つが式(X)で表される置換基を前記アリール環または前記ヘテロアリール環への置換基として含むか、または、少なくとも1つのZCが、RCが式(X)で表される置換基である=C(-RC)-であり、
式(3)においては、A環、B環、D環、E環、F環、およびG環からなる群より選択される少なくとも1つが式(X)で表される置換基を前記アリール環または前記ヘテロアリール環への置換基として含むか、または、少なくとも1つのZCが、RCが式(X)で表される置換基である=C(-RC)-であり、
式(X)中、
H環およびI環はそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環であり、RXはそれぞれ独立して置換基であり、LXは単結合または2価の連結基であり、
1、X2、X3、およびX4はそれぞれ独立して>N-RNX、>O、>C(-RCX2、>Si(-RIX2、>S、または>Seであり、RNXは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、RCXおよびRIXはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、2つのRCXは互いに結合して環を形成していてもよく、2つのRIXは互いに結合して環を形成していてもよく、RNX、RCXおよびRIXはそれぞれ連結基または単結合により、当該RNX、RCXまたはRIXを含むX1、X2、X3、またはX4が結合する環の1つまたは2つと結合していてもよく、
式(1)、式(2)、および式(3)の各式におけるアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンは少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられていてもよく、
式(1)、式(2)、および式(3)の各式において、少なくとも1つの水素は重水素で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの窒素は窒素-15(15N)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの硫黄は硫黄-33(33S)、硫黄-34(34S)または硫黄-36(36S)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの酸素は酸素-17(17O)または酸素-18(18O)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの炭素は炭素-13(13C)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つのホウ素はホウ素-11(11B)で置き換えられていてもよい。
<2> 式(X)が式(X-1)で表される、<1>に記載の多環芳香族化合物;
Figure 2024089626000002
式(X-1)中、
Xはそれぞれ独立して=C(-RZX)-または=N-であり、RZXは水素または置換基である。
<3> ZXがいずれも=C(-RZX)-であり、
Xが単結合であり、
Xがそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールである、<2>に記載の多環芳香族化合物。
<4> 式(1)で表される、<1>~<3>のいずれかに記載の多環芳香族化合物。
<5> 式(1-a)で表される、<4>に記載の多環芳香族化合物;
Figure 2024089626000003
式(1-a)中、
Cはそれぞれ独立して、-C(-RC)=または-N=であり、
Cは、それぞれ独立して、水素または置換基であり、
ただし、式(1-a)において、ZCの少なくとも1つはRCが式(X)で表される置換基である-C(-RC)=であり、
1およびX2は、それぞれ式(1)におけるX1、X2と同義であり、
式(1-a)におけるアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンは少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられていてもよく、
式(1-a)において、少なくとも1つの水素は重水素で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの窒素は窒素-15(15N)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの硫黄は硫黄-33(33S)、硫黄-34(34S)または硫黄-36(36S)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの酸素は酸素-17(17O)または酸素-18(18O)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの炭素は炭素-13(13C)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つのホウ素はホウ素-11(11B)で置き換えられていてもよい。
<6> ZCの少なくとも1つが、RCが置換または無置換のN-カルバゾリルである-C(-RC)=であり、ただし、前記の置換または無置換のN-カルバゾリルは式(X)で表される置換基ではなく、
前記の置換または無置換のN-カルバゾリルにおける置換基は置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、および置換もしくは無置換のシクロアルキルからなる群より選択される、<5>に記載の多環芳香族化合物。
<7> ZCの少なくとも2つがそれぞれ独立してRCが式(X)で表される置換基である-C(-RC)=である、<5>または<6>に記載の多環芳香族化合物。
<8> b環およびc環からなる群より選択される少なくとも1つにおけるいずれかのZCがRCが式(X)で表される置換基である-C(-RC)=である、<5>~<7>のいずれかに記載の多環芳香族化合物。
<9> 式(X)が式(X-1)で表される、<5>~<8>のいずれかに記載の多環芳香族化合物;
Figure 2024089626000004
式(X-1)中、
Xはそれぞれ独立して=C(-RZX)-または=N-であり、RZXは水素または置換基であり、ただし、ZXの少なくとも1つは-N=である。
<10> 下記いずれかの式で表される<4>に記載の多環芳香族化合物;
Figure 2024089626000005
Figure 2024089626000006
Figure 2024089626000007
式中、tBuはt-ブチル、Dは重水素である。
<11> 式(1-b)で表される、<4>に記載の多環芳香族化合物;
Figure 2024089626000008
式(1-b)中、
Cはそれぞれ独立して、-C(-RC)=または-N=であり、
Cは、それぞれ独立して、水素または置換基であり、
ただし、式(1-b)において、ZCの少なくとも1つはRCが式(X)で表される置換基である-C(-RC)=であり、
Lは>C(-RCL2、>N-RNL、>O、>S、または>Seであり、RCLは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、2つのRCLは互いに結合して環を形成していてもよく、RNLは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、
1およびX2は、それぞれ式(1)におけるX1、X2と同義であり、
式(1-b)におけるアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンは少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられていてもよく、
式(1-b)において、少なくとも1つの水素は重水素で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの窒素は窒素-15(15N)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの硫黄は硫黄-33(33S)、硫黄-34(34S)または硫黄-36(36S)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの酸素は酸素-17(17O)または酸素-18(18O)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの炭素は炭素-13(13C)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つのホウ素はホウ素-11(11B)で置き換えられていてもよい。
<12> 下記いずれかの式で表される<11>に記載の多環芳香族化合物;
Figure 2024089626000009
式中、tBuはt-ブチルである。
<13> 式(2)で表される、<1>~<3>のいずれかに記載の多環芳香族化合物。
<14> 式(2-a)または式(2-b)で表される、<13>に記載の多環芳香族化合物;
Figure 2024089626000010
式(2-a)および式(2-b)中、
Cはそれぞれ独立して、-C(-RC)=または-N=であり、
cは、それぞれ独立して、水素または置換基であり、
ただし、式(2-a)および式(2-b)の各式において、ZCの少なくとも1つはRCが式(X)で表される置換基である-C(-RC)=であり、
Lは>C(-RCL2、>N-RNL、>O、>S、または>Seであり、RCLは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、2つのRCLは互いに結合して環を形成していてもよく、RNLは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、
1、X2、X3、およびX4は、それぞれ式(2)中のX1、X2、X3、およびX4と同義であり、
式(2-a)および式(2-b)の各式におけるアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンは少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられていてもよく、
式(2-a)および式(2-b)の各式において、少なくとも1つの水素は重水素で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの窒素は窒素-15(15N)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの硫黄は硫黄-33(33S)、硫黄-34(34S)または硫黄-36(36S)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの酸素は酸素-17(17O)または酸素-18(18O)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの炭素は炭素-13(13C)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つのホウ素はホウ素-11(11B)で置き換えられていてもよい。
<15> 下記いずれかの式で表される<13>に記載の多環芳香族化合物;
Figure 2024089626000011
Figure 2024089626000012
Figure 2024089626000013
式中、tBuはt-ブチルである。
<16> 陽極および陰極からなる一対の電極と該一対の電極間に配置される有機層とを有し、前記有機層が<1>~<15>のいずれかに記載の多環芳香族化合物を含有する、有機電界発光素子。
<17> 前記有機層が発光層である、<16>に記載の有機電界発光素子。
<18> 前記発光層がアシスティングドーパントまたはりん光材料を含む、<17>に記載の有機電界発光素子。
<19> 前記発光層がりん光材料を含む、<17>に記載の有機電界発光素子。
<20> <16>~<19>のいずれかに記載の有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置。
本発明により、有機電界発光素子等の有機デバイス用材料として有用な新規多環芳香族化合物が提供される。本発明の多環芳香族化合物は有機電界発光素子等の有機デバイスの製造に用いることができる。
有機電界発光素子の一例を示す概略断面図である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書において構造式の説明における「水素」は「水素原子(H)」を意味する。同様に「炭素原子(C)」を「炭素」ということがある。
本明細書において、「隣接する基」というときは、構造式中で隣接する2つの原子(共有結合で直接結合する2つの原子)にそれぞれ結合している2つの基を意味する。
本明細書において「Me」はメチル、「Et」はエチル、「nBu」はn-ブチル(ノルマルブチル)、「tBu」はt-ブチル(ターシャリーブチル)、「iBu」はイソブチル、「secBu」はセカンダリーブチル、「nPr」はn-プロピル(ノルマルプロピル)、「iPr」はイソプロピル、「tAm」はt-アミル、「2EH」は2-エチルヘキシル、「tOct」はt-オクチル、「Ph」はフェニル、「Mes」はメシチル(2,4,6-トリメチルフェニル)、「Ad」は1-アダマンチル、「Tf」はトリフルオロメタンスルホニル、「TMS」はトリメチルシリル、「D」は重水素を表す。
本明細書において、有機電界発光素子を有機EL素子ということがある。
本明細書において化学構造や置換基を炭素数で表すことがあるが、化学構造に置換基が置換した場合や、置換基にさらに置換基が置換した場合などにおける炭素数は、化学構造や置換基それぞれの炭素数を意味し、化学構造と置換基の合計の炭素数や、置換基と置換基の合計の炭素数を意味するものではない。例えば、「炭素数Xの置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「炭素数Xの置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。また例えば、「置換基Aで置換された炭素数Yの置換基B」とは、「炭素数Yの置換基B」に「(炭素数限定がない)置換基A」が置換することを意味し、炭素数Yは置換基Aおよび置換基Bの合計の炭素数ではない。
<環および置換基の説明>
まず、本明細書において使用する環および置換基の詳細について以下で説明する。
本明細書における「アリール環」としては、例えば、炭素数6~30のアリール環があげられ、炭素数6~16のアリール環が好ましく、炭素数6~12のアリール環がより好ましく、炭素数6~10のアリール環が特に好ましい。
具体的な「アリール環」としては、単環系であるベンゼン環、二環系であるビフェニル環、縮合二環系であるナフタレン環、インデン環、三環系であるテルフェニル環(m-テルフェニル、o-テルフェニル、p-テルフェニル)、縮合三環系である、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、フェナントレン環、アントラセン環、縮合四環系であるトリフェニレン環、ピレン環、ナフタセン環、クリセン環、縮合五環系であるペリレン環、ペンタセン環などがあげられる。また、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、インデン環には、それぞれフルオレン環、ベンゾフルオレン環、シクロペンタン環などがスピロ結合した構造も含まれる。なお、フルオレン環、ベンゾフルオレン環およびインデン環には、その構造中のメチレンの2つの水素のうちの2つがそれぞれ後述の第1の置換基としてのメチルなどのアルキルに置き換わって、ジメチルフルオレン環、ジメチルベンゾフルオレン環、ジメチルインデン環などとなっているものも含まれる。
本明細書における「ヘテロアリール環」としては、例えば、炭素数2~30のヘテロアリール環があげられ、炭素数2~25のヘテロアリール環が好ましく、炭素数2~20のヘテロアリール環がより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリール環がさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリール環が特に好ましい。また、「ヘテロアリール環」としては、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄、窒素、ホウ素、セレン、リン、テルルから選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環などがあげられる。
具体的な「ヘテロアリール環」としては、例えば、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環(フラザン環など)、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H-インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H-ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、フェナザシリン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、チアントレン環、インドロカルバゾール環、ベンゾインドロカルバゾール環、ジベンゾインドロカルバゾール環、ナフトベンゾフラン環、ジオキシン環、ジヒドロアクリジン環、キサンテン環、チオキサンテン環、ジベンゾジオキシン環、ジオキサボラナフトアントラセン環(5,9-ジオキサ-13b-ボラ-13bH-ナフト[3,2,1-de]アントラセン環など)、ベンゾセレノフェン環、ジベンゾセレノフェン環、アザカルバゾール環、アザジベンゾチオフェン環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾセレノフェン環、アザトリフェニレン環、イミダゾイミダゾール環、インドロインドール環、ベンゾフロカルバゾール環、ベンゾチエノカルバゾール環、インデノカルバゾール環およびセレノフェノカルバゾール環、スピロ[フルオレン-9,9’-キサンテン]環、スピロビ[シラフルオレン]環などがあげられる。また、ジヒドロアクリジン環、キサンテン環、チオキサンテン環は、その構造中のメチレンの2つの水素のうちの2つがそれぞれ後述の第1の置換基としてのメチルなどのアルキルに置き換わって、ジメチルジヒドロアクリジン環、ジメチルキサンテン環、ジメチルチオキサンテン環などとなっているものも好ましい。また二環系であるビピリジン環、フェニルピリジン環、ピリジルフェニル環、三環系であるテルピリジル環、ビスピリジルフェニル環、ピリジルビフェニル環も「ヘテロアリール環」としてあげられる。また、「ヘテロアリール環」にはピラン環も含まれるものとする。
本明細書において、置換基は、さらなる置換基で置換されていることがある。例えば、特定の置換基に関して、「置換もしくは無置換の」と説明がされることがある。これはその特定の置換基が少なくとも1つのさらなる置換基で置換されているか、または置換されていないことを意味する。同様の意味で「置換されていてもよい」ということもある。本明細書において、このときの上記特定の置換基を「第1の置換基」、上記のさらなる置換基を「第2の置換基」ということがある。
本明細書において、置換基群Zαは、置換基群Zの置換基および後述の式(A30)で表される置換基からなる。
本明細書において、置換基群Zは、
アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいアリール、
アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいヘテロアリール、
アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいジアリールアミノ(2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、
アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ(2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)、
アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ(アリールとヘテロアリールとは互いに連結基を介して結合していてもよい)、
アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、
アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいアルキル、
アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいシクロアルキル、
アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいアルコキシ、
アリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよいアリールオキシ、
置換シリル、シアノ、ならびにハロゲンからなる。
置換基群Zの各基における第2置換基であるアリールは、さらにアリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい、同様に、第2置換基であるヘテロアリールはアリール、ヘテロアリール、アルキル、シクロアルキル、シアノ、またはハロゲンで置換されていてもよい。
本明細書において、「置換基」という場合、置換基の種類は特に限定されないが、特に別途の説明がないときは、置換基群Zから選択されるいずれかの基であればよい。例えば、「置換もしくは無置換の」とされる基が置換されているとき、当該基は置換基群Zから選択される少なくとも1つの基で置換されていればよい。
本明細書において、「アリール」は、例えば炭素数6~30のアリールであり、好ましくは、炭素数6~20のアリール、炭素数6~16のアリール、炭素数6~12のアリール、または炭素数6~10のアリールなどである。
具体的な「アリール」は、上述した「アリール環」から1つの水素を除いた1価の基があげられる。例えば、単環系であるフェニル、二環系であるビフェニリル(2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、もしくは4-ビフェニリル)、縮合二環系であるナフチル(1-ナフチルもしくは2-ナフチル)、三環系であるテルフェニリル(m-テルフェニル-2'-イル、m-テルフェニル-4'-イル、m-テルフェニル-5'-イル、o-テルフェニル-3'-イル、o-テルフェニル-4'-イル、p-テルフェニル-2'-イル、m-テルフェニル-2-イル、m-テルフェニル-3-イル、m-テルフェニル-4-イル、o-テルフェニル-2-イル、o-テルフェニル-3-イル、o-テルフェニル-4-イル、p-テルフェニル-2-イル、p-テルフェニル-3-イル、もしくはp-テルフェニル-4-イル)、縮合三環系である、アセナフチレン-(1-、3-、4-、もしくは5-)イル、フルオレン-(1-、2-、3-、4-、もしくは9-)イル、フェナレン-(1-もしくは2-)イル、フェナントレン-(1-、2-、3-、4-、もしくは9-)イル、もしくはアントラセン-(1-、2-、もしくは9-)イル、四環系であるクアテルフェニリル(5'-フェニル-m-テルフェニル-2-イル、5'-フェニル-m-テルフェニル-3-イル、5'-フェニル-m-テルフェニル-4-イル、もしくはm-クアテルフェニル)、縮合四環系である、トリフェニレン-(1-もしくは2-)イル、ピレン-(1-、2-、もしくは4-)イル、もしくはナフタセン-(1-、2-、もしくは5-)イル、または、縮合五環系である、ペリレン-(1-、2-、もしくは3-)イル、もしくはペンタセン-(1-、2-、5-、もしくは6-)イルなどである。その他、スピロフルオレンの1価の基などがあげられる。
なお、第2置換基としてのアリールには、当該アリールが、フェニルなどのアリール(具体例は上述した基)、メチルなどのアルキル(具体例は後述する基)、およびシクロヘキシルもしくはアダマンチルなどのシクロアルキル(具体例は後述する基)からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換された構造も含まれる。
その一例としては、第2置換基としてのフルオレニルの9位が、フェニルなどのアリール、メチルなどのアルキル、またはシクロヘキシルもしくはアダマンチルなどのシクロアルキルで置換された基があげられる。
「アリーレン」は、例えば炭素数6~30のアリーレンであり、好ましくは、炭素数6~20のアリーレン、炭素数6~16のアリーレン、炭素数6~12のアリーレン、または炭素数6~10のアリーレンなどである。
具体的な「アリーレン」は、例えば、上述した「アリール」(1価の基)から1つの水素を除いた2価の基があげられる。
「ヘテロアリール」は、例えば炭素数2~30のヘテロアリールであり、好ましくは、炭素数2~25のヘテロアリール、炭素数2~20のヘテロアリール、炭素数2~15のヘテロアリール、または炭素数2~10のヘテロアリールなどである。「ヘテロアリール」は、環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄、および窒素等から選ばれるヘテロ原子を、1個以上、好ましくは1~5個含有する。
具体的な「ヘテロアリール」としては、上述した「ヘテロアリール環」から1つの水素を除いた1価の基があげられる。例えば、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、1H-インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H-ベンゾトリアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フェナントロリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェナザシリニル、インドリジニル、フラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ナフトベンゾフラニル、チエニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、ジベンゾチエニル、ナフトベンゾチエニル、ベンゾホスホールオキシド環の1価の基、ジベンゾホスホールオキシド環の1価の基、フラザニル、チアントレニル、インドロカルバゾリル、ベンゾインドロカルバゾリル、ジベンゾインドロカルバゾリル、イミダゾリニル、またはオキサゾリニルなどである。その他、スピロ[フルオレン-9,9’-キサンテン]の1価の基、スピロビ[シラフルオレン]の1価の基、ベンゾセレノフェンの1価の基があげられる。
なお、第2置換基としてのヘテロアリールには、当該ヘテロアリールが、フェニルなどのアリール(具体例は上述した基)、メチルなどのアルキル(具体例は後述する基)およびシクロヘキシルもしくはアダマンチルなどのシクロアルキル(具体例は後述する基)からなる群より選択される少なくとも1つの基で置換された構造も含まれる。
その一例としては、第2置換基としてのカルバゾリルの9位が、フェニルなどのアリール、メチルなどのアルキル、またはシクロヘキシルもしくはアダマンチルなどのシクロアルキルで置換された基があげられる。また、ピリジル、ピリミジニル、トリアジニル、カルバゾリルなどの含窒素ヘテロアリールがさらにフェニルまたはビフェニリルなどで置換された基も第2置換基としてのヘテロアリールに含まれる。
「ヘテロアリーレン」は、例えば炭素数2~30のヘテロアリーレンであり、好ましくは、炭素数2~25のヘテロアリーレン、炭素数2~20のヘテロアリーレン、炭素数2~15のヘテロアリーレン、または炭素数2~10のヘテロアリーレンなどである。また、「ヘテロアリーレン」は、例えば環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄、および窒素から選ばれるヘテロ原子を1~5個含有する複素環などの二価の基である。
具体的な「ヘテロアリーレン」は、例えば、上述した「ヘテロアリール」(1価の基)から1つの水素を除いた2価の基があげられる。
「ジアリールアミノ」は、2つのアリールが置換したアミノであり、このアリールの詳細については上述した「アリール」の説明を引用できる。
「ジヘテロアリールアミノ」は、2つのヘテロアリールが置換したアミノ基であり、このヘテロアリールの詳細については上述した「ヘテロアリール」の説明を引用できる。
「アリールヘテロアリールアミノ」は、アリールおよびヘテロアリールが置換したアミノ基であり、このアリールおよびヘテロアリールの詳細については上述した「アリール」および「ヘテロアリール」の説明を引用できる。
第1の置換基としてのジアリールアミノにおける2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、第1の置換基としてのジヘテロアリールアミノにおける2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよく、第1の置換基としてのアリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい。ここで、「連結基を介して結合」という記載は、下記に示すように例えばジフェニルアミノの2つのフェニルが連結基で結合を形成することを表す。またこの説明はアリールやヘテロアリールで形成された、ジヘテロアリールアミノおよびアリールヘテロアリールアミノについても適用される。
Figure 2024089626000014
連結基としては具体的には、>O、>N-RX、>C(-RX2、-C(-RX)=C(-RX)-、>Si(-RX2、>S、>CO、>CS、>SO、>SO2、>SeO、>SeO2、>PO、>B(-RX)、および>Seがあげられる。RXはそれぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、これらはアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールで置換されていてもよい。また、>C(-RX2、-C(-RX)=C(-RX)-、>Si(-RX2それぞれにおける2つのRXは、単結合または連結基XYを介して互いに結合して環を形成してもよい。XYとしては>O、>N-RY、>C(-RY2、>Si(-RY2、>S、>CO、>CS、>SO、>SO2、および>Seがあげられ、RYはそれぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、これらはアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールで置換されていてもよい。ただし、XYが>C(-RY2および>Si(-RY2の場合には、2つのRYは結合してさらに環を形成することはない。さらに連結基としては、アルケニレンもあげられる。該アルケニレンの任意の水素はそれぞれ独立してR2Xで置換されていてもよく、R2Xはそれぞれ独立してアルキル、シクロアルキル、置換シリル、アリールおよびヘテロアリールであり、これらはアルキル、シクロアルキル、置換シリル、アリールで置換されていてもよい。-C(-RX)=C(-RX)-における2つのRXは、互いに結合してそれらが結合するC=Cとともにアリール環(ベンゼン環など)またはヘテロアリール環を形成していてもよい。すなわち、-C(-RX)=C(-RX)-は、アリーレン(1,2-フェニレンなど)またはヘテロアリーレンとなっていてもよい。
なお、本明細書で単に「ジアリールアミノ」、「ジヘテロアリールアミノ」、または「アリールヘテロアリールアミノ」と記載されている場合は、特に断りがない限りは、それぞれ「ジアリールアミノの2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい」、「前記ジヘテロアリールアミノの2つのヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい」および「前記アリールヘテロアリールアミノのアリールとヘテロアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい」という説明が加わっているものであるとする。
「ジアリールボリル」は、2つのアリールが置換したボリルであり、このアリールの詳細については上述した「アリール」の説明を引用できる。また、この2つのアリールは、単結合または連結基(例えば、-CH=CH-、-CR=CR-、-C≡C-、>N-R、>O、>S、>CO、>C=S、>S=O、>S(=O)2、>Se(=O)、>Se(=O)2、>P(=O)、>B(-R)、>C(-R)2、>Si(-R)2、または>Se)を介して結合していてもよい。ここで、前記-CR=CR-のR、>N-RのR、>B(-R)のR、>C(-R)2のR、および>Si(-R)のRは、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルコキシ、またはアリールオキシであり、当該Rにおける少なくとも1つの水素は、さらにアリール、ヘテロアリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはシクロアルキルで置換されていてもよい。また、隣接する2つのR同士が結合して環を形成し、シクロアルキレン、アリーレン、およびヘテロアリーレンを形成していてもよい。ここで列挙した置換基の詳細については、上述した「アリール」、「アリーレン」、「ヘテロアリール」、「ヘテロアリーレン」、および「ジアリールアミノ」の説明、ならびに、後述する「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「シクロアルキル」、「シクロアルキレン」、「アルコキシ」、および「アリールオキシ」の説明を引用できる。また、本明細書で単に「ジアリールボリル」と記載されている場合は、特に断りがない限りは、「ジアリールボリルの2つのアリールは互いに単結合または連結基を介して結合していてもよい」という説明が加わっているものであるとする。
「アルキル」は、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば炭素数1~24の直鎖アルキルまたは炭素数3~24の分岐鎖アルキルであり、好ましくは、炭素数1~18のアルキル(炭素数3~18の分岐鎖アルキル)、炭素数1~12のアルキル(炭素数3~12の分岐鎖アルキル)、炭素数1~6のアルキル(炭素数3~6の分岐鎖アルキル)、炭素数1~5のアルキル(炭素数3~5の分岐鎖アルキル)、炭素数1~4のアルキル(炭素数3~4の分岐鎖アルキル)などである。
具体的な「アルキル」は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1,1-ジエチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、1-エチル-1,2,2-トリメチルプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-エチルブチル、1,1-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,1-ジエチルブチル、1-エチル-1-メチルブチル、1-プロピル-1-メチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、1-エチル-1,3-ジメチルブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル(t-アミル)、1-メチルペンチル、2-プロピルペンチル、1,1-ジメチルペンチル、1-エチル-1-メチルペンチル、1-プロピル-1-メチルペンチル、1-ブチル-1-メチルペンチル、1,1,4-トリメチルペンチル、n-ヘキシル、1-メチルヘキシル、2-エチルヘキシル、1,1-ジメチルヘキシル、1-エチル-1-メチルヘキシル、1,1,5-トリメチルヘキシル、3,5,5-トリメチルヘキシル、n-ヘプチル、1-メチルヘプチル、1-ヘキシルヘプチル、1,1-ジメチルヘプチル、2,2-ジメチルヘプチル、2,6-ジメチル-4-ヘプチル、n-オクチル、t-オクチル(1,1,3,3-テトラメチルブチル)、1,1-ジメチルオクチル、n-ノニル、n-デシル、1-メチルデシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、またはn-エイコシルなどである。
