JP2024089481A - 樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

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佑妃 宮林
誠治 秋山
慶 竹下(福島)
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Abstract

【課題】樹脂中で発光物質を均一に高分散させることにより、加工して得られる成形体が十分な輝度を発揮することができる樹脂組成物を提供する。【解決手段】樹脂組成物は、発光物質、分散剤、放射線不透過性物質、及び樹脂を含み、分散剤の含有量は、前記樹脂100質量部に対して、0.01~1質量部であり、放射線不透過性物質の含有量は、前記樹脂100質量部に対して、10~50質量部である。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物及びその製造方法に関する。詳しくは、蛍光又は燐光を発する機能を付与した樹脂組成物及びその製造方法、ならびに当該樹脂組成物を加工して得られる成形体に関する。
直接触れることの出来ない箇所へ軽薄短小に加工された機器を導入して、遠隔操作で作業に当たる手法は、建設及び医療など幅広い分野で活用されている。その際投入機器の位置を確認する手段として、機器自体に位置を知らせる機能を付与する方法が存在する。具体的な方法として、電磁波を発する電子機器といった自発的なもの、及び発光物質又は放射線不透過性物質を添加し外部測定機器を補助するものが挙げられる。後者はその単純さ故に軽薄短小な加工が容易であり、医療分野など精密な操作を要求する分野で広く用いられている。発光物質としては、蛍光材料及び燐光材料がある。
医療分野で用いられている具体例として、シャントチューブ、カテーテル、及びステント等の生体内に埋め込まれた状態で使用される医療用具が挙げられ、生体内における位置を生体外からいかにして確認するかが重要である。現在では主に、生体内での医療用具を可視化する方法として、医療用具に放射線不透過性物質を含有させる方法が用いられている(例えば、特許文献1及び2参照。)。例えば、放射線不透過性物質を含有させた樹脂より形成された医療用具は、X線放射して撮像されたX線画像に基づいて生体内における位置を確認することができる。
その他、医療用具に、発光物質のひとつである近赤外蛍光材料を含有させる方法もある。特に、近赤外波長領域の特徴として、ヒトの肉眼では目視できないこと、生体への影響が少ないこと、皮膚などの生体透過性が高いこと等が知られている。医療用具自体に近赤外蛍光材料を含有させることにより、このような特徴を利用することができる。例えば、シャントチューブ等の医療用具に近赤外蛍光材料を含有させることにより、生体外から近赤外光を照射することによって生体内に埋め込まれた医療用具の位置を確認するシステムが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。近赤外光は、X線よりも生体に対する影響が小さいため、より安全に生体内の医療用具を可視化することができる。
近赤外蛍光材料には無機蛍光材料及び有機蛍光材料がある。無機材料は希土類のレアアースを必要と資源及びコスト面に懸念を抱える一方で、有機蛍光材料は、比較的簡便に合成することができ、波長の調整がしやすいといった特徴から、近年、様々な構造を有する有機近赤外蛍光材料が開発されている。その代表例としてインドシアニングリーン(ICG)が挙げられる。ICGはアメリカ食品医薬品局(FDA)から医療での使用が認可されており、肝機能検査及び眼底造影検査などに広く臨床応用されている。
他にも耐光性及び耐熱性等に優れたアゾ-ホウ素錯体化合物(特許文献4)、及び発光量子収率が高いことで知られるπ共役化合物のホウ素錯体であるボロン-ジピロメテン骨格のBODIPY色素類が知られている(非特許文献1)。後者のBODIPY色素で医療向けに近赤外蛍光を発する様に制御したBODIPY骨格中にヘテロ環を有する色素が開示されている(特許文献5)。
BODIPY色素類は核酸及びタンパク質等の生体分子ならびに腫瘍組織等を標識するバイオマーカーとして使用されており、この用途では他にジケトピロロピロール(DPP)誘導体をホウ素錯体化したものが報告されている(非特許文献2)。
樹脂組成物への適用として、ICG骨格を有する色素をポリ(メタクリル酸メチル)とのアセトニトリル溶液に調製して、コーティングフィルムへと加工した事例が開示されている(特許文献6)。また、アルキレン基を介してオルガノシロキサニル基が導入されたシロキサン含有BODIPY色素をシリコーン樹脂中に共重合させた事例(特許文献7)、及び溶媒と共に混合させた事例(特許文献8)が開示されている。
特許文献AのようにBODIPY色素を樹脂に混練させた事例としては、光学フィルター向けで特許文献9、色変換材料として特許文献10が開示されている。以上の様に色素を樹脂組成物に添加した事例は複数確認できるが、一方で医療用途向けの近赤外蛍光材料として適用可能なものは多くない。
特開2000-060975号公報 特表2008-541987号公報 特開2012-115535号公報 特開2011-162445号公報 特許第5177427号公報 特表2021-512748号公報 特開2013-060399号公報 米国特許出願公開第2013/0249137号明細書 米国特許出願公開第2013/0252000号明細書 特開2011-241160号公報 国際公開第2015/022977号公報
Tomimori, Y,, et al.,"Synthesis of π-expanded O-chelated boron-dipyrromethene as NIR dye.", Tetrahedron, 67(18), 3187-3193, 2011 Fischer, G. M., et al., "Near-infrared dyes and fluorophores based on diketopyrrolopyrroles.", Angewandte Chemie Intrernational Edition, 46(20), 3750-3753, 2007
例えば、特許文献7に記載のシロキサン含有BODIPY色素は、シリコーン樹脂以外の樹脂及び樹脂溶液への相溶性は低い、という問題がある。また、特許文献8の樹脂組成物は、溶媒が樹脂中に残留する可能性があるため、安全性に問題がある。加えて、特許文献7、特許文献8、特許文献9、及び特許文献10には、近赤外蛍光材料について記載がなく、医療用途への適用についても記載されていない。
特許文献6のICGについても溶液を一定時間乾燥させたものであり、医療用途への展開を考える場合、積極的な乾燥による溶媒除去及び無溶媒での加工が必要となる。
そのような背景の下、近年上記のホウ素錯体を近赤外蛍光材料として樹脂へ溶融混練した事例が開示されており(特許文献11)、それらの材料を用いた製品も市場に出回り始めている。しかしながら、その濃度は樹脂に対して400ppmまでと抑えられている。これは蛍光材料の濃度が上昇するとともに、蛍光材料間の相互作用によって、濃度消光と呼ばれる蛍光の減衰が発生するからである。
濃度消光を発生させる相互作用は強く、せん断力の小さい混練機では再分散させることは困難であり、せん断力を高めた場合は樹脂の物性に影響を及ぼし、製品への適用が困難となる。
本発明の一態様は、樹脂中で発光物質を均一に高分散させることにより、加工して得られる成形体が十分な輝度を発揮することができる樹脂組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る樹脂組成物は、発光物質、分散剤、放射線不透過性物質、及び樹脂を含む樹脂組成物であって、前記分散剤の含有量は、前記樹脂100質量部に対して、0.01~1質量部であり、前記放射線不透過性物質の含有量は、前記樹脂100質量部に対して、10~50質量部である。
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る樹脂組成物の製造方法は、発光物質、分散剤、放射線不透過性物質、及び樹脂を含有する樹脂組成物の製造方法であって、前記発光物質と、前記分散剤とを予め混合して混合物を得る第1混合工程と、前記混合物と、前記樹脂とを混合して前記樹脂組成物を得る第2混合工程とを含む。
本発明の一態様によれば、樹脂中で発光物質を均一に高分散させることにより、加工して得られる成形体が十分な輝度を発揮することができる樹脂組成物及びその製造方法を提供することができる。
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、発光物質、分散剤、放射線不透過性物質、及び樹脂を含む樹脂組成物である。本発明の一態様に係る樹脂組成物は、発光物質と分散剤を予め混合させた混合物と、放射線不透過性物質、及び樹脂を含有する。分散剤の含有量は、前記樹脂100質量部に対して、0.01~1質量部であり、前記放射線不透過性物質の含有量は、前記樹脂100質量部に対して、10~50質量部である。このような構成であることにより、樹脂中で発光物質を均一に高分散させることができ、本発明の一態様に係る樹脂組成物を加工して得られる成形体が十分な輝度を発揮することができる。
本発明の一態様に係る樹脂組成物では近赤外蛍光材料を予め均一に分散させるための分散剤と予め混和させる。これにより、高濃度で樹脂へ混練した際にも濃度消光を発生させる材料間の相互作用を抑制し、得られた樹脂組成物を他材料へ添加した際に、低いせん断力でも希釈条件で添加した近赤外蛍光材料と同等の輝度を発揮することが可能となる。
高濃度でも均一な近赤外蛍光材料は、生産面ではマスターバッチとして活用でき、少量多品種生産である医療部材でもコストを抑制できる。また、高濃度でも均一な近赤外蛍光材料は、材料としてはフィルム及びコーティングといった限られた光吸収でも輝度を確保する必要のある部材への適用が可能となる。
以上のように、本発明者らは近赤外傾向材料と分散剤とを予め混和させることによって、優れた効果が得られることを見出し本発明の完成に至ったが、さらに、本発明者らは、近赤外蛍光材料を安定に分散させる分散剤について医療用途への適用を考慮した場合の好ましい材料についても検討した。検討に当たっては、運用実績のある材料から選出するのが導入面で有利であると考え捜索した。その結果、放射線不透過性物質としても使用される硫酸バリウムが、分散剤の中でもより好ましいことをも発見した。
<発光物質>
本発明の一態様に係る樹脂組成物が含有する発光物質は、当該樹脂組成物から得られる成形体等に要求される製品品質、及び混合される樹脂の種類等を考慮して、適宜選択して用いることができる。発光物質には蛍光材料及び燐光材料がある。当該蛍光材料は、蛍光極大波長が可視光領域にあるもの(可視光蛍光材料)であってもよく、蛍光極大波長が近赤外領域にあるもの(近赤外蛍光材料)であってもよく、蛍光極大波長が赤外領域にあるもの(赤外蛍光材料)であってもよい。また、無機物質であってもよく、有機化合物であってもよい。
可視光蛍光材料としては、例えば、クマリン系色素、シアニン系色素、キノール系色素、ローダミン類、オキサゾール系色素、フェナジン系色素、アゾ-ヒドラゾン系色素、ビオラントロン系色素、ビラントロン系色素、フラバントロン系色素、フルオレセイン類、キサンテン系色素、ピレン類、ナフタルイミド系色素、アントラキノン系色素、チオインジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、アゾ-ホウ素系色素、国際公開2007/126052号公報などに記載のボロン-ジピロメテン(BODIPY)系色素などのホウ素錯体系色素、ポルフィリン系色素等の化合物が挙げられる。また、ZnS:Ag、(ZnCd)S:Cu、(ZnCd)S:Ag、ZnSiO:Mn、Cd:Mn、(SrMg)(PO:Mn、YVO:En,CaWO等の無機蛍光体もある。
近赤外蛍光材料及び赤外蛍光材料としては、例えば、ポリメチン系色素、アントラキノン系色素、ジチオール金属塩系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、インドフエノール系色素、シアミン系色素、スチリル系色素、アルミニウム系色素、ジイモニウム系色素、アゾ系色素、アゾ-ホウ素系色素、国際公開2007/126052号公報などに記載のボロン-ジピロメテン(BODIPY)系色素などのホウ素錯体系色素、スクアリウム系色素、ペリレン系色素等の化合物が挙げられる。
また、燐光材料としては、イリジウム錯体、オスミニウム錯体、白金錯体、ユーロピウム錯体、銅錯体などの有機金属錯体、ポルフィセン錯体等が挙げられる。
本発明の一態様に係る樹脂組成物が、例えば生体内で使用される医療機器の素材として用いられる場合には、近赤外蛍光材料及び赤外蛍光材料の少なくとも一方を含有することが好ましい。上記近赤外蛍光材料及び赤外蛍光材料の少なくとも一方を含有する樹脂組成物及びこれから得られる成形体は、目に見えない近赤外領域の光で励起、検出できるため、励起光及び発光が目視での生体組織などの色調を変えることなく検出できる。加えて生体組織透過性は可視光より高く、生体深部を鮮明に可視化することが可能である。
本発明の一態様に係る樹脂組成物が含有する近赤外蛍光材料としては、上記記載の材料の中では、シアニン色素、特にICG系列が医療分野での使用実績の観点から好ましい。更に、ICG系列の骨格を有した下記化学式(2)にあげるカチオン種の置換基A,B,Cを精密に制御し、それらカチオン種に適した対イオンを選別した蛍光材料は、耐熱性ならびに樹脂内の溶解度及び分散性の観点から更に好ましい。
本発明では樹脂組成物を主眼としており、近赤外蛍光材料単体を用いることを想定していない。しかし近赤外蛍光材料のストークスシフトは媒体によって影響するものの、各近赤外蛍光材料の相対差は大きく変化しない。また、近赤外蛍光材料の置換基を制御した際に影響を解析にするにあたり、近赤外蛍光材料単体を溶解させた溶液を対象に分析データを収集することがある。そのため、この項では溶液状態での近赤外蛍光材料について記載する。近赤外蛍光材料を含む樹脂組成物については後述する。
一般的に、蛍光材料から発される蛍光を検出する場合、励起光の散乱光及び反射光も検出器に入ってきてしまうため、通常は、検出器に励起光の波長域をカットするフィルターが入れられている。このような検出器では、励起光及び蛍光の波長域が重複し、蛍光がフィルターによってカットされる波長域にある蛍光材料の蛍光は検出できないという問題がある。蛍光と励起光とを区別し、蛍光のみを高感度で検出することを可能にするためには、近赤外蛍光材料のストークスシフト(極大吸収波長と極大蛍光波長との差)が充分に大きいことが必要である。
具体的にはストークスシフトが50nm以上のものがより好ましく、ストークスシフトが大きいほど蛍光が励起光によるノイズカットの影響で削られる割合を抑えることができ、一般的な検出器を用いた場合でも、蛍光をより高感度で検出することが可能である。
目安であるが、近赤外領域の励起光に対しては極大吸収波長が650nm以上であればよいが、吸収効率の観点からは、極大吸収波長が励起光の波長に近い方が好ましく、665nm以上がより好ましく、680nm以上であることが特に好ましい。
極大蛍光波長については、700nm以上であれば実用的には問題がないが、720nm以上であることが好ましく、740nm以上であることがより好ましく、760nm以上であることが特に好ましい。なお、極大吸収波長が短い場合には、近赤外領域における検出感度の観点から、ストークスシフトがより大きいことが好ましい。これらの値は樹脂組成物での用途上での値であるので、近赤外蛍光材料単体では多少前後してもよい。
置換基Aには耐熱性向上の観点から嵩高い置換基を導入することが好ましい。加えてπ共役系と置換基Aの間にヘテロ原子を介在させることで近赤外蛍光材料の極大吸収波長と極大蛍光波長、及びその差のストークスシフトを用途に適した値へと調整することが可能である。
これまでの検討結果より、置換基Aは芳香族間を含む置換基が好ましく、その芳香族間上に炭化水素基が存在する方がより好ましいことを明らかとした。置換基上の一部の水素がハロゲンに置換されていてもよい。
また、置換基Aとπ共役系の間には単結合、もしくはO、N、S、Pが好ましく、特に単結合、O、Nが量子効率の観点からも好ましい。
置換基Bは量子効率の観点から炭素数1~6の炭化水素基が好ましく、炭素数3~6の炭化水素基がより好ましく、炭素数3~4のプロピル基又はブチル基がさらに好ましい。
置換基Cは熱失活抑制の観点から、何も無いものが好ましく、両端の構造はベンゾインドール環が好ましい。加えて芳香環を介した相互作用を小さくすることで、凝集とそれによる消光を抑える効果も期待できる。
π共役中央の構造は五員環、もしくは六員環が好ましく、安定性及び量子効率の観点から六員環が特に好ましい。