「アルキレン」は、「アルキル」のいずれかの水素を除いて得られる2価の基であり、例えばメチレン、エチレン、プロピレンである。
「アルケニル」については、上述した「アルキル」の説明を参考にすることができ、「アルキル」の構造中のC-C単結合をC=C二重結合に置換した基であり、1つだけでなく2つ以上の単結合が二重結合に置換された基(アルカジエン-イルやアルカトリエン-イルとも呼ばれる)も含める。
「アルケニレン」は「アルケニル」のいずれかの水素を除いて得られる2価の基であり、例えばビニレンがあげられる。
「アルキニル」については、上述した「アルキル」の説明を参考にすることができ、「アルキル」の構造中のC-C単結合をC≡C三重結合に置換した基であり、1つだけでなく2つ以上の単結合が三重結合に置換された基(アルカジイン-イルやアルカトリイン-イルとも呼ばれる)も含める。
「シクロアルキル」は、例えば炭素数3~24のシクロアルキルであり、好ましくは、炭素数3~20のシクロアルキル、炭素数3~16のシクロアルキル、炭素数3~14のシクロアルキル、炭素数3~12のシクロアルキル、炭素数5~10のシクロアルキル、炭素数5~8のシクロアルキル、炭素数5~6のシクロアルキル、または炭素数5のシクロアルキルなどである。
具体的な「シクロアルキル」は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、もしくはこれらの炭素数1~5や炭素数1~4のアルキル(特にメチル)置換体、ビシクロ[1.1.0]ブチル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル(ノルボルニル)、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、ジアマンチル、デカヒドロナフタレニル、またはデカヒドロアズレニルなどである。
「シクロアルキレン」は、例えば炭素数3~24のシクロアルキレンであり、好ましくは、炭素数3~20のシクロアルキレン、炭素数3~16のシクロアルキレン、炭素数3~14のシクロアルキレン、炭素数3~12のシクロアルキレン、炭素数5~10のシクロアルキレン、炭素数5~8のシクロアルキレン、炭素数5~6のシクロアルキレン、または炭素数5のシクロアルキレンなどである。
具体的な「シクロアルキレン」は、例えば、上述した「シクロアルキル」(1価の基)から1つの水素を除いて二価の基にした構造があげられる。
「シクロアルケニル」は、上述した「シクロアルキル」における少なくとも1組の2つの炭素の間の単結合が二重結合となった構造を有する基(例えば、-CH2-CH2-が-CH=CH-に置き換わった基)であって、アリールに該当しない基があげられる。具体的には、1-シクロヘキセニル、1-シクロペンテニル等があげられる。
「アルコキシ」は、「Alk-O-(Alkはアルキル)」で表される基であり、このアルキルの詳細については上述した「アルキル」の説明を引用できる。
「アリールオキシ」は、「Ar-O-(Arはアリール)」で表される基であり、このアリールの詳細については上述した「アリール」の説明を引用できる。
「置換シリル」は、例えば、アリール、アルキル、およびシクロアルキルの少なくとも1つで置換されたシリルであり、好ましくは、トリアリールシリル、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、またはアルキルジシクロアルキルシリルである。
「トリアリールシリル」は、3つのアリールで置換されたシリル基であり、このアリールの詳細については上述した「アリール」の説明を引用できる。
具体的な「トリアリールシリル」は、例えば、トリフェニルシリル、ジフェニルモノナフチルシリル、モノフェニルジナフチルシリル、またはトリナフチルシリルなどである。
「トリアルキルシリル」は、3つのアルキルで置換されたシリル基であり、このアルキルの詳細については上述した「アルキル」の説明を引用できる。
具体的な「トリアルキルシリル」は、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリn-プロピルシリル、トリイソプロピルシリル、トリn-ブチルシリル、トリイソブチルシリル、トリs-ブチルシリル、トリt-ブチルシリル、エチルジメチルシリル、n-プロピルジメチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、n-ブチルジメチルシリル、イソブチルジメチルシリル、s-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、n-プロピルジエチルシリル、イソプロピルジエチルシリル、n-ブチルジエチルシリル、s-ブチルジエチルシリル、t-ブチルジエチルシリル、メチルジn-プロピルシリル、エチルジn-プロピルシリル、n-ブチルジn-プロピルシリル、s-ブチルジn-プロピルシリル、t-ブチルジn-プロピルシリル、メチルジイソプロピルシリル、エチルジイソプロピルシリル、n-ブチルジイソプロピルシリル、s-ブチルジイソプロピルシリル、またはt-ブチルジイソプロピルシリルなどである。
「トリシクロアルキルシリル」は、3つのシクロアルキルで置換されたシリル基であり、このシクロアルキルの詳細については上述した「シクロアルキル」の説明を引用できる。
具体的な「トリシクロアルキルシリル」は、例えば、トリシクロペンチルシリルまたはトリシクロヘキシルシリルなどである。
「ジアルキルシクロアルキルシリル」は、2つのアルキルおよび1つのシクロアルキルで置換されたシリル基であり、このアルキルおよびシクロアルキルの詳細については上述した「アルキル」および「シクロアルキル」の説明を引用できる。
「アルキルジシクロアルキルシリル」は、1つのアルキルおよび2つのシクロアルキルで置換されたシリル基であり、このアルキルおよびシクロアルキルの詳細については上述した「アルキル」および「シクロアルキル」の説明を引用できる。
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、好ましくはフッ素、塩素、または臭素、より好ましくはフッ素または塩素であり、フッ素がさらに好ましい。
シアノまたはハロゲンが置換するとき、構造中のアリールやヘテロアリールにおける全てまたは一部の水素がシアノまたはハロゲンで置き換えられた態様も好ましい。
式(A30)で表される置換基は以下の構造を有する。
Figure 2024089626000015
式(A30)中、
Akは水素、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアルケニル、置換もしくは無置換のシクロアルキルまたは置換もしくは無置換のシクロアルケニルであり、当該アルキル、シクロアルキルおよびシクロアルケニルにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-または-S-で置き換えられていてもよく、
Akは、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキルまたは置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、RAkは連結基または単結合によりAkと結合していてもよく、*は結合位置である。
式(A30)中、Akが上記の置換基であることによりN上の非共有電子対と共役しないため、非共有電子対を結合先のπ電子と共役させることができ、同位置にアリール等がある場合と比べてより大きな波長変更が可能である。また、多重共鳴効果への影響についても同様であり、熱活性型遅延蛍光(TADF)性のより大きな改善が可能である。
Akはアルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいアリール、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであることが好ましく、アルキルで置換されていてもよいアリール、アルキルで置換されていてもよいヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルであることがより好ましく、アルキルで置換されていてもよいアリールであることがさらに好ましく、メチルで置換されていてもよいフェニルであることが特に好ましい。
式(A30)中、Akは炭素数1~6のアルキルまたは炭素数3~14のシクロアルキルであることが好ましく、炭素数1~4のアルキルまたは炭素数3~8のシクロアルキルであることが好ましく、炭素数1~4のアルキルであることがより好ましく、メチルであることがさらに好ましい。
AkとAkとは、同じであっても異なっていてもよく、異なっていることが好ましい。
Akは連結基または単結合によりAkと結合していてもよい。このときの連結基としては>O、>Sまたは>Si(-R)2などがあげられる。>Si(-R)2のRは、水素、炭素数6~12のアリール、炭素数1~6のアルキルまたは炭素数3~14のシクロアルキルである。RAkが連結基または単結合によりAkと結合した構造の例としては以下があげられる。
Figure 2024089626000016
上記各式中、*は結合位置である。
<同一の原子に結合する2つの基が互いに結合する場合>
本明細書において同一の原子に結合する2つの基について互いに結合して環を形成していてもよいという場合、単結合または連結基(これらをまとめて結合基ともいう)により結合していればよく、連結基としては、-CH2-CH2-、-CHR-CHR-、-CR2-CR2-、-CH=CH-、-CR=CR-、-C≡C-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)2-、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-Se(=O)-、-Se(=O)2-、-P(=O)-、-B(-R)-、-Si(-R)2-、または-Se-があげられ、例えば以下の構造があげられる。なお、前記-CHR-CHR-のR、-CR2-CR2-のR、-CR=CR-のR、-N(-R)-のR、-C(-R)2-のR、-B(-R)-のR、および-Si(-R)2-のRは、それぞれ独立して、水素、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいアリール、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいヘテロアリール、シクロアルキルで置換されていてもよいアルキル、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいアルケニル、アルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいアルキニル、またはアルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよいシクロアルキルである。また、隣接する2つのR同士が結合して環を形成し、シクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンを形成していてもよい。
Figure 2024089626000017
結合基としては、単結合、連結基としての-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)2-、-Si(-R)2-、および-Se-が好ましく、単結合、連結基としての-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、-S-、および-C(-R)2-がより好ましく、単結合、連結基としての-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、および-S-がさらに好ましく、単結合が最も好ましい。
結合基により2つのRが結合する位置は、結合可能な位置であれば特に限定されないが、最も隣接する位置で結合することが好ましく、例えば2つの基がフェニルである場合、フェニルにおける「C」や「Si」の結合位置(1位)を基準としてオルト(2位)の位置同士で結合することが好ましい(上記構造式を参照)。
<立体異性体等>
本発明の多環芳香族化合物は置換基の種類等によって、エナンチオマーまたはジアステレオマーが存在し得るが、記載されている構造式にかかわらず、いずれの純粋な形態の任意の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などは、いずれも本発明の範囲に包含されるものとする。
1.多環芳香族化合物
<化合物の全体構造の説明>
芳香環をホウ素、窒素、酸素、硫黄などのヘテロ元素で連結した多環芳香族化合物が、大きなHOMO-LUMOギャップ(薄膜におけるバンドギャップEg)を有することがすでに見出されている。これは、ヘテロ元素を含む6員環は芳香族性が低く、共役系の拡張に伴うHOMO-LUMOギャップの減少が抑制されたことが原因である。また、ヘテロ元素の種類および連結方法に応じてHOMO-LUMOギャップを任意に変更できることを見出した。これは、ヘテロ元素の空軌道またはローンペアの空間的広がりおよびエネルギーに応じてHOMO、LUMOのエネルギーを任意に動かせることが原因となっていると考えられる。
これらの多環芳香族化合物は、ヘテロ元素の電子的な摂動により励起状態のSOMO1およびSOMO2が各原子上に局在化することで、蛍光発光ピークの半値幅が狭く、有機EL素子のドーパントとして利用した場合に高い色純度の発光が得られる。同様の理由でΔE(S1T1)が小さくなって熱活性型遅延蛍光を示し、有機EL素子のエミッティングドーパントとして利用した場合に高い効率を得ることができる。
さらには、置換基の導入により、HOMOとLUMOのエネルギーを任意に動かすことができるため、イオン化ポテンシャルや電子親和力を周辺材料に応じて最適化することが可能である。
本発明の多環芳香族化合物は、上記の芳香環をホウ素、窒素、酸素、硫黄などのヘテロ元素で連結した多環芳香族化合物に該当し、式(1)、式(2)、または式(3)で表される構造を有する。
Figure 2024089626000018
式(1)、式(2)、および式(3)中、
A環、B環、C環、D環、E環、F環、およびG環はそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環であり、ZCはそれぞれ独立して=C(-RC)-または=N-であり、RCはそれぞれ独立して水素または置換基であり、ただし、式(1)においては、A環、B環、およびC環からなる群より選択される少なくとも1つは式(X)で表される置換基を前記アリール環または前記ヘテロアリール環への置換基として含み、式(2)においては、A環、B環、D環、およびE環からなる群より選択される少なくとも1つが式(X)で表される置換基を前記アリール環または前記ヘテロアリール環への置換基として含むか、または、少なくとも1つのZCが、RCが式(X)で表される置換基である=C(-RC)-であり、式(3)においては、A環、B環、D環、E環、F環、およびG環からなる群より選択される少なくとも1つが式(X)で表される置換基を前記アリール環または前記ヘテロアリール環への置換基として含むか、または、少なくとも1つのZCが、RCが式(X)で表される置換基である=C(-RC)-である。各構造中の記号の詳細は後述する。
本発明においては、多環芳香族化合物の所定の位置に式(X)で表される置換基を有することにより、この化合物を利用した有機EL素子がさらに高効率・長寿命になることが見出された。式(X)で表される構造の側鎖であるRXで主骨格の少なくとも一方の面を覆うことで、隣の分子との相互作用が抑えられるためと考えられる。特にTAF素子やPSF素子ではエミッティングドーパントがDexter型エネルギー移動によって最低励起三重項状態(T1状態)になることが効率低下・短寿命化の要因になっているが、Dexter型エネルギー移動は分子が接触していないと起こらないため、側鎖で主骨格を覆うことによってT1状態になることを回避できたためと考えられる。
ただし、本発明は特にこれらの原理に限定されるわけではない。
<化合物中の環構造の説明>
式(1)、式(2)、および式(3)において円内の「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」、「G」は各円で示される環構造を示す符号である。式(1)で表される構造は、A環、B環、およびC環である少なくとも3つの芳香族環をホウ素、および酸素、硫黄、または窒素などのヘテロ元素で連結してさらに環構造が形成された構造を有する。形成されている環構造は少なくとも5つの環から構成される縮合環構造である。式(2)で表される構造は、A環、B環、c環、D環、およびE環である少なくとも5つの芳香族環をホウ素、および酸素、硫黄、または窒素などのヘテロ元素で連結してさらに環構造が形成された構造を有する。形成されている環構造は少なくとも9つの環から構成される縮合環構造である。式(3)で表される構造は、A環、B環、c環、D環、E環、F環、およびG環である少なくとも5つの芳香族環をホウ素、および酸素、硫黄、または窒素などのヘテロ元素で連結してさらに環構造が形成された構造を有する。形成されている環構造は少なくとも13の環から構成される縮合環構造である。
A環、B環、C環、D環、E環、F環、およびG環は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環である。
式(1)中のA環、式(2)中のA環およびD環、ならびに式(3)中のA環およびD環は、それぞれ、その構造中のアリール環またはヘテロアリール環の環上で連続する3つの原子(好ましくは炭素)に結合手を有する3価の基を形成している。この3つの結合手で式(1)および式(2)では、A環はX1、X2、およびB(ホウ素)に、D環はX3、X4、およびB(ホウ素)に、結合する。式(3)では、A環はX1、窒素、およびB(ホウ素)に、D環はX3、窒素、およびB(ホウ素)に、結合する。X1および/またはX2が後述するようにさらに別の部位でA環に結合し、A環は4価または5価の基になっていてもよい。X3および/またはX4が後述するようにさらに別の部位でD環に結合し、D環は4価または5価の基になっていてもよい。A環およびD環のそれぞれで上記の3つの結合手を有する原子を環構成原子とする環は5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。この環はさらに他の環と縮合していてもよい。6員環の例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環などがあげられる。6員環がさらに他の環と縮合している例としては、ナフタレン環、キノリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環などがあげられる。5員環の例としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、チアゾール環などがあげられる。5員環がさらに他の環と縮合している例としては、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環などがあげられる。
A環およびD環中のアリール環またはヘテロアリール環としてはいずれもベンゼン環が好ましい。
式(1)中のB環およびC環、式(2)中のB環およびE環、ならびに式(3)中のB環、E環、F環、およびG環とはいずれも、その構造中のアリール環またはヘテロアリール環の環上で互いに隣接する2つの原子(好ましくは炭素)に結合手を有する2価の基を形成している。B環は上記の2つの結合手でX1およびB(ホウ素)に結合し、C環は上記の2つの結合手でX2およびB(ホウ素)に結合し、E環は上記の2つの結合手でX3およびB(ホウ素)に結合し、F環およびG環は上記の2つの結合手で窒素およびB(ホウ素)に結合している。X1が後述するようにさらに別の部位でB環に結合してB環が3価の基になっていてもよく、X2が後述するようにさらに別の部位でC環に結合し、C環が3価の基になっていてもよく、X3が後述するようにさらに別の部位でE環に結合し、E環が3価の基になっていてもよい。B環、C環、E環、F環、およびG環のそれぞれにおいて上記の2つの結合手を有する原子を環構成原子とする環は5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。この環はさらに他の環と縮合していてもよい。6員環の例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環などがあげられる。6員環がさらに他の環と縮合している例としては、ナフタレン環、キノリン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、ベンゾセレノフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ジベンゾセレノフェン環などがあげられる。5員環の例としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、チアゾール環、セレノフェン環などがあげられる。5員環がさらに他の環と縮合している例としては、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、インデン環、ベンゾセレノフェン環などがあげられる。
B環、C環、E環、F環、およびG環中のアリール環またはヘテロアリール環としては、それぞれ独立して、ベンゼン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、またはベンゾセレノフェン環が好ましく、ベンゼン環、ベンゾフラン環、またはベンゾチオフェン環がより好ましく、ベンゼン環またはベンゾチオフェン環がさらに好ましい。
式(1)で表される化合物のA環、B環、およびC環、式(2)で表される化合物のA環、B環、D環、およびE環、ならびに式(3)で表される化合物のA環、B環、D環、E環、F環、およびG環における置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環において、「置換もしくは無置換の(置換または無置換の)」というときの置換基としては、式(X)で表される置換基のほか、置換基群Zαより選択される少なくとも1つのその他の置換基があげられる。また、置換基はジフェニルホスフィノ等の置換もしくは無置換のジアリールホスフィノであってもよい。置換基が複数存在するときは、複数の置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。置換基としては、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、または置換もしくは無置換のジアリールアミノが好ましく、t-ブチル、ジフェニルアミノ、または置換もしくは無置換のカルバゾリルがより好ましい。そのほか好ましい置換基としては、後述の<好ましい置換基>における記載を参照することができる。
式(2)で表される化合物のc環におけるZCはそれぞれ独立して=C(-RC)-または=N-であり、RCは、それぞれ独立して、水素または置換基である。置換基としては、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリール、または置換もしくは無置換のヘテロアリールが好ましい。c環におけるZCはいずれも=C(-RC)-であることが好ましい。いずれも=C(-RC)-であるとき、c環におけるX2、X3のオルト位にあるRCが式(X)で表される置換基、アルキル、または水素であり、他方のRCが水素であることがより好ましい。
式(3)で表される化合物のc環におけるZCはそれぞれ独立して=C(-RC)-または=N-であり、RCは、それぞれ独立して、水素または置換基である。置換基としては、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリール、または置換もしくは無置換のヘテロアリールが好ましい。式(3)で表される化合物のc環におけるRCは、水素であることが好ましい。
<式(X)で表される置換基の説明>
式(1)においては、A環、B環、およびC環からなる群より選択される少なくとも1つは式(X)で表される置換基をアリール環またはヘテロアリール環への置換基として含む。式(2)においては、A環、B環、D環、およびE環からなる群より選択される少なくとも1つが式(X)で表される置換基をアリール環またはヘテロアリール環への置換基として含むか、または、少なくとも1つのZCが、RCが式(X)で表される置換基である=C(-RC)-である。式(3)においては、A環、B環、D環、E環、F環、およびG環からなる群より選択される少なくとも1つが式(X)で表される置換基を前記アリール環または前記ヘテロアリール環への置換基として含むか、または、少なくとも1つのZCが、RCが式(X)で表される置換基である=C(-RC)-である。
Figure 2024089626000019
式(X)中、H環およびI環はそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環である。
式(X)中、H環およびI環は、それぞれ独立してその構造中のアリール環またはヘテロアリール環の環上で連続する3つの原子(好ましくは炭素)に結合手を有する3価の基を形成している。H環は、この3つの結合手でRX、N(窒素)およびI環に結合し、I環は、この3つの結合手でRX、N(窒素)およびH環に結合する。H環およびI環のそれぞれで上記の3つの結合手を有する原子を環構成原子とする環は5員環または6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。この環はさらに他の環と縮合していてもよい。6員環の例としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環などがあげられる。6員環がさらに他の環と縮合している例としては、ナフタレン環、キノリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環などがあげられる。5員環の例としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、チアゾール環などがあげられる。5員環がさらに他の環と縮合している例としては、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環などがあげられる。
H環およびI環中のアリール環またはヘテロアリール環としてはいずれも6員環であることが好ましく、ベンゼン環またはピリジン環がより好ましい。H環およびI環中のアリール環またはヘテロアリール環は同一であっても異なっていてもよいが同一であることが好ましい。
H環およびI環における置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環において、「置換もしくは無置換の(置換または無置換の)」というときの置換基(RXを除く)としては、置換基群Zαより選択される少なくとも1つの置換基があげられる。また、置換基はジフェニルホスフィノ等の置換もしくは無置換のジアリールホスフィノであってもよい。置換基が複数存在するときは、複数の置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。H環およびI環における置換基(RXを除く)としては、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のシクロアルキル、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、シアノ、またはハロゲンが好ましく、アルキル、シクロアルキル、フェニル(アルキル、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの置換基に置換されていてもよい)、またはシアノがより好ましく、アルキル、シクロアルキル、またはフェニルがさらに好ましい。
式(X)は式(X-1)で表されることが好ましい。
Figure 2024089626000020
式(X-1)中、ZXはそれぞれ独立して=C(-RZX)-または=N-であり、RZXは水素または置換基である。ZXは合成の観点からは全て=C(-RZX)-であることが好ましく、特性の観点からは1つ以上の-N=を有することが好ましい。このとき-N=の数は1個または2個が好ましい。例えば、h環において=N-であるZXは0~2個であることが好ましく、0~1個であることがより好ましい。i環において=N-であるZXは0~2個であることが好ましく、0~1個であることがより好ましい。h環においてNのパラ位になるRZおよびi環のパラ位になるRZXがそれぞれ水素または置換基であり、その他のRZXがいずれも水素であることが好ましい。RZXである置換基としては、アルキル、フェニル(アルキル、シクロアルキル、シアノ、およびハロゲンからなる群より選択される少なくとも1つの置換基に置換されていてもよい)、シアノ、またはハロゲンが好ましく、アルキル、シクロアルキル、またはフェニルがより好ましい。
式(X)のLXを除く部分構造の例としては以下のいずれかの式で表される部分構造があげられる。以下、各式中のRXはそれぞれ独立して置換基であり、例えば、RXの具体例として後述するいずれかであればよい。
Figure 2024089626000021
式(X)中、RXはそれぞれ独立して置換基である。RXとしてはより大きい置換基が好ましく、例えば、水素以外の原子を少なくとも6原子含む置換基であることが好ましい。具体例としては、置換基群Zαより選択される置換基のうち、水素以外の原子を少なくとも6原子含む置換基などがあげられる。具体的には置換もしくは無置換の炭素数6以上のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール(炭素およびヘテロ元素の合計数が6以上)、置換もしくは無置換の炭素数6以上のアルキル、または置換もしくは無置換の炭素数6以上のシクロアルキルがより好ましく、置換もしくは無置換の炭素数8以上のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール(炭素およびヘテロ元素の合計数が8以上)、置換もしくは無置換の炭素数8以上のアルキル、または置換もしくは無置換の炭素数8以上のシクロアルキルがさらに好ましい。
Xの具体例としては以下のいずれかで表される基があげられる。
Figure 2024089626000022
Figure 2024089626000023
Figure 2024089626000024
式(X)中、2つのRXは同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
式(X)中、LXは単結合または2価の連結基である。LXとしては、単結合または置換もしくは無置換のフェニレンが好ましく、単結合または置換もしくは無置換の1,4-フェニレンがより好ましく、単結合が最も好ましい。
式(X)で表される基の好ましい例を以下に示す。
Figure 2024089626000025
式(1)においては、A環、B環、およびC環からなる群より選択される少なくとも1つはアリール環またはヘテロアリール環への置換基として式(X)で表される置換基を含む。式(1)において、式(X)で表される置換基は例えば1~3個含まれていればよい。A環、B環、およびC環の各環においては式(X)で表される置換基は1つのみであることが好ましい。したがって、式(1)に式(X)で表される置換基が3つ含まれるときは、A環、B環、およびC環の各環が式(X)で表される置換基を1つ含むことが好ましい。式(1)に式(X)で表される置換基が2つ含まれるときは、A環およびB環、A環およびC環、またはB環およびC環の各環が式(X)で表される置換基を1つ含んでいればよく、B環およびC環の各環が式(X)で表される置換基を1つ含んでいることが好ましい。式(1)に式(X)で表される置換基が1つ含まれるときは、A環、B環、C環のいずれが式(X)で表される置換基を1つ含んでいてもよい。
式(2)においては、A環、B環、D環、およびE環からなる群より選択される少なくとも1つがアリール環またはヘテロアリール環への置換基として式(X)で表される置換基を含んでいるか、または、少なくとも1つのZCがRCが式(X)で表される置換基である=C(-RC)-である。式(2)において、式(X)で表される置換基は例えば1~3個含まれていればよく、1~2個含まれていることが好ましい。A環、B環、c環、D環、およびE環の各環は式(X)で表される置換基を0~1つ含むことが好ましい。式(2)に式(X)で表される置換基が2つ含まれるときは、A環およびD環の各環が式(X)で表される置換基を1つ含んでいることが好ましい。式(2)に式(X)で表される置換基が1つ含まれるときは、A環、D環のいずれが式(X)で表される置換基を1つ含んでいるか、またはc環におけるX2、X3のオルト位にあるRCが式(X)で表される置換基であることが好ましい。
式(3)においては、A環、B環、C環、D環、E環、F環、およびG環からなる群より選択される少なくとも1つがアリール環またはヘテロアリール環への置換基として式(X)で表される置換基を含んでいるか、または、少なくとも1つのZCがRCが式(X)で表される置換基である=C(-RC)-である。式(3)において、式(X)で表される置換基は例えば1~3個含まれていればよく、2個含まれていることが好ましい。A環、B環、c環、D環、E環、F環、およびG環の各環は式(X)で表される置換基を0~1つ含むことが好ましい。式(3)に式(X)で表される置換基が2つ含まれるときは、A環およびD環の各環、B環およびD環の各環、またはF環およびG環の各環が式(X)で表される置換基を1つ含んでいることが好ましい。
式(1)、式(2)、または式(3)において式(X)で表される構造が2つ以上あるとき、それらは互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
<X1、X2、X3、およびX4の説明>
1、X2、X3、およびX4は、それぞれ独立して>N-RNX、>O、>C(-RCX2、>Si(-RIX2、>S、または>Seであり、RNXは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、RCXおよびRIXはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、2つのRCXは互いに結合して環を形成していてもよく、2つのRIXは互いに結合して環を形成していてもよく、RNX、RCXおよびRIXは連結基または単結合によりA環~E環の少なくとも1つと結合していてもよい。
NXは置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールが好ましく、後述の式(1NR)で表される基または置換もしくは無置換のフェニルがより好ましく、式(1NR)で表される基または無置換のフェニルがさらに好ましい。RCXは置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、または置換もしくは無置換のアルキルが好ましく、置換もしくは無置換のフェニルまたはメチルがより好ましい。RIXは置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、または置換もしくは無置換のアルキルが好ましく、置換もしくは無置換のフェニルまたはメチルがより好ましい。
有機EL素子の発光層におけるエミッティングドーパントとして用いられる式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物においては、X1、X2、X3、およびX4は、それぞれ独立して、>N-RNX、>S、>O、または>Seであることが好ましく、>N-RNX、>O、または>Sであることがより好ましく、>N-RNXまたは>Sであることがさらに好ましく、>N-RNXであることが特に好ましい。
>N-RNXにおけるRNXとしては、以下の式(1NR)で表される基であることも好ましい。
Figure 2024089626000026