対イオンは近赤外蛍光材料のイオン性を非局在化させることで、蛍光材料間の凝集とそれによる消光を抑えることが期待できる。よって対イオンは嵩高いものが好ましい。本発明に関して対イオンは、ハロゲンを除く無機対イオン、もしくは有機対イオンのいずれかが好ましく、テトラフェニルボラート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、テトラキス(4-フルオロフェニル)ボラート、テトラフェニルボラート、テトラキス[3,5-ビス-(トリフルオロメチル)フェニル]ボラート、テトラキス[3,5-ビス-(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシ-2-プロピル)フェニル]ボラートおよびテトラキス[ペルフルオロ-tert-ブトキシ]アルミネートから選択される嵩高い有機対イオン、もしくはテトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファートから選択される無機対イオンのいずれかがさらに好ましい。
本発明の一態様に係る樹脂組成物が含有する近赤外蛍光材料としては、具体的には、下記化学式(1)に示すカチオン種と、ハロゲンを除くアニオン種とから成る1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
化学式(1)中、lは1又は2のいずれかの数であることが好ましい。
化学式(1)中、Xは単結合、炭素、窒素、酸素、リン、及び硫黄分子からなる群から選択されることが好ましく、単結合、窒素、及び酸素からなる群から選択されることがより好ましい。mは1又は2のいずれかの数であることが好ましい。
化学式(1)中、Rは、脂肪族又は芳香族性の炭化水素基であることが好ましく、他のRと共に環を形成していてもよく、一部水素がハロゲンに置換されてもよく、nは1~5のいずれかの数であってもよい。
化学式(1)中、Rは、脂肪族の炭化水素基であることが好ましく、直鎖、分岐炭化水素基、又は環状構造を有する炭化水素基であり得る。Rは炭素数1~6の炭化水素基であることが好ましい。
カチオン種は、下記化学式
から選択される1種又は2種以上の化合物であることが好ましい。
アニオン種は、ホウ素又はリンを含む対イオンであることが好ましい。
また、本発明の一態様に係る樹脂組成物が含有する近赤外蛍光材料としては、ホウ素錯体系色素として、下記化学式で示される化合物を用いてもよい。
また、本発明の一態様に係る樹脂組成物が含有する近赤外蛍光材料としては、ポルフィリン系色素として、下記化学式で示される化合物を用いてもよい。
<分散剤>
本発明では発光物質を樹脂内で均一に分散させるために使用する粒子上の物質を、分散剤と呼称する。分散剤は樹脂中に発光物質をなるべく均一に分散させることが目的であるため、通常、発光物質を樹脂に混合する際に発光物質と同時に添加されて用いられる。これにより、分散剤が樹脂中に分散していくのに合わせて発光物質が樹脂中に十分に分散する。
発光物質は相互作用が無視できる程度の希薄条件下では、均一に分散させることが可能であるが、含有量が増加するとともに相互作用による影響もまた増加する性質を有している。その結果、濃度消光及び発光の再吸収による発光強度の低下といった性能低下、ならびにムラ及び凝集粒子の発生といった品質低下を引き起こすことが知られている。分散剤を利用することで性能低下及び品質低下を抑制することが可能である。
分散剤は、アルカリ土類金属塩であることが好ましい。アルカリ土類金属塩としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。これらの物質が分散剤として効果がある理由について明らかではないが、(1)発光物質間の相互作用を阻害して凝集を抑制する、(2)樹脂と発光物質との間を仲介する事で親和性を向上させる、といった現象が単独もしくは協奏的に発生していることが推察される。
分散剤として挙げた硫酸バリウム、炭酸カルシウムは放射線不透過性物質としても実績のある物質であり、放射線不透過性物質としてこれらを単独もしくは両方用いてもよい。なお、分散剤と放射線不透過性物質とに同一の物質を使用した場合、これは分散剤としての機能を果たしたのちに放射線不透過性物質として動作することになる。この場合、組成物中に最終製品使用時に機能しない(分散にしか役に立たない)ものを含むのではないため、過剰に添加したことによる問題を生じない。よって便宜上樹脂100質量部に対し0.01質量部を分散剤と解釈し、当該物質の全体の量を放射線不透過性物質と解釈することとする。
分散剤は混合する発光物質に対して質量見合いで10倍以上であることが好ましい。発光物質と放射線不透過性物質とが同成分である場合、第1混合工程において後述する放射性不透過性物質としての好ましい量の少なくとも一部と当該発光物質としての好ましい量との合計量の当該成分と分散剤とを混合してもよい。混合方法は分散剤の効果に大きく影響するものではないが、プラスチック製、ガラス製、又は金属製の器具、ダマなどが確認できる際は超音波といった機器を使用してもよい。
分散剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、0.01~1質量部である。分散剤の含有量がこの範囲内であることにより、樹脂中で発光物質を均一に高分散させることにより、加工して得られる成形体が十分な輝度を発揮することができる。
<放射線不透過性物質>
本発明の一態様に係る樹脂組成物が含有する放射線不透過性物質としては、放射線の透過性が、皮膚、筋肉、及び脂肪等よりも低いものが好ましく、骨及びカルシウム等よりも低いものがより好ましい。このような放射線不透過性物質としては、例えば、非金属原子からなるものとして、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、臭素、臭化物、ヨウ素、ヨウ化物等が挙げられ、金属原子を含むものとして、チタン、亜鉛、ジルコニウム、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、タンタル、タングステン、レニウム、イリジウム、プラチナ、金、ビスマス等の金属の金属粉末及び酸化物等が挙げられる。また、雲母、タルク等も放射線不透過性物質として用いることができる。
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、医療用材料として用いられ得る。本発明の一態様に係る樹脂組成物が、例えば生体内で使用される医療用具の素材として用いられる場合には、生体適合性の高い放射線不透過性物質を含有することが好ましい。生体適合性の高い放射線不透過性物質としては、例えば、硫酸バリウム、酸化ビスマス、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タングステン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ジルコニウム、チタン、白金、次硝酸ビスマス、ビスマス等が挙げられる。本発明の一態様において用いられる放射線不透過性物質としては、安全性等の点から、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、次炭酸ビスマス、又は酸化ビスマスがより好ましく、発光物質に対する増感効果の点から、硫酸バリウムが特に好ましい。本発明の一態様に係る樹脂組成物は、1種類の放射線不透過性物質を含有していてもよく、2種類以上を含有していてもよい。本発明の一態様に係る樹脂組成物においては、前記で挙げられた放射線不透過性物質の1種又は2種以上を含有するものが好ましい。
本発明の一態様において用いられる放射線不透過性物質の形状は、配合された樹脂組成物に放射線不透過性を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、粒子状、フィラメント状、不定形状のいずれであってもよい。本発明の一態様において用いられる放射線不透過性物質としては、樹脂への分散性、放射線透過性、前記分散剤としての影響の点から、粒子状であることが好ましい。
放射線不透過性物質の含有量は、放射線検査機器の検知感度の観点及び樹脂の物性を確保する観点から、10~50質量部であり、好ましくは20~30質量部である。
分散剤は放射線不透過性物質としても働くので、樹脂の物性を確保する観点から分散剤と放射線不透過性物質との合計値で管理するのが望ましい。樹脂組成物における分散剤と放射線不透過性物質との合計含有量が樹脂100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、80質量部以下であることが好ましい。当該合計含有量は、より好ましくは10~50質量部であり、更に好ましくは20~30質量部である。
<樹脂>
本発明の一態様に係る樹脂組成物が含有する樹脂は、特に限定されるものではなく、成形体を形成した際に要求される製品品質等を考慮して、公知の樹脂組成物及びその改良物から適宜選択して用いることができる。例えば、当該樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。本発明の一態様に係る樹脂組成物が含有する樹脂としては、熱可塑性樹脂であることが好ましい。本発明の一態様において用いられる樹脂としては、1種のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。2種類以上を混合する場合には、相溶性の高い樹脂同士を組み合わせて用いることが好ましい。
本発明の一態様に係る樹脂組成物において用いられる樹脂としては、例えば、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)等のウレタン系樹脂;ポリカーボネート(PC);ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂等の塩化ビニル系樹脂;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレ-ト(PET)、ポリブチレンテレフタレ-ト、ポリトリメチレンテレフタレ-ト、ポリエチレンナフタレ-ト、ポリブチレンナフタレ-ト等のポリエステル系樹脂;ナイロン(登録商標)等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン(PS)、イミド変性ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、イミド変性ABS樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合(SAN)樹脂、アクリロニトリル・エチレン-プロピレン-ジエン・スチレン(AES)樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、シクロオレフィン樹脂等のオレフィン系樹脂;ニトロセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、イソシアヌレート系エポキシ樹脂、ヒダントイン系エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂;メラミン系樹脂;シリコーン系樹脂;フッ素系樹脂;ゴム系樹脂等が挙げられる。樹脂は、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及び塩化ビニル系樹脂からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。中でも、発光物質の分散性が高いことから、当該樹脂としては、PU、PET、PVC、PC、PMMA、PSが好ましく、これらのうちの2種以上を混合して使用しても構わない。
また、本発明の一態様に係る樹脂組成物において用いられる樹脂としては、耐放射線性を有するものが好ましい。耐放射線性を有する樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテル系樹脂などが挙げられる。これら以外の樹脂であっても、添加剤を併用することにより耐放射線性を向上させることができる。当該添加剤としては、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定化剤、有機系増核剤等が挙げられる。
なお、本発明の一態様に係る樹脂組成物が熱可塑性樹脂組成物の場合、樹脂としては、樹脂全体として熱可塑性樹脂であればよく、少量の非熱可塑性樹脂を含有していてもよい。同様に、本発明の一態様に係る樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物の場合、樹脂としては、樹脂全体として熱硬化性樹脂であればよく、少量の非熱硬化性樹脂を含有していてもよい。
<樹脂組成物>
本発明の一態様に係る樹脂組成物の製造方法は、発光物質、分散剤、放射線不透過性物質、及び樹脂を含有する樹脂組成物の製造方法である。本発明の一態様に係る樹脂組成物の製造方法は、発光物質と、分散剤とを予め混合して混合物を得る第1混合工程と、混合物と、前記樹脂とを混合して前記樹脂組成物を得る第2混合工程とを含む。本発明の一態様に係る樹脂組成物は、第1混合工程において発光物質と分散剤と予め混合した混合物を、第2混合工程において樹脂と混合及び分散させることにより製造できる。混合物を樹脂に混合及び分散する方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法で行ってもよく、さらに添加剤を併用しても構わない。例えば、適当な溶媒に溶解させた樹脂組成物溶液に、混合物を添加して分散させてもよい。また、溶媒を使用しない場合も、樹脂組成物に混合物を添加して溶融混練させ、本発明の一態様に係る樹脂組成物を得ることができる。こうして樹脂中に混合物が均一に分散された状態の樹脂組成物が得られる。
樹脂組成物中の発光物質の含有量は、発光物質が樹脂に混合し得る濃度であれば特に限定されるものでは無い。発光物質は、凝集誘起発光を利用した発光物質といった事例を除けば、一般的に発光物質の相互作用が無視できる程度の希薄条件下が、最も濃度見合いの発光強度が高いことが知られている。しかし、各種測定機器における検出感度の観点から実用的な発光強度を確保することが好ましい。そのために、発光物質の含有量は樹脂100質量部に対して0.0001質量部以上が好ましく、濃度消光及び発光の再吸収による発光強度の低下から樹脂100質量部に対して1質量部以下が好ましい。樹脂100質量部に対して、より好ましくは0.001~0.1質量部の範囲で、さらに好ましくは0.006~0.02質量部の範囲である。樹脂組成物を加工して得られる成形体での発光物質の含有量は、この範囲内に収めることで実用に足る発光強度が得られる。
一方で、成型体加工前の樹脂組成物での発光物質の含有量は、マスターバッチ及びコンパウンドといった他樹脂へ添加する用途に対応するため、成形体より高くしてもよい。ハンドリングの観点からその含有量は、樹脂組成物100質量部に対して好ましくは1質量部以内であり、より好ましくは0.1質量部である。
以上の点より、樹脂組成物中の近赤外蛍光材料の含有量は、樹脂100質量部に対して、0.0001~1質量部であることが好ましい。加工面から好ましくは0.0001~0.1質量部であり、性能上好ましくは0.001~0.1質量部の範囲であり、さらに好ましくは0.006~0.02質量部の範囲である。
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、耐放射線性に優れた近赤外蛍光を発する。ここで、蛍光を発する樹脂組成物が「耐放射線性に優れている」とは、放射線照射による極大吸収波長の吸光度の減衰率〔([放射線照射前の吸光度]-[放射線照射後の吸光度])/[放射線照射前の吸光度]×100(%)〕が小さいことを意味する。ここで、極大吸収波長の吸光度の減衰率とは、600~1100nmの波長領域での最大の吸光度を有する極大吸収波長の吸光度の減衰率を意味する。具体的には、本発明の一態様に係る樹脂組成物は、25kGyの放射線照射による極大吸収波長における吸光度の減衰率が50%以下である。減衰率がこの範囲であれば実用的に問題は無い。しかしながら、感度の点から本発明の一態様に係る樹脂組成物としては、25kGyの放射線照射による極大吸収波長における吸光度の減衰率が30%以下であるものが好ましく、20%以下であるものがより好ましく、15%以下であるものがさらに好ましい。
また、本発明の一態様に係る樹脂組成物としては、放射線照射による極大吸収波長の変化は小さい方が好ましい。放射線照射前の極大吸収波長と放射線照射後の極大吸収波長との差は、30nm以下であればよく、20nm以下がより好ましく、10nm以下であることが特に好ましい。さらにまた、本発明の一態様に係る樹脂組成物としては、放射線照射による極大蛍光波長の変化は小さい方が好ましい。放射線照射前の極大蛍光波長と放射線照射後の極大蛍光波長との差は、30nm以下であればよく、20nm以下がより好ましく、10nm以下であることが特に好ましい。
樹脂組成物に放射線の照射をする場合は、目的に応じて放射線の種類及び照射線量を適宜選択すればよい。例えば、医療器具を放射線滅菌する場合は、5kGy以上の照射線量で行なわれることが多い。医療器具の種類及び滅菌工程設備によって適宜最適なものを選択すればよいが、滅菌レベルを保つために照射線量を高く設定する必要がある場合もある。一般に、50kGy以上の照射において耐放射線があれば、充分な滅菌が可能となる。この観点から、本発明の一態様に係る樹脂組成物としては、50kGy照射時の極大吸収波長の吸光度の減衰率が70%以下であるものが好ましく、60%以下であるものがより好ましく、50%以下であるものがさらに好ましい。