式(1NR)中、J環は、置換もしくは無置換のアリール環、または置換もしくは無置換のヘテロアリール環であり、RJは置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよい炭素数4以上のアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、*はN(窒素)への結合位置を示す。
本発明の多環芳香族化合物は、RNXとして式(1NR)で表される基を有することにより、この基を有していない類似化合物と比較して、昇華温度が低くなる。昇華温度の低下は、高い純度が要求される有機EL素子などの有機デバイス用の材料の精製法としてほぼ不可欠な昇華精製において、比較的低温で精製することができるため材料の熱分解などが避けられることを意味する。またこれは、有機EL素子などの有機デバイスを作製するのに有力な手段である真空蒸着プロセスについても同様であり、比較的低温でプロセスを実施できるため、材料の熱分解を避けることができ、結果として高性能な有機デバイスを得ることができることを意味する。特定の理論に拘泥されるものではないが、昇華温度の低下は、RJにかさ高い基を有する式(1NR)で表される基を有することで、分子全体がかさ高くなるためであると考えられる。
また、RNXとして式(1NR)で表される基を有することにより、本発明の多環芳香族化合物は、式(1NR)で表される基を有していない化合物と比較して発光が短波長化し、発光効率が高くなり、素子寿命が長くなる。特定の理論に拘泥されるものではないが、これは、式(1NR)で表される基により、分子がかさ高くなり、発光に関与する骨格が立体的に守られることで、周辺の分子との相互作用が減り分解反応が起こりにくくなるためと考えられる。
式(1NR)において、RJは、昇華温度、発光効率の観点からは、アルキルを置換基として有しているフェニルであることが好ましい。RJは素子寿命の観点からは無置換のフェニルであることが好ましい。また合成の観点からは、RJは無置換のフェニルであることが好ましい。
式(1NR)において円内の「J」は円で示される環構造を示す符号であり、J環は、置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環である。J環は、その構造中のアリール環またはヘテロアリール環の環上で互いに隣接する2つの元素(好ましくは炭素)に結合手を有する2価の基を形成し、2つの結合手でN(窒素)およびRJに結合している。
J環における置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環において、「置換もしくは無置換の(置換または無置換の)」というときの置換基としては、置換基群Zαより選択される少なくとも1つの置換基が好ましい。
J環は、置換または無置換のベンゼン環、置換または無置換のベンゾチオフェン環、置換または無置換のベンゾフラン環、または置換または無置換のインドール環が好ましく、置換または無置換のベンゼン環がより好ましく、無置換のベンゼン環がさらに好ましい。
式(1NR)で表される基の好ましい一例としては、式(1NR-a)で表される基をあげることができる。
Figure 2024089626000027
式(1NR-a)中、Zはそれぞれ独立して-CRj=または-N=であり、RjおよびRkは、それぞれ独立して、水素、置換基群Zαから選択されるいずれかの置換基であり、Rjのうちの隣接する基同士が結合してj環と共に、およびRkのうちの隣接する基同士が結合してk環と共に、それぞれアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環は置換基群Zαより選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい。Rjの隣接する基同士が結合してj環と共に、または、Rkのうちの隣接する基同士が結合してk環と共に形成する環の例としてはナフタレン環、カルバゾール環、インドール環、ジベンゾフラン環、およびジベンゾチオフェン環などがあげられる。
kは、それぞれ独立して水素、無置換のアルキル、または無置換のシクロアルキルであることが好ましく、水素または無置換のアルキルであることがより好ましい。
kは、いずれも水素であること、または少なくとも2つのRkが無置換のアルキルまたは無置換のシクロアルキルであり、その他のRkが水素、無置換のアルキル、または無置換のシクロアルキルであることが好ましい。
Zはいずれも-CRj=であることが好ましい。Rjは、それぞれ独立して水素、無置換のアルキル、または無置換のシクロアルキルであることが好ましく、水素または無置換のアルキルであることがより好ましい。
式(1NR-a)で表される基は式(2NR)で表される基であることが好ましい。
Figure 2024089626000028
式(2NR)中、RjおよびRkは、式(1NR-a)中のRjおよびRkとそれぞれ同義である。
式(2NR)において、RjおよびRkは、それぞれ独立して水素または無置換のアルキルであることが好ましい。
式(2NR)の好ましい一態様において、RjおよびRkはいずれも水素であること、すなわち、式(2NR)で表される基において、結合手を2つ有する窒素に置換する基は2-ビフェニリルであることが好ましい。
また、式(2NR)の別の好ましい態様において、少なくとも2つのRkが無置換のアルキルまたは無置換のシクロアルキルであり、その他のRkが水素であることが好ましい。
式(1NR)で表される基の他の好ましい例としては、式(1NR-b)で表される基をあげることができる。
Figure 2024089626000029
式(1NR-b)中、RJは式(1NR)中のRJと同義であり、好ましい範囲も同一である。RjjはRJと同義であり、好ましい範囲も同一である。Zは式(1NR-a)中のZと同義であり、好ましい範囲も同一である。式(1NR-b)で表される基において、Zはいずれも-CH=であり、RJ、Rjjはいずれも無置換のフェニルであることが好ましい。
式(1NR)で表される基のさらに別の好ましい例としては、式(1NR-c)で表される基をあげることができる。
Figure 2024089626000030
式(1NR-c)中、RJは式(1NR)中のRJと同義であり、好ましい範囲も同一である。Zは式(1NR-a)中のZと同義であり、好ましい範囲も同一である。Xは>N-R、>O、または>Sであり、>N-RのRは水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルである。>N-RのRは置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであることが好ましく、無置換のアリール(特に無置換のフェニル)であることがより好ましい。
式(1NR-c)において、Zはいずれも-CRj=であることが好ましく、2つのRjは互いに結合してj環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していることが好ましい。2つのRjが互いに結合してj環と共に形成する環は、置換または無置換のベンゾフラン環、置換または無置換のベンゾチオフェン環、または置換または無置換のインドール環が好ましく、無置換のベンゾフラン環、無置換のベンゾチオフェン環、または無置換のインドール環がより好ましい。
本発明の多環芳香族化合物が、RNXが式(1NR)で表される基である>N-RNXを有するときのその数は特に限定されない。式(1)においては1~2であり、式(2)においては1~4であり、式(3)においては1~2である。式(1NR)で表される基が複数存在するとき、それらは互いに同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
<X1、X2、X3、およびX4と環との結合による環構造の変化の説明>
1、X2、X3、およびX4中のRNX、RCXおよびRIXはそれぞれ自身を含むX1、X2、X3、またはX4が結合する1つまたは2つの環と単結合または連結基により結合していてもよい。具体的には、式(1)において、X1中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、A環またはB環の少なくとも一方と結合していてもよく、X2中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、A環またはC環の少なくとも一方と結合していてもよい。式(2)において、X1中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、A環またはB環の少なくとも一方と結合していてもよく、X2中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、A環またはc環の少なくとも一方と結合していてもよく、X3中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、D環またはE環の少なくとも一方と結合していてもよく、X4中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、D環またはc環の少なくとも一方と結合していてもよい。式(3)において、X1中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、A環またはB環の少なくとも一方と結合していてもよく、X3中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、D環またはE環の少なくとも一方と結合していてもよい。
NX、RCXおよびRIXがそれぞれ環と結合する場合の連結基としては、-CH2-CH2-、-CHR-CHR-、-CR2-CR2-、-CH=CH-、-CR=CR-、-C≡C-、-N(-R)-、-O-、-S-、-C(-R)2-、-C(=O)-、-C(=S)-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-Se(=O)-、-Se(=O)2-、-P(=O)-、-B(-R)-、-Si(-R)2-、または-Se-などがあげられる。これらのうち、-CH=CH-、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、-S-、および-C(-R)2-が好ましく、-CH=CH-、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、および-S-がより好ましく、-CR=CR-、-N(-R)-、-O-、および-S-がさらに好ましい。前記「-CHR-CHR-」のR、「-CR2-CR2-」のR、「-CR=CR-」のR、「-N(-R)-」のR、「-C(-R)2-」のR、「-B(-R)-」のR、および「-Si(-R)2-」のRは、それぞれ独立して、水素、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよいアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよいヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよいアルキル、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよいアルケニル、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよいアルキニル、またはアルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよいシクロアルキルである。また、同一の原子に結合する2つのR同士が結合して環を形成していてもよい。さらに、隣接する2つのR同士が結合して、シクロアルキレン環、アリーレン環、およびヘテロアリーレン環を形成していてもよい。これらの環もまた、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよい。
>N-RNX中のRNXがA環、B環、C環、c環、D環、またはE環中のアリール環としてのベンゼン環と結合して形成される縮合環としては、例えば、カルバゾール環(フェニルであるRNXが単結合で結合)、フェノキサジン環(フェニルであるRNXが-O-で結合)、フェノチアジン環(フェニルであるRNXが-S-で結合)、またはアクリドン環(フェニルであるRNXが-C(=O)-で結合)があげられる。
また、上記のような連結により、以下の部分構造(A10)が形成されていてもよい。
Figure 2024089626000031
式(A10)中、RA1~RA4はそれぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、RA1~RA4の任意の2~4個は連結基または単結合により互いに結合していてもよく、2つの*の位置でX1、X2、X3、またはX4が結合する2つの環の一方の環に、**の位置で他方の環に結合している。すなわち、式(A10)中のNはX1、X2、X3、またはX4が>N-RXであるというときの>N-RXのNである。2つの*の位置で結合する環上の原子は互いに隣接する原子(炭素原子が好ましい)であればよい。式(A10)で表される部分構造は結合解離エネルギー(BDE)の弱いN-C結合を含むが、環を形成するもう1つの結合があることでN-C結合の切断時にも逆反応(再結合反応)が促進されるため、より安定な構造になる。したがって、このような構造を有する多環芳香族化合物を用いて製造される有機EL素子では素子寿命が長くなることが期待される。多環芳香族化合物に式(A10)で表される構造が含まれるとき、その数は1つまたは2つ(好ましくは1つ)であればよい。
式(A10)中、RA1~RA4の任意の2~4個は連結基により互いに連結していてもよい。
A1~RA4は、任意の2個(RA1およびRA4、RA1およびRA4ならびにRA2およびRA3、RA1およびRA2、RA3およびRA4、RA1およびRA2ならびにRA3およびRA4)が連結基または単結合により互いに結合していることが好ましく、RA1およびRA4が連結基または単結合により互いに結合していることがより好ましい。互いに結合して形成されている2価の基としては、アルキレンがあげられる。当該アルキレンにおける少なくとも1つの水素はアルキルもしくはシクロアルキルで置換されていてもよく、当該アルキレンにおける少なくとも1つ(好ましくは1つ)の-CH2-は-O-および-S-で置換されていてもよい。互いに結合して形成されている2価の基としては、炭素数2~5の直鎖アルキレンが好ましく、炭素数3または4の直鎖アルキレンがより好ましく、炭素数4の直鎖アルキレン(-(CH24-)がさらに好ましい。炭素数4の直鎖アルキレン(-(CH24-)は無置換であることが特に好ましい。
連結基による連結に関与していない残りのRA1~RA4は、それぞれ独立して、水素または置換されていてもよいアルキルであることが好ましく、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキルであることがより好ましく、無置換の炭素数1~6のアルキルであることがさらに好ましく、いずれもメチルであることが最も好ましい。
すなわち、式(A10)で表される部分構造としては、以下式(A11)で表される構造が好ましい。
Figure 2024089626000032
式(A11)中、Meはメチルであり、2つの*の位置でXが結合する2つの環の一方の環に、**の位置で他方の環に結合している。
<式(1-a)、式(1-b)>
式(1)で表される構造の例としては、式(1-a)または式(1-b)で表される多環芳香族化合物があげられる。
Figure 2024089626000033
式(1-a)および式(1-b)中、ZCはそれぞれ独立して、-C(-RC)=または-N=であり、RCは、それぞれ独立して、水素または置換基である。ただし、式(1-a)および式(1-b)の各式において、ZCの少なくとも1つはRCが式(X)で表される置換基である-C(-RC)=である。式(1-a)および式(1-b)中、Lは>N-RNL、>O、>C(-RCL2、>S、または>Seであり、RNLは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、RCLは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、2つのRCLは互いに結合して環を形成していてもよい。式(1-a)および式(1-b)中、X1およびX2は、それぞれ式(1)におけるX1、X2と同義である。式(1-a)および式(1-b)それぞれにおけるアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンは少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられていてもよい。式(1-a)および式(1-b)それぞれにおいて、少なくとも1つの水素は重水素で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの窒素は窒素-15(15N)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの硫黄は硫黄-33(33S)、硫黄-34(34S)または硫黄-36(36S)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの酸素は酸素-17(17O)または酸素-18(18O)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの炭素は炭素-13(13C)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つのホウ素はホウ素-11(11B)で置き換えられていてもよい。
式(1-a)および式(1-b)において、ZCはそれぞれ独立して、-C(-RC)=であることが好ましい。
式(1-a)および式(1-b)におけるRCである、式(X)で表される置換基以外の置換基としては、その他の置換基群Zαより選択される少なくとも1つの置換基があげられ、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、または置換もしくは無置換のジアリールアミノが好ましく、t-ブチル、置換もしくは無置換のジフェニルアミノ、または置換もしくは無置換のN-カルバゾリルがより好ましく、置換もしくは無置換のN-カルバゾリルがさらに好ましい。置換もしくは無置換のN-カルバゾリルにおける置換基としては置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、および置換もしくは無置換のシクロアルキルからなる群より選択される少なくとも1つの置換基があげられる。なお、ここでの「置換もしくは無置換のN-カルバゾリル」は式(X)で表される置換基以外のものを意味する。すなわち、1位および8位に同時に置換基を有するものは除く。そのほか好ましい置換基としては、後述の<好ましい置換基>における記載を参照することができる。
式(1-a)の各環が式(X)で表される置換基を1つ有する場合のそのRCの位置は、a環ではホウ素のパラ位、b環およびc環では、ホウ素またはX1もしくはX2のパラ位が好ましい。式(X)で表される置換基を1つ有する環におけるその他のCは水素であることが好ましい。
式(1-a)の各環が式(X)で表される置換基を有していない場合、その他の置換基であるRCの位置は、a環ではホウ素のパラ位、b環およびc環では、ホウ素またはX1もしくはX2のパラ位が好ましい。上記のいずれの場合も、当該環のその他のRCは水素であることが好ましい。
a環ではホウ素のパラ位、b環およびc環では、ホウ素またはX1もしくはX2のパラ位に、置換基であるRCを有するとともにその他のRCは水素であることがより好ましい。
式(1-a)においては、a環のホウ素のパラ位が式(X)で表される置換基であり、かつb環およびc環それぞれにおけるホウ素またはX1もしくはX2のパラ位、特にホウ素またはX1もしくはX2のパラ位が置換もしくは無置換のN-カルバゾリル(式(X)で表される置換基以外)であることが特に好ましい。
式(1-b)の各環が式(X)で表される置換基を1つ有する場合のそのRCの位置は、a環ではホウ素のパラ位、b環ではホウ素またはX1もしくはX2のパラ位、c2環ではLのパラ位が好ましい。式(X)で表される置換基を1つ有する環におけるその他のRCは水素であることが好ましい。
式(1-b)の各環が式(X)で表される置換基を有していない場合、その他の置換基であるRCの位置は、a環ではホウ素のパラ位、b環ではホウ素またはX1もしくはX2のパラ位、c2環ではLのパラ位が好ましい。上記のいずれの場合も、各環のその他のRCは水素であることが好ましい。a環ではホウ素のパラ位、b環ではホウ素またはX1もしくはX2のパラ位、c2環ではLのパラ位に、置換基であるRCを有するとともにその他のRCは水素であることがより好ましい。
式(1-a)および式(1-b)において、b環、c環およびc2環のRCである、式(X)で表される置換基以外の置換基としては、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、または置換もしくは無置換のジアリールアミノが好ましく、t-ブチル、置換もしくは無置換のジフェニルアミノ、または置換もしくは無置換のN-カルバゾリルがより好ましく、置換もしくは無置換のN-カルバゾリルがさらに好ましい。a環のRCである、式(X)で表される置換基以外の置換基としては、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、または置換もしくは無置換のジアリールアミノが好ましく、t-ブチル、ジフェニルアミノ、またはN-カルバゾリルがより好ましく、無置換のアルキルがさらに好ましい。
式(1-a)および式(1-b)におけるb環およびc環またはc2環はそれぞれ少なくとも1つの置換基を有するか、または後述のようにシクロアルカン縮合していることが好ましい。式(X)で表される部分構造を有するとともに、b環およびc2環がそれぞれ上記のような構造であることによって、隣の分子との相互作用がさらに抑えられるからである。
式(1-a)および式(1-b)において、X1およびX2の定義および好ましい範囲は式(1)におけるX1およびX2と同じである。なお、式(1-a)において、X1中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、a環またはb環の少なくとも一方と結合していてもよく、X2中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、a環またはc環の少なくとも一方と結合していてもよい。また、式(1-b)において、X1中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、a環またはb環の少なくとも一方と結合していてもよく、X2中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、a環またはc2環の少なくとも一方と結合していてもよい。
式(1-b)において、Lが>N-RNLであるときのRNLとしては、置換または無置換のアリールが好ましく、アルキルで置換されていてもよいフェニルがより好ましい。Lが>C(-RCL2であるときのRCLとしては、メチルまたはフェニルが好ましい。Lは>Oまたは>Sであることが好ましく、>Sであることがより好ましい。
<式(2-a)、式(2-b)>
式(2)で表される構造の例としては、式(2-a)または式(2-b)で表される多環芳香族化合物があげられる。
Figure 2024089626000034
式(2-a)および式(2-b)中、ZCはそれぞれ独立して、-C(-RC)=または-N=であり、Rcは、それぞれ独立して、水素または置換基である。ただし、ZCの少なくとも1つはRCが式(X)で表される置換基である-C(-RC)=である。Lは>N-RNL、>O、>C(-RCL2、>S、または>Seであり、RNLは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、RCLは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、2つのRCLは互いに結合して環を形成していてもよく、X1、X2、X3、およびX4は、それぞれ式(2)中のX1、X2、X3、およびX4と同義である。式(2-a)および式(2-b)それぞれにおけるアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンは少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられていてもよい。式(2-a)および式(2-b)それぞれにおいて、少なくとも1つの水素は重水素で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの窒素は窒素-15(15N)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの硫黄は硫黄-33(33S)、硫黄-34(34S)または硫黄-36(36S)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの酸素は酸素-17(17O)または酸素-18(18O)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの炭素は炭素-13(13C)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つのホウ素はホウ素-11(11B)で置き換えられていてもよい。
式(2-a)および式(2-b)中、RCである式(X)で表される置換基以外の置換基としては、その他の置換基群Zαより選択される少なくとも1つの置換基があげられる。置換基としては、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、または置換もしくは無置換のジアリールアミノが好ましく、フェニル、ジフェニルアミノ、またはカルバゾリルがより好ましい。そのほか好ましい置換基としては、後述の<好ましい置換基>における記載を参照することができる。
式(2-a)および式(2-b)において、式(X)で表される置換基であるRCの位置は、a環およびd環それぞれにおけるホウ素のパラ位のいずれかまたはc環におけるX2、X3のオルト位がより好ましい。このとき、式(X)で表される置換基であるRCが存在する環のその他のRCは水素であることがより好ましい。各式において、式(X)で表される置換基が2つであるときはa環およびd環それぞれにおけるホウ素のパラ位にあることが好ましい。
式(2-a)および式(2-b)において、式(X)で表される置換基以外の置換基であるRCの位置は、a環およびd環それぞれのホウ素のパラ位がより好ましい。このとき、その他のRCは水素であることがより好ましい。
a環においてホウ素のパラ位にある置換基およびd環においてホウ素のパラ位にある置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。異なっている場合の組合わせの例としては、式(X)で表される置換基とジフェニルアミノまたはカルバゾリルとの組合わせなどがあげられる。
式(2-a)および式(2-b)において、X1、X2、X3、およびX4の定義および好ましい範囲は式(2)におけるX1、X2、X3、およびX4と同じである。なお、式(2-a)において、X1中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、a環またはb環の少なくとも一方と結合していてもよく、X2中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、a環またはc環の少なくとも一方と結合していてもよく、X3中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、d環またはe環の少なくとも一方と結合していてもよく、X4中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、c環またはd環の少なくとも一方と結合していてもよい。また、式(2-b)において、X1中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、a環またはb環の少なくとも一方と結合していてもよく、X2中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、a環またはc環の少なくとも一方と結合していてもよく、X3中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、d環またはe1環(L)の少なくとも一方と結合していてもよく、X4中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、c環またはd環の少なくとも一方と結合していてもよい。
式(2-b)において、Lが>N-RNLであるときのRNLとしては、置換または無置換のアリールが好ましく、アルキルで置換されていてもよいフェニルがより好ましい。Lが>C(-RCL2であるときのRCLとしては、メチルまたはフェニルが好ましい。Lは>Oまたは>Sであることが好ましく、>Sであることがより好ましい。
<式(3-a)>
式(3)で表される構造の例としては、式(3-a)で表される多環芳香族化合物があげられる。
Figure 2024089626000035
式(3-a)中、ZCはそれぞれ独立して、-C(-RC)=または-N=であり、Rcは、それぞれ独立して、水素または置換基である。ただし、ZCの少なくとも1つはRCが式(X)で表される置換基である-C(-RC)=である。X1およびX3は、それぞれ式(3)中のX1およびX3と同義である。式(3-a)におけるアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンは少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられていてもよい。式(3-a)において、少なくとも1つの水素は重水素で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの窒素は窒素-15(15N)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの硫黄は硫黄-33(33S)、硫黄-34(34S)または硫黄-36(36S)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの酸素は酸素-17(17O)または酸素-18(18O)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの炭素は炭素-13(13C)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つのホウ素はホウ素-11(11B)で置き換えられていてもよい。
式(3-a)中、RCである式(X)で表される置換基以外の置換基としては、その他の置換基群Zαより選択される少なくとも1つの置換基があげられる。置換基としては、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、または置換もしくは無置換のジアリールアミノが好ましく、t-ブチル、フェニル、ジフェニルアミノ、またはカルバゾリルがより好ましい。そのほか好ましい置換基としては、後述の<好ましい置換基>における記載を参照することができる。
式(3-a)において、式(X)で表される置換基であるRCの位置は、a環、b環、d環、e環、f環、およびg環それぞれにおけるホウ素のパラ位が好ましい。このとき、式(X)で表される置換基であるRCが存在する環のその他のRCは水素であることがより好ましい。式(3-a)において、式(X)で表される置換基が2つであるときは、a環およびd環それぞれにおけるホウ素のパラ位にあること、b環およびe環それぞれにおけるホウ素のパラ位にあること、またはg環およびf環それぞれにおけるホウ素のパラ位にあることが好ましい。
式(3-a)において、式(X)で表される置換基以外の置換基であるRCの位置は、a環、b環、d環、e環、f環、およびg環それぞれにおけるホウ素のパラ位がより好ましい。このとき、その他のRCは水素であることがより好ましい。
式(3-a)において、X1およびX3の定義および好ましい範囲は式(3)におけるX1およびX3と同じである。なお、式(3-a)において、X1中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、a環またはb環の少なくとも一方と結合していてもよく、X3中のRNX、RCXおよびRIXは、単結合または連結基により、e環またはd環の少なくとも一方と結合していてもよい。
式(3-a)において、c環におけるZCは-C(-H)=または-N=であることが好ましく、-C(-H)=であることがより好ましい。
<好ましい置換基>
エミッティングドーパントとして用いられる多環芳香族化合物において(そのほかドーパントとして用いられる化合物において)、「アルキル」を含む置換基として、下記式(tR)で表されるターシャリ-アルキルは、特に好ましいものの1つである。このような嵩高い置換基により分子間距離が増加するため発光量子収率(PLQY)が向上するからである。また、式(tR)で表されるターシャリ-アルキルが第2の置換基として他の置換基に置換している置換基も好ましい。具体的には、(tR)で表されるターシャリ-アルキルで置換されたジアリールアミノ、(tR)で表されるターシャリ-アルキルで置換されたカルバゾリル(好ましくは、N-カルバゾリル)または(tR)で表されるターシャリ-アルキルで置換されたベンゾカルバゾリル(好ましくは、N-ベンゾカルバゾリル)があげられる。ジアリールアミノ、カルバゾリルおよびベンゾカルバゾリルへの式(tR)の基の置換形態としては、これらの基におけるアリール環またはベンゼン環の一部または全ての水素が式(tR)の基で置き換えられた例があげられる。
Figure 2024089626000036
式(tR)中、Ra、Rb、およびRcはそれぞれ独立して炭素数1~24のアルキルであり、前記アルキルにおける任意の-CH2-は-O-で置換されていてもよく、式(tR)で表される基は*を結合位置とする。
a、RbおよびRcの「炭素数1~24のアルキル」としては、直鎖および分岐鎖のいずれでもよく、例えば、炭素数1~24の直鎖アルキルまたは炭素数3~24の分岐鎖アルキル、炭素数1~18のアルキル(炭素数3~18の分岐鎖アルキル)、炭素数1~12のアルキル(炭素数3~12の分岐鎖アルキル)、炭素数1~6のアルキル(炭素数3~6の分岐鎖アルキル)、炭素数1~4のアルキル(炭素数3~4の分岐鎖アルキル)があげられる。
式(tR)におけるRa、Rb、およびRcの炭素数の合計は炭素数3~20が好ましく、炭素数3~10が特に好ましい。
a、Rb、およびRcの具体的なアルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、n-オクチル、t-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、2,6-ジメチル-4-ヘプチル、3,5,5-トリメチルヘキシル、n-デシル、n-ウンデシル、1-メチルデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、1-ヘキシルヘプチル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、n-エイコシルなどがあげられる。
式(tR)で表される基としては、例えばt-ブチル、t-アミル、1-エチル-1-メチルプロピル、1,1-ジエチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1-エチル-1-メチルブチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、1,1,4-トリメチルペンチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1-ジメチルオクチル、1,1-ジメチルペンチル、1,1-ジメチルヘプチル、1,1,5-トリメチルヘキシル、1-エチル-1-メチルヘキシル、1-エチル-1,3-ジメチルブチル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、1-ブチル-1-メチルペンチル、1,1-ジエチルブチル、1-エチル-1-メチルペンチル、1,1,3-トリメチルブチル、1-プロピル-1-メチルペンチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1,2,2-トリメチルプロピル、1-プロピル-1-メチルブチル、1,1-ジメチルヘキシルなどがあげられる。これらのうち、t-ブチルおよびt-アミルが好ましい。