一般的に、蛍光材料から発される蛍光を検出する場合、励起光の散乱光及び反射光も検出器に入ってきてしまうため、通常は、検出器に励起光の波長域をカットするフィルターが入れられている。このような検出器では、励起光と蛍光の波長域が重複し、蛍光がフィルターによってカットされる波長域にある蛍光材料の蛍光は検出できないという問題がある。蛍光と励起光を区別し、蛍光のみを高感度で検出することを可能にするためには、近赤外蛍光材料のストークスシフト(極大吸収波長と極大蛍光波長の差)が充分に大きいことが必要である。
そこで、本発明の一態様に係る樹脂組成物は、ストークスシフト(極大吸収波長と極大発光波長の差)が大きいものが好ましく、ストークスシフトが50nm以上のものがより好ましい。ストークスシフトが大きいほど、励起光によるノイズカットのためのフィルターが備えられている一般的な検出器を用いた場合でも、当該成形体から発される蛍光をより高感度で検出することが可能である。
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、近赤外領域の励起光で励起しても目視状態で色彩が変わらず、かつ、不可視の近赤外領域の蛍光を発し、検出器で検出できる。したがって、近赤外領域の励起光に対しては極大吸収波長が650nm以上であればよいが、吸収効率の観点からは、極大吸収波長が励起光の波長に近い方が好ましく、665nm以上がより好ましく、680nm以上であることが特に好ましい。
本発明の一態様に係る樹脂組成物及び当該組成物から得られる成形体は、被照射物の色彩が変わらず、かつ、検出感度を考慮すると、極大蛍光波長が700nm以上であれば実用的には問題がない。具体的には、720nm以上であることが好ましく、740nm以上であることがより好ましく、760nm以上であることが特に好ましい。なお、極大吸収波長が短い場合には、近赤外領域における検出感度の観点から、ストークスシフトがより大きいことが好ましい。
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、前記の近赤外蛍光材料、分散剤、放射線不透過性物質、及び樹脂以外の他の成分を含有していてもよい。当該他の成分としては、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、結晶化促進剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、離型剤等が挙げられる。
<成形体>
本発明の一態様に係る成形体は、本発明の一態様に係る樹脂組成物を加工して得られる。当該成形体の成形方法は、特に限定されないが、キャスティング(注型法)、金型を用いた射出成形、圧縮成形及びTダイ等による押し出し成形、ブロー成形などが挙げられる。
蛍光検出は、市販されている蛍光検出装置等を使用し、常法により実施することができる。蛍光検出に用いる励起光としては、任意の光源を使用でき、波長幅が長い近赤外線ランプの他、波長幅が狭いレーザー、LEDなどを使用することができる。
本発明の一態様に係る樹脂組成物から得られた成形体は、近赤外領域の光を照射しても色彩が変わらず、従来よりも高感度に検出可能な近赤外蛍光を発する。そのため、本発明の一態様に係る成形体の少なくとも一部は、好ましくは、患者の体内で使用される医療用具である。具体的には、当該成形体は、特に、患者の体内に挿入したり留置したりする医療用具に好適である。
本発明の一態様に係る樹脂組成物から得られた成形体を蛍光検出する場合には、近赤外領域の励起光を照射することが好ましいが、被照射物の色彩が多少赤みを帯びても構わない場合には、必ずしも近赤外線領域の励起光を使用する必要はない。例えば、励起光を照射して体内の医療用具を蛍光検出しようとした場合、皮膚などの生体に対する透過性の高い波長領域で励起光を使用することが必要となるが、この場合には、生体透過性の高い650nm以上の励起光を使用すればよい。
当該医療用具としては、例えば、ステント、コイル塞栓子、カテーテルチューブ、注射針、シャントチューブ、ドレーンチューブ、インプラント等が挙げられる。
<滅菌方法>
本発明の一態様に係る樹脂組成物から得られた成形体を滅菌する場合には、当該滅菌方法としては、医療用具等の滅菌の際に使用される各種方法を用いることができる。例えば、医療用具等の滅菌方法は、高圧蒸気滅菌、EOG滅菌、γ線滅菌、電子線滅菌、紫外線滅菌等が挙げられる。その中でも、γ線及び電子線滅菌に代表されるような放射線滅菌は、効率的で処理方法が簡便であることから、好ましい処理方法である。
(まとめ)
本発明の態様1に係る樹脂組成物は、発光物質と分散剤とを予め混合させた混合物、放射線不透過性物質、及び樹脂を含有する樹脂組成物である。
本発明の態様2に係る樹脂組成物は、前記の態様1において、前記分散剤が硫酸バリウムであってもよい。
本発明の態様3に係る樹脂組成物は、前記の態様1又は2において、前記樹脂組成物における前記分散剤と前記放射線不透過性物質との合計含有量が前記樹脂100質量部に対して10質量部以上であってもよい。
本発明の態様4に係る樹脂組成物は、前記の態様1~3のいずれか1つにおいて、前記発光物質が近赤外蛍光材料であってもよい。
本発明の態様5に係る樹脂組成物は、前記の態様4において、前記近赤外蛍光材料が、下記化学式(1)に示すカチオン種と、ハロゲンを除くアニオン種とから成る1種又は2種以上の化合物であってもよい:
化学式(1)中、lは1又は2のいずれかの数であり、Xは単結合、炭素、窒素、酸素、リン、及び硫黄分子からなる群から選択され、mは1又は2のいずれかの数であり、Rは、脂肪族又は芳香族性の炭化水素基であり、他のRと共に環を形成していてもよく、一部水素がハロゲンに置換されてもよく、nは1~5のいずれかの数であり、Rは、脂肪族の炭化水素基であり、直鎖、分岐炭化水素基、又は環状構造を有する炭化水素基であってもよい。
本発明の態様6に係る樹脂組成物は、前記の態様5において、前記化学式(1)中、Xが単結合、窒素、及び酸素からなる群から選択されてもよい。
本発明の態様7に係る樹脂組成物は、前記の態様5又は6において、前記化学式(1)中、Rが炭素数1~6の炭化水素基であってもよい。
本発明の態様8に係る樹脂組成物は、前記の態様5~7のいずれか1つにおいて、前記アニオン種がホウ素又はリンを含む対イオンであってもよい。
本発明の態様9に係る樹脂組成物は、前記の態様5~8のいずれか1つにおいて、前記カチオン種が下記化学式
から選択される1種又は2種以上の化合物であってもよい。
本発明の態様10に係る樹脂組成物は、前記の態様1~9のいずれか1つにおいて、前記放射線不透過性物質が、硫酸バリウム、酸化ビスマス、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タングステン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ジルコニウム、チタン、白金、次硝酸ビスマス、及びビスマスからなる群より選択される1種以上であってもよい。
本発明の態様11に係る樹脂組成物は、前記の態様1~10のいずれか1つにおいて、前記樹脂が、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及び塩化ビニル系樹脂からなる群より選択される1種以上であってもよい。
本発明の態様12に係る成形体は、前記の態様1~11のいずれか1つの樹脂組成物を加工して得られる成形体であってもよい。
本発明の態様13に係る成形体は、前記の態様12において、少なくとも一部が、患者の体内で使用される医療用具であってもよい。
本発明の態様14に係る樹脂組成物の製造方法は、発光物質、分散剤、放射線不透過性物質、及び樹脂を含有する樹脂組成物の製造方法であって、前記発光物質と、前記分散剤とを予め混合して混合物を得る第1混合工程と、前記混合物と、前記樹脂とを混合して前記樹脂組成物を得る第2混合工程とを含む。
本発明は上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例及び比較例等を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
<輝度測定>
780nmのLED光源と840nmのバンドパスフィルターを取り付けた近赤外蛍光観察用カメラ(ニレック株式会社製FL VIEW)を用いて暗室にて観測した発光データを画像処理アプリケーション(ニレック株式会社製FL VISION)を用いて発光強度を測定した。
[合成例1]近赤外蛍光材料1の合成方法
窒素雰囲気下1L容四頸反応器に、化合物1-1:2-[2-[2-クロロ-3-[(1,3-ジヒドロ-3,3-ジメチル-1-プロピル-2H-インドール-2-イリデン)エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-3,3-ジメチル-1-プロピル-1H-インドリウムヨージド(American Dye Source社製、9.00g、13.5mmol)、化合物1-2:4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(東京化成工業株式会社製、5.01g、1.8eq.)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(450mL)を仕込み、トリエチルアミン(4.7mL、2.5eq.)を滴下し、85℃にて8時間加熱撹拌した。室温へ冷却後、精製水(500mL)でクエンチし、ジクロロメタン(500mL×2回)で抽出した。有機層を精製水(250mL×2回)及びブライン(150mL)で順次洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮し、暗褐色ペースト状粗体(25g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル60N球状中性、63~210μm、1.25kgをジクロロメタンで充填し、メタノール/ジクロロメタン=1/15で溶出)にて分離精製を繰り返し行なった。その結果、目的物1-3(439mg、収率3.9%)を得た。
窒素雰囲気下20mL容Schlenk管に、化合物1-3(430mg、0.514mmol)のアセトン(3.0mL)溶液を室温撹拌し、1.0M NHPF水溶液(514μL、1.0eq.)を滴下した。室温にて1時間撹拌後、減圧下アセトンを留去し、析出物を吸引濾取、精製水(10mL)でリンスした。結晶を真空減圧下50~80℃恒量まで8時間乾燥させ、目的物近赤外蛍光材料1(388mg、収率88.4%)を得た。
[合成例2]近赤外蛍光材料2の合成方法
Fischer, G. M., et al., "Pyrrolopyrrole cyanine dyes: A new class of near-infrared dyes and fluorophores.", Chemistry-A European Journal 15(19), 4857-4864, 2009に記載の方法を参考に近赤外蛍光材料2を合成した。
[樹脂と近赤外蛍光材料違いにおける輝度について]
本特許で述べる分散剤及び放射線不透過性物質を添加した試料は含まない試料と比較して、前述する輝度測定で2~5倍程度高い値となる傾向を有している。これはこれらの物質が近赤外蛍光材料の吸光波長及び蛍光波長を含む広い範囲で高い反射率を有しているためで、おそらくフィルム内を全反射してフィルム端から抜けてしまう蛍光を散乱させて観測者側に届く割合を増加させる等の効果によるものと考えている。
よって輝度の比較を行う際は分散剤及び放射線不透過性物質の含有量を合わせる必要がある。一方で樹脂間でも近赤外蛍光材料との相互作用の違いによって輝度に差が発生する可能性が有る。
樹脂間の違いについて、以下の製造例にて濃度消光の影響を無視できる近赤外蛍光材料含有量で、加えて分散剤及び放射線不透過性物質を含まない試料を作製し、そのフィルムの輝度も用いて示す。
[製造例1]
樹脂として、硫酸バリウムを含まない芳香族ポリエーテル系のTPU(製品名:ChronoThane P80 A、AdvanSource Biomaterials(ASB)社製)粉体(ペレットをSPEX Sample Prep社製フリーザミルにて凍結粉砕)1.0gと近赤外蛍光材料1:1.8mgとをカップ中で混合し、その混合品を粉体と同種類のTPUペレット14.0gの表面に付着させた。
次いで、当該ペレットをXploreHT(Xplore Instruments社製)に投入し、設定温度190℃で3分間溶融混練した。混錬した後、近赤外蛍光材料含有樹脂をストランド状で取り出した。
得られた溶融混練された近赤外蛍光材料含有樹脂をテフロン(登録商標)コーティングされたスペーサー、PETフィルム及び鉄板で挟み込んだ状態で、190℃、5MPaで2分間加熱プレスした後、20℃、10MPaで1分間冷却プレスを実施した。得られたフィルムの厚みは256μmであった。
得られたフィルムについて前記の輝度測定を行った結果、フィルムの輝度は一様で中心の輝度は29であった。
[製造例2]
製造例1で使用した樹脂を芳香族ポリカーボネート(PCD)系のTPU(製品名:ChronoFlex C80 A、ASB社製)に変更した以外は製造例1と同様にしてフィルムを作製した。得られたフィルムの厚みは264μmであり、輝度は27であった。
[製造例3]
製造例1で使用した樹脂を脂肪族ポリエーテル系のTPU(製品名:ChronoThane T80 A、ASB社製)に変更した以外は製造例1と同様にしてフィルムを作製した。得られたフィルムの厚みは267μmであり、輝度は11であった。
[製造例4]
製造例1で使用した樹脂を芳香族PCD系のTPU(製品名:ChronoFlex C80 A、ASB社製)に、製造例1で使用した近赤外蛍光材料を近赤外蛍光材料2に変更した以外は製造例1と同様にしてフィルムを作製した。得られたフィルムの厚みは254μmであり、輝度は29であった。
製造例の結果を表1に示す。近赤外蛍光材料1は芳香族系のTPUで同程度の輝度を発揮し、同じ芳香族系のTPUで、近赤外蛍光材料1及び近赤外蛍光材料2は同程度の輝度であることを確認した。
[実施例1]
3.0gの硫酸バリウム(富士フイルム和光純薬(株)、和光一級)と15.0mgの近赤外蛍光材料1とをカップ中で混合し、その混合品を15.0gのTPUペレット(製品名:ChronoFlex C80 A、ASB社製)の表面に付着させた。
次いで、製造例1と同様の方法で溶融混練した。混錬した後、近赤外蛍光材料含有樹脂をストランド状で取り出した。得られたストランドはマスターバッチ(MB)用途としてペレットサイズに裁断した。
得られた近赤外蛍光材料含有樹脂を一部用いて製造例1と同様の方法でフィルムを作製し輝度を測定した。得られたフィルムの厚みは266μmであり、輝度は106であった。
[実施例1-1]
2.16gの実施例1の近赤外蛍光材料含有樹脂と13.2gのTPUペレット(製品名:ChronoFlex C80 A、ASB社製)とをカップ中で混合し、その表面に2.64gの硫酸バリウム(富士フイルム和光純薬(株)、和光一級)を付着させた。
次いで、当該ペレットを製造例1と同様の方法で溶融混練した。混錬した後、近赤外蛍光材料含有樹脂をストランド状で取り出した。
得られた溶融混練された近赤外蛍光材料含有樹脂を製造例1と同様の方法でフィルムを作製した。得られたフィルムの厚みは260μmであった。
得られたフィルムについて前記の輝度測定を行った結果、フィルムの輝度は一様で中心の輝度は92であった。
[実施例1-2]
2.16gの実施例1の近赤外蛍光材料含有樹脂と硫酸バリウムを20質量%含むTPUペレット(製品名:ChronoFlex AL78AB20、ASB社製)13.2gとをカップ中で混合した。
次いで、当該ペレットを製造例1と同様の方法で溶融混練した。混錬した後、近赤外蛍光材料含有樹脂をストランド状で取り出した。
得られた溶融混練された近赤外蛍光材料含有樹脂を製造例1と同様の方法でフィルムを作製した。得られたフィルムの厚みは237μmであった。
得られたフィルムについて前記の輝度測定を行った結果、フィルムの輝度は一様で中心の輝度は78であった。
[比較例1]
1.0gのTPU(製品名:ChronoThane P80 A、ASB社製)粉体(ペレットをSPEX Sample Prep社製フリーザミルにて凍結粉砕)と15.0mgの近赤外蛍光材料1とをカップ中で混合し、その混合品を粉体と同種類の14.0gのTPUペレットの表面に付着させた。
次いで、当該ペレットを製造例1と同様の方法で溶融混練した。混錬した後、近赤外蛍光材料含有樹脂をストランド状で取り出した。得られたストランドはMB用途としてペレットサイズに裁断した。
得られた近赤外蛍光材料含有樹脂を一部用いて製造例1と同様の方法でフィルムを作製し輝度を測定した。得られたフィルムの厚みは261μmであり、輝度は54であった。
[比較例1-1]