置換基としては式(A30)で表される置換基も好ましい。
ドーパント(アシスティングドーパントまたはエミッティングドーパント)として用いられる化合物が有する置換基の構造の立体障害性、電子供与性および電子求引性によって、発光波長を調整することができる。好ましくは以下の構造式で表される基であり、より好ましくは、メチル、t-ブチル、t-アミル、t-オクチル、ネオペンチル、アダマンチル、フェニル、o-トリル、p-トリル、2,4-キシリル、2,5-キシリル、2,6-キシリル、2,4,6-メシチル、ジフェニルアミノ、ジ-p-トリルアミノ、ビス(p-(t-ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6-ジメチルカルバゾリル、3,6-ジ-t-ブチルカルバゾリルおよびフェノキシであり、さらに好ましくは、メチル、t-ブチル、t-アミル、t-オクチル、ネオペンチル、アダマンチル、フェニル、o-トリル、2,6-キシリル、2,4,6-メシチル、ジフェニルアミノ、ジ-p-トリルアミノ、ビス(p-(t-ブチル)フェニル)アミノ、カルバゾリル、3,6-ジメチルカルバゾリル、3,6-ジ-t-ブチルカルバゾリル、およびトリベンゾアゼピニルである。合成の容易さの観点からは、立体障害が大きい方が選択的な合成のために好ましく、具体的には、t-ブチル、t-アミル、t-オクチル、アダマンチル、o-トリル、p-トリル、2,4-キシリル、2,5-キシリル、2,6-キシリル、2,4,6-メシチル、ジ-p-トリルアミノ、ビス(p-(t-ブチル)フェニル)アミノ、3,6-ジメチルカルバゾリルおよび3,6-ジ-t-ブチルカルバゾリルが好ましい。
下記構造式において、*は結合位置を表す。
Figure 2024089626000037
Figure 2024089626000038
Figure 2024089626000039
Figure 2024089626000040
Figure 2024089626000041
Figure 2024089626000042
Figure 2024089626000043
Figure 2024089626000044
Figure 2024089626000045
Figure 2024089626000046
Figure 2024089626000047
Figure 2024089626000048
Figure 2024089626000049
Figure 2024089626000050
式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物は、上述の式(tR)で表されるターシャリ-アルキル(t-ブチルあるいはt-アミルなど)、ネオペンチルまたはアダマンチルを少なくとも1つ含む構造であることが好ましく、式(tR)で表されるターシャリ-アルキル(t-ブチルあるいはt-アミルなど)を含むことが好ましい。このような嵩高い置換基により分子間距離が増加するため発光量子収率(PLQY)が向上するからである。また、置換基としては、ジアリールアミノも好ましい。さらに、式(tR)の基で置換されたジアリールアミノ、式(tR)の基で置換されたカルバゾリル(好ましくは、N-カルバゾリル)または式(tR)の基で置換されたベンゾカルバゾリル(好ましくは、N-ベンゾカルバゾリル)も好ましい。ジアリールアミノ、カルバゾリルおよびベンゾカルバゾリルへの式(tR)の基の置換形態としては、これらの基におけるアリール環またはベンゼン環の一部または全ての水素が式(tR)の基で置換された例があげられる。
特に、式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物のA環、B環、C環、D環、E環、F環、およびG環における置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環において「置換もしくは無置換の(置換または無置換の)」というときの置換基には、置換または無置換のN-カルバゾリルが含まれていることが好ましい。N-カルバゾリルを置換基として有する化合物を発光層におけるドーパントとして用いたときに、より長寿命で低駆動電圧の有機EL素子が得られることが見出された。N-カルバゾリルを置換基として有することにより、化合物のHOMOが深くなり、ホールトラップ性が下がり、駆動電圧が低くなると考えられる。また、ドーパント上でキャリア再結合が起こりにくくなり、ドーパントがT1状態になりにくくなり、長寿命化すると考えられる。ここで、N-カルバゾリルが置換基を有する場合の置換基は、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、および置換もしくは無置換のシクロアルキルからなる群より選択されることが好ましい。置換または無置換のN-カルバゾリルとしては、特に無置換のN-カルバゾリルまたは3,6―ジ(t-ブチル)N-カルバゾリルが好ましい。
式(1)、式(2)、または式(3)で表される構造中、アリール環またはヘテロアリール環の置換基は以下の式(A20)で表される置換基であってもよい。
Figure 2024089626000051
式(A20)で表される置換基は、2つの*でアリール環またはヘテロアリール環の環上で隣接する2つの原子にそれぞれ結合する。式(A20)中、Lは>N-R、>O、>Si(-R)2または>Sであり、前記>N-RのRは、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキルまたは置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、前記>Si(-R)2のRは、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアルキルまたは置換されていてもよいシクロアルキルであり、また連結基によって互いに結合していてもよく、また、前記>N-Rおよび前記>Si(-R)2のRの少なくとも1つは連結基または単結合により前記アリール環またはヘテロアリール環と結合していてもよく、
rは1~4の整数であり、
Aはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアルキルまたは置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、任意のRAは他の任意のRAと連結基または単結合により互いに結合していてもよい。
上記の置換基の例としては以下のいずれかで表される置換基があげられる。
Figure 2024089626000052
各式中、*で、いずれかのアリール環またはヘテロアリール環の環上で連続(隣接)する2つまたは3つの原子にそれぞれ結合していればよい。
<シクロアルカン縮合>
式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物におけるアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよい。式(1-a)、式(1-b)、式(2-a)、式(2-b)、式(3-a)からなる群より選択されるいずれかの式で表される多環芳香族化合物も同様であり、この後の説明はこれらいずれかの式で表される多環芳香族化合物にも同様に当てはまる。
シクロアルカンとしては、炭素数3~24のシクロアルカンであればよい。このときのシクロアルカンにおける少なくとも1つの水素は、炭素数6~30のアリール、炭素数2~30のヘテロアリール、炭素数1~24のアルキルまたは炭素数3~24のシクロアルキルで置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられていてもよい。
シクロアルカンは、炭素数3~20のシクロアルカンであって、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの水素が、炭素数6~16のアリール、炭素数2~22のヘテロアリール、炭素数1~12のアルキルまたは炭素数3~16のシクロアルキルで置換されていてもよいシクロアルカンであることが好ましい。
「シクロアルカン」としては、炭素数3~24のシクロアルカン、炭素数3~20のシクロアルカン、炭素数3~16のシクロアルカン、炭素数3~14のシクロアルカン、炭素数5~10のシクロアルカン、炭素数5~8のシクロアルカン、炭素数5~6のシクロアルカン、炭素数5のシクロアルカンなどがあげられる。
具体的なシクロアルカンとしては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、ノルボルナン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン)、ビシクロ[1.1.0]ブタン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、ビシクロ[2.1.0]ペンタン、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、アダマンタン、ジアマンタン、デカヒドロナフタレンおよびデカヒドロアズレン、ならびに、これらの炭素数1~5のアルキル(特にメチル)置換体、ハロゲン(特にフッ素)置換体および重水素置換体などがあげられる。
上記の例の中でも、例えば下記構造式に示すような、シクロアルカンのα位の炭素(アリール環またはヘテロアリール環に縮合するシクロアルカンにおいて、縮合部位の炭素に隣接する位置の炭素)に少なくとも1つの置換基を有する構造が好ましく、α位の炭素に2つの置換基を有する構造がより好ましく、2つのα位の炭素がいずれも2つの置換基を有する(合計4つの置換基を有する)構造がさらに好ましい。この置換基としては、炭素数1~5のアルキル(特にメチル)、ハロゲン(特にフッ素)および重水素などがあげられる。特に、アリール環またはヘテロアリール環において隣接する炭素原子に下記式(B)で表される部分構造が結合した構造となっていることが好ましい。
Figure 2024089626000053
式(B)中、*は結合位置を示す。
1つのアリール環またはヘテロアリール環に縮合するシクロアルカンの数は、1~3個が好ましく、1個または2個がより好ましく、1個がさらに好ましい。例えば1つのベンゼン環(フェニル)に1個または複数のシクロアルカンが縮合した例を以下に示す。*は結合位置を示し、その位置はベンゼン環を構成しかつシクロアルカンを構成していない炭素のいずれであってもよい。式(Cy-1-4)および式(Cy-2-4)のように縮合したシクロアルカン同士が縮合してもよい。縮合される環(基)がベンゼン環(フェニル)以外の他のアリール環またはヘテロアリール環の場合であっても、縮合するシクロアルカンがシクロペンタンまたはシクロヘキサン以外の他のシクロアルカンの場合であっても、同様である。
Figure 2024089626000054
シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置換されていてもよい。例えば1つのベンゼン環(フェニル)に縮合したシクロアルカンにおける1個または複数の-CH2-が-O-で置換された例を以下に示す。縮合される環(基)がベンゼン環(フェニル)以外の他のアリール環またはヘテロアリール環の場合であっても、縮合するシクロアルカンがシクロペンタンまたはシクロヘキサン以外の他のシクロアルカンの場合であっても、同様である。
Figure 2024089626000055
シクロアルカンは少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、この置換基としては、置換基群Zから選択されるいずれかの置換基をあげることができる。これらの置換基の中でも、アルキル(例えば炭素数1~6のアルキル)、シクロアルキル(例えば炭素数3~14のシクロアルキル)が好ましい。また、いずれかの水素がハロゲン(例えばフッ素)または重水素で置き換えられていることも好ましい。また、シクロアルキルが置換する場合はスピロ構造を形成する置換形態でもよく、例えば1つのベンゼン環(フェニル)に縮合したシクロアルカンにスピロ構造が形成された例を以下に示す。各構造式における*は、ベンゼン環である場合には化合物の骨格構造に含まれるベンゼン環であることを意味し、フェニルである場合には化合物の骨格構造に置換する結合手を意味する。
Figure 2024089626000056
シクロアルカン縮合の形態としては、まず、式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物におけるA環、B環、C環、D環、E環、F環、およびG環それぞれにおけるアリール環およびヘテロアリール環がシクロアルカンで縮合された形態があげられる。
また、式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物の式(X)で表される置換基中のH環およびI環におけるアリール環およびヘテロアリール環がシクロアルカンで縮合された形態、または、RX、LXそれぞれにおけるアリール環およびヘテロアリール環がシクロアルカンで縮合された形態があげられる。
シクロアルカン縮合の他の形態としては、式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物が、例えば、RNXがシクロアルカンで縮合されたアリールである>N-RNX、シクロアルカンで縮合されたジアリールアミノ(このアリール部分へ縮合)、シクロアルカンで縮合されたカルバゾリル(このベンゼン環部分へ縮合)またはシクロアルカンで縮合されたベンゾカルバゾリル(このベンゼン環部分へ縮合)を有する例があげられる。
なお、式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物にシクロアルカン構造を導入することによっては、融点や昇華温度のさらなる低下が期待できる。このことは、高い純度が要求される有機EL素子などの有機デバイス用の材料の精製法としてほぼ不可欠な昇華精製において、比較的低温で精製することができるため材料の熱分解などが避けられることを意味する。またこれは、有機EL素子などの有機デバイスを作製するのに有力な手段である真空蒸着プロセスについても同様であり、比較的低温でプロセスを実施できるため、材料の熱分解を避けることができ、結果として高性能な有機デバイスを得ることができる。また、シクロアルカン構造の導入により有機溶媒への溶解性が向上するため、塗布プロセスを利用した素子作製にも適用することが可能となる。ただし、本発明は特にこれらの原理に限定されるわけではない。
<重い安定同位体への置き換え>
式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物中の各元素は、特に記載が無い場合は天然に存在する複数の同位体が天然における存在比で含まれるものである。ただし、各構造式中の元素の全てまたは一部は天然における存在比を超えて(例えば、90atom%以上で)重い安定同位体を含むものであってもよい。本明細書において、これを単に「重い安定同位体」に「置き換える」という。より具体的には、少なくとも1つの水素は重水素に置き換えることができ、少なくとも1つの窒素は窒素-15(15N)に置き換えることができ、少なくとも1つの硫黄は硫黄-33(33S)、硫黄-34(34S)または硫黄-36(36S)に置き換えることができ、少なくとも1つの酸素は、酸素-17(17O)または酸素-18(18O)に置き換えることができ、少なくとも1つの炭素は炭素-13(13C)に置き換えることができ、少なくとも1つのホウ素はホウ素-11(11B)で置き換えることができる。式(1-a)、式(1-b)、式(2-a)、式(2-b)または式(3-a)で表される構造も同様であり、この後の説明は式(1-a)、式(1-b)、式(2-a)、式(2-b)、または式(3-a)で表される多環芳香族化合物にも同様に当てはまる。少なくとも一部の元素を重い安定同位体に置き換えることによって、特に少なくとも1つのホウ素をホウ素-11(11B)で置き換えることによって、式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物をドーパントとして用いる有機電界発光素子の長寿命化を図ることができる。
<重水素による置き換え>
式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物中の水素は、その全てまたは一部が重水素であってもよい。式(1-a)、式(1-b)、式(2-a)、式(2-b)または式(3-a)で表される構造も同様であり、この後の説明は式(1-a)、式(1-b)、式(2-a)、式(2-b)、または式(3-a)で表される多環芳香族化合物にも同様に当てはまる。
例えば、式(1)で表される多環芳香族化合物においては、A環、B環、およびC環、式(2)で表される多環芳香族化合物においては、A環、B環、D環およびE環におけるアリール環またはヘテロアリール環ならびにc環、式(3)で表される多環芳香族化合物においては、A環、B環、D環、E環、F環、およびG環におけるアリール環またはヘテロアリール環ならびにc環、それらの置換基における水素が重水素で置き換えられうるが、これらの中でもアリールやヘテロアリールにおける全てまたは一部の水素が重水素で置き換えられた態様があげられる。H環、I環、RX、またはLXにおけるアリール環およびヘテロアリール環における全てまたは一部の水素が重水素で置き換えられていてもよい。また耐久性の観点から、式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物中の水素は、その全てまたは一部が重水素化されていることも好ましい。
<多環芳香族化合物の具体例>
式(1)で表される多環芳香族化合物の例として、下記のいずれかの構造式で表される化合物があげられる。
Figure 2024089626000057
Figure 2024089626000058
Figure 2024089626000059
Figure 2024089626000060
Figure 2024089626000061
Figure 2024089626000062
Figure 2024089626000063
Figure 2024089626000064
Figure 2024089626000065
Figure 2024089626000066
Figure 2024089626000067
Figure 2024089626000068
Figure 2024089626000069
Figure 2024089626000070
Figure 2024089626000071
式(2)で表される多環芳香族化合物の例として、下記のいずれかの構造式で表される化合物があげられる。
Figure 2024089626000072
Figure 2024089626000073
Figure 2024089626000074
Figure 2024089626000075
Figure 2024089626000076
Figure 2024089626000077
Figure 2024089626000078
Figure 2024089626000079
Figure 2024089626000080
Figure 2024089626000081
Figure 2024089626000082
Figure 2024089626000083
Figure 2024089626000084
Figure 2024089626000085
Figure 2024089626000086
Figure 2024089626000087
Figure 2024089626000088
Figure 2024089626000089
Figure 2024089626000090
式(3)で表される多環芳香族化合物の例として、下記のいずれかの構造式で表される化合物があげられる。
Figure 2024089626000091
<多環芳香族化合物の製造方法>
式(1)で表される多環芳香族化合物は、基本的には、まずA環(a環)とB環(b環)およびC環(c環)を含む縮合環とを結合基(X1、X2)で結合させることで中間体を製造し(第1反応)、その後に、A環(a環)、B環(b環)およびC環を含む縮合環をホウ素で結合させることで最終生成物を製造することができる(第2反応)。第1反応では、例えばエーテル化反応であれば、求核置換反応、ウルマン反応といった一般的反応が利用でき、アミノ化反応で有ればブッフバルト-ハートウィッグ反応、求核置換反応、ゴールドバーグアミノ化といった一般的反応が利用できる。また、第2反応では、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応(連続的な芳香族求電子置換反応、以下同様)が利用できる。
第2反応は、下記スキーム(1)に示すように、A環(a環)、B環(b環)およびC環(c環)を含む縮合環を結合するホウ素を導入する反応である。まず、窒素原子の間のハロゲン原子をn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウムまたはt-ブチルリチウム等でハロゲン-メタル交換する。次いで、三塩化ホウ素や三臭化ホウ素等を加え、リチウム-ホウ素の金属交換を行った後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン等のブレンステッド塩基を加えることで、タンデムボラフリーデルクラフツ反応させ、目的物を得ることができる。第2反応においては反応を促進させるために三塩化アルミニウム等のルイス酸を加えてもよい。なお、式中Clであるハロゲン原子は、Cl、Br、Iのいずれでもよく、基質の反応性を考慮して適宜選択することができる。
Figure 2024089626000092
なお、上記スキーム(1)は、式(1)で表される多環芳香族化合物の製造方法を主に示しているが、式(2)で表される化合物については、A環(a環)、B環(b環)、c環、D環(d環)、E環(e環)を有する中間体、式(3)で表される化合物については、A環(a環)、B環(b環)、c環、D環(d環)、E環(e環)、F環(f環)、およびG環(g環)を有する中間体を用いることで製造することができる。
使用する原料を適宜選択することで、所望の位置に置換基を有する多環芳香族化合物を合成することができる。
以上の反応で用いられる溶媒の具体例は、t-ブチルベンゼンやキシレンなどである。
また、上記スキーム(1)の合成法では、三塩化ホウ素や三臭化ホウ素等を加える前に、窒素原子の間のハロゲン原子をブチルリチウム等でハロゲン-メタル交換することで、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応させた例を示したが、ハロゲンが水素になった前駆体で三塩化ホウ素や三臭化ホウ素等の添加により反応を進行させることもできる。
なお、上記スキーム(1)で使用するオルトメタル化試薬としては、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム等のアルキルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジドなどの有機アルカリ金属化合物があげられる。
なお、上記スキーム(1)で使用するメタル-ホウ素の金属交換試薬としては、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素などのホウ素のハロゲン化物、ホウ素のアルコキシ化物、ホウ素のアリールオキシ化物などがあげられる。
なお、上記スキーム(1)で使用するブレンステッド塩基としては、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン、2,6-ルチジン、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、トリフェニルボラン、テトラフェニルシラン、Ar4BNa、Ar4BK、Ar3B、Ar4Si(なお、Arはフェニルなどのアリール)などがあげられる。
上記スキーム(1)で使用するルイス酸としては、AlCl3、AlBr3、AlF3、BF3・OEt2、BCl3、BBr3、BI3、GaCl3、GaBr3、InCl3、InBr3、In(OTf)3、SnCl4、SnBr4、AgOTf、ScCl3、Sc(OTf)3、ZnCl2、ZnBr2、Zn(OTf)2、MgCl2、MgBr2、Mg(OTf)2、LiOTf、NaOTf、KOTf、Me3SiOTf、Cu(OTf)2、CuCl2、YCl3、Y(OTf)3、TiCl4、TiBr4、ZrCl4、ZrBr4、FeCl3、FeBr3、CoCl3、CoBr3などがあげられる。
上記スキーム(1)では、タンデムヘテロフリーデルクラフツ反応の促進のためにブレンステッド塩基またはルイス酸を使用してもよい。ただし、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素などのホウ素のハロゲン化物を用いた場合は、芳香族求電子置換反応の進行とともに、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素といった酸が生成するため、酸を捕捉するブレンステッド塩基の使用が効果的である。一方、ホウ素のアミノ化ハロゲン化物、ホウ素のアルコキシ化物を用いた場合は、芳香族求電子置換反応の進行とともに、アミン、アルコールが生成するために、多くの場合、ブレンステッド塩基を使用する必要はないが、アミノやアルコキシの脱離能が低いために、その脱離を促進するルイス酸の使用が効果的である。
また、本発明の多環芳香族化合物には、少なくとも一部の水素原子が重水素で置換されているものやフッ素や塩素などのハロゲンで置換されているものも含まれるが、このような化合物などは所望の箇所が重水素化、フッ素化または塩素化された原料を用いることで、上記と同様に合成することができる。
2.有機デバイス
本発明の多環芳香族化合物は、有機デバイス用材料として用いることができる。有機デバイスとしては、例えば、有機電界発光素子、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などがあげられる。本発明の多環芳香族化合物は、有機電界発光素子における、いずれか1つ以上の有機層を形成する材料として用いられることが好ましい。
2-1.有機電界発光素子
2-1-1.有機電界発光素子の構造
図1は、有機EL素子の一例を示す概略断面図である。
図1に示された有機EL素子100は、基板101と、基板101上に設けられた陽極102と、陽極102の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた陰極108とを有する。
なお、有機EL素子100は、作製順序を逆にして、例えば、基板101と、基板101上に設けられた陰極108と、陰極108の上に設けられた電子注入層107と、電子注入層107の上に設けられた電子輸送層106と、電子輸送層106の上に設けられた発光層105と、発光層105の上に設けられた正孔輸送層104と、正孔輸送層104の上に設けられた正孔注入層103と、正孔注入層103の上に設けられた陽極102とを有する構成としてもよい。
上記各層すべてがなくてはならないわけではなく、最小構成単位を陽極102と発光層105と陰極108とからなる構成として、正孔注入層103、正孔輸送層104、電子輸送層106、電子注入層107は任意に設けられる層である。また、上記各層は、それぞれ単一層からなってもよいし、複数層からなってもよい。
有機EL素子を構成する層の態様としては、上述する「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」の構成態様の他に、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極」、「基板/陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子輸送層/陰極」、「基板/陽極/発光層/電子注入層/陰極」の構成態様であってもよい。
有機EL素子はさらに電子阻止層(電子ブロッキング層)および正孔阻止層(正孔ブロッキング層)から選択されるいずれかまたは双方を有していてもよい。電子阻止層は発光層より浅いLUMOおよび発光層または正孔輸送層と近いHOMOとを有し、発光層と正孔輸送層の間に配置される。電子が発光層内に留まり正孔輸送層へ漏れ出ないために、正孔輸送層の劣化による短寿命化と再結合効率低下による効率の低下を防ぐことができる。正孔阻止層は発光層より深いHOMOおよび発光層または正孔輸送層と近いLUMOとを有し、発光層と電子輸送層の間に配置される。正孔が発光層内に留まり電子輸送層へ漏れ出ないために、電子輸送層の劣化による短寿命化と再結合効率低下による効率の低下を防ぐことができる。正孔注入・輸送層が電子阻止層を兼ねていてもよい。電子注入・輸送層が正孔阻止層を兼ねていてもよい。
有機EL素子はさらに高T1層を有していてもよい。高T1層は、発光層に用いられるホスト化合物、アシスティングドーパント化合物またはエミッティングドーパント化合物より高いT1を有し、発光層と正孔輸送層の間および/または発光層と電子阻止層の間に配置される。T1エネルギーの値は素子の発光機構により異なるが、ホストに用いられる化合物より高いT1を有する。発光層の周囲に高T1層を有することで、三重項エネルギーを閉じ込め、通常蛍光分子では発光につながらない三重項エネルギーを一重項エネルギーへと変換し、高い効率を得ることができる。正孔注入・輸送層または電子阻止層が高T1層を兼ねていてもよい。電子注入・輸送層または正孔阻止層が高T1層を兼ねていてもよい。
本発明の多環芳香族化合物は、発光層形成用材料または電子輸送層形成用材料として用いることが好ましく、発光層形成用材料として用いることがより好ましい。
2-1-2.有機電界発光素子における基板
基板101は、有機EL素子100の支持体であり、通常、石英、ガラス、金属、プラスチックなどが用いられる。基板101は、目的に応じて板状、フィルム状、またはシート状に形成され、例えば、ガラス板、金属板、金属箔、プラスチックフィルム、プラスチックシートなどが用いられる。なかでも、ガラス板、および、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂製の板が好ましい。ガラス基板であれば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどが用いられ、また、厚みも機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよい。また、基板101には、ガスバリア性を高めるために、少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜などのガスバリア膜を設けてもよく、特にガスバリア性が低い合成樹脂製の板、フィルムまたはシートを基板101として用いる場合にはガスバリア膜を設けるのが好ましい。
2-1-3.有機電界発光素子における陽極
陽極102は、発光層105へ正孔を注入する役割を果たす。なお、陽極102と発光層105との間に正孔注入層103および正孔輸送層104の少なくとも1つの層が設けられている場合には、これらを介して発光層105へ正孔を注入することになる。
陽極102を形成する材料としては、無機化合物および有機化合物があげられる。無機化合物としては、例えば、金属(アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、クロムなど)、金属酸化物(インジウムの酸化物、スズの酸化物、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)など)、ハロゲン化金属(ヨウ化銅など)、硫化銅、カーボンブラック、ITOガラスやネサガラスなどがあげられる。有機化合物としては、例えば、ポリ(3-メチルチオフェン)などのポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどがあげられる。その他、有機EL素子の陽極として用いられている物質の中から適宜選択して用いることができる。
2-1-4.有機電界発光素子における正孔注入層、正孔輸送層
正孔注入層103は、陽極102から移動してくる正孔を、効率よく発光層105内または正孔輸送層104内に注入する役割を果たす。正孔輸送層104は、陽極102から注入された正孔または陽極102から正孔注入層103を介して注入された正孔を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。正孔注入層103および正孔輸送層104は、それぞれ、正孔注入・輸送材料の一種または二種以上を積層または混合により形成される。また、正孔注入・輸送材料に塩化鉄(III)のような無機塩を添加して層を形成してもよい。
正孔注入・輸送性物質としては電界を与えられた電極間において正極からの正孔を効率よく注入・輸送することが必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率よく輸送することが望ましい。そのためにはイオン化ポテンシャルが小さく、しかも正孔移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。
正孔注入層103および正孔輸送層104を形成する材料としては、光導電材料において、正孔の電荷輸送材料として従来から慣用されている化合物、p型半導体、有機EL素子の正孔注入層および正孔輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意の化合物を選択して用いることができる。それらの具体例は、カルバゾール誘導体(N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなど)、ビス(N-アリールカルバゾール)またはビス(N-アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体(芳香族第3級アミノを主鎖または側鎖に持つポリマー、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ(3-メチルフェニル)-4,4'-ジアミノビフェニル、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル、N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ(3-メチルフェニル)-4,4'-ジフェニル-1,1'-ジアミン、N,N'-ジナフチル-N,N'-ジフェニル-4,4'-ジフェニル-1,1'-ジアミン、N4,N4'-ジフェニル-N4,N4'-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジアミン、N4,N4,N4',N4'-テトラ[1,1'-ビフェニル]-4-イル)-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジアミン、4,4',4"-トリス(3-メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミンなどのトリフェニルアミン誘導体、スターバーストアミン誘導体など)、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体(無金属、銅フタロシアニンなど)、ピラゾリン誘導体、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体やチオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、キノキサリン誘導体(例えば、1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリルなど)、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリシランなどである。ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが好ましいが、発光素子の作製に必要な薄膜を形成し、陽極から正孔が注入できて、さらに正孔を輸送できる化合物であれば特に限定されない。