1.8gの比較例1の近赤外蛍光材料含有樹脂と13.2gのTPUペレット(製品名:ChronoThane P80 A、ASB社製)とをカップ中で混合し、その表面に3.0gの硫酸バリウム(富士フイルム和光純薬(株)、和光一級)を付着させた。
次いで、当該ペレットを製造例1と同様の方法で溶融混練した。混錬した後、近赤外蛍光材料含有樹脂をストランド状で取り出した。得られたストランドはペレットサイズに裁断した。
得られた溶融混練された近赤外蛍光材料含有樹脂を製造例1と同様の方法でフィルムを作製した。得られたフィルムの厚みは264μmであった。
得られたフィルムについて前記の輝度測定を行った結果、フィルムの輝度は一様で中心の輝度は53であった。
[実施例1-3]
3.0gの硫酸バリウム(富士フイルム和光純薬(株)、和光一級)と1.8mgの近赤外蛍光材料1とをカップ中で混合し、その混合品を15.0gのTPUペレット(製品名:ChronoThane P80 A、ASB社製)の表面に付着させた。
次いで、当該ペレットを製造例1と同様の方法で溶融混練した。混錬した後、近赤外蛍光材料含有樹脂をストランド状で取り出した。
得られた溶融混練された近赤外蛍光材料含有樹脂を製造例1と同様の方法でフィルムを作製した。得られたフィルムの厚みは262μmであった。
得られたフィルムについて前記の輝度測定を行った結果、フィルムの輝度は一様で中心の輝度は97であった。
上記の結果を表2に示す。実施例1、1-1、1-2、及び1-3のフィルムの輝度は良好であったことから、実施例1、1-1、1-2、及び1-3の樹脂組成物は樹脂中で近赤外蛍光材料を均一に高分散されていることが分かった。また、実施例1は近赤外蛍光材料含有量が1000ppmにも拘らず、近赤外蛍光材料含有量が120ppmである実施例1-3と同程度の輝度であった。これは近赤外蛍光材料の含有量が高く凝集による濃度消光及び蛍光の再吸収が起こっているためであると推察される。
このように凝集が発生する1000ppmまで上げた試料を用いて、濃度消光を無視できる程度まで希釈した際の輝度を確認した。分散剤を添加した実施例1をMBとして用いて、120ppmまで希釈した実施例1-1の輝度は、分散剤を添加しなかった比較例1をMBとして用いた比較例1-1の輝度と比較して高かった。比較例1-1より一度凝集した近赤外蛍光材料の分子間相互作用は強く、今回の混練条件ではその相互作用をせん断する程の力が無いことが推察できる。
一方で実施例1-1の輝度は凝集する含有量を経ずして近赤外蛍光材料及び分散剤を用いた実施例1-3の値と同程度であった。この結果より分散剤は凝集が発生する様な近赤外蛍光材料含有量でも分子間相互作用を抑制し、せん断力の小さい混練条件下でもMBとして十分に活用できることを示した。
実際に実施例1-2のように予め放射線不透過性物質添加したものへMBとして用いた場合でも比較例1-1よりも輝度が高く、医療機器生産時に用いるMB及びコンパウンドとして適用が期待できる。
Figure 2024089481000012
[実施例2]
実施例1で使用した近赤外蛍光材料1を近赤外蛍光材料2に変更した以外は実施例1と同様にして近赤外蛍光材料含有樹脂を作製し、その一部からフィルムを作製した。得られたフィルムの厚みは256μmであり、輝度は203であった。
[実施例2-1]
実施例1-1の近赤外蛍光材料含有樹脂を実施例2の近赤外蛍光材料含有樹脂に変更した以外は実施例1-1と同様にしてフィルムを作製した。得られたフィルムの厚みは250μmであり、輝度は127であった。
[実施例2-2]
実施例1-2の近赤外蛍光材料含有樹脂を実施例2の近赤外蛍光材料含有樹脂に変更した以外は実施例1-2と同様にしてフィルムを作製した。得られたフィルムの厚みは276μmであり、輝度は160であった。
[実施例2-3]
実施例1-3で使用した近赤外蛍光材料1を近赤外蛍光材料2に、樹脂をTPUペレット(製品名:ChronoFlex C80 A、ASB社製)に変更した以外は実施例1-3と同様にしてフィルムを作製した。得られたフィルムの厚みは255μmであり、輝度は123であった。
上記の結果を表3に示す。実施例2、2-1、2-2、及び2-3のフィルムの輝度は良好であったことから、実施例2、2-1、2-2、及び2-3の樹脂組成物は樹脂中で近赤外蛍光材料を均一に高分散されていることが分かった。また、実施例2の近赤外蛍光材料の含有量は実施例2-3に対して8倍以上にも関わらず、その輝度は1.7倍程度であった。これより実施例1と同様に、1000ppmという含有量では濃度消光が発生していることが確認された。
分散剤を添加した実施例2をMBとして用いて近赤外蛍光材料含有量120ppmまで希釈した実施例2-1の輝度は、凝集する含有量を経ずして近赤外蛍光材料及び分散剤を用いた実施例2-3の値と同程度であった。この結果より分散剤は近赤外蛍光材料2に対しても凝集を抑制している事が明らかとなった。これはMB及びコンパウンドといった形での製品を提供する上で有用な効果である。
加えて実施例2-2のように予め放射線不透過性物質添加したものへMBとして用いた場合でも実施例2-3と輝度が同程度以上であり、医療用途への適用が期待される。
[合成例3]近赤外蛍光材料3の合成方法
窒素気流下3L容四頸反応器に、化合物3-1:4-ブロモフェノール(94.54g、0.5464mol)、1-ブロモブタン(97.34g、0.7104mol、1.3eq.)、炭酸カリウム(無水)(377.6g、2.732mol、5.0eq.)、アセトン(1L)を仕込み、16時間還流撹拌した。室温へ冷却後、不溶物を濾去しアセトン(800mL)でリンスした。濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル60N球状中性63~210μm、2.5kgをヘキサンでパッキングし、ヘキサン/ジクロロメタン=19/1にて溶出)にて分離精製し、化合物3-2(無色油状、106.0g、収率84.7%、LC純度99.74%)を得た。
窒素気流下2L容四頸反応器に、化合物3-3:2,3-ジシアノハイドロキノン(東京化成工業株式会社製、35.65g、0.2226mol)をジクロロメタン(超脱水、430mL)に撹拌、溶解させ内温8℃にて、2,6-ルチジン(70.13g、2.94eq.)を加え、内温-33℃に冷却した。トリフルオロメタンスルホン酸無水物(147.6g、2.35eq.)を内温-33~-25℃にて24分間掛けて滴下し、次いで内温12℃まで戻しながら一夜撹拌した。
精製水(300mL)でクエンチし、油水分離し、水層をジクロロメタン(300mL)で抽出した。2つの有機層を合わせた後、精製水(300mL)、ブライン(100mL)で順次洗浄後、無水芒硝乾燥させ、濾過、濾液を濃縮し、濃縮残渣(129.8g)を得た。この粗体を酢酸エチル(390mL)に溶解させた後、室温で撹拌したヘキサン(1.95L)中に滴下して再沈殿化させ、得られた懸濁液を室温にて30分間撹拌した。結晶を吸引濾取し、酢酸エチルとヘキサンとの混合液(=40mL+200mL)でリンスした。真空減圧下50℃にて乾燥させ、化合物3-4(淡褐色粉体、56.56g、収率59.9%、LC純度92.46%)を得た。
アルゴン気流下3L容四頸反応器に、マグネシウム(削り状、11.32g、3.86eq.)を仕込み、THF(超脱水、40mL)を加え、化合物3-2(105.1g、0.4586mol、3.8eq.)のうち約2mLを加えた。ヨウ素(粒状、3粒)を加え、発熱し反応が開始したことを確認した。次いで、残りの化合物3-2のTHF(超脱水、200mL)希釈液を、反応系内温が41~58℃以内になる様に1時間30分間掛けて滴下した。未だマグネシウムが溶け残って居るので、更に2時間還流撹拌するとほぼ消失した。THF(超脱水、240mL)を加え希釈した後、内温-65℃に冷却後、硫黄(粉末、11.61g、3.0eq.)のTHF(超脱水、240mL)溶液を内温-50℃以内になるように30分間掛けて滴下した。内温30℃まで47分間掛けて昇温した後、内温28~30℃にて30分間撹拌した。再度内温-35℃に冷却後、化合物3-4(51.20g、0.1207mol)のTHF(超脱水、154mL)溶液を内温-4℃以内になるように20分間掛けて滴下した。内温30℃まで30分間掛けて昇温後、更に1時間撹拌した。
再度-4℃に冷却後、2M塩酸(460mL)を滴下してクエンチし、室温へ戻しながら暫く撹拌後、酢酸エチル(600mL×2回)抽出した。2つの有機層を合わせ、精製水(500mL)、ブライン(300mL)で順次洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮し、濃縮残渣(175.9g)を得た。