また、有機半導体の導電性は、そのドーピングにより、強い影響を受けることも知られている。このような有機半導体マトリックス物質は、電子供与性の良好な化合物、または、電子受容性の良好な化合物から構成されている。電子供与物質のドーピングのために、テトラシアノキノンジメタン(TCNQ)または2,3,5,6-テトラフルオロテトラシアノ-1,4-ベンゾキノンジメタン(F4TCNQ)などの強い電子受容体が知られている(例えば、文献「M.Pfeiffer,A.Beyer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(22),3202-3204(1998)」および文献「J.Blochwitz,M.Pfeiffer,T.Fritz,K.Leo,Appl.Phys.Lett.,73(6),729-731(1998)」を参照)。これらは、電子供与型ベース物質(正孔輸送物質)における電子移動プロセスによって、いわゆる正孔を生成する。正孔の数および移動度によって、ベース物質の伝導性が、かなり大きく変化する。正孔輸送特性を有するマトリックス物質としては、例えばベンジジン誘導体(TPDなど)またはスターバーストアミン誘導体(TDATAなど)、または、特定の金属フタロシアニン(特に、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)など)が知られている(特開2005-167175号公報)。
上述した正孔注入層用材料および正孔輸送層用材料は、これらに反応性置換基が置換した反応性化合物をモノマーとして高分子化させた高分子化合物、もしくはその高分子架橋体、または、主鎖型高分子と前記反応性化合物とを反応させたペンダント型高分子化合物、もしくはそのペンダント型高分子架橋体としても、正孔層用材料に用いることができる。
2-1-5.有機電界発光素子における発光層
発光層105は、電界を与えられた電極間において、陽極102から注入された正孔と、陰極108から注入された電子とを再結合させることにより発光する層である。発光層105を形成する材料は、正孔と電子との再結合によって励起されて発光する化合物(発光性化合物)であればよく、安定な薄膜形状を形成することができ、かつ、固体状態で強い発光(蛍光)効率を示す化合物が好ましく、用いられる。
発光層は単一層でも複数層からなってもどちらでもよく、それぞれ発光層用材料により形成される。発光層が複数層からなっている場合、いずれか1つの層が本発明の多環芳香族化合物を含むことが好ましい。発光層は単一層であることが好ましい。
発光層は発光層用材料(ホスト材料、ドーパント材料)により形成される。ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。例えば、ドーパント材料として、エミッティングドーパントおよびアシスティングドーパントを用いてもよい。また、発光層は、エミッティングドーパントと、正孔輸送性ホスト材料、電子輸送性ホスト材料、およびアシスティングドーパント材料からなる群より選択される少なくとも2つとを含むことも好ましい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれであってもよい。ドーピング方法としては、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着してもよい。また、発光層は、有機溶媒に材料を溶解して調製した発光層形成用組成物を用いた湿式成膜法により形成することもできる。
ホスト材料の使用量はホスト材料の種類によって異なり、そのホスト材料の特性に合わせて決めればよい。ホスト材料の使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全質量の50~99.999質量%であり、より好ましくは80~99.95質量%であり、さらに好ましくは90~99.9質量%である。ホスト材料が、正孔輸送性ホスト材料と電子輸送性ホスト材料との組み合わせである場合は、ホスト材料の使用量は正孔輸送性ホスト材料の使用量と電子輸送性ホスト材料の使用量とを合わせた質量である。正孔輸送性ホスト材料と電子輸送性ホスト材料との使用量の比は質量比で1:9~9:1であればよく、4:6~6:4であることが好ましく、略1:1であることがより好ましい。
エミッティングドーパントの使用量はエミッティングドーパントの種類によって異なり、その特性に合わせて決めればよい。エミッティングドーパントの使用量の目安は、好ましくは発光層用材料全質量の0.001~50質量%であり、より好ましくは0.05~20質量%であり、さらに好ましくは0.1~10質量%である。上記の範囲であれば、例えば、濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。
エミッティングドーパントに加えてアシスティングドーパント(熱活性型遅延蛍光体またはりん光材料)を用いる有機電界発光素子においては、エミッティングドーパント材料の使用量は低濃度である方が濃度消光現象を防止できるという点で好ましい。アシスティングドーパントの使用量が高濃度である方がエネルギー移動の効率の点からは好ましい。アシスティングドーパントの使用量が高濃度である方が熱活性型遅延蛍光機構の効率の点からは好ましい。アシスティングドーパントとして熱活性型遅延蛍光体を用いた有機電界発光素子においては、アシスティングドーパントの熱活性型遅延蛍光機構の効率の点からは、アシスティングドーパントの使用量に比べてエミッティングドーパントの使用量が低濃度であることが好ましい。
アシスティングドーパント材料が使用される場合における、ホスト材料、アシスティングドーパント材料およびエミッティングドーパント材料の使用量の目安は、それぞれ、発光層用材料全質量に対し40~99質量%、59~1質量%および20~0.001質量%であり、好ましくは、それぞれ、60~95質量%、39~5質量%および10~0.01質量%であり、より好ましくは、70~90質量%、29~10質量%および5~0.05質量%である。
式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物は、発光層を形成する材料として用いられることが好ましく、ドーパントとして用いられることがより好ましく、特にエミッティングドーパントとして用いられることが好ましい。
式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物は複数の三重項励起子から一重項励起子が生成する現象(三重項-三重項フュージョン(TTF:Triplet-Triplet Fusion))を利用するTTF素子のエミッティングドーパントとして用いることができる。
また、式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物は、「熱活性型遅延蛍光体」としてTADF素子のエミッティングドーパントとして用いることができる。「熱活性型遅延蛍光体」では、最低励起一重項状態と最低励起三重項状態とのエネルギー差を小さくすることで、通常は遷移確率が低い最低励起三重項状態から最低励起一重項状態への逆項間交差を高効率で生じさせ、一重項からの発光(熱活性型遅延蛍光、TADF)が発現する。通常の蛍光発光では電流励起により生じた75%の三重項励起子は熱失活経路を通るため蛍光として取りだすことはできない。一方、TADFでは全ての励起子を蛍光発光に利用することができ、高効率な有機EL素子が実現できる。
一般に遅延蛍光が速い方が優れたTADF性を有するとされる。具体的には遅延蛍光寿命が100μsec以下である発光材料を発光素子におけるエミッティングドーパントとして使用した際に高い素子効率および長い素子寿命を与えることができる。遅延蛍光寿命は20μsec以下が好ましく、20μsec未満がより好ましく、10μsec以下が更に好ましく、5μsec以下が最も好ましい。
また、一般的にΔES1T1の値が小さいほど、優れたTADF性を有する。なお、ΔES1T1は最低励起一重項エネルギー準位(ES1)と最低励起三重項エネルギー準位(ET1)とのエネルギー差である。具体的には、ΔES1T1の値が0.20eV以下であることが好ましく、0.15eV以下であることがさらに好ましく、0.10eV以下であることが特に好ましい。
<ホスト材料>
ホスト材料としては、以前から発光体として知られていたアントラセンやピレンなどの縮合環誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、フルオレン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、N-フェニルカルバゾール誘導体、カルバゾニトリル誘導体、ジベンゾクリセン誘導体などがあげられる。また、耐久性の観点から、ホスト材料の水素原子は一部または全部が重水素化されていることも好ましい。さらに、一部または全部の水素原子が重水素化されたホスト化合物と、一部または全部の水素原子が重水素化されたドーパント化合物とを組み合わせて発光層を構成することも好ましい。
ホスト材料は、一種類であっても、複数の組み合わせであってもよい。複数の組み合わせである場合、正孔輸送性ホスト材料と電子輸送性ホスト材料との組み合わせであることが好ましい。
[アントラセン化合物]
ホストとしてのアントラセン化合物としては、例えば式(3-H)で表される化合物および式(3-H2)で表される化合物があげられる。
Figure 2024089626000093
式(3-H)中、
XおよびAr4は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のジアリールアミノ、置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアリールヘテロアリールアミノ、置換もしくは無置換のアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換もしくは無置換のアルケニル、置換もしくは無置換のアルコキシ、置換もしくは無置換のアリールオキシ、置換もしくは無置換のアリールチオまたは置換シリルであり、全てのXおよびAr4は同時に水素になることはない。
式(3-H)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲン、シアノ、重水素または置換されていてもよいヘテロアリールで置換されていてもよい。
また、式(3-H)で表される構造を単位構造として多量体(好ましくは二量体)を形成してもよい。この場合、例えば式(3-H)で表される単位構造同士がXを介して結合する形態があげられ、このXとしては単結合、アリーレン(フェニレン、ビフェニレンおよびナフチレン等)およびヘテロアリーレン(ピリジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ベンゾカルバゾール環およびフェニル置換カルバゾール環などが二価の結合価を有する基)等があげられる。
式(3-H)で表される化合物における各基の詳細は、上記の式(1)における説明を引用することができ、さらに以下の好ましい態様の欄で説明する。
上記アントラセン化合物の好ましい態様を以下に説明する。下記構造における符号の定義は上述する定義と同じである。
Figure 2024089626000094
式(3-H)では、Xはそれぞれ独立して式(3-X1)、式(3-X2)または式(3-X3)で表される基であり、式(3-X1)、式(3-X2)または式(3-X3)で表される基は*において式(3-H)のアントラセン環と結合する。好ましくは、2つのXが同時に式(3-X3)で表される基になることはない。より好ましくは2つのXが同時に式(3-X2)で表される基になることもない。
また、式(3-H)で表される構造を単位構造として多量体(好ましくは二量体)を形成してもよい。この場合、例えば式(3-H)で表される単位構造同士がXを介して結合する形態があげられ、このXとしては単結合、アリーレン(フェニレン、ビフェニレンおよびナフチレン等)およびヘテロアリーレン(ピリジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、ベンゾカルバゾール環およびフェニル置換カルバゾール環などが二価の結合価を有する基)等があげられる。
式(3-X1)および式(3-X2)におけるナフチレン部位は1つのベンゼン環で縮合されていてもよい。このようにして縮合した構造は以下のとおりである。
Figure 2024089626000095
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または、式(A)で表される基(カルバゾリル、ベンゾカルバゾリルおよびフェニル置換カルバゾリルも含む)である。なお、Ar1またはAr2が式(A)で表される基である場合は、式(A)で表される基はその*において式(3-X1)または式(3-X2)中のナフタレン環と結合する。
Ar3は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または、式(A)で表される基(カルバゾリル、ベンゾカルバゾリルおよびフェニル置換カルバゾリルも含む)である。なお、Ar3が式(A)で表される基である場合は、式(A)で表される基はその*において式(3-X3)中の直線で表される単結合と結合する。すなわち、式(3-H)のアントラセン環と式(A)で表される基が直接結合する。
また、Ar3は置換基を有していてもよく、Ar3における少なくとも1つの水素はさらに炭素数1~4のアルキル、炭素数5~10のシクロアルキル、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または、式(A)で表される基(カルバゾリルおよびフェニル置換カルバゾリルも含む)で置換されていてもよい。なお、Ar3が有する置換基が式(A)で表される基である場合は、式(A)で表される基はその*において式(3-X3)中のAr3と結合する。
Ar4は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、ターフェニリル、ナフチル、または炭素数1~4のアルキル(メチル、エチル、t-ブチルなど)および/もしくは炭素数5~10のシクロアルキルで置換されているシリルである。
シリルに置換する炭素数1~4のアルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、シクロブチルなどがあげられ、シリルにおける3つの水素が、それぞれ独立して、これらのアルキルで置換されている。
具体的な「炭素数1~4のアルキルで置換されているシリル」としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリイソプロピルシリル、トリブチルシリル、トリsec-ブチルシリル、トリt-ブチルシリル、エチルジメチルシリル、プロピルジメチルシリル、イソプロピルジメチルシリル、ブチルジメチルシリル、sec-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、メチルジエチルシリル、プロピルジエチルシリル、イソプロピルジエチルシリル、ブチルジエチルシリル、sec-ブチルジエチルシリル、t-ブチルジエチルシリル、メチルジプロピルシリル、エチルジプロピルシリル、ブチルジプロピルシリル、sec-ブチルジプロピルシリル、t-ブチルジプロピルシリル、メチルジイソプロピルシリル、エチルジイソプロピルシリル、ブチルジイソプロピルシリル、sec-ブチルジイソプロピルシリル、t-ブチルジイソプロピルシリルなどがあげられる。
シリルに置換する炭素数5~10のシクロアルキルは、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.0]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシル、ビシクロ[3.1.0]ヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル(ノルボルニル)、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、デカヒドロナフタレニル、デカヒドロアズレニルなどがあげられ、シリルにおける3つの水素が、それぞれ独立して、これらのシクロアルキルで置換されている。
具体的な「炭素数5~10のシクロアルキルで置換されているシリル」としては、トリシクロペンチルシリル、トリシクロヘキシルシリルなどがあげられる。
置換されているシリルとしては、2つのアルキルと1つのシクロアルキルが置換したジアルキルシクロアルキルシリルと、1つのアルキルと2つのシクロアルキルが置換したアルキルジシクロアルキルシリルもあり、置換するアルキルおよびシクロアルキルの具体例としては上述した基があげられる。
また、式(3-H)で表されるアントラセン化合物の化学構造中の水素は式(A)で表される基で置換されていてもよい。式(A)で表される基で置換される場合は、式(A)で表される基はその*において式(3-H)で表される化合物における少なくとも1つの水素と置換する。
式(A)で表される基は、式(3-H)で表されるアントラセン化合物が有しうる置換基の1つである。
Figure 2024089626000096
式(A)中、Yは-O-、-S-または>N-R29であり、R21~R28はそれぞれ独立して水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオ、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、アルキルジシクロアルキルシリル、置換されていてもよいアミノ、ハロゲン、ヒドロキシまたはシアノであり、R21~R28のうち隣接する基は互いに結合して炭化水素環、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、R29は水素または置換されていてもよいアリールである。
式(A)中のYは-O-であることが好ましい。
21~R28のうち隣接する基は互いに結合して炭化水素環、アリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよい。環を形成しない場合が下記式(A-1)で表される基であり、環を形成した場合としては例えば下記式(A-2)~式(A-14)で表される基があげられる。なお、式(A-1)~式(A-14)のいずれかで表される基における少なくとも1つの水素はアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アリールチオ、トリアルキルシリル、トリシクロアルキルシリル、ジアルキルシクロアルキルシリル、アルキルジシクロアルキルシリル、ジアリール(2つのアリールは互いに連結基を介して結合していてもよい)置換アミノ、ジヘテロアリール置換アミノ、アリールヘテロアリール置換アミノ、ハロゲン、ヒドロキシまたはシアノで置換されていてもよい。
Figure 2024089626000097
隣接する基が互いに結合してできた環としては、炭化水素環であれば例えばシクロヘキサン環があげられ、アリール環やヘテロアリール環としては上述したR21~R28における「アリール」や「ヘテロアリール」で説明した環構造があげられ、これらの環は式(A-1)における1つまたは2つのベンゼン環と縮合するように形成される。
式(A)で表される基は、式(A)のいずれかの位置の1つの水素を除いて得られる基であり、*が該位置を示す。すなわち、式(A)で表される基はいずれの位置を結合位置としていてもよい。例えば、式(A)の構造中の2つのベンゼン環上のいずれかの炭素原子、式(A)の構造中のR21~R28のうち隣接する基が互いに結合して形成されたいずれかの環上の原子、または式(A)の構造中のYとしての「>N-R29」におけるR29中のいずれかの位置、または「>N-R29」におけるN(R29が結合手となる)と直接結合する基となることができる。式(A-1)~式(A-14)のいずれかで表される基においても同様である。
式(A)で表される基としては、例えば式(A-1)~式(A-14)のいずれかで表される基があげられ、式(A-1)~式(A-5)および式(A-12)~式(A-14)のいずれかで表される基が好ましく、式(A-1)~式(A-4)のいずれかで表される基がより好ましく、式(A-1)、式(A-3)および式(A-4)のいずれかで表される基がさらに好ましく、式(A-1)で表される基が特に好ましい。
式(A)で表される基としては、例えば以下の基があげられる。式中のYおよび*は上記と同じ定義である。
Figure 2024089626000098
Figure 2024089626000099
式(3-H)で表される化合物においては、式(A)で表される基は、式(3-X1)または式(3-X2)中のナフタレン環、式(3-X3)中の単結合および式(3-X3)中のAr3のいずれか1つと結合した形態が好ましい。
また、式(3-H)で表されるアントラセン化合物の化学構造中の水素は、その全てまたは一部が重水素であってもよい。
ホストとしてのアントラセン化合物は、例えば下記式(3-H2)で表される化合物であってもよい。
Figure 2024089626000100
式(3-H2)中、Arcは、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり、Rcは、水素、アルキル、またはシクロアルキルであり、Ar11、Ar12、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16、Ar17、およびAr18は、それぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいジアリールアミノ、置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ、置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルコキシ、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよいアリールチオ、または置換されていてもよいシリルであり、式(3-H2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲン、シアノ、または重水素で置換されていてもよい。
式(3-H2)中の、「置換されていてもよいアリール」、「置換されていてもよいヘテロアリール」、「置換されていてもよいジアリールアミノ、「置換されていてもよいジヘテロアリールアミノ」、「置換されていてもよいアリールヘテロアリールアミノ」、「置換されていてもよいアルキル」、「置換されていてもよいシクロアルキル」、「置換されていてもよいアルケニル」、「置換されていてもよいアルコキシ」、「置換されていてもよいアリールオキシ」、「置換されていてもよいアリールチオ」、または「置換されていてもよいシリル」の定義は上記式(3-H)でされたものと同様であり、式(3-H)における説明を引用することができる。
「置換されていてもよいアリール」としては、下記式(3-H2-X1)~式(3-H2-X8)のいずれかで表される基であることも好ましい。
Figure 2024089626000101
式(3-H2-X1)~式(3-H2-X8)において、*は結合位置を示す。式(3-H2-X1)~式(3-H2-X3)において、Ar21、Ar22、およびAr23は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、アントラセニル、または式(A)で表される基である。なお、式(3-H2)の説明において、式(A)で表される基は、式(3-H)で表されるアントラセン化合物において説明したものと同じである。
式(3-H2-X4)~式(3-H2-X8)において、Ar24、Ar25、Ar26、Ar27、Ar28、Ar29、およびAr30は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または式(A)で表される基である。また、式(3-H2-X1)~式(3-H2-X8)で表される基のそれぞれにおけるいずれか1つまたは2つ以上の水素は、炭素数1~6のアルキル(好ましくはメチルまたはt-ブチル)で置換されていてもよい。
さらに、「置換されていてもよいアリール」の好ましい例としては、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、および式(A)で表される基からなる群より選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい、テルフェニリル(特に、m-テルフェニル-5’-イル)があげられる。
「置換されていてもよいヘテロアリール」としては、式(A)で表される基もあげられる。そのほか、「置換されていてもよいアリール」および「置換されていてもよいヘテロアリール」の具体例としては、ジベンゾフリル、ナフトベンゾフリル、フェニル置換ジベンゾフリル等があげられる。
式(3-H2)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲン、シアノ、または重水素で置換されていてもよい。この場合の「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素があげられる。特に、式(3-H2)で表される化合物における全ての水素が重水素で置換された化合物が好ましい。
式(3-H2)中、Rcは水素、アルキル、またはシクロアルキルであり、水素、メチル、またはt-ブチルであることが好ましく、水素であることがより好ましい。
式(3-H2)中、Ar11~Ar18の少なくとも2つが置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであることが好ましい。すなわち、式(3-H2)で表されるアントラセン化合物は、アントラセン環に、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択される置換基が少なくとも3つ結合した構造を有することが好ましい。
式(3-H2)で表されるアントラセン化合物は、Ar11~Ar18の2つが置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり、他の6つが水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルケニル、または置換されていてもよいアルコキシであることがより好ましい。すなわち、式(3-H2)で表されるアントラセン化合物は、置換されていてもよいアリールおよび置換されていてもよいヘテロアリールからなる群より選択される置換基が、アントラセン環に3つ結合した構造を有することがより好ましい。
式(3-H2)で表されるアントラセン化合物は、Ar11~Ar18のいずれか2つが置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり、他の6つが水素、メチル、またはt-ブチルであることがより好ましい。
さらに、式(3-H2)中、Rcが水素であり、かつAr11~Ar18のいずれか6つが水素であることが好ましい。
式(3-H2)で表されるアントラセン化合物は下記式(3-H2-A)、(3-H2-B)、(3-H2-C)、(3-H2-D)、または(3-H2-E)で表されるアントラセン化合物であることが好ましい。
Figure 2024089626000102
式(3-H2-A)、(3-H2-B)、(3-H2-C)、(3-H2-D)または(3-H2-E)中、Arc’、Ar11’、Ar12’、Ar13’、Ar14’、Ar15’、Ar17’、およびAr18’はそれぞれ独立してフェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または、式(A)で表される基であり、これらの基における少なくとも1つの水素は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、クアテルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または、式(A)で表される基で置換されていてもよい。ここで、フルオレニルおよびベンゾフルオレニルにおけるメチレンの水素がいずれもフェニルで置換されているときは、これらのフェニルは互いに単結合で結合していてもよい。Arc’、Ar11’、Ar12’、Ar13’、Ar14’、Ar15’、Ar17’、およびAr18’が結合していないアントラセン環の炭素原子には水素の代わりにメチルまたはt-ブチルが結合していてもよい。
Arc’、Ar11’、Ar12’、Ar13’、Ar14’、Ar15’、Ar17’、およびAr18’が、それぞれ置換もしくは無置換のフェニルまたは置換もしくは無置換のナフチルであるときは、上記の式(3-H2-X1)~式(3-H2-X8)のいずれかで表される基であることが好ましい。
Arc’、Ar11’、Ar12’、Ar13’、Ar14’、Ar15’、Ar17’、およびAr18’はそれぞれ独立してフェニル、ビフェニリル(特に、ビフェニル-2-イルまたはビフェニル-4-イル)、テルフェニリル(特に、m-テルフェニル-5’-イル)、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、または、上記の式(A-1)~式(A-4)のいずれかで表される基であることがより好ましく、このとき、これらの基における少なくとも1つの水素は、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、または、上記の式(A-1)~式(A-4)のいずれかで表される基で置換されていてもよい。
また、式(3-H2-A)、(3-H2-B)、(3-H2-C)、(3-H2-D)、または(3-H2-E)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲン、シアノ、または重水素置換されていてもよい。また重水素化された形態は好ましく、アントラセン環がすべて重水素化された形態、あるいはすべての水素原子が重水素化された形態が好ましい。
特に好ましい式(3-H2)で表されるアントラセン化合物として、下記式(3-H2-Aa)で表されるアントラセン化合物をあげることができる。
Figure 2024089626000103
式(3-H2-Aa)中、Arc’、Ar14’、およびAr15’はそれぞれ独立して、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または上記式(A-1)~式(A-11)のいずれかで表される基であり、これらの基における少なくとも1つの水素は、フェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、ベンゾフルオレニル、クリセニル、トリフェニレニル、ピレニル、または式(A-1)~式(A-11)のいずれかで表される基で置換されていてもよい。ここで、フルオレニルおよびベンゾフルオレニルにおけるメチレンの水素がいずれもフェニルで置換されているときは、これらのフェニルは互いに単結合で結合していてもよい。また、Arc’、Ar14’、およびAr15’が結合していないアントラセン環上の炭素原子には水素の代わりにメチルまたはt-ブチルが置換していてもよい。式(3-H2-Aa)で表される化合物における少なくとも1つの水素はハロゲンまたはシアノで置換されていてもよく、かつ式(3-H2-Aa)で表される化合物における少なくとも1つの水素は重水素で置換されている。
式(3-H2-Aa)中、Arc’、Ar14’、およびAr15’はそれぞれ独立してフェニル、ビフェニリル、テルフェニリル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、または上記式(A-1)~式(A-4)のいずれかで表される基であることが好ましく、これらの基における少なくとも1つの水素は、フェニル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、または式(A-1)~式(A-4)のいずれかで表される基で置換されていてもよい。
式(3-H2-Aa)で表される化合物においては、少なくとも、アントラセン環の10位の炭素(Arc’が結合する炭素を9位とする)に結合する水素が重水素に置換されていることが好ましい。すなわち、式(3-H2-Aa)で表される化合物は、下記式(3-H2-Ab)で表される化合物であることが好ましい。なお、式(3-H2-Ab)中、Dは重水素であり、Arc’、Ar14’、およびAr15’は式(3-H2-Aa)中の定義と同一である。式(3-H2-Ab)におけるDは少なくともこの位置が重水素であることを示し、式(3-H2-Ab)におけるその他のいずれか1つ以上の水素が同時に重水素であってもよく、式(3-H2-Ab)における水素がいずれも重水素であることも好ましい。
Figure 2024089626000104
アントラセン化合物の具体的な例としては、例えば、式(3-131-Y)~式(3-182-Y)で表される化合物、式(3-183-N)、式(3-184-Y)~式(3-284-Y)、および式(3-500)~式(3-557)、および式(3-600)~式(3-605)、および式(3-606-Y)~式(3-626-Y)で表される化合物があげられる。これら式中の水素原子は部分的に、またはすべて重水素で置換されていてもよいが、特に好ましい重水素置換の形態に関しては個別に列挙している。式中のYは-O-、-S-、>N-R29(R29は上記と同じ定義)または>C(-R302(R30は連結していてもよいアリール、またはアルキル)のいずれでもよく、R29は例えばフェニル、R30は例えばメチルである。式番号は、例えばYがOの場合は、式(3-131-Y)は式(3-131-O)とし、Yが-S-または>N-R29の場合はそれぞれ式(3-131-S)または式(3-131-N)とする。
Figure 2024089626000105
Figure 2024089626000106
Figure 2024089626000107
Figure 2024089626000108
Figure 2024089626000109
Figure 2024089626000110
Figure 2024089626000111
Figure 2024089626000112
Figure 2024089626000113
Figure 2024089626000114
Figure 2024089626000115
Figure 2024089626000116
Figure 2024089626000117
Figure 2024089626000118
Figure 2024089626000119
Figure 2024089626000120
Figure 2024089626000121
Figure 2024089626000122
Figure 2024089626000123
Figure 2024089626000124
上記式中、Dは重水素である。
これらの化合物の中でも、式(3-131-Y)~式(3-134-Y)、式(3-138-Y)、式(3-140-Y)~式(3-143-Y)、式(3-150-Y)、式(3-153-Y)~式(3-156-Y)、式(3-166-Y)、式(3-168-Y)、式(3-173-Y)、式(3-177-Y)、式(3-180-Y)~式(3-183-N)、式(3-185-Y)、式(3-190-Y)、式(3-223-Y)、式(3-241-Y)、式(3-250-Y)、式(3-252-Y)~式(3-254-Y)、式(3-270-Y)~式(3-284-Y)、式(3-501)、式(3-507)、式(3-508)、式(3-509)、式(3-513)、式(3-514)、式(3-519)、式(3-521)、式(3-538)~式(3-547)もしくは式(3-600)~式(3-605)、および式(3-606-Y)~式(3-626-Y)で表される化合物が好ましい。また、Yは、-O-または>N-R29が好ましく、-O-であることがより好ましい。また重水素置換の形態も好ましい。
上記のアントラセン化合物は、アントラセン骨格の所望の位置に反応性基を有する化合物と、式(3-H)で表されるアントラセン化合物であればX、Ar4および式(A)の構造などの部分構造に反応性基を有する化合物を出発原料として、鈴木カップリング、根岸カップリング、その他の公知のカップリング反応を応用して製造することができる。これらの反応性化合物の反応性基としては、ハロゲンやボロン酸などがあげられる。具体的な製造方法としては、例えば国際公開第2014/141725号の段落[0089]~[0175]における合成法を参考にすることができる。
[フルオレン化合物]