この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル60N球状中性63~210μm、1.8kgをヘキサンでパッキングし、ヘキサン/酢酸エチル=5/1~3/1にて溶出)にて分離精製した。得られた濃縮残渣(34.6g)をTHF(52mL)に溶解させた後、室温で撹拌したエタノール(312mL)中に滴下して再沈殿化させ、室温にて1時間撹拌した。得られた結晶を吸引濾取し、エタノール(100mL)でリンスした。真空減圧下50℃乾燥させ、化合物3-5(淡褐色粉体、22.49g、収率38.1%、LC純度97.69%)を得た。
アルゴン気流下1L容四頸反応器に、1-ブタノール(脱水、220mL)を室温で仕込み、20分間アルゴンバブリングした後、リチウム(粒状、2.12g、6.8eq.)を加え、油浴120℃設定にして昇温し、リチウムが溶解するまで35分間加熱撹拌した。化合物3-5(22.00g、45.02mmol)を分割投入した後、湯浴127℃設定にして昇温し、内温116~117℃にて2時間撹拌した。
室温へ冷却後、1v/v%硫酸-メタノール溶液(1.63L)でクエンチし室温にて10分間撹拌した後、得られた沈殿を吸引濾取し、メタノール(500mL)でリンスし、濾滓として黒紫色固体(23.8g)を得た。この粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学シリカゲル60N球状中性40~50μm、440gをヘキサン/クロロホルム=1/1でパッキングし、ヘキサン/クロロホルム=1/2~0/1にて溶出)にて分離精製した。得られた濃縮残渣(16.9g)をメタノール(340mL)に室温にて懸濁撹拌した後、沈殿を吸引濾取し、メタノール(340mL)でリンスした。真空減圧下60℃乾燥させ、化合物3-6(黒紫色粉体、14.44g、収率65.6%)を得た。
Figure 2024089481000018
5L容四頸反応器にアルゴン気流下室温にて、化合物3-6(11.0g、5.62mmol)、DMSO(550mL)、クロロベンゼン(2.2L)、酢酸マグネシウム四水和物(6.03g、5.0eq.)を加え、130℃で3時間撹拌した。
室温へ冷却後、精製水(1L)を注ぎ、クロロホルム(1L×3回)抽出した。3つの有機層を合わせて、精製水(1L)、ブライン(1L)で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮し、粗体(11.5g、濃紫色固体)を得た。この粗体をカラムクロマトグラフィー(活性アルミナ(富士フイルム和光純薬(株))45μm、575g、クロロホルムでパッキングし同溶出)で精製し、真空減圧下50℃で8時間乾燥させ、近赤外蛍光材料3(黒紫色粉体、9.40g、収率84.5%)を得た。
[実施例3]
実施例2で使用した近赤外蛍光材料2を近赤外蛍光材料3に変更した以外は実施例2と同様にして近赤外蛍光材料含有樹脂を作製し、その一部からフィルムを作製した。得られたフィルムの厚みは213μmであり、輝度は64であった。
[実施例3-1]
実施例2-1の近赤外蛍光材料含有樹脂を実施例3の近赤外蛍光材料含有樹脂に変更した以外は実施例2-1と同様にしてフィルムを作製した。得られたフィルムの厚みは222μmであり、輝度は45であった。
[実施例3-2]
実施例2-2の近赤外蛍光材料含有樹脂を実施例3の近赤外蛍光材料含有樹脂に変更した以外は実施例2-2と同様にしてフィルムを作製した。得られたフィルムの厚みは225μmであり、輝度は59であった。
[実施例3-3]
実施例2-3で使用した近赤外蛍光材料2を近赤外蛍光材料3の近赤外蛍光材料含有樹脂に変更した以外は実施例2-3と同様にしてフィルムを作製した。得られたフィルムの厚みは244μmであり、輝度は43であった。
上記の結果を表4に示す。実施例3、3-1、3-2、及び3-3のフィルムの輝度は良好であったことから、実施例3、3-1、3-2、及び3-3の樹脂組成物は樹脂中で近赤外蛍光材料を均一に高分散されていることが分かった。また、実施例3の近赤外蛍光材料の含有量は実施例2-3に対して8倍以上にも関わらず、その輝度は1.5倍程度であった。これより実施例1と同様に、1000ppmという含有量では濃度消光が発生している事が確認された。
分散剤を添加した実施例3をMBとして用いて近赤外蛍光材料含有量120ppmまで希釈した実施例3-1の輝度は、凝集する含有量を経ずして近赤外蛍光材料及び分散剤を用いた実施例3-3の値と同程度であった。この結果より分散剤は近赤外蛍光材料3に対しても凝集を抑制している事が明らかとなった。これはMB及びコンパウンドといった形での製品を提供する上で有用な効果である。
加えて実施例3-2のように予め放射線不透過性物質添加したものへMBとして用いた場合でも実施例3-3と輝度が同程度以上であり、医療用途への適用が期待される。
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、医療用具等の医療用材料として好適に利用することができる。

Claims (14)

  1. 発光物質、分散剤、放射線不透過性物質、及び樹脂を含む樹脂組成物であって、
    前記分散剤の含有量は、前記樹脂100質量部に対して、0.01~1質量部であり、
    前記放射線不透過性物質の含有量は、前記樹脂100質量部に対して、10~50質量部である、樹脂組成物。
  2. 前記分散剤が硫酸バリウムである、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記樹脂組成物における前記分散剤と前記放射線不透過性物質との合計含有量が前記樹脂100質量部に対して10質量部以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  4. 前記発光物質が近赤外蛍光材料である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  5. 前記近赤外蛍光材料が、下記化学式(1)に示すカチオン種と、ハロゲンを除くアニオン種とから成る1種又は2種以上の化合物である、請求項4に記載の樹脂組成物:
    化学式(1)中、
    lは1又は2のいずれかの数であり、
    Xは単結合、炭素、窒素、酸素、リン、及び硫黄分子からなる群から選択され、mは1又は2のいずれかの数であり、
    は、脂肪族又は芳香族性の炭化水素基であり、他のRと共に環を形成していてもよく、一部水素がハロゲンに置換されてもよく、nは1~5のいずれかの数であり、
    は、脂肪族の炭化水素基であり、直鎖、分岐炭化水素基、又は環状構造を有する炭化水素基である。
  6. 前記化学式(1)中、Xが単結合、窒素、及び酸素からなる群から選択される、請求項5に記載の樹脂組成物。
  7. 前記化学式(1)中、Rが炭素数1~6の炭化水素基である、請求項6に記載の樹脂組成物。
  8. 前記アニオン種がホウ素又はリンを含む対イオンである、請求項7に記載の樹脂組成物。
  9. 前記カチオン種が下記化学式
    から選択される1種又は2種以上の化合物である、請求項8に記載の樹脂組成物。
  10. 前記放射線不透過性物質が、硫酸バリウム、酸化ビスマス、次炭酸ビスマス、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タングステン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ジルコニウム、チタン、白金、次硝酸ビスマス、及びビスマスからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  11. 前記樹脂が、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、及び塩化ビニル系樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  12. 請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物を加工して得られる成形体。
  13. 少なくとも一部が、患者の体内で使用される医療用具である、請求項12に記載の成形体。
  14. 発光物質、分散剤、放射線不透過性物質、及び樹脂を含有する樹脂組成物の製造方法であって、
    前記発光物質と、前記分散剤とを予め混合して混合物を得る第1混合工程と、
    前記混合物と、前記樹脂とを混合して前記樹脂組成物を得る第2混合工程とを含む、
    樹脂組成物の製造方法。
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