式(4-H)で表される化合物は基本的にはホストとして機能する。
Figure 2024089626000125
式(4-H)中、
1からR10は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して式(4-H)におけるフルオレン骨格と結合していてもよい)、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、また、R1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7、R7とR8またはR9とR10がそれぞれ独立して結合して縮合環またはスピロ環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して当該形成された環と結合していてもよい)、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、式(4-H)で表される化合物における少なくとも1つの水素がハロゲン、シアノまたは重水素で置換されていてもよい。
式(4-H)の定義における各基の詳細は、上述した、式(1)における説明を引用することができる。
1からR10におけるアルケニルとしては、例えば、炭素数2~30のアルケニルがあげられ、炭素数2~20のアルケニルが好ましく、炭素数2~10のアルケニルがより好ましく、炭素数2~6のアルケニルがさらに好ましく、炭素数2~4のアルケニルが特に好ましい。好ましいアルケニルは、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、または5-ヘキセニルである。
なお、ヘテロアリールの具体例として、下記式(4-Ar1)、式(4-Ar2)、式(4-Ar3)、式(4-Ar4)または式(4-Ar5)の化合物から任意の1つの水素原子を除いて表される1価の基もあげられる。
Figure 2024089626000126
式(4-Ar1)から式(4-Ar5)中、Y1は、それぞれ独立して、O、SまたはN-Rであり、Rはフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニルまたは水素であり、式(4-Ar1)から式(4-Ar5)の構造における少なくとも1つの水素はフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルで置換されていてもよい。
これらのヘテロアリールは、連結基を介して、式(4-H)におけるフルオレン骨格と結合していてもよい。すなわち、式(4-H)におけるフルオレン骨格と上記ヘテロアリールとが直接結合するだけでなく、それらの間に連結基を介して結合してもよい。この連結基としては、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、-OCH2CH2-、-CH2CH2O-、または、-OCH2CH2O-などがあげられる。
また、式(4-H)中のR1とR2、R2とR3、R3とR4、R5とR6、R6とR7またはR7とR8がそれぞれ独立して結合して縮合環を、R9とR10が結合してスピロ環を形成していてもよい。R1からR8により形成された縮合環は、式(4-H)におけるベンゼン環に縮合する環であり、脂肪族環または芳香族環である。好ましくは芳香族環であり、式(4-H)におけるベンゼン環を含めた構造としてはナフタレン環やフェナントレン環などがあげられる。R9とR10により形成されたスピロ環は、式(4-H)における5員環にスピロ結合する環であり、脂肪族環または芳香族環である。好ましくは芳香族環であり、フルオレン環などがあげられる。
式(4-H)で表される化合物は、好ましくは、下記式(4-H-1)、式(4-H-2)または式(4-H-3)で表される化合物であり、それぞれ、式(4-H)においてR1とR2が結合して形成されたベンゼン環が縮合した化合物、式(4-H)においてR3とR4が結合して形成されたベンゼン環が縮合した化合物、式(4-H)においてR1からR8のいずれもが結合していない化合物である。
Figure 2024089626000127
式(4-H-1)、式(4-H-2)および式(4-H-3)におけるR1からR10の定義は式(4-H)において対応するR1からR10と同じであり、式(4-H-1)および式(4-H-2)におけるR11からR14の定義も式(4-H)におけるR1からR10と同じである。
式(4-H)で表される化合物は、さらに好ましくは、下記式(4-H-1A)、式(4-H-2A)または式(4-H-3A)で表される化合物であり、それぞれ、式(4-H-1)、式(4-H-2)または式(4-H-3)においてR9とR10が結合してスピロ-フルオレン環が形成された化合物である。
Figure 2024089626000128
式(4-H-1A)、式(4-H-2A)および式(4-H-3A)におけるR2からR7の定義は式(4-H-1)、式(4-H-2)および式(4-H-3)において対応するR2からR7と同じであり、式(4-H-1A)および式(4-H-2A)におけるR11からR14の定義も式(4-H-1)および式(4-H-2)におけるR11からR14と同じである。
また、式(4-H)で表される化合物における水素は、その全てまたは一部がハロゲン、シアノまたは重水素で置換されていてもよい。
ホストとしてのフルオレン化合物のさらに具体的な例としては、以下の構造式で表される化合物があげられる。
Figure 2024089626000129
[ジベンゾクリセン化合物]
ホストとしてのジベンゾクリセン化合物は、例えば下記式(5-H)で表される化合物である。
Figure 2024089626000130
式(5-H)中、R1からR16は、それぞれ独立して、水素、アリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して式(5-H)におけるジベンゾクリセン骨格と結合していてもよい)、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシであり、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、また、R1からR16のうち隣接する基同士が結合して縮合環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール(当該ヘテロアリールは連結基を介して当該形成された環と結合していてもよい)、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリールオキシで置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキルで置換されていてもよく、式(5-H)で表される化合物における少なくとも1つの水素がハロゲン、シアノまたは重水素で置換されていてもよい。
式(5-H)の定義における各基の詳細は、上述した、式(1)における説明を引用することができる。
式(5-H)の定義におけるアルケニルとしては、例えば、炭素数2~30のアルケニルがあげられ、炭素数2~20のアルケニルが好ましく、炭素数2~10のアルケニルがより好ましく、炭素数2~6のアルケニルがさらに好ましく、炭素数2~4のアルケニルが特に好ましい。好ましいアルケニルは、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、または5-ヘキセニルである。
なお、ヘテロアリールの具体例として、下記式(5-Ar1)、式(5-Ar2)、式(5-Ar3)、式(5-Ar4)または式(5-Ar5)の化合物から任意の1つの水素原子を除いて表される1価の基もあげられる。
Figure 2024089626000131
式(5-Ar1)から式(5-Ar5)中、Y1は、それぞれ独立して、O、SまたはN-Rであり、Rはフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニルまたは水素であり、式(5-Ar1)から式(5-Ar5)の構造における少なくとも1つの水素はフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルで置換されていてもよい。
これらのヘテロアリールは、連結基を介して、式(5-H)におけるジベンゾクリセン骨格と結合していてもよい。すなわち、式(5-H)におけるジベンゾクリセン骨格と上記ヘテロアリールとが直接結合するだけでなく、それらの間に連結基を介して結合してもよい。この連結基としては、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、-OCH2CH2-、-CH2CH2O-、または、-OCH2CH2O-などがあげられる。
式(5-H)で表される化合物は、好ましくは、R1、R4、R5、R8、R9、R12、R13およびR16は水素である。この場合、式(5-H)中のR2、R3、R6、R7、R10、R11、R14およびR15は、それぞれ独立して、水素、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、式(5-Ar1)、式(5-Ar2)、式(5-Ar3)、式(5-Ar4)もしくは式(5-Ar5)の構造を有する1価の基(当該構造を有する1価の基は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、-OCH2CH2-、-CH2CH2O-、または、-OCH2CH2O-を介して、式(5-H)におけるジベンゾクリセン骨格と結合していてもよい)、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルであることが好ましい。
式(5-H)で表される化合物は、より好ましくは、R1、R2、R4、R5、R7、R8、R9、R10、R12、R13、R15およびR16は水素である。この場合、式(5-H)中のR3、R6、R11およびR14の少なくとも1つ(好ましくは1つまたは2つ、より好ましくは1つ)は、単結合、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、メチレン、エチレン、-OCH2CH2-、-CH2CH2O-、または、-OCH2CH2O-を介した、式(5-Ar1)、式(5-Ar2)、式(5-Ar3)、式(5-Ar4)または式(5-Ar5)の構造を有する1価の基であり、前記少なくとも1つ以外(すなわち、前記構造を有する1価の基が置換した位置以外)は水素、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルであり、これらにおける少なくとも1つの水素は、フェニル、ビフェニリル、ナフチル、アントラセニル、メチル、エチル、プロピル、または、ブチルで置換されていてもよい。
また、式(5-H)中のR2、R3、R6、R7、R10、R11、R14およびR15として、式(5-Ar1)から式(5-Ar5)で表される構造を有する1価の基が選択された場合には、当該構造における少なくとも1つの水素は式(5-H)中のR1からR16のいずれかと結合して単結合を形成していてもよい。
ホストとしてのジベンゾクリセン化合物のさらに具体的な例としては、以下の構造式で表される化合物があげられる。
Figure 2024089626000132
Figure 2024089626000133
[式(H1)、(H2)および(H3)のいずれかで表される化合物]
ホスト材料としては、例えば、下記式(H1)、(H2)および(H3)のいずれかで表される化合物を用いることもできる。
Figure 2024089626000134
式(H1)、(H2)および(H3)中、L1は、単結合、または少なくともアリーレンもしくはヘテロアリーレンを含む二価の基である。具体的には、L1は単結合であるか、または炭素数6~24のアリーレン、炭素数2~24のヘテロアリーレン、炭素数6~24のヘテロアリーレンアリーレンもしくは炭素数6~24のアリーレンヘテロアリーレンアリーレン、またはこれらのいずれか2つを-O-、-S-、-CH2-、-Si(-Arx)2-(Arxはアリール)、またはシクロアルキレンで連結して形成される二価の基であればよい。L1中のアリーレンとしては、炭素数6~16のアリーレンが好ましく、炭素数6~12のアリーレンがより好ましく、炭素数6~10のアリーレンが特に好ましく、具体的には、ベンゼン環、ビフェニル環、テルフェニル環およびフルオレン環などの二価の基があげられる。L1中のヘテロアリーレンとしては、炭素数2~24のヘテロアリーレンが好ましく、炭素数2~20のヘテロアリーレンがより好ましく、炭素数2~15のヘテロアリーレンがさらに好ましく、炭素数2~10のヘテロアリーレンが特に好ましく、具体的には、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環(フラザン環等)、チアジアゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、インドール環、イソインドール環、1H-インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、1H-ベンゾトリアゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、フェナジン環、インドリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、およびチアントレン環などの二価の基があげられる。上記各式で表される化合物における少なくとも1つの水素は、置換基群Zから選択される少なくとも1つの基または重水素で置換されていてもよく、例えば炭素数1~6のアルキル、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
好ましい具体例としては、以下に列挙したいずれかの構造式で表される化合物があげられる。なお、以下に列挙した構造式においては、少なくとも1つの水素が、ハロゲン、シアノ、炭素数1~4のアルキル(例えばメチルやt-ブチル)、フェニルまたはナフチルなどで置換されていてもよい。
Figure 2024089626000135
Figure 2024089626000136
Figure 2024089626000137
Figure 2024089626000138
[正孔輸送性ホスト材料(HH)および電子輸送性ホスト材料(EH)]
正孔輸送性ホスト材料(HH)および電子輸送性ホスト材料(EH)は、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)およびLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)について、以下の関係を満たす。
正孔輸送性ホスト材料(HH)のHOMOは電子輸送性ホスト材料(EH)のHOMOより浅く、かつ電子輸送性ホスト材料(EH)のLUMOは正孔輸送性ホスト材料(HH)のLUMOより深い。
また、エミッティングドーパントのHOMOが正孔輸送性ホスト材料(HH)のHOMOより浅いか、または、エミッティングドーパントのLUMOが電子輸送性ホスト材料(EH)のLUMOより深いことが好ましい。
また、正孔輸送性ホスト材料(HH)および電子輸送性ホスト材料(EH)の最低励起三重項エネルギー準位(ET1)は、発光層内でのTADFの発生を阻害せず促進させる観点から、発光層内において最も高いET1を有するエミッティングドーパントまたはアシスティングドーパントのET1に比べて高いことが好ましく、具体的には、ホスト材料のET1は、上記のエミッティングドーパントまたはアシスティングドーパントのET1に比べて0.01eV以上高いことが好ましく、0.03eV以上高いことがより好ましく、0.1eV以上高いことがさらに好ましい。また、ホスト材料のET1は2.47eV以上が好ましく、2.49eV以上がより好ましく、2.56eV以上が更に好ましい。
なお、発光層に隣接する正孔輸送層に正孔輸送性ホスト材料を用い、かつこの発光層に隣接する電子輸送層に電子輸送性ホスト材料を用いることも好ましい。発光層から隣接層へのキャリア漏れ・エネルギー漏れが起こりにくくなり、高い効率の有機EL素子が得られるからである。発光層中のホスト材料(正孔輸送性ホスト材料)と正孔輸送層材料とは同じであっても異なっていてもよい。また、発光層中のホスト材料(電子輸送性ホスト材料)と電子輸送層の材料とは同じであっても異なっていてもよい。
好ましい正孔輸送性ホスト材料(HH)の例としては、式(HH-1)で表されるか、または式(HH-1)で表される部分構造を有し、アリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも3つの環を含む構造を有する化合物をあげることができる。この化合物は、イミン構造(-N=C-;ヘテロアリール環の部分構造を含む)、ホウ素(>B-)、およびシアノ(CN)のいずれも含まないことが好ましい。
Figure 2024089626000139
式(HH-1)において、
Qは、>O、>S、または、>N-AHであり、
式(HH-1)における2つのフェニルそれぞれにおけるQの結合する炭素原子の隣の1つの炭素原子は、互いに、Lで結合していてもよく、
Lは、単結合、>O、>S、または>C(-AH2であり、
Hは、水素、アリール、またはヘテロアリールであり、>C(-AH2における2つのAHは互いに結合していてもよい。
正孔輸送性ホスト材料が式(HH-1)で表される構造を部分構造として含むとき、この部分構造を1つ含むものであってもよいが2つ以上含むことも好ましい。2つ以上含む場合、その2つ以上の部分構造は互いに同じであっても異なっていてもよい。2つ以上の部分構造は互いに単結合で結合していてもよく、部分構造に含まれる任意の環を共有するようにして結合していてもよく、部分構造に含まれる任意の環同士が縮合するようにして結合していてもよい。部分構造はさらに、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、またはアリールオキシから選択される置換基を有していてもよい。
上記の式(HH-1)で表されるか、または式(HH-1)で表される部分構造を有する化合物は、アリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも3つの環を含む構造を有する。含まれる環の数は6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。また、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。環の数は単環としての数を意味し、縮合環については、縮合環を構成する単環を数えた数とする。
正孔輸送性ホスト材料は、トリアリールアミン構造、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、およびフェノキサジンもしくはフェノチアジンを含む縮合多環からなる群より選択される1つ以上の部分構造を含む化合物であることが好ましい。正孔輸送性ホスト材料はこのような部分構造を1つ含むものであってもよいが2つ以上含むことも好ましい。2つ以上含む場合、その2つ以上の部分構造は互いに同じであっても異なっていてもよい。
正孔輸送性ホスト材料の具体例としては、以下の化合物をあげることができる。
Figure 2024089626000140
Figure 2024089626000141
Figure 2024089626000142
Figure 2024089626000143
Figure 2024089626000144
Figure 2024089626000145
Figure 2024089626000146
Figure 2024089626000147
Figure 2024089626000148
Figure 2024089626000149
Figure 2024089626000150
Figure 2024089626000151
Figure 2024089626000152
上記のうち、HH-1-1、HH-1-2、HH-1-4~HH-1-12、HH-1-17、HH-1-18、HH-1-20~HH-1-24、HH-1-82、HH-1-84~HH-1-89、HH-1-91、HH-1-92、HH-1-106~HH-1-108、およびHH-1-109~HH-1-115が好ましい。
電子輸送性ホスト材料(EH)の例としては、式(EH-1A)~(EH-1D)で表されるか、または式(EH-1A)~(EH-1D)で表される部分構造を有し、アリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも3つの環を含む構造を有する化合物をあげることができる。
Figure 2024089626000153
式(EH-1A)~(EH-1D)において、
Arは、N=Cを環を構成する部分構造として含むヘテロアリール環であり、
Zは、単結合、-O-、-S-、または-N(-AE)-であり、
Zの結合する炭素原子の隣の炭素原子とZの結合するAEとは、互いにLで結合していてもよく、
Lは、単結合、>O、>Sまたは>C(-AE2であり、
Eは、アリール、ヘテロアリール、またはトリアリールシリルであり、>C(-AE2における2つのAEは互いに結合していてもよく、
XはC,PまたはSであり、
XがCのとき、n=2、m=1であり、
XがPのとき、n=3、m=1であり、
XがSのとき、n=2、m=1~2である。
上記の式(EH-1A)~(EH-1D)で表されるか、または式(EH-1A)~(EH-1D)で表される部分構造を有する化合物はアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも3つの環を含む構造を有する。含まれる環の数は4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましい。また、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。環の数は単環としての数を意味し、縮合環については、縮合環を構成する単環を数えた数とする。
電子輸送性ホスト材料が式(EH-1A)~(EH-1D)で表される構造を部分構造として含むとき、この部分構造を1つ含むものであってもよいが2つ以上含むことも好ましい。2つ以上含む場合、その2つ以上の部分構造は互いに同じであっても異なっていてもよい。2つ以上の部分構造は互いに単結合で結合していてもよく、部分構造に含まれる任意の環を共有するようにして結合していてもよく、部分構造に含まれる任意の環同士が縮合するようにして結合していてもよい。部分構造はさらに、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、またはアリールオキシから選択される置換基を有していてもよい。
電子輸送性ホスト材料の具体例としては、以下の化合物をあげることができる。
Figure 2024089626000154
Figure 2024089626000155
Figure 2024089626000156
Figure 2024089626000157
Figure 2024089626000158
Figure 2024089626000159
Figure 2024089626000160
Figure 2024089626000161
Figure 2024089626000162
電子輸送性ホスト材料(式(EH-1)で表される部分構造を有する化合物)の別の好ましい例として、下記式(EH-1b)で表される多環芳香族化合物、または下記式(EH-1b)で表される構造を複数有する多環芳香族化合物の多量体をあげることができる。
Figure 2024089626000163
式(EH-1b)において、
1、R2、R3、R4およびR5(以降、「R1等」ともいう)は、それぞれ独立して、水素または置換基である。この置換基は置換基群Zより選択される置換基であればよい。
式(EH-1b)において、X1およびX2は、それぞれ独立して、>N-R(アミン性窒素)、>O、>C(-R)2、>Sまたは>Seであり、X1およびX2が共に>C(-R)2になることはなく、
前記>N-Rおよび>C(-R)2におけるRは、それぞれ独立して、水素または置換基群Zより選択される置換基であり、さらに、アリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2置換基)で置換されていてもよく、前記>N-Rおよび>C(-R)2のRはそれぞれ独立して連結基または単結合により前記a環、b環およびc環の少なくとも1つの環と結合していてもよい。
1、Y2、Y3、Y4、Y5およびY6(以降、「Y1等」ともいう)は、それぞれ独立して、=C(-R)-または=N-(ピリジン性窒素)であり、少なくとも1つは=N-(ピリジン性窒素)であり、
前記=C(-R)-におけるRは、それぞれ独立して、水素または置換基群Zより選択される置換基である。
前記R1、R2、R3、R4およびR5、ならびに、前記Y1~Y6としての=C(-R)-のRのうちの隣接する基同士が結合してa環、b環およびc環の少なくとも1つの環と共にアリール環またはヘテロアリール環を形成していてもよく、形成された環における少なくとも1つの水素は、アリール、ヘテロアリール、ジアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、ジアリールボリル(2つのアリールは単結合または連結基を介して結合していてもよい)、アルキル、シクロアルキル、アルコキシまたはアリールオキシ(以上、第1置換基)で置換されていてもよく、これらにおける少なくとも1つの水素はさらにアリール、ヘテロアリール、アルキルまたはシクロアルキル(以上、第2置換基)で置換されていてもよい。
式(EH-1b)で表される化合物および構造における少なくとも1つの水素は、シアノ、ハロゲンまたは重水素で置換されていてもよい。
式(EH-1b)において、R1、R2、R3、R4およびR5はいずれも水素であるか、または、R3およびR4がいずれも水素であり、かつR1、R2およびR5からなる群より選択されるいずれか1つ以上が水素以外の置換基であり、その他が水素であることが好ましい。置換基としては、アルキル、アルキルもしくはヘテロアリールで置換されていてもよいアリール、アルキルもしくはアリールで置換されていてもよいヘテロアリール、またはアルキルもしくはアリールで置換されていてもよいジアリールアミノが好ましい。このとき、アルキルとしては、炭素数1~6のアルキル(メチル、t-ブチルなど)が好ましく、アリールとしてはフェニルまたはビフェニルが好ましく、ヘテロアリールとしては、トリアジニル、カルバゾリル(2-カルバゾリル、3-カルバゾリル、9-カルバゾリルなど)、ピリミジニル、ピリジニル、ジベンゾフラニルまたはジベンゾチエニルが好ましい。具体例としては、フェニル、ビフェニル、ジフェニルトリアジニル、カルバゾリルトリアジニル、モノフェニルピリミジニル、ジフェニルピリミジニル、カルバゾリルトリアジニル、ピリジニル、ジベンゾフラニルおよびジベンゾチエニルがあげられる。
1等は、それぞれ独立して、=C(-R)-または=N-であり、少なくとも1つは=N-である。Y1~Y6のいずれが=N-であってもよい。好ましくは、Y1およびY6が=N-(a環がピリミジン環)、Y1またはY6が=N-(a環がピリジン環)、Y2およびY5が=N-(b環およびc環がピリジン環)、Y3およびY4が=N-(b環およびc環がピリジン環)、Y2~Y5が=N-(b環およびc環がピリミジン環)、Y1、Y3、Y4およびY6が=N-(a環がピリミジン環、b環およびc環がピリジン環)、Y1、Y2、Y5およびY6が=N-(a環がピリミジン環、b環およびc環がピリジン環)、Y1~Y6が=N-(a環、b環およびc環がピリミジン環)、Y2またはY5が=N-(b環またはc環がピリジン環)である。
また、以上の=N-の配置関係に加えて、X1およびX2が>Oであることが好ましく、下記式のいずれかで表される部分構造を含む多環芳香族化合物が好ましい。
Figure 2024089626000164
特に、式(EH-1b-N1)で表される部分構造を含む多環芳香族化合物は、Nがない構造と比べ、高いES1、高いET1、小さいΔES1T1を有する。
式(EH-1b)で表される多環芳香族化合物の具体例を以下に示す。
Figure 2024089626000165
Figure 2024089626000166
Figure 2024089626000167
Figure 2024089626000168
Figure 2024089626000169
Figure 2024089626000170
上記のうち、EH-1-1~EH-1-4、EH-1-10、EH-1-21~EH-1-25、EH-1-32、EH-1-33、EH-1-51~EH-1-59、EH-1-61、EH-1-66、EH-1-68、EH-1-71、EH-1-72、EH-1-90、EH-1-94~EH-1-99、EH-1-100、EH-1-101、EH-1-104,EH-1-115、EH-1-117、EH-1-120、EH-1-122、EH-1-123、EH-1-127~EH-1-130が好ましい。
[正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料の組み合わせ]
正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料の組み合わせは、正孔輸送性ホスト材料、電子輸送性ホスト材料およびドーパント材料のHOMO、LUMOおよび最低励起三重項エネルギー準位(ET1)によって選択される。
HOMOおよびLUMOに関しては、正孔輸送性ホスト材料のHOMO(HH)が電子輸送性ホスト材料のHOMO(EH)より浅く、電子輸送性ホスト材料のLUMO(EH)が正孔輸送性ホスト材料のLUMO(HH)より深い組み合わせを選び、より具体的には、HOMO(HH)がHOMO(EH)より0.10eV以上浅く、LUMO(HH)がHOMO(EH)より0.10eV以上深い組み合わせが好ましく、HOMO(HH)がHOMO(EH)より0.20eV以上浅く、LUMO(HH)がHOMO(EH)より0.20eV以上深い組み合わせがより好ましく、HOMO(HH)がHOMO(EH)より0.25eV以上浅く、LUMO(HH)がHOMO(EH)より0.25eV以上深い組み合わせがさらに好ましい。
正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料はエキサイプレックス(exciplex)と呼ばれる会合体を形成する組み合わせであってもよい。エキサイプレックスは、比較的深いLUMO準位をもつ材料と、浅いHOMO準位をもつ材料間との間で形成しやすいことが一般に知られている。正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料の相互作用、具体的にはエキサイプレックスを形成しているか否かは、正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料のみからなる単層膜を発光層の形成条件と同様にして形成して発光スペクトル(蛍光、りん光スペクトル)を測定し、得られた発光スペクトルを、正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料それぞれが単独で示す発光スペクトルとを比較することで判断できる。正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料を含む混合膜のスペクトルが、正孔輸送性ホスト材料の膜のスペクトル、および電子輸送性ホスト材料の膜のスペクトルのいずれとも異なる発光波長を示すことにより判断することができる。具体的には、スペクトルのピーク波長が10nm以上異なっていることを指標にすればよい。
エキサイプレックスを形成しない正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料の組み合わせの具体例としては以下の組み合わせをあげることができる。前記のHOMO、LUMOおよびET1の物性値を満たすために、正孔輸送性ホスト材料においては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、トリアリールアミン、インドロカルバゾールおよびベンゾオキサジノフェノキサジンを部分構造として有する化合物が好ましく、カルバゾール、ジベンゾフランおよびジベンゾチオフェンを部分構造として有する化合物がより好ましく、カルバゾールを部分構造として有する化合物がさらに好ましい。同様に、電子輸送性ホスト材料においては、ピリジン、トリアジン、ホスフィンオキシド、ベンゾフロピリジンおよびジベンゾオキサシリンを部分構造として有する化合物が好ましく、トリアジン、ホスフィンオキシド、ベンゾフロピリジンおよびジベンゾオキサシリンを部分構造として有する化合物がより好ましく、トリアジンを有する化合物がさらに好ましい。
より具体的には、正孔輸送性ホスト材料は、HH-1-1、HH-1-2、HH-1-4~HH-1-12、HH-1-17、HH-1-18、HH-1-20~HH-1-24、HH-1-82、HH-1-84~HH-1-89、HH-1-91、HH-1-92およびHH-1-106~HH-1-108からなる群より選択されることが好ましく、電子輸送性ホスト材料は、EH-1-1~EH-1-4、EH-1-10、EH-1-21~EH-1-25、EH-1-32、EH-1-33、EH-1-51~EH-1-59、EH-1-61、EH-1-71、EH-1-72、EH-1-90、EH-1-100、EH-1-101、EH-1-104、EH-1-117、EH-1-120、EH-1-122、EH-1-123、およびEH-1-127~EH-1-130からなる群より選択されることが好ましい。組み合わせとして好ましい例としては、化合物HH-1-1および化合物EH-1-22、化合物HH-1-1および化合物EH-1-23、化合物HH-1-1および化合物EH-1-24、化合物HH-1-2および化合物EH-1-22、化合物HH-1-2および化合物EH-1-23、化合物HH-1-2および化合物EH-1-24、または化合物HH-1-1および化合物EH-1-128があげられる。
エキサイプレックスを形成する正孔輸送性ホスト材料および電子輸送性ホスト材料の組み合わせの具体例としては以下の組み合わせをあげることができる。前記、HOMO、LUMOおよびET1の物性値を満たすために、正孔輸送性ホスト材料においては、カルバゾール、トリアリールアミン、インドロカルバゾールおよびベンゾオキサジノフェノキサジンを部分構造として有する化合物が好ましく、トリアリールアミン、インドロカルバゾールおよびベンゾオキサジノフェノキサジンを部分構造として有する化合物がより好ましく、トリアリールアミンを部分構造として有する化合物がさらに好ましい。同様に、電子輸送性ホスト材料においては、ピリジン、トリアジン、ホスフィンオキシドおよびベンゾフロピリジンを部分構造として有する化合物が好ましく、トリアジン、ホスフィンオキシド、ベンゾフロピリジンおよびジベンゾオキサシリンを部分構造として有する化合物がより好ましく、ホスフィンオキシドおよびトリアジンを有する化合物がさらに好ましい。
より具体的には、正孔輸送性ホスト材料は、HH-1-1、HH-1-2、HH-1-11、HH-1-12、HH-1-17、HH-1-18、HH-1-23、HH-1-24、およびHH-1-115からなる群より選択されることが好ましく、電子輸送性ホスト材料は、EH-1-1~EH-1-4、EH-1-21~EH-1-25、EH-1-51~EH-1-57、EH-1-59、EH-1-66、EH-1-68、EH-1-90、EH-1-94、EH-1-99、EH-1-100、EH-1-101、EH-1-104、EH-1-117、EH-1-120、EH-1-122、EH-1-123、およびEH-1-127~EH-1-130からなる群より選択されることが好ましい。組み合わせとして好ましい例としては、化合物HH-1-1および化合物EH-1-21、化合物HH-1-2および化合物EH-1-21、化合物HH-1-12および化合物EH-1-94、化合物HH-1-12および化合物EH-1-117、化合物HH-1-1および化合物EH-1-130、化合物HH-1-33および化合物EH-1-117、化合物HH-1-48および化合物EH-1-117、化合物HH-1-49および化合物EH-1-117、または化合物HH-1-115および化合物EH-1-99があげられる。
その他、具体的な正孔輸送性ホスト材料と電子輸送性ホスト材料との組み合わせについては、Organic Electronics 66(2019)227-24、Advanced.Functional Materials 25(2015)361-366.、Advanced Materials 26(2014)4730-4734.、ACS Applied Materials and Interfaces 8(2016)32984-32991.、ACS Applied Materials and Interfaces 2016,8,9806-9810、ACS Applied Materials and Interfaces 2016,8,32984-32991、Journal of Materials Chemisty C,2018,6,8784-8792、Angewante Chemie International Edition.2018,57,12380-12384、Advanced Functional Materials,24,2014,3970,Advanced Materials,26,2014,5684、Synthetic Metals,201,2015,49、およびNature Photonics,16,212-218(2022)などの記載を参照することができる。
<アシスティングドーパント(熱活性型遅延蛍光体またはりん光材料)>
発光層は、エミッティングドーパントおよびホスト材料とともにアシスティングドーパントを含んでいることも好ましい。アシスティングドーパントとしては熱活性型遅延蛍光体またはりん光材料が好ましい。
式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物は、上述のように、隣の分子との相互作用が抑えられており、TAF素子またはPSF素子のエミッティングドーパントとして好ましく用いることができる。
本態様において、ホスト化合物としては、公知のものを用いることができ、例えばカルバゾール環およびフラン環の少なくとも一方を有する化合物をあげることができ、中でも、フラニルおよびカルバゾリルの少なくとも一方と、アリーレンおよびヘテロアリーレンの少なくとも一方とが結合した化合物を用いることが好ましい。具体例として、式(H1)、(H2)および(H3)のいずれかで表される化合物、特にmCPやmCBP、ならびに、化合物HH-1-115およびEH-1-99などがあげられる。また、ホスト化合物にTADF活性な化合物を用いてもよい。本態様においては、ホストとして正孔輸送性ホスト材料と電子輸送性ホスト材料との組み合わせを用いることも好ましい。
ホスト化合物のりん光スペクトルのピーク短波長側の肩より求められる最低励起三重項エネルギー準位E(1,T,Sh)は、発光層内でのTADFの発生を阻害せず促進させる観点から、発光層内において最も高い最低励起三重項エネルギー準位を有するエミッティングドーパントまたはアシスティングドーパントの最低励起三重項エネルギー準位E(2,T,Sh)、E(3,T,Sh)に比べて高いことが好ましく、具体的には、ホスト化合物の最低励起三重項エネルギー準位E(1,T,Sh)はE(2,T,Sh)、E(3,T,Sh)に比べて、0.01eV以上高いことが好ましく、0.03eV以上高いことがより好ましく、0.1eV以上高いことがさらに好ましい。
[熱活性型遅延蛍光体]
「熱活性型遅延蛍光体」とは、熱エネルギーを吸収して最低励起三重項状態から最低励起一重項状態への逆項間交差を起こし、その最低励起一重項状態から放射失活して遅延蛍光を放射しうる化合物のことを意味する。ただし、「熱活性型遅延蛍光」とは、最低励起三重項状態から最低励起一重項状態への励起過程で高次三重項を経るものも含む。例えば、Durham大学 Monkmanらによる論文(NATURE COMMUNICATIONS,7:13680,DOI: 10.1038/ncomms13680)、産業技術総合研究所 細貝らによる論文(Hosokai et al., Sci. Adv. 2017;3: e1603282)、京都大学 佐藤らによる論文(Scientific Reports,7:4820, DOI:10.1038/s41598-017-05007-7)、同じく京都大学 佐藤らによる学会発表(日本化学会第98春季年会、発表番号:2I4-15、DABNAを発光分子として用いた有機電界発光における高効率発光の機構、京都大学大学院工学研究科)、Buiらによるレビュー(DOI:10.3762/bjoc.14.18)、Duanらによるレビュー(DOI:10.1063/1.5143501)、Dingらによるレビュー(DOI:10.1088/1674-4926/42/5/050201)およびXieらによるレビュー(DOI: 10.1002/adom.202002204)などがあげられる。本発明では、対象化合物を含むサンプルについて、300Kで蛍光寿命を測定したとき、遅い蛍光成分が観測されたことをもって該対象化合物が「熱活性型遅延蛍光体」であると判定することとする。ここで、遅い蛍光成分とは、蛍光寿命が0.1μsec以上であるもののことを言う。蛍光寿命の測定は、例えば蛍光寿命測定装置(浜松ホトニクス社製、C11367-01)を用いて行うことができる。
アシスティングドーパントとしての「熱活性型遅延蛍光体」をさらに含む発光層においては本発明の多環芳香族化合物は、エミッティングドーパントとして機能させることができる。すなわち、「熱活性型遅延蛍光体」は、本発明の多環芳香族化合物の発光をアシストするアシスティングドーパントとして機能させることができる。
本明細書では、熱活性型遅延蛍光体をアシスティングドーパントとして用いる有機電界発光素子を、「TAF素子」(TADF Assisting Fluorescence素子)ということがある。
TAF素子における「ホスト化合物」とは、蛍光スペクトルのピーク短波長側の肩より求められる最低励起一重項エネルギー準位が、アシスティングドーパントとしての熱活性型遅延蛍光体、および、エミッティングドーパントよりも高い化合物のことを意味する。
TAF素子で用いる熱活性型遅延蛍光体(TADF化合物)は、ドナーと呼ばれる電子供与性の置換基とアクセプターと呼ばれる電子受容性の置換基を用いて分子内のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)とLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)を局在化させて、効率的な逆項間交差(reverse intersystem crossing)が起きるようにデザインされた、ドナー-アクセプター型熱活性型遅延蛍光体(D-A型TADF化合物)であることが好ましい。
ここで、本明細書中において「電子供与性の置換基」(ドナー)とは、熱活性型遅延蛍光体分子中でHOMOが局在する置換基および部分構造のことを意味し、「電子受容性の置換基」(アクセプター)とは、熱活性型遅延蛍光体分子中でLUMOが局在する置換基および部分構造のことを意味することとする。
一般的に、ドナーやアクセプターを用いた熱活性型遅延蛍光体は、構造に起因してスピン軌道結合(SOC: Spin Orbit Coupling)が大きく、かつ、HOMOとLUMOの交換相互作用が小さくΔES1T1が小さいために、非常に速い逆項間交差速度が得られる。本発明の多環芳香族化合物をエミッティングドーパントとして、熱活性型遅延蛍光体(TADF材料)をアシスティングドーパントとして用いることにより、高い効率、高い色純度、および長寿命のいずれかまたは全てを満たす素子を与えることができる。熱活性型遅延蛍光体は、その発光スペクトルが本発明の多環芳香族化合物の吸収スペクトルと少なくとも一部重なる化合物であればよい。本発明の多環芳香族化合物と熱活性型遅延蛍光体とはいずれも同じ層に含まれていてもよく、隣接する層またはその他の近接する層に含まれていてもよい。
TAF素子における熱活性型遅延蛍光体として、例えばドナーおよびアクセプターが直接またはスペーサーを介して結合している化合物を用いることができる。本発明の熱活性型遅延蛍光体に用いられる電子供与性基(ドナー性の構造)および電子受容性基(アクセプター性の構造)としては、例えば、Chemistry of Materials, 2017, 29, 1946-1963に記載の構造を用いることができる。ドナー性の構造としては、カルバゾール、ジメチルカルバゾール、ジ-tert-ブチルカルバゾール、ジメトキシカルバゾール、テトラメチルカルバゾール、ベンゾフルオロカルバゾール、ベンゾチエノカルバゾール、フェニルジヒドロインドロカルバゾール、フェニルビカルバゾール、ビカルバゾール、ターカルバゾール、ジフェニルカルバゾリルアミン、テトラフェニルカルバゾリルジアミン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、フェノチアジン、ジメチルジヒドロアクリジン、ジフェニルアミン、ビス(tert-ブチルフェニル)アミン、N1-(4-(ジフェニルアミノ)フェニル)-N4,N4-ジフェニルベンゼン-1,4-ジアミン、ジメチルテトラフェニルジヒドロアクリジンジアミン、テトラメチル-ジヒドロ-インデノアクリジンおよびジフェニル-ジヒドロジベンゾアザシリンなどがあげられる。アクセプター性の構造としては、スルホニルジベンゼン、ベンゾフェノン、フェニレンビス(フェニルメタノン)、ベンゾニトリル、イソニコチノニトリル、フタロニトリル、イソフタロニトリル、パラフタロニトリル、ベンゼントリカルボニトリル、トリアゾール、オキサゾール、チアジアゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾビス(チアゾール)、ベンゾオキサゾール、ベンゾビス(オキサゾール)、キノリン、ベンゾイミダゾール、ジベンゾキノキサリン、ヘプタアザフェナレン、チオキサントンジオキシド、ジメチルアントラセノン、アントラセンジオン、5H-シクロペンタ[1,2-b:5,4-b’]ジピリジン、フルオレンジカルボニトリル、トリフェニルトリアジン、ピラジンジカルボニトリル、ピリミジン、フェニルピリミジン、メチルピリミジン、ピリジンジカルボニトリル、ジベンゾキノキサリンジカルボニトリル、ビス(フェニルスルホニル)ベンゼン、ジメチルチオキサンテンジオキシド、チアンスレンテトラオキシドおよびトリス(ジメチルフェニル)ボランがあげられる。特に、TAF素子における熱活性型遅延蛍光を有する化合物は、部分構造として、カルバゾール、フェノキサジン、アクリジン、トリアジン、ピリミジン、ピラジン、チオキサンテン、ベンゾニトリル、フタロニトリル、イソフタロニトリル、ジフェニルスルホン、トリアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾールおよびベンゾフェノンから選択される少なくとも1つを有する化合物であることが好ましい。
TAF素子における発光層のアシスティングドーパントとして用いる化合物は、熱活性型遅延蛍光体であって、その発光スペクトルがエミッティングドーパントの吸収ピークと少なくとも一部重なる化合物であることが好ましい。
[りん光材料(アシスティングドーパント)]
発光層においては、アシスティングドーパントとしてりん光材料を用いてもよい。本明細書において、りん光材料をアシスティングドーパントとして用いる有機電界発光素子をりん光アシスト素子:りん光増感蛍光(phosphor-sensitized fluorescent)素子、PSF素子ということがある。りん光材料は金属原子による分子内スピン-軌道相互作用(重原子効果)を利用し、励起三重項状態からの発光を得る。このようなりん光材料としては、例えば、発光性金属錯体を用いることができる。発光性金属錯体としては、例えば下記式(B-1)および下記式(B-2)で表される化合物があげられる。
Figure 2024089626000171
式(B-1)において、Mは、Ir、Pt、Au、Eu、Ru、Re、AgおよびCuからなる群から選択される少なくとも1種であり、nは1~3の整数であり、「X-Y」はそれぞれ独立して二座の配位子である。
式(B-2)において、Mは、Pt、ReおよびCuからなる群から選択される少なくとも1種であり、「W-X-Y-Z」は四座の配位子である。
式(B-1)において、効率と寿命の観点から、MはIrが好ましく、nは3が好ましい。
式(B-2)において、効率と寿命の観点からMはPtが好ましい。
式(B-1)における配位子(X-Y)は、以下からなる群から選択された少なくとも1つの配位子を有する。式(B-2)における配位子(W-X-Y-Z)は、以下からなる群から選択される少なくとも1つの配位子を一部として有する。
Figure 2024089626000172
式中、
---において中心金属Mと結合し、
Yは、それぞれ独立して、BRe、NRe、PRe、O、S、Se、C=O、S=O、SO2、CRef、SiRef、またはGeRefであり
環における芳香族炭素C-Hは、それぞれ独立して、Nに置換されてもよく、
eおよびRfは、任意に縮合または結合して環を形成してもよく、
a、Rb、Rc、およびRdは、それぞれ独立して、無置換または1~置換可能な最大数まで置換してもよく、
a、Rb、Rc、Rd、Re、およびRfが、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン化物、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、または、これらの組み合わせであり、
ただし、Ra、Rb、Rc、およびRdにおける任意の2つの隣接する置換基が縮合または結合して環を形成するか、または多座リガンドを形成してもよい。
式(B-1)で表される化合物としては、例えば、Ir(ppy)3、Ir(ppy)2(acac)、Ir(mppy)3、Ir(PPy)2(m-bppy)、BtpIr(acac)、Ir(btp)2(acac)、Ir(2-phq)3、Hex-Ir(phq)3、Ir(fbi)2(acac)、fac-Tris(2-(3-p-xylyl)phenyl)pyridine iridium(III)、Eu(dbm)3(Phen)、Ir(piq)3、Ir(piq)2(acac)、Ir(Fliq)2(acac)、Ir(Flq)2(acac)、Ru(dtb-bpy)3・2(PF6)、Ir(2-phq)3、Ir(BT)2(acac)、Ir(DMP)3、Ir(Mphq)3IR(phq)2tpy、fac-Ir(ppy)2Pc、Ir(dp)PQ2、Ir(Dpm)(Piq)2、Hex-Ir(piq)2(acac)、Hex-Ir(piq)3、Ir(dmpq)3、Ir(dmpq)2(acac)、FPQIrpicなどがあげられる。
式(B-1)で表される化合物としては、他には、例えば以下の化合物があげられる。
Figure 2024089626000173
Figure 2024089626000174
Figure 2024089626000175
また、特開2006-089398号公報、特開2006-080419号公報、特開2005-298483号公報、特開2005-097263号公報、および特開2004-111379号公報、米国特許出願公開第2019/0051845号明細書などに記載されたイリジウム錯体、または、Advanced Materials, 26: 7116-7121、NPG Asia Materials 13, 53 (2021)、Applied Physics Letters, 117, 253301 (2020), Light-Emitting Diode - An Outlook On the Empirical Features and Its Recent Technological Advancements, Chapter 5に記載された白金錯体を用いてもよい。
<その他のドーパント材料>
式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物は他のドーパント材料と組み合わせて用いられていてもよい。ただし、他のドーパント材料は1つの発光層中において式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物の総質量に対し、100質量%未満であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。他のドーパント材料としては、既知の化合物を用いることができ、所望の発光色に応じて様々な材料の中から選択することができる。具体的には、例えば、フェナントレン、アントラセン、ピレン、テトラセン、ペンタセン、ペリレン、ナフトピレン、ジベンゾピレン、ルブレンおよびクリセンなどの縮合環誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン誘導体、チオフェン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体(特開平1-245087号公報)、ビススチリルアリーレン誘導体(特開平2-247278号公報)、ジアザインダセン誘導体、フラン誘導体、ベンゾフラン誘導体、フェニルイソベンゾフラン、ジメシチルイソベンゾフラン、ジ(2-メチルフェニル)イソベンゾフラン、ジ(2-トリフルオロメチルフェニル)イソベンゾフラン、フェニルイソベンゾフランなどのイソベンゾフラン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、7-ジアルキルアミノクマリン誘導体、7-ピペリジノクマリン誘導体、7-ヒドロキシクマリン誘導体、7-メトキシクマリン誘導体、7-アセトキシクマリン誘導体、3-ベンゾチアゾリルクマリン誘導体、3-ベンゾイミダゾリルクマリン誘導体、3-ベンゾオキサゾリルクマリン誘導体などのクマリン誘導体、ジシアノメチレンピラン誘導体、ジシアノメチレンチオピラン誘導体、ポリメチン誘導体、シアニン誘導体、オキソベンゾアントラセン誘導体、キサンテン誘導体、ローダミン誘導体、フルオレセイン誘導体、ピリリウム誘導体、カルボスチリル誘導体、アクリジン誘導体、オキサジン誘導体、フェニレンオキサイド誘導体、キナクリドン誘導体、キナゾリン誘導体、ピロロピリジン誘導体、フロピリジン誘導体、1,2,5-チアジアゾロピレン誘導体、ピロメテン誘導体、ペリノン誘導体、ピロロピロール誘導体、スクアリリウム誘導体、ビオラントロン誘導体、フェナジン誘導体、アクリドン誘導体、デアザフラビン誘導体、フルオレン誘導体およびベンゾフルオレン誘導体などがあげられる。
他のドーパント材料としては、国際公開第2015/102118号、国際公開第2020/162600号、特開2021-077890号公報の段落0097~0269等に記載のホウ素を含む多環芳香族化合物を用いることも好ましい。
2-1-6.有機電界発光素子における電子注入層、電子輸送層
電子注入層107は、陰極108から移動してくる電子を、効率よく発光層105内または電子輸送層106内に注入する役割を果たす。電子輸送層106は、陰極108から注入された電子または陰極108から電子注入層107を介して注入された電子を、効率よく発光層105に輸送する役割を果たす。電子輸送層106および電子注入層107は、それぞれ、電子輸送・注入材料の一種または二種以上を積層、混合するか、電子輸送・注入材料と高分子結着剤の混合物により形成される。
電子注入・輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送することをつかさどる層であり、電子注入効率が高く、注入された電子を効率よく輸送することが望ましい。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たす場合には、電子輸送能力がそれ程高くなくても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料と同等に有する。したがって、本実施形態における電子注入・輸送層は、正孔の移動を効率よく阻止できる層の機能も含まれてもよい。
電子輸送層106または電子注入層107を形成する材料(電子輸送材料)としては、光導電材料において電子伝達化合物として従来から慣用されている化合物、有機EL素子の電子注入層および電子輸送層に使用されている公知の化合物の中から任意に選択して用いることができる。
電子輸送層または電子注入層に用いられる材料としては、炭素、水素、酸素、硫黄、ケイ素およびリンの中から選ばれる一種以上の原子で構成される芳香族環または複素芳香族環からなる化合物、ピロール誘導体およびその縮合環誘導体および電子受容性窒素を有する金属錯体の中から選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。具体的には、ナフタレン、アントラセンなどの縮合環系芳香族環誘導体、4,4'-ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香族環誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、アリールニトリル誘導体およびインドール誘導体などがあげられる。電子受容性窒素を有する金属錯体としては、例えば、ヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。これらの材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
また、他の電子伝達化合物の具体例として、ピリジン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントロリン誘導体、ペリノン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、アントラキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体(1,3-ビス[(4-t-ブチルフェニル)1,3,4-オキサジアゾリル]フェニレンなど)、チオフェン誘導体、トリアゾール誘導体(N-ナフチル-2,5-ジフェニル-1,3,4-トリアゾールなど)、チアジアゾール誘導体、オキシン誘導体の金属錯体、キノリノール系金属錯体、キノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体のポリマー、ベンザゾール類化合物、ガリウム錯体、ピラゾール誘導体、パーフルオロ化フェニレン誘導体、トリアジン誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾキノリン誘導体(2,2'-ビス(ベンゾ[h]キノリン-2-イル)-9,9'-スピロビフルオレンなど)、イミダゾピリジン誘導体、ボラン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体(トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼンなど)、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、テルピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、テルピリジン誘導体(1,3-ビス(2,2’:6’,2”-テルピリジン-4'-イル)ベンゼンなど)、ナフチリジン誘導体(ビス(1-ナフチル)-4-(1,8-ナフチリジン-2-イル)フェニルホスフィンオキサイドなど)、アルダジン誘導体、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ビススチリル誘導体などがあげられる。
また、電子受容性窒素を有する金属錯体を用いることもでき、例えば、キノリノール系金属錯体やヒドロキシフェニルオキサゾール錯体などのヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体、フラボノール金属錯体およびベンゾキノリン金属錯体などがあげられる。
上述した材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
上述した材料の中でも、ボラン誘導体、ピリジン誘導体、フルオランテン誘導体、BO系誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾフルオレン誘導体、ホスフィンオキサイド誘導体、ピリミジン誘導体、アリールニトリル誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、およびキノリノール系金属錯体が好ましい。
電子輸送層または電子注入層には、さらに、電子輸送層または電子注入層を形成する材料を還元できる物質を含んでいてもよい。この還元性物質は、一定の還元性を有する物質であれば、様々な物質が用いられ、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物、希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体、アルカリ土類金属の有機錯体および希土類金属の有機錯体からなる群から選択される少なくとも1つを好適に使用することができる。
好ましい還元性物質としては、Na(仕事関数2.36eV)、K(同2.28eV)、Rb(同2.16eV)またはCs(同1.95eV)などのアルカリ金属や、Ca(同2.9eV)、Sr(同2.0~2.5eV)またはBa(同2.52eV)などのアルカリ土類金属があげられ、仕事関数が2.9eV以下の物質が特に好ましい。これらのうち、より好ましい還元性物質は、K、RbまたはCsのアルカリ金属であり、さらに好ましくはRbまたはCsであり、最も好ましいのはCsである。これらのアルカリ金属は、特に還元能力が高く、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。また、仕事関数が2.9eV以下の還元性物質として、これら2種以上のアルカリ金属の組み合わせも好ましく、特に、Csを含んだ組み合わせ、例えば、CsとNa、CsとK、CsとRb、またはCsとNaとKとの組み合わせが好ましい。Csを含むことにより、還元能力を効率的に発揮することができ、電子輸送層または電子注入層を形成する材料への添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が図られる。
2-1-7.有機電界発光素子における陰極
陰極108は、電子注入層107および電子輸送層106を介して、発光層105に電子を注入する役割を果たす。
陰極108を形成する材料としては、電子を有機層に効率よく注入できる物質であれば特に限定されないが、陽極102を形成する材料と同様の材料を用いることができる。なかでも、スズ、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金、鉄、亜鉛、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびマグネシウムなどの金属またはそれらの合金(マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、フッ化リチウム/アルミニウムなどのアルミニウム-リチウム合金など)などが好ましい。電子注入効率をあげて素子特性を向上させるためには、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、カルシウム、マグネシウムまたはこれら低仕事関数金属を含む合金が有効である。しかしながら、これらの低仕事関数金属は一般に大気中で不安定であることが多い。この点を改善するために、例えば、有機層に微量のリチウム、セシウムやマグネシウムをドーピングして、安定性の高い電極を使用する方法が知られている。その他のドーパントとしては、フッ化リチウム、フッ化セシウム、酸化リチウムおよび酸化セシウムのような無機塩も使用することができる。ただし、これらに限定されない。
さらに、電極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、スズ、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、そしてシリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などを積層することが、好ましい例としてあげられる。これらの電極の作製法も、抵抗加熱、電子ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど、導通を取ることができれば特に制限されない。
2-1-8.有機電界発光素子の作製方法
有機EL素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を蒸着法、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、印刷法、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などの方法で薄膜とすることにより、形成することができる。このようにして形成された各層の膜厚については特に限定はなく、材料の性質に応じて適宜設定することができるが、通常2nm~5000nmの範囲である。膜厚は通常、水晶発振式膜厚測定装置などで測定できる。蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、材料の種類、膜の目的とする結晶構造および会合構造などにより異なる。蒸着条件は一般的に、ボート加熱温度+50~+400℃、真空度10-6~10-3Pa、蒸着速度0.01~50nm/秒、基板温度-150~+300℃、膜厚2nm~5μmの範囲で適宜設定することが好ましい。
このようにして得られた有機EL素子に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を-の極性として印加すればよく、電圧2~40V程度を印加すると、透明または半透明の電極側(陽極または陰極、および両方)より発光が観測できる。また、この有機EL素子は、パルス電流や交流電流を印加した場合にも発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
次に、有機EL素子を作製する方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。
<蒸着法>
適当な基板上に、陽極材料の薄膜を蒸着法などにより形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔注入層および正孔輸送層の薄膜を形成させる。この上にホスト材料とドーパント材料を共蒸着し薄膜を形成させて発光層とし、この発光層の上に電子輸送層、電子注入層を形成させ、さらに陰極用物質からなる薄膜を蒸着法などにより形成させて陰極とすることにより、目的の有機EL素子が得られる。なお、上述の有機EL素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
<湿式成膜法>
湿式成膜法は、有機EL素子の各有機層を形成し得る低分子化合物を液状の有機層形成用組成物として準備し、これを用いることによって実施される。この低分子化合物を溶解する適当な有機溶媒がない場合には、当該低分子化合物に反応性置換基を置換させた反応性化合物として溶解性機能を有する他のモノマーや主鎖型高分子と共に高分子化させた高分子化合物などから有機層形成用組成物を準備してもよい。
湿式成膜法は、一般的には、基板に有機層形成用組成物を塗布する塗布工程および塗布された有機層形成用組成物から溶媒を取り除く乾燥工程を経ることで塗膜を形成する。上記高分子化合物が架橋性置換基を有する場合(これを架橋性高分子化合物ともいう)には、この乾燥工程によりさらに架橋して高分子架橋体が形成される。塗布工程の違いにより、スピンコーターを用いる方法をスピンコート法、スリットコーターを用いる方法をスリットコート法、版を用いる方法をグラビア、オフセット、リバースオフセット、フレキソ印刷法、インクジェットプリンタを用いる方法をインクジェット法、霧状に吹付ける方法をスプレー法と呼ぶ。乾燥工程には、風乾、加熱、減圧乾燥などの方法がある。乾燥工程は1回のみ行なってもよく、異なる方法や条件を用いて複数回行なってもよい。また、例えば、減圧下での焼成のように、異なる方法を併用してもよい。
湿式成膜法とは溶液を用いた成膜法であり、例えば、一部の印刷法(インクジェット法)、スピンコート法またはキャスト法、コーティング法などである。湿式成膜法は真空蒸着法と異なり高価な真空蒸着装置を用いる必要が無く、大気圧下で成膜することができる。加えて、湿式成膜法は大面積化や連続生産が可能であり、製造コストの低減につながる。
一方で、真空蒸着法と比較した場合には、湿式成膜法は積層化が難しい場合がある。湿式成膜法を用いて積層膜を作製する場合、上層の組成物による下層の溶解を防ぐ必要があり、溶解性を制御した組成物、下層の架橋および直交溶媒(Orthogonal solvent、互いに溶解し合わない溶媒)などが駆使される。しかしながら、それらの技術を用いても、全ての膜の塗布に湿式成膜法を用いるのは難しい場合がある。
そこで、一般的には、幾つかの層だけを湿式成膜法を用い、残りを真空蒸着法で有機EL素子を作製するという方法が採用される。
例えば、湿式成膜法を一部適用し有機EL素子を作製する手順を以下に示す。
(手順1)陽極の真空蒸着法による成膜
(手順2)正孔注入層用材料を含む正孔注入層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順3)正孔輸送層用材料を含む正孔輸送層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順4)ホスト材料とドーパント材料を含む発光層形成用組成物の湿式成膜法による成膜
(手順5)電子輸送層の真空蒸着法による成膜
(手順6)電子注入層の真空蒸着法による成膜
(手順7)陰極の真空蒸着法による成膜
この手順を経ることで、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/ホスト材料とドーパント材料からなる発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子が得られる。
もちろん、電子輸送層および電子注入層についても、それぞれ電子輸送層用材料および電子注入層用材料を含む層形成用組成物を用いて湿式成膜法により成膜してもよい。その際、下層の発光層の溶解を防ぐ手段、または上記手順とは逆に陰極側から成膜する手段を用いることが好ましい。
<その他の成膜法>
有機層形成用組成物の成膜化には、レーザー加熱描画法(LITI)を用いることができる。LITIとは基材に付着させた化合物をレーザーで加熱蒸着する方法で、基材へ塗布される材料に有機層形成用組成物を用いることができる。
<任意の工程>
成膜の各工程の前後に、適切な処理工程、洗浄工程および乾燥工程を適宜入れてもよい。処理工程としては、例えば、露光処理、プラズマ表面処理、超音波処理、オゾン処理、適切な溶媒を用いた洗浄処理および加熱処理等があげられる。さらには、バンクを作製する一連の工程もあげられる。
バンクの作製にはフォトリソグラフィ技術を用いることができる。フォトリソグラフィの利用可能なバンク材としては、ポジ型レジスト材料およびネガ型レジスト材料を用いることができる。また、インクジェット法、グラビアオフセット印刷、リバースオフセット印刷、スクリーン印刷などのパターン可能な印刷法も用いることができる。その際には永久レジスト材料を用いることもできる。
<湿式成膜法に使用される有機層形成用組成物>
有機層形成用組成物は、有機EL素子の各有機層を形成し得る低分子化合物、または当該低分子化合物を高分子化させた高分子化合物を有機溶媒に溶解させて得られる。例えば、発光層形成用組成物は、第1成分として少なくとも1種のドーパント材料である多環芳香族化合物(またはその高分子化合物)と、第2成分として少なくとも1種のホスト材料と、第3成分として少なくとも1種の有機溶媒とを含有する。第1成分は、該組成物から得られる発光層のドーパント成分として機能し、第2成分は発光層のホスト成分として機能する。第3成分は、組成物中の第1成分と第2成分を溶解する溶媒として機能し、塗布時には第3成分自身の制御された蒸発速度により平滑で均一な表面形状を与える。
<有機溶媒>
有機層形成用組成物は少なくとも一種の有機溶媒を含む。成膜時に有機溶媒の蒸発速度を制御することで、成膜性および塗膜の欠陥の有無、表面粗さ、平滑性を制御および改善することができる。また、インクジェット法を用いた成膜時は、インクジェットヘッドのピンホールでのメニスカス安定性を制御し、吐出性を制御・改善することができる。加えて、膜の乾燥速度および誘導体分子の配向を制御することで、該有機層形成用組成物より得られる有機層を有する有機EL素子の電気特性、発光特性、効率、および寿命を改善することができる。
有機溶媒は、成膜後に、真空、減圧、加熱などの乾燥工程により塗膜より取り除かれる。加熱を行う場合、塗布成膜性改善の観点からは、溶質の少なくとも1種のガラス転移温度(Tg)+30℃以下で行うことが好ましい。また、残留溶媒の削減の観点からは、溶質の少なくとも1種のガラス転移点(Tg)-30℃以上で加熱することが好ましい。加熱温度が有機溶媒の沸点より低くても膜が薄いために、有機溶媒は十分に取り除かれる。また、異なる温度で複数回乾燥を行ってもよく、複数の乾燥方法を併用してもよい。
(2)有機溶媒の具体例
有機層形成用組成物に用いられる有機溶媒としては、アルキルベンゼン系溶媒、フェニルエーテル系溶媒、アルキルエーテル系溶媒、環状ケトン系溶媒、脂肪族ケトン系溶媒、単環性ケトン系溶媒、ジエステル骨格を有する溶媒および含フッ素系溶媒などがあげられるが、それだけに限定されない。また、溶媒は単一で用いてもよく、混合してもよい。
<任意成分>
有機層形成用組成物は、その性質を損なわない範囲で、任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、バインダーおよび界面活性剤等があげられる。
<有機層形成用組成物の組成および物性>
有機層形成用組成物における各成分の含有量は、有機層形成用組成物中の各成分の良好な溶解性、保存安定性および成膜性、ならびに、該有機層形成用組成物から得られる塗膜の良質な膜質、また、インクジェット法を用いた場合の良好な吐出性、該組成物を用いて作製された有機層を有する有機EL素子の、良好な電気特性、発光特性、効率、寿命の観点を考慮して決定される。
有機層形成用組成物は、上述した成分を、公知の方法で撹拌、混合、加熱、冷却、溶解、分散等を適宜選択して行うことによって製造できる。また、調製後に、ろ過、脱ガス(デガスとも言う)、イオン交換処理および不活性ガス置換・封入処理等を適宜選択して行ってもよい。
2-1-9.有機電界発光素子の応用例
本発明は、有機EL素子を備えた表示装置または有機EL素子を備えた照明装置などにも応用することができる。
有機EL素子を備えた表示装置または照明装置は、本実施形態にかかる有機EL素子と公知の駆動装置とを接続するなど公知の方法によって製造することができ、直流駆動、パルス駆動、交流駆動など公知の駆動方法を適宜用いて駆動することができる。
表示装置としては、例えば、カラーフラットパネルディスプレイなどのパネルディスプレイ、フレキシブルカラー有機電界発光(EL)ディスプレイなどのフレキシブルディスプレイなどがあげられる(例えば、特開平10-335066号公報、特開2003-321546号公報、特開2004-281086号公報など参照)。また、ディスプレイの表示方式としては、例えば、マトリクスおよびセグメント方式などがあげられる。なお、マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
マトリクスでは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置されており、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法としては、線順次駆動方法やアクティブマトリックスのどちらでもよい。線順次駆動の方が構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
セグメント方式(タイプ)では、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などがあげられる。
照明装置としては、例えば、室内照明などの照明装置、液晶表示装置のバックライトなどがあげられる(例えば、特開2003-257621号公報、特開2003-277741号公報、特開2004-119211号公報など参照)。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパソコン用途のバックライトとしては、従来方式が蛍光灯や導光板からなっているため薄型化が困難であることを考えると、本実施形態に係る発光素子を用いたバックライトは薄型で軽量が特徴になる。
2-2.その他の有機デバイス
本発明に係る多環芳香族化合物は、上述した有機電界発光素子の他に、有機電界効果トランジスタまたは有機薄膜太陽電池などの作製に用いることができる。
有機電界効果トランジスタは、電圧入力によって発生させた電界により電流を制御するトランジスタのことであり、ソース電極とドレイン電極の他にゲート電極が設けられている。ゲート電極に電圧を印加すると電界が生じ、ソース電極とドレイン電極間を流れる電子(あるいはホール)の流れを任意にせき止めて電流を制御することができるトランジスタである。電界効果トランジスタは、単なるトランジスタ(バイポーラトランジスタ)に比べて小型化が容易であり、集積回路などを構成する素子としてよく用いられている。
有機電界効果トランジスタの構造は、通常、本発明に係る多環芳香族化合物を用いて形成される有機半導体活性層に接してソース電極およびドレイン電極が設けられており、さらに有機半導体活性層に接した絶縁層(誘電体層)を挟んでゲート電極が設けられていればよい。その素子構造としては、例えば以下の構造があげられる。
(1)基板/ゲート電極/絶縁体層/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層
(2)基板/ゲート電極/絶縁体層/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極
(3)基板/有機半導体活性層/ソース電極・ドレイン電極/絶縁体層/ゲート電極
(4)基板/ソース電極・ドレイン電極/有機半導体活性層/絶縁体層/ゲート電極
このように構成された有機電界効果トランジスタは、アクティブマトリックス駆動方式の液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの画素駆動スイッチング素子などとして適用できる。
有機薄膜太陽電池は、ガラスなどの透明基板上にITOなどの陽極、ホール輸送層、光電変換層、電子輸送層、陰極が積層された構造を有する。光電変換層は陽極側にp型半導体層を有し、陰極側にn型半導体層を有している。本発明に係る多環芳香族化合物は、その物性に応じて、ホール輸送層、p型半導体層、n型半導体層、電子輸送層の材料として用いることが可能である。本発明に係る多環芳香族化合物は、有機薄膜太陽電池においてホール輸送材料や電子輸送材料として機能しうる。有機薄膜太陽電池は、上記の他にホールブロック層、電子ブロック層、電子注入層、ホール注入層、平滑化層などを適宜備えていてもよい。有機薄膜太陽電池には、有機薄膜太陽電池に用いられる既知の材料を適宜選択して組み合わせて用いることができる。
3.波長変換材料
本発明の多環芳香族化合物は、波長変換材料として使用することができる。 現在、色変換方式によるマルチカラー化技術を、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、照明などへ応用することが盛んに検討されている。色変換とは、発光体からの発光をより長波長の光へと波長変換することであり、例えば、紫外光や青色光を緑色光や赤色発光へと変換することを表す。この色変換機能を有する波長変換材料をフィルム化し、例えば青色光源と組み合わせることにより、青色光源から、青、緑、赤色の3原色を取り出すこと、すなわち白色光を取り出すことが可能となる。このような青色光源と色変換機能を有する波長変換フィルムを組み合わせた白色光源を光源ユニットとし、液晶駆動部分と、カラーフィルターと組み合わせることで、フルカラーディスプレイの作製が可能になる。また、液晶駆動部分が無ければ、そのまま白色光源として用いることができ、例えばLED照明などの白色光源として応用できる。また、青色有機EL素子を光源として、青色光を緑色光および赤色光に変換する波長変換フィルムと組み合わせて用いることでメタルマスクを用いないフルカラー有機ELディスプレイの作製が可能になる。さらに、青色マイクロLEDを光源として、青色光を緑色光および赤色光に変換する波長変換フィルムと組み合わせて用いることで低コストのフルカラーマイクロLEDディスプレイの作製が可能になる。
本発明の多環芳香族化合物は、この波長変換材料として使用することができる。本発明の多環芳香族化合物を含む波長変換材料を用いて、紫外光やより短波長の青色光を生成する光源や発光素子からの光を、表示装置(有機EL素子を利用した表示装置や液晶表示装置)での利用に適した色純度の高い青色光や緑色光に変換することができる。変換される色の調整は、本発明の多環芳香族化合物の置換基、後述の波長変換用組成物で用いるバインダー樹脂等を適宜選択することにより行うことができる。波長変換材料は本発明の多環芳香族化合物を含む波長変換用組成物として調製することができる。また、この波長変換用組成物を用いて波長変換フィルムを形成してもよい。
波長変換用組成物は、本発明の多環芳香族化合物のほか、バインダー樹脂、その他の添加剤、および溶媒を含んでいてもよい。バインダー樹脂としては、例えば国際公開第2016/190283号の段落0173~0176に記載のものを用いることができる。その他の添加剤としては、国際公開第2016/190283号の段落0177~0181に記載の化合物を用いることができる。溶媒としては、上記の発光層形成用組成物に含まれる溶媒の記載を参照することができる。
波長変換フィルムは波長変換用組成物の硬化により形成される波長変換層を含む。波長変換用組成物からの波長変換層の作製方法としては公知のフィルム形成方法を参照することができる。波長変換フィルムは本発明の多環芳香族化合物を含む組成物から形成される波長変換層のみからなっていてもよく、他の波長変換層(例えば、青色光を緑色光や赤色光に変換する波長変換層、青色光や緑色光を赤色光に変換する波長変換層)を含んでいてもよい。さらに波長変換フィルムは基材層や、色変換層の酸素、水分、または熱による劣化を防ぐためのバリア層を含んでいてもよい。
以下,実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<<合成例>>
合成例(1):
化合物(1-1)の合成
Figure 2024089626000176
化合物(S-1-1)(1.2g)およびtert-ブチルベンゼン(7.0ml)の入ったフラスコに、窒素雰囲気下、-30℃で、1.6Mのtert-ブチルリチウムペンタン溶液(1.6ml)を加えた。滴下終了後、60℃まで昇温して2時間撹拌した後、tert-ブチルベンゼンより低沸点の成分を減圧留去した。-30℃まで冷却して三臭化ホウ素(0.63g)を加え、室温まで昇温して0.5時間撹拌した。その後、再び0℃まで冷却してN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.43ml)を加え、発熱が収まるまで室温で撹拌した後、120℃まで昇温して3時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却し、氷浴で冷やした酢酸ナトリウム水溶液、次いでへプタンを加えて分液した。次いで、シリカゲルショートパスカラム(溶離液:トルエン)で精製した後、溶媒を減圧留去し得られた固体をトルエンに溶かし、へプタンを加えて再沈殿させ、化合物(1-1)(0.30g)を得た。
合成例(2):
化合物(2-1)の合成
Figure 2024089626000177
化合物(S-2-1)(1.5g)およびtert-ブチルベンゼン(14ml)の入ったフラスコに、窒素雰囲気下、-30℃で、1.6Mのtert-ブチルリチウムペンタン溶液(3.2ml)を加えた。滴下終了後、60℃まで昇温して2時間撹拌した後、tert-ブチルベンゼンより低沸点の成分を減圧留去した。-30℃まで冷却して三臭化ホウ素(1.3g)を加え、室温まで昇温して0.5時間撹拌した。その後、再び0℃まで冷却してN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.86ml)を加え、発熱が収まるまで室温で撹拌した後、120℃まで昇温して3時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却し、氷浴で冷やした酢酸ナトリウム水溶液、次いでへプタンを加えて分液した。次いで、シリカゲルショートパスカラム(溶離液:トルエン)で精製した後、溶媒を減圧留去し得られた固体をトルエンに溶かし、へプタンを加えて再沈殿させ、化合物(2-1)(0.25g)を得た。
合成例(1)に準じた方法で以下の化合物を合成した。
Figure 2024089626000178
Figure 2024089626000179
Figure 2024089626000180
Figure 2024089626000181
合成例(2)に準じた方法で以下の化合物を合成した。
Figure 2024089626000182
Figure 2024089626000183
Figure 2024089626000184
MALDI-TOF-MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法)によって目的物の生成を確認した。
Figure 2024089626000185
以下の比較化合物を国際公開第2019/009052号、特開2020-136675号公報、国際公開第2018/212169号に従って合成した。
Figure 2024089626000186
Figure 2024089626000187
<<有機EL素子の製造と評価>>
合成した本発明の化合物および比較化合物の各化合物を用いてTTF、TADF、TAF、PSFの各有機EL素子を製造した。
<TTF構成:実施例1-1-1~実施例1-1-19および比較例1-1-1~比較例1-1-6>
ITO(120nm)/HI(40nm)/HAT-CN(5nm)/HT-1(45nm)/HT-2(10nm)/BH:表2に記載の各化合物(97:3)(25nm)/ET-1(5nm)/ET-2:Liq(1:1)(25nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
上記素子の製造に用いた化合物の化学構造を以下に示す。
Figure 2024089626000188
スパッタリングにより180nmの厚さに成膜したITOを120nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とする。この透明支持基板を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、HI、HAT-CN、HT-1、HT-2、BH、表2に記載の各化合物、ET-1およびET-2をそれぞれ入れたモリブデン製蒸着用ボート、Liq、LiFおよびアルミニウムをそれぞれ入れた窒化アルミニウム製蒸着用ボートを装着した。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成する。真空槽を5×10-4Paまで減圧し、まず、HIを加熱して膜厚40nmになるように蒸着し、次に、HAT-CNを加熱して膜厚5nmになるように蒸着し、次に、HT-1を加熱して膜厚45nmになるように蒸着し、次に、HT-2を加熱して膜厚10nmになるように蒸着して、4層からなる正孔層を形成した。次に、BHと表2に記載の各化合物を同時に加熱して膜厚25nmになるように蒸着して発光層を形成した。BHと表2に記載の各化合物の質量比がおよそ97対3になるように蒸着速度を調節した。さらに、ET-1を加熱して膜厚5nmになるように蒸着し、次に、ET-2とLiqを同時に加熱して膜厚25nmになるように蒸着して、2層からなる電子層を形成した。ET-2とLiqの質量比がおよそ50対50になるように蒸着速度を調節した。各層の蒸着速度は0.01~1nm/秒であった。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01~0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得た。
<TADF構成:実施例2-2-1~実施例2-2-14および比較例2-2-1~2-2-11>
ITO(50nm)/HAT-CN(10nm)/HT-1(60nm)/SiCzCz(5nm)/SiCzCz:SiTrzCz2:表2に記載の各化合物(60:39:1)(35nm)/mSiTrz(5nm)/mSiTrz:Liq(1:1)(30nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
スパッタリングにより200nmの厚さに製膜したITOを50nmまで研磨した、26mm×28mm×0.7mmのガラス基板((株)オプトサイエンス製)を透明支持基板とした。この透明支持基板を市販の蒸着装置(昭和真空(株)製)の基板ホルダーに固定し、HAT-CN、HT-1,SiCzCz、SiTrzCz2、表2に記載の各化合物、mSiTrzおよびLiqをそれぞれ入れたモリブデン製蒸着用ボート、LiFおよびアルミニウムをそれぞれ入れたタングステン製蒸着用ボートを装着した。
透明支持基板のITO膜の上に順次、下記各層を形成した。真空槽を5×10-4Paまで減圧し、まず、HAT-CNを加熱して膜厚10nmになるように蒸着して正孔注入層を形成した。次に、HT-1を加熱して膜厚60nmになるように蒸着して正孔輸送層1を形成し、さらにSiCzCzを加熱して膜厚5nmになるように蒸着して正孔輸送層2を形成した。次に、SiCzCzとSiTrzCz2と表2に記載の各化合物を同時に加熱して膜厚35nmになるように蒸着して発光層を形成した。SiCzCzとSiTrzCz2と表2に記載の各化合物の質量比がおよそ60対39対1になるように蒸着速度を調節した。次に、mSiTrzを加熱して膜厚5nmになるように蒸着して電子輸送層1を形成し、さらにmSiTrzとLiqを加熱して膜厚30nmになるように蒸着して電子輸送層2を形成した。SiTrzとLiqの質量比がおよそ1対1になるように蒸着速度を調節した。各層の蒸着速度は0.01~1nm/秒であった。その後、LiFを加熱して膜厚1nmになるように0.01~0.1nm/秒の蒸着速度で蒸着し、次いで、アルミニウムを加熱して膜厚100nmになるように蒸着して陰極を形成し、有機EL素子を得た。このとき、アルミニウムの蒸着速度は1~10nm/秒になるように調節した。なお、発光層のSiCzCzは正孔輸送性ホスト材料に該当し、SiTrzCz2は電子輸送性ホスト材料に該当する。
<TAF構成:実施例3-1-1~実施例3-1-19、実施例3-2-1~実施例3-2-14、比較例3-1-1~比較例3-1-6、および比較例3-2-1~比較例3-2-11>
ITO(50nm)/HAT-CN(10nm)/HT-1(60nm)/SiCzCz(5nm)/SiCzCz:SiTrzCz2:TADF-1: 表2に記載の各化合物(60:26:13:1)(35nm)/mSiTrz(5nm)/mSiTrz:Liq(1:1)(30nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
発光層以外はTADF構成と同様に作製した。発光層では、SiCzCzとSiTrzCz2と(TADF-1)と表2に記載の各化合物を同時に加熱して膜厚35nmになるように蒸着した。SiCzCzとSiTrzCz2と(TADF-1)と表2に記載の各化合物の質量比がおよそ60対26対13対1になるように蒸着速度を調節した。
<PSF構成:実施例4-1-1~実施例4-1-19、実施例4-2-1~実施例4-2-14、比較例4-1-1~比較例4-1-6、および比較例4-2-1~比較例4-2-11>
ITO(50nm)/HAT-CN(10nm)/HT-1(60nm)/SiCzCz(5nm)/SiCzCz:SiTrzCz2:PtON7:表2に記載の各化合物(60:26:13:1)(35nm)/mSiTrz(5nm)/mSiTrz:Liq(1:1)(30nm)/LiF(1nm)/Al(100nm)
上記TAF構成の(TADF-1)をPtON7に置き換え、同様に素子を作製した。
上記各素子の製造に用いた化合物の化学構造を以下に示す。
Figure 2024089626000189
[評価]
評価項目としては、駆動電圧(V)、発光波長(nm)、CIE色度(x,y)、外部量子効率(%)、発光スペクトルの最大波長(nm)および半値幅(nm)等がある。これらの評価項目は、例えば1000cd/m2発光時の値を用いることができる。
発光素子の量子効率には、内部量子効率と外部量子効率とがあるが、内部量子効率は、発光素子の発光層に電子(または正孔)として注入される外部エネルギーが純粋に光子に変換される割合を示している。一方、外部量子効率は、この光子が発光素子の外部にまで放出された量に基づいて算出され、発光層において発生した光子は、その一部が発光素子の内部で吸収されたりあるいは反射され続けたりして、発光素子の外部に放出されないため、外部量子効率は内部量子効率よりも低くなる。
分光放射輝度(発光スペクトル)と外部量子効率の測定方法は次の通りである。アドバンテスト社製電圧/電流発生器R6144を用いて、素子の輝度が1000cd/m2になる電圧を印加して素子を発光させる。TOPCON社製分光放射輝度計SR-3ARを用いて、発光面に対して垂直方向から可視光領域の分光放射輝度を測定する。発光面が完全拡散面であると仮定して、測定した各波長成分の分光放射輝度の値を波長エネルギーで割ってπを掛けた数値が各波長におけるフォトン数である。次いで、観測した全波長領域でフォトン数を積算し、素子から放出された全フォトン数とする。印加電流値を素電荷で割った数値を素子へ注入したキャリア数として、素子から放出された全フォトン数を素子へ注入したキャリア数で割った数値が外部量子効率である。また、発光スペクトルの半値幅は、極大発光波長を中心として、その強度が50%になる上下の波長間の幅として求められる。
ITO電極を陽極、LiF/アルミニウム電極を陰極として直流電圧を印加し、1000cd/m2発光時の特性を測定した。また、TTF構成の素子については初期輝度の95%以上の輝度を保持する時間(寿命)、TADF構成、TAF構成、およびPSF構成の素子については初期輝度の50%以上の輝度を保持する時間(寿命)を測定した。なお、これらの素子の発光ピークはいずれも450~470nmの範囲にあった。
結果を表2に示す。
Figure 2024089626000190
Figure 2024089626000191
Figure 2024089626000192
Figure 2024089626000193
得られた結果より、実施例の素子は対応する骨格を持つ比較例の素子と比べて、高効率、長寿命であることがわかる。
100 有機電界発光素子
101 基板
102 陽極
103 正孔注入層
104 正孔輸送層
105 発光層
106 電子輸送層
107 電子注入層
108 陰極

Claims (20)

  1. 式(1)、式(2)、または式(3)で表される多環芳香族化合物;
    Figure 2024089626000194
    式(1)、式(2)および式(3)中、
    A環、B環、C環、D環、E環、F環、およびG環はそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環であり、ZCはそれぞれ独立して=C(-RC)-または=N-であり、RCはそれぞれ独立して水素または置換基であり、
    ただし、
    式(1)においては、A環、B環、およびC環からなる群より選択される少なくとも1つは式(X)で表される置換基を前記アリール環または前記ヘテロアリール環への置換基として含み、
    式(2)においては、A環、B環、D環、およびE環からなる群より選択される少なくとも1つが式(X)で表される置換基を前記アリール環または前記ヘテロアリール環への置換基として含むか、または、少なくとも1つのZCが、RCが式(X)で表される置換基である=C(-RC)-であり、
    式(3)においては、A環、B環、D環、E環、F環、およびG環からなる群より選択される少なくとも1つが式(X)で表される置換基を前記アリール環または前記ヘテロアリール環への置換基として含むか、または、少なくとも1つのZCが、RCが式(X)で表される置換基である=C(-RC)-であり、
    式(X)中、
    H環およびI環はそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアリール環または置換もしくは無置換のヘテロアリール環であり、RXはそれぞれ独立して置換基であり、LXは単結合または2価の連結基であり、
    1、X2、X3、およびX4はそれぞれ独立して>N-RNX、>O、>C(-RCX2、>Si(-RIX2、>S、または>Seであり、RNXは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、RCXおよびRIXはそれぞれ独立して水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、2つのRCXは互いに結合して環を形成していてもよく、2つのRIXは互いに結合して環を形成していてもよく、RNX、RCXおよびRIXはそれぞれ連結基または単結合により、当該RNX、RCXまたはRIXを含むX1、X2、X3、またはX4が結合する環の1つまたは2つと結合していてもよく、
    式(1)、式(2)、および式(3)の各式におけるアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンは少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられていてもよく、
    式(1)、式(2)、および式(3)の各式において、少なくとも1つの水素は重水素で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの窒素は窒素-15(15N)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの硫黄は硫黄-33(33S)、硫黄-34(34S)または硫黄-36(36S)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの酸素は酸素-17(17O)または酸素-18(18O)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの炭素は炭素-13(13C)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つのホウ素はホウ素-11(11B)で置き換えられていてもよい。
  2. 式(X)が式(X-1)で表される、請求項1に記載の多環芳香族化合物;
    Figure 2024089626000195
    式(X-1)中、
    Xはそれぞれ独立して=C(-RZX)-または=N-であり、RZXは水素または置換基である。
  3. Xがいずれも=C(-RZX)-であり、
    Xが単結合であり、
    Xがそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアリールまたは置換もしくは無置換のヘテロアリールである、請求項2に記載の多環芳香族化合物。
  4. 式(1)で表される、請求項1に記載の多環芳香族化合物。
  5. 式(1-a)で表される、請求項4に記載の多環芳香族化合物;
    Figure 2024089626000196
    式(1-a)中、
    Cはそれぞれ独立して、-C(-RC)=または-N=であり、
    Cは、それぞれ独立して、水素または置換基であり、
    ただし、式(1-a)において、ZCの少なくとも1つはRCが式(X)で表される置換基である-C(-RC)=であり、
    1およびX2は、それぞれ式(1)におけるX1、X2と同義であり、
    式(1-a)におけるアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンは少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられていてもよく、
    式(1-a)において、少なくとも1つの水素は重水素で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの窒素は窒素-15(15N)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの硫黄は硫黄-33(33S)、硫黄-34(34S)または硫黄-36(36S)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの酸素は酸素-17(17O)または酸素-18(18O)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの炭素は炭素-13(13C)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つのホウ素はホウ素-11(11B)で置き換えられていてもよい。
  6. Cの少なくとも1つが、RCが置換または無置換のN-カルバゾリルである-C(-RC)=であり、ただし、前記の置換または無置換のN-カルバゾリルは式(X)で表される置換基ではなく、前記の置換または無置換のN-カルバゾリルにおける置換基は置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、および置換もしくは無置換のシクロアルキルからなる群より選択される、請求項5に記載の多環芳香族化合物。
  7. Cの少なくとも2つがそれぞれ独立してRCが式(X)で表される置換基である-C(-RC)=である、請求項5に記載の多環芳香族化合物。
  8. b環およびc環からなる群より選択される少なくとも1つにおけるいずれかのZCがRCが式(X)で表される置換基である-C(-RC)=である、請求項5に記載の多環芳香族化合物。
  9. 式(X)が式(X-1)で表される、請求項5に記載の多環芳香族化合物;
    Figure 2024089626000197
    式(X-1)中、
    Xはそれぞれ独立して=C(-RZX)-または=N-であり、RZXは水素または置換基であり、ただし、ZXの少なくとも1つは-N=である。
  10. 下記いずれかの式で表される請求項4に記載の多環芳香族化合物;
    Figure 2024089626000198
    Figure 2024089626000199
    Figure 2024089626000200
    式中、tBuはt-ブチル、Dは重水素である。
  11. 式(1-b)で表される、請求項4に記載の多環芳香族化合物;
    Figure 2024089626000201
    式(1-b)中、
    Cはそれぞれ独立して、-C(-RC)=または-N=であり、
    Cは、それぞれ独立して、水素または置換基であり、
    ただし、式(1-b)において、ZCの少なくとも1つはRCが式(X)で表される置換基である-C(-RC)=であり、
    Lは>C(-RCL2、>N-RNL、>O、>S、または>Seであり、RCLは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、2つのRCLは互いに結合して環を形成していてもよく、RNLは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、
    1およびX2は、それぞれ式(1)におけるX1、X2と同義であり、
    式(1-b)におけるアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンは少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられていてもよく、
    式(1-b)において、少なくとも1つの水素は重水素で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの窒素は窒素-15(15N)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの硫黄は硫黄-33(33S)、硫黄-34(34S)または硫黄-36(36S)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの酸素は酸素-17(17O)または酸素-18(18O)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの炭素は炭素-13(13C)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つのホウ素はホウ素-11(11B)で置き換えられていてもよい。
  12. 下記いずれかの式で表される請求項11に記載の多環芳香族化合物;
    Figure 2024089626000202
    式中、tBuはt-ブチルである。
  13. 式(2)で表される、請求項1に記載の多環芳香族化合物。
  14. 式(2-a)または式(2-b)で表される、請求項13に記載の多環芳香族化合物;
    Figure 2024089626000203
    式(2-a)および式(2-b)中、
    Cはそれぞれ独立して、-C(-RC)=または-N=であり、
    cは、それぞれ独立して、水素または置換基であり、
    ただし、式(2-a)および式(2-b)の各式において、ZCの少なくとも1つはRCが式(X)で表される置換基である-C(-RC)=であり、
    Lは>C(-RCL2、>N-RNL、>O、>S、または>Seであり、RCLは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、2つのRCLは互いに結合して環を形成していてもよく、RNLは水素、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換のヘテロアリール、置換もしくは無置換のアルキル、または置換もしくは無置換のシクロアルキルであり、
    1、X2、X3、およびX4は、それぞれ式(2)中のX1、X2、X3、およびX4と同義であり、
    式(2-a)および式(2-b)の各式におけるアリール環およびヘテロアリール環からなる群より選択される少なくとも1つは、少なくとも1つのシクロアルカンで縮合されていてもよく、当該シクロアルカンは少なくとも1つの置換基で置換されていてもよく、当該シクロアルカンにおける少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられていてもよく、
    式(2-a)および式(2-b)の各式において、少なくとも1つの水素は重水素で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの窒素は窒素-15(15N)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの硫黄は硫黄-33(33S)、硫黄-34(34S)または硫黄-36(36S)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの酸素は酸素-17(17O)または酸素-18(18O)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つの炭素は炭素-13(13C)で置き換えられていてもよく、少なくとも1つのホウ素はホウ素-11(11B)で置き換えられていてもよい。
  15. 下記いずれかの式で表される請求項13に記載の多環芳香族化合物。
    Figure 2024089626000204
    Figure 2024089626000205
    Figure 2024089626000206
    式中、tBuはt-ブチルである。
  16. 陽極および陰極からなる一対の電極と該一対の電極間に配置される有機層とを有し、前記有機層が請求項1~15のいずれか一項に記載の多環芳香族化合物を含有する、有機電界発光素子。
  17. 前記有機層が発光層である、請求項16に記載の有機電界発光素子。
  18. 前記発光層がアシスティングドーパントまたはりん光材料を含む、請求項17に記載の有機電界発光素子。
  19. 前記発光層がりん光材料を含む、請求項17に記載の有機電界発光素子。
  20. 請求項16に記載の有機電界発光素子を備えた表示装置または照明装置。
